(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003702
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、積層構造体、硬化物および電子部品
(51)【国際特許分類】
C08L 39/04 20060101AFI20240105BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20240105BHJP
C08L 61/32 20060101ALI20240105BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C08L39/04
C08L25/08
C08L61/32
B32B15/08 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103032
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】塚原 茜
(72)【発明者】
【氏名】本松 譲
(72)【発明者】
【氏名】増田 龍哉
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK12A
4F100AK12J
4F100AL05A
4F100AL05J
4F100AL06A
4F100AL07A
4F100CA02A
4F100CA02H
4F100GB41
4F100JG05A
4J002BC041
4J002BJ001
4J002CC282
4J002EN036
4J002EN076
4J002FD146
4J002GF00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】優れた誘電特性を維持しながらも、硬化させた際にフィルム状の自立膜(硬化物)が得られるとともに、硬化物の耐熱性が優れ、かつ保存安定性にも優れた硬化性樹脂組成物を提供する。
【手段】(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物と(B)マレイミド基含有化合物と(C)アミノ基を2つ以上有する化合物とを含む硬化性樹脂組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物と、
(B)マレイミド基含有化合物と、
(C)アミノ基を2つ以上有する化合物と、
を含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物のオキサゾリン基に対する、前記(B)マレイミド基含有化合物のマレイミド基の当量比が1~30である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物のオキサゾリン基に対する、前記(C)アミノ基を2つ以上有する化合物のアミノ基の当量比が1~20である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
第1フィルムと、前記第1フィルム上に設けられた樹脂層と、を備えた積層構造体であって、
前記樹脂層が、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物からなる、積層構造体。
【請求項5】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物、または請求項4に記載の積層構造体の樹脂層の硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関し、より詳細には、プリント配線板等の電子回路基板に好適に使用できる硬化性樹脂組成物、その硬化物、および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、一般に、絶縁層は樹脂組成物を硬化させて形成されている。これまで絶縁層にはエポキシ樹脂等の硬化性樹脂が使用されてきたが、近年、電子機器の小型化、高性能化が進んだことによる信号の高周波数化に伴い、高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に優れた樹脂組成物が種々検討されている。また、電子部品の安定的な製造、作動、耐久性保持のためには、銅等の導体金属に対する密着性に優れていることも必要である。このような優れた特性を有する樹脂として、スチレン骨格単位とオキサゾリン骨格単位とを有する共重合体(以下、スチレン系オキサゾリン基含有化合物ともいう)が知られている(特許文献1)。
【0003】
上記したスチレン系オキサゾリン基含有化合物は優れた低誘電特性を有しているものの、ガラス転移温度が100℃程度であるため耐熱性に乏しく、また単独では柔軟性に乏しくフィルム状に製膜し難く、そのため他の樹脂との併用や架橋させることが試みられている。例えば、特許文献2には、スチレン系オキサゾリン基含有化合物にカルボキシル基含有樹脂を併用した樹脂組成物が提案されている。また、特許文献3には、スチレン系オキサゾリン基含有化合物に、フェノール系硬化剤やカルボン酸系(または酸無水物系)硬化剤を併用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-36353号公報
【特許文献2】国際公開第2021/020542号パンフレット
【特許文献3】特開2021-195447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献で提案されているように、スチレン系オキサゾリン基含有化合物と反応し得るカルボキシル基含有樹脂を併用することで耐熱性を改善することができるものの、樹脂の種類や配合割合によっては優れた低誘電特性が損なわれる恐れがある。また、スチレン系オキサゾリン基含有化合物が有するオキサゾリン基はカルボキシル基や水酸基と反応し得ることが知られているが、スチレン系オキサゾリン基含有化合物と併用する硬化剤の種類によっては室温でも反応が進行することがあるため、樹脂組成物(ワニス)の保存安定性が低下するといった問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた低誘電特性を維持しながらも、硬化させた際にフィルム状の自立膜(硬化物)が得られるとともに、硬化物の耐熱性が優れ、かつ保存安定性にも優れた硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に対して本発明者が種々の検討を行ったところ、スチレン系オキサゾリン基含有化合物とマレイミド基含有化合物とを併用するとともに、両者と架橋し得るアミノ基を2つ以上有する化合物を架橋剤として用いることで、優れた低誘電特性を維持しながらも、硬化させた際にフィルム状の自立膜(硬化物)が得られるとともに、硬化物の耐熱性に優れ、かつ保存安定性にも優れた硬化性樹脂組成物が得られるとの知見を得た。本発明は係る知見によるものである。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
