(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037610
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】偏光子構築体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240312BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240312BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/22
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142558
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】早乙女 広樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悟史
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
5G435
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA17
2H148CA19
2H148CA20
2H148CA24
2H149AA02
2H149AA17
2H149AA18
2H149AA20
2H149AA22
2H149AA23
2H149AB03
2H149AB04
2H149BA02
2H149BA04
2H149BA05
2H149BA14
2H149BA23
2H149DA04
2H149EA03
2H149EA10
2H149EA22
2H149FA24W
2H149FA28W
2H149FA33W
2H149FD13
5G435AA02
5G435BB04
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF05
5G435LL01
(57)【要約】
【課題】近赤外領域において、透過軸に垂直な偏光に対しての反射率が低く、透過軸に平行な偏光に対しての透過率が高く、消光比が高い偏光子構築体等を提供すること。
【解決手段】吸収型偏光子と反射型偏光子を含む偏光子構築体であって、前記吸収型偏光子側から前記偏光子構築体に入射する、前記吸収型偏光子の透過軸に対して平行に偏光した近赤外光が、前記反射型偏光子を透過するように、前記吸収型偏光子と前記反射型偏光子とが配置され、前記吸収型偏光子が二色性色素と液晶化合物を含む液晶組成物を含み、前記二色性色素が、700nm以上に最大吸収波長を有する近赤外吸収色素である、偏光子構築体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収型偏光子と反射型偏光子を含む偏光子構築体であって、
前記吸収型偏光子側から前記偏光子構築体に入射する、前記吸収型偏光子の透過軸に対して平行に偏光した近赤外光が、前記反射型偏光子を透過するように、前記吸収型偏光子と前記反射型偏光子とが配置され、
前記吸収型偏光子が二色性色素と液晶化合物とを含む液晶組成物を含み、
前記二色性色素が、700nm以上に最大吸収波長を有する近赤外吸収色素である、偏光子構築体。
【請求項2】
前記近赤外吸収色素がスクアリリウム色素である、請求項1に記載の偏光子構築体。
【請求項3】
前記スクアリリウム色素が、下記式(X)で表される化合物である、請求項2に記載の偏光子構築体。
【化1】
[前記式(X)中の記号は以下のとおりである。
Arは炭素数5~14の芳香族性を有する単環、縮環または連結環である。Arは置換基を有してもよい。
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、または、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子もしくは環構造を含んでよい炭素数1~20の1価炭化水素基を示す。
R
1とR
2、R
1およびR
2の少なくとも一方とArを構成する炭素原子は、互いに連結して窒素原子と共に員数が3から10の複素環を形成してもよい。]
【請求項4】
前記反射型偏光子と前記吸収型偏光子との間に接着層を有する、請求項1に記載の偏光子構築体。
【請求項5】
前記反射型偏光子は反射型直線偏光子である、請求項1に記載の偏光子構築体。
【請求項6】
前記反射型偏光子は反射型円偏光子であり、前記反射型偏光子と前記吸収型偏光子との間に1/4波長板を有する、請求項1に記載の偏光子構築体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の偏光子構築体を備えた撮像装置、光波測距装置、仮想現実装置、または日射制御部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外域の光を直線偏光または円偏光に変換する偏光子構築体、及び該偏光子構築体を備える、撮像装置、光波測距装置、仮想現実装置、日射制御部材等の光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子として、透過軸に垂直な偏光を反射する反射型偏光子や、透過軸に垂直な偏光を吸収する吸収型偏光子が知られている。
【0003】
反射型偏光子としては、平行に延在した複数の金属細線を備える、ワイヤグリッド偏光子が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、可視光、近赤外光、赤外線の領域において偏光子として機能するワイヤグリッド偏光子が記載されている。
【0005】
吸収型偏光子としては、二色性色素と液晶化合物とを含む液晶組成物を用いた偏光子や、二色性色素を含んだ樹脂フィルムを用いた偏光子が知られている。
液晶組成物を用いた偏光子として、例えば、特許文献2および3には、ホストとなる液晶材料とゲストとなる二色性色素とを含むゲストホスト型液晶組成物を利用した偏光子が記載されている。このような液晶組成物を用いた偏光子は、樹脂フィルムを用いた偏光子よりも膜厚を大幅に小さくすることができ、なおかつ、吸湿性が低い。
【0006】
偏光子の特性は、消光比にて評価する。透過軸に平行な偏光に対しての内部透過率と、透過軸に垂直な偏光に対しての内部透過率との比を消光比という。以下では、上記の比をデシベル単位で表した値の絶対値のことを、消光比という。消光比の値が高いほど、偏光性能が優れていると言える。一般的に、反射型偏光子は、吸収型偏光子よりも高い消光比を有する。
【0007】
反射型偏光子と吸収型偏光子とを組み合わせた偏光子構築体も知られている。例えば、特許文献4には、反射型偏光子と、二色性物質を含む吸収型偏光子とを含む意匠性フィルムが記載されている。この意匠性フィルムは、吸収型偏光子の吸収軸方向と反射型偏光子の反射軸方向とが平行になることから、吸収型偏光子の吸収軸を透過した光を、反射型偏光子の反射軸で反射できることが記載されている。したがって、この意匠性フィルムは、吸収型偏光子側から入射する光について、吸収型偏光子を単体で用いた場合よりも高い消光比を有し、なおかつ、反射型偏光子を単体で用いた場合よりも透過軸に垂直な偏光に対して低い反射率を有すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6063386号公報
【特許文献2】特許第5923941号公報
【特許文献3】特許第6343866号公報
【特許文献4】特開2022-035801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、LiDAR、ARグラスおよびVRグラス等の光学系に用いられる偏光子として、近赤外光に対して十分な消光比を有し、透過軸に平行な偏光に対しての十分な透過率を有し、なおかつ、迷光の発生を抑制する観点から、透過軸に垂直な偏光に対しての反射率が低い偏光子が求められるようになっている。加えて、前記の光学系に用いるためには、吸湿性が低く、薄膜化が可能な偏光子が望ましい。
【0010】
しかしながら、特許文献2および3に記載された偏光子における液晶組成物中の二色性色素は、可視光領域を吸収する色素であり、可視光領域においては、高い消光比と透過軸に平行な偏光に対して高い透過率とを有すると考えられるが、近赤外領域では偏光子として機能しない。これらの偏光子と同程度の消光比と透過率とを、近赤外領域において有する、液晶組成物を用いた偏光子を製造することは困難であった。
【0011】
特許文献4に記載された意匠性フィルムは、前記の通り、高い消光比と、透過軸に垂直な偏光に対して低い反射率とを有すると考えられる。しかしながら、意匠性フィルムを構成する、液晶組成物を用いた吸収型偏光子は、特許文献2および3と同様に、近赤外領域では偏光子として機能しない。
【0012】
したがって、従来の技術からは、前記光学系に用いる偏光子に求められる、各特性を有する偏光子を製造することは困難であった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、近赤外領域において、透過軸に垂直な偏光に対しての反射率が低く、透過軸に平行な偏光に対しての透過率が高く、消光比が高い偏光子構築体等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施形態は、以下の構成を有する偏光子構築体を有する。
吸収型偏光子と反射型偏光子を含む偏光子構築体であって、前記吸収型偏光子側から前記偏光子構築体に入射する、前記吸収型偏光子の透過軸に対して平行に偏光した近赤外光が、前記反射型偏光子を透過するように、前記吸収型偏光子と前記反射型偏光子とが配置され、前記吸収型偏光子が二色性色素と液晶化合物を含む液晶組成物を含み、前記二色性色素が、700nm以上に最大吸収波長を有する近赤外吸収色素である、偏光子構築体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、近赤外領域において、透過軸に垂直な偏光に対しての反射率が低く、透過軸に平行な偏光に対しての透過率が高く、消光比が高い偏光子構築体等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の1つの実施形態による偏光子構築体の概略断面図である。
【
図2】
図2は本発明の1つの実施形態による偏光子構築体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.用語定義
本明細書において、「垂直」とは、厳密に90°を表すのではなく、90°±10°、好ましくは90°±5°を表すものとする。また、「平行」とは、厳密に0°を表すのではなく、0°±10°、好ましくは0°±5°を表すものとする。
【0017】
本明細書において、「吸収軸」とは、偏光子の面内において吸光度が最大となる方向を意味する。「反射軸」とは、偏光子の面内において反射率が最大となる方向を意味する。「透過軸」とは、偏光子の面内において吸収軸または反射軸と垂直な方向を意味する。「遅相軸」とは、1/4波長板等の光学素子の面内において屈折率が最大となる方向を意味する。
【0018】
本明細書において、吸収型偏光子の透過軸に平行に偏光した光を「第1の偏光」、吸収型偏光子の透過軸に垂直に偏光した光を「第2の偏光」という。
【0019】
本明細書において、式(A1)で示される化合物を化合物(A1)という。他の式で表される化合物も同様である。化合物(A1)からなる近赤外吸収色素を近赤外吸収色素(A1)ともいい、他の色素についても同様である。また、例えば、式(1a)で表される基を基(1a)とも記し、他の式で表される基も同様である。
【0020】
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
【0021】
本明細書において、特に断りのない限り、アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状またはこれらの構造を組み合わせた構造でもよい。
ハロゲン原子としては、特に断りのない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
本明細書において、特に断りのない限り、アリール基は芳香族化合物が有する芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル等を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。また、ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を有する芳香族化合物が有する芳香環、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環等を構成する炭素原子あるいはヘテロ原子を介して結合する基をいう。
【0022】
本明細書において、スクアリリウム化合物とは、構造式において下記式(S2)で表す共鳴構造をとり得る下記式(S1)で表されるスクアリリウム骨格を有する化合物をいう。本明細書において、スクアリリウム骨格は式(S1)または式(S2)のいずれかで示される。
【0023】
【0024】
B.偏光子構築体
本発明の実施形態の偏光子構築体は、少なくとも吸収型偏光子と反射型偏光子を含んでなる偏光子構築体であって、前記吸収型偏光子側から前記偏光子構築体に入射する、前記吸収型偏光子の透過軸に対して平行に偏光した近赤外光が、前記反射型偏光子を透過するように前記吸収型偏光子と前記反射型偏光子とが配置され、前記吸収型偏光子が二色性色素と液晶化合物とを含む液晶組成物を含み、前記二色性色素が、700nm以上に最大吸収波長を有する近赤外吸収色素である偏光子構築体である。
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態及び具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
【0026】
図1は、本発明の一つの実施形態による偏光子構築体の概略断面図である。
図1に示される偏光子構築体100は、吸収型偏光子101と、反射型直線偏光子である反射型偏光子102とを含む。
【0027】
吸収型偏光子101と反射型偏光子102は、吸収型偏光子101の透過軸と、反射型偏光子102の透過軸とが、平行になるように配置される。このような構成によれば、吸収型偏光子101側からランダムに偏光した近赤外光が入射した場合、第1の偏光は吸収されることなく透過する。一方で、第2の偏光は、吸収型偏光子101で一度吸収される。さらに、吸収型偏光子101で吸収されなかった一部の第2の偏光が、反射型偏光子102で反射される。反射型偏光子102で反射された第2の偏光は、再度、吸収型偏光子101に入射し、吸収される。
【0028】
図2は、本発明の別の実施形態による偏光子構築体の概略断面図である。
図2に示される偏光子構築体200は、吸収型偏光子201と、反射型円偏光子である反射型偏光子202と、1/4波長板203とを含む。
【0029】
1/4波長板203の遅相軸は、第2の偏光が反射型偏光子202で反射される円偏光に変換されるように設定される。吸収型偏光子201側からランダムに偏光した近赤外光が入射した場合、例えば反射型偏光子202が右円偏光を反射するとすれば、第1の偏光は吸収型偏光子201を透過した後、左円偏光に変換され、反射型偏光子202を透過する。一方で、第2の偏光は吸収型偏光子201で一度吸収される。さらに、吸収型偏光子201で吸収されなかった一部の第2の偏光が1/4波長板203で右円偏光に変換され、反射型偏光子202で反射される。反射型偏光子で反射された近赤外光は、左円偏光として1/4波長板203に入射し、吸収型偏光子201の透過軸方向と平行な直線偏光に変換され、吸収型偏光子201を透過する。
【0030】
図1および
図2に示す実施形態において、本発明の偏光子構築体は、吸収型偏光子の吸収軸で吸収されなかった一部の第2偏光を反射型偏光子で反射することができる。したがって、吸収型偏光子を単体で用いた場合よりも、第2偏光の透過率を抑えることができるため、高い消光比が得られ、なおかつ、反射型偏光子を単体で用いた場合よりも、第2の偏光の反射率を抑えることができる。
【0031】
図1に示す実施形態においては、吸収型偏光子の吸収軸で吸収されなかった一部の第2の偏光を反射型偏光子で反射し、反射された第2の偏光を吸収型偏光子で再度吸収することができるため、いっそう第2の偏光の反射率を抑えることができる。したがって、反射率を抑制する観点から、本発明の偏光子構築体を構成する反射型偏光子としては、反射型直線偏光子を用いることが好ましい。
【0032】
本発明の偏光子構築体は、高い消光比を有し、具体的には、最大吸収波長において、20dB以上が好ましく、25dB以上がより好ましく、30dB以上がさらに好ましい。
【0033】
本発明の偏光子構築体は、第1の偏光に対して高い内部透過率を有し、具体的には、最大吸収波長において、80%以上が好ましい。
【0034】
本発明の偏光子構築体は、第2の偏光に対して低い反射率を有し、具体的には、最大吸収波長において、25%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0035】
