(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037290
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】スラストボールベアリング
(51)【国際特許分類】
F16C 33/58 20060101AFI20240312BHJP
F16C 19/10 20060101ALI20240312BHJP
F16C 35/063 20060101ALI20240312BHJP
B65G 47/54 20060101ALI20240312BHJP
B21B 39/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/10
F16C35/063
B65G47/54 E
B21B39/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142017
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】追矢 耕三
(72)【発明者】
【氏名】勝間 昭司
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚也
【テーマコード(参考)】
3F016
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3F016AA01
3F016CE01
3J117AA01
3J117BA01
3J117CA04
3J117DA01
3J117DB04
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA53
3J701AA62
3J701BA55
3J701BA69
3J701GA32
3J701XB03
3J701XB14
3J701XB18
3J701XB50
(57)【要約】
【課題】高温環境での耐久性に優れるスラストボールベアリングの提供
【解決手段】スラストボールベアリング18は、それぞれが直径Dを有する複数のボール32、直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有する軸軌道盤34、及び、直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有するローラ軌道盤36を含む。好ましくは、それぞれのボール32は、移動することにより隣合う他のボール32との間隔が変更可能である。好ましくは、軌道長さに対する複数のボール32の充填率が90%以上95%以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが直径Dを有する複数のボール、
前記直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有する軸軌道盤、
及び
前記直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有するローラ軌道盤
を含む、スラストボールベアリング。
【請求項2】
それぞれのボールが、移動することにより隣合う他のボールとの間隔が変更可能である、請求項1に記載のスラストボールベアリング。
【請求項3】
軌道長さに対する複数の前記ボールの充填率が90%以上95%以下である、請求項1又は2に記載のスラストボールベアリング。
【請求項4】
上下動することにより、搬送されてきた棒鋼を搬送方向に交差する向きに取り込み排出するリフターであって、
一方から他方に向かって低くなるように傾斜した上面、
前記上面の前記一方の縁から下方に延びる側面、
前記側面から突出し、前記棒鋼の前記搬送方向に沿って回転しうるローラ、
及び
前記ローラを回転可能に支持するスラストボールベアリング
を備え、
前記スラストボールベアリングが、
それぞれが直径Dを有する複数のボール、
前記直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有する軸軌道盤、
及び
前記直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有するローラ軌道盤
を含む、リフター。
【請求項5】
前記スラストボールベアリングを支持する軸、
前記軸を支持するブシュ、
及び
前記ブシュが取り付けるハウジング
を更に備え、
前記ブシュが前記スラストボールベアリングと前記ハウジングとの間に位置する鍔を有する、請求項4に記載のリフター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、スラストボールベアリングを開示する。
【背景技術】
