(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038345
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】抗原性OSPAポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20240312BHJP
C07K 14/20 20060101ALI20240312BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240312BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240312BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N15/31
C07K14/20 ZNA
C07K14/47
C12N9/00
A61K39/02
A61P31/04
A61K39/39
A61K47/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024002941
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2020554527の分割
【原出願日】2019-04-02
(31)【優先権主張番号】62/652,210
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ジェイ・ナーベル
(72)【発明者】
【氏名】チィ-ジェン・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー・カンプ
(72)【発明者】
【氏名】ロニー・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】カート・スワンソン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ライムボレリア症に関連する、抗原性OspAポリペプチド、およびOspAに対する抗体を誘発するためのその使用を提供する。
【解決手段】ボレリア(Borrelia)の、OspA血清型1ポリペプチドを含む、抗原性OspAポリペプチドであって、特定の配列を含まない、前記抗原性OspAポリペプチドを提供する。さらに、前記OspAポリペプチド、およびフェリチンタンパク質を含む、抗原性ポリペプチドを提供する。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボレリア(Borrelia)のOspA血清型1ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチドであって、配列番号77の配列を含まない前記抗原性OspAポリペプチド。
【請求項2】
膜貫通ドメインまたは膜貫通ドメインの一部を欠如する、請求項1に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項3】
脂質付加されていない、請求項1または2のいずれかに記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項4】
配列番号77の配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換が存在し、該置換が、配列番号78との同一性を低減させるか、または非保存的で配列番号78とのより高い同一性をもたらさない、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項5】
置換が、配列番号78との同一性を低減させる、請求項4に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項6】
配列番号77のアミノ酸の1つまたはそれ以上が、非血清型1 OspAの対応するアミノ酸に置き換えられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項7】
非血清型1 OspAが血清型2、3、4、5、6、または7 OspAである、請求項6に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項8】
配列番号77のアミノ酸の各々が、血清型2、3、4、5、6、または7 OspAの対応するアミノ酸に置き換えられている、請求項6に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項9】
グリコシル化を低減または除去する改変をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項10】
改変が、少なくとも1つのアスパラギンの置換を含む、請求項9に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項11】
少なくとも1つのアスパラギンが、OspA血清型1のN71、N190、N202、およびN251の任意の1つ、2つ、3つ、またはそれより多くを含む、請求項10に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項12】
少なくとも1つのアスパラギンが、OspA血清型1のN71、N190、N202、およびN251を含む、請求項11に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項13】
1つまたはそれ以上のアスパラギンがグルタミンで置換されている、請求項10~12のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項14】
N-グリコシル化部位を欠如する、請求項10~13のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項15】
OspAが、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorfer
i)、ボレリア・マヨニイ(Borrelia mayonii)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、またはボレリア・ババリエンシス(Borrelia bavariensis)に由来する、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項16】
配列番号1、3、4、または53のいずれか1つの配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項17】
配列番号1~10または12~76のいずれか1つの配列を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項18】
OspAエクトドメインを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項19】
配列番号94~102のいずれか1つの配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する配列を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項20】
フェリチンタンパク質をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項21】
フェリチンが、表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異を含む、請求項20に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項22】
OspAポリペプチドおよびフェリチンを含む抗原性OspAポリペプチドであって、該フェリチンが、表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異を含む、前記抗原性OspAポリペプチド。
【請求項23】
フェリチンが、H.ピロリフェリチンのE12C、S26C、S72C、A75C、K79C、S100C、およびS111C変異の1つもしくはそれ以上、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける1つもしくはそれ以上の対応する変異を含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項24】
表面に露出したアミノ酸を介してフェリチンに連結された1つまたはそれ以上の免疫刺激性部分を含み、場合により表面に露出した該アミノ酸が、変異によりもたらされるシステインである、請求項20~23のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項25】
フェリチンが、表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異を含み、場合により該アスパラギンが、H.ピロリフェリチンの19位にあるか、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける類似の位置にある、請求項20~24のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項26】
フェリチンが、内部システインを非システインアミノ酸に置き換える変異を含み、場合により該内部システインが、H.ピロリフェリチンの31位にあるか、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンの31位に対応する位置にある、請求項20~25のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド
。
【請求項27】
フェリチン粒子であって、請求項20~26のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチドを含む前記フェリチン粒子。
【請求項28】
ルマジンシンターゼタンパク質をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド。
【請求項29】
ルマジンシンターゼ粒子であって、請求項28に記載の抗原性OspAポリペプチドを含む前記ルマジンシンターゼ粒子。
【請求項30】
組成物であって、請求項1~29のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、またはルマジンシンターゼ粒子を含み、薬学的に許容される担体をさらに含む前記組成物。
【請求項31】
アジュバントをさらに含み、場合により該アジュバントがAF03である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
第1および第2の抗原性OspAポリペプチドを含み、該第1および第2の抗原性OspAポリペプチドが、異なる血清型のOspAポリペプチドを含む、請求項30または31に記載の組成物。
【請求項33】
OspA血清型1ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型2ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型3ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型4ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型5ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型6ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型7ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド
から選択される1、2、3、4、5、6、または7つの抗原性OspAポリペプチドを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
OspA血清型1ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型2ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型3ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型4ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型5ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型6ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;
OspA血清型7ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド
を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
ボレリアに対する免疫応答を誘発する方法またはライム病に対する対象の保護において使用するための、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、ルマジンシンターゼ粒子、または組成物。
【請求項36】
ボレリアに対する免疫応答を誘発する、またはライム病に対して対象を保護する方法であって、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、ルマジンシンターゼ粒子、または組成物の任意の1つまたはそれ以上を対象に投与する工程を含む前記方法。
【請求項37】
対象がヒトである、請求項35または36に記載の抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、ルマジンシンターゼ粒子、組成物、または方法。
【請求項38】
場合により核酸がmRNAである、請求項1~26のいずれか1項に記載の抗原性OspAポリペプチドをコードする核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全内容が参照によって本明細書に組み入れられる、2018年4月3日に提出された米国仮特許出願第62/652,210号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本出願は、配列表を含有し、それらはASCIIフォーマットで電子提出されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。前記ASCIIコピーは、2019年3月18日に作成され、名称は2019-03-18_01121-0033-00PCT_SL.txtであり、サイズは370,862バイトである。
【背景技術】
【0003】
ワクチン学の分野での多くの成功にも関わらず、生命を脅かす多くの感染疾患からヒトを保護するために、新規打開策が必要である。現在認可されている多くのワクチンは、何十年も前の技術に依存して生弱毒化または不活化死菌ワクチンを産生しているが、これらは固有の安全性の懸念を有し、多くの場合、ごく短命な弱い免疫応答を刺激するに過ぎず、複数回用量の投与を必要とする。遺伝子工学および生化学工学の進歩により、難題である疾患標的に対する治療薬を開発することが可能となっているが、ワクチン学の分野へのこれらの応用は、まだ十分に実現されていない。組換えタンパク質技術により、現在では最適な抗原の設計が可能となっている。加えて、ナノ粒子は、最適な抗原提示および標的化薬物送達に関する潜在性をますます証明している。複数の抗原が結合したナノ粒子は、その分子積み荷を多価で呈示することによって与えられる結合アビディティの増加、およびその微視的サイズにより生物学的障壁をより効率的に通過する能力を有することが示されている。インフルエンザウイルス血液凝集素(HA)タンパク質に融合したヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori(H.pylori))フェリチンナノ粒子は、マウスインフルエンザモデルにおいて抗原安定性の改善および免疫原性の増加を可能にした(非特許文献1を参照されたい)。この融合タンパク質は、8面体の対称性ナノ粒子へと自己集合して8個の3量体HAスパイク構造を提示し、アジュバントと共に使用する場合、様々な前臨床モデルにおいて強力な免疫応答を与える。
【0004】
ライムボレリア症は、ボレリア(Borrelia)属の一部の細菌種によって引き起こされる人獣共通疾患であり、感染したマダニ(Ixodes)種のダニに噛まれることによってヒトおよびイヌに伝播する。ライム病は、世界全体の公衆衛生問題であり、症例は、ヨーロッパ、北米、およびアジアに及ぶ温暖な気候で報告されている。ボレリアの外部表面タンパク質A(OspA)は、免疫応答を誘発する主要な抗原である。世界中でボレリアにおいて見出されるOspAの少なくとも7つの異なる血清型(アイソタイプ1~7)が存在する。ボレリアの異なる遺伝子種は世界中に存在し、そのため、1つの遺伝子種に対する免疫は、同様にライムボレリア症を引き起こし得る他の細菌に対する免疫を付与しない。さらに、ボレリアを有するダニの範囲が地域に限定されることは、1つの地理的地域における患者のライム病に関連するOspA血清型が、別の地理的地域における患者のライム病には関連しないことを意味する。
【0005】
本明細書において、OspAポリペプチドを伴う1組の新規ポリペプチド、ナノ粒子、組成物、方法、および使用を提示する。改変OspAポリペプチドは、自己免疫反応を刺激するリスクが低減された、ボレリアによる感染症からの保護を提供するために開発された。さらに、アジュバントのような免疫刺激性部分が抗原性ポリペプチドに直接化学結合しているOspAポリペプチドおよびフェリチンを含む自己アジュバント性抗原性ポリペプチドを開発した。直接免疫刺激性部分を、抗原性ポリペプチドと直接コンジュゲートすると、免疫刺激性部分とOspAポリペプチドとを単一の高分子実体として標的化同時送
達することが可能となり、これによって抗原およびアジュバントのような免疫刺激性部分を個別の分子として含む従来のワクチンに関して懸念される全身毒性の可能性を大きく減少させることができる。免疫刺激性部分をOspAポリペプチドと共に高分子実体として同時送達すること、およびそれが多価で提示されることもまた、保護を誘発するのに必要な全体的な用量を低減させ、製造負荷およびコストを低減させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kanekiyoら、Nature 499:102~106頁(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、上記の利点の1つまたはそれ以上を提供することができる、または有用な選択を公共に少なくとも提供する組成物、キット、方法、および使用を提供することである。したがって、以下の実施形態が本明細書において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態1は、ボレリアのOspA血清型1ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチドであって、配列番号77の配列を含まない、抗原性OspAポリペプチドである。
【0009】
実施形態2は、膜貫通ドメインまたは膜貫通ドメインの一部を欠如する、実施形態1に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0010】
実施形態3は、脂質付加されていない、実施形態1または2のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0011】
実施形態4は、配列番号77の配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換が存在し、置換が配列番号78との同一性を低減させるか、または非保存的で配列番号78とのより高い同一性をもたらさない、実施形態1~3のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0012】
実施形態5は、置換が配列番号78との同一性を低減させる、実施形態4に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0013】
実施形態6は、配列番号77のアミノ酸の1つまたはそれ以上が、非血清型1 OspAの対応するアミノ酸に置き換えられている、実施形態1~5のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0014】
実施形態7は、非血清型1 OspAが、血清型2、3、4、5、6、または7 OspAである、実施形態6に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0015】
実施形態8は、配列番号77のアミノ酸の各々が、血清型2、3、4、5、6、または7 OspAの対応するアミノ酸に置き換えられている、実施形態6に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0016】
実施形態9は、グリコシル化を低減または除去する改変をさらに含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0017】
実施形態10は、改変が、少なくとも1つのアスパラギンの置換を含む、実施形態9に
記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0018】
実施形態11は、少なくとも1つのアスパラギンが、OspA血清型1のN71、N190、N202、およびN251のいずれか1つ、2つ、3つ、またはそれより多くを含む、実施形態10に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0019】
実施形態12は、少なくとも1つのアスパラギンが、OspA血清型1のN71、N190、N202、およびN251を含む、実施形態11に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0020】
実施形態13は、1つまたはそれ以上のアスパラギンがグルタミンで置換される、実施形態10~12のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0021】
実施形態14は、N-グリコシル化部位を欠如する、実施形態10~13のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0022】
実施形態15は、OspAがボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボレリア・マヨニイ(Borrelia mayonii)、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)、またはボレリア・ババリエンシス(Borrelia bavariensis)に由来する、実施形態1~14のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0023】
実施形態16は、配列番号1、3、4、または53のいずれか1つの配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0024】
実施形態17は、配列番号1~10または12~76のいずれか1つの配列を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0025】
実施形態18は、OspAエクトドメインを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0026】
実施形態19は、配列番号94~102のいずれか1つに記載の配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する配列を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0027】
実施形態20は、フェリチンタンパク質をさらに含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0028】
実施形態21は、フェリチンが表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異を含む、実施形態20に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0029】
実施形態22は、OspAポリペプチドおよびフェリチンを含む抗原性OspAポリペプチドであって、フェリチンが表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異を含む、抗原性OspAポリペプチドである。
【0030】
実施形態23は、フェリチンが、H.ピロリフェリチンのE12C、S26C、S72
C、A75C、K79C、S100C、およびS111C変異の1つもしくはそれ以上、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける1つもしくはそれ以上の対応する変異を含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0031】
実施形態24は、フェリチンが、H.ピロリフェリチンのE12C変異、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける対応する変異を含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0032】
実施形態25は、フェリチンがH.ピロリフェリチンのS26C変異、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける対応する変異を含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0033】
実施形態26は、フェリチンが、H.ピロリフェリチンのS72C変異、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける対応する変異を含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0034】
実施形態27は、フェリチンが、H.ピロリフェリチンのA75C変異、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける対応する変異を含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0035】
実施形態28は、フェリチンが、H.ピロリフェリチンのK79C変異、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける対応する変異を含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0036】
実施形態29は、フェリチンが、H.ピロリフェリチンのS100C変異、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける対応する変異を含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0037】
