IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧 ▶ ニプロ株式会社の特許一覧

特開2024-37622プログラムおよび医療情報管理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037622
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】プログラムおよび医療情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/40 20180101AFI20240312BHJP
【FI】
G16H40/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142580
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】大江 和彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】土井 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】長江 祐吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 航一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 利明
(72)【発明者】
【氏名】青木 光宏
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】患者と医療スタッフと医療機器とを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することが可能なプログラム及び医療情報管理システムを提供する。
【解決手段】プログラムは、受信した複数のビーコンb2のうちの最も信号強度が大きいビーコンb2に含まれる患者IDを選択し、同一の種類の医療機器10から受信した複数のビーコンb1のうちの最も信号強度が大きいビーコンb1に含まれる医療機器IDを選択する選択処理と、選択処理において選択された患者IDを選択処理において選択された医療機器IDに関連付けた状態で、医療情報管理サーバ装置20に送信する送信処理と、を情報端末30のプロセッサに実行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信する通信部であって、サーバ装置と通信を行う通信部を備えたコンピュータのプロセッサに、処理を実行させるプログラムであって、
患者の識別情報を含む第1無線信号を、1つ又は複数の第1発信端末から受信する第1受信処理と、
医療機器の識別情報を含む第2無線信号を、1つ又は複数の第2発信端末から受信する第2受信処理と、
前記第1受信処理において複数の第1発信端末から第1無線信号を受信した場合、受信した複数の第1無線信号のうちの最も信号強度が大きい第1無線信号に含まれる前記患者の識別情報を選択する第1選択処理と、
前記第2受信処理において複数の第2発信端末から第2無線信号を受信した場合で、かつ、同一の種類の医療機器の識別情報を含む複数の第2無線信号を受信した場合に、前記複数の第2無線信号のうちの最も信号強度が大きい第2無線信号に含まれる前記医療機器の識別情報を選択する第2選択処理と、
前記第2選択処理において選択された前記医療機器の識別情報に、前記第1選択処理において選択された前記患者の識別情報を関連付けた状態で、医療機器の情報を管理するサーバ装置に送信する送信処理と、を
前記プロセッサに実行させる、プログラム。
【請求項2】
ユーザによる入力操作に応じて、前記第1受信処理において受信した複数の第1無線信号のうちの最も信号強度が大きい第1無線信号以外の第1無線信号に含まれる患者の識別情報を、前記医療機器の識別情報に関連付ける候補に設定する第1候補設定処理を、を前記プロセッサにさらに実行させ、
前記第1選択処理は、前記医療機器の識別情報に関連付ける候補又は前記最も信号強度が大きい第1無線信号に含まれる患者の識別情報のうちから、一の患者の識別情報を選択する処理を含む、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
ユーザによる入力操作に応じて、前記第2受信処理において受信した複数の第2無線信号のうちの最も信号強度が大きい第2無線信号以外の第2無線信号に含まれる医療機器の識別情報を、前記患者の識別情報に関連付ける候補に設定する第2候補設定処理を、を前記プロセッサにさらに実行させ、
前記第2選択処理は、前記患者の識別情報に関連付ける候補又は前記最も信号強度が大きい第2無線信号に含まれる医療機器の識別情報のうちから、一の医療機器の識別情報を選択する処理を含む、請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
医療スタッフの識別情報を含む第3無線信号を、1つ又は複数の第3発信端末から受信する第3受信処理と、
前記第3受信処理において複数の第3発信端末から第3無線信号を受信した場合、受信した複数の第3無線信号のうちの最も信号強度が大きい第3無線信号に含まれる前記医療スタッフの識別情報を選択する第3選択処理と、を前記プロセッサにさらに実行させ、
前記送信処理は、前記第2選択処理において選択された前記医療機器の識別情報に、前記第3選択処理において選択された前記医療スタッフの識別情報と、前記第1選択処理において選択された前記患者の識別情報と、を関連付けた状態で、前記サーバ装置に送信する、請求項1~3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記サーバ装置には、処置又は注射オーダ情報が前記患者の識別情報に関連付けられて格納されており、
前記第1選択処理において選択された前記患者の識別情報に関連付けられた前記処置又は注射オーダ情報の送信を、前記サーバ装置に要求する第1要求処理と、
前記処置又は注射オーダ情報を受信する処置又は注射オーダ情報受信処理と、を前記プロセッサにさらに実行させる、請求項1~3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記サーバ装置は、医療機器と通信可能に構成されており、
前記サーバ装置は、前記医療機器から医療機器の設定情報を受信し、前記医療機器の設定情報を、前記医療機器の識別情報に関連付けて記憶し、
前記第2選択処理において選択された医療機器の識別情報に関連付けられた前記医療機器の設定情報の送信を、前記サーバ装置に要求する第2要求処理と、
前記医療機器の設定情報を受信する設定情報受信処理と、
前記設定情報受信処理において受信した前記医療機器の設定情報と、前記処置又は注射オーダ情報受信処理において受信した前記処置又は注射オーダ情報とを照合する照合処理と、を前記プロセッサにさらに実行させ、
前記送信処理は、前記照合処理において照合が成功した場合に、前記第1選択処理において選択された前記患者の識別情報を、前記第2選択処理において選択された前記医療機器の識別情報に関連付けた状態で、前記サーバ装置に送信する処理を含む、請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
患者の識別情報を含む第1無線信号を発信する1つ又は複数の第1発信端末と、
医療機器の識別情報を含む第2無線信号を発信する1つ又は複数の第2発信端末と、
医療機器の情報を管理するサーバ装置と、
前記1つ又は複数の第1発信端末から第1無線信号を受信し、前記1つ又は複数の第2発信端末から第2無線信号を受信する通信部であって、前記サーバ装置と通信を行う通信部を備えた情報端末と、を備え、
前記情報端末は、
前記通信部により複数の第1発信端末から第1無線信号を受信した場合、受信した複数の第1無線信号のうちの最も信号強度が大きい第1無線信号に含まれる前記患者の識別情報を選択し、
前記通信部により複数の第2発信端末から第2無線信号を受信した場合で、かつ、同一の種類の医療機器の識別情報を含む第2無線信号を受信した場合、前記複数の第2無線信号のうちの最も信号強度が大きい第2無線信号に含まれる前記医療機器の識別情報を選択し、
選択された前記医療機器の識別情報に、選択された前記患者の識別情報を関連付けた状態で、医療機器の情報を管理するサーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は、前記情報端末から受信した前記患者の識別情報を、前記医療機器の識別情報に関連付けた状態で記憶する、医療情報管理システム。
【請求項8】
前記1つ又は複数の第1発信端末は、Bluetooth規格に準拠した通信のうちのBluetooth Low Energy通信による第1ビーコンを発信し、
前記1つ又は複数の第2発信端末は、前記Bluetooth Low Energy通信による第2ビーコンを発信し、
前記情報端末は、
前記通信部により複数の第1発信端末から第1ビーコンを受信した場合、受信した複数の第1ビーコンのうちの最も信号強度が大きい第1ビーコンに含まれる前記患者の識別情報を選択し、
