(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038448
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/36 20140101AFI20240312BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20240312BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20240312BHJP
B23K 26/066 20140101ALI20240312BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240312BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20240312BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20240312BHJP
【FI】
B23K26/36
B23K26/073
B23K26/08 D
B23K26/066
B23K26/00 P
B23K26/00 N
B23K26/00 Q
B23K26/70
B23K26/064 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006858
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2022074815の分割
【原出願日】2018-04-26
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/017119
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 祐一
(57)【要約】
【課題】利便性の向上を図った加工装置を提供する。
【手段】加工装置は、ワーク(W)が載置されるテーブル(12)を有し、テーブルに保持されたワークを移動する第1ステージシステムと、ビーム(LB)を射出する集光光学系(530)を含むビーム照射システム(500)と、第1ステージシステムと照射システムとを制御する制御装置と、を備え、テーブルと集光光学系からのビームとを相対移動させつつワークの目標部位に対して加工が行われ、集光光学系の射出面側の第1面(MP)におけるビームの強度分布、及び、集光光学系の光軸(AX)方向の位置が第1面と異なる第2面におけるビームの強度分布の少なくとも一方が変更可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークにビームを照射して加工する加工装置であって、
前記ワークが載置される第1保持部材を有し、前記第1保持部材に保持されたワークを移動する第1保持システムと、
前記ビームを射出する集光光学系を含むビーム照射システムと、
制御装置と、を備え、
前記第1保持部材と前記集光光学系からのビームとを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工が行われ、
前記集光光学系の射出面側の第1面における前記ビームの強度分布、及び、前記集光光学系の光軸方向の位置が前記第1面と異なる第2面における前記ビームの強度分布の少なくとも一方が変更可能である加工装置。
【請求項2】
前記強度分布の変更は、第1状態から、前記第1面における前記ビームの強度分布、及び前記第2面における前記ビームの強度分布の少なくとも一方が前記第1状態と異なる第2状態への変更を含む請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記第1状態での前記第1面における前記ビームの強度分布は、前記第2状態での前記第1面における前記ビームの強度分布と異なる請求項2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記第1状態での前記第1面における前記ビームの強度分布は、前記第2状態での前記第1面における前記ビームの強度分布と同じであり、
前記第1状態での前記第1面における前記ビームの強度分布は、前記第2状態での前記第2面における前記ビームの強度分布と異なる請求項2に記載の加工装置。
【請求項5】
前記第1面及び前記第2面は、前記光軸に垂直である請求項1~4のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項6】
複数種類のレーザ加工が可能であり、
前記第1状態で行われる第1レーザ加工と、前記第2状態で行われる第2レーザ加工は、同じ種類である請求項1~5のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項7】
前記第1状態で行われる第1レーザ加工と、前記第2状態で行われる第2レーザ加工は、異なる種類である請求項1~5のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項8】
前記第1状態で行われる前記第1レーザ加工を前記ワークに施した後に、前記第2状態で行われる前記第2レーザ加工を前記ワークに施す請求項6又は7に記載の加工装置。
【請求項9】
前記第1保持システムは、所定平面内で互いに交差する第1、第2方向及び前記所定へ平面に直交する第3方向を含む少なくとも3自由度方向に前記ワークを移動可能である請求項1~8のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項10】
前記第1保持システムは、前記第1保持部材を移動する駆動系と、前記第1保持部材の少なくとも前記3自由度方向の位置情報を計測可能な第1計測装置とを有する請求項9に記載の加工装置。
【請求項11】
前記第1面における前記強度分布の変更は、前記第1面における前記ビームの照射領域の位置、前記第1面における前記照射領域の大きさ、及び前記第1面における前記照射領域の形状の少なくとも1つの変更を伴う請求項1~10のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項12】
前記第2面における前記強度分布の変更は、前記第2面における前記ビームの照射領域の位置、前記第2面における前記照射領域の大きさ、及び前記第2面における前記照射領域の形状の少なくとも1つの変更を伴う請求項1~11のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項13】
前記強度分布の変更は、前記制御装置によって、前記ビーム照射システムを用いて行われる請求項1~12のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項14】
前記ビーム照射システムは、前記集光光学系の瞳面におけるビームの断面強度分布を変更可能な光学デバイスを有する請求項1~13のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項15】
前記光学デバイスは、前記瞳面の共役面におけるビームの断面強度分布を変更することによって前記瞳面における断面強度分布を変更する請求項14に記載の加工装置。
【請求項16】
前記集光光学系の瞳面におけるビームの断面強度分布を変更することによって、前記第2面における前記ビームの強度分布が変更可能である請求項14又は15に記載の加工装置。
【請求項17】
前記ビーム照射システムは、前記第2面における前記強度分布を変更可能な光学デバイスを有する請求項1~13のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項18】
ワークにビームを照射して加工する加工装置であって、
前記ワークが載置される第1保持部材を有し、前記第1保持部材に保持されたワークを移動する第1保持システムと、
前記ビームを射出する集光光学系を含むビーム照射システムと、
制御装置と、を備え、
前記集光光学系から第1面に照射されるビームと前記第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工が行われ、
前記ビーム照射システムは、前記集光光学系から射出されるビームの、前記集光光学系の瞳面における断面強度分布を変更可能な光学デバイスを有する加工装置。
【請求項19】
前記光学デバイスは、前記瞳面の共役面におけるビームの断面強度分布を変更することによって前記瞳面における断面強度分布を変更する請求項18に記載の加工装置。
【請求項20】
前記光学デバイスによる前記瞳面におけるビームの断面強度分布の変更は、前記瞳面におけるビームの断面形状の変更を含む請求項14~19のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項21】
前記光学デバイスは、前記瞳面の共役面におけるビームの断面形状を変更することによって、前記瞳面における断面形状を変更する請求項20に記載の加工装置。
【請求項22】
前記瞳面における断面形状を規定する領域内において、前記ビームは、前記ビームの前記ワークへの照射による加工が可能な強度を有する請求項20又は21に記載の加工装置。
【請求項23】
前記光学デバイスは、前記瞳面の中心に関して1回回転対称な断面形状を設定可能である請求項20~22のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項24】
前記断面形状は、前記瞳面において前記瞳面の中心を通る第1仮想軸線で2分割される2つの領域の一方に規定される請求項20~23のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項25】
前記断面形状は、前記第1仮想軸線と、前記瞳面において前記瞳面の中心を通り、前記第1仮想軸線と直交する第2仮想軸線とで規定される4象限のうちの1つの象限内に規定される請求項24に記載の加工装置。
【請求項26】
前記断面形状のエッジの一部は、前記瞳面において前記瞳面の中心を通過する第1仮想軸線の少なくとも一部と一致する請求項20~25のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項27】
前記断面形状のエッジの別の一部は、前記瞳面において前記瞳面の中心を通り、前記第1仮想軸線と直交する第2仮想軸線の少なくとも一部と一致する請求項26に記載の加工装置。
【請求項28】
前記瞳面において前記断面形状を規定するエッジの少なくとも一部は、直線状のエッジである請求項20~27のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項29】
前記直線状のエッジは、前記瞳面において前記瞳面の中心を通る第1仮想軸線の少なくとも一部と一致する請求項28に記載の加工装置。
【請求項30】
前記直線状のエッジは、前記瞳面において前記瞳面の中心を通り、前記第1仮想軸線と直交する第2仮想軸線の少なくとも一部と一致する請求項29に記載の加工装置。
【請求項31】
前記光学デバイスを用いて前記断面形状として、円形、半円形、及び四分円形のうちの少なくとも1つを設定可能である請求項20~30のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項32】
前記瞳面において前記瞳面の中心を通る第1仮想軸線で2分割される2つの領域のうちの一方を通過したビームのみが前記第1面に照射されるように、前記光学デバイスを使って前記瞳面における断面強度分布が設定される請求項14~31のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項33】
前記第1仮想軸線と、前記瞳面において前記瞳面の中心を通り、前記第1仮想軸線と直交する第2仮想軸線とで規定される4象限のうちの1つの象限を通過したビームのみが前記第1面に照射されるように、前記光学デバイスを使って前記瞳面における断面強度分布が設定される請求項32に記載の加工装置。
【請求項34】
前記集光光学系の光軸に直交する走査方向に前記ワークと前記ビームとを相対的に移動しながら前記目標部位が加工され、
前記第1仮想軸線は、前記走査方向、又は前記光軸及び前記走査方向に直交する非走査方向に対応する請求項24~27、30~33のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項35】
前記光学デバイスは、空間光変調器を有する請求項14~34のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項36】
前記加工の種類に基づいて、前記瞳面における強度分布が設定される請求項14~35のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項37】
前記ビーム照射システムは、照度均一化光学系を有し、
前記照度均一化光学系から射出されたビームが前記光学デバイスに入射する請求項14~36のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項38】
前記照度均一化光学系は、複数の光源ユニットからそれぞれ射出される複数のビームを混合及び均一化する請求項37に記載の加工装置。
【請求項39】
前記ビーム照射システムは、空間光変調器を有し、前記空間光変調器を用いて、前記強度分布の変更を行う請求項1~38のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項40】
