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特開2024-35995半導体ウェーハの評価方法、半導体ウェーハの製造方法及び半導体ウェーハ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024035995
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの評価方法、半導体ウェーハの製造方法及び半導体ウェーハ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240308BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20240308BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240308BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N21/956 A
G01N1/28 N
H01L21/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140674
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】長澤 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】黒紙 基
(72)【発明者】
【氏名】秀 智枝
(72)【発明者】
【氏名】橋本 香織
(72)【発明者】
【氏名】森 敬一朗
【テーマコード(参考)】
2G051
2G052
4M106
5F045
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB01
2G051BA10
2G051CB01
2G051CB05
2G052AA13
2G052AB01
2G052AC13
2G052AD32
2G052AD52
2G052FD06
2G052GA11
2G052GA36
4M106AA01
4M106BA02
4M106BA05
4M106CA41
4M106CB19
4M106DB05
4M106DH60
4M106DJ27
4M106DJ28
5F045AA06
5F045AB04
5F045AC01
5F045AC07
(57)【要約】
【課題】半導体ウェーハ表面に存在する、突起状の微小な欠陥を評価することができる新たな評価方法を提供すること。
【解決手段】半導体ウェーハの表面に、この表面に存在する突起状の欠陥を拡張させるための被膜を形成すること、上記被膜の表面を表面欠陥検査装置によって検査すること、及び、上記検査の結果に基づいて上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価すること、を含み、上記被膜は、波長266nmにおける光の減衰係数が4以上の材質によって構成される被膜である、半導体ウェーハの評価方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの表面に、該表面に存在する突起状の欠陥を拡張させるための被膜を形成すること、
前記被膜の表面を表面欠陥検査装置によって検査すること、及び、
前記検査の結果に基づいて前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価すること、
を含み、
前記被膜は、波長266nmにおける光の減衰係数が4以上の材質によって構成される被膜である、半導体ウェーハの評価方法。
【請求項2】
前記材質は、アモルファスシリコンである、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項3】
前記被膜の表面は、平均ヘイズが0.5ppm以下の表面である、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項4】
前記被膜の厚みは、15nm以上500nm以下である、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項5】
前記検査の結果に基づいて前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価することは、
前記検査によって検出されたLPDの個数を前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数とみなして、前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数を評価することを含む、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項6】
前記検査の結果に基づいて前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価することは、
前記検査によってLPDが検出された位置において前記被膜表面の突起物の高さを原子間力顕微鏡によって計測し、計測された高さの値を、前記半導体ウェーハ表面において前記突起物の直下に存在する突起状の欠陥のサイズとみなして、前記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価を行うことを含む、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項7】
前記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価は、
前記被膜表面の複数の突起物の高さの計測値に基づき作成された高さ分布情報に基づき、前記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズ分布を評価すること、
を含む、請求項6に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項8】
前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥は、パーティクル及びPIDからなる群から選択される欠陥である、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項9】
前記半導体ウェーハは、シリコンウェーハである、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項10】
前記材質は、アモルファスシリコンであり、
