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特開2024-36931かご構造を有するシルセスキオキサン及びレジスト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036931
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】かご構造を有するシルセスキオキサン及びレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/28 20060101AFI20240311BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20240311BHJP
   C08G 79/14 20060101ALI20240311BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08G77/28
G03F7/039 601
C08G79/14
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141497
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 芙美
(72)【発明者】
【氏名】村田 貴朗
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J030
4J246
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA06
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE10
2H197GA01
2H225AF24P
2H225AF43P
2H225AK03
2H225AN39P
2H225CA12
2H225CB08
2H225CC03
2H225CC15
4J030CA02
4J030CB03
4J030CB14
4J030CC15
4J030CD11
4J030CE02
4J030CE11
4J030CF09
4J030CG06
4J246AA03
4J246AA11
4J246AB07
4J246BA12X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB052
4J246BB05X
4J246CA47X
4J246CA63X
4J246CA84X
4J246FA081
4J246FA131
4J246FA431
4J246FB271
4J246GA01
4J246GA02
4J246GB04
4J246GD08
4J246HA15
(57)【要約】
【課題】本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンを含むレジスト組成物は、電子線や極端紫外光(EUV)等の短波長の光源を使用した場合に、ドライエッチング耐性に優れ、微細なパターンを形成することができる。
【解決手段】 下記化学式(1)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンを用いる。
(RaSiO1.5)m ・・・(1)
【化2】
(上記化学式(1)中、mは3~30の整数であり、Raは上記化学式(2)で表される置換基を示し、化学式(2)におけるLは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサン。
(RaSiO1.5)m ・・・(1)
【化2】
(上記化学式(1)中、mは3~30の整数であり、Raは上記化学式(2)で表される置換基を示し、化学式(2)におけるLは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【請求項2】
前記化学式(2)におけるZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である請求項1記載のシルセスキオキサン。
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【請求項3】
下記化学式(3)で表されるシラン化合物を加水分解・縮合することを特徴とするかご構造を有するシルセスキオキサンの製造方法。
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【請求項4】
前記化学式(3)におけるZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である請求項3記載のシルセスキオキサンの製造方法。
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【請求項5】
下記化学式(6)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサン。
(RmSiO1.5)m (6)
【化2】
(上記化学式(6)中、mは3~30の整数であり、Rmは構造の異なるRa、Rbを含み、
Raは上記化学式(2)であり、Rbは極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有し、
上記化学式(2)において、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【請求項6】
前記Raと前記Rbの比率が95:5~5:95である、請求項5記載のかご構造を有するシルセスキオキサン。
【請求項7】
Rmとしてラクトン骨格を有する基Rcを含む、請求項5記載のかご構造を有するシルセスキオキサン。
【請求項8】
Rmとして、親水性基を有する基Rdを含む、請求項5記載のかご構造を有するシルセスキオキサン。
【請求項9】
下記化学式(3)で表されるシラン化合物と、極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有するシラン化合物との加水分解・共縮合することを特徴とするかご構造を有するシルセスキオキサンの製造方法。
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【請求項10】
前記化学式(3)におけるZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である請求項9記載のシルセスキオキサンの製造方法。
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【請求項11】
下記化学式(3)で表されるシラン化合物と金属アルコキシドの加水分解・縮合により得られるシルセスキオキサン。
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【請求項12】
前記化学式(3)におけるZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である請求項11記載のシルセスキオキサン。
