(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036709
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】酸由来の風味抑制剤、酸由来の風味抑制剤の製造方法、および酸由来の風味を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240311BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240311BHJP
A23D 9/04 20060101ALI20240311BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20240311BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23D9/00 518
A23D9/04
A23L7/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141106
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】堀 竜二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 麻友
【テーマコード(参考)】
4B023
4B026
4B047
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LE11
4B023LK04
4B023LK05
4B023LP10
4B023LP15
4B023LP19
4B023LP20
4B026DC01
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG06
4B026DP10
4B026DX01
4B047LB02
4B047LG11
(57)【要約】
【課題】 飲食物の酸味や酸臭などの酸由来の風味を抑制することができる酸由来の風味抑制剤および酸由来の風味を抑制する方法を提供する。
【解決手段】 脱ガム油を有効成分とする、酸由来の風味抑制剤である。また、酸由来の風味を有する飲食物の酸由来の風味を抑制する方法であって、前記飲食物の原料および前記飲食物からなる群から選ばれる1種または2種に脱ガム油を添加する、前記方法である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱ガム油を有効成分とする、酸由来の風味抑制剤。
【請求項2】
前記酸が酢酸および酢酸塩からなる群から選ばれる1種または2種を含む、請求項1に記載の風味抑制剤。
【請求項3】
前記脱ガム油の油糧が、菜種、大豆およびコーンジャームからなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1または2に記載の風味抑制剤。
【請求項4】
脱臭油を含む油脂組成物の形態である、請求項1または2に記載の風味抑制剤。
【請求項5】
粗油を脱ガム処理し脱ガム油を得る工程を含む、酸由来の風味抑制剤の製造方法。
【請求項6】
前記脱ガム油と脱臭油を混合する工程を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
酸由来の風味を有する飲食物の酸由来の風味を抑制する方法であって、
前記飲食物の原料および前記飲食物からなる群から選ばれる1種または2種に、請求項1または2に記載の風味抑制剤を添加する、前記方法。
【請求項8】
前記飲食物が炊飯物である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸由来の風味抑制剤、酸由来の風味抑制剤の製造方法、および酸由来の風味を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸味は、元来酸味を有する野菜、果実等の食品素材や、該食品素材を原材料とする加工食品等の食品においては、その風味の特徴として不可欠なものである。一方で、風味の特徴として酸味が求められない食品又は酸味がわずかに感じられる程度でよい食品であっても、保存性を高める目的で有機酸や有機酸塩あるいはこれらを含有するpH調整剤、静菌剤等の製剤や食酢等が添加され、結果的に必要以上の酸味が付与される場合がある。このようにして付与された酸味は食品本来の風味を損なう場合があるため、食品において意図せぬ酸味の発現を抑制することが課題となっていた。有機酸の中でも特に酢酸や酢酸塩は刺激的な酸臭を有しているため、酸臭の発現抑制も課題であった。
【0003】
