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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036854
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141374
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】青木 勇太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB37
2C056EC12
2C056EC33
2C056FA15
2C056FB03
2C056HA29
2C056HA47
2C056KB13
(57)【要約】
【課題】装置構成の複雑化や大型化を招くことなく、被吐出媒体の保持と乾燥を実現可能な液体を吐出する装置を提供する。
【解決手段】被吐出媒体Mに対して液体を吐出する液体吐出手段と、被吐出媒体Mが載置される面に開口した複数の通気孔21を有するプラテン部材2と、複数の通気孔21と連通する通気経路26と、通気孔21を介して被吐出媒体Mに送風及び/又は吸引を行うための気流を発生させる気流発生手段20と、を備え、通気孔21、通気経路26及び気流発生手段20により構成され、プラテン部材2上に載置された被吐出媒体Mに送風し、被吐出媒体Mに吐出された液体を乾燥させる乾燥機構と、通気孔21、通気経路26及び気流発生手段20により構成され、プラテン部材2上に載置された被吐出媒体Mを吸引し、被吐出媒体Mをプラテン部材2上に保持する吸引機構と、を有する液体を吐出する装置1。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吐出媒体に対して液体を吐出する液体吐出手段と、
前記被吐出媒体が載置される面に開口した複数の通気孔を有するプラテン部材と、
複数の前記通気孔と連通する通気経路と、
前記通気孔を介して前記被吐出媒体に送風及び/又は吸引を行うための気流を発生させる気流発生手段と、を備え、
前記通気孔、前記通気経路及び前記気流発生手段により構成され、前記プラテン部材上に載置された前記被吐出媒体に送風し、前記被吐出媒体に吐出された前記液体を乾燥させる乾燥機構と、
前記通気孔、前記通気経路及び前記気流発生手段により構成され、前記プラテン部材上に載置された前記被吐出媒体を吸引し、前記被吐出媒体を前記プラテン部材上に保持する吸引機構と、を有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記被吐出媒体に対して送風を行うモード及び/又は吸引を行うモードを切り替え可能であることを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記被吐出媒体の表面の凹凸を検知する検知手段を備え、
前記被吐出媒体の表面に凹凸が検知されたとき、前記通気孔を介して前記被吐出媒体を吸引することを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記気流発生手段は、送風装置及び吸引装置を有し、
前記送風装置は前記乾燥機構を構成する前記通気経路と連通し、
前記吸引装置は前記吸引機構を構成する前記通気経路と連通し、
前記乾燥機構を構成する前記通気経路と前記吸引機構を構成する前記通気経路とが、互いに連通する合流点を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記通気孔は、前記気流発生手段により生じた送風及び吸引のいずれかの気流を選択的に通気させる逆止弁を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記吸引機構を構成する複数の前記通気孔は、開口径が通気経路の径よりも小さい円錐台形の形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記乾燥機構を構成する前記通気孔と、前記吸引機構を構成する前記通気孔とが、行方向及び列方向に交互に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
前記気流発生手段はファン部材を備え、