[1](A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物と、
(B)マレイミド基含有化合物と、
(C)アミノ基を2つ以上有する化合物と、
を含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
[2]前記(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物のオキサゾリン基に対する、前記(B)マレイミド基含有化合物のマレイミド基の当量比が1~30である、[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3]前記(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物のオキサゾリン基に対する、前記(C)アミノ基を2つ以上有する化合物のアミノ基の当量比が1~20である、[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]第1フィルムと、前記第1フィルム上に設けられた樹脂層と、を備えた積層構造体であって、
前記樹脂層が、[1]に記載の硬化性樹脂組成物からなる、積層構造体。
[5][1]に記載の硬化性樹脂組成物、または[4]に記載の積層構造体の樹脂層の硬化物。
[6][5]に記載の硬化物を有する電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スチレン系オキサゾリン基含有化合物とマレイミド基含有化合物とを併用するとともに、両者と架橋し得るアミノ基を2つ以上有する化合物を架橋剤として用いることで、優れた低誘電特性を維持しながらも、硬化させた際にフィルム状の自立膜(硬化物)が得られるとともに、硬化物の耐熱性に優れ、かつ保存安定性にも優れた硬化性樹脂組成物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<硬化性樹脂組成物>
本発明による硬化性樹脂組成物は、必須成分として(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物と(B)マレイミド基含有化合物と(C)アミノ基を2つ以上有する化合物とを含む。以下、本発明による硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0011】
[(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物]
本発明による硬化性樹脂組成物は、(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物を含む。本明細書において、スチレン系オキサゾリン基含有化合物とは、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する共重合体を意味する。
【0012】
【0013】
上記式(1)中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、R1が複数存在する場合、それぞれのR1は互いに同じでも異なっていてもよい。また、R2およびR3はそれぞれ独立して置換基を表す。mおよびnは繰り返し単位数である。なお、式(1)の化合物は、スチレン系単位とオキサゾリン基を側鎖に有するビニル単位とがランダムに共重合した構造を有するものである。
【0014】
R2およびR3において、置換基としてはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキル-アリール基(1個以上のアルキル基で置換されたアリール基)、アリール-アリール基(1個以上のアリール基で置換されたアリール基)、アリール-アルキル基(1個以上のアリール基で置換されたアルキル基)、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アルキル-カルボニル基、アルケニル-カルボニル基、アリール-カルボニル基、アルキル-オキシ-カルボニル基、アルケニル-オキシ-カルボニル基、アリール-オキシ-カルボニル基、アルキル-カルボニル-オキシ基、アルケニル-カルボニル-オキシ基、アリール-カルボニル-オキシ基等の1価の置換基が挙げられ、置換可能であれば、オキソ基(=O)等の2価の置換基も含み得る。
【0015】
また、下記式(1)で表される化合物は、その他の単量体が含まれていてもよく、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸等のエチレン性不飽和無水カルボン酸単量体;(メタ)アクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、マレイン酸ジアリル、アジピン酸ジビニル、グルタル酸ジビニル等のオレフィンエステル単量体;アリルエチルエーテル、テトラアリルオキシエタン、ジアリルエーテル等のオレフィンエーテル単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン単量体等が挙げられる。これらの単量体は単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0016】
本発明においては、(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物として、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する共重合体が好ましい。
【0017】
【0018】
上記式(2)中、mおよびnは繰り返し単位数であり、それぞれ独立して1~1,000の範囲であることが好ましい。
【0019】
上記した式(2)の化合物は、スチレンと2-イソプロペニル-2-オキサゾリンとをモノマー単位として共重合することにより得ることができる。式(2)で表される化合物は、10GHzでの誘電率(Dk)が約2.42であり、誘電正接(Df)が約0.00086であるといった優れた低誘電特性を有する化合物である。
【0020】
