(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036792
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】記録再生装置
(51)【国際特許分類】
G11B 17/038 20060101AFI20240311BHJP
G11B 25/04 20060101ALI20240311BHJP
G11B 33/14 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G11B17/038
G11B25/04 101A
G11B33/14 501W
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141266
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 史修
(57)【要約】
【課題】外部からの衝撃に対して記録媒体を保護すると共に、記録媒体の一部が削れて破片や塵が発生することを抑制した記録再生装置を提供する。
【解決手段】ケース2の内部に、円盤状の記録媒体3と、記録媒体3を回転駆動するモータ4と、記録媒体3に対する情報の読み出し又は書き込みを行うヘッド6と、ヘッド6を記録媒体3の径方向に走査駆動するアクチュエータ8とを備える記録再生装置1であって、記録媒体3に外部からの衝撃が加わった際に、記録媒体3の外周端部と接触することによって、記録媒体3に生じる撓みによる変位を規制する規制部20を有し、規制部20は、記録媒体3の回転軸と平行な軸回りに回転可能な規制部材21を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内部に、円盤状の記録媒体と、前記記録媒体を回転駆動するモータと、前記記録媒体に対する情報の読み出し又は書き込みを行うヘッドと、前記ヘッドを前記記録媒体の径方向に走査駆動するアクチュエータとを備える記録再生装置であって、
前記記録媒体に外部からの衝撃が加わった際に、前記記録媒体の外周端部と接触することによって、前記記録媒体に生じる撓みによる変位を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記記録媒体の回転軸と平行な軸回りに回転可能な規制部材を有することを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
前記規制部材は、前記記録媒体の外周端部と対向する一対の接触面を有し、
前記一対の接触面は、前記記録媒体の外周端部を挟んで互いに逆向きに傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
前記記録媒体は、軸方向に複数並んで設けられ、
前記規制部材の外周端部には、前記記録媒体の各々に対応して、前記一対の傾斜面が軸方向に複数並んで設けられていることを特徴とする請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項4】
前記記録媒体は、軸方向に複数並んで設けられ、
前記規制部材は、前記記録媒体の各々に対応して、軸方向に複数並んで設けられていることを特徴とする請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項5】
前記規制部材は、前記記録媒体の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項6】
前記規制部は、前記規制部材を軸方向の一方側に向けて付勢する付勢部材を有することを特徴とする請求項5に記載の記録再生装置。
【請求項7】
前記規制部材は、前記記録媒体の回転軸と平行な支軸に軸支されていることを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項8】
前記規制部は、前記記録媒体の周方向における複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項9】
前記記録媒体は、その直径が90mm以上、且つ、その厚みが0.550mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)は、大容量の情報を記憶することが可能な記録再生装置である。このような記録再生装置は、ケースの内部に、複数のディスク(円盤状の記録媒体)と、複数のディスクを回転駆動するスピンドルモータと、複数のサスペンションアームの各々の先端に取り付けられたヘッドと、ヘッドをディスクの径方向に走査駆動するボイスコイルモータとを備え、ディスクを回転させながら、ディスクの面上で走査されるヘッドによりディスクに対する情報の書き込み(記録)又は読み出し(再生)を行う。