そこで、酸味や酸臭を抑制する従来技術として、酸味を呈する製品に、高甘味度甘味剤を甘味の閾値以下の量で用いる酸味のマスキング方法(特許文献1)、酸味を呈する製品に、スクラロースを添加することを特徴とする酸味のマスキング方法(特許文献2)、酢酸、酢酸ナトリウム、アジピン酸の群から選ばれる1種又は2種以上を混合した有機酸類に、マルチトール及び/又はエリスリトールを組み合わせた粉末状の食品保存改良剤(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-215793号公報
【特許文献2】特開平10-243776号公報
【特許文献3】特開2003-144115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飲食物の酸味や酸臭を抑制するにあたって従来から使用されている上記物質は、化学的に合成されたものであるため、安全性の面において心配があるものが多く健康志向の観点から問題があった。更には、飲食物に甘味等の風味も同時に付与してしまうことから、飲食物本来の風味を損なうおそれがあり、使用範囲が限定される傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明では、飲食物の酸味や酸臭などの酸由来の風味を抑制することができる酸由来の風味抑制剤および酸由来の風味を抑制する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の処理が施された油脂が酸由来の風味を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
脱ガム油を有効成分とする、酸由来の風味抑制剤。
[2]
前記酸が酢酸および酢酸塩からなる群から選ばれる1種または2種を含む、[1]に記載の風味抑制剤。
[3]
前記脱ガム油の油糧が、菜種、大豆およびコーンジャームからなる群から選ばれる1種または2種以上である、[1]または[2]に記載の風味抑制剤。
[4]
脱臭油を含む油脂組成物の形態である、[1]乃至[3]いずれか1項に記載の風味抑制剤。
[5]
粗油を脱ガム処理し脱ガム油を得る工程を含む、酸由来の風味抑制剤の製造方法。
[6]
前記脱ガム油と脱臭油を混合する工程を含む、[5]に記載の製造方法。
[7]
酸由来の風味を有する飲食物の酸由来の風味を抑制する方法であって、
前記飲食物の原料および前記飲食物からなる群から選ばれる1種または2種 に、[1]乃至[4]いずれか1項に記載の風味抑制剤を添加する、前記方法。
[8]
前記飲食物が炊飯物である、[7]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酸由来の風味抑制剤を用いると飲食物の酸由来の風味を抑制することができる。より詳細には、酸由来の風味抑制剤を用いると飲食物の酸味や酸臭を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の酸由来の風味抑制剤、酸由来の風味抑制剤の製造方法、および酸由来の風味を抑制する方法の具体的な実施の形態を以下に説明する。
なお、本明細書において数値範囲の上限値及び下限値を示したときは、上限値及び下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0010】
本発明の酸由来の風味抑制剤(以後、風味抑制剤とも記載)は脱ガム油を有効成分とする。より詳細には、油糧原料から得た粗油を脱ガム処理し得られた脱ガム油を有効成分とする。ここで酸由来の風味とは、飲食物を食した際に口内で感じられる酸味であり、酸が揮発性であった場合には、鼻で感じられる酸臭を含む。
【0011】
前記油糧原料としては、特に限定はなく、油分を採取しうるものを用いることができるが、植物原料であることが好ましい。例えば、菜種、大豆、コーンジャーム、綿実、米ぬか、ごま、オリーブ、ひまわり、えごま、あまに、かぼちゃ、アーモンド、落花生、紅花、パーム種子、パーム果肉、ヤシ、カカオ、ぶどう種子、マカデミアナッツ、ヘーゼルナッツ、クルミ、椿種子、茶実、小麦胚芽などが挙げられる。好ましくは菜種、大豆、コーンジャームであり、より好ましくは菜種である。これらの油糧原料は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよい。これらの油糧原料は、未焙煎であることが好ましい。
【0012】
前記油糧原料から、圧搾抽出および溶剤抽出からなる群から選ばれる1または2の抽出を行うことにより粗油を得ることができる。
【0013】
