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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038063
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】撮像素子ユニット、および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/52 20230101AFI20240312BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20240312BHJP
   G03B 17/55 20210101ALI20240312BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20240312BHJP
【FI】
H04N23/52
H04N23/68
G03B17/55
G03B5/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217367
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2023502082の分割
【原出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2021027338
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】粟津 亘平
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雄大
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 優太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】撮像素子の駆動熱をより効率的に放熱することが可能な撮像素子ユニットを提供する。
【解決手段】撮像装置の筐体に内蔵される撮像素子ユニット15は、被写体を撮像する撮像面および撮像面と対向する裏面を有する撮像素子16と、撮像素子を撮像面の面方向に移動させる防振機能と、裏面から撮像素子の駆動熱が伝導され、防振機能による撮像素子の移動に追従可能に変形する第1熱伝導部材100とを備える。第1熱伝導部材は、シート状の素材を折り曲げることで形成されたパンタグラフ形状の部材であり、外側に張り出した屈曲部もしくは内側に引っ込んだ屈曲部が、防振機能による撮像素子の移動に追従可能に変形する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の筐体に内蔵される撮像素子ユニットであり、
被写体を撮像する撮像面および前記撮像面と対向する裏面を有する撮像素子と、
前記撮像素子を前記撮像面の面方向に移動させる防振機能と、
前記裏面から前記撮像素子の駆動熱が伝導される第1熱伝導部材であって、前記防振機能による前記撮像素子の移動に追従可能に変形する第1熱伝導部材と、
を備え、
前記第1熱伝導部材は、
シート状の素材を折り曲げることで形成されたパンタグラフ形状の部材であり、
外側に張り出した屈曲部、もしくは、内側に引っ込んだ屈曲部が、前記防振機能による前記撮像素子の移動に追従可能に変形する、
撮像素子ユニット。
【請求項2】
撮像装置の筐体に内蔵される撮像素子ユニットであり、
被写体を撮像する撮像面および前記撮像面と対向する裏面を有する撮像素子と、
前記撮像素子を前記撮像面の面方向に移動させる防振機能と、
前記裏面から前記撮像素子の駆動熱が伝導される第1熱伝導部材であって、前記防振機能による前記撮像素子の移動に追従可能に変形する第1熱伝導部材と、
を備え、
前記第1熱伝導部材は、
シート状の素材を折り曲げることで形成された六角形状の部材であり、
外側に張り出した屈曲部、もしくは、内側に引っ込んだ屈曲部が、前記防振機能による前記撮像素子の移動に追従可能に変形する、
撮像素子ユニット。
【請求項3】
前記第1熱伝導部材は、折り曲げたシート状の素材の両端が互いに離隔してスリット部を形成する請求項1または請求項2に記載の撮像素子ユニット。
【請求項4】
前記第1熱伝導部材は、前記屈曲部を除く部分に補強層を有し、
前記補強層を有する部分は、前記補強層の分、前記屈曲部よりも厚みが厚い請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の撮像素子ユニット。
【請求項5】
前記撮像面および前記裏面を繋ぐ前記撮像素子の側面と対向する位置に配され、前記側面から前記駆動熱が伝導される第5熱伝導部材を備え、
前記第5熱伝導部材は、前記防振機能による前記撮像素子の移動に追従可能に変形する屈曲部を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の撮像素子ユニット。
【請求項6】
前記第1熱伝導部材および前記第5熱伝導部材は、
第1シート部と、
前記第1シート部に対向する第2シート部と、
前記第1シート部および前記第2シート部を繋ぐ接続部であり、屈曲部を有する接続部とで構成され、
前記第5熱伝導部材の前記屈曲部のなす角度は、前記第1熱伝導部材の前記屈曲部のなす角度よりも鋭角である請求項5に記載の撮像素子ユニット。
【請求項7】
前記第5熱伝導部材はグラファイトシートにより形成される請求項5または請求項6に記載の撮像素子ユニット。
【請求項8】
筐体と、
前記筐体に内蔵され、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の撮像素子ユニットと、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、撮像素子ユニット、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5168047号には、手振れ補正ユニットに搭載された撮像素子の放熱構造であって、手振れ補正ユニットの近傍に放熱部材を設けるとともに、手振れ補正ユニットにおいて撮像素子の近傍に位置する金属部材と放熱部材とを、熱伝導性を有するフレキシブル部材で接続したことを特徴とする撮像素子の放熱構造、を備えたカメラであって、放熱部材は、金属部材を囲むリング形状であり、その外周縁には複数の延出部が形成されており、これら複数の延出部がカメラの鏡胴またはフレームに固定されていることを特徴とするカメラ、が記載されている。
【0003】
