(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037799
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】偏光子形成用組成物、偏光子、積層体、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240312BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205826
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2021548435の分割
【原出願日】2020-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019177710
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】星野 渉
(72)【発明者】
【氏名】野本 敦朗
(57)【要約】 (修正有)
【課題】面状に優れた偏光子を形成することができる偏光子形成用組成物、偏光子、積層体、および画像表示装置を提供する。
【解決手段】芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、2つの重合性基とを有し、スメクチック相の液晶状態を示す重合性液晶化合物、芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、1つの重合性基とを有する単官能重合性化合物、ならびに二色性物質を含有し、重合性液晶化合物の原子数NAおよび単官能重合性化合物の原子数NBが、式(1)を満たす、偏光子形成用組成物。
0.35≦NB/NA≦0.65(1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、2つの重合性基とを有し、スメクチック相の液晶状態を示す重合性液晶化合物、
芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、1つの重合性基とを有する単官能重合性化合物、ならびに
二色性物質、を含有し、
前記重合性液晶化合物の原子数NAおよび前記単官能重合性化合物の原子数NBが、下記式(1)を満たす、偏光子形成用組成物。
0.35 ≦ NB/NA ≦ 0.65 (1)
ただし、原子数NAおよび原子数NBは、各化合物に含まれる2つの原子の間を最短距離で結ぶ結合上の原子の個数を数えた場合に最大となる数値を表し、水素原子は含まれないものとする。
【請求項2】
前記重合性液晶化合物の原子数NAと、前記単官能重合性化合物の原子数NBが、下記式(2)を満たす、請求項1に記載の偏光子形成用組成物。
0.40 ≦ NB/NA ≦ 0.55 (2)
【請求項3】
前記重合性液晶化合物が、下記式(A-1)で表される化合物である、請求項1または2に記載の偏光子形成用組成物。
Q1-V1-SP1-X1-(Ma-La)na-X2-SP2-V2-Q2 (A-1)
式(A-1)中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、重合性基を表す。
V1、V2、X1、およびX2は、それぞれ独立に、単結合、または2価の連結基を表す。
SP1およびSP2は、それぞれ独立に、2価のスペーサー基を表す。
Maは、置換基を有していてもよい芳香環または脂環を表す。ただし、複数のMaは、同一であっても異なっていてもよい。
Laは、単結合、または、2価の連結基を表す。ただし、複数のLaは、同一であっても異なっていてもよい。
naは2~10の整数を表す。
【請求項4】
前記単官能重合性化合物が、下記式(B-1)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光子形成用組成物。
Q3-V3-SP3-X3-(Mb-Lb)nb‐Tb (B-1)
式(B-1)中、Q3は、重合性基を表す。
V3、およびX3は、それぞれ独立に、単結合、または2価の連結基を表す。
SP3は、2価のスペーサー基を表す。
Mbは、置換基を有していてもよい芳香環、または脂環を表す。ただし、複数のMbは、同一であっても異なっていてもよい。
Lbは、単結合、または、2価の連結基を表す。ただし、複数のLbは、同一であっても異なっていてもよい。
nbは、2~5の整数を表す。
Tbは、水素原子、または、1価の置換基を表す。
【請求項5】
前記単官能重合性化合物が、下記式(B-1)で表される化合物であり、
下記式(B-1)においてMbで表され、X3からTbまでの間で並んでいる環の配列が、前記式(A-1)においてMaで表され、X1からX2までの間で並んでいる環の配列と同一である、請求項3に記載の偏光子形成用組成物。
Q3-V3-SP3-X3-(Mb-Lb)nb‐Tb (B-1)
式(B-1)中、Q3は、重合性基を表す。
V3、およびX3は、それぞれ独立に、単結合、または2価の連結基を表す。
SP3は、2価のスペーサー基を表す。
Mbは、置換基を有していてもよい芳香環、または脂環を表す。ただし、複数のMbは、同一であっても異なっていてもよい。
Lbは、単結合、または、2価の連結基を表す。ただし、複数のLbは、同一であっても異なっていてもよい。
nbは、2~5の整数を表す。
Tbは、水素原子、または、1価の置換基を表す。
ただし、環の配列について、対比する対象がいずれも芳香環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなし、対比する対象がいずれも脂環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなす。また、環の配列には、2つの環の間の連結部分の構造は含まれないものとする。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光子形成用組成物から形成される偏光子。
【請求項7】
基材と、
前記基材上に設けられた配向膜と、
前記配向膜上に設けられた請求項6に記載の偏光子とを有する、
積層体。
【請求項8】
請求項6に記載の偏光子、または、請求項7に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子形成用組成物、偏光子、積層体、および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光または自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能、または、遮光機能等が必要となった際には、それぞれの機能ごとに異なった原理によって作動する装置を利用していた。そのため、上記の機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。
例えば、画像表示装置(例えば、液晶表示装置)では、表示における旋光性または複屈折性を制御するために直線偏光子または円偏光子が用いられている。また、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)においても、外光の反射防止のために円偏光子が使用されている。
【0003】
従来、これらの偏光子には、ヨウ素が二色性物質として広く使用されてきたが、ヨウ素の代わりに有機色素を二色性物質として使用する偏光子についても検討されている。
例えば、特許文献1には、高分子液晶化合物と二色性物質とを含む偏光子形成用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に基づいて偏光子を作製したところ、偏光子の面状に改善の余地があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、面状に優れた偏光子を形成できる偏光子形成用組成物、偏光子、積層体および画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、スメクチック相の液晶状態を示す重合性液晶化合物、単官能重合性化合物、および、二色性物質を含有する偏光子形成組成物が、後述する式(1)を満たすことにより、形成される偏光子の面状が良好となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
〔1〕 芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、2つの重合性基とを有し、スメクチック相の液晶状態を示す重合性液晶化合物、芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、1つの重合性基とを有する単官能重合性化合物、ならびに二色性物質、を含有し、重合性液晶化合物の原子数NAおよび単官能重合性化合物の原子数NBが、後述する式(1)を満たす、偏光子形成用組成物。
〔2〕 重合性液晶化合物の原子数NAと、単官能重合性化合物の原子数NBが、後述する式(2)を満たす、〔1〕に記載の偏光子形成用組成物。
〔3〕 重合性液晶化合物が、後述する式(A-1)で表される化合物である、〔1〕または〔2〕に記載の偏光子形成用組成物。