【0003】
ところで、HDDでは、規格化されたHDD1台当たりの記憶容量を高めるため、ケース内に収納されるディスクの枚数を増やす試みが行われている。また、HDDでは、装置の小型化に伴い、隣り合うディスクの間隔やディスクと他の部品との間隔が狭くなっている。
【0004】
一方、従来の3.5インチディスクの厚みは1.27mm程度である。この場合、3.5インチの規格化HDDでは、ケース内に最大で5枚のディスクが収納される。また、最近のHDDでは、1枚のディスクの厚みを薄くし、ケース内に5枚以上のディスクを収納することで、高容量化が図られている。
【0005】
しかしながら、ディスクの厚みを薄くした場合、ディスクの剛性が低下してしまうため、HDDに外部から強い衝撃や振動が加わった際に、ディスクに撓みが生じ易くなる。この場合、隣り合うディスク同士の接触や、ディスクと他の部品との接触によって、ディスクの記録面が損傷を受ける可能性が高くなる。さらに、近年の記録媒体においては、記録密度が高く、損傷を受けた箇所が記録面の小さな部分であったとしても、失われる記録容量は大きい。
【0006】
そこで、このような問題を解決するため、記録媒体に外部からの衝撃が加わった際に、記録媒体の外周端部と接触することによって、記録媒体に生じる撓みによる変位を規制する規制部材を設けることが行われている(例えば、下記特許文献1~6を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-306729号公報
【特許文献2】国際公開第2011/121904号
【特許文献3】特開2000-149493号公報
【特許文献4】特開2000-268531号公報
【特許文献5】特開2001-101814号公報
【特許文献6】特開2021-108234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような規制部材を設けた場合でも、規制部材と記録媒体とが接触した際に、この接触した部分が摩擦により削れて破片や塵が発生してしまう可能性がある。また、ケース内で発生した破片や塵がディスクやヘッド等に付着すると、これらの機能に悪影響を与えてしまう可能性もある。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、外部からの衝撃に対して記録媒体を保護すると共に、記録媒体の一部が削れて破片や塵が発生することを抑制した記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 ケースの内部に、円盤状の記録媒体と、前記記録媒体を回転駆動するモータと、前記記録媒体に対する情報の読み出し又は書き込みを行うヘッドと、前記ヘッドを前記記録媒体の径方向に走査駆動するアクチュエータとを備える記録再生装置であって、
前記記録媒体に外部からの衝撃が加わった際に、前記記録媒体の外周端部と接触することによって、前記記録媒体に生じる撓みによる変位を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記記録媒体の回転軸と平行な軸回りに回転可能な規制部材を有することを特徴とする記録再生装置。
〔2〕 前記規制部材は、前記記録媒体の外周端部と対向する一対の接触面を有し、
前記一対の接触面は、前記記録媒体の外周端部を挟んで互いに逆向きに傾斜して設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の記録再生装置。
〔3〕 前記記録媒体は、軸方向に複数並んで設けられ、
前記規制部材の外周端部には、前記記録媒体の各々に対応して、前記一対の傾斜面が軸方向に複数並んで設けられていることを特徴とする前記〔2〕に記載の記録再生装置。
〔4〕 前記記録媒体は、軸方向に複数並んで設けられ、
前記規制部材は、前記記録媒体の各々に対応して、軸方向に複数並んで設けられていることを特徴とする前記〔2〕に記載の記録再生装置。
〔5〕 前記規制部材は、前記記録媒体の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の記録再生装置。
〔6〕 前記規制部は、前記規制部材を軸方向の一方側に向けて付勢する付勢部材を有することを特徴とする前記〔5〕に記載の記録再生装置。
〔7〕 前記規制部材は、前記記録媒体の回転軸と平行な支軸に軸支されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の記録再生装置。
〔8〕 前記規制部は、前記記録媒体の周方向における複数箇所に設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の記録再生装置。