特開2020-067632号公報には、撮像センサと、撮像センサが実装されるセンサ基板と、撮像センサよりも大きい外形を有する金属ホルダと、を備える撮像装置であって、センサ基板には、撮像センサの主面の一部である露出部を露出させる開口部が設けられ、金属ホルダは、開口部を通じて露出部に直接当接するように構成されている、撮像装置、が記載されている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術に係る1つの実施形態は、撮像素子の駆動熱をより効率的に放熱することが可能な撮像素子ユニット、および撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の撮像素子ユニットは、撮像装置の筐体に内蔵される撮像素子ユニットであり、被写体を撮像する撮像面および撮像面と対向する裏面を有する撮像素子と、撮像素子を撮像面の面方向に移動させる防振機能と、裏面から撮像素子の駆動熱が伝導される第1熱伝導部材であって、防振機能による撮像素子の移動に追従可能に変形する第1熱伝導部材と、を備え、第1熱伝導部材は、外層部と、外層部に接続され、外層部で取り囲まれる空間に配された少なくとも1つの内層部とを有し、外層部および内層部のそれぞれは、変形を可能とする屈曲部を有する。
【0006】
第1熱伝導部材は、シート状の1枚の素材を折り曲げることで形成されていることが好ましい。
【0007】
外層部および内層部は、第1シート部と、第1シート部に対向する第2シート部と、第1シート部および第2シート部を繋ぐ接続部とで構成されることが好ましい。
【0008】
外層部および内層部の屈曲部は外側に張り出していることが好ましい。
【0009】
第1熱伝導部材は、屈曲部を除く部分に補強層を有し、補強層を有する部分は、補強層の分、屈曲部よりも厚みが厚いことが好ましい。
【0010】
第1熱伝導部材は、第2熱伝導部材を介して撮像素子に接続され、かつ、第3熱伝導部材を介して筐体に接続されており、第2熱伝導部材および第3熱伝導部材は、外層部および内層部に挟まれていることが好ましい。
【0011】
第1熱伝導部材はグラファイトシートにより形成され、第2熱伝導部材および第3熱伝導部材は金属により形成されることが好ましい。
【0012】
第3熱伝導部材と筐体との間に、グラファイトシートにより形成された第4熱伝導部材が接続されており、第4熱伝導部材は、第1熱伝導部材よりも厚みが厚いことが好ましい。
【0013】
撮像面および裏面を繋ぐ撮像素子の側面と対向する位置に配され、側面から駆動熱が伝導される第5熱伝導部材を備え、第5熱伝導部材は、防振機能による撮像素子の移動に追従可能に変形する屈曲部を有することが好ましい。
【0014】
第1熱伝導部材および第5熱伝導部材は、第1シート部と、第1シート部に対向する第2シート部と、第1シート部および第2シート部を繋ぐ接続部であり、屈曲部を有する接続部とで構成され、第5熱伝導部材の屈曲部のなす角度は、第1熱伝導部材の屈曲部のなす角度よりも鋭角であることが好ましい。
【0015】
第5熱伝導部材はグラファイトシートにより形成されることが好ましい。
【0016】
本開示の撮像装置は、筐体と、筐体に内蔵され、上記のいずれかに記載の撮像素子ユニットと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】デジタルカメラを示す図である。
図2】撮像素子ユニットの正面分解斜視図である。
図3】撮像素子ユニットの背面分解斜視図である。
図4】撮像素子ユニットの要部の背面分解斜視図である。
図5】第1熱伝導部材、第2熱伝導部材、および第3熱伝導部材の斜視図である。
図6】第1熱伝導部材、第2熱伝導部材、および第3熱伝導部材の平面図である。
図7】撮像素子ユニットの要部断面図である。
図8】第3熱伝導部材、第4熱伝導部材、および接続部材の斜視図である。
図9】第1熱伝導部材の簡易平面図である。
図10】第1熱伝導部材の折り曲げ前と折り曲げ後を示す図である。
図11】第1熱伝導部材が変形する様子を示す図である。
図12】第1熱伝導部材が変形する様子を示す図である。
図13】撮像素子の駆動熱の伝導経路を示す図である。
図14】三重構造の第1熱伝導部材を示す図である。
図15】八角形の第1熱伝導部材を示す図である。
図16】外層部の接続部の角、並びに内層部の接続部の角が内側に引っ込んだ第1熱伝導部材を示す図である。
図17】第5熱伝導部材を有する撮像素子ユニットを示す図である。
図18】第5熱伝導部材を有する撮像素子ユニットを示す図である。
図19】第5熱伝導部材の簡易平面図である。
図20】開口を有さない回路基板の裏面の中心領域に、第2熱伝導部材を接続する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
[第1実施形態]
一例として図1に示すように、デジタルカメラ2はカメラボディ10を備える。カメラボディ10の正面にはレンズマウント11が設けられている。レンズマウント11は円形状の撮像開口12を有する。レンズマウント11には、交換式の撮像レンズ(図示省略)が着脱可能に装着される。デジタルカメラ2は、本開示の技術に係る「撮像装置」の一例である。また、カメラボディ10は、本開示の技術に係る「筐体」の一例である。
【0020】
カメラボディ10には撮像素子ユニット15が内蔵されている。撮像素子ユニット15には、矩形板状の撮像素子16が搭載されている。撮像素子16は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、またはCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。撮像素子16は、被写体を撮像する矩形状の撮像面17を有する。撮像面17は、被写体を示す被写体光を受光する。撮像面17には、周知のように、受光した被写体光を光電変換して電気信号を出力する画素が二次元状に配列されている。撮像面17の全体は、撮像開口12を通じて外部に露呈する。
【0021】
撮像素子ユニット15にはCPU(Central Processing Unit)18が接続されている。CPU18は撮像素子ユニット15の動作を制御する。なお、図示は省略するが、CPU18には、バスラインを介して、メモリであるROM(Read Only Memory)、および/または、RAM(Random Access Memory)が接続されている。これらCPU18、メモリ、およびバスラインによって、コンピュータが構成される。
【0022】
撮像素子ユニット15は防振機能を備える。防振機能は、カメラボディ10に与えられる振動に起因する位置ずれであって、撮像面17に入射する被写体光とデジタルカメラ2の相対的な位置ずれを抑制するための機能である。カメラボディ10に与えられる振動には、カメラボディ10を持って被写体を撮影するユーザの手ぶれ等がある。