(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物として市販のものを使用してもよく、例えば、式(2)で表される(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物として、株式会社日本触媒製のエポクロス RPS-1005(数平均分子量70,000、重量平均分子量160,000、式(2)におけるm=約654、n=約19)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。スチレン系オキサゾリン基含有化合物におけるオキサゾリン基当量は、特に限定されるものではないが、高ガラス転移温度と高靭性とを両立した硬化物を得る観点からは、オキサゾリン基当量が1000~4000g/eqの範囲であることが好ましい。
【0021】
[(B)マレイミド基含有化合物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記した(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物に加えて、(B)マレイミド基含有化合物を含む。マレイミド基含有化合物とは、マレイミド骨格を有する化合物であり、従来公知のものをいずれも使用できる。マレイミド基を有する化合物は、2つ以上のマレイミド骨格を有することが好ましく、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、2,2’-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、およびこれらのオリゴマー、ならびにマレイミド骨格を有するジアミン縮合物のうちの少なくとも何れか1種であることがより好ましい。前記オリゴマーは、上述のマレイミド基を有する化合物のうちのモノマーであるマレイミド基を有する化合物を縮合させることにより得られたオリゴマーである。
【0022】
(B)マレイミド基含有化合物は、(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物および後記する(C)アミノ基を2つ以上有する化合物と反応し、硬化性樹脂組成物の硬化物に靱性を付与することができる。一方、(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物および後記する(C)アミノ基を2つ以上有する化合物との反応性が高すぎると、硬化性樹脂組成物(ワニス)がゲル化する場合もあり保存安定性が低下する。そのため、硬化物に靱性を付与しながらも硬化性樹脂組成物の保存安定性を維持する観点から、マレイミド基当量は150~500g/eqであることが好ましく、300~500g/eqであることがより好ましい。(B)マレイミド基含有化合物のマレイミド基当量が150g/eq以上であることで硬化物の靱性が向上し、また、マレイミド基当量が500g/eq以下であることで硬化性樹脂組成物の保存安定性も向上する。
【0023】
マレイミド化合物の具体例としては、大和化成工業株式会社製「BMI-1000」、ケイ・アイ化成株式会社製「BMI」(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド);大和化成工業株式会社製「BMI-2000」(ポリフェニルメタンマレイミド);大和化成工業株式会社製「BMI-3000」(m-フェニレンビスマレイミド);大和化成工業株式会社製「BMI4000」、ケイ・アイ化成株式会社製「BMI-80」(ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド);大和化成工業株式会社製「BMI5100」、ケイ・アイ化成株式会社製「BMI-70」(3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド);大和化成工業株式会社製「BMI-7000」(4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド);大和化成工業株式会社製「BMI-TMH」(1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン);大和化成工業株式会社製「BMI-6000」(4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド);大和化成工業社製「BMI-8000」(4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド);大和化成工業株式会社製の1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン;大和化成工業株式会社製の1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン;三井化学ファイン株式会社製「ANILIX-MI」;日本化薬株式会社製の「MIR3000」、「MIR3000-70MT」(ビフェニルアラルキル型ビスマレイミド)等が挙げられる。(B)マレイミド基含有化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
また、好ましい実施態様として、硬化物とした際の耐熱性等の観点から、ビフェニルアラルキル型やビフェニル骨格を有するマレイミド化合物が好ましく、また低誘電特性の観点から、下記式(3)で表されるマレイミド基含有化合物を使用することもできる。
【0025】
【0026】
上記式(3)中、Aは独立して芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Bは2価のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族環を有する炭素数6から18のアルキレン鎖である。Qは独立して炭素数6以上の直鎖アルキレン基を示す。Rは独立して炭素数6以上の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。nは1~10の数を表す。mは0~10の数を表す。
【0027】
上記式で表されるマレイミド基含有化合物の具体例としては、信越化学工業株式会社製「SLK-2000シリーズ」や「SLK-6895」、「SLK-3000」等が挙げられる。
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低誘電特性や硬化物とした際の耐熱性等の観点から、(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物のオキサゾリン基に対する、(B)マレイミド基含有化合物のマレイミド基の当量比が1~30であることが好ましく、5~15であることがより好ましい。