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【請求項13】
下記化学式(3)で表されるシラン化合物と金属アルコキシドの加水分解・縮合により得られるシルセスキオキサンの製造方法。
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【請求項14】
前記化学式(3)におけるZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である請求項13記載のシルセスキオキサンの製造方法。
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【請求項15】
請求項1、5または11のいずれか1項に記載のかご構造を有するシルセスキオキサンを含むレジスト組成物。
【請求項16】
基板上に請求項15に記載のレジスト組成物からなる層を作成したレジスト組成物層含有基板を、露光し、基板上にパターンを形成することを特徴とする、パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご構造を有するシルセスキオキサン及び当該シルセスキオキサンを含むレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
かご構造を有するシルセスキオキサンは、その硬直なポリシロキサン骨格と、サブナノレベルの分子サイズから、高い透明性、耐熱性、表面硬度・耐擦傷性、機械強度等を有しており、ハードコート材料、耐熱材料、レジスト材料等の用途が検討されている。
例えば特許文献1には、かご構造を有するシルセスキオキサンを含む、リソグラフィー用のレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-28743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の方法では、工程が長く操作が煩雑であり、全収率も低いものであった。また、近年の回路パターンの細線化に伴う、電子線や極端紫外光(EUV)等の短波長の光源を用いたリソグラフィーへの対応が不十分であった。
本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
【0006】
[1] 下記化学式(1)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサン。
(RaSiO1.5)m ・・・(1)
【0007】
【化2】
(上記化学式(1)中、mは3~30の整数であり、Raは上記化学式(2)で表される置換基を示し、化学式(2)におけるLは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0008】
[2] 前記化学式(2)におけるZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である[1]記載のシルセスキオキサン。
【0009】
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【0010】
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【0011】
[3] 下記化学式(3)で表されるシラン化合物を加水分解・縮合することを特徴とするかご構造を有するシルセスキオキサンの製造方法。
【0012】
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0013】
[4] 前記化学式(3)におけるZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である[3]記載のシルセスキオキサンの製造方法。
【0014】
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【0015】
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【0016】
[5] 下記化学式(6)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサン。
(RmSiO1.5)m (6)
【0017】
【化2】
(上記化学式(6)中、mは3~30の整数であり、Rmは構造の異なるRa、Rbを含み、Raは上記化学式(2)であり、Rbは極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有し、上記化学式(2)において、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0018】
[6] 前記Raと前記Rbの比率が95:5~5:95である、[5]記載のかご構造を有するシルセスキオキサン。
【0019】
[7] Rmとしてラクトン骨格を有する基Rcを含む、[5]または[6]記載のかご構造を有するシルセスキオキサン。
【0020】
[8] Rmとして、親水性基を有する基Rdを含む、[5]~[7]のいずれかに記載のかご構造を有するシルセスキオキサン。
【0021】
[9] 下記化学式(3)で表されるシラン化合物と、極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有するシラン化合物との加水分解・共縮合により得られるシルセスキオキサンの製造方法。
【0022】
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0023】
[10] 前記化学式(3)におけるZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である[9]のシルセスキオキサンの製造方法。
【0024】
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【0025】
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【0026】
[11] 下記化学式(3)で表されるシラン化合物と金属アルコキシドの加水分解・縮合により得られるシルセスキオキサン。
【0027】
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0028】
[12] 前記化学式(3)におけるLが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である[11]のシルセスキオキサン。
【0029】
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【0030】
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【0031】
[13] 下記化学式(3)で表されるシラン化合物と金属アルコキシドの加水分解・縮合により得られるシルセスキオキサンの製造方法。
【0032】
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0033】