実施形態30は、フェリチンが、H.ピロリフェリチンのS111C変異、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンにおける対応する変異を含む、実施形態20~22のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0038】
実施形態31は、表面に露出したアミノ酸を介してフェリチンに連結された1つまたはそれ以上の免疫刺激性部分を含み、場合により表面に露出したアミノ酸が、変異によりもたらされるシステインである、実施形態20~30のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0039】
実施形態31aは、免疫刺激性部分が、TLR2のアゴニストであり、場合によりアゴニストがPAM2CSK4、FSL-1、またはPAM3CSK4である、抗原性OspAポリペプチドである。
【0040】
実施形態31bは、免疫刺激性部分がTLR7/8のアゴニストであり、場合によりア
ゴニストが一本鎖RNA、イミダゾキノリン、ヌクレオシドアナログ、3M-012、またはSM7/8aである、実施形態31に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0041】
実施形態31cは、免疫刺激性部分がTLR9のアゴニストであり、場合によりアゴニストが、CpHオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、5’プリン(Pu)-ピリミジン(Py)-C-G-Py-Pu3’を含む1つまたはそれ以上の6量体CpGモチーフを含むODN、配列番号210の配列を含むODN、またはISS-1018である、実施形態31に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0042】
実施形態31dは、TLR9のアゴニストが、ホスホロチオエート結合を含む骨格を含む、実施形態31cに記載のフェリチンタンパク質である。
【0043】
実施形態31eは、免疫刺激性部分がSTINGのアゴニストであり、場合によりアゴニストが、環状ジヌクレオチド(CDN)、cdA、cdG、cAMP-cGMP、および2’-5’,3’-5’cGAMP、またはDMXAAである、実施形態31に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0044】
実施形態32は、フェリチンが表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異を含み、アスパラギンがH.ピロリフェリチンの19位、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、非H.ピロリフェリチンの類似の位置にある、実施形態20~31eのいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0045】
実施形態33は、フェリチンが、内部システインを非システインアミノ酸に置き換える変異を含み、場合により内部システインが、H.ピロリフェリチンの31位、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、H.ピロリフェリチンの31位に対応する位置にある、実施形態20~32のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0046】
実施形態34は、OspAポリペプチドおよびフェリチンの間にペプチドリンカーを含む、実施形態20~33のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0047】
実施形態35は、ペプチドリンカーがフェリチンのN末端側である、実施形態34に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0048】
実施形態35aは、ペプチドリンカーがフェリチンのC末端側である、実施形態34に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0049】
実施形態36は、フェリチンが配列番号201~207または211~215のいずれか1つと80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~35aのいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0050】
実施形態36aは、配列番号201と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0051】
実施形態36bは、配列番号202と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0052】
実施形態36cは、配列番号203と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0053】
実施形態36dは、配列番号215と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0054】
実施形態36eは、配列番号204と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0055】
実施形態36fは、配列番号205と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0056】
実施形態36gは、配列番号206と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0057】
実施形態36hは、配列番号207と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0058】
実施形態36iは、配列番号211と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0059】
実施形態36jは、配列番号212と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0060】
実施形態36kは、配列番号213と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0061】
実施形態36lは、配列番号214と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態36に記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0062】
実施形態37は、実施形態20~36lのいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドを含むフェリチン粒子である。
【0063】
実施形態38は、ルマジンシンターゼタンパク質をさらに含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドである。
【0064】
実施形態39は、実施形態38に記載の抗原性OspAポリペプチドを含むルマジンシンターゼ粒子である。
【0065】
実施形態40は、抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、または実施形態1~39のいずれか1つに記載のルマジンシンターゼ粒子を含み、薬学的に許容される担体をさらに含む組成物である。
【0066】
実施形態41は、アジュバントをさらに含み、場合によりアジュバントがAF03である、実施形態40に記載の組成物である。
【0067】
実施形態42は、第1および第2の抗原性OspAポリペプチドを含み、第1および第2の抗原性OspAポリペプチドが、異なる血清型のOspAポリペプチドを含む、実施形態40または41に記載の組成物である。
【0068】
実施形態43は、OspA血清型1ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型2ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型3ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型4ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型5ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型6ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型7ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチドから選択される1、2、3、4、5、6、または7つの抗原性OspAポリペプチドを含む、実施形態42に記載の組成物である。
【0069】
実施形態44は、OspA血清型1ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型2ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型3ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型4ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型5ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型6ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチド;OspA血清型7ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチドを含む、実施形態43に記載の組成物である。
【0070】
実施形態45は、ボレリアに対する免疫応答を誘発する方法またはライム病に対する対象の保護において使用するための、実施形態1~44のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、ルマジンシンターゼ粒子、または組成物である。
【0071】
実施形態46は、ボレリアに対する免疫応答を誘発する、またはライム病に対して対象を保護する方法であって、実施形態1~44のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、ルマジンシンターゼ粒子、または組成物のいずれか1つまたはそれ以上を対象に投与する工程を含む方法である。
【0072】
実施形態47は、対象がヒトである、実施形態45~46のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、ルマジンシンターゼ粒子、組成物、または方法である。
【0073】
実施形態47aは、対象が哺乳動物であり、場合により哺乳動物が霊長類または家畜哺乳動物であり、さらに場合により霊長類が非ヒト霊長類、サル、マカク、アカゲザル、またはカニクイザル、もしくは類人猿であり、または家畜哺乳動物がイヌ、ウサギ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ラクダ、またはロバである、実施形態45~46のいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、ルマジンシンターゼ粒子、組成物、または方法である。
【0074】
実施形態48は、実施形態1~44に記載の抗原性OspAポリペプチド、フェリチン粒子、ルマジンシンターゼ粒子、および組成物を含み、場合によりライム病に対して対象
を免疫するために使用するための説明書を含むキットである。
【0075】
実施形態49は、場合により核酸がRNAである、実施形態1~36lのいずれか1つに記載の抗原性OspAポリペプチドをコードする核酸である。
【0076】
追加の目的および利点は、以下の説明に部分的に記載され、部分的に説明から明白であり、または実践により学ぶことができるであろう。目的および利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素および組合せによって実現および達成される。
【0077】
前述の一般的説明および以下の詳細な説明は、単なる例示および説明であり、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0078】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を構成する以下の図面は、いくつかの実施形態を例証し、説明と共に本明細書に記載する原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1A】OspA-フェリチンナノ粒子の例示的な設計を示す図である。
図1A.フェリチンに遺伝的に融合したOspAは、融合タンパク質を形成する。OspAおよびフェリチン配列は、グリシン-セリンリンカー(-GS-)によって分離される。
【
図1B】OspA-フェリチンナノ粒子の例示的な設計を示す図である。
図1B.OspAのエクトドメインの構造を示す。OspAがフェリチンに結合しているC末端をアスタリスクで示す。
【
図1C】OspA-フェリチンナノ粒子の例示的な設計を示す図である。
図1C.H.ピロリフェリチンの24モノマーで構成される例示的なフェリチンナノ粒子。
【
図1D】OspA-フェリチンナノ粒子の例示的な設計を示す図である。
図1D.例示的なOspA-フェリチン融合タンパク質ナノ粒子。フェリチン(薄灰色)、グリシン-セリンリンカー(GS)の位置、OspA(濃灰色および黒色)を示す(n:サブユニット数)。
【
図2-1】
図2A-2Dは、例示的なOspA-フェリチンの発現および精製を示す図である。
図2A.Superose 6カラム上で精製された例示的なOspA-フェリチンナノ粒子のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)プロファイル。
図2B.Expi293細胞由来の精製された例示的なOspA-フェリチンのSDS-PAGEゲル。
図2C.例示的なOspA-フェリチンナノ粒子の動的光散乱(DLS)プロファイル。半径は13nmであり、Pd%(標準化された多分散性の尺度)は7.4であり、質量は100%である。
図2D.67,000倍で318個の粒子の透過電子顕微鏡写真のクラス平均から構成された例示的なOspA-フェリチンの複合画像。フェリチンナノ粒子は、中空中心を有する強い円形密度として透過型電子顕微鏡上に現れる。各ナノ粒子は、環状またはわずかに長円形に見えるOspAに対応する多数の短い形状に囲まれている。
【
図3A】大腸菌における代替血清型OspAナノ粒子の生成を示す図である。
図3A.サイズ排除クロマトグラフィーにより精製したOspA-フェリチン血清型1~5および7のSDS-PAGEによる生化学分析。
【
図3B】大腸菌における代替血清型OspAナノ粒子の生成を示す図である。
図3B.OspA-フェリチン血清型1~5および7(98,000倍)の透過型電子顕微鏡検査。
【
図4】例示的な血清型1のOspA-フェリチンナノ粒子のRECOMBITEK(登録商標)ライム(ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)の精製された外表面タンパク質A(OspA)の液体懸濁液)との免疫原性および期間の比較を示す図である。C3Hマウス(n=5)に1μgのOspA-フェリチン+Ribiアジュバント(Sigmaアジュバントシステム、カタログ番号S6322-1vl)またはRECOMBITEK(登録商標)ライムを第0週および第4週に筋肉内に免疫した。抗体応答は、各組成物を用いて2回目の免疫(6週目)の2週間後および2回目の免疫(25週目)の21週間後に、ELISAを介してエンドポイント力価を測定することにより評価された。
【
図5-1】
図5A-5Cは、例示的なOspA-フェリチンに関する情報を提供する図である。OspAポリペプチドは、ヒト白血球機能関連抗原-1(hLFA-1)の配列の断片と相同性を有するOspA血清型1のエピトープで修飾される。
図5A.OspAエクトドメイン内のLFA-1相同部位(配列番号83のアミノ酸165~173)の位置を示す構造。
図5B.配列番号83(B.ブルドルフェリ血清型1のOspA)のOspAアミノ酸165~173と、hLFA-1および他のボレリア属(Borrelia)種および血清型の対応する配列との関係を示す樹状図。
図5C.配列番号83のアミノ酸165~173における9アミノ酸セグメント(ノナペプチド)(「OspA」と標識)を、血清型2および血清型3のOspA由来の対応するノナペプチド(それぞれ「S2」(配列番号79)および「S3」(配列番号80))、合理的に設計された置換ノナペプチド(「RD2」、配列番号81)、およびhLFA-1由来の対応するノナペプチド(配列番号78)と比較する。
図5Cは、配列番号77、79~81、および78を、それぞれ、外観順に開示する。
図5Dは、C3Hマウス(n=5)に、1μg用量のOspA血清型1-フェリチンナノ粒子をAddaVax(商標)アジュバント(スクアレンベース水中油ナノエマルジョン、InvivoGen、カタログ番号vac-adx-10から入手可能)で0週および4週に筋肉内(IM)に免疫した図である。OspA配列は、野生型hLFA-1相同部位(すなわち、配列番号83のアミノ酸165~173、「Sero1」)または配列番号81(「RD」)、配列番号80(「Sero 3置き換え」)、配列番号79(「Sero 2置き換え」)のような置換配列を含んでいた。抗体応答は、示された構築物の2回目の免疫の2週間後にELISAにより測定したエンドポイント力価を介して評価された。
【
図6A】例示的な免疫刺激性部分:TLR7/8アゴニスト(3M-012)にコンジュゲートされた例示的なOspA-フェリチンナノ粒子に関する情報を提示する図である。
図6A.3M-012をフェリチンに結合させるために、2ステップクリックケミストリー戦略を使用した。DBCO-PEG4-マレイミドリンカーをフェリチン上の表面露出システインに最初に付着させた。過剰のリンカーを除去した後、アジド-3M-012を添加した。
【
図6B】例示的な免疫刺激性部分:TLR7/8アゴニスト(3M-012)にコンジュゲートされた例示的なOspA-フェリチンナノ粒子に関する情報を提示する図である。
図6B.C3Hマウス(n=5)に、0および4週目に示された組成物1μgを筋肉内に免疫し、2週間後に分析した。「コンジュゲート」は、OspA-フェリチン-3M-012コンジュゲートナノ粒子を示す。「混合」は、29ngまたは20μgの3M-012またはミョウバンとともに投与された同じOspA-フェリチンの非コンジュゲート混合物を示す。OspA-フェリチンと3M-012の29ng「混合」混合物は、コンジュゲートナノ粒子上の3M-012のモル当量を表す。
【
図7-1】
図7A-7Cは、例示的な免疫刺激性部分:ISS-1018 CpG(配列番号210)にコンジュゲートされた例示的なOspA-フェリチンナノ粒子に関する情報を提供する図である。
図7A.2ステップクリックケミストリー戦略を用いて、CPGをフェリチンに結合させた。DBCO-PEG4-マレイミドリンカーを、フェリチン上の表面露出システインに最初に付着させた。過剰のリンカーを除去した後、アジド-CpGを添加した。
図7Aは、配列番号228を開示する。
図7B.SDS-PAGEゲルによるCpGコンジュゲーションの生化学的分析は、CpGにコンジュゲートされたOspA-フェリチンの92%とのCpGへのコンジュゲーション後の分子量のシフトを明らかにする。
図7C.C3Hマウス(n=5)は、指示された組成物の1μgで0週目と4週目に筋肉内に免疫され、2週間後に分析された。「コンジュゲート」は、OspA-フェリチン-CPGコンジュゲートナノ粒子を示す。「混合」は、339ngもしくは50μgのCpGまたはミョウバンとともに投与された同じOspA-フェリチンの非コンジュゲート混合物を示す。OspA-フェリチンとCPGの339ng「混合」混合物は、コンジュゲートナノ粒子上のCpGのモル当量を表す。
【
図8-1】
図8A-8Fは、ミョウバンアジュバントを含む一価血清型適合OspA-フェリチン(1μg/用量)(「一価」)、または血清型1のOspA-フェリチン、血清型2のOspA-フェリチン、血清型3のOspA-フェリチン、血清型4のOspA-フェリチン、血清型5のOspA-フェリチン、および血清型7のOspA-フェリチンの各々(各1μg/用量)をミョウバンアジュバントとともに含む六価組成物(「六価」)を投与した後、血清型1(
図8A)、血清型2(
図8B)、血清型3(
図8C)、血清型4(
図8D)、血清型5(
図8E)、および血清型7(
図8F)に対する抗体応答を比較する図である。抗体応答は、C3Hマウス(n=5)を第0週および第4週に筋肉内に免疫し、2週間後にELISAにより測定したエンドポイント力価を介して評価された。ELISAプレートをOspAの特定の血清型で被覆した。
【
図9-1】
図9A-9Gは、コンジュゲートされたおよびコンジュゲートされていない六価OspA-フェリチンナノ粒子組成物の投与後にマウスで観察された血清型1(
図9A)、血清型2(
図9B)、血清型3(
図9C)、血清型4(
図9D)、血清型5(
図9E)、血清型6(
図9F)、および血清型7(
図9G)に対するマウスにおける抗体応答を示す図である。「六価-CPG」および「六価-3M-012」が、ナノ粒子がCPGおよび3M-012に化学的にコンジュゲートされていることを示す以外は、六価組成物は、
図8A-Fに記載されるように、血清型1のOspA-フェリチン、血清型2のOspA-フェリチン、血清型3のOspA-フェリチン、血清型4のOspA-フェリチン、血清型5のOspA-フェリチン、および血清型7のOspA-フェリチンの各々を含む(
図7Aおよび6A、ならびに添付の記載を参照されたい)。抗体応答は、2週間後にELISAにより測定されたエンドポイント力価を介して評価された。ELISAプレートをOspAの特定の血清型で被覆した。
【
図10-1】
図10A-10Gは、六価OspA-フェリチンナノ粒子組成物に対する、アカゲサル(n=3匹/群)における血清型1~7に対する抗体応答をそれぞれ示す図である。これは、用量が総60μg(各血清型10μg)であり、コンジュゲートされていないAF03アジュバントを含有すること以外は、
図9A~Gについて記載したものであった。サルは、第0週および第6週に筋肉内に免疫された。抗体応答は、免疫後2週間で、ELISAにより測定したエンドポイント力価を介して分析された。RECOMBITEK(登録商標)ライムを比較対照として10μg用量で使用した。全ての実験について、ELISAプレートを各パネルに示されたOspA血清型で被覆した。
図10H-10Nは、六価OspA-フェリチンナノ粒子組成物に対する、アカゲサル(n=3匹/群)における血清型1~7に対する抗体応答をそれぞれ示す図である。これは、AF03アジュバントを使用せず、代わりにナノ粒子を3M-012またはCpGにコンジュゲートさせたこと以外は、
図10A~10Gについて記載したものであった(
図6Aおよび7A、ならびに添付の記載を参照されたい)。用量は、総60μg(各血清型10μg)であった。サルは、第0週および第6週に筋肉内に免疫された。抗体応答は、免疫後2週間で、ELISAにより測定したエンドポイント力価を介して分析された。全ての実験について、ELISAプレートを各パネルに示されたOspA血清型で被覆した。
【
図11】3M-012結合OspA-フェリチン組成物のダニ負荷試験の結果を示す図である。マウスは、第0週および第4週に、示された組成物の1μg用量で免疫された。一価組成物は、3M-012にコンジュゲートされたOspA-フェリチン血清型1の1μgを含有した。「六価-3M-012」組成物は、
図9A~Gについて記載された通りであった。対照粒子は、OspAポリペプチドを欠いていた。マウスは、ボレリア・ブルグドルフェリN40株(血清型1)に感染した5~6匹のダニを、2回目の免疫後、2週間で5日間負荷させ、2週間後に屠殺した。心臓、足首および耳からの組織試料を、B.ブルグドルフェリに対する抗生物質を添加したBSK培地中で6週間培養した。陰性試料は、PCR法によりB.ブルグドルフェリの存在について試験された。陽性試料は、培養またはPCR法のいずれかで陽性であった。
【
図12】質量分析によるOspA-フェリチンナノ粒子のTLR7/8アゴニスト3M-012へのコンジュゲーションの確認を示す図である。上のパネルは、コンジュゲートされていない構築物を示し、下のパネルはコンジュゲートされた構築物を示す。データは、3M-012の添加と一致して、586.69ダルトンの質量シフトを示した。
【
図13】示される希釈系列にわたってELISAにより測定されたグリコシル化対応物(RD)と比較した、非グリコシル化変異体OspA-フェリチン(NG-RD)に対するマウスにおける抗体応答を示す図である。RD=配列番号52。NG-RD=配列番号53。マウスに第0週および第4週に1μg用量をワクチン接種した。
【
図14】OspA-フェリチン(配列番号52)に対するマウスにおける抗体応答を示す図である。OspA-フェリチングリコシル化変異体N>Q(配列番号53)、およびグリコシル化変異体S/T>A(配列番号63)は、示される希釈系列にわたってELISAにより測定された、RECOMBITEK(登録商標)ライム対照および陰性(Pre免疫)対照と比較された。
【
図15-1】
図15A-15Eは、異なるリンカー(GS、Gly-Serリンカー、GS1、Gly-Gly-Gly-Serリンカー(配列番号226)、GS2、配列番号91リンカー、GS5、配列番号92リンカー、構築物配列は、それぞれ、配列番号53および60~62)を含むOspA構築物の精製および特徴付けを示す。
図15A.示されるリンカーを含む精製OspA構築物のクーマシー染色。
図15Aは、外観順に、配列番号226および91~92をそれぞれ開示する。
図15B.GS1(配列番号60)を含むOspA-フェリチンナノ粒子の動的光散乱(DLS)。
図15C.GS2(配列番号61)を含むOspA-フェリチンナノ粒子のDLS。
図15D.GS5(配列番号62)を含むOspA-フェリチンナノ粒子の電子顕微鏡写真(EM)。
図15E.GS5(配列番号62)を含むOspA-フェリチンナノ粒子のDLS。
【
図16】示される希釈系列にわたるELISAにより測定したRECOMBITEK(登録商標)ライムおよび陰性(Pre免疫)対照と比較した、異なるリンカーを(リンカー1×GGGS(配列番号226)構築物、配列番号60、リンカー2×GGGS(配列番号91)構築物、配列番号61、リンカー5×GGGS(配列番号92)構築物、配列番号62)含むOspA-フェリチン構築物に対するマウスの抗体応答を示す図である。
【
図17-1】
図17A-17Cは、ルマジンシンターゼOspA血清型4構築物(配列番号18)の特徴付けを示す図である。
図17A.DLSデータ。
図17B.サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)トレースの示された画分22~64のクーマシーゲル。
図17C.EMデータ。
【
図18】ミョウバンを伴うまたは伴わない、OspA血清型4-フェリチン構築物(配列番号4)およびOspA血清型4-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号18)に対するマウスにおける抗体応答を示す図である。
【
図19-1】
図19A-19Cは、OspA血清型1-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号12)の特徴付けを示す図である。
