(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036527
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】接着剤組成物用ラテックス及び接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 111/02 20060101AFI20240308BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C09J111/02
C09J133/04
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016142
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2020515488の分割
【原出願日】2019-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2018081945
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江夏 寛人
(72)【発明者】
【氏名】中川 康宏
(57)【要約】
【課題】短時間で強い接着力が得られる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(1)エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)と界面活性剤(a2)と水性媒体とを含む接着剤組成物用ラテックス(A)であって、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)がカルボキシ基を有し、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)の平均粒子径が0.30~5.00μmである接着剤組成物用ラテックス、(2)エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)と界面活性剤(a2)と水性媒体とを含む接着剤組成物用ラテックス(A)であって、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)がカルボキシ基及び架橋構造を有する接着剤組成物用ラテックス、及び(3)前記接着剤組成物用ラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを含む接着剤組成物の提供。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)と界面活性剤(a2)と水性媒体とを含む接着剤組成物用ラテックス(A)であって、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)がカルボキシ基を有し、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)の平均粒子径が0.30~5.00μmである接着剤組成物用ラテックス。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)の平均粒子径が0.50~3.00μmである請求項1に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位とカルボキシ基に対して反応性がある官能基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位とを有する請求項1または2に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、分子内にエチレン性不飽和結合を複数有する架橋性のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が架橋構造を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項6】
エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)と界面活性剤(a2)と水性媒体とを含む接着剤組成物用ラテックス(A)であって、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)がカルボキシ基及び架橋構造を有する接着剤組成物用ラテックス。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位、エチレン性不飽和結合を有するシランカップリング剤由来の構造単位及びエチレン性不飽和結合を2個以上含む単量体由来の構造単位のうち少なくともいずれかを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項8】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項9】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、分子内に1個以上の水酸基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項10】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、(メタ)アクリル酸及びイタコン酸の少なくとも1種を構成単量体単位として含む請求項1~9のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項11】
前記界面活性剤(a2)が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは平均炭素原子数5~20の飽和または不飽和の脂肪族骨格、平均炭素原子数5~20の飽和または不飽和の脂環骨格、及び平均環構造数1~10の芳香環骨格からなる群から選択される少なくとも1種を含む炭化水素骨格を表し、Mがナトリウムまたはアンモニウムを表し、n(平均値)が2~60である。)で示される界面活性剤を含む請求項1~10のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項12】
中和度が0.3~1.3である請求項1~11のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを含む接着剤組成物。
【請求項14】
前記クロロプレン系重合体ラテックス(B)がカルボキシ基を有するアニオン性界面活性剤を含む請求項13に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
前記接着剤組成物用ラテックス(A)と前記クロロプレン系重合体ラテックス(B)の混合比が、固形分の質量比で10:90~90:10である請求項13または14に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
前記接着剤組成物用ラテックス(A)と前記クロロプレン系重合体ラテックス(B)との混合比が、固形分の質量比で25:75~70:30である請求項13~15のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
さらに、pH調整剤を含む請求項13~16のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項18】
多孔質部材同士、または多孔質部材とその他の部材が請求項13~17のいずれか1項に記載の接着剤組成物により接着された物品。
【請求項19】
吸水性部材同士、または吸水性部材とその他の部材が請求項13~17のいずれか1項に記載の接着剤組成物により接着された物品。
【請求項20】
請求項18に記載の物品をクッション材とする家具または自動車内装部材。
【請求項21】
請求項19に記載の物品を構造に含む建築材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物用ラテックス及び接着剤組成物に関する。特に、本発明はエチレン性不飽和単量体の重合体を含む接着剤組成物用ラテックス、及び当該接着剤組成物用ラテックスとクロロプレン系重合体ラテックスとを含む接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤用重合体として、酢酸ビニル系重合体、クロロプレン系重合体、アクリル酸エステル系重合体、天然ゴム、ウレタン系重合体などが使用されている。中でもクロロプレン系重合体は、幅広い被着体に対して、低圧着で高度の接着力が得られるため、溶剤系コンタクト接着剤やグラフト接着剤などの接着剤用途で好適に使用されてきた。近年、揮発性有機化合物(VOC)規制や溶剤規制への要求に応えて、クロロプレン系重合体ラテックスを使用したクロロプレンゴム系水性接着剤の開発が盛んである。
【0003】
クロロプレン系重合体ラテックスは、乾燥時に結晶化するため接着力が発現するまでの時間が短い、すなわちコンタクト性があるという利点がある。一方で、クロロプレン系重合体ラテックス単体では初期接着力が一液系の水性接着剤組成物として使用するには不十分である。そこで、初期接着力などの特性を補う目的で、他種のポリマーとブレンドすることが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリクロロプレンラテックスにアクリル樹脂系重合体ラテックスやウレタン樹脂系重合体ラテックスをブレンドする方法が開示されている。
また、特許文献2にはポリクロロプレンラテックスに添加剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩とpH調整剤を含有する技術が開示されている。
さらに、特許文献3にはクロロプレン系重合体ラテックスにアクリル樹脂系ラテックス及び界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩を含有させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-195406号公報
【特許文献2】特開2007-332207号公報