本発明の偏光子構築体は、吸収型偏光子と反射型偏光子の間に、接着層を有してもよい。接着層は、吸収型偏光子の反射型偏光子を向いた面の表面の部材の屈折率の値と、反射型偏光子の吸収型偏光子を向いた面の表面の部材の屈折率の値との間に含まれる屈折率の値を持つことが好ましい。これにより、吸収型偏光子と反射型偏光子との間に存在する界面での反射を低減できる。
【0036】
本発明の偏光子構築体は、本発明の偏光子構築体を構成する吸収型偏光子の一方の面上に、本発明の偏光子構築体を構成する反射型偏光子が直接形成されてもよい。これにより、偏光子構築体を薄くできる。
【0037】
本発明の偏光子構築体は、本発明の偏光子構築体を構成する吸収型偏光子に含まれる基板の一つを、本発明の偏光子構築体を構成する反射型偏光子としてもよい。これにより、偏光子構築体を薄くできる。
【0038】
本発明の偏光子構築体は、他の機能層を備えていてもよい。他の機能層としては、例えば、粘着層、反射防止層および保護層が挙げられる。
【0039】
C-1.反射型偏光子
反射型偏光子は、一方の偏光を反射し、もう一方の偏光を透過する機能を有する。
本発明の偏光子構築体を構成する反射型偏光子としては、近赤外領域で偏光子として機能する、公知の反射型直線偏光子および反射型円偏光子を制限なく用いることができる。
【0040】
反射型直線偏光子としては、例えば、配列した複数のワイヤを有するワイヤグリッド偏光子、および、誘電体多層膜を延伸した多層複屈折偏光子が挙げられる。反射型直線偏光子の市販品としては、ソーラボジャパン株式会社製のワイヤグリッド偏光子(商品名WP25L-VIS)、および、3M社製の多層複屈折偏光子(商品名DBEF)等を、好適に用いることができる。
【0041】
反射型円偏光子としては、コレステリック液晶層を有するコレステリック偏光子が挙げられる。
【0042】
C-2.吸収型偏光子
吸収型偏光子は、一方の偏光を吸収し、もう一方の偏光を透過する機能を有する。
本発明の偏光子構築体を構成する吸収型偏光子は、二色性色素と液晶化合物とを含む液晶組成物を含み、前記二色性色素は700nm以上に最大吸収波長を有する近赤外吸収色素である。
【0043】
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度が異なる性質を有する色素を意味する。液晶組成物内で二色性色素が配向することで、液晶組成物が光吸収異方性材料として機能できる。
【0044】
C-2-1.近赤外吸収色素
本発明の偏光子構築体を構成する吸収型偏光子における二色性色素は、700nm以上の波長領域に最大吸収波長を有する近赤外吸収色素である。二色性色素が近赤外吸収色素であることで、近赤外及び赤外領域の偏光を吸収できる吸収型偏光子を作ることができる。
最大吸収波長を有する波長領域は、好ましくは800nm以上である。
【0045】
近赤外吸収色素は、液晶の配向に追従して配向できるよう、直線性が高い構造であることが望ましく、アスペクト比が好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.8以上である。
【0046】
ここで言うアスペクト比とは、分子が内接する最小直径の円柱の長さ(L)と直径(D)の比(L/D)で定義される。
【0047】
アスペクト比については次の方法で測定・算出できる。米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian16を用い、キーワードとしてB3LYP/6-31G*を用い、対象とする分子構造の構造最適化を行う。さらに該最適化構造から、X-Ability社製シミュレーションソフトウェアであるWinmostar(Winmostar V10)を用い、アスペクト比を算出する。
【0048】
近赤外吸収色素は、700nm以上の近赤外・赤外光領域を吸収できる観点から、スクアリリウム色素が好ましく、下記式(X)で表される化合物がより好ましい。
【0049】
【0050】
前記式(X)中の記号は以下のとおりである。
Arは炭素数5~14の芳香族性を有する単環、縮環または連結環である。
【0051】
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、または、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子もしくは環構造を含んでよい炭素数1~20の1価炭化水素基を示す。
1価炭化水素基としては、分岐状でも直鎖状でも環状でもよく、スクアリリウム色素が直線状となりやすい、すなわち二色性を発現しやすい観点から、直鎖状もしくは後述するようにR1とR2が連結しているのが好ましい。
1価炭化水素基の炭素数は1~12がより好ましい。
また、R1およびR2は同一であっても異なっていてもよい。さらに、R1およびR2が直鎖状の場合は、スクアリリウム色素が直線状となりやすい観点から、R1およびR2は異なっていることが好ましい。
【0052】
R1とR2、R1およびR2の少なくとも一方とArを構成する炭素原子は、互いに連結して窒素原子と共に員数が3から10の複素環を形成してもよい。これによりスクアリリウム色素が直線状となりやすい、すなわち二色性を発現しやすい。
【0053】
R1およびR2が複素環を形成する場合、R1およびR2は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子もしくは環構造を含んでよい炭素数1~20の2価炭化水素基を示す。
R1およびR2における置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
なお、R1およびR2が置換基を有する場合、置換基の炭素数はR1およびR2の炭素数に含まれる。
【0054】
R1およびR2における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0055】
R1およびR2におけるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子が好ましい。
【0056】
R1およびR2が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0057】
R1およびR2における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0058】
R1とR2が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成する場合、かかる複素環の員数は、スクアリリウム色素が直線状となりやすい観点、すなわち二色性を発現しやすい観点から、4~6が好ましい。
かかる複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。
また、かかる複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子が窒素原子に置き換えられ、当該窒素原子に結合する水素原子が、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。
アルキル基は分岐状でも直鎖状でも環状でもよいが、スクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0059】
R1およびR2の少なくとも一方とArを構成する炭素原子が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成する場合、かかる複素環の員数は、5~7が好ましい。かかる複素環において、窒素原子に隣接する炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換され、残りの水素原子の一部または全部が、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~4のアルキル基に置換されていてもよい。アルキル基は分岐状でも直鎖状でも環状でもよいが、スクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0060】
なお、2つのR1は、スクアリリウム骨格の左右で異なってもよいが、製造容易性の観点から左右が同一であることが好ましい。R2、Arについても同様である。また、これ以降の記号についても同様である。すなわち化学式中における2つの記号はスクアリリウム骨格の左右で異なってもよいが、製造容易性の観点から左右が同一であることが好ましい。
【0061】
Arは1以上の置換基を有してもよい。ここで、スクアリリウム色素の短軸方向の分子長と長軸方向の分子長の比率(アスペクト比)が大きい方が二色性を発現しやすい観点から、置換基はハロゲン原子、水酸基、または置換基を有してもよい炭素数1~9の1価有機基RArから選ばれることが好ましい。なお、RArの炭素数およびRArが有する置換基の炭素数は上記Arの炭素数には含まれない。RArの炭素数は好ましくは1~7、より好ましくは1~5である。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
1価有機基RArとしては、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルアリール基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、イミノ基、シアノ基、カルボニル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
RArは置換基を有してもよい。置換基の炭素数はRArの炭素数に含まれる。
【0062】
スクアリリウム色素としては、下記式(I)~(VI)のいずれかで表される化合物が好ましい。なお、スクアリリウム色素は1種以上の化合物を含んでもよい。
【0063】
<スクアリリウム色素(I)>
【0064】
【0065】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R11およびR21は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合もしくはヘテロ原子を含んでよい炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~19のアシルオキシ基、炭素数6~11のアリール基、または、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基を示す。
R31およびR51は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~8のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~8のアシルオキシ基、炭素数6~9のアリール基、置換基を有してもよく炭素原子間に酸素原子を有してもよい炭素数7~9のアルアリール基、-NR31aR31b(R31aおよびR31bは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、-C(=O)-R31c(R31cは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~8の炭化水素基)、-NHR31d、または、-SO2-R31d(R31dは、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~8の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R31e、R31fは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。
【0066】
【0067】
R41およびR61は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~8のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~8のアシルオキシ基、炭素数6~9のアリール基、または、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~9のアルアリール基を示す。
R11とR21、R11とR41、およびR21とR61は、互いに連結して窒素原子と共に、それぞれ員数が4から6の複素環A1、員数が5から7の複素環B1、および員数が5から7の複素環C1を形成してもよい。]
【0068】
R11およびR21がアルキル基である場合、スクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。
【0069】
複素環A1が形成される場合のR11とR21は、これらが結合した2価の基-Q1-として、炭素数3~5のアルキレン基または炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示す。ここで、窒素原子とQ1とから構成される複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。アルキル基はスクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0070】
複素環B1が形成される場合のR11とR41、および複素環C1が形成される場合のR21とR61は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X1-Y1-および-X2-Y2-(窒素に結合する側がX1およびX2)として、X1およびX2がそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、Y1およびY2がそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。X1およびX2が、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、Y1およびY2はそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0071】
【0072】
式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-Nx38x39(x38およびx39は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示す)を示す。x31~x36はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、x37は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
R31a、R31b、R31c、x31~x37、複素環を形成していない場合のR11、R21、R41およびR61は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。x31とx36、x31とx37は直接結合してもよい。
【0073】
R11およびR21における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
【0074】
R11およびR21における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0075】
R11およびR21が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0076】
R11およびR21における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0077】
化合物(I)としては、例えば、式(I-1)~(I-4)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0078】
【0079】
式(I-1)~式(I-4)中の記号は、式(I)における同記号の各規定と同じであり、特に言及しない限り好ましい態様も同様である。
【0080】
化合物(I-1)において、R11は水素原子または炭素数1~12の直鎖アルキル基が好ましい。
【0081】
化合物(I-1)において、X1としては、基(2x)が好ましく、Y1としては、単結合または基(1y)が好ましい。すなわち-Y1-X1-として、-C(x31)(x32)-C(x33)(x34)-または-C(x35)(x36)-C(x31)(x32)-C(x33)(x34)-が好ましい。
この場合、x31、x32、x35、x36としては、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。
x33、x34は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0082】
化合物(I-1)において、複素環における窒素原子に隣接する炭素原子に直鎖アルキル基が1つ結合する場合、または、窒素原子に直鎖アルキル基が1つ結合する場合、化合物の直線性が得られ二色性を発現しやすい。かかる観点から、R11、x33、x34のうち、いずれか1つが好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数3~8の直鎖アルキル基であり、残余の2つが各々独立に水素原子または炭素数2以下のアルキル基であることが好ましい。
【0083】