【0029】
[(C)アミノ基を2つ以上有する化合物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記した(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物および(B)マレイミド基含有化合物に加えて、(A)および/または(B)を架橋せしめる(C)アミノ基を2つ以上有する化合物を含む。スチレン系オキサゾリン基含有化合物を含む硬化性樹脂組成物において、本発明のように、マレイミド基含有化合物に加えて、アミノ基を2つ以上有する化合物が含まれることにより、優れた低誘電特性を維持しながらも、硬化させた際にフィルム状の自立膜(硬化物)が得られるとともに、硬化物の耐熱性にも優れ、かつ優れた保存安定性が得られるものである。この理由は定かではないが以下のように考えられる。即ち、スチレン系オキサゾリン基含有化合物とマレイミド基含有化合物との硬化反応では、フィルム状の自立膜が得難く、耐熱性も不十分となる課題を、アミノ基を2つ以上有する化合物が架橋剤として機能し、改善すると考察される。また、オキサゾリン基は、カルボキシル基や水酸基との反応性が高く、室温でも架橋反応が進行するため、これらの官能基を含む化合物を組合わせた硬化性樹脂組成物(ワニス)は、保存安定性が不十分となる場合があるが、本発明の硬化性樹脂組成物においては、上記のように反応が抑制され保存安定性も向上するものと考察される。
【0030】
(C)アミノ基を2つ以上有する化合物としては、脂肪族ポリアミンや芳香族ポリアミン等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらポリアミンは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
脂肪族ポリアミンとは、2つ以上のアミノ基が脂肪族基に直接結合している多価アミン化合物を表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。また、芳香族ポリアミンとは、2つ以上のアミノ基が芳香環に直接結合している多価アミン化合物を表し、その構造の一部に脂肪族基またはその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。
【0032】
脂肪族ポリアミンの具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の非環式脂肪族ポリアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(3-アミノプロピル))アミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[[3-[[ビス((3-アミノプロピル))アミノ]]プロピル]]エチレンジアミン、1,2,3-プロパントリアミン等の環式脂肪族ポリアミン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0033】
芳香族ポリアミンの具体例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン等の2官能の芳香族ポリアミン、1,2,4-トリアゾロ[4,3-a][1,3,5]トリアジン-3,5,7-トリアミン、4,4’,4”-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリトイル)トリアニリン、トリス(4-アミノフェニル)アミン、4,4’,4”-(メタントリイル)トリスアニリン、1,3,5-トリス(4-アミノフェニル)ベンゼン、2,6,14-トリアミントリプチセン等の3官能以上の芳香族ポリアミンが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0034】
芳香環が縮合環である芳香族ポリアミンとしては、ジアミノベンゾイミダゾール、ジアミノベンゾオキサゾール、ジアミノベンゾチアゾール、ジアミノフタルイミド、1,2,4-トリアゾロ[4,3-a][1,3,5]トリアジン-3,5,7-トリアミン等が挙げられる。
【0035】
ジアミノベンゾイミダゾールの具体例としては、5(6)-アミノ-2-(4-アミノフェニル)-ベンゾイミダゾール、5(6)-アミノ-2-(3-アミノフェニル)-ベンゾイミダゾール、5(6)-アミノ-2-(2-アミノフェニル)-ベンゾイミダゾール、4(7)-アミノ-2-(4-アミノフェニル)-ベンゾイミダゾール、4(7)-アミノ-2-(3-アミノフェニル)-ベンゾイミダゾール、4(7)-アミノ-2-(2-アミノフェニル)-ベンゾイミダゾール等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0036】
ジアミノベンゾオキサゾールの具体例としては、5(6)-アミノ-2-(4-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、5(6)-アミノ-2-(3-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、5(6)-アミノ-2-(2-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、4(7)-アミノ-2-(4-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、4(7)-アミノ-2-(3-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、4(7)-アミノ-2-(2-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0037】
ジアミノベンゾチアゾールの具体例としては、5(6)-アミノ-2-(4-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、5(6)-アミノ-2-(3-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、5(6)-アミノ-2-(2-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、4(7)-アミノ-2-(4-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、4(7)-アミノ-2-(3-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール、4(7)-アミノ-2-(2-アミノフェニル)-ベンゾオキサゾール等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0038】