[14] 前記化学式(3)におけるZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基である請求項13記載のシルセスキオキサンの製造方法。
【0034】
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【0035】
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【0036】
[15] [1]、[2]または[5]~[8]、[11]または[12]のいずれかに記載のかご構造を有するシルセスキオキサンを含むレジスト組成物。
【0037】
[16] 基板上に[15]に記載のレジスト組成物からなる層を作成したレジスト組成物層含有基板を、露光し、基板上にパターンを形成することを特徴とする、パターン形成方法。
【発明の効果】
【0038】
本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンは、チオエーテル構造を有することにより短工程、高収率で合成が可能であり、種々の用途への展開が可能となる。特に、本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンを含むレジスト組成物は、電子線や極端紫外光(EUV)等の短波長の光源を使用した場合に、ドライエッチング耐性に優れ、微細なパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンの一実施形態は、下記化学式(1)で表される。
(RaSiO1.5)m ・・・(1)
【0040】
【化2】
(上記化学式(1)中、mは3~30の整数であり、Raは上記化学式(2)で表される置換基を示し、化学式(2)におけるLは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0041】
微細なパターンを形成するために、分子サイズが小さく分子鎖の絡まり合いも弱くすることが好ましい点から、mは30以下が好ましく、20以下がより好ましい。また、構造の安定性の点から、mは3以上が好ましく、6以上がより好ましい。
質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算)は、微細なパターンを形成できる点で1.0~2.0が好ましく、1.0~1.8がさらに好ましい。
前記かご構造を有するシルセスキオキサン構造は、(SiO1.5)mで表現される頂点の数がm個のかご構造である。かかるかご構造は、完全かご型シルセスキオキサン構造であっても、不完全かご型シルセスキオキサン構造であってもよい。例えば完全かご型シルセスキオキサン構造としては以下の化合物が挙げられる。
【0042】
【化1】
(ここで、各頂点は置換基をそれぞれ1個含有する珪素原子であり、各辺はSi-O-Si結合を表す。)
【0043】
本発明では、剛直な化学構造を有する有機ケイ素化合物を含むことにより、例えば、ドライエッチング耐性に優れたものとなる。
【0044】
上記化学式(1)におけるRaは、下記化学式(2)で表される置換基である。
【0045】
【化2】
【0046】
化学式(2)におけるLは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2の整数である。)
【0047】
Lは、炭素数1~6の炭化水素鎖である。直鎖状でもよく、分岐状でもよい。鎖式炭化水素基としてはアルキレン基が好ましい。溶解性の観点から炭素数は1~4が好ましく、1~3がより好ましい。
【0048】
Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合であり、原料入手容易性の観点からエステル結合が好ましい。
【0049】
としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基などの直鎖または分岐アルキル基;t-ブチル基、トリチル基などの第三級アルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、4-メチルフェニル基、ジメチルフェニル基などのアルキルフェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基等が挙げられる。Zは上記からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0050】
nは0~2の整数であり、0~1が好ましい。
【0051】
パターン形成時の露光により酸を発生する化合物と併用してレジスト組成物として用いた場合に、レジストパターン形成が可能となる点で、Zは下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基が好ましい。
【0052】
【化4】
【0053】
【化5】
(R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【0054】
~Rのアルキル基は炭素数1~10が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。なお、アルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0055】
~Rのシクロアルキル基は単環形でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3~10のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0056】
多環型としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等が挙げられる。 なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0057】
アリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基等が挙げられる。
アラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0058】
また、ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。かかる環構造はシクロアルキル基(単環もしくは多環)であることが好ましい。例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0059】
かかる化学式(1)で表されるシルセスキオキサンは、例えば下記化学式(3)で表されるシラン化合物を加水分解・縮合することにより得られる。
【0060】
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0061】
かかるL、Y、Z、nは上記化学式(2)におけるL、Y、Z、nと同様のものが好ましい。
【0062】
次に、上記形態のかご構造を有するシルセスキオキサンの製造方法の一例を示す。