前記ファン部材の気流送出側に前記乾燥機構を構成する前記通気経路が接続され、前記ファン部材の吸気側に前記吸引機構を構成する前記通気経路が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項9】
前記液体吐出手段は、第1の液体を吐出する第1のヘッド、及び前記第1の液体とは異なる複数の第2の液体を吐出する第2のヘッドを備え、
前記第1のヘッドから液体を吐出しているとき、及び前記第2のヘッドから液体を吐出しているときは前記被吐出媒体を吸引し、
前記第1のヘッドから液体を吐出した後、前記第2のヘッドから液体を吐出するまでの待機時に前記被吐出媒体に送風することを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項10】
前記被吐出媒体が布地であり、前記第1の液体は白色のインクであり、前記第2の液体はカラーインクであり、前記第1の液体により下地を形成し、前記第2の液体により下地の上に所望の画像を形成することを特徴とする請求項9に記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置として、インクジェット方式の印刷装置が知られている。インクジェット方式の印刷装置は、液体吐出手段としての液体吐出ヘッドからインク等を吐出し、被吐出媒体(被記録媒体)へ付着・染色させる。
また、インクジェット方式の印刷装置としては、被吐出媒体に吐出された液体を乾燥させる手段を備える構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、被吐出媒体上に印字されたインクを乾燥させる効果を向上させる構成として、インク吐出口が設けられた印字ヘッドと当該印字ヘッドを載せて走査するキャリッジ、および被記録媒体への印字位置を決めるプラテン部材を有するインクジェットプリンタにおいて、被記録媒体に当接するローラ、または被記録媒体への送風手段をキャリッジと一体に設けた装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被吐出媒体として布地等に対してインクジェット方式で印刷するプリンタ(ガーメントプリンタ)が知られている。ガーメントプリンタでは、最初に白インクで下地の印刷を行い、その上にカラー(CMYK)インクで所望の絵柄等の印刷を行うことにより、印刷された絵柄等の視認性が向上させる技術が知られている。このような態様において、印刷された下地の乾燥が十分に行われないと、その上に印刷される絵柄に滲みなどが生じ、高画質化が困難となる。
【0005】
また、高い品質の画像を得るためには、被吐出媒体である布地にシワなどを生じさせることなく、プラテン部材上で平坦に保持したうえで印刷を行う必要がある。
【0006】
従来、被吐出媒体をプラテン部材上に平坦に保持するための機構は、乾燥機構とは別の手段として設ける必要があり、被吐出媒体を平坦に保持する機能と乾燥機能とを両立させるためには、装置構成の複雑化や大型化を招くという課題があった。
【0007】
そこで本発明は、装置構成の複雑化や大型化を招くことなく、被吐出媒体の保持と乾燥を実現可能な液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の液体を吐出する装置は、被吐出媒体に対して液体を吐出する液体吐出手段と、前記被吐出媒体が載置される面に開口した複数の通気孔を有するプラテン部材と、複数の前記通気孔と連通する通気経路と、前記通気孔を介して前記被吐出媒体に送風及び/又は吸引を行うための気流を発生させる気流発生手段と、を備え、前記通気孔、前記通気経路及び前記気流発生手段により構成され、前記プラテン部材上に載置された前記被吐出媒体に送風し、前記被吐出媒体に吐出された前記液体を乾燥させる乾燥機構と、前記通気孔、前記通気経路及び前記気流発生手段により構成され、前記プラテン部材上に載置された前記被吐出媒体を吸引し、前記被吐出媒体を前記プラテン部材上に保持する吸引機構と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置の複雑化や大型化を招くことなく、被吐出媒体の保持と乾燥を実現可能な液体を吐出する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る液体を吐出する装置の一例としての印刷装置の外観斜視図である。
図2図1の印刷装置の平面図である。
図3図1の印刷装置の正面図である。
図4】本発明に係る液体を吐出する装置の乾燥機構及び吸引機構の構成の例を模式的に示した説明図である。