前記第1面は、前記集光光学系の後側焦点面である請求項1~39のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項41】
前記第1面は、前記集光光学系の像面である請求項1~38のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項42】
前記ビーム照射システムにおいて、前記集光光学系に入射するビームは、前記集光光学系の入射面側の配置された開口を通過したビームを含み、
前記開口の大きさ、形状、及び向きの少なくとも1つを変更することによって、前記第1面における強度分布を変更可能である請求項41に記載の加工装置。
【請求項43】
前記開口は、前記集光光学系に入射するビームの、前記集光光学系に関して前記第1面の共役面における強度分布を規定する請求項42に記載の加工装置。
【請求項44】
前記開口が形成された開口部材を保持する第2保持部材を有する第2保持システムをさらに含む請求項42又は43に記載の加工装置。
【請求項45】
前記第2保持システムは、前記開口部材を移動可能である請求項44に記載の加工装置。
【請求項46】
前記第2保持システムは、前記第2保持部材を移動する駆動系と、前記第2保持部材の位置情報を計測可能な第2計測装置とを有する請求項44又は45に記載の加工装置。
【請求項47】
前記制御装置は、前記ワークの目標部位に前記第1面内における前記ビームの照射領域が一致するように、前記第1保持部材と前記第2保持部材との少なくとも一方を動かす請求項42~46のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項48】
前記強度分布の変更は、前記集光光学系の入射面側に配置されている、第1の開口を、第2の開口に変更することを含み、
前記第1の開口と前記第2の開口は、大きさ、形状、及び向きの少なくとも1つが異なる請求項42~47のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項49】
前記第1の開口及び前記第2の開口は、スリット状の開口であり、
前記第1の開口は、長さ、及び向きの少なくとも一方が前記第2の開口と異なる請求項48に記載の加工装置。
【請求項50】
前記第1の開口と前記第2の開口は、互いに直交する方向に延びる請求項48に記載の加工装置。
【請求項51】
前記第1の開口と前記第2の開口の少なくとも一方は、ピンホール状の開口である請求項48~50のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項52】
前記ビーム照射システムは、空間光変調器を有し、前記制御装置は、前記空間光変調器を用いて、前記開口に合わせて、前記開口が配置されている面に入射するビームの照射領域の位置、大きさ、及び形状の少なくとも1つを変更する請求項42~51のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項53】
前記空間光変調器は、複数のミラーを有し、
前記複数のミラーのそれぞれは、反射面を有し、
前記複数のミラーは、個別に可動である請求項52に記載の加工装置。
【請求項54】
前記空間光変調器は、前記複数のミラーの反射面の状態を個別に変更可能であり、前記反射面の状態の変更は、前記反射面の位置と傾斜角度との少なくとも一方の変更を含む請求項53に記載の加工装置。
【請求項55】
前記複数のミラーそれぞれの前記反射面の状態を検出する検出システムを備え、
前記検出システムの出力に基づいて、前記複数のミラーそれぞれの前記反射面の状態が制御される請求項53又は54に記載の加工装置。
【請求項56】
前記検出システムは、前記複数のミラーに個別に取付けられたセンサを含む請求項55に記載の加工装置。
【請求項57】
前記検出システムは、前記複数のミラーの表面に検出光を照射し、前記複数のミラーからの反射光を受光する請求項55又は56に記載の加工装置。
【請求項58】
前記複数のミラーの前記反射面の状態を個別に又はグループ毎に変更する請求項53~57のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項59】
前記ビーム照射システムは、前記集光光学系に入射するビームの、前記集光光学系に関して前記第1面の共役面における強度分布を変更可能である請求項41~58のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項60】
前記ビーム照射システムは、前記第1面の共役面における強度分布を変更可能な空間光変調器を有する請求項59に記載の加工装置。
【請求項61】
前記空間光変調器は、複数のミラーを有する請求項60に記載の加工装置。
【請求項62】
前記集光光学系に入射する少なくとも1つの入射ビームは平行ビームである請求項1~61のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項63】
前記制御装置は、前記第1面での強度分布に応じて、前記ワークと前記ビームとの相対移動速度を決定する請求項1~62のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項64】
前記ワークと前記ビームとを相対的に移動することによって、前記目標部位が加工される請求項1~63のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項65】
前記第1保持システムを支持するベース部材をさらに備え、
前記第1保持システムは、エア浮上方式又は磁気浮上方式で、前記ベース部材上に浮上支持されている請求項1~64のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項66】
前記制御装置は、予め作成されたレシピデータに従って前記第1保持システムと前記照射システムとを制御する請求項1~65のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項67】
前記第1保持システムにより移動可能な状態で前記ワークの位置情報を取得するための計測システムをさらに備え、
前記制御装置は、ワークに対する加工情報と、前記計測システムを使って取得された前記ワークの位置情報とに基づいて、前記第1保持システムとビーム照射システムとを制御する請求項1~66のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項68】
前記計測システムは、3次元計測機を含む請求項67に記載の加工装置。
【請求項69】
前記計測システムは、前記ワークの少なくとも3点の位置情報を計測可能である請求項67又は68に記載の加工装置。
【請求項70】
前記計測システムは、前記ワークの対象面の3次元形状を計測可能である請求項67~69のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項71】
前記制御装置は、予め作成されたレシピデータに従って前記第1保持システムと前記照射システムとを制御する請求項67~70のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項72】
前記制御装置は、前記ワークの加工前後の設計データに基づいて、前記レシピデータを作成する請求項71に記載の加工装置。
【請求項73】
前記制御装置は、前記計測システムの計測結果に基づいて、前記集光光学系の射出面側の光軸に垂直な第1面における前記ビームの強度分布を調整する請求項67~72のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項74】
前記制御装置は、基準座標系の下で前記第1保持部材の位置及び姿勢を制御し、
前記位置情報を取得することによって、前記ワークの目標部位を前記基準座標系に対して関連付ける請求項67~73のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項75】
前記制御装置は、前記加工の後に、前記ワークの加工部位を含む少なくとも一部の位置情報を、前記計測システムを用いて取得する請求項67~74のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項76】
前記制御装置は、前記少なくとも一部の位置情報として、3次元形状を計測する請求項75に記載の加工装置。
【請求項77】
前記制御装置は、前記計測システムを用いて取得された位置情報に基づいて、前記加工部位の寸法誤差を求める請求項75又は76に記載の加工装置。
【請求項78】
前記制御装置は、前記寸法誤差を用いて加工の合否判定を行う請求項77に記載の加工装置。
【請求項79】
前記制御装置は、前記合否判定の結果、不合格と判定されたワークのうち、寸法誤差が正の値であるワークについては、前記寸法誤差に基づいて、前記第1ステージで保持したまま、前記ビーム照射システムを用いて修正加工を施す請求項78に記載の加工装置。
【請求項80】
前記制御装置は、前記ワークの加工部位を含む少なくとも一部の位置情報に基づいて、前記計測システム、前記照射システム及び前記第1保持システムの少なくとも1つを調整する請求項75~79のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項81】
前記制御装置は、前記位置情報に基づいて、前記加工における装置のドリフトの傾向を求め、その求めた結果に応じて前記計測システム、前記照射システム及び前記第1保持システムの少なくとも1つを調整する請求項80に記載の加工装置。
【請求項82】
前記ビームを受光部で受光するセンサをさらに備える請求項1~81のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項83】
前記センサは、前記ビームの強度分布を計測可能である請求項82に記載の加工装置。
【請求項84】
前記制御装置は、前記センサの受光部を移動しつつ、前記ビームを前記受光部で受光する請求項82又は83に記載の加工装置。
【請求項85】
前記センサの受光部は、前記集光光学系から射出されるビームを受光可能である請求項82~84のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項86】
前記受光部は、前記第1面、又はその近傍で前記ビームを受光するように配置される請求項85に記載の加工装置。
【請求項87】
前記受光部は、前記集光光学系の射出面側の光軸に平行な方向と前記光軸に垂直な方向の少なくとも一方に移動しながら、前記集光光学系からのビームを受光可能である請求項85又は86に記載の加工装置。
【請求項88】
前記センサは、前記集光光学系の射出面側の光軸に垂直な第1面内における前記ビームの強度分布を計測可能である請求項85~87のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項89】
前記制御装置は、前記センサを用いた計測の結果に基づいて、前記第1面における前記ビームの強度分布を調整する請求項82~88のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項90】
前記制御装置は、前記センサを使って行われた計測結果に基づいて、前記照射システムと前記第1保持システムとの少なくとも一方の調整を行う請求項82~89のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項91】
前記第1保持部材上に、加工前の前記ワークをロードするとともに、加工終了後の前記ワークを前記第1保持部材からアンロードする搬送システムをさらに備え、
前記制御装置は、前記搬送システムを制御する請求項1~90のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項92】
前記加工は、除去加工を含む請求項1~91のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項93】
前記加工によって、前記ワークの形状が変化する請求項1~92のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項94】
前記加工のために前記ビームが照射される前記ワークの表面は、金属の表面である請求項1~93のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項95】
前記制御装置は、前記第1保持システムを制御する請求項1~94のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項96】
前記制御装置は、前記照射システムを制御する請求項1~95のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項97】
ワークにビームを照射して加工する加工装置であって、
前記ワークが載置される第1保持部材を有し、前記第1保持部材に保持されたワークを移動する第1保持システムと、
前記ビームを射出する集光光学系を含むビーム照射システムと、
制御装置と、を備え、
前記第1保持部材と前記集光光学系からのビームとを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工が行われ、
前記集光光学系の射出面側の、前記集光光学系の光軸に垂直な面における前記ビームの強度分布が変更可能である加工装置。
【請求項98】
前記集光光学系の光軸に垂直な前記面は、前記集光光学系の像面、を含む請求項97に記載の加工装置。