上記形態のかご構造を有するシルセスキオキサン化合物は、下記化学式(3)で表されるシラン化合物を公知の方法により加水分解・縮合することにより得られる。
【0063】
【化3】
【0064】
なお、本発明において、加水分解・縮合とは、1種類以上のシラン化合物と所定量の水および触媒を混合し、アルコキシシリル基の加水分解と、これに続くシラノール基の縮合反応により、所望のシルセスキオキサン化合物を製造する一連の反応のことである。
【0065】
Raを有するシラン化合物の加水分解・縮合の触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸およびフッ化水素酸などの無機酸、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドおよびベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などが好適である。
これらの中でも、フッ化水素酸、アンモニウムフルオリドは、かご構造を特異的に生成するため、特に好ましい。
【0066】
触媒量は、Raを有するシラン化合物の加水分解性アルコキシ基モル数の理論量合計の0.001~1倍が好ましく、0.005~0.5倍がより好ましい。0.001倍以上では十分な触媒活性を得ることができる傾向があり、また、1倍以下ならば、ゲル化を抑制することができる傾向がある。
【0067】
Raを有するシラン化合物の加水分解に使用する水量は、加水分解性アルコキシ基モル数の理論量合計の0.1~10倍が好ましく、1~3倍がより好ましい。
【0068】
加水分解・縮合の反応温度は、0~100℃が好ましく、20~50℃がより好ましい。0℃以上ならば十分に反応が進行する。100℃以下ならば副反応の誘発やゲル化の可能性が少ない傾向がある。
【0069】
加水分解・縮合時には、有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒としては、Raを有するシラン化合物を溶解できるものであれば特に限定はないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1-メトキシ-2-プロパノール、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0070】
加水分解・縮合反応後、得られたシルセスキオキサン溶液を公知の手法で分液、水洗、蒸留、晶析、濾過、濃縮および/または減圧乾燥等により精製を行うことで、上記化学式(1)で表される、かご構造を有するシルセスキオキサンを得ることができる。
【0071】
本発明の他の実施形態の一つは、化学式(6)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンである。
(RmSiO1.5)m (6)
【0072】
【化2】
(上記化学式(6)中、mは3~30の整数であり、Rmは構造の異なるRa、Rbを含み、Raは上記化学式(2)であり、Rbは極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基であり、上記化学式(2)において、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0073】
前記化学式(6)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンのRmは、構造の異なるRa、Rbを含み、Raは化学式(2)で表される置換基であり、Rbは、極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する置換基である。
なお、「極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基」としては、スズ、アンチモン、テルル、キセノン、セシウム、バリウム等の金属元素やフッ素、ヨウ素等のハロゲン元素を含む基が挙げられる。
Rbとしては、合成容易性および入手容易性の観点からフッ素原子を含む基が好ましく、2,2,3,3,-テトラフルオロプロピル基、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1H,1H-ペンタデカフルオロ-n-オクチル基、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル基、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロフェニル基等を含む基が挙げられる。
【0074】
前記Raが化学式(2)で表される置換基であることにより、パターン形成時の露光により酸を発生する化合物と併用してレジスト組成物として用いた場合に、レジストパターン形成が可能となる。
すなわち、前記レジスト組成物を基板等に塗布してレジスト膜を形成し、前記レジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部では酸が発生し、酸の作用によって酸脱離性基が脱離し、露光部と未露光部との間でアルカリ(現像液)に対する溶解性の差が生じる。かかるレジスト膜を現像することでレジストパターンが形成される。
なお、上記化学式(2)で表される置換基として好ましくは、上述した通りである。
【0075】
また化学式(6)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンにおいて、前記Raと前記Rbの比率は95:5~5:95が好ましく、90:10~10:90がより好ましい。ここで、Raが5以上であればレジストパターン形成が容易となる。また、Rbが5以上であれば、露光の際の感度が向上しやすい。
【0076】
更に化学式(6)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンは、Rmとして、ラクトン骨格を有する基Rcを有していてもよい。
ラクトン骨格を有する基Rcの例としては、4~20員環程度のラクトン環が挙げられる。ラクトン環は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合した縮合環であってもよい。
Rcとしては、基板等への密着性に優れる点から、置換または無置換のδ-バレロラクトン環、および置換または無置換のγ-ブチロラクトン環からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ-ブチロラクトン環を有する基が特に好ましい。
【0077】
ラクトン環の具体例としては、β-メチル-δ-バレロラクトン、4,4-ジメチル-2-メチレン-γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-メチル-γ-ブチロラクトン、パントイルラクトン、2,6-ノルボルナンカルボラクトン、4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン、4-オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-3-オン等が挙げられる。