図19A.EMデータ。
図19B.SECトレースの示された画分20~40のクーマシーゲル。
図19C.DLSデータ。
【
図20-1】
図20A-20Cは、OspA血清型2-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号16)の特徴付けを示す図である。
図20A.EMデータ。
図20B.SECトレースの示された画分27~56のクーマシーゲル。
図20C.DLSデータ。
【
図21A】OspA血清型3-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号17)の特徴付けを示す図である。
図21A.SECトレースの示された画分23~39のクーマシーゲル。
【
図21B】OspA血清型3-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号17)の特徴付けを示す図である。
図21B.DLSデータ。
【
図22A】OspA血清型5-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号19)の特徴付けを示す図である。
図22A.EMデータ。
【
図22B】OspA血清型5-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号19)の特徴付けを示す図である。
図22B.SECトレースの示された画分22~38のクーマシーゲル。
【
図22C】OspA血清型5-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号19)の特徴付けを示す図である。
図22C.DLSデータ。
【
図23A】OspA血清型7-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号21)の特徴付けを示す。
図23A.EMデータ。
【
図23B】OspA血清型7-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号21)の特徴付けを示す。
図23B.SECトレースの示された画分20~38のクーマシーゲル。
【
図23C】OspA血清型7-ルマジンシンターゼ構築物(配列番号21)の特徴付けを示す。
図23C.DLSデータ。
【
図24-1】
図24A-24Gは、C3Hマウス(n=5匹/群)において、ミョウバンまたはAF03のいずれかでアジュバント化したOspA血清型1~7(全部で7μg)に対応する各1μgのOspA-フェリチンナノ粒子の七価OspA-フェリチンナノ粒子組成物、またはRECOMBITEK(登録商標)ライムに対する血清型1~7に対する抗体応答をそれぞれ示す図である。全ての実験において、ELISAプレートは、各パネルに「S X」(Xは血清型番号である)として示されるOspA血清型で被覆された。
【
図25】アカゲザルにおけるエンドポイント抗体価の時間経過を示す図である。0週目および6週目に、六価OspA-フェリチンワクチン(別々のナノ粒子中に血清型1、2、3、4、5、および7のOspAを含む)をAF03アジュバントまたはRECOMBITEK(登録商標)でサルに筋肉内接種した。ELISAプレートをOspA血清型1でコーティングした。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本明細書において、ライム病に対するワクチン接種のための新規抗原を提供する。ライム病は、ボレリア・ブルグドルフェリセンスラト(Borrelia burgdorferi sensu lato)(s.l.)複合体(本明細書では「ボレリア」と呼ぶ
)に属する細菌によって引き起こされる。本明細書に記載される抗原は、ライム病に対して対象をワクチン接種するために、単独でまたは非コンジュゲートアジュバントと共に使用することができる、抗原性ポリペプチド、融合タンパク質、ナノ粒子、および組成物を含む。融合タンパク質は、フェリチンに融合した抗原性ポリペプチドを含み得る。フェリチンは、野生型であり得るか、または1つもしくはそれ以上の変異、例えば表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異を含んでもよく、それによって免疫刺激性部分を、操作された表面に露出したシステインに直接コンジュゲートすることができる。そのような変異に起因するシステインは、個別に投与されたアジュバントの必要性を除去または低減させ、同様に抗原に対する免疫応答を誘発するために必要なアジュバント/免疫刺激性部分の量を低減させる可能性がある。本明細書に記載される抗原性ポリペプチドをコードする核酸もまた提供される。
【0081】
A.定義
「アジュバント」は、本明細書で使用される場合、抗原に対する免疫応答を非特異的に増強する物質またはビヒクルを指す。アジュバントには、抗原を吸着させた無機質(例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、またはリン酸塩)の懸濁液、抗原溶液を鉱油または水中で乳化させた油中水型または水中油型乳剤(例えば、フロイント不完全アジュバント)を挙げることができるがこれらに限定されない。時に、抗原性をさらに増強するために死菌マイコバクテリア(例えば、フロイント完全アジュバント)を含める。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフ)もまた、アジュバントとして使用することができる(例えば、米国特許第6,194,388号;第6,207,646号;第6,214,806号;第6,218,371号;第6,239,116号;第6,339,068号;第6,406,705号;および第6,429,199号を参照されたい)。アジュバントはまた、Toll-Like受容体(TLR)アゴニストおよび共刺激分子のような生物学的分子も含み得る。アジュバントは、組成物中の個別の分子として、またはフェリチンもしくは抗原性フェリチンポリペプチドに共有結合(コンジュゲート)して投与してもよい。
【0082】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、生物に曝露または投与した場合に、免疫応答を誘発する作用物質、および/またはT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)が結合する、もしくは抗体(例えば、B細胞によって産生される)に結合する作用物質を指す。一部の実施形態では、抗原は、生物において液性応答(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発する。あるいはまたは加えて、一部の実施形態では、抗原は、生物において細胞性応答(例えば、その受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞を含む)を誘発する。特定の抗原は、標的生物(例えば、マウス、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つまたは幾つかのメンバーにおいて免疫応答を誘発し得るが、標的生物種の全てのメンバーにおいて誘発するわけではない。一部の実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%において免疫応答を誘発する。一部の実施形態では、抗原は、抗体および/またはT細胞受容体に結合するが、生物において特定の生理的応答を誘導しても誘導しなくてもよい。一部の実施形態では、例えば、抗原は、in vivoでそのような相互作用が起こるか否かによらず、in vitroで抗体および/またはT細胞受容体に結合し得る。一部の実施形態では、抗原は、異種免疫原によって誘導される産物を含む、特異的液性免疫または細胞性免疫の産物と反応する。抗原は、本明細書に記載されるフェリチン(例えば、1つまたはそれ以上の変異を含む)および非フェリチンポリペプチドを含む抗原性フェリチンタンパク質を含む。
【0083】
「フェリチン」または「フェリチンタンパク質」は、本明細書で使用される場合、H.ピロリフェリチン(配列番号208または209)、またはP.フリオスス(P.fur
iosus)フェリチン、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)フェリチン、もしくはヒトフェリチンのような本明細書で考察される別のフェリチンと検出可能な配列同一性を有し、鉄を例えば細胞内もしくは組織内で貯蔵する、または鉄を血流に運ぶ役目を果たすタンパク質を指す。重鎖および軽鎖(例えば、イラクサギンウワバおよびヒトフェリチン)として知られる2つのポリペプチド鎖として存在するフェリチンを含むそのような例示的なフェリチンを、以下で詳細に考察する。一部の実施形態では、フェリチンは、本明細書に、例えば表1(配列表)に開示されるフェリチン配列と少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または99.5%の同一性を有する配列を含む。フェリチンは、完全長の天然に存在する配列の断片であり得る。「野生型フェリチン」は、本明細書で使用される場合、その配列が天然に存在する配列からなるフェリチンを指す。フェリチンはまた、完全長のフェリチン、または野生型フェリチンとはそのアミノ酸配列において1つまたはそれ以上の差を有するフェリチンの断片も含む。
【0084】
本明細書で使用される場合、「フェリチン単量体」は、他のフェリチン分子と集合していない単一のフェリチン分子(例えば、該当する場合、単一のフェリチン重鎖または軽鎖)を指す。「フェリチン多量体」は、複数の会合したフェリチン単量体を含む。「フェリチンタンパク質」は、単量体フェリチンおよび多量体フェリチンを含む。
【0085】
本明細書で使用される場合、「フェリチン粒子」は、球状形態に自己集合したフェリチンを指す。フェリチン粒子は時に、「フェリチンナノ粒子」または単に「ナノ粒子」と呼ばれる。一部の実施形態では、フェリチン粒子は、24個のフェリチン単量体(または該当する場合、全体で24個の重鎖および軽鎖)を含む。
【0086】
「ハイブリッドフェリチン」は、本明細書で使用される場合、ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部を有するH.ピロリフェリチンを含むフェリチンを指す。ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部として使用される例示的な配列を、配列番号217として示す。ハイブリッドフェリチンでは、免疫刺激性部分の結合部位がフェリチン粒子表面上に均一に分布するように、ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部をH.ピロリフェリチンに融合することができる。「ウシガエルリンカー」は、本明細書で使用される場合、配列番号217の配列を含むリンカーである。ハイブリッドフェリチンはまた、時に「bfpFerr」または「bfpフェリチン」と呼ばれる。ウシガエル配列を含むいずれの構築物も、ウシガエル配列がなくとも、例えばリンカーまたは代替リンカーがなくとも提供することができる。例示的なウシガエルリンカー配列を、表1に提供する。表1はウシガエルリンカーを示すが、リンカーまたは代替リンカーを有しない同じ構築物を作製してもよい。
【0087】
「グリコシル化」は、本明細書で使用される場合、タンパク質への糖質単位の付加を指す。
【0088】
「免疫応答」は、本明細書で使用される場合、抗原またはワクチンのような刺激に対する、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ、または多形核細胞のような免疫系の細胞の応答を指す。免疫応答は、例えばインターフェロンまたはサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御応答に関係する体の任意の細胞を含み得る。免疫応答は、生得のおよび/または適応免疫応答を含むがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、「保護的免疫応答」は、対象を感染から保護する(例えば、感染を防止する、または感染に関連する疾患の発生を防止する)免疫応答を指す。免疫応答を測定する方法は、当技術分野で周知であり、例えばリンパ球(例えば、BまたはT細胞)の増殖および/または活性、サイトカインまたはケモカインの分泌、炎症、抗体産生等を測定することを含む。「抗体応答」は、抗体が産生される免疫応答である。
【0089】
「免疫刺激性部分」は、本明細書で使用される場合、免疫系の構成要素を活性化することができる(単独で、またはフェリチンもしくは抗原性フェリチンポリペプチドに結合した場合)フェリチンまたは抗原性フェリチンポリペプチドに共有結合した部分を指す。例示的な免疫刺激性部分は、toll-like受容体(TLR)のアゴニスト、例えば、TLR4、7、8、または9を含む。一部の実施形態では、免疫刺激性部分はアジュバントである。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「キット」は、1つまたはそれ以上の化合物または組成物のような関連する構成要素、および溶媒、溶液、緩衝液、説明書、または乾燥剤のような1つまたはそれ以上の関連する材料の包装された組を指す。
【0091】
「N-グリカン」は、本明細書で使用される場合、タンパク質のN(アスパラギン)残基のアミド窒素でタンパク質に結合する糖質鎖を指す。そのため、N-グリカンは、N-グリコシル化プロセスによって形成される。このグリカンは多糖類であり得る。
【0092】
「OspAエクトドメイン」は、本明細書で使用される場合、B.ブルグドルフェリ(B.burgdorferi)OspA(UniProt受託番号P0CL66)のアミノ酸残基約27~273、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって同定される、そのホモログの対応する位置を指す。OspAエクトドメインのさらなる例は、配列番号83~89のいずれかの27~X位を含み、ここでXは関連する配列のC末端位置であり、場合によりC末端Lysは含まれていない。一部の実施形態では、エクトドメインは、そのN末端に、対応する完全長の野生型配列の26番目の残基または25番目および26番目の残基をさらに含み;配列番号83~89では、25番目および26番目の残基はAspおよびGluである。OspAエクトドメインのなおさらなる例は、配列番号94~102のいずれかを含み、場合によりN末端の1、2、または3つの残基(Met-Asp-Glu)が含まれておらず、さらに場合によりC末端Lysが含まれていない。
【0093】
「OspA膜貫通ドメイン」は、本明細書で使用される場合、B.ブルグドルフェリOspA(UniProt受託番号P0CL66)のアミノ酸残基約2~24、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって同定される、そのホモログの対応する位置を指す。
【0094】
「自己アジュバント性」は、本明細書で使用される場合、フェリチンおよび免疫刺激性部分が同じ分子実体中にあるように、フェリチンおよびフェリチンに直接コンジュゲートされた免疫刺激性部分を含む組成物またはポリペプチドを指す。非フェリチンポリペプチドを含む抗原性フェリチンポリペプチドを、免疫刺激性部分にコンジュゲートして、自己アジュバント性ポリペプチドを生成してもよい。
【0095】
「抗原性OspAポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドがOspAに関して抗原性であるのに十分な長さのOspAの全てまたは一部を含むポリペプチドを指す。完全長のOspAは、以下に定義するように、膜貫通ドメインおよびエクトドメインを含む。抗原性は、フェリチンまたはルマジンシンターゼタンパク質のような異種配列をさらに含む構築物の一部としてのOspA配列の機能であり得る。すなわち、OspAが異種配列をさらに含む構築物の一部である場合、構築物は、異種配列を有しないOspA配列がそうすることができるか否かによらず、抗OspA抗体を生成する抗原としての役目を果たすことができれば十分である。
【0096】
「抗原性フェリチンポリペプチド」および「抗原性フェリチンタンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、分子が非フェリチンポリペプチドに関して抗原性であるの
に十分な長さのフェリチンおよびOspAのような非フェリチンポリペプチドを含むポリペプチドを指す。抗原性フェリチンポリペプチドはさらに、免疫刺激性部分を含み得る。抗原性は、より大きい構築物の一部としての非フェリチン配列の機能であり得る。すなわち、構築物は、フェリチンを有しない非フェリチンポリペプチド(および該当する場合、免疫刺激性部分)がそうすることができるか否かによらず、非フェリチンポリペプチドに対する抗原としての役目を果たすことができれば十分である。一部の実施形態では、非フェリチンポリペプチドは、OspAポリペプチドであり、この場合抗原性フェリチンポリペプチドもまた「抗原性OspAポリペプチド」である。しかし、明白にするために、抗原性OspAポリペプチドは、フェリチンを含む必要はない。「抗原性ポリペプチド」は、本明細書において使用される場合、抗原性フェリチンポリペプチド、および抗原性OspAポリペプチドのいずれかまたは両方であるポリペプチドを指す。本開示は、所定の核酸配列またはアミノ酸配列(参照配列)に対してそれぞれ、ある特定の程度の同一性を有する核酸配列およびアミノ酸配列を記載する。
【0097】
2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同定されたヌクレオチドのパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。
【0098】
用語「同一%」、「同一性%」、または類似の用語は、特に比較される配列間の最適なアライメントにおいて同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージを指すと意図される。前記パーセンテージは、純粋に統計学的であり、2つの配列間の差は、比較される配列の全長にわたって分布していてもよいが、必ずしもランダムに分布している必要はない。2つの配列の比較は通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアライメント後に前記配列を、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して比較することによって実行される。比較のための最適なアライメントは、手動で、またはSmith
and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482頁によるローカルホモロジーアルゴリズムの助けを借りて、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443頁のローカルホモロジーアルゴリズムの助けを借りて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444頁の類似性検索アルゴリズムの助けを借りて、または前記アルゴリズムを使用するコンピュータプログラムの助けを借りて(GAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、およびTFASTA、 in Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.)実行してもよい。
【0099】
パーセンテージ同一性は、比較される配列が対応する同一の位置の数を決定する工程、この数を比較される位置の数(例えば、参照配列における位置の数)で除算する工程、およびこの結果に100を乗算する工程によって得られる。
【0100】
一部の実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%である領域に関して与えられる。例えば、参照核酸配列が200ヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200ヌクレオチド、一部の実施形態では、連続ヌクレオチドに関して与えられる。一部の実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長にわたって与えられる。
【0101】
所定の核酸配列またはアミノ酸配列に対してそれぞれ、特定の同一性の程度を有する核酸配列またはアミノ酸配列は、前記所定の配列の少なくとも1つの機能的特性を有するこ
とができ、例えば、一部の例では前記所定の配列と機能的に等価である。1つの重要な特性は、特に、対象に投与した場合にサイトカインとして作用する能力を含む。一部の実施形態では、所定の核酸配列またはアミノ酸配列に対して特定の同一性の程度を有する核酸配列またはアミノ酸配列は、前記所定の配列と機能的に等価である。
【0102】
本明細書で使用される場合、「対象」は、動物界の任意のメンバーを指す。一部の実施形態では、「対象」はヒトを指す。一部の実施形態では、「対象」は非ヒト動物を指す。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、鳥類、は虫類、両生類、魚類、昆虫、および/または虫を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。一部の実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、および/またはクローンであり得る。本発明のある特定の実施形態では、対象は成体、青年期、または幼体である。一部の実施形態では、用語「個体」または「患者」は、「対象」と互換的に使用され、互換的であると意図される。
【0103】
「表面に露出したアミノ酸」は、本明細書で使用される場合、該当する場合に、多量体形成後、タンパク質がその本来の三次元コンフォメーションにある場合に溶媒分子が接触することができる側鎖を有するタンパク質(例えば、フェリチン)中のアミノ酸残基を指す。このように、例えば24量体を形成するフェリチンの場合、表面に露出したアミノ酸残基は、フェリチンが24量体として、例えばフェリチン多量体またはフェリチン粒子として集合する場合に、その側鎖に溶媒が接触することができる残基である。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「ワクチン接種」または「ワクチン接種する」は、例えば病原体に対して免疫応答を生成することが意図される組成物の投与を指す。ワクチン接種は、病原体に対する曝露および/または1つもしくはそれ以上の症状の発生の前、間、および/または後に投与することができ、一部の実施形態では、病原体に対する曝露の前、間、および/または直後に投与することができる。一部の実施形態では、ワクチン接種は、ワクチン接種組成物の適切な間隔を空けた複数回の投与を含む。
【0105】
B.OspAポリペプチド
単独で、個別の分子としてアジュバントと共に、および/またはナノ粒子(例えば、フェリチン粒子またはルマジンシンターゼ粒子)の一部として投与した場合に抗原性であり得て、自己アジュバント性であり得るOspAポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、OspAポリペプチドは、ボレリアの改変外部表面タンパク質A(OspA)を含む。OspAは、OspAの異なるエピトープに対するモノクローナル抗体とのその反応性によって定義される複数の血清型で存在する(Wilskeら、J Clin Microbio 31(2):340~350頁(1993)を参照されたい)。これらの血清型は、ボレリア細菌の異なる遺伝子種と相関する。一部の実施形態では、OspAは、血清型1~7のいずれか1つである。一部の実施形態では、OspAは、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・マヨニイ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ガリニ、またはボレリア・ババリエンシスに由来する。一部の実施形態では、OspAは、ボレリア・ブルグドルフェリOspAである。一部の実施形態では、ボレリアは、マダニ属のダニが運ぶことができる。一部の実施形態では、ボレリアは、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・マヨニイ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ガリニ、またはボレリア・ババリエンシスである。
【0106】
一部の実施形態では、OspAポリペプチドは、OspA血清型1エクトドメインのようなOspA血清型1ポリペプチドである。文献により、配列番号83のアミノ酸165~173でのOspA血清型1のエピトープは、ヒト白血球機能関連抗原-1(hLFA-1)-すなわち配列番号78(Gross,D.M.ら、Science 281(5
377):703~6頁(1998)を参照されたい)の配列の断片と相同性を有することが報告されている。配列番号83のアミノ酸165~173は、配列番号77における単離されたノナペプチドとして示され、hLFA-1相同性部位と呼ばれる。配列番号83は、例示的な野生型血清型1 OspA配列であり、これはOspAにおけるアミノ酸位置の考察のための参照配列として本明細書において使用される。この相同性部位は、抗生物質耐性ライム関節炎を含むライム関節炎の発症において役割を果たし得る。本明細書において、改変OspAが配列番号77の配列を含まない、ボレリアの改変OspA血清型1ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチドを記載する。そのようなポリペプチドは、抗体を誘発するために使用する場合、改善された安全性、例えば自己免疫応答を誘発するリスクの低減を有し得る。一部の実施形態では、OspA血清型1ポリペプチドは、hLFA-1との同一性を低減させる1つまたはそれ以上の改変を有する。配列番号78との相同性を低減させる、配列番号78との同一性を低減させる、または配列番号78と比較して1つもしくはそれ以上の非保存的置換を導入する任意の改変が包含される。一部の実施形態では、配列番号77の配列を含まない、ボレリアのOspA血清型1ポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、OspA血清型1のエクトドメインを含み、エクトドメインは、配列番号77の配列を含まない。一部の実施形態では、抗原性OspA血清型1ポリペプチドは、配列番号94~102のいずれか1つの配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する配列を含む。
【0107】
「相同性を低減させる」は、配列同一性を低減させることおよび/または配列類似性を低減させることを包含し、以下の表において保存的置換として記載された1組のアミノ酸の各メンバーは、記載された当初の残基およびその組の他のメンバーに対して類似であると考えられ;例えば表の1列目は、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンが互いに類似であることを示し、8列目は、アラニンおよびグリシンが互いに類似であることを示している。類似性は、推移的ではなく、そのため例えばイソロイシンおよびグリシンは類似ではないと考えられる。一部の実施形態では、改変OspAは、野生型OspA血清型と比較してhLFA-1に対して低減された相同性を有するOspA血清型1タンパク質を含む。一部の実施形態では、改変OspAは、配列番号77のアミノ酸の任意の1つまたはそれ以上に対する改変を含むOspA血清型1を含む。一部の実施形態では、配列番号77に対する改変は、非保存的アミノ酸置換である。非保存的置換は、以下の表に示す保存的置換とは異なる置換である。