図5】本発明に係る液体を吐出する装置の機能ブロック図の一例である。
図6】本発明に係る液体を吐出する装置のハードウェア構成図の一例である。
図7】送風/吸引の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】第1のモードにおける制御の流れを示すフローチャートである。
図9】第2のモードにおける制御の流れを示すフローチャートである。
図10】第3のモードにおける制御の流れを示すフローチャートである。
図11】第4のモードにおける制御の流れを示すフローチャートである。
図12】本発明に係る液体を吐出する装置の乾燥機構及び吸引機構の構成の例を模式的に示した説明図である。
図13】通気孔の逆止弁の例を示す説明図である。
図14】通気孔の断面形状の例を示す説明図である。
図15】プラテン部材上の通気孔の開口部の配置の例を示す説明図である。
図16】本発明に係る液体を吐出する装置の乾燥機構及び吸引機構の構成の他の実施形態を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等はいずれも同義語とする。
【0012】
本発明に係る液体を吐出する装置の一例としての印刷装置を図1図4に示す。
図1は印刷装置の外観斜視図であり、図2は同印刷装置の平面図であり、図3は同印刷装置の正面図である。また、図4は、本実施形態の印刷装置が備える乾燥機構及び吸引機構の構成を模式的に示した説明図である。
なお、図1図3では、プラテン部材2の厚みや通気孔を省略し、模式的に図示している。
【0013】
図1図4において、主走査方向Xはキャリッジ11を往復移動させる方向を示し、Yは主走査方向Xと直交する副走査方向を、Zは主走査方向X及び副走査方向Yと直交する上下方向(鉛直方向ないし高さ方向でもある)方向を、それぞれ示す。
【0014】
本実施形態の液体を吐出する装置1(以下、「印刷装置」ともいう)は、被吐出媒体Mに対して液体を吐出する液体吐出手段と、被吐出媒体Mが載置される面に開口した複数の通気孔21を有するプラテン部材2と、複数の通気孔21と連通する通気経路26と、通気孔21を介して被吐出媒体Mに送風及び/又は吸引を行うための気流を発生させる気流発生手段20と、を備え、通気孔21、通気経路26及び気流発生手段20により構成され、プラテン部材2上に載置された被吐出媒体Mに送風し、被吐出媒体Mに吐出された液体を乾燥させる乾燥機構と、通気孔21、通気経路26及び気流発生手段20により構成され、プラテン部材2上に載置された被吐出媒体Mを吸引し、被吐出媒体Mをプラテン部材2上に保持する吸引機構と、を有している。
【0015】
印刷装置1は、液体を吐出する液体吐出手段である液体吐出ヘッドとしての複数のインクジェットヘッド10(図3に示し、以下、「ヘッド10」と略称する)と、複数のヘッド10を搭載して主走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ11と、被印刷媒体を支持する被印刷媒体支持部材としてのプラテン部材2とを備えている。
印刷装置1は、シリアル方式のインクジェットプリンタであり、プラテン部材2に布地を保持させて印刷する、いわゆるガーメントプリンタである。
【0016】
図3には、被吐出媒体M(印刷対象)の一例である布地を支持するプラテン部材2が図示されている。被吐出媒体Mは、複数のヘッド10を有するキャリッジ11の走査移動方向である主走査方向Xに対して直交する方向、すなわち副走査方向Yに搬送される。
プラテン部材2は、被吐出媒体Mの多様な厚みに対応するために、ヘッド10のノズル面とキャリッジ11との距離(ギヤップ)を調整可能に上下方向Zに移動可能に構成されている。
【0017】
プラテン部材2は、昇降機構41上に搭載され、上下方向Zの高さを調整可能に構成されている。プラテン部材2の昇降機構41は、スライダ42上に搭載されている。スライダ42は、主走査方向Xと直交する副走査方向Yに延設したスライドレール43上に移動可能に載置されている。昇降機構41としては、正逆転方向に回転可能な電動モータを備え、例えばラックアンドピニオン機構やボールねじ機構を利用して構成されている。
【0018】
一対のガイド部材12、13は、キャリッジ11を主走査方向Xに往復移動可能に保持している。キャリッジ11は、正逆転方向に回転可能な主走査モータ14(図2参照)で回転される駆動プーリ15と従動プーリ16との間に掛け回したタイミングベルト17に連結され、主走査モータ14を駆動することによりキャリッジ11を主走査方向Xに往復移動させる。