【0002】
ローラ等の回転体を回転可能に支持するために、ベアリングが用いられる。このベアリングとして、例えば、ラジアルボールベアリング(ラジアル玉軸受)が用いられる。その様なラジアルボールベアリングの一例が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、製造ラインにおいて、半製品や製品の搬送にローラが用いられる。このローラは、ベアリングによって、支持されている。このローラが、半製品や製品に当接し、搬送方向に沿って回転する。これにより、ローラは、半製品や製品を、搬送方向に案内する。
【0005】
例えば、棒鋼の製造ラインでは、高温の鋼片が圧延され棒鋼が得られる。この棒鋼は、冷却床に搬送される。この搬送にローラが用いられる。このローラが棒鋼に当接し、搬送方向に沿って回転する。これにより、ローラは、棒鋼を搬送方向に案内する。このローラが回転することで、当接する棒鋼の表面に疵が生じることが抑制される。
【0006】
棒鋼の製造ラインでは、ローラを支持するベアリングも、高温環境に置かれる。高温環境では、ベアリングは、損傷し易い。ベアリングが損傷することで、ローラは回転不良を生じる。回転不良のローラが棒鋼に当接することで、棒鋼の表面に疵が生じる。また、損傷したベアリングの交換は、棒鋼の生産性を低下させる。
【0007】
本出願人の意図するところは、高温環境での耐久性に優れるスラストボールベアリングの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書が開示するスラストボールベアリングは、
それぞれが直径Dを有する複数のボール、
前記直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有する軸軌道盤、
及び
前記直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有するローラ軌道盤
を含む。
【0009】
好ましくは、それぞれのボールは、移動することにより隣合う他のボールとの間隔が変更可能である。
【0010】
好ましくは、軌道長さに対する複数の前記ボールの充填率は、90%以上95%以下である。
【0011】
本明細書が開示するリフターは、上下動することにより、搬送されてきた棒鋼を搬送方向に交差する向きに取り込み排出する。
このリフターは、
一方から他方に向かって低くなるように傾斜した上面、
前記上面の前記一方の縁から下方に延びる側面、
前記側面から突出し、前記棒鋼の前記搬送方向に沿って回転しうるローラ、
及び
前記ローラを回転可能に支持するスラストボールベアリング
を備える。
前記スラストボールベアリングは、
それぞれが直径Dを有する複数のボール、
前記直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有する軸軌道盤、
及び
前記直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅の軌道面を有するローラ軌道盤
を含む。
【0012】
好ましくは、このリフターは、
前記スラストボールベアリングを支持する軸、
前記軸を支持するブシュ、
及び
前記ブシュが取り付けるハウジング
を更に備える。
前記ブシュは、前記スラストボールベアリングと前記ハウジングとの間に位置する鍔を有する。
【発明の効果】
【0013】
このスラストボールベアリングは、高温環境での耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るリフターを備える取り込み装置が、搬送ローラ及び冷却床と共に示された説明図である。
【
図3】
図3は、
図2のリフターが備えるベアリングの一部の断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の矢印IV向きに見た軸軌道盤とボールが示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0016】
図1には、棒鋼2、搬送ローラ4、取り込み装置6及び冷却床8が示されている。取り込み装置6は、搬送ローラ4と冷却床8との間に配置されている。冷却床8は、載置面8Aを有する。
【0017】
搬送ローラ4は、棒鋼2の搬送機の一例である。搬送ローラ4は、図示されないモータ等により、回転可能である。搬送ローラ4の周りに示された矢印は、搬送ローラ4の回転向きを表している。搬送ローラ4は、棒鋼2が載せられる搬送面4Aを有する。搬送面4Aは、取り込み装置6に向かって低くなるように傾斜している。
【0018】
