IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミクニライフ&オートの特許一覧 ▶ 学校法人東京理科大学の特許一覧

<>
  • 特開-レバー操作装置 図1
  • 特開-レバー操作装置 図2
  • 特開-レバー操作装置 図3
  • 特開-レバー操作装置 図4
  • 特開-レバー操作装置 図5
  • 特開-レバー操作装置 図6
  • 特開-レバー操作装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035939
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】レバー操作装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/20 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
B66F9/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140583
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】593034105
【氏名又は名称】株式会社ミクニライフ&オート
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 征道
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 伸也
(72)【発明者】
【氏名】和田 正義
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AE02
3F333BA02
3F333BA08
3F333BB04
3F333DB02
3F333DB03
3F333DB05
(57)【要約】
【課題】レバー操作を行う既存の車両に簡易に取り付けることができ、レバーを操作させることを可能とするレバー操作装置を提供する。
【解決手段】レバー操作に基づいて動作する作業機械に装着され、前記レバーを操作させるレバー操作装置であって、前記レバーを揺動または停止させる動力を出力するアクチュエータと、前記レバーに装着され、前記アクチュエータから出力された動力を前記レバーへ伝達する伝達機構と、上位システムからの指令に基づいて、前記アクチュエータを動作させて、前記レバーを操作させる制御装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバー操作に基づいて動作する作業機械に装着され、前記レバーを操作させるレバー操作装置であって、
前記レバーを揺動または停止させる動力を出力するアクチュエータと、
前記レバーに装着され、前記アクチュエータから出力された動力を前記レバーへ伝達する伝達機構と、
上位システムからの指令に基づいて、前記アクチュエータを動作させて、前記レバーを操作させる制御装置と、を備えることを特徴とするレバー操作装置。
【請求項2】
前記伝達機構は、リンク機構で前記レバーと連結するように構成され、前記リンク機構は、ロッド又はバー材を含むことを特徴とする請求項1に記載のレバー操作装置。
【請求項3】
前記ロッド又はバー材は、少なくとも一方の端が球面軸受けを備えること特徴とする請求項2に記載のレバー操作装置。
【請求項4】
前記ロッド又はバー材は、前記ロッド又はバー材の長さを調整する可変調整機構を有することを特徴とする請求項3に記載のレバー操作装置。
【請求項5】
前記伝達機構は、前記リンク機構と前記アクチュエータとを連結するプルワイヤーを備えることを特徴とする請求項2記載のレバー操作装置。
【請求項6】
前記伝達機構は、前記リンク機構と前記アクチュエータとを連結するプッシュプルワイヤーを備えることを特徴とする請求項2記載のレバー操作装置。
【請求項7】
前記レバーの揺動または停止の状態を検出する角度センサを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のレバー操作装置。
【請求項8】
前記アクチュエータから出力された動力を前記レバーへ伝達する接続状態と前記アクチュエータから出力された動力を前記レバーへ伝達しない切断状態とを切り替えるクラッチと、をさらに備え、
