(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036757
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】三次元撮像システム
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20240311BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240311BHJP
G01B 11/245 20060101ALI20240311BHJP
G06T 7/55 20170101ALI20240311BHJP
【FI】
G01C3/06 130
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01C3/06 110B
G01B11/00 H
G01B11/245 H
G06T7/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141208
(22)【出願日】2022-09-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)2022年8月4日にThe SICE Annual Conference 2022の予稿集のウェブサイト(https://controls.papercept.net/conferences/conferences/SICE22/program/SICE22_ContentListWeb_2.html#web08_01)において公開 (2)2022年9月5日にThe SICE Annual Conference 2022 (ウェブ開催)のVirtual Conference Platform(https://events.paperhost.net/conferences/conferences/SICE22/proceedings/vc)において公開
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(71)【出願人】
【識別番号】399060908
【氏名又は名称】一般財団法人NHK財団
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 数馬
(72)【発明者】
【氏名】半田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】久富 健介
【テーマコード(参考)】
2F065
2F112
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA53
2F065BB05
2F065CC16
2F065DD03
2F065FF01
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2F065FF12
2F065FF32
2F065FF41
2F065GG08
2F065GG21
2F065JJ05
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2F065JJ26
2F065NN08
2F065QQ24
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2F112DA21
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2F112EA05
2F112FA03
2F112FA21
2F112FA35
2F112FA45
2F112FA50
2F112GA01
5L096AA09
5L096CA04
5L096CA05
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA02
(57)【要約】
【課題】一方位からのボリュメトリック画像を好適に生成することが可能な三次元撮像システムを提供する。
【解決手段】三次元撮像システム1は、対象としてのヒト2を撮像する撮像部11と、対象に赤外線を照射する赤外線照射部12aと、対象で反射した赤外線を受光する赤外線受光部12bと、対象を赤外線受光部12bとは異なる光軸で撮像する赤外線受光部22,22と、を備え、制御部12c,13,23,30は、赤外線受光部12bの受光結果に基づいて対象までの距離を検出することができない対象の部位に関して、赤外線受光部22,22の撮像結果に基づいて対象の部位までの距離を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を撮像する撮像部と、
前記対象に赤外線を照射する赤外線照射部と、
前記対象で反射した前記赤外線を受光する赤外線受光部と、
前記対象を前記赤外線受光部とは異なる光軸で撮像するステレオ撮像部と、