〔9〕 前記記録媒体は、その直径が90mm以上、且つ、その厚みが0.550mm以下であることを特徴とする前記〔1〕に記載の記録再生装置。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、外部からの衝撃に対して記録媒体を保護すると共に、記録媒体の一部が削れて破片や塵が発生することを抑制した記録再生装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る記録再生装置の構成を示す平面図である。
【
図2】
図1中に示す線分A-Aによる規制部の構成を示す断面図である。
【
図3】規制部材にディスクが接触した状態を示す断面図である。
【
図4】第1の変形例として示す規制部の平面図である。
【
図5】第2の変形例として示す規制部の断面図である。
【
図6】第3の変形例として示す規制部の断面図である。
【
図7】第4の変形例として示す規制部の断面図である。
【
図8】第5の変形例として示す規制部の断面図である。
【
図9】第6の変形例として示す規制部の断面図である。
【
図10】第7の変形例として示す規制部の断面図である。
【
図11】第8の変形例として示す規制部の断面図である。
【
図12】規制部材の取付構造を例示した断面図である。
【
図13】記録再生装置において規制部を複数箇所に設けた構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1~
図3に示す記録再生装置1について説明する。
なお、
図1は、記録再生装置1の構成を示す平面図である。
図2は、
図1中に示す線分A-Aによる規制部20の構成を示す断面図である。
図3は、規制部材21にディスク3が接触した状態を示す断面図である。
【0015】
本実施形態の記録再生装置1は、磁気的に情報を記憶するハードディスクドライブ(HDD)に本発明を適用したものである。
【0016】
具体的に、この記録再生装置1は、
図1及び
図2に示すように、ケース2の内部に、複数のディスク3と、複数(本実施形態では4枚)のディスク3を回転駆動するスピンドルモータ4と、複数(本実施形態では8つ)のサスペンションアーム5の各々の先端にヘッド6が取り付けられたヘッドアッセンブリ7と、ヘッド6をディスク3の径方向に走査駆動するヘッドアクチュエータ8と、ヘッド6をディスク3の面上から退避させるランプ9と、各部の制御を行う制御部10とを備えている。
【0017】
ケース2は、有底の矩形枠状に形成されたケース本体2aに、その上面開口部を閉塞する蓋体2bを取り付けることによって、その内側に各部を収納する空間を構成している。
【0018】
ディスク3は、中心孔を有する円盤状の記録媒体であり、スピンドルモータ4の回転軸に取り付けられている。ディスク3は、例えば、ガラス、アルミニウム又はアルミニウム合金等の基材の表面に、磁性層を含む複数の層が形成されている。
【0019】
複数のディスク3は、軸方向に等間隔に並んだ状態で設けられている。また、複数のディスク3は、平面視において互いの外形が一致している。なお、ディスク3は、複数枚に限らず、1枚であってもよい。
【0020】
スピンドルモータ4は、HDD用の薄型モータであり、軸方向に並ぶ複数のディスク3の中心孔を保持しながら、複数のディスク3を一体に回転駆動する。
【0021】
ヘッドアッセンブリ7は、軸方向に並ぶ複数のサスペンションアーム5の基端側に設けられた回動軸7aを介して回動可能に支持されている。
【0022】
ヘッドアクチュエータ8は、例えばボイスコイルモータ等からなり、ヘッドアッセンブリ7の回動軸7aを挟んだ基端側に設けられて、ヘッドアッセンブリ7を回動駆動する。これにより、各サスペンションアーム5の先端に取り付けられたヘッド6がディスク3の径方向に走査可能となる。
【0023】
ランプ9は、ディスク3の径方向の外側に位置して、ヘッド6をディスク3の面上から退避させるスロープを形成している。これにより、ディスク3の停止時にヘッド6をランプ9に位置させ、ディスク3の回転時にヘッド6をディスク3の面上に位置させることが可能となっている。
【0024】
制御部10は、スピンドルモータ4やヘッドアッセンブリ7の駆動を制御しながら、外部から入力された情報を処理して記録信号をヘッド6に送り、ヘッド6からの再生信号を処理して情報を外部に送る制御等を行う。
【0025】
以上のような構成を有する記録再生装置1では、ディスク3を回転させながら、ヘッド6がディスク3の面上を走査することによりディスク3に対する情報の書き込み(記録)又は読み出し(再生)が行われる。また、記録再生装置1では、各サスペンションアーム5の先端に取り付けられたヘッド6により、軸方向に並ぶ複数のディスク3の両面を走査する。これにより、各ディスク3の両面に対して、磁気的に情報の書き込み(記録)又は読み出し(再生)が行われる。