【0019】
エンコーダシート18は、主走査方向Xに沿って配置されている。エンコーダシート18には周期的なスリットが設けられている。キャリッジ11は、エンコーダシート18のスリットを読み取る読み取りセンサを有し、この読み取りセンサの読み取り結果から主走査方向Xにおけるキャリッジ11の位置を検出できるように構成されている。
【0020】
コントローラボード50は、キャリッジ11の上記読み取りセンサの読み取り結果で得られるキャリッジの移動位置から液体であるインクを吐出する吐出位置にタイミングを合わせてヘッド10からインクを吐出させる制御をする。
【0021】
コントローラボード50は、モータやソレノイド等の稼働(出力)やセンサなどの入力信号を処理し制御する手段であり、搭載されたソフトウェアに基づいて制御される。
コントローラボード50は、例えば、PCから送信された印刷データの印刷制御や、USBメモリや記録された印刷データを読み出しての印刷制御処理も行う。
【0022】
キャリッジ11上には、複数のヘッド10が搭載されている。各ヘッド10は、所要の色の液体を吐出するノズルを配列したノズル列を2列有している。キャリッジ11は、ヘッド10に供給する液体としてのインクを一時的に貯留するヘッドタンクも搭載している。ヘッドタンクは供給チューブ及び供給ポンプを介してインクカートリッジ3と接続されており、必要に応じて供給ポンプを稼働させることによりインクの補給を受ける。
【0023】
キャリッジ11に搭載される複数のヘッドとしては、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(Bk)の各色のインクを吐出する4つのヘッドであってもよく、さらに下地印刷用の白(W)を加えた5つのヘッドであってもよい。
【0024】
印刷装置1は、プラテン部材2上の被吐出媒体Mの表面の凹凸を検知する検知手段30を備えている。検知手段30は、例えば、被吐出媒体Mの上下方向Zの高さ位置を検知するポジションセンサである。
検知手段30は、例えば、レーザ光を射出する射出部とこのレーザ光を受光する受光部とで構成されていて、プラテン部材2上の被吐出媒体Mの表面がレーザ光を遮るかどうかで、被吐出媒体Mの表面がシワ等により凹凸が生じているか(盛り上がっているか)否かを判断することができる。
【0025】
プラテン部材2上の被吐出媒体Mの表面がレーザ光を遮った場合は、例えば、印刷の障害となるシワが生じていると判断し、吸引機構による吸引動作を実行する制御を行うことができる。
【0026】
また、ポジションセンサにより被吐出媒体Mの表面がヘッド10のノズル面に接触する高さであることが検知された場合は、エラーとしてプラテン部材2の動作を停止するように制御される。
【0027】
スライダ42は、タイミングベルト45を介して副走査駆動機構により副走査方向Yに往復移動される。スライダ42が副走査方向Yに往復移動されることにより、プラテン部材2も副走査方向Yに往復移動される。
【0028】
主走査方向Xの一端側には、ヘッド10の維持回復を行うメンテナンスユニット60が配置されている。メンテナンスユニット60は、ヘッド10のノズル面をキャッピングする吸引キャップ61と、ヘッド10のノズル面を保湿のためにキャッピングする保湿キャップ62と、ヘッド10のノズル面を払拭する払拭部材63を備えている。吸引キャップ61には吸引ポンプが接続されている。
【0029】
主走査方向Xの他端側には、吐出受け66が配置されている。ヘッド10から吐出受け66に液体を吐出させることにより、ヘッド10の維持回復を行う。
【0030】
印刷装置1は、後述する送風/吸引の設定をはじめ、各種動作の指示を行うための操作部71を備えている。また、印刷装置1の各部に電力を供給する電源ユニット72、及び電源ボタン70等を備えている。
【0031】
印刷装置1の印刷動作について、被吐出媒体MとしてTシャツ等の布地に印刷する場合を例として説明する。
まず、被吐出媒体Mを皺(凹凸)にならないようにプラテン部材2上に載置する。その後、操作部71での操作により、スライダ42を介してプラテン部材2を装置本体内後方(副走査方向Yの上流側)へ完全に引き込む動作を行う。
そして、被吐出媒体Mを支持したプラテン部材2は印刷スタート位置(図1図2の副走査方向Yの下流側)へ移動する。