前記赤外線受光部の受光結果又は前記ステレオ撮像部の撮像結果に基づいて、前記対象の各部位までの距離を算出する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記赤外線照射部によって照射された前記赤外線及び前記赤外線受光部によって受光された前記赤外線の照射時刻及び受光時刻の時間差、又は、位相差に基づいて、前記対象の各部位までの距離を算出する第一の距離算出部と、
前記ステレオ撮像部の撮像結果に基づいて、前記対象の各部位までの距離を算出する第二の距離算出部と、
前記第一の距離算出部によって算出された前記距離を前記撮像結果に付与する距離情報付与部と、
を備え、
前記距離情報付与部は、前記第一の距離算出部によって前記対象までの距離を算出することができない前記対象の部位に関して、前記第二の距離算出部によって算出された距離を付与する
ことを特徴とする三次元撮像システム。
【請求項2】
前記赤外線受光部及び前記ステレオ撮像部は、前記撮像部を挟むように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元撮像システム。
【請求項3】
前記赤外線受光部は、前記撮像部よりも下方に設けられており、
前記ステレオ撮像部は、前記撮像部よりも上方に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の三次元撮像システム。
【請求項4】
前記ステレオ撮像部は、赤外線領域におけるアクティブステレオビジョン方式で前記対象を撮像する
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象を三次元的に撮像するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象を三次元的に撮像するための技術として、対象に対して赤外線を照射し、当該赤外線が対象で反射して戻ってくるまでの時間に基づいて対象までの距離を計測するToF(Time of Flight)方式が用いられている。
【0003】
ToF方式では、赤外線に対する反射が弱い物質(例えば、ヒトの黒髪)に対しては、距離の計測の精度が低下したり、距離を計測することができなかったりするという問題がある。これに対し、特許文献1には、距離画像によって生成され三次元モデルと、カラー画像によって生成された三次元モデルと、をブレンドすることによって前記した問題を解消する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、全方位からのボリュメトリック画像の生成を想定したものである。これに対し、一方位からのボリュメトリック画像は、観察者の視点がある程度限定される環境(例えば、実空間に合成されたバーチャルなヒトを実空間でカメラマンが撮影する場合等)では十分な機能を満たしており、設営が簡単であることから需要があると考えられる。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、一方位からのボリュメトリック画像を好適に生成することが可能な三次元撮像システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明の三次元撮像システムは、撮像部と、赤外線照射部と、赤外線受光部と、ステレオ撮像部と、制御部と、を備える。
【0008】
三次元撮像システムは、前記撮像部により、対象を撮像し、前記赤外線照射部により、前記対象に赤外線を照射し、前記赤外線受光部により、前記対象で反射した前記赤外線を受光し、前記ステレオ撮像部により、前記対象を前記赤外線受光部とは異なる光軸で撮像する。
また、三次元撮像システムは、前記制御部により、前記赤外線受光部の受光結果又は前記ステレオ撮像部の撮像結果に基づいて、前記対象の各部位までの距離を算出する。
【0009】
前記制御部は、前記赤外線照射部によって照射された前記赤外線及び前記赤外線受光部によって受光された前記赤外線の照射時刻及び受光時刻の時間差、又は、位相差に基づいて、前記対象の各部位までの距離を算出する第一の距離算出部と、前記ステレオ撮像部の撮像結果に基づいて、前記対象の各部位までの距離を算出する第二の距離算出部と、前記第一の距離算出部によって算出された前記距離を前記撮像結果に付与する距離情報付与部と、を備える。
【0010】
三次元撮像システムは、前記距離情報付与部により、前記第一の距離算出部によって前記対象までの距離を算出することができない前記対象の部位に関して、前記第二の距離算出部によって算出された距離を付与する。
【0011】
前記赤外線受光部及び前記ステレオ撮像部は、前記撮像部を挟むように配置されている構成であってもよい。
【0012】
前記赤外線受光部は、前記撮像部よりも下方に設けられており、前記ステレオ撮像部は、前記撮像部よりも上方に設けられている構成であってもよい。
【0013】