前記圧搾抽出は、前記油糧原料に高圧を加えて細胞中の油分を搾り取ることにより行うものである。前記溶剤抽出は、前記油糧原料を圧扁もしくは圧搾抽出後の残渣に溶剤を接触させ、油分を溶剤溶液として抽出し、得られる溶液から溶剤を留去して油分を得ることにより行う。溶剤にはn-ヘキサンなどを使用する。
【0014】
前記油糧原料から得られた粗油は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよく、菜種粗油、大豆粗油およびコーン粗油からなる群から選ばれた1種または2種以上を含むことが好ましく、菜種粗油であることがより好ましい。
【0015】
脱ガム処理は、粗油に対して、リン脂質を主体とするガム質及び水和物質、微量金属等を除去する処理方法であり、クエン酸、リンゴ酸、及びシュウ酸等の有機酸やリン酸等の酸を用いる酸脱ガム処理、水や水蒸気を用いる水脱ガム処理とがある。これらの処理を単独で行ってもよく、両方行ってもよいが、好ましくは、酸脱ガム処理を行うことであり、より好ましくは、リン酸を用いた酸脱ガム処理を行うことである。なお、酸脱ガム処理は酸と水の両方を同時に用いた処理を含む。
【0016】
脱ガム処理を行う際の温度には特に制限はないが、60℃以上90℃以下で行うことが好ましく、70℃以上80℃以下で行うことがより好ましい。
【0017】
酸脱ガム処理を行う場合、用いる酸の量に特に制限はないが、例えば、粗油100質量部に対して0.005質量部以上2質量部以下が好ましく、0.01質量部以上1質量部以下がより好ましく、0.03質量部以上0.1質量部以下がさらに好ましい。
【0018】
本発明の酸由来の風味抑制剤の有効成分となる脱ガム油は、脱ガム処理を施された後に、後述する脱臭処理がなされていない油脂であり、好ましくは脱酸処理、脱色処理、および脱臭処理のいずれの処理もなされていない油脂である。
【0019】
脱酸処理とは、水酸化ナトリウム等のアルカリを用いて、油中の遊離脂肪酸等を除去する処理方法である。脱色工程とは、活性白土等を用いて着色物質、酸化物質、酸化促進物質等を吸着させて除去する処理方法である。脱臭処理とは、高温、高真空下で分子蒸留、短行程蒸留、水蒸気蒸留等を行うことで、揮発性物質を除去する処理方法である。
【0020】
紅花やコーンジャーム等の蝋分を含む油糧原料を用いて脱ガム油を得た場合は、脱蝋処理を行ってもよい。脱漏処理とはウィンタリングとも呼ばれ、油を冷却し、低温で固まる蝋分を析出させたあと、濾別して除去する処理方法である。
【0021】
本発明の酸由来の風味抑制剤は、前記脱ガム油の他に前記脱臭処理がなされた脱臭油を含んでいてもよい。脱臭油としては、特に限定されず、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、アマニ油、エゴマ油等の植物油脂、魚油、豚脂、牛脂、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、及びこれらに、エステル交換、水素添加、分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記脱臭油は脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理および脱臭処理のいずれもなされた油脂であることが好ましい。
【0022】
本発明の酸由来の風味抑制剤中の前記脱ガム油の含有量に、特に制限はないが、例えば、0.001質量%以上であり、好ましくは0.003質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.008質量%以上であり、さらにより好ましくは0.01質量%以上である。上限は特に制限はないが、前記脱ガム油と前記脱臭油との合計含有量が100質量%以下である。
【0023】
本発明の酸由来の風味抑制剤は、前記脱ガム油および前記脱臭油以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の任意の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、有機酸脂肪酸グリセリンエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、ポリソルベート等の乳化剤;カロテン等の着色料;トコフェロール等の酸化防止剤;シリコーン;香料等が挙げられる。
【0024】
本発明の酸由来の風味抑制剤の製造方法は、粗油を脱ガム処理し脱ガム油を得る工程を含む。脱ガム処理は、前述した通りの処理方法を用いることができる。前記脱ガム油と脱臭油を混合する工程を含むことが好ましい。前述した他の任意の成分を含む場合は、その成分を混合する工程をさらに含んでもよい。混合する前記工程は、周知の方法を採用することができる。混合する前記工程において、前記脱ガム油と前記脱臭油の混合する量は、上述した各成分の含有量に合わせてもよい。
