(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038377
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】分布型増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 3/60 20060101AFI20240312BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20240312BHJP
H03F 1/42 20060101ALI20240312BHJP
H03F 1/22 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H03F3/60
H03F3/68
H03F1/42
H03F1/22
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003861
(22)【出願日】2024-01-15
(62)【分割の表示】P 2022532211の分割
【原出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】徐 照男
(72)【発明者】
【氏名】長谷 宗彦
(72)【発明者】
【氏名】野坂 秀之
(57)【要約】
【課題】帯域を劣化させることなく、利得を向上させる。
【解決手段】N個(Nは2以上の整数)の増幅器ブロック100c~300cのうち、(n+1)段目(nは1~N-1の整数)の増幅器ブロックのバイアス電圧をVb_(n+1)、各増幅器ブロックのユニットセル3-1~3-3の数をNopt、各増幅器ブロックのユニットセル3-1~3-3の入力端子と出力端子間を流れる電流をIoptとしたとき、n段目の増幅器ブロックの伝送線路CPW20c-1,CPW20c-2の特性インピーダンスとn段目の増幅器ブロックの終端抵抗Ro1,Ro2と(n+1)段目の増幅器ブロックの伝送線路CPW10c-2,CPW10c-3の特性インピーダンスと(n+1)段目の増幅器ブロックの終端抵抗Ri2,Ri3とが、-Vb_(n+1)/(Iopt×Nopt)となるように設定される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは2以上の整数)の増幅器ブロックを備え、
各増幅器ブロックは、
入力端に信号が入力されるように構成された第1の伝送線路と、
出力端から信号を出力するように構成された第2の伝送線路と、
一端が前記第1の伝送線路の終端に接続された第1の終端抵抗と、
一端が前記第2の伝送線路の入力端に接続された第2の終端抵抗と、
前記第1、第2の伝送線路に沿って配置され、入力端子が前記第1の伝送線路に接続され、出力端子が前記第2の伝送線路に接続された複数のユニットセルとを備え、
各増幅器ブロックは、前記第2の伝送線路の終端が後段の増幅器ブロックの前記第1の伝送線路の入力端と接続されるように縦続接続され、
各増幅器ブロックの前記第1の終端抵抗の他端が第1のバイアス電圧に接続され、各増幅器ブロックの前記第2の終端抵抗の他端がグラウンドに接続され、
初段の増幅器ブロックの前記第1の伝送線路と初段の増幅器ブロックの前記第1の終端抵抗と終段の増幅器ブロックの前記第2の伝送線路の特性インピーダンスと終段の増幅器ブロックの前記第2の終端抵抗の値が50Ωであり、
(n+1)段目(nは1~N-1の整数)の増幅器ブロックの前記第1のバイアス電圧をVb_(n+1)、各増幅器ブロックの前記ユニットセルの数をNopt、各増幅器ブロックの前記ユニットセルの入力端子と出力端子間を流れる電流をIoptとしたとき、n段目の増幅器ブロックの前記第2の伝送線路の特性インピーダンスとn段目の増幅器ブロックの前記第2の終端抵抗と(n+1)段目の増幅器ブロックの前記第1の伝送線路の特性インピーダンスと(n+1)段目の増幅器ブロックの前記第1の終端抵抗とが、-Vb_(n+1)/(Iopt×Nopt)となるように設定されることを特徴とする分布型増幅器。
【請求項2】
請求項1記載の分布型増幅器において、
各ユニットセルは、
ベース端子が前記第1の伝送線路に接続され、エミッタ端子が第2の電源電圧に接続された第1のトランジスタと、
ベース端子が第2のバイアス電圧に接続され、コレクタ端子が前記第2の伝送線路に接続され、エミッタ端子が前記第1のトランジスタのコレクタ端子に接続された第2のトランジスタとから構成されることを特徴とする分布型増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分布型回路に係り、特に分布型増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
広帯域な増幅器は、高速通信や高分解能レーダー等の様々なシステムで望まれている。増幅器を広帯域化する技術として分布型増幅器が従来提案されている(特許文献1参照)。
