(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003766
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】有機電子素子および光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20240105BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240105BHJP
H10K 50/155 20230101ALI20240105BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20240105BHJP
C07D 241/36 20060101ALN20240105BHJP
C07D 487/04 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K85/60
H10K50/155
H10K30/86
C07D241/36
C07D487/04 147
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090626
(22)【出願日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2022102929
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】新井 信道
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】森中 裕太
【テーマコード(参考)】
3K107
4C050
5F149
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107AA03
3K107CC12
3K107DD72
3K107DD73
3K107DD78
3K107EE68
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB08
4C050CC08
4C050EE04
4C050FF03
4C050GG01
4C050HH01
5F149AB11
5F149BA14
5F149BB03
5F149BB06
5F149CB06
5F149DA30
5F149XA01
5F149XA43
5F149XA55
(57)【要約】
【課題】素子内で正孔を高効率に輸送することができる有機電子素子または光電変換素子を提供する。
【解決手段】本発明の有機電子素子は、第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含み、前記有機層は、正孔輸送促進材料を含有する正孔輸送促進層および正孔輸送材料を含有する正孔輸送層を含むか、または前記正孔輸送促進材料および前記正孔輸送材料が混合されてなる層を含み、正孔輸送促進材料として特定のシアノ基含有化合物を含有し、正孔輸送材料として特定の非アミン系化合物を含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む有機電子素子であって、
前記有機層は、正孔輸送促進材料を含有する正孔輸送促進層および正孔輸送材料を含有する正孔輸送層を含むか、または前記正孔輸送促進材料および前記正孔輸送材料が混合されてなる層を含み、
前記正孔輸送促進材料は、下記式(1)または式(2)で表される化合物を含有し、
前記正孔輸送材料は、下記式(3)で表される化合物を含有する、
有機電子素子。
【化1】
(式(1)中、mは0、1、2、3、または4を表す。
nは0、1、2、3、または4を表す。
Y
1およびY
2は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
1を表す。
Y
3およびY
4は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
2を表す。
R
1およびR
2は、各々独立に、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ基、ハロゲン原子、フルオロ基、フルオロアルキル基、ニトロ基、アセチル基、アミノ基、イミノ基、スルホ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基、またはシアノ基を表す。
mが2以上のとき、複数のR
1は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR
1は互いに環を形成してもよい。
nが2以上のとき、複数のR
2は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR
2は互いに環を形成してもよい。)
【化2】
(式(2)中、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、R
1、R
2、およびmは、式(1)における定義と同義である。
kは、0、1、2、3、4、5、または6を表す。
Y
5およびY
6は、各々独立に窒素原子、C-H、またはC-R
2を表す。)
【化3】
(式(3)中、
Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数6~40の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数3~40の第16族元素含有複素芳香族基を表す。
pは、0、1、2、または3を表す。
qは0、2、3、または3を表す。
rは0、1、2、3または4を表す。)
【請求項2】
第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む光電変換素子であって、
前記有機層は、受光層、正孔輸送材料を含有する正孔輸送層、および正孔輸送促進材料を含有する正孔輸送促進層を含み、
前記正孔輸送促進材料は、下記式(1)または式(2)で表される化合物を含有し、
前記正孔輸送材料は、下記式(3)で表される化合物を含有する、光電変換素子。
【化4】
(式(1)中、mは0、1、2、3、または4を表す。
nは0、1、2、3、または4を表す。
Y
1およびY
2は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
1を表す。
Y
3およびY
4は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
2を表す。
R
1およびR
2は、各々独立に、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ基、ハロゲン原子、フルオロ基、フルオロアルキル基、ニトロ基、アセチル基、アミノ基、イミノ基、スルホ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基、またはシアノ基を表す。
mが2以上のとき、複数のR
1は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR
1は互いに環を形成してもよい。
nが2以上のとき、複数のR
2は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR
2は互いに環を形成してもよい。)
【化5】
(式(2)中、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、R
1、R
2、およびmは、式(1)における定義と同義である。
kは、0、1、2、3、4、5、または6を表す。
Y
5およびY
6は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
2を表す。)
【化6】
(式(3)中、
Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数6~40の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数3~40の第16族元素含有複素芳香族基を表す。
pは、0、1、2、または3を表す。
qは0、2、3、または3を表す。
rは0、1、2、3、または4を表す。)
【請求項3】
式(1)および式(2)中のR1およびR2が、各々独立に、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアルケニル基、フルオロ基、フルオロアルキル基、またはシアノ基である、請求項1に記載の有機電子素子または請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
式(1)および式(2)中のR1およびR2が、各々独立に、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ノナフルオロブトキシ基、シアノフェニル基、ジシアノフェニル基、トリシアノフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオロナフチル基、ジフルオロナフチル基、シアノナフチル基、ジシアノナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基、ビストリフルオロメチルナフチル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいピリミジル基、置換されていてもよいピラジル基、または置換されていてもよいトリアジル基である、請求項1に記載の有機電子素子または請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項5】
式(1)および式(2)中のR2が電子求引性の置換基である、請求項1に記載の有機電子素子または請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項6】
式(1)および式(2)中のR1およびR2が電子求引性の置換基である、請求項1に記載の有機電子素子または請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項7】