【請求項99】
前記集光光学系の光軸に垂直な前記面は、前記集光光学系と、前記集光光学系の像面との間の面を含む請求項97又は98に記載の加工装置。
【請求項100】
前記集光光学系の光軸に垂直な前記面は、前記集光光学系の後側焦点面を含む請求項97~99のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項101】
前記集光光学系の光軸に垂直な前記面における前記ビームの強度分布の変更は、前記集光光学系の瞳面、または前記瞳面の共役面おける前記ビームの強度分布を制御することを含む請求項97~100のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項102】
ワークにビームを照射して加工する加工装置であって、
前記ワークが載置される第1保持部材を有し、前記第1保持部材に保持されたワークを移動する第1保持システムと、
前記ビームを射出する集光光学系を含むビーム照射システムと、
制御装置と、を備え、
前記集光光学系から第1面に照射されるビームと前記第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工が行われ、
前記集光光学系から射出される前記ビームの断面における強度分布は1回回転対称である加工装置。
【請求項103】
前記ビーム照射システムは、前記断面における強度分布を変更可能な光学デバイスを有する請求項102に記載の加工装置。
【請求項104】
前記光学デバイスは、前記集光光学系の瞳面におけるビームの断面強度分布を変更可能である請求項103に記載の加工装置。
【請求項105】
前記光学デバイスは、前記集光光学系の瞳面の共役面における断面強度分布を変更することによって、前記瞳面における断面強度分布を変更可能である請求項104に記載の加工装置。
【請求項106】
前記光学デバイスは、前記集光光学系の瞳面の共役面と異なる位置に配置された空間光変調器を含む請求項103又は104に記載の加工装置。
【請求項107】
前記光学デバイスによる前記断面における強度分布の変更は、前記断面における前記ビームの照明形状の変更を含む請求項103~106のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項108】
前記照明形状は、前記瞳面において前記瞳面の中心を通る第1仮想軸線で2分割される2つの領域の一方に前記ビームが分布するように設定される請求項107に記載の加工装置。
【請求項109】
前記照明形状は、前記第1仮想軸線と、前記瞳面において前記瞳面の中心を通り、前記第1仮想軸線と直交する第2仮想軸線とで規定される4象限のうちの1つの象限内に前記ビームが分布するように設定される請求項108に記載の加工装置。
【請求項110】
前記照明形状は、前記瞳面において前記ビームが直線状のエッジを有するように設定される請求項108~109のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項111】
前記照明形状として、半円形又は四分円形を設定可能である請求項107~110のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項112】
前記ビームの前記断面は、前記集光光学系の後側焦点面と異なる面である請求項102~111のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項113】
前記集光光学系の後側焦点面における前記ビームの断面は、スポット状及び線状の少なくとも一方である請求項112に記載の加工装置。
【請求項114】
前記集光光学系から射出される前記ビームを受光部で受光するセンサをさらに備える請求項102~113のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項115】
前記センサは、前記ビームの強度分布を計測可能である請求項114に記載の加工装置。
【請求項116】
前記受光部は、前記集光光学系の後側焦点面と共役な面で、あるいは前記集光光学系の後側焦点面の近傍の面と共役な面で前記ビームを受光するように配置される請求項114又は115に記載の加工装置。
【請求項117】
前記受光部は、前記集光光学系の像面と共役な面で、あるいは前記集光光学系の像面の近傍の面と共役な面で前記ビームを受光するように配置される請求項114又は115に記載の加工装置。
【請求項118】
前記センサは、前記集光光学系の射出面側の光軸に垂直な第1面内における前記ビームの強度分布を計測可能である請求項114又は115に記載の加工装置。
【請求項119】
前記第1面は、前記集光光学系の後側焦点面、又はその近傍の面である請求項118に記載の加工装置。
【請求項120】
前記第1面は、前記集光光学系の像面、又はその近傍の面である請求項118に記載の加工装置。
【請求項121】
前記制御装置は、前記センサを用いた計測の結果に基づいて、前記第1面における前記ビームの強度分布を調整する請求項118~120のいずれか一項に記載の加工装置。
【請求項122】
ワークにビームを照射して加工する加工方法であって、
第1保持部材にワークを保持することと、
集光光学系を含むビーム照射部から射出されるビームと前記ワークが保持された第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工を行うことと、を含み、
前記加工に際して、前記集光光学系の射出面側の第1面における前記ビームの強度分布、及び、前記集光光学系の光軸方向の位置が前記第1面と異なる第2面における前記ビームの強度分布の少なくとも一方を変更する加工方法。
【請求項123】
ワークにビームを照射して加工する加工方法であって、
第1保持部材にワークを保持することと、
集光光学系を含むビーム照射部から第1面に照射されるビームと前記ワークが保持された第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工を行うことと、を含み、
前記加工に際して、前記集光光学系から射出されるビームの、前記集光光学系の瞳面における強度分布を変更する加工方法。
【請求項124】
ワークにビームを照射して加工する加工方法であって、
第1保持部材にワークを保持することと、
集光光学系を含むビーム照射部から第1面に照射されるビームと前記ワークが保持された第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工を行うことと、を含み、
前記集光光学系から射出されるビームの断面における強度分布は1回回転対称である加工方法。
【請求項125】
ワークにビームを照射して加工する加工方法であって、
第1保持部材にワークを保持することと、
集光光学系を含むビーム照射部から射出されるビームと前記ワークが保持された第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工を行うことと、を含み、
前記加工に際して、前記集光光学系の射出面側の、前記集光光学系の光軸に垂直な面における前記ビームの強度分布を変更する加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置及び加工方法に係り、さらに詳しくは、ワークにビームを照射して加工する加工装置及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械を造る工作機械の分野では、レーザ光などを用いる加工装置(例えば、特許文献1参照)の工作機械としての利便性、性能の向上が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0017509号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、ワークにビームを照射して加工する加工装置であって、前記ワークが載置される第1保持部材を有し、前記第1保持部材に保持されたワークを移動する第1保持システムと、前記ビームを射出する集光光学系を含むビーム照射システムと、制御装置と、を備え、前記第1保持部材と前記集光光学系からのビームとを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工が行われ、前記集光光学系の射出面側の第1面における前記ビームの強度分布、及び、前記集光光学系の光軸方向の位置が前記第1面と異なる第2面における前記ビームの強度分布の少なくとも一方が変更可能である加工装置が、提供される。
【0005】
ここで、第1面は、加工の際に、ワークの目標部位を位置合わせすべき仮想的な面であっても良い。第1面は、例えば、集光光学系の光軸に垂直な面であっても良い。第1面は、集光光学系の像面あるいはその近傍の面、又は後側焦点面あるいはその近傍の面であっても良い。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、ワークにビームを照射して加工する加工装置であって、前記ワークが載置される第1保持部材を有し、前記第1保持部材に保持されたワークを移動する第1保持システムと、前記ビームを射出する集光光学系を含むビーム照射システムと、制御装置と、を備え、前記集光光学系から第1面に照射されるビームと前記第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工が行われ、前記ビーム照射システムは、前記集光光学系から射出されるビームの、前記集光光学系の瞳面における断面強度分布を変更可能な光学デバイスを有する加工装置が、提供される。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、ワークにビームを照射して加工する加工装置であって、前記ワークが載置される第1保持部材を有し、前記第1保持部材に保持されたワークを移動する第1保持システムと、前記ビームを射出する集光光学系を含むビーム照射システムと、制御装置と、を備え、前記第1保持部材と前記集光光学系からのビームとを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工が行われ、前記集光光学系の射出面側の、前記集光光学系の光軸に垂直な面における前記ビームの強度分布が変更可能である加工装置が、提供される。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、ワークにビームを照射して加工する加工装置であって、前記ワークが載置される第1保持部材を有し、前記第1保持部材に保持されたワークを移動する第1保持システムと、前記ビームを射出する集光光学系を含むビーム照射システムと、制御装置と、を備え、前記集光光学系から第1面に照射されるビームと前記第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工が行われ、前記集光光学系から射出される前記ビームの断面における強度分布は1回回転対称である加工装置が、提供される。
【0009】
本発明の第5の態様によれば、ワークにビームを照射して加工する加工方法であって、第1保持部材にワークを保持することと、集光光学系を含むビーム照射部から射出されるビームと前記ワークが保持された第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工を行うことと、を含み、前記加工に際して、前記集光光学系の射出面側の第1面における前記ビームの強度分布、及び、前記集光光学系の光軸方向の位置が前記第1面と異なる第2面における前記ビームの強度分布の少なくとも一方を変更する加工方法が、提供される。
【0010】
本発明の第6の態様によれば、ワークにビームを照射して加工する加工方法であって、第1保持部材にワークを保持することと、集光光学系を含むビーム照射部から第1面に照射されるビームと前記ワークが保持された第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工を行うことと、を含み、前記加工に際して、前記集光光学系から射出されるビームの、前記集光光学系の瞳面における強度分布を変更する加工方法が、提供される。
【0011】
本発明の第7の態様によれば、ワークにビームを照射して加工する加工方法であって、第1保持部材にワークを保持することと、集光光学系を含むビーム照射部から第1面に照射されるビームと前記ワークが保持された第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工を行うことと、を含み、前記集光光学系から射出されるビームの断面における強度分布は1回回転対称である加工方法が、提供される。
【0012】
本発明の第8の態様によれば、ワークにビームを照射して加工する加工方法であって、第1保持部材にワークを保持することと、集光光学系を含むビーム照射部から射出されるビームと前記ワークが保持された第1保持部材とを相対移動させつつ前記ワークの目標部位に対して加工を行うことと、を含み、前記加工に際して、前記集光光学系の射出面側の、前記集光光学系の光軸に垂直な面における前記ビームの強度分布を変更する加工方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る加工装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第1ステージシステムの構成を、計測システムとともに概略的に示す図である。
【
図3】ワークが搭載された第1ステージシステムを示す斜視図である。
【