図13は従来の分布型増幅器の構成を示す回路図である。分布型増幅器は、入力端が信号入力端子1に接続された入力用の伝送線路CPW10と、終端が信号出力端子2に接続された出力用の伝送線路CPW20と、一端が伝送線路CPW10の終端に接続され、他端がバイアス電圧Vb_1に接続された入力終端抵抗Ri1と、伝送線路CPW20の入力端とグラウンドとを接続する出力終端抵抗Ro2と、伝送線路CPW10,CPW20に沿って配置され、入力端子aが伝送線路CPW10に接続され、出力端子bが伝送線路CPW20に接続された複数のユニットセル3とから構成される。
【0003】
伝送線路CPW10は、複数の伝送線路CPW1i,CPW1,CPW1oを直列に接続した構成からなる。同様に、伝送線路CPW20は、複数の伝送線路CPW2i,CPW2,CPW2oを直列に接続した構成からなる。
【0004】
図14に示すように、各ユニットセル3は、それぞれベース端子が伝送線路CPW10に接続され、エミッタ端子が電源電圧VEEに接続された入力トランジスタQ30と、ベース端子がバイアス電圧Vcas1に接続され、コレクタ端子が伝送線路CPW20に接続され、エミッタ端子が入力トランジスタQ30のコレクタ端子に接続された出力トランジスタQ31とから構成される。
【0005】
分布型増幅器では、トランジスタQ30,Q31の寄生容量を入出力の伝送線路CPW10,CPW20に組み込み、インピーダンス整合をとる。さらに、入出力の伝送線路CPW10,CPW20の伝搬定数を合わせることで、広帯域な信号増幅を可能にする。
分布型増幅器の利得を向上させるために一般的には、
図15のように段数(ユニットセル3の並列数)を増加させる方法が採用される。
【0006】
しかしながら、従来の分布型増幅器では、段数増加に伴って帯域が劣化するという課題があった。
図16は6段と12段の分布型増幅器のSパラメータS21のシミュレーション結果を示す図である。
図16のS21_6は6段の分布型増幅器のSパラメータS21、S21_12は12段の分布型増幅器のSパラメータS21である。
【0007】
図16によれば、6段から12段にすることでDC(直流)利得は向上したが、帯域が大きく劣化していることが確認できる。この帯域劣化は、入出力伝送線路での信号減衰に起因する。一般的に帯域と最適段数Nopt(すなわち最大利得)の関係は、特許文献2によって明らかになっている。そのため、従来の分布型増幅器では、帯域を劣化させることなく、利得を向上させることは困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Klas Eriksson,Izzat Darwazeh,and Herbert Zirath,“InP DHBT distributed amplifiers with up to 235-GHz bandwidth”,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,VOL.63,NO. 4,PP.1334-1341,2015
【非特許文献2】James B.Beyer,et al.,“MESFET distributed amplifier design guidelines”,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,VOL.32,NO.3,PP.268-275,1984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、帯域を劣化させることなく、利得を向上させることができる分布型増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の分布型増幅器は、N個(Nは2以上の整数)の増幅器ブロックを備え、各増幅器ブロックは、入力端に信号が入力されるように構成された第1の伝送線路と、出力端から信号を出力するように構成された第2の伝送線路と、一端が前記第1の伝送線路の終端に接続された第1の終端抵抗と、一端が前記第2の伝送線路の入力端に接続された第2の終端抵抗と、前記第1、第2の伝送線路に沿って配置され、入力端子が前記第1の伝送線路に接続され、出力端子が前記第2の伝送線路に接続された複数のユニットセルとを備え、各増幅器ブロックは、前記第2の伝送線路の終端が後段の増幅器ブロックの前記第1の伝送線路の入力端と接続されるように縦続接続され、各増幅器ブロックの前記第1の終端抵抗の他端が第1のバイアス電圧に接続され、各増幅器ブロックの前記第2の終端抵抗の他端がグラウンドに接続され、初段の増幅器ブロックの前記第1の伝送線路と初段の増幅器ブロックの前記第1の終端抵抗と終段の増幅器ブロックの前記第2の伝送線路の特性インピーダンスと終段の増幅器ブロックの前記第2の終端抵抗の値が50Ωであり、(n+1)段目(nは1~N-1の整数)の増幅器ブロックの前記第1のバイアス電圧をVb_(n+1)、各増幅器ブロックの前記ユニットセルの数をNopt、各増幅器ブロックの前記ユニットセルの入力端子と出力端子間を流れる電流をIoptとしたとき、n段目の増幅器ブロックの前記第2の伝送線路の特性インピーダンスとn段目の増幅器ブロックの前記第2の終端抵抗と(n+1)段目の増幅器ブロックの前記第1の伝送線路の特性インピーダンスと(n+1)段目の増幅器ブロックの前記第1の終端抵抗とが、-Vb_(n+1)/(Iopt×Nopt)となるように設定されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各増幅器ブロックの第1の終端抵抗の他端