前記ステレオ撮像部は、赤外線領域におけるアクティブステレオビジョン方式で前記対象を撮像する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の三次元撮像システムによると、一方位からのボリュメトリック画像を好適に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る三次元撮像システムを模式的に示すブロック図である。
【
図2】第一のカメラ装置の撮像部によって撮像された点及び距離検出部によって検出された点の位置合わせ手法を説明するための模式図である。
【
図3】
図2で示される位置合わせ手法の一例として、xyテーブルを用いることによって、距離検出部で検出された点を空間上の点に対応させる手法を説明するための模式図である。
【
図4】第一のカメラ装置及び第二のカメラ装置の動作例を説明するための模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る第一のカメラ装置の撮像部及び距離検出部と第二のカメラ装置との位置関係の一例を模式的に示す図である。
【
図6】(a)は撮像部による撮像結果の例を模式的に示す図であり、(b)は距離検出部による距離検出結果の例を模式的に示す図である。
【
図7】(a)は、第一のカメラ装置によって撮像された三次元画像の例を模式的に示す図、(b)は、当該三次元画像の距離を第二のカメラ装置の検出結果に基づいて距離が補完された三次元画像の例を模式的に示す図である。
【
図8】(a)は、
図7(a)に示す三次元画像を上から見た三次元画像の例を模式的に示す図、(b)は、
図7(b)に示す三次元画像を上から見た三次元画像の例を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る三次元撮像システムの動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について、本発明を対象としてヒトの撮像に適用した場合を例にとり、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る三次元撮像システム1は、撮像対象としてのヒト2を一方位から撮像したボリュメトリック画像を生成するためのシステムである。三次元撮像システム1は、撮像対象としてのヒト2の一方位側(本実施形態では、平面視で撮像対象としてのヒト2の周囲360度における一方向側)に配置される第一のカメラ装置10及び第二のカメラ装置20と、制御部30と、表示装置40と、を備える。
【0018】
<第一のカメラ装置>
第一のカメラ装置10は、ToF(Time of Flight)方式での距離検出を実行可能なカメラ(例えば、AKDK:Azure Kinect DK)であり、撮像部11と、距離検出部12と、制御部13と、を備える。
【0019】
<撮像部>
撮像部11は、対象としてのヒト2をカラーで撮像し、撮像結果(画素ごとのRGB値)及び受光素子(画素)の位置情報を制御部13へ出力する。
【0020】
<距離検出部>
距離検出部12は、対象としてのヒト2までの距離をToF方式で検出するための赤外線センサである。ToF方式は、画素ごとに距離を検出することができるため、ステレオ方式と比較して、精度は高いが、特定の波長のみによって対象を観測するため、対象に対する波長の相性の影響を受けやすい。距離検出部12は、赤外線照射部12aと、赤外線受光部12bと、制御部12cと、を備える。
【0021】
≪赤外線照射部≫
赤外線照射部12aは、対象としてのヒト2へ所定の波長を有する赤外線を照射する発光素子である。
【0022】
≪赤外線受光部≫
赤外線受光部12bは、対象としてのヒト2で反射した赤外線を受光する複数の受光素子と、当該受光素子の受光面に設けられるシャッタと、を備える。赤外線受光部12bは、受光結果及び受光素子(画素)の位置情報を制御部12cへ出力する。赤外線受光部12bにおけるシャッタとしては、物理シャッタ、電子シャッタ、制御部12cにおける赤外線の変調としての重みづけをゼロとする手法によるシャッタ等が好適に利用可能である。
【0023】
≪制御部(第一の距離算出部)≫
制御部12cは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路等によって構成されている。制御部12cは、赤外線照射部12aを制御することによって、赤外線照射部12aに対象としてのヒト2へ赤外線を照射させる。制御部12cは、赤外線受光部12bのシャッタを制御することによって、赤外線受光部12bの画素に赤外線を受光させる。制御部12cは、赤外線受光部12bの受光結果及び各画素の位置情報を取得し、赤外線受光部12bの画素ごとに、変調して照射された赤外線及び受光された赤外線を変調したものの位相差を算出する。制御部12cは、算出された位相差に基づいて、赤外線受光部12bと対象としてのヒト2との間の距離を算出し、算出結果(画素ごとの距離及び当該画素の位置情報)を制御部13へ出力する。