【0108】
【0109】
一部の実施形態では、配列番号77の1つまたはそれ以上のアミノ酸は、血清型2、3、4、5、6、または7 OspAのような非血清型1 OspAの対応するアミノ酸に置き換えられている。一部の実施形態では、配列番号77のアミノ酸の各々は、血清型2、3、4、5、6、または7 OspAの対応するアミノ酸に置き換えられている。一部の実施形態では、配列番号77のアミノ酸は、血清型2(S2、配列番号79)または血清型3(S3、配列番号80)の対応するアミノ酸に置き換えられている。
【0110】
一部の実施形態では、改変OspAは、配列番号81を含む。一部の実施形態では、OspAポリペプチドは、配列番号82を含む。配列番号81および82は、配列番号77を置き換えると意図され、それによって配列番号78に対する相同性を低減させる。
【0111】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、完全長のOspA(例えば、本明細書に記載されるhLFA-1に対する相同性を低減させる改変を含んでもよくまたは含まなくてもよい膜貫通ドメインおよびエクトドメインを含む)である。
【0112】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠如する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、膜貫通ドメインの一部、例えば野生型OspA配列のN末端の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24アミノ酸を欠如する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、OspA血清型1のアミノ酸17、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって同定される、そのホモログの対応する位置を含むセグメントを欠如する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、ペアワイズもしくは構造アライメントによって同定されたOspA血清型1のようなOspAのアミノ酸少なくとも1~17またはそのホモログにおける対応するアミノ酸を欠如する。一部の実施形態では、OspAポリペプチドは、ペアワイズもしくは構造アライメントによって同定されたOspA血清型1のようなOspAの少なくともN末端の18、19、20、21、22、23、もしくは24アミノ酸、またはそのホモログにおける対応するアミノ酸を欠如する。一部の実施形態では、OspAポリペプチドは、ペアワイズもしくは構造アライメントによって同定されたOspA血清型1のようなOspAのアミノ酸1~25またはそのホモログにおける対応するアミノ酸を欠如する。一部の実施形態では、OspAポリペプチドは、ペアワイズもしくは構造アライメントによって同定されたOspA血清型1のアミノ酸1~26またはそのホモログにおける対応するアミノ酸を欠如する。誤解を避けるために、膜貫通ドメインを欠如することは、ポリペプチドがN末端メチオニンを欠如することを必要としない;例えば第1の残基がメチオニンで第2の残基が野生型OspAの残基26に対応し、その後に27番目、28番目等の野生型OspA残基に対応する残基が続くポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠如すると考えられる。一部の実施形態では、OspAを含むポリペプチドは、野生型OspA血清型1の膜貫通ドメイン内に含有される脂質付加部位のような脂質付加部位を欠如する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、OspA血清型1のシステイン17を欠如する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、野生型OspA、例えば配列番号83~89のいずれかの1~25位のいずれかに対応するシステインを含まない。一部の実施形態では、ポリペプチドは、OspA血清型1のシステイン17を欠如するか、またはシステイン17で置換を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、脂質付加部位を欠如するように、野生型OspA膜貫通ドメインの少なくとも一部を欠如する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、OspA血清型1のアミノ酸1~17と整列するアミノ酸を欠如する。
【0113】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、パルミトイル基を含まない。一部の実施形態で
は、ポリペプチドは、ジアシルグリセロール基を含まない。一部の実施形態では、ポリペプチドは、脂質付加されていない。一部の実施形態では、ポリペプチドは、脂質付加部位を欠如する。一部の実施形態では、この脂質付加部位は、膜貫通ドメイン内に含有される。一部の実施形態では、除去される脂質付加部位は、OspA血清型1のシステイン17である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、OspA血清型1のシステイン17を欠如するかまたはシステイン17で置換を有する。
【0114】
一部の実施形態では、OspA脂質付加部位および/もしくは膜貫通ドメインもしくはその一部の除去、ならびに/またはパルミトイルおよび/もしくはジアシルグリセロール基の欠如は、例えばタンパク質の溶解度を改善することによって、および/またはタンパク質を、イオン交換および他の形態のクロマトグラフィーのような技術による精製をより受けやすくすることによって、より容易なタンパク質精製を可能にする。
【0115】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、哺乳動物リーダー配列(シグナル配列としても知られる)を含む。一部の実施形態では、哺乳動物リーダー配列は、哺乳動物細胞において発現された場合に、ポリペプチドの分泌をもたらす。
【0116】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、グリコシル化部位を欠如する。グリコシル化部
位を除去する改変を、本明細書において詳細に記載する。本開示に従うOspAポリペプチドは、hLFA-1相同性部位に対する改変、および/または膜貫通ドメインの一部もしくは全ての欠失を含む、本明細書に記載される任意の他の改変と組み合わせることができる任意のそのような改変を含み得る。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号77(例えば、hLFA-1aに対して低減された相同性を有する)を含まず、およびグリコシル化を低減させる変異を有し、および/または膜貫通ドメインを欠如する。
【0117】
1.グリコシル化の改変
N結合グリコシル化は、タンパク質のアスパラギン(Asn;N)残基のアミド窒素に対するグリカンの結合である。結合プロセスは、グリコシル化タンパク質をもたらす。グリコシル化は、タンパク質の翻訳後にグリコシル化酵素により接近可能であり、認識されるタンパク質中の任意のアスパラギン残基で起こり得て、NXS/TX部位の一部である接近可能なアスパラギンで最も一般的であり、アスパラギンの後に続く第2のアミノ酸残基は、セリンまたはトレオニンである。非ヒトグリコシル化パターンは、抗体を誘発するために使用する場合、ポリペプチドを望ましくない反応原性にすることができる。加えて、通常グリコシル化されないポリペプチドのグリコシル化は、その免疫原性を変化させることができる。例えば、グリコシル化は、タンパク質内の重要な免疫原性エピトープを隠すことができる。このように、グリコシル化を低減または除去するために、アスパラギン残基またはセリン/トレオニン残基のいずれかを、例えば別のアミノ酸への置換によって改変することができる。
【0118】
一部の実施形態では、OspAを含むポリペプチドは、グリコシル化を低減または除去するように改変される。一部の実施形態では、OspAにおける1つまたはそれ以上のN-グリコシル化部位が除去される。一部の実施形態では、Nグリコシル化部位の除去は、OspAのグリコシル化を減少させる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、野生型血清型1 OspAのような野生型OspAと比較して減少したグリコシル化を有する。一部の実施形態では、N-グリコシル化部位の除去は、OspAのグリコシル化を除去する。
【0119】
一部の実施形態では、OspAにおける1つまたはそれ以上のアスパラギンは、非アスパラギンアミノ酸に置き換えられている。一部の実施形態では、OspAにおける各アスパラギンは、非アスパラギンアミノ酸に置き換えられている。タンパク質において見出される任意の天然または非天然アミノ酸、例えばグルタミンを使用して、アスパラギンを交換してもよい。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去するための改変は、NXS/TXグリコシル化部位を改変する(Nの後の第2の残基はSまたはTである)。一部の実施形態では、NXS/TX部位における第1のXおよび/またはNXS/TX部位における第2のXは、プロリンではない。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、NからQへの置換である。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、S/TのAへの置換である。
【0120】
グリコシル化を低減または除去するように改変することができる位置の詳細な考察を以下に述べる。位置の番号は、配列番号83~89として提供される完全長のOspA配列における位置を指す。位置の番号は、部分的および改変OspA配列に関して適切に調節すべきであると理解される(例えば、N末端欠失によって25アミノ酸残基の真の短縮がもたらされる場合、位置の番号を25減少すべきである)。
【0121】
一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型1(配列番号83)のN20、N71、N190、N202、およびN251の任意の1つまたはそれ以上の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型1のN71、N190、N202、およびN251の各々で改変を含む。一部の実施形態では、グリコ
シル化を低減または除去する改変は、OspA血清型1のN20Q、N71Q、N190Q、N202Q、またはN251Qの1つまたはそれ以上を含む。対応するアミノ酸は、ペアワイズアライメントによって異なる血清型のOspAにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、血清型2~7のOspAにおいて置き換えられたアスパラギン残基は、OspA血清型1のN20、N71、N190、N202、およびN251と整列するアミノ酸残基である。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型1の22、73、192、204、および253位でSerまたはThrの任意の1つまたはそれ以上の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型1の22、73、192、204、および253位で1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基のアラニンとの置換を含む。
【0122】
一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型2(配列番号84)のN20、N71、N141、N164、N202、およびN205の任意の1つまたはそれ以上の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型2のN20、N71、N141、N164、N202、およびN205の各々で改変を含む。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型2のN20Q、N71Q、N141Q、N164Q、N202Q、またはN205Qの1つまたはそれ以上を含む。類似のアミノ酸を、ペアワイズアライメントによって異なる血清型のOspAにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、血清型1または3~7のOspAにおいて置き換えられたアスパラギン残基は、OspA血清型2のN20、N71、N141、N164、N202、およびN205と整列するアミノ酸残基である。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型2の22、73、143、166、204、および207位で任意の1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型2の22、73、143、166、204、および207位で1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基のアラニンとの置換を含む。
【0123】
一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型3(配列番号85)のN20、N71、N95、N141、N191、およびN203の任意の1つまたはそれ以上の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型3のN20、N71、N95、N141、N191、およびN203の各々で改変を含む。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型3のN20Q、N71Q、N95Q、N141Q、N191Q、またはN203Qの1つまたはそれ以上を含む。類似のアミノ酸を、ペアワイズアライメントによって異なる血清型のOspAにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、血清型1~2、または4~7のOspAにおいて置き換えられたアスパラギン残基は、OspA血清型3のN20、N71、N95、N141、N191、およびN203と整列するアミノ酸残基である。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型3の22、73、97、143、193、および205位で任意の1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型3の22、73、97、143、193、および205位で1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基のアラニンとの置換を含む。
【0124】
一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型4(配列番号86)のN20、N71、N141、N202、N205、およびN219の任意の1つまたはそれ以上の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型4のN20、N71、N141、N202、N205、およびN219の各々で改変を含む。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型4のN20Q、N71Q、N141Q、N202Q、N205Q、またはN219Qの1つまたはそれ以上を含む。類似のアミノ酸を、ペアワイズアライメントによって異なる血清型
のOspAにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、血清型1~3、または5~7のOspAにおいて置き換えられたアスパラギン残基は、OspA血清型4のN20、N71、N141、N202、N205、およびN219と整列するアミノ酸残基である。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型4の22、73、143、204、207、および221位で任意の1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型4の22、73、143、204、207、および221位で1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基のアラニンとの置換を含む。
【0125】
一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型5のN20、N71、およびN141の任意の1つまたはそれ以上の置換を含む(血清型5~7を含むある特定の血清型は、血清型1のようなある特定の他のOspA配列より少ないグリコシル化部位を含有する)。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型5(配列番号87)のN20、N71、およびN141の各々で改変を含む。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型5のN20Q、N71Q、またはN141Qの1つまたはそれ以上を含む。類似のアミノ酸を、ペアワイズアライメントによって、異なる血清型のOspAにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、血清型1~4、または6~7のOspAにおいて置き換えられたアスパラギン残基は、OspA血清型5のN20、N71、およびN141と整列するアミノ酸残基である。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型5の22、73、および143位で任意の1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型5の22、73、および143位で1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基のアラニンとの置換を含む。
【0126】
一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型6(配列番号88)のN20、N71、およびN141の任意の1つまたはそれ以上の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型6のN20、N71、およびN141の各々で改変を含む。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型6のN20Q、N71Q、またはN141Qの1つまたはそれ以上を含む。類似のアミノ酸を、ペアワイズアライメントによって異なる血清型のOspAにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、血清型1~5、または7のOspAにおいて置き換えられたアスパラギン残基は、OspA血清型6のN20、N71、およびN141と整列するアミノ酸残基である。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型6の22、73、および143位で任意の1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型6の22、73、および143位で1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基のアラニンとの置換を含む。
【0127】
一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型7(配列番号89)のN20、N71、N141、およびN191の任意の1つまたはそれ以上の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型7のN20、N71、N141、およびN191の各々で改変を含む。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型7のN20Q、N71Q、N141Q、またはN191Qの1つまたはそれ以上を含む。類似のアミノ酸を、ペアワイズアライメントによって異なる血清型のOspAにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、血清型1~6のOspAにおいて置き換えられたアスパラギン残基は、OspA血清型7のN20、N71、N141、およびN191と整列するアミノ酸残基である。一部の実施形態では、グリコシル化を低減または除去する改変は、OspA血清型7の22、73、143、および193位で任意の1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基
の置換を含む。一部の実施形態では、改変は、OspA血清型7の22、73、143、および193位で1つまたはそれ以上のSerまたはThr残基のアラニンとの置換を含む。
【0128】
C.OspAポリペプチドおよびフェリチンまたはルマジンシンターゼを含む抗原性OspAポリペプチド
一部の実施形態では、OspAポリペプチドおよびフェリチンまたはルマジンシンターゼを含む抗原性ポリペプチドが提供される。本明細書に開示されるそのような抗原性OspAポリペプチドは、OspA構成要素に関して抗原性であり、例えばそれらを、抗OspA抗体の産生を誘発するためにヒトのような哺乳動物に投与することができる。抗原性ポリペプチドのフェリチン構成要素は、いずれも本明細書に記載される、任意の種の野生型フェリチン、または1つもしくはそれ以上の変異を含む任意の種のフェリチンであり得る。一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、配列番号1~76のいずれか1つのアミノ酸を含む。一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、配列番号1~76のいずれか1つの配列と少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または100%の同一性を有する配列を含む。抗原性ポリペプチドのルマジンシンターゼ構成要素は、任意の種のルマジンシンターゼであり得る。
【0129】
一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、哺乳動物リーダー配列(シグナル配列としても知られる)を含む。一部の実施形態では、哺乳動物リーダー配列は、哺乳動物において発現させた場合、抗原性ポリペプチドの分泌をもたらす。
【0130】
1.OspAポリペプチド構成要素
抗原性OspAポリペプチドは、本明細書に記載される任意の改変OspAポリペプチドを含み得る。
【0131】
例えば、一部の実施形態では、抗原性OspAポリペプチドのOspA構成要素は、OspAのエクトドメインを含む。一部の実施形態では、OspAのエクトドメインは、血清型1、2、3、4、5、6、または7のいずれか1つに由来する。例示的な野生型OspA配列は、配列番号83~89として提供される。そのN末端の25アミノ酸は、例えば脂質付加部位を除去するために除去することができる。例示的なOspA配列の受託番号もまた、実施例に提供する。一部の実施形態では、エクトドメインは、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・マヨニイ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ガリニ、またはボレリア・ババリエンシスに由来する。一部の実施形態では、エクトドメインはボレリア・ブルグドルフェリである。
【0132】
一部の実施形態では、エクトドメインは、野生型エクトドメインである。
【0133】
一部の実施形態では、エクトドメインは、改変エクトドメイン、例えばグリコシル化を低減するように改変されたエクトドメインである。導入としてのグリコシル化の考察は前の節に提供され、簡潔にするためにここでは繰り返さない。抗原性OspAポリペプチドのOspA構成要素は、例えば本明細書において詳細に考察されるアミノ酸置換によってエクトドメインにおける1つまたはそれ以上のNグリコシル化部位の除去を含むがこれらに限定されない、グリコシル化を低減または除去するための本明細書に記載される任意の改変を含み得る。
【0134】
一部の実施形態では、OspAエクトドメインは、例えば膜貫通ドメインの一部または全てを含む、抗原性ポリペプチドにおけるより大きいOspA配列の一部として存在する。一部の実施形態では、OspAエクトドメインは、抗原性ポリペプチド内の完全長OspA配列に存在する。一部の実施形態では、完全長のOspA配列は、野生型の完全長O
spA配列である。一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、膜貫通ドメインを含まない。
【0135】
上記で考察した改変のいずれも、抗原性ポリペプチドにおいて組み合わせることができる。一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、グリコシル化を低減させる少なくとも1つの改変および本明細書に記載される少なくとも1つのさらなる改変を含む。
【0136】
一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドのOspAエクトドメインは、上記の節Bで記載した改変OspAエクトドメインのいずれか1つである。
【0137】
本明細書で記載されるOspAエクトドメイン(または完全長のOspAのようなOspAエクトドメインを含む配列のいずれかを、抗原性ポリペプチドにおいて以下に記載されるフェリチンのいずれかと共に組み合わせることができる。
【0138】
2.フェリチン構成要素
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性OspAポリペプチドおよびフェリチンを含む融合タンパク質が包含される。抗原性ポリペプチド中のフェリチンは、野生型であり得るか、または1つもしくはそれ以上の変異(以下の節を参照されたい)を含み得る。一部の実施形態では、フェリチンは、細菌、昆虫、真菌、鳥類、または哺乳動物である。一部の実施形態では、フェリチンはヒトである。一部の実施形態では、フェリチンは細菌である。一部の実施形態では、フェリチンは、イラクサギンウワバフェリチン(PDB:1Z6O_X、配列番号211および212)である。
【0139】
一部の実施形態では、フェリチンは、軽鎖および/または重鎖フェリチンである。一部の実施形態では、フェリチンは、ヒト重鎖フェリチン(FTH1、GENE ID番号:2495)、またはヒト軽鎖フェリチン(FTL、GENE ID番号:2512)である。一部の実施形態では、フェリチンは、重鎖フェリチンおよび軽鎖フェリチンの全体で24個のサブユニットを含む、「フェリチン粒子」、または「フェリチンナノ粒子」として本明細書で呼ばれる多量体タンパク質である。
【0140】
一部の実施形態では、抗原性OspAポリペプチドは、軽鎖フェリチンおよびOspAポリペプチドを含む。一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、重鎖フェリチンおよびOspAポリペプチドを含む。一部の実施形態では、軽鎖フェリチンおよびOspAポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、非フェリチンポリペプチドに連結していない重鎖フェリチンと集合することができる。一部の実施形態では、重鎖フェリチンおよびOspAポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、非フェリチンポリペプチドに連結していない軽鎖フェリチンと集合することができる。非フェリチンポリペプチドに連結していないフェリチンを、「裸のフェリチン」と呼ぶことがある。