なお、-Y1-X1-として、具体的には、下記式(11-1)~(11-4)、(12-1)~(12-3)で示される2価の有機基が挙げられる。
-C(CH3)2-CH(CH3)- …(11-1)
-C(CH3)2-CH2- …(11-2)
-C(CH3)2-CH(nCkH2k+1)- …(11-3)(k=2~6)
-C(CH3)2-C(CH3)(nCkH2k+1)- …(11-4)(k=3~6)
-C(CH3)2-CH2-CH2- …(12-1)
-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)- …(12-2)
-C(CH3)2-CH(CH3)-CH2- …(12-3)
【0084】
化合物(I-4)において、R51は水素原子または水酸基が好ましい。
【0085】
<スクアリリウム色素(II)>
【0086】
【0087】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
環Z2は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有する5員環または6員環であり、環Z2が有する水素原子は置換されていてもよい。
R12とR22は、それぞれ独立して、水素原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭素数1~20の1価炭化水素基を示す。
R32およびR42は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよく、置換基を有してもよい炭素数1~8のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
R12とR22、R12とR42、およびR22と環Z2を構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれ員数が4から6の複素環A2、員数が5から7の複素環B2、および員数が5から7の複素環C2を形成していてもよい。複素環A2、複素環B2および複素環C2が有する水素原子は置換されていてもよい。]
【0088】
R12およびR22における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
【0089】
R12およびR22における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0090】
R12およびR22が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0091】
R12およびR22における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0092】
化合物(II)としては、例えば、式(II-1)~(II-3)のいずれかで示される化合物が挙げられ、耐久性の観点から、式(II-1)で示される化合物、式(II-3)で示される化合物が特に好ましい。
【0093】
【0094】
式(II-1)、式(II-2)中、R12およびR22は、それぞれ独立に水素原子、または、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20のアルキル基を示す。R32、R42、R52、R62はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を示す。アルキル基における置換基としてはハロゲン原子が挙げられる。
【0095】
化合物(II-1)および化合物(II-2)におけるR12およびR22は、配向度の観点から、独立して、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖アルキル基が好ましい。R12は炭素数1~12の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数3~8の直鎖アルキル基が特に好ましい。R22は炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4の直鎖アルキル基が特に好ましい。R12およびR22は同一でも異なっていてもよいが、直鎖アルキル基である場合、分子の直線性の観点から、異なっていることが好ましい。
【0096】
また、化合物(II-1)および化合物(II-2)におけるR12とR22を構成する炭素原子が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成してもよく、複素環が4員環~6員環であることが特に好ましい。かかる複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8の直鎖アルキル基に置換されていてもよい。
【0097】
R32およびR42は、独立して、配向度の観点から、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0098】
式(II-3)中、R12は、水素原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基を示す。R92a~R92dは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1以上のアルキル基を示し、かつ、-CR92aR92b-CR92cR92d-全体の炭素数が20以下である。R32、R72およびR82はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4のアルキル基を示す。アルキル基における置換基としてはハロゲン原子が挙げられる。
【0099】
化合物(II-3)におけるR12は、配向度の観点から、炭素数1~18の直鎖アルキル基が好ましい。
【0100】
R92aは、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよく炭素原子間に不飽和結合もしくはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~18のアルキル基がより好ましい。
R92b~R92dは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
【0101】
さらに、化合物(II-3)において、複素環における窒素原子に隣接する炭素原子に直鎖アルキル基が1つ結合する場合、または、窒素原子に直鎖アルキル基が1つ結合する場合、化合物の直線性が得られ二色性を発現しやすい。かかる観点から、R12、R92aのうち、一方が好ましくは炭素数3~18、より好ましくは炭素数3~12の直鎖アルキル基であり、他方が水素原子または炭素数2以下のアルキル基であることが好ましい。
【0102】
-CR92aR92b-CR92cR92d-として、下記基(13-1)~(13-9)で示される2価の有機基が挙げられる。
-CH(CH3)-C(CH3)2- …(13-1)
-C(CH3)2-CH(CH3)- …(13-2)
-C(CH3)2-CH2- …(13-3)
-C(CH3)2-CH(C2H5)- …(13-4)
-CH(CH3)-C(CH3)(CH2-CH(CH3)2)-…(13-5)
-CH(CH2CH(CH3)2)-C(CH3)2-…(13-6)
-CH(CnH2n+1)-C(CH3)2- …(13-7)(n=1~12)
-CH(CnH2n+1)-CH2- …(13-8)(n=1~12)
-C(CH3)(CnH2n+1)-CH2- …(13-9)(n=1~12)
【0103】
R72およびR82は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基がより好ましい。
【0104】
化合物(II-1)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0105】
【0106】
化合物(II-3)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0107】
【0108】
化合物(I)~(II)は、それぞれ公知の方法で製造できる。化合物(I)については、米国特許第5,543,086号明細書、米国特許出願公開第2014/0061505号明細書、国際公開第2014/088063号に記載された方法で製造可能である。化合物(II)については、国際公開第2017/135359号に記載された方法で製造可能である。
【0109】
<スクアリリウム色素(III)>
【0110】
【0111】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R13およびR23は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、脂環もしくは芳香環を含んでよい、炭素数1~20のアルキル基である。
R33は、不飽和結合を必須としない有機基R33Aまたは不飽和結合を必須とする有機基R33Bである。
X31はCR43またはNである。
X32はS、NR53、またはOである。
X33はS、NR63、またはOである。
R43は水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、シリル基、チオール基、スルフィド基、アミド構造含有1価有機基、スルホンアミド基、ウレア基、ウレタン構造含有1価有機基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアシルオキシ基、または、―N(R43g)2(R43gは水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基である。)である。
R53およびR63は、それぞれ独立に、水素原子、カルボニル構造含有1価有機基、スルホ基、または置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基である。
R13は、R23、R33、X31、X32、またはX33と連結して員数3~6の環を形成してもよい。
R23は、R13、R33、X31、X32、またはX33と連結して員数3~6の環を形成してもよい。
R33は、X31、X32、またはX33と連結して員数5~7の環を形成してもよい。]
【0112】
R13およびR23における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
【0113】
R13およびR23における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0114】
R13およびR23が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0115】
R13およびR23における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0116】
R13の炭素数としては1~20が挙げられる。R13の炭素数は、直鎖状の場合2~20が好ましく、2~16がより好ましく、2~12がさらに好ましい。R13の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~20が好ましく、3~16がより好ましく、3~12がさらに好ましい。
R23の炭素数としては1~20が挙げられる。R23の炭素数は、配向度の観点から直鎖状の場合1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。R23の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。
R13およびR23が置換基を有する場合、および主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、上記炭素数に置換基、脂環、芳香環の炭素数は含まれる。
【0117】
R13およびR23は同一であっても異なってもよい。配向度の観点から、鎖状である場合、R13およびR23は異なっていることが好ましい。
【0118】
R13およびR23は、配向度の観点から、直鎖状であることが好ましい。
【0119】
R13およびR23は、例えば、基(1b)~(5b)、基(1c)~(2c)から選ばれる基がさらに好ましい。
-CH(CnH2n+1)2 …(1b)
-C(CnH2n+1)3 …(1c)
-CH2-CH(CnH2n+1)2 …(2b)
-CH2-C(CnH2n+1)3 …(2c)
-(CH2)2-CH(CnH2n+1)2 …(3b)
-(CH2)3-CH(CnH2n+1)2 …(4b)
-(CH2)m-CH3 …(5b)
【0120】
ただし、式(1b)~(4b)、式(1c)~(2c)においてnは1~10の整数であり、1~8が好ましく、1~4がより好ましい。ただし、基(1b)~(4b)、基(1c)~(2c)の炭素数は1~20の範囲内とする。式(1b)~(4b)における2個のCnH2n+1、式(1c)~(2c)における3個のCnH2n+1は、それぞれ直鎖であっても分岐鎖であってもよく、同一であっても異なってもよい。式(5b)においてmは0~19の整数であり、1~19が好ましく、2~19がより好ましく、4~19がさらに好ましい。さらに、基(1b)~(5b)、基(1c)~(2c)は炭素-炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0121】
また、R13およびR23が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成する場合、R13およびR23が結合した2価の基-Q3-として、炭素数3~5のアルキレン基または炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示す。ここで、窒素原子とQ3とから構成される複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。アルキル基はスクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0122】
R33は、不飽和結合を必須としない有機基R33Aまたは不飽和結合を必須とする有機基R33Bである。
不飽和結合を必須としない有機基R33Aは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または、置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基もしくはアルアリール基である。
不飽和結合を必須とする有機基R33Bは、置換基を有してもよい炭素数2以上のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2以上のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1以上のイミノ基、シアノ基、カルボニル構造を含み置換基を有してもよい炭素数1以上の有機基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基である。
R33は、X31、X32、またはX33と連結して環を形成してもよい。環としては員数5~7の環が好ましい。また、該環は置換基を有していてもよい。
【0123】
R33Aにおける置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~8のアルコキシ基が挙げられる。R33Aがアリール基またはアルアリール基の場合、置換基は、芳香環に結合する水素原子またはこれらが有するアルキル基の水素原子を置換する基であり、上記置換基の他にさらにアリール基を含む。
【0124】
R33Aがアルキル基またはアルコキシ基の場合、炭素数は1~8が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。R33Aがアリール基の場合、炭素数は6~9が好ましい。R33Aがアルアリール基の場合、炭素数は7~9が好ましい。
R33Aが置換基を有する場合、R33Aの炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0125】
R33Aは、光安定性と配向度の観点から、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0126】
不飽和結合を必須とする有機基R33Bにおける置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、チオール基、スルフィド基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数3~8のヘテロアリール基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数2~8のアルキニル基、シリル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
R33Bが置換基を有する場合、R33Bの炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0127】
R33Bがアルケニル基の場合、炭素数は2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。
