(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036268
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】リガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/302 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195392
(22)【出願日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】10-2022-0111826
(32)【優先日】2022-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】310024033
【氏名又は名称】エスケーハイニックス株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK hynix Inc.
【住所又は居所原語表記】2091, Gyeongchung-daero,Bubal-eub,Icheon-si,Gyeonggi-do,Korea
(71)【出願人】
【識別番号】522476875
【氏名又は名称】エム ケミカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ チェ チョル
(72)【発明者】
【氏名】ノ ヒュン シク
(72)【発明者】
【氏名】イ ドン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】チュン ウン エ
(72)【発明者】
【氏名】キム ギョン-ムン
(72)【発明者】
【氏名】キム チョヨン
(72)【発明者】
【氏名】ピュン ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ビョン イル
(72)【発明者】
【氏名】ジン チャンヒョン
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004AA06
5F004BC06
5F004CA02
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA18
5F004DA20
5F004DA22
5F004DA23
5F004DA25
5F004DA29
5F004DB13
5F004EA28
5F004EA34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板の損傷なく薄膜層を原子単位でエッチングできる原子層エッチング方法を提供する。
【解決手段】原子層エッチング方法は、薄膜が形成された基板を反応チャンバに投入する基板投入ステップと、基板投入ステップにより基板が投入された反応チャンバに、ハロゲン化ガスを注入して薄膜の表面にハロゲン化薄膜を形成するハロゲン化薄膜形成ステップと、ハロゲン化薄膜形成ステップによりハロゲン化薄膜が形成された基板が位置する反応チャンバに、金属前駆体のないリガンドを注入してハロゲン化薄膜をエッチングするエッチングステップと、を含む。金属又は金属前駆体を含まないリガンド交換反応が行われるので、前駆物質の製造費用が節減され、エッチング後に金属原子の基板残留が抑制されて、基板の損傷なくフッ化薄膜を原子単位でエッチングできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜が形成された基板を反応チャンバに投入する基板投入ステップと、
前記基板投入ステップにより基板が投入された反応チャンバに、ハロゲン化ガスを注入して薄膜の表面にハロゲン化薄膜を形成するハロゲン化薄膜形成ステップと、
前記ハロゲン化薄膜形成ステップによりハロゲン化薄膜が形成された基板が介在した反応チャンバに、金属または金属前駆体を含まないリガンドを注入してハロゲン化薄膜をエッチングするエッチングステップと、を含む、リガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化ガスは、フッ化水素、フッ化キセノン、四フッ化硫黄、六フッ化硫黄、臭化水素、二原子臭素、塩化水素、および二塩素からなるグループより選択される少なくともいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【請求項3】
前記薄膜は、4族金属酸化物を単独で含むか、2種以上の4族金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【請求項4】
前記4族金属酸化物は、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ジルコニウムシリコン酸化物(ZrSiO4)、またはハフニウムジルコニウム酸化物(HfZrO4)であることを特徴とする、請求項3に記載のリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化薄膜は、4族金属ハロゲン化物を単独で含むか、2種以上の4族金属ハロゲン化物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【請求項6】