【0141】
一部の実施形態では、重鎖フェリチンおよびOspAポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、軽鎖フェリチンおよびOspAポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドと集合して、単一のフェリチン粒子上で同じまたは異なる抗原の2つの発現を可能にすることができる。一部の実施形態では、2つの異なる抗原は、単一の感染作用物質によってコードされる。一部の実施形態では、2つの異なる抗原は、2つの異なる感染作用物質、例えば異なる血清型または種のボレリアによってコードされる。
【0142】
一部の実施形態では、重鎖フェリチンおよびOspAポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドは、軽鎖フェリチンおよびOspAポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドと集合して、二価組成物を産生することができる。一部の実施形態では、フェリチンは、H.ピロリフェリチン(そのN末端にウシガエルフェリチンからの8アミノ酸伸長部を含む例示
的な野生型H.ピロリフェリチン配列に関しては、配列番号90を参照されたい)である。一部の実施形態では、H.ピロリフェリチン(または他の細菌フェリチン)とヒトフェリチンとの間の配列相同性がより低いことにより、抗原性ポリペプチドを構築するためのワクチンプラットフォームとして使用した場合に自己免疫の可能性を減少させ得る(Kanekiyoら、Cell 162,1090~1100頁(2015)を参照されたい)。
【0143】
一部の実施形態では、フェリチンは、場合により本明細書に記載される1つまたはそれ以上の変異を有するピュロコックスフリオスス(Pyrococcus furiosus)フェリチン(NCBI seq WP_011011871.1)である。
【0144】
一部の実施形態では、フェリチンは、野生型フェリチンと70%より高い、75%より高い、80%より高い、85%より高い、90%より高い、95%より高い、97%より高い、98%より高い、または99%より高い同一性を有する配列を含む。
【0145】
一部の実施形態では、フェリチンは昆虫フェリチンである。一部の実施形態では、フェリチンは、場合により本明細書に記載される1つまたはそれ以上の変異を有するイラクサギンウワバフェリチン(PDB:1Z6O_X、配列番号211および212)である。
【0146】
a)フェリチン変異
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の変異を含むフェリチンを本明細書に開示する。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の変異は、例えば野生型フェリチンのアミノ酸配列の変化、および/またはNもしくはC末端での挿入を含む。一部の実施形態では、1、2、3、4、5、またはそれより多くの異なるアミノ酸が、野生型フェリチンと比較してフェリチンにおいて変異している(一部の実施形態では、任意のN末端挿入に加えて)。1つまたはそれ以上の変異は、例えば以下で詳細に考察するように、フェリチンの機能的特性を変化させることができる。一般的に、変異は単に、対応する野生型フェリチンと比較した配列の差(置換された、付加された、または欠失されたアミノ酸残基または複数の残基のような)を指す。
【0147】
1.コンジュゲーションのためのシステイン
一部の実施形態では、フェリチンを、免疫刺激性部分および/または非フェリチンポリペプチドのコンジュゲーションのための化学ハンドルを提供するように変異させる。これは、表面に露出した非システインアミノ酸をシステインに置き換える変異によって達成することができる。誤解を避けるため、「表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える」のような表現は、野生型または変異前配列における表面に露出したアミノ酸がシステインではないことを必然的に暗示している。免疫刺激性部分または非フェリチンポリペプチドのコンジュゲーションのための化学ハンドルを提供する別のアプローチは、リンカーのようなアミノ酸のセグメントをフェリチンのNまたはC末端に含めることであり、アミノ酸のセグメントはシステインを含む。一部の実施形態では、このシステイン(表面に露出したアミノ酸を置き換えるか、またはNもしくはC末端リンカーにある)は不対であり、このことは、これがジスルフィド結合を形成するために適切なパートナーシステインを有していないことを意味する。一部の実施形態では、このシステインは、フェリチンの二次構造を変化させない。一部の実施形態では、このシステインは、フェリチンの三次構造を変化させない。
【0148】
一部の実施形態では、このシステインを使用して、免疫刺激性部分のような作用物質をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、このシステインは、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン上のこのシステインにコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン粒子の表面上で露出
する。一部の実施形態では、このシステインは、投与後にフェリチン粒子が集合する間、対象の分子および細胞と相互作用することができる。
【0149】
一部の実施形態では、このシステインの存在により、1つまたはそれ以上の免疫刺激性部分、例えばアジュバントのコンジュゲーションが可能となる。一部の実施形態では、免疫刺激性部分のコンジュゲーションは、このシステインの非存在下では起こらない。
【0150】
一部の実施形態では、システインに置き換えられる非システインアミノ酸は、H.ピロリフェリチンのE12、S72、A75、K79、S100、およびS111から選択される。このように、一部の実施形態では、システインのために置き換えられる表面に露出したアミノ酸は、H.ピロリフェリチンのE12、S26、S72、A75、K79、S100、またはS111に対応するアミノ酸残基である。類似のアミノ酸を、ペアワイズまたは構造アライメントによって、非H.ピロリフェリチンにおいて見出すことができる。一部の実施形態では、システインに置き換えられる非システインアミノ酸は、ヒト軽鎖フェリチンのS3、S19、S33、I82、A86、A102、およびA120に対応するアミノ酸から選択することができる。一部の実施形態では、システインに置き換えられる表面に露出したアミノ酸は、本来のアミノ酸がシステインに置き換えられた場合、これは集合したフェリチン多量体もしくは粒子において反応性である、および/またはこのシステインはフェリチン多量体もしくは粒子の安定性を妨害しない、および/またはこのシステインがフェリチンの発現レベルの低減をもたらさないという理解に基づいて選択される。
【0151】
一部の実施形態では、フェリチンはE12C変異を含む。一部の実施形態では、E12C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/または非フェリチンポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、E12C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のE12C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のE12C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0152】
一部の実施形態では、フェリチンは、S26C変異を含む。一部の実施形態では、S26C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/または非フェリチンポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S26C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS26C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS26C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0153】
一部の実施形態では、フェリチンは、S72C変異を含む。一部の実施形態では、S72C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/または非フェリチンポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S72C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS72C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS72C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0154】
一部の実施形態では、フェリチンは、A75C変異を含む。一部の実施形態では、A75C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/または非フェリチンポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、A75C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリ
チン単量体上のA75C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のA75C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0155】
一部の実施形態では、フェリチンは、K79C変異を含む。一部の実施形態では、K79C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/または非フェリチンポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、K79C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のK79C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のK79C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0156】
一部の実施形態では、フェリチンは、S100C変異を含む。一部の実施形態では、S100C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/または非フェリチンポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S100C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS100C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS100C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0157】
一部の実施形態では、フェリチンは、S111C変異を含む。一部の実施形態では、S111C残基を使用して、作用物質(例えば、免疫刺激性部分および/または非フェリチンポリペプチド)をフェリチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、S111C残基は、反応性である遊離のチオール基を提供する。一部の実施形態では、フェリチン単量体上のS111C残基にコンジュゲートされた作用物質は、集合したフェリチン多量体または粒子の表面上で発現される。一部の実施形態では、24個のS111C残基(各単量体から1つ)が、フェリチン多量体または粒子の表面上に存在する。
【0158】
2.内部システインの除去
一部の実施形態では、フェリチンは、内部システインを非システインアミノ酸に置き換える変異を含む。本来の内部システイン残基を除去することによって、フェリチン単量体あたり1つのみの不対システインが存在することを確実にし、ジスルフィド形成のような望ましくない反応を回避することができ、より安定かつ効率的な結果(例えば、アジュバントの提示)をもたらし得る。一部の実施形態では、H.ピロリフェリチンのC31が非システインアミノ酸に置き換えられる。一部の実施形態では、H.ピロリフェリチンのC31がセリンに置き換えられる(C31S)が、任意の非システイン残基、例えばアラニン、グリシン、トレオニン、またはアスパラギンを使用してもよい。類似のアミノ酸を、ペアワイズまたは構造アライメントによって、非H.ピロリフェリチンにおいて見出すことができる。このように、一部の実施形態では、非システインのために置き換えられる内部システインは、H.ピロリフェリチンのC31と整列するアミノ酸残基である。C31S変異を示す例示的なフェリチン配列を、配列番号201~207に示す。一部の実施形態では、1つより多くの内部システインがフェリチンに存在する場合、2つまたはそれより多く(例えば、各々の)内部システインは、セリン、またはセリン、アラニン、グリシン、トレオニン、もしくはアスパラギンから選択されるアミノ酸のような非システインアミノ酸に置き換えられる。
【0159】
3.グリコシル化
ヒト適合性のグリコシル化は、組換え薬物製品における安全性および効能に関与し得る。規制当局の承認は、極めて重要な品質属性として適切なグリコシル化を証明することを条件とし得る(Zhangら、Drug Discovery Today 21(5)
:740~765頁(2016)を参照されたい)。N-グリカンは、アスパラギン側鎖のグリコシル化に起因することができ、ヒトと、細菌および酵母のような他の生物との間で構造が異なり得る。このように、本開示に従うフェリチンにおいて、非ヒトグリコシル化および/またはNグリカン形成を低減または除去することが望ましいであろう。一部の実施形態では、フェリチンのグリコシル化を制御することにより、特にヒトワクチン接種に使用する場合、組成物の効能および/または安全性が改善される。
【0160】
一部の実施形態では、フェリチンを、N-グリカンの形成を阻害するように変異させる。一部の実施形態では、変異したフェリチンは、その対応する野生型フェリチンと比較して低減されたグリコシル化を有する。
【0161】
一部の実施形態では、フェリチンは、表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異を含む。一部の実施形態では、表面に露出したアスパラギンは、H.ピロリフェリチンのN19、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって決定される、H.ピロリフェリチンの31位に対応する位置である。一部の実施形態では、そのようなアスパラギン、例えばH.ピロリフェリチンのN19を変異させることは、フェリチンのグリコシル化を減少させる。一部の実施形態では、変異は、アスパラギンをグルタミンに置き換える。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異を含むH.ピロリフェリチンである。配列番号201~207は、N19Q変異を含む例示的なフェリチン配列である。
【0162】
細菌または酵母において産生されたグリコシル化タンパク質に曝露された哺乳動物は、細菌または酵母における所定のタンパク質のグリコシル化パターンが、哺乳動物における同じタンパク質のグリコシル化パターンとは異なり得ることから、グリコシル化タンパク質に対する免疫応答を生じ得る。このように、いくつかのグリコシル化治療タンパク質は、細菌または酵母における産生にとって適切ではないことがあり得る。
【0163】
一部の実施形態では、アミノ酸変異によるフェリチンのグリコシル化の減少は、細菌または酵母におけるタンパク質の産生を促進する。一部の実施形態では、フェリチンのグリコシル化の減少は、細菌または酵母において発現された変異フェリチンの投与時の哺乳動物における副作用の可能性を低減させる。一部の実施形態では、細菌または酵母において産生された変異フェリチンのヒト対象における反応原性は、グリコシル化が減少していることから低い。一部の実施形態では、ヒト対象における過敏応答の発生率は、野生型フェリチンと比較して低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンによる処置後では低い。
【0164】
一部の実施形態では、低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンを含む組成物の対象における分解は、野生型フェリチンを含む組成物、または野生型グリコシル化を有する対応するフェリチンを含む組成物と比較して遅い。一部の実施形態では、低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンを含む組成物は、野生型フェリチン、または野生型グリコシル化を有する対応するフェリチンを含む組成物と比較して、対象において低減されたクリアランスを有する。一部の実施形態では、低減されたグリコシル化を有する変異フェリチンを含む組成物は、野生型フェリチン、または野生型グリコシル化を有する対応するフェリチンを含む組成物と比較してより長い血清中半減期を有する。
【0165】
4.変異の組合せ
一部の実施形態では、フェリチンは、本明細書に記載される変異の1つより多くのタイプを含む。一部の実施形態では、フェリチンは、グリコシル化を減少させる変異、内部システインを除去する変異、および表面に露出したシステインを生成する変異から独立して選択される1つまたはそれ以上の変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、グリ
コシル化を減少させる変異、内部システインを除去する変異、および表面に露出したシステインを生成する変異を含む。
【0166】
一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、および表面に露出したシステインを生成する変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびE12C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびS72C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびA75C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびK79C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびS100C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、N19Q変異、C31S変異、およびS111C変異を含む。一部の実施形態では、フェリチンは、前述の変異の組のいずれかに対応する変異を含み、対応する変異は、フェリチンアミノ酸配列とH.ピロリフェリチンアミノ酸配列(配列番号208または209)とのペアワイズアライメントによって決定した位置で、NをQに、CをSに、および非システインの表面に露出したアミノ酸をシステインに変化させる。
【0167】
1つより多くのタイプの変異を含む例示的なフェリチンを、配列番号201~207に提供する。
【0168】
5.構造アライメント
本明細書で考察したように、所与のポリペプチド(例えば、H.ピロリフェリチン)に関して記載した変異に対応する変異の位置は、ペアワイズまたは構造アライメントによって同定することができる。構造アライメントは、タンパク質がかなりの配列変動にも関わらず類似の構造を共有し、ファミリーの多くのメンバーが構造的に特徴付けされている、フェリチンのような大きいタンパク質ファミリーにとって適切であり、これもまた、ボレリアポリペプチド(例えば、OspA)のような、本明細書に記載される他のポリペプチドの異なる形態における対応する位置を同定するために使用することができる。タンパク質データバンク(PDB)は、その受託番号と共に以下に列挙するフェリチンを含む、多くのフェリチンに関する3D構造を含む。
【0169】
2jd6,2jd7-PfFR-ピュロコックスフリオスス。2jd8-PfFR+Zn。3a68-遺伝子SferH4由来のsoFR-ダイズ。3a9q-遺伝子SferH4(変異体)由来のsoFR。3egm,3bvf,3bvi,3bvk,3bvl-HpFR-ヘリコバクターピロリ。5c6f-HpFR(変異体)+Fe。1z4a,1vlg-FR-テルモトガマリティマ(Thermotoga maritime)。1s3q,1sq3,3kx9-FR-アルカエオグロブスフルギダス(Archaeoglubus fulgidus),1krq-FR-カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)。1eum-EcFR-大腸菌(Escherichia coli)。4reu-EcFR+Fe。4xgs-EcFR(変異体)+Fe2O2。4ztt-EcFR(変異体)+Fe2O+Fe2+Fe+O2。1qgh-LiFR-リステリアイノキュア(Listeria innocua)。3qz3-VcFR-ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)。3vnx-FR-アナアオサ(Ulva pertusa)。4ism,4isp,4itt,4itw,4iwj,4iwk,4ixk,3e6s-PnmFR-プセウドニッチア(Pseudo-nitschia multiseries)。4zkh,4zkw,4zkx,4zl5,4zl6,4zlw,4zmc-PnmFR(変異体)+Fe。1z6o-FR-イラクサギンウワバ。4cmy-FR+Fe-緑色硫黄細菌(Chlorobaculum
tepidum)。フェリチン軽鎖(FTL)。1lb3,1h96-mFTL-マウス。1rcc,1rcd,1rci-bFTL+タルトレート+Mg。1rce,1rc
g-bFTL+タルトレート+Mn。3noz,3np0,3np2,3o7r-hoFTL(変異体)-ウマ。3o7s,3u90-hoFTL。4v1w-hoFTL-cryo EM。3rav,3rd0-hoFTL+バルビツレート。フェリチン軽鎖+重鎖:5gn8-hFTH+Ca。
【0170】
構造アライメントは、(i)第2の配列の公知の構造を使用して第1の配列の構造をモデリングする工程、または(ii)両方が公知である第1および第2の配列の構造を比較する工程、ならびに第2の配列における目的の残基に最も類似に位置する第1の配列中の残基を同定する工程によって、2つ(またはそれより多く)のポリペプチド配列を超えて対応する残基を同定する工程を伴う。対応する残基は、重ねた構造におけるアルファ炭素の距離の最小化(例えば、どの組のアルファ炭素対がアライメントに関する最小平均二乗偏差を提供するか)に基づいて一部のアルゴリズムにおいて同定される。H.ピロリフェリチンに関して記載された位置に対応する非H.ピロリフェリチンにおける位置を同定する場合、H.ピロリフェリチンは、「第2の」配列であり得る。目的の非H.ピロリフェリチンが利用可能な公知の構造を有しないが、公知の構造を有する別の非H.ピロリフェリチンに、H.ピロリフェリチンより密接に関連する場合、密接に関連する非H.ピロリフェリチンの公知の構造を使用して目的の非H.ピロリフェリチンをモデリングし、次にそのモデルをH.ピロリフェリチン構造と比較して、目的のフェリチンにおける所望の対応する残基を同定することが最も有効であり得る。構造モデリングおよびアライメントに関して広範囲の文献が存在し、代表的な開示には、米国特許第6859736号;米国特許第8738343号;およびAslamら、Electronic Journal of Biotechnology 20(2016)9~13頁において引用される開示が挙げられる。公知の関連する構造または複数の構造に基づく構造のモデリングの考察に関して、例えば、Bordoliら、Nature Protocols 4(2009)1~13頁、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0171】
4.ルマジンシンターゼ
一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、ルマジンシンターゼタンパク質(Raら、Clin Exp Vaccine Res 3:227~234頁(2014)を参照されたい)を含む。一部の実施形態では、このタンパク質は、ルマジンシンターゼ血清型1、2、3、4、5、6、または7である。例示的なルマジンシンターゼ配列を、配列番号216および219に提供する。一部の実施形態では、ルマジンシンターゼは、配列番号216または219と80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。ルマジンシンターゼは、高次構造、例えば60サブユニットのルマジンシンターゼ粒子を形成することができる。例示的なルマジンシンターゼは、アクイフェクス・アエオリクス(Aquifex aeolicus)ルマジンシンターゼおよび大腸菌(E.coli)ルマジンシンターゼである。ルマジンシンターゼは、OspA(例えば、完全長のOspAのようなOspAエクトドメインを含む配列)のC末端に位置することができ、本明細書に記載されるリンカーによってOspAから分離することができる。ルマジンシンターゼタンパク質を含む例示的な抗原性ポリペプチドは、配列番号12~21である。一部の実施形態では、抗原性ポリペプチドは、配列番号12~21のいずれか1つと80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。
【0172】
5.リンカー
一部の実施形態では、フェリチンまたはルマジンシンターゼは、リンカーを介してOspA(例えば、完全長のOspAのようなOspAエクトドメインを含む配列)に結合(例えば、融合)される。
【0173】
一部の実施形態では、リンカーは、非フェリチンポリペプチド(例えば、OspA)の
アミノ酸配列をフェリチンのアミノ酸配列から分離する。任意のリンカーを使用してもよい。一部の実施形態では、リンカーは、融合タンパク質としての抗原性フェリチンポリペプチドの発現を容易にすることができるペプチドリンカーである(例えば、単一のオープンリーディングフレーム由来)。一部の実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンリンカーである。一部の実施形態では、グリシン-セリンリンカーは、GS、GGGS(配列番号226)、2XGGGS(配列番号91)(すなわち、GGGSGGGS(配列番号91))、または5XGGGS(配列番号92)である。リンカーは、フェリチンに対してNまたはC末端である。
【0174】