【0032】
プラテン部材2の引き込みが完了したとき、印刷データ待機状態となる。ここで、印刷装置1が外部の情報処理装置(例えばパーソナルコンピュータなどのコンピュータや、スマートフォン等)から印刷データを受信したときに印刷動作チェックが行われ、開始される。あるいは、予めコントローラボード50に印刷データが蓄積されていた場合には、操作部71で当該印刷データを選択することによって印刷動作が開始される。
【0033】
本実施形態の印刷装置1では、印刷動作の開始前に、後述する乾燥機構と吸引機構の動作の設定を行うことができる。印刷開始後は、設定された動作モード及び動作レベルに応じて被吐出媒体Mに対する送風及び/又は吸引が行われる。
【0034】
印刷動作が開始されると、スライダ42を介してプラテン部材2が印刷開始位置まで移動される。その後、キャリッジ11はエンコーダシート18を読み取りつつ、第1及び第2ガイド部材12、13にガイドされながら主走査方向Xに移動して、ヘッド10によってプラテン部材2上にセットされた被吐出媒体Mへ液体を吐出する。ヘッド10の動作に合わせてプラテン部材2は第1及び第2ガイド部材12、13の上で副走査方向Y(奥の上流側から手前の下流側)に移動しながら印刷が行われる。
【0035】
こうして、キャリッジ11の移動とヘッド10からのインク吐出が行われて、1行分が印刷される。1行分が印刷されると、スライダ42を介してプラテン部材2が1行分移動される。キャリッジ11の1スキャンとスライダ42の間欠移動の繰り返しを行うことにより、布地400表面の所望の領域に印刷が行われる。印刷完了後、プラテン部材2は副走査方向Yの下流側(装置本体手前)まで戻されて印刷終了となる。
【0036】
印刷終了後はプラテン部材2より布地400を取り出し、ヒートプレス機等を利用して加熱・定着の後処理動作を行い、一連の印刷装置1の動作及び作業が終了する。
【0037】
図5は、印刷装置1の機能ブロック図である。
図5に示すように、印刷装置1の動作を制御する情報処理装置(PC)100は、印刷アプリケーション200を実行可能に構成され、印刷装置1のコントローラボード50と通信可能に接続され、コントローラボード50を介して印刷装置1の各部の動作を制御する。
アプリケーション200は、印刷装置1の乾燥機構と吸引機構の動作の設定を行うことができる構成としてもよい。
【0038】
図6は、印刷装置1のハードウェア構成図である。
図6に示すように、印刷装置1は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)204、I/F(外部機器接続I/F)205、及びバスライン206を備えている。
【0039】
CPU201は、印刷装置1全体の動作を制御する。ROM202は、CPU201の駆動に用いられるプログラム等を記憶する。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。NVRAM204は、プログラム等の各種データを記憶し、電源が遮断されている間も各種データを保持する。
外部機器接続I/F205は、USBやイーサーネット等のインターフェースである。バスライン206は、CPU201等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
操作部71は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネルやアラームランプ等により構成されている。後述する乾燥機構と吸引機構の動作の設定を行うことができる。
【0040】
本実施形態の液体を吐出する装置である印刷装置1は、図4に示すように、通気孔21、通気経路26及び気流発生手段20により構成される乾燥機構と吸引機構と、を有している。
乾燥機構により、吐出された液体の乾燥を促し、乾燥時間の短縮や画像以上の抑制する効果が得られる。また、吸引機構により、被吐出媒体M上のシワや弛みをのばして、表面を平坦にする効果が得られる。
すなわち、単一のプラテン部材2上に送風用の通気孔21と吸引用の通気孔21とを有し、気流発生装置20において送風と吸引とを切り替えるのみで乾燥と吸着を行うことができる。
【0041】
本実施形態の印刷装置1は、被吐出媒体Mに対して送風を行うモード及び/又は吸引を行うモードを切り替え可能である。