取り込み装置6は、搬送ローラ4から棒鋼2を取り込み、冷却床8に棒鋼2を排出するための装置である。取り込み装置6は、第一リフター10、第二リフター12及び傾斜台14を備える。第一リフター10、第二リフター12及び傾斜台14は、搬送ローラ4と冷却床8との間に配置されている。傾斜台14は、第一リフター10と第二リフター12との間に配置されている。第一リフター10は搬送ローラ4に隣接している。第二リフター12は冷却床8に隣接している。
【0019】
第一リフター10は、上面10Aを有する。上面10Aは、傾斜台14に向かって低くなるように傾斜している。第二リフター12は、上面12Aを有する。上面12Aは、冷却床8に向かって低くなるように傾斜している。傾斜台14は、上面14Aを有する。上面14Aは、第二リフター12に向かって低くなるように傾斜している。
【0020】
第一リフター10は、図示されないアクチュエータによって上下動可能である。第二リフター12は、図示されない他のアクチュエータによって上下動可能である。傾斜台14は、所定の位置に固定されている。
【0021】
図1には、下位置にある第一リフター10が実線で示されている。この下位置では、上面10Aは、搬送ローラ4の搬送面4Aより下に位置している。上位置にある第一リフター10が、二点鎖線で示されている。上位置では、上面10Aは、傾斜台14の上面14Aより上に位置している。
【0022】
同様に、下位置にある第二リフター12が実線で示されている。この下位置では、上面12Aは、傾斜台14の上面14Aより下に位置している。上位置にある第二リフター12が、二点鎖線で示されている。上位置では、上面12Aは、冷却床8の載置面8Aより上に位置している。
【0023】
図2には、第一リフター10の一部の断面が示されている。第一リフター10は、ローラ16、一対のベアリング18、軸20、一対のスペーサ22、一対のブシュ24、止め具26及びハウジング28を有する。
図2は、
図1の紙面に平行であり、且つローラ16の中心線を含む、断面を表している。
【0024】
ハウジング28は、軸穴30を有する。軸穴30に、ブシュ24が圧入されている。それぞれのブシュ24は、鍔24Aを有する。一対のブシュ24に、軸20が挿入されている。軸20は溝20Aを有する。この溝20Aに止め具26が嵌められている。止め具26は、ハウジング28に取り付けられている。この軸20は、一対のブシュ24及び止め具26を介して、ハウジング28に取り付けられている。
【0025】
それぞれのベアリング18は、複数のボール32、軸軌道盤34及びローラ軌道盤36を有する。軸軌道盤34は軸20に取り付けられている。ローラ軌道盤36はローラ16に取り付けられている。このようにして、軸20がベアリング18を支持し、ベアリング18がローラ16を支持している。ローラ16は、ベアリング18によって、軸20に対して回転可能である。このローラ16は、ハウジング28の内側に配置されている。第一リフター10は、傾斜した上面10Aの高い方の縁から下方に延びる側面10Bを有する。ローラ16の一部が、この側面10Bから突出している。
【0026】
それぞれのスペーサ22は、ベアリング18とブシュ24の鍔24Aとの間に位置している。このスペーサ22の厚さを変更することで、上下方向におけるローラ16の位置が調整可能である。スペーサ22とブシュ24の鍔24Aとは、ベアリング18とハウジング28との間に位置している。なお、図示されないが、第一リフター10は、一対のスペーサ22を有しなくてよい。その場合、ブシュ24の鍔24Aが、ベアリング18とハウジング28との間に位置する。
【0027】
図3には、ベアリング18の部分拡大断面図が示されている。
図3は、ベアリング18の周方向に対して垂直な断面を表している。
図4には、複数のボール32及び軸軌道盤34が示されている。
図4は、ベアリング18からローラ軌道盤36が取り外された状態を示している。このベアリング18は、スラストボールベアリングである。
【0028】
図3の両矢印Dは、ボール32の直径を表している。軸軌道盤34は、軌道面34Aを有する。この断面における、軌道面34Aの輪郭は、直径Dに沿った円弧である。ローラ軌道盤36は、軌道面36Aを有する。この断面における、軌道面36Aの輪郭は、直径Dに沿った円弧である。
【0029】
図3の両矢印Wsは、ベアリング18の半径方向における、軌道面34Aの幅を表している。両矢印Wrは、半径方向における、軌道面36Aの幅を表している。このベアリング18では、幅Wsの大きさと幅Wrの大きさは、同じである。ただし、この幅Wsの大きさと幅Wrの大きさとは、異なっていてもよい。
【0030】
図4の一点鎖線Lrは、軌道中心線を表している。軌道中心線Lrは、半径方向における、軌道面34Aの中心線である。