【特許文献3】国際公開第2011/065524号(欧州特許第2508560号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各ラテックスは、安定なpH領域がそれぞれ異なるため、特許文献1のようにラテックスをブレンドしただけでは初期接着力は不十分であった。
また、特許文献2及び特許文献3のように界面活性剤でラテックスの安定性を確保しようとすると、界面活性剤の使用量が多くなり、乾燥時におけるクロロプレン系重合体のゲル化が進行し難く十分な初期接着力が確保できないという問題がある。
以上に鑑みて本発明は、クロロプレン系重合体ラテックスと混合した場合に、短時間で強い接着力が得られる接着剤組成物用ラテックスを提供することを課題とする。
また、本発明は、短時間で強い接着力が得られる接着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、以下の[1]~[21]からなる。
[1] エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)と界面活性剤(a2)と水性媒体とを含む接着剤組成物用ラテックス(A)であって、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)がカルボキシ基を有し、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)の平均粒子径が0.30~5.00μmである接着剤組成物用ラテックス。
[2] 前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)の平均粒子径が0.50~3.00μmである前項1に記載の接着剤組成物用ラテックス。
[3] 前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位とカルボキシ基に対して反応性がある官能基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位とを有する前項1または2に記載の接着剤組成物用ラテックス。
[4] 前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、分子内にエチレン性不飽和結合を複数有する架橋性のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有する前項1~3のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【0008】
[5] 前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が架橋構造を有する前項1~4のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
[6] エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)と界面活性剤(a2)と水性媒体とを含む接着剤組成物用ラテックス(A)であって、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)がカルボキシ基及び架橋構造を有する接着剤組成物用ラテックス。
[7] 前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位、エチレン性不飽和結合を有するシランカップリング剤由来の構造単位及びエチレン性不飽和結合を2個以上含む単量体由来の構造単位のうち少なくともいずれかを含む前項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
[8] 前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を含む前項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
【0009】
[9] 前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、分子内に1個以上の水酸基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を含む前項1~8のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
[10] 前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、(メタ)アクリル酸及びイタコン酸の少なくとも1種を構成単量体単位として含む前項1~9のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
[11] 前記界面活性剤(a2)が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは平均炭素原子数5~20の飽和または不飽和の脂肪族骨格、平均炭素原子数5~20の飽和または不飽和の脂環骨格、及び平均環構造数1~10の芳香環骨格からなる群から選択される少なくとも1種を含む炭化水素骨格を表し、Mがナトリウムまたはアンモニウムを表し、n(平均値)が2~60である。)で示される界面活性剤を含む前項1~10のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
[12] 中和度が0.3~1.3である前項1~11のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
[13] 前項1~12のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを含む接着剤組成物。
【0010】
[14] 前記クロロプレン系重合体ラテックス(B)がカルボキシ基を有するアニオン性界面活性剤を含む前項13に記載の接着剤組成物。
[15] 前記接着剤組成物用ラテックス(A)と前記クロロプレン系重合体ラテックス(B)の混合比が、固形分の質量比で10:90~90:10である前項13または14に記載の接着剤組成物。
[16] 前記接着剤組成物用ラテックス(A)と前記クロロプレン系重合体ラテックス(B)との混合比が、固形分の質量比で25:75~70:30である前項13~15のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
[17] さらに、pH調整剤を含む前項13~16のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
[18] 多孔質部材同士、または多孔質部材とその他の部材が前項13~17のいずれか1項に記載の接着剤組成物により接着された物品。
[19] 吸水性部材同士、または吸水性部材とその他の部材が前項13~17のいずれか1項に記載の接着剤組成物により接着された物品。
[20] 前項18に記載の物品をクッション材とする家具または自動車内装部材。
[21] 前項19に記載の物品を構造に含む建築材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クロロプレン系重合体ラテックスと混合した場合に、短時間で強い接着力が得られる接着剤組成物用ラテックスを提供することができる。
また、本発明によれば、短時間で強い接着力が得られる接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において接着剤組成物はクロロプレンゴム系接着剤を意味する。
本明細書における「~」は、「~」という記載の前の値以上、「~」という記載の後の値以下を意味する。
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
本明細書において「固形分」とは、溶媒以外の全成分をいう。
【0013】
本発明における接着剤組成物は、接着剤組成物用ラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)と水性媒体とを含む。本発明の接着剤組成物の初期接着力及びコンタクト性は、ラテックス(A)によるゲル化促進とクロロプレン系重合体の結晶化により生じる性能であり、一般的なアクリル系の感圧性接着剤とは接着の機構が異なるものである。以下、接着剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0014】
[接着剤組成物用ラテックス(A)]
以下、本発明に係る接着剤組成物用ラテックス(A)の2つの態様について説明するが、本発明はこれら2つの態様に限られない。以下の説明において、態様1における接着剤組成物用ラテックス(A1)、及び態様2における接着剤組成物用ラテックス(A2)は、それぞれ接着剤組成物用ラテックス(A)の態様の1つである。態様1におけるエチレン性不飽和単量体の重合体(a11)、及び態様2におけるエチレン性不飽和単量体の重合体(a21)は、それぞれエチレン性不飽和単量体の重合体(a1)の態様の1つである。態様1における界面活性剤(a12)、及び態様2における界面活性剤(a22)は、それぞれ界面活性剤(a2)の態様の1つである。
【0015】
上記2つの態様においては、一方の態様に係る構成が他方の態様に係る構成を排除するものではなく、本発明の効果が得られる限り一方の態様に係る構成が他方の態様に係る構成を兼ね備えていてもよい。例えば、以下に述べる態様1に係る接着剤組成物用ラテックス(A1)に含まれるエチレン性不飽和単量体の重合体(a11)は、態様2に係る接着剤組成物用ラテックス(A2)に含まれるエチレン性不飽和単量体の重合体(a11)の構成である架橋性のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を有していてもよく、架橋構造を有していてもよい。
【0016】
1.接着剤組成物用ラテックス(A)の態様1
本発明の一態様に係る接着剤組成物用ラテックス(A1)(「ラテックス(A1)」と呼ぶことがある。)は、エチレン性不飽和単量体の重合体(a11)と界面活性剤(a12)と水性媒体とを含み、エチレン性不飽和単量体の重合体(a11)はカルボキシ基を有し、平均粒子径が0.3~5.0μmである。また、エチレン性不飽和単量体の重合体(a11)は、架橋構造(後の態様2で詳述する。)を有していてもよい。
【0017】