前記通信部により複数の第2発信端末から第2ビーコンを受信した場合、受信した複数の第2ビーコンのうちの最も信号強度が大きい第2ビーコンに含まれる前記医療機器の識別情報を選択する、請求項7に記載の医療情報管理システム。
【請求項9】
医療スタッフの識別情報を含む第3無線信号を発信する1つ又は複数の第3発信端末をさらに備え、
前記通信部は、前記1つ又は複数の第3発信端末から第3無線信号を受信し、
前記情報端末は、前記通信部により複数の第3発信端末から第3無線信号を受信した場合、受信した複数の第3無線信号のうちの最も信号強度が大きい第3無線信号に含まれる前記医療スタッフの識別情報を選択し、
選択された前記医療機器の識別情報に、選択された前記医療スタッフの識別情報と選択された前記患者の識別情報とを関連付けた状態で、前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は、前記情報端末から受信した前記医療スタッフの識別情報と前記患者の識別情報とを、前記医療機器の識別情報に関連付けた状態で記憶する、請求項7または8に記載の医療情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラムおよび医療情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用ポンプの状態を管理する管理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1の記載の管理システムは、患者に薬液を送液する複数の医療用ポンプと、医療従事者が携帯可能な複数の情報端末と、を有する。医療用ポンプは、ポンプ検出部及びポンプ記憶部を含む。ポンプ記憶部に記憶された医療用ポンプの識別情報およびポンプ検出部が検出した医療用ポンプの状態を、無線通信を介して送信するポンプ通信部と、を有する。情報端末は、医療用ポンプと無線通信を介して通信する端末通信部と、端末通信部を介して医療用ポンプから受信した医療用ポンプの識別情報および医療用ポンプの状態を表示する端末表示部と、を有する。また、ポンプ記憶部には、患者の情報が記憶されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-86964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のような管理システムを使用する場合、医療用ポンプごとに患者の情報を予め記憶しておく必要がある。しかしながら、医療用ポンプを使用する患者は、日々入れ替わる。この場合、管理システムに、医療用ポンプと患者の情報との関連付けを行う作業が必要になる。
【0006】
例えば、管理システムに対して、医療スタッフが患者の情報を、キーボード又は操作ボタンを用いて手動で入力することが考えられるが、入力作業の負担が増大するとともに、入力ミスが生じる可能性がある。また、入力ミスを防止するために、管理システムにバーコードを読み取る読取部を設けることも考えられる。しかしながら、バーコードの貼付不良又は印刷不良によって、バーコードの読み取りが不能になる場合がある。このため、読取部を管理システムに設けた場合でも、手動で入力することが必要になることがある。また、読取作業は、医療スタッフにより手作業で行う必要があるため、読取部を管理システムに設けた場合でも、一日で多くの患者に対応する医療スタッフの作業の負担は大きい。
【0007】
本開示の目的は、患者と医療機器とを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することが可能なプログラム及び医療情報管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本開示の第1の態様に係るプログラムは、無線信号を受信する通信部であって、サーバ装置と通信を行う通信部を備えたコンピュータのプロセッサに、処理を実行させるプログラムであって、患者の識別情報を含む第1無線信号を、1つ又は複数の第1発信端末から受信する第1受信処理と、医療機器の識別情報を含む第2無線信号を、1つ又は複数の第2発信端末から受信する第2受信処理と、前記第1受信処理において複数の第1発信端末から第1無線信号を受信した場合、受信した複数の第1無線信号のうちの最も信号強度が大きい第1無線信号に含まれる前記患者の識別情報を選択する第1選択処理と、前記第2受信処理において複数の第2発信端末から第2無線信号を受信した場合で、かつ、同一の種類の医療機器の識別情報を含む複数の第2無線信号を受信した場合に、前記複数の第2無線信号のうちの最も信号強度が大きい第2無線信号に含まれる前記医療機器の識別情報を選択する第2選択処理と、前記第2選択処理において選択された前記医療機器の識別情報に、前記第1選択処理において選択された前記患者の識別情報を関連付けた状態で、医療機器の情報を管理するサーバ装置に送信する送信処理と、を前記プロセッサに実行させる。
【0009】
第2の態様に係る医療情報管理システムは、患者の識別情報を含む第1無線信号を発信する1つ又は複数の第1発信端末と、医療機器の識別情報を含む第2無線信号を発信する1つ又は複数の第2発信端末と、医療機器の情報を管理するサーバ装置と、前記1つ又は複数の第1発信端末から第1無線信号を受信し、前記1つ又は複数の第2発信端末から第2無線信号を受信する通信部であって、前記サーバ装置と通信を行う通信部を備えた情報端末と、を備え、前記情報端末は、前記通信部により複数の第1発信端末から第1無線信号を受信した場合、受信した複数の第1無線信号のうちの最も信号強度が大きい第1無線信号に含まれる前記患者の識別情報を選択し、前記通信部により複数の第2発信端末から第2無線信号を受信した場合で、かつ、同一の種類の医療機器の識別情報を含む第2無線信号を受信した場合、前記複数の第2無線信号のうちの最も信号強度が大きい第2無線信号に含まれる前記医療機器の識別情報を選択し、選択された前記医療機器の識別情報に、選択された前記患者の識別情報を関連付けた状態で、医療機器の情報を管理するサーバ装置に送信し、前記サーバ装置は、前記情報端末から受信した前記患者の識別情報を、前記医療機器の識別情報に関連付けた状態で記憶する。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、患者の識別情報と、医療機器の識別情報とを、無線通信によって、自動的に取得することができるので、手入力が不要になる。そして、無線通信を用いることによって、バーコードを用いて識別情報を読み取る場合と異なり、読取作業が不要になる。また、通信部が、複数の第1無線信号を受信し、同一の種類の医療機器から複数の第2無線信号を受信した場合でも、信号強度が最も大きい第1無線信号と、信号強度が最も大きい第2無線信号と、が選択される。これにより、複数の患者の識別情報から1つの患者の識別情報を選択する作業が不要になり、同一の種類の複数の医療機器の識別情報から1つの医療機器の識別情報を選択する作業が不要になる。これらの結果、患者と医療機器とを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る医療情報管理システム100の構成の概略を説明するための図である。
図2図2は、医療情報管理システム100のブロック図である。
図3図3は、医療機器10のうちの血糖測定器10bの構成を示すブロック図である。
図4図4は、医療機器10のうちの輸液ポンプ40の構成を示すブロック図である。
図5図5は、ビーコン端末50の構成を示すブロック図である。
図6図6は、サーバ装置20の構成を示すブロック図である。
図7図7は、医療情報データベース22aを説明するための図(1)である。
図8図8は、医療情報データベース22aを説明するための図(2)である。
図9図9は、医療情報データベース22aを説明するための図(3)である。
図10図10は、医療情報データベース22aを説明するための図(4)である。
図11図11は、医療情報データベース22aを説明するための図(5)である。
図12図12は、情報端末30の構成を示すブロック図である。
図13図13は、医療情報管理システム100による制御処理のフロー図(1)である。
図14図14は、医療情報管理システム100による制御処理のフロー図(2)である。
図15図15は、医療情報管理システム100による制御処理のフロー図(3)である。
図16図16は、医療情報管理システム100による制御処理のフロー図(4)である。
図17図17は、医療情報管理システム100による制御処理のフロー図(5)である。
図18図18は、医療情報管理システム100による制御処理のフロー図(6)である。
図19図19は、情報端末30に表示される画面例を示す図(1)である。
図20図20は、情報端末30に表示される画面例を示す図(2)である。
図21図21は、情報端末30に表示される画面例を示す図(3)である。
図22図22は、情報端末30に表示される画面例を示す図(4)である。
図23図23は、情報端末30に表示される画面例を示す図(5)である。
図24図24は、情報端末30に表示される画面例を示す図(6)である。
図25図25は、情報端末30に表示される画面例を示す図(7)である。
図26図26は、情報端末30に表示される画面例を示す図(8)である。