【0025】
本発明の酸由来の風味を有する飲食物の酸由来の風味を抑制する方法は、前記飲食物の原料および前記飲食物からなる群から選ばれる1種または2種に、前記風味抑制剤を添加する。前記方法にて、前記飲食物の喫食時に感じられる酸由来の風味を抑制することができる。酸由来の風味を有する飲食物は、通常、酸由来の風味の原因物質である、有機酸および有機酸塩の1種または2種を含有するため、前記方法は、有機酸および有機酸塩の1種または2種を含有する飲食物に好適に用いることができる。
【0026】
有機酸および有機酸塩の1種または2種を含有する飲食物に、特に制限はなく、例えば、トマト等の野菜類;レモン、ライム、ゆず、リンゴ、梅、イチゴ等の果実類;ヨーグルト、漬物類等の発酵食品;米酢、穀物酢、黒酢、果実酢、ワインビネガー等の食酢などの元来有機酸および有機酸塩の1種または2種を含有する飲食物素材並びに、これら飲食物素材を原材料とするジュース、ケチャップ、ドレッシング等、あるいは有機酸および有機酸塩の1種または2種が添加された加工飲食物等が挙げられる。これらの中でも有機酸および有機酸塩の1種または2種が添加された加工飲食物を使用対象とすることが好ましい。前記加工飲食物としては、白飯、炊き込みご飯、炒飯、おかゆ、茶飯、赤飯、栗又は豆等の具材入りご飯等の調理加工米飯、レトルト米飯、無菌包装米飯などの炊飯物;ハム、ソーセージなどの加工肉食品;パスタ、ラーメン、うどん、そば、そうめん、冷麺、冷やし中華などの麺食品;サラダ;サンドイッチなどの調理パン;缶詰等が挙げられ、中でも、炊飯物が好ましい。
【0027】
前記有機酸としては、食用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、アジピン酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、フマル酸、蓚酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸等が挙げられ、前記有機酸塩としては、前記有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸およびアジピン酸並びにそれらの塩が好ましく挙げられる。本発明の酸由来の風味抑制剤の対象となる酸は、酸臭を抑制する効果があるため、酸臭を感じやすい酢酸および酢酸塩の1種または2種を含むことが特に好ましい。
【0028】
前記飲食物の原料および前記飲食物からなる群から選ばれる1種または2種に、前記風味抑制剤を添加する方法としては、特に制限はなく、飲食物の製造工程において原材料に前記風味抑制剤を混合して添加する方法、前記風味抑制剤を飲食物に塗布、噴霧又は飲食物を前記風味抑制剤に浸漬する方法等が挙げられる。例えば、前記飲食物が炊飯物である場合、炊飯原材料に、有機酸および有機酸塩の1種または2種、および前記風味抑制剤を添加して、炊飯を行う方法を用いても、酸由来の風味が抑制された炊飯物を得ることができる。
【0029】
本発明の酸由来の風味抑制剤の飲食物に対する添加量は、前記飲食物が呈する酸由来の風味の強さ及び質、前記飲食物の製造方法、目的とする酸由来の風味抑制効果の程度等により異なるため一様ではないが、例えば、加工飲食物の原材料に混合して添加する場合、該加工飲食物の他の原材料の合計100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下、好ましくは0.1質量部以上5質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以上1質量部以下である。
また、該加工飲食物の他の原材料の合計100質量部に対して、酸由来の風味抑制剤を有効成分である脱ガム油が0.00005質量部以上0.2質量部以下となるように添加することが好ましく、0.0005質量部以上0.1質量部以下となるように添加することがより好ましく、0.001質量部以上0.02質量部以下となるように添加することが好ましい。
【0030】
また、本発明の酸由来の風味抑制剤は、飲食物に対して保存性を高める目的等で添加される有機酸および有機酸塩の1種または2種を含有する静菌剤、日持ち向上剤等に配合し、製剤化して使用してもよい。このようにすることで、静菌剤、日持ち向上剤等を飲食物に添加した際に、前記飲食物に付与される酸由来の風味を抑制することができる。
【実施例0031】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0032】
(1)原料
酸由来の風味抑制剤の調製に際し、以下のものを使用した。
【0033】