ジアミノフタルイミドの具体例としては、4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)フタルイミド、4-アミノ-N-(2-アミノフェニル)フタルイミド、3-アミノ-N-(4-アミノフェニル)フタルイミド、3-アミノ-N-(2-アミノフェニル)フタルイミド等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0039】
(C)アミノ基を2つ以上有する化合物は、(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物および(B)マレイミド基含有化合物との反応性の観点から、アミノ基当量が200~500g/eqであることが好ましい。アミノ基当量が200g/eq以上であることでアミノ基を2つ以上有する化合物の揮発をより一層抑制でき、500g/eq以下であることで硬化性樹脂組成物のゲル化を抑制でき、保存安定性がより一層向上する。
【0040】
また、低誘電特性や硬化物とした際の耐熱性、自立型のフィルム状硬化物が得る等の観点から、(A)スチレン系オキサゾリン基含有化合物のオキサゾリン基に対する、(C)アミノ基を2つ以上有する化合物のアミノ基の当量比が1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0041】
[その他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記した成分以外にも、熱硬化性成分を配合させることができる。熱硬化性成分を加えることにより、組成物の耐熱性が向上することが期待できる。熱硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化性成分としては、公知のものをいずれも用いることができる。例えば、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用のものが挙げられる。
【0042】
また、上記した熱硬化性成分を含む場合は、硬化性樹脂組成物に熱硬化触媒を配合してもよい。熱硬化触媒としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。
【0043】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化物とした際の線熱膨張係数の低減や、硬化物(膜)の強度向上のため、無機フィラーが含まれていてもよい。無機フィラーとしては、通常の樹脂組成物に用いられる公知の無機フィラーを用いることができる。具体的には、例えば、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、タルク、有機ベントナイトなどの非金属フィラーや、銅、金、銀、パラジウム、シリコン、合金、フェライトなどの金属フィラーが挙げられる。これら無機フィラーは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
無機フィラーのなかでも、低吸湿性、低体積膨張性に優れる炭酸カルシウムやシリカ、硫酸バリウム、酸化アルミニウムが好適に用いられ、なかでもシリカがより好適に用いられる。シリカとしては、非晶質、結晶のいずれであってもよく、これらの混合物でもよい。特に非晶質(溶融)シリカが好ましい。
【0045】
無機フィラーの形状は、特に制限されるものではなく、球状、針状、板状、鱗片状、中空状、不定形状、六角状、キュービック状、薄片状など挙げられるが、無機フィラーの高配合の観点から球状が好ましい。
【0046】
無機フィラーの平均粒径は、分散性や硬化性樹脂組成物の粘度(製膜性)等の観点から、0.1μm~25μm、好ましくは0.1μm~15μmの範囲が適当である。より好ましくは、1μm~10μmである。なお、平均粒径とは平均一次粒径を意味し、平均粒径(D50)は、レーザー回折/散乱法により測定することができる。
【0047】
また、無機フィラーの分散性等を考慮して、無機フィラー表面は表面処理が施されていてもよい。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物には、組成物の調製や製膜する際の粘度調整等の目的で、必要に応じて有機溶剤が含まれていてもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
<積層構造体>
本発明の積層構造体は、第1フィルムと、当該第1フィルム上に設けられた樹脂層とを備え、当該樹脂層が上記した硬化性樹脂組成物からなる。積層構造体を製造するには、本発明の硬化性樹脂組成物を、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で基材上に均一な厚さに塗布し、通常、60~180℃の温度で1~30分間乾燥して樹脂層を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の樹脂層の膜厚で、1~200μm、好ましくは10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0050】
第1フィルムとしては、金属箔(例えば、銅箔等)、キャリアフィルム等が挙げられる。キャリアフィルムは、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のフィルムを使用することができる。また、上記したようなフィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0051】
積層構造体は、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能に第2フィルムが設けられていてもよい。第2フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。なお、剥離可能とは、第2フィルムを樹脂層から剥離するときに樹脂層と第1フィルムとの接着力よりも樹脂層と第2フィルムとの接着力がより小さいことを意味し、例えば、第2フィルムは、表面が離型処理されていてもよい。
【0052】
<硬化物および電子部品>