図27図27は、情報端末30に表示される画面例を示す図(9)である。
図28図28は、情報端末30に表示される画面例を示す図(10)である。
図29図29は、一実施形態の変形例による医療情報管理システムの制御処理のフロー図(1)である。
図30図30は、一実施形態の変形例によるタッチパネル34に表示される画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0013】
[医療情報管理システム100の概要]
図1は、本実施形態に係る医療情報管理システム100(以下「システム100」という)の構成の概略を説明するための図である。図2は、システム100のブロック図である。
【0014】
システム100は、医療情報を管理するシステムである。また、図1に示すように、システム100は、電子カルテサーバ装置101との間で医療情報のやり取りを行うシステムである。このシステム100は、例えば、病院等の医療施設ごとに設けられてもよいし、複数の病院(病院グループ)ごとに設けられてもよい。
【0015】
ここで、「医療情報」には、処置又は注射オーダ情報、医療機器の設定情報、患者の識別情報(以下「患者ID」という)・氏名・年齢・性別・病名・症状・検査結果、患者に対する処方の履歴・処置の履歴、及び、患者を担当する医療スタッフの識別情報(以下「スタッフID」という)が含まれる。
【0016】
「処置又は注射オーダ情報」には、患者に対して実施予定の処置の内容、処方の内容、及び実施する日時の情報が含まれる。例えば、点滴が実施される場合、処置又は注射オーダ情報には、薬剤名、投与の予定量、及び流量が含まれる。
【0017】
「医療機器の設定情報」には、医療機器10において設定された内容、及び医療機器10の状態の情報が含まれる。例えば、「医療機器の設定情報」には、医療機器10が輸液ポンプ40である場合、投与の予定量の設定情報、流量の設定情報、及び輸液ポンプ40の状態情報(例えば、運転中、停止中、異常停止中など)が含まれる。
【0018】
図1に示すように、医療機器には、例えば、体温計10a、血糖測定器10b、及び輸液ポンプ40が含まれる。以下の説明において、体温計10a、血糖測定器10b、及び輸液ポンプ40を区別しない場合、「医療機器10」として説明する。なお、図示しないが、医療機器10には、血圧計、人工透析装置、及びパルスオキシメータなど、人体を治療または診断するその他医療機器が含まれてもよい。本実施形態では、複数の医療機器10の各々は、ビーコンb1a、b1b、又はb1cを発信する通信部11を含む。ビーコンb1a~b1cには、それぞれ、医療機器10を識別可能な医療機器IDが含まれている。ビーコンb1a、b1b、及びb1cの符号の違いは、互いに異なる種類の医療機器10から発信されたビーコンであることを意味している。なお、下記の説明において、説明を容易にするために、ビーコンb1a、b1b、及びb1cをまとめて「ビーコンb1」として説明する箇所がある。ここで、ビーコンb1、及び後述するビーコンb2及びb3は、例えば、Bluetooth(登録商標)規格に準拠した通信のうちのBluetooth Low Energy(BLE)通信におけるビーコンである。
【0019】
ここで、本実施形態のシステム100は、ビーコンb1~b3に含まれるIDに基づき医療情報データベース22a(図6参照)を参照することによって、受信したビーコンが、医療機器ID(図10参照)、患者ID(図7参照)、及びスタッフID(図11参照)のいずれであるかを、判別するように構成されている。また、システム100は、ビーコンb1a、b1b、及びb1cに含まれるIDに基づき医療情報データベース22a(図6参照)を参照することによって、受信したビーコンが、医療機器IDの種類(図10参照)のうちのどの種類であるかを判別するように構成されている。なお、本開示はこの例に限られず、ビーコンb1、b2、及びb3が、互いに異なる周波数帯の電波として構成されることにより、システム100が、受信した電波(ビーコン)の周波数を検出することによって、受信したビーコンに、医療機器ID、患者ID、及びスタッフIDのいずれを含むものであるかを判別できるようにシステム100を構成してもよい。また、ビーコンb1、b2、及びb3が、互いに異なる標準規格に準拠した電波として構成されることにより、システム100が、受信した電波が準拠する標準規格の種類に基づいて、医療機器ID、患者ID、及びスタッフIDのいずれであるかを判別できるようにシステム100を構成してもよい。また、ビーコンb1a、b1b、及びb1cが、互いに異なる周波数帯の電波として構成されることにより、システム100が、受信した電波(ビーコン)の周波数を検出することによって、受信した電波(ビーコン)が、いずれの種類の医療機器10から発信されたものであるかを判別できるようにシステム100を構成してもよい。また、ビーコンb1a、b1b、及びb1cが、互いに異なる標準規格に準拠した電波として構成されることにより、システム100が、受信した電波が準拠する標準規格の種類に基づいて、受信した電波(ビーコン)が、いずれの種類の医療機器10から発信されたものであるかを判別できるようにシステム100を構成してもよい。
【0020】
図2に示すように、システム100は、医療情報管理サーバ装置20(以下「サーバ装置20」とする)と、複数の情報端末30とを備える。サーバ装置20は、医療情報を記憶し管理するための装置である。サーバ装置20には、医療情報が格納された医療情報データベース22a(図7図11参照)が構築されている。サーバ装置20は、病院等の医療施設内に配置された、オンプレミスサーバとして構成されていてもよいし、複数のサーバ群からなるクラウド上に構成される仮想サーバ(クラウドサーバ)により構成されていてもよい。
【0021】
情報端末30は、医療機器IDを、患者ID及びスタッフIDに関連付けるための装置である。情報端末30は、複数のビーコン端末50及び医療機器10から無線信号(ビーコン)を受信し、複数のビーコン端末50から受信した無線信号に含まれる患者ID及びスタッフIDを、医療機器10から受信した無線信号に含まれる医療機器IDに関連付けた状態で、サーバ装置20に送信する。また、情報端末30を医療スタッフが使用する場合には、情報端末30は、処置又は注射オーダ情報の確認用の端末となる。すなわち、情報端末30がサーバ装置20から処置又は注射オーダ情報を取得して、処置又は注射オーダ情報を情報端末30上に表示させることにより、医療スタッフは、処置又は注射オーダ情報を確認することが可能になる。「医療スタッフ」とは、医療施設に所属する職員であり、例えば、看護師、看護助手、技師、医師、及び医療施設の職員である。
【0022】
情報端末30は、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、又はタブレット端末として構成されてもよい。情報端末30は、例えば、医療スタッフにより所持(携帯)されている。また、情報端末30は、医療スタッフの身体(例えば、腕)に装着可能(ウェアラブル)に構成されていてもよい。また、情報端末30は、患者が横たわる各ベッド又はベッドサイドに配置されていてもよい。すなわち、本実施形態では、情報端末30は、医療スタッフにより所持又は装着された状態で使用されてもよいし、ベッド又はベッドサイドに配置された状態で使用されてもよい。なお、本実施形態では、「患者」の例として、医療施設に入院中の患者を記載しているが、本開示はこれに限られず、通院中の患者であってもよいし、救急搬送された患者であってもよい。
【0023】
複数のビーコン端末50は、複数の患者端末50a、及び複数のスタッフ端末50bを含む。複数のスタッフ端末50bは、それぞれ、医療スタッフにより携帯されているか、又は医療スタッフの身体(例えば、腕)に装着されている。また、複数の患者端末50aは、それぞれ、患者の身体(例えば、腕)に装着されているか、患者が横たわるベッド又はベッドサイドに配置されている。例えば、患者端末50aは、リストバンドとして構成されている。スタッフ端末50bは、医療スタッフごとに設けられており、当該医療スタッフの識別情報であるスタッフIDを含むビーコンb3を発信する。患者端末50aは、患者ごとに設けられており、当該患者の識別情報である患者IDを含むビーコンb2を発信する。
【0024】
医療スタッフが患者に対して処置を行う場合の例の概要を、図1を参照して説明する。図1に示すように、(1)複数の医療機器10からそれぞれビーコンb1が発信される。また、複数の患者端末50aからビーコンb2が発信される。また、複数のスタッフ端末50bからビーコンb3が発信される。そして、情報端末30は、ビーコンb1~b3をそれぞれ受信する。なお、情報端末30は、以下の処理中においても、繰り返しビーコンb1~b3を受信している。
【0025】
(2)医療スタッフは、情報端末30上でアプリケーションプログラムを起動させる。情報端末30上には、ビーコンb3のうちの最も信号強度が大きいビーコンb3に含まれるスタッフIDが表示される(図19参照)。言い換えると、最も信号強度が大きいビーコンb3に含まれるスタッフIDが、自動的に選択された状態となっている。(3)そして、医療スタッフは、ログインのためにパスワードを入力する。そして、情報端末30は、ビーコンb3に含まれるスタッフIDに関連付けられたパスワードが入力された場合、本人確認が成功したものと判定し、スタッフIDに関連付けられたパスワードと異なるパスワードが入力された場合、本人確認が失敗したものと判定する。情報端末30は、本人確認が成功した場合に、ログインを完了させる。