図4】ビーム照射システムを、マスクが設けられたマスクステージ及びワークが搭載されたテーブルとともに示す図である。
【
図6】ビーム照射システムが備える光源系の構成の一例を示す図である。
【
図7】光源系からの平行ビームが第2のミラーアレイに照射され、複数のミラー素子それぞれからの反射ビームが第1部分照明光学系に入射する様子を示す図である。
【
図8】第1部分照明光学系からの平行ビームが第1のミラーアレイに照射され、複数のミラー素子それぞれからの反射ビームが集光光学系に入射する様子を示す図である。
【
図9】
図9(A)は、集光光学系からワークの目標部位にビームが照射されスリット状の照射領域が形成される際のワークの対象面近傍を拡大して示す図、
図9(B)は、
図9(A)に示されるスリット状の照射領域とスキャン方向との関係を示す図である。
【
図10】
図10(A)は、本実施形態に係る加工装置において設定可能な加工モードの一例の説明図、
図10(B)は、モード1、モード2、モード3及びモード4の光刃物をそれぞれ用いた加工を説明するための図、
図10(C)は、モード5及びモード6の光刃物をそれぞれ用いた加工を説明するための図である。
【
図11】テーブル上の計測装置の配置を示す図である。
【
図12】計測装置を構成する、テーブル内部に配置された構成部分を、計測部材とともに示す図である。
【
図13】
図13(A)は、集光光学系の像面におけるビームの強度分布を計測する際の光学配置を示す図、
図13(B)は、瞳面におけるビームの強度分布を計測する際の光学配置を示す図である。
【
図14】加工装置の制御系を中心的に構成する制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
【
図15】制御装置の一連の処理アルゴリズムに対応するフローチャートである。
【
図16】
図6のステップS10のサブルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図17】加工装置で行なうことができる各種処理の内容を、それぞれの処理を行なうのに用いられていた従来の工作機械と対応させて示す図である。
【
図18】加工面におけるビームの強度分布を計測するための計測装置の一例を示す図である。
【
図19】
図19(A)~
図19(D)は、それぞれ一実施形態に係る加工装置において設定可能な照明形状の別の例を示す説明図である。
【
図20】一実施形態に係る加工装置において、複数のテーブルが用いられる一例を示す図である。
【
図21】一実施形態に係る加工装置において、計測システムとビーム照射システムの一方の下から他方の下へのテーブルの移動の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態について、
図1~
図21に基づいて説明する。
図1には、一実施形態に係る加工装置100の全体構成が、ブロック図にて示されている。
【0015】
加工装置100は、加工対象物(ワークとも呼ばれる)にビーム(通常、レーザビーム)を照射して除去加工(機械加工として行われる切削加工、研削加工などに相当)を含む種々の加工を行う装置である。
【0016】
加工装置100は、第1ステージシステム200A、第2ステージシステム200B、搬送システム300、計測システム400及びビーム照射システム500と、これら5つのシステムを含み、加工装置100の全体を制御する制御装置600とを備えている。このうち、搬送システム300と、計測システム400と、ビーム照射システム500とは、所定方向に関して互いに離れて配置されている。以下の説明では、便宜上、搬送システム300と、計測システム400と、ビーム照射システム500とは、後述するX軸方向(
図2参照)に関して互いに離れて配置されているものとする。
【0017】
図2には、第1ステージシステム200Aの構成が、計測システム400とともに概略的に示されている。また、
図3には、ワークWが搭載された第1ステージシステム200Aが、斜視図にて示されている。以下では、
図2における紙面内の左右方向をY軸方向、紙面に直交する方向をX軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸及びZ軸回りの回転(傾斜)方向を、それぞれθx、θy及びθz方向として説明を行う。
【0018】
第1ステージシステム200Aは、ワークWの位置及び姿勢を変更する。具体的には、ワークWが搭載される後述するテーブルを6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy及びθzの各方向)に動かすことで、ワークWの6自由度方向の位置の変更を行う。本明細書においては、テーブル又はワークなどについて、θx、θy及びθz方向の3自由度方向の位置を適宜「姿勢」と総称し、これに対応して残りの3自由度方向(X軸、Y軸及びZ軸方向)の位置を適宜「位置」と総称する。
【0019】
第1ステージシステム200Aは、テーブルの位置及び姿勢を変更する駆動機構の一例としてスチュワートプラットフォーム型の6自由度パラレルリンク機構を備えている。スチュワートプラットフォームは、6つのアクチュエータで1つの平面(部材、たとえばトッププレート)を支え、そのトッププレートの位置と傾きを制御するロボットである。トッププレートは、エンドエフェクタを構成する。そのトッププレートは3ヶ所で支えられ、1カ所あたり2本のアクチュエータで支えられる。それぞれのアクチュエータはその長さが制御可能であり、角度は自由である。トッププレートは、6自由度を持つ。スチュワートプラットフォームは、6自由度でトッププレートを制御できるため、6軸プラットフォーム、6DOFプラットフォーム、6自由度パラレルリンク機構などとも呼ばれる。なお、第1ステージシステム200Aは、テーブルを6自由度方向に移動できるものに限定されないし、パラレルリンク機構にも限定されない。
【0020】
第1ステージシステム200A(但し、後述する平面モータの固定子を除く)は、
図2に示されるように、床F上にその上面がXY平面とほぼ平行になるように設置されたベースBS上に配置されている。なお、床FとベースBSとの間に防振装置が配置されていても良い。第1ステージシステム200Aは、
図3に示されるように、ベースプラットホームを構成する平面視正六角形状のスライダ10と、エンドエフェクタを構成するテーブル12と、スライダ10とテーブル12とを連結する6本の伸縮可能なロッド(リンク)14
1~14
6と、ロッド14
1~14
6にそれぞれ設けられ当該各ロッドを伸縮させる伸縮機構16
1~16
6(
図3では図示せず、
図14参照)とを有している。第1ステージシステム200Aは、ロッド14
1~14
6の長さを伸縮機構16
1~16
6でそれぞれ独立に調整することにより、テーブル12の動きを3次元空間内で6自由度で制御できる構造となっている。第1ステージシステム200Aは、テーブル12の駆動機構として、スチュワートプラットフォーム型の6自由度パラレルリンク機構を備えているので、高精度、高剛性、支持力が大きい、逆運動学計算が容易などの特徴がある。
【0021】
本実施形態に係る加工装置100では、ワークに対する加工時等において、ワークに対して所望の加工を行なうため、ビーム照射システム500に対し、より具体的には後述する照明光学系からのビームに対しワークW(テーブル12)の位置及び姿勢が制御される。原理的には、この逆に照明光学系からのビームの方が可動であっても良いし、ビームとワーク(テーブル)の両方が可動であっても良い。後述するようにビーム照射システム500は複雑な構成であるため、ワークの方を動かす方が簡便である。
【0022】
テーブル12は、ここでは、正三角形の各頂点の部分を切り落としたような形状の板部材から成る。テーブル12の上面に加工対象のワークWが搭載される。テーブル12には、ワークWを固定するためのチャック機構13(
図3では不図示、
図4、
図14参照)が設けられている。チャック機構13としては、例えばメカニカルチャックあるいは真空チャックなどが用いられる。また、テーブル12には、
図3に示される平面視円形の計測部材92を含む、計測装置110(
図11、
図12参照)が設けられている。計測装置110については、後に詳述する。なお、テーブル12は、
図3に示される形状に限らず、矩形板状、円盤状など如何なる形状でも良い。
【0023】
この場合、
図3から明らかなように、ロッド14
1~14
6のそれぞれは、両端がユニバーサルジョイント18を介して、スライダ10とテーブル12とにそれぞれ接続されている。また、ロッド14
1、14
2は、テーブル12の三角形の1つの頂点位置の近傍に接続され、スライダ10とこれらのロッド14
1、14
2とによって概略三角形が形成されるような配置となっている。同様に、ロッド14
3,14
4、及びロッド14
5,14
6は、テーブル12の三角形の残りの各頂点位置の近傍にそれぞれ接続され、スライダ10と、ロッド14
3、14
4、及びロッド14
5,14
6とによって、それぞれ概略三角形が形成されるような配置となっている。
【0024】
これらのロッド14
1~14
6のそれぞれは、
図3にロッド14
1について代表的に示されるように、それぞれの軸方向に相対移動可能な第1軸部材20と、第2軸部材22とを有しており、第1軸部材20の一端(下端)は、スライダ10にユニバーサルジョイント18を介して取り付けられており、第2軸部材22の他端(上端)は、テーブル12にユニバーサルジョイントを介して取り付けられている。
【0025】
第1軸部材20の内部には、段付き円柱状の中空部が形成されており、この中空部の下端側には、例えばベローズ型のエアシリンダが収納されている。このエアシリンダには、空圧回路及び空気圧源(いずれも不図示)が接続されている。そして、その空気圧源から供給される圧縮空気の空気圧を空圧回路を介して制御することにより、エアシリンダの内圧を制御し、これによってエアシリンダが有するピストンが軸方向に往復動されるようになっている。なお、ピストンの移動は、ピストンに作用する重力を利用しても良い。
【0026】
また、第1軸部材20の中空部内の上端側には、軸方向に並べて配置された複数の電機子コイルから成る電機子ユニット(不図示)が配置されている。
【0027】
一方、第2軸部材22は、その一端部(下端部)が第1軸部材20の中空部内に挿入されている。この第2軸部材22の一端部には、他の部分に比べて直径が小さい小径部が形成されており、この小径部の周囲には、磁性体部材から成る円管状の可動子ヨークが設けられている。可動子ヨークの外周部には、同一寸法の複数の永久磁石から成る中空円柱状、すなわち円筒状の磁石体が設けられている。この場合、可動子ヨークと磁石体とによって、中空円柱状の磁石ユニットが構成されている。本実施形態では、電機子ユニットと磁石ユニットとによって、電磁力リニアモータの一種であるシャフトモータが構成されている。このようにして構成されたシャフトモータでは、固定子である電機子ユニットの各コイルに対し、所定周期及び所定振幅の正弦波状の駆動電流を供給することにより、磁石ユニットと電機子ユニットとの間の電磁気的相互作用の一種である電磁相互作用によって発生するローレンツ力(駆動力)により第1軸部材20に対し第2軸部材22が軸方向に相対移動される。
【0028】
すなわち、本実施形態では、上述したエアシリンダと、シャフトモータとによって、第1軸部材20と第2軸部材22とを軸方向に相対駆動して、ロッド14
1~14
6のそれぞれを伸縮させる前述の伸縮機構16
1~16
6(
図14参照)が、それぞれ構成されている。
【0029】
また、シャフトモータの可動子である磁石ユニットは、第1軸部材20の内周面に設けられたエアパッドを介して固定子である電機子ユニットに対して非接触で支持されている。
【0030】
また、
図3では図示が省略されているが、ロッド14
1~14
6のそれぞれには、第1軸部材20を基準とする第2軸部材22の軸方向の位置を検出するアブソリュート型のリニアエンコーダ24
1~24
6が設けられており、リニアエンコーダ24
1~24
6の出力は、制御装置600に供給されるようになっている(
図14参照)。リニアエンコーダ24
1~24
6で検出される第2軸部材22の軸方向の位置は、ロッド14
1~14
6それぞれの長さに対応する。
【0031】
リニアエンコーダ24
1~24
6の出力に基づいて、伸縮機構16
1~16
6が、制御装置600により制御されるようになっている(
図14参照)。本実施形態の第1ステージシステム200Aと同様のパラレルリンク機構の構成の詳細は、例えば米国特許第6,940,582号明細書に開示されており、制御装置600は上記米国特許明細書に開示されているのと同様の方法により、逆運動学計算を用いて伸縮機構16
1~16
6を介してテーブル12の位置及び姿勢を制御する。
【0032】
第1ステージシステム200Aでは、ロッド141~146にそれぞれ設けられる伸縮機構161~166が、相互に直列(又は並列)に配置されたエアシリンダと電磁力リニアモータの一種であるシャフトモータとを有していている。このため、制御装置600ではエアシリンダの空圧制御により、テーブル12を、粗く大きく移動するとともに、シャフトモータにより細かく微動させることができる。この結果、テーブル12の6自由度方向の位置(すなわち位置及び姿勢)の制御を短時間で正確に行うことが可能になる。
【0033】