ここで、照射された赤外線と受光された赤外線とを重ねると、2つの赤外線の位相差が同位相(0+2nπ、nは整数)に近い場合には、互いに強め合って振幅が大きくなり、2つの赤外線の位相差が逆位相(π+2nπ、nは整数)に近い場合には、互いに弱め合って振幅が小さくなる。制御部12cは、このように2つの赤外線を重ねる(合成波を生成する)ことによって、光速を時間積分可能な振幅に置き換えることができる。また、制御部12cは、重ねる2つの赤外線のうち、一方の位相を所定の量(例えば、π/2)程度ずらしたものを一つ用意して、位相をずらさずに重ねられた赤外線と合わせて一組とすることによって、反射光の振幅強度に依存しないようにすることができ、これらを用いることによって、位相差として距離を計測することができる。また、別の手法として、制御部12cは、赤外線照射部12aによる赤外線の照射時刻と、赤外線受光部12bによる赤外線の受光時刻と、の時間差に基づいて、赤外線受光部12bと対象としてのヒト2との間の距離を算出し、算出結果(画素ごとの距離及び当該画素の位置情報)を制御部13へ出力することもできる。
【0024】
<制御部(位置合わせ部)>
制御部13は、CPU、ROM、RAM、入出力回路等によって構成されている。制御部13は、撮像部11の撮像結果及び距離検出部12の検出結果(算出結果)並びに撮像部11及び赤外線受光部12bのそれぞれにおける各画素の位置情報を取得し、予め記憶された撮像部11及び距離検出部12の位置情報及び姿勢情報に基づいて、撮像結果及び距離の検出結果の位置合わせを行う。制御部13は、位置合わせされた撮像結果及び距離の検出結果を制御部30へ出力する。位置情報及び姿勢情報としては、撮像部11の各画素の位置情報、赤外線受光部12bの各画素の位置情報、撮像部11及び赤外線受光部12bの間の距離及び位置関係、撮像部11及び赤外線受光部12bの光軸の向き等が挙げられる。すなわち、制御部13は、撮像結果及び距離検出部12による距離の検出結果の位置合わせを行う位置合わせ部であり、制御部(第一の距離算出部)12cによって算出された距離を撮像結果に付与する距離情報付与部である。
【0025】
図2に示すように、距離検出部12は、当該距離検出部12からの距離(深度:depth)を検出することができるので、線L
B上で距離検出部12からの距離を決めることができる。すなわち、制御部13は、距離検出部12の内部パラメータK
2及び検出された距離に基づいて、距離検出部12における画像平面52上の点p
2の位置を、空間上の点p
0に戻すことができる。
【0026】
また、撮像部11によって撮像された線LA上の点p0は、撮像部11の内部パラメータK1によって、画像平面51上の点p1に投影される。
【0027】
ここで、内部パラメータK1,K2は、三次元の点を画像平面51,52上の二次元の点に変換する変換行列を構成する演算子であり、各カメラの性能としての焦点距離、主点、せん断係数、歪み係数等を含む。
【0028】
制御部13は、外部パラメータを用いることによって、点p2が点p0を介して点p1と対応する旨を算出することができる。ここで、外部パラメータは、撮像部11及び距離検出部12の相対的な位置関係を示す変数であり、本実施形態では、回転R及び並進tである。
【0029】
制御部13は、前記した点p2と対応する点p1を算出する手法を用いて、画像平面52上の全ての画素が画像平面51上のどの画素と対応するかを算出する。ここで、撮像部11及び距離検出部12がデジタル化されたもの(デジタルカメラ等)である場合には、各画素の位置関係(間隔等)がサンプリング化されているため、サンプリング化された各画素の位置関係(間隔等)に基づいて、撮像部11の画像平面51上の画素と距離検出部12の画像平面52上の画素との対応関係を算出することができる。
【0030】
なお、点p
2を点p
0に戻す手法としては、カメラパラメータ及び距離計測値を用いるもののほかに、xyテーブル及び距離計測値を用いる手法が利用可能である。
図3に示すように、xyテーブルは、それぞれの画素がz=1(所定の距離)である場合に、z=1の平面62上でのどの位置になるかを示す表である。
図3において、線L
1,L
2,L
3は、それぞれ、距離検出部12及び平面62における、ある画素を通る線を例として示すものである。ここで、一例として画像平面上の点p
2について考える。制御部13は、画像平面52上の点p
2の座標と、xyテーブルにおいて点p
2に対応する画素の座標と、に基づいて、これらを通る線L
3を算出し、距離検出部12の検出結果に基づいて、当該線L
3上における点p
0の三次元座標を算出する。
【0031】
制御部13による位置合わせで要求されるカメラパラメータは、第一のカメラ装置10の製造段階で予め設定されたカメラパラメータ(内部パラメータ及び外部パラメータ)の工場出荷値によって実行されてもよい。カメラパラメータの工場出荷値が与えられない場合には、以下に示す位置合わせ手法が利用可能である。