前記被膜の表面は、平均ヘイズが0.5ppm以下の表面であり、
前記被膜の厚みは、15nm以上500nm以下であり、
前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥は、パーティクル及びPIDからなる群から選択される欠陥であり、
前記半導体ウェーハは、シリコンウェーハであり、且つ
前記検査の結果に基づいて前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価することは、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
(1)前記検査によって検出されたLPDの個数を前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数とみなして、前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数を評価すること。
(2)前記検査によってLPDが検出された位置において前記被膜表面の突起物の高さを原子間力顕微鏡によって計測し、計測された高さの値を、前記半導体ウェーハ表面において前記突起物の直下に存在する突起状の欠陥のサイズとみなして、前記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価を行うこと。
【請求項11】
前記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価は、
前記被膜表面の複数の突起物の高さの計測値に基づき作成された高さ分布情報に基づき、前記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズ分布を評価すること、
を含む、請求項10に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項12】
半導体ウェーハの表面に被膜を形成すること、
前記被膜の表面を表面欠陥検査装置によって検査すること、及び、
前記検査の結果に基づいて前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価すること、
を含み、かつ
前記被膜はアモルファスシリコン膜である、半導体ウェーハの評価方法。
【請求項13】
前記被膜の表面は、平均ヘイズが0.5ppm以下の表面であり、かつ
前記被膜の厚みは、15nm以上500nm以下である、請求項12に記載の半導体ウェーハの評価方法
【請求項14】
前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥は、パーティクル及びPIDからなる群から選択される欠陥である、請求項12に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項15】
前記検査の結果に基づいて前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価することは、
前記検査によって検出されたLPDの個数を前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数とみなして、前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数を評価することを含む、請求項12に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項16】
前記検査の結果に基づいて前記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価することは、
前記検査によってLPDが検出された位置において前記被膜表面の突起物の高さを原子間力顕微鏡によって計測し、計測された高さの値を、前記半導体ウェーハ表面において前記突起物の直下に存在する突起状の欠陥のサイズとみなして、前記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価を行うことを含む、請求項12に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項17】
評価対象の製造条件下で半導体ウェーハを製造すること、
前記製造された半導体ウェーハを請求項1~16のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの評価方法によって評価すること、
前記評価の結果に基づき、前記評価対象の製造条件に変更を加えた製造条件をその後の製造条件として決定するか、又は、前記評価対象の製造条件を引き続き採用する製造条件として決定すること、及び、
前記決定された製造条件下で半導体ウェーハを製造すること、
を含む半導体ウェーハの製造方法。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの評価方法によって半導体ウェーハを評価した場合に、前記被膜の表面を表面欠陥検査装置によって検査して検出されるLPDの個数が15個/ウェーハ以下である半導体ウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの評価方法、半導体ウェーハの製造方法及び半導体ウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの欠陥の評価方法としては、表面欠陥検査装置によって検出される輝点(LPD:Light Point Defect)に基づく方法が広く用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-212009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体ウェーハの表面には、突起状の欠陥が存在し得る。突起状の欠陥の具体例は、パーティクル及びPID(Process Induced Defect)である。パーティクルは、ウェーハ製造工程においてウェーハ表面に付着した異物である。PIDは、ウェーハ製造工程において実施された加工処理に起因して発生した加工起因欠陥であり、主に研磨加工に起因して発生する欠陥である。これら突起状の欠陥の中には、表面欠陥検査装置の検出限界サイズを下回る微小な欠陥が含まれ得る。かかる微小な欠陥に関する評価を行うことが可能になれば、例えば、その評価結果に基づき、半導体ウェーハの製造条件を微小な欠陥の発生が抑制されるように変更することによって、微小な欠陥が少ない高品質な半導体ウェーハを製造することが可能となる。
【0005】