図4の両矢印Drは、軌道中心線Lrの直径を表している。ここでは、この軌道中心線Lrの周方向長さが、軌道長さLaと称される。従って、軌道長さLaは、以下の数式で求められる。
La=π・Dr
【0031】
図示されないが、ベアリング18の半径方向において、軌道面36Aの中心位置は、軌道面34Aの中心位置に一致している。この軌道中心線Lrは、軌道面36Aの中心線でもある。
【0032】
図4に示されるように、複数のボール32は、軌道面34Aに配置されている。複数のボール32は、周方向に間隔を開けて並んでいる。それぞれのボール32は、隣り合う他のボール32との間隔が変更可能である。このベアリング18は、ボール32を所定の間隔で保持する保持器を備えていない。
【0033】
ここで、ベアリング18が有するボール32の数が、Nとされる。このとき、軌道長さLaに対する複数のボール32の充填率FR(%)は、ボール32の直径Dを用いて、以下の数式で求められる。
FR = (N・D)/La
【0034】
図1には、棒鋼2が示されている。この
図1を参照しつつ、搬送ローラ4、取り込み装置6及び冷却床8を用いた、棒鋼2の処理方法が説明される。
【0035】
図示されないが、高温の鋼片が圧延され、長尺の棒鋼2が得られる。この棒鋼2の長手方向は、
図1の紙面に垂直な方向である。この棒鋼2の温度は、例えば、500℃以上の高温である。搬送ローラ4が回転する。搬送ローラ4が棒鋼2を搬送する。搬送ローラ4は、
図1の紙面の表側から裏側に向かって搬送する。
【0036】
図1の二点鎖線で示されるように、第一リフター10が上位置にあるとき、搬送されてきた棒鋼2は、側面10Bに優先して、ローラ16に当接する。ローラ16は、棒鋼2の搬送方向に沿って回転可能である。棒鋼2が当接したローラ16は、棒鋼2の動きに従動して回転する。
【0037】
第一リフター10が、二点鎖線で示された上位置から、実線で示された下位置に移動する。棒鋼2が搬送ローラ4の搬送面4Aから第一リフター10の上面10Aに転がり込む。第一リフター10は、搬送ローラ4の搬送方向に交差する方向に、棒鋼2を取り込む。第一リフター10は、上位置に向かって移動する。第一リフター10の上面10Aが傾斜台14の上面14Aの高さ以上に移動したとき、棒鋼2が上面10Aから上面14Aに転がり込む。第一リフター10は、搬送ローラ4の搬送方向に交差する方向に、棒鋼2を排出する。第一リフター10は、傾斜台14に棒鋼2を排出する。
【0038】
第二リフター12が、
図1の二点鎖線で示された上位置から実線で示された下位置に移動する。棒鋼2が傾斜台14の上面14Aから第二リフター12の上面12Aに転がり込む。第二リフター12は、棒鋼2を取り込む。第二リフター12は、上位置に向かって移動する。第二リフター12の上面12Aが冷却床8の載置面8Aの高さ以上に移動したとき、棒鋼2が上面12Aから載置面8Aに転がり込む。第二リフター12は、冷却床8に棒鋼2を排出する。
【0039】
このようにして、棒鋼2は、搬送ローラ4から冷却床8に取り込まれる。そして、棒鋼2は、冷却床8で冷却される。冷却された棒鋼2は、次工程に送られる。
【0040】
第一リフター10では、搬送ローラ4で搬送されてきた棒鋼2は、ローラ16に当接する。ローラ16は、側面10Bに、棒鋼2が当接することを抑制する。ローラ16は、棒鋼2の動きに従動して回転する。これにより、第一リフター10は、棒鋼2が側面10Bに当接し摩擦が生じることを抑制しうる。この摩擦を抑制することで、第一リフター10は、棒鋼2の表面に疵が生じることを抑制しうる。
【0041】
このローラ16に、主にラジアル方向の外力が作用する。そのため、従来は、このローラ16に、ラジアルボールベアリング(ラジアル玉軸受)が用いられている。しかし、高温環境での使用では、ラジアルボールベアリングの損傷が発生し易かった。損傷したラジアルボールベアリングは、ローラ16の回転不良を生じさせる。
【0042】
そこで、発明者らは、ローラ16の回転不良の低減を試みた。そのため、例えば、ローラ16に、テーパーローラーベアリング(円錐ころ玉軸受)等、種々のベアリングが、試験的に用いられた。種々のベアリングのうち、ラジアルボールベアリングを用いた場合に比べ、テーパーローラーベアリングを用いた場合に、ローラ16の回転不良が低減されることが確認できた。そして、更に、既存のベアリングの改良が試みられ、改良された種々のベアリングが試験的に用いられた。その結果、ベアリング18を用いることで、更に、ローラ16の回転不良が低減されることが確認できた。
【0043】