アルケニル基としては下記式(3-1)で表される基が好ましい。
【0128】
【0129】
R3a、R3b、R3cは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~7のアルコキシ基、炭素数1~7のアルキル基、炭素数6~7のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~7のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~7のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~7のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~7のアルキニル基、炭素数3~7のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等)、炭素数3~7のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~7のハロゲン化アルキル基である。R3bはR3aまたはR3cと連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
【0130】
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、R3bがR3aまたはR3cと連結して形成した環における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0131】
基(3-1)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0132】
【0133】
R33Bがアルキニル基の場合、炭素数は2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。
アルキニル基としては下記式(3-2)で表される基が好ましい。
【0134】
【0135】
R3dは水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~7のアルコキシ基、炭素数1~7のアルキル基、炭素数6~7のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~7のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~7のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~7のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~7のアルキニル基、炭素数3~7のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~7のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~7のハロゲン化アルキル基である。
【0136】
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数3~5のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~5のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0137】
基(3-2)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0138】
【0139】
R33Bがイミノ基の場合、炭素数は1以上であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4である。
イミノ基としては下記式(3-3)で表される基が好ましい。
【0140】
【0141】
R3e、R3fは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~10のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルキニル基、炭素数3~8のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基、等)、炭素数3~8のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~8のハロゲン化アルキル基である。R3eとR3fは連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
【0142】
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、R3eとR3fが連結して形成した環における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0143】
基(3-3)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0144】
【0145】
R33Bがシアノ基の場合、下記式(3-4)で表される基である。
【0146】
【0147】
R33Bがカルボニル構造を含み置換基を有してもよい炭素数1以上の有機基の場合、炭素数は1以上であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4である。
かかる有機基としては下記式(3-5)で表される基が好ましい。
【0148】
【0149】
R3gは水素原子、水酸基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、アルコキシカルボニル基、スルフィド基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~8のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~8のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~8のアルキニル基、炭素数3~8のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~8のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~8のハロゲン化アルキル基である。
【0150】
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0151】
基(3-5)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0152】
【0153】
R33Bがアリール基の場合、炭素数は6~9である。
【0154】
アリール基としては下記式(3-6)で表される基が好ましい。
【0155】
【0156】
R3h、R3i、R3j、R3k、R3lは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~3のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~3のアルキニル基、トリメチルシリル基、トリメトキシシリル基、または炭素数1~3のハロゲン化アルキル基である。
R3hとR3i、R3iとR3j、R3jとR3k、R3kとR3lは互いに連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環を形成してもよい。
【0157】
アルケニル基、アルキニル基における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、メトキシ基、メチル基、またはハロゲン化メチル基が挙げられる。
【0158】
基(3-6)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0159】
【0160】
R33Bがヘテロアリール基の場合、炭素数は3~9である。
【0161】
ヘテロアリール基としては下記式(3-7)~(3-9)のいずれかで表される基が好ましい。
【0162】
【0163】
X3a、X3b、X3c、X3d、X3eは、それぞれ独立して、NまたはCR3mであり、少なくとも一つはNである。R3mは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、置換基を有してもよい炭素数3~6のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルキニル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基である。
X3a、X3b、X3c、X3d、X3eがCR3mである場合、隣り合うX3a~X3eは互いに連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環Ar30、Ar31、Ar32、Ar33を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、環Ar30、Ar31、Ar32、Ar33における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、トリメチルシリル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0164】
基(3-7)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0165】
【0166】
【0167】
X3f、X3g、X3hは、それぞれ独立してNまたはCR3nである。Y3aはS、OまたはNR3oである。
R3nはおよびR3oはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、置換基を有してもよい炭素数3~6のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルキニル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基である。
X3f、X3g、X3hがCR3nであり、Y3aがNR3oである場合、隣り合うX3f、X3g、X3h、Y3aは互いに連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環Ar34、Ar35、Ar36を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、環Ar34、Ar35、Ar36における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、トリメチルシリル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0168】
基(3-8)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0169】
【0170】
【0171】
X3i、X3j、X3kは、それぞれ独立してNまたはCR3pである。Y3bはS、OまたはNR3qである。R3pおよびR3qは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、置換基を有してもよい炭素数3~6のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~6のアルキニル基、炭素数3~6のトリオルガノシリル基(トリメチルシリル基等)、炭素数3~6のトリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、ジメトキシエトキシシリル基等)、または炭素数1~6のハロゲン化アルキル基である。
X3i、X3j、X3kがCR3pであり、Y3bがNR3qである場合、隣り合うX3i、X3j、X3k、Y3bは互いに連結してヘテロ原子を含んでもよい員数3~6の環Ar37、Ar38、Ar39を形成してもよく、その場合、該環は置換基を有していてもよい。
アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、環Ar37、Ar38、Ar39における置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、スルフィド基、トリメチルシリル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0172】
基(3-9)としては好ましくは下記構造が挙げられる。
【0173】
【0174】
式(III)において、X31はCR43またはNである。X32はS、NR53、またはOである。X33はS、NR63、またはOである。
【0175】
R43は水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、シリル基、チオール基、スルフィド基、アミド構造含有1価有機基、スルホンアミド基、ウレア基、ウレタン構造含有1価有機基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアシルオキシ基、または、―N(R43g)2(R43gは水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基である。)である。
【0176】
R43がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、または、―N(R43g)2である場合、R43はR13~R33のいずれかと互いに連結して員数3~6の環を形成してもよい。また、当該環は置換基を有してもよい。
【0177】
R43における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、チオール基、スルフィド基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数3~8のヘテロアリール基、炭素数2~8のアルケニル基、炭素数2~8のアルキニル基、シリル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
R43が置換基を有する場合、R43の炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0178】
R43におけるハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
【0179】
R43におけるカルボニル構造含有1価有機基としては、-C(=O)-R43aが好ましい。R43aは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~8のアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数1~8のアルコキシ基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基が好ましい。
【0180】
R43におけるシリル基としては-Si(R43b)3が好ましい。R43bは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。3つのR43bは同一でも異なっていてもよい。
【0181】
R43におけるスルフィド基としては-SR43cが好ましい。R43cは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0182】
R43におけるアミド構造含有1価有機基としては、-C(=O)-NH-R43dが好ましい。R43dは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~8のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0183】
R43におけるスルホンアミド基としては、-SO2-N(R43e)2が好ましい。R43eは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t-ブチル基が好ましい。2つのR43eは同一でも異なっていてもよい。
【0184】
R43におけるウレタン構造含有1価有機基としては、-NH-C(=O)O-R43fが好ましい。R43fは、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~8のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0185】
R43における炭素数1~9のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、が好ましい。
【0186】
R43における炭素数2~9のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、イソブテニル基、スチリル基、2-フルオロビニル基、2,2-ジフルオロビニル基、3,3,3-トリフルオロプロペニル基が好ましい。
【0187】