エチレン性不飽和単量体の重合体(a11)がカルボキシ基を有することで、ラテックス(A1)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを混合した本発明の接着剤組成物を使用した際にカルボキシ基がクロロプレン系重合体のゲル化を促進し、優れた初期接着力及びコンタクト性を発現することができる。
【0018】
クロロプレン系重合体ラテックス(B)はpHが低くなるとゲル化が促進され、その後クロロプレン系重合体の結晶化が生じて初期接着力が発現することが知られている。ラテックス(A1)が弱酸であるカルボキシ基を有すると、ラテックス(A1)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを混合した接着剤組成物はその保管時にはゲル化せず良好な保存安定性を有する。
一方、本発明の接着剤組成物を使用する際は、水を含む分散媒が除去されるため、系内のpHが低くなり、クロロプレン系重合体のゲル化が迅速に進むことで接着力が発現する。
【0019】
接着剤組成物用ラテックス(A1)の固形分1kg当たりに含まれるカルボキシ基のモル数は、0.01~1.00molが好ましく、0.05~0.50molがより好ましく、0.10~0.40molがさらに好ましい。接着剤組成物用ラテックス(A1)の固形分1kg当たりに含まれるカルボキシ基のモル数が0.01mol以上であれば後述のクロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した際に優れた初期接着力及びコンタクト性を発現することができ、接着剤組成物用ラテックス(A1)の固形分1kg当たりに含まれるカルボキシ基のモル数が1.00mol以下であれば後述のクロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した際の保存安定性が向上する。
【0020】
1-1.エチレン性不飽和単量体の重合体(a11)
エチレン性不飽和単量体の重合体(a11)を構成する構造単位としては、エチレン性不飽和結合を有する単量体であれば特に制限は無い。エチレン性不飽和結合を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びそれらのエステル;(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;スチレン及びその誘導体;ビニルエステル;N置換マレイミド化合物;イタコン酸、クロトン酸、フタル酸及びそれらのエステル及びそれらの金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する単量体は単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
1-1-1.カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体
エチレン性不飽和単量体の重合体(a11)にカルボキシ基を導入するには、単量体としてカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を用いることが好ましい。カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、クロトン酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸、アコニット酸、及びこれらの酸の無水物などを使用できる。中でも、(メタ)アクリル酸及びイタコン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0022】
カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位の合計量は、重合体(a11)を構成する全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の合計量に対して0.5~5.0質量%であることが好ましく、1.0~4.0質量%であることがより好ましい。さらに好、全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位のうち、(メタ)アクリル酸由来の構造単位及びイタコン酸由来の構造単位を1.0~4.0質量%含むことが好ましい。全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位のうち、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位が0.5質量%以上であれば、後述のクロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物のゲル化の進行速度が速くなりコンタクト性が向上する。一方、全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位のうち、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位が5.0質量%以下であれば、クロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物の粘度が低くなり塗工性が向上する。
【0023】
1-1-2.疎水性のエチレン性不飽和単量体
重合体(a11)を構成する単量体としてカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体以外に、疎水性のエチレン性不飽和単量体を含むことができ、かつ好ましい。疎水性のエチレン性不飽和単量体とは、芳香族基、飽和及び不飽和脂環基、並びに炭素数5以上の飽和及び不飽和アルキル基から選択される少なくとも1つの基を含み、かつ水酸基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基等の親水性基を含まないエチレン性不飽和単量体である。
【0024】
これらの疎水性のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、ビニルエステル、N置換マレイミド化合物、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル、フタル酸エステルが挙げられる。具体的には、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フマレート、ジ-(2-エチルヘキシル)マレート、スチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンカプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニルシクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、ジ-(2-エチルヘキシル)イタコネート、2-エチルヘキシルクロトネート、ジヘキシルフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート等が挙げられる。疎水性のエチレン性不飽和単量体は単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
アクリル酸重合体(a11)を構成する全エチレン性不飽和単量体のうち、疎水性のエチレン性不飽和単量体を50.0~99.5質量%含むことが好ましく、より好ましくは50.0~98.0質量%を含むことである。全エチレン性不飽和単量体のうち疎水性のエチレン性不飽和単量体が50.0質量%以上であれば、後述のクロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物の保存安定性が向上する。一方、全エチレン性不飽和単量体のうち疎水性のエチレン性不飽和単量体が99.5質量%以下であれば、クロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物のゲル化の進行速度が速くなり、コンタクト性が向上する。
【0026】
1-1-3.エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤
エチレン性不飽和単量体の重合体(a
11)は、エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤に由来する構造単位を含んでいることが好ましい。粒子の分散安定性が向上するためである。カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体は、エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤には含まれないものとする。エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤としては、例えば、以下の化学式(2)~(5)で示される化合物等が挙げられる。式中の符号は、後述の一般式(1)と同じ意味を表わす。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0027】
1-1-4.その他のエチレン性不飽和単量体
本発明におけるエチレン性不飽和単量体は、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体及び疎水性のエチレン性不飽和単量体以外のエチレン性不飽和単量体を含むこともできる。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、エタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジブチルマレート、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、酢酸ビニル;プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、モノメチルイタコネート、ジメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、ジエチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジブチルイタコネート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、ブチルクロトネート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジプロピルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