前記伝達機構は、前記クラッチが接続状態であるときに、前記アクチュエータから出力される動力を前記レバーへ伝達し、
前記制御装置は、上位システムからの指令に基づいて、前記アクチュエータおよび前記クラッチを動作させて、前記レバーを操作させることを特徴とする請求項1に記載のレバー操作装置。
【請求項9】
複数のレバーに対してそれぞれ前記クラッチが設けられ、
前記制御装置は、前記各クラッチを接続状態または切断状態に切り替えることによって、いずれか一つの前記レバーに対して、前記アクチュエータから出力された動力が伝達されるよう前記各クラッチを制御することを特徴とする請求項8記載のレバー操作装置。
【請求項10】
遠隔操作モード、手動操作モードまたは自動運転モードのいずれかのモードに切り替えるスイッチをさらに備え、手動操作モードの場合は、すべての前記クラッチが切断状態となることを特徴とする請求項8または請求項9のいずれかに記載のレバー操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバー操作に基づいて動作する作業機械に装着し、上位システムからの指令を受けてレバーを操作させるレバー操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動走行を可能とする車両の自動化運転に関する研究が進められている。例えば、車両に設置されたカメラやセンサ等から画像などの情報を取得し、車間距離の調整、速度の調整、操縦を行うなど、人の手を介することなく走行可能とする制御システムなどの研究や開発が行われている。また、既存の車両に対しては、既存のハンドルやブレーキの自動操作を行う装置を別途設置し、遠隔地からの操作を可能とする技術が開示されている。
【0003】
特許文献1では、フォークリフトのリフト操作用の油圧切換バルブを、アクチュエータを用いて自動操作し、所定の高さにフォーク等の荷役具を位置させ得る自動リフトに関する技術が開示されている。特許文献1におけるリフト操作用バルブレバーの操作装置は、手動にて切り換え操作される油圧切換バルブのリフト操作用バルブレバーから突出し、かつ先端付近にピンを設けたクレビスと、本体側をバルブ取付板に回動自在に枢支される電動シリンダを設け、該電動シリンダのロッド先端部には、互いに対向して前記ロッド先端部を挟むように固定され先端部が適度な角度で折れ曲がり互いに接触する二枚の板バネを固着すると共に、前記クレビスに設けられたピンが、前記二枚の板バネの間の空間に遊嵌挿入された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2717036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存の荷役機械のアタッチメント操作レバーを自動化するには、操作レバーを専用品に交換する必要があり、大掛かりな作業が必要でありかつ煩雑であった。また、引用文献1では、電動直動シリンダを用いており、設置には、電動シリンダの伸縮動作範囲や該電動シリンダの大きさなどを考慮したスペースが必要となるため、寸法上の制約から、既存の大小様々な荷役機械に対し必ずしも適用できるとは限らない。また、電動直動シリンダには、送りネジ機構が用いられることが多く、動作のスピードが遅いという課題もあった。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、レバー操作を行う既存の車両に簡易に取り付けることができ、上位システムからレバーを操作させることを可能とするレバー操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のレバー操作装置は、レバー操作に基づいて動作する作業機械に装着され、前記レバーを操作させるレバー操作装置であって、前記レバーを揺動または停止させる動力を出力するアクチュエータと、前記レバーに装着され、前記アクチュエータから出力された動力を前記レバーへ伝達する伝達機構と、上位システムからの指令に基づいて、前記アクチュエータを動作させて、前記レバーを操作させる制御装置と、を備えることを特徴としている。このように、アクチュエータ、制御装置、伝達機構から構成されるレバー操作装置を各レバーに連結することで、上位システムの指令に基づきレバー操作を行うことが可能となる。したがって、遠隔地からのレバー操作を行うことが可能である。また、レバー操作を自動で行うことも可能となる。