【0026】
ところで、本実施形態の記録再生装置1は、
図1及び
図2に示すように、ディスク3に外部からの衝撃や振動等が加わった際に、ディスク3の外周端部と接触することによって、ディスク3に生じる撓みによる変位を規制する規制部20を有している。
【0027】
規制部20は、ディスク3の周方向におけるディスク3の外周端部と接離可能な位置に設けられている。本実施形態では、ケース本体2aの内側のうち、ディスク3の外周端部と対向する一方の隅部に設けられている。
【0028】
規制部20は、ディスク3の回転軸と平行な軸回りに回転可能な規制部材21を有している。規制部材21は、その材質について限定されないものの、例えば、アセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(MCナイロン(登録商標)等)、フッ素樹脂(テフロン(登録商標)等)などの低摩擦部材からなり、円柱ローラー状に形成されている。
【0029】
規制部材21は、その中心部を軸方向に貫通する支軸22に軸支されることによって、ディスク3の回転軸と平行な軸回りに回転可能に設けられている。なお、支軸22は、ケース本体2aに取り付けられた構成となっているが、他の部品を介してケース本体2aに取り付けられた構成であってもよい。
【0030】
また、規制部20では、規制部材21を回転し易くするため、規制部材21と支軸22との摺動部分に潤滑性を与えることが好ましい。摺動部分に潤滑性を与えるためには、例えば、規制部材21と支軸22との少なくとも一方が自己潤滑性の材質(上記低摩擦部材を参照。)であること、又は、規制部材21と支軸22との摺動部分にグリスなどを塗布することが挙げられる。このうち、前者の方が組み立て工程が簡単であること、ケース2内の汚染をより少なくできる点で好ましい。
【0031】
また、規制部材21の外周面には、軸方向に並ぶ複数のディスクの各々に対応した複数(本実施形態では4つ)の溝部23が軸方向に並んで設けられている。溝部23は、規制部材21の外周面を周方向に全周に亘って切り欠くように設けられている。
【0032】
溝部23は、ディスク3の外周端部と対向すると共に、ディスク3の外周端部を挟んで互いに逆向きに傾斜した一対の接触面24a,24bを有している。すなわち、規制部材21の外周面には、軸方向に並ぶ複数のディスクの各々に対応した一対の接触面24a,24bが軸方向に並んで設けられている。
【0033】
規制部20では、
図2に示すように、通常はディスク3と規制部材21とが非接触な状態となっている。すなわち、ディスク3の外周端部は、一対の接触面24a,24b(溝部23)の間に位置して、記録再生装置1の静置状態において、一対の接触面24a,24bとは上下方向において離間しつつ、これら一対の接触面24a,24bとは平面視において重なる配置となっている。
【0034】
一方、規制部20では、
図3に示すように、外部から強い衝撃や振動が加わった際に、ディスク3に撓みが生じることによって、ディスク3の外周端部が規制部材21と接触した状態となる。
【0035】
このとき、規制部材21は、回転するディスク3の外周端部が一対の接触面24a,24bの何れかと接触することによって、ディスク3の回転に追従しながら、ディスク3とは逆向きに回転することになる。
【0036】
これにより、ディスク3の外周端部と接触した規制部材21がディスク3に生じる撓みによる変位を規制しながら、隣り合うディスク3同士の接触や、ディスク3と他の部品との接触を回避することが可能である。
【0037】
また、ディスク3の外周端部に規制部材21が接触した際に、この規制部材21がディスク3の回転に追従しながら回転することで、規制部材21とディスク3との間に生じる摩擦を低減しながら、接触部分からの破片や塵の発生を抑制することが可能である。また、規制部材21とディスクとの間に生じる摩擦によるディスク3の回転速度の低下を抑制することが可能である。
【0038】
以上のように、本実施形態の記録再生装置1では、上述した規制部20を設けることによって、外部からの衝撃や振動等に対してディスク3を保護すると共に、ディスク3の一部が削れて破片や塵が発生することを抑制することが可能である。
【0039】
なお、ディスク3の外周端部が規制部材21との接触による圧力が小さい場合には、ディスク3と接触した規制部材21が回転しない場合がある。この場合、ディスク3の接触部分に働く摩擦力が小さいことから、この接触部分からの破片や塵の発生が抑制されることになる。
【0040】