を第1のバイアス電圧に接続し、各増幅器ブロックの第2の終端抵抗の他端をグラウンドに接続し、初段の増幅器ブロックの第1の伝送線路と初段の増幅器ブロックの第1の終端抵抗と終段の増幅器ブロックの第2の伝送線路の特性インピーダンスと終段の増幅器ブロックの第2の終端抵抗の値を50Ωとし、n段目の増幅器ブロックの第2の伝送線路の特性インピーダンスとn段目の増幅器ブロックの第2の終端抵抗と(n+1)段目の増幅器ブロックの第1の伝送線路の特性インピーダンスと(n+1)段目の増幅器ブロックの第1の終端抵抗とを-Vb_(n+1)/(Iopt×Nopt)となるように設定することにより、帯域を劣化させることなく、利得を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係る分布型増幅器の構成を示す回路図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施例に係る分布型増幅器の構成を示す回路図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施例に係る分布型増幅器のユニットセルの構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施例に係る分布型増幅器のユニットセルの構成を示す回路図である。
【
図5】
図5は、従来の分布型増幅器および本発明の第2の実施例に係る分布型増幅器のSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施例に係る分布型増幅器の別の構成を示す回路図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施例に係る分布型増幅器のユニットセルの構成を示す回路図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施例に係る分布型増幅器の構成を示す回路図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4の実施例に係る分布型増幅器の構成を示す回路図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4の実施例に係る分布型増幅器のユニットセルの構成を示す回路図である。
【
図11】
図11は、本発明の第4の実施例に係る分布型増幅器の別の構成を示す回路図である。
【
図12】
図12は、本発明の第4の実施例に係る分布型増幅器のユニットセルの構成を示す回路図である。
【
図13】
図13は、従来の分布型増幅器の構成を示す回路図である。
【
図14】
図14は、従来の分布型増幅器のユニットセルの構成を示す回路図である。
【
図15】
図15は、利得増加のために段数を増加させた分布型増幅器の構成を示す回路図である。
【
図16】
図16は、従来の分布型増幅器のSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施例に係る分布型増幅器の構成を示す回路図である。本実施例の分布型増幅器は、最適段数Noptの増幅器ブロック100と最適段数Noptの増幅器ブロック200とを縦続接続したものである。ここで、最適段数Noptとは、増幅器ブロックの所望の周波数応答が得られる段数(ユニットセルの並列数)のことを言う。
図1の例では、Nopt=6である。
【0014】
増幅器ブロック100は、入力端が信号入力端子1に接続された入力用の伝送線路CPW10_1と、出力用の伝送線路CPW20_1と、一端が伝送線路CPW10_1の終端に接続され、他端がバイアス電圧Vb_1に接続された入力終端抵抗Ri1と、一端が伝送線路CPW20_1の入力端に接続され、他端がグラウンドに接続された出力終端抵抗Ro1と、伝送線路CPW10_1,CPW20_1に沿って配置され、入力端子a1が伝送線路CPW10_1に接続され、出力端子b1が伝送線路CPW20_1に接続された複数のユニットセル3_1とから構成される。入力終端抵抗Ri1は50Ωである。出力終端抵抗Ro1については後述する。
【0015】
伝送線路CPW10_1は、複数の伝送線路CPW1i_1,CPW1_1,CPW1o_1を直列に接続した構成からなる。ユニットセル間の伝送線路CPW1_1と入力側の伝送線路CPW1i_1とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW1i_1の場合、信号入力端子1の前段の回路等の寄生容量の影響を伝送線路CPW1i_1で吸収する必要があるからである。同様に、伝送線路CPW1_1とCPW1o_1とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW1o_1の場合、入力終端抵抗Ri1の寄生容量の影響を伝送線路CPW1o_1で吸収する必要があるからである。
【0016】