・キャリブレーションボード等のマーカ撮影や複数の三次元空間上の基準位置の撮像による校正手法
・撮像部11及び距離検出部12(赤外線受光部12b)の相対的距離を保ったまま、これらによって異なる位置から同一空間及び/又は同一対象が撮像された複数枚の画像を用いる手法(弱校正法の一種)
・撮像部11及び距離検出部12(赤外線受光部12b)の位置を固定したままこれらによって撮像された画像と、第三のカメラ装置(図示せず)によって異なる位置から同一空間及び/又は同一対象が撮像された複数枚の画像と、を合わせることによる手法(弱校正法の一種)
【0032】
制御部13は、位置合わせに要求されるパラメータにおいて、内部パラメータとして工場出荷値の内部パラメータを用い、外部パラメータとして算出された値を用いて位置合わせを実行してもよい。外部パラメータのみの算出とすることで、最低限必要となる対応点の数を少なくすることができる。
【0033】
<第二のカメラ装置>
第二のカメラ装置20は、ステレオビジョン方式での距離検出を実行可能なカメラ(例えば、:RS:RealSense D435i)である。ステレオビジョン方式は、特徴点として取得しやすい場所を選択して距離を検出するため、ToF方式と比較して、精度は低いが安定性は高い。本実施形態において、第二のカメラ装置20は、アクティブステレオビジョン方式及びパッシブステレオビジョン方式の両方を採用している。第二のカメラ装置20は、赤外線パターンを対象に投影し、かかる赤外線パターンを用いてステレオ画像のマッチングを実行する(アクティブステレオビジョン方式)。また、第二のカメラ装置20は、赤外線パターンの反射が弱い領域では、ステレオ画像内の特徴点を用いてステレオ画像のマッチングを実行する(パッシブステレオビジョン方式)。第二のカメラ装置20は、赤外線照射部21と、ステレオ撮像部としての一対の赤外線受光部22,22と、制御部23と、を備える。
【0034】
<赤外線照射部>
赤外線照射部21は、対象としてのヒト2へ表面に対する特徴点付与のためのパターン化された(ランダムドット等といったランダムなパターンを含む)赤外線を照射する。
【0035】
<赤外線受光部>
赤外線受光部22は、対象としてのヒト2で反射した赤外線(特徴点付与のためのパターン化された赤外線を含む)を受光し、受光結果及び受光素子(画素)の位置情報を制御部23へ出力する。
【0036】
<制御部(第二の距離算出部)>
制御部23は、赤外線照射部21を制御することによって、赤外線照射部21に対象としてのヒト2へ特徴点付与のための赤外線を照射させる。制御部23は、赤外線受光部22のシャッタを制御することによって、赤外線受光部22の画素に、特徴点付与のための赤外線を含む赤外線領域の赤外線(映像)を受光させる。制御部23は、特徴点付与のための赤外線の受光結果に基づいて、一対の赤外線受光部22,22の中から共通の特徴点を持つ点を検出し、ステレオの視差に基づいて、基準の位置(例えば、一対の赤外線受光部22,22の中間地点)からの対象としてのヒト2の各部位(画素に対応)までの距離を算出し、算出結果(各画素ごとの距離及び当該画素の位置情報)を制御部30へ出力する。
【0037】
制御部23は、ステレオ視を行うために必要なパラメータとして、赤外線受光部22,22の内部パラメータ及び外部パラメータを制御部13で用いられた手法と同様の手法で算出することができる。また、赤外線受光部22,22がアクティブステレオビジョン方式を採用している場合には、赤外線受光部22,22は、赤外線の検出が可能である。したがって、この場合には、赤外線照射部21がマーカとしてのパターン化された赤外線を対象としてのヒト2及び撮像空間に照射するとともに、制御部23が赤外線受光部22,22によるマーカの検出結果を用いて赤外線受光部22,22の内部パラメータ及び外部パラメータを算出することもできる。
【0038】
<第一のカメラ装置及び第二のカメラ装置の動作例>
図4に示すように、第一のカメラ装置10において、赤外線照射部12aは、1フレーム中に複数回(本実施形態では、9回)オンオフ動作を繰り返し、赤外線受光部12bのシャッタは、同様に1フレーム中に複数回(本実施形態では、9回)開閉動作を繰り返す。すなわち、赤外線受光部12bは、1フレーム中に赤外線照射部12aがオンかつシャッタが開の複数回(本実施形態では、9回)のタイミングで赤外線を受光する。
【0039】
一方、第二のカメラ装置20において、赤外線照射部21は、1フレーム中に常にオン状態を維持し、赤外線受光部22のシャッタは、1フレーム中に1回開閉動作を繰り返す。すなわち、赤外線受光部22は、1フレーム中に赤外線照射部21がオンかつシャッタが開の1回のタイミングで赤外線を受光する。
【0040】