ラクトン骨格を有する基Rcは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
前記化学式(6)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンがラクトン骨格を有する基Rcを含む場合、その含有量は、全構成単位に対して5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましい。
なお、前記ラクトン骨格を有する基Rcは、酸脱離性基、極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有しないものである。
【0079】
また、化学式(6)で表されるかご構造を有するシルセスキオキサンは、Rmとして、親水性基を有する基Rdを有していてもよい。
「親水性基」とは、-C(CF-OHで表される1価基、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
前記Rdとしては、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシ-n-プロピル、4-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシアダマンチル、2-または3-シアノ-5-ノルボルニル、2-シアノメチル-2-アダマンチル基等が挙げられる。
基板等に対する密着性の点から、3-ヒドロキシアダマンチル、3,5-ジヒドロキシアダマンチル、2-または3-シアノ-5-ノルボルニル、2-シアノメチル-2-アダマンチル基が好ましい。
前記Rdは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
なお、前記Rdは、極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基、酸脱離性基、及びラクトン骨格を有しないものである。
かご構造有するシルセスキオキサンが前記Rdを含む場合、その含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位に対して5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、30モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましい。
【0081】
次に、上記他の形態のかご構造を有するシルセスキオキサンの製造方法の一例を示す。
本発明のかご構造を有するシルセスキオキサン化合物は、上記化学式(3)で示される化合物または、上記化学式(3)で示される化合物とRbすなわち極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有するシラン化合物とを公知の方法により加水分解・共縮合することにより得られる。極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有するシラン化合物とは、たとえば2,2,3,3,-テトラフルオロプロピルトリメトキシシラン、2,2,3,3,-テトラフルオロプロピルトリエトキシシラン、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルトリメトキシシラン、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルトリエトキシシラン、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルトリメトキシシラン、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルトリエトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルトリメトキシシラン、2,2,2-トリフルオロエチルトリエトキシシラン、1H,1H-ペンタデカフルオロ-n-オクチルトリメトキシシラン、1H,1H-ペンタデカフルオロ-n-オクチルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルトリメトキシシラン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
なお、本発明において、加水分解・共縮合とは、2種類以上のシラン化合物と所定量の水および触媒を混合し、アルコキシシリル基の加水分解と、これに続くシラノール基の縮合反応により、所望のシルセスキオキサン化合物を製造する一連の反応のことである。
【0082】
上記化学式(3)で示される化合物または、上記化学式(3)で示される化合物とRbを有するシラン化合物との加水分解・共縮合の触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸およびフッ化水素酸などの無機酸、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドおよびベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などが好適である。
これらの中でも、フッ化水素酸、アンモニウムフルオリドは、かご構造を特異的に生成するため、特に好ましい。
【0083】
触媒量は、上記化学式(3)で示される化合物または、上記化学式(3)で示される化合物とRbを有するシラン化合物との加水分解性アルコキシ基モル数の理論量合計の0.001~1倍が好ましく、0.005~0.5倍がより好ましい。0.001倍以上では十分な触媒活性を得ることができる。また、1倍以下ならば、ゲル化を抑制することができる。
上記化学式(3)で示される化合物または、上記化学式(3)で示される化合物とRbを有するシラン化合物との加水分解に使用する水量は、加水分解性アルコキシ基モル数の理論量合計の0.1~10倍が好ましく、1~3倍がより好ましい。
【0084】
加水分解・共縮合の反応温度は、0~100℃が好ましく、20~50℃がより好ましい。0℃以上ならば十分に反応が進行する。100℃以下ならば副反応の誘発やゲル化の可能性が少ない。
【0085】
加水分解・共縮合時には、有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒としては、上記化学式(3)で示される化合物または、上記化学式(3)で示される化合物とRbを有するシラン化合物とを溶解できるものであれば特に限定はないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1-メトキシ-2-プロパノール、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0086】
上記化学式(3)で示される化合物は、例えば、チオール基を含有するシラン化合物と単官能アクリレート化合物とのマイケル付加反応により製造することができる。
【0087】
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれか、nは0~2である。)