【0023】
CPU18の制御の下、防振機能によって、位置ずれを打ち消す方向に、位置ずれを打ち消す量だけ、撮像素子16が移動される。より詳しくは、防振機能によって、撮像素子16の撮像面17の辺19に平行なX軸方向、および/または、辺19と直交する、すなわち辺19と90°の角度で交差する辺20に平行なY軸方向に撮像素子16が移動される。X軸方向およびY軸方向は、本開示の技術に係る「面方向」の一例である。なお、本明細書において、「直交」および「90°」という文言には、完全な直交および90°の意味の他に、設計上および製造上において許容される誤差を含む略直交および略90°の意味も含まれる。また、本明細書において、「平行」という文言には、完全な平行の意味の他に、設計上および製造上において許容される誤差を含む略平行の意味も含まれる。以下では、辺19の側を「下」と表現し、Y軸方向に関して辺19と反対側を「上」と表現する。また、辺20の側を「左」と表現し、X軸方向に関して辺20と反対側を「右」と表現する。
【0024】
ここで、本明細書において「位置ずれ」とは、振動に起因して光軸OAが被写体に対して変動することによって生じる現象を指す。「光軸OA」とは、撮像レンズを通じて撮像面17に入射する被写体光の光軸を指す。光軸OAの変動とは、基準軸(例えば、位置ずれが発生する前の光軸OA)に対して、位置ずれにより光軸OAが傾くことを意味する。なお、本明細書において、位置ずれを打ち消すとは、位置ずれをなくすという意味の他に、位置ずれを低減するという意味も含まれる。
【0025】
図2および図3において、撮像素子ユニット15は、固定部材30、可動部材31、およびヨーク32等を備える。固定部材30はカメラボディ10の背面側に配置され、ヨーク32はカメラボディ10の正面側に配置される。固定部材30はカメラボディ10に固定される。また、固定部材30とヨーク32とは、X軸およびY軸と直交するZ軸方向に間隔を空けて固定される。可動部材31は、固定部材30とヨーク32との間に、同じ大きさの3個のボール35、ボール36、およびボール37を介して配置されている。可動部材31は、ボール35~37によって、固定部材30とヨーク32に対して、X軸方向およびY軸方向に移動(Z軸回りに回転)することが可能である。なお、Z軸は、位置ずれが発生する前の光軸OAと平行である。
【0026】
固定部材30は、磁石40、磁石41、および磁石42を保持する。磁石40~42は、可動部材31と対向する固定部材30の正面に取り付けられている。磁石40~42はいずれも、可動部材31側にN極が向けられた延べ板状の磁石と、可動部材31側にS極が向けられた延べ板状の磁石との組である。磁石40は、固定部材30の下部中央に、その長辺がX軸方向に沿うように配置されている。磁石41および磁石42は、Y軸方向に沿って並べられている。磁石41は、固定部材30の左上隅に、その長辺がY軸方向に沿うように配置されている。磁石42は、固定部材30の左下隅に、その長辺がY軸方向に沿うように配置されている。
【0027】
固定部材30の正面には、磁石40~42に加えて、プレート45、プレート46、およびプレート47が取り付けられている。プレート45は、固定部材30の右下隅であって、磁石40の上側に配置されている。プレート46は、固定部材30の左側であって、磁石41と磁石42の間に配置されている。プレート47は、固定部材30の右上隅に配置されている。プレート45はボール35を転動可能に支持し、プレート46はボール36を転動可能に支持し、プレート47はボール37を転動可能に支持する。
【0028】
固定部材30には、可動部材31のXY平面における移動範囲を規制する正方形状の規制開口50および規制開口51が形成されている。規制開口50および規制開口51は、Z軸方向から平面視した場合の大きさが略同じである。規制開口50は、固定部材30の左下隅において、磁石42とプレート45との間に形成されている。規制開口51は、固定部材30の右上隅において、プレート47の左隣りに形成されている。つまり、規制開口50および規制開口51は、固定部材30において略対角の位置に配置されている。
【0029】
固定部材30には、スペーサを介して雌ネジ55、雌ネジ56、雌ネジ57、および雌ネジ58が設けられている。雌ネジ55は固定部材30の右下隅に設けられている。雌ネジ56は固定部材30の左上隅に設けられている。雌ネジ57は固定部材30の左下隅に設けられている。雌ネジ58は固定部材30の右上隅に設けられている。
【0030】
固定部材30の中心部には、矩形状の比較的大きいアクセス用開口59が形成されている。アクセス用開口59は、固定部材30の裏面から可動部材31の裏面にアクセスするために設けられている。
【0031】
可動部材31は、撮像素子16を保持し、かつ、コイル60、コイル61、およびコイル62を保持する。撮像素子16は、可動部材31の中央部に配置されている。コイル60は、可動部材31の下部中央であって、Z軸方向に関して磁石40に対向する位置に配置されている。コイル61は、可動部材31の左上隅であって、Z軸方向に関して磁石41に対向する位置に配置されている。コイル62は、可動部材31の左下隅であって、Z軸方向に関して磁石42に対向する位置に配置されている。コイル60は、その長辺がX軸方向に沿うように配置されている。コイル61およびコイル62は、Y軸方向に沿って並べられている。コイル61およびコイル62はそれぞれ、その長辺がY軸方向に沿うように配置されている。
【0032】
ヨーク32には磁石65が保持されている。また、コイル61には磁性体66が取り付けられ、コイル62には磁性体67が取り付けられている。磁石65は、例えばネオジウム磁石である。磁性体66および磁性体67は、例えば鉄製の薄板片である。磁石65はコイル60を覆うように配置され、コイル60の駆動力を増大させている。磁性体66および磁性体67は、Y軸方向に沿って並べられている。磁性体66はコイル61の上端側、磁性体67はコイル62の下端側にそれぞれ配置されている。
【0033】
コイル60は、前述のようにZ軸方向に関して磁石40に対向する位置に配置されているので、磁石65も、Z軸方向に関して磁石40に対向する位置に配置されている。このため、磁石65は、ヨーク32に固定された状態で、磁石40に吸引される。
【0034】
同様に、コイル61は、前述のようにZ軸方向に関して磁石41に対向する位置に配置されているので、磁性体66も、Z軸方向に関して磁石41に対向する位置に配置されている。このため、磁性体66は磁石41に吸引される。また、コイル62は、前述のようにZ軸方向に関して磁石42に対向する位置に配置されているので、磁性体67も、Z軸方向に関して磁石42に対向する位置に配置されている。このため、磁性体67は磁石42に吸引される。