精製菜種油:AJINOMOTOさらさらキャノーラ油(脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理が施された油脂)、株式会社J-オイルミルズ製
菜種粗油:(1-1)に記載の製造方法で製造された油脂
菜種脱ガム油:(1-2)に記載の製造方法で製造された油脂
大豆脱ガム油:(1-3)に記載の製造方法で製造された油脂
コーン脱ガム油:(1-4)に記載の製造方法で製造された油脂
【0034】
(1-1)菜種粗油の製造方法
60℃に予備加熱し柔らかくなった菜種(キャノーラ)を、ロールミル処理により粗砕および圧扁しフレーク状にした。このフレークをエキスペラにより、圧搾し菜種圧搾油を得た。圧搾後に得られた圧搾菜種をn-ヘキサンで油分を抽出してミセラを得た。得られたミセラから減圧下、60~80℃で残留するn-ヘキサンを除去して菜種抽出油を得た。菜種圧搾油と菜種抽出油を混合し、菜種粗油を得た。
【0035】
(1-2)菜種脱ガム油の製造方法
(1-1)で製造した菜種粗油を75℃に加温し、菜種粗油100質量部に対して0.05質量部のリン酸(食品添加物、富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し5分攪拌後、2質量部の水を添加し20分攪拌した。攪拌後遠心分離し、得られた上清を回収し、菜種脱ガム油を得た。
【0036】
(1-3)大豆脱ガム油の製造方法
大豆を4~6分割に破砕後、60℃に加温しロールにより圧扁しフレーク状にした。このフレークをn-ヘキサンで油分を抽出してミセラを得た。得られたミセラから減圧下、60~80℃で残留するn-ヘキサンを除去して大豆粗油を得た。
得られた大豆粗油を75℃に加温し、大豆粗油100質量部に対して0.05質量部のリン酸(食品添加物、富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し5分攪拌後、2質量部の水を添加し20分攪拌した。攪拌後遠心分離し、得られた上清を回収し、大豆脱ガム油を得た。
【0037】
(1-4)コーン脱ガム油の製造方法
60℃に予備加熱し柔らかくなったコーンジャームを、ロールミル処理により粗砕および圧扁しフレーク状にした。このフレークをエキスペラにより、圧搾しコーン圧搾油を得た。圧搾後に得られた圧搾コーン胚芽圧搾後に得られた圧搾菜種をn-ヘキサンで油分を抽出してミセラを得た。得られたミセラから減圧下、60~80℃で残留するn-ヘキサンを除去してコーン抽出油を得た。圧搾油と抽出油を混合し、コーン粗油を得た。
得られたコーン粗油を75℃に加温し、コーン粗油100質量部に対して0.05質量部のリン酸(食品添加物、富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し5分攪拌後、2質量部の水を添加し20分攪拌した。攪拌後遠心分離し、得られた上清を回収し、コーン脱ガム油を得た。
【0038】
(2)炊飯物の調製と評価
表1に記載の配合で調製した酸由来の風味抑制剤(以降、風味抑制剤とも記載)を用いて、炊飯物を以下の手順で調製した。生米(千葉県産コシヒカリ)400gを洗米し、25℃の水に浸漬し、その後、ざるへ移して水を切った。この米に水を足して全量を960gとして炊飯試料とした。米飯酢(ライスプラス-2、キユーピー醸造株式会社製)12gと風味抑制剤4gとを、前記炊飯試料に加え、家庭用電気炊飯器(圧力IH炊飯ジャー NP-BG10型 象印マホービン株式会社製)にて炊飯した。炊飯後、釜底1cm以上の炊飯物を軽くほぐし、真空冷却(23℃)した。パックに炊飯物をつめ、蓋をした。20℃で1日保管した炊飯物を専門パネラー3名が酸味と酸臭について下記評価基準により評価した。なお、酸味は保管した炊飯物をそのまま食して評価し、酸臭は電子レンジで65℃に温めた炊飯物の臭いを評価した。専門パネラー3名の評点の平均値を評価値とした。各評価値は表1に示した。
【0039】
【0040】
(酸味の評価基準)
4:酸味が感じられない
3:対照例よりも酸味が感じない
2:対照例よりもやや酸味が感じにくい
1:対照例と同程度の酸味を感じる
0:対照例よりも強く酸味を感じる
【0041】
(酸臭の評価基準)
4:酸臭が感じられない
3:対照例よりも酸臭が感じない
2:対照例よりもやや酸臭が感じにくい
1:対照例と同程度の酸臭を感じる
0:対照例よりも強く酸臭を感じる
【0042】
表1に示した通り、炊飯時に脱ガム油を含有する風味抑制剤(実施例1~5)を添加して得られた炊飯物は、精製菜種油だけ(対照例1)を添加して得られた炊飯物よりも酸味、酸臭とも抑制されていた。特に菜種脱ガム油を含有する風味抑制剤(実施例1~3)は、酸味、酸臭とも抑制する効果が大きかった。