ここで、赤外線受光部22は、第一のカメラ装置10の赤外線照射部12aによって照射されて対象としてのヒト2で反射した赤外線も受光する。すなわち、赤外線受光部22における赤外線の受光強度は、赤外線照射部12aによる赤外線も積算されたものとなる。ここで、制御部23は、赤外線照射部12aから照射された赤外線を外乱として考慮し、赤外線照射部21の赤外線照射強度、赤外線受光部22のシャッタの絞り及び開放時間等を調整することによって、赤外線照射部12aによる赤外線の影響を抑えることができる。
【0041】
<制御部>
図1に示すように、制御部30は、CPU、ROM、RAM、入出力回路等によって構成されている。制御部30は、機能部として、位置合わせ部31と、距離補完部32と、を備える。
【0042】
<位置合わせ部>
位置合わせ部31は、第一のカメラ装置10の位置合わせされた撮像結果及び距離の検出結果、第二のカメラ装置20の距離検出部12の検出結果(算出結果)、並びに、第一のカメラ装置10及び第二のカメラ装置20のそれぞれのカメラパラメータを取得し、取得されたカメラパラメータ、並びに、撮像部11及び赤外線受光部22の間のカメラパラメータ(外部パラメータ)に基づいて、制御部13と同様の手法によって、撮像結果及び距離の検出結果の位置合わせを行う。
【0043】
すなわち、位置合わせ部31による位置合わせには、第一のカメラ装置10及び第二のカメラ装置20の外部パラメータを算出する必要がある(ここで、第一のカメラ装置10及び第二のカメラ装置20の内部パラメータは、制御部13,23に予め設定されているため既知である)。位置合わせのために各カメラ(撮像部11、赤外線受光部12b、赤外線受光部22,22)を対応付けて外部パラメータを算出する手法としては、例えば以下に示す手法が利用可能であり、その他の手法(例えば、第一のカメラ装置10及び第二のカメラ装置20が一体化されている場合には、カメラパラメータの工場出荷値を用いることができる)も利用可能である。
・第一のカメラ装置10の撮像部11と、第二のカメラ装置20に設けられており、内部パラメータ及び赤外線受光部22,22との対応関係(外部パラメータ)が既知のカラー撮像部(図示せず)と、を対応付けることによって、第一のカメラ装置10の撮像部11と第二のカメラ装置20の赤外線受光部22,22とを対応付ける手法。前記した制御部13による位置合わせと同様の手法であり、カラー画像同士を用いるため、位置合わせが容易である。
・第一のカメラ装置10の赤外線受光部12bと第二のカメラ装置20の赤外線受光部22,22とを対応付ける手法。前記した制御部23による位置合わせの手法と同様に、赤外線照射部21によってマーカを照射してもよい。
・第一のカメラ装置10の撮像部11と第二のカメラ装置20の赤外線受光部22,22とを対応付ける手法。前記した制御部13による位置合わせと同様の手法である。
【0044】
<距離補完部>
距離補完部32は、対象としてのヒト2の各部位の距離検出部12によって検出された距離が検出不能を示すもの(本実施形態では、距離がゼロ)である場合に、当該部位の距離として、第二のカメラ装置20によって検出された距離を採用する(補完する)。距離補完部32は、対象としてのヒト2の撮像結果及び距離(必要によって補完済み)を表示装置40へ出力する。すなわち、位置合わせ部31及び距離補完部32は、制御部(第一の距離算出部)12cによって対象までの距離を算出することができない対象の部位に関して、制御部(第二の距離算出部)23によって算出された距離を付与する距離情報付与部である。
【0045】
<表示装置>
表示装置40は、対象としてのヒト2の撮像結果及び距離を取得し、取得された撮像結果及び距離に基づいて、対象としてのヒト2を三次元的に表示する。表示装置40は、制御部30からの出力に応じて、撮像部11によって撮像されたヒトを撮像方向から見た状態で三次元的に表示したり(
図7参照)、撮像方向以外の方向から見た状態(例えば、斜め上から下向きに見た状態)で三次元的に表示したりすることができる(
図8参照)。
【0046】
<カメラ装置の配置による距離の補完手法>
図5に示すように、本実施形態において、撮像部11、赤外線受光部12b及び一対の赤外線受光部22,22は、対象としてのヒト2の一方位側(正面側)において1.2mの距離に配置されている。また、赤外線受光部12bは、撮像部11よりも下方に配置されており、一対の赤外線受光部22,22は、撮像部11よりも上方に配置されている。撮像部11は、光軸が水平となるように配置されており、一対の赤外線受光部22,22は、撮像部11の320mm上方に光軸が水平から下へ15度傾斜するように配置されている。すなわち、赤外線受光部12b及び一対の赤外線受光部22,22は、対象としてのヒト2から見て、撮像部11を上下に挟むように配置されている。なお、撮像部11、赤外線受光部12b及び一対の赤外線受光部22,22は、対象としてのヒト2の一方位側において、鉛直方向の一直線上に配置されていてもよく、左右方向、及び/又は、対象としてのヒト2に対する前後方向に互いにオフセットして配置されていてもよい。また、