本発明の一態様は、半導体ウェーハ表面に存在する、突起状の微小な欠陥を評価することができる新たな評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
先に示した特開2016-212009号公報(特許文献1)には、ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥を拡張させるために、ウェーハ表面に窒化膜を形成し、この窒化膜の表面に形成された突起部を表面欠陥検査装置で検出することが開示されている(特開2016-212009号公報の請求項1、請求項5等参照)。
これに対し、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥を拡張させるための被膜としては、波長266nmにおける光の減衰係数が4以上の材質によって構成される被膜が好適であることを新たに見出した。この点について、以下に更に詳細に説明する。
【0007】
表面欠陥検査装置は、評価対象の表面に光を入射させ、この表面からの放射光(散乱光又は反射光)を検出する。これにより、表面欠陥検査装置によれば、評価対象の表面に存在する突起を輝点(LPD:Light Point Defect)として検出することができる。しかし本発明者らが鋭意検討を重ねる中で、特開2016-212009号公報(特許文献1)に記載されている窒化膜は表面ヘイズが高いため、窒化膜表面では、表面欠陥検査装置における測定感度が低いことが判明した。窒化膜の表面ヘイズが高くなる理由は、主に膜そのものの光学的な性質にあると考えられる。
詳しくは、窒化膜は、表面欠陥検査装置から照射される光に対する減衰係数(物性値)が小さいため(シリコン窒化物Siの波長266nmにおける光の減衰係数:0.013)、窒化膜に入射した光の多くが窒化膜を透過し、窒化膜と半導体ウェーハとの界面に達して界面で反射する。その結果、界面からの反射光が窒化膜の内部及び表面で散乱することが、窒化膜の表面ヘイズが高い理由と推察される。
これに対し、波長266nmにおける光の減衰係数が4以上の材質によって構成される被膜であれば、表面欠陥検査装置から入射した光が被膜を透過して被膜と半導体ウェーハとの界面で反射することを抑制又は低減することができる。その結果、界面からの反射光による表面ヘイズを低くできるため、表面欠陥検査装置の受光部の最小検出サイズを小さくすることが可能になる。そのため、波長266nmにおける光の減衰係数が4以上の材質によって構成される被膜の表面であれば、表面欠陥検査装置による高感度測定が可能と考えられる。このように、本発明者らは膜固有の減衰係数に着目して鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させた。なお、本発明及び本明細書における「減衰係数」とは、放射した光が媒体中を進行する途中で吸収及び/又は散乱により減衰していく度合を表す係数を意味する。
【0008】
即ち、本発明の一態様は、以下の通りである。
[1]半導体ウェーハ(単に「ウェーハ」とも記載する。)の表面に、この表面に存在する突起状の欠陥を拡張させるための被膜を形成すること、
上記被膜の表面を表面欠陥検査装置によって検査すること、及び、
上記検査の結果に基づいて上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価すること、
を含み、
上記被膜は、波長266nmにおける光の減衰係数が4以上の材質によって構成される被膜である、半導体ウェーハの評価方法(単に「評価方法」とも記載する)。
[2]上記材質は、アモルファスシリコンである、[1]に記載の半導体ウェーハの評価方法。
[3]半導体ウェーハの表面に被膜を形成すること、
上記被膜の表面を表面欠陥検査装置によって検査すること、及び、
上記検査の結果に基づいて上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価すること、
を含み、かつ
上記被膜はアモルファスシリコン膜である、半導体ウェーハの評価方法。
[4]上記被膜の表面は、平均ヘイズが0.5ppm以下の表面である、[1]~[3]のいずれかに記載の半導体ウェーハの評価方法。
[5]上記被膜の厚みは、15nm以上500nm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の半導体ウェーハの評価方法。
[6]上記検査の結果に基づいて上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価することは、
上記検査によって検出されたLPDの個数を上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数とみなして、上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数を評価することを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の半導体ウェーハの評価方法。
[7]上記検査の結果に基づいて上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価することは、
上記検査によってLPDが検出された位置において上記被膜表面の突起物の高さを原子間力顕微鏡によって計測し、計測された高さの値を、上記半導体ウェーハ表面において上記突起物の直下に存在する突起状の欠陥のサイズとみなして、上記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価を行うことを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の半導体ウェーハの評価方法。
[8]上記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価は、
上記被膜表面の複数の突起物の高さの計測値に基づき作成された高さ分布情報に基づき、上記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズ分布を評価すること、
を含む、[7]に記載の半導体ウェーハの評価方法。
[9]上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥は、パーティクル及びPIDからなる群から選択される欠陥である、[1]~[8]のいずれかに記載の半導体ウェーハの評価方法。
[10]上記半導体ウェーハは、シリコンウェーハである、[1]~[9]のいずれかに記載の半導体ウェーハの評価方法。
[11]上記材質は、アモルファスシリコンであり、