【0008】
(2)また、本発明のレバー操作装置において、前記伝達機構は、リンク機構で前記レバーと連結するように構成され、前記リンク機構は、ロッド又はバー材を含むことを特徴としている。これにより、アクチュエータから伝達された動力を、各レバーに対する動力として確実に伝達することが可能となる。
【0009】
(3)また、本発明のレバー操作装置において、前記ロッド又はバー材は、少なくとも一方の端が球面軸受けを備えることを特徴としている。これにより、レバー操作装置とレバーとの位置関係に、多少のずれが生じていても、動力をロスなく伝えることができ、レバー操作装置の設置がより容易となる。
【0010】
(4)また、本発明のレバー操作装置において、前記ロッド又はバー材は、前記ロッド又はバー材の長さを調整する可変調整機構を有することを特徴としている。このように、ロッド又はバー材に可変調整機構を有することで、操作レバーの位置が車両ごとに異なる場合でも、柔軟に長さを調整できる。
【0011】
(5)また、本発明のレバー操作装置において、前記伝達機構は、前記リンク機構と前記アクチュエータとを連結するプルワイヤーを備えることを特徴としている。これにより、ワイヤーの屈曲による抵抗増が少なく、装置搭載の艤装自由度が高くなる。
【0012】
(6)また、本発明のレバー操作装置において、前記伝達機構は、前記リンク機構と前記アクチュエータとを連結するプッシュプルワイヤーを備えることを特徴としている。これにより、1本のワイヤーで押す動作、引く動作を可能とするため、レバー操作装置の構成もシンプルな構成となり、レバー操作装置の設置スペースも削減でき、レバー操作装置の設置もより簡易となる。
【0013】
(7)また、本発明のレバー操作装置において、前記レバーの揺動または停止の状態を検出する角度センサを備えることを特徴としている。これによりフィードバック制御を可能となる。
【0014】
(8)また、本発明のレバー操作装置において、前記アクチュエータから出力された動力を前記レバーへ伝達する接続状態と前記アクチュエータから出力された動力を前記レバーへ伝達しない切断状態とを切り替えるクラッチと、をさらに備え、前記伝達機構は、前記クラッチが接続状態であるときに、前記アクチュエータから出力される動力を前記レバーへ伝達し、前記制御装置は、上位システムからの指令に基づいて、前記アクチュエータおよび前記クラッチを動作させて、前記レバーを操作させることを特徴としている。このように、上位システムからアクチュエータに指令を送ることにより、レバー操作を行うことが可能となる。
【0015】
(9)また、本発明のレバー操作装置において、複数のレバーに対してそれぞれ前記クラッチが設けられ、前記制御装置は、前記各クラッチを接続状態または切断状態に切り替えることによって、いずれか一つの前記レバーに対して、前記アクチュエータから出力された動力が伝達されるよう前記各クラッチを制御することを特徴としている。これにより、複数のレバーを有する車両であっても、意図したレバーのみを操作することが可能となる。
【0016】
(10)また、本発明のレバー操作装置において、遠隔操作モード、手動操作モードまたは自動運転モードのいずれかのモードに切り替えるスイッチをさらに備え、手動操作モードの場合は、すべての前記クラッチが切断状態となることを特徴としている。手動操作を行いたい場合、車両にレバー操作装置を取り除くことなく設置した状態で、手動による操作が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レバー操作を行う既存の車両に簡易に取り付けることができ、上位システムの指令によりレバーを操作させることを可能とするレバー操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るレバー操作装置をフォークリフトに設置した状態を示す図である。
図2】伝達機構とフォークリフトの各レバーとの連結を示す概略図である。
図3】伝達機構の概略図である。
図4】伝達機構における変向機構の概略図である。
図5】伝達機構におけるロッドの概略図である。
図6】アクチュエータおよび制御装置の斜視図である。