〔4〕 単官能重合性化合物が、後述する式(B-1)で表される化合物である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の偏光子形成用組成物。
〔5〕 単官能重合性化合物が、後述する式(B-1)で表される化合物であり、後述する式(B-1)においてMbで表され、X3からTbまでの間で並んでいる環の配列が、式(A-1)においてMaで表され、X1からX2までの間で並んでいる環の配列と同一である、〔3〕に記載の偏光子形成用組成物。
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の偏光子形成用組成物から形成される偏光子。
〔7〕 基材と、基材上に設けられた配向膜と、配向膜上に設けられた〔6〕に記載の偏光子とを有する、積層体。
〔8〕 〔6〕に記載の偏光子、または、〔7〕に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、面状に優れた偏光子を形成できる偏光子形成用組成物を提供できる。また、本発明によれば、面状に優れた偏光子、その偏光子を有する積層体および画像表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、平行、直交、水平、および、垂直とは、それぞれ厳密な意味での平行、直交、水平、および、垂直を意味するのではなく、それぞれ、平行±5°の範囲、直交±5°の範囲、水平±5°、および、垂直±5°の範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を表す表記であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表す表記である。
【0011】
[偏光子形成用組成物]
本発明の偏光子形成用組成物(以下、単に「組成物」とも記載する。)は、芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、2つの重合性基とを有し、スメクチック相の液晶状態を示す重合性液晶化合物(以下、「スメクチック液晶化合物」とも記載する。)、芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、1つの重合性基とを有する単官能重合性化合物(以下、「単官能化合物」とも記載する。)、ならびに、二色性物質を含む。
【0012】
また、本発明の組成物に含まれるスメクチック液晶化合物および単官能化合物は、スメクチック液晶化合物の原子数NAおよび単官能化合物の原子数NBが、下記式(1)を満たす。
0.35 ≦ NB/NA ≦ 0.65 (1)
ただし、原子数は、化合物に含まれる2つの原子の間を最短距離で結ぶ結合上の原子の個数を数えた場合に最大となる数値を表し、水素原子は含まれないものとする。
なお、結合上の原子の個数を数える際は、起点および終点となる原子も数えるものとする。
【0013】
例えば、スメクチック液晶化合物の一例である下記化合物A1では、原子数NAは、丸で囲った原子の個数の総計であって、「56」である。
単官能化合物の原子数NBについても同様であり、単官能化合物の一例である下記化合物B1の原子数NBは、丸で囲った原子の個数の総計であって、「30」である。
【0014】
【0015】
本発明においては、上述した通り、それぞれの原子数NAおよびNBが上記式(1)を満たすスメクチック液晶化合物および単官能化合物を含む組成物を用いると、形成される偏光子の面状が良好となる。
この理由の詳細は明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、上記式(1)の関係を満たすことにより、単官能化合物が、スメクチック配向するスメクチック液晶化合物の分子同士の間に入り込み易くなり、且つ、留まり易くなることにより、スメクチック相の液晶状態で固定化する際に、スメクチック液晶化合物の結晶化を抑制できたため、形成される偏光子の面状が良好になったと考えられる。
【0016】
スメクチック液晶化合物および単官能化合物は、形成される偏光子の面状が更に優れる点から、スメクチック液晶化合物の原子数NAと単官能化合物の原子数NBとが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
0.40 ≦ NB/NA ≦ 0.55 (2)
【0017】
なお、組成物が、2種以上のスメクチック液晶化合物を含む場合、および/または、2種以上の単官能化合物を含む場合、少なくとも1つのスメクチック液晶化合物と少なくとも1つの単官能化合物とが、上記式(1)または式(2)を満たせばよい。
以下、偏光子形成用組成物に含まれる各成分について説明する。
【0018】
〔スメクチック液晶化合物〕
組成物に含まれるスメクチック液晶化合物は、芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、2つの重合性基とを有し、スメクチック相の液晶状態を示し、かつ、単官能化合物と上記式(1)を満たす関係にある重合性液晶化合物であれば特に制限されない。
【0019】
スメクチック液晶化合物が示すスメクチック相としては、スメクチックA相およびスメクチックC相が挙げられる。スメクチック液晶化合物は、高次のスメクチック相を発現してもよい。ここでいう高次のスメクチック相としては、例えば、スメクチックB相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相、およびスメクチックL相が挙げられる。
また、スメクチック液晶化合物は、スメクチック相の他にネマチック相を発現してもよい。
【0020】
スメクチック液晶化合物は、2つの重合性基を有する。スメクチック液晶化合物が有する2つの重合性基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、スメクチック液晶化合物は、3つ以上の重合性基を有してもよい。
【0021】
スメクチック液晶化合物が有する重合性基は特に制限されないが、ラジカル重合可能な重合性基(ラジカル重合性基)またはカチオン重合可能な重合性基(カチオン重合性基)が好ましい。
ラジカル重合性基としては、公知のラジカル重合性基を用いることができ、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基が好ましい。重合速度はアクリロイルオキシ基が速い傾向にあることが知られており、生産性向上の点からアクリロイルオキシ基が好ましいが、メタクリロイルオキシ基も重合性基として同様に使用できる。
カチオン重合性基としては、公知のカチオン重合性基を用いることができ、例えば、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基およびビニルオキシ基が挙げられる。なかでも、脂環式エーテル基またはビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基またはビニルオキシ基がより好ましい。
【0022】
好ましい重合性基の例として、下記式(P-1)~(P-30)で表される重合性基が挙げられる。
【0023】
【0024】
上記式(P-1)~(P-30)中、RPは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアリール基、複素環基(ヘテロ環基)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、または、スルファト基(-OSO3H)を表す。複数のRPは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
なかでも、ラジカル重合性基としては、上記式(P-1)で表わされるビニル基、上記式(P-2)で表わされるブタジエン基、上記式(P-4)で表わされる(メタ)アクリル基、上記式(P-5)で表わされる(メタ)アクリルアミド基、上記式(P-6)で表わされる酢酸ビニル基、上記式(P-7)で表わされるフマル酸エステル基、上記式(P-8)で表わされるスチリル基、上記式(P-9)で表わされるビニルピロリドン基、上記式(P-11)で表わされる無水マレイン酸、または、上記式(P-12)で表わされるマレイミド基が好ましく、カチオン重合性基としては、上記式(P-18)で表わされるビニルエーテル基、上記式(P-19)で表わされるエポキシ基、または、上記式(P-20)で表わされるオキセタニル基、が好ましく、上記式(P-4)で表わされる(メタ)アクリル基、または上記式(P-5)で表わされる(メタ)アクリルアミド基がより好ましい。
【0025】
スメクチック液晶化合物は、芳香環および脂環からなる群より選択される環を2つ以上有する。芳香環および脂環は、単環であってもよいし、2以上の環が縮合した縮合環であってもよい。
なお、本明細書において、2以上の環が縮合してなる縮合環は、化合物中の環の個数を数える際は1つの環とみなす。
【0026】
芳香環としては、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素環、および炭素数3~20の芳香族複素環が挙げられる。
