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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036003
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】焼結蛍光体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20240308BHJP
   C01F 17/34 20200101ALI20240308BHJP
   C01B 21/072 20060101ALI20240308BHJP
   C04B 35/582 20060101ALI20240308BHJP
   C04B 35/117 20060101ALI20240308BHJP
   C04B 35/053 20060101ALI20240308BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20240308BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C09K11/08 G
C01F17/34
C01B21/072 R
C04B35/582
C04B35/117
C04B35/053
C09K11/02 Z
C09K11/08 B
C09K11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140688
(22)【出願日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 加奈
(72)【発明者】
【氏名】藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 和久
(72)【発明者】
【氏名】郷田 隼
【テーマコード(参考)】
4G076
4H001
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA18
4G076AB30
4G076BF04
4G076CA02
4G076DA11
4H001CA01
4H001CC02
4H001CF02
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA39
4H001YA58
(57)【要約】
【課題】発光強度の低下を抑制できる焼結蛍光体を提供する。また、そのような焼結蛍光体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態による焼結蛍光体は、(a)カーボンコート蛍光体粒子と熱伝導性粒子、(b)蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、(c)カーボンコート蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、からなる群から選択される少なくとも1種の組み合わせを含む粒子組成物を焼結してなる。
【選択図】図1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結蛍光体であって、
(a)カーボンコート蛍光体粒子と熱伝導性粒子、
(b)蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、
(c)カーボンコート蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、
からなる群から選択される少なくとも1種の組み合わせを含む粒子組成物を焼結してなる、
焼結蛍光体。
【請求項2】
前記カーボンコート蛍光体粒子が、蛍光体粒子に酸化グラフェンをコーティングさせてなる、請求項1に記載の焼結蛍光体。
【請求項3】
前記カーボンコート熱伝導性粒子が、熱伝導性粒子に炭素材料をコーティングさせてなる、請求項1に記載の焼結蛍光体。
【請求項4】
前記蛍光体粒子がガーネット系蛍光体である、請求項1から3までのいずれかに記載の焼結蛍光体。
【請求項5】
前記熱伝導性粒子が、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から3までのいずれかに記載の焼結蛍光体。
【請求項6】
焼結蛍光体の製造方法であって、
蛍光体粒子に酸化グラフェンをコーティングさせてカーボンコート蛍光体粒子を調製し、該カーボンコート蛍光体粒子と熱伝導性粒子を焼結させる、
焼結蛍光体の製造方法。
【請求項7】
焼結蛍光体の製造方法であって、
熱伝導性粒子に炭素材料をコーティングさせてカーボンコート熱伝導性粒子を調製し、該カーボンコート熱伝導性粒子と蛍光体粒子を焼結させる、
焼結蛍光体の製造方法。
【請求項8】
焼結蛍光体の製造方法であって、
蛍光体粒子に酸化グラフェンをコーティングさせてカーボンコート蛍光体粒子を調製し、熱伝導性粒子に炭素材料をコーティングさせてカーボンコート熱伝導性粒子を調製し、該カーボンコート蛍光体粒子と該カーボンコート熱伝導性粒子を焼結させる、
焼結蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結蛍光体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代光源として、レーザを用いた発光装置が注目されている。レーザを用いた発光装置は、LEDを用いた発光装置と比較して、より高い輝度、より高い指向性により、遠方照射や小型・軽量化されたシステムを実現可能である。
【0003】
レーザを用いた発光装置として、レーザを焼結蛍光体に照射する発光装置が知られている。このような発光装置としては、例えば、レーザをCe:YAG蛍光体に照射する発光装置が挙げられる。
【0004】
レーザを照射した焼結蛍光体は、レーザ照射部に集中する電力密度が非常に大きい。さらに、レーザはLEDに比べて照射パワーを上げることが可能である。このため、レーザを照射した焼結蛍光体においては、レーザの照射パワーを上げると発熱して温度が大幅に上昇してしまい、発光強度が低下するという、温度消光の問題などが生じる。
【0005】
上記のような発光強度の低下を抑制する手段として、Ce:YAG蛍光体に窒化アルミニウム粒子を配合して焼結した焼結蛍光体が提案されている(非特許文献1)。上記のような発光強度の低下を抑制するレベルを一層高めることができれば、レーザを焼結蛍光体に照射する発光装置の適用範囲を広げることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Thermal properties of AlN-Ce:YAG composite ceramic phosphor for laser lighting」、Optical Review(2022)29:276-285.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、発光強度の低下を抑制できる焼結蛍光体を提供することにある。また、そのような焼結蛍光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の実施形態による焼結蛍光体は、(a)カーボンコート蛍光体粒子と熱伝導性粒子、(b)蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、(c)カーボンコート蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、からなる群から選択される少なくとも1種の組み合わせを含む粒子組成物を焼結してなる。
[2]上記[1]に記載の焼結蛍光体において、上記カーボンコート蛍光体粒子が、蛍光体粒子に酸化グラフェンをコーティングさせてなるものであってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の焼結蛍光体において、上記カーボンコート熱伝導性粒子が、熱伝導性粒子に炭素材料をコーティングさせてなるものであってもよい。
[4]上記[1]から[3]までのいずれかに記載の焼結蛍光体において、上記蛍光体粒子がガーネット系蛍光体であってもよい。
[5]上記[1]から[4]までのいずれかに記載の焼結蛍光体において、上記熱伝導性粒子が、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
[6]本発明の一つの実施形態による焼結蛍光体の製造方法は、蛍光体粒子に酸化グラフェンをコーティングさせてカーボンコート蛍光体粒子を調製し、該カーボンコート蛍光体粒子と熱伝導性粒子を焼結させる。
[7]本発明の一つの実施形態による焼結蛍光体の製造方法は、熱伝導性粒子に炭素材料をコーティングさせてカーボンコート熱伝導性粒子を調製し、該カーボンコート熱伝導性粒子と蛍光体粒子を焼結させる。
[8]本発明の一つの実施形態による焼結蛍光体の製造方法は、蛍光体粒子に酸化グラフェンをコーティングさせてカーボンコート蛍光体粒子を調製し、熱伝導性粒子に炭素材料をコーティングさせてカーボンコート熱伝導性粒子を調製し、該カーボンコート蛍光体粒子と該カーボンコート熱伝導性粒子を焼結させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発光強度の低下を抑制できる焼結蛍光体を提供することができる。また、そのような焼結蛍光体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1~5、比較例1で得られた焼結蛍光体の蛍光特性評価(入射強度vs蛍光強度)の結果を示す図である。
図2】実施例1~5、比較例1で得られた焼結蛍光体の蛍光特性評価(照射時間vs蛍光強度)の結果を示す図である。
図3】実施例1~5、比較例1で得られた焼結蛍光体の蛍光特性評価(照射時間vs規格化蛍光強度)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪≪焼結蛍光体≫≫
本発明の実施形態による焼結蛍光体は、
(a)カーボンコート蛍光体粒子と熱伝導性粒子、
(b)蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、
(c)カーボンコート蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、