R43における炭素数2~9のアルキニル基としては、アセチレニル基、1-プロピニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基、t-ブチルジメチルシリルエチニル基が好ましい。
【0188】
R43における炭素数6~9のアリール基としては、フェニル基、4‐メトキシフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、3-ニトロフェニル基が好ましい。
【0189】
R43における炭素数3~9のヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基が好ましい。
【0190】
R43における炭素数1~9のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基が好ましい。
【0191】
R43における炭素数2~9のアシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基が好ましい。
【0192】
R43における―N(R43g)2において2つのR43gは同一でも異なっていてもよい。また、2つのR43g同士が連結して環を形成してもよい。―N(R43g)2としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルイソプロピルアミノ基、モルホリノ基が好ましい。
【0193】
X32はS、NR53、またはOである。
R53は水素原子、カルボニル構造含有1価有機基、スルホ基、または置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基であり、水素原子、メチル基、エチル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基、ベンジル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2-トリエトキシカルボニル基、2―ニトロベンゼンスルホニル基が好ましい。
置換基としてはR43における置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0194】
R53が置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基である場合、R53はR13~R33のいずれかと連結して員数3~6の環を形成してもよい。
【0195】
X33はS、NR63、またはOである。
R63は水素原子、カルボニル構造含有1価有機基、スルホ基、または置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基であり、水素原子、メチル基、エチル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基、ベンジル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2-トリエトキシカルボニル基、2―ニトロベンゼンスルホニル基が好ましい。
置換基としてはR43における置換基と同様の置換基が挙げられる。
【0196】
R63がアルキル基である場合、R63はR43と連結して員数3~6の環を形成してもよい。
【0197】
式(III)において、X31,X32,X33としては、以下の組み合わせが挙げられる。
【0198】
【0199】
合成容易性の観点から、好ましい組み合わせは、(X31,X32,X33)=(CR43,S,S)、(CR43,S,O)、(CR43,O,S)、(CR43,O,O)、(CR43,NR53,S)、(CR43,NR53,O)であり、より好ましい組み合わせは、(X31,X32,X33)=(CR43,S,S)、(CR43,S,O)、(CR43,NR53,S)、(CR43,NR53,O)である。
【0200】
式(III)で表されるスクアリリウム化合物としては、合成容易性に加えて、分子の直線性が高まる観点から、下記式(III-1)で表されるスクアリリウム化合物および下記式(III-2)で表されるスクアリリウム化合物が好ましい。
【0201】
【0202】
R13、R23、R33A、R33B、R43は式(III)におけるR13、R23、R33A、R33B、R43と好ましい態様を含めてそれぞれ同様である。
【0203】
化合物(III-1)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0204】
【0205】
化合物(III-2)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
スクアリリウム化合物(III)は、公知の製造方法または後述する製造方法により合成できる。
【0211】
スクアリリウム化合物(III-1)は、例えば国際公開第2019/230570号に記載の方法により製造できる。
【0212】
スクアリリウム化合物(III)におけるR33がR33Bであるスクアリリウム化合物(III-B)を得る方法をスキーム(F-B)に示す。
【0213】
【0214】
工程A(step(A))はカルボン酸をジアルキルアミンに変換する反応であり、詳細を下記スキームに示す。
下記スキームにおいてHetArはヘテロアリールを意味する。また、azideはジフェニルホスホリルアジドが好ましい。N alkylationは、ハロゲン化アルキルと塩基を用いるSN2反応または、アルデヒドと還元剤を用いる還元的アミノ化反応が好ましい。
【0215】
【0216】
工程B(step(B))はハロゲンを各種置換基に変換する反応であり、クロスカップリング反応、Heck反応、ホルミル化、およびホルミル化により得られるアルデヒドに対するWittig反応、Knevenagel反応、ヘンリー反応、アルキル金属反応剤の求核付加反応等を利用することができるが、これらに限られない。
【0217】
スキーム(F-B)の出発原料(a2-1)は、例えば公知の化合物から下記合成方法により得ることができる。
【0218】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-1):(X31、X32、R)=(-CH、S、-CH2CH3)
化合物(a2-1-2):(X31、X32、R)=(-CH、S、H)
化合物(a2-1-3):(X31、X32、R)=(-CH、O、-CH2CH3)
化合物(a2-1-4):(X31、X32、R)=(-CH、O、H)
【0219】
【0220】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、(X33)、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-5):(X31、X32、R)=(-CH、-NH、-CH2CH3)
化合物(a2-1-6):(X31、X32、R)=(-CH、-NH、H)
化合物(a2-1-7):(X31、X32、X33、R)=(-CH、-NH、-NH、-CH2CH3)
化合物(a2-1-8):(X31、X32、X33、R)=(-CH、-NH、-NH、H)
【0221】
【0222】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-9):(X31、X32、R)=(N、O、-CH2CH3)
化合物(a2-1-10):(X31、X32、R)=(N、O、H)
【0223】
【0224】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-11):(X31、X32、R)=(N、-NH、-CH2CH3)
化合物(a2-1-12):(X31、X32、R)=(N、-NH、H)
【0225】
【0226】
出発原料(a2-1)において、X31、X32、Rが下記である、化合物の合成方法:
化合物(a2-1-13):(X31、X32、R)=(N、S、-CH2CH3)
化合物(a2-1-14):(X31、X32、R)=(N、S、H)
【0227】
【0228】
<スクアリリウム色素(IV)>
【0229】
【0230】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R14およびR24は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、脂環もしくは芳香環を含んでよい、炭素数1~20のアルキル基である。
R34は、不飽和結合を必須としない有機基R34Aまたは不飽和結合を必須とする有機基R34Bである。
X41はCR43またはNである。
X42はS、NR53、またはOである。
X43はS、NR63、またはOである。
R43は水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル構造含有1価有機基、リン酸基、シリル基、チオール基、スルフィド基、アミド構造含有1価有機基、スルホンアミド基、ウレア基、ウレタン構造含有1価有機基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数2~9のアシルオキシ基、または、―N(R43g)2(R43gは水素原子または置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基である。)である。
R44、R54、R64、R74は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または炭素数1~9の1価有機基である。
R14は、R24、R54またはR74と連結して員数3~6の環を形成してもよい。
R24は、R14、R54またはR74と連結して員数3~6の環を形成してもよい。]
【0231】
R14の炭素数としては1~20が挙げられる。R14の炭素数は、直鎖状の場合2~20が好ましく、2~16がより好ましく、2~12がさらに好ましい。R14の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~20が好ましく、3~16がより好ましく、3~12がさらに好ましい。
R24の炭素数としては1~20が挙げられる。R24の炭素数は、配向度の観点から直鎖状の場合1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。R24の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。
【0232】
R14およびR24における置換基としては、スクアリリウム色素(III)におけるR13およびR23における置換基と同様の基が挙げられる。
【0233】
R14およびR24が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0234】
R14およびR24が置換基を有する場合、および主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、上記炭素数に置換基、脂環、芳香環の炭素数は含まれる。
【0235】
R14およびR24は同一であっても異なってもよい。配向度の観点から、鎖状である場合、R14およびR24は異なっていることが好ましい。
【0236】
R14およびR24は、配向度の観点から、直鎖状であることが好ましい。
【0237】
R14およびR24は、例えば、上述のスクアリリウム色素(III)中のR13およびR23における基(1b)~(5b)、基(1c)~(2c)から選ばれる基がさらに好ましい。
【0238】
また、R14およびR24が互いに連結して窒素原子と共に複素環を形成する場合、R14およびR24が結合した2価の基-Q4-としては、上述のスクアリリウム色素(III)中の2価の基-Q3-と同様の基が好ましい。
【0239】
R34は、不飽和結合を必須としない有機基R34Aまたは不飽和結合を必須とする有機基R34Bである。
不飽和結合を必須としない有機基R34Aは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または、置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基もしくはアルアリール基である。
不飽和結合を必須とする有機基R34Bは、置換基を有してもよい炭素数2以上のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2以上のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1以上のイミノ基、シアノ基、カルボニル構造を含み置換基を有してもよい炭素数1以上の有機基、置換基を有してもよい炭素数6~9のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数3~9のヘテロアリール基である。
【0240】
R34Aにおける置換基としては、上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Aにおける置換基と同様の基が挙げられる。
【0241】
R34Aがアルキル基またはアルコキシ基の場合、炭素数は1~8が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。R33Aがアリール基の場合、炭素数は6~9が好ましい。R34Aがアルアリール基の場合、炭素数は7~9が好ましい。
R34Aが置換基を有する場合、R34Aの炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0242】
R34Aは、光安定性と配向度の観点から、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0243】
不飽和結合を必須とする有機基R34Bにおける置換基としては、上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bにおける置換基と同様の基が挙げられる。
R34Bが置換基を有する場合、R34Bの炭素数に置換基の炭素数は含まれる。
【0244】
R34Bがアルケニル基の場合、炭素数は2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。
アルケニル基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-1)で表される基が好ましい。
【0245】
R34Bがアルキニル基の場合、炭素数は2以上であり、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは2~4である。
アルキニル基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-2)で表される基が好ましい。
【0246】
R34Bがイミノ基の場合、炭素数は1以上であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4である。
イミノ基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-3)で表される基が好ましい。
【0247】
R34Bがシアノ基の場合、上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-4)で表される基である。
【0248】
R34Bがカルボニル構造を含み置換基を有してもよい炭素数1以上の有機基の場合、炭素数は1以上であり、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4である。
かかる有機基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-5)で表される基が好ましい。
【0249】
R34Bがアリール基の場合、炭素数は6~9である。
アリール基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-6)で表される基が好ましい。
【0250】
R34Bがヘテロアリール基の場合、炭素数は3~9である。
ヘテロアリール基としては上述のスクアリリウム色素(III)中のR33Bと同様に上述の式(3-7)~(3-9)のいずれかで表される基が好ましい。
【0251】
R44、R54、R64、R74は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、または炭素数1~9の1価有機基である。
【0252】
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
1価有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルアリール基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、イミノ基、シアノ基、カルボニル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0253】
式(IV)において、X41はCR43またはNである。X42はS、NR53、またはOである。X43はS、NR63、またはOである。R43、R53、R63は、上述のスクアリリウム色素(III)中のR43、R53、R63と定義および好ましい態様も含め同様である。
【0254】