炭素数6~20の芳香族炭化水素環としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基、およびテトラセン-ジイル基が挙げられる。
芳香族複素環が有する炭素原子以外の原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環が炭素原子以外の原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。炭素数3~20の芳香族複素環としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基、が挙げられる。
芳香環としては、メソゲン骨格の設計の多様性および原材料の入手性等の点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましい。
【0027】
脂環としては、例えば、炭素数5~20の脂肪族炭化水素環、並びに、炭素数5~20の脂肪族炭化水素環を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-Si(CH3)2-、-N(Z)-(Zは、水素、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基またはハロゲン原子を表す。)、-C(O)-、-S-、-C(S)-、-S(O)-、-SO2-、およびこれらの基を2つ以上組み合わせた基で置換されてなる複素環が挙げられる。
脂肪族炭化水素環は、飽和でも不飽和でもよいが、飽和脂肪族炭化水素環が好ましい。脂環式炭化水素基としては、例えば、特開2012-21068号公報の[0078]段落の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
脂環としては、炭素数5~20のシクロアルカン環が好ましく、シクロヘキサン環、シクロペプタン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環、またはシクロドコサン環がより好ましく、シクロヘキサン環が更に好ましい。
【0028】
芳香環または脂環は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖状または環状のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、および、その他の公知の置換基が挙げられる。
また、置換基としては、特開2007-234651号公報の[0023]段落の記載が参酌でき、その記載は本明細書に組み込まれる。
【0029】
スメクチック液晶化合物は、下記式(II-1)~(II-7)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を有していてもよい。
【化3】
【0030】
上記式(II-1)~(II-7)中、*は、結合位置、すなわち、スメクチック液晶化合物に含まれる上記芳香環以外の部分との結合位置を表す。
【0031】
上記式(II-1)中、D1は、NまたはCHを表し、D2は、-S-、-O-または-N(R11)-を表し、R11は水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Y1は置換基を有してもよい炭素数3~12の芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数3~20の芳香族複素環基、または、置換基を有してもよい炭素数5~20の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
【0032】
R11が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基およびn-ヘキシル基が挙げられる。
【0033】
また、Y1が示す炭素数6~12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、およびナフチル基等のアリール基が挙げられる。
Y1が示す炭素数3~12の芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、およびピリジル基等のヘテロアリール基が挙げられる。
Y1が示す炭素数5~20の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、ノルボルニレン基、およびアダマンチレン基が挙げられる。
Y1が炭素数6~12の芳香族炭化水素基である場合、単環でも多環でもよい。Y1が炭素数3~12の芳香族複素環基である場合、単環でも多環でもよい。Y1が炭素数5~20の脂環式炭化水素基fである場合、単環でも多環でもよい。
【0034】
Y1が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、およびハロゲン原子が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、または塩素原子が好ましい。
【0035】
上記式(II-1)~(II-7)中、Z1、Z2、およびZ3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR12、-NR12R13またはSR12、-COOR12、または、-COR12を表し、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z1およびZ2は、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
【0036】
ここで、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、tert-ブチル基、または1,1-ジメチル-3,3-ジメチル-ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、またはtert-ブチル基が特に好ましい。
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、およびエチルシクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、およびシクロデカジエン等の単環式不飽和炭化水素基;ならびに、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、およびアダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基;が挙げられる。
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、炭素数6~12のアリール基が好ましく、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基、またはビフェニル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
炭素数6~20の1価の芳香族複素環基としては、例えば、4-ピリジル基、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピリミジニル基、および2-ベンゾチアゾリル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、または臭素原子が好ましい。
R12またはR13が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基が挙げられる。
【0037】
また、Z
1およびZ
2は、上述した通り、互いに結合して芳香環を形成してもよく、例えば、上記式(II-1)中のZ
1およびZ
2が互いに結合して芳香環を形成した場合の構造としては、例えば、下記式(II-1a)で表される基が挙げられる。なお、下記式(II-1a)中、*は、結合位置を表し、Q
1、Q
2およびY
1は、上記式(II-1)において説明したものと同様のものが挙げられる。
【化4】
【0038】
上記式(II-2)および(II-3)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、-O-、-NR21-、-S-および-CO-からなる群から選ばれる基を表し、R21は水素原子または置換基を表す。
R21が示す置換基としては、上記式(II-1)中のY1が有してもよい置換基と同様のものが挙げられる。また、R21が示す置換基としては、特開2008-107767号公報の[0035]~[0045]段落の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0039】
上記式(II-2)中、Eは、水素原子または置換基が結合していてもよい第14~16族の非金属原子を表す。