図7は、送風/吸引の設定の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、送風/吸引のモード選択を行い(S001)、次いで選択した送風及び/又は吸引のレベルを選択する(S002)。
これらの設定は、例えば、操作部71における入力や、接続された制御装置のアプリケーションにより設定を行うことができる。
【0042】
送風のレベルとしては、例えば、吐出される液体の量等に応じて送風量を設定することができる。また、吸引のレベルとしては、例えば、被吐出媒体Mのシワの発生のしやすさや、印刷中の浮き上がりやすさ等に基づいて吸引力を設定することができる。
これらは、例えば、3段階程度の予め設定されたレベルから選択することができる。
【0043】
送風/吸引のモードとしては、例えば、以下に説明する4種類のモードから選択することができる。
【0044】
(1)第1のモード
第1のモードは、送風のみを行うモードである。第1のモードにおける制御の流れの一例を図8に示す。
図8に示すように、印刷開始後(S101)、印刷中は送風を行い(S102)、印刷終了まで送風を継続する(S103)。印刷終了とともに、送風動作も終了する。
【0045】
(2)第2のモード
第2のモードは、吸引のみを行うモードである。第2のモードにおける制御の流れの一例を図9に示す。
図9に示すように、印刷開始後(S201)、印刷中は吸引を行い(S202)、印刷終了まで吸引を継続する(S203)。印刷終了とともに、吸引動作も終了する。
【0046】
(3)第3のモード
第3のモードは、下地印刷後にカラー印刷を行う場合に選択することができるモードである。
第3のモードが適用される印刷装置は、液体吐出手段が、第1の液体を吐出する第1のヘッド、及び第1の液体とは異なる複数の第2の液体を吐出する第2のヘッドを備えている。具体的には、第1の液体は白色のインクであり、第2の液体はカラーインクであり、第1の液体により下地を形成し、第2の液体により下地の上に所望の画像を形成する装置である。被吐出媒体Mは、例えば、布地である。
【0047】
第3のモードは、第1のヘッドから液体を吐出しているとき、及び第2のヘッドから液体を吐出しているときは被吐出媒体Mを吸引し、第1のヘッドから液体を吐出した後、第2のヘッドから液体を吐出するまでの待機時に被吐出媒体に送風するモードである。第3のモードにおける制御の流れの一例を図10に示す。
【0048】
図10に示すように、下地印刷開始後(S301)、印刷中は吸引を行い(S302)、下地印刷終了まで吸引を継続する(S303)。次いで、カラー印刷を行うまでの待機中は切り替えて送風を行う(S304)。次いで、カラー印刷開始後(S305)、再度切り替えを行って印刷中は吸引を行い(S306)、カラー印刷終了まで吸引を継続する(S307)。
【0049】
(4)第4のモード
第4のモードは、検知手段30により被吐出媒体Mの表面に凹凸が検知されたとき、吸引に切り替えるモードである。
例えば、プラテン部材2上に載置された被吐出媒体Mが平坦ではなく、シワや浮き上がりを有する場合は、送風中であっても吸引に切り替える制御が行われる。
【0050】
第4のモードの制御の流れの一例を図11に示す。
図11に示す例は、液体吐出手段が第1の液体を吐出する第1のヘッド、及び第1の液体とは異なる複数の第2の液体を吐出する第2のヘッドを備え、第1の液体により下地を形成し、第2の液体により下地の上に所望の画像を形成する場合における流れである。被吐出媒体Mは、例えば、布地である。
【0051】
図11に示すように、下地印刷開始後(S401)、印刷中は送風を行い(S402)、下地印刷終了まで送風を継続する(S403)。下地印刷中に、検知手段30により被吐出媒体Mのシワが検知されたかを判断し(S404)、シワが検知されなければ送風を継続し、シワが検知された場合は吸引に切り替える(S405)。その後、検知手段30により被吐出媒体Mのシワが検知されなくなるまで、すなわち被吐出媒体Mのシワが解消されるまで吸引を継続する(S406)。一方、被吐出媒体Mのシワが解消されれば、送風に切り替えて(S402)送風を継続する。
【0052】
次いで、カラー印刷を行うまで待機し(S407)、待機中は送風を行う。カラー印刷開始後(S408)、印刷中は送風を行い(S409)、カラー印刷終了まで送風を継続する(S410)。カラー印刷中に、検知手段30により被吐出媒体Mのシワが検知されたかを判断し(S411)、シワが検知されなければ送風を継続し、シワが検知された場合は吸引に切り替える(S412)。その後、検知手段30により被吐出媒体Mのシワが検知されなくなるまで、すなわち被吐出媒体Mのシワが解消されるまで吸引を継続する(S413)。一方、被吐出媒体Mのシワが解消されれば、送風に切り替えて(S409)送風を継続する。