【0026】
(4)情報端末30上には、ビーコンb2のうちの最も信号強度が大きいビーコンb2に含まれる患者IDが表示される(図21参照)。言い換えると、最も信号強度が大きいビーコンb2に含まれる患者IDが、自動的に選択された状態となっている。(5)情報端末30は、ビーコンb2に含まれる患者IDに関連付けられた処置又は注射オーダ情報を、サーバ装置20に要求する。サーバ装置20は、情報端末30に処置又は注射オーダ情報を送信する。そして、情報端末30は、処置又は注射オーダ情報を受信し、処置又は注射オーダ情報を情報端末30上に表示する。医療スタッフは、処置又は注射オーダ情報に従って、医療機器10の設定又は患者に対する処置を行う。そして、医療機器10の設定情報が、医療機器10からサーバ装置20に送信される。
【0027】
(6)情報端末30上には、同一の種類の医療機器10からのビーコンb1のうちの最も信号強度が大きいビーコンb1に含まれる医療機器IDが表示される(図25参照)。言い換えると、最も信号強度が大きいビーコンb1に含まれる医療機器IDが、自動的に選択された状態となっている。ここで、「同一の種類の医療機器10」とは、同一の治療内容を目的とした医療機器、及び同一の項目を診断する医療機器である。例えば、複数の輸液ポンプ40(同一の種類の医療機器10)からビーコンb1を受信した場合、このビーコンb1のうちの最も信号強度が大きいビーコンb1に含まれる医療機器IDが表示される。なお、複数の体温計10a、複数の血糖測定器10b、及び複数の輸液ポンプ40(互いに異なる種類の医療機器10)からビーコンb1を受信した場合、情報端末30上には、複数の体温計10aから受信したビーコンb1のうちの最も信号強度が大きいビーコンb1に含まれる医療機器IDが表示され、複数の血糖測定器10bから受信したビーコンb1のうちの最も信号強度が大きいビーコンb1に含まれる医療機器IDが表示され、複数の輸液ポンプ40から受信したビーコンb1のうちの最も信号強度が大きいビーコンb1に含まれる医療機器IDが表示される。すなわち、医療機器10の種類ごとに医療機器IDが表示(選択)される。サーバ装置20は、医療機器10の設定情報を情報端末30に送信する。情報端末30は、処置又は注射オーダ情報の内容と、医療機器10の設定情報とを照合する。(8)照合が成功した場合、情報端末30は、患者ID及びスタッフIDを医療機器IDに関連付けた状態で、サーバ装置20に送信する。サーバ装置20は、患者ID及びスタッフIDを医療機器IDに関連付けた状態で記憶する。
【0028】
上記の構成によれば、情報端末30は、患者ID及びスタッフIDと、医療機器IDとを、無線通信(ビーコン)によって、自動的に取得することができる。そして、患者ID及びスタッフIDが、医療機器IDに関連付けられた状態で、サーバ装置20に送信される。これにより、患者ID及びスタッフIDと、医療機器IDとを、手動で入力する必要及びバーコード等の読取を行う必要がなくなる。これらの結果、患者ID及びスタッフIDと医療機器IDとを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することができる。情報端末30は、患者ID及びスタッフIDと、医療機器IDとを、無線通信によって、自動的に取得することができるので、手入力が不要になる。そして、無線通信を用いることによって、バーコードを用いて識別情報を読み取る場合と異なり、読取作業が不要になる。また、複数のビーコンb1、複数のビーコンb2、又は複数のビーコンb3を受信した場合でも、信号強度が最も大きいビーコンに含まれるIDが選択される。これにより、複数の患者IDから1つを選択する作業、複数のスタッフIDから1つを選択する作業、又は、複数の医療機器IDから1つを選択する作業が不要になる。これらの結果、患者と医療スタッフと医療機器とを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することができる。
【0029】
また、病院等の医療施設では、患者が横たわるベッドに対して、患者の頭側で医療スタッフが処置を行うとともに、患者の足側に医療機器10が配置される場合がある。この場合、ビーコン端末50(医療スタッフ又は患者)と医療機器10との距離は、1m以上3m以下の距離となる。このような場合、1m未満の範囲でしか到達しないRFIDを用いた近距離通信では、ビーコン端末50及び医療機器10の両方から情報端末30が無線信号を受信することが難しくなる。また、LANを用いた通信では、医療施設内の全ての患者、医療スタッフ、及び医療機器からの多数の無線信号を受信してしまい、多数の患者から1名を選択する手間が増え、医療スタッフから1名を選択する手間が増え、多数の同一の種類の医療機器から1つの医療機器を選択する手間が増える。これに対して、上記の構成によれば、BLE通信によるビーコンは、発信端末から3m範囲内に発信される。この結果、ビーコン端末50及び医療機器10の両方から情報端末30が無線信号を受信することができる。そして、3mよりも離れた位置からのビーコンを受信しないので、多数の無線信号を受信してしまうのを防止することができ、上記のような選択の手間を低減することができる。
【0030】
[医療情報管理システムの各部の構成]
図2に示すように、システム100は、サーバ装置20と、複数の情報端末30とを備える。サーバ装置20と、複数の情報端末30の各々とは、ネットワークNを介して通信可能となっている。また、サーバ装置20と、電子カルテサーバ装置101とは、ネットワークNを介して通信可能となっている。また、サーバ装置20と、輸液ポンプ40とは、ネットワークNを介して通信可能となっている。ネットワークNとしては、病院内(医療施設内)ではローカルエリアネットワーク(LAN)を用いることができ、病院外(医療施設の外部)とのやり取りでは、インターネットを用いることができる。
【0031】
(医療機器の構成)
図3は、医療機器10のうちの血糖測定器10bの構成を示すブロック図である。なお、図3に示す構成について、体温計10aの構成は、センサ部13の構成を除き、血糖測定器10bと同一のため、体温計10aの説明を省略する。血糖測定器10bは、通信部11と、制御部12と、センサ部13と、表示部14と、記憶部15とを含む。制御部12は、血糖測定器10bの制御処理を行う制御回路を含む。センサ部13は、生体情報(血糖の大きさ)を電気信号に変換する機能を有する。記憶部15は、例えば、ROM及びRAMを含む。記憶部15は、医療機器IDが記憶されている。通信部11は、BLE通信を行うための通信インタフェースである。通信部11は、医療機器IDを含むビーコンb1を所定の時間間隔で発信する。すなわち、本実施形態では、医療機器10にビーコン端末が内蔵されている。
【0032】
図4は、医療機器10のうちの輸液ポンプ40の構成を示すブロック図である。輸液ポンプ40は、LAN通信部41と、BLE通信部42と、制御部43と、流量調整機構部44と、異常センサ45、操作部46、及び記憶部47を含む。LAN通信部41は、サーバ装置20とネットワークNを介して通信を行うための通信インタフェースである。BLE通信部42は、Bluetooth通信を行うためのインタフェースである。制御部43は、輸液ポンプ40の制御処理を行う制御回路を含む。流量調整機構部44は、モータを含む。モータは、制御部43による指令に応じて駆動して、患者に投与される薬剤の流量及び投与量を制御する。異常センサ45は、図示しない輸液チューブ内の気泡、及び閉塞等の異常を検出するセンサである。操作部46は、医療スタッフによる入力操作を受け付ける。例えば、操作部46は、操作ボタンまたはタッチパネルである。操作部46に対して行われた操作に応じて、制御部43は、流量、及び投与の予定量の設定を行う。記憶部47は、例えば、ROM及びRAMを含む。記憶部47は、医療機器IDが記憶されている。BLE通信部42は、輸液ポンプ40の医療機器IDを含むビーコンb1を、所定の時間間隔で発信する。すなわち、本実施形態では、輸液ポンプ40にビーコン端末が内蔵されている。
【0033】
そして、制御部43は、設定された流量、及び投与の予定量の情報を、輸液ポンプ40の医療機器IDに関連付けた状態で、LAN通信部41を介して、サーバ装置20に送信する。また、制御部43は、輸液ポンプ40が運転中と停止中と異常発生中とのいずれであるかの情報(状態情報)を、LAN通信部41を介して、サーバ装置20に送信する。サーバ装置20は、医療機器10(輸液ポンプ40)から受信した医療機器10の設定情報を記憶する。
【0034】
(ビーコン端末の構成)