Eが示す第14~16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、置換基を有する窒素原子、および置換基を有する炭素原子が挙げられ、置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキル置換アルコキシ基、環状アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、スルホ基、および、ヒドロキシ基等が挙げられる。また、置換基としては、特開2008-107767号公報の[0035]~[0045]段落の記載を参酌でき、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0040】
また、上記式(II-3)中、D7およびD8は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR1R2-、-CR3=CR4-、-NR5-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R1~R5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
【0041】
ここで、D7およびD8の一態様が示す2価の連結基としては、例えば、-CO-、-O-、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR1R2-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR1R2-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-CO-O-CR1R2-、-NR5-CR1R2-、および、-CO-NR5-が挙げられる。R1、R2およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~12のアルキル基を表す。
これらのうち、-CO-、-O-、および、-CO-O-のいずれかが好ましい。
【0042】
また、上記式(II-3)中、SP3およびSP4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-もしくは-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。置換基としては、上記式(II-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
SP3およびSP4の一態様が示す炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、メチルヘキシレン基、およびへプチレン基が挙げられる。
【0043】
また、上記式(II-3)中、Q3およびQ4は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、Q3およびQ4の少なくとも1つが重合性基を表す。
Q3およびQ4が示す1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましい。また、アリール基は、単環であっても多環であってもよいが単環が好ましい。アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~10がより好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、または酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は6~18が好ましく、6~12がより好ましい。また、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記式(II-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0044】
また、Q3およびQ4の少なくとも一方が示す重合性基としては、上述したラジカル重合性基またはカチオン重合性基と同様のものが挙げられ、なかでも、上述した式(P-1)~(P-30)のいずれかで表される重合性基が好ましい。
【0045】
上記式(II-4)~(II-7)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表し、Ayは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
AxおよびAyが有する芳香環は、置換基を有していてもよい。また、AxとAyは結合して環を形成していてもよい。
AxおよびAyとしては、国際公開第2014/010325号の[0039]~[0095]段落に記載されたものが挙げられ、その記載は本明細書に組み込まれる。
【0046】
上記式(II-4)~(II-7)中、D3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
また、D3が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、およびn-ヘキシル基が挙げられる。D3が示す炭素数1~6のアルキル基が有してもよい置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0047】
スメクチック液晶化合物は、順波長分散性および逆波長分散性のいずれを有していてもよいが、順波長分散性を有することが好ましい。
本明細書において、「順波長分散性を有する重合性液晶化合物」とは、これを用いて作製された位相差フィルムの特定波長(可視光範囲)における面内のレターデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が低くなるものをいう。
【0048】
<式(A-1)で表されるスメクチック液晶化合物>
スメクチック液晶化合物としては、原料の入手の容易性、合成適性、および/または、取り扱いの観点から、下記式(A-1)で表される化合物が好ましい。
Q1-V1-SP1-X1-(Ma-La)na-X2-SP2-V2-Q2 (A-1)
上記式(A-1)中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、重合性基を表す。
また、V1、V2、X1、およびX2は、それぞれ独立に、単結合、または2価の連結基を表す。
また、SP1およびSP2は、それぞれ独立に、2価のスペーサー基を表す。
また、Maは、置換基を有していてもよい芳香環または脂環を表す。ただし、複数のMaは、同一であっても異なっていてもよい。
また、Laは、単結合、または、2価の連結基を表す。ただし、複数のLaは、同一であっても異なっていてもよい。
また、naは2~10の整数を表す。
【0049】
Q1およびQ2は、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基であることが好ましく、上記式(P-1)~(P-30)で表される重合性基のいずれかがより好ましく、上記式(P-1)、式(P-2)、式(P-4)~式(P-9)、式(P-11)、式(P-12)、および式(P-18)~式(P-20)で表される重合性基のいずれかが更に好ましい。
【0050】
V1、V2、X1、X2、およびLaにより表される2価の連結基としては、例えば、-O-、-(CH2)g-、-(CF2)g-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、-C(O)S-、および、これらの基を2つ以上組み合わせた基が挙げられる。
V1、V2、X1、X2、およびLaは、単結合、-O-、-(CH2)g-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、またはこれらの2つ以上の組合せが好ましい。
【0051】
上記式(A-1)中、SP1およびSP2で表されるスペーサー基としては、例えば、炭素数1~50の直鎖状、または分岐鎖状のアルキレン基、ならびに、炭素数1~50の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が、-O-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-C(S)-、-S(O)-、-SO2-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、-C(O)S-、および、これらの基を2つ以上組み合わせた基からなる群より選択される基に置換された2価の連結基が挙げられる。
SP1およびSP2としては、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-もしくは-CO-に置換された2価の連結基が好ましい。
【0052】
上記式(A-1)中、Maによって表される芳香環および脂環は、その好適な態様も含めて、上述したスメクチック液晶化合物が有する芳香環および脂環について説明したものと同様のものが挙げられる。
また、Maによって表される芳香環および脂環が有してもよい置換基も、その好適な態様も含めて、スメクチック液晶化合物が有する芳香環および脂環が有してもよい置換基として説明したものと同様のものが挙げられる。
【0053】
上記式(A-1)中、naは2~10の整数を表し、2~8の整数が好ましく、2~6の整数がより好ましい。
【0054】