伝送線路CPW20_1は、複数の伝送線路CPW2i_1,CPW2_1,CPW12を直列に接続した構成からなる。ユニットセル間の伝送線路CPW2と入力側の伝送線路CPW2i_1とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW2i_1の場合、出力終端抵抗Ro1の寄生容量の影響を伝送線路CPW2i_1で吸収する必要があるからである。同様に、伝送線路CPW2_1とCPW12とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW12の場合、伝送線路CPW20_1の後段の増幅器ブロック200の寄生容量の影響を伝送線路CPW12で吸収する必要があるからである。
【0017】
増幅器ブロック200は、入力端が増幅器ブロック100の伝送線路CPW20_1の終端に接続された入力用の伝送線路CPW10_2と、終端が信号出力端子2に接続された出力用の伝送線路CPW20_2と、一端が伝送線路CPW10_2の終端に接続され、他端がバイアス電圧Vb_2に接続された入力終端抵抗Ri2と、一端が伝送線路CPW20_2の入力端に接続され、他端がグラウンドに接続された出力終端抵抗Ro2と、伝送線路CPW10_2,CPW20_2に沿って配置され、入力端子a2が伝送線路CPW10_2に接続され、出力端子b2が伝送線路CPW20_2に接続された複数のユニットセル3_2とから構成される。出力終端抵抗Ro2は50Ωである。入力終端抵抗Ri2については後述する。
【0018】
伝送線路CPW10_2は、複数の伝送線路CPW12,CPW1_2,CPW1o_2を直列に接続した構成からなる。ユニットセル間の伝送線路CPW1_2と入力側の伝送線路CPW12とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW12の場合、伝送線路CPW10_2の前段の増幅器ブロック100の寄生容量の影響を伝送線路CPW12で吸収する必要があるからである。同様に、伝送線路CPW1_2とCPW1o_2とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW1o_2の場合、入力終端抵抗Ri2の寄生容量の影響を伝送線路CPW1o_2で吸収する必要があるからである。
【0019】
なお、本実施例では、増幅器ブロック100の出力用の伝送線路CPW20_1と増幅器ブロック200の入力用の伝送線路CPW10_2とが伝送線路CPW12を共用している。
【0020】
伝送線路CPW20_2は、複数の伝送線路CPW2_2,CPW2o_2を直列に接続した構成からなる。ユニットセル間の伝送線路CPW2_2とCPW2o_2とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW2o_2の場合、信号出力端子2の後段の回路等の寄生容量の影響を伝送線路CPW2o_2で吸収する必要があるからである。ユニットセル3_1,3_2の構成については第2の実施例で説明する。
【0021】
本実施例では、最適段数Noptの増幅器ブロック100と最適段数Noptの増幅器ブロック200とを縦続接続することで、帯域を劣化させることなく利得を向上させることが可能になる。
【0022】
また、本実施例では、増幅器ブロック100の出力用の伝送線路CPW20_1の特性インピーダンスZ0と出力終端抵抗Ro1と増幅器ブロック200の入力用の伝送線路CPW10_2の特性インピーダンスZ0と入力終端抵抗Ri2とが、50Ωより大きく、次式のようになる。
Z0=Ro1=Ri2=-Vb_2/(Iopt×Nopt) ・・・(1)
【0023】
式(1)において、Ioptは各ユニットセル3_1,3_2の入力端子と出力端子間を流れる電流である。バイアス電圧Vb_1,Vb_2は負電圧である。
【0024】
本実施例では、伝送線路CPW20_1,CPW10_2の特性インピーダンスZ0と出力終端抵抗Ro1と入力終端抵抗Ri2とを式(1)のように設定することにより、増幅器ブロック100と増幅器ブロック200とをDC結合することができ、DCから高周波までの信号を増幅可能にしながら、利得をさらに向上させることが可能となる。
【0025】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図2は本発明の第2の実施例に係る分布型増幅器の構成を示す回路図である。本実施例の分布型増幅器は、最適段数Nopt=6の増幅器ブロック100aと最適段数Nopt=6の増幅器ブロック200aとを縦続接続したものである。
【0026】
増幅器ブロック100aは、入力用の伝送線路CPW10a_1と、出力用の伝送線路CPW20a_1と、入力終端抵抗Ri1と、一端が伝送線路CPW20a_1の入力端に接続され、他端が電源電圧VCC_1に接続された出力終端抵抗Ro1と、伝送線路CPW10a_1,CPW20a_1に沿って配置され、入力端子a1が伝送線路CPW10a_1に接続され、出力端子b1が伝送線路CPW20a_1に接続された複数のユニットセル3_1とから構成される。入力終端抵抗Ri1、出力終端抵抗Ro1は50Ωである。
【0027】
伝送線路CPW10a_1は、第1の実施例の伝送線路CPW10_1と同一の構成を有する。伝送線路CPW20a_1は、第1の実施例の伝送線路CPW20_1と同様の構成を有するが、特性インピーダンスZ0が50Ωとなっている。
【0028】