図5は、ビーコン端末50の構成を示すブロック図である。ビーコン端末50は、発信部51と、記憶部52と、制御部53とを含む。制御部53は、ビーコン端末50(発信部51)の制御処理を行う制御回路を含む。発信部51は、BLE通信におけるビーコンを発信する通信インタフェースである。記憶部52は、例えば、ROM及びRAMを含む。ビーコン端末50が患者端末50aの場合、記憶部52には、患者IDが記憶されている。そして、ビーコン端末50が患者端末50aの場合、発信部51は、制御部53の指令に応じて、患者IDを含むビーコンb2を、所定の時間間隔で発信する。ビーコン端末50がスタッフ端末50bの場合、記憶部52には、スタッフIDが記憶されている。ビーコン端末50がスタッフ端末50bの場合、発信部51は、制御部53の指令に応じて、スタッフIDを含むビーコンb3を発信する。
【0035】
(サーバ装置の構成)
図6は、サーバ装置20の構成を示すブロック図である。図6に示すように、サーバ装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23とを含む。制御部21は、プログラムを実行することにより制御処理を実行するプロセッサを含む。通信部23は、ネットワークN(図2参照)に無線または有線接続可能に構成されている通信インタフェースである。記憶部22は、例えば、ROM及びRAMを含む。記憶部22には、医療情報データベース22aが構築されている。
【0036】
図7図11は、医療情報データベース22aを説明するための図である。図7に示すように、医療情報データベース22aには、例えば、患者ID、患者氏名、処置又は注射オーダ情報、医療機器ID、医療機器の設定情報、及びスタッフIDが、互いに関連付けられて記憶されている。サーバ装置20は、患者IDが関連付けられた処置又は注射オーダ情報を、電子カルテサーバ装置101からネットワークNを介して、随時取得する。
【0037】
例えば、図7の例では、患者ID「0001」に、患者氏名「患者太郎」、及び処置又は注射オーダ情報「薬剤A、予定量1000mL、流量100mL/h」が関連付けられている。そして、医療スタッフが、処置又は注射オーダの内容を実施するために、医療機器10を選択し、医療機器10への設定を完了させた場合、医療スタッフは、情報端末30を用いて、患者IDと、設定を行った医療機器10の医療機器IDとを関連付けて、医療情報データベース22aに登録を行う。図8は、登録後の医療情報データベース22aを示している。患者IDに関連付けられた医療機器IDと医療機器の設定情報とスタッフIDとが記憶されている。
【0038】
また、図9に示すように、医療情報データベース22aには、患者IDに関連付けられた複数の処置又は注射オーダ情報が記憶されている。また、図10に示すように、医療情報データベース22aには、複数の医療機器10の各々から取得した医療機器の設定情報が医療機器IDと関連付けられた状態で、記憶されている。また、図10に示すように、医療情報データベース22aには、医療機器10の種類の情報が医療機器IDと関連付けられた状態で記憶されている。これにより、情報端末30及びサーバ装置20は、医療機器IDに基づいて、当該医療機器IDに対応する医療機器10の種類を判定することができる。図10に示す例では、種類「001」は、輸液ポンプ40であることを示している。また、図11に示すように、医療情報データベース22aには、アプリケーションプログラム内にログイン(アクセス)するためのパスワード、及びスタッフの氏名が、スタッフIDに関連付けられて記憶されている。
【0039】
(情報端末の構成)
図12は、情報端末30の構成を示すブロック図である。情報端末30は、制御部31と、BLE通信部32と、LAN通信部33と、タッチパネル34と、記憶部35とを備える。制御部31は、情報端末30における各制御処理を実行するように構成されている。制御部31は、記憶部35に記憶されたプログラム35aを実行することにより制御処理を実行するプロセッサを含む。LAN通信部33は、ネットワークNに無線または有線接続可能に構成されている通信インタフェースである。
【0040】
記憶部35には、制御部31のプロセッサに制御処理を実行させるプログラム35aが記憶されている。プログラム35aは、図13図18の処理、及び図19図28の表示を情報端末30に実行させるアプリケーションプログラムである。タッチパネル34は、制御部31の指令に基づいて、文字情報、画像および動画を表示するとともに、操作者(担当者または患者)からタッチ操作を受け付けるように構成されている。BLE通信部32は、BLE通信を行うための通信インタフェースである。BLE通信部32は、複数のビーコン端末50及び医療機器10から、ビーコンb1~b3を受信する。制御部31は、ビーコンb1~b3の信号強度の大きさを検出する制御を行う。なお、情報端末30は、タッチパネル34の代わりに表示パネル及び操作部(操作ボタンなど)を備えてもよい。
【0041】
(制御フローおよび画面例)
次に、図13図28を参照して、本実施形態によるシステム100による制御処理及び画面例について説明する。図13図18は、システム100による制御処理のフロー図である。図19図28は、情報端末30に表示される画面例を示す図である。なお、システム100による制御処理は、全てが情報端末30内で行われる必要はなく、一部の制御処理(例えば、ステップS38のパスワードの照合の処理など)が、サーバ装置20により実行されてもよい。
【0042】
図13に示すように、ステップS1において、医療スタッフによる操作に応じて、アプリケーションプログラムが起動される。ステップS2において、情報端末30は、ビーコンb1~b3を受信する。ステップS3(図14参照)において、医療スタッフが選択される。ステップS4(図15参照)において、患者が選択される。ステップS5(図16参照)において、処置又は注射オーダが選択される。ステップS6において、医療機器10が選択される。ステップS7において、処置又は注射オーダ情報と、医療機器10の設定情報との照合が行われる。ステップS8において、患者IDが関連付けられた医療機器IDがサーバ装置20に送信される。サーバ装置20において、患者IDが関連付けられた医療機器IDが登録される。なお、ステップS6において、サーバ装置20と通信を行わない医療機器10(例えば、体温計10aなど)が選択された場合は、ステップS7は実行されないで、ステップS8に進む。
【0043】
図14に示すように、ステップS3(スタッフ選択処理)は、ステップS31~S39を含む。ステップS31において、受信したビーコンb3の各々の信号強度を抽出する。ステップS32において、受信したビーコンb3のうちの最も信号強度の大きいビーコンb3に含まれるスタッフIDを、選択される候補に設定する。
【0044】
そして、ステップS33において、設定された候補が、図19に示す画面例の「スタッフID」の欄P1aに表示される。図19では、スタッフID「1001」が表示された例を示している。パスワードの欄P1bには、医療スタッフによりパスワードが入力される。ステップS34において、「決定」ボタンP1cが選択されたか否かが判断される。「決定」ボタンP1cが選択されていない場合、ステップS35において、「手動選択」ボタンP1dが選択されたか否かが判断される。「手動選択」ボタンP1dが選択されていない場合、ステップS34に戻る。「手動選択」ボタンP1dが選択された場合、ステップS36に進む。
【0045】
ステップS36において、受信したビーコンb3のうちの最も信号強度の大きいビーコンb3以外のビーコンb3に含まれるスタッフIDを候補に追加する。そして、図20に示すように、候補に含まれるスタッフIDとスタッフIDに関連付けられたスタッフの氏名とのリストが、タッチパネル34に表示される。また、最も信号強度が大きいスタッフIDを示すアイコン画像P2aと、スタッフIDごとに当該スタッフIDを含むビーコンb3の信号強度の大きさP2bとが表示される。図20では、信号強度の大きさP2bを、「強」、「中」、「弱」のいずれかで表示しているが、数値やメータ等により表示してもよい。なお、図14では図示を省略しているが、「リスト更新」P2cが選択されると、受信中のビーコンb3の信号強度の抽出が行われ、リストが更新される。ステップS37において、リスト(候補)から1つの医療スタッフが選択されると、図19のスタッフIDの欄P1aに選択されたスタッフIDが入力され、ステップS38に進む。
【0046】
ステップS34において、「決定」ボタンP1cが選択されると、ステップS38において、パスワードの照合が行われる。例えば、図11に示す医療情報データベース22aが参照される。そして、ステップS39において、スタッフIDに対応するパスワードが正しいか否かが判定され、正しい場合(照合が成功の場合)、ステップS4に進み、正しくない場合、ステップS38に戻る。
【0047】
図15に示すように、ステップS4(患者選択処理)は、ステップS41~S47を含む。ステップS41において、受信したビーコンb2の各々の信号強度を抽出する。ステップS42において、受信したビーコンb2のうちの最も信号強度の大きいビーコンb2に含まれる患者IDを、選択される候補に設定する。
【0048】
そして、ステップS43において、設定された候補が、図21に示す画面例の「患者ID」の欄P3aに表示される。図21では、患者ID「0001」と当該患者IDに関連付けられた患者氏名及び患者の個人情報が表示された例を示している。また、図21に示すように、画面には、ステップS3において選択されたスタッフの情報(スタッフID及びスタッフの氏名など)P3bが表示されてもよい。