式(1)中のnが2であり、2つのR2が各々独立にフルオロ基、トリフルオロメチル基、またはシアノ基である、請求項1に記載の有機電子素子または請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項8】
式(1)および式(2)中のY1~Y6のうち、少なくとも2つが窒素原子である、請求項1に記載の有機電子素子または請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項9】
式(1)および式(2)中のY3およびY4が窒素原子である、請求項1に記載の有機電子素子または請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項10】
式(3)中のAr
1が、下記式(3-1)~(3-19)のいずれかで表される部分構造を含む基である、請求項1に記載の有機電子素子または請求項2に記載の光電変換素子。
【化7】
【請求項11】
前記正孔輸送層と前記正孔輸送促進層が積層構造を有する、請求項1に記載の有機電子素子または請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項12】
前記受光層が少なくとも2成分からなる層である、請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項13】
前記光電変換素子が撮像素子用である、請求項2に記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の正孔輸送化合物と特定の正孔輸送促進化合物の組み合わせを含む、有機電子素子および光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機物を用いた新しい高機能デバイスの創製が積極的に試みられており、特に有機EL素子、光電変換素子等に関する研究開発が活発に行われ、デバイスの高性能化を目指した材料・デバイス設計が進められている。例えば、動画撮影用途に用いられる光電変換素子においては、受光層で生成したキャリア(電子および正孔)を電極に運ぶ速度が遅いと残像の原因になるという問題があった。有機EL素子においては、電極から発光層へキャリアを輸送する速度が遅いと、駆動電圧を上昇させるという問題があった。したがって、デバイスの高性能化のためには、素子内でのキャリアの高効率な移動が必要とされている。
【0003】
特許第5249781号には、特定のシアノ基含有化合物と芳香族アミン誘導体とを混合して、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入層又は正孔輸送層を形成することにより、駆動電圧の低電圧化や長寿命化を実現し得ることが報告されている。しかし、有機電子素子の分野においては一層の性能向上が求められており、そのためにさらなる改良を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、素子内で正孔を高効率に輸送することができる有機電子素子または光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、正孔輸送促進材料として特定のシアノ基含有化合物を用い、正孔輸送材料として非アミン系化合物を用いることにより、正孔を高効率に輸送し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
[1]第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む有機電子素子であって、
前記有機層は、正孔輸送促進材料を含有する正孔輸送促進層および正孔輸送材料を含有する正孔輸送層を含むか、または前記正孔輸送促進材料および前記正孔輸送材料が混合されてなる層を含み、
前記正孔輸送促進材料は、下記式(1)または式(2)で表される化合物を含有し、
前記正孔輸送材料は、下記式(3)で表される化合物を含有する、
有機電子素子。
【0008】
【化1】
(式(1)中、mは0、1、2、3、または4を表す。
nは0、1、2、3、または4を表す。
Y
1およびY
2は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
1を表す。
Y
3およびY
4は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
2を表す。
R
1およびR
2は、各々独立に、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ基、ハロゲン原子、フルオロ基、フルオロアルキル基、ニトロ基、アセチル基、アミノ基、イミノ基、スルホ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基、またはシアノ基を表す。
mが2以上のとき、複数のR
1は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR
1は互いに環を形成してもよい。
nが2以上のとき、複数のR
2は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR
2は互いに環を形成してもよい。)
【0009】
【化2】
(式(2)中、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、R
1、R
2、およびmは、式(1)における定義と同義である。
kは、0、1、2、3、4、5、または6を表す。
Y
5およびY
6は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
2を表す。)
【0010】
【化3】
(式(3)中、
Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数6~40の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数3~40の第16族元素含有複素芳香族基を表す。
pは、0、1、2、または3を表す。
qは0、2、3、または3を表す。
rは0、1、2、3または4を表す。)
【0011】
[2]第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む光電変換素子であって、
前記有機層は、受光層、正孔輸送材料を含有する正孔輸送層、および正孔輸送促進材料を含有する正孔輸送促進層を含み、
前記正孔輸送促進材料は、下記式(1)または式(2)で表される化合物を含有し、
前記正孔輸送材料は、下記式(3)で表される化合物を含有する、光電変換素子。
【化4】
(式(1)中、mは0、1、2、3、または4を表す。
nは0、1、2、3、または4を表す。
Y
1およびY
2は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
1を表す。
Y
3およびY
4は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
2を表す。
R
1およびR
2は、各々独立に、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ基、ハロゲン原子、フルオロ基、フルオロアルキル基、ニトロ基、アセチル基、アミノ基、イミノ基、スルホ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基、またはシアノ基を表す。
mが2以上のとき、複数のR
1は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR
1は互いに環を形成してもよい。
nが2以上のとき、複数のR
2は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR
2は互いに環を形成してもよい。)
【0012】
【化5】
(式(2)中、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、R
1、R
2、およびmは、式(1)における定義と同義である。
kは、0、1、2、3、4、5、または6を表す。
Y
5およびY
6は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R
2を表す。)
【0013】
【化6】
(式(3)中、
Ar
1、Ar
2、およびAr
3は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数6~40の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数3~40の第16族元素含有複素芳香族基を表す。
pは、0、1、2、または3を表す。
qは0、2、3、または3を表す。
rは0、1、2、3、または4を表す。)
【0014】
[3]式(1)および式(2)中のR
1およびR
2が、各々独立に、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアルケニル基、フルオロ基、フルオロアルキル基、またはシアノ基である、[1]に記載の有機電子素子または[2]に記載の光電変換素子。
[4]式(1)および式(2)中のR
1およびR
2が、各々独立に、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ノナフルオロブトキシ基、シアノフェニル基、ジシアノフェニル基、トリシアノフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオロナフチル基、ジフルオロナフチル基、シアノナフチル基、ジシアノナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基、ビストリフルオロメチルナフチル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいピリミジル基、置換されていてもよいピラジル基、または置換されていてもよいトリアジル基である、[1]に記載の有機電子素子または[2]に記載の光電変換素子。