上記被膜の表面は、平均ヘイズが0.5ppm以下の表面であり、
上記被膜の厚みは、15nm以上500nm以下であり、
上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥は、パーティクル及びPIDからなる群から選択される欠陥であり、
上記半導体ウェーハは、シリコンウェーハであり、且つ
上記検査の結果に基づいて上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価することは、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を含む、[1]に記載の半導体ウェーハの評価方法。
(1)上記検査によって検出されたLPDの個数を上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数とみなして、上記半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数を評価すること。
(2)上記検査によってLPDが検出された位置において上記被膜表面の突起物の高さを原子間力顕微鏡によって計測し、計測された高さの値を、上記半導体ウェーハ表面において上記突起物の直下に存在する突起状の欠陥のサイズとみなして、上記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価を行うこと。
[12]上記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価は、
上記被膜表面の複数の突起物の高さの計測値に基づき作成された高さ分布情報に基づき、上記半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズ分布を評価すること、
を含む、[11]に記載の半導体ウェーハの評価方法。
[13]評価対象の製造条件下で半導体ウェーハを製造すること、
上記製造された半導体ウェーハを[1]~[12]のいずれかに記載の半導体ウェーハの評価方法によって評価すること、
上記評価の結果に基づき、上記評価対象の製造条件に変更を加えた製造条件をその後の製造条件として決定するか、又は、上記評価対象の製造条件を引き続き採用する製造条件として決定すること、及び、
上記決定された製造条件下で半導体ウェーハを製造すること、
を含む半導体ウェーハの製造方法(単に「製造方法」とも記載する)。
[14][1]~[12]のいずれかに記載の半導体ウェーハの評価方法によって半導体ウェーハを評価した場合に、上記被膜の表面を表面欠陥検査装置によって検査して検出されるLPDの個数が15個/ウェーハ以下である半導体ウェーハ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、半導体ウェーハ表面に存在する、突起状の微小な欠陥を評価することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】レンズ効果によるサイズ拡張の模式図である。
図2】アモルファスシリコン膜の成膜前後のLPD検出サイズの対比結果を示す。
図3】アモルファスシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面において測定された平均ヘイズを示す。
図4】実施例1について、成膜前にウェーハ表面において求められたLPD個数を示す。
図5】成膜後突起物及び付着パーティクルのSEM像の具体例を示す。
図6】実施例1について、成膜後にアモルファスシリコン膜の表面において求められたLPD(成膜後突起物)個数を示す。
図7】比較例1及び実施例2について、成膜後にウェーハ表面において求められたLPD個数を示す。
図8】実施例2で成膜後LPD測定を行った後のウェーハの1つについて、アモルファスシリコン膜表面の突起物全点の高さをAFMによって計測して得られた個数分布(高さ分布情報)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、上記評価方法及び上記製造方法について、更に詳細に説明する。
【0012】
[半導体ウェーハの評価方法]
<評価対象の半導体ウェーハ>
上記評価方法によって評価される半導体ウェーハは、一般に半導体基板として使用される各種半導体ウェーハであることができる。例えば、半導体ウェーハの具体例としては、各種シリコンウェーハを挙げることができる。シリコンウェーハは、例えば、シリコン単結晶インゴットから切り出した後に各種加工工程を経たシリコン単結晶ウェーハ、例えば研磨処理が施されて表面に研磨面を有するポリッシュドウェーハ、エピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハ等であることができる。評価対象の半導体ウェーハの直径は、例えば、200mm以下、200mm以上(例えば200mm、300mm又は450mm)であるが、特に限定されるものではない。
【0013】
評価対象の半導体ウェーハ表面には、突起状の欠陥が存在する。かかる欠陥は、パーティクル及び/又はPIDであることができる。
【0014】
<被膜の形成>
上記評価方法では、半導体ウェーハの表面に被膜を形成する。上記被膜としては、波長266nmにおける光の減衰係数(単に「減衰係数」とも記載する。)が4以上の材質によって構成される被膜を形成する。減衰係数が4以上の材質によって構成される被膜であれば、先に詳細に記載したように被膜の表面ヘイズを低くできるため、測定感度向上に寄与し得る。減衰係数が4以上の材質としては、アモルファスシリコン、シリコンゲルマニウム等が挙げられる。なお、本発明では減衰係数を規定する波長として266nmを採用したが、これは材質固有の物性値として減衰係数を特定するためであって、上記評価方法において使用される表面欠陥検査装置が照射する光の波長は266nmに限定されるものではない。各種材質の減衰係数は、文献公知の値であり、又は、公知の方法によって測定できる。一例として、「Edward D Parik、”Handbook of Optical Constants of Solid” Academic press、 1985」に記載されている。例えば、アモルファスシリコンの減衰係数は、4.426であり、シリコン窒化物Siの減衰係数は0.013である。
【0015】
上記被膜を構成する材質の減衰係数は、上記理由から4以上であり、例えば4.000以上、4.100以上、4.200以上又は4.300以上であることができる。測定感度向上の観点からは、減衰係数の上限は特に限定されない。被膜を構成する材質の減衰係数が4以上であれば十分な測定感度が得られるため、過度に減衰係数が高い材質を用いなくてもよい。この点からは、例えば、上記被膜を構成する材質の減衰係数は、例えば、10以下、8以下、 6以下、6.000以下、5.500以下又は5.000以下であることができる。