【0049】
ステップS44において、「決定」ボタンP3cが選択されたか否かが判断される。「決定」ボタンP3cが選択されていない場合、ステップS45において、「手動選択」ボタンP3dが選択されたか否かが判断される。「手動選択」ボタンP3dが選択されていない場合、ステップS44に戻る。「手動選択」ボタンP3dが選択された場合、ステップS46に進む。
【0050】
ステップS46において、受信したビーコンb2のうちの最も信号強度の大きいビーコンb2以外のビーコンb2に含まれる患者IDを候補に追加する。そして、図22に示すように、候補に含まれる患者IDと患者IDに関連付けられた患者氏名とのリストが、タッチパネル34に表示される。また、最も信号強度が大きい患者IDを示すアイコン画像P4aと、患者IDごとに当該患者IDを含むビーコンb2の信号強度の大きさP4bとが表示される。なお、図15では図示を省略しているが、「リスト更新」P4cが選択されると、受信中のビーコンb3の信号強度の抽出が行われ、リストが更新される。
【0051】
ステップS45及びS46の処理によれば、医療スタッフが「手動選択」ボタンP3dが選択すれば、最も信号強度が大きいビーコンb2以外のビーコンb2に含まれる患者IDを、医療機器IDに関連付ける候補に設定することができる。
【0052】
ステップS47において、リスト(候補)から1つの患者が選択されると、図21の「患者ID」の欄P3aに選択された患者IDが表示され、ステップS5に進む。また、ステップS44において、「決定」ボタンP3cが選択されると、ステップS5に進む。
【0053】
図16に示すように、ステップS5(処置又は注射オーダ選択処理)は、ステップS51~S54を含む。ステップS51において、処置又は注射オーダ情報の送信を要求する信号が、情報端末30からサーバ装置20に送信される。例えば、図23に示す「処置又は注射オーダ情報選択」P5aが医療スタッフにより選択されると、選択された患者ID(患者IDの欄P5bに表示された患者ID)に関連付けられた処置又は注射オーダ情報の送信を要求する要求信号が、情報端末30からサーバ装置20に送信される。サーバ装置20は、要求信号に応じて、患者IDに関連付けられた処置又は注射オーダ情報(図9参照)を情報端末30に送信する。そして、ステップS52において、情報端末30は、処置又は注射オーダ情報を受信する。ステップS53において、図24に示すように、処置又は注射オーダ情報のリストがタッチパネル34上に表示される。表示される処置又は注射オーダ情報には、例えば、処置又は注射オーダの内容(オーダID、薬剤名、流量、予定量、開始時刻など)が含まれる。ステップS54において、表示された処置又は注射オーダ情報のうちのいれかが選択されたか否かが判定される。処置又は注射オーダ情報が選択されるまでこの判定は繰り返され、選択されると、ステップS6に進む。
【0054】
図17に示すように、ステップS6(医療機器選択処理)は、ステップS61~S67を含む。ステップS61において、受信したビーコンb1から、それぞれのビーコンb1に含まれる医療機器IDの医療機器10の種類を判定する。また、ステップS61において、受信したビーコンb1の各々の信号強度を抽出する。ステップS62において、受信したビーコンb1に、同一の種類の医療機器10からのビーコンb1が複数含まれている場合、同一の種類の医療機器10からのビーコンb1のうちの最も信号強度の大きいビーコンb1に含まれる医療機器IDを、選択される候補に設定する。
【0055】
そして、ステップS63において、設定された候補が、図25に示す画面例の「医療機器ID」の欄P6aに表示される。図25では、医療機器ID「0101」と当該医療機器IDに関連付けられたポンプ名及び設定情報が表示された例を示している。また、図25に示すように、画面には、ステップS3において選択されたスタッフID(P6b)、処置又は注射オーダ情報P6cが表示されてもよい。なお、図25では、1つの種類の医療機器10の医療機器IDのみが表示されているが、複数の種類の医療機器10からビーコンb1を受信した場合は、種類ごとの医療機器IDが表示される。例えば、輸液ポンプ40及び体温計10aからビーコンb1を受信した場合、輸液ポンプ40の医療機器IDと体温計10aの医療機器IDとが表示される。
【0056】
ステップS64において、「決定」ボタンP6dが選択されたか否かが判断される。「決定」ボタンP6dが選択されていない場合、ステップS65において、「手動選択」ボタンP6eが選択されたか否かが判断される。「手動選択」ボタンP6eが選択されていない場合、ステップS64に戻る。「手動選択」ボタンP6eが選択された場合、ステップS66に進む。
【0057】
ステップS66において、受信したビーコンb1のうちの最も信号強度の大きいビーコンb1以外のビーコンb1に含まれる医療機器IDを候補に追加する。そして、図26に示すように、候補に含まれる医療機器IDのリストが、タッチパネル34に表示される。また、最も信号強度が大きい医療機器IDを示すアイコン画像P7aと、医療機器IDごとに当該医療機器IDを含むビーコンb1の信号強度の大きさP7bとが表示される。なお、図17では図示を省略しているが、「リスト更新」P7cが選択されると、受信中のビーコンb1の信号強度の抽出が再度行われ、リストが更新される。
【0058】
ステップS67において、リスト(候補)から1つの医療機器が選択されると、図25の「医療機器ID」の欄P6aに選択された医療機器IDが表示され、ステップS7に進む。また、ステップS64において、「決定」ボタンP6dが選択されると、ステップS7に進む。
【0059】
図18に示すように、ステップS7(照合処理)は、ステップS71~S78を含む。ステップS71において、医療機器の設定情報の送信を要求する要求信号が、情報端末30からサーバ装置20に送信される。例えば、ステップS6において選択された医療機器IDに関連付けられた医療機器10の設定情報が要求される。サーバ装置20は、要求信号に応じて、選択された医療機器IDに関連付けられた医療機器の設定情報(図10参照)を情報端末30に送信する。そして、ステップS72において、情報端末30は、医療機器の設定情報を受信する。ステップS73において、図27に示すように、医療機器の設定情報P8bが処置又は注射オーダ情報P8aとともに、タッチパネル34上に表示される。表示される医療機器の設定情報には、例えば、医療機器ID、医療機器名、流量、予定量、及び状態などが含まれる。なお、図27に示すように、ステップS4で選択された患者ID(P8c)と、ステップS3で選択されたスタッフID(P8d)とがタッチパネル34に表示されてもよい。
【0060】
ステップS74において、処置又は注射オーダ情報の内容と、医療機器の設定情報との照合が行われる。ステップS75において、処置又は注射オーダ情報の内容と、医療機器の設定情報との照合が成功したか否かが判定される。例えば、処置又は注射オーダ情報における流量及び予定量と、医療機器の設定情報における流量及び予定量とが、それぞれ、一致しているか否かが判定される。照合が成功した場合(処置又は注射オーダ情報の内容と医療機器の設定情報とが一致している場合)、ステップS76に進み、照合が失敗した場合(処置又は注射オーダ情報の内容と医療機器の設定情報とが一致していない場合)、ステップS78に進む。
【0061】
ステップS76において、図27に示すように、「設定完了」ボタンP8eが表示される。すなわち、照合が成功した場合のみ、設定を完了させることができる。この結果、設定ミスを防止することができる。ステップS77において、「設定完了」ボタンP8eが選択されたか否かが判定される。「設定完了」ボタンP8eが選択されると、ステップS8に進む。
【0062】
また、照合が失敗した場合、ステップS78において、図28に示すように、タッチパネル34に、再設定を促すメッセージP9aが表示される。例えば、「オーダに合わせて設定し直して下さい」等のメッセージが表示される。また、タッチパネル34には、医療機器の設定情報のうちの処置又は注射オーダ情報の内容と一致しない箇所を示す表示P9bが行われる。これにより、医療スタッフは、正しい設定内容に設定し直すことができる。
【0063】
上記の制御処理によれば、情報端末30は、患者ID及びスタッフIDと、医療機器IDとを、無線通信(ビーコン)によって、自動的に取得することができる。そして、患者IDが、医療機器IDに関連付けられた状態で、サーバ装置20に送信される。これにより、患者ID及びスタッフIDと、医療機器IDとを、手動で入力する必要がなくなる。そして、バーコードが不要な無線通信を用いるので、バーコードを用いて識別情報を読み取る場合と異なり、貼付不良又は印刷不良の問題がなくなる。これらの結果、患者IDと医療機器IDとを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することができる。
【0064】
[変形例]