からなる群から選択される少なくとも1種の組み合わせを含む粒子組成物を焼結してなる。
【0012】
本発明においては、「蛍光体粒子」と「カーボンコート蛍光体粒子」は区別されるので、単に「蛍光体粒子」と称する場合は、カーボンコートされていない蛍光体粒子を意味する。同様に、本発明においては、「熱伝導性粒子」と「カーボンコート熱伝導性粒子」は区別されるので、単に「熱伝導性粒子」と称する場合は、カーボンコートされていない熱伝導性粒子を意味する。
【0013】
上記組み合わせ(a)において、カーボンコート蛍光体粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。上記組み合わせ(a)において、熱伝導性粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0014】
上記組み合わせ(b)において、蛍光体粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。上記組み合わせ(b)において、カーボンコート熱伝導性粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0015】
上記組み合わせ(c)において、カーボンコート蛍光体粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。上記組み合わせ(c)において、カーボンコート熱伝導性粒子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0016】
粒子組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような他の成分としては、例えば、バインダーとなる樹脂;イットリウム化合物、リチウム化合物、カルシウム化合物、ケイ素化合物、アルミニウム化合物などの無機材料;が挙げられる。なお、バインダーレスの形態も好ましい。
【0017】
粒子組成物中の、(a)カーボンコート蛍光体粒子と熱伝導性粒子、(b)蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、(c)カーボンコート蛍光体粒子とカーボンコート熱伝導性粒子、からなる群から選択される少なくとも1種の組み合わせの含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~99.99質量%であり、さらに好ましくは80質量%~99.9質量%であり、特に好ましくは90質量%~99.7質量%である。
【0018】
粒子組成物の焼結の方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法を採用し得る。このような方法としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、真空焼結法、還元雰囲気焼結法、SPS(放電プラズマ焼結法)が挙げられる。また、ポスト焼結として、HIP(熱間等方圧加圧)処理を行ってもよい。
【0019】
≪蛍光体粒子≫
蛍光体粒子としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な蛍光体粒子を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、蛍光体粒子としては、好ましくは、Ce、Mn、PrなどがドープされたA12(Aは、Sc、Y、Sm、Gd、Tb、Luからなる群から選択される少なくとも1種であり、BはAl、Ga、Inからなる群から選択される少なくとも1種である。)で表されるガーネット系蛍光体であり、より好ましくはYAG系蛍光体であり、特に好ましくはCe:YAGである。
【0020】
蛍光体粒子の大きさとしては、平均粒子径として、好ましくは0.1μm~500μmであり、より好ましくは0.5μm~300μmであり、さらに好ましくは0.7μm~100μmであり、特に好ましくは1μm~50μmである。また、凝集が少なく形状が球形に近く角張った部分がない粒子(例えば、球状粒子や丸み状粒子)、結晶性の高い粒子が好ましい。
【0021】
≪熱伝導性粒子≫
熱伝導性粒子としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な熱伝導性粒子を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、熱伝導性粒子としては、好ましくは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは窒化アルミニウムである。
【0022】
熱伝導性粒子の大きさとしては、平均粒子径として、好ましくは0.1μm~500μmであり、より好ましくは0.5μm~300μmであり、さらに好ましくは0.7μm~100μmであり、特に好ましくは1μm~50μmである。また、凝集が少なく形状が球形に近く角張った部分がない粒子(例えば、球状粒子や丸み状粒子)が好ましい。
【0023】
≪カーボンコート蛍光体粒子≫
カーボンコート蛍光体粒子は、表面が炭素材料で被覆された蛍光体粒子である。カーボンコート蛍光体粒子は、蛍光体粒子部分と炭素材料部分(カーボンコート部分)を含む。
【0024】
蛍光体粒子としては、≪蛍光体粒子≫の項で説明した内容を援用し得る。
【0025】
カーボンコート蛍光体粒子は、好ましくは、蛍光体粒子に酸化グラフェンをコーティングさせてなる。このようなカーボンコート蛍光体粒子は、好ましくは、グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料と蛍光体粒子との複合成形体である。
【0026】
カーボンコート蛍光体粒子は、代表的には、炭素材料が蛍光体粒子に複合化した緻密体であり、例えば、炭素材料と蛍光体粒子とを焼結することにより得られる成形体や、これに圧力を加えて変形させたもの等が挙げられる。成形体としては、例えば、ペレット状、フィルム状、シート状、繊維状、柱状、立方体状、球状等が挙げられる。
【0027】
炭素材料と蛍光体粒子とを焼結することにより得られる成形体は、代表的には、炭素材料が蛍光体粒子間の粒界に沿って三次元的に配列しており、等方的に強度に優れ得るとともに、塑性変形を好適に行い得る。したがって、これに圧力を加えて変形させる等により、特定の方向の強度に非常に優れる成形体を形成することができる。
【0028】
カーボンコート蛍光体粒子は、相対密度が、好ましくは90%以上であり、より好ましくは92%以上であり、さらに好ましくは94%以上であり、特に好ましくは96%以上であり、最も好ましくは99%以上である。カーボンコート蛍光体粒子の相対密度が上記範囲内にあれば、強度がより優れ得る。カーボンコート蛍光体粒子の相対密度の上限値は、好ましくは、100%である。カーボンコート蛍光体粒子の相対密度は、アルキメデス法により測定することができる。
【0029】
カーボンコート蛍光体粒子は、炭素の含有割合が、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは0.001体積%~10体積%であり、さらに好ましくは0.01体積%~5体積%であり、さらに好ましくは0.05体積%~3体積%であり、さらに好ましくは0.1体積%~2体積%であり、特に好ましくは0.2体積%~1体積%であり、最も好ましくは0.3体積%~0.8体積%である。カーボンコート蛍光体粒子の炭素の含有割合が上記範囲内にあれば、炭素材料の凝集がより防止されたものとなる。
【0030】
カーボンコート蛍光体粒子は、例えば、パルス通電加圧焼結(PCPS)後の、酸化グラフェン(GO)/蛍光体粒子複合成形体の場合、酸化グラフェンが蛍光体粒子間の粒界に分散する等して存在している。
【0031】
グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料は、代表的には、sp2結合で結合した炭素を有し、該炭素が薄片状に(平面的に)並んだものである層状構造を有する。具体的には、グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料は、sp2結合で結合した炭素原子が平面的に並んだ層(単層)のみからなる構造を有するものであってもよく、該層が2層以上積層した構造を有するものであってもよい。グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料は、例えば、1層のみからなる単層構造を有するか、または、2~100層積層した構造を有するものが好ましい。
【0032】
グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料は、酸素と結合した炭素を有するものであることが好ましい。グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料は、好ましくは酸化黒鉛であり、より好ましくは、グラフェンの炭素に酸素が結合した酸化グラフェンである。なお、一般的に、グラフェンとは、sp2結合で結合した炭素原子が平面的に並んだ1層からなるシートをいい、グラフェンシートが多数積層されたものはグラファイトといわれる。酸化グラフェンは、1層のみからなるシートのみではなく、2~100層積層した構造を有するものも含まれる。
【0033】
グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料は、例えば、複合化の原料である酸化黒鉛が複合化の際に加熱されて還元され、カーボンコート蛍光体粒子中で還元型酸化黒鉛となっていることが好ましい。
【0034】
グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料は、さらに、カルボキシル基、水酸基、硫黄含有基、脂環型エポキシ基等の官能基を有していてもよい。
【0035】
グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料は、1~50層積層した構造を有するものが好ましく、1~15層積層した構造を有するものがより好ましく、1~9層積層した構造を有するものがさらに好ましい。
【0036】
グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料は、グラファイトを公知の酸化剤で処理して得ることができ、例えば、改変されたハマーズ法により過マンガン酸カリウムで処理し、必要に応じて溶媒中で超音波処理や、遠心分離処理等の固液分離処理を行うことで好適に得ることができる。すなわち、酸化グラフェンが好ましい。
【0037】
酸化グラフェンは黒鉛を酸化し、剥離することで得られる。酸化グラフェンの製造方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な製造方法を採用し得る。このような製造方法としては、例えば、黒鉛を、硫酸中、酸化剤を用いることで酸化し、精製後に剥離することが挙げられる。
【0038】
酸化グラフェンは分散液として用いることができる。このような酸化グラフェン分散液の分散媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分散媒を採用し得る。このような分散媒としては、例えば、膜形成の観点から、水;メタノール、エタノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;N,N-ジメチルホルムアミド;N-メチルピロリドン;が挙げられ、これらの混合溶媒であってもよい。これら中でも、水、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンが好ましく、水が特に好ましい。
【0039】
酸化グラフェン分散液の濃度は、好ましくは0.0001質量%~10質量%である。酸化グラフェン分散液の濃度が上記範囲内にあれば、例えば、酸化グラフェンが良好に付着可能である。生産性と性能の観点からは、酸化グラフェン分散液の濃度は、0.0001質量%~5質量%が好ましく、0.001質量%~3質量%がより好ましく、0.01質量%~2質量%が特に好ましい。
【0040】
酸化グラフェン分散液は、分散性を向上するために、分散処理を行ったものが好ましい。分散処理としては、例えば、ホモジナイザー等のせん断処理や、超音波処理が挙げられる。
【0041】
酸化グラフェンの層数は10層以下であることが好ましい。層数は電子顕微鏡等で分析することができる。酸化グラフェンをより良好に付着させる観点等からは、酸化グラフェンの層数は、1層~10層が好ましく、1層~7層がより好ましく、1層~5層がさらに好ましく、1層~3層が特に好ましい。
【0042】
酸化グラフェン中の炭素酸素元素比(O/C)は、銅および負極材料双方との相性や分散性の観点等から、0.1~2の範囲が好ましく、0.2~1.5の範囲がより好ましく、0.3~1.2の範囲がさらに好ましい。これらO/Cを適宜調整することで、組み合わせる粒子との複合体(カーボンコート蛍光体)を調製することが可能である。特に、一般的に酸化グラフェンではないグラフェンはO/Cの値が0.1以下であり、疎水性が強く、密着性の観点からの効果が小さい。O/Cは、酸化グラフェン合成時の酸化剤量を増やしたり、酸化条件をより強くしたりすることで大きくすることができ、また、酸化グラフェンを還元することで小さくすることが可能である。
【0043】
カーボンコート蛍光体粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法によって製造し得る。
【0044】
カーボンコート蛍光体粒子は、代表的には、蛍光体粒子に酸化グラフェンの膜が形成されたものであって、好ましくは、蛍光体粒子と酸化グラフェン分散液を接触させることで形成される。酸化グラフェンは、その形状と、豊富な酸素官能基を活かして、蛍光体粒子上に自発的に形成される。
【0045】
蛍光体粒子と酸化グラフェン分散液を接触させる方法としては、例えば、蛍光体粒子を酸化グラフェン分散体に含侵させる方法、蛍光体粒子分散液に酸化グラフェンを追加する方法、蛍光体粒子にスプレーする方法が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、蛍光体粒子を酸化グラフェン分散体に含侵させる方法、蛍光体粒子分散液に酸化グラフェンを追加する方法である。
【0046】
蛍光体粒子と酸化グラフェン分散液を接触させる際の酸化グラフェン分散体の濃度としては、前述した酸化グラフェン分散体の濃度と同様である。酸化グラフェン分散体の濃度が低濃度であっても酸化グラフェンは自発的に蛍光体粒子に吸着するため、広い濃度で適用可能である。
【0047】
蛍光体粒子と酸化グラフェン分散液を接触させる際の接触時間としては、酸化グラフェンが自発的に吸着される時間が確保される範囲で、任意の適切な時間を採用し得る。このような接触時間としては、例えば、1秒~24時間程度である。製造プロセス上の観点から、接触時間は、1秒~1時間が好ましく、10秒~30分がより好ましく、1分~10分が最も好ましい。また、蛍光体粒子を静的に接触するよりも、蛍光体粒子を動かしながら(例えば、撹拌や超音波処理を行いながら)接触させることが好ましい。また、蛍光体粒子と酸化グラフェン分散液を接触させる際の温度としては、任意の適切な温度を採用し得る。このような温度としては、製造プロセス上の観点から、0℃~100℃が好ましく、15℃~50℃がより好ましい。
【0048】
蛍光体粒子と酸化グラフェン分散液を接触させた後に、溶媒洗浄によって余分な酸化グラフェンを除去することが好ましい。このような溶媒洗浄の方法としては、例えば、溶媒をスプレーして洗浄する方法、溶媒中で含侵洗浄する方法が挙げられる。このような溶媒洗浄で用いる溶媒は、酸化グラフェン分散液の分散媒と同様である。
【0049】
蛍光体粒子と酸化グラフェン分散液を接触させた後、溶媒洗浄によって余分な酸化グラフェンを除去する前に、乾燥を行ってもよいが、余分な酸化グラフェンを残存させない観点や、余分なプロセスを必要としない観点から、このような乾燥を行わないことが好ましい。しかしながら、溶媒洗浄の後に乾燥を行うことは好ましい。
【0050】
カーボンコート蛍光体粒子におけるカーボンコート部分としての酸化グラフェン膜は、10層以下であることが好ましい。層数は電子顕微鏡等で分析することができる。より効果的に相互作用させる観点からは、カーボンコート部分としての酸化グラフェン膜の層数は、1層~10層が好ましく、1層~7層がより好ましく、1層~5層がさらに好ましく、1層~3層が特に好ましい。
【0051】
カーボンコート蛍光体粒子におけるカーボンコート部分としての酸化グラフェン膜中の炭素酸素元素比(O/C)は、0.05~2の範囲が好ましい。O/Cは、用いる蛍光体粒子に合わせて適宜調整可能であり、特に、蛍光体粒子の極性により調整することが好ましい。O/Cは酸化グラフェン形成後に還元することで調整可能である。還元度合いが高まる(O/Cが小さくなる)ほど疎水性が高まる。還元方法としては、加熱還元や、還元剤を用いた還元方法などが挙げられるが、プロセスの簡便さから、加熱還元が好ましい。加熱雰囲気としては、例えば、大気下、真空化、不活性雰囲気下(窒素雰囲気など)が挙げられ、還元を良好に進行させる観点からは不活性雰囲気下が好ましい。還元温度としては100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。加熱温度は高いほど還元が進行するが、プロセスの観点からは、1000℃以下が好ましい。
【0052】
カーボンコート蛍光体粒子は、グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料と蛍光体粒子とを加熱、加圧等して複合化することで製造することができ、代表的には、グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料と蛍光体粒子とを焼結して製造することができ、例えば、パルス通電加圧焼結(PCPS)で焼結して製造することができる。
【0053】
上記焼結の温度は、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは350℃以上であり、さらに好ましくは500℃以上である。グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料の凝集を防止する観点からは、上記焼結の温度は、好ましくは2000℃以下であり、より好ましくは1500℃以下である。上記焼結の時間は、好ましくは1分~1時間であり、より好ましくは2分~30分であり、さらに好ましくは3分~20分である。上記焼結は空気中で行ってもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。上記焼結の圧力条件としては、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下のいずれかで行うことができる。
【0054】
カーボンコート蛍光体粒子を製造するためには、上記焼結の前に、グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料と蛍光体粒子とを混合し、グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料と蛍光体粒子との複合粉末を得ることが好ましい。このような混合は、例えば、蛍光体粒子が分散した水中に、グラフェン骨格を有する薄片状の炭素材料の水分散体を滴下し、得られた複合粉末をろ過し、乾燥することによって行うことができる。なお、蛍光体粒子が分散した水は、蛍光体粒子と水とを撹拌し、超音波処理を行うこと等によってより均一に混合して調製することが好ましい。
【0055】
カーボンコート蛍光体粒子を製造するためには、上記焼結の後に、得られた成形体に圧力を加えて変形させることが好ましい。上記圧力を加えて変形させる際の温度は、好ましくは200℃~2000℃であり、より好ましくは300℃~1000℃であり、さらに好ましくは400℃~700℃である。上記変形は、空気中で行ってもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0056】
カーボンコート蛍光体粒子は、例えば、特開2019-70186号公報に記載の方法によって製造することができる。
【0057】
≪カーボンコート熱伝導性粒子≫
カーボンコート熱伝導性粒子は、表面が炭素材料で被覆された熱伝導性粒子である。カーボンコート熱伝導性粒子は、好ましくは、熱伝導性粒子に炭素材料をコーティングさせてなる。カーボンコート熱伝導性粒子は、熱伝導性粒子部分と炭素材料部分(カーボンコート部分)を含む。