図7】アクチュエータおよび制御装置内部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るレバー操作装置をフォークリフト500に設置した状態を示す図である。本実施形態では、一例として、レバー操作装置をフォークリフトに設置した場合について説明するが、設置する車両はフォークリフトに限定されない。例えば、油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の建設機械のようにレバーで操作する車両であれば、適用可能である。
【0020】
図2は、伝達機構とフォークリフトの各レバーとの連結を示す概略図である。図3は、伝達機構の概略図である。図4は、伝達機構における変向機構の概略図である。図5は、伝達機構におけるロッドの概略図である。
【0021】
[1.フォークリフトの構成]
まず、本実施形態に係るレバー操作装置を説明するにあたり必要となるフォークリフト500(以下、単にフォークリフトともいう)の機能について説明する。フォークリフト500は、キースイッチ、ブレーキ解除ペダル、ステアリングハンドル、リフトレバー、ティルトレバー、リーチレバー、走行レバーを少なくとも備える。
【0022】
キースイッチは、スイッチを入れることでフォークリフト500の電源をONにする。これにより、リフトレバーなどの各レバー505a~505d(詳細は後述する)を揺動させることが可能となり、フォークリフト500の走行や荷役作業を行うことができる。
【0023】
ブレーキ解除ペダルは、操縦者の足元にあり、ブレーキ解除ペダルを踏むことで、ブレーキが解除され、走行可能となり、ブレーキ解除ペダルを放すことで、ブレーキがかかる。ステアリングハンドルは、車両の進行方向を調整するハンドルであり、ハンドルを回転させることで、車輪の向きを変えることができる。
【0024】
リフトレバー505aは、フォーク510を上下に動かす(昇降下降)レバーであり、リフトレバー505aを操縦者側(以下、手前側、図2記載のA方向ともいう)に傾倒させるとフォーク510が上昇し、リフトレバー505aを操縦者とは逆側(以下、前方側、図2記載のB方向ともいう)に傾倒させるとフォーク510が下降する。リフトレバー505aから手を放すと、リフトレバー505aは自動で中立状態に戻り、フォーク510の昇降下降の動作が停止する。
【0025】
ティルトレバー505bは、フォーク510の角度を調整する(前傾後傾)レバーであり、ティルトレバー505bを手前側(A方向)に傾倒させるとフォーク510が前傾し、ティルトレバー505bを前方側(B方向)に傾倒させるとフォーク510が後傾する。ティルトレバー505bから手を放すと、ティルトレバー505bは自動で中立状態に戻り、フォーク510の前傾後傾の動作が停止する。
【0026】
リーチレバー505cは、マストを前後に動かす(出し入れ)レバーであり、リーチレバー505cを手前側(A方向)に傾倒させるとマスト512が後進し、リーチレバー505cを前方(B方向)に傾倒させるとマスト512が前進する。リーチレバー505cから手を放すと、リーチレバー505cは自動で中立状態に戻り、マスト512の動作が停止する。
【0027】
走行レバー505dは、車両の前後進の動作とスピードを調整するレバーであり、走行レバー505dを手前側(A方向)に傾倒させると車両が後進し、走行レバーを前方側(B方向)に傾倒させると車両が前進する。走行レバー505dの傾倒角度により、車両の走行速度の調整を行う。つまり、走行レバー505dを中立状態から手前側(A方向)に大きく傾倒させるほど、後進の速度が速くなり、走行レバー505dを中立状態から前方側(B方向)に大きく傾倒させるほど、前進の速度が速くなる。走行レバー505dから手を放すと、走行レバー505dは自動で中立状態に戻り、車両の走行速度が減速する。
【0028】
[2.レバー操作装置の構成]
次に、本実施形態に係るレバー操作装置の構成について説明する。レバー操作装置100は、アクチュエータと制御装置と伝達機構を備える。制御装置は、上位システムからレバー操作に関する指令を受信し、アクチュエータを動作させ、アクチュエータの動力を、レバーを揺動または停止させる動力に変換し、出力する。伝達機構は、制御装置とフォークリフトの各レバーとを連結するように装着され、アクチュエータから出力された動力を、伝達機構を介して各レバーへ伝達する。このように、制御装置から動力が伝達されることにより、各レバーを操作できる。また、本実施形態では、車両に4本の操作レバー(リフトレバー、ティルトレバー、リーチレバー、走行レバー)が設けられている場合を一例として説明するが、これに限定されない。本発明は、1つ以上(1つまたは複数)の操作レバーを有する車両に対し、適用可能である。