上記のスメクチック液晶化合物としては、特開2008-19240号公報の[0033]~[0039]段落、特開2008-214269号公報の[0037]~[0041]段落、および、特開2006-215437号公報の[0033]~[0040]段落に記載の化合物のうち、スメクチック相の液晶状態を示すものを用いてもよい。
【0055】
上記式(A-1)で表されるスメクチック液晶化合物としては、例えば、下記の構造式で表される化合物が挙げられる。なお、組成物に含まれるスメクチック液晶化合物は、これらの化合物に制限されない。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【化8】
上記構造式における、n、mおよびRの組合せを下記表に示す。
【表1】
【0060】
【化9】
上記構造式における、SP、LおよびRの組合せを下記表に示す。
【表2】
【0061】
【0062】
スメクチック液晶化合物が上記式(A-1)で表される化合物である場合、スメクチック液晶化合物に含まれる2つの原子の間を最短距離で結ぶ結合上の原子の個数を数えて得られる数値が最大となるときの、原子の個数を数える際の起点および終点となる原子が、Q1およびQ2の一方および他方にそれぞれ含まれることが好ましい。換言すると、スメクチック液晶化合物の原子数NAは、スメクチック液晶化合物を表す上記式(A-1)の一方の末端にあるQ1を構成する原子と、他方の末端にあるQ2を構成する原子との間を最短距離で結ぶ結合上の原子の個数を数えて得られる数値であることが好ましい。
【0063】
スメクチック液晶化合物の含有量は、組成物の固形分の全質量を100質量部とした場合、50~99質量部が好ましく、60~95質量部がより好ましい。なお、組成物の固形分とは、組成物のうち溶剤を除いた全成分をいう。
【0064】
〔単官能化合物〕
組成物に含まれる単官能重合性化合物(単官能化合物)は、芳香環および脂環からなる群より選択される2つ以上の環と、1つの重合性基とを有し、かつ、スメクチック液晶化合物と上記式(1)を満たす関係にある化合物であれば、特に制限されない。
【0065】
単官能化合物が有する重合性基は、特に制限されず、スメクチック液晶化合物が有する重合性基と同様のものが挙げられる。
なかでも、上記の式(P-1)~(P-30)で表される重合性基のいずれかが好ましく、上記の式(P-1)、式(P-2)、式(P-4)~式(P-9)、式(P-11)、式(P-12)、および式(P-18)~式(P-20)で表される重合性基のいずれかがより好ましく、上記の式(P-4)または式(P-5)で表される重合性基が更に好ましい。
【0066】
単官能化合物は、芳香環および脂環からなる群より選択される環を2つ以上有する。
単官能化合物が有する芳香環および脂環からなる群より選択される環は、それらの好適な態様も含めて、上述したスメクチック液晶化合物が有する芳香環および脂環からなる群より選択される環と同様である。
【0067】
<式(B-1)で表される単官能化合物>
単官能化合物としては、原料の入手の容易性、合成適性、および/または取り扱いの観点から、下記式(B-1)で表される化合物が好ましい。
Q3-V3-SP3-X3-(Mb-Lb)nb‐Tb (B-1)
上記式(B-1)中、Q3は、重合性基を表す。
また、V3、およびX3は、それぞれ独立に、単結合、または2価の連結基を表す。
また、SP3は、2価のスペーサー基を表す。
また、Mbは、置換基を有していてもよい芳香環、または脂環を表す。ただし、複数のMbは、同一であっても異なっていてもよい。
また、Lbは、単結合、または、2価の連結基を表す。ただし、複数のLbは、同一であっても異なっていてもよい。
また、nbは、2~5の整数を表す。
また、Tbは、水素原子、または、1価の置換基を表す。
【0068】
上記式(B-1)中、Q3、V3、SP3、X3、Mb、およびLbは、それらの好適な態様も含めて、上記式(A-1)中の、Q1(Q2)、V1(V2),SP1(SP2)、X1(X2)、Ma、およびLaと同様である。
【0069】
式(B-1)中、nbは、2~4の整数が好ましく、2または3がより好ましい。
【0070】
式(B-1)中、Tbは、水素原子、または、1価の置換基を表す。
Tbが表す1価の置換基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖状または環状のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、および、その他の公知の置換基が挙げられる。
また、Tbが表す1価の置換基としては、特開2007-234651号公報の[0023]段落の記載が参酌でき、その記載は本明細書に組み込まれる。
Tbとしては、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、水素原子、または、炭素数1~6の直鎖状アルキル基がより好ましい。
【0071】
上記式(B-1)で表される単官能化合物としては、例えば、下記の構造式B1~B13で表される化合物が挙げられる。なお、組成物に含まれる単官能化合物は、構造式B1~B13で表される化合物に制限されない。
【0072】
【0073】
単官能化合物の含有量は、組成物の固形分の全質量を100質量部とした場合、1~30質量部が好ましく、3~25質量部がより好ましい。
【0074】
単官能化合物が上記式(B-1)で表される化合物である場合、単官能化合物に含まれる2つの原子の間を最短距離で結ぶ結合上の原子の個数を数えて得られる数値が最大となるときの、原子の個数を数える際の起点および終点となる原子が、Q3およびTbの一方および他方にそれぞれ含まれることが好ましい。換言すると、単官能化合物の原子数NBは、単官能化合物を表す上記式(B-1)の一方の末端にあるQ3を構成する原子と、他方の末端にあるTbを構成する原子との間を最短距離で結ぶ結合上の原子の個数を数えて得られる数値であることが好ましい。
【0075】
形成される偏光子の面状がより優れる点から、単官能化合物に含まれる芳香環および脂環からなる群より選択される環の配列(以下、単に「環の配列」とも記載する)が、スメクチック液晶化合物に含まれる環の配列と同一であることが好ましい。
例えば、スメクチック液晶化合物が上記式(A-1)で表される化合物であって、単官能化合物が上記式(B-1)で表される化合物である場合、式(B-1)においてMbで表され、X3からTbまでの間で並んでいる環の配列が、式(A-1)においてMaで表され、X1からX2までの間で並んでいる環の配列と同一であることが好ましい。
ここで、スメクチック液晶化合物および単官能化合物における環の配列について、対比する対象がいずれも芳香環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなし、対比する対象がいずれも脂環であれば、環構造または置換基が異なる場合であっても、同一の配列を構成しているとみなす。また、環の配列には、2つの環の間の連結部分の構造は含まれないものとする。例えば、フェニレン基およびナフチレン基のように別の骨格であっても、対比する環がいずれも芳香環同士であれば、同一の配列を構成しているとみなし、シクロヘキシレンおよびシクロペンタレンのように別の骨格であっても、対比する環がいずれも脂環同士であれば同一の配列を構成しているとみなす。
【0076】
より具体的には、単官能化合物の一例である下記化合物B1が有する環の配列は、スメクチック液晶化合物の一例である下記化合物A1が有する環の配列と同一である。
【化13】
【0077】
〔二色性物質〕
組成物が含む二色性物質は、特に制限されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、および無機物質(例えば量子ロッド)が挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用できる。
具体的な二色性物質としては、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-014883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-037353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-063387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特開2016-006502号公報の[0005]~[0051]段落、国際公開第2016/060173号の[0005]~[0041]段落、国際公開第2016/136561号の[0008]~[0062]段落、国際公開第2017/154835号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/154695号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/195833号の[0013]~[0037]段落、および、国際公開第2018/164252号の[0014]~[0034]段落に記載された化合物が挙げられる。
【0078】
2種以上の二色性物質を併用してもよく、例えば、形成される偏光子を黒色に近づける点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質とを併用することが好ましい。