また、ロッド141~146のそれぞれは、シャフトモータの可動子である磁石ユニットを固定子である電機子ユニットに対して非接触で支持するエアパッドを有しているので、伸縮機構によるロッドの伸縮を制御する際の非線形成分となる摩擦を回避することができ、これにより、テーブル12の位置及び姿勢の制御を一層高精度に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態では、伸縮機構161~166を構成する電磁力リニアモータとしてシャフトモータが用いられ、該シャフトモータでは可動子側に円筒状の磁石が用いられた磁石ユニットが用いられているので、その磁石の放射方向の全方向に磁束(磁界)が発生し、その全方向の磁束を、電磁相互作用によるローレンツ力(駆動力)の発生に寄与させることができ、例えば通常のリニアモータ等に比較して明らかに大きな推力を発生させることができ、油圧シリンダ等に比べて小型化が容易である。
【0035】
したがって、各ロッドがシャフトモータをそれぞれ含む第1ステージシステム200Aによれば、小型・軽量化と出力の向上とを同時に実現でき、加工装置100に好適に適用できる。
【0036】
また、制御装置600では、伸縮機構をそれぞれ構成するエアシリンダの空圧を制御することにより低周波振動を制振するとともにシャフトモータに対する電流制御により高周波振動を絶縁するようにすることができる。なお、伸縮機構を、油圧シリンダを用いて構成しても良い。
【0037】
第1ステージシステム200Aは、さらに平面モータ26(
図14参照)を備えている。スライダ10の底面には、磁石ユニット(又はコイルユニット)から成る、平面モータ26の可動子が設けられ、これに対応してベースBSの内部には、コイルユニット(又は磁石ユニット)から成る、平面モータ26の固定子が収容されている。スライダ10の底面には、可動子を取り囲んで複数のエアベアリング(空気静圧軸受)が設けられ、複数のエアベアリングによってスライダ10は、平坦度が高く仕上げられたベースBSの上面(ガイド面)上に所定のクリアランス(ギャップ又は隙間)を介して浮上支持されている。平面モータ26の固定子と可動子との間の電磁相互作用によって生じる電磁力(ローレンツ力)により、スライダ10は、ベースBSの上面に対して非接触でXY平面内で移動される。本実施形態では、第1ステージシステム200Aは、
図1に示されるように、計測システム400及びビーム照射システム500、並びに搬送システム300の配置位置相互間で、テーブル12を自在に移動可能である。なお、第1ステージシステム200Aが、それぞれにワークWを搭載する複数のテーブル12を備えていても良い。例えば
図20に示されるように、2つのテーブル(12a、12b)を備えていても良い(
図20には、計測システム400を代表して後述のセンサ部38が、ビーム照射システム500を代表して後述の集光光学系530が、それぞれ示されている)。例えば複数のテーブルの1つに保持されたワークに対してビーム照射システム500を用いた加工を行っている間に、別の1つのテーブルに保持されたワークに対して計測システム400を用いた計測を行っても良い。かかる場合においても、計測システム400及びビーム照射システム500、並びに搬送システム300の配置位置相互間で、それぞれのテーブルが自在に移動可能である。あるいは、もっぱら計測システム400を用いた計測のときにワークを保持するテーブルと、もっぱらビーム照射システム500を用いた加工のときにワークを保持するテーブルを設けるとともに、その2つのテーブルに対するワークの搬入及び搬出がワーク搬送系等によって可能となる構成を採用した場合には、それぞれのスライダ10は、ベースBS上に固定されていても良い。複数のテーブル12を設ける場合であっても、それぞれのテーブル12は、6自由度方向に可動であり、その6自由度方向の位置の制御が可能である。
【0038】
なお、平面モータ26としては、エア浮上方式に限らず、磁気浮上方式の平面モータを用いても良い。後者の場合、スライダ10には、エアベアリングを設ける必要はない。また、平面モータ26としては、ムービング・マグネット型、ムービング・コイル型のいずれをも用いることができる。
【0039】
制御装置600では、平面モータ26を構成するコイルユニットの各コイルに供給する電流の大きさ及び方向の少なくとも一方を制御することで、スライダ10を、ベースBS上でX,Y2次元方向に自在に移動することができる。
【0040】
本実施形態では、第1ステージシステム200Aは、スライダ10のX軸方向及びY軸方向に関する位置情報を計測する位置計測系28(
図14参照)を備えている。位置計測系28としては、2次元アブソリュートエンコーダを用いることができる。具体的には、ベースBSの上面に、X軸方向の全長に渡る所定幅の帯状のアブソリュートコードを有する2次元スケールを設け、これに対応してスライダ10の底面に、発光素子などの光源と、該光源から射出された光束により照明された2次元スケールからの反射光をそれぞれ受光するX軸方向に配列された1次元受光素子アレイを有するXヘッド、及びY軸方向に配列された1次元受光素子アレイを有するYヘッドを設ける。なお、2次元スケールをスライダ10の底面に設け、エンコーダヘッドをベースBSに設けても良い。2次元スケールとしては、例えば非反射性の基材(反射率0%)上において、互いに直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)に沿って一定の周期で複数の正方形の反射部(マーク)が2次元配列され、反射部の反射特性(反射率)が、所定の規則に従う階調を有するものが使用される。2次元アブソリュートエンコーダとしては、例えば米国特許出願公開第2014/0070073号明細書に開示されている2次元アブソリュートエンコーダと同様の構成を採用しても良い。米国特許出願公開第2014/0070073号明細書と同様の構成のアブソリュート型2次元エンコーダによると、従来のインクリメンタルエンコーダと同等の高精度な2次元位置情報の計測が可能になる。アブソリュートエンコーダであるから、インクリメンタルエンコーダと異なり原点検出が不要である。位置計測系28の計測情報は、制御装置600に送られる。
【0041】
本実施形態では、後述するように、計測システム400により、テーブル12上に搭載されたワークW上の対象面(例えば上面)の少なくとも一部の3次元空間内の位置情報(本実施形態では形状情報)が計測され、その計測後にワークWに対する加工が行われる。ここで、対象面とは、加工の目標部位が設けられた面という意味である。したがって、制御装置600は、ワークW上の対象面の少なくとも一部の形状情報を計測したときに、その計測結果と、その計測時におけるロッド141~146に設けられたリニアエンコーダ241~246の計測結果及び位置計測系28の計測結果と、を対応づけることで、テーブル12に搭載されたワークW上の対象面に設けられた目標部位の位置及び姿勢を、加工装置100の基準座標系(以下、テーブル座標系と呼ぶ)と関連付けることができる。これにより、それ以後は、リニアエンコーダ241~246及び位置計測系28の計測結果に基づくテーブル12の6自由度方向の位置の制御により、ワークW上の目標部位(対象面)の目標値に対する6自由度方向に関する位置制御が可能になっている。本実施形態では、リニアエンコーダ241~246及び位置計測系28として、アブソリュート型のエンコーダが用いられているので原点出しが不要なためリセットが容易である。なお、テーブル12の6自由度方向の位置の制御によるワークWの目標部位の目標値に対する6自由度方向に関する位置制御を可能にするために用いられる、計測システム400で計測すべき前述の3次元空間内の位置情報は、形状に限らず、対象面の形状に応じた少なくとも3点の3次元位置情報であれば足りる。
【0042】
なお、本実施形態では、スライダ10をXY平面内で動かす駆動装置として、平面モータ26を用いる場合について説明したが、平面モータ26に代えてリニアモータを用いても良い。この場合、前述した2次元アブソリュートエンコーダに代えて、アブソリュート型のリニアエンコーダによりスライダ10の位置情報を計測する位置計測系を構成しても良い。また、スライダ10の位置情報を計測する位置計測系を、エンコーダに限らず、干渉計システムを用いて構成しても良い。
【0043】
また、本実施形態では、テーブルを移動する機構を、スライダをXY平面内で動かす平面モータと、スライダによってベースプラットホームが構成されるスチュワートプラットフォーム型の6自由度パラレルリンク機構とを用いて構成する場合について例示したが、これに限らず、その他のタイプのパラレルリンク機構、あるいはパラレルリンク機構以外の機構を用いてテーブルを移動する機構を構成しても良い。例えば、XY平面内で移動するスライダと、スライダ上でテーブル12をZ軸方向及びXY平面に対する傾斜方向に移動するZチルト駆動機構を採用しても良い。かかるZチルト駆動機構の一例としては、テーブル12を三角形の各頂点位置で例えばユニバーサルジョイントその他のジョイントを介して下方から支持するとともに、各支持点を互いに独立してZ軸方向に駆動可能な3つのアクチュエータ(ボイスコイルモータなど)を有する機構が挙げられる。ただし、第1ステージシステム200Aのテーブルを移動する機構の構成は、これらに限定されるものではなく、ワークが載置されるテーブル(可動部材)をXY平面内の3自由度方向、及びZ軸方向、並びにXY平面に対する傾斜方向の少なくとも5自由度方向に移動できる構成であれば良く、XY平面内で移動するスライダを備えていなくても良い。例えばテーブルとこのテーブルを移動するロボット(例えば、多関節ロボット)とによって第1ステージシステムを構成しても良い。いずれの構成であっても、テーブルの位置を計測する計測系を、アブソリュート型のリニアエンコーダの組み合わせ、又は該リニアエンコーダとアブソリュート型のロータリエンコーダとの組み合わせを用いて構成すると、リセットを容易にすることができる。
【0044】
この他、第1ステージシステム200Aに代えて、テーブル12をXY平面内の3自由度方向(θz方向を含む)、及びZ軸方向、並びにXY平面に対する傾斜方向(θx又はθy)の少なくとも5自由度方向に移動可能なシステムを採用しても良い。この場合において、テーブル12そのものを、エア浮上又は磁気浮上によって、ベースBSなどの支持部材の上面上に所定のクリアランス(ギャップ又は隙間)を介して浮上支持(非接触支持)しても良い。このような構成を採用すると、テーブルは、これを支持する部材に対して非接触で移動するので、位置決め精度上極めて有利であり、加工精度向上に大きく寄与する。
【0045】
計測システム400は、テーブル12に搭載されたワークの位置及び姿勢をテーブル座標系と関連付けるためのワークの3次元位置情報、一例として形状の計測を行う。計測システム400は、
図2に示されるように、レーザ非接触式の3次元計測機401を備えている。3次元計測機401は、ベースBS上に設置されたフレーム30と、フレーム30に取付けられたヘッド部32と、ヘッド部32に装着されたZ軸部材34と、Z軸部材34の下端に設けられた回転機構36と、回転機構36の下端に接続されたセンサ部38と、を備えている。
【0046】
フレーム30は、Y軸方向に延びる水平部材(第1支持部材)40と、水平部材40をY軸方向の両端部で下方から支持する一対の柱部材(第2支持部材)42とから成る。
ヘッド部32は、フレーム30の水平部材40に取付けられている。
なお、ベースBSと柱部材42との間に防振装置を設けても良い。また、柱部材42と水平部材40との間に防振装置を設けても良い。また、水平部材40とヘッド部32との間に防振装置を設けても良い。
【0047】
Z軸部材34は、ヘッド部32にZ軸方向に移動可能に装着され、Z駆動機構44(
図2では図示せず、
図14参照)によってZ軸方向に移動される。Z軸部材34のZ軸方向の位置(又は基準位置からの変位)は、Zエンコーダ46(
図2では図示せず、
図14参照)によって計測される。
【0048】
回転機構36は、センサ部38をヘッド部32(Z軸部材34)に対して所定角度範囲(例えば90度(π/2)又は180度(π)の範囲)内でZ軸と平行な回転中心軸回りに連続的に(又は所定角度ステップで)回転させることができる。本実施形態では、回転機構36によるセンサ部38の回転中心軸は、センサ部38を構成する後述する照射部から照射されるライン光の中心軸と一致しているが、一致していなくても良い。回転機構36によるセンサ部38の基準位置からの回転角度(又はセンサ部38のθz方向の位置)は、例えばロータリエンコーダなどの回転角度センサ48(
図2では図示せず、
図14参照)によって計測される。
【0049】
センサ部38は、テーブル12上に載置される被検物(
図2ではワークW)に光切断を行うためのライン光を照射する照射部50と、ライン光が照射されることで光切断面(線)が現れた被検物の表面を検出する検出部52と、を備える。また、センサ部38には、検出部52により検出された画像データに基づいて被検物の形状を求める演算処理部610が接続されている。演算処理部610は、本実施形態では加工装置100の構成各部を統括的に制御するための制御装置600に含まれる(
図1及び
図14参照)。
【0050】