一部の実施形態では、リンカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、約2~4、2~6、2~8、2~10、2~12、または2~14アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも15アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも25アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも30アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも35アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも40アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、60アミノ酸長未満またはそれに等しい。一部の実施形態では、リンカーは、50アミノ酸長未満またはそれに等しい。一部の実施形態では、リンカーは、約16、28、40、46、または47アミノ酸長である。一部の実施形態では、リンカーは、フレキシブルである。一部の実施形態では、リンカーは、例えば免疫刺激性部分(例えば、アジュバント)のコンジュゲーション部位として使用するためのシステインを含む;システインを含む例示的なリンカーを、配列番号225として提供する。一部の実施形態では、リンカーは、配列番号225と少なくとも75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する配列を含み、配列番号225中のシステインに対応するシステインをさらに含む。一部の実施形態では、リンカーは、少なくとも25アミノ酸(例えば、25~60アミノ酸)を含み、システインは、N末端から8番目のアミノ酸からC末端から8番目のアミノ酸までの範囲の位置、または中央残基の10アミノ酸以内の位置、またはリンカーの結合位置に位置する。
【0175】
一部の実施形態では、リンカーは、グリシン(G)および/またはセリン(S)アミノ酸を含む。一部の実施形態では、リンカーは、グリシン(G)、セリン(S)、アスパラギン(N)、および/またはアラニン(A)アミノ酸、ならびに場合により上記のようなシステインを含むか、またはそれからなる。一部の実施形態では、リンカーは、配列番号222と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号220)、GGSGSGSNSSASSGASSGGASGGSGGSG(配列番号221)、GGSGSASSGASASGSSNGSGSGSGSNSSASSGASSGGASGGSGGSG(配列番号222)、またはGSである。一部の実施形態では、リンカーは、FR1(配列番号223)またはFR2(配列番号224)である。
【0176】
一部の実施形態では、フェリチンは、ウシガエルフェリチンのアミノ末端伸長部を有するH.ピロリフェリチン(ハイブリッドフェリチンと呼ぶ)を含む。一部の実施形態では、このハイブリッドフェリチンは、表面上に均一に分布した非フェリチンポリペプチド結合部位を有する多量体を形成する(Kanekiyo 2015を参照されたい)。一部の実施形態では、ハイブリッドフェリチンとのN末端融合タンパク質は、フェリチンナノ粒子表面上の非フェリチンポリペプチドの提示を可能にする。一部の実施形態では、非フェリチンポリペプチドは、ウイルスまたは細菌ポリペプチドである。一部の実施形態では、フェリチンは、配列番号208(このグルタメートを含むハイブリッドフェリチン)の13位、または配列番号209(6位がイソロイシンである野生型H.ピロリフェリチン
)の6位に対応する位置でグルタメートを含む。ウシガエルリンカーと組み合わせて、このグルタメートは、ヒトおよびウシガエルフェリチンにおいて見出される保存された塩架橋を保存すると考えられる(ヒト軽鎖およびウシガエル下部サブユニットフェリチンの両方における6Rおよび14E)。Kanekiyoら、Cell 162,1090~1100頁(2015)を参照されたい。
【0177】
一部の実施形態では、抗原性OspAポリペプチドは、システイン-トロンビン-ヒスチジンリンカーを介してフェリチンに連結される。一部の実施形態では、このリンカーを使用して、クリックケミストリーを介してある部分(例えば、免疫刺激性部分または非フェリチンポリペプチド)をフェリチンに直接コンジュゲートする。システイン-トロンビン-ヒスチジンリンカーを含む例示的な配列は、配列番号218である。システイン-トロンビン-ヒスチジンリンカーを伴うコンジュゲーション反応にとって適したクリックケミストリーは上記で考察されている。
【0178】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分のためのコンジュゲーション部位としてシステインを含むリンカーは、表面に露出した不対システインを欠如するフェリチン分子を含む構築物において、または表面に露出した不対システインを含むフェリチン分子を含む構築物において使用される。
【0179】
一部の実施形態では、構築物はリンカーを含まない。一部の実施形態では、構築物は、1つのリンカーを含む。一部の実施形態では、構築物は、2つまたは2つより多くのリンカーを含む。
【0180】
6.免疫刺激性部分;アジュバント;コンジュゲートポリペプチド
一部の実施形態では、非フェリチンポリペプチド(例えば、OspAポリペプチド)および/またはアジュバントのような免疫刺激性部分は、フェリチンまたはリンカーの表面に露出したアミノ酸に結合する。一部の実施形態では、表面に露出したアミノ酸は、例えば上記で考察した変異に起因するシステインである。一部の実施形態では、表面に露出したアミノ酸は、リシン、アスパルテート、またはグルタメートである。グルタルアルデヒド(リシンをアミノ担持リンカーまたは部分にコンジュゲートするため)またはカルボジイミド(例えば、アスパルテートもしくはグルタメートをアミノ担持リンカーもしくは部分にコンジュゲートするための、またはリシンをカルボキシル担持リンカーもしくは部分にコンジュゲートするための、1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリン-4-イル-エチル)カルボジイミド、または1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド(EDC;EDAC))を使用するコンジュゲーション手順は、例えばワールドワイドウェブspringer.com.から入手可能な、Chapter 4 of Holtzhauer,M.,Basic Methods for the Biochemical Lab,Springer 2006,ISBN 978-3-540-32785-1に記載されている。
【0181】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分は、フェリチンの表面に露出したアミノ酸に結合する。一部の実施形態では、アジュバントのような1つより多くの免疫刺激性部分が、フェリチンの表面に露出したアミノ酸に結合する。一部の実施形態では、24個の免疫刺激性部分が、フェリチン多量体または粒子(例えば、H.ピロリフェリチン粒子における各々の単量体の1つの部分)に結合する。複数の免疫刺激性部分がフェリチンナノ粒子に結合した一部の実施形態では、免疫刺激性部分は全て同一である。複数の免疫刺激性部分がフェリチンナノ粒子に結合した一部の実施形態では、免疫刺激性部分は全て同一ではない。
【0182】
a)免疫刺激性部分のタイプ;アジュバント
表面に露出したアミノ酸(例えば、システイン)に結合することができる免疫刺激性部分を、本開示に従ってフェリチン(またはリンカー)において使用することができる。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、B細胞アゴニストである。
【0183】
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、疎水性ではない。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は親水性である。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、極性である。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、水素結合またはイオン結合することが可能であり、例えば水素結合ドナー、水素結合アクセプター、カチオン性部分またはアニオン性部分を含む。部分が、pH 6、7、7.4、または8のような生理的に関連するpHで、水溶液中でイオン化される場合、部分はカチオン性またはアニオン性であると考えられる。
【0184】
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、アジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む。一部の実施形態では、アジュバントは、toll-like受容体(TLR)アゴニストまたはインターフェロン遺伝子(STING)アゴニストの刺激剤である。一部の実施形態では、アジュバントはBおよび/またはT細胞におけるTLRシグナル伝達を活性化する。一部の実施形態では、アジュバントは、適応免疫応答を調節する。
【0185】
(1)TLR2アゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2アゴニストである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2シグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2の合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR2シグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0186】
一部の実施形態では、TLR2アゴニストは、PAM2CSK4、FSL-1、またはPAM3CSK4である。
【0187】
(2)TLR7/8アゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8アゴニスト(すなわち、TLR7およびTLR8の少なくとも1つのアゴニスト)である。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8シグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8の合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR7および/またはTLR8シグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0188】
一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、一本鎖(ssRNA)である。一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、イミダゾキノリンである。一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、ヌクレオシドアナログである。
【0189】
一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、3M-012(3M Pharmaceuticals)のようなイミダゾキノリンアミンToll-like受容体(TLR)アゴニストである。遊離の3M-012の構造は:
【化1】
である。3M-012または本明細書で考察する任意の部分のような免疫刺激性部分は、この部分の適切な末端原子(例えば、水素)を、例えば表面に露出したシステインの硫黄での本明細書に記載されるフェリチンとの結合に置換することによって、またはそのような硫黄に結合するリンカーによってフェリチンにコンジュゲートすることができると理解される。このように、フェリチンにコンジュゲートする場合、免疫刺激性部分の構造は、遊離の分子の構造とはわずかに異なる。
【0190】
一部の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、SM7/8aである。遊離のSM7/8aの構造は:
【化2】
である。
【0191】
例えば、Lynnら、Nat Biotechnol.2015 Nov;33(11):1201~10頁.doi:10.1038/nbt.3371を参照されたい。
【0192】
(3)TLR9アゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9アゴニストである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9シグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9の合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、TLR9シグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0193】
一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、非メチル化CpG ODNである。一部の実施形態では、CpG ODNは、通常のDNAにおいて見出される天然のホスホジエステル(PO)骨格の代わりに、部分的または完全なホスホロチオエート(PS)骨格を含む。
【0194】
一部の実施形態では、CpG ODNは、クラスB ODNであり、これは5’プリン(Pu)-ピリミジン(Py)-C-G-Py-Pu3’を含む1つまたはそれ以上の6量体CpGモチーフを含み;十分にホスホロチオエート化された(すなわち、PS改変された)骨格を有し;18~28ヌクレオチド長を有する。一部の実施形態では、CpG ODNは、配列番号210の配列を含み、場合により、骨格にホスホロチオエート結合を含む。
【0195】
一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、免疫刺激性配列(ISS)を含む。一部の実施形態では、TLR9アゴニストは、ISS-1018(Dynavax)(配列番号210)である。
【0196】
(4)STINGアゴニスト
一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STING(インターフェロン遺伝子タンパク質刺激因子、小胞体IFN刺激因子とも呼ばれる)アゴニストである。一部の実施形態
では、免疫刺激性部分は、STINGシグナル伝達を刺激する。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STINGの合成低分子リガンドである。一部の実施形態では、免疫刺激性部分は、STINGシグナル伝達の合成低分子アゴニストである。
【0197】
一部の実施形態では、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド(CDN)である。例えば、Danilchankaら、Cell 154:962~970頁(2013)を参照されたい。例示的なCDNは、cdA、cdG、cAMP-cGMP、および2’-5’,3’-5’cGAMPを含む(構造に関しては、Danilchankaらを参照されたい)。STINGアゴニストはまた、DMXAAのような合成アゴニストも含む。
【化3】
【0198】
b)コンジュゲートした非フェリチンポリペプチド
一部の実施形態では、抗原性OspAポリペプチドは、フェリチンの表面に露出したアミノ酸にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、抗原性OspAポリペプチドは、単独で抗原性であるが、一部の実施形態では、抗原性OspAポリペプチドは、フェリチンとのその会合のために抗原性である。
【0199】
7.コンジュゲーション
一部の実施形態では、表面に露出したシステインを使用して、アジュバントのような免疫刺激性部分または抗原性OspAポリペプチドをフェリチンにコンジュゲートする。一部の実施形態では、表面に露出したシステインを使用して、リンカーをフェリチンにコンジュゲートし、リンカーを次に、アジュバントのような免疫刺激性部分、または抗原性OspAポリペプチドにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、表面に露出したシステインは、アジュバント、リンカー、または抗原性OspAポリペプチドを結合させるコンジュゲーション反応のための化学ハンドルを作製する。
【0200】
一部の実施形態では、バイオコンジュゲートが産生され、アジュバントのような免疫刺激性部分、または抗原性OspAポリペプチドが、フェリチンの表面に露出した不対システインの還元後にフェリチンに連結される。表面に露出した不対システインは、ジスルフィド結合を形成するためのパートナーシステインを適切な位置に欠如するシステインである。一部の実施形態では、不対システインは、遊離のチオール側鎖を含む。
【0201】
a)コンジュゲーションケミストリーのタイプ
任意のタイプのケミストリーを使用して、例えばシステインまたはLys、Glu、もしくはAspのような別のアミノ酸のような表面に露出したアミノ酸の反応を介して、アジュバントのような免疫刺激性部分または抗原性OspAポリペプチドをフェリチンにコンジュゲートすることができる。
【0202】
一部の実施形態では、コンジュゲーションは、クリックケミストリーを使用して実施さ
れる。本明細書で使用される場合、「クリックケミストリー」は、互いに急速かつ選択的に反応する(すなわち、「クリックする」)1対の官能基間での反応を指す。一部の実施形態では、クリックケミストリーは、緩和な水性条件下で実施することができる。一部の実施形態では、クリックケミストリー反応は、表面に露出したアミノ酸の変異に起因するシステインのようなフェリチンの表面上のシステインを利用し、システインと反応することができる官能基を使用してクリックケミストリーを実施する。
【0203】
クリックケミストリーの基準を満たす多様な反応が、当技術分野で公知であり、当業者は、複数の公表された方法論のいずれかを使用することができる(例えば、Heinら、Pharm Res 25(10):2216~2230頁(2008)を参照されたい)。クリックケミストリーに関してSigma Aldrich、Jena Bioscience、またはLumiprobeの試薬のような広範囲の市販の試薬を使用することができる。一部の実施形態では、コンジュゲーションは、以下の実施例に記載されるようにクリックケミストリーを使用して実施される。
【0204】
一部の実施形態では、クリックケミストリーは、フェリチンの還元後に起こる。
【0205】
一部の実施形態では、クリックケミストリーは、1ステップクリック反応であり得る。一部の実施形態では、クリックケミストリーは、2ステップクリック反応であり得る。
【0206】
一部の実施形態では、反応は、金属フリーのクリックケミストリーを含む。一部の実施形態では、反応は、チオール-マレイミドおよび/またはジスルフィド交換を含む。
【0207】
金属フリークリックケミストリー
金属フリークリックケミストリーは、タンパク質の起こり得る酸化を回避するためにコンジュゲーション反応に関して使用することができる。金属フリークリックケミストリーは、抗体コンジュゲートを形成するために使用されている(van Geelら、Bioconjugate Chem.2015,26,2233~2242頁を参照されたい)。
【0208】
一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、アジュバントをフェリチンに結合させる反応において使用される。一部の実施形態では、アジュバントをフェリチンに結合させる反応において銅フリーコンジュゲーションを使用する。一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)を使用する。一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、ジベンゾアザシクロオクチン(DBCO)を使用する。一部の実施形態では、BCNまたはDBCOは、アジド基と反応する。
【0209】
DBCOは、触媒の非存在下での歪み促進型クリック反応を介してアジド基に対して高い特異性を有し、高収率の安定なトリアゾールをもたらす。一部の実施形態では、DBCOは、銅触媒の非存在下でアジドと反応する。
【0210】
一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、1ステップクリック反応において使用される。一部の実施形態では、金属フリークリックケミストリーは、2ステップクリック反応において使用される。
【0211】
チオール-マレイミドおよびジスルフィド交換
本明細書で使用されるフェリチンは、スルフヒドリルとしても知られるチオールを含むシステインを含むことができ、これはスルフヒドリル反応性化学基との反応に関して利用可能である(または還元を通して利用可能となり得る)。このように、システインは、ア
ジュバントのような免疫刺激性部分をフェリチンに付加するための化学選択的改変を可能にする。塩基性条件下では、システインは、脱プロトン化されて、チオレート求核試薬を生成し、これはマレイミドおよびヨードアセトアミドのような弱い求電子試薬と反応することができる。システインとマレイミドまたはヨードアセトアミドとの反応は、炭素-硫黄結合をもたらす。
【0212】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、表面に露出したシステインまたはフェリチンのリンカー中のシステインと反応する。一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、ハロアセチル、マレイミド、アジリジン、アクリロイル、アリール化剤、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、またはTNB-チオールである。
【0213】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、アルキル化によってシステインのスルフヒドリルにコンジュゲートする(すなわち、チオエーテル結合の形成)。一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、ジスルフィド交換によってシステインのスルフヒドリルにコンジュゲートする(すなわち、ジスルフィド結合の形成)。
【0214】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分をフェリチンにコンジュゲートする反応は、チオール-マレイミド反応である。
【0215】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、マレイミドである。一部の実施形態では、マレイミドとシステインとの反応は、例えば可逆的ではない安定なチオエステル結合の形成をもたらす。一部の実施形態では、マレイミドは、フェリチン中のチロシン、ヒスチジン、またはメチオニンとは反応しない。一部の実施形態では、非反応マレイミドは、遊離のチオールを例えば過剰に添加することによって、反応終了時にクエンチされる。
【0216】
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分をフェリチンにコンジュゲートする反応は、ジスルフィド相互交換としても知られるチオール-ジスルフィド交換である。一部の実施形態では、反応は、当初のジスルフィドの一部を含む混合ジスルフィドの形成を伴う。一部の実施形態では、当初のジスルフィドは、表面に露出したアミノ酸の変異またはN末端リンカーの付加によってフェリチンに導入されたシステインである。
【0217】
一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、ピリジルジチオールである。一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基は、TNB-チオール基である。
【0218】
b)リンカー
一部の実施形態では、アジュバントのような免疫刺激性部分、または抗原性OspAポリペプチドは、システインのような表面に露出したアミノ酸に共有結合したリンカーを介してフェリチンに結合する。一部の実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール、例えば、PEGリンカーを含む。一部の実施形態では、ポリエチレングリコール(例えば、PEG)リンカーは、アジュバントのような免疫刺激性部分に連結したフェリチンの水溶性およびライゲーション効率を増加させる。PEGリンカーは、2~18PEG長の間、例えば、PEG4、PEG5、PEG6、PEG7、PEG8、PEG9、PEG10、PEG11、PEG12、PEG13、PEG14、PEG15、PEG16、PEG17、およびPEG18である。
【0219】
一部の実施形態では、リンカーは、マレイミドを含む。一部の実施形態では、リンカーは、免疫刺激性部分(ISM)-リンカー-マレイミドの構成要素を含む。一部の実施形態では、ISM-リンカー-マレイミドは、マレイミドとフェリチンのシステインとの反応によって1ステップクリックケミストリーにおいてフェリチンにコンジュゲートされる
。一部の実施形態では、アジュバント-リンカー-マレイミドのISMは、SM7/8aである。一部の実施形態では、ISM-リンカー-マレイミドのリンカーはPEG4である。一部の実施形態では、ISM-リンカー-マレイミドは、SM7/8a-PEG4-マレイミドである。
【0220】
一部の実施形態では、2ステップクリックケミストリープロトコルを、1つの末端でスルフヒドリル反応性化学基および他方の末端でアミン反応基を含むリンカーと共に使用する。そのような2ステップクリックケミストリープロトコルでは、スルフヒドリル反応性化学基は、フェリチンのシステインと反応するが、アミン反応基はISMに結合した試薬と反応する。このようにして、ISMは、1組の2クリックケミストリー試薬の組を介してフェリチンにコンジュゲートされる。
【0221】
2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、スルフヒドリル反応性化学基はマレイミドである。2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、マレイミドは、表面に露出したアミノ酸の変異またはN末端リンカーの付加によってフェリチンに導入されたシステインと反応する。
【0222】
2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、アミン反応基はDBCOである。2ステップクリックケミストリープロトコルの一部の実施形態では、DBCOは、ISMに結合したアジド基と反応する。
【0223】
一部の実施形態では、マレイミド-リンカー-DBCOを使用する。一部の実施形態では、マレイミド-リンカー-DBCOは、フェリチンの還元後、フェリチンにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、マレイミド-リンカー-試薬は、第1のステップでマレイミドとフェリチンのシステインとの反応によってフェリチンにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、DBCOを使用してアジドに結合したISMに連結する。一部の実施形態では、アジドに連結したISMは、ISS-1018である。一部の実施形態では、アジドにカップリングしたアジュバントは、3M-012またはCpGである。