[5]式(1)および式(2)中のR
2が電子求引性の置換基である、[1]に記載の有機電子素子または[2]に記載の光電変換素子。
[6]式(1)および式(2)中のR
1およびR
2が電子求引性の置換基である、[1]に記載の有機電子素子または[2]に記載の光電変換素子。
[7]式(1)中のnが2であり、2つのR
2が各々独立にフルオロ基、トリフルオロメチル基、またはシアノ基である、[1]に記載の有機電子素子または[2]に記載の光電変換素子。
[8]式(1)および式(2)中のY
1~Y
6のうち、少なくとも2つが窒素原子である、[1]に記載の有機電子素子または[2]に記載の光電変換素子。
[9]式(1)および式(2)中のY
3およびY
4が窒素原子である、[1]または[2]に記載の素子。
[10]式(3)中のAr
1が、下記式(3-1)~(3-19)のいずれかで表される部分構造を含む置換基である、[1]に記載の有機電子素子または[2]に記載の光電変換素子。
【化7】
[11]前記正孔輸送層と前記正孔輸送促進層が積層構造を有する、[1]に記載の有機電子素子または[2]に記載の光電変換素子。
[12]前記受光層が少なくとも2成分からなる層である、[2]に記載の光電変換素子。
[13]前記光電変換素子が撮像素子用である、[2]に記載の光電変換素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機電子素子は、上記式(1)または式(2)で表される化合物を含有する正孔輸送促進層と、上記式(3)で表される化合物を含有する正孔輸送層が積層されることにより、または上記式(1)または式(2)で表される化合物と上記式(3)で表される化合物の2つの層の構成材料が混合されてなる層を含有することにより、有機電子素子内のキャリア注入障壁またはキャリア輸送障壁を低くすることができる。それにより、本発明の有機電子素子は、正孔の輸送能力を顕著に向上させることができ、駆動電圧を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の有機EL素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるHOD(Hole Only Device)素子の積層構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(有機電子素子・光電変換素子)
本発明の有機電子素子は、有機電界発光素子(有機EL素子)および光電変換素子を含む。光電変換素子は、光エネルギーを電気エネルギーや電気信号に変換する素子であり、撮像素子、光センサ、太陽電池等を含む。本発明の有機電子素子は、光電変換素子である事が好ましく、光電変換素子が撮像素子用である事が更に好ましい。
【0018】
本発明の有機電子素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含む。有機層は正孔輸送領域を含み、正孔輸送領域は、正孔輸送促進層および正孔輸送層を含むか、または正孔輸送促進層および正孔輸送層の正孔輸送促進材料および正孔輸送材料が混合されてなる層を含む。ここで、正孔輸送層は正孔を輸送する役割を有し、正孔輸送材料を含む。正孔輸送促進層は、第一の電極と正孔輸送層の間に配置され、正孔輸送と電極の間の正孔のやりとりをスムーズにする役割を有し、正孔輸送促進材料を含む。
【0019】
本発明の光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含む。有機層は、受光層、正孔輸送層、および正孔輸送促進層を含有する。
【0020】
<正孔輸送促進材料>
本発明の有機電子素子または光電変換素子に含まれる正孔輸送促進層は、正孔輸送促進材料として下記式(1)または式(2)で表される化合物を含有する。
【化8】
【化9】
【0021】
式(1)および式(2)中、mは0、1、2、3、または4を表し、nは0、1、2、3、または4を表す。kは、0、1、2、3、4、5、または6を表す。
【0022】
Y1およびY2は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R1を表し、Y3およびY4は、各々独立に、窒素原子、C-H、またはC-R2を表す。Y5およびY6は、各々独立に窒素原子、C-H、またはC-R2を表す。Y1~Y6のうち、少なくとも2つ以上が窒素原子であることが好ましく、Y3およびY4が共に窒素原子であることが更に好ましい。
【0023】
R1およびR2は、各々独立に、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素)、フルオロ基、フルオロアルキル基、ニトロ基、アセチル基、アミノ基、イミノ基、スルホ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基、またはシアノ基を表す。
【0024】
アリール基は、好ましくは炭素数6~40のアリール基であり、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基等が挙げられる。
ヘテロアリール基は、好ましくは炭素数3~40のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、ナジチリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナントリジニル基、ピロリル基、インドリル基、インドリジニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾカルボリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、キサンテニル基、スピロキサンテニル基、ベンゾキサンテニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアザリル基等が挙げられる。
アルキル基は、好ましくは炭素数1~40の直鎖、分枝、または環式のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、sec-イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等が挙げられる。環式のアルキル基は単環式、多環式、または縮合環式のアルキル基であってよい。
アルケニル基は、好ましくは炭素数2~40の直鎖、分枝、または環式のアルケニル基であり、環式のアルケニル基は単環式、多環式、または縮合環式のアルケニル基であってよい。例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキセン基、シクロペンテン基、シクロヘキセン基、ノルボルネン基等が挙げられる。
アルコキシ基は、好ましくは炭素数1~40の直鎖、分枝、または環式のアルコキシ基であり、環式のアルコキシ基は単環式、多環式、または縮合環式のアルコキシ基であってよい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基は、好ましくは炭素数6~40のアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基等が挙げられる。
ヘテロアリールオキシ基は、好ましくは炭素数3~40のヘテロアリールオキシ基であり、例えば、ピリジノキシ基、ピリミジノキシ基等が挙げられる。
【0025】
R1およびR2に置換されていてもよい置換基としては、特に限定されないが、各々独立に、フルオロ基、ブロモ基、クロロ基、ヨウド基、シアノ基、アミノ基、アリル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tertブチル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ノナフルオロブトキシ基、アセチル基、イミノ基、フェニル基、シアノフェニル基、ジシアノフェニル基、トリシアノフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオロナフチル基、ジフルオロナフチル基、シアノナフチル基、ジシアノナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基、ビストリフルオロメチルナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基等が挙げられる。これらの置換基の中で、性能が優れる点で、フルオロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、フェニル基、ピリジル基が好ましく、蒸着性に優れる点で、フルオロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基が更に好ましい。
【0026】
R1およびR2としては、各々独立に、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよいアルケニル基、フルオロ基、フルオロアルキル基、またはシアノ基であるのが性能が優れる点で好ましく、各々独立に、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ノナフルオロブトキシ基、シアノフェニル基、ジシアノフェニル基、トリシアノフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオロナフチル基、ジフルオロナフチル基、シアノナフチル基、ジシアノナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基、ビストリフルオロメチルナフチル基、置換されていてもよいピリジル基、置換されていてもよいピリミジル基、置換されていてもよいピラジル基、または置換されていてもよいトリアジル基であることが更に好ましい。