[重合体(a11)の平均粒子径]
ラテックス(A1)中の重合体(a11)の平均粒子径は、0.30~5.00μmであり、0.50~3.00μmであることが好ましく、0.60~2.00μmであることがより好ましい。
平均粒子径を上記の範囲に調整する方法は特に限定されないが、例えば乳化重合でエチレン性不飽和単量体の重合体(a11)を得る場合に、重合中にマグネシウム塩、アルミニウム塩などの二価以上の塩を共存させる方法、重合中の乳化剤濃度を初期は低く、モノマー乳化物滴下中に徐々に高くしていく方法などが挙げられ、かつ好ましい。
【0029】
重合体(a11)の平均粒子径が0.3μm以上であれば、比表面積が比較的小さいため、クロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した際のクロロプレン系重合体の結晶化阻害が少なく、初期接着力及びコンタクト性が高くなる。重合体(a11)の平均粒子径が5.0μm以下であれば重合体(a11)の微粒子の沈降が起きにくくなり、ラテックス(A1)の保存安定性が向上する。なお、平均粒子径はMicrotrac社製「Nanotrac WaveII」にて測定した頻度累積値50%における値である。
【0030】
1-2.界面活性剤(a12)
本発明の接着剤組成物用ラテックス(A1)に含まれる界面活性剤(a12)は、乳化剤として作用する。
界面活性剤としては、一般に市販されているアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤を使用できる。なお、界面活性剤の中には、エチレン性不飽和結合を有し、重合反応により重合体(a11)の構成単位となるものがあるが、重合反応した界面活性剤は本発明における界面活性剤(a12)とはならない。しかし、エチレン性不飽和結合を有している界面活性剤であっても、重合体(a11)の合成後に残ったものは本発明における界面活性剤(a12)となる。これらの界面活性剤は、単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フィニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、セシルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルピリジニウムクロリド等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩等が挙げられる。
使用する界面活性剤量はエチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して0.01~10.00質量部が好ましく、0.05~5.00質量部がより好ましく、0.10~2.50質量部が更に好ましい。
【0032】
また、界面活性剤として水溶性(メタ)アクリル酸樹脂、水溶性(メタ)アクリル酸エステル樹脂等のノニオン性、カチオン性、またはアニオン性を有する水溶性高分子を用いることもできる。なおここでは、エチレン性不飽和単量体を重合して得られる構造を持つ分子で水溶性の物は水溶性高分子と定義する。水溶性高分子は、鹸化度、平均重合度、変性の有無に関係なく使用することができる。平均重合度は、重合安定性、製品粘度の観点から100~5000であることが好ましく、200~4000であることがより好ましく、200~2400であることがさらに好ましい。鹸化度は、重合安定性の観点から50%~100%であることが好ましく、60%~100%であることがより好ましく、80%~100%であることがさらに好ましい。
【0033】
使用する界面活性剤が水溶性高分子の場合の使用量は特に制限されるものではないが、重合安定性の観点から、エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して1~100質量部であることが好ましく、10~30質量部であることが更に好ましい。
【0034】
界面活性剤(a
12)としては、アニオン性界面活性剤を含むことが好ましく、より好ましくは下記一般式(1)
【化6】
(式中、Rは平均炭素原子数5~20の飽和または不飽和の脂肪族骨格、平均炭素原子数5~20の飽和または不飽和の脂環骨格、平均環構造数1~10の芳香環骨格からなる群から選択される少なくとも一種を含む炭化水素骨格を表し、Mはナトリウムまたはアンモニウムを表し、n(平均値)は2~60である。)で示される化合物を含むことである。n(平均値)は2~30が好ましく、Rは平均炭素原子数8~18の飽和または不飽和の脂肪族骨格、平均環構造数1~5の芳香環骨格からなる群から選択される少なくとも1種を含む炭化水素骨格が好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム等が挙げられる。より好ましくは、Mがアンモニウムである界面活性剤である。なお、界面活性剤(a
12)はラテックスの製造後に追加し混合してもよい。
【0035】
1-3.水性媒体
本態様の重合体(a11)はラテックス(A1)として存在する。分散媒は水を必須成分とする水性媒体である。水性媒体は水以外に親水性溶媒を含んでいても良い。
親水性溶媒は重合体(a11)を分散させる媒体として機能する水溶性のものであればよく、特に制限は無い。親水性溶媒としては、メチルアルコール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール、N-メチルピロリドンなどの含窒素有機溶媒などを、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
水性媒体中における親水性溶媒の含有量は、10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。ラテックス(A1)を接着剤として使用する場合、水性媒体は水のみであることが好ましい。
水性媒体の含有量は、ラテックス(A1)の固形分濃度が10~70質量%となる範囲であることが好ましく、15~65質量%となる範囲であることがより好ましく、固形分濃度が20~60質量%となる範囲であることがさらに好ましい。ラテックス(A1)の固形分濃度が70質量%以下であると、貯蔵安定性が高くなる。ラテックス(A1)の固形分濃度が10質量%以上であると、用途に応じて加工可能で実用的である。
【0037】
2.接着剤組成物用ラテックス(A)の態様2
以下に接着剤組成物用ラテックス(A2)の他の一態様(態様2)について説明するが、上記態様1と共通の内容については説明を省略する。
【0038】
態様2に係る接着剤組成物用ラテックス(A2)は、エチレン性不飽和単量体の重合体(a21)と界面活性剤(a22)と水性媒体とを含み、エチレン性不飽和単量体の重合体(a21)はカルボキシ基及び架橋構造を有する。
【0039】
エチレン性不飽和単量体の重合体(a21)がカルボキシ基及び架橋構造を有することで、ラテックス(A2)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを混合した本発明の接着剤組成物を使用した際にカルボキシ基がクロロプレン系重合体のゲル化を促進し、優れた初期接着力及びコンタクト性を発現することができる。
【0040】
クロロプレン系重合体ラテックス(B)はpHが低くなるとゲル化が促進され、その後クロロプレン系重合体の結晶化が生じて初期接着力が発現することが知られている。ラテックス(A2)が弱酸であるカルボキシ基を有すると、ラテックス(A2)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを混合した接着剤組成物はその保管時にゲル化せず良好な保存安定性を有する。
一方、本発明の接着剤組成物を使用する際は、水を含む分散媒が除去されるため系内のpHが低くなり、クロロプレン系重合体のゲル化が迅速に進むことで接着力が発現する。
【0041】
ラテックス(A2)の固形分1kg当たりに含まれるカルボキシ基のモル数は、0.01~1.00molが好ましく、0.05~0.50molがより好ましく、0.10~0.40molがさらに好ましい。ラテックス(A2)の固形分1kg当たりに含まれるカルボキシ基のモル数が0.01mol以上であればクロロプレン系重合体ラテックス(B)(後述する。)と混合した際に優れた初期接着力及びコンタクト性を発現することができ、ラテックス(A2)の固形分1kg当たりに含まれるカルボキシ基のモル数が1.00mol以下であればクロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した際の保存安定性が向上する。
【0042】
2-1.エチレン性不飽和単量体の重合体(a21)
エチレン性不飽和単量体の重合体(a21)を構成する構造単位としては、エチレン性不飽和結合を有する単量体であれば特に制限は無い。エチレン性不飽和結合を有する単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びそれらのエステル;(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;スチレン及びその誘導体;ビニルエステル;N置換マレイミド化合物;イタコン酸、クロトン酸、フタル酸及びそれらのエステル及びそれらの金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する単量体は単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
2-1-1.カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体
エチレン性不飽和単量体の重合体(a21)にカルボキシ基を導入するには、単量体としてカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を用いることが好ましい。カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としての例は、上記態様1と同様である。本態様2においては、エチレン性不飽和単量体の重合体(a21)用の単量体として、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を用いることが好ましく、アコニット酸のような、分子内に3個以上のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を用いてもよい。