このベアリング18は、スラストボールベアリングである。このベアリング18は、それぞれが直径Dを有する複数のボール32、直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅Wsの軌道面34Aを有する軸軌道盤34、及び、直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅Wrの軌道面36Aを有するローラ軌道盤36を含む。
【0044】
ベアリング18では、ローラ16の回転によって、軌道面34A及び軌道面36Aに摩耗が生じる。特に、ベアリング18は、高温の棒鋼2に当接するローラ16に用いられている。前述のように、この棒鋼2の温度は、500℃以上である。
【0045】
この様な高温環境では、軌道面34A及び軌道面36Aは摩耗し易い。軌道面34A及び軌道面36Aに摩耗が生じたベアリング18では、軌道面34A及び軌道面36Aからボール32が脱線し易い。このベアリング18が用いられるローラ16は、上下方向を回転軸にしている。ベアリング18は、スラストボールベアリングである。これにより、軌道面34A及び軌道面36Aに摩耗が生じても、ボール32の脱線が抑制されうる。
【0046】
なお、ここでいう高温は、500℃以上に限定されない。このベアリング18は、300℃以上の高温で、十分にローラ16の回転不良を低減しうる。また、この高温は、特に上限値はないが、実用上の観点から、800℃以下である。
【0047】
前述の様に、このベアリング18では、軸軌道盤34は、直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅Wsの軌道面34Aを有する。ローラ軌道盤36は、直径Dの90.0%以上93.0%以下の幅Wrの軌道面36Aを有する。
【0048】
第一リフター10では、ローラ16に、ラジアル方向の外力が作用する。そのため、従来は、ローラ16に、スラストボールベアリングは用いられていなかった。しかし、このベアリング18は、幅Wsを大きくすることで、スラストボールベアリングであるにも関わらず、ローラ16に用いられうる。この観点から、このベアリング18では、直径Dに対する幅Wsは、90.0%以上であり、更に好ましくは90.5%以上である。同様の観点から、直径Dに対する幅Wrは、90.0%以上であり、更に好ましくは90.5%以上である。
【0049】
一方で、幅Wsが大きい軌道面34Aはボール32の転がり抵抗を増大させる。また、半径方向に大きな外力が作用したときに、幅Wsが大きい軌道面34Aは打痕等を生じ易い。従って、直径Dに対する幅Wsが小さい軌道面34Aは、転がり抵抗を低減し、打痕等の発生を抑制しうる。この観点から、このベアリング18では、直径Dに対する幅Wsは、93.0%以下であり、更に好ましくは92.5%以下である。同様の観点から、直径Dに対する幅Wrは、93.0%以下であり、更に好ましくは92.5%以下である。
【0050】
図示されないが、このベアリング18は、保持器を備えてもよい。保持器は、隣合うボール32の間隔を所定の大きさに保持しうる。保持器は、軌道面34A及び軌道面36Aからボール32が脱線することを抑制しうる。しかし、高温環境で用いられるベアリング18では、このボール32は膨張する。保持器を備えるベアリング18では、保持器と回転するボール32との摩擦が増大する。保持器を備えるベアリング18は、高温環境での転がり抵抗を増大させる。また、ボール32によって保持器が損傷する可能性がある。この観点から、このベアリング18は、保持器を備えないことが好ましい。
【0051】
また、このベアリング18は、上下方向を回転軸にしている。このベアリング18は、スラストボールベアリングであるので、保持器を備えなくとも、周方向に隣合うボール32の間に隙間が形成され易い。
【0052】
また、高温環境での転がり抵抗を低減する観点から、それぞれのボール32は、周方向に移動することにより、隣合う他のボール32との間隔が変更可能であることが、好ましい。なお、ボール32の間隔が変更可能であればよく、ベアリング18は、保持器を備えていてもよく、備えていなくてもよい。
【0053】
それぞれのボール32を周方向に移動可能にする観点から、軌道長さLaに対する複数のボール32の充填率FRは、好ましくは95%以下であり、更に好ましくは94%以下である。一方で、この充填率FRが小さいベアリング18では、外力の作用したときに、ボール32の1個当たりに作用する荷重が増大する。この荷重の増大は、軌道面34A及び軌道面36Aに打痕等を生じさせ易い。打痕等の発生は、ベアリング18の回転抵抗を増大させる。従って、充填率FRが大きいベアリング18は、回転抵抗の増大を抑制しうる。この観点から、この充填率FRは、好ましくは90%以上であり、更に好ましくは91%以上である。
【0054】