式(1)および式(2)中のR2が電子求引性の置換基であることが好ましく、R1およびR2が共に電子求引性の置換基であることが更に好ましい。ここでの「電子求引性の置換基」は、R1またはR2が水素原子のときと比べて式(1)および式(2)で表される化合物のLUMO準位がより深くなる様な置換基を表す。電子求引性の置換基としての具体的な例は、特に限定されないが、フルオロ基、ブロモ基、クロロ基、ヨウド基、シアノ基、フルオロアルキル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ノナフルオロブトキシ基、アセチル基、イミノ基、フェニル基、シアノフェニル基、ジシアノフェニル基、トリシアノフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオロナフチル基、ジフルオロナフチル基、シアノナフチル基、ジシアノナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基、ビストリフルオロメチルナフチル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基等が挙げられ、フルオロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ピリジル基、シアノフェニル基が更に好ましい。
【0027】
mが2以上のとき、複数のR1は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR1は互いに環を形成してもよい。また、nが2以上のとき、複数のR2は同一でも相異なっていてもよく、隣接したR2は互いに環を形成してもよい。
化合物のLUMO準位を調整するためには、R2が電子求引性の基であるか、またはR1およびR2が共に電子求引性の基であることが好ましい。また、nが2であり、かつ2つのR2が共に電子求引基であることが好ましい。
【0028】
式(1)または式(2)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明に用いる式(1)または式(2)で表される化合物は以下の化合物に限定されない。
【化10】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
式(1)または式(2)で表される化合物は、公知の方法により合成できる。例えば、例えば、国際公開第2008/072586号等に開示された方法により合成することができる。
【0034】
<正孔輸送材料>
正孔輸送層は、正孔輸送材料として下記式(3)で表される化合物を含有する。
【化15】
【0035】
式(3)中、Ar1、Ar2、およびAr3は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数6~40の芳香族炭化水素基、置換されていてもよい炭素数3~40の第16族元素含有複素芳香族基を表し、pは、0、1、2、または3を表し、qは0、2、3、または3を表し、rは0、1、2、3、または4を表す。
【0036】
第16族元素含有複素芳香族基は、第16族元素の酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、またはリバモリウムを含有する複素芳香族基であり、好ましくは酸素または硫黄を含有する複素芳香族基である。例えば、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、これらの組み合わせ等を部分構造として含む複素芳香族基が挙げられる。
【0037】
Ar1、Ar2、およびAr3の好ましい例としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、テトラセニル基、ベンゾクリセニル基、ジベンゾクリセニル基、フルオレニル基、ジメチルフルオレニル基、ジフェニルフルオレニル基、スピロフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、チアジアゾーリル基、チエニル基、ビチエニル基、フリル基、ビフリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、ベンゾジチオフェニル基、ベンゾジフラニル基、ベンゾナフトチオフェニル基、ベンゾナフトフラニル基、ベンゾチエノベンゾチオフェニル基、ベンゾフリルベンゾフリル基、フェナントロジチオフェニル基、フェナントロジフラニル基、アントラジチオフェニル基、アントラジフラニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾキノリル基、フェナントロリル基等が挙げられる。Ar2はこれらの2価の基である。また、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0038】
Ar1、Ar2、およびAr3における置換されていてもよい置換基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨウド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ノナフルオロブトキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フリル基、チオフェニル基、シアノ基等が挙げられる。性能が優れる点でフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、メチル基、メトキシ基、アダマンチル基が好ましく、フェニル基、またはアダマンチル基がより好ましい。
【0039】
式(3)で表される化合物は、式(1)および式(2)の化合物との適合性がよい点で、Ar
1が以下の式(3-1)~(3-19)で表される部分構造を有する基であることが好ましい。
【化16】
【0040】
式(3)で表される化合物は非アミン系化合物であることを特徴とする。式(3)で表される化合物は公知の化合物であってもよい。式(3)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、本発明に用いる式(3)で表される化合物は以下の化合物に限定されない。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
式(3)で表される化合物は、公知の化合物の合成方法およびそれらの組み合わせにより合成することができる。例えば、(スキーム1)または(スキーム2)に示されるカップリング反応等を用いることによって合成することができる。
【化30】
(スキーム1)または(スキーム2)におけるMはカップリング反応に供することができる置換基を表し、例えば、ホウ素含有基、亜鉛含有基、マグネシウム含有基、リチウム含有基、ケイ素含有基、スズ含有基等が挙げられる。Yはカップリング反応に供することができる脱離基を表し、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフラート基等が挙げられる。カップリング反応に用いることができる触媒としては、パラジウム触媒、ニッケル触媒、鉄触媒、ロジウム触媒等が挙げられ、ホスフィン配位子やカルベン配位子を有していてもよい(詳しい反応条件は、例えばChem. Rev. 2018, 118, 2249-2295等を参考にすることができる)。(スキーム1)または(スキーム2)で表されるカップリング反応は必要に応じて塩基を加えてもよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、フッ化セシウム等が挙げられる。また、反応溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、DMF、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、エタノール、メタノール、水、ジオキサン、ジメトキシエタン、NMP等が挙げられ、必要に応じてこれらを混合して用いてもよい。反応温度は反応溶媒に応じて通常0~140℃の間で選択でき、60~120℃の範囲が最もよく用いられる。
Ar
1を部分構造として有する中間体は従来公知の方法で合成することが可能である。例えば2004-67528号、特表2008-515936号、国際公開2015/163349号に開示されている方法により合成することができる。。
【0055】
<有機電子素子の層構成>
本発明の有機電子素子において、有機層は正孔輸送促進材料を含有する正孔輸送促進層および正孔輸送材料を含有する正孔輸送層を含むか、または正孔輸送促進材料および正孔輸送材料が混合されてなる層を含む。正孔輸送促進層および正孔輸送層、または正孔輸送促進材料および正孔輸送材料が混合されてなる層は正孔輸送領域に含まれる。正孔輸送領域は、第一の電極と受光層(または発光層)との間の領域を指す。好ましくは正孔輸送領域は第一の電極に隣接している。有機層は正孔輸送領域以外の他の層を含むことができる。他の層としては一般に有機電子素子に使用される層が挙げられる。例えば、受光層または発光層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層、バッファ層等が挙げられるが、これらに限定されない。正孔輸送領域は、例えばバッファ層等の他の層を含有してもよい。
【0056】
本発明の有機電子素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、および第二の電極がこの順で積層されているか、または第一の電極、正孔輸送促進材料および正孔輸送材料が混合されてなる層、および第二の電極がこの順で積層されている。本発明の有機電子素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、および正孔輸送層がこの順で隣接して積層されていてもよいし、また、第一の電極と正孔輸送促進層の間、または正孔輸送促進層と正孔輸送層の間にバッファ層等の他の層が介在していてもよい。
【0057】