ディスク3の外周端部と接触した規制部材21が回転する場合、これらディスク3と規制部材21との間に回転差が生じることがある。この場合の回転差は、静止している規制部材21に回転するディスク3が接触する場合よりも小さいことから、接触部分からの破片や塵の発生が抑制されることになる。
【0041】
ところで、ディスク3は、その直径が大きく、その厚みが薄いと、上下方向の加速度によって撓み変形し易くなり、ディスク3の変形により外周端部の上下動が大きくなる。このため、直径が大きく且つ厚みが薄いディスク3では、上述した規制部20による外部からの衝撃や振動等に対してディスク3を保護する効果が大きくなる。
【0042】
例えば、ディスク3の直径90mm以上、且つ、ディスク3の厚みが0.55mm以下のディスク3であれば、その効果は特に大きいが、これに必ずしも限定されるものではない。また、ディスク3の直径は94mm以上であってもよい。また、ディスク3の厚みは、0.425mm以下であってもよい。
【0043】
ディスク3の基材の表面に形成される磁性層を含む複数の層の厚みは、オモテ面とウラ面との合計として、基材の厚みの10%以下であることが一般的であるが、7.0%以下であってもよく、5.0%以下であってもよい。また、基材の厚みの1.0%以上であることが一般的であるが、3.0%以上であってもよく、4.0%以上であってもよい。
【0044】
ディスク3の剛性は、基材のヤング率に大きく依存する。基材がアルミニウム合金である場合、基材のヤング率は70GPa以上であることが好ましく、73GPa以上であることがより好ましい。また、ヤング率が75GPa以上のアルミニウム合金が用いられることもある。
【0045】
また、ディスク3の外周端部には、オモテ面と側面との間及びウラ面と側面との間に丸み(角R)が形成されている。丸みの半径Rは、特に限定されないものの、ディスク3の厚さtに対して、R≧0.10tであることが好ましく、R≧0.20t以上であることがより好ましい。また、R≦0.50tであることが好ましく、R≦0.40tであることがより好ましく、R≦0.30tであることが更に好ましい。
【0046】
この構成によれば、ディスク3と規制部材21との接触部分の面積が大きくなり、これらの間で接触する圧力が小さくなるため、接触部分からの破片や塵の発生が抑制されることになる。
【0047】
なお、ディスク3のオモテ面と側面との間及びウラ面と側面との間の角部は直角であってもよいが、面取りされていてもよい。C面取りされている場合には、C≧0.10tであることが好ましく、C≧0.20tであることがより好ましく、C≧0.30tであることが更に好ましい。また、C面取りされている場合は、C≦0.50tであることが好ましく、C≦0.40t以下であることがより好ましく、C≦0.30tであることが更に好ましい。
【0048】
ここで、ディスク3と規制部材21との上下方向に沿った最短距離は、溝部23を形成する一対の接触面24a,24bとディスク3の外端端部との上下方向の距離として、それぞれ3.0μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。これは、ディスク3を回転させることによって生じるディスクの僅かな変形や、僅かな振動や衝撃等によって頻繁にディスク3が規制部材21に接触することを抑制するためである。
【0049】
また、接触面24a,24bとディスク3の外周端部との上下方向における距離は、500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。これは、ディスク3の上下方向における変形を効果的に抑制するためである。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
(第1の変形例)
上記規制部20は、第1の変形例として、例えば
図4に示すような規制部材21Aを備えた構成であってもよい。なお、
図4は、第1の変形例として示す規制部20の平面図である。
【0052】
規制部材21Aは、上述した円柱ローラー状の規制部材21の代わりに、ハブアンドスポーク構造を有している。具体的に、この規制部材21Aは、円筒状のローラー部25aと、ローラー部25aの中心に位置する円筒状のハブ部25bと、ローラー部25aとハブ部25bとの間を放射状に接続する複数のスポーク部25cとを有している。規制部材21Aは、ハブ部25bを軸方向に貫通する支軸22に軸支されることによって、ディスク3の回転軸と平行な軸回りに回転可能に設けられている。また、ローラー部25aの外周面には、上述した一対の接触面24a,24bにより構成される複数の溝部23が軸方向に並んで設けられている。
【0053】