前記金属または金属前駆体を含まないリガンドは、2つのケチミン基(ketimine)を有するイミン化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【請求項7】
前記2つのケチミン基(ketimine)を有するイミン化合物は、1,3-Diketiminesであることを特徴とする、請求項6に記載のリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【請求項8】
前記エッチングステップを繰り返し行うことを特徴とする、請求項1に記載のリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【請求項9】
前記ハロゲン化薄膜形成ステップおよびエッチングステップを1つのサイクルとして、前記サイクルを複数回繰り返し行うことを特徴とする、請求項1に記載のリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【請求項10】
前記サイクルは、300~600回行われることを特徴とする、請求項9に記載のリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法に関し、より詳しくは、金属前駆体を含まないリガンドを用いてリガンド交換反応を行うことにより、前駆体物質の製造費用が減少し、エッチング後に金属原子の基板残留が抑制されて、基板の損傷なくフッ化薄膜を原子単位でエッチングできるリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスのエッチング技術分野において、原子層エッチング(ALE、Atomic Layer Etching)は、半導体デバイス製造のための非常に高い正確性を有する臨界エッチングを行うことができる。
【0003】
原子層エッチングは、半導体ウエハのような基板の原子層をエッチングするために、基板の単層がサイクルそれぞれの間に除去されるが、反応物質ガスが基板の表面を改質するためにプロセスチャンバ内に導入される。例えば、ハライド注入された(halide-infused)上段層を提供するために、ハライド種を含むガスが使用される。
【0004】
例えば、分子塩素種を含むガスがシリコン基板の表面層をシリコンからシリコンクロライドに変換させるために導入され、表面層の改質後、プロセスチャンバはパージされ、プラズマで改質された表面層が除去された後、副産物が排出される。
【0005】
また、基板の金属原子層エッチングの間、基板の金属オキシド表面を改質するために、金属前駆体を含む金属リガンドを導入することも可能である。
【0006】
しかし、このような金属原子層エッチングは速度および選択度が制限されたり、プラズマ改質は半導体素子の構造的損傷を誘発しうるという問題点が存在する。
【0007】
したがって、本発明では、基板に損傷を誘発しないリガンド交換反応を用いることで、薄膜層を原子単位でエッチングできる方法を提供しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国特許公開第10-2019-0089222号(2019.07.30.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、金属の除外されたリガンド交換反応を実施することにより、前駆物質の製造費用を節減することができ、エッチング後に金属原子の基板残留を抑制させることにより、基板の損傷なくフッ化薄膜を原子単位でエッチングできる、金属前駆体を含まないリガンドを用いた原子層エッチング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によるリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法は、薄膜が形成された基板を反応チャンバに投入する基板投入ステップと、前記基板投入ステップにより基板が投入された反応チャンバに、ハロゲン化ガスを注入して薄膜の表面にハロゲン化薄膜を形成するハロゲン化薄膜形成ステップと、前記ハロゲン化薄膜形成ステップによりハロゲン化薄膜が形成された基板が介在した反応チャンバに、 金属または金属前駆体のないリガンドを注入してハロゲン化薄膜をエッチングするエッチングステップと、を含む。
【0011】
前記ハロゲン化ガスは、フッ化水素、フッ化キセノン、四フッ化硫黄、六フッ化硫黄、臭化水素、二原子臭素、塩化水素、および二塩素からなるグループより選択される少なくともいずれか1つ以上を含むことができる。
【0012】
前記薄膜は、4族金属酸化物を単独で含むか、2種以上の4族金属酸化物を含むことができる。
【0013】
前記4族金属酸化物は、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ジルコニウムシリコン酸化物(ZrSiO4)、またはハフニウムジルコニウム酸化物(HfZrO4)であってもよい。
【0014】
前記ハロゲン化薄膜は、4族金属ハロゲン化物を単独で含むか、2種以上の4族金属ハロゲン化物を含むことができる。
【0015】
前記 金属または金属前駆体のないリガンドは、2つのケチミン基(ketimine)を有するイミン化合物であってもよい。
【0016】
前記2つのケチミン基(ketimine)を有するイミン化合物は、1,3-Diketiminesであってもよい。
【0017】