【0053】
以上、送風/吸引のモードとして第1~第4のモードの例を説明したが、切り替えの態様はこれらに限定されず、他の態様の制御を予め設定することもできる。
【0054】
図12は、本実施形態の液体を吐出する装置としての印刷装置が備える乾燥機構及び吸引機構の他の例を模式的に示した説明図である。
図12に示すように、気流発生手段20は、送風装置24及び吸引装置25を有し、送風装置24は乾燥機構を構成する通気経路26と連通し、吸引装置25は吸引機構を構成する通気経路26と連通し、乾燥機構を構成する通気経路と吸引機構を構成する通気経路とが、互いに連通する合流点26aを有している。
なお、合流点26aには、送風装置24から吸引装置25への空気の流れを阻止する弁を設けてもよい。
【0055】
図13は、図12中のプラテン部材2の破線で囲まれた部分2Aの拡大図である。
図13(A)及び図13(B)に示すように、本実施形態において、通気孔21は、気流発生手段20により生じた送風及び吸引のいずれかの気流を選択的に通気させる逆止弁22を備えている。また、乾燥機構を構成する通気孔21aと、吸引機構を構成する通気孔21bとが区別されている。
図13(B)に示すように、逆止弁22は、気流発生手段20からの気流の流れに応じて回転軸23を中心として回動し、通気孔21aは送風のための気流を通気させ、通気孔21bは吸引のための気流を通過させる。
【0056】
図14は、図12中のプラテン部材2の破線で囲まれた部分2Aの拡大図である。
本実施形態では、通気孔21の形状の違いによって、乾燥機構を構成する通気孔21aと、吸引機構を構成する通気孔21bとが区別されている。
吸引機構を構成する複数の通気孔21bは、開口径が通気経路の径よりも小さい円錐台形の形状(テーパ形状)を有している。このような形状を有することにより流体抵抗が増加し、通気孔21bには送風のための気流が通過せず、吸引用の通気孔となる。また、図13に示した例よりも、吸引力が向上する。
【0057】
図15は、プラテン部材2上の通気孔21の開口部の配置の例を示す説明図である。
乾燥機構を構成する通気孔21aと、吸引機構を構成する通気孔21bとが区別されている態様において、図15に示すように、乾燥機構を構成する通気孔21aと、吸引機構を構成する通気孔21bとが、行方向及び列方向に交互に配設されていることが好ましい。
【0058】
図16は、本実施形態の液体を吐出する装置としての印刷装置が備える乾燥機構及び吸引機構の他の例を模式的に示した説明図である。
本実施形態の装置において、気流発生手段20はファン部材29を備え、ファン部材29の気流送出側に乾燥機構を構成する通気経路27が接続され、ファン部材29の吸気側に吸引機構を構成する通気経路28が接続されている。
気流送出側への送風に伴って吸気側で負圧が形成され、気流送出側に接続された通気経路27と連通する通気孔21aから送風が行われ、吸気側に接続された通気経路28と連通する通気孔21bから吸引が行われる。
【0059】
図16に示す構成では、送風と吸引の切り替えが不要であり、送風及び吸引が同時に行われる。すなわち、図16の構成によれば、印刷中に被吐出媒体Mのプラテン部材2上での平坦に保持するための吸引と、吐出された液体の乾燥とを同時に行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態の乾燥機構を構成する通気孔21a及び吸引機構を構成する通気孔21bを、図13に示したような逆止弁22を備える構成とすることができる。また、本実施形態の吸引機構を構成する通気孔21bを、図14に示す円錐台形の形状とすることができる。
【0061】
以上のように、本実施形態の液体を吐出する装置によれば、装置構成の複雑化や大型化を招くことなく、被吐出媒体Mのプラテン部材2上への保持と吐出された液体の乾燥を実現することができる。
【0062】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 被吐出媒体に対して液体を吐出する液体吐出手段と、
前記被吐出媒体が載置される面に開口した複数の通気孔を有するプラテン部材と、