【0044】
カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位の合計量は、重合体(a21)を構成する全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の合計量に対して0.5~5.0質量%であることが好ましく、1.0~4.0質量%であることがより好ましい。その理由は態様1で説明したとおりである。さらに好ましくは、重合体(a21)を構成する全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の合計量に対して、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を、1.0~4.0質量%含む。
【0045】
2-1-2.架橋性のエチレン性不飽和単量体
エチレン性不飽和単量体の重合体(a21)は架橋構造を有することでゲル化後の接着剤の強度が増し、優れた初期接着力及びコンタクト性を発現する。重合体(a21)に架橋構造を導入するには、単量体として架橋性のエチレン性不飽和単量体を用いることが好ましい。
【0046】
架橋性のエチレン性不飽和単量体は、架橋性のエチレン性不飽和単量体同士が互いに反応するエチレン性不飽和結合を複数有する化合物、またはカルボキシ基と反応性を有する官能基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物である。カルボキシ基と反応性を有する官能基を有するものとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体が挙げられる。架橋性のエチレン性不飽和単量体同士が互いに反応するものとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのエチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、エタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの2以上のエチレン性不飽和基を含む単量体などが挙げられる。中でも、架橋性のエチレン性不飽和単量体として、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、2以上のエチレン性不飽和基を含む単量体からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0047】
架橋性のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位の含有量は、重合体(a21)を構成する全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の合計量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましい。後述のクロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物のゲル化後の強度が高くなり、コンタクト性が向上するためである。
【0048】
架橋性のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位の含有量は、重合体(a21)を構成する全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の合計量に対して、5.00質量%以下であることが好ましく、3.00質量%以下であることがより好ましい。クロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物の保存安定性が向上するためである。
【0049】
2-1-3.水酸基を有するエチレン性不飽和単量体
重合体(a1)を構成する単量体としてカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、架橋性のエチレン性不飽和単量体以外に、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を含むことができ、かつ好ましい。なお、水酸基以外の親水性の官能基を有する単量体は、「水酸基を有するエチレン性不飽和単量体」ではなく、「エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤」とする。
【0050】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。水酸基を有するエチレン性不飽和単量体は単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
重合体(a21)を構成する全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の合計量に対する、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体の含有率は、0.1質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。後述のクロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物のゲル化の進行速度が速くなり、コンタクト性が向上するためである。
【0052】
重合体(a21)を構成する全エチレン性不飽和単量体由来の構造単位の合計量に対する、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体の含有率は、20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。クロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物の保存安定性が向上するためである。
【0053】
2-1-4.疎水性のエチレン性不飽和単量体
重合体(a21)を構成する単量体としてカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、架橋性のエチレン性不飽和単量体、及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量以外に、疎水性のエチレン性不飽和単量体を含むことができ、かつ好ましい。疎水性のエチレン性不飽和単量体については態様1で説明したとおりである。
【0054】
アクリル酸重合体(a21)を構成する全エチレン性不飽和単量体のうち、疎水性のエチレン性不飽和単量体を50.0~99.4質量%含むことが好ましく、より好ましくは50.0~98.0質量%を含むことである。全エチレン性不飽和単量体のうち疎水性のエチレン性不飽和単量体が50.0質量%以上であれば、後述のクロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物の保存安定性が向上する。一方、全エチレン性不飽和単量体のうち疎水性のエチレン性不飽和単量体が99.4質量%以下であれば、クロロプレン系重合体ラテックス(B)と混合した接着剤組成物のゲル化の進行速度が速くなり、コンタクト性が向上する。
【0055】
2-1-5.エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤
エチレン性不飽和単量体の重合体(a21)は、エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤に由来する構造単位を含んでいることが好ましい。粒子の分散安定性が向上するためである。カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体は、エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤には含まれないものとする。エチレン性不飽和結合を有する界面活性剤としては、例えば、態様1で説明した化学式(2)~(5)で表される化合物等が挙げられる。
【0056】
2-1-6.その他のエチレン性不飽和単量体
本態様におけるエチレン性不飽和単量体は、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、疎水性のエチレン性不飽和単量体、架橋性のエチレン性不飽和単量体、及び水酸基を有するエチレン性不飽和単量体以外のエチレン性不飽和単量体を含むことできる。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、エタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジブチルマレート、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、酢酸ビニル;プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、モノメチルイタコネート、ジメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、ジエチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジブチルイタコネート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、ブチルクロトネート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジプロピルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
[重合体(a21)の平均粒子径]
ラテックス(A2)中の重合体(a21)の平均粒子径は、0.30~5.00μmであることが好ましく、0.50~3.00μmであることがより好ましく、0.60~2.00μmであることがさらにより好ましい。平均粒子径を上記の範囲に調整する方法、上記平均粒子径とする理由、及び平均粒子径の定義については態様1の重合体(a11)で説明したとおりである。