前記エッチングステップは繰り返し行われ、好ましくは、前記ハロゲン化薄膜形成ステップおよびエッチングステップを1つのサイクルとして、前記サイクルを複数回、さらに好ましくは300~600回繰り返し行われてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法は、金属または金属前駆体を含まないリガンドを用いてリガンド交換反応が行われるため、前駆物質の製造費用が節減され、エッチング後に金属原子の基板残留が抑制されて、基板の損傷なくフッ化薄膜を原子単位でエッチングできる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明によるリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明によるリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例1~2のフッ化物薄膜のエッチング厚さの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて詳細に説明するに先立ち、本明細書および特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0021】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0022】
本明細書全体において、特定物質の濃度を示すために使われる「%」は、別の言及がない場合、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、そして液体/液体は(体積/体積)%を意味する。
【0023】
各ステップにおいて、識別符号は説明の便宜のために使われるものであり、識別符号は各ステップの順序を説明するのではなく、各ステップは、文脈上明らかに特定の順序を記載しない以上、明記された順序と異なって実施されてもよい。すなわち、各ステップは明記された順序と同一に実施されてもよく、実質的に同時に実施されてもよいし、反対の順序で実施されてもよい。
【0024】
本発明は、リガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法に関し、原子層エッチングに用いられるリガンドとして金属あるいは金属前駆体を含まないリガンドを用いて、リガンド交換反応時、金属の除外されたリガンド交換反応が実施されるようにすることで、前駆物質の製造費用が節減され、エッチング後に金属原子の基板残留が抑制されて、基板の損傷なくハロゲン化薄膜を原子単位でエッチングできるリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法に関する。
【0025】
図1は、本発明の一実施例によるリガンド交換反応を用いた原子層のエッチング過程を簡略に示すフローチャートである。
【0026】
図1から確認されるように、本発明の一実施例によるリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法は、薄膜が形成された基板を反応チャンバに投入する基板投入ステップS101と、前記基板投入ステップS101により基板が投入された反応チャンバに、ハロゲン化ガスを注入して薄膜の表面にハロゲン化薄膜を形成するハロゲン化薄膜形成ステップS103と、前記ハロゲン化薄膜形成ステップS103によりハロゲン化薄膜が形成された基板が位置した反応チャンバ内に、金属または金属前駆体を含まないリガンドを注入してハロゲン化薄膜をエッチングするエッチングステップS105と、を含む。
【0027】
前記基板投入ステップS101は、薄膜が形成された基板を反応チャンバに投入するステップである。
【0028】
ここに用いられる基板は、製造工程中にエッチング工程が含まれている部材であればいかなる基板でも可能であり、例えば、DRAM、NANDフラッシュメモリ、CPU、モバイルCPUなどの半導体素子、LCDパネル、OLEDパネルなどのディスプレイパネル製造のための多様な基板が用いられる。
【0029】
前記基板に形成された薄膜は、金属酸化物薄膜であって、具体的には、元素周期律表における4族金属の酸化物として単独または2種以上の酸化物が混在している場合を含むことができる。例えば、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、ジルコニウムシリコン酸化物(ZrSiO4)、およびハフニウムジルコニウム酸化物(HfZrO4)のような金属酸化物薄膜であってもよいし、特にここに挙げられた種類に制限されるものではない。
【0030】
このステップにおいて、基板が投入される反応チャンバの内部は、流体の規則的な流れである層流(laminar flow)が維持される状態であることが好ましく、反応チャンバの温度は、後のステップで改質およびエッチング反応が行われる温度である240~260℃の温度範囲内で一定に維持された状態で基板の投入が行われることが好ましく、常温で基板を投入した後、温度を前記範囲に昇温させることも可能である。
【0031】
前記ハロゲン化薄膜形成ステップS103は、前記基板投入ステップS101により基板が投入された反応チャンバに、改質ガスであるハロゲン化ガスを注入して、薄膜の表面を後述するエッチングステップS105で除去可能な物質に改質するステップである。
【0032】