化合物(IV)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0255】
【0256】
【0257】
化合物(IV)は、アミノ基にR14とR24が結合した4-アミノベンゼンボロン酸と、X41とX42に挟まれた炭素原子にハロゲン原子が結合した縮環した複素環化合物をカップリング反応で連結したのち、スクアリン酸と反応させることで製造できる。
【0258】
【0259】
<スクアリリウム色素(V)>
【0260】
【0261】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R15およびR25は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子を含んでよい、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数4~20のアルアリール基である。
R35、R45、R55、R65は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数4~9のアリール基または置換基を有してもよい炭素数5~9のアルアリール基である。
R35とR45、R45とR55、および、R55とR65は、それぞれ互いに連結して単環または2~4の環が縮環した多環を形成してもよい。
R15およびR25は、互いに連結して窒素原子とともに員数が4~10の複素環を形成してもよい。]
【0262】
R35、R45、R55、R65は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよい炭素数1~9のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数4~9のアリール基または置換基を有してもよい炭素数5~9のアルアリール基である。
【0263】
R35、R45、R55、R65において、アルキル基、アリール基またはアルアリール基は、置換基を有してもよい。
また、アルキル基、アリール基またはアルアリール基は、炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよい。
さらに、アルキル基、アリール基またはアルアリール基は、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよい。
【0264】
R35、R45、R55、R65における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~8のアルコキシ基が挙げられる。R35、R45、R55、R65がアリール基またはアルアリール基の場合、置換基は、芳香環に結合する水素原子またはこれらが有するアルキル基の水素原子を置換する基であり、上記置換基の他にさらにアリール基を含む。
【0265】
R35、R45、R55、R65がアルキル基の場合、炭素数は1~8であり、1~4が好ましく、1~2がよりに好ましい。
R35、R45、R55、R65がアリール基の場合、炭素数は4~9であり、4~6が好ましい。
R35、R45、R55、R65がアルアリール基の場合、炭素数は5~9であり、5~7が好ましい。
【0266】
R35、R45、R55、R65が置換基を有する場合、上記炭素数には置換基の炭素数が含まれる。
【0267】
R35とR45、R45とR55、および、R55とR65は、それぞれ互いに連結して単環または2~4の環が縮環した多環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【0268】
R35とR45、および、R55とR65が連結して形成される環は脂環であっても芳香環であってもよく、炭化水素環であっても複素環であってもよい。好ましくは芳香環である。単環としては、ベンゼン環が挙げられ、多環としてはナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環等が挙げられる。
【0269】
R45とR55が連結した場合、色素(V)は、2個のチオフェン環の間に環が形成されて少なくとも3つの環が縮環した構造を含む。
【0270】
R35とR45、R45とR55、および、R55とR65が連結して形成される環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
これらの連結環における置換基としては、R35、R45、R55、R65における置換基と同様の基、および、置換基を有してもよいフェニル基が挙げられる。
【0271】
R15およびR25は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数4~20のアルアリール基である。
【0272】
R15およびR25は、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子を含んでよい。
R15およびR25における置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
なお、R1およびR2が置換基を有する場合、置換基の炭素数はR1およびR2の炭素数に含まれる。
【0273】
R15およびR25における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0274】
R15およびR25が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0275】
R15およびR25における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0276】
R15およびR25がアルキル基の場合、可視光透過性や、二色比を向上させる観点から、炭素-炭素原子間にヘテロ原子を含んでよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であることが好ましい。
R15の炭素数は、直鎖状の場合、2~20が好ましく、2~16がより好ましく、2~12がさらに好ましい。また、R15の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~20が好ましく、3~16がより好ましく、3~12がさらに好ましい。さらに、R15の炭素数は、環状の場合、5~10が好ましい。
R25の炭素数は、配向度の観点から直鎖状の場合1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。また、R25の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。さらに、R25の炭素数は、環状の場合、3~7が好ましい。
R15およびR25が置換基を有する場合、上記炭素数には置換基の炭素数が含まれる。
【0277】
R15およびR25は同一であっても異なってもよい。配向度の観点から、鎖状である場合、R15およびR25は異なっていることが好ましい。
【0278】
R15は、例えば、基(1a)~(16a)から選ばれる基がさらに好ましく、配向度の観点から、基(6a)、(16a)が特に好ましい。
R25は、配向度の観点から、炭素数1~4の直鎖アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0279】
【0280】
R15およびR25は、互いに連結して窒素原子とともに員数が4~10の複素環を形成してもよく、スクアリリウム色素が直線状となりやすい観点、すなわち二色性を発現しやすい観点から、員数は4~6が特に好ましい。かかる複素環において、窒素原子から最も遠い炭素原子に結合する水素原子の一つが、炭素原子間に不飽和結合またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~12、好ましくは1~8、さらに好ましくは3~8のアルキル基に置換されていてもよい。アルキル基は分岐状でも直鎖状でも環状でもよいが、スクアリリウム色素が二色性を発現しやすい観点から、直鎖状が好ましい。また、かかる複素環における水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていてもよく、その場合、窒素原子と隣接しない炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0281】
R15およびR25が結合した2価の基を-Q5-で示した場合、-Q5-として具体的には以下の基(11)~(15)が挙げられる。
【0282】
-(CH2)4- (11)
-(CH2)5- (12)
-C(CH3)2(CH2)2C(CH3)2- (13)
-C(CH3)2(CH2)3C(CH3)2- (14)
-CH2-CH(nC8H17)-(CH2)2- (15)
【0283】
スクアリリウム化合物(V)としては、例えば、以下の式(V-1)で示される化合物または、式(V-2)で示される化合物が好ましい。スクアリリウム化合物(V-1)は、スクアリリウム化合物(V)において、R45とR55が連結してシクロペンタジチオフェン環を形成してなる化合物である。スクアリリウム化合物(V-2)は、スクアリリウム化合物(V)において、R45とR55が連結せず、2個のチオフェン環が結合した構造を含む化合物である。
【0284】
【0285】
R15、R25、R35およびR65の定義は、式(V)におけるR15、R25、R35およびR65の定義と好ましい態様も含めて同様である。
R45bおよびR55bの定義は、互いに連結して環を形成しない点を除き、式(V)におけるR45およびR55の定義と好ましい態様も含めて同様である。
【0286】
R45aおよびR55aは、可視光透過性や、耐光性や、二色比向上の観点からは、水素原子あるいは炭素-炭素原子間に酸素原子を含んでよい炭素数1~9の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、直鎖状の場合、1~9が好ましく、1~4がより好ましい。分岐鎖状の場合、3~9が好ましく、環状の場合、5~9がより好ましい。R45aおよびR55aは、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基などが好ましい。
【0287】
R45aおよびR55aは、耐熱性や、耐光性や、近赤外吸収波長の制御の観点からは、置換基を有してもよいフェニル基または、炭素数5~9の環状アルキル基が好ましい。フェニル基の置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~3のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~3)が挙げられ、特に、メチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。フェニル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましい。
【0288】
置換基を有してもよいフェニル基として、具体的には、基(P1)~(P6)が挙げられる。
【0289】
【0290】
化合物(V-1)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0291】
【0292】
【0293】
【0294】
【0295】
化合物(V-1)としては、これらの中でも、二色比向上の点から、化合物(V-1-51)、(V-1-67)等が好ましい。
【0296】
化合物(V-2)としては、より具体的には以下の表に示す化合物が挙げられる。また、以下の表に示す化合物は、スクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。
【0297】
【0298】
【0299】
【0300】
化合物(V-2)としては、これらの中でも、二色比向上の点から、化合物(V-2-31)、(V-2-41)等が好ましい。
【0301】
化合物(V)は公知の方法で製造でき、例えば、国際公開第2019/230660号に記載されたで製造可能である。
【0302】
<スクアリリウム色素(VI)>
【0303】
【0304】
[上記式中の記号は以下のとおりである。
R16およびR26は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、脂環もしくは芳香環を含んでよい、炭素数1~20のアルキル基である。
R36は、非共有電子対を有する原子を含む炭素数9以下の1価有機基である。
R46は、水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である。
R56は、水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である。
X61は、C=O、C=S、またはSO2である。
R16とR26、R16とR46、R36とR46は、互いに連結して員数3~6の環を形成してもよい。]
【0305】
R16およびR26における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~19のアルコキシ基が挙げられる。
【0306】
R16およびR26における置換基としては、さらに、環状のアルキル基またはアリール基が挙げられる。アリール基としては、置換基を有してもよいフェニル基または、置換基を有してもよいナフチル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の水素原子を置換してもよい置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~9のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~9)が挙げられる。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましく、置換基としては、メチル基、t-ブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。
【0307】
R16およびR26における置換基は、さらに、重合性液晶化合物と共重合させるための重合性基であってもよい。
【0308】
R16およびR26が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、耐熱性や、近赤外吸収波長の制御の点で好ましい。R16およびR26が、主鎖または側鎖に脂環または芳香環を有しない場合、耐光性や、製造容易性や、二色比向上の点で好ましい。脂環の炭素数としては3~10が好ましい。芳香環の炭素数は4~14が好ましい。
【0309】
R16の炭素数としては1~20が挙げられる。R16の炭素数は、直鎖状の場合2~20が好ましく、2~16がより好ましく、2~12がさらに好ましい。R16の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~20が好ましく、3~16がより好ましく、3~12がさらに好ましい。
R26の炭素数としては1~20が挙げられる。R26の炭素数は、配向度の観点から直鎖状の場合1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。R26の炭素数は、分岐鎖状の場合、3~10が好ましく、3~6がより好ましい。
【0310】
R16およびR26が置換基を有する場合、および主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、上記炭素数に置換基、脂環、芳香環の炭素数は含まれる。
【0311】
R16およびR26は同一であっても異なってもよい。配向度の観点から、鎖状である場合、R13およびR23は異なっていることが好ましい。また、R16およびR26は、配向度の観点からは、分岐鎖状より直鎖状が好ましい。
【0312】
R16およびR26が分岐鎖状の場合、分岐の数は特に制限されない。分岐の数は1~5が好ましく、1~3がより好ましい。液晶および溶媒への溶解性および製造容易性の両観点から、分岐の位置は、β位が好ましい。また、一つの炭素原子から2つに分岐していてもよく3つに分岐していてもよい。
【0313】
R16およびR26は、例えば、スクアリリウム色素(III)におけるR13およびR23のさらに好ましい態様として記載した基(1b)~(5b)、(1c)、(2c)から選ばれる基がさらに好ましい。
-CH(CnH2n+1)2 …(1b)
-C(CnH2n+1)3 …(1c)
-CH2-CH(CnH2n+1)2 …(2b)
-CH2-C(CnH2n+1)3 …(2c)
-(CH2)2-CH(CnH2n+1)2 …(3b)
-(CH2)3-CH(CnH2n+1)2 …(4b)
-(CH2)m-CH3 …(5b)
【0314】
ただし、式(1b)~(4b)、(1c)、(2c)においてnは1~10の整数であり、2~8が好ましく、2~4がより好ましい。ただし、基(1b)~(4b)、基(1c)~(2c)の炭素数は1~20の範囲内とする。式(1b)~(4b)、(1c)、(2c)における2個のCnH2n+1、式(1c)~(2c)における3個のCnH2n+1は、それぞれ直鎖であっても分岐鎖であってもよく、同一であっても異なってもよい。式(5b)においてmは0~19の整数であり、0~15が好ましく、0~11がより好ましい。さらに、基(1b)~(5b)、(1c)、(2c)は炭素-炭素原子間にヘテロ原子を有してもよい。