以上、上述した実施形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0065】
(1)上記実施形態では、患者IDとスタッフIDが医療機器IDに関連付けられた状態で、情報端末30からサーバ装置20に送信される例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、情報端末30からサーバ装置20に、スタッフIDは送信されないで、患者IDのみが医療機器IDに関連付けられて送信されてもよい。この場合、図14に示したステップS3のスタッフ選択処理は省略されてもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、患者端末50aと、スタッフ端末50bと、情報端末30と、を設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、情報端末を、各医療スタッフが所持しているか装着している場合、情報端末内の記憶部にスタッフIDを記憶しておけば、スタッフ端末が設けられなくてもよい。この場合、図14に示したステップS3のスタッフ選択処理は省略されてもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、図13に示した制御処理を、情報端末30のアプリケーションプログラムにより実行される例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、情報端末に、専用のアプリケーションソフトウェアではなく、ブラウザ用ソフトウェア(例えば、Webブラウザ)がインストールされていてもよい。そして、情報端末がサーバ装置にアクセスすることにより、サーバ装置が提供する情報及び画像を取得するように、本開示のシステムを構成してもよい。この場合、図13に示す制御処理のうちステップS3~S8は、サーバ装置により行われる。
【0068】
(4)上記実施形態では、処置又は注射オーダ情報と医療機器の設定情報との照合を行う例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図13に示すステップS6の医療機器選択処理の後に、選択された医療機器に対して、処置又は注射オーダ情報の内容が自動的に設定されてもよい。すなわち、選択された医療機器は、サーバ装置から処置又は注射オーダ情報を受信して、処置又は注射オーダ情報に合わせた設定を自動的に行うように構成されてもよい。
【0069】
(5)上記実施形態では、BLE通信を用いる例を示したが、BLE通信以外の近距離無線通信を用いてもよい。例えば、無線信号を受信する際に、都度、情報端末を、患者端末、スタッフ端末、及び医療機器のそれぞれに接近させることが容易な場合、RFIDを用いてもよい。
【0070】
(6)上記実施形態では、医療機器の設定情報の例として、輸液ポンプ40の設定情報を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、医療機器の設定情報に、人工透析装置の設定情報が含まれていてもよい。
【0071】
(7)上記実施形態では、医療機器にビーコン端末を内蔵させる例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、医療機器にビーコン端末が設けられていない場合でも、本開示の内容は適用可能である。例えば、医療機器とは別体に形成され、当該医療機器の医療機器IDが記憶されたビーコン端末を、この医療機器の近傍に配置するか、または、この医療機器に装着してもよい。
【0072】
(8)上記実施形態のうちの図17の例では、医療機器選択処理において、1つの種類の医療機器10(医療機器ID)を選択する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、図29及び図30に示す変形例によるシステムのように、医療機器選択処理において、複数の種類の医療機器10(医療機器ID)が選択されてもよい。例えば、医療機器選択処理において、輸液ポンプ40の医療機器IDと血糖測定器10bの医療機器IDとが選択された場合、患者IDが輸液ポンプ40の医療機器IDと血糖測定器10bの医療機器IDとの両方に関連付けられる。そして、輸液ポンプ40の医療機器IDと血糖測定器10bの医療機器IDとの両方に関連付けられた患者IDが、情報端末からサーバ装置に送信される。そして、サーバ装置において、患者IDを輸液ポンプ40の医療機器IDと血糖測定器10bの医療機器IDと関連付けた状態で記憶される。
【0073】
例えば、情報端末が、複数のビーコンb1b及び複数のビーコンb1c(図1参照)を同時に受信している場合、図29に示すステップS161において、それぞれの医療機器の種類を判定し、ビーコンb1bの強度、及びビーコンb1cの強度を抽出する。そして、ステップS162において、判定した複数の種類のうちの一つの種類が選択される。例えば、図30に示すように、タッチパネル34に、「複数の種類の医療機器から
ビーコンを受信しています。紐づけを行う医療機器の種類を選択してください。」などの選択を促すメッセージP10aと、ステップS161において判定した医療機器10の種類の選択肢P10b~P10dが表示される。図30では、選択肢P10b~P10dのうちの選択肢P10b及びP10cが選択され、P10dが選択されない例を図示している。この例において、決定ボタンP10eが操作されると、選択肢P10bに対応する医療機器である複数の輸液ポンプ40の医療機器IDから一の医療機器IDを選択すること、及び、選択肢P10cに対応する医療機器である複数の血糖測定器10bの医療機器IDから一の医療機器IDを選択することが決定される。その後、ステップS62~S67が実行され、例えば、複数の輸液ポンプ40の医療機器IDのうちから1つの医療機器IDが選択される。そして、ステップS163において、他に選択が必要な医療機器の種類があるか否かが判断される。例えば、複数の血糖測定器10bの医療機器IDから一の医療機器IDの選択がまだ行われていない場合、ステップS62に戻り、ステップS62~S67が実行されて、複数の血糖測定器10bの医療機器IDから一の医療機器IDの選択が行われる。これにより、複数の種類の医療機器IDを種類ごとに選択することが可能となる。
【0074】
なお、本開示は以下のように説明することもできる。
【0075】
第1の構成に係るプログラムは、無線信号を受信する通信部であって、サーバ装置と通信を行う通信部を備えたコンピュータのプロセッサに、処理を実行させるプログラムであって、患者の識別情報を含む第1無線信号を、1つ又は複数の第1発信端末から受信する第1受信処理と、医療機器の識別情報を含む第2無線信号を、1つ又は複数の第2発信端末から受信する第2受信処理と、第1受信処理において複数の第1発信端末から第1無線信号を受信した場合、受信した複数の第1無線信号のうちの最も信号強度が大きい第1無線信号に含まれる患者の識別情報を選択する第1選択処理と、第2受信処理において複数の第2発信端末から第2無線信号を受信した場合で、かつ、同一の種類の医療機器の識別情報を含む複数の第2無線信号を受信した場合に、複数の第2無線信号のうちの最も信号強度が大きい第2無線信号に含まれる医療機器の識別情報を選択する第2選択処理と、第2選択処理において選択された医療機器の識別情報に、第1選択処理において選択された患者の識別情報を関連付けた状態で、医療機器の情報を管理するサーバ装置に送信する送信処理と、をプロセッサに実行させる(第1の構成)。
【0076】
第1の構成によれば、患者の識別情報と、医療機器の識別情報とを、無線通信によって、自動的に取得することができるので、手入力が不要になる。そして、無線通信を用いることによって、バーコードを用いて識別情報を読み取る場合と異なり、読取作業が不要になる。また、通信部が、複数の第1無線信号を受信し、同一の種類の医療機器から複数の第2無線信号を受信した場合でも、信号強度が最も大きい第1無線信号と、信号強度が最も大きい第2無線信号と、が選択される。これにより、複数の患者の識別情報から1つの患者の識別情報を選択する作業が不要になり、同一の種類の複数の医療機器の識別情報から1つの医療機器の識別情報を選択する作業が不要になる。これらの結果、患者と医療機器とを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することができる。
【0077】
第1の構成において、プログラムは、ユーザによる入力操作に応じて、第1受信処理において受信した複数の第1無線信号のうちの最も信号強度が大きい第1無線信号以外の第1無線信号に含まれる患者の識別情報を、医療機器の識別情報に関連付ける候補に設定する第1候補設定処理を、をプロセッサにさらに実行させるように構成されてもよい。第1選択処理は、医療機器の識別情報に関連付ける候補又は最も信号強度が大きい第1無線信号に含まれる患者の識別情報のうちから、一の患者の識別情報を選択する処理を含んでもよい(第2の構成)。
【0078】