増幅器ブロック200aは、入力用の伝送線路CPW10a_2と、出力用の伝送線路CPW20a_2と、一端が伝送線路CPW10a_2の終端に接続され、他端がバイアス電圧Vb_2に接続された入力終端抵抗Ri2と、出力終端抵抗Ro2と、伝送線路CPW10a_2,CPW20a_2に沿って配置され、入力端子a2が伝送線路CPW10a_2に接続され、出力端子b2が伝送線路CPW20a_2に接続された複数のユニットセル3_2とから構成される。出力終端抵抗Ro2、入力終端抵抗Ri2は50Ωである。
【0029】
伝送線路CPW10a_2は、第1の実施例の伝送線路CPW10_2と同様の構成を有するが、特性インピーダンスZ0が50Ωとなっている。伝送線路CPW20a_2は、第1の実施例の伝送線路CPW20_2と同一の構成を有する。
【0030】
図3は増幅器ブロック100aのユニットセル3_1の構成を示す回路図、
図4は増幅器ブロック200aのユニットセル3_2の構成を示す回路図である。
図3に示すように、ユニットセル3_1は、ベース端子が伝送線路CPW10a_1に接続され、エミッタ端子が電源電圧VEE1に接続された入力トランジスタQ32と、ベース端子がバイアス電圧Vcas1に接続され、コレクタ端子が伝送線路CPW20a_1に接続され、エミッタ端子が入力トランジスタQ32のコレクタ端子に接続された出力トランジスタQ33とから構成される。
【0031】
図4に示すように、ユニットセル3_2は、ベース端子が伝送線路CPW10a_2に接続され、エミッタ端子が電源電圧VEE2に接続された入力トランジスタQ34と、ベース端子がバイアス電圧Vcas2に接続され、コレクタ端子が伝送線路CPW20a_2に接続され、エミッタ端子が入力トランジスタQ34のコレクタ端子に接続された出力トランジスタQ35とから構成される。
【0032】
ユニットセル3_1とユニットセル3_2とは、同様の回路構成を有するが、印加される電圧が異なる。増幅器ブロック100aでは、電源電圧としてVCC_1とVEE1が与えられ、バイアス電圧としてVb_1とVcas1が与えられる。増幅器ブロック200aでは、電源電圧としてグラウンド(0V)とVEE2が与えられ、バイアス電圧としてVb_2とVcas2が与えられる。電圧VCC_1,VEE1,Vb_1,Vcas1,VEE2,Vb_2,Vcas2は基本的にはグラウンドを基準とする負電圧である。
【0033】
光通信等で使用される増幅器は、DC付近から高周波までの信号を増幅する必要がある。本実施例では、電源電圧VCC_1の値を次式のように設定することにより、増幅器ブロック100aの出力コモン電圧と増幅器ブロック200aの入力コモン電圧とを同電圧に合わせることができ、各トランジスタの動作点を乱すことなく、DCから高周波までの信号を増幅可能にする。
VCC_1=Vb_2+Iopt×Nopt×50 ・・・(2)
【0034】
第1の実施例で説明したとおり、Ioptは各ユニットセル3_1,3_2の入力端子と出力端子間を流れる電流であり、各ユニットセル3_1,3_2のトランジスタが動作する最適な電流である。
【0035】
増幅器ブロックを直結せずに、増幅器ブロック間にDCカットキャパシタを挿入する方法も考えられる。しかしながら、オンチップで実現できるキャパシタの値が小さいため、増幅器ブロック間にDCカットキャパシタを挿入する構成では、DC付近の信号を増幅することは困難である。
【0036】
図5は従来の分布型増幅器および本実施例の分布型増幅器のSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。
図5のS21_6は従来の6段の分布型増幅器のSパラメータS21、S21_12は従来の12段の分布型増幅器のSパラメータS21、S21_eは本実施例の分布型増幅器のSパラメータS21である。本実施例では、従来の12段の分布型増幅器と比べて帯域を劣化させることなく、利得を向上できていることを確認できる。
【0037】
本実施例では、増幅器ブロックが2個の場合を示したが、3個以上でもよい。例として増幅器ブロックが3個の場合の構成を
図6に示す。
図6の分布型増幅器は、最適段数Nopt=6の増幅器ブロック100bと最適段数Nopt=6の増幅器ブロック200bと最適段数Nopt=6の増幅器ブロック300bとを縦続接続したものである。
【0038】
増幅器ブロック100bは、入力用の伝送線路CPW10b_1と、出力用の伝送線路CPW20b_1と、入力終端抵抗Ri1と、出力終端抵抗Ro1と、ユニットセル3_1とから構成される。増幅器ブロック100bの構成は、増幅器ブロック100aと同じである。
【0039】
増幅器ブロック200bは、入力用の伝送線路CPW10b_2と、出力用の伝送線路CPW20b_2と、入力終端抵抗Ri2と、出力終端抵抗Ro2と、ユニットセル3_2とから構成される。増幅器ブロック200bの構成は、増幅器ブロック200aと同様であるが、出力終端抵抗Ro2の他端がグラウンドではなく、電源電圧VCC_2に接続されている点が
図2の構成と異なる。電源電圧VCC_2の設定については後述する。
【0040】