このステップにおいて、基板が投入された反応チャンバにハロゲン化ガスを注入すると、薄膜の表面がハロゲン化薄膜に改質されるが、このようなハロゲン化薄膜は、4族金属のハロゲン化物が単独で含まれるか、あるいは2種以上の4族金属の酸化物が共に含まれているものであってもよい。
【0033】
例えば、基板に形成された薄膜が酸化ハフニウムまたは酸化ジルコニウムであり、ハロゲン化ガスとしてフッ化ガスが使用される場合には、薄膜の表面がハフニウムフッ化物(HfF4)あるいはジルコニウムフッ化物(ZrF4)に改質される。
【0034】
この時、使用可能なハロゲン化ガスとしては、フッ化水素(HF)、フッ化キセノン(XeF2)、四フッ化硫黄(SF4)および六フッ化硫黄(SF6)、臭化水素、二原子臭素、塩化水素、および二塩素からなるグループより選択された1つ以上であることが好ましく、さらに好ましくは、フッ素原子が含まれたフッ化ガスが使用されることが好ましい。
【0035】
このようなハロゲン化ガスは、キャニスタを介して供給可能であり、ハロゲン化ガスの注入時、ヒーティングジャケットを用いてハロゲン化ガスを34~36℃の温度に維持させた状態で注入することが好ましい。ハロゲン化ガスのうち、フッ化水素の場合は、蒸気圧が非常に高いため、オリフィスガスケット(Orifice gasket)を適用することがさらに好ましく、オリフィスガスケットの直径は約0.1~1mmであってもよい。
【0036】
ハロゲン化薄膜形成ステップS103のハロゲン化薄膜形成反応は、原子層単位で起こる原子力自己制御反応(self-limiting reaction)により行われる。すなわち、ハロゲン化ガスと薄膜の表面との間でのみ反応が起こり、その他の追加的な反応は起こらない。したがって、薄膜表面の改質反応によりフッ化薄膜が形成されると、過剰な未反応反応気体、すなわちハロゲン化ガスが供給されてもそれ以上の反応が起こらないので、サイクル数を調節して薄膜の厚さを容易に制御することができ、均一度を向上させるというメリットが存在する。
【0037】
このようにハロゲン化薄膜形成反応が上述した方式で行われるため、ハロゲン化ガスの注入量ないし注入圧力は特に限定されない。例えば、工程圧力1.5Torrを基準とすれば、ハロゲン化ガスの注入量は1~3mTorrの圧力で注入できる。
【0038】
図2は、酸化ハフニウムと酸化ジルコニウム薄膜が適用された場合、本発明による原子層エッチング反応を概略的に示す図であり、各反応ごとのギブズ自由エネルギー(Gibbs’ free energy)を計算して併せて表示した。
【0039】
前記
図2にて、酸化物薄膜が形成された基板にハロゲン化ガス(具体的にはHF)を注入して薄膜表面にハフニウムハロゲン化物またはジルコニウムハロゲン化物が形成されるが、このような改質反応でのギブズ自由エネルギーは負数であり、改質反応は熱力学的に正反応であることが分かる。
【0040】
前記エッチングステップS105は、ハロゲン化薄膜形成ステップS103により形成されたハロゲン化薄膜を含む基板が位置する反応チャンバに、金属または金属前駆体のないリガンドを注入してハロゲン化薄膜をエッチングするステップである。このような過程によりハロゲン化薄膜と金属前駆体のないリガンドとの間にリガンド交換反応が行われて、ハロゲン化薄膜を構成する原子を含む気相あるいは揮発性副産物を形成することにより、ハロゲン化薄膜のエッチングが行われる。
【0041】
本発明では、エッチングステップS105において、リガンド交換反応のために、金属または金属前駆体を含まないリガンドを用いるが、これは、金属または金属前駆体を含むリガンドを用いる場合には、反応速度および選択度が制限され、反応完了後、リガンドに含まれていた金属原子がエッチングされた薄膜表面に残留して不純物として作用するため、薄膜の厚さ制御、薄膜表面の均一性制御および金属不純物の発生防止による品質向上のためのものである。
【0042】
本発明において、使用される金属前駆体のないリガンドとして2つのケチミン基(ketimine)を有するイミン化合物が使用できる。前記ケチミン基は、1級ケチミン基および2級ケチミン基のいずれか1つであってもよいし、前記イミン化合物に含まれる2つのケチミン基が互いに同一であってもよく、または互いに異なっていてもよい。前記2つのケチミン基を有するイミン化合物の一例として、1,3-Diketiminesが使用できる。
【0043】
前記2つのケチミン基を有するイミン化合物は、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0044】
[化1]
R1-C-R2
前記化学式1中、R1とR2は、互いに独立して、-C(=NR)R*である。ここで、RおよびR’は、互いに独立して、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換のアリサイクリック基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のベンジル基であってもよい。
【0045】
また、置換される場合には、ヒドロキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、ハロホルミル基、カルボキシル基、カーボネート基、アルコキシ基、エーテル基、アセタール基、アミン基、イミド基、アゾ基、ニトリル基、ニトロ基、スルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、およびハロ基の少なくともいずれか1つ以上の官能基で置換されていてもよいし、置換される官能基の種類がこの範囲に制限されるものではない。