【0079】
二色性物質の含有量は、形成される偏光子の面状が良好になり、配向度がより高くなる点から、組成物の固形分の総質量に対して1~80質量%が好ましく、2~70質量%がより好ましく、3~60質量%が更に好ましい。
また、二色性物質の含有量は、形成される偏光子の面状が良好になり、配向度がより高くなる点から、上記スメクチック液晶化合物100質量部に対して1~400質量部が好ましく、2~100質量部がより好ましく、4~40質量部が更に好ましい。
【0080】
〔溶剤〕
組成物は、作業性等の点から、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤としては、例えば、ケトン化合物(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、および、シクロヘキサノン等)、エーテル化合物(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキソラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、および、シクロペンチルメチルエーテル等)、脂肪族炭化水素化合物(例えば、ヘキサン等)、脂環式炭化水素化合物(例えば、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素化合物(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、および、トリメチルベンゼン等)、ハロゲン化炭素化合物(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエン等)、エステル化合物(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、および、酢酸ブチル、炭酸ジエチル等)、アルコール化合物(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、および、シクロヘキサノール等)、セロソルブ化合物(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、および、1,2-ジメトキシエタン等)、セロソルブアセテート化合物、スルホキシド化合物(例えば、ジメチルスルホキシド等)、アミド化合物(例えば、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン等)等の有機溶剤、ならびに、水が挙げられる。
これらの溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
これらの溶剤のうち、形成される偏光子の面状が良好になり、配向度がより高くなる点から、有機溶剤を用いることが好ましく、ハロゲン化炭素化合物またはケトン化合物を用いることがより好ましい。
【0082】
組成物が溶剤を含む場合、溶剤の含有量は、形成される偏光子の面状が良好になり、配向度がより高くなる点から、組成物の全質量に対して、70~99.5質量%が好ましく、80~99質量%がより好ましく、85~98質量%が更に好ましい。
【0083】
〔界面活性剤〕
組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度が向上したり、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性の向上が見込まれる。
界面活性剤としては、スメクチック液晶化合物を水平配向させる化合物が好ましい。スメクチック液晶化合物を水平配向させる化合物としては、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。また、特開2007-272185号公報の[0018]~[0043]段落等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーも用いることができる。界面活性剤としては、これら以外の化合物を用いてもよい。
【0084】
組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、形成される偏光子の面状が良好になり、配向度がより高くなる点から、組成物中のスメクチック液晶化合物、単官能化合物および二色性物質の合計100質量部に対し、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部がより好ましい。
【0085】
〔重合開始剤〕
組成物は、形成される偏光子の面状が良好になり、配向度がより高くなる点から、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組合せ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンとフェナジン化合物との組合せ(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、ならびに、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-040799号公報、特公平5-029234号公報、特開平10-095788号公報および特開平10-029997号公報)が挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、例えば、BASF社製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア819およびイルガキュアOXE-01が挙げられる。
【0086】
組成物が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は、形成される偏光子の面状が良好になり、配向度がより高くなる点から、組成物中のスメクチック液晶化合物、単官能化合物および二色性物質の合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。
【0087】
[偏光子]
偏光子は、上述した組成物から形成される偏光子である。
【0088】
〔偏光子の製造方法〕
偏光子を製造する方法は特に制限されないが、配向膜上に上述した組成物を塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、上記塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)とをこの順に備える方法(以下、「本製造方法」ともいう。)が好ましい。
なお、液晶性成分とは、上述したスメクチック液晶化合物だけでなく、上述した単官能化合物または二色性物質が液晶性を有する場合は、液晶性を有する単官能化合物および液晶性を有する二色性物質も含む。
以下、各工程について説明する。
【0089】
<塗布膜形成工程>
塗布膜形成工程は、配向膜上に上述した組成物を塗布して塗布膜を形成する工程である。塗布膜中の液晶化合物は、配向膜と(組成物が界面改良剤を含む場合には)界面改良剤との相互作用により水平配向する。
上述した溶剤を含む組成物を用いたり、加熱等によって溶融液等の液状物とした組成物を用いることにより、配向膜上に組成物を塗布することが容易になる。
組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法等の公知の方法が挙げられる。
【0090】
(配向膜)
配向膜は、組成物に含まれる液晶化合物を水平配向させる膜であれば、どのような膜でもよい。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、およびステアリル酸メチル等)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。なかでも、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向膜が好ましい。また、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向膜が好ましい。
【0091】
(1)ラビング処理配向膜
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料は、多数の文献に記載されており、多数の市販品を入手できる。なかでも、ポリビニルアルコールもしくはポリイミド、またはそれらの誘導体が好ましい。配向膜については国際公開第2001/088574号の43頁24行~49頁8行の記載を参照できる。
配向膜の厚さは、0.01~10μmが好ましく、0.01~1μmがより好ましい。
【0092】
(2)光配向膜