【0035】
固定部材30と対向する可動部材31の背面には、凹部70、凹部71、および凹部72が形成されている。凹部70は、可動部材31の右下隅であって、Z軸方向に関してプレート45に対向する位置に配置されている。凹部71は、可動部材31の左側のコイル61とコイル62の間であって、Z軸方向に関してプレート46に対向する位置に配置されている。凹部72は、可動部材31の右上隅であって、Z軸方向に関してプレート47に対向する位置に配置されている。凹部70はボール35を転動可能に収容し、凹部71はボール36を転動可能に収容し、凹部72はボール37を転動可能に収容する。Z軸方向から平面視した場合の凹部70~72の大きさは、ボール35~37の直径よりも一回り大きい。また、Z軸方向の凹部70~72の深さは、ボール35~37の直径よりも僅かに小さい。
【0036】
可動部材31の背面には、Z軸方向に関して規制開口50と対向する位置に、固定部材30側に突き出た円柱状の突起80が設けられている。また、可動部材31の背面には、Z軸方向に関して規制開口51と対向する位置に、固定部材30側に突き出た円柱状の突起81が設けられている。突起80は規制開口50に挿通される。また、突起81は規制開口51に挿通される。このため突起80および突起81は、可動部材31のXY平面における移動を規制する規制ピンとして働く。
【0037】
ヨーク32は、例えば鉄製の薄板等の磁性体であり、略C字状をしている。ヨーク32は、磁石40~42との間で磁気回路を構成し、コイル60~62が受ける磁束を増加させる。
【0038】
ヨーク32には、雄ネジ85、雄ネジ86、雄ネジ87、および雄ネジ88が取り付けられる。雄ネジ85~88は、固定部材30の雌ネジ55~58に締結固定される。これにより、固定部材30とヨーク32が固定され、固定部材30とヨーク32の間に可動部材31が移動可能に保持される。
【0039】
撮像素子ユニット15は、一対のボイスコイルモータ(VCM;Voice Coil Motor)を備えている。一対のVCMは、第1VCMと第2VCMとのペアである。第1VCMは、磁石40とコイル60のペアと、ヨーク32とを備えており、可動部材31をY軸方向に移動させる動力を発生する。一方、第2VCMは、磁石41とコイル61のペアと、磁石42とコイル62のペアと、ヨーク32とを備えており、可動部材31をX軸方向に移動させる動力を発生する。より具体的には、第1VCMは、磁石40の磁力とコイル60に流される電流によって、可動部材31をY軸方向に移動させる動力を発生する。また、第2VCMは、磁石41の磁力とコイル61に流される電流、並びに磁石42の磁力とコイル62に流される電流によって、可動部材31をX軸方向に移動させる動力を発生する。
【0040】
図示は省略するが、可動部材31には、可動部材31の位置を検出するホール素子、および、ホール素子周辺の温度を測定する温度センサ等が設けられている。CPU18は、ホール素子により検出された可動部材31の位置と、位置ずれを補正するための可動部材31の目標位置との差分をとり、差分を無くすようにVCMを駆動させるフィードバック制御を行う。差分が大きい場合はVCMによる動力は相対的に大きくなり、逆に差分が小さい場合はVCMによる動力は相対的に小さくなる。また、CPU18は、温度センサにより測定された温度を用いて、ホール素子の温度ドリフトを補正する。
【0041】
図4にも示すように、撮像面17と対向する撮像素子16の裏面89には、撮像素子16と略同じ大きさの矩形板状の回路基板90が取り付けられている。回路基板90は、例えばエポキシ等の樹脂により形成される。回路基板90には矩形状の開口91が形成されている。開口91は回路基板90の中心部に形成されており、撮像素子16の裏面89の中央領域92を露呈する。中央領域92は、撮像素子16の裏面89の中心点Cを中心とし、中心点Cを取り囲む予め設定された大きさの領域である。中央領域92には、撮像素子16の識別情報98が記載されている。開口91は、この識別情報98を視認するために形成されている。識別情報98は、例えば管理番号や管理情報が記載されたインターネットページに移動するための2次元バーコードである。
【0042】
回路基板90には、撮像素子16の制御回路、駆動回路、および電源回路といった電気回路が搭載されている。回路基板90の裏面の下端には、コネクタ93およびコネクタ94が設けられている。また、回路基板90の裏面の左端には、コネクタ95が設けられている。
【0043】
コネクタ93およびコネクタ94には、フレキシブル基板96の一端が接続される。フレキシブル基板96の他端は、アクセス用開口59を通じて固定部材30の裏面側に引き出される(図7参照)。フレキシブル基板96の他端は、CPU18、およびバッテリからの電力を給電する給電回路(図示省略)等に接続されている。また、コネクタ95には、フレキシブル基板97(図1参照)の一端が接続される。フレキシブル基板97の他端は、可動部材31の正面に回り込み、撮像素子16に接続されている。まとめると、撮像素子16にはフレキシブル基板97の他端が接続され、コネクタ95にはフレキシブル基板97の一端が接続される。そして、コネクタ93およびコネクタ94にはフレキシブル基板96の一端が接続され、CPU18等がフレキシブル基板96の他端に接続される。このため、撮像素子16と回路基板90とCPU18等は、フレキシブル基板97、コネクタ95、コネクタ93およびコネクタ94、並びにフレキシブル基板96を介して接続される。
【0044】
撮像素子ユニット15はさらに、撮像素子16の駆動熱が伝導される第1熱伝導部材100、第2熱伝導部材101、および第3熱伝導部材102を有する。
【0045】
第1熱伝導部材100には、第2熱伝導部材101および第3熱伝導部材102が接続される。第1熱伝導部材100には、第2熱伝導部材101から駆動熱が伝導される。また、第1熱伝導部材100は、第3熱伝導部材102に駆動熱を伝導する。第2熱伝導部材101は、開口91により露呈された撮像素子16の裏面89の中央領域92に接続される。第2熱伝導部材101には、中央領域92から駆動熱が伝導される。
【0046】
第1熱伝導部材100と第2熱伝導部材101は、接着剤により固定される。固定部材30には雌ネジ68が形成されている。第1熱伝導部材100には挿通穴103が形成されている。第3熱伝導部材102には雄ネジ104が取り付けられる。雄ネジ104は、第1熱伝導部材100の挿通穴103を通され、固定部材30の雌ネジ68に締結固定される。これにより、第1熱伝導部材100と第3熱伝導部材102が固定される。