【0058】
熱伝導性粒子としては、≪熱伝導性粒子≫の項で説明した内容を援用し得る。
【0059】
カーボンコート熱伝導性粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法によって製造し得る。
【0060】
カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態Aは、溶媒(S)に可溶な可溶性炭素材料と熱伝導性粒子とを、該溶媒(S)中で混合する工程(混合工程(I))を含む製造方法によって得られるカーボンコート熱伝導性粒子である。カーボンコート熱伝導性粒子の別の一つの好ましい実施形態Bは、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と熱伝導性粒子を含む組成物を加熱して得られるカーボンコート熱伝導性粒子である。
【0061】
〔カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態A〕
カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態Aは、炭素材料と熱伝導性粒子とを、溶媒(S)中で混合する工程(混合工程(I))を含む製造方法によって得られるカーボンコート熱伝導性粒子である。この実施形態Aにおける炭素材料は、好ましくは、溶媒(S)に可溶な可溶性炭素材料である。
【0062】
混合の方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な混合方法を採用し得る。このような混合方法としては、例えば、炭素材料と熱伝導性粒子と溶媒(S)とを、任意の適切な方法(例えば、超音波処理など)で混合する方法が挙げられる。この場合、炭素材料や熱伝導性粒子は、任意の適切な処理(例えば、解砕、破砕、粉砕など)を行って混合してもよい。
【0063】
混合の温度としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な混合温度を採用し得る。このような混合温度としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0℃~100℃であり、より好ましくは10℃~90℃であり、さらに好ましくは20℃~80℃である。上記の温度範囲にあることで、炭素材料を十分に迅速に溶解して熱伝導性粒子と混合し得る。
【0064】
混合の際には、本発明の効果を損なわない範囲で、炭素材料と熱伝導性粒子と溶媒(S)以外の、任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。このような他の成分としては、例えば、触媒、母材、担体などが挙げられる。
【0065】
炭素材料と熱伝導性粒子との配合割合は、熱伝導性粒子100質量%に対して、炭素材料が、好ましくは0.01質量%~1000000質量%であり、より好ましくは0.1質量%~100000質量%であり、特に好ましくは1質量%~1000質量%である。炭素材料と熱伝導性粒子との配合割合が上記範囲内にあれば、カーボンコート熱伝導性粒子をより温和な条件でより簡便に製造し得る。これらの炭素材料と熱伝導性粒子との配合割合は、目的とするカーボンコート熱伝導性粒子の物性に応じて、任意に調整することができる。
【0066】
炭素材料は、好ましくは、溶媒(S)に可溶な可溶性炭素材料である。ここで、炭素材料が溶媒(S)に可溶である場合とは、従来の炭素材料に比べて溶媒への溶解性に優れ、良好な取り扱い性を実現し得る場合である。
【0067】
炭素材料が溶媒(S)に可溶であるという実施態様としては、好ましくは、下記の実施態様である。
(実施態様1)炭素材料の全てが溶媒(S)に溶解する実施態様。すなわち、炭素材料が、溶媒(S)に溶解する成分(成分A)のみからなる実施態様。
(実施態様2)炭素材料の一部が溶媒(S)に溶解する態様。すなわち、炭素材料が、溶媒(S)に溶解する成分(成分A)と溶媒(S)に溶解しない成分(成分B)からなる実施態様。
【0068】
本発明において「溶媒(S)に可溶」とは、任意の適切な溶媒(S)に溶解する成分がある態様を意味する。このような溶媒(S)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な溶媒を採用し得る。このような溶媒(S)としては、好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。すなわち、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、水(酸性、塩基性水を含む)からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様が好ましい。溶媒(S)は、1種の溶媒のみからなるものであってもよいし、2種以上の溶媒の混合溶媒であってもよい。
【0069】
炭素材料が溶媒(S)に可溶である一つの実施形態は、炭素材料が、溶媒(S)に可溶である炭素系化合物を含む実施形態である。
【0070】
溶媒(S)に可溶であるか否かの判定方法としては、例えば、炭素材料を溶媒(S)に対して0.001質量%となるように混合したのち、超音波処理を1時間行い、得られた液をPTFE製濾紙(孔径0.45μm)に通したとき、濾紙を通過した液に炭素系化合物が含まれるか否かで判定することができる。濾紙を通過した液に炭素系化合物が含まれる場合、炭素材料が溶媒に可溶である炭素系化合物を含むと判定される。上記PTFE製濾紙としては、例えば、ジーエルサイエンス株式会社製のGLクロマトディスク(型式13P)を用いることができる。
【0071】
炭素材料は、代表的には、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)を加熱して得られる。
【0072】
化合物(A)の加熱温度は、化合物(A)の縮合反応温度がT℃であるときに、好ましくは(T-150)℃以上であり、より好ましくは(T-150~T+50)℃であり、さらに好ましくは(T-130~T+45)℃であり、さらに好ましくは(T-100~T+40)℃であり、特に好ましくは(T-80~T+35)℃であり、最も好ましくは(T-50~T+30)℃である。
【0073】
化合物(A)の縮合反応温度は、TG-DTA分析によって決定できる。具体的には、下記の通りである。
(1)化合物(A)として1種の化合物を用いる場合には、化合物(A)のTG-DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(2)化合物(A)として2種以上の化合物の混合物を用いる場合には、該混合物のTG-DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)(2種以上の化合物の混合物)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(3)ただし、1種の化合物や2種以上の化合物の混合物としての化合物(A)に、例えば、溶媒や水分や水和水等の不純物が含まれている場合は、該不純物の脱離に伴うDTAピーク(不純物ピークと称することもある)が縮合反応温度よりも低温で観測されることがある。このような場合には、上記の不純物ピークは無視して、その化合物(A)の縮合反応温度を決定する。通常は、上記の不純物ピークは無視した上で、DTAの最も低温側のピークトップ温度を、その化合物(A)の縮合反応温度と決定する。
【0074】
化合物(A)の加熱温度は、具体的な加熱温度として、好ましくは200℃~500℃であり、より好ましくは220℃~400℃であり、さらに好ましくは230℃~350℃であり、最も好ましくは250℃~300℃である。化合物(A)の加熱温度を上記範囲に調整することにより、溶媒への可溶性により優れる可溶性炭素材料や、構造がより精密に制御された可溶性炭素材料をより温和な条件でより簡便に製造し得る。
【0075】
化合物(A)の加熱時間は、具体的な加熱時間として、好ましくは0.1時間~120時間であり、より好ましくは0.5時間~100時間であり、さらに好ましくは1時間~50時間であり、最も好ましくは2時間~24時間である。加熱時間を上記範囲に調整することにより、溶媒への可溶性により優れる可溶性炭素材料や、構造がより精密に制御された可溶性炭素材料をより温和な条件でより簡便に製造し得る。
【0076】
化合物(A)は、好ましくは、23℃環境下で固体であって融点を有する。融点を有することで、焼成の過程で融解し、分子間での反応が良好に進行する。仮に融点を有さない場合、焼成の過程で融解しないので、分子の位置が固定され、分子間での反応が促進されにくく、炭素材料化しにくい。このような化合物(A)を採用することにより、縮合反応を促進し、分解反応を抑制したり、得られる炭素材料の溶媒への溶解性がより優れる(例えば、溶媒に溶解する成分がより多くなったり、溶解できる溶媒の種類がより増えたりする)。
【0077】
化合物(A)は、縮合に寄与しない骨格が芳香族構造であることが好ましい。骨格が芳香族であることによって、得られる可溶性炭素材料の炭素成分がより安定になり得る。このような芳香族構造としては、例えば、ベンゼン、ナフタレンのような炭素原子からなる芳香族構造;ピリジン、ピリミジン、フラン、チオフェンのような炭素原子およびヘテロ原子(窒素や酸素など)からなるヘテロ芳香族構造;などが好ましく、これらの中でも、ベンゼン、ピリジンのような六員環構造をもつ芳香族構造およびヘテロ芳香族構造がより好ましい。
【0078】
化合物(A)の分子量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分子量を採用し得る。このような分子量としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは500以下であり、より好ましくは75~450であり、さらに好ましくは80~400であり、最も好ましくは100~350である。
【0079】
化合物(A)の縮合反応温度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な縮合反応温度を採用し得る。このような縮合反応温度としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは450℃以下であり、より好ましくは400℃以下であり、さらに好ましくは200℃~370℃であり、特に好ましくは250℃~350℃である。