第一リフター10は、上下動することにより、棒鋼2を搬送方向に交差する向きに取り込み排出する。この第一リフター10は、一方から他方に向かって低くなるように傾斜した上面10A、上面10Aの一方の縁から下方に延びる側面10B、側面10Bから突出し、棒鋼2の搬送方向に沿って回転しうるローラ16、及び、ローラ16を回転可能に支持するベアリング18を備える。この第一リフター10は、ベアリング18を備えることで、ローラ16の回転不良の発生を低減できる。第一リフター10は、棒鋼2の表面に疵が生じることを抑制しうる。第一リフター10は、ベアリング18の交換頻度を低減しうる。この第一リフター10は、棒鋼2の生産性の向上に寄与する。
【0055】
なお、第一リフター10は、軸20を支持するブシュ24を有しなくてもよい。ブシュ24を有しない第一リフター10では、ハウジング28がベアリング18とスペーサ22を支持する。また、第一リフター10は、スペーサ22を有しなくてもよい。スペーサ22を有しない第一リフター10では、ハウジング28がベアリング18を支持する。この場合、長期の使用によって、ハウジング28に摩耗が生じる。摩耗が生じたハウジング28は、支持されるベアリング18の回転にガタつきを生じさせる。このガタつきは、第一リフター10を取り替えることで、解消されうる。
【0056】
一方で、このブシュ24を有することで、鍔24Aがベアリング18とハウジング28との間に位置する。ブシュ24を有する第一リフター10は、ブシュ24を交換することで、このガタつきを解消しうる。この第一リフター10は、第一リフター10を交換することなく、このガタつきを解消しうる。この観点から、この第一リフター10がブシュ24を備え、ブシュ24がベアリング18とハウジング28との間に位置する鍔24Aを有することが、好ましい。
【0057】
また、ブシュ24の材質を耐摩耗性に優れる材料にすることで、鍔24Aの摩耗が低減されうる。これにより、ブシュ24の交換頻度が低減されうる。交換頻度を低減する観点から、ブシュ24の硬さはハウジング28のそれより硬いことが好ましい。また、この観点からも、この第一リフター10がブシュ24を備えることが、好ましい。
【実施例0058】
以下、実施例に係るベアリングの効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて、この本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
【0059】
[テスト1]
[実施例1]
図1に示された第一リフターが準備された。ベアリングはスラストボールベアリングである。軸軌道盤の軌道面の幅Wsとローラ軌道盤の軌道面の幅Wrは同じ幅Wであった。ボールの直径Dに対する幅Wの比(W/D)は、下記の表1の通りであった。この第一リフターを用いて、所定の期間、棒鋼が製造された。
【0060】
[実施例2-3及び比較例1-2]
比(W/D)を表1に示される通りとした他は、実施例1と同様にして、棒鋼が製造された。
【0061】
[評価]
実施例1-3及び比較例1-2において、所定の期間使用されたベアリングの状態が確認された。それぞれのベアリングにおける軌道面の摩耗状態が、表1に示されている。また、第一リフターが使用された所定の期間に、ローラの回転停止の有無が確認された。比較例1及び比較例2では、軌道面からボールの脱線が確認された。その結果が表1に示されている。
【0062】
【0063】
表1から明らかな通り、各実施例のベアリングは、耐久性に優れている。この評価結果から、このベアリングの優位性は明らかである。
【0064】
[テスト2]
[比較例3]
比較例3のリフターが準備された。このリフターは、スラストボールベアリングに代えて、テーパーローラーベアリングを備えた。また、このリフターは、一対のブシュを備えない。このリフターのその他の構成は、
図1の第一リフターと同様であった。このリフターを用いて、所定の期間、棒鋼が製造された。
【0065】
[実施例4]
ブシュを備えない他は、
図1の第一リフターと同様にして、リフターが準備された。このリフターを用いて、所定の期間、棒鋼が製造された。
【0066】
[実施例5]
図1の第一リフターが準備された。このブシュの材質は耐摩耗性に優れる材料であった。この第一リフターを用いて、所定の期間、棒鋼が製造された。
【0067】
[評価]
実施例4、実施例5及び比較例3において、所定の期間内における、リフター(ベアリング)の交換数及び停止時間が確認された。それぞれの交換数及び停止時間が、比較例3を100とする指数で、表2に示されている。これらの指数は、小さいほど、好ましい。
【0068】
【0069】
表2から明らかな通り、各実施例のベアリングは、耐久性に優れている。この評価結果から、このベアリングの優位性は明らかである。