【0058】
2-2.界面活性剤(a22)及び水性媒体
界面活性剤(a22)及び水性媒体については態様1の界面活性剤(a12)で述べた通りである。
【0059】
3.接着剤組成物用ラテックス(A)の製造方法
本発明の接着剤組成物用ラテックス(A)は、重合体(a1)を合成するためのエチレン性不飽和単量体、界面活性剤(a2)、及び水性媒体を用いて、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法などの公知の重合方法により製造することができる。また、連続式重合法でも回分式重合法でも製造することができる。中でも、粒子径の均一性の観点から好ましくは懸濁重合法、乳化重合法による製造であり、さらに好ましくは、乳化重合法による製造である。
【0060】
乳化重合する方法としては、例えば、上記の各成分を一括して仕込んで重合する方法を用いてもよいし、各成分を連続供給しながら重合する方法を適用してもよい。各成分を連続供給しながら重合する方法としては、例えば、重合開始剤の一部と水性媒体と界面活性剤とを混合した重合開始剤溶液中に、エチレン性不飽和単量体と水性媒体と界面活性剤とを混合して乳化させた混合乳化液と、重合開始剤の残部とを連続供給しながら撹拌する方法を用いることができる。
【0061】
乳化重合する際には、重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、アゾ化合物、有機過酸化物などの公知慣用のものを使用できる。なお、これらの重合開始剤と還元剤との併用によるレドックス系開始剤を使用してもよい。重合開始剤の使用量は、適正な重合速度とするために、エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して0.01~1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~0.8質量部であり、さらに好ましくは0.1~0.5質量部である。
【0062】
乳化重合する際の温度は、重合開始剤の種類によって異なるが、例えば30~85℃とすることができる。
重合体(a1)を得る際、分子量を調整するために、メルカプタン、チオグリコール酸及びそのエステル、β-メルカプトプロピオン酸及びそのエステルなどの連鎖移動剤を用いてもよい。
【0063】
4.接着剤組成物用ラテックス(A)のpH
重合体(a1)が得られた後、pHを調整することができかつ好ましい。この際、ラテックス(A)の中和度は0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。さらに、ラテックス(A)の中和度は0.7~1.3であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましく、0.9~1.1であることがさらに好ましい。なお、ラテックス(A)の中和度とは、ラテックス(A)に含まれるカルボキシ基及びその他の酸性成分を中和するのに必要な塩基性化合物の量に対する、加えた塩基性化合物の量の比である。
【0064】
ラテックス(A)の中和度が0.3以上であれば、ラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを混合した接着剤組成物の保存安定性が向上する。ラテックスの中和度が1.3以下であればラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを混合した接着剤組成物のゲル化の進行が速くなり、十分なコンタクト性が得られる。
【0065】
ラテックス(A)の25℃におけるpHは、6.0~10.0であることが好ましく、6.5~9.5であることがより好ましく、7.0~9.5であることがさらに好ましい。pHが6以上であれば、ラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを混合した接着剤組成物の保存安定性が向上し、pHが10以下であればラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)とを混合した接着剤組成物のゲル化の進行が速くなり、十分なコンタクト性が得られる。
中和するために添加する塩基性化合物は特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが挙げられる。特に保存安定性の観点からアンモニア水を添加することが好ましい。
【0066】
5.接着剤組成物用ラテックス(A)のホルムアルデヒド放散量
本発明のラテックス(A)は、JIS A 1902-2に従い作製した試験片にて、JIS A 1460に従いガラスデシケーター法にて測定したホルムアルデヒド放散量が0.05mg/L以下であることが好ましい。ホルムアルデヒドの含有量をこの範囲にする方法は特に限定されないが、例えば接着剤組成物の原料として、ホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒド由来の材料を用いないことで可能となる。
【0067】
6.クロロプレン系重合体ラテックス(B)
本実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス(B)は、クロロプレン系重合体が微粒子として水性溶媒に分散されたラテックスである。
クロロプレン系重合体ラテックス(B)を構成するクロロプレン系重合体は、クロロプレンの単独重合体、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体との共重合体である。すなわち、クロロプレン系重合体は、クロロプレン由来の構造単位を含む重合体である。ここで、共重合可能な単量体としては、例えば、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル等が挙げられる。他の共重合可能な単量体由来の構造単位は本発明の目的とする性能を阻害しない範囲でクロロプレン系共重合体に含まれる。クロロプレン系重合体において、クロロプレン由来の構造単位の含有量は80モル%以上である。
【0068】
前記共重合可能な単量体として、具体的には、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルは0.01~20質量%の範囲で、アクリル酸、メタクリル酸は0.01~7質量%の範囲で、各々含む共重合体を使用できる。共重合体を構成する単量体は必要に応じて2種類以上用いてもよい。また、2種類以上の重合体を混合して用いてもよい。他の共重合可能な単量体をクロロプレンと併用する場合、共重合体中の他の共重合可能な単量体ユニットの含有量が20モル%以下であれば、接着剤組成物のコンタクト性、初期接着力が良好となる。
【0069】
クロロプレン系重合体ラテックス(B)の界面活性剤は、特に限定されるものではなく、(a2)で挙げたものを使用することができる。中でも、アニオン性界面活性剤が好ましい。特に、ラテックス(A)と混合して優れた初期接着力、コンタクト性を発現することができる、カルボキシ基を有するアニオン性界面活性剤がより好ましい。特にpHが一定以下になると不溶化するものが好ましく、中でもアビエチン酸を主成分とするロジン酸のアルカリ塩で安定化されていることがより好ましい。カルボキシ基を有するアニオン性界面活性剤はクロロプレン系重合体ラテックスを重合する際の乳化剤として導入しても良いし、重合後に添加剤として加えても良い。
【0070】
クロロプレン系重合体ラテックス(B)が含む界面活性剤の量は、クロロプレン系重合体ラテックス(B)の固形分に対して1~8質量%であることが好ましく、2~5質量%であることがより好ましい。界面活性剤の量がクロロプレン系重合体ラテックス(B)の固形分に対して1質量%以上であれば、重合時、保存時の安定性が十分となる。8質量%以下であれば、接着剤組成物のコンタクト性、初期接着力が良好となる。
【0071】
7.接着剤組成物用ラテックス(A)とクロロプレン系共重合体(B)との混合比
本発明に係る接着剤組成物におけるラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)との質量による混合比は、固形分比1:99~99:1であることが好ましく、10:90~90:10であることがより好ましく、25:75~70:30であることがさらに好ましい。本発明の接着剤組成物の初期接着力及びコンタクト性はクロロプレン系重合体の結晶化に依存するため、固形分比1:99以上であれば、その初期接着力及びコンタクト性が発揮され、固形分比99:1以下であれば接着剤組成物のゲル化の進行が速くなり、十分なコンタクト性が得られる。
【0072】
ラテックス(A)とクロロプレン系重合体ラテックス(B)との混合方法に特に制限は無いが、手混ぜ、ディスパー等の回転歯式攪拌機、高圧型、超音波型、高速回転型等のホモジナイザー等が挙げられる。いずれの方法でも、混合時の凝集物発生抑制の観点から、剪断力をかけ過ぎないことが好ましい。
【0073】
本発明の接着剤組成物のpHは、5.0~12.0の範囲が好ましく、より好ましくは6.0~11.0、さらに好ましくは7.0~10.0である。接着剤組成物のpHが5.0以上であれば、接着剤組成物の保存安定性が向上し、pHが12.0以下であれば接着剤組成物のゲル化の進行が速くなり、十分なコンタクト性が得られる。
【0074】
8.添加剤
本発明の接着剤組成物は、ラテックス(A)及びクロロプレン系重合体ラテックス(B)の他に、任意で後述の添加剤を含めることができる。これらの添加剤は、ラテックス(A)とラテックス(B)との混合の際に添加することができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、あらかじめラテックス(A)及び/またはラテックス(B)に添加剤を添加した上で接着剤組成物を製造することも可能である。
【0075】
8-1.pH調整剤
本発明の接着剤組成物は、pH調整剤を用いて好ましいpHに調整することができる。pH調整剤としては、一般的な無機酸、有機酸などの酸性物質やその塩、アミノ酸などの両性塩の他、pHが10以下の各種ラテックスを使用することができる。
【0076】