規制部材21Aは、強度を保ちつつ、軽量化を図ることが可能である。また、この規制部材21Aの慣性モーメント(イナーシャ)が小さくなる。これにより、規制部材21Aは、ディスク3に接触した際のディスク3の回転に対する追従性が良くなり、接触部分からの破片や塵の発生が抑制される効果を更に高めることが可能である。
【0054】
(第2の変形例)
上記規制部20は、第2の変形例として、例えば
図5に示すような規制部材21Bを備えた構成であってもよい。
図5は、第2の変形例として示す規制部20の断面図である。
【0055】
規制部材21Bの外周面には、上記溝部23の代わりに、ディスク3の外周端部を挟んで互いに平行となる一対の接触面26a,26bにより構成された溝部27を有している。また、平面視において、ディスク3の記録領域と一対の接触面26a,26bとが重ならない配置となっている。
【0056】
この構成によれば、部品の寸法公差や組付公差等により、ディスク3と規制部材21との少なくとも一方が水平方向にずれたとしても、溝部27を形成する一対の接触面26a,26bとディスク3の外端端部との上下方向の距離の変動を抑制することが可能である。
【0057】
(第3の変形例)
上記規制部20は、第3の変形例として、例えば
図6に示すような規制部材21Cを備えた構成であってもよい。
図6は、第3の変形例として示す規制部20の断面図である。
【0058】
規制部材21Cは、軸方向に並ぶディスク3の各々に対応して、軸方向に複数並んで設けられている。また、各規制部材21Cの外周面には、一対の接触面24a,24bを構成する溝部23が設けられている。すなわち、この規制部材21Cは、上記規制部材21を溝部23毎に分割した構成となっている。
【0059】
複数の規制部材21Cは、その中心部を軸方向に貫通する支軸22に軸支されることによって、ディスク3の回転軸と平行な軸回りにそれぞれ独立に回転可能に設けられている。また、複数の規制部材21Cの各間には、隣り合う間隔を調整するためのスペーサ28が配置されている。
【0060】
この構成によれば、複数の規制部材21Cのうち、ディスク3の外周端部と接触した規制部材21Cのみを回転させることができる。各規制部材21Cの慣性モーメント(イナーシャ)は小さくなるため、規制部材21Cは、ディスク3に接触した際のディスク3の回転に対する追従性が良くなり、接触部分からの破片や塵の発生が抑制される効果を更に高めることが可能である。また、この構成によれば、規制部材21Cとディスク3との間に生じる摩擦によるディスク3の回転速度の低下をより効果的に抑制することが可能である。
【0061】
(第4の変形例)
上記規制部20は、第4の変形例として、例えば
図7に示すような規制部材21Dを備えた構成であってもよい。
図7は、第4の変形例として示す規制部20の断面図である。
【0062】
規制部材21Dは、軸方向に並ぶディスク3の各々に対応して、軸方向に複数並んで設けられている。また、各規制部材12の外周部には、一対の接触面24a,24bが互いに逆向きに傾斜して設けられている。すなわち、この規制部材21Cは、上記規制部材21を溝部23を構成する一対の接触面24a,24bの間毎に分割した構成となっている。
【0063】
複数の規制部材21Dは、その中心部を軸方向に貫通する支軸22に軸支されることによって、ディスク3の回転軸と平行な軸回りにそれぞれ独立に回転可能に設けられている。また、複数の規制部材21Dの各間には、
図6を参照しながら、上述した隣り合う間隔を調整するためのスペーサ28を必要に応じて配置してもよい。
【0064】
この構成によれば、複数の規制部材21Dのうち、ディスク3の外周端部と接触した規制部材21Dのみを回転させることができ、各規制部材21Cの軽量化を図ることが可能である。また、この規制部材21Dの慣性モーメント(イナーシャ)が小さくなる。
【0065】
これにより、規制部材21Dは、ディスク3に接触した際のディスク3の回転に対する追従性が良くなり、接触部分からの破片や塵の発生が抑制される効果を更に高めることが可能である。また、この構成によれば、規制部材21Dとディスク3との間に生じる摩擦によるディスク3の回転速度の低下をより効果的に抑制することが可能である。
【0066】
(第5の変形例)
上記規制部20は、第5の変形例として、例えば
図8に示すような規制部材21をディスク3の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けた構成であってもよい。
図8は、第5の変形例として示す規制部20の断面図である。
【0067】