【0016】
上記被膜の形成は、LP-CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)、プラズマCVD又はALD(Atomic Layer Deposition)装置等の公知の成膜装置を使用して行うことができる。
【0017】
上記被膜の材質の具体例としては、アモルファスシリコンを挙げることができる。以下において、アモルファスシリコンによって構成される被膜を、「アモルファスシリコン膜」とも呼ぶ。アモルファスシリコン膜の成膜方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、半導体ウェーハ表面にアミノシランガスを使用してシード層を形成し、このシード層形成に使用したアミノシランと比べて分子量の小さなシランガスを堆積させることによって、半導体ウェーハ表面にアモルファスシリコン膜を形成することができる。シード層は、アモルファスシリコンの成長の起点となる。アモルファスシリコン膜のソースガスとなるシラン系ガスのうち、分子量の大きなアミノシランガスを堆積させることは、高い平滑性の成膜面を形成する観点から好ましい。アモルファスシリコン膜の具体的な成膜プロセスについては、例えば、特開2011-249764号公報及び特開2014-127693号公報を参照できる。
【0018】
上記被膜としてアモルファスシリコン膜を形成することは、以下の観点からも好ましい。
窒化膜の成膜では、反応副生成物である塩化アンモニウムが発塵減となるため、窒化膜表面に付着する異物(付着パーティクル)が多くなる。表面欠陥検査装置による評価では、被膜の表面において、直下に突起状の欠陥が存在することによって被膜表面が盛り上がった部分(突起物(以下、「成膜後突起物」とも呼ぶ。))を、付着パーティクルと区別することができない。そのため、成膜後突起物と付着パーティクルとを分類するために、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)等を用いた欠陥判別工程を行わなければならない。したがって、表面欠陥検査装置による窒化膜表面の検査結果からは、窒化膜の下に位置する半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥の水準間の違いを精度よく評価することは困難である。
これに対し、アモルファスシリコン膜の成膜では、付着パーティクルの発生が少ない。そのため、SEM等による欠陥判別工程を行わずとも、表面欠陥検査装置によるアモルファスシリコン膜表面の検査結果に基づき、アモルファスシリコン膜の下に位置する半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥の水準間の違いを精度よく評価することができる。ただし、もちろん、アモルファスシリコン膜表面においてSEM等による欠陥判別工程を行い、付着パーティクルと判定された突起物を、その後の評価から除外することも可能である。
【0019】
先に記載したように、波長266nmにおける減衰係数が4以上の材質によって構成される被膜は、表面ヘイズが低いため好ましい。表面ヘイズの指標としては、平均ヘイズを挙げることができる。本発明及び本明細書において、「平均ヘイズ」とは、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7で測定される、DW1O(Dark-field Wide-1 Oblique) Haze Averageをいうものとする。上記評価方法において半導体ウェーハの表面に形成される被膜は、被膜表面で測定される平均ヘイズが0.5ppm以下であることができる。
図3に、アモルファスシリコン膜及びシリコン窒化膜の表面において測定された平均ヘイズを示す。図3には、アモルファスシリコン膜及びシリコン窒化膜の平均ヘイズの測定結果が示されている。詳しくは、図3には、膜厚120nmのアモルファスシリコン膜及び膜厚120nmのシリコン窒化膜のそれぞれについて、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7で測定された、DW1O Haze Averageの値が示されている。図3中、「SiN」はシリコン窒化膜の略称であり、「a-Si」及び「アモルファスSi膜」はアモルファスシリコン膜の略称である。アモルファスシリコン膜では平均ヘイズが0.5ppm以下であり、表面ヘイズが低いことが確認できる。
例えば、平均ヘイズが0.042の場合、SEMI規格(SEMI M50-1101)の95%Capture Rateによって設定される感度は、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7のDW1Oチャンネルの感度(受光部の最小検出サイズ)として19nmである。これに対し、平均ヘイズが2.067のシリコン窒化膜の場合、同様に設定されるKLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7のDW1Oチャンネルの感度(受光部の最小検出サイズ)は29nmである。このように、表面ヘイズが低い被膜は、表面欠陥検査装置における測定感度を高める観点から好ましい。
【0020】
上記被膜は、半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥を拡張させることができる。「拡張」させることによって、上記被膜表面に、半導体ウェーハ表面における突起状の欠陥のサイズより大きなサイズの突起物が形成される。これは、所謂「レンズ効果」による。「レンズ効果」とは、突起物を起点に、その突起物より数倍大きな径の成膜後突起物が、その直上の被膜表面に形成される現象である。
図1は、レンズ効果によるサイズ拡張の模式図である。図1に示す例では、直径Dの突起物の直上の被膜表面の成膜後突起物は、突起物の直径Dより数倍大きな直径Xを有する。また、レンズ効果によって形成される成膜後突起物は、直下の半導体ウェーハ表面上の突起状の欠陥のサイズ分だけ盛り上がった欠陥である。したがって、図1に示す例では、被膜表面における成膜後突起物の高さは、突起物の直径Dと同じ値になる。この点を利用した評価について、詳細は後述する。
【0021】