pH調整剤は、例えば有機酸としては、酢酸、ギ酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、フタル酸、イソフタル酸、乳酸、酪酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アジピン酸、シュウ酸、アビエチン酸等が挙げられる。無機酸としてはホウ酸、リン酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸などが挙げられる。さらに、有機酸または無機酸とナトリウム、カリウム、アンモニア、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンとの塩などが挙げられる。
【0077】
また、アミノ酸としては、グリシン、グリシルグリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸などが挙げられる。pH10以下のラテックスとしては、ラテックス(A)以外にアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの共重合体ラテックスやアクリル酸、メタクリル酸等を共重合したスチレン-ブタジエン共重合体やクロロプレンなどのカルボキシル変性合成ゴムラテックスなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
pH調整剤は単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。接着剤組成物の初期接着性、コンタクト性、保存安定性の観点からグリシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸などのアミノ酸やマロン酸などの有機酸が好ましい。
【0078】
8-2.粘着付与樹脂
本発明の接着剤組成物は粘着付与樹脂を含むことができる。具体的には、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5留分/C9留分系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などが挙げられる。粘着付与樹脂は単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂の添加方法としては、接着剤組成物中に樹脂を均一に分散させるために、ラテックスとしてから添加するのが好ましい。
【0079】
8-3.可塑剤
本発明の接着剤組成物には、可塑剤を含有させることができる。中でも、二塩基酸エステル系可塑剤が好ましい。二塩基酸エステル系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジアルキルエステル、セバチン酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。二塩基酸エステル系可塑剤の含有量は、ラテックス(A)及びラテックス(B)の固形分の合計に対して10質量部以下が好ましい。
【0080】
8-4.酸化防止剤
本発明の接着剤組成物は酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、p-クレソールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物などを挙げることができる。酸化防止剤の添加量はラテックス(A)及びラテックス(B)の固形分100質量部に対して、0.1~3質量部が好ましく、0.5~2質量部がさらに好ましい。酸化防止剤の添加量が0.1質量部以上であれば十分な酸化防止効果が得られ、3質量部以下であれば十分な初期接着力及びコンタクト性が得られる。
【0081】
8-5.その他の添加剤
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記以外の添加剤として、充填剤、顔料、着色剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤などを適宜使用することができる。
また、接着剤組成物の10質量%(固形分換算)を上限に、その他の樹脂系重合体ラテックスを、補助的に配合しても差し支えない。具体的には重合体(a1)を構成するエチレン性不飽和単量体として挙げた群からなる重合体のラテックスである。
【0082】
9.接着剤組成物の使用方法
本発明の接着剤組成物の塗布方法は、特に限定されないが、浸漬法、ハケ塗り法、スプレー法、線引き塗布法等が挙げられる。塗布量、乾燥時間等の使用条件も特に限定されないが、例えば、被着体に対して塗布量10~500g/m2の条件で接着剤組成物を塗布し、5~40℃で1分~1時間放置した後、もう一方の被着体と貼り合わせ、1~30秒間両手で圧締することで十分な初期接着力及びコンタクト性が得られる。あるいは、この工程において、接着剤組成物を被着体に塗布した後、直ちにもう一方の被着体を貼り合わせてもよい。
【0083】
本発明の接着剤組成物は、一液系水性接着剤用として好適に使用することができる。特に、接着させる2つの被着体の少なくとも一方が多孔質部材や吸水性部材である場合に有用である。多孔質部材としては例えば、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンなどの材質からなる発泡体(フォーム)などが挙げられ、吸水性部材としては木材、布、織物などを挙げることができる。多孔質部材を相互に接着した部材はクッション性部材や建築材として、家具及び自動車内装用途や建築用途に使用することができる。
【実施例0084】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例によってなんら制限されるものではない。
【0085】
[測定方法]
<pH>
pHの測定は東亜DKK株式会社製「HM-30G」にて25℃で行った。
<平均粒子径>
平均粒子径の測定はMicrotrac社製「Nanotrac(登録商標) WaveII」にて行い、頻度累積値50%における値を平均粒子径とした。
【0086】
<ホルムアルデヒド放散量>
JIS A 1902-2に従い、15cm×30cmのガラス板にラテックス(A)を13.5g塗布し、23℃下で24時間養生して試験片を作製した。その試験片を用いて、JIS A 1460に従いガラスデシケーター法にて測定した。
【0087】
<コンタクト性>
一辺5cmのポリウレタンフォーム立方体の1面にアネスト岩田(株)製スプレーガンW-101-131Gにて、吹きつけ空気圧0.4MPa、ラテックス噴出量120ml/分、吹きつけ距離30cm、塗布量100g/m2の条件で接着剤組成物を塗布し、25℃で1分間放置した。塗布面の中央の線を折り目に指でつまんで塗布面同士を5秒間貼り合わせた後、指を離してもポリウレタンフォームが剥がれて元にもどらない状態になるか目視で観察した。ポリウレタンフォームが剥がれる場合はすぐに塗布面の中央の線を折り目に指でつまんで5秒間貼り合わせる操作を繰り返し、ポリウレタンフォームが接着されて剥がれない状態となるまでの貼り合わせ回数を評価した。回数が少ないほど、コンタクト性が良好と言える。5サンプル評価し、その平均値をコンタクト性評価値とした。
【0088】
<初期接着力>
5cm四方、厚み2.5cmのポリウレタンフォーム基材を2個準備し、それぞれの1面にアネスト岩田(株)製スプレーガンW-101-131Gにて、吹きつけ空気圧0.4MPa、ラテックス噴出量120ml/分、吹きつけ距離30cm、塗布量100g/m2の条件で接着剤組成物を塗布し、25℃で1分間放置した後、2.5cm×5cmの接着面で貼り合わせ、5秒間両手で圧締した。圧締後、30秒もしくは2分間放置した試験片の両端をオートグラフ(登録商標)AG-X(株式会社島津製作所製)のチャックにはさみ、23℃×50%RH雰囲気下にて引張速度200mm/分で引張り、接着力を測定した。
【0089】
<保存安定性>
接着剤組成物をガラス瓶に密封して、70℃下7日間放置し、放置前後の粘度を測定して保存安定性を評価した。粘度の測定は、23℃下、BL型粘度計でローターNo.19で回転数60rpmにて行った。
【0090】
[ラテックス(A)の製造]
合成例1:
メタクリル酸12.4g、メチルメタクリレート84.6g、2-エチルヘキシルアクリレート384.6g、2-ヒドロキシエチルアクリレート8.7g、グリシジルメタクリレート0.9g、ハイテノール08E 1.78g、エレミノールJS-20 4.2g、イオン交換水130gをホモジナイザーを用いて均一に乳化し、単量体乳化物とした。
イオン交換水125g、ハイテノール(登録商標)08E(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸アンモニウム、固形分濃度100質量%)0.32g、エレミノール(登録商標)JS-20(三洋化成工業株式会社製、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム、固形分濃度40質量%)0.3g、硝酸マグネシウム0.6g、2-エチルヘキシルチオグリコレート1.7gを1Lの五つ口セパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら80℃まで加熱した。セパラブルフラスコに過硫酸カリウム0.25g、前記単量体乳化物の5質量%分を添加し、その後残りの単量体乳化物の滴下を開始することで反応を開始した。単量体乳化物は4時間かけてセパラブルフラスコ内に添加、同時に過硫酸カリウム1.65gをイオン交換水60gで溶解した水溶液も4.5時間かけて添加した。過硫酸カリウム水溶液の添加終了後、80℃で1時間撹拌し、反応を終了した。セパラブルフラスコ内を冷却し、25質量%アンモニア水を9.8g添加し、系内を中和した。その後イオン交換水173.1gを加え、固形分50質量%に希釈してラテックス(A-1)を得た。その組成及び平均粒子径、pH、ホルムアルデヒド放散量を表1に示す。
【0091】
合成例2~11:
表1に示す組成としたこと以外は合成例1と同様の方法で製造を行い、ラテックス(A-2)~(A-8)、(X-1)~(X-3)を得た。その組成及び平均粒子径、pH、ホルムアルデヒド放散量を表1に示す。
【0092】
なお、表1中における各界面活性剤成分の詳細は次の通りである。
(1)トラックスN-200:日油株式会社製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、固形分濃度26質量%の水溶液、