【0047】
第1熱伝導部材100はグラファイトシートにより形成される。グラファイトシートは、グラファイトシート本体をPET(Polyethylene Terephthalate)フイルム等の樹脂フイルムでパウチした構成である。グラファイトシート本体の厚みは例えば70μm、樹脂フイルムの厚みは例えば5μmである。
【0048】
第2熱伝導部材101および第3熱伝導部材102は、金属板、例えば銅板である。このため、第2熱伝導部材101および第3熱伝導部材102は、グラファイトシートにより形成された第1熱伝導部材100よりも高い剛性を有する。換言すると、第1熱伝導部材100は、第2熱伝導部材101および第3熱伝導部材102よりも高い弾性を有する。
【0049】
一例として図5および図6に示すように、第1熱伝導部材100は、外層部110と内層部111を有する二重構造である。内層部111は、接続部112(図9等も参照)を介して外層部110に接続され、外層部110で取り囲まれる空間に配されている。外層部110の上部には、挿通穴103が形成された取付部113が設けられている。
【0050】
外層部110および内層部111は、ともに六角形である。外層部110は、第1シート部115と、第1シート部115と同じ長さを有し、第1シート部115に対向する第2シート部116と、第1シート部115および第2シート部116を繋ぐ一対のV字状の接続部117とで構成される。同様に、内層部111は、第1シート部118と、第1シート部118と同じ長さを有し、第1シート部118に対向する第2シート部119と、第1シート部118および第2シート部119を繋ぐ一対のV字状の接続部120とで構成される。第1シート部115および第2シート部116、並びに第1シート部118および第2シート部119は、平面状である。
【0051】
第2熱伝導部材101は、第1片125と第2片126とを有する。第1片125は、撮像素子16の撮像面17および裏面89と平行であり、撮像素子16の裏面89と対向する。第1片125は、裏面89の中央領域92に接続される。第2片126は、第1片125から90°折り曲げられ、撮像素子16の撮像面17および裏面89の法線方向に延びている。撮像素子16の撮像面17および裏面89の法線方向は、すなわちZ軸方向(位置ずれが発生する前の光軸OAの方向)である。第2片126は、外層部110の第1シート部115と内層部111の第1シート部118の間の空間と略同じ大きさを有する。
【0052】
第2熱伝導部材101は、第2片126を通じて第1熱伝導部材100に接続されている。より詳しくは、第2片126は、外層部110の第1シート部115と内層部111の第1シート部118の間の空間に挿入され、第1シート部115と第1シート部118に挟まれた状態で保持される。第1シート部115と第1シート部118の第2片126と接する部分には、両面テープが貼り付けられている。この両面テープの接着剤によって、第1シート部115と第1シート部118と第2片126、ひいては第1熱伝導部材100と第2熱伝導部材101が固定される。
【0053】
第3熱伝導部材102は、第1片127と第2片128とを有する。第1片127は、第2熱伝導部材101の第1片125と同様に、撮像素子16の撮像面17および裏面89と平行であり、X軸方向に長い翼状である。第2片128は、第2熱伝導部材101の第2片126と同様に、第1片127から90°折り曲げられ、撮像素子16の撮像面17および裏面89の法線方向に延びている。
【0054】
第3熱伝導部材102は、第2片128を通じて第1熱伝導部材100に接続されている。より詳しくは、第2片128は、外層部110の第2シート部116と内層部111の第2シート部119の間の空間に挿入され、第2シート部116と第2シート部119に挟まれた状態で保持される。第2片128には、第2シート部119の縁に掛けられる爪129が設けられている。
【0055】
第2熱伝導部材101の厚みTH2は、第1熱伝導部材100の厚みTH1よりも厚い。第1熱伝導部材100の厚みTH1は例えば80μmであり、第2熱伝導部材101の厚みは例えば1mmである。なお、図示はしていないが、第3熱伝導部材102の厚みも、第1熱伝導部材100の厚みTH1よりも厚く、例えば1mmである。
【0056】
一例として図7に示すように、アクセス用開口59を通じて引き出されたフレキシブル基板96は、第2熱伝導部材101の第2片126を挟んで第1熱伝導部材100と反対側に配されている。
【0057】
一例として図8に示すように、第3熱伝導部材102には第4熱伝導部材135が接着剤によって取り付けられている。第4熱伝導部材135は、第1熱伝導部材100と同様に、グラファイトシートにより形成される。第4熱伝導部材135の厚みTH4は、第1熱伝導部材100の厚みTH1(図6参照)よりも厚い。第4熱伝導部材135の厚みTH4は例えば500μmである。
【0058】
第4熱伝導部材135には、さらに接続部材136が接着剤によって取り付けられている。接続部材136は、第2熱伝導部材101および第3熱伝導部材102と同様に、金属板、例えば銅板である。接続部材136は、カメラボディ10の天板137と接続される。カメラボディ10の天板137は、例えばマグネシウム板、あるいはアルミ板である。
【0059】
一例として図9に示すように、第1熱伝導部材100の外層部110は、前述のように六角形であるため、6つの角140、角141、角142、角143、角144、および角145を有する。内層部111も六角形であるため、6つの角146、角147、角148、角149、角150、および角151を有する。角140~145および角146~151は、防振機能による撮像素子16の移動に追従した変形を可能とする屈曲部として機能する。角140~145は外側に張り出している。同様に、角146~151も外側に張り出している。つまり、第1熱伝導部材100はパンタグラフのような形状である。なお、図9においては、取付部113の図示を省略する等して、第1熱伝導部材100を簡略化している。図11および図12等も同様である。
【0060】
一例として図10に示すように、第1熱伝導部材100は、シート状の1枚の素材160の破線部分を折り曲げることで形成されている。具体的には、まず、接続部112の部分を折り曲げて、外層部110になる部分と内層部111になる部分とを対面させる。そして、角146~151の部分を折り曲げて内層部111を形成した後、角140~145の部分を折り曲げて外層部110を形成する。最後に、取付部113となる部分を折り曲げて第1熱伝導部材100を完成させる。