規制部材21は、この規制部材21よりも長い支軸22Aに軸支されることによって、ディスク3の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けられている。また、規制部材21は、通常は自重によりケース本体2aの底面側に位置するため、ディスク3の外周端部と接触した際に、基本的に上方に向かって移動することになる。
【0068】
このため、規制部材21は、ディスク3の外周端部のうち、下面(ウラ面)側と接触する接触面24aとの距離を、上面(オモテ面)側と接触する接触面24aとの距離よりも長くすることが好ましい。
【0069】
この構成によれば、回転するディスク3の外周端部が規制部材21に接触することによって、ディスク3に生じる撓みによる変位に追従しながら、規制部材21が軸方向に移動することになる。これにより、規制部材21とディスク3との間に生じる摩擦を低減しながら、接触部分からの破片や塵の発生を抑制することが可能である。
【0070】
なお、上記規制部材21A~21Dについても同様に、ディスク3の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けた構成とすることが可能である。
【0071】
また、上記規制部材21,21A~21Dについては、必ずしもディスク3の回転軸と平行な軸回りに回転可能に設けた構成に限らず、ディスク3の回転軸と平行な軸方向にのみ移動可能に設けた構成としてもよい。
【0072】
(第6の変形例)
上記規制部20は、第6の変形例として、例えば
図9に示すような規制部材21をディスク3の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けると共に、規制部材21を軸方向の一方側に向けて付勢する付勢部材29を設けた構成であってもよい。
図9は、第6の変形例として示す規制部20の断面図である。
【0073】
規制部材21は、この規制部材21よりも長い支軸22Aに軸支されることによって、ディスク3の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けられている。また、規制部材21とケース本体2aの底面との間には、支軸22Aを軸方向に貫通させた状態で、付勢部材29となるコイルバネが配置されている。
【0074】
この構成によれば、回転するディスク3の外周端部が規制部材21に接触することによって、ディスク3に生じる撓みによる変位に追従しながら、規制部材21が軸方向に移動することになる。一方、軸方向に移動した規制部材21は、付勢部材29の付勢により元の位置へと復帰する。これにより、規制部材21とディスク3との間に生じる摩擦を低減しながら、接触部分からの破片や塵の発生を抑制することが可能である。また、この構成によれば、規制部材21とディスク3との間に生じる摩擦によるディスク3の回転速度の低下をより効果的に抑制することが可能である。
【0075】
なお、付勢部材29については、上述した規制部材21の軸方向の一方側であるケース本体2aの底面との間に配置された構成に限らず、規制部材21の軸方向の他方側である蓋体2bとの間に配置された構成であってもよく、更に、その両側に配置された構成であってもよい。
【0076】
なお、上記規制部材21A~21Dについても同様に、ディスク3の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けると共に、規制部材21を軸方向の一方側に向けて付勢する付勢部材29を設けた構成とすることが可能である。
【0077】
また、上記規制部材21,21A~21Dについては、必ずしもディスク3の回転軸と平行な軸回りに回転可能に設けた構成に限らず、ディスク3の回転軸と平行な軸方向にのみ移動可能に設けた構成としてもよい。
【0078】
(第7の変形例)
上記規制部20は、第7の変形例として、例えば
図10に示すような規制部材21Eを備えた構成であってもよい。
図10は、第7の変形例として示す規制部20の断面図である。
【0079】
規制部材21Eは、この規制部材21Eよりも長い一対の支軸30a,30bに軸支されることによって、ディスク3の回転軸と平行な軸方向にのみ移動可能に設けられている。
【0080】
ディスク3の外周端部と対向する側面は、平面視において、ディスク3の外形に沿って円弧状に湾曲した凹状の曲面を構成している。なお、ディスク3の外周端部と対向する側面は、このような凹状に湾曲した曲面に限らず、凸状に湾曲した曲面であってもよく、平面であってもよい。
【0081】
ディスク3の外周端部と対向する側面には、一対の接触面24a,24bにより構成される溝部23が軸方向に並んで設けられている。
【0082】