【0080】
化合物(A)の代表的な実施形態は、その縮合反応によって、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離する化合物である。この実施形態においては、1つの化合物(A)が2種以上の基を有している場合であってもよいし、2つ以上の化合物(A)のそれぞれの有する基を組み合わせて2種以上の基となる場合であってもよい。このような化合物(A)が、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応を起こし、炭素材料となり得る。
【0081】
縮合反応としては、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離することによる縮合反応であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な縮合反応を採用し得る。このような縮合反応とすることにより、比較的低温で反応を行うことが可能となり得る。このような縮合反応としては、例えば、
(a)-H基と-OH基とからHOが形成されて脱離することによる縮合反応、
(b)-H基と-OR基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからROHが形成されて脱離することによる縮合反応、
(c)-H基と-X基(XはハロゲンまたはCN)とからHXが形成されて脱離することによる縮合反応、
(d)-H基と-NH基とからNHが形成されて脱離することによる縮合反応、
(e)-H基と-NHR基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからRNHが形成されて脱離することによる縮合反応、
(f)-H基と-NR基(R、Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからRNHが形成されて脱離することによる縮合反応、
(g)-H基と-SH基とからHSが形成されて脱離することによる縮合反応、
(h)-H基と-SR基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからRSHが形成されて脱離することによる縮合反応、
(i)-H基と-OOCR基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからRCOOHが形成されて脱離することによる縮合反応、
(j)-H基と-OSO(OH)基とからHSOが形成されて脱離することによる縮合反応、
(k)-H基と-OSOR基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからRSO(OH)が形成されて脱離することによる縮合反応、
(l)-H基と-OSO(OR)基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからROSOHが形成されて脱離することによる縮合反応、
(m)-H基と-OSO(OH)基とからHSOが形成されて脱離することによる縮合反応、
などが挙げられ、
(a)-H基と-OH基とからHOが形成されて脱離することによる縮合反応、
(b)-H基と-OR基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからROHが形成されて脱離することによる縮合反応、
(i)-H基と-OOCR基(Rは任意の適切な置換または無置換のアルキル基)とからRCOOHが形成されて脱離することによる縮合反応、
が好ましい。特に、脱離した中性成分が該脱離温度(焼成温度)で気体成分であると、可溶性炭素材料に取り込まれることなく、気相部にあるため、不純物となりにくい。
【0082】
縮合反応として、上記(a)の縮合反応、すなわち、-H基と-OH基とからHOが形成されて脱離することによる縮合反応を代表例として説明する。
【0083】
上記(a)の縮合反応に好適な化合物(A)の一つの実施形態(実施形態(X)と称することがある)は、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)または2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)であり、該骨格の構造形成に寄与していない置換基の数の半数が-OH基であり、もう半数が-H基である。
【0084】
実施形態(X)においては、
(i)化合物(A)が、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)である場合、
(ii)化合物(A)が、2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)である場合、
の2つの場合のいずれかを採り得る。
【0085】
実施形態(X)において、「骨格の構造形成に寄与していない置換基」とは、上記(i)の場合の「1個の炭素6員環構造からなる骨格」または上記(ii)の場合の「2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格」の該骨格の構造形成に寄与していない置換基を意味する。例えば、上記(i)の場合として、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)が後に示す化学式(a1-1)で表される場合、1個の炭素6員環構造からなる骨格の構造形成に寄与していない置換基は6個の-OH基と6個の-H基であり、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)が後に示す化学式(a1-2)で表される場合、1個の炭素6員環構造からなる骨格の構造形成に寄与していない置換基は3個の-OH基と3個の-H基である。また、例えば、上記(ii)の場合として、2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)が後に示す化学式(a2-1)で表される場合、2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格の構造形成に寄与していない置換基は6個の-OH基と6個の-H基である。
【0086】
実施形態(X)においては、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)の該骨格の構造形成に寄与していない置換基の数の半数が-OH基であり、もう半数が-H基であり、2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)の該骨格の構造形成に寄与していない置換基の数の半数が-OH基であり、もう半数が-H基である。このような置換基の構成を有することにより、化合物(A)は、加熱により、同一分子同士および/または異なる分子間で効果的に脱水反応が起き得る。
【0087】
実施形態(X)において採用し得る化合物(A)としては、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)または2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)であり、該骨格の構造形成に寄与していない置換基の数の半数が-OH基であり、もう半数が-H基である化合物であれば、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な化合物を採用し得る。このような化合物(A)としては、例えば、下記のような化合物が挙げられる。
【0088】
【化1】
【0089】
実施形態(X)において採用し得る化合物(A)の中でも、-H基と-OH基とからHOが形成されて脱離することによる縮合反応が起こりやすいと推察され、低温で反応が進行しやすいと推察される点で、フロログルシノール(化合物(a1-2))、ヘキサヒドロキシトリフェニレン(HHTP)(化合物(a2-1))が好ましい。
【0090】
上記(a)の縮合反応に好適な化合物(A)の別の一つの実施形態(実施形態(Y)と称することがある)は、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)および/または2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)から選ばれる2種以上であり、該化合物(a1)の骨格の構造形成に寄与していない置換基の数および該化合物(a2)の骨格の構造形成に寄与していない置換基の数の合計の半数が-OH基であり、もう半数が-H基である。
【0091】
実施形態(Y)においては、
(i)化合物(A)が、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)から選ばれる2種以上からなる場合、
(ii)化合物(A)が、2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)から選ばれる2種以上からなる場合、
(iii)化合物(A)が、1個の炭素6員環構造からなる骨格を有する化合物(a1)から選ばれる1種以上と2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格を有する化合物(a2)から選ばれる1種以上とからなる場合、
の3つの場合のいずれかを採り得る。
【0092】
実施形態(Y)において、「化合物(a1)の骨格の構造形成に寄与していない置換基の数および化合物(a2)の骨格の構造形成に寄与していない置換基の数の合計」とは、下記のような意味である。すなわち、上記(i)の場合、2種以上の化合物(a1)のそれぞれにおける「1個の炭素6員環構造からなる骨格」の該骨格の構造形成に寄与していない置換基の数を、全て合計した数を意味する。上記(ii)の場合、2種以上の化合物(a2)のそれぞれにおける「2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格」の該骨格の構造形成に寄与していない置換基の数を、全て合計した数を意味する。上記(iii)の場合、1種以上の化合物(a1)のそれぞれにおける「1個の炭素6員環構造からなる骨格」の該骨格の構造形成に寄与していない置換基の数と、1種以上の化合物(a2)のそれぞれにおける「2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格」の該骨格の構造形成に寄与していない置換基の数とを、全て合計した数を意味する。