一形態において、本発明の有機電子素子は、第一の電極、正孔輸送促進層(正孔注入層)、正孔輸送層、発光層、および第二の電極がこの順で積層されている有機EL素子である。別の形態において、本発明の有機電子素子は、第一の電極、正孔輸送促進層(正孔注入層)、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および第二の電極がこの順で積層されている有機EL素子である。上記各層は隣接して積層されていてもよいし、上記任意の層と層の間に他の層が介在していてもよい。有機EL素子の場合、正孔輸送促進層は一般に正孔注入層と呼ばれる層に正孔輸送促進材料を添加した層であってもよい。
【0058】
有機EL素子は、第一の電極側および第二の電極側のいずれから光を取り出してもよく、第一の電極および第二の電極のいずれが透明電極であってもよい。例えば、透明電極(第二の電極)、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔輸送促進層(正孔注入層)、および金属電極(第一の電極)の順に積層された構造であってよく、透明電極(第一の電極)、正孔輸送促進層(正孔注入層)、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び金属電極(第二の電極)の順に積層された構造であってもよい。更に、前記第一の電極および第二の電極は共に透明電極であってもよい。
【0059】
本発明の有機電子素子は光電変換素子であってもよい。本発明の光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を有し、有機層は、受光層、正孔輸送層、および正孔輸送促進層を含有する。本発明の光電変換素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、および正孔輸送層がこの順で隣接して積層されていてもよいし、また、第一の電極と正孔輸送促進層の間、または正孔輸送促進層と正孔輸送層の間にバッファ層等の他の層が介在していてもよい。一形態において、本発明の光電変換素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、および第二の電極がこの順で積層されている。別の形態において、本発明の光電変換素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および第二の電極がこの順で積層されている。上記各層は隣接して積層されていてもよいし、上記任意の層と層の間に他の層が挿入されていてもよい。
【0060】
光電変換素子は、第一の電極側および第二の電極側のいずれから光が入射してもよく、第一の電極および第二の電極のいずれが透明電極であってもよい。例えば、透明電極(第二の電極)、電子輸送層、受光層、正孔輸送層、正孔輸送促進層、および金属電極(第一の電極)の順に積層された構造であってよく、透明電極(第一の電極)、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、電子輸送層、及び金属電極(第二の電極)の順に積層された構造であってもよい。更に、前記第一の電極および第二の電極は共に透明電極であってもよい。
【0061】
本発明者らは、有機EL素子または光電変換素子の正孔輸送領域において、式(1)または式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物が組み合わされることにより、具体的には正孔輸送促進層および正孔輸送層が、それぞれ式(1)または式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物とを含有することにより、または式(1)または式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物とが混合されてなる層を含むことにより、正孔の輸送能力が飛躍的に向上することを見出した。
【0062】
上記の正孔の輸送能力の飛躍的な向上は、式(3)で表される非アミン系化合物である場合に認められた。一方で、式(3)で表される化合物をアミン系材料であるNPDに置き換えた際には同様な効果が見られなかった。したがって、理論に拘束されるものではないが、本発明に用いる正孔輸送促進材料(式(1)または式(2)で表される化合物)と、強いドナーを持ち他層との相互作用を引き起こしやすいアミン系化合物を組み合わせると、電荷移動錯体の形成によって、正孔輸送時の何かしらの抵抗として働くと推察される。式(3)で表される化合物が非アミン系化合物である場合には、本発明に用いる正孔輸送促進材料との相互作用が適度に抑制され、キャリア移動が容易に進んで素子の大幅な低電圧化が達成されると推察される。
【0063】
<実施形態>
本発明の有機電子素子の積層構成として、例えば(i)または(ii)の構成が挙げられる。
(i):第一の電極/正孔輸送促進層/正孔輸送層/受光層/第二の電極
(ii):第一の電極/正孔輸送促進層/正孔輸送層/受光層/電子輸送層/第二の電極
【0064】
以下、本発明の光電変換素子および有機EL素子を、上記(ii)の構成を例に挙げて、
図1および
図2を参照しながら更に詳細に説明する。
図1は、本発明の光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図であり、
図2は本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
【0065】
<<第1の実施形態>>
第1の実施形態による有機電子素子は、
図1に示す積層構成を備えた有機撮像素子または光センサである。
光電変換素子1は、第一の電極11(第一の電極)、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、電子輸送層15、および第二の電極16(第二の電極)をこの順で備える。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。なお、上記各層のうち、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、および電子輸送層15が、有機層100を構成している。
【0066】
図1に示す光電変換素子1では、透明である第一の電極11の上方から、光が入射し、受光層14で受光する。なお、
図1では便宜上受光層14の側面から光が入射するように示されている。また、光電変換素子1は、受光層14で光電変換により発生した電荷(正孔および電子)のうち、正孔を第一の電極11に移動させ、電子を第二の電極16に移動させるように、電圧が印加される。すなわち、第一の電極11を正孔捕集電極とし、第二の電極16を電子捕集電極としている。なお、
図1では、第一の電極11の上面に設けられた基板が省略されている。ここでの基板としては特に限定はなく、例えばガラス板、石英板、プラスチック板等が挙げられる。また、基板側から光が入射する構成の場合、基板は光の波長に対して透明である。以下では、上記各層について説明する。
【0067】
[第一の電極11]
基板上には第一の電極11または第二の電極16が設けられている。
光が第一の電極11を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子の場合、第一の電極は当該光を通すかまたは実質的に通す透明材料で形成される。ここで、「光を通す」とは平均透過率が80%以上であることいい、「実質的に通す」とは平均透過率が50%以上であるこという。すなわち、本明細書において、「透明」とは平均透過率が50%以上であることを意味する。
【0068】
第一の電極11または第二の電極16に用いられる透明材料としては、特に限定されないが、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、および硫化亜鉛等の金属硫化物等が挙げられる。
【0069】
なお、第二の電極16側のみから光が受光層14に入射する構成の光電変換素子の場合、第一の電極11の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の第一の電極に用いられる材料の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等が挙げられる。
【0070】
[正孔輸送促進層12]
第一の電極11と後述する正孔輸送層13との間には、正孔輸送促進層12が設けられている。正孔輸送促進層12は、正孔輸送層13から第一の電極11への正孔輸送を促進させるために設けられる。正孔輸送促進層12は、前述の式(1)または式(2)で表される化合物を含有する。また、上記化合物以外の化合物を一緒に含有させることもできる。正孔輸送促進層12に含有させることができる化合物としては、例えば従来公知の正孔輸送材料が挙げられ、後述の正孔輸送層13に用いる化合物等が挙げられる。
【0071】
[正孔輸送層13]
正孔輸送促進層12と受光層14との間には、正孔輸送層13が設けられている。
正孔輸送層13は、受光層14で発生した正孔を受光層14から第一の電極11へ輸送する役割と、受光層14で発生した電子が第一の電極11側へ移動するのをブロックする役割とを有する。また用途によっては第一の電極11からの電子注入をブロックする役割を有することもある。
【0072】
正孔輸送層13は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。正孔輸送層13に含有させることができる正孔輸送材料は、公知の正孔輸送材料であってよく、正孔輸送材料としては前述の式(3)で表される非アミン系化合物が挙げられる。また、正孔輸送層13は、式(3)で表される化合物以外の化合物を含有させることもできる。正孔輸送層13に含有させることができる化合物としては、例えば、従来公知のアミン系材料以外の正孔輸送材料が挙げられる。
【0073】
[受光層14]
正孔輸送層13と後述する電子輸送層15との間には、受光層14が設けられている。
受光層14の材料としては、光電変換機能を有する材料が挙げられる。
【0074】
受光層14は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