【0061】
第1熱伝導部材100は補強層161を有する。補強層161は、樹脂フイルム、例えば厚さ40μmのPETフイルムである。補強層161は、接続部117および接続部120を構成する2辺に設けられており、屈曲部として機能する角144、角145、角150、および角151には設けられていない。当然ではあるが、接続部117および接続部120を構成する2辺は、補強層161の分、屈曲部として機能する角144、角145、角150、および角151よりも厚みが厚い。接続部117および接続部120を構成する2辺は、本開示の技術に係る「補強層を有する部分」の一例である。
【0062】
一例として図11および図12に示すように、第1熱伝導部材100は、防振機能による撮像素子16の移動に追従可能に変形する。図11は、防振機能による撮像素子16のY軸方向に沿った移動に追従して、第1熱伝導部材100が上下方向に伸縮して変形する様子を示している。図12は、防振機能による撮像素子16のX軸方向に沿った移動に追従して、第1熱伝導部材100が左右方向に傾斜して変形する様子を示している。
【0063】
次に、上記構成による作用を説明する。デジタルカメラ2において、例えば解像度4K相当の画質で秒間120コマ(4K/120p)の動画撮影等、撮像素子16に比較的大きい負荷が掛かる撮影を行った場合、撮像素子16に無視できない駆動熱が発生する。
【0064】
本例の撮像素子ユニット15においては、撮像素子16の駆動熱は、図13に示すような伝導経路を辿る。すなわち、撮像素子16の駆動熱は、まず、撮像素子16の裏面89から、当該裏面89の中央領域92に接続された第2熱伝導部材101に伝導される。次いで、駆動熱は、第2熱伝導部材101から、第2熱伝導部材101の第2片126を通じて接続された第1熱伝導部材100に伝導される。
【0065】
第1熱伝導部材100に伝導された駆動熱は、第2片128を通じて接続された第3熱伝導部材102に伝導される。さらに、駆動熱は、第3熱伝導部材102から第4熱伝導部材135、第4熱伝導部材135から接続部材136へと伝導される。そして、接続部材136を通じてカメラボディ10の天板137に伝導され、天板137を通じて外部に放熱される。
【0066】
撮像素子ユニット15は、固定部材30およびヨーク32に対して可動部材31が移動可能とされる。可動部材31は撮像素子16を保持する。このため、可動部材31の移動に伴って撮像素子16も移動する。ユーザの手ぶれ等によって撮像面17に入射する被写体光の位置ずれが発生した場合、可動部材31、ひいては撮像素子16は、CPU18の制御の下、位置ずれを打ち消す方向に、位置ずれを打ち消す量だけ移動される。この防振機能による撮像素子16の移動に追従して、図11および図12で示したように、第1熱伝導部材100が変形される。
【0067】
以上説明したように、撮像素子ユニット15は、被写体を撮像する撮像面17および撮像面17と対向する裏面89を有する撮像素子16と、裏面89に取り付けられた回路基板90と、撮像素子16の駆動熱が伝導される第1熱伝導部材100および第2熱伝導部材101とを備える。回路基板90には、撮像素子16の裏面89の中央領域92を露呈させる開口91が形成されている。第1熱伝導部材100は、第2熱伝導部材101に接続され、第2熱伝導部材101よりも高い弾性を有する。第2熱伝導部材101は、開口91を介して裏面89に接続される。比較的剛性が高く変形しにくい第2熱伝導部材101を撮像素子16に直接接続するので、比較的弾性が高く変形しやすい第1熱伝導部材100を撮像素子16に直接接続する場合よりも、撮像素子16から熱伝導部材を剥がれにくくすることができる。
【0068】
撮像素子ユニット15は、撮像素子16を面方向に移動させる防振機能を備える。図11および図12で示したように、第1熱伝導部材100は、防振機能による撮像素子16の移動に追従可能に変形する。このため、比較的剛性が高く変形しにくい第2熱伝導部材101を撮像素子16に直接接続したことによる、熱伝導部材が剥がれにくいという効果を、より発揮することができる。
【0069】
また、第1熱伝導部材100を撮像素子16に直接接続した場合は、伝導効率を稼ぐために第1熱伝導部材100の厚みTH1を厚くする必要がある。厚みTH1が厚いと、その分第1熱伝導部材100の反発力が増し、防振機能による撮像素子16の移動に追従した変形がしにくくなる。しかし、本例においては、第1熱伝導部材100の厚みTH1をそれほど厚くする必要はない。このため、第1熱伝導部材100は、撮像素子16に直接接続する場合よりも、防振機能による撮像素子16の移動に追従して、大きな抵抗なく変形することができる。
【0070】
図5等で示したように、第2熱伝導部材101は、中央領域92に接続され、裏面89と対向する第1片125と、第1片125から折り曲げられた第2片126とを有する。第1熱伝導部材100は、第2片126に接続されている。このため、第1熱伝導部材100は、撮像素子16自体の移動ではなく、第2片126の移動に追従可能に変形する。撮像素子16自体の移動に追従可能に変形させる場合、第1熱伝導部材100を複雑な構成とする必要があるが、第2片126の移動に追従可能に変形させるので、第1熱伝導部材100をシンプルな構成とすることができる。
【0071】
また、第2片126は、撮像面17および裏面89の法線方向に延びている。このため、第1熱伝導部材100をよりシンプルな構成とすることができる。なお、第1片125から第2片126を折り曲げる角度は、90°未満でもよいし、90°より大きくてもよい。
【0072】
撮像素子ユニット15は、回路基板90に取り付けられたフレキシブル基板96を備える。図7で示したように、フレキシブル基板96は、第2熱伝導部材101の第2片126を挟んで第1熱伝導部材100と反対側に配されている。このため、フレキシブル基板96と第1熱伝導部材100が接触し、撮像素子16への信号および/または撮像素子16からの信号が乱れるといったおそれがない。
【0073】
図6で示したように、第2熱伝導部材101の厚みTH2は、第1熱伝導部材100の厚みTH1よりも厚い。このため、第2熱伝導部材101の熱伝導効率を高めることができる。
【0074】
第1熱伝導部材100を形成するグラファイトシートの熱伝導率は1600w/m・Kである。一方、第2熱伝導部材101を形成する銅の熱伝導率は390W/m・Kであり、グラファイトシートよりも低い。しかし、上述のように第2熱伝導部材101の厚みTH2を、第1熱伝導部材100の厚みTH1よりも厚くすれば、熱伝導率の低さを補うことができる。これにより、第2熱伝導部材101の熱伝導効率を、第1熱伝導部材100よりも高くすることができる。第2熱伝導部材101の熱伝導性が第1熱伝導部材100よりも高ければ、第2熱伝導部材101から第1熱伝導部材100に駆動熱をスムーズに伝導することができる。