増幅器ブロック300bは、入力端が増幅器ブロック200bの伝送線路CPW20b_2の終端に接続された入力用の伝送線路CPW10b_3と、終端が信号出力端子2に接続された出力用の伝送線路CPW20b_3と、一端が伝送線路CPW10b_3の終端に接続され、他端がバイアス電圧Vb_3に接続された入力終端抵抗Ri3と、一端が伝送線路CPW20b_3の入力端に接続され、他端がグラウンドに接続された出力終端抵抗Ro3と、伝送線路CPW10b_3,CPW20b_3に沿って配置され、入力端子a3が伝送線路CPW10b_3に接続され、出力端子b3が伝送線路CPW20b_3に接続された複数のユニットセル3_3とから構成される。出力終端抵抗Ro3、入力終端抵抗Ri3は50Ωである。
【0041】
伝送線路CPW10b_3は、複数の伝送線路CPW23,CPW1_3,CPW1o_3を直列に接続した構成からなる。ユニットセル間の伝送線路CPW1_3と入力側の伝送線路CPW23とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW23の場合、伝送線路CPW10b_3の前段の増幅器ブロック200bの寄生容量の影響を伝送線路CPW23で吸収する必要があるからである。同様に、伝送線路CPW1_3とCPW1o_3とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW1o_3の場合、入力終端抵抗Ri3の寄生容量の影響を伝送線路CPW1o_3で吸収する必要があるからである。
【0042】
なお、
図6の構成では、増幅器ブロック200bの出力用の伝送線路CPW20b_2と増幅器ブロック300bの入力用の伝送線路CPW10b_3とが伝送線路CPW23を共用している。
【0043】
伝送線路CPW20b_3は、複数の伝送線路CPW2_3,CPW2o_3を直列に接続した構成からなる。ユニットセル間の伝送線路CPW2_3とCPW2o_3とは、特性インピーダンスが異なる。その理由は、伝送線路CPW2o_3の場合、信号出力端子2の後段の回路等の寄生容量の影響を伝送線路CPW2o_3で吸収する必要があるからである。
【0044】
図7は増幅器ブロック300bのユニットセル3_3の構成を示す回路図である。ユニットセル3_3は、ベース端子が伝送線路CPW10b_3に接続され、エミッタ端子が電源電圧VEE3に接続された入力トランジスタQ36と、ベース端子がバイアス電圧Vcas3に接続され、コレクタ端子が伝送線路CPW20b_3に接続され、エミッタ端子が入力トランジスタQ36のコレクタ端子に接続された出力トランジスタQ37とから構成される。
【0045】
VCC_1,VEE1,Vb_1,Vcas1,VCC_2,VEE2,Vb_2,Vcas2,VEE3,Vb_3,Vcas3は負電圧である。
図6の構成では、電源電圧VCC_2の値を次式のように設定することにより、増幅器ブロック200bの出力コモン電圧と増幅器ブロック300bの入力コモン電圧とを同電圧に合わせることができ、各トランジスタの動作点を乱すことなく、DCから高周波までの信号を増幅可能にする。
VCC_2=Vb_3+Iopt×Nopt×50 ・・・(3)
【0046】
増幅器ブロックが4個以上場合でも本実施例と同様の構成にすればよい。すなわち、縦続接続する増幅器ブロックがN個(Nは2以上の整数)の場合、入力終端抵抗Ri1~RiNの他端をバイアス電圧Vb_1~Vb_Nに接続し、終段を除く出力終端抵抗Ro1~Ro(N-1)の他端を電源電圧VCC_1~VCC_(N-1)に接続し、終段の出力終端抵抗RoNの他端をグラウンドに接続し、全ての伝送線路の特性インピーダンスと終端抵抗の値を50Ωとする。さらに、電源電圧VCC_n(nは1~N-1の整数)を次式のように設定すればよい。
VCC_n=Vb_(n+1)+Iopt×Nopt×50 ・・・(4)
【0047】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は、第1の実施例の具体例であるので、
図1の符号を用いて説明する。第2の実施例では、最終段を除く増幅器ブロックの出力終端抵抗の他端を電源電圧VCCに接続しているが、配線の電流容量設計や配線のレイアウトのし易さ、また良好な反射特性のために、第1の実施例に示したように出力終端抵抗の他端をグラウンドに接続することが望ましい。
【0048】
本実施例では、各増幅器ブロック100,200の出力終端抵抗Ro1,Ro2の他端をグラウンドに接続し、かつ増幅器ブロック100の出力と増幅器ブロック200の入力とを同じ直流電位で結合するために、増幅器ブロック100の出力用の伝送線路CPW20_1の特性インピーダンスZ0と出力終端抵抗Ro1と増幅器ブロック200の入力用の伝送線路CPW10_2の特性インピーダンスZ0と入力終端抵抗Ri2とを式(1)のように設定する。
【0049】
例としてVb_2=_3V、Iopt=5mA、Nopt=6とすると、出力終端抵抗Ro1と入力終端抵抗Ri2は100Ωとなる。本実施例の構成にすることにより、増幅器ブロック100の出力インピーダンスを50Ω以上にすることが可能なため、増幅器の利得が向上するという効果もある。
【0050】
第1の実施例および本実施例では、増幅器ブロックが2個の場合を示したが、3個以上でもよい。例として増幅器ブロックが3個の場合の構成を
図8に示す。
図8の分布型増幅器は、最適段数Nopt=6の増幅器ブロック100cと最適段数Nopt=6の増幅器ブロック200cと最適段数Nopt=6の増幅器ブロック300cとを縦続接続したものである。
【0051】