半導体ウェーハ表面に上記被膜を形成することによって、半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥の直上の被膜表面に、かかる欠陥より大きなサイズの突起物を形成することができる。したがって、例えば、半導体ウェーハ表面では表面欠陥検査装置の検出限界サイズを下回る微小なサイズの突起状の欠陥について、その直上の被膜表面に検出限界サイズ以上のサイズを有する、表面欠陥検査装置によって検出可能な突起物を形成することができる。
具体例として、図2に、アモルファスシリコン膜の成膜前後のLPD検出サイズの対比結果を示す。図2には、厚み20nm、40nm、70nm、140nmのアモルファスシリコン膜を成膜する前の半導体ウェーハ表面においてLPDが検出された座標点について、半導体ウェーハ表面におけるLPD検出サイズと、アモルファスシリコン膜を成膜した後にアモルファスシリコン膜の表面において検出されたLPD検出サイズとの対比結果が示されている。表面欠陥検査装置としては、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7を使用した。図2に示された結果から、被膜形成によって、半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥を拡張させることができることが確認できる。例えば、図2中、厚み140nmの被膜を形成した例では、LPD検出サイズは、被膜成膜前のLPD検出サイズの約3倍である。レンズ効果によれば、成膜した被膜の厚みがより厚いほど、半導体ウェーハ表面上の突起状の欠陥の直上の被膜表面で検出される突起物のサイズはより大きくなる。表面欠陥検査装置では、一般に、欠陥サイズが大きいほど欠陥をLPDとして検出することが容易になる。また、被膜の厚みは、評価対象となる突起状の欠陥のサイズより厚くすることが好ましい。以上の観点から、半導体ウェーハ表面に形成する被膜の厚みは、15nm以上であることが好ましい。例えば、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7では、検出不可サイズは15nm未満であるため、15nm以上の被膜を形成することが好ましい。上記被膜の厚みは、例えば、500nm以下、200nm以下又は140nm以下であることができる。
【0022】
<表面欠陥検査装置による表面検査>
表面欠陥検査装置としては、検査対象の表面に光を入射させ、この表面からの放射光(散乱光又は反射光)を検出することが可能な公知の表面欠陥検査装置を用いることができる。かかる表面欠陥検査装置は、一般に、光散乱式表面欠陥検査装置、面検機等とも呼ばれる。表面欠陥検査装置の具体例としては、レーザー表面欠陥検査装置を挙げることができる。レーザー表面欠陥検査装置は、通常、検査対象の表面をレーザー光によって走査し、放射光(散乱光又は反射光)によって、検査対象の表面の突起物を輝点(LPD)として検出する。また、LPDからの放射光を測定することにより、検査対象の表面における突起物の位置(具体的には座標点)及びLPDとして検出されるサイズ(LPD検出サイズ)を求めることができる。かかるLPD検出サイズは、通常、LPDからの放射光の強度を、シリカ粒子等の標準粒子の放射光強度と対比することにより、表面欠陥検査装置の解析部によって出力される。レーザー光としては、紫外光、可視光等を用いることができ、その波長は特に限定されるものではない。紫外光とは、400nm未満の波長域の光をいい、可視光とは、400~600nmの波長域の光をいうものとする。レーザー表面欠陥検査装置の解析部は、通常、検出された複数のLPDのそれぞれについて、検査対象の表面における二次元位置座標(X座標及びY座標)の情報を取得し、取得された二次元位置座標の情報から検査対象の表面におけるLPD面内分布状態を示すLPDマップを作成することができる。市販されているレーザー表面欠陥検査装置の具体例としては、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP1、SP2、SP3、SP5、SP7等を挙げることができる。ただし、これら装置は例示であって、その他の各種欠陥表面欠陥検査装置も使用可能である。
【0023】
<半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の評価>
上記評価方法では、上記被膜の表面を表面欠陥検査装置によって検査した結果に元ついて、被膜の下に位置する半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥を評価する。かかる評価の具体例としては、以下の評価(1)及び(2)を挙げることができる。例えば、評価(1)及び評価(2)の中で、評価(1)又は評価(2)のみを実施してもよく、評価(1)及び評価(2)の両方を実施してもよい。
【0024】
(1)上記検査によって検出されたLPDの個数を半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数とみなして、半導体ウェーハの表面に存在する突起状の欠陥の個数を評価する。
(2)上記検査によってLPDが検出された位置において上記被膜表面の突起物の高さを原子間力顕微鏡によって計測し、計測された高さの値を、半導体ウェーハ表面においてその突起物の直下に存在する突起状の欠陥のサイズとみなして、半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズに関する評価を行う。
【0025】
評価(1)によれば、被膜による拡張(レンズ効果)によって、半導体ウェーハ表面を表面欠陥検査装置で検査することでは検出できない微小な突起状の欠陥の個数も評価することができる。
【0026】
次に、評価(2)について、更に詳細に説明する。
【0027】
図1に示したように、レンズ効果によって被膜表面に形成される成膜後突起物は、直下の半導体ウェーハ表面上の突起状の欠陥のサイズ分だけ盛り上がった欠陥である。したがって、成膜後突起物の高さを、半導体ウェーハ表面において、その突起物の直下に存在する突起状の欠陥のサイズとみなすことができる。例えば、被膜表面で測定される突起物の高さを、半導体ウェーハ表面のパーティクルについてはパーティクルの直径とみなすことができ、半導体ウェーハ表面のPIDについてはPIDの高さとみなすことができる。被膜表面の突起物の高さの測定は、公知の測定装置によって行うことができ、例えば原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)によって行うことができる。
【0028】