ここで、最も信号強度が大きい第1無線信号に含まれる患者の識別情報とは別の患者の識別情報を、ユーザが医療機器の識別情報に関連付けることを所望する場合がある。第2の構成によれば、ユーザが入力操作を行えば、最も信号強度が大きい第1無線信号以外の第1無線信号に含まれる患者の識別情報を、医療機器の識別情報に関連付ける候補に設定することができる。そして、選択処理において、候補の中から、ユーザが所望する患者の識別情報を選択することができる。
【0079】
第1又は第2の構成において、プログラムは、ユーザによる入力操作に応じて、第2受信処理において受信した複数の第2無線信号のうちの最も信号強度が大きい第2無線信号以外の第2無線信号に含まれる医療機器の識別情報を、患者の識別情報に関連付ける候補に設定する第2候補設定処理を、をプロセッサにさらに実行させるように構成されてもよい。第2選択処理は、患者の識別情報に関連付ける候補又は最も信号強度が大きい第2無線信号に含まれる医療機器の識別情報のうちから、一の医療機器の識別情報を選択する処理を含んでもよい(第3の構成)。
【0080】
第3の構成によれば、ユーザが入力操作を行えば、最も信号強度が大きい第2無線信号以外の第2無線信号に含まれる医療機器の識別情報を、患者の識別情報に関連付ける候補に設定することができる。そして、選択処理において、候補の中から、ユーザが所望する医療機器の識別情報を選択することができる。
【0081】
第1~第3の構成のいずれか1つにおいて、プログラムは、医療スタッフの識別情報を含む第3無線信号を、1つ又は複数の第3発信端末から受信する第3受信処理と、第3受信処理において複数の第3発信端末から第3無線信号を受信した場合、受信した複数の第3無線信号のうちの最も信号強度が大きい第3無線信号に含まれる医療スタッフの識別情報を選択する第3選択処理と、をプロセッサにさらに実行させるように構成されてもよい。送信処理は、第2選択処理において選択された医療機器の識別情報に、第3選択処理において選択された医療スタッフの識別情報と、第1選択処理において選択された患者の識別情報と、を関連付けた状態で、サーバ装置に送信する処理を含んでもよい(第4の構成)。
【0082】
第4の構成によれば、複数の医療スタッフの識別情報から1つの医療スタッフの識別情報を選択する作業が不要になる。この結果、患者と医療スタッフと医療機器とを関連付ける場合に、患者と医療スタッフと医療機器とを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することができる。
【0083】
第1~第4の構成のいずれか1つにおいて、サーバ装置には、処置又は注射オーダ情報が患者の識別情報に関連付けられて格納されてもよい。プログラムは、第1選択処理において選択された患者の識別情報に関連付けられた処置又は注射オーダ情報の送信を、サーバ装置に要求する第1要求処理と、処置又は注射オーダ情報を受信する処置又は注射オーダ情報受信処理と、をプロセッサにさらに実行させるように構成されてもよい(第5の構成)。
【0084】
第5の構成によれば、選択処理において選択された患者の識別情報に関連付けられた処置又は注射オーダ情報を取得することができる。
【0085】
第5の構成において、サーバ装置は、医療機器と通信可能に構成されていてもよい。サーバ装置は、医療機器から医療機器の設定情報を受信し、医療機器の設定情報を、医療機器の識別情報に関連付けて記憶するように構成されてもよい。プログラムは、第2選択処理において選択された医療機器の識別情報に関連付けられた医療機器の設定情報の送信を、サーバ装置に要求する第2要求処理と、医療機器の設定情報を受信する設定情報受信処理と、設定情報受信処理において受信した医療機器の設定情報と、処置又は注射オーダ情報受信処理において受信した処置又は注射オーダ情報とを照合する照合処理と、をプロセッサにさらに実行させるように構成されてもよい。送信処理は、照合処理において照合が成功した場合に、第1選択処理において選択された患者の識別情報を、第2選択処理において選択された医療機器の識別情報に関連付けた状態で、サーバ装置に送信する処理を含んでもよい(第6の構成)。
【0086】
第6の構成によれば、設定情報受信処理において受信した医療機器の設定情報と、処置又は注射オーダ情報受信処理において受信した処置又は注射オーダ情報と、を照合することができる。この結果、医療機器における設定内容が、処置又は注射オーダ情報と異なる状態になるのを防止することができる。
【0087】
第7の構成に係る医療情報管理システムは、患者の識別情報を含む第1無線信号を発信する1つ又は複数の第1発信端末と、医療機器の識別情報を含む第2無線信号を発信する1つ又は複数の第2発信端末と、医療機器の情報を管理するサーバ装置と、1つ又は複数の第1発信端末から第1無線信号を受信し、1つ又は複数の第2発信端末から第2無線信号を受信する通信部であって、サーバ装置と通信を行う通信部を備えた情報端末と、を備え、情報端末は、通信部により複数の第1発信端末から第1無線信号を受信した場合、受信した複数の第1無線信号のうちの最も信号強度が大きい第1無線信号に含まれる患者の識別情報を選択し、通信部により複数の第2発信端末から第2無線信号を受信した場合で、かつ、同一の種類の医療機器の識別情報を含む第2無線信号を受信した場合、複数の第2無線信号のうちの最も信号強度が大きい第2無線信号に含まれる医療機器の識別情報を選択し、選択された医療機器の識別情報に、選択された患者の識別情報を関連付けた状態で、医療機器の情報を管理するサーバ装置に送信し、サーバ装置は、情報端末から受信した患者の識別情報を、医療機器の識別情報に関連付けた状態で記憶する(第7の構成)。
【0088】
第7の構成によれば、患者と医療機器とを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することが可能な医療情報管理システムを提供することができる。
【0089】
第7の構成において、1つ又は複数の第1発信端末は、Bluetooth規格に準拠した通信のうちのBluetooth Low Energy通信による第1ビーコンを発信するように構成されてもよい。1つ又は複数の第2発信端末は、Bluetooth Low Energy通信による第2ビーコンを発信するように構成されてもよい。情報端末は、通信部により複数の第1発信端末から第1ビーコンを受信した場合、受信した複数の第1ビーコンのうちの最も信号強度が大きい第1ビーコンに含まれる患者の識別情報を選択し、通信部により複数の第2発信端末から第2ビーコンを受信した場合、受信した複数の第2ビーコンのうちの最も信号強度が大きい第2ビーコンに含まれる医療機器の識別情報を選択するように構成されてもよい(第8の構成)。
【0090】
ここで、病院等の医療施設では、患者が横たわるベッドに対して、患者の頭側で医療スタッフが処置するとともに、患者の足側に医療機器が配置される場合がある。この場合、第1発信端末(患者)と第2発信端末(医療機器)との距離は、1m以上3m以下の距離となる。このような場合、1m未満の範囲に無線信号を発信するRFIDを用いた近距離通信では、第1発信端末及び第2発信端末の両方から情報端末が無線信号を受信することが難しくなる。また、LANを用いた通信では、医療施設内の全ての患者、医療スタッフ、及び医療機器からの多数の無線信号を受信してしまう。これに対して、上記第8の構成によれば、Bluetooth規格に準拠した通信のうちのBluetooth Low Energy通信によるビーコンは、発信端末から3m範囲内に発信される。この結果、第1発信端末及び第2発信端末の両方から情報端末が無線信号(ビーコン)を受信することができる。そして、3mよりも離れた位置からのビーコンを受信しないので、多数の無線信号を受信してしまうのを防止することができる。
【0091】
第7又は第8の構成において、医療情報管理システムは、医療スタッフの識別情報を含む第3無線信号を発信する1つ又は複数の第3発信端末をさらに備えてもよい。通信部は、1つ又は複数の第3発信端末から第3無線信号を受信するように構成されてもよい。情報端末は、通信部により複数の第3発信端末から第3無線信号を受信した場合、受信した複数の第3無線信号のうちの最も信号強度が大きい第3無線信号に含まれる医療スタッフの識別情報を選択し、選択された医療機器の識別情報に、選択された医療スタッフの識別情報と選択された患者の識別情報とを関連付けた状態で、サーバ装置に送信するように構成されてもよい。サーバ装置は、情報端末から受信した医療スタッフの識別情報と患者の識別情報とを、医療機器の識別情報に関連付けた状態で記憶するように構成されてもよい(第9の構成)。
【0092】
第9の構成によれば、複数の医療スタッフの識別情報から1つの医療スタッフの識別情報を選択する作業が不要になる。この結果、患者と医療スタッフと医療機器とを関連付ける場合に、患者と医療スタッフと医療機器とを関連付けるために要する医療スタッフの作業負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0093】
10…医療機器、20…医療情報管理サーバ装置、30…情報端末、31…制御部、32…BLE通信部、33…LAN通信部、35a…プログラム、40…輸液ポンプ、50…ビーコン端末、50a…患者端末、50b…スタッフ端末、100…医療情報管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30