【0315】
R36は、非共有電子対を有する原子を含む炭素数9以下の1価有機基である。スクアリリウム骨格に最も近い炭素原子に非共有電子対を有する基が結合することで、不飽和炭素環の電子密度が高まり、色素の生成(スクアリン酸との反応)において非共有電子対を有する原子が必要となる。かかる観点から、R36における非共有電子対を有する原子は、R36が結合する不飽和炭素環の炭素原子と直接結合することが好ましい。
非共有電子対を有する原子は、N、SまたはOであることが好ましい。
【0316】
R36としては、NH-Y36a-R36a、SH、またはOHが好ましい。
NH-Y36a-R36aにおいて、Y36aは単結合または炭素数0~3の2価有機基であり、好ましくは-CO-、―COO-、-CONH-、-SO2-である。
R36としては、NH―R36a、NH―CO-R36a、NH―COO-R36a、NH-CONH-R36a、NH-SO2-R36a、SH、またはOHが好ましい。
【0317】
NH-Y36a-R36aにおいて、R36aは置換基を有してもよく、炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、脂環もしくは芳香環を含んでもよい、炭素数1~9のアルキル基である。なお、Y36aとR36aの合計炭素数の上限は9である。
【0318】
R36aの炭素数としては、直鎖状の場合、1~9が好ましく、1~4がより好ましく、1~2が特に好ましく、また、分岐鎖状の場合、3~9が好ましく、3~4が特に好ましい。
【0319】
R36aにおける置換基としては、R16およびR26における置換基と同様の基が挙げられる。
R36aが置換基を有する場合、および主鎖または側鎖に脂環または芳香環を含む場合、上記炭素数に置換基、脂環、芳香環の炭素数は含まれる。
【0320】
R36aは二色比向上の観点からは、直鎖状であるのが好ましい。
【0321】
R36aとしては、基(11b)~(15b)、(11c)、(12c)から選ばれる基がさらに好ましい。
-CH(CnH2n+1)2 …(11b)
-C(ClH2l+1)3 …(11c)
-CH2-CH(CnH2n+1)2 …(12b)
-CH2-C(ClH2l+1)3 …(12c)
-(CH2)2-CH(CnH2n+1)2 …(13b)
-(CH2)3-CH(CnH2n+1)2 …(14b)
-(CH2)m-CH3 …(15b)
【0322】
ただし、式(11b)~(14b)においてnは1~3の整数であり、2~3が好ましい。式(11c)、(12c)においてlは1~2の整数である。式(11b)~(14b)、(11c)、(12c)における2個のCnH2n+1または3個のClH2l+1は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、同一であっても異なってもよい。式(15b)においてmは0~8の整数であり、0~8が好ましく、0~3がより好ましく、0~1がさらに好ましい。さらに、基(11b)~(15b)、(11c)、(12c)は炭素-炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0323】
R46は、水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である。
【0324】
アルキル基の炭素数としては、1~8が好ましく、1~4がより好ましい。
アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、二色比向上の観点からは、直鎖状であるのが好ましい。
【0325】
R46が炭素数1~9のアルキル基である場合、R36aにおいて好ましい態様として記載した、基(11b)~(15b)、(11c)、(12c)から選ばれる基がさらに好ましい。
【0326】
立体障害の観点から、R46は水素原子が好ましい。
【0327】
R56は、水素原子、または炭素数1~9のアルキル基である。
立体障害の観点から、R56は水素原子が好ましい。
【0328】
R16とR26、R16とR46、R36とR46は、互いに連結して環を形成してもよい。
環としてはR16とR26、R16とR46は員数3~6の脂環、R36とR46は員数3~6の脂環または芳香環が好ましい。また、該環は置換基を有していてもよい。置換基としてはR16およびR26における置換基と同様の基が挙げられる。
【0329】
X61は、C=O、C=S、またはSO2である。
【0330】
スクアリリウム化合物(VI)としては、下記式(VI-1)で表されるスクアリリウム化合物が好ましい。
【0331】
【0332】
R16~R46は式(VI)におけるR16~R46と好ましい態様を含めて同様である。
【0333】
スクアリリウム化合物(VI)としては、R36がNH-CO-R36aである、下記スクアリリウム化合物(VI-11)、R36がNH-SO2-R36aである、下記スクアリリウム化合物(VI-12)、R36がNH-CONH-R36aである、下記スクアリリウム化合物(VI-13)、R36がNH-COO-R36aである、下記スクアリリウム化合物(VI-14)、R36がOHである、下記スクアリリウム化合物(VI-15)が好ましい。
【0334】
【0335】
【0336】
スクアリリウム化合物(VI-11)~(VI-15)としては、より具体的には、R16、R26、R36a、R46が、以下の表に示される化合物(表には、そのスクアリリウム化合物(VI-11)~(VI-15)としての略号を併せて示す。)が挙げられる。表中において、R16、R26、R36a、R46は、式が示された基である場合、式の記号を示す。表中に示す全ての化合物において、R16、R26、R36a、R46は式の左右で全て同一である。
【0337】
【0338】
【0339】
【0340】
【0341】
<化合物(VI)の製造方法>
スクアリリウム化合物(VI)の製造方法について、スクアリリウム化合物(VI-11)の製造方法を用いて説明するが、スクアリリウム化合物(VI)の製造方法はこれらに限定されない。
スクアリリウム化合物(VI-11)を得る方法をスキーム(F-A11)に示す。
【0342】
【0343】
(1)公知化合物である出発原料(pA11-1)に対し、ジイソプロピルエチルアミン(CH3CH2N(CH(CH3)2)2)と無水酢酸を反応させ、アミノ基を保護した化合物(pA11-2)を得る。
(2)ニトロ化反応により化合物(pA11-3)を得る。
(3)アミノ基の脱保護により化合物(pA11-4)を得る。
(4)N alkylation(ハロゲン化アルキルと塩基を用いるSN2反応または、アルデヒドと還元剤を用いる還元的アミノ化反応)により化合物(pA11-5)を得る。
(5)ニトロ基の還元により化合物(pA11-6)を得る。
(6)化合物(pA11-6)とアルカノイルクロライド(R36a-C(=O)-Cl)とを反応させることにより化合物(pA11-7)を得る。
(7)メトキシ基の脱保護により化合物(pA11-8)を得る。
(8)化合物(pA11-8)とスクアリン酸とを反応させることにより化合物(VI-11)を得る。
【0344】
スクアリリウム化合物(VI-12)は、上記工程(6)におけるアルカノイルクロライド(R36a-C(=O)-Cl)を、R36aSO2Clに変更することで製造できる。
スクアリリウム化合物(VI-13)は、上記工程(6)においてカルボニルジイミダゾールを反応させた後にR36aNH2を反応させることで製造できる。
スクアリリウム化合物(VI-14)は、上記工程(6)におけるアルカノイルクロライド(R36a-C(=O)-Cl)を、R36aO-C(=O)-Clに変更することで製造できる。
【0345】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶組成物において、二色性色素は、吸収軸に平行な偏光に対して十分な吸光度を確保する観点から、液晶化合物100gあたり、0.02mmol以上、より好ましくは0.05mmol以上となる割合で含有させることが好ましい。また、吸収軸に垂直な偏光に対しての透過率を確保し、かつ液晶化合物に対する溶解性を保つ観点から、液晶化合物100gに対して10mmol以下、より好ましくは7mmol以下となる割合で含有させることが好ましい。なお、二色性色素は二種以上を組み合わせて用いてもよく、その場合、合計含有量を上記範囲内とする。ここでは液晶化合物100gあたりの二色性色素の割合を示したが、偏光子に用いる液晶化合物の量は100gに限定されず、任意の量を用いることができる。
【0346】
C-2-2.液晶組成物
本発明の偏光子構築体を構成する液晶組成物は、液晶化合物を含む。液晶化合物の種類としては、ネマチック液晶相を示す非重合性液晶化合物、ネマチック液晶相を示す重合性液晶化合物、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物等が挙げられ、スメチック液晶相を示す重合性液晶化合物が好ましい。
【0347】
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ液晶性を示す化合物である。重合性基は、重合性液晶化合物の重合反応に関与する基を意味する。スメクチック液晶相は、棒状分子の長軸が平行に配列して層を形成している液晶であり、棒状分子の長軸が一定の方向に配向しているが層を形成しておらず分子重心位置に規則性がないネマチック液晶よりも、規則性が高い。重合性液晶化合物が示す液晶相がスメクチック液晶相であると、より配向秩序度の高い光吸収異方性材料が得られる。
【0348】
スメクチック液晶相としては、スメクチック液晶A相、スメクチック液晶B相、スメクチック液晶D相、スメクチック液晶E相、スメクチック液晶F相、スメクチック液晶G相、スメクチック液晶H相、スメクチック液晶I相、スメクチック液晶J相及びスメクチック液晶K相、ならびに、これらから選ばれるスメクチック液晶相が傾斜したものが挙げられる。中でも、スメクチック液晶B相、スメクチック液晶F相、スメクチック液晶I相、傾斜したスメクチック液晶F相及び傾斜したスメクチック液晶I相が好ましく、スメクチック液晶B相がより好ましい。
【0349】
重合性液晶化合物は一以上の重合性基を含み、重合性基としては特に限定はされないが光重合性基であることが好ましい。例としては、CH2=CH-、CH2=CCl-、CH2=C(CH3)-、又は4-ビニルフェニリルなどを含み、好適な例としては、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、オキセタン、エポキシ、又は、チオレンなどが挙げられる。
【0350】
液晶化合物は、Lub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328 (1996)、特許第4719156号公報等の公知文献に記載される公知の製法により合成してもよく、また、市販品を用いてもよい。
【0351】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶組成物における液晶化合物の含有量は、組成物の固形分に対して、70~99.9質量%の範囲が好ましく、90~99.9質量%の範囲がより好ましい。上記範囲内であれば、液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは、組成物から溶剤を除いた成分の合計量のことをいう。液晶化合物は、単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0352】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶化合物が重合性液晶化合物である場合、液晶組成物はさらに重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合を開始する化合物であり、光及び/又は熱の作用により活性ラジカルや酸を発生する。中でも、液晶性を保持したまま硬化させやすい点から、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生する重合開始剤(すなわち光重合開始剤)であることが好ましく、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤がより好ましい。光重合に用いる光は、紫外線または可視光線が好ましい。
【0353】
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、アシルホスフィンオキシド類、およびチオキサントン類などから適宜選択される光重合開始剤が好ましく用いられる。光重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。また、市販の光重合開始剤を用いることができる。
【0354】
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化水素、過硫酸塩、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等が挙げられる。また、市販の熱重合開始剤を用いることができる。
【0355】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶組成物における重合開始剤の含有量は、好ましくは重合性液晶化合物100質量部に対して0.01~10質量部、より好ましくは0.05~7質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物を、その配向を乱すことなく重合させることができる。
【0356】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶化合物が重合性液晶化合物である場合、液晶組成物はさらに酸化防止剤を含むことが好ましい。本発明の組成物が酸化防止剤を含むことにより、重合性液晶化合物の重合を制御することができ、本発明の重合性液晶組成物の安定性を向上させることができる。
【0357】
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えばブチルカテコール等)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β-ナフチルアミン類、およびβ-ナフトール類等が挙げられる。
【0358】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶組成物における酸化防止剤の含有量は、好ましくは重合性液晶化合物100質量部に対して0.01~3質量部、より好ましくは0.05~2質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を制御できる。
【0359】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶組成物は、さらにレベリング剤を含有してもよい。レベリング剤とは、液晶組成物の流動性を調整し、塗布した膜を平坦にする機能を有するものである。液晶組成物から塗布膜を形成する場合は、レベリング剤を含有することで平坦な膜が得られるため好ましい。レベリング剤としては、界面活性剤等が好ましく用いられる。
【0360】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶組成物におけるレベリング剤の含有量は、好ましくは液晶化合物に対して0.3質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。上記範囲内であれば、平坦な塗布膜が得られやすい。
【0361】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶組成物は、さらに溶剤を含有してもよい。液晶組成物から塗布膜を形成する場合は、溶剤を含有することで均一な膜が得られるため好ましい。溶剤としては、液晶化合物や二色性色素等の成分を溶解でき、また、液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤が好ましい。
【0362】
溶剤としては例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン又はプロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルなどのエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンなどのエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼンなどの塩素含有溶剤;などが挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0363】
本発明の偏光子構築体を構成する液晶組成物が溶剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、組成物における固形分濃度が2~50質量%であることが好ましい。上記範囲であれば、組成物から得られる膜の厚みが二色性を示すのに十分であり、また、塗布時に均一な膜が得られるため好ましい。
【0364】
C-2-3.吸収型偏光子の製造