【0093】
実施形態(Y)において、例えば、上記(i)の場合として、2種以上の化合物(a1)が下記の化学式(a1-5)および化学式(a1-6)で表される場合、化学式(a1-5)で表される化合物の1個の炭素6員環構造からなる骨格の構造形成に寄与していない置換基は2個の-OH基と4個の-H基であり、化学式(a1-6)で表される化合物の1個の炭素6員環構造からなる骨格の構造形成に寄与していない置換基は4個の-OH基と2個の-H基であり、それらの合計は、6個の-OH基と6個の-H基である。また、例えば、上記(iii)の場合として、1種以上の化合物(a1)が下記の化学式(a1-5)および化学式(a1-7)で表され、1種以上の化合物(a2)が下記の化学式(a2-3)で表される場合、化学式(a1-5)で表される化合物の1個の炭素6員環構造からなる骨格の構造形成に寄与していない置換基は2個の-OH基と4個の-H基であり、化学式(a1-7)で表される化合物の1個の炭素6員環構造からなる骨格の構造形成に寄与していない置換基は6個の-OH基であり、化学式(a2-3)で表される化合物の2個以上の炭素6員環構造が結合および/または縮環した骨格の構造形成に寄与していない置換基は2個の-OH基と6個の-H基である。
【0094】
【化2】
【0095】
【化3】
【0096】
このような化合物(A)を用いることにより、反応触媒を必要とすることなく、自身の脱水反応による反応が起こるため、化学反応の副生成物や反応触媒が炭素材料中に存在してしまって致命的な不純物となることを抑制でき、より高品質な炭素材料を得ることができる。また、このような化合物(A)を用いることにより、可燃性ガスを使用することなく、比較的温和な温度環境下において、炭素材料を得ることができる。また、このような化合物(A)は、触媒作用を必要としない高反応性を有し得る。
【0097】
上記(a)の縮合反応に好適な化合物(A)の好ましい実施形態として、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。
【0098】
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を採用し得る。
【0099】
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物において、該フェノール性ヒドロキシル基が結合する芳香環は炭化水素芳香環であることが好ましい。フェノール性ヒドロキシル基が結合する芳香環がヘテロ芳香環であっても本発明の効果を発揮し得るが、環構造がより安定な炭化水素芳香環であるほうが、得られる炭素材料がより安定となり得る。なお、ヘテロ芳香環とは、炭素によって環構造が構成されている炭化水素芳香環とは異なり、炭素と炭素以外の元素によって環構造が構成されている芳香環を意味する。
【0100】
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、フェノール性ヒドロキシル基以外の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な置換基を採用し得る。このような置換基としては、本発明の効果をより高める点では、ヒドロキシル基のみであることが好ましい。ヒドロキシル基以外の置換基が存在しても本発明の効果は発揮され得るが、ヒドロキシル基以外の置換基が存在しないほうが、副反応を防ぎやすく、より炭素材料化しやすい。なお、ここにいうフェノール性ヒドロキシル基以外の置換基としての「ヒドロキシル基」は、フェノール性ではないヒドロキシル基を意味する。なお、当然のことであるが、置換基とは、水素基(-H)に代わって置き換えられた基である。
【0101】
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を構成する元素としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な元素を採用し得る。このような元素としては、本発明の効果を高める点では、炭素、酸素、水素のみであることが好ましい。炭素、酸素、水素以外の元素が存在しても本発明の効果は発揮され得るが、炭素、酸素、水素以外の元素が存在しないほうが、副反応を防ぎやすく、より炭素材料化しやすい。
【0102】
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、本発明の効果をより発揮させ得るため、該化合物の縮合反応温度が200℃~450℃の範囲であることが好ましく、200~400℃の範囲であることがより好ましい。これにより、効果的に炭素材料化することができる。
【0103】
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合でも、分子間での縮合反応温度は上述の範囲内であることが好ましい。
【0104】
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、一般式(1)~(11)に示す化合物が挙げられる。
【0105】
【化4】
【0106】
一般式(1)~(11)のそれぞれにおいて、Xは水素原子または水酸基を表し、Xの中の3つ以上が水酸基(フェノール性ヒドロキシル基)である。
【0107】
ここで、フェノール性ヒドロキシル基とは、芳香環に結合した水酸基を意味する。すなわち、一般式(1)においては、芳香環に結合した6つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(2)においては、芳香環に結合した6つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(3)においては、芳香環に結合した10個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(4)においては、芳香環に結合した11個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(5)においては、芳香環に結合した9つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(6)においては、芳香環に結合した9つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(7)においては、芳香環に結合した10個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(8)においては、芳香環に結合した11個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(9)においては、芳香環に結合した9つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(10)においては、芳香環に結合した9つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(11)においては、芳香環に結合した12個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基である。
【0108】
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の中でも、-H基と-OH基とからHOが形成されて脱離することによる縮合反応が起こりやすいと推察され、反応が進行しやすいと推察される点で、好ましくは、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシトリフェニレンであり、より好ましくは、フロログルシノールである。
【0109】
カーボンコート熱伝導性粒子の製造方法の一つの実施形態Aにおいては、混合工程(I)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な工程を含んでいてもよい。例えば、混合工程(I)の後、
(1)溶媒(S)の少なくとも一部を除去する溶媒除去工程(IIa)、
(2)炭素材料の少なくとも一部を除去する炭素材料除去工程(IIb)、
(3)加熱工程(III)、
からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。これらの順序は、目的に応じて、適宜設定し得る。
【0110】
溶媒除去工程(IIa)においては、溶媒(S)の少なくとも一部を除去する。代表的には、溶媒除去工程(IIa)においては、溶媒(S)の実質的に全てを除去する。
【0111】
溶媒除去工程(IIa)において、溶媒(S)の少なくとも一部を除去する手段としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な溶媒除去手段を採用し得る。このような溶媒除去手段としては、例えば、蒸留、透析などが挙げられる。
【0112】
炭素材料除去工程(IIb)においては、炭素材料の少なくとも一部を除去する。代表的には、炭素材料除去工程(IIb)においては、炭素材料部分の中で、熱伝導性粒子部分の最表面と強固に相互作用して該熱伝導性粒子部分の表面に固着している炭素材料部分(この部分は炭素材料除去工程(IIb)によって除去されない)以外の、炭素材料除去工程(IIb)によって除去し得る炭素材料部分の少なくとも一部を除去する。代表的には、炭素材料除去工程(IIb)によって除去し得る炭素材料部分の実質的に全てを除去する。
【0113】
炭素材料除去工程(IIb)において、炭素材料の少なくとも一部を除去する手段としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な炭素材料除去手段を採用し得る。このような炭素材料除去手段としては、例えば、任意の適切な溶媒による洗浄などが挙げられる。洗浄は適切な溶媒で可溶部分を溶かし出した後、ろ過や遠心分離を行うことで達成できる。このような溶媒としては、回収した溶媒でもよいが、洗浄効果を上げる点で、フレッシュな溶媒が好ましい。また、洗浄は、1回でもよいし、2回以上の複数回でもよい。
【0114】
加熱工程(III)においては、代表的には、炭素材料部分が高炭素化される。