一種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、例えば、(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体等が挙げられる。
二種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、例えば、前述の(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体と、(ii)フラーレンおよびその誘導体との組み合わせが挙げられる。これらの材料からなる受光層4の作製は、予め粉末を混合した状態で蒸着させて形成しても良いし、任意の割合で共蒸着することで形成しても良い。
三種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、前述の(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体、(ii)フラーレンおよびその誘導体、および(iii)正孔輸送材料との組み合わせが挙げられる。これらの材料からなる受光層14の作製は、予め粉末を混合した状態で蒸着させて形成しても良いし、任意の割合で共蒸着することで形成しても良い。
【0075】
(i)クマリン誘導体の具体例としては、クマリン6、クマリン30が挙げられる。キナクリドン誘導体の具体例としては、N,N-ジメチルキナクリドンが挙げられる。フタロシアニン誘導体の具体例としては、ホウ素サブフタロシアニンクロリド、ホウ素サブナフタロシアニンクロリド(SubNC)が挙げられる。
(ii)フラーレンおよびその誘導体の具体例としては、[60]フラーレン、[70]フラーレン、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチル([60]PCBM)が挙げられる。
(iii)正孔輸送材料の好ましい化合物および具体例としては、前述の正孔輸送層13で用いるものと同じものが挙げられる。
【0076】
また、光電変換機能を有する材料は受光層のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、光電変換機能を有する材料は、受光層14に隣接した層(正孔輸送層13、または電子輸送層15)が含有していてもよい。
【0077】
[電子輸送層15]
受光層14と後述する第二の電極16との間には、電子輸送層15が設けられている。
電子輸送層15は、受光層14で発生した電子を第二の電極16へ輸送する役割と、電子輸送先の第二の電極16から受光層14に正孔が移動するのをブロックする役割とを有する。また用途によっては第二の電極6からの正孔注入をブロックする役割を有することもある。
【0078】
また、電子輸送層15にに含有させることができる電子輸送材料は、公知の電子輸送材料であってよく、電子輸送材料としては、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジン、N,N’-ジフェニル-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、およびN,N’-ジ(4-ピリジル)-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
【0079】
電子輸送層15は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0080】
[第二の電極16]
電子輸送層15上には第二の電極16が設けられている。
第二の電極16の材料としては、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、金、白金、希土類金属、酸化モリブデン等が挙げられる。尚、前記第一の電極11と第二の電極16は同一であっても相異なっていてもよい。
【0081】
[各層の形成方法]
以上説明した第一の電極11、第二の電極16を除く各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて結着樹脂等の材料、溶剤と共に)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法等の公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm以上5μm以下の範囲である。
【0082】
第一の電極11および第二の電極16は、電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリング等によって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0083】
第一の電極11および第二の電極16の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0084】
第一の電極11および第二の電極16は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えても良い(逆型構造とも呼ばれる)。このような構造の場合、光は第二の電極16を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子となる。
【0085】
本実施形態の光電変換素子を備えた撮像素子は、例えば、デジタルカメラやデジタルビデオカメラの撮像素子、および携帯電話等に内蔵された撮像素子に適用することができる。光センサは、例えば、テレビのリモコンやエアコンのスイッチ、自動ドアの開閉等に適用することができる。
【0086】
<<第2の実施形態>>
本発明の第2の実施形態による有機電子素子は、
図1に示す積層構成を備えた太陽電池である。太陽電池1は、第一の電極11と受光層14との間に正孔輸送促進層12および正孔輸送層13が設けられており、第二の電極16と受光層14との間には電子輸送層15が設けられている。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。なお、上記各層のうち、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、および電子輸送層15が、有機層100を構成している。
【0087】
[第一の電極11]
第一の電極11は、例えば透明材料からなり、透明材料は第1の実施形態における透明材料を用いることができる。第一の電極11は任意の基材(例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム等の透明基板)上に形成されていてもよい。
【0088】
[正孔輸送促進層12]
正孔輸送促進層12の材料は、第1の実施形態における正孔輸送促進層12の材料と同じである。正孔輸送促進層12の材料は、第1の実施形態における正孔輸送促進材料以外に、例えば、アミン系材料以外の従来公知の正孔輸送材料を含有してもよい。
【0089】
[正孔輸送層13]
正孔輸送層13の材料は、第1の実施形態における正孔輸送層13の材料と同じである。正孔輸送層13の材料は、第1の実施形態における正孔輸送材料以外に、例えば、アミン系材料以外の従来公知の正孔輸送材料を含有してもよい。
【0090】
[受光層14]
受光層14の材料は、電子供与材料および電子受容材料を用いたものであればよく、電子供与材料と電子受容材料とが平面同士で結合された平面結合型でも、電子供与材料と電子受容材料とが混合して成膜されたバルクヘテロ結合型でもよい。
電子供与材料は特に限定されないが、有機半導体が好ましい。電子供与材料としては、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体等の高分子化合物およびそれらの共重合体、あるいはフタロシアニン誘導体およびその金属錯体、ポルフィリン誘導体およびその金属錯体、ペンタセン等のアセン誘導体、ジアミン誘導体等の低分子化合物等が挙げられる。電子供与材料は、本発明の効果を損なわない範囲において有機半導体とともに無機半導体を用いることもできる。
電子受容材料は特に限定されないが、有機半導体が好ましい。電子受容材料としては、例えば、フラーレン誘導体、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体等が挙げられる。
【0091】
[電子輸送層15]
電子輸送層15の材料は、第1の実施形態における電子輸送材料を用いることができる。また、電子輸送材料としてフッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、フッ化カルシウム等のアルカリ土類金属ハロゲン化合物、炭酸セシウム等の炭酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機系n型半導体を用いてもよい。
【0092】
[第二の電極16]
第二の電極16は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛等の金属、またはこれらの合金が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
第一の電極11および第二の電極16は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えても良い(逆型構造とも呼ばれる)。このような構造の場合、光は第二の電極16を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子となる。
【0094】
[各層の形成方法]
各層の形成方法は特に限定されず、例えば基板上に、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、パターン転写法等を用いて第一の電極11、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、電子輸送層15、および第二の電極16を順次積層してもよいし、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、および電子輸送層15を積層した後、この積層体に第一の電極11および第二の電極16をそれぞれ転写、蒸着、スパッタリング等によって形成してもよい。