【0224】
一部の実施形態では、反応基を有するリンカーをISMに付加する。一部の実施形態では、リンカーは、PEG4-アジドリンカー、またはPEG4-マレイミドリンカーである。
【0225】
一部の実施形態では、PEG4-アジドリンカーは、3M-012にコンジュゲートされる。PEG4-アジドリンカーにコンジュゲートされた3M-012の例示的な構造は:
【化4】
である。
【0226】
一部の実施形態では、PEG4-アジドリンカーは、SM7/8aにコンジュゲートされる。PEG4-アジドリンカーにコンジュゲートされたSM7/8aの例示的な構造は:
【化5】
である。
【0227】
一部の実施形態では、PEG4-マレイミドリンカーは、SM7/8aにコンジュゲートされる。PEG4-マレイミドリンカーにコンジュゲートされたSM7/8aの例示的な構造は:
【化6】
である。
【0228】
一部の実施形態では、アジド基は、ISS-1018にコンジュゲートされる。NHSエステル-アジドリンカーにコンジュゲートされたISS-1018の例示的な構造は:
【化7】
である。
【0229】
D.例示的な組成物、キット、核酸、使用、および方法
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドおよび薬学的に許容される媒剤、アジュバント、賦形剤のうちのいずれか1つもしくはそれ以上を含む組成物が提供される。
【0230】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドまたは組成物は、ボレリアによって引き起こされる感染症、例えばライム病に対して免疫するために、ヒトのような対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドは、ボレリアによる将来の感染に対する保護的免疫応答を産生するために、ヒトのような対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される改変OspA血清型1ポリペプチドを含むポリペプチドが投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるOspAおよびフェリチンを含む抗原性ポリペプチドが投与される。
【0231】
一部の実施形態では、保護的免疫応答は、入院の発生率を減少させる。一部の実施形態では、組成物がボレリアポリペプチドを含む場合、保護的免疫応答は、関節の炎症、神経学的症状、認知障害、または心リズム不規則を含む急性または慢性ライム病の発生率を減少させる。
【0232】
一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型1ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型2ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型3ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型4ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型5ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型6ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型7ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、1つのみのOspAポリペプチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型1、2、3、4、5、6、および7の1つまたはそれ以上を含む。
【0233】
一部の実施形態では、組成物は、例えば1つより多くのOspA血清型に由来する1つより多くのOspAポリペプチドを含む。一部の実施形態では、そのような組成物は、ボレリアの複数のタイプ、例えば血清型1~7の1、2、3、4、5、6、または7つに対するワクチン接種を可能にする。OspAの血清型は、ボレリアの遺伝子種に関連することから(Wilske 1993を参照されたい)、複数の血清型のOspAを含むそのような組成物によるワクチン接種は、ライム病を引き起こし得る広範囲の細菌に対する免疫を産生し得る。
【0234】
一部の実施形態では、複数の血清型のOspAを含む組成物は、異なるOspA血清型
を発現するボレリアに対する免疫を産生する。例えば、実施例に考察されているように、血清型1~5および7のOspAポリペプチドを含む組成物が、OspA血清型6を認識する抗体を誘発することができることが観察されている。一部の実施形態では、そのような組成物は、ボレリアの複数の遺伝子種に対する免疫を生じる。
【0235】
一部の実施形態では、組成物は、2つの異なるOspA血清型を含む。一部の実施形態では、多価組成物は、3つの異なるOspA血清型を含む。一部の実施形態では、多価組成物は、4つの異なるOspA血清型を含む。一部の実施形態では、多価組成物は、5つの異なるOspA血清型を含む。一部の実施形態では、多価組成物は、6つの異なるOspA血清型を含む。一部の実施形態では、多価組成物は、7つの異なるOspA血清型を含む。
【0236】
一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型1およびOspA血清型2~7の任意の1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型2、ならびにOspA血清型1および3~7の任意の1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型3、ならびにOspA血清型1~2および4~7の任意の1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型4、ならびにOspA血清型1~3および5~7の任意の1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型5、ならびにOspA血清型1~4および6~7の任意の1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型6、ならびにOspA血清型1~5および7の任意の1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、組成物は、OspA血清型7、ならびにOspA血清型1~6の任意の1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、組成物は、血清型1~5および7のOspAポリペプチドの少なくとも2、3、4、5、または6つを含む。
【0237】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドまたは組成物の任意の1つまたはそれ以上は、ボレリアによって引き起こされる感染症、例えばライム病に対する免疫に使用するために提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドまたは組成物の任意の1つまたはそれ以上は、ボレリアによる将来の感染症に対する保護的免疫応答の産生に使用するために提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドまたは組成物の任意の1つまたはそれ以上は、霊長類(例えば、サル(例えば、アカゲザルまたはカニクイザルのようなマカク)または類人猿のような非ヒト霊長類)、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、または家畜哺乳動物(例えば、イヌ、ウサギ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ラクダ、またはロバ)のような哺乳動物において使用するためである。
【0238】
1.アジュバント
アジュバントは、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドと共に対象に投与してもよく、そのような投与は、アジュバントなしでのOspAの投与と比較して、対象においてOspAに対するより高力価の抗体を生じる。アジュバントは、抗原性ポリペプチドに対するより早期の、より強力な、またはより持続性の免疫応答を促進し得る。
【0239】
一部の実施形態では、組成物は、1つのアジュバントを含む。一部の実施形態では、組成物は1つより多くのアジュバントを含む。一部の実施形態では、組成物は、アジュバントを含まない。
【0240】
一部の実施形態では、アジュバントはアルミニウムを含む。一部の実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウムである。一部の実施形態では、アジュバントはミョウバン(Alyhydrogel’85 2%;Brenntag-カタログ番号21645-51-2)である。
【0241】
一部の実施形態では、アジュバントは有機アジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは油基剤のアジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは水中油型ナノ乳剤を含む。
【0242】
一部の実施形態では、アジュバントはスクワレンを含む。一部の実施形態では、スクワレンを含むアジュバントは、Ribi(Sigmaアジュバントシステムカタログ番号S6322-1vl)、Addavax(商標)(スクワレン基剤の水中油型ナノ乳剤)、MF59、AS03、またはAF03(米国特許第9703095号を参照されたい)である。一部の実施形態では、スクワレンを含むアジュバントは、ナノ乳剤である。
【0243】
一部の実施形態では、アジュバントは、ポリアクリル酸ポリマー(PAA)を含む。一部の実施形態では、PAAを含むアジュバントはSPA09である(WO2017218819を参照されたい)。
【0244】
一部の実施形態では、アジュバントは非代謝性油を含む。一部の実施形態では、アジュバントは、フロイント不完全アジュバント(IFA)を含む。
【0245】
一部の実施形態では、アジュバントは、非代謝性油および結核死菌(Mycobacterium tuberculosis)を含む。一部の実施形態では、アジュバントはフロイント完全アジュバント(CFA)である。
【0246】
一部の実施形態では、アジュバントは、リポ多糖類である。一部の実施形態では、アジュバントは、モノホスホリルA(MPLまたはMPLA)である。
【0247】
2.対象
一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0248】
一部の実施形態では、対象は成人(年齢18歳より上または18歳に等しい)である。一部の実施形態では、対象は小児または青年(年齢18歳未満)である。一部の実施形態では、対象は高齢者(年齢60歳より上)である。一部の実施形態では、対象は、非高齢成人(年齢18歳より上またはそれに等しく、年齢60歳未満またはそれに等しい)である。
【0249】
一部の実施形態では、組成物の1回より多くの投与を対象に投与する。一部の実施形態では、ブースター投与は免疫応答を改善する。
【0250】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドまたは組成物の1つまたはそれ以上は、霊長類(例えば、サル(例えば、アカゲザルまたはカニクイザルのようなマカク)または類人猿のような非ヒト霊長類)、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)、または家畜哺乳動物(例えば、イヌ、ウサギ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ラクダ、またはロバ)のような哺乳動物において使用するためである。
【0251】
一部の実施形態では、組成物は、意図される投与経路のために適切に製剤化される。適した投与経路の例は、筋肉内、経皮、皮下、鼻腔内、経口、または経皮を含む。
【0252】
一部の実施形態では、組成物の1回より多くの投与を対象に投与する。一部の実施形態では、ブースター投与は免疫応答を改善する。
【0253】
3.医薬組成物
様々な実施形態では、本明細書に記載される抗原性フェリチンポリペプチドおよび/または関連する実体を含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、ボレリアに対して保護的免疫応答のような免疫応答を誘発することが可能な免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。
【0254】
例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は、以下の1つまたはそれ以上を含み得る:(1)(i)表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異、および(ii)抗原性OspAポリペプチドを含む抗原性フェリチンタンパク質;(2)(i)表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異、およびシステインに連結した免疫刺激性部分;ならびに(ii)抗原性OspAポリペプチドを含む抗原性フェリチンタンパク質;(3)(i)表面に露出したシステイン、(ii)フェリチンタンパク質に対してN末端のペプチドリンカー;および(iii)ペプチドリンカーに対してN末端の抗原性OspAポリペプチドを含む抗原性フェリチンタンパク質;(4)(i)表面に露出したアミノ酸をシステインに置き換える変異、およびシステインに連結した免疫刺激性部分、(ii)H.ピロリフェリチンの31位の内部システイン、またはペアワイズもしくは構造アライメントによって同定される、非H.ピロリフェリチンの31位と類似の位置の内部システインを非システインアミノ酸に置き換える変異;(iii)表面に露出したアスパラギンを非アスパラギンアミノ酸に置き換える変異、ならびに(iv)抗原性OspAポリペプチドを含む抗原性フェリチンタンパク質;または(5)前述のフェリチンタンパク質を含むフェリチン粒子。
【0255】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドに関連する抗体または他の作用物質を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドに結合するおよび/またはそれと競合する抗体を含む。あるいは、抗体は、本明細書に記載される抗原性ポリペプチドの非フェリチンポリペプチド構成要素を含むウイルス粒子または細菌を認識し得る。
【0256】
一部の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、単独で、または免疫応答を増強するための1つもしくはそれ以上の作用物質、例えば本明細書に記載されるアジュバントと組み合わせて投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、上記のアジュバントをさらに含む。
【0257】
一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。本明細書で使用される場合、用語「担体」は、それと共に医薬組成物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。例示的な実施形態では、担体は、滅菌液体、例えば水、および石油、動物、植物、または合成起源の油を含む油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等を含み得る。一部の実施形態では、担体は、1つまたはそれ以上の固体構成要素であるか、またはそれらを含む。薬学的に許容される担体はまた、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、およびその組合せを含み得るがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、賦形剤は、例えば所望のコンシステンシーまたは安定化効果を提供するまたはそれに関与するように医薬組成物に含めることができる任意の非治療剤である。適した薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等を含むがこれらに限定されない。様々な実施形態では、医薬組成物は無菌的である。
【0258】
一部の実施形態では、医薬組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有する。一部の実施形態では、医薬組成物は、安定化剤、緩衝剤、または保存剤のよ
うな任意の多様な添加剤を含み得る。加えて、補助剤、安定化剤、濃化剤、潤滑剤、および着色剤を含めることができる。
【0259】
様々な実施形態では、医薬組成物は、任意の所望の投与様式に適合するように製剤化することができる。例えば、医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、滴剤、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル剤、液体を含有するカプセル、ゼラチンカプセル、散剤、徐放性製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル、噴霧剤、懸濁剤、凍結乾燥粉末、凍結懸濁液、乾燥粉末の形態、または使用するために適した他の任意の形態をとることができる。薬剤の製剤化および製造における一般的検討は、例えば参照によって本明細書に組み入れられる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995に見出すことができる。
【0260】
医薬組成物は、任意の投与経路を介して投与することができる。投与経路は、例えば経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、粘膜、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸内、気管内点滴、気管支点滴、吸入、または局所投与経路を含む。投与は局所または全身であり得る。一部の実施形態では、投与は経口で実施される。別の実施形態では、投与は非経口注射による。一部の例では、投与は、本明細書に記載される抗原性フェリチンポリペプチドの血流への放出をもたらす。投与様式は、医師の裁量に委ねることができる。
【0261】
一部の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、および皮下)にとって適している。そのような組成物は、例えば、液剤、懸濁剤、分散剤、乳剤等として製剤化することができる。それらは、使用直前に滅菌注射可能媒体に溶解または懸濁することができる滅菌固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造してもよい。例えば、非経口投与は注射によって達成することができる。そのような実施形態では、注射剤は、通常の形態、すなわち液体溶液または懸濁液、注射前に液体中の溶液または懸濁液にとって適した固体形態、または乳剤として調製される。一部の実施形態では、注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、凍結乾燥粉末、または顆粒から調製される。
【0262】
さらなる実施形態では、医薬組成物は、吸入(例えば、肺および呼吸器への直接送達)による送達のために製剤化される。例えば、組成物は、点鼻用噴霧剤または他の任意の公知のエアロゾル製剤の形態をとり得る。一部の実施形態では、吸入用またはエアロゾル送達のための調製物は、複数の粒子を含む。一部の実施形態では、そのような調製物は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、または約13ミクロンの平均粒子サイズを有し得る。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、乾燥粉末として製剤化される。一部の実施形態では、吸入またはエアロゾル送達のための調製物は、例えば湿潤剤を含めることを通して湿潤粉末として製剤化される。一部の実施形態では、湿潤剤は、水、食塩水、または生理的pHの他の液体からなる群から選択される。
【0263】
一部の実施形態では、本発明に従う医薬組成物は、鼻または口腔への滴剤として投与される。一部の実施形態では、用量は、複数の液滴(例えば、1~100、1~50、1~20、1~10、1~5滴等)を含み得る。
【0264】
本発明の医薬組成物は、所望の転帰を達成するために適切な任意の用量で投与することができる。一部の実施形態では、所望の転帰は、組成物に存在する抗原性フェリチンポリペプチドに存在する非フェリチンポリペプチドの起源のような病原体に対する長期間持続する適応免疫応答の誘導である。一部の実施形態では、所望の転帰は、感染症の1つまたはそれ以上の症状の強度、重症度、頻度の低減、および/または発生の遅延である。一部
の実施形態では、所望の転帰は、感染症の阻害または予防である。必要な用量は、対象の種、年齢、体重、および全身状態、予防または処置される感染の重症度、使用される特定の組成物、およびその投与様式に応じて対象毎に変化する。
【0265】
一部の実施形態では、本発明に従う医薬組成物は、単回または複数回用量で投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、異なる日に投与される複数回用量で投与される(例えば、プライム-ブーストワクチン接種戦略)一部の実施形態では、医薬組成物は、ブースターレジメンの一部として投与される。
【0266】
様々な実施形態では、医薬組成物は、1つまたはそれ以上の追加の治療剤と同時投与される。同時投与は、それらの投与時期が、追加の治療剤および医薬組成物中の活性成分の薬理活性が時間的に重複し、それによって組み合わせた治療効果を発揮する場合には、治療剤を同時に投与する必要はない。一般的に、各々の作用物質は、その作用物質に関して決定された用量および時間スケジュールで投与される。
【0267】
4.核酸/RNA
同様に、本明細書に記載される抗原性OspAポリペプチドをコードする核酸も提供される。一部の実施形態では、核酸はmRNAである。ポリペプチドをもたらす翻訳を受けることが可能な任意の核酸は、本開示の目的に関してmRNAであると考えられる。
【0268】
5.キット
同様に本明細書において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の抗原性ポリペプチド、核酸、抗原性フェリチン粒子、抗原性ルマジンシンターゼ粒子、組成物、または医薬組成物を含むキットも提供される。一部の実施形態では、キットは、溶媒、溶液、緩衝剤、説明書、または乾燥剤の1つまたはそれ以上をさらに含む。
【0269】
本説明および例示的な実施形態は、制限すると解釈すべきではない。本明細書および添付の特許請求の目的に関して、特に示していない限り、量、パーセンテージ、または割合を表記する全ての数値、ならびに本明細書および特許請求の範囲で使用される他の数値は、全ての例において、既にそのように修飾されていない程度に、用語「約」によって修飾されると理解される。「約」は、記載される主題の特性に実質的に影響を及ぼさない変動の程度、例えば10%、5%、2%、または1%以内の変動を示す。したがって、逆を示していない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で記載される数値パラメータは、得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、および特許請求の範囲と均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは、報告された有効数字を検討する、および通常の四捨五入技術を適用することによると少なくとも解釈すべきである。
【0270】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その」、ならびに他の用語の任意の単数形での使用は、1つの指示対象に明白かつ明確に限定されていない限り、複数の指示対象を含むことに注意されたい。本明細書に使用される場合、用語「含む」およびその文法的変形形態は、非制限的であると意図され、リストにおける項目の引用は、列挙される項目に置換または追加することができる他の類似の項目の除外ではない。用語「または」は、包括的な意味で使用され、すなわち本文がそれ以外であることを示していない限り、「および/または」と等価である。
【0271】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【実施例0272】
以下の実施例は開示した特定の実施形態を説明するために提供され、本開示の範囲を限定するものとは決して解釈すべきでない。
【0273】
1.OspA-フェリチン抗原性ポリペプチドの調製
OspAおよびフェリチンを含む抗原性ポリペプチドを産生した。
【0274】
OspAは、下の配列:ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)株B31(血清型1)NBCI配列ID WP_010890378.1、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)株PKO(血清型2)NCBI配列:WP_011703777.1、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)株PBr(血清型3)GenBank:CAA56549.1、ボレリア・ババリエンシス(Borrelia bavariensis)(血清型4)NCBI配列WP_011187157.1、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)(血清型5)GenBank CAA59727.1、ボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)(血清型6)GenBank:CAA45010.1、およびボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)(血清型7)GenBank
CAA56547.1からGenescriptによって合成した。N末端ウシガエルフェリチン配列を挿入したH.ピロリ(H.pylori)フェリチンはGenescriptによって合成した。その中でウシガエルフェリチン配列は以前の研究のものと同様である(Kanekiyo,M.ら、Cell 162(5):1090~100頁(2015)を参照)。大腸菌(E.coli)中でHisタグ付けOspAおよびOspA-フェリチンのナノ粒子を発現させるために、pet21aベクターを用いた。Expi293細胞中で発現させるために、以前用いたものと同様の哺乳動物発現ベクターを用いた(Xu,L.ら、Science 358(6359):85~90頁(2017)を参照)。
【0275】
OspA-フェリチンナノ粒子は、OspAのエクトドメインをフェリチンのアミノ末端に遺伝子的に融合させて抗原性ポリペプチドを産生させることによって創成した(
図1A)。OspAは、ただ1つのカルボキシ末端αヘリックスを有する21個の連続したアンチパラレルβストランドから作られた、延長されたβシート構造を有する31kDaのリポタンパク質である(
図1B)(Kitahara,R.ら、Biophys J 102(4):916~26頁(2012)を参照)。OspAのカルボキシ末端はまた、著しく大きな空洞(約200Å)を有し、これがグリシン-セリン配列を用いるフェリチンへの連結に適合する部位に相当する(