【0029】
本実施形態における上位システムとは、遠隔地でフォークリフトに指令信号を送るシステムやフォークリフトの自動運転システムを指す。遠隔地でフォークリフトに指令信号を送るシステムとは、遠隔地からフォークリフトを遠隔操作するための指令を送るシステムを指し、フォークリフトがどのような動作をするのか、遠隔地から、人の目や知能、つまり人の判断力に基づき、指令信号を送信するシステムである。例えば、遠隔地に複数のレバーを配置し、その複数のレバーを操作し、その動作を指令信号に変え、送信することにより、フォークリフトの遠隔操作を行うシステムなどが含まれる。
【0030】
また、フォークリフトの自動運転システムとは、人工知能(AI)や学習機能を備え、人の意志や判断を介することなく、もしくは人の意志や判断を介したとしても少しの情報を提供するのみで、フォークリフトを自動で操作するシステムを指す。例えば、目的・目標値などを入力することのみで、システム自らが周囲の情報などを収集し、フォークリフトに指令信号を送信し動作制御を行うシステムなどが含まれる。
【0031】
本実施形態では、図1に示すように、レバー操作装置100を構成するアクチュエータ110、210および制御装置130、230を、フォークリフトのヘッドガード501上に設置しているが、これに限定されない。例えば、フォークリフト本体部とマスト部との間や、各レバー付近などに設置してもよい。
【0032】
伝達機構は、ワイヤー153a~153d、変向機構155a~155d、リンク機構159a~159dから構成され、制御装置130の各アーム(制御装置の詳細は後述する)と各レバー505a~505dとを連結している。ワイヤー153a~153dの一端は制御装置の各アームに連結され、他端は変向機構155a~155dに連結されている。そして、リンク機構159a~159dの一端は変向機構155a~155dに連結され、他端は留め具によって各レバー505a~505dに連結されている。
【0033】
変向機構155a~155dは、シャフト157を軸として回転可能であり、動作方向の異なる部材に伝達された動力の向きを変える機構である。本実施形態では、変向機構155a~155dは、制御装置130からワイヤー153a~153dに伝達された動力の向きを変える機構であり、ワイヤー153a~153dに伝達された動力(本実施形態では上下運動)を、リンク機構159a~159dに伝達された動力(本実施形態では水平運動)に変向している。本実施形態では、図1図5に示すように、制御装置130をヘッドガード501上に設置しているため、ワイヤー153a~153dは上下運動し、リンク機構159a~159dが水平運動する仕組みとなるが、制御装置から伝達された動力がレバーの揺動方向に変向されればよく、動力の変向方向はこれに限定されない。つまり、制御装置130の設置位置により、動力の変向方向が変わることはいうまでもない。
【0034】
本実施形態では、ワイヤーとしてプッシュプルワイヤーを用いるが、これに限定されない。例えば、制御装置と変向機構との間の伝達機構を、1本のプッシュプルワイヤーではなく、PULL機能とPUSH機能とに分け、プルワイヤーとプッシュワイヤーの2本で構成してもよい。1本のプッシュプルワイヤーよりも、プルワイヤーとプッシュワイヤーの2本のワイヤーを用いた方が、ワイヤーの屈曲による抵抗増が少なく、装置搭載の艤装自由度が高くなる。
【0035】
各レバー505a~505dは、前述したとおり、前後方向(A方向B方向)に揺動させることで、走行や荷役作業を行うことができる。制御装置130からワイヤー153a~153dに「引く(PULL)」という動力が伝達されると、ワイヤーが図3の図面に対し上方向(図3のC方向)へ動く。ワイヤー153a~153dが図3の図面に対し上方向(C方向)へ動くと、ワイヤー153a~153dの端部に連結された変向機構155a~155dが、シャフト157を軸として、E方向へ回転する。変向機構155a~155dがE方向へ回転すると、変向機構155a~155dに連結されたリンク機構159a~159dは変向機構側(図3のG方向)へ動く。その結果、リンク機構159a~159dが連結された各レバー505a~505dがB方向へ傾倒する。