【0095】
<<第3の実施形態>>
本発明の第3の実施形態による有機電子素子は、
図2に示す積層構成を備えた有機EL素子である。すなわち、有機EL素子2は、第一の電極21、正孔輸送促進層22、正孔輸送層23、発光層24、電子輸送層25、および第二の電極26がこの順で設けられている。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。なお、上記各層のうち、正孔輸送促進層22、正孔輸送層23、受光層24、および電子輸送層25が、有機層200を構成している。
【0096】
[第一の電極21]
第一の電極21は、正孔を正孔輸送層から発光層へ注入する役割を有する。第一の電極21としては、
インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、金、銀、白金、銅等の透明電極、アルミ、モリブデン、クロム、ニッケル等の金属や合金、高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0097】
有機電子素子は、第一の電極21および第二の電極26のいずれの側の面を発光させてもよいし、両面を発光させてもよい。光を取り出す側の電極は、ITO、IZO等の透明材料で形成される。なお、
図2では便宜上発光層24の側面から光を放出するように示されている。
【0098】
[正孔輸送促進層22]
第一の電極21と後述する正孔輸送層23との間には、正孔輸送促進層22が設けられている。正孔輸送促進層22は、第一の電極21から正孔輸送層23への正孔輸送を促進させるために設けられる。正孔輸送促進層22は正孔輸送促進材料として、前述の式(1)または式(2)で表される化合物を含有する。正孔輸送促進層22は上記化合物以外の化合物を一緒に含有させることもできる。正孔輸送促進層22に含有させることができる化合物としては、例えば従来公知の正孔注入材料が挙げられる。
【0099】
[正孔輸送層23]
正孔輸送促進層22と発光層24との間には、正孔輸送層23が設けられている。
正孔輸送層23は、第一の電極21から注入された正孔を発光層24へ輸送する役割を有する。
正孔輸送層23は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。正孔輸送層23に含有させることができる正孔輸送材料としては前述の式(3)で表される非アミン系化合物が挙げられる。正孔輸送材料は、公知の正孔輸送材料であってよい。また、正孔輸送層23は、式(3)で表される化合物以外の化合物を含有させることもできる。正孔輸送層23に含有させることができる化合物としては、例えば従来公知の正孔輸送材料が挙げられる。
【0100】
[発光層24]
発光層24は、第一の電極21から注入された正孔と第二の電極26から注入された電子が再結合し、発光(燐光または蛍光)を生じさせる役割を有し、発光材料と必要に応じて発光ホスト材料を含む。発光材料および発光ホスト材料は、公知のものから適宜選択することができる。発光材料および発光ホスト材料としては、例えば、トリアジン誘導体(カルバゾール等が置換されたTADF材料を含む)、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ルブレン誘導体、デカシクレン誘導体等の炭素縮合環系色素;ペリレンジイミド等のペリレン誘導体、ローダミンB等のキサンテン系色素、シアニン系色素、クマリン6やC545T等のクマリン系色素、Qd4やDEQ等のキナクリドン系色素、スクアリウム系色素、スチリル系色素、ピラゾロン誘導体、NileRed等のフェノキサゾン系色素、カルバゾール、トリアリールアミン、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、トリス[2-フェニル-4-(2-エチルシクロヘキシルオキシ)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(ehppy)3)等のイリジウム錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、Al、Zn、BeまたはTb、Eu、Dy等の希土類金属からなる中心金属、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等の配位子から構成される金属錯体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
[電子輸送層25]
電子輸送層25は、第二の電極と発光層との間に設けられ、第二の電極から注入された電子を発光層へ輸送する機能を有し、電子輸送材料を含む。電子輸送材料としては、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、ビス(2-メチル-8-キノリノレート)-4-(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、1,4,4’-bis(2,2’-diphenylvinyl)-1,1’-bipheny(DPVBi)、(2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)(PBD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、シロール誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
[第二の電極26]
第二の電極26は、電子を電子輸送層25から発光層24へ注入する役割を有する。第二の電極26としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、セシウム添加ITO等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0103】
[各層の形成方法]
有機電子素子2の各層の形成方法は、例えば、まず適当な透光性基板(図示せず)上に第一の電極21の材料からなる薄膜を蒸着、スパッタリング等の方法により形成する。第一の電極21上に正孔輸送促進層22および正孔輸送層23をこの順に成膜する。正孔輸送促進層22および正孔輸送層23の成膜は、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができる。次に、正孔輸送層23の上に発光層24を設ける。発光層24の形成も所望の有機発光材料を用いて真空蒸着法、スパッタリング、スピンコート法、キャスト法等の方法により有機発光材料を薄膜化することにより形成することができる。次に、発光層24の上に電子輸送層25を形成する。電子輸送層25は、正孔輸送層、発光層と同様の方法により形成することができる。最後に電子輸送層25の上に第二の電極26を積層する。第二の電極26は所望の金属材料を蒸着法、スパッタリング等の方法により形成することができる。有機EL素子の各層の形成方法は上記方法に限定されない。例えば、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)、材料を溶媒に溶解した溶液を使用したディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0104】
本発明の有機電子素子およびその各層の形成方法は、上述の実施形態に示した素子および方法に限定されない。例えば、第一の電極、受光層(または発光層)、電子輸送層、第二の電極の材料は公知の他の材料と適宜置き換えることができる。また、正孔輸送促進層および正孔輸送層は、正孔輸送促進材料と正孔輸送材料を混合して形成された層に置き換えることもできる。
【実施例0105】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
【0106】
【0107】
化合物A-1および化合物A-19は、国際公開第2008/072586号に開示された方法にしたがい、合成した。
【0108】
合成例1(化合物BA-3の合成)
【化32】
窒素気流下、200mLの二口フラスコに、3-クロロジベンゾ[g,p]クリセン(1.70g,4.69mmоl)、5,5-ジメチル-2-(4-アダマンチル-1-イルフェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1.67g,5.15mmоl)、酢酸パラジウム(21mg,0.09mmоl)、Xphos(89mg,0.19mmоl)、テトラヒドロフラン(60mL)、および濃度2Mのリン酸カリウム水溶液(7mL)を加え、70℃で10時間撹拌した。室温まで冷却後、メタノールを加えて析出した固体をろ過で回収した。得られた固体を再結晶(トルエン)することで、化合物(B-1)の無色粉末を2.24g(4.16mmоl)得た(収率88.7,HPLC純度99.9%)。
1H-NMR(CDCl
3)δ(ppm):8.91(d,1H),8.79-8.70(m,7H),7.88(dd,1H),7.83-7.79(m,2H),7.72-7.62(6H),7.57-7.54(m,2H),2.16(s,3H),2.02(d,6H),1.86-1.78(m,6H)
【0109】
実施例1(素子HOD-1の作製)
第一の電極/正孔注入層/正孔輸送層/正孔輸送促進層/第二の電極からなる構造(
図3に示す)を有するホールオンリーデバイスを作製し、該デバイスの正孔輸送特性を評価した。
(第一の電極31)
第一の電極をその表面に備えた基板として、ITO膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意し、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
(真空蒸着の準備)
上記表面処理が施された基板の2面のうち、ITO膜が形成されている側の面上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に上記ガラス基板を導入し、1.0×10