【0115】
加熱工程(III)における加熱温度としては、具体的な加熱温度として、好ましくは300℃~3000℃であり、より好ましくは400℃~2000℃であり、特に好ましくは500℃~1200℃である。加熱工程(III)における加熱温度を上記範囲に調整することにより、炭素材料部分を効果的に高炭素化させることができる。上記温度は熱伝導性粒子の耐熱温度以下であることが好ましい。
【0116】
加熱工程(III)における加熱時間は、具体的な加熱時間として、好ましくは0.1時間~120時間であり、より好ましくは0.5時間~100時間であり、さらに好ましくは1時間~50時間であり、最も好ましくは2時間~24時間である。加熱時間を上記範囲に調整することにより、炭素材料部分を効果的に高炭素化させることができる。
【0117】
カーボンコート熱伝導性粒子の製造方法の一つの実施形態Aにおいては、精製工程が含まれていてもよい。精製工程としては、例えば、精製対象物を、任意の適切な溶媒によって洗浄する工程などが挙げられる。このような溶媒としては、回収した溶媒でもよいが、洗浄効果を上げる点で、フレッシュな溶媒が好ましい。また、洗浄は、1回でもよいし、2回以上の複数回でもよい。なお、このような洗浄は、例えば、前述の各種工程の中で行われてもよい。
【0118】
カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態Aとしては、代表的には、有機無機複合体、コアシェル粒子、高炭素化コアシェル粒子などが挙げられる。もちろん、これら以外の実施形態のカーボンコート熱伝導性粒子も、本発明のカーボンコート熱伝導性粒子となり得る。
【0119】
実施形態Aにおける有機無機複合体は、代表的には、混合工程(I)の後に溶媒除去工程(IIa)を行って得られるカーボンコート熱伝導性粒子であって、熱伝導性粒子部分と炭素材料部分(カーボンコート部分)を含み、該炭素材料部分が、該熱伝導性粒子部分の最表面と強固に相互作用して該熱伝導性粒子部分の表面に固着している炭素材料部分のみの態様、または、該炭素材料部分および可溶性炭素材料除去工程(IIb)によって除去し得る炭素材料部分との両方を含む態様とを有するカーボンコート熱伝導性粒子である。
【0120】
実施形態Aにおけるコアシェル粒子は、代表的には、上記の有機無機複合体に対して、可溶性炭素材料除去工程(IIb)を行って得られる、熱伝導性粒子部分と炭素材料部分(実質的に、該熱伝導性粒子部分の最表面と強固に相互作用して該熱伝導性粒子部分の表面に固着している炭素材料部分のみ)とを有するカーボンコート熱伝導性粒子である。
【0121】
実施形態Aにおける高炭素化コアシェル粒子は、代表的には、上記のコアシェル粒子に対して、加熱工程(III)を行って得られる、カーボンコート熱伝導性粒子である。
【0122】
〔カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態B〕
カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態Bは、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と熱伝導性粒子を含む組成物を加熱して得られるカーボンコート熱伝導性粒子である。
【0123】
化合物(A)と熱伝導性粒子との配合割合は、熱伝導性粒子100質量%に対して、化合物(A)が、好ましくは0.01質量%~1000000質量%であり、より好ましくは0.1質量%~100000質量%であり、特に好ましくは1質量%~1000質量%である。化合物(A)と熱伝導性粒子との配合割合が上記範囲内にあれば、構造がより精密に制御されたカーボンコート熱伝導性粒子をより温和な条件でより簡便に製造し得る。熱伝導性粒子と化合物(A)の配合割合は、目的とするカーボンコート熱伝導性粒子の物性に応じて、任意に調整することができる。例えば、化合物(A)と熱伝導性粒子の配合割合を調整することにより、得られるカーボンコート熱伝導性粒子の物性、形態(例えば、溶媒への溶解性や、炭素成分または無機成分の形状(粒子状や非粒子状)、炭素成分または無機成分のサイズなど)を制御することができる。
【0124】
化合物(A)と熱伝導性粒子を含む組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分が含まれていてもよい。このような他の成分としては、例えば、溶媒、触媒、母材、担体などが挙げられる。
【0125】
化合物(A)と熱伝導性粒子を含む組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で調製すればよい。このような方法としては、例えば、化合物(A)と熱伝導性粒子とを、任意の適切な方法(例えば、破砕、粉砕など)で固体状態のまま混合する方法が挙げられる。また、化合物(A)と熱伝導性粒子と溶剤と、必要に応じて溶剤以外の他の成分とを、任意の適切な方法(例えば、超音波処理など)で混合し、任意の適切な方法(例えば、真空乾燥)によって溶剤を除去する方法などが挙げられる。また、必要に応じて、解砕を行ってもよい。
【0126】
化合物(A)と熱伝導性粒子を含む組成物の加熱温度は、好ましくは200℃~500℃であり、より好ましくは220℃~400℃であり、さらに好ましくは230℃~350℃であり、最も好ましくは250℃~300℃である。加熱温度を上記範囲に調整することにより、構造がより精密に制御されたカーボンコート熱伝導性粒子をより温和な条件でより簡便に製造し得る。
【0127】
化合物(A)と熱伝導性粒子を含む組成物の加熱時間は、好ましくは0.1時間~120時間であり、より好ましくは0.5時間~100時間であり、さらに好ましくは1時間~50時間であり、最も好ましくは2時間~24時間である。加熱時間を上記範囲に調整することにより、構造がより精密に制御されたカーボンコート熱伝導性粒子をより温和な条件でより簡便に製造し得る。
【0128】
化合物(A)の詳細については、〔カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態A〕における化合物(A)の説明を援用し得る。
【0129】
カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態Bとしては、代表的には、有機無機複合体、コアシェル粒子、高炭素化コアシェル粒子などが挙げられる。もちろん、これら以外の実施形態のカーボンコート熱伝導性粒子も、本発明のカーボンコート熱伝導性粒子となり得る。
【0130】
実施形態Bにおける有機無機複合体は、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と熱伝導性粒子を含む組成物を加熱して得られ、化合物(A)の加熱によって生成する炭素材料と熱伝導性粒子を含む。炭素材料の詳細については、〔カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態A〕における炭素材料の説明を援用し得る。
【0131】
実施形態Bにおけるコアシェル粒子は、加熱によって同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物(A)と熱伝導性粒子を含む組成物を加熱した後に、代表的には、化合物(A)の加熱によって生成する炭素材料の少なくとも一部を除去することによって得られ得る。化合物(A)の加熱によって生成する炭素材料の少なくとも一部を除去する方法としては、代表的には、〔カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態A〕における可溶性炭素材料除去工程(IIb)の方法を援用し得る。
【0132】
実施形態Bにおける高炭素化コアシェル粒子は、代表的には、コアシェル粒子に対して、さらに加熱を行うことによって得られ得る。このような加熱の方法としては、代表的には、〔カーボンコート熱伝導性粒子の一つの好ましい実施形態A〕における加熱工程(III)の方法を援用し得る。
【実施例0133】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。また、本明細書において、「質量」は「重量」と読み替えても良い。
【0134】
<焼結蛍光体の密度の測定>
焼結蛍光体の密度は、下記の装置、条件で測定した。
両端面を鏡面研磨したサンプルの乾燥質量および液中質量は、電子天秤(CPA225D、ザルトリウス社製)を用いて測定した。標準物質は、精製水を用い、測定温度は22℃とした。下記のアルキメデスの原理により算出した体積と乾燥質量から密度を算出した。
F=-ρVg
(F:浮力、ρ:標準物質の密度、V:液中サンプルの体積、g:重力加速度)
ρVg=mg
(m:サンプルの質量)
【0135】
<焼結蛍光体の熱伝導率の測定>
熱伝導率は下記の式で与えられるため、上記の密度に加えて、比熱と熱拡散率を測定した。
κ=d・C・α
(κ:熱伝導率、d:焼結蛍光体の密度、C:比熱、α:熱拡散率)
比熱は、示差走査熱量計(DSC-7型、パーキングエルマー製)を用いて、焼結蛍光体を乳鉢で粉砕したものをサンプルとして、測定温度25℃で、Arガス20mL/minフロー中で昇温速度10℃/minで測定した。熱拡散率は、熱定数測定装置(TC-3000型、真空理工製)を用いてレーザーフラッシュ法により求めた。測定温度25℃、大気中で両端面を鏡面研磨したサンプルの片面にレーザを照射し裏面の温度履歴曲線を解析した。最大温度上昇Tmの半分Tm/2に到達するのに要する時間t1/2を求め、下記の式により、サンプルの熱拡散率を算出した。
α=1.370・L/(π・t1/2
(α:熱拡散率、L:サンプルの厚さ)
【0136】
<焼結蛍光体のビッカース硬度の測定>
焼結蛍光体のビッカース硬度は、下記の装置、条件で測定した。
ビッカース硬度試験機(AVK-C1、アカシ社製)を用い、サンプルの表面にダイヤモンド製四角錐の圧子を用いて10kgfで10秒間の荷重をかけた。これにより生じた圧痕の表面積値を荷重値で割ることで求めた値をビッカース硬度とした。
【0137】
<焼結蛍光体の蛍光特性評価>
(入射強度vs蛍光強度)
積分球中に設置したサンプル上に波長445nmのLDを直径1mmに集光し、発光を分光器(QEPro,Ocean Optics,USA)で計測した。LDの入射パワーを1W~16Wで照射した時の各サンプルの蛍光強度(蛍光スペクトル480nm~780nmのピーク面積)を測定した。