本発明の硬化物は、上記した硬化性樹脂組成物または積層構造体の樹脂層を硬化させることにより得ることができる。例えば、硬化性樹脂組成物を、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~180℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。その後、150~250℃の温度で30~90分間熱硬化させて硬化物を得ることができる。
【0053】
積層構造体の樹脂層をラミネートする基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0054】
積層構造体の樹脂層面を基材上へラミネートするには、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路基板表面に凹凸があっても、樹脂層が回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の充填性も向上する。積層構造体の樹脂層面を基材にラミネートした後、80~250℃の温度で30~90分間熱硬化させて硬化物を得ることができる。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物または積層構造体を用いて得られる硬化物は、プリント配線板等の電子部品製造用として使用することができ、好適には、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、半導体の層間絶縁膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜を形成するために好適に使用される。
【実施例0056】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0057】
<硬化性樹脂組成物の調製>
下記表1および表2に記載の各成分を配合し混合することにより、同表に記載の各硬化性樹脂組成物を得た。なお、表中の各数値は質量部を示す。
【0058】
なお、下記表1および表2中の各成分*1~*11は、以下のとおりである。
*1:スチレン系オキサゾリン基含有化合物(株式会社日本触媒製のエポクロス RPS-1005、オキサゾリン基当量=3703g/eq)
*2:マレイミド基含有化合物(下記式(4)で表される日本化薬株式会社製のビフェニルアラルキル型ビスマレイミドのトルエン溶液(不揮発分70質量%)、マレイミド基当量=351g/eq、表1および表2中の数値は不揮発分として記載)
【化4】
*3:マレイミド基含有化合物(信越化学工業株式会社製のSLK-6895、メチルエチルケトン溶液(不揮発分90質量%)、マレイミド基当量=370g/eq、表1および表2中の数値は不揮発分として記載)
*4:マレイミド基含有化合物(ケイ・アイ化成株式会社製のBMI-70、マレイミド基当量=221g/eq)
*5:マレイミド基含有化合物(大和化成工業株式会社製のBMI-TMH、マレイミド基当量=159g/eq)
*6:マレイミド基含有化合物(信越化学工業株式会社製のSLK-2600、アニソール(不揮発分50質量%)、マレイミド基当量=1930g/eq、表1および表2中の数値は不揮発分として記載)
*7:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(アミノ基当量=205g/eq)
*8:2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール-5-アミン(アミノ基当量=113g/eq)
*9:5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾイミダゾール(アミノ基当量=112g/eq)
*10:5-アミノ-2-(5-アミノフェニル)ベンゾイミダゾール(アミノ基当量=112g/eq)
*11:カルボキシル基含有ポリイミド樹脂(DIC株式会社製のV-8000BM、酢酸ブチルとメチルエチルケトン混合溶液(不揮発分40質量%)、カルボキシル基当量=1247g/eq、表1および表2中の数値は不揮発分として記載)
【0059】
<誘電特性の評価>
上記のようにして得られた各硬化性樹脂組成物を、厚さ18μmの銅箔の光沢面上に、フィルム上の硬化物の膜厚が30μmになるように塗布して塗布膜を形成した。次いで、塗布膜を90℃で10分乾燥し、190℃で60分間加熱して硬化性樹脂組成物を硬化させ後、銅箔をエッチングにより除去してフィルム状の硬化物を得た。
得られた硬化物を50mm×100mmの大きさに切り出したものを試料片とし、誘電特性測定装置(SPDR共振器(QWED社製)、ネットワークアナライザ(Keysight社製))に供し、25℃下、10GHzの周波数にて比誘電率(Dk)を測定し、以下の基準に従い評価した。
◎:Dk=0.003未満
○:Dk=0.003以上、0.005未満
×:Dk=0.005以上
評価結果は下記表1および2に示すとおりであった。なお、比較例10は、均一な硬化性樹脂組成物(ワニス)が得られず塗布膜を形成できなかった(表2の評価結果を「-」と記載した。)
【0060】
<耐熱性評価>
上記のようにして得られた硬化物を3mm×30mmの大きさに切り出したものを試料片とし、熱機械分析装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、TMA Q400)を用いてTMA測定を実施した。TMA測定は、試験荷重5g、サンプルを10℃/分の昇温速度で室温より300℃まで昇温、連続して2回測定した。2回目における熱膨張係数の異なる2接線の交点をガラス転移温度(Tg)とした。上記のようにして測定したガラス転移温度(Tg)により、耐熱性の評価を行った。評価基準は、以下のとおりとした。
◎:Tgが120℃以上
〇:Tgが100℃以上120℃未満
×:Tgが100℃未満
評価結果は下記の表1および2に示されるとおりであった。なお、比較例10は、均一な硬化性樹脂組成物(ワニス)が得られず塗布膜を形成できなかった(表2の評価結果を「-」と記載した。)
【0061】
<保存安定性>
上記のようにして調製した各硬化性樹脂組成物を室温にて2週間放置し、目視にて観察し保存安定性の評価を行った。評価基準は、以下のとおりとした。
◎:調製直後と同様の状態であり安定している
○:ゲル化は認められないが、2相に分離しているのが認められる
×:ゲル化している
評価結果は下記の表1および2に示されるとおりであった。なお、比較例10は、均一な硬化性樹脂組成物(ワニス)が得られず塗布膜を形成できなかった(表2の評価結果を「-」と記載した。)
【0062】
【0063】