【0088】
チオール基を含有するシラン化合物としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、特に、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好適である。
【0089】
単官能アクリレート化合物としては、炭素数1~6の炭化水素鎖L、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合Y、直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれかZに相当する構造を有し、nは0~2であるアクリレート化合物であり、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、t-ブチルアクリレート、1-メチルシクロペンチルアクリレート、1-メチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、フェニルアクリレート、4-メチルフェニルアクリレート、ジメチルフェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェネチルアクリレートなどが挙げられる。
パターン形成時の露光により酸を発生する化合物と併用してレジスト組成物として用いた場合に、レジストパターン形成が可能となる点および入手容易性の観点から、t-ブチルアクリレート、1-メチルシクロペンチルアクリレート、1-メチルシクロヘキシルアクリレートが好適である。
【0090】
また、Zは、極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基を有し、これを有するアクリレート化合物としては、特に入手容易性の観点から、2,2,3,3,-テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、1H,1H-ペンタデカフルオロ-n-オクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルアクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレートが好適である。
【0091】
本付加反応は無溶媒で行ってもよいし、溶媒を用いることもできる。溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2-メトキシエチルアルコール、2-エトキシエチルアルコール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3-メトキシブチルアセテート、2-エチルブチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトン、2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、2-フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。また、その使用量は適宜、決めればよい。
【0092】
チオール基を含有するシラン化合物と単官能アクリレート化合物との反応モル比は、未反応物を少なくできることから、アミノ基を含有するシラン化合物1モルに対して単官能アクリレート化合物2~10モルが好ましく、2~5モルがより好ましい。
【0093】
付加反応の温度は、20~100℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。20℃
以上ならば、付加反応を十分進行させることができる。また、100℃以下ならば、アクリレート化合物の重合を抑制することができる。
付加反応の時間は、1~60時間が好ましく、2~48時間がより好ましい。1時間以上ならば、付加反応を十分進行させることができる。60時間以内ならば、アクリレート化合物の重合を抑制することができる。
【0094】
本付加反応は、触媒を用いることができる。触媒としては、マイケル付加反応に使用されるアミン類、アルカリ金属アルコキシド、金属水素化物、金属炭酸塩、アルキル金属化物、ホスフィン類などの公知のものを用いることができ、たとえばトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピペリジン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7等のアミン類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、水素化ナトリウム等の金属水素化物、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム等のアルキル金属化物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類が挙げられる。
【0095】
アクリレート化合物の重合を抑制するため、反応系内に重合防止剤を添加してもよい。重合防止剤の種類は、特に限定されない。重合防止剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合防止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、4-tert-ブチルカテコール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメイト)、2-sec-ブチル-4,6-ジニトロフェノール等のフェノール系化合物;N,N-ジイソプロピルパラフェニレンジアミン、N,N-ジ-2-ナフチルパラフェニレンジアミン、N-フェニレン-N-(1,3-ジメチルブチル)パラフェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルフェニル)-パラフェニレンジアミン、N-(1,4-ジメチルフェニル)-N’-フェニル-パラフェニレンジアミン等のアミン系化合物;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、ビス(1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケイト等のN-オキシル系化合物;銅、塩化銅(II)、塩化鉄(III)等の金属化合物;等が例示できる。
重合防止剤の使用量は適宜設定できる。例えば、アクリレート化合物に対して20ppm以上が好ましく、充分な重合防止効果を得るには50ppm以上がより好ましい。一方、コストの観点から重合防止剤の使用量は、10000ppm以下が好ましく、5000ppm以下がより好ましい。
【0096】
本付加反応終了後の精製方法については、生成物の物性、原料、溶剤の有無等を考慮して、分液、水洗、蒸留、晶析、濾過等の公知の精製方法を、適宜組み合わせることができる。
【0097】
本発明の他の実施形態の一つは、前記化学式(3)で表されるシラン化合物と金属アルコキシドの加水分解・縮合により得られるシルセスキオキサンである。