また、評価(2)の具体的実施形態として、被膜表面の複数の突起物の高さの計測値に基づき作成された高さ分布情報に基づき、半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズ分布を評価することができる。上記評価方法によれば、被膜による拡張(レンズ効果)によって、半導体ウェーハ表面を表面欠陥検査装置で検査することでは検出できない微小な突起状の欠陥のサイズも、被膜表面の突起物の高さとして求めることができる。これにより、半導体ウェーハ表面を表面欠陥検査装置で検査する場合と比べて、半導体ウェーハ表面に存在する突起状の欠陥のサイズ分布を、より精度よく評価することが可能になる。
【0029】
評価(1)及び評価(2)の具体例については、後述の実施例を参照できる。
【0030】
[半導体ウェーハの製造方法]
本発明の一態様は、評価対象の製造条件下で半導体ウェーハを製造すること、上記製造された半導体ウェーハを上記半導体ウェーハの評価方法によって評価すること、上記評価の結果に基づき、上記評価対象の製造条件に変更を加えた製造条件をその後の製造条件として決定するか、又は、上記評価対象の製造条件を引き続き採用する製造条件として決定すること、及び、上記決定された製造条件下で半導体ウェーハを製造すること、を含む半導体ウェーハの製造方法に関する。
【0031】
上記製造方法の具体的形態としては、以下を例示できる。
製造条件Aの下で半導体ウェーハの製造を行う。
別途、製造条件Aとは異なる製造条件Bの下で半導体ウェーハの製造を行う。
評価対象の製造条件を、「製造条件B」とする。
製造条件Aの下で製造されたウェーハ群及び製造条件Bの下で製造されたウェーハ群から、それぞれ、評価用ウェーハを抜き取り、先に記載した評価方法によって評価する。
例えば、評価の結果、先に記載した評価方法によって求められた、半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥の総数が、製造条件Aの下で製造されたウェーハ群から抜き取った評価用ウェーハにおいて、製造条件Bの下で製造されたウェーハ群から抜き取った評価用ウェーハより少なかった場合、製造条件Aは、製造条件Bと比べて、半導体ウェーハ表面に突起状の欠陥が発生し難い製造条件と判定できる。この場合、製造条件Bを製造条件Aに近づけるように変更し、かかる変更を加えた製造条件を改良製造条件Bとして、その後の半導体ウェーハの製造を行うことができる。
また、例えば、評価の結果、先に記載した評価方法によって求められた、半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥のサイズ分布が、製造条件Bの下で製造されたウェーハ群から抜き取った評価用ウェーハにおいて、製造条件Aの下で製造されたウェーハ群から抜き取った評価用ウェーハと比べて、製品に望まれるサイズ分布からより離れていた場合、製造条件Bと比べて、製造条件Aが、より望ましい製造条件と判定できる。この場合、製造条件Bを製造条件Aに近づけるように変更し、かかる変更を加えた製造条件を改良製造条件Bとして、その後の半導体ウェーハの製造を行うことができる。
【0032】
また、上記製造方法の具体的形態としては、以下も例示できる。
実際に製品として出荷する半導体ウェーハを製造するための製造条件(以下、「実製造条件」と記載する。)を決定するために、まず、テスト製造条件を決定する。
このテスト製造条件下で半導体ウェーハを製造する。
テスト製造条件下で製造された半導体ウェーハを、先に記載した評価方法によって評価する。
評価の結果に基づき、テスト製造条件に変更を加えた製造条件を実製造条件として決定するか、又は、テスト製造条件そのものを、実製造条件として決定することができる。そして、決定された実製造条件下で半導体ウェーハを製造することができる。
例えば、評価の結果、テスト製造条件下で製造された半導体ウェーハにおいて、先に記載した評価方法によって求められた、半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥の総数が、予め設定した目標値を上回る場合には、突起状の欠陥の発生が抑制されるようにテスト製造条件に変更を加えた製造条件を、実製造条件として決定することができる。
また、例えば、評価の結果、テスト製造条件下で製造された半導体ウェーハにおいて、先に記載した評価方法によって求められた、半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥のサイズ分布が、望ましいサイズ分布から大きく離れていた場合にも、突起状の欠陥の発生が抑制されるようにテスト製造条件に変更を加えた製造条件を、実製造条件として決定することができる。
【0033】
半導体ウェーハの製造工程について、例えばポリッシュドウェーハの製造工程は、シリコン単結晶インゴット等の半導体インゴットからのウェーハの切断(スライシング)、面取り加工、粗研磨(例えばラッピング)、エッチング、鏡面研磨(仕上げ研磨)、上記加工工程間又は加工工程後に行われる洗浄工程を含む製造工程により製造することができる。突起状の欠陥の一形態であるPIDは、研磨処理において生じ得る欠陥である。したがって、上記変更が加えられる製造条件は、一形態では、半導体ウェーハ表面の研磨処理条件であることができる。具体的には、研磨スラリーの交換、研磨スラリーの組成変更、研磨パッドの交換、研磨パッドの種類の変更、研磨装置の運転条件の変更等の各種の研磨条件の変更を挙げることができる。
【0034】
また、半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥の一形態であるパーティクルは、ウェーハ表面に付着した異物であるため、洗浄によって除去することができる。したがって、上記変更が加えられる製造条件は、一形態では、洗浄条件であることができる。パーティクルを低減するためには、例えば、洗浄条件を強化すればよい。具体的には、パーティクルを低減するための手段としては、洗浄回数を増やすこと、洗浄時間を長くすること、より洗浄力の高い洗浄剤を使用すること等を挙げることができる。
【実施例0035】
以下に、実施例に基づき本発明を更に説明する。ただし、本発明は、実施例に示す実施形態に限定されるものではない。
【0036】
以下において使用した表面欠陥検査装置は、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7である。
【0037】
[実施例1]
(1)成膜前LPD測定
評価対象の半導体ウェーハとして、突起状の欠陥の発生個数に有意差がある異なるプロセス条件(プロセス条件A、プロセス条件B)の下で作製された直径300mmのエピタキシャルウェーハ(シリコン単結晶ウェーハ上にシリコンエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハ)を準備した。プロセス条件Aの下で作製されたウェーハをA1~A6と記載し、プロセス条件Bの下で作製されたウェーハをB1~B6と記載する。