増幅器ブロック100cは、入力用の伝送線路CPW10c_1と、出力用の伝送線路CPW20c_1と、入力終端抵抗Ri1と、出力終端抵抗Ro1と、ユニットセル3_1とから構成される。増幅器ブロック100cの構成は、増幅器ブロック100と同じである。
【0052】
増幅器ブロック200cは、入力用の伝送線路CPW10c_2と、出力用の伝送線路CPW20c_2と、入力終端抵抗Ri2と、出力終端抵抗Ro2と、ユニットセル3_2とから構成される。増幅器ブロック200cの構成は、増幅器ブロック200と同様であるが、出力終端抵抗Ro2の値が50Ωより大きいことが第1の実施例と異なる。
【0053】
増幅器ブロック300cは、入力用の伝送線路CPW10c_3と、出力用の伝送線路CPW20c_3と、入力終端抵抗Ri3と、出力終端抵抗Ro3と、ユニットセル3_3とから構成される。増幅器ブロック300cの構成は、増幅器ブロック300bと同様であるが、入力終端抵抗Ri3の値が50Ωより大きいことが第2の実施例と異なる。
【0054】
図8の構成では、増幅器ブロック200cの出力用の伝送線路CPW20c_2の特性インピーダンスZ0と出力終端抵抗Ro2と増幅器ブロック300cの入力用の伝送線路CPW10c_3の特性インピーダンスZ0と入力終端抵抗Ri3とが、50Ωより大きく、次式のようになる。
Z0=Ro2=Ri3=-Vb_3/(Iopt×Nopt) ・・・(5)
【0055】
増幅器ブロックが4個以上場合でも本実施例と同様の構成にすればよい。すなわち、縦続接続する増幅器ブロックがN個(Nは2以上の整数)の場合、入力終端抵抗Ri1~RiNの他端をバイアス電圧Vb_1~Vb_Nに接続し、出力終端抵抗Ro1~RoNの他端をグラウンドに接続し、初段の入力用の伝送線路CPW10c_1と入力終端抵抗Ri1と終段の出力用の伝送線路CPW20c_Nの特性インピーダンスと出力終端抵抗RoNとを50Ωとする。
【0056】
さらに、終段を除くn段目(nは1~N-1の整数)の増幅器ブロックの出力用の伝送線路の特性インピーダンスZ0と出力終端抵抗Ronと(n+1)段目の増幅器ブロックの入力用の伝送線路の特性インピーダンスZ0と入力終端抵抗Ri(n+1)とを次式のように設定すればよい。
Z0=Ron=Ri(n+1)=-Vb_(n+1)/(Iopt×Nopt)
・・・(6)
【0057】
[第4の実施例]
次に、本発明の第4の実施例について説明する。
図9は本発明の第4の実施例に係る分布型増幅器の構成を示す回路図である。本実施例の分布型増幅器は、最適段数Nopt_1=6の増幅器ブロック100dと最適段数Nopt_2=6の増幅器ブロック200dとを縦続接続したものである。
【0058】
増幅器ブロック100dは、入力用の伝送線路CPW10d_1と、出力用の伝送線路CPW20d_1と、入力終端抵抗Ri1と、出力終端抵抗Ro1と、伝送線路CPW10d_1,CPW20d_1に沿って配置され、入力端子a1が伝送線路CPW10d_1に接続され、出力端子b1が伝送線路CPW20d_1に接続された複数のユニットセル3d_1とから構成される。
【0059】
増幅器ブロック100dの構成は、増幅器ブロック100aと同様であるが、出力終端抵抗Ro1の他端を電源電圧VCC_1ではなく、グラウンドに接続している点が異なり、またユニットセル3d_1が異なる。
増幅器ブロック200aの構成は第2の実施例で説明したとおりである。
【0060】
図10は増幅器ブロック100dのユニットセル3d_1の構成を示す回路図である。
図10に示すように、ユニットセル3d_1は、ベース端子が伝送線路CPW10d_1に接続され、エミッタ端子が電源電圧VEE1に接続された入力トランジスタQ40と、ベース端子がバイアス電圧Vcas1に接続され、コレクタ端子が伝送線路CPW20d_1に接続され、エミッタ端子が入力トランジスタQ40のコレクタ端子に接続された出力トランジスタQ41とから構成される。
【0061】
第3の実施例では、伝送線路の特性インピーダンスを50Ωより高く(例えば100Ω程度まで高く)設計することが困難な場合が存在する。そのような場合には、第2の実施例のように全ての伝送線路の特性インピーダンスと終端抵抗の値を50Ωとし、増幅器ブロック100dのユニットセル3d_1において最適電流Iopt_1が次式のようになるトランジスタQ40,Q41を用いることで、増幅器ブロック100dの出力と増幅器ブロック200dの入力を同じ直流電位で結合することができる。
Iopt_1=-Vb_2/(Nopt_1×50) ・・・(7)
【0062】
第1~第3の実施例では、段数(ユニットセルの並列数)が同一の増幅器ブロックを用いている。一方、本実施例では、増幅器ブロック100dの段数Nopt_1は、最適電流がIpot1であるトランジスタでユニットセル3d_1を構成する場合の最適段数であり、増幅器ブロック200aの段数Nopt_2と異なっていてもよい。
【0063】
一般的にバイポーラトランジスタにおいて電流利得遮断周波数fTもしくは最大発振周波数fmaxが最も高くなる(つまりトランジスタが最も速く動作する)最適コレクタ電流密度が存在する。あるエミッタ面積(エミッタ長×エミッタ幅)を持ったバイポーラトランジスタの最適電流は、最適コレクタ電流密度×エミッタ面積で定義される。そのため、エミッタ長が長いほど、もしくはフィンガー数が多いほど最適電流は大きい。回路内で使われるバイポーラトランジスタを最適電流で動作させることで、最も帯域を広くすることができる。このように、バイポーラトランジスタを用いる場合、最適電流は、エミッタ長もしくはフィンガー数を調整することで調整可能である。