複数の前記通気孔と連通する通気経路と、
前記通気孔を介して前記被吐出媒体に送風及び/又は吸引を行うための気流を発生させる気流発生手段と、を備え、
前記通気孔、前記通気経路及び前記気流発生手段により構成され、前記プラテン部材上に載置された前記被吐出媒体に送風し、前記被吐出媒体に吐出された前記液体を乾燥させる乾燥機構と、
前記通気孔、前記通気経路及び前記気流発生手段により構成され、前記プラテン部材上に載置された前記被吐出媒体を吸引し、前記被吐出媒体を前記プラテン部材上に保持する吸引機構と、を有することを特徴とする液体を吐出する装置である。
<2> 前記被吐出媒体に対して送風を行うモード及び/又は吸引を行うモードを切り替え可能であることを特徴とする前記<1>に記載の液体を吐出する装置である。
<3> 前記被吐出媒体の表面の凹凸を検知する検知手段を備え、
前記被吐出媒体の表面に凹凸が検知されたとき、前記通気孔を介して前記被吐出媒体を吸引することを特徴とする前記<1>または<2>に記載の液体を吐出する装置である。
<4> 前記気流発生手段は、送風装置及び吸引装置を有し、
前記送風装置は前記乾燥機構を構成する前記通気経路と連通し、
前記吸引装置は前記吸引機構を構成する前記通気経路と連通し、
前記乾燥機構を構成する前記通気経路と前記吸引機構を構成する前記通気経路とが、互いに連通する合流点を有することを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<5> 前記通気孔は、前記気流発生手段により生じた送風及び吸引のいずれかの気流を選択的に通気させる逆止弁を備えることを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<6> 前記吸引機構を構成する複数の前記通気孔は、開口径が通気経路の径よりも小さい円錐台形の形状を有することを特徴とする前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<7> 前記乾燥機構を構成する前記通気孔と、前記吸引機構を構成する前記通気孔とが、行方向及び列方向に交互に配設されていることを特徴とする前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<8> 前記気流発生手段はファン部材を備え、
前記ファン部材の気流送出側に前記乾燥機構を構成する前記通気経路が接続され、前記ファン部材の吸気側に前記吸引機構を構成する前記通気経路が接続されていることを特徴とする前記<1>及び<5>から<7>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<9> 前記液体吐出手段は、第1の液体を吐出する第1のヘッド、及び前記第1の液体とは異なる複数の第2の液体を吐出する第2のヘッドを備え、
前記第1のヘッドから液体を吐出しているとき、及び前記第2のヘッドから液体を吐出しているときは前記被吐出媒体を吸引し、
前記第1のヘッドから液体を吐出した後、前記第2のヘッドから液体を吐出するまでの待機時に前記被吐出媒体に送風することを特徴とする前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<10> 前記被吐出媒体が布地であり、前記第1の液体は白色のインクであり、前記第2の液体はカラーインクであり、前記第1の液体により下地を形成し、前記第2の液体により下地の上に所望の画像を形成することを特徴とする前記<9>に記載の液体を吐出する装置である。
【符号の説明】
【0063】
1 液体を吐出する装置(印刷装置)
2 プラテン部材
20 気流発生手段
21 通気孔
22 逆止弁
30 検知手段
M 被吐出媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2004-142385号公報
図1
図2
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図4
図5
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図7
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図10
図11
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図15
図16