【0036】
制御装置130からワイヤー153a~153dに「押す(PUSH)」という動力が伝達されると、ワイヤー153a~153dが図3の図面に対し下方向(図3のD方向)へ動く。ワイヤー153a~153dが図3の図面に対し下方向(D方向)へ動くと、ワイヤー153a~153dの端部に連結された変向機構155a~155dが、シャフト157を軸として、F方向へ回転する。変向機構155a~155dがF方向へ回転すると、変向機構155a~155dに連結されたリンク機構159a~159dは図面に対しH方向へ動く。その結果、リンク機構159a~159dが連結された各レバー505a~505dがA方向へ傾倒する。このように、アクチュエータ、制御装置130から出力された動力により、伝達機構を動かし、各レバー505a~505dを揺動させることが可能となる。
【0037】
リンク機構159a~159dは、図5に示すように、両端に球面軸受けが設けられたロッドから構成される。これにより、各レバー505a~505dに対し、アクチュエータからの動力を、確実に伝達することを可能とする。本実施形態では、リンク機構159a~159dとして、両端に球面軸受けが設けられたロッドを用いているが、少なくとも一端に球面軸受けが設けられていればよい。このように、リンク機構159a~159dとして、両端または少なくとも一端に球面軸受けが設けられたロッドを用い、ロッドを各レバー505a~505dに直接連結することで、アクチュエータから制御装置およびワイヤー153a~153dを介し伝達された動力が、リンク機構159a~159dへ伝達された際に、球面軸受けがロッドの軸線方向に回動し、ワイヤーの伸縮方向とは異なる方向であるロッドの軸線方向への力として吸収する。その結果、各レバー505a~505dに対し、アクチュエータからの動力を、確実に伝達することを可能とする。
【0038】
ロッドは、ロッドの長さを調整する可変調整機構を有していてもよい。また、可変調整機構は、例えば、ターンバックル機構であってもよい。このように、ロッドに可変調整機構を有することで、操作レバーの位置が車両ごとに異なる場合でも、柔軟に長さを調整できる。本実施形態では、リンク機構159a~159dの一例として、ロッドを用いた例を説明したが、ロッドではなくバー材を用いても良い。動作は、ロッド、バー材のいずれを用いた場合でも、同じであるため、バー材を用いた例の説明は、省略する。
【0039】
図6は、アクチュエータおよび制御装置の斜視図である。図7は、アクチュエータおよび制御装置内部の上面図である。制御装置は、レバー操作用の制御装置である第1の制御装置130と、ブレーキ解除ペダル操作用の制御装置である第2の制御装置230とを備え、アクチュエータは第1の制御装置130および第2の制御装置230それぞれに設けられており、第1の制御装置130に接続されたアクチュエータを第1のアクチュエータ110、第2の制御装置230に接続されたアクチュエータを第2のアクチュエータ210とする。本実施形態では、アクチュエータとしてDCモータを用いているため、第1のアクチュエータを第1のDCモータ、第2のアクチュエータを第2のDCモータとも称する。
【0040】
第1の制御装置130は、4つのギアボックス1301と各ギアボックス1301がベルト機構1305である動力伝達ベルト1305で接続されている。各ギアボックス1301は、減速機1311、電磁クラッチ1313、角度センサ1315、アーム1317を少なくとも備える。ギアボックスの数は、操作レバーの数に対応している。なお、本実施形態では、4つのレバーを有するフォークリフトに装着するレバー操作装置であるため、第1の制御装置130には4つのギアボックスを備えるが、これに限定されない。レバー操作装置を設置する車両の操作レバーの数に応じて、ギアボックスの数は変更可能である。
【0041】
第1のDCモータ110は、上位システムからの指令により、車両に搭載されている電源であるバッテリから電力が供給されることで回転し、第1の制御装置130の駆動源として機能する。第1のDCモータ110の駆動力(動力)は、ベルト機構1305により、各減速機1311の入力端に伝達される。減速機1311に伝達された第1のDCモータ110の動力は、電磁クラッチ1313を介し、アーム1317に伝達される。
【0042】