【0098】
【化3】
(上記化学式(3)において、Rがメチル基であり、Lは炭素数1~6の炭化水素鎖、Yはエーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合から選ばれる少なくとも1種のヘテロ結合、Zは直鎖または分岐アルキル基、第三級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは0~2である。)
【0099】
前記化学式(3)の説明は前記と同様である。好ましくは、前記化学式(3)のZが、下記化学式(4)または(5)で示される第三級アルキル基であることが好ましい。
【0100】
【化4】
(上記化学式(4)において、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。)
【0101】
【化5】
(上記化学式(5)において、Rは炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基である。ZはRが結合している炭素原子とともに炭素数3~20の環式炭化水素基を形成する原子団である。)
【0102】
用いる金属アルコキシドは、シルセスキオキサンのSi-O-Si骨格を、部分的に、Si―O-金属結合に置換して導入される。かかる金属アルコキシドは例えばトリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ-s-ブトキシアルミニウム、トリ-n-ブトキシアルミニウム、アセチルアセテートジイソプロポキシアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド、テトラ-t-ブトキシスズ等のスズアルコキシド、テトラ-n-プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、ビス(アセチルアセテート)ジイソプロポキシチタニウム等のチタンアルコキシド、テトラ-n-プロポキシジルコニウム、テトラ-n-ブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシドが挙げられる。Mw/Mnを1.0~2.0とすることにより微細なパターンを形成できる点および入手容易性の点で好ましくはテトラ-n-ブトキシチタンである。
【0103】
<レジスト化合物>
本発明のレジスト組成物は、かご構造を有するシルセスキオキサンと、溶媒と、ポジ型のパターンを得る場合は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含むことが好ましい。
かご構造を有するシルセスキオキサンは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物(溶剤を除く)に対して、かご構造を有するシルセスキオキサンの含有量は、特に限定されないが、70~99.9質量%が好ましい。
【0104】
溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などが挙げられる。溶媒は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒の使用量は、形成するレジスト膜の厚みにもよるが、かご構造を有するシルセスキオキサン100質量部に対して100~10,000質量部の範囲が好ましい。
【0105】
パターン形成時の露光により酸を発生する化合物は、化学増幅型レジスト組成物の光酸発生剤として公知のものが使用できる。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、トリフェニルスルホニウムトリフレートなどのスルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。
前記光酸発生剤の使用量は、かご構造を有するシルセスキオキサン100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。
【0106】
さらに本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、含窒素化合物、酸化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体)、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤は、当該分野で公知のものを使用できる。
【0107】
本発明のパターン形成方法は、本発明のレジスト組成物からなる層を基板上に製膜する工程と、前記レジスト組成物を露光する工程と、露光後の前記レジスト組成物を現像する工程を含む。
【0108】
<製膜工程>
本発明のレジスト組成物からなる層を基板上に製膜する方法は、公知の手法を用いてよい。回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の公知の方法を用いることができる。
前記基板としては、シリコンウエハ、SiNウエハ、AINウエハ、アルミニウムで被覆されたウエハ等が挙げられる。なお、レジスト組成物の密着性、現像後の解像性等を改善するために、有機系、無機系の反射防止膜を基板上に形成しても良い。
【0109】
本工程で形成する膜の平均厚さは、1nm以上、500nm以下が好ましい。前記下限以下では、レジスト膜としての機能が損なわれ、前記上限以上ではパターン形成・現像後のパターン倒れなどが発生しやすくなる。
また、必要に応じて塗布後にプリベークを行ってもよい。プリベークの温度は、60℃以上、140℃以下が好ましい。プリベークの時間は、5秒以上、300秒以下が好ましい。
【0110】
<露光工程>
前記製膜工程で得られた基板のレジスト層に、所定のパターンを有するマスクを介して、露光を行う。露光に用いる光源は、紫外線、遠紫外線、EUV、電子線、X線、ガンマ線等が挙げられる。
これらの中でも、極端紫外線(EUV)、電子線が好ましい。
【0111】
<現像工程>
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜に現像液を接触させてレジスト膜の一部を溶解する。ポジ型現像プロセスではアルカリ現像液で露光部を溶解して除去する。
本発明のかご構造を有するシルセスキオキサンは、露光により発生した酸によって酸脱離性基の結合が開裂し、露光部のアルカリ現像液への溶解速度が増す。
【0112】
アルカリ現像液としてはアルカリ性水溶液が用いられる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類;ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類;等の水溶液が挙げられる。
【0113】
現像は、公知の方法で行えばよく、現像液が満たされた槽の中に基板を一定時間浸漬する方法、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法、基板表面に現像液を噴霧する方法、一定速度で回転させている基板上に一定速度でノズルを走査しながら現像液を吐出する方法等が挙げられる。