【0075】
なお、第2熱伝導部材101の厚みTH2を厚くすることで、第2熱伝導部材101の熱伝導性を第1熱伝導部材100よりも高くしているが、これに限らない。第2熱伝導部材101の厚みTH2を厚くすることに代えて、あるいは加えて、第2熱伝導部材101を、第1熱伝導部材100よりも熱伝導率が高い材料で形成することで、第2熱伝導部材101の熱伝導性を第1熱伝導部材100よりも高くしてもよい。
【0076】
図4等で示したように、回路基板90の開口91は、撮像素子16の裏面89の中央領域92を露呈する。撮像素子16の裏面89のうちで、撮像素子16の駆動熱が最も高くなる箇所は中央領域92である。このため、撮像素子16の駆動熱をより効果的に放熱することができる。
【0077】
また、中央領域92は、撮像素子16の識別情報98が記載された領域である。このため、識別情報98を視認するために形成された開口91を、撮像素子16の駆動熱の放熱に有効利用することができる。
【0078】
図2で示したように、第1熱伝導部材100はグラファイトシートにより形成され、第2熱伝導部材101および第3熱伝導部材102は金属により形成される。このため、第1熱伝導部材100には適度な弾性を持たせることができ、第2熱伝導部材101および第3熱伝導部材102には適度な剛性を持たせることができる。
【0079】
図9等で示したように、第1熱伝導部材100は、外層部110と、外層部110に接続され、外層部110で取り囲まれる空間に配された内層部111とを有する。外層部110および内層部111のそれぞれは、防振機能による撮像素子16の移動に追従した変形を可能とする屈曲部(角140~145および角146~151)を有する。このため、外層部110のみの場合と比べて、撮像素子16の駆動熱をより効率的に放熱することが可能となる。結果として、4K/120pの動画撮影といった撮像素子16に比較的大きい負荷が掛かる撮影を、従来よりも長時間行うことができる。また、第1熱伝導部材100を二重構造とすることで、熱伝導部材の設置スペースを節約することができる。
【0080】
図10で示したように、第1熱伝導部材100は、シート状の1枚の素材160を折り曲げることで形成されている。このため、外層部110および内層部111を別々の素材で形成した後に接続する場合と比べて、第1熱伝導部材100を簡単に形成することができる。
【0081】
図5等で示したように、第1熱伝導部材100は、第1シート部115および第1シート部118と、第1シート部115および第1シート部118に対向する第2シート部116および第2シート部119と、第1シート部115および第2シート部116を繋ぐ接続部117と、第1シート部118および第2シート部119を繋ぐ接続部120とで構成される。このため、第1熱伝導部材100は、防振機能による撮像素子16の移動に追従して、無理なく変形することができる。
【0082】
また、図9等で示したように、外層部110および内層部111は、屈曲部として機能する角140~145および角146~151が外側に張り出している。このため、外層部110で取り囲まれる空間を大きくとることができ、内層部111を形成しやすい。
【0083】
図10で示したように、第1熱伝導部材100は、屈曲部として機能する角144、角145、角150、および角151以外の部分であって、接続部117および接続部120を構成する2辺に補強層161を有する。そして、接続部117および接続部120を構成する2辺は、補強層161の分、屈曲部として機能する角140~145および角146~151よりも厚みが厚い。このため、接続部117および接続部120を構成する2辺の意図しない変形を防止することができる。また、屈曲部として機能する角140~145および角146~151に補強層161が設けられないので、第1熱伝導部材100は、防振機能による撮像素子16の移動に追従して、大きな抵抗なく変形することができる。なお、第1シート部115および第1シート部118、並びに第2シート部116および第2シート部119に補強層161を設けてもよい。
【0084】
第1熱伝導部材100は、第2熱伝導部材101を介して撮像素子16に接続され、かつ、第3熱伝導部材102を介してカメラボディ10に接続されている。図5等で示したように、第2熱伝導部材101および第3熱伝導部材102は、外層部110および内層部111に挟まれている。このため、第2熱伝導部材101から第1熱伝導部材100への駆動熱の伝導効率、および第1熱伝導部材100から第3熱伝導部材102への駆動熱の伝導効率を向上させることができる。また、第1熱伝導部材100による第2熱伝導部材101および第3熱伝導部材102の保持力を高めることができる。なお、第3熱伝導部材102がカメラボディ10の一部を構成していてもよい。
【0085】
図8で示したように、第3熱伝導部材102とカメラボディ10の天板137との間には、グラファイトシートにより形成された第4熱伝導部材135が接続されている。第4熱伝導部材135の厚みTH4は、第1熱伝導部材100の厚みTH1よりも厚い。第4熱伝導部材135は、第1熱伝導部材100とは異なり、防振機能による撮像素子16の移動に追従可能に変形することはない。このため、第1熱伝導部材100のように、駆動熱の伝導効率を多少犠牲にして、スムーズな変形を実現するために厚みTH1を比較的薄くする必要がなく、厚みTH4を厚くして十分な伝導効率を確保することができる。
【0086】
内層部111は1つに限らない。一例として図14に示す第1熱伝導部材170のように、1つの外層部171と、外層部171で取り囲まれる空間に配された2つの内層部172および内層部173を有する三重構造としてもよい。また、第1熱伝導部材の形状は六角形に限らない。一例として図15に示す第1熱伝導部材180のように、外層部181および内層部182を八角形としてもよい。さらに、一例として図16に示すように、外層部191の接続部193の角195および角196、並びに内層部192の接続部194の角197および角198が内側に引っ込んだ第1熱伝導部材190であってもよい。第1熱伝導部材190は、いわば「Σ」とその鏡像を合体させたような形状である。
【0087】
[第2実施形態]