減速機1311は、第1のDCモータ110のモータ軸と出力軸との間に設けられ、第1のDCモータ110の回転を減速して出力軸に出力する。減速機1311を用いることで、減速比の設定自由度が高くなり、かつ高速な動作を行うことができる。その結果、上位システムからの指令による各レバー505a~505dの操作を、より正確にかつよりスムーズに行うことができる。本実施形態では、減速機としてウォームギアを用いるが、これに限定されない。例えば、プーリーとベルトや、スプロケットとチェーンを組み合わせる等、ウォームギアではなく、スプロケットやプーリーを用いてもよい。
【0043】
出力軸に出力された第1のDCモータ110の回転は駆動力(動力)として、電磁クラッチ1313に伝達される。第1のDCモータ110により、電磁クラッチ1313のON/OFFが制御され、電磁クラッチ1313がONとなり通電状態になった場合に、アーム1317を動かし、アーム1317の先に連結されている各レバー505a~505dが作動する。つまり、各レバー505a~505dは、各電磁クラッチ1313への通電が切り替えられることによって、複数のレバーのうち1つのレバーのみが作動するよう、上位システムからの指令を受けた第1のDCモータ110により制御される。
【0044】
出力軸には、さらに角度センサ1315が設けられており、出力軸の回転角度を検出する。このように角度センサ1315が出力軸の回転角度を検出し、設定された目標角度信号と比較し、出力軸の回転角度を設定された目標角度の値に近づけるようフィードバック制御を行うことで、アーム1317の先に連結されている各レバー505a~505dの揺動角度を制御する。本実施形態では、角度センサは、ポテンショメータを用いるがこれに限定されない。例えば、加速度センサを用いて、出力軸の傾斜角度を算出してもよい。また、本実施形態では、ポテンショメータを二重化し、ロバスト性や冗長性向上を図っている。
【0045】
第2の制御装置230は、1つのギアボックス2301と1つのアクチュエータ(第2のアクチュエータ210、第2のDCモータ)とを備える。第2の制御装置230は、ブレーキ解除ペダル操作用の制御装置であり、レバー操作用の制御装置である第1の制御装置110とは異なり、操作レバーの切り替えは不要であるため、1モータ1アームで構成されている。そのため、第1の制御装置130のようにギアボックス間を接続するベルト機構1305は有しない。
【0046】
第2のDCモータ210は、上位システムからの指令により、車両に搭載されている電源であるバッテリから電力が供給されることで回転し、第2の制御装置230の駆動源として機能する。第2のDCモータ210の駆動力(動力)は、減速機2311の入力端に伝達される。減速機2311に伝達された第2のDCモータ210の動力は、電磁クラッチ2313を介し、アーム2317に伝達される。なお、第2のアクチュエータ210は、第1のアクチュエータ110とは独立して上位システムからの指令を受ける。
【0047】
減速機2311は、第2のDCモータ210のモータ軸と出力軸との間に設けられ、第2のDCモータ210の回転を減速して出力軸に出力する。減速機を用いることで、減速比の設定自由度が高くなり、かつ高速な動作を行うことができる。その結果、上位システムからの指令によるブレーキ解除ペダルの操作を、より正確にかつよりスムーズに行うことができる。本実施形態では、第1の制御装置の減速機と同様、減速機としてウォームギアを用いるが、これに限定されない。例えば、プーリーとベルトや、スプロケットとチェーンを組み合わせる等、ウォームギアではなく、スプロケットやプーリーを用いて駆動してもよい。
【0048】
出力軸に出力された第2のDCモータ210の回転は、減速機2311、伝達機構を介し伝達され、ブレーキ解除ペダルを解除する。
【0049】