【0114】
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
【0115】
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にドライエッチングする。
ドライエッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【実施例0116】
以下に、一実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
シルセスキオキサン化合物の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
【0117】
<シラン化合物の合成(A1)>
<合成例1>
撹拌子、温度計を備えたフラスコに、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン2.00g(10mmol)、トリエチルアミン1.10g(11mmol)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール8mgを加えた。t-ブチルアクリレート1.8mL(12mmol)を滴下した後、50℃で2.5時間反応させた。さらにt-ブチルアクリレート1.8mL(12mmol)、トリエチルアミン2.06g(20mmol)を加えた後、50℃で7.5時間反応させた。反応終了後、濃縮、減圧乾燥して下記に示すシラン化合物(A1)3.43gを淡黄色液体として収率104%で得た。1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ3.56ppm(s、9H)、2.72ppm(t、2H)、2.54ppm(t、2H)、2.49ppm(t、2H)、1.69ppm(m、2H)、1.44ppm(s、9H)、0.74ppm(t、2H)。
【0118】
【化6】
【0119】
<シルセスキオキサン化合物の合成>
<実施例1>
撹拌子、温度計を備えたフラスコに、合成例1で合成したシラン化合物(A1)3.00g(9.2mmol)、テトラヒドロフラン15mlを加え溶解させ、3.2%アンモニウムフルオリド水溶液0.96gを滴下した。室温で2時間攪拌した後、濃縮した。酢酸エチル10mLを加え、水10mL、続いて水5mLで洗浄した。得られた有機層を濃縮、減圧乾燥して、下記に示すシルセスキオキサン(SQ1)2.43gを無色粘調液体として収率103%で得た。Mn2400、Mw/Mn1.07であり、下記化学式中、mは8~10と推測される。H-NMR(400MHz、CDCl3):δ2.71ppm(brt、2H)、2.53ppm(brt、2H)、2.49ppm(brt、2H)、1.64ppm(m、2H)、1.44ppm(s、9H)、0.73ppm(brt、2H)。
【0120】
【化7】
【0121】
<実施例2>
撹拌子、温度計を備えたフラスコに、合成例1で合成したシラン化合物(A1)0.60g(1.8mmol)およびトリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シラン0.68g(1.8mmol)、テトラヒドロフラン6.1mlを加え溶解させ、3.2%アンモニウムフルオリド水溶液0.38gを滴下した。室温で6時間攪拌した後、濃縮した。酢酸エチル10mLを加え、水10mL、続いて水5mLで洗浄した。得られた有機層を濃縮、減圧乾燥して下記に示すシルセスキオキサン(SQ2)0.97gを淡黄色粘調液体として収率95%で得た。Mn3100、Mw/Mn1.10であり、下記化学式中、mは10~12と推測される。1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ2.70ppm(brt、2H)、2.54ppm(brt、2H)、2.48ppm(brt、2H)、2.10ppm(m、2H)、1.65ppm(m、2H)、1.43ppm(s、9H)、0.89ppm(brt、2H)、0.76ppm(brt、2H)。
【0122】
【化8】
【0123】
<実施例3>
撹拌子、温度計を備えたフラスコに、合成例1で合成したシラン化合物(A1)0.60g(1.8mmol)にテトラヒドロフラン3.8mlを加え溶解させ、テトラ-n-ブトキシチタン0.16mL(0.5mmol)を加えた。3.2%アンモニウムフルオリド水溶液0.24gを滴下し、室温で3時間攪拌した後、濃縮した。酢酸エチル5mLを加え、水5mLで2回洗浄した。得られた有機層を濃縮、減圧乾燥してシルセスキオキサン(SQ3)0.54gを黄色粘調液体として収率106%で得た。Mn2700、Mw/Mn1.13であり、下記化学式中、mは12と推測される。1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ2.71ppm(brt、2H)、2.53ppm(brt、2H)、2.50ppm(brt、2H)、1.60ppm(m、2H)、1.44ppm(s、9H)、0.73ppm(brt、2H)。
かかる化合物の反応途中には不溶物の発生などはなく、定量的に生成物が得られたため、シルセスキオキサン骨格中の20mol%にチタン原子が組み込まれていたと推察する。
【0124】
【化9】
【0125】
<実施例4>
前記シルセスキオキサン(SQ1)100質量部および光酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムトリフレート4質量部をPGMEA3900質量部に溶解させ均一溶液とした後、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過し、レジスト組成物を調製した。
パターン形成基板としてヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコンウエハを用い、調製したレジスト組成物を、パターン形成基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて80℃60秒間乾燥して、レジスト層厚50nmのレジスト層含有パターン形成基板を得た。これをKrF露光装置を用いて露光し、110℃で60秒間保持した後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間現像を行った。結果を表1に示す。
【0126】
表1の結果より、露光量増加に伴って5mJ/cm以降の急激な膜厚減少が確認できたことにより、シルセスキオキサン骨格に酸脱離性基としてt-ブチルを組み込んだシルセスキオキサン溶液の塗膜は、光照射により塗膜の水溶解性を光照射部のみ選択的に変化させることで、所望の精密パターンを基板上に形成することが可能であることが明らかとなった。実施例2、3で合成されたt-ブチル基、極端紫外線または電子線の少なくとも一方を吸収して2次電子を発生する基としてフッ素含有基または金属元素を有するシルセスキオキサン化合物は、極端紫外線または電子線の照射部のみを選択的に溶解性を変化させることができると考えられる。
【0127】
【表1】