図1において上下を示す矢印は、撮像部11、赤外線受光部12b及び一対の赤外線受光部22,22の位置関係を示すものである。
【0047】
また、対象としてのヒト2に対する撮像部11、赤外線受光部12b及び赤外線受光部22,22の距離及び/又は角度、並びに、撮像部1、赤外線受光部12b及び赤外線受光部22,22の間の距離及び/又は角度は、前記したものに限定されず、対象までの距離、撮像部11、赤外線受光部12b及び赤外線受光部22,22のそれぞれの性能等によって、適宜変更可能である。
【0048】
図6(a)に示すように、撮像部11は、対象としてのヒト2を撮像する(撮像結果としてのヒト2a)。また、
図6(b)に示すように、距離検出部12は、対象としてのヒト2までの距離を検出する(距離検出結果としてのヒト2b)。
図6(b)において、白抜きの部位は、距離を検出することができた部位であり、模様で示される部位は、距離を検出することができなかった部位である。ここで、頭髪2b1及び折り曲げられた左腕の上部2b2は、撮像部11よりも下方から距離が検出されるので、死角が発生して距離検出部12では距離が検出されないことがある。また、黒い頭髪2b1は、赤外線を反射しにくいので、距離検出部12では距離が検出されないことがある。そのため、制御部13によって位置合わせされた撮像結果及び距離に基づいて対象としてのヒト2が表示装置40によって三次元表示される場合には、
図7(a)及び
図8(a)に示すように、頭髪及び左腕の上部が欠落したヒト2cが表示装置40に表示される。
【0049】
これに対し、第二のカメラ装置20は、撮像部11よりも上方に配置されているので、距離検出部12では死角となる部位までの距離を検出することができる。また、第二のカメラ装置20は、距離検出部12とは異なるステレオ撮像という手法を用いることによって(本実施形態では、赤外線を異なる方向から照射することで対象の反射特性を変えることによって)、距離検出部12では距離を検出することができない部位までの距離を検出することができる。したがって、三次元撮像システム1では、距離補完部32が、第二のカメラ装置20によって検出された距離によって頭髪2b1及び左腕の上部2b2までの距離を補完するので、
図7(b)及び
図8(b)に示すように、頭髪及び左腕の上部を含むヒト2dが表示装置40に表示される。
【0050】
なお、距離の補完対象としての赤外線を反射しにくい部位としては、黒い頭髪2b1以外にも、メガネ等といった透過度の高い物体等が挙げられる。
【0051】
また、距離が補完された部位は、不自然となって表示装置40の観察者に違和感を覚えさせる可能性がある。これに対し、三次元撮像システム1では、不自然な部位をヒトの左右ではなく上下(本実施形態では、上)に発生させるので、観察者が覚える違和感を低減することができる。
【0052】
<変形例>
距離補完部32は、対象としてのヒト2の各部位のうち、距離検出部12及び第二のカメラ装置20の両方で距離を検出することができない部位に関して、撮像部11の撮像結果を用いたフィルタ処理を実行してもよい。ここで、フィルタ処理は、色情報に基づいて対象の境界を判断し、距離の値を境界内で広げて採用することによって、距離を検出することができない部位の周辺の距離の値を用いて距離を補完する手法である。かかるフィルタ処理は、特徴点を有しておらず、パターン化された赤外線照射によっても特徴点付与が困難な(赤外線の反射が弱い、又は、赤外線の反射が周囲と比較して相対的に強すぎる等の)対象の部位に対して好適な手法である。
【0053】
<動作例>
続いて、本発明の実施形態に係る三次元撮像システムの動作例について、
図9のフローチャートを参照して説明する(適宜
図1参照)。
【0054】
まず、第一のカメラ装置10が、対象としてのヒト2を撮像するとともに、対象としてのヒト2までの距離を検出し、撮像結果(RGB値)及び距離(D値)を取得する(ステップS1)。ここで、RGB値及びD値の位置合わせが実行される。
【0055】
続いて、第二のカメラ装置20が、対象としてのヒト2までの距離を検出し、距離(D値)を取得する(ステップS2)。ステップS2は、ステップS1よりも先に実行されてもよく、ステップS1と同時に実行されてもよい。
【0056】
続いて、制御部30が、第二のカメラ装置20のD値を第一のカメラ装置10のRGB値及びD値に位置合わせする(ステップS3)。
【0057】
続いて、制御部30が、対象としてのヒト2の各部位のうち、第一のカメラ装置10のD値が欠落している部位に関して、同じ部位における第二のカメラ装置20のD値を用いて補完する(ステップS4)。
【0058】
なお、ステップS3,S4に関して、制御部30は、対象としてのヒト2の各部位のうち、第一のカメラ装置10のD値が欠落している部位がある場合に、当該部位に関してステップS3を実行する構成であってもよい。
【0059】
<実施例>