一例として図17および図18に示すように、第2実施形態の撮像素子ユニット200は、第5熱伝導部材201を有する。第5熱伝導部材201は、撮像面17および裏面89を繋ぐ撮像素子16の側面202と対向する位置であって、撮像素子16に接続されて可動部材31の正面に回り込んだフレキシブル基板97で形成される空間内に配されている。第5熱伝導部材201には、側面202から撮像素子16の駆動熱が伝導される。また、第5熱伝導部材201には、金属板で形成された第6熱伝導部材203が接続されている。第6熱伝導部材203は、カメラボディ10の側板等に接続されている。第5熱伝導部材201からの駆動熱は、第6熱伝導部材203を通じてカメラボディ10に伝導される。
【0088】
第5熱伝導部材201は、第1熱伝導部材100等と同様にグラファイトシートにより形成され、高い弾性を有する。第5熱伝導部材201は、第1熱伝導部材100等と同様に、防振機能による撮像素子16の移動に追従可能に変形する。ただし、第5熱伝導部材201は、第1熱伝導部材100等とは異なり、内層部がない構造である。
【0089】
一例として図19に示すように、第5熱伝導部材201は、第1熱伝導部材100と同様に、6つの角205、角206、角207、角208、角209、および角210を有する六角形である。角205~210は、防振機能による撮像素子16の移動に追従した変形を可能とする屈曲部として機能する。また、第5熱伝導部材201は、第1熱伝導部材100と同様に、第1シート部211と、第1シート部211と同じ長さを有し、第1シート部211に対向する第2シート部212と、第1シート部211および第2シート部212を繋ぐ一対のV字状の接続部213とで構成される。接続部213の屈曲部として機能する角209および角210の角度θ5は、第1熱伝導部材100の接続部117および接続部120の屈曲部として機能する角144および角145、並びに角150および角151の角度θ1(図9参照)よりも鋭角である。
【0090】
このように、第2実施形態の撮像素子ユニット200は、第5熱伝導部材201を備える。第5熱伝導部材201は、撮像面17および裏面89を繋ぐ撮像素子16の側面202と対向する位置に配される。第5熱伝導部材201には、側面202から駆動熱が伝導される。第5熱伝導部材201は、防振機能による撮像素子16の移動に追従可能に変形する。第5熱伝導部材201は、防振機能による撮像素子16の移動に追従した変形を可能とする屈曲部を有する。したがって、防振機能による撮像素子16の移動を阻害することなく、駆動熱をより効果的に放熱することができる。
【0091】
第5熱伝導部材201は、第1シート部211と、第1シート部211に対向する第2シート部212と、第1シート部211と第2シート部212を繋ぐ接続部213とで構成される。このため、第5熱伝導部材201は、第6熱伝導部材203等との接続部分を確保しつつ、防振機能による撮像素子16の移動に追従して、無理なく変形することができる。
【0092】
また、第5熱伝導部材の接続部213の屈曲部のなす角度θ5は、第1熱伝導部材100の接続部117および接続部120の屈曲部のなす角度θ1よりも鋭角である。このため、第5熱伝導部材201の反発力を低くすることができ、第5熱伝導部材201は、防振機能による撮像素子16の移動に追従して、大きな抵抗なく変形することができる。また、第1シート部211と第2シート部212との距離が近付く分、第5熱伝導部材201は第1熱伝導部材100よりもコンパクトになる。このため、撮像素子16の側面202と対向する位置であって、フレキシブル基板97で形成される空間内、といった比較的狭いスペースにも配することができる。
【0093】
第5熱伝導部材201は、グラファイトシートにより形成される。このため、第5熱伝導部材201に適度な弾性を持たせることができる。
【0094】
第1熱伝導部材100と同様に、第5熱伝導部材201を多重構造としてもよい。また、図15で示した例のように、第5熱伝導部材201を八角形としてもよい。さらに、図16で示した例のように、第5熱伝導部材201を、接続部の角が内側に引っ込んだ構造としてもよい。
【0095】
上記第1実施形態では、撮像素子16の裏面89の中央領域92を露呈させる開口91が回路基板90に形成され、当該開口91を介して第2熱伝導部材101の第1片125が中央領域92に接続される例を示したが、これに限らない。一例として図20に示すように、開口91を有さない回路基板220の裏面221の中央領域222に、第2熱伝導部材101を接続してもよい。
【0096】
また、図示は省略するが、開口91を有さない回路基板と第2熱伝導部材101とを、熱伝導性のゲル等を介して接続してもよい。
【0097】
撮像素子ユニット15の動作を制御するプロセッサとしてCPU18を例示したが、これに限らない。CPU18に代えて、あるいは加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、および/またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有する専用電気回路等を用いてもよい。
【0098】
上記第1実施形態では、プレート45~47を固定部材30に、凹部70~72を可動部材31にそれぞれ設けているが、これに限らない。プレート45~47を可動部材31に、凹部70~72を固定部材30にそれぞれ設けてもよい。また、上記第1実施形態では、磁石40~42を固定部材30に、コイル60~62を可動部材31にそれぞれ設けているが、これに限らない。磁石40~42を可動部材31に、コイル60~62を固定部材30にそれぞれ設けてもよい。
【0099】
ボール35~37、プレート45~47、および凹部70~72の組は3組に限らず、4組以上であってもよい。
【0100】
本開示の撮像素子ユニットは、例示のデジタルカメラ2以外の撮像装置、例えば、スマートフォン、タブレット端末、あるいは監視カメラ等に対しても適用することが可能である。
【0101】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態および/または種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記各実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。
【0102】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0103】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
【0104】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
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