上記評価対象ウェーハの表面について、表面欠陥検査装置による検査を行い、面内全域においてLPD検出サイズと座標データを取得した。
【0038】
図4に、評価対象ウェーハの表面において、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7のDW1Oチャンネルによって求められたLPD個数を示す。SEMI規格(SEMI M50-1101)の95%Capture Rateによって設定される感度(最小検出サイズ)は、15nmであった。
【0039】
(2)成膜処理
上記評価対象ウェーハについて、上記(1)においてLPD測定を行った表面に、LP-CVDによる装置を用いてアモルファスシリコン膜を成膜した。詳しくは、ウェーハ表面にアミノシランガスを使用してシード層を形成し、このシード層形成に使用したアミノシランと比べて分子量の小さなシランガスを堆積させることによって、厚み120nmのアモルファスシリコン膜を成膜した。
【0040】
(3)成膜後LPD測定
上記評価対象ウェーハのアモルファスシリコン膜の表面について、表面欠陥検査装置による検査を行い、面内全域においてLPD検出サイズと座標データを取得した。
【0041】
(4)SEM観察
上記評価対象ウェーハのアモルファスシリコン膜の表面をSEM観察した。詳しくは、上記(3)のLPD測定により取得した座標データを用いて突起物を観察して二次電子像を取得した。二次電子像の形状から、アモルファスシリコン膜の表面の成膜後突起物と付着パーティクルとを分類した。図5に、成膜後突起物及び付着パーティクルのSEM像の具体例を示す。アモルファスシリコン膜表面の付着パーティクルはごくわずかであり、付着パーティクルを除外せずとも、アモルファスシリコン膜表面の突起物のLPD測定結果から、半導体ウェーハ表面の突起状の欠陥を評価できることを確認した。
【0042】
図6に、評価対象ウェーハのアモルファスシリコン膜の表面において、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7のDW1Oチャンネルによって求められたLPD個数を示す。図6には、上記(4)で成膜後突起物と判定されたLPDの結果を示した。SEMI規格(SEMI M50-1101)の95%Capture Rateによって設定される感度(最小欠陥サイズ)は、19nmであった。
【0043】
図4に示されているように、成膜前には、プロセス条件Aで作製されたウェーハとプロセス条件Bで作製されたウェーハとの間にはLPD個数に有意差は見られなかった。これに対し、図6に示されているように、アモルファスシリコン膜の成膜後、プロセス条件Aで作製されたウェーハとプロセス条件Bで作製されたウェーハとの間にはLPD個数に有意差が見られた。
【0044】
[実施例2、比較例1]
評価対象の半導体ウェーハとして、突起状の欠陥の発生個数に有意差がある異なるプロセス条件(プロセス条件C、プロセス条件D)の下で作製された直径300mmのポリッシュドウェーハ(シリコン単結晶ウェーハ)を準備した。プロセス条件Cの下で作製されたウェーハをC1~C4と記載し、プロセス条件Dの下で作製されたウェーハをD1~D8と記載する。プロセス条件Cはフッ酸及びオゾン水を用いた枚葉洗浄を採用したプロセス条件であり、プロセス条件Dは、SC-1(Standard Cleaning-1)洗浄等を用いたバッチ式洗浄を採用したプロセス条件である。
【0045】
実施例2については、上記評価対象ウェーハの表面に、LP-CVDによる装置を用いてアモルファスシリコン膜を成膜した。詳しくは、ウェーハ表面にアミノシランガスを使用してシード層を形成し、このシード層形成に使用したアミノシランと比べて分子量の小さなシランガスを堆積させることによって、厚み120nmのアモルファスシリコン膜を成膜した。
比較例1については、上記評価対象ウェーハの表面に、LP-CVDによる装置において、ジクロロシランガス(HSiCl)とアンモニア(NH)とを用いて、厚み120nmのシリコン窒化膜を成膜した。
【0046】
図7に、比較例1及び実施例2について、上記の各被膜(シリコン窒化膜又はアモルファスシリコン膜)の表面において、KLA-TENCOR社製SurfscanシリーズSP7のDW1Oチャンネルによって求められたLPD個数を示す。
比較例1では、プロセス条件Cの下で作製されたウェーハとプロセス条件Dの下で作製されたウェーハとの間にはLPD個数に有意差は見られなかった。
これに対し、実施例2では、プロセス条件Cの下で作製されたウェーハとプロセス条件Dの下で作製されたウェーハとの間には、LPD個数に有意差が見られ、フッ酸及びオゾン水を用いた枚葉洗浄を採用したプロセス条件Cの下で作製されたウェーハC1~C4では、被膜の表面において求められるLPD個数として15個以下を実現できたことが確認された。
以上の結果は、アモルファスシリコン膜表面では、外乱となる付着パーティクル個数が少ないため、SEMによる欠陥判別工程を実施しなくても水準間差が評価できることを示している。
【0047】
上記の通り、本発明の一態様によれば、上記半導体ウェーハの評価方法によって評価した場合に、上記被膜の表面を表面欠陥検査装置によって検査して検出されるLPDの個数が15個/ウェーハ以下(即ち、ウェーハ1枚あたり15個以下)である半導体ウェーハを提供することができる。ウェーハ1枚あたりの上記LPDの個数は、例えば、0個以上15個以下又は1個以上15個以下であることができる。
【0048】
実施例2で成膜後LPD測定を行った後のウェーハの1つについて、アモルファスシリコン膜表面の突起物全点の高さをAFMによって計測したところ、図8に示す個数分布(高さ分布情報)が得られた。
先に記載したように、レンズ効果によって被膜表面に形成される成膜後突起物は、直下の半導体ウェーハ表面上の突起状の欠陥のサイズ分だけ盛り上がった欠陥である。そのため、成膜後突起物(被膜表面の突起物)の高さを、半導体ウェーハ表面において、その突起物の直下に存在する突起状の欠陥のサイズとみなすことができる。したがって、上記の個数分布(高さ分布情報)を、アモルファスシリコン膜の下に位置するウェーハの表面に存在する突起状の欠陥のサイズ分布とみなすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の一態様は、シリコンウェーハ等の各種半導体ウェーハの製造分野において有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8