【0046】
好ましくは、金属前駆体のないリガンドとして2つのケチミン基(ketimine)を有するイミン化合物が使用可能であり、ハロゲン化薄膜形成ステップS103で改質ガスとしてフッ化ガスを用いる場合には、エッチングステップS105でのリガンド交換反応により、ハフニウムフッ化物薄膜が{Hf(NacNac)}とフッ化水素に変換されるか、ジルコニウムフッ化物薄膜が{Zr(NacNac)}とフッ化水素に変換されてエッチングが行われる。このようなリガンド交換反応は、下記の反応式1のように行われる。
【反応式1】
【0047】
MF4+H(NacNac)→M(NacNac)+HF4↑
(前記反応式1中、Mは、ハフニウムまたはジルコニウムである。)
前記金属前駆体のないリガンドは、キャニスタを介して反応チャンバに注入される時、ヒーティングジャケットにより34~36℃の温度に維持された状態で注入されることが好ましい。特に、金属または金属前駆体のないリガンドとして1,3-Diketiminesを用いる場合、高い蒸気圧によって約0.1~5mmの直径を有するオリフィスガスケット(Orifice gasket)を適用して反応チャンバに注入することが好ましい。
【0048】
図2から確認されるように、薄膜表面にハフニウムフッ化物またはジルコニウムフッ化物が形成された基板に、金属または金属前駆体のないリガンドを注入してリガンド交換反応を行う場合、前記反応式1の反応が行われ、この時、ギブズ自由エネルギー(Gibbs’ free energy)が負数を示すので、このようなエッチング反応は熱力学的に自発的な正反応であることが分かる。
【0049】
上述したエッチングステップにより単一層、例えば、原子層単位のエッチングが行われるが、薄膜を所望の厚さにエッチングするために、前記エッチングステップS105を1つのサイクルとして複数回繰り返すか、ハロゲン化薄膜形成ステップS103とエッチングステップS105とを1つのサイクル(cycle)としてこのサイクルを複数回繰り返すことにより、所望の厚さのエッチングを行うことができる。
【0050】
一般的に、原子層蒸着や原子層エッチング工程において、インキュベーションタイム(Incubation time)によって所定回数のサイクルが進行する間には蒸着あるいはエッチング効果が大きく向上しない。
【0051】
本発明の場合は、このようなインキュベーションタイムが約300回で、サイクルが300回を超える場合にエッチング効果が急激に向上するため、前記サイクルは、300回以上、好ましくは300~600回、さらに好ましくは400~500回繰り返されることが好ましい。
【0052】
前記サイクルが進行する間に未反応の過剰な反応ガスや、反応完了後に生成された気相あるいは揮発性副産物を除去するために、パージングステップが行われる。パージングのための一例として、不活性ガス、例えば、N2、Ar、Heなどのガスを反応チャンバ内に注入して行われる。パージングのための他の例として、反応チャンバ内を大気圧より低い真空状態に維持することにより、反応チャンバ内の気体成分を除去することができる。さらに他の例としては、基板を他の反応チャンバに移すことにより行われる。
【0053】
以下、本発明によるリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法およびそのエッチング方法でエッチングされた薄膜の物性を実施例を挙げて説明する。
【0054】
[製造例]
<実施例1>
流体の規則的な流れの条件(laminar flow)で250℃の温度に加熱されたチャンバに、酸化ハフニウム薄膜が形成されたシリコン基板を投入し、1.5Torrを基準として2mTorrの量で35℃の温度を示すフッ化水素(HF)を注入して、酸化ハフニウム薄膜の上部面にハフニウムフッ化物薄膜を形成した。以後、反応チャンバ内に35℃の1,3-Diketiminesを注入してハフニウムフッ化物薄膜を{Hf(NacNac)}とフッ化水素に変換する過程を500回繰り返してフッ化物薄膜をエッチングした。
【0055】
<実施例2>
前記実施例1と同様に行いかつ、酸化ハフニウム薄膜の代わりに酸化ジルコニウム薄膜を用いてフッ化物薄膜をエッチングした。
【0056】
[実験例]
前記実施例1~2によりエッチングされたフッ化物薄膜のエッチング厚さをサイクル回数ごとに測定して、
図3に示した。
【0057】
前記
図3に示されるように、エッチングサイクルが300回繰り返されるまではエッチングの厚さが大きく増加せず、エッチングサイクルが400回繰り返された後からエッチングの厚さが急激に増加することが分かる。したがって、エッチングサイクルは300回以上、さらに好ましくは400~500回行われることが好ましいことを確認することができた。
【0058】
すなわち、本発明によるリガンド交換反応を用いた原子層エッチング方法は、リガンド交換反応を用いることで、基板の損傷なくフッ化薄膜を原子単位でエッチングできる。
【0059】
本発明は上述した特定の実施例および説明に限定されず、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも多様な変形実施が可能であり、そのような変形は本発明の保護範囲内にある。