(2)ハイテノール(登録商標)NF-13:第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、固形分100質量%、
(3)アデカリアソープ(登録商標)SE-11:株式会社ADEKA製、α‐スルホ‐ω-(1-(ノニルフェノキシ)メチル-2-(2-プロペニルオキシ)エトキシ)ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)のアンモニウム塩、固形分100質量%、
(4)エマルゲン(登録商標)147:花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、固形分100質量%、
(5)エレミノール(登録商標)RS-3000:三洋化成工業株式会社製、メタクリロイルオキシポリオキシプロピレン硫酸エステルナトリウム塩、固形分50質量%の水溶液、
(6) ハイテノール(登録商標)08E:第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸アンモニウム、固形分濃度100質量%、
(7) ハイテノール(登録商標)NF-13:第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、固形分100質量%、
(8) エレミノール(登録商標)JS-20:(三洋化成工業株式会社製、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム、固形分濃度40質量%。
【0093】
[接着剤組成物の製造]
実施例1:
ラテックス(B-1)としてショウプレン(登録商標)SD130(昭和電工株式会社製クロロプレンの単独重合体ラテックス、ロジン酸ナトリウム塩、ロジン酸カリウム塩含有、固形分に対する界面活性剤濃度2質量%、固形分55質量%)31.8g、ラテックス(A-1)を35g、pH調整剤としてグリシン0.3gを混合し、組成物1を得た。その組成及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0094】
実施例2~15、比較例1~6:
表2及び表3に示す組成としたこと以外は実施例1と同様の方法で製造を行い、組成物2~21を得た。その組成及び評価結果を表2及び表3に示す。
なお、表2及び表3中における各成分の詳細は、次の通りである。
・ショウプレン(登録商標)SD77S:昭和電工株式会社製クロロプレン系重合体ラテックス、ロジン酸ナトリウム塩、ロジン酸カリウム塩含有、固形分55質量%、固形分に対する界面活性剤濃度2質量%
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
表2及び表3の結果から、本発明の接着剤組成物(実施例1~15)は、優れたコンタクト性と初期接着力を示す、すなわち短時間で強い接着力が得られることがわかった。一方、平均粒子径が0.3μmより小さいラテックスを含む接着剤組成物(比較例1~4)はコンタクト性及び初期接着力に劣ることがわかった。また、ラテックス(A)又はラテックス(B)単体ではコンタクト性を示さず初期接着力も著しく低い(比較例5~6)ことがわかった。
【0099】
ラテックス(A)の製造:
合成例101~111で用いた成分は以下の通りである。
【0100】
[重合体(a1)を構成するエチレン性不飽和単量体]
(1)メタクリル酸:日本触媒株式会社製、
(2)イタコン酸:扶桑化学工業株式会社製、
(3)アコニット酸:東京化成工業株式会社製、
【0101】
(4)スチレン:出光興産株式会社製、
(5)メチルメタクリレート:三菱レイヨン株式会社製、
(6)2-エチルヘキシルアクリレート:日本触媒株式会社製、
(7)2-ヒドロキシエチルアクリレート:共栄社化学株式会社製、
【0102】
(8)グリシジルメタクリレート:ダウ・ケミカル株式会社製、
(9)メタクリロイキシトリメトキシシラン:信越シリコーン株式会社製、
(10)ジビニルベンゼン:新日鉄住金化学株式会社製。
【0103】
[界面活性剤]
(1)ハイテノール(登録商標)08E:第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸アンモニウム、固形分濃度100質量%、
(2)ハイテノール(登録商標)NF-13:第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、固形分100質量%、
(3)エレミノール(登録商標)JS-20:(三洋化成工業株式会社製、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム、固形分濃度40質量%。
【0104】
[その他成分]
(1)硝酸マグネシウム:赤穂化成株式会社製、
(2)2-エチルヘキシルチオグリコレート:株式会社ダイセル製、
(3)過硫酸カリウム:株式会社ADEKA製、
(4)25%アンモニア水
(5)水酸化カリウム:株式会社大阪ソーダ製。
【0105】
合成例101:
メタクリル酸を12.4gと、メチルメタクリレートを84.6gと、2-エチルヘキシルアクリレートを384.8gと、2-ヒドロキシエチルアクリレートを8.7gと、グリシジルメタクリレートを0.9gと、ハイテノール08Eを1.78gと、エレミノールJS-20を4.2gと、イオン交換水を130gとをホモジナイザーを用いて均一に乳化し、単量体乳化物とした。
イオン交換水を125gと、ハイテノール08Eを0.32gと、エレミノールJS-20を0.3gと、硝酸マグネシウムを0.6gと、2-エチルヘキシルチオグリコレートを1.7gとを1Lの五つ口セパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら80℃まで加熱した。セパラブルフラスコに過硫酸カリウム0.25g、前記単量体乳化物の5質量%分を添加し、その後残りの単量体乳化物の滴下を開始することで反応を開始した。単量体乳化物は4時間かけてセパラブルフラスコ内に添加、同時に過硫酸カリウム1.65gをイオン交換水60gで溶解した水溶液も4.5時間かけて添加した。過硫酸カリウム水溶液の添加終了後、80℃で1時間撹拌し、反応を終了した。セパラブルフラスコ内を冷却し、25質量%アンモニア水を9.8g添加し、系内を中和した。その後イオン交換水173.1gを加え、固形分50質量%に希釈してラテックス(A-101)を得た。その組成及び平均粒子径、pH、ホルムアルデヒド放散量を表4に示す。
【0106】
合成例102~111:
表4に示す組成としたこと以外は合成例101と同様の方法で製造を行い、ラテックス(A-102)~(A-109)、(X-101)~(X-102)を得た。その組成及び平均粒子径、pH、ホルムアルデヒド放散量を表4に示す。
【0107】
接着剤組成物の製造:
下記の実施例101~117及び比較例101~104では接着剤組成物用ラテックス(A)として合成例101~111で調製したA101~A109及びX-101~X102を用い、クロロプレン系重合体ラテックス((B-1)、(B―2))、及びpH調整剤として以下のものを用いた
・クロロプレン系重合体ラテックス(B-1):ショウプレン(登録商標)SD130(昭和電工株式会社製クロロプレンの単独重合体ラテックス、ロジン酸ナトリウム塩、ロジン酸カリウム塩含有、固形分に対する界面活性剤濃度2質量%、固形分55質量%)(表5~6では、SD130と略記)、
・クロロプレン系重合体ラテックス(B-2):ショウプレン(登録商標)SD77S、昭和電工株式会社製クロロプレン系重合体ラテックス、ロジン酸ナトリウム塩、ロジン酸カリウム塩含有、固形分55質量%、固形分に対する界面活性剤濃度2質量%)(表5~6では、SD77Sと略記)、
・pH調整剤:グリシン(昭和電工株式会社製)
【0108】
実施例101:
クロロプレン系重合体ラテックス(B-1)を31.8g、ラテックス(A-101)を35g、pH調整剤としてグリシン0.3gを混合し、接着剤組成物101を得た。その組成及び評価結果を表5及び表6に示す。
【0109】
実施例102~117、比較例101~104
表5及び表6に示す組成としたこと以外は実施例101と同様の方法で接着剤組成物102~121を得た。その組成及び評価結果を表5及び表6に示す。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
表5及び表6の結果から、本発明の接着剤組成物(実施例101~117)は、優れたコンタクト性と初期接着力を示す、すなわち短時間で強い接着力が得られることがわかった。一方、重合体(a1)にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を含まない接着剤組成物用ラテックス(X-101)を用いた比較例101の接着剤組成物118は、ゲル化してしまい、粘度、コンタクト性、及び初期接着力の測定ができなかった。また、重合体(a1)に架橋性のエチレン性不飽和単量体由来の構造単位を含まない接着剤組成物用ラテックス(X-102)を用いた比較例102の接着剤組成物119は、粘度が高く、コンタクト性及び初期接着力が不十分であった。また、ラテックス(A)またはラテックス(B)単体ではコンタクト性を示さず初期接着力も著しく低い(比較例103~104)ことがわかった。
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位とカルボキシ基に対して反応性がある官能基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位とを有する請求項1~5のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)と界面活性剤(a2)と水性媒体とを含む接着剤組成物用ラテックス(A)であって、前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)がカルボキシ基及び架橋構造を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。
前記エチレン性不飽和単量体の重合体(a1)が、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構造単位、エチレン性不飽和結合を有するシランカップリング剤由来の構造単位及びエチレン性不飽和結合を2個以上含む単量体由来の構造単位のうち少なくともいずれかを含む請求項1~9のいずれか1項に記載の接着剤組成物用ラテックス。