本実施形態に係るレバー操作装置100は、さらに、遠隔操作モード、手動操作モードまたは自動運転モードのいずれかのモードに切り替えるスイッチを備える。遠隔操作モードでは、各ギアボックス内の電磁クラッチが接続可能な状態となり、上位システムからの指令により、各レバー505a~505dの操作が可能となる。手動操作モードの場合は、すべての電磁クラッチが切断状態となり、アクチュエータ110、210による各レバー505a~505dやブレーキ解除ペダルの操作等の制御が不可となり、操縦者がフォークリフト500に乗り直接レバーの操作等を行うことが可能となる。自動運転モードでは、遠隔操作モードと同様、各ギアボックス内の電磁クラッチが接続可能な状態となり、上位システムからの指令により、各レバー505a~505dの操作が可能となる。自動運転モードでは、上位システムからの制御情報に基づき、各レバー505a~505dの操作が人口知能(AI)などにより人の意志を介することなく、自動制御を行うことが可能となる。このように、遠隔操作モード、手動操作モードまたは自動運転モードのいずれかのモードに切り替えるスイッチを備えることで、レバー操作装置を設置した状態のままでも、操縦者がフォークリフトに乗り、直接操作を行うことが可能となる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係るレバー操作装置100は、伝達機構を各レバーに連結し、アクチュエータと制御装置により各レバーを操作することが可能であるため、既存の車両に簡易にかつ車両の空いているスペースに設置することができる。
【0051】
[3.レバー操作装置の動作]
次に、本実施形態に係るレバー操作装置の動作について説明する。以下、リフトレバー505aを操作する場合について、説明するが、ティルトレバー、リーチレバー、走行レバーを操作する場合も同様である。
【0052】
上位システムから、第1の制御装置130に対し、リフトレバー505aの動作指示を送信すると、第1の制御装置130は、第1のアクチュエータ110を駆動させる。第1のアクチュエータ110が駆動されると、その駆動力(動力)がリフトレバー505aのみに伝達されるよう、リフトレバー505aに接続するギアボックス内の電磁クラッチ1313のみがONとなるよう、第1のアクチュエータ110により制御される。電磁クラッチ1313がONになり通電状態になると、その先に連結されているアーム1317が作動する。アーム1317が作動することで、ワイヤー153aが作動する。ワイヤー153aが押され又は引かれると、その先に連結されているリフトレバー505aがA方向またはB方向へ傾倒される。このように、リフトレバー505aがA方向またはB方向へ傾倒させることで、フォーク510を上下に動かすことが可能となる。動作させたいレバーのみに動力が伝わるよう、第1の制御装置130において電磁クラッチのON/OFFの制御を行っているため、複数のレバーが同時に動くように制御することはない。
【0053】
次にブレーキ解除ペダルを操作する場合について説明する。遠隔地から、第2の制御装置230に対し、ブレーキ解除ペダルを解除する指示を送信すると、第2の制御装置230は、第2のアクチュエータ210を駆動させる。第2のアクチュエータ210が駆動されると、その駆動力(動力)がブレーキ解除ペダルに伝達されるよう、ギアボックス内の電磁クラッチ2313がONとなる。電磁クラッチ2313がONになり通電状態になると、ブレーキ解除ペダルが解除される。
【0054】
本実施形態では、上位システムから各レバーおよびブレーキ解除ペダルに対する操作について、説明したが、キースイッチ、ステアリングハンドルなどについても、同様に遠隔操作が可能である。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、レバー操作を行う既存の車両に簡易に取り付けることができ、上位システムからレバーを操作させることを可能とするレバー操作装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
110 第1のアクチュエータ、第1のDCモータ
130 第1の制御装置
1301 ギアボックス
1305 ベルト機構
1311 減速機
1313 電磁クラッチ
1315 角度センサ
1317 アーム
153a、153b、153c、153d ワイヤー
155a、155b、155c、155d 変向機構
157 シャフト
159a、159b、159c、159d リンク機構
210 第2のアクチュエータ、第2のDCモータ
230 第2の制御装置
2301 ギアボックス
2311 減速機
2313 電磁クラッチ
2315 角度センサ
2317 アーム
500 フォークリフト
505a リフトレバー
505b ティルトレバー
505c リーチレバー
505d 走行レバー
501 ヘッドガード
510 フォーク
512 マスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7