照射部50は、図示しないシリンドリカルレンズ及び細い帯状の切り欠きを有したスリット板等から構成され、光源からの照明光を受けてライン光50aを生じさせるものである。光源としては、LED、レーザ光源あるいはSLD(super luminescent diode)等を用いることができる。LEDを用いた場合は安価に光源を形成することができる。また、レーザ光源を用いた場合、点光源であるため収差の少ないライン光を作ることができ、波長安定性に優れ半値幅が小さく、迷光カットに半値幅の小さいフィルタが使えるため、外乱の影響を少なくすることができる。また、SLDを用いた場合は、レーザ光源の特性に加え可干渉性がレーザ光よりも低いため被検物面でのスペックルの発生を抑えることができる。検出部52は、被検物(ワークW)の表面に投影されるライン光50aを照射部50の光照射方向とは異なる方向から撮像するためのものである。また、検出部52は、図示しない結像レンズやCCD等から構成され、後述するようにテーブル12を移動させてライン光50aで被検物(ワークW)を走査することにより被検物(ワークW)を撮像するようになっている。なお、照射部50及び検出部52の位置は、被検物(ワークW)の表面上のライン光50aの検出部52に対する入射方向と、照射部50の光照射方向とが、所定角度θを成すように定められている。本実施形態では、所定角度θが例えば45度に設定されているが、45度でなくても良い。
【0051】
検出部52で撮像された被検物(ワークW)の画像データは、演算処理部610に送られ、ここで所定の画像演算処理がなされて被検物(ワークW)の表面の高さ(例えば、被検物(ワークW)の表面の複数の位置におけるZ軸方向の位置)が算出され、被検物(ワークW)の3次元形状(表面形状)が求められるようになっている。演算処理部610は、被検物(ワークW)の画像において、被検物(ワークW)の凹凸に応じて変形したライン光50aによる光切断面(線)の位置情報に基づき、光切断面(線)(ライン光50a)が延びる長手方向の画素毎に三角測量の原理を用いて被検物(ワークW)表面の基準平面からの高さを算出し、被検物(ワークW)の3次元形状を求める演算処理を行う。
【0052】
本実施形態では、制御装置600が、被検物(ワークW)に投影されたライン光50aの長手方向と交差する方向、例えばライン光50aの長手方向と略直角なY軸方向にテーブル12を移動させることで、ライン光50aを被検物(ワークW)の表面を走査させる。制御装置600は、センサ部38の回転角度を回転角度センサ48で検出し、該検出結果に基づいてテーブル12をライン光50aの長手方向と略直角なY軸方向に移動させる。このように、本実施形態では、被検物(ワークW)の形状等の計測に際し、テーブル12を移動させるので、その前提として、ワークWを保持して計測システム400のセンサ部38の下方に移動してきた時点では、テーブル12の位置及び姿勢(6自由度方向の位置)は、常に所定の基準状態に設定されている。基準状態は、例えばロッド141~146がいずれも伸縮ストローク範囲の中立点に相当する長さ(あるいは最小の長さ)となる状態であり、このとき、テーブル12のZ軸、θx、θy及びθzの各方向の位置(Z、θx、θy、θz)=(Z0、0、0、0)となる。また、この基準状態では、テーブル12のXY平面内の位置(X,Y)は、位置計測系28によって計測されるスライダ10のX、Y位置と一致する。
【0053】
その後、被検物(ワークW)に対する上述した計測が開始されるが、この計測中を含み、テーブル12の6自由度方向の位置は、制御装置600によってテーブル座標系上で管理される。すなわち、制御装置600は、位置計測系28の計測情報に基づいて平面モータ26を制御するとともに、リニアエンコーダ241~246の計測値に基づいて、伸縮機構161~166を制御することで、テーブル12の6自由度方向の位置を制御する。
【0054】
ところで、本実施形態に係る3次元計測機401のように光切断法を用いる場合、センサ部38の照射部50から被検物(ワークW)に照射されるライン光50aを、センサ部38とテーブル12(被検物(ワークW))との相対移動方向と直交する方向に配置させるのが望ましい。例えば、
図2において、センサ部38と被検物(ワークW)との相対移動方向をY軸方向に設定した場合、ライン光50aをX軸方向に沿って配置するのが望ましい。このようにすると、計測時にライン光50aの全域を有効に利用した被検物(ワークW)に対する相対移動を行うことができ、被検物(ワークW)の形状を最適に計測できるためである。ライン光50aの向きと上述の相対移動方向とを常に直交させることができるように、回転機構36が設けられている。
【0055】
上述した3次元計測機401は、例えば米国特許出願公開第2012/0105867号明細書に開示されている形状測定装置と同様に構成されている。ただし、ライン光の被検物に対するX、Y平面に平行な方向の走査は、米国特許出願公開第2012/0105867号明細書に記載されている装置では、センサ部の移動によって行われるのに対し、本実施形態では、テーブル12の移動によって行われる点が相違する。なお、本実施形態では、ライン光の被検物に対するZ軸に平行な方向の走査に際しては、Z軸部材34及びテーブル12のいずれを移動しても良い。
【0056】
本実施形態に係る3次元計測機401を用いる計測方法では、光切断法を用いることで、被検物の表面に一本のライン光からなるライン状投影パターンを投影し、ライン状投影パターンを被検物表面の全域を走査させる毎に、被検物に投影されたライン状投影パターンを投影方向と異なる角度から撮像する。そして、撮像された被検物表面の撮像画像よりライン状投影パターンの長手方向の画素毎に三角測量の原理等を用いて被検物表面の基準平面からの高さを算出し、被検物表面の3次元形状を求める。
【0057】
この他、計測システム400を構成する3次元計測機としては、例えば米国特許第7,009,717号明細書に開示されている光プローブと同様の構成の装置を用いることもできる。この光プローブは、2つ以上の光学グループで構成され、2以上の視野方向と2以上の投影方向を含む。1つの光学グループでは1つ以上の視野方向と1つ以上の投影方向を含み、少なくとも1つの視野方向と少なくとも1つの投影方向が光学グループ間で異なり、視野方向により得られたデータは同じ光学グループの投影方向により投影されたパターンのみにより生成される。
【0058】
計測システム400は、上述の3次元計測機401の代わりに、あるいは上述の3次元計測機に加えて、アライメントマークを光学的に検出するマーク検出系56(
図14参照)を備えていても良い。マーク検出系56は、例えばワークに形成されたアライメントマークを検出することができる。制御装置600は、マーク検出系56を用いて少なくとも3つのアライメントマークの中心位置(3次元座標)をそれぞれ正確に検出することで、ワーク(又はテーブル12)の位置及び姿勢を算出する。かかるマーク検出系56は、例えばステレオカメラを含んで構成することができる。なお、ワークのアライメントマークに加えて、あるいは替えて、ワークを保持するテーブル12に設けられたアライメントマークを、マーク検出系56を用いて検出しても良い。
【0059】
本実施形態では、制御装置600は、上述したようにして3次元計測機401を用いて、ワークWの表面(対象面)を走査し、その表面形状データを取得する。そして、制御装置600は、その表面形状データを用いて最小自乗的処理を行いワーク上の対象面の3次元的位置及び姿勢をテーブル座標系に対して関連付けを行う。ここで、被検物(ワークW)に対する上述した計測中を含み、テーブル12の6自由度方向の位置は、制御装置600によってテーブル座標系上で管理されているので、ワークの3次元的位置及び姿勢がテーブル座標系に対して関連付けられた後は、加工時を含み、ワークWの6自由度方向の位置(すなわち位置及び姿勢)の制御は全てテーブル座標系に従ったテーブル12の制御により行うことができる。
【0060】
図4には、ビーム照射システム500が、マスクMを保持する保持部材としてのマスクステージ15、及びワークWが搭載されたテーブル12とともに示されている。
【0061】
第2ステージシステム200Bの一部を構成するマスクステージ15には、複数の開口(開口パターン)を有する開口部材としてのマスクMが、保持されている。なお、開口として貫通孔が設けられたマスクを用いても良いし、ビームを透過可能な基材(合成石英など)の上面又は下面に開口が形成されるようにクロムなどの遮光材料を蒸着してマスクを形成しても良い。本実施形態では、マスクステージ15に、マスクMが常設されているが、マスクステージ15上のマスクを交換可能な構成を採用しても良い。第2ステージシステム200Bは、マスクステージ15の移動によって、後述するように集光光学系530に対するマスクMの位置を変更可能である。具体的には、マスクMが常設されたマスクステージ15を、マスクステージ駆動系17(
図4では不図示、
図14参照)によって4自由度方向(X軸、Y軸、Z軸及びθzの各方向)に移動することで、マスクMの4自由度方向の位置の変更を行う。マスクステージ15のX軸方向、Y軸方向、θz方向、及びZ軸方向の位置情報は、例えば干渉計システムから成るマスクステージ位置計測系19(
図4では不図示、
図14参照)によって、例えば0.25~1nm程度の分解能で計測されている。マスクステージ位置計測系19を、エンコーダシステムその他のセンサにより構成しても良い。
【0062】
マスクステージ駆動系17は、例えば磁気浮上型の平面モータによって構成されている。平面モータに限らず、例えばマスクステージ15をX軸方向及びY軸方向に加えてZ軸方向にも移動可能な構成のリニアモータシステムによってマスクステージ駆動系を構成しても良い。なお、マスクステージ駆動系17は、4自由度方向にマスクステージ15を移動可能であるが、6自由度方向にマスクステージ15を移動可能であっても良いし、開口の変更が可能であれば、マスクステージ15がX軸方向、又はY軸方向だけに移動可能な構成であっても良い。
【0063】
本実施形態においては、マスクMとして、フィルム状、あるいは板状のマスクが用いられている。マスクMとして、ステンシルマスクを用いることもできる。マスクMは、低熱膨張の材料で形成しても良い。マスクステージ15には、
図4に断面図にて示されるようにビームの通路となる上下方向(Z軸方向)の貫通孔15aが形成されており、マスクMはこの貫通孔15aの上部に配置されている。
図5には、マスクMの平面図が示されている。
図5に示されるように、マスクMには、それぞれがX軸方向に延びており、同じ線幅(例えば、例えば10μm)を有し、X軸方向の長さの異なる複数種類(一例として4種類)のスリット状の開口、それぞれがY軸方向に延びており、同じ線幅(例えば、例えば10μm)を有し、Y軸方向の長さの異なる複数種類(一例として4種類)のスリット状の開口、直径の異なる複数種類(一例として4種類)の円形の開口(ピンホール状の開口)、及び一辺の長さが異なる複数種類(一例として4種類)の正方形の開口が形成されている。
図5に示される開口PAa及び開口PAbのそれぞれは、一例として線幅10μmで長さ10mmのスリット状の開口である。また、開口PAcは、一例として直径10μmのピンホール状の開口である。なお、開口の形状は、スリット状、円形、正方形に限られず、矩形、多角形などの他の形状で良いことは言うまでもないし、スリット状の開口、円形開口、正方形開口の少なくとも1つを備えていなくても良い。また、それぞれの形状の開口の数(種類)も4つに限られず、例えば円形の開口の数が1つで、正方形の開口の数が3つであっても良い。
【0064】
ビーム照射システム500は、
図4に示されるように、光源系510と、光源系から射出されるビームをマスクMに照射する照明光学系520と、マスクMを通過したビームをワークWの対象面上に集光する集光光学系530と、を備えている。
【0065】
光源系510は、
図6に示されるように、光源ユニット60と、光源ユニット60に接続されたライトガイドファイバ62と、ライトガイドファイバ62の射出側に配置されたダブルフライアイ光学系64と、コンデンサレンズ系66と、を備えている。
【0066】
光源ユニット60は、ハウジング68と、ハウジング68の内部に収納され、互いに平行にマトリクス状に並べられた複数のレーザユニット70と、を備えている。レーザユニット70としては、パルス発振又は連続波発振動作を行う各種レーザ、例えば炭酸ガスレーザ、Nd:YAGレーザ、ファイバレーザ、あるいはGaN系半導体レーザなどの光源のユニットを用いることができる。また、レーザユニット70として使用されるレーザは、ナノ秒レーザでも良いし、ピコ秒レーザでも良いし、フェムト秒レーザでも良い。
【0067】
ライトガイドファイバ62は、多数の光ファイバ素線をランダムに束ねて構成されたファイババンドルであって、複数のレーザユニット70の射出端に個別に接続された複数の入射口62aと、入射口62aの数より多い数の射出口を有する射出部62bとを有している。ライトガイドファイバ62は、複数のレーザユニット70のそれぞれから射出される複数のレーザビーム(以下、適宜「ビーム」と略記する)を、各入射口62aを介して受光して多数の射出口に分配し、各レーザビームの少なくとも一部を共通の射出口から射出させる。このようにして、ライトガイドファイバ62は、複数のレーザユニット70のそれぞれから射出されるビームを混合して射出する。これにより、単一のレーザユニットを用いる場合に比べて、総出力をレーザユニット70の数に応じて増加させることができる。ただし、単一のレーザユニットで十分な出力が得られる場合には、複数のレーザユニットを使わなくても良い。
【0068】
ここで、射出部62bは、次に説明するダブルフライアイ光学系64の入射端を構成する第1フライアイレンズ系の入射端の全体形状と相似な断面形状を有し、その断面内に射出口がほぼ均等な配置で設けられている。このため、ライトガイドファイバ62は、上述のようにして混合したビームを、第1フライアイレンズ系の入射端の全体形状と相似になるように整形する整形光学系の役目も兼ねている。なお、射出部62bは、照明光学系520の光軸方向に関して、第1フライアイレンズ系72の入射面から離れて配置されても良い。この場合、第1フライアイレンズ系72の入射面に形成される光強度分布がなだらかになるため、マスクM上での照度分布の均一性を向上させることができる。この場合、射出部62bが照明光学系520の光軸方向に関して第1フライアイレンズ系72の入射面から離れ過ぎると光量損失を招く恐れがあるため、射出部62bと第1フライアイレンズ系72の入射面との光軸方向の間隔は、照度均一性と光量損失とのバランスを鑑みて決定しても良い。