図1B)。フェリチンの24個のサブユニットは自発的に集合して、中空の球状ナノ粒子を形成する(
図1C)。本研究で用いたフェリチンはヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)のフェリチンに融合したウシガエルフェリチンのアミノ末端配列を含み、ヒトフェリチンとの関連が最小のキメラを創成している(Kanekiyo、2015を参照)。アミノ末端ウシガエルフェリチン配列はナノ粒子のコアから半径方向に突出しており(Trikha,J.ら、J Mol Biol 248(5):949~67頁(1995)を参照)、ナノ粒子の表面上におけるOspAの均一な提示を容易にしている。
【0276】
フェリチンの機能性を改善するために、フェリチンの構造に3つの追加的な変更、すなわちN19Q、C31S、およびS111Cを行った。N19Qの置換によってアミノ末端のグリコシル化の可能性のある部位を除去した。S111Cの置換によって、フェリチンの表面に露出したシステインが導入され、これは例えばクリックケミストリーによってアジュバントをコンジュゲートするために用いることができる。最後に、コンジュゲーションによってただ1つのシステインが修飾されるように、システイン31をセリンに改変した。ナノ粒子の表面上のOspAの呈示は、24量体の抗原性ナノ粒子を提供する(図
1D)。
【0277】
大腸菌からの精製のため、BL21 Star(DE3)(Invitrogen社、Cat#C601003)を用いた。100μMのIPTGと終夜、16℃でタンパク質を誘起した。Tris緩衝液、pH8、50mM NaCl中での超音波処理を用いて、細胞ペレットを溶解した。濾過滅菌した上清をアニオン交換カラム(HiTrap Q HP、GE社)でフロースルーからOspA-フェリチンを採取することによって精製した。次いで1%Triton X114抽出を6回繰り返すことによって、エンドトキシンを除去した。次いでAmicon 100MWカットオフフィルター(Millipore社、Cat#UFC910096)を用いて水相を濃縮し、次いでSuperose6調製用SECカラム 120mlにて4℃でナノ粒子をさらに精製した。哺乳動物細胞の培養からの精製については、FectoPROトランスフェクション試薬(Polyplus社、Cat#116-100)を用い、メーカーの指示書に従ってExpi293細胞にプラスミドDNAをトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を5日目に培養し、上清を採取して濾過した。エンドトキシンフリーの試薬およびガラス器具を用い、エンドトキシンフリーのプロトコルに従った。50mMのTris、pH7、50mMのNaClを用いてQセファロースファストフロービーズ(GE社、Cat#17-0510-01)を調製し、濾過滅菌した上清に重力流で添加した。フロースルーを採取し、Amicon 100MWカットオフフィルターを用いて4mlに濃縮した。次いでSuperose6調製用SECカラム 120mlにて室温でナノ粒子をさらに精製した。
【0278】
His6タグ付けした(配列番号227)OspAの精製のため、血清型1、4、5、
および7のOspAを大腸菌BL21(DE3)(Invitrogen社、Cat#C600003)から精製し、血清型2および3をExpi293細胞から精製した。これらの構築物は膜貫通ドメインを欠き、C末端His6タグ(配列番号227)を含み、そ
れ以外は野生型であった。大腸菌の精製については、500μMのIPTGで5時間、タンパク質を誘起し、細胞をペレット化して-20℃で凍結した。Complete Protease Inhibitor(Sigma-Aldrich社、Cat#11697498001)を含むTBS緩衝液中1% Tritonにペレットを再懸濁し、超音波処理によって細胞を溶解した。上清を濾過滅菌した。哺乳動物細胞の培養については、トランスフェクションの5日後に上清を採取し、濾過滅菌した。上清を、AKTA Pure FPLCに取り付けたGE社のHiTrap HP 5mlカラム(Cat#17-5248-02)に流した。TBS中20mMのイミダゾールでカラムを洗浄し、負荷し、再び洗浄した。TBS中250mMのイミダゾールで最終のタンパク質を溶出させた。
【0279】
OspA血清型1は、トランスフォームされたヒト腎上皮細胞株Expi293中のフェリチンに融合したB.ブルグドルフェリ株B31から発現した(
図2A~
図2D、配列番号52)。ナノ粒子の形成およびタンパク質の純度は、サイズ排除カラムクロマトグラフィー(SEC)およびSDS-PAGE(それぞれ
図2Aおよび
図2B)によって確認した。SEC解析により、予想された保持時間における単一で対称的なピークが明らかになった(
図2A)。
【0280】
動的光散乱(DLS)解析も実施した。精製したナノ粒子を、透明な底を有する黒色の384ウェルのプレート(Corning社、Cat#3540)に濃度約0.4μg/mlで負荷した。サンプルを制御温度25℃で、DynaProプレートリーダーII(Wyatt社)で読み取った。DLSにより、純粋で凝集物のない、低い多分散性(7.4%)の粒径13nmが記録された(
図2C)。脂質化部位を含むOspAの膜貫通ドメイン(アミノ酸1~25)を除去することにより、精製の容易さが改善された。OspAの配列はアミノ連結グリコシル化の可能性のある4つの部位を含んでおり、哺乳動物細胞
から精製されたOspA-フェリチンはグリカンの付加に符合する高い分子量で泳動した(
図2B)。
【0281】
OspA-フェリチンナノ粒子について透過型電子顕微鏡陰性染色イメージングおよび2Dクラス平均解析を実施した(
図2D)。OspA-フェリチンナノ粒子のサンプルを1×TBSで300倍に希釈し、400メッシュの銅グリッド上のニトロセルロースによって支持された連続炭素層の上でイメージングした。グリッドは、清浄したグリッドの上にサンプル懸濁液3μlを塗布し、濾紙で吸い取り、直ちにギ酸ウラニルで染色することによって調製した。電子顕微鏡観察は、FEI Eagle 4k×4K CCDカメラを取り付けたFEI Tecnai T12電子顕微鏡を用いて実施した。高拡大画像は67,000倍(0.16mm/ピクセル)で取得した。画像は-1.9μm~-0.8μmの公称アンダーフォーカスおよび約30e
-/Å
2の電子量で取得した。自動摘取プロトコル(Lander,G.C.ら、J Struct Biol,166(1):95~102頁(2009)を参照)を用いて、67,000倍高拡大画像中の個別の粒子を選択した。XMIPP処理パッケージに基づく参照なし整列戦略を用いた(Sorzano,C.O.ら、J Struct Biol 148(2):194~204頁(2004)を参照)。このパッケージにおけるアルゴリズムは選択した粒子を整列させ、これらを自己相似群またはクラスに分類する。
【0282】
フェリチンナノ粒子は、中央部に中空の中心を有する円形の高密度として現れた(
図2D)。それぞれのナノ粒子は、やや楕円形状に見えるOspAの多くの短く均一なスパイクに取り囲まれていた。粒子は約194~220Åの範囲の全体の直径を有し、フェリチンコアの直径は125Åであった。スパイクは粒子の表面から長さ45Åまでで、均一な大きさ、形状、および配向をもって延在していた。OspAスパイクの幅は約30Åで、フェリチンのグリシン-セリンリンカーにおいて最小の密度に細くなっていた。
【0283】
LYMErix(商標)ワクチンが2002年に中止された際に、このワクチンがヒト白血球機能関連抗原-1(hLFA-1、Gross,D.M.ら、Science 281(5377):703~6頁(1998)参照)のノナペプチドセグメント(配列番号78)にホモロジーを有するエピトープ(配列番号83のアミノ酸165~173)を含んでいるという懸念が生じていた(
図5A)。配列番号83のアミノ酸165~173をhLFA-1ホモロジー部位と称する。OspA血清型1は、この配列ホモロジーを含む唯一の血清型である(
図5B)。この配列に関する潜在的な懸念があればこれを避けるため、hLFA-1ホモロジー部位を、対応するOspA血清型2(配列番号79)または血清型3(配列番号80)のノナペプチド配列に交換し、あるいはhLFA-1に対する類似性を低減させる点置換を導入し、hLFA-1に結合する抗体の産生を防止することを意図した(RD2、配列番号81)(
図5C)。点置換については、βシート構造の不安定化を避けまたは最小化しつつ、hLFA-1への類似性を低減させるために表面に露出したアミノ酸を置換した。
【0284】
hLFA-1へのホモロジー部位を改変したhLFA-1ナノ粒子の免疫原性をマウスで試験し、そのような改変を行っていないOspA-フェリチンナノ粒子に対して免疫応答を比較した(
図5D)。hLFA-1ホモロジー部位を改変したナノ粒子によって誘発された抗体力価は強力であり、改変していないhLFA-1ホモロジー部位を有するナノ粒子との間に有意な差はなかった。
【0285】
2.OspA-フェリチンナノ粒子の免疫原性の特徴解析
OspA-フェリチンナノ粒子の免疫原性を評価するため、Ribiアジュバントの存在下の血清型1OspA-フェリチンナノ粒子、または血清型1で脂質化された完全長の組換えOspAを含むイヌワクチンであるRECOMBITEK(登録商標)Lyme(
B.ブルグドルフェリの精製された外表面プロテインA(OspA)の脂質懸濁液)で2回、C3Hマウスを免疫した(
図4)。C3H/HeNマウスは、0週および4週で筋肉内ワクチン接種した。2回目の投与の2週後から血清についてELISAを行った。Ribi(Sigma社アジュバントシステムCat#S6322-1vl)をPBS1ml中に再懸濁して1分ボルテックスし、免疫に先立って等体積で抗原に添加した。
【0286】
抗体応答は、組換えOspAに対する酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて決定した。簡単には、PBSで希釈した1μg/mlのOspA-Hisで96ウェルプレートをコートし、4℃で終夜インキュベートした。OspA-Hisを除去し、PBSTに溶解した5%のスキムミルクでプレートをブロックした。ブロッキング試薬を除去した後、一次血清サンプルをPBSTで連続的に希釈して加えた。最終的に50%のブロッキング溶液濃度になるよう、一次サンプルをブロッキング溶液に等体積で加えた。1時間インキュベートした後、PBSTでプレートを洗浄し、HRP連結ヤギ抗マウスIgG二次抗体(ブロッキング溶液中5,000倍希釈)と室温で1時間インキュベートした。二次抗体を吸引除去し、洗浄して、プレートをSure Blue TMBペルオキシダーゼ基質(KPL社、Gaithersburg,MD)とインキュベートし、続いて等体積の停止溶液(0.5N硫酸)を加えた。450nmで吸光度を測定した。
【0287】
OspA-フェリチンによる免疫は6週でRECOMBITEK(登録商標)Lymeより4.4倍高いエンドポイント力価を誘起した(p<0.001)。25週における抗体力価も、RECOMBITEK(登録商標)Lymeより有意に高かった(p<0.005)(
図4)。
【0288】
3.グリコシル化変異体;有効性の評価
このOspA-フェリチンの保護有効性を評価するため、B.ブルグドルフェリを持つダニを免疫マウスまたは対照マウスに感染させるチャレンジモデルを用いた(Rosa,P.A.ら、Nat Rev Microbiol 3(2):129~43頁(2005)参照)。
【0289】
C3H/HeNマウスに筋肉内で、AddaVax(商標)と1:1で混合したOspA-フェリチンナノ粒子1μg、またはフェリチンナノ粒子1μgをワクチン接種した。マウスは0週および4週でワクチン接種した。マウスを免疫するために、hLFA-1ホモロジー部位に対する合理的に設計した改変および全ての潜在的なN-グリコシル部位を除去する改変を加えた血清型1OspA-フェリチンナノ粒子(配列番号53)を用いた。それは、天然に細菌で発現されたOspAはこれらの部位でグリコシル化されないからである。グリコシル化を防止するため、配列は下記:N71Q、N190Q、N202Q、およびN251QのN>Q置換を含んでいた。その免疫原性はグリコシル化ナノ粒子と同様であった(
図13)。
【0290】
グリコシル化部位セリン/トレオニンがアラニンに変異した場合(配列番号63)、OspA-フェリチンのグリコシル化変異体も試験した。この構築物および上で論じたN>Q構築物のいずれも、野生型のグリコシル化部位を有するOspA-フェリチン(配列番号52)と比較して強い免疫応答を生じ、RECOMBITEK(登録商標)Lyme対照より優れていた(
図14)。
【0291】
ダニチャレンジモデルにおいてOspA-フェリチンナノ粒子の保護有効性を評価するさらなる実験では、National Tick Research and Education Center,Oklahoma State University(Stillwater,OK)からイクソデス・スカプラリス(Ixodes scapularis)ダニ幼虫(larvae)を入手した。B.ブルグドルフェリに感染した幼虫(ニ
ンフ、nymphs)は、未感染の幼虫にB.ブルグドルフェリ株N40に感染させたSCIDマウスを飽食するまで吸血させることによって産生した。充血した幼虫を採取し、室温および高相対湿度で4~6週、脱皮させてニンフとした。吸血した幼虫におけるB.ブルグドルフェリ感染率は、各バッチから回収したダニの一部を培養することによって決定した。
【0292】
OspA-フェリチン(配列番号53)およびAddaVax(商標)アジュバント、または対照のフェリチンの1μg用量で0週と4週の2回、マウスを免疫し、並行して比較群をRECOMBITEK(登録商標)Lymeで免疫した。6週目(すなわち2回目のワクチン投与の2週後)に5~6匹のB.ブルグドルフェリ感染ダニニンフを飽食するまで吸血させることによってマウスをチャレンジした。吸血したニンフを採取し、BSK培地中で培養することによってB.ブルグドルフェリ感染をアッセイした。チャレンジの2週後にマウスを屠殺し、耳、足首、および心臓の培養によってB.ブルグドルフェリ感染をアッセイした。B.ブルグドルフェリの存在は、暗視野顕微鏡によって培養液を観察することによって決定した。暗視野顕微鏡によって1つまたはそれ以上の臓器培養が陽性となった場合に、マウスはB.ブルグドルフェリに感染していると定義した。陰性培養もB.ブルグドルフェリに特異的なPCRによって試験した。
【0293】
2週後にマウスを屠殺した。心臓、足首、および耳からの組織サンプルをBSK培地中、B.ブルグドルフェリに対する抗生剤の存在下に6週培養した。陰性サンプルはPCRによってB.ブルグドルフェリの存在について試験した。また、陰性培養液は全てPCR陰性であった。保護は感染しなかったマウスの百分率として計算した。
【0294】
OspA-フェリチンおよびAddaVax(商標)アジュバントを含む組成物は感染を示さず(0/4)、5匹中4匹の動物が感染した陰性対照フェリチンと対照的であった(表2、p<0.01)。
【0295】
【0296】
4.免疫刺激性部分にコンジュゲートしたOspA-フェリチンの有効性の評価
クリックケミストリーによってTLRアゴニスト(
図6A)またはCpG(配列番号210;ISS-1018、
図7A)等の免疫刺激性部分の直接コンジュゲーションを可能にする、フェリチンナノ粒子の表面上のシステインの操作(S11C)によって、自己アジュバント性構築物を産生した。直接コンジュゲーションの手順は下記の通りであった。哺乳動物から生成された材料を50mMのTris、pH8.5中の10mMのTCEP(Amresco社、K831-10G)で1時間還元してシステイン化を解除した。次いでタンパク質を100mMのTris、pH8、50mMのNaCl中に透析してTC
EPを除去した。大腸菌から生成した材料は還元する必要はない。DBCO-PEG4-マレイミドリンカー(Sigma-Aldrich社cat#760676、5mg)をDMSO中で5mg/mlに再懸濁した。リンカー2.5mgを体積10mlでタンパク質3mgに加えた(最終DMSO濃度は5%であった)。リンカーを還元タンパク質と室温で30分インキュベートした。Ambicon社の100MWカットオフフィルター濃縮器を用いて緩衝液交換により過剰なリンカーを除去した(Millipore社Cat#UFC910096)。アジド-PEG4-3M-012(社内で合成)およびアジド-CPG(ISS-1018、IDT社によりカスタム合成)を最終のクリックケミストリーステップに用いた。最終のコンジュゲーションステップとしてアジュバント0.5mgをタンパク質0.5mgに加え、37℃で6時間、次いで4℃で終夜インキュベートした。Ambicon社の100MWカットオフフィルター濃縮器を用いて緩衝液交換により過剰なアジュバントを除去した。コンジュゲーションの効率は、3M-012についてはマススペクトロメトリーで、CPGについてはSDS-PAGE解析で確認した。
【0297】
HIVのGagタンパク質に直接コンジュゲートした場合に抗体応答を増大させることが以前に示されたTLR7/8アゴニスト3M-012(Wille-Reece,U.ら、Proc Natl Acad Sci USA 102(42);15190~4頁(2005)参照)を用いた。2ステップクリックケミストリーアプローチを用いて3M-012を配列番号53のナノ粒子に結合させた。最初にDBCO-PEG4-マレイミドリンカーをシステインに連結し、次いで修飾した3M-012をPEG4-アジドリンカーとともに銅を含まないアジド-アルキン環化付加によって付加した(
図6A)。マススペクトロメトリーによって99%超のコンジュゲーション効率が確認され、マスシフトは587ダルトンであった(
図12)。アジド-3M-012に加えて、アジド-CPGの付加にも成功した(
図7A)。これについては、ゲルシフトによってコンジュゲーションが確認できた(
図7B)。
【0298】
フェリチンのほぼ完全なコンジュゲーションが観察され、大部分のナノ粒子が24分子のアゴニストを持っていることが示唆された。次いでコンジュゲートしたOspA-フェリチンナノ粒子の免疫原性をマウスで評価した。C3H/HeNマウスを0週と4週に筋肉内でワクチン接種した。2回目の投与の2週後から血清についてELISAを行った。免疫に先立ってアラム(Alyhydrogel’85 2%、Brenntag社、Cat#21645-51-2)を等体積で抗原に添加した。Ribi(Sigma社アジュバントシステムCat#S6322-1vl)をPBS 1ml中に再懸濁して1分ボルテックスし、免疫に先立って等体積で抗原に添加した。
【0299】
3M-012をコンジュゲートした粒子で免疫したマウスは、コンジュゲートしていない材料より4.5倍高いOspA抗体応答を生成した(
図6B、p<0.05)。3M-012をコンジュゲートした粒子によって誘発された抗体応答は、等モル量の3M-012(29ng)と混合した粒子よりも大きく、1000倍高い用量(20μg)の3M-012または標準のアラム(Alyhydrogel’85、2%、Brenntag社-Cat#21645-51-2)アジュバントと混合した粒子と同程度であった。
【0300】
同様の抗体生成の増強がCPGをコンジュゲートしたOspA-フェリチンナノ粒子(配列番号53)で観察され、コンジュゲートしていない粒子と比較して免疫応答が6.3倍増大し、ナノ粒子と混合した等量のコンジュゲートしていないCPGに対して4.7倍増大した(
図7C)。
【0301】
したがって、OspA-フェリチンナノ粒子にコンジュゲートしたアジュバントの標的送達により、効果的かつ特異的な抗体応答を刺激しつつ、アジュバントの量を実質的に低減させることが可能になる。
【0302】
5.様々な血清型を含むOspA-フェリチンナノ粒子の免疫原性の評価
血清型1OspA株B.ブルグドルフェリは米国で疾患を引き起こす一方、B.アフゼリ(血清型2)、B.ガリニ(血清型3、5、6、7)、およびB.ババリエンシス(血清型4)は欧州、アジア、およびその他の地域で疾患を引き起こす。幅広く交差保護する組成物を産生するため、血清型1、2、3、4、5、および7(配列番号1、5、6、7、8、および10)についてOspA-フェリチンナノ粒子を設計した。これらの粒子を発現させ、大腸菌からアニオン交換およびサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した(
図3A)。全てのOspA-フェリチン抗原性ポリペプチドは予想された分子量である47kDaを有し、DLS解析および透過型電子顕微鏡によっても6種のOspAナノ粒子全ての形成が確認された(
図3B)。
【0303】
血清型1~5および7のOspA-フェリチンのそれぞれを等モルの割合で組み合わせることによって、6成分の組成物を産生した。
【0304】
アラムを添加したこの6成分の組成物(すなわち六価)の免疫原性を、同じアジュバントを添加した単一血清型の粒子(すなわち一価)とマウスで比較した(
図8A~
図8F)。各血清型について一価の組成物は1μg用量で、六価の組成物は1μgで投与した(総量6μg用量)。免疫に先立ってアラム(Alyhydrogel’85、2%、Brenntag社-Cat#21645-51-2)を等体積で抗原に添加した。6成分の組成物はOspA血清型1~5および7の6種全てに対して強力な抗体応答を誘起した。さらに、単一血清型の対照に対する応答は混合物と同様であり、6種の血清型の組合せの中で干渉がないことが示された。血清型4に対し、六価の組成物において単一成分の組成物と比較して改善された免疫応答が見られた(
図8D、血清型4を参照)。
【0305】
六価の組成物が免疫原性であること、およびいくつかの例では一価の組成物より優れていることが確立されたので、6種のOspA-フェリチンナノ粒子のそれぞれと3M-012およびCpGとのコンジュゲートを調製した。3M-012にコンジュゲートした6種のOspA-フェリチンナノ粒子を組み合わせ、別にCpGにコンジュゲートした6種のOspA-フェリチンナノ粒子を組み合わせることによって、2種の6成分をコンジュゲートした組成物を創成した。CpGコンジュゲートした六価の組成物および3M-012コンジュゲートした六価の組成物は、世界的に見出されるOspAの7種の血清型全てについて、コンジュゲートしていない六価の組成物と比較して抗体応答の顕著な増大をマウスで示し(
図9A~
図9G)、OspA血清型6ポリペプチドが組成物中に存在していないにも関わらず、六価の処方も血清型6に対する保護を付与していることが示された。
【0306】
非ヒト霊長類(NHP、アカゲザル)で試験すると、AF03アジュバントを添加した六価のナノ粒子組成物(非コンジュゲート)は、RECOMBITEK(登録商標)Lyme対照より性能が優れており、循環するボレリア血清型7種全てに対して11倍~200倍高いAb力価を示した(
図10A~
図10G)。マウスと同様に、六価の組成物はアジュバントの存在下で高い力価の抗体応答を誘発した。3M-012およびCpGとコンジュゲートした組成物はNHPにおいてRECOMBITEK(登録商標)Lyme対照と同様の応答を誘起した(
図10A~
図10Gをそれぞれ
図10H~
図10Nと比較)。NHPにおける六価のワクチンの抗体力価はブースト投与の19週後も強力であり、RECOMBITEK(登録商標)Lyme対照に対する優位性を保持していた(
図25)。
【0307】
コンジュゲートした組成物をダニチャレンジモデルでも試験した。マウスを0週および4週に1μgの用量の抗原でワクチン接種した。一価の組成物は3M-012にコンジュゲートしたOspA-フェリチン血清型1 1μgを含んでいた。六価の組成物はそれぞれ3M-012にコンジュゲートした血清型1、2、3、4、5、および7のOspA
1μgを含んでいた。2回目の免疫の2週後にボレリア・ブルグドルフェリN40株(血清型1)に感染させた5~6匹のダニを5日間、マウスにチャレンジし、2週後に屠殺した。心臓、足首、および耳からの組織サンプルを、B.ブルグドルフェリに対する抗生剤を添加したBSK培地中で6週培養した。陰性サンプルをPCRによりB.ブルグドルフェリの存在について試験した。陽性サンプルは培養またはPCRのいずれかについて陽性であった(
図11)。
【0308】
さらに、7種の血清型全てを含む七価のワクチンをマウスで試験した。アラムもしくはAF03をアジュバントとして添加したOspA血清型1~7に対応するOspA-フェリチンナノ粒子それぞれ1μg(総量7μg)の七価OspA-フェリチンナノ粒子組成物、またはRECOMBITEK(登録商標)Lyme(1μg用量)で、マウスを0週および4週に筋肉内で免疫した。免疫の2週後にELISAによって測定したエンドポイント力価で抗体応答を解析した。RECOMBITEK(登録商標)と比較して強力な免疫応答が実証された(
図24A~
図24G)。
【0309】
このように、OspA-フェリチンナノ粒子は、7種の主要な血清型に対して高い力価の抗体応答を誘発した。さらに、7成分のライムワクチン候補は、ライム病の世界的な蔓延を制御する可能性を提示している。
【0310】
6.様々な可撓性のリンカーを有するOspA-フェリチン構築物の特徴解析
OspAとフェリチンとの間に可撓性を提供するためにいくつかの異なったリンカーを試験した。構築物は1個から5個の-GGGS-(配列番号226)配列の範囲であった。種々のリンカー構築物を精製し、均一な大きさのナノ粒子を形成した。
【0311】
GS1(GGGS)(配列番号226)、GS2(配列番号91)、またはGS5(配列番号92)のリンカーを含むOspA-リンカー-フェリチン構築物は全て発現することができ(
図15A)、矛盾のないDLS(
図15B、
図15C、および
図15E)およびEM(
図15D)のプロファイルを示した。
【0312】
さらに、様々な-GGGS-(配列番号226)-リンカー構築物(リンカー1×GGGS(配列番号226)[配列番号60]、リンカー2×GGGS(配列番号91)[配列番号61]、およびリンカー5×GGGS(配列番号92)[配列番号62])は全てC3Hマウスにおいて強い免疫応答を示した(
図16)。
【0313】
7.ルマジンシンターゼOspAナノ粒子の特徴解析
もう1つのナノ粒子であるアクイフェックス・エオリクス(Aquifex aeolicus)由来のルマジンシンターゼについて、OspAの抗原呈示を検討した。様々な血清型を含むOspA-ルマジンシンターゼ粒子は、大腸菌細胞からアニオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって容易に精製された。OspA血清型1(配列番号12、
図19A~
図19C)、OspA血清型2(配列番号16、
図20A~
図20C)、OspA血清型3(配列番号17、
図21A~
図21B)、OspA血清型4(配列番号18、
図17A~
図17C)、OspA血清型5(配列番号19、
図22A~
図22C)、およびOspA血清型7(配列番号21、
図23A~
図23C)からなる構築物を産生し特徴解析した。OspA-ルマジンシンターゼ粒子はEMで15.8nmの粒子を形成しており、DLSで大きさは均一であった。
【0314】
OspA血清型4ルマジンシンターゼ粒子(配列番号18)をマウスで免疫原性について試験した(
図18)。アラムを添加しまたは添加していないOspAルマジンシンターゼ粒子は、同様のOspA血清型4フェリチンナノ粒子(配列番号7)の免疫応答と少なくとも同じく強力と思われる強い免疫応答を生じた。
【0315】
したがって、ルマジンシンターゼおよびOspAポリペプチドを含む抗原性ポリペプチドも、抗OspA抗体応答を誘発させるために用いることができる。
ボレリア(Borrelia)のOspA血清型1ポリペプチドを含む抗原性OspAポリペプチドであって、配列番号77の配列を含まない前記抗原性OspAポリペプチド。