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献に記載されている。光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-076839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-094071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号および特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報および特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号および特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、ならびに、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報および特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドまたはエステルが挙げられ、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミドまたはエステルが好ましい。
【0093】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に制限されない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0094】
光照射に用いる光源は、公知の光源であればよく、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管が挙げられる。
【0095】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色性物質偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、ならびに、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタまたは波長変換素子等の部材を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0096】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜の上面または裏面から配向膜表面に対して垂直または斜めの方向で光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°がより好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して斜めの方向で非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°がさらに好ましい。
照射時間は、1~60分間が好ましく、1~10分間がより好ましい。
【0097】
パターン化が必要な場合、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、および、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法が採用できる。
【0098】
<配向工程>
配向工程は、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程である。これにより、液晶相が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶剤等の成分を塗布膜から除去できる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、上述した組成物に含まれる液晶性成分は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、組成物が溶剤を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶剤を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(すなわち、偏光子)が得られる。
乾燥処理が塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度以上の温度により行われる場合には、後述する加熱処理は実施しなくてもよい。
【0099】
塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。上記転移温度が10℃以上であると、液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるための冷却処理が必要とならない。また、上記転移温度が250℃以下であると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にする場合にも高温を要さず、熱エネルギーの浪費、ならびに、基板の変形および変質等を低減できる。
【0100】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を偏光子として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0101】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分の配向を固定できる。冷却手段としては、特に制限されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、偏光子を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理を挙げているが、これに制限されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0102】
<他の工程>
本製造方法は、上記配向工程後に、偏光子を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線等の種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線が好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって偏光子の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0103】
[積層体]
積層体は、基材と、上記基材上に設けられた配向膜と、上記配向膜上に設けられた上述した偏光子とを有する。
また、積層体は、上記偏光子上に、λ/4板を有していてもよい。
さらに、積層体は、上記偏光子とλ/4板との間に、バリア層を有していてもよい。
以下、積層体を構成する各層について説明する。
【0104】
〔基材〕
基材としては、公知の基材を適宜選択でき、例えば、ガラスおよびポリマーフィルムが挙げられる。基材の光透過率は、80%以上が好ましい。
基材としてポリマーフィルムを用いる場合には、光学的等方性のポリマーフィルムを用いることが好ましい。ポリマーの具体例および好ましい態様は、特開2002-022942号公報の[0013]段落の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートまたはポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーに国際公開第2000/026705号に記載の分子を修飾することで発現性を低下させたポリマーを用いることもできる。
【0105】
〔配向膜〕
配向膜については、上述したとおりであるので、その説明を省略する。
【0106】
〔偏光子〕
偏光子については、上述したとおりであるので、その説明を省略する。
【0107】
〔λ/4板〕
「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、例えば、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する。
λ/4板が単層構造である態様としては、例えば、延伸ポリマーフィルム、および、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性層を設けた位相差フィルムが挙げられる。λ/4板が複層構造である態様としては、例えば、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
λ/4板と偏光子とは、接して設けられていてもよいし、λ/4板と偏光子との間に、他の層が設けられていてもよい。このような層としては、密着性担保のための粘着層または接着層、およびバリア層が挙げられる。
【0108】
〔バリア層〕
積層体がバリア層を備える場合、バリア層は、偏光子とλ/4板との間に設けられる。なお、偏光子とλ/4板との間に、バリア層以外の他の層(例えば、粘着層または接着層)を備える場合には、バリア層は、例えば、偏光子と他の層との間に設けることができる。
バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物等から偏光子を保護する機能を有する。
バリア層については、例えば、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、および、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