この構成によれば、回転するディスク3の外周端部が規制部材21Eに接触することによって、ディスク3に生じる撓みによる変位に追従しながら、規制部材21Eが軸方向に移動することになる。これにより、規制部材21Eとディスク3との間に生じる摩擦を低減しながら、接触部分からの破片や塵の発生を抑制することが可能である。また、この構成によれば、規制部材21Eとディスク3との間に生じる摩擦によるディスク3の回転速度の低下をより効果的に抑制することが可能である。
【0083】
(第8の変形例)
上記規制部20は、第8の変形例として、例えば
図11に示すような規制部材21Fをディスク3の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けると共に、規制部材21Fを軸方向の一方側に向けて付勢する付勢部材29を設けた構成であってもよい。
図11は、第8の変形例として示す規制部20の断面図である。
【0084】
規制部材21Fは、この規制部材21Fよりも長い支軸30cに軸支されることによって、ディスク3の回転軸と平行な軸方向に移動可能に設けられている。また、規制部材21Fとケース本体2aの底面との間には、支軸30cを軸方向に貫通させた状態で、付勢部材29となるコイルバネが配置されている。
【0085】
この構成によれば、回転するディスク3の外周端部が規制部材21Fに接触することによって、ディスク3に生じる撓みによる変位に追従しながら、規制部材21Fが軸方向に移動することになる。一方、軸方向に移動した規制部材21Fは、付勢部材29の付勢により元の位置へと復帰する。これにより、規制部材21Fとディスク3との間に生じる摩擦を低減しながら、接触部分からの破片や塵の発生を抑制することが可能である。また、この構成によれば、規制部材21Fとディスク3との間に生じる摩擦によるディスク3の回転速度の低下をより効果的に抑制することが可能である。
【0086】
なお、付勢部材29については、上述した規制部材21Fの軸方向の一方側であるケース本体2aの底面との間に配置された構成に限らず、規制部材21Fの軸方向の他方側である蓋体2bとの間に配置された構成であってもよく、更に、その両側に配置された構成であってもよい。
【0087】
(その他)
なお、上記溝部23及び溝部27については、軸方向に隣接して配置された構成に限らず、軸方向に間隔を空けて配置された構成であってよい。
【0088】
上記規制部材21,21A~21Fは、上述した支軸22,22A,30a,30b,30cに対して直接軸支された構成に限らず、支軸22,22A,30a,30b,30cに対してベアリング等の別部材を介して軸支された構成であってもよい。
【0089】
また、上記規制部材21,21A~21Fの取付構造については、上述した支軸22,22A,30a,30b,30cに軸支された構成に限らず、例えば、
図12(A)に示すように、ケース本体2aに螺合により取り付けられたネジ31を支軸として回転可能に取り付けられた構成や、
図12(B)に示すように、ケース本体2aから突出されたボス32を支軸として回転可能に取り付けられた構成としてもよい。また、ボス32の先端には抜け止めとなるネジ33が螺合により取り付けられている。
【0090】
また、上記
図12で例示される構成において、ネジ31及びネジ33の頭部の直径は、規制部材21の貫通穴の直径より大きいことが好ましい。これは、規制部材21が必要以上に上下方向に動くこと、並びに規制部材21が外れることを抑制するためである。なお、ネジ31及びネジ33の座面と、座面に対向するケース本体2aの面との距離は、規制部材21の上下方向の長さよりも長いことが好ましい。これは、規制部材21に作用する摩擦力が小さくなるためである。
【0091】
また、上記記録再生装置1において、規制部20は、ディスク3の周方向に少なくとも1箇所以上設ければよい。一方、
図13に示すように、ディスク3の周方向における複数箇所(
図13では2箇所)に規制部20を設けた構成としてもよい。さらに、規制部20を複数箇所に設ける場合、複数の規制部20は、ディスク3の周方向に等間隔に並ぶように配置することが好ましい。これにより、ディスク3に外部からの衝撃や振動等が加わった際に、ディスク3に生じる撓みによる変位をより広い範囲で規制することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…記録再生装置 2…ケース 3…ディスク(記録媒体) 4…スピンドルモータ 5…サスペンションアーム 6…ヘッド 7…ヘッドアッセンブリ 8…ヘッドアクチュエータ 9…ランプ 10…制御部 20…規制部 21,21A~21F…規制部材 22,22A…支軸 23…溝部 24a,24b…接触面 26a,26b…接触面 27…溝部 28…スペーサ 29…付勢部材 30a,30b,30c…支軸 31…ネジ(支軸) 32…ボス(支軸) 33…ネジ