前記した三次元撮像システム1を用いて、対象として5名(男性4名、女性1名)を撮像し、顔周辺の距離補完について分析した。三次元撮像システム1は、距離検出部12では距離が欠落していた画素の70%以上に第二のカメラ装置20によって検出された距離を付与することができ、画素(カラー画像)全体の75%に距離が付与されていたものを93%の付与に改善することができた。
【0060】
本発明の第一の実施形態に係る三次元撮像システム1は、対象を撮像する撮像部11と、前記対象に赤外線を照射する赤外線照射部12aと、前記対象で反射した前記赤外線を受光する赤外線受光部12bと、前記対象を前記赤外線受光部12bとは異なる光軸で撮像するステレオ撮像部(赤外線受光部22,22)と、前記赤外線受光部12bの受光結果又は前記ステレオ撮像部の撮像結果に基づいて、前記対象の各部位までの距離を算出する制御部12c,13,23,30と、を備える。
前記制御部12c,13,23,30は、前記赤外線照射部12aによって照射された前記赤外線及び前記赤外線受光部12bによって受光された前記赤外線の照射時刻及び受光時刻の時間差、又は、位相差に基づいて、前記対象の各部位までの距離を算出する第一の距離算出部(制御部12c)と、前記ステレオ撮像部の撮像結果に基づいて、前記対象の各部位までの距離を算出する第二の距離算出部(制御部23)と、
前記第一の距離算出部によって算出された前記距離を前記撮像結果に付与する距離情報付与部(制御部13,30)と、を備える。
前記距離情報付与部は、前記第一の距離算出部12cによって前記対象までの距離を算出することができない前記対象の部位に関して、前記第二の距離算出部23によって算出された距離を付与する。
したがって、三次元撮像システム1は、赤外線照射部12a及び赤外線受光部12bを用いた距離検出を優先することによって、対象の各部位までの距離を高精度(かつ高解像度)に得ることができ、距離検出不能な部位に関しては、ステレオ撮像部を用いた距離検出によって、対象の各部位までの距離を安定的に得ることができる。すなわち、三次元撮像システム1は、一方位からの三次元画像(ボリュメトリック画像)を好適に生成することができる。
【0061】
三次元撮像システム1において、前記赤外線受光部12b及び前記ステレオ撮像部は、前記撮像部11を挟むように配置されている。
したがって、三次元撮像システム1は、赤外線受光部12bでは死角になる部位までの距離をステレオ撮像部によって好適に得ることによって、一方位からの三次元画像を好適に生成することができる。
【0062】
三次元撮像システム1において、前記赤外線受光部12bは、前記撮像部11よりも下方に設けられており、前記ステレオ撮像部は、前記撮像部11よりも上方に設けられている。
したがって、三次元撮像システム1は、赤外線照射部12a及び赤外線受光部12bを用いた対象の各部位の距離検出では検出不能となるおそれがあるヒト2の頭髪(黒髪)部位に関して、ステレオ撮像部を用いた距離検出によって、死角を作ることなく好適に距離を得ることによって、一方位からの三次元画像を好適に生成することができる。
【0063】
三次元撮像システム1において、前記ステレオ撮像部は、赤外線領域におけるアクティブステレオビジョン方式で前記対象を撮像する。
したがって、三次元撮像システム1は、赤外線照射部12a及び赤外線受光部12bを用いた対象の各部位の距離検出では検出不能となる部位に関しても、パターン化された赤外線の照射によって対象の表面における特徴点を増やし、距離を好適に検出することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、制御部12c,13,23,30は、同一基板上に一体化されてもよい。また、赤外線受光部12b及び赤外線受光部22,22は、時分割方式によって一体化されてもよい。また、撮像部11の撮像結果、距離検出部12の距離検出結果、及び、第二のカメラ装置20の距離検出結果の位置合わせは、撮像結果及び距離検出結果のいずれかの位置を基準としてもよく、これらとは別の位置を基準としてもよく、位置合わせの順番も適宜変更可能である。また、撮像部11は、第二のカメラ装置20内に設けられて赤外線受光部22,22と一体化されていてもよく、第一のカメラ装置10(距離検出部12)及び第二のカメラ装置20(赤外線受光部22,22)とは別体として独立したものであってもよい。また、本発明は、ヒト2以外の対象を三次元的に撮像することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 三次元撮像システム
2 ヒト(対象)
10 第一のカメラ装置
11 撮像部
12a 赤外線照射部
12b 赤外線受光部
12c 制御部(第一の距離算出部)
13 制御部(距離情報付与部)
20 第二のカメラ装置
22 赤外線受光部(ステレオ撮像部)
23 制御部(第二の距離算出部)
30 制御部(距離情報付与部)
40 表示装置