-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
(正孔注入層32の作製)
ITO膜にMoO
3を1nm成膜し、正孔注入層32を作製した。
(正孔輸送層33の作製)
昇華精製した化合物BA-3を30nm成膜し、正孔輸送層33を作製した。
(正孔輸送促進層34の作製)
昇華精製した化合物A-1を15nm成膜し、正孔輸送促進層34を作製した。
(第二の電極36の作製)
銀を80nm成膜し、第二の電極36を作製した。
(ホールオンリーデバイスの正孔輸送能力評価)
実施例1のホールオンリーデバイスの第一の電極と第二の電極にそれぞれプラスとマイナスの電界をかけ、10mA/cm
2の電流密度における電圧値を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0110】
実施例2(素子HOD-2の作製)
正孔輸送促進材料として化合物A-19を用いた以外、実施例1と同様にして評価用素子HOD-1を作製し、HOD電圧を測定した。評価結果を表1に示す。
【0111】
比較例1(比較素子HOD-1の作製)
正孔輸送促進材料として公知の材料HAT-CNを用い、正孔輸送材料としてアミン系公知材料NPD(α-NPD:4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-ビフェニル)を用いた以外、実施例1と同様にして比較素子HOD-1を作製し、HOD電圧を測定した。評価結果を表1に示す。
【0112】
比較例2(比較素子HOD-2の作製)
正孔輸送促進材料として化合物A-1を用い、正孔輸送材料としてアミン系公知材料NPDを用いた以外、実施例1と同様にして比較素子HOD-2を作製し、HOD電圧を測定した。評価結果を表1に示す。
【0113】
比較例3(比較素子HOD-3の作製)
正孔輸送促進材料として化合物A-19を用い、正孔輸送材料としてアミン系公知材料NPDを用いた以外、実施例1と同様にして比較素子HOD-3を作製し、HOD電圧を測定した。評価結果を表1に示す。
【0114】
比較例4(比較素子HOD-4の作製)
正孔輸送促進材料として公知の材料HAT-CNを用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた以外、実施例1と同様にして比較素子HOD-4を作製し、HOD電圧を測定した。評価結果を表1に示す。
【0115】
比較例5(比較素子HOD-5の作製)
正孔輸送促進材料を用いず、正孔輸送材料としてアミン系公知材料NPDを用いた以外、実施例1と同様にして比較素子HOD-5を作製し、HOD電圧を測定した。評価結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
実施例1と比較例1の比較において、正孔輸送促進材料として化合物A-1を用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた実施例1の素子は、正孔輸送促進材料として公知材料HAT-CNを用い、正孔輸送材料としてアミン系公知材料NPDを用いた比較例1の素子に比べ、HOD電圧が3.71Vから0.99Vへ大幅に低下した。
実施例2と比較例1の比較において、正孔輸送促進材料として化合物A-19を用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた実施例2の素子は、正孔輸送促進材料として公知材料HAT-CNを用い、正孔輸送材料としてアミン系公知材料NPDを用いた比較例1の素子に比べ、HOD電圧が3.71Vから1.15Vへ大幅に低下した。
実施例1と比較例2の比較において、正孔輸送促進材料として化合物A-1を用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた実施例1の素子は、正孔輸送促進材料として化合物A-1を用い、正孔輸送材料のみアミン系公知材料NPDを用いた比較例2の素子に比べ、HOD電圧が1.17Vから0.99Vへ低下した。これにより、正孔輸送促進材料の化合物A-1と非アミン系正孔輸送材料の化合物B-1を組み合わせることにより、さらに低電圧化できることが確認された。
実施例2と比較例3の比較において、正孔輸送促進材料として化合物A-19を用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた実施例2の素子は、正孔輸送促進材料として化合物A-19を用い、正孔輸送材料のみアミン系公知材料NPDを用いた比較例3の素子に比べ、HOD電圧が1.45Vから1.15Vへ低下した。これにより、正孔輸送促進材料の化合物A-19と非アミン系正孔輸送材料の化合物BA-3を組み合わせることにより、さらに低電圧化できることが確認された。
実施例1および実施例2と比較例4の比較において、正孔輸送促進材料として化合物A-1を用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた実施例1の素子、および正孔輸送促進材料として化合物A-19を用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた実施例2の素子は、正孔輸送促進材料として公知材料HAT-CNを用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた比較例4の素子に比べ、HOD電圧がそれぞれ5.28Vから0.99V、および5.28Vから1.15Vへ大幅に低下した。
実施例1および実施例2と比較例5の比較において、正孔輸送促進材料として化合物A-1を用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた実施例1の素子、および正孔輸送促進材料として化合物A-19を用い、正孔輸送材料として化合物BA-3を用いた実施例2の素子は、正孔輸送材料としてアミン系公知材料NPDを用い、正孔輸送促進材料を用いない従来の素子に比べ、HOD電圧がそれぞれ3.05Vから0.99V、および3.05Vから1.15Vへ大幅に低下した。
【0118】
<光電変換素子の作製および評価>
[素子実施例3](光電変換素子3の作製)
基板/第二の電極16/電子輸送層15/受光層14/正孔輸送層13/正孔輸送促進層12/第一の電極11からなる積層構成を有する光電変換素子1を作製し、該光電変換素子の暗電流及び外部量子効率を評価した。
(基板、第二の電極16の用意)
第二の電極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に上記ガラス基板を導入し、7.0×10
-5Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
(電子輸送層15の作製)
昇華精製した化合物4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジンを0.03nm/秒の速度で10nm成膜し、電子輸送層15を作製した。
(受光層14の作製)
N,N-ジメチルキナクリドン及びフラーレンC60を4:1(質量比)の割合で250nm成膜し、光電変換層14を作製した。成膜速度は0.13nm/秒であった。
(正孔輸送層13の作製)
正孔輸送材料として(BA-3)を0.10nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送層13を作製した。
(正孔輸送促進層12の作製)
化合物(A-19)を0.20nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送促進層12を作製した。
(第一の電極11の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、第一の電極11を成膜した。第一の電極は、Auを80nm成膜した。Auの成膜速度は0.1nm/秒であった。
以上により、面積4mm
2の
図1に示す光電変換素子1を作製した。上記のようにして作製した光電変換素子に、第二の電極16側に電子が、第一の電極11側に正孔が輸送されるように、絶対値として2.5Vの電圧を印加したときの、暗所での電流(暗電流)及び外部量子効率を評価した。
暗電流の測定は、ケースレー社製ソース・メジャー・ユニット2636Bを用いて評価した。外部量子効率の測定には太陽電池分光感度測定装置(相馬光学社製)を用いた。照射光の波長は560nmで、強度50μW/cm
2で測定を行った。
結果を表2に示す。
なお外部量子効率および暗電流は、後述する素子比較例6における結果を基準値(1.0)とした相対値である。暗電流は数値が低いほど性能に優れ、外部量子効率は数値が高いほど性能に優れることを示す。
【0119】
[素子比較例6](光電変換比較素子6の作製)
正孔輸送層13の作製において、化合物(BA-3)の代わりに、NPDを用いたこと以外は、素子実施例3と同様の方法により、素子比較例6の光電変換素子を作製し、素子実施例3と同じ方法により暗電流及び外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0120】
[素子比較例7]
正孔輸送促進層12を用いなかった以外は、素子実施例3と同様の方法により、素子比較例7の光電変換素子を作製し、素子実施例3と同じ方法により暗電流及び外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0121】
[素子比較例8]
正孔輸送層13の作製において、化合物(BA-3)の代わりに、NPDを用い、正孔輸送促進層12を用いなかった以外は、素子実施例3と同様の方法により、素子比較例8の光電変換素子を作製し、素子実施例3と同じ方法により暗電流及び外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0122】
【表2】
表2中、素子比較例7および8においては、暗電流が悪くノイズが多い為、正確な外部量子効率は測定できなかったため、「N.D.」と表記した。