【0069】
ダブルフライアイ光学系64は、ビーム(照明光)の断面強度分布を一様化するためのもので、ライトガイドファイバ62後方のレーザビームのビーム路(光路)上に順次配置された第1フライアイレンズ系72、レンズ系74、及び第2フライアイレンズ系76を備えている。なお、第2フライアイレンズ系76の周囲には、絞りが設けられている。
【0070】
この場合、第1フライアイレンズ系72の入射面、第2フライアイレンズ系76の入射面は、光学的に互いに共役に設定されている。また、第1フライアイレンズ系72の射出側焦点面(ここに後述する面光源が形成される)、第2フライアイレンズ系76の射出側焦点面(ここに後述する面光源が形成される)、及び集光光学系530の瞳面(入射瞳)PP2は光学的に互いに共役に設定されている。
【0071】
ライトガイドファイバ62によって混合されたビームは、ダブルフライアイ光学系64の第1フライアイレンズ系72に入射する。これにより、第1フライアイレンズ系72の射出側焦点面に面光源、すなわち多数の光源像(点光源)から成る2次光源が形成される。これらの多数の点光源の各々からのレーザ光は、レンズ系74を介して第2フライアイレンズ系76に入射する。これにより、第2フライアイレンズ系76の射出側焦点面に多数の微小な光源像を所定形状の領域内に一様分布させた面光源(3次光源)が形成される。なお、第1フライアイレンズ系72の射出側焦点面は、第1フライアイレンズ系72がビームにより損傷する可能性を低減させるため、第1フライアイレンズ系72の射出面からビーム射出側に離れた面であっても良い。このとき、第1フライアイレンズ系72による2次光源は、第1フライアイレンズ系72の射出面から外れた位置に形成される。同様に、第2フライアイレンズ系76の射出側焦点面は、第2フライアイレンズ系76の射出面からビーム射出側に離れた面であっても良い。このとき、第2フライアイレンズ系76による3次光源は、第2フライアイレンズ系76の射出面から外れた位置に形成される。
【0072】
コンデンサレンズ系66は、第2フライアイレンズ系76の射出面又はその近傍に位置する前側焦点を有し、上記3次光源から射出されたレーザ光を、照度分布が均一なビームとして射出する。
【0073】
なお、第2フライアイレンズ系76の入射端の面積、コンデンサレンズ系66の焦点距離などの最適化により、コンデンサレンズ系66から射出されるビームは、平行ビームとみなすことができる。
【0074】
本実施形態の光源系510は、ライトガイドファイバ62とダブルフライアイ光学系64とコンデンサレンズ系66とを備えた照度均一化光学系を備え、この照度均一化光学系を用いて、複数のレーザユニット70からそれぞれ射出されるビームを混合し、断面照度分布が均一化された平行ビームを生成する。なお、断面照度分布を均一化することが、照度均一化光学系に入射するビームのビーム断面における照度分布よりも、照度均一化光学系から射出されるビームのビーム断面における照度分布の方が均一により近い状態となることを含んでもいても良い。
【0075】
なお、照度均一化光学系は、上述した構成に限られない。ロッドインテグレータ、コリメーターレンズ系などを用いて照度均一化光学系を構成しても良い。
【0076】
光源系510の光源ユニット60は、制御装置600に接続されており(
図14参照)、制御装置600によって、光源ユニット60を構成する複数のレーザユニット70のオンオフが、個別に制御される。これにより、照明光学系520(及びマスクM)を介して集光光学系530からワークW(上の対象面)に照射されるレーザビームの光量(レーザ出力)が調整される。なお、ワークW(上の対象面)に照射されるレーザビームの光量(エネルギ)の調整として、複数のレーザユニット70の各々のレーザ出力を調整しても良いし、複数のレーザユニット70からマスクMまでの間の光路中に可変減衰器を配置して、その減衰器を通過するレーザビームの光量(エネルギ)を変更しても良い。
【0077】
照明光学系520は、
図4に示されるように、光源系510(コンデンサレンズ系66)からの平行ビームの光路上に順次配置された光学デバイス78、第1部分照明光学系79、ミラーアレイ80及び第2部分照明光学系82を有する。
【0078】
光学デバイス78は、光源系510(コンデンサレンズ系66)からの平行ビームの断面の強度分布を変更可能である。本実施形態では、光学デバイス78は、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)の一種であるミラーアレイによって構成されている。ここで、空間光変調器とは、所定方向へ進行する光の振幅(強度)、位相あるいは偏光の状態を空間的に変調する素子の総称である。以下では、光学デバイス78を、第2のミラーアレイ78とも呼ぶ。第2のミラーアレイ78は、光源系510からの平行ビームの照明光学系520の瞳面PP1における断面強度分布(、照明形状)を変更可能である。なお、以下では、第2のミラーアレイ78との識別のため、上述のミラーアレイ80を、第1のミラーアレイ80と称する(光学デバイス80と称しても良い)。
【0079】
第2のミラーアレイ78は、
図7に示されるように、XY平面及びXZ平面に対して45度(π/4)を成す面(以下、便宜上基準面と呼ぶ)を有するベース部材78Aと、ベース部材78Aの基準面上に例えばI行J列のマトリクス状に配置された例えばK(=I×J)個のミラー素子81
i,j(i=1~I、j=1~J)と、各ミラー素子81
i,jを個別に動かすK個のアクチュエータ(不図示)を含む駆動部78B(
図7では図示せず、
図14参照)とを有している。
【0080】
第2のミラーアレイ78の各ミラー素子81
i,jは、回転軸回りに回動可能に構成され、その反射面の基準面に対する傾斜角度を所定角度範囲内の任意の角度に設定可能である。各ミラー素子の反射面の角度は、回転軸の回転角度を検出するセンサ、例えばロータリエンコーダ83
i,j(
図7では不図示、
図14参照)によって計測される。なお、ミラー素子81
i,jの少なくとも1つに計測光を照射するともに、その反射光を受光して、計測光が照射された少なくとも1つのミラーの回転角度を光学的に検出するセンサを設けても良い。
【0081】
駆動部78Bは、例えばアクチュエータとして電磁石あるいはボイスコイルモータを含み、個々のミラー素子81i,jは、アクチュエータによって移動されて非常に高応答で動作する。
【0082】
第2のミラーアレイ78を構成する複数のミラー素子81
i,jのそれぞれは、光源系510からの平行ビームによって照明され、その反射面の傾斜角度に応じた方向に複数の反射ビーム(平行ビーム)LBを射出し、第1部分照明光学系79に入射させる(
図7参照)。第1部分照明光学系79は、リレーレンズを含む複数のレンズ等を含み、例えばその内部に照明光学系520の瞳面PP1を有する。第1部分照明光学系79は、第2のミラーアレイ78と瞳面PP1との間に部分光学系791を有する。部分光学系791は、その前側焦点位置が第2のミラーアレイ78が配置されている面又はその近傍に位置し、且つその後側焦点位置が瞳面PP1又はその近傍に位置するように配置され、第2のミラーアレイ78からの複数の反射ビームLBの進行方向に応じて、複数の反射ビームLBを瞳面PP1上に分布させる。すなわち第2のミラーアレイ78は、複数のミラー素子81
i,jのそれぞれの反射面の傾斜角度を調整することによって瞳面PP1におけるビームの断面強度分布を設定、あるいは変更することができる。したがって、第2のミラーアレイ78は、複数のミラー素子81
i,jのそれぞれの反射面の傾斜角度を調整することによって瞳面PP1におけるビームの断面形状(照明形状と呼んでも良い)を設定、あるいは変更することができる。ここで、瞳面PP1は集光光学系530の瞳面(入射瞳面)PP2の共役面である。なお、部分光学系791の前側焦点位置は、第2のミラーアレイ78が配置されている面又はその近傍でなくても良い。また、部分光学系791の後側焦点位置は瞳面PP1またはその近傍でなくても良い。
【0083】
なお、部分光学系791は、入射ビームの角度を射出側での位置に変換する光学系と見なすこともできる。また、光学デバイス78を、ミラーアレイ等の空間光変調器に限らず、例えば回転可能な円盤部材に複数種類の開口絞りが形成され、その複数種類の開口絞りをビームの光路上に交換して配置可能な照明系開口絞り板等によって構成することも可能である。この照明系開口絞り板は、第1部分照明光学系79内の瞳面PP1又はその近傍に配置しても良いし、集光光学系530の瞳面PP2又はその近傍に配置しても良い。この場合、光学デバイス78を設けなくても良い。なお、第2のミラーアレイ78は、集光光学系530の像面(加工面MP(
図4、
図9(A)参照))と共役な面又はその近傍に位置しており、かつ光源系510からの平行ビームの一部(例えば、一部のミラー素子(適宜、ミラーとも称する)からの平行ビーム)を、照明光学系520に入射させないようにすることもできるので、集光光学系530の像面(加工面MP)における加工ビームの強度、あるいは強度分布を調整することが可能である。例えば、集光光学系530の像面(加工面MP)において、集光光学系530からの加工ビームの照射領域内の強度分布を調整することができる。
【0084】
本実施形態では、光学デバイス(一例として第2のミラーアレイ)78を経由した平行ビームは、後述するように第1部分照明光学系79、第1のミラーアレイ80及び第2部分照明光学系82を介してマスクMに照射され、マスクMの開口を介して集光光学系530に入射する。光学デバイス(一例として第2のミラーアレイ)78を用いて光源系510からの平行ビームの断面強度分布を変更することによって、照明光学系520の瞳面PP1、及び集光光学系530の瞳面(入射瞳)PP2におけるビームの強度分布、すなわちビームの断面形状を変更することが可能である。
【0085】
また、光学デバイス78は、集光光学系530の像面(加工面MP)と共役な位置、又はその近傍に配置されているので、光学デバイス78を用いて光源系510からの平行ビームの断面強度分布を変換することによって、実質的に集光光学系530から射出されるビームの集光光学系530の像面における強度分布を変更することも可能である。例えば、第2のミラーアレイ78の一部のミラーの傾斜角度を、そのミラーで反射されたビームが照明光学系520に入射しないように設定することで、像面(加工面MP)におけるビームの照射領域内の強度分布を変更することができる。また、光学デバイス78は、マスクMの開口が配置される面と共役、又はその近傍に配置されているので、光学デバイス78を用いて光源系510からの平行ビームの断面強度分布を変換することによって、実質的にマスクM上でのビームの強度分布を変更、あるいは調整することが可能である。例えば、マスクMの開口に入射するビームに不均一な強度分布を与えることも可能である。
【0086】
照明光学系520の瞳面PP1に第2のミラーアレイ78の各ミラー素子81i,jから反射面の傾斜角度に応じた方向に射出された複数の反射ビーム(平行ビーム)LBが入射され、その瞳面PP1における断面強度分布(すなわち、断面形状、照明形状)が、第2のミラーアレイ78の各ミラー素子81i,jの反射面の傾斜角度に応じて設定される。第1の部分照明光学系79によって、その設定された断面強度分布を有するビームが、照明光学系520の瞳面PP1と共役な位置又はその近傍に配置される第1のミラーアレイ80に照射される。
【0087】
第1のミラーアレイ80は、
図8に示されるように、XY平面及びXZ平面に対して45度(π/4)を成す面(以下、便宜上基準面と呼ぶ)を有するベース部材80Aと、ベース部材80Aの基準面上に例えばP行Q列のマトリクス状に配置された例えばM(=P×Q)個のミラー素子81
p,q(p=1~P、q=1~Q)と、各ミラー素子81
p,qを個別に動かすM個のアクチュエータ(不図示)を含む駆動部80B(
図4では図示せず、
図14参照)とを有し、向きは左右反対ではあるが、第2のミラーアレイ78と同様に構成されている。
【0088】
第1のミラーアレイ80を構成する複数のミラー素子のうち、第1部分照明光学系79からの平行ビームによって照明されたミラー素子81p,qのそれぞれは、その反射面の傾斜角度に応じた方向に複数の反射ビーム(平行ビーム)LBを射出し、第2部分照明光学系82に入射させ、第2部分照明光学系82から射出されるビームを、任意の大きさ、任意の形状(例えば、スポット状又はスリット状など)で、マスクM上に集光することができる。この第2部分照明光学系82は、その前側焦点位置が第1のミラーアレイ80の位置又はその近傍に位置し、且つその後側焦点位置がマスクMの位置又はその近傍(例えば、マスクMの開口が配置されている面)に位置している。したがって、本実施形態では、マスクMのXY平面内の位置を調整することにより、マスクM上の任意の1つの開口を含む一部の領域のみにビームを照射することが可能である。したがって、本実施形態では、照明光学系520からのビームを、マスクMを介して効率よく集光光学系530に入射させることができる。なお、マスクMの開口にビームが照射されるならば、第1のミラーアレイ80を設けなくても良い。なお、第2部分照明光学系82の前側焦点位置は第1のミラーアレイ80の位置又はその近傍に位置しなくても良い。また、第2部分照明光学系82の後側焦点位置はマスクMの位置又はその近傍に位置していなくても良い。