【0109】
〔用途〕
積層体は、例えば、偏光素子(偏光板)として使用できる。
積層体が上記λ/4板等の光学異方性層を有さない場合、積層体は、例えば、直線偏光板として使用できる。
一方、積層体が上記λ/4板を有する場合、積層体は、例えば、円偏光板として使用できる。
【0110】
[画像表示装置]
画像表示装置は、上述した偏光子または上述した積層体を有する。
画像表示装置に用いられる表示素子は特に制限されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL:Electro Luminescence」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネルが挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルが好ましく、液晶セルがより好ましい。すなわち、画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置が好ましく、液晶表示装置がより好ましい。
【0111】
〔液晶表示装置〕
画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した偏光子と、液晶セルとを有する態様が挙げられる。また、上述した積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルとを有する液晶表示装置が好ましい。
なお、液晶セルの両側に設けられる偏光素子のうち、フロント側の偏光素子として上述した積層体を用いることが好ましく、フロント側およびリア側の偏光素子として上述した積層体を用いることがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0112】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに制限されない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶性分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-054982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、および、特開平10-307291号公報に開示されている。
【0113】
〔有機EL表示装置〕
画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、上述した偏光子と、λ/4板と、有機EL表示パネルとをこの順で有する態様が挙げられる。
有機EL表示装置としては、視認側から、λ/4板を有する上述した積層体と、有機EL表示パネルとをこの順に有する態様が好ましい。この場合には、積層体は、視認側から、基材、配向膜、偏光子、必要に応じて設けられるバリア層、および、λ/4板の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例0114】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0115】
[実施例1]
〔配向膜の作製〕
ケン化処理を施した厚み40μmのTAC基材(TG40、富士フイルム社製)上に、下記の組成の配向膜塗布液1を#17のワイヤーバーで塗布した。
その後、110℃の温風で2分間乾燥することにより、TAC基材上にポリビニルアルコール(PVA)配向膜を得た。
なお、変性ポリビニルアルコールは、固形分濃度が4質量%となるように配向膜塗布液中に加えた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・変性ビニルアルコール(下記PVA-1) 2.00質量部
・水 74.08質量部
・メタノール 23.86質量部
・光重合開始剤
(IRGACURE2959、BASF社製) 0.06質量部
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【0116】
【0117】
〔偏光子の作製〕
得られた配向膜にラビング処理(ローラーの回転数:1000回転/スペーサー厚1.8mm、ステージ速度1.8m/分)を1回施し、下記の偏光子形成用組成物1を#7のワイヤーバーで塗布し、塗布膜を形成した。
次いで、塗布膜を140℃で30秒間加熱し、塗布膜1を60℃になるまで冷却した。
その後、60℃で高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、配向膜上に偏光子1を作製した。
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偏光子形成用組成物1の組成
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・下記液晶化合物A1 11.394質量部
・下記単官能化合物B1 1.587質量部
・下記二色性物質Y1 0.361質量部
・下記二色性物質M1 0.361質量部
・下記二色性物質C1 0.361質量部
・下記界面改良剤F1 0.072質量部
・重合開始剤I1
(IRGACURE369、BASF社製) 0.865質量部
・テトラヒドロフラン 59.500質量部
・シクロペンタノン 25.500質量部
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【0118】
【0119】
[実施例2~10]
偏光子形成用組成物1の組成を下記表1に示す組成に変更した偏光子形成用組成物2~10を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、偏光子2~10をそれぞれ作製した。
【0120】
[比較例1~4]
偏光子形成用組成物1の組成を下記表1に示す組成に変更した偏光子形成用組成物1C~4Cを使用したことた以外は、実施例1と同様にして偏光子1C~4Cを作製した。
【0121】
[評価]
〔面状〕
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例および比較例の各偏光子をセットした。セットされた偏光子を、倍率が10倍の対物レンズを有する顕微鏡で観察した。各偏光子につき、任意に選択された10箇所で観察を行い、下記の評価基準に基づいて偏光子の面状を評価した。
A: 観察した10箇所中、3箇所以下で欠陥が観察された。
B: 観察した10箇所中、4~8箇所で欠陥が観察された。
C: 観察した10箇所中、9箇所以上で欠陥が観察された。
なお、欠陥が観察された箇所が少ないほど、コントラストが強いドメインが少なくなり、コントラストが弱いドメインが多くなる傾向にあるといえる。
【0122】
〔配向度〕
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例および比較例の各偏光子をセットした。マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて、380~780nmの波長域における各偏光子の吸光度を1nmピッチで測定し、以下の式により400~700nmにおける各偏光子の配向度を算出した。結果を下記表1に示す。
配向度:S=((Az0/Ay0)-1)/((Az0/Ay0)+2)
Az0:色素膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:色素膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
上記式において、「Az0」は偏光子の吸収軸方向の偏光に対する吸光度を表し、「Ay0」は偏光子の偏光軸方向の偏光に対する吸光度を表す。
【0123】
【0124】
表1に示す、偏光子形成用組成物2~11および1C~4Cに含まれる液晶化合物、単官能化合物および二色性物質の構造を以下に示す。
【化16】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
表1に示す結果から、2つ以上の環と2つの重合性基とを有するスメクチック液晶化合物、2つ以上の環と1つの重合性基とを有する単官能化合物、並びに二色性物質を含有する偏光子形成用組成物において、スメクチック液晶化合物の原子数NAおよび単官能化合物の原子数NBが上記式(1)を満たす場合、形成される偏光子の面状がより優れることが確認された。
【0129】
また、スメクチック液晶化合物の原子数NAおよび単官能化合物の原子数NBが上記式(2)を満たす場合、形成される偏光子の面状が更に優れることが確認された(実施例1と実施例2との比較、実施例5と実施例6との比較、実施例7および8と実施例9との比較)。
【0130】
また、単官能化合物に含まれる芳香環および脂環からなる群より選択される環の配列が、スメクチック液晶化合物に含まれる芳香環および脂環からなる群より選択される環の配列の少なくとも一部と同一である場合、形成される偏光子の面状が更に優れることが確認された(実施例1と実施例3との比較、実施例7および8と実施例10との比較)。