本発明の偏光子構築体を構成する吸収型偏光子は、前記液晶組成物からなる吸収異方性材料を含む。液晶組成物に含まれる液晶化合物が配向し、その配向に伴って二色性色素が配向することで、液晶組成物は吸収異方性材料として機能する。
【0365】
液晶組成物が重合性液晶組成物である場合には、重合性液晶組成物の重合体とすることが好ましく、重合方法は特に限定されないが、液晶組成物がスメクチック相を示す重合性液晶化合物である場合には、重合性液晶組成物がスメクチック液晶相を示す状態で、且つ、液晶が配向した状態で重合することが好ましい。
【0366】
重合性液晶組成物がスメクチック液晶相を示す状態を作るためには、雰囲気温度を該重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下とすればよい。この際、該重合性液晶化合物がネマチック液晶相を示す温度以上に重合性液晶組成物を加熱しネマチック液晶相を形成させた後、該重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下まで冷却することにより、スメクチック液晶相を形成するのが好ましい。さらに、ネマチック液晶相を形成させる際、該重合性液晶化合物が等方相を示す温度以上に重合性液晶組成物を加熱し等方相を形成させた後、該重合性液晶化合物がネマチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下まで冷却することにより、ネマチック液晶相を形成させてもよい。これらの操作により、より均質な配向を作ることができる。
【0367】
なお、ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相の確認は例えば、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折測定又は示差走査熱量測定により行うことができる。
【0368】
吸収型偏光子の作製は、次のようにして行うことができる。
まず、基板の表面に配向処理を施す。基板の表面に配向処理を施す方法としては、例えば、基板の上に配向膜を形成し、配向膜に対して配向処理を行うことが挙げられる。基板としては、ガラスまたは透明樹脂からなる基板が挙げられる。基板の厚みは、通常、0.2~1.5mmが好ましい。配向膜は、液晶を配向させる機能を有するものであればよく、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルシンナメートおよびポリスチレンなどの有機材料、または、SiO2およびAl2O3などの無機材料を用いることができる。配向処理は、具体的には、ラビング法などを用いて行うことができる。例えば、ナイロンやレーヨンなどのラビング布で、配向膜の表面を一方向に擦ることによって、その方向に液晶化合物が配向するようにする。また、ラビング法以外にも、SiO2の斜め蒸着、イオンビーム法によって、液晶化合物の配向を揃えることもできる。または配向膜として光配向膜を用いることもできる。
【0369】
次に、配向膜の上に光吸収異方性材料を形成する。上記の基板(以下、第1の基板と称す。)とは別に、表面に配向膜が形成された第2の基板を新たに準備する。この配向膜については、第1の基板と同様にして形成すればよい。次いで、必要に応じて第2の基板の配向膜が形成された側の表面に離型処理を行う。離型剤としては、例えば、フルオロシラン系または含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体などを使用することができる。次に、この第2の基板に第1の基板を重ね合わせて間隔をおいて仮接着する。このとき、第2の基板の配向膜が形成された面または離型処理された面と、第1の基板の配向膜が形成された面とが互いに内側を向くようにする。また、外部から液晶組成物を充填可能な開口部を設けておく。次いで、この開口部を通じて、基板間に液晶組成物を注入する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよく、この際に液晶組成物を加熱により融解させて注入してもよい。次いで、液晶組成物が重合性液晶組成物であれば、重合性液晶組成物を重合させる。重合性液晶組成物の重合性基が光重合性基であれば、所定の波長の光を照射して光重合を行い、重合性基が熱重合性基であれば、加熱して熱重合を行う。重合性液晶組成物がスメチック相を示す重合性液晶組成物である場合には、重合性液晶組成物を重合させる前に、雰囲気温度を該重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下とすることで、重合性液晶組成物がスメクチック液晶相を示す状態とする。この時、重合性液晶化合物がネマチック相を示す温度範囲内、もしくは等方相を示す温度範囲内まで重合性液晶組成物を加熱し、重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下まで冷却することによりスメクチック液晶相を示す状態とするのが好ましい。その後、必要に応じて仮接着していた第2の基板を取り除いてもよい。本発明の実施の形態では、液晶組成物は、第1の基板の表面と略平行な方向に配向し、液晶偏光子は、この配向が固定された状態で得られる。
【0370】
また、吸収型偏光子の作製は、次のようにして行うこともできる。
まず、配向膜が形成された第1の基板と、配向膜が形成された表面上に必要に応じて離型剤が施された第2の基板とを準備する。次いで、第1の基板に形成された配向膜の上に、光硬化性の液晶組成物を滴下する。その後、第2の基板を、配向膜が形成された面または離型剤の塗布面が液晶組成物の側になるようにして、第1の基板と重ね合わせる。次いで、液晶組成物が重合性液晶組成物であれば、重合性液晶組成物を重合させる。重合性液晶組成物がスメチック相を示す重合性液晶組成物である場合には、重合性液晶組成物がスメクチック液晶相を示す状態で重合させる。その後、必要に応じて第2の基板を除去すると、上記と同様に、2枚の基板間または第1の基板の上に、配向膜と光吸収異方性材料とが形成された構造を得ることができる。
【0371】
また、吸収型偏光子の作製は、次のようにして行うこともできる。
まず、表面に配向処理を施した基板表面に液晶組成物を塗布する。得られた塗布膜は、液晶組成物が重合性液晶組成物であれば、液晶相が形成された膜に転換させた状態で重合する。この場合、塗布のハンドリングを良好とする観点から、塗布時において液晶組成物は溶剤を含むことが好ましい。また、基板上への塗布方法としては、スピンコート、ダイコート、ディップコート、バーコート等の方法が挙げられる。基板への塗布後は、成膜性の観点から溶剤等の揮発性成分を乾燥により除去することが好ましい。重合性液晶組成物がスメチック相を示す重合性液晶組成物である場合には、塗布膜を重合性液晶化合物がネマチック相を示す温度範囲内、もしくは等方相を示す温度範囲内まで重合性液晶組成物を加熱し、重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度範囲内、またはそれ以下まで冷却することで、スメクチック液晶相が形成された膜に転換させる。
【0372】
ところで、本発明の偏光子構築体を構成する吸収型偏光子として、近赤外吸収色素である二色性色素と、可視光吸収色素である二色性色素と、液晶化合物とを含む液晶組成物を含むものがある。可視光吸収色素は300~700nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましく、該可視光吸収色素としては、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素等が挙げられる。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素およびトリスアゾ色素が好ましい。前記液晶偏光子は、2種以上の可視光吸収色素を含んでもよく、互いに異なる極大吸収波長を有する可視光吸収色素を2種以上含有することで、可視領域から近赤外領域までの、広い領域で偏光子機能を持つ偏光子を作製することができる。
【0373】
また、本発明の偏光子構築体を構成する吸収型偏光子とは別に、近赤外吸収色素と、可視光吸収色素である二色性色素と、液晶化合物とを含む液晶組成物を用いた偏光子で、該近赤外吸収色素として、分子の直線性が低く液晶組成物中で一方向に配向しない色素を用いたものがある。前記偏光子は、可視領域では偏光子機能を持ち、近赤外光は偏光方向に関わらず吸収する。
【0374】
本発明の偏光子構築体を構成する吸収型偏光子の代わりに、二色性色素と樹脂フィルムとを有する吸収型偏光子を用いた偏光子構築体も考えられる。前記二色性色素は700nm以上に最大吸収波長を有する近赤外吸収色素である。
【0375】
樹脂フィルムとしては、親水性高分子や、熱可塑性高分子を用いたフィルムが挙げられる。親水性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好適に用いられる。熱可塑性高分子としては、通常、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0376】
樹脂フィルムを用いた偏光子は、二色性色素を含有した樹脂フィルムを一軸延伸することによって、二色性色素を配向させて作製される。樹脂フィルムに親水性高分子を用いる場合、二色性色素を含有する水溶液に樹脂フィルムを浸漬することで、二色性色素を樹脂フィルムに含有させることができる。また、あらかじめ二色性色素を含有した樹脂からフィルムを形成することによっても、二色性色素を含有した樹脂フィルムを作製することができ、この方法は親水性高分子を用いたフィルムにも、熱可塑性高分子を用いたフィルムにも適用できる。
【0377】
D.光学デバイス
本発明の偏光子構築体は、以下に記載する種々の光学デバイスに搭載可能である。
【0378】
D-1.撮像装置
本発明の撮像装置は、例えば、固体撮像素子と、撮像レンズと、上記本発明の偏光子構築体とを備える。これにより色再現性の高い良好な画像を得られる。
【0379】
D-2.光波測距装置
本発明の光波測距装置は、例えば、レーザーダイオードと、ビームスプリッターやMEMSミラー等の走査部と、フォトダイオードと、上記本発明の偏光子構築体とを備える。これによりレーザーダイオードへの戻り光雑音や光波測距装置内の迷光を抑制し、検出精度が向上し、誤検出を減少できる。
【0380】
D-3.仮想現実装置
本発明の仮想現実装置は、例えば、LCD、OLED、μLED等のディスプレイユニットと、レンズユニットと、ディスプレイユニットとレンズユニットの間に本発明の偏光子構築体と、ユーザーの眼を撮影可能な近赤外照明を搭載したカメラとを備える。
上記構成により仮想現実装置内の近赤外光の迷光を抑制し、視線追跡精度が向上し、誤検出を減少できる。
【0381】
D-4.日射制御部材
本発明の日射制御部材は、例えば、本発明の偏光子構築体を備える。これにより可視光の透過率を損なうことなく、近赤外光の透過、吸収を切り替えることができる。
【0382】
上記の通り、本明細書は下記の偏光子構築体等を開示する。
〔1〕吸収型偏光子と反射型偏光子を含む偏光子構築体であって、
前記吸収型偏光子側から前記偏光子構築体に入射する、前記吸収型偏光子の透過軸に対して平行に偏光した近赤外光が、前記反射型偏光子を透過するように、前記吸収型偏光子と前記反射型偏光子とが配置され、
前記吸収型偏光子が二色性色素と液晶化合物とを含む液晶組成物を含み、
前記二色性色素が、700nm以上に最大吸収波長を有する近赤外吸収色素である、偏光子構築体。
〔2〕前記近赤外吸収色素がスクアリリウム色素である、〔1〕に記載の偏光子構築体。
〔3〕前記スクアリリウム色素が、下記式(X)で表される化合物である、〔2〕に記載の偏光子構築体。
【0383】
【0384】
[前記式(X)中の記号は以下のとおりである。
Arは炭素数5~14の芳香族性を有する単環、縮環または連結環である。Arは置換基を有してもよい。
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、または、置換基を有してもよく、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子もしくは環構造を含んでよい炭素数1~20の1価炭化水素基を示す。
R1とR2、R1およびR2の少なくとも一方とArを構成する炭素原子は、互いに連結して窒素原子と共に員数が3から10の複素環を形成してもよい。]
〔4〕前記反射型偏光子と前記吸収型偏光子との間に接着層を有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の偏光子構築体。
〔5〕前記反射型偏光子は反射型直線偏光子である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の偏光子構築体。
〔6〕前記反射型偏光子は反射型円偏光子であり、前記反射型偏光子と前記吸収型偏光子との間に1/4波長板を有する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の偏光子構築体。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の偏光子構築体を備えた撮像装置、光波測距装置、仮想現実装置、または日射制御部材。
【実施例0385】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0386】
各例で用いた色素は下記のとおりである。
<近赤外吸収二色性色素>
化合物1:ピロリドンとTMS-Clを反応させてN-TMSピロリドンとし、これにLDAを作用させヨウ化n-オクタンを反応させ、水を加えることで5-オクチルピロリドンとし、LiAlH4で還元することで、対応するアミン(3-オクチルピロリジン)を合成し、その他は国際公開第2017/135359号に基づき合成した。
化合物2:ケトンとしてアセトン、アミンとして3-オクチルピロリジンを用いた以外は国際公開第2019/230660号に基づき合成した。
【0387】
液晶化合物としては、スメクチック液晶B相を示す下記重合性スメクチック液晶化合物を用いた。液晶化合物はLub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328 (1996)、特許第4719156号公報等の公知文献に記載の方法により合成した。
【0388】
【0389】
光重合開始剤として、BASF社製、Irgacure369Eを用いた。
酸化防止剤として、BASF社製、Irganox1010を用いた。
【0390】
<吸収型偏光子の製造>
(例1)
上記液晶化合物100質量部に対して、上記重合開始剤0.2質量部と、酸化防止剤0.4質量部と、化合物1のスクアリリウム色素をジクロロメタンに溶解し、乾燥してジクロロメタンを除去することで例1の重合性液晶組成物を得た。前記スクアリリウム色素は、前記液晶化合物100gあたり、0.3mmolとなる割合で用いた。
イーエッチシー社製の5μmのギャップが保たれた配向セルを120℃に加熱し、得られた重合性液晶組成物をセル内に注入し、140℃で2分間加熱した後、室温(25℃)まで放冷し、スメクチックB相を形成させた。
波長365nmのUV光を、50mW/cm2×30秒の条件で照射し、組成物を重合させることで吸収型偏光子を得た。
【0391】
【0392】
(例2)
スクアリリウム色素として化合物1の代わりに化合物2を用いた以外は、例1と同様に重合性液晶組成物を調製し、組成物を重合させることで吸収型偏光子を得た。
【0393】
【0394】
<反射型偏光子>
(例3)
反射型偏光子として、ソーラボジャパン株式会社製のWP25-VIS(ワイヤグリッド偏光子)を用いた。
【0395】
<吸収型偏光子と反射型偏光子の組み合わせ>
(例4)
例1で作製した吸収型偏光子と、例3の反射型偏光子を、UV硬化型接着剤を用いて貼り合わせることで偏光子構築体を得た。このとき、反射型偏光子の透過軸と、吸収型偏光子の透過軸とが平行になるように貼り合わせた。
【0396】
(例5)
例2で作製した吸収型偏光子と、例3の反射型偏光子を、UV硬化型接着剤を用いて貼り合わせることで偏光子構築体を得た。このとき、反射型偏光子の透過軸と、吸収型偏光子の透過軸とが平行になるように貼り合わせた。
【0397】
<評価>
例1~例5で得られた各種偏光子および偏光子構築体のそれぞれについて、透過軸と平行な偏光および垂直な偏光を各々照射し、それぞれの吸収スペクトル(A||およびA⊥)を可視吸収スペクトル計(島津製作所製、SolidSpec-3700DUV)にて測定することで最大吸収波長、最大吸収波長における透過軸の内部透過率、最大吸収波長における反射軸または吸収軸の反射率、および最大吸収波長における消光比を測定した。
【0398】
上記各偏光子および偏光子構築体における最大吸収波長、最大吸収波長における透過軸の内部透過率、最大吸収波長における反射軸の反射率、および最大吸収波長における消光比を下記表に示す。
なお、例4、例5が実施例であり、例1~例3が参考例である。
【0399】
【0400】
上記結果より、実施例の偏光子構築体はいずれも、優れた消光比および内部透過率および反射率を示した。
本発明の偏光子構築体は、近赤外領域で、消光比と高透過性と低反射性に優れることから、例えば、輸送機用のカメラやセンサー等の情報取得装置等の用途に有用である。