【0064】
通常、増幅器ブロック100dのユニットセル3d_1の各トランジスタの最適電流Iopt_1は、増幅器ブロック200aのユニットセル3_2の各トランジスタの最適電流Iopt_2よりも大きい値となる。
【0065】
このため、増幅器ブロック100dで用いる各トランジスタのエミッタ長は、増幅器ブロック200aで用いる各トランジスタのエミッタ長よりも大きくなる。あるいは、増幅器ブロック100dで用いる各トランジスタのフィンガー数は、増幅器ブロック200aで用いる各トランジスタのフィンガー数よりも大きくなる。
【0066】
本実施例では、増幅器ブロックが2個の場合を示したが、3個以上でもよい。例として増幅器ブロックが3個の場合の構成を
図11に示す。
図11の分布型増幅器は、最適段数Nopt_1=6の増幅器ブロック100dと最適段数Nopt_2=6の増幅器ブロック200dと最適段数Nopt_3=6の増幅器ブロック300bとを縦続接続したものである。
【0067】
増幅器ブロック200dは、入力用の伝送線路CPW10d_2と、出力用の伝送線路CPW20d_2と、入力終端抵抗Ri2と、出力終端抵抗Ro2と、伝送線路CPW10d_2,CPW20d_2に沿って配置され、入力端子a2が伝送線路CPW10d_2に接続され、出力端子b2が伝送線路CPW20d_2に接続された複数のユニットセル3d_2とから構成される。
【0068】
増幅器ブロック200dの構成は、増幅器ブロック200bと同様であるが、出力終端抵抗Ro2の他端を電源電圧VCC_2ではなく、グラウンドに接続している点が異なり、またユニットセル3d_2が異なる。
増幅器ブロック300bの構成は第2の実施例で説明したとおりである。
【0069】
図12は増幅器ブロック200dのユニットセル3d_2の構成を示す回路図である。ユニットセル3d_2は、ベース端子が伝送線路CPW10d_2に接続され、エミッタ端子が電源電圧VEE2に接続された入力トランジスタQ42と、ベース端子がバイアス電圧Vcas2に接続され、コレクタ端子が伝送線路CPW20d_2に接続され、エミッタ端子が入力トランジスタQ42のコレクタ端子に接続された出力トランジスタQ43とから構成される。
【0070】
増幅器ブロック200dのユニットセル3d_2において最適電流Iopt_2が次式のようになるトランジスタQ42,Q43を用いることで、増幅器ブロック200dの出力と増幅器ブロック300bの入力を同じ直流電位で結合することができる。
Iopt_2=-Vb_3/(Nopt_2×50) ・・・(8)
【0071】
第1~第3の実施例では、段数(ユニットセルの並列数)が同一の増幅器ブロックを用いている。一方、本実施例では、増幅器ブロック200dの段数Nopt_2は、最適電流がIpot2であるトランジスタでユニットセル3d_2を構成する場合の最適段数であり、増幅器ブロック100d,300bの段数Nopt_1,Nopt_3と異なっていてもよい。
【0072】
増幅器ブロックが4個以上場合でも本実施例と同様の構成にすればよい。すなわち、縦続接続する増幅器ブロックがN個(Nは2以上の整数)の場合、入力終端抵抗Ri1~RiNの他端をバイアス電圧Vb_1~Vb_Nに接続し、出力終端抵抗Ro1~RoNの他端をグラウンドに接続し、全ての伝送線路の特性インピーダンスと終端抵抗の値を50Ωとする。
【0073】
さらに、終段を除くn段目(nは1~N-1の整数)の増幅器ブロックの各ユニットセル3d_nで用いるトランジスタとして、最適電流Iopt_nが次式のようになるトランジスタを用いるようにすればよい。
Iopt_n=-Vb_(n+1)/(Nopt_n×50) ・・・(9)
【0074】
第1~第4の実施例では、ユニットセルにバイポーラトランジスタを使用した例を示しているが、MOSトランジスタを使用してもよい。MOSトランジスタを使用する場合には、上記の説明において、ベース端子をゲート端子に置き換え、コレクタ端子をドレイン端子に置き換え、エミッタ端子をソース端子に置き換えるようにすればよい。
【0075】
また、第1~第4の実施例では、伝送線路としてCPW(coplanar waveguide)を用いた場合を示しているが、伝送線路であればCPWに限らず、マイクロストップライン等の他の伝送線路であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、DCから高周波までの信号の増幅が必要な分布型増幅器に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…信号入力端子、2…信号出力端子、3,3d…ユニットセル、100,100a~100d,200,200a~200d,300b,300c…増幅器ブロック、CPW1,CPW1i,CPW1o,CPW2,CPW2i,CPW2o,CPW10,CPW10a~CPW10d,CPW20,CPW20a~CPW20d…伝送線路、Q40~Q43…トランジスタ、Ri1~Ri3,Ro1~Ro3…抵抗。