【0089】
本実施形態において、集光光学系530は、開口数N.A.が例えば0.5以上、好ましくは0.6以上の高NAで、低収差の光学系である。本実施形態では、集光光学系530として、NAが0.75、投影倍率1/10で、最大フィールドが1mm角の縮小投影レンズが用いられている。
【0090】
本実施形態において、集光光学系530は、大口径、低収差かつ高NAであるため、第1のミラーアレイ80から第2部分照明光学系82を介してマスクM上に照射され、マスクMの1つの開口を透過した複数のビームを、像面上の少なくとも1つの位置あるいは領域に集光することができる。詳細は後述するが、本実施形態において、ビーム照射システム500は、集光光学系530から射出されるビームを、マスクMの開口の形状に応じて、例えば、スポット形状又はスリット形状に集光することができる。本実施形態において、集光光学系530は、マスクM上の開口パターンを像面上に縮小投影して、開口パターンの縮小像を像面に形成することができる、とも言える。なお、集光光学系530の像面において、開口の像(ビームの照射領域)は、集光光学系530の光軸上に形成しても良いし、光軸からずれた位置に形成しても良い。この場合、加工に用いるマスクMの開口を、集光光学系530の光軸から外れた位置に配置し、その開口に第1ミラーアレイ80からのビームが照射されるようにすれば良い。
【0091】
なお、マスクステージ15を移動して、加工に用いられる開口を変更することにより、集光光学系530の像面(加工面MP)におけるビームの照射領域の大きさ、形状を変更することができるので、マスクステージ15を、集光光学系530の像面(加工面MP)におけるビームの強度分布を変更する機構の一部と見なしても良い。
【0092】
また、集光光学系530は、1又は複数枚のレンズを有している(
図4、
図8等では、1枚のレンズを代表的に図示)ので、入射光の面積を大きくすることができ、これにより、開口数N.A.が小さい集光光学系を用いる場合に比べてより多量の光エネルギを取り込むことができる。したがって、本実施形態に係る集光光学系530によって集光されたビームは、加工面MPにおいて極めてシャープで高エネルギ密度を有することとなり、このことはワークの加工に際して加工精度を高めることに直結する。
【0093】
本実施形態では、後述するように、テーブル12をXY平面に平行な走査方向(
図4では、一例としてY軸方向)に移動することにより、目標部位が設けられたワークWの加工対象面(適宜、対象面とも称する)TASを、XY平面に平行に、又は垂直になる状態にして、ビームとワークWとを走査方向(スキャン方向)に相対走査しながら加工(加工処理)を行う場合を説明する。なお、加工の際に、テーブル12のY軸方向への移動中に、X軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向の少なくとも1つの方向にテーブル12を移動しても良いことは言うまでもない。
【0094】
本実施形態に係る加工装置100では、前述したような手法で大いに高められたレーザの総出力(レーザパワー)を極力生かした高スループットな加工処理を実現するため、後述するように、マスクM上のスリット状の開口、例えば前述のスリット状の開口PAa又はPAbの像、すなわちスリット状のビームの照射領域(
図9(B)の符号LS参照)を、集光光学系530の像面(以下、加工面と呼ぶ)MP(例えば
図4及び
図9(A)参照)上に形成し、その照射領域LSを形成するビームに対してその長手方向に垂直な方向(Y軸方向)にワークWを相対走査しながら所望の加工(例えば除去加工など)を行うことができる。これにより、スポット状のビームでワークを走査(スキャン)する場合に比べて格段広い面積(例えば数倍から数十倍程度の面積)を一気に加工、例えば除去加工を行うことができる。
【0095】
なお、
図4、
図9においては、ワークWに対する除去加工の一例を示しており、加工面MPが、ワークWの加工後の表面(ワークWの一部がビームで除去された後の表面)と一致するようにワークWの位置が制御される。この場合、
図4,9からの明らかなように、ワークWの加工前の表面(対象面TAS)は、像面(加工面MP)から+Z方向にΔZだけずれている。このΔZは、ビームの強度、ワークWの材質、ビームとワークの相対的な走査速度の少なくとも1つに基づいて決めても良い。
なお、所望の除去加工で可能であれば、加工面MPが、ワークWの加工後の表面と一致していなくても良い。例えば、ワークWの対象面TASと加工面MPとがほぼ一致するようにワークWの位置を制御しても良い。
【0096】
本実施形態の加工装置100では、第2のミラーアレイ78を用いて設定される、光源系510からの平行ビームの、照明光学系520の瞳面PP1の断面強度分布(集光光学系530の瞳面PP2における断面強度分布)と、マスクM上の開口との組み合わせによって、集光光学系530の射出面側の第1面及びその近傍におけるビームの3次元的な強度分布を変更可能である。以下、これについて詳述する。本実施形態において、集光光学系530の射出面側の第1面とは、マスクM上の開口の像が形成される面であり、例えばワークの表面の一部を集光光学系530からのビームで除去加工する場合に、加工面MPを指す。本実施形態において、加工面MPは、集光光学系530の像面である(例えば
図4及び
図9(A)参照)が、加工面MPは、像面の近傍の面でも良い。また、本実施形態において、加工面MPは、集光光学系530の射出側の光軸AXに垂直であるが、垂直でなくても良い。また、加工面MPに照射されるビームLBは、本実施形態では、ワークWの切削加工などを行なう際に工具として使われる刃物と同様に機能するとも言えるので、そのビームの先端を、本明細書では、光刃物とも称する。
【0097】
図10(A)には、本実施形態に係る加工装置100において設定可能な加工モードの一例の説明図が示されている。ここでは、モード1からモード6の6つのモードについて説明する。
図10(A)において、「照明形状」の図には、瞳面の中心(光軸)で直交する仮想の軸線が一点鎖線で示されている。
図10(A)において、「照明形状」は、照明光学系520の瞳面PP1におけるビームの断面強度分布(断面形状)であるが、集光光学系530の瞳面PP2におけるビームの断面強度分布(断面形状)とも言える。
【0098】
さらに、
図10(A)において、ビームの先端(光刃物)の「正面図」と「側面図」は、集光光学系530と像面(加工面MP)との間の光軸に垂直な仮想面と、像面(加工面MP)との間におけるビームの先端(光刃物)の形状を示すものである。なお、非可視波長帯のレーザビームを用いる場合にも、見えるものと仮定して、
図10(A)を用いて説明することができる。
【0099】
モード1は、一様な強度分布であり、光軸を中心とした円形の照明形状(通常照明とも呼ぶ)を設定し、マスクM上の開口として、線幅10μmで長さ10mmのスリット状開口、すなわち前述の開口PAa又はPAbを選択する加工モードである。本明細書において、開口を選択するとは、第1のミラーアレイ80を用いて、その選択された開口を含むマスクM上の一部の領域にのみ照明光が照射される照明フィールド(照明光の照射領域)を形成(設定)することを含む。ここで、第1のミラーアレイ80を用いて、選択された開口を含むマスクM上の一部の領域にのみ照明フィールドを形成するのは、光源系510から射出されるビームの全体を、選択されたパターン部分に集中して照射することで、レーザパワーの損失を極力小さくするためである。
【0100】
モード1では、光刃物の形状は、
図10(A)に示されるように、正面から見ると、上下反転した等脚台形状でその刃先の長さは1mmとなり、側面から見ると上下反転した二等辺三角形状でその刃先の寸法は1μmとなる。なお、
図10(A)において、光刃物の正面図及び側面図にそれぞれ示されている座標軸が示す方向は、加工の際のワークの走査方向を示す。モード1において、開口PAaが選択された場合には、走査方向は、X軸方向となり、開口PAbが選択された場合には、走査方向はY軸方向となる。
【0101】
モード2は、マスクM上の開口として、前述のスリット状開口PAa又はPAbを選択し、選択した開口の長手方向に対応する直線部を有する半円形の照明形状を設定する加工モードである。モード2の照明形状は、
図10(A)の紙面左右方向に延びる仮想軸線に沿うエッジを有しており、瞳面においては、この仮想軸線で分けられる2つの領域のうちの一側の領域にビームが分布する。モード2における半円形の照明形状は、瞳面の中心(光軸)に関して、1回回転対称な照明形状と称することができる。モード2では、紙面左右方向に延びる仮想軸線が、像面(XY平面)におけるワークの走査方向と直交する方向に対応している。
【0102】
モード2では、光刃物の形状は、
図10(A)に示されるように、正面から見ると、モード1と同様、上下反転した等脚台形状でその刃先の長さは1mmとなるが、側面から見るとモード1における上下反転した二等辺三角形を半分にした直角三角形状となる。モード2において、開口PAaが選択された場合には、走査方向は、X軸方向となり、開口PAbが選択された場合には、走査方向はY軸方向となる。モード2では、側面図に示すように、光刃物(ビームの先端)は、光刃物の進行方向(ワークの走査方向と逆方向)の側に、集光光学系530の光軸に平行な面内に実質的に含まれる外縁を有し、この外縁を含む面にほぼ直交する方向(走査方向と平行な方向)にワークと光刃物が相対的に移動する。なお、モード2の照明形状においては、紙面左右方向に延びる仮想軸線に沿うエッジを有しており、瞳面においては、この仮想軸線で分けられる2つの領域のうちの一側(下側)の領域にビームが分布しているが、他側(上側)の領域にビームが分布する別のモードがあっても良い。
【0103】
モード3は、マスクM上の開口として、前述のスリット状開口PAa又はPAbを選択し、選択した開口の長手方向に直交する方向に対応する直線部を有する半円形の照明形状を設定する加工モードである。モード3の照明形状は、
図10(A)の紙面上下方向に延びる仮想軸線に沿うエッジを有しており、瞳面においては、この仮想軸線で分けられる2つの領域のうちの一側の領域にビームが分布する。このモード3における半円形の照明形状は、瞳面の中心(光軸)に関して、1回回転対称な照明形状と称することができる。モード3では、紙面上下方向に延びる仮想軸線が、像面(XY平面)におけるワークの走査方向に対応している。モード3では、光刃物の形状は、
図10(A)に示されるように、正面から見ると、モード1における上下反転した等脚台形から右端の直角三角形部分を切除したような台形状であり、一方の脚は、上底と下底に対して垂直であり、刃先の長さは、モード1、2と同様に1mmである。側面から見ると、モード1と同様の二等辺三角形状でその刃先の寸法は1μmとなる。モード3において、開口PAaが選択された場合には、走査方向は、X軸方向となり、開口PAbが選択された場合には、走査方向はY軸方向となる。モード3では、正面図に示すように、光刃物(ビームの先端)は、集光光学系530の光軸に平行な面内に実質的に含まれる外縁を有し、この外縁を含む面と平行な方向(走査方向と平行な方向)にワークと光刃物が相対的に移動する。なお、モード3の照明形状においては、紙面上下方向に延びる仮想軸線に沿うエッジを有しており、瞳面においては、この仮想軸線で分けられる2つの領域のうちの一側(左側)の領域にビームが分布しているが、他側(右側)の領域にビームが分布する別のモードがあっても良い。
【0104】
モード4は、マスクM上の開口として、前述のスリット状開口PAa又はPAbを選択し、選択した開口の長手方向及び長手方向に直交する方向にそれぞれ対応する2つの直線部を有する四分円形の照明形状を設定する加工モードである。モード4の照明形状は、
図10(A)の紙面左右方向に延びる仮想軸線に沿うエッジと、紙面上下方向に延びる仮想軸線に沿うエッジを有しており、瞳面においては、この2つの仮想軸線で分けられる4つの領域のうちの1つの領域にビームが分布する。モード4では、光刃物の形状は、
図10(A)に示されるように、正面から見ると、モード3と同様の台形状で、側面から見ると、モード2と同様の直角三角形状となる。モード4において、パターンPAaが選択された場合には、走査方向は、X軸方向となり、パターンPAbが選択された場合には、走査方向はY軸方向となる。このモード4における四分円形の照明形状は、瞳面の中心(光軸)に関して、1回回転対称な照明形状を称することができる。モード4では、モード2と同様に、光刃物(ビームの先端)は、光刃物の進行方向(ワークの走査方向と逆方向)の側に、集光光学系530の光軸に平行な面内に実質的に含まれる第1の外縁を有し、この第1の外縁が含まれる面とほぼ直交する方向(走査方向と平行な方向)にワークと光刃物が相対的に移動する。さらにモード4では、モード3と同様に、光刃物(ビームの先端)は、集光光学系530の光軸に平行な面内に実質的に含まれる第2の外縁を有し、この第2の外縁を含む面とほぼ平行な方向(走査方向と平行な方向)にワークと光刃物が相対的に移動する。なお、モード4の照明形状においては、紙面左右方向に延びる仮想軸線に沿うエッジと、紙面上下方向に延びる仮想軸線に沿うエッジを有しており、瞳面においては、この2つの仮想軸線で分けられる4つの領域(象限)のうちの1つの領域(第3象限)にビームが分布しているが、4つの領域(象限)のうちの他の領域(象限)、例えば第1象限にビームが