(照射時間vs蛍光強度、規格化蛍光強度)
上記と同様の計測系において、LDの入射パワーを15Wに固定し、サンプルに連続的に照射し続け各サンプルの蛍光強度(蛍光スペクトル480nm~780nmのピーク面積)を測定した。蛍光強度の測定は、LD照射直後を0分とし、以降1分間隔で16分間行った。また、サンプルごとの蛍光強度の減衰を明確化するために、LD照射直後0分の強度で各時間の強度を割り規格化した(LD照射直後0分の強度を1として規格化した)。
【0138】
[製造例1]:酸化グラフェン分散液(1)の製造
反応容器にあらかじめ黒鉛(伊藤黒鉛株式会社製Z-25)15g、硫酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)640gを投入し、30℃に調整しながら過マンガン酸カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)45gを投入した。投入後、30分で35℃に昇温し、その後2時間反応させた。反応後、反応液に、水1070ml、30%過酸化水素水(富士フイルム和光純薬株式会社製)42mlを加え、反応を停止させた。得られた反応液について、静置沈降により、上澄みの除去とイオン交換水による再分散を繰り返し、精製した。精製後、ホモジナイザーにより剥離操作を行い、酸化グラフェン分散液(1)(2%水分散体)を調製した。得られた酸化グラフェンは、電子顕微鏡観察により単層であるとわかった。XPS分析より求められたO/Cは0.55であった。
【0139】
[製造例2]:酸化グラフェンコートCe:YAG(2)の製造
製造例1で得られた水系の酸化グラフェン分散液(1)1mLを30mLの純水に投入し、スターラーを用い攪拌した。一様になったところで、あらかじめ20mLの純水にCe:YAG(東京化学研究所製)を4g加え超音波処理をしておいた懸濁液に投入した。この状態で、1時間攪拌した。その後、攪拌を止め、粒子を沈降させ、上澄み液を捨て、純水を80mL加え、1分程度攪拌し、攪拌を止め、粒子を沈降させ、上澄み液を捨てた。この操作を3度行い、得られたスラリー状の粒子を蒸発皿に移した。一連の操作はすべて室温で行った。蒸発皿に移したスラリーは恒温電気炉(AVO-310NS-D、アズワン製)内で80℃において12時間乾燥した。これにより、酸化グラフェンコートCe:YAG(2)を得た。
【0140】
[製造例3]:カーボンコートAlN(3)の製造
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃):0.2gを200gのアセトンに溶解し、そこに窒化アルミニウム粒子(トクヤマ製):2gを加え、超音波処理によって十分に混合し、乾燥させ、窒化アルミニウム粒子-フロログルシノール混合体を得た。この混合体を、窒素雰囲気下でクーゲルロールにより300℃で2時間焼成した。これにより、有機無機複合体(3)を得た。
得られた有機無機複合体(3)をDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)中で超音波処理し、余分な炭素材料を遠心分離により除去精製し、窒化アルミニウム粒子の表面に炭素材料結合領域がコーティングされたカーボンコートAlN(3)を得た。
【0141】
[製造例4]:カーボンコートAlN(4)の製造
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合反応温度:330℃)を、窒素雰囲気下、300℃で2時間焼成し、可溶性炭素材料(SCM300)を調整した。
得られた可溶性炭素材料(SCM300)を10mgとり、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)30mlに溶解させた。ここへ、窒化アルミニウム粒子(トクヤマ製)を100mg加え、1分間超音波処理して混合し、窒化アルミニウム粒子の表面に可溶性炭素材料(SCM300)をコートした。
その後、ろ過およびDMFによる洗浄精製、乾燥を行うことで、カーボンコートAlN(4)を得た。
【0142】
[実施例1]:酸化グラフェンコートCe:YAG(2)+AlN
4gの製造例2で得られた酸化グラフェンコートCe:YAG(2)、4gの窒化アルミニウム(東洋アルミニウム製、TFZ-N01P、D50=1.2μm)を125mLのエタノールとともに容量250mLのIP2タイプ広口瓶に入れ、メディアとして198g分の直径5mmのアルミナボールも入れた。しっかり蓋を閉め、ボールミル回転架台に載せ、12時間処理した。処理後、ボールとスラリーを分離し、スラリーは蒸発皿に移し、恒温電気炉(AVO-310NS-D、アズワン製)内で80℃において24時間乾燥した。乾燥して得られた混合粉体を硬質アルミナ乳鉢に移し、バインダー0.48mLを加え、乳棒で20分間混合、造粒した。バインダーはオリコックスKC-1700P(共栄化学製)6gを94mLのn-ブタノールに溶解したものを用いた。造粒した粉体を目開き212μmの篩にかけ、恒温電気炉(AVO-310NS-D、アズワン製)内で80℃において24時間乾燥した。乾燥した粉体0.7gを金型に充填し、手動ニュートンプレス機(NT-50H、三庄インダストリー社製)を用いて10kNで加圧し、直径10mm、厚さ約4mmのペレット状に成形した。さらに、成形体の密度を上げるために、冷間等方圧加圧装置(DR.CIP、COBELCO製)を用いて、300MPaで10分間処理した。CIP装置より取り出した成形体から添加したバインダーを除去するため、精密小型電気炉(FT-001W、フルテック製)内で窒素雰囲気(150mL/min)、300℃において、3時間加熱した。脱脂した成形体をBN製坩堝に窒化アルミニウム粉体(東洋アルミニウム製、TFZ-N10P、粒子径:D50=10μm)とともに入れ、NEW KERAMAX FURNACE QR-1850(ニッカトー製)内で窒素雰囲気(200mL/min)、1750℃において、12時間焼結することにより、焼結蛍光体(1)を得た。
得られた焼結蛍光体(1)の密度は、3.76g/cc、熱伝導率は43.8W/mkであった。
また、焼結蛍光体(1)の蛍光特性評価の結果を、図1(入射強度vs蛍光強度)、図2(照射時間vs蛍光強度)、図3(照射時間vs規格化蛍光強度)に示す。
また、各種結果をまとめたものを表1に示す。
【0143】
[比較例1]:Ce:YAG(1)+AlN
製造例2で得られた酸化グラフェンコートCe:YAG(2)に代えて、コートしていないCe:YAG(東京化学研究所製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、焼結蛍光体(C1)を得た。
得られた焼結蛍光体(C1)の密度は、3.78g/cc、熱伝導率は39.7W/mk、ビッカース硬度は506.8HVであった。であった。
また、焼結蛍光体(1)の蛍光特性評価の結果を、図1(入射強度vs蛍光強度)、図2(照射時間vs蛍光強度)、図3(照射時間vs規格化蛍光強度)に示す。
また、各種結果をまとめたものを表1に示す。
【0144】
[実施例2]:Ce:YAG(1)+カーボンコートAlN(3)
コートしていない窒化アルミニウムに代えて、製造例3で得られたカーボンコートAlN(3)を用いた以外は、比較例1と同様に行い、焼結蛍光体(2)を得た。
得られた焼結蛍光体(2)の密度は、3.95g/cc、熱伝導率は41.7W/mk、ビッカース硬度は1131.8HVであった。
また、焼結蛍光体(1)の蛍光特性評価の結果を、図1(入射強度vs蛍光強度)、図2(照射時間vs蛍光強度)、図3(照射時間vs規格化蛍光強度)に示す。
また、各種結果をまとめたものを表1に示す。
【0145】
[実施例3]:Ce:YAG(1)+カーボンコートAlN(4)
コートしていない窒化アルミニウムに代えて、製造例4で得られたカーボンコートAlN(4)を用いた以外は、比較例1と同様に行い、焼結蛍光体(3)を得た。
得られた焼結蛍光体(3)の密度は、3.96g/cc、熱伝導率は42.1W/mk、ビッカース硬度は1075.8HVであった。
また、焼結蛍光体(1)の蛍光特性評価の結果を、図1(入射強度vs蛍光強度)、図2(照射時間vs蛍光強度)、図3(照射時間vs規格化蛍光強度)に示す。
また、各種結果をまとめたものを表1に示す。
【0146】
[実施例4]:酸化グラフェンコートCe:YAG(2)+カーボンコートAlN(3)
コートしていない窒化アルミニウムに代えて、製造例3で得られたカーボンコートAlN(3)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、焼結蛍光体(4)を得た。
得られた焼結蛍光体(4)の密度は、3.96g/cc、熱伝導率は41.9W/mk、ビッカース硬度は1127.6HVであった。
また、焼結蛍光体(1)の蛍光特性評価の結果を、図1(入射強度vs蛍光強度)、図2(照射時間vs蛍光強度)、図3(照射時間vs規格化蛍光強度)に示す。
また、各種結果をまとめたものを表1に示す。
【0147】
[実施例5]:酸化グラフェンコートCe:YAG(2)+カーボンコートAlN(4)
コートしていない窒化アルミニウムに代えて、製造例4で得られたカーボンコートAlN(4)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、焼結蛍光体(5)を得た。
得られた焼結蛍光体(5)の密度は、3.97g/cc、熱伝導率は41.6W/mk、ビッカース硬度は1095.4HVであった。
また、焼結蛍光体(1)の蛍光特性評価の結果を、図1(入射強度vs蛍光強度)、図2(照射時間vs蛍光強度)、図3(照射時間vs規格化蛍光強度)に示す。
また、各種結果をまとめたものを表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
実施例、比較例の結果から、本発明の効果により、焼結体の発光特性、密度、比熱、熱拡散率、熱伝導性、硬度が上昇することがわかる。そして、目的の物性に応じて、カーボンコートの有無を選択可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の実施形態による焼結蛍光体、本発明の実施形態による製造方法で得られる焼結蛍光体は、例えば、レーザを用いた発光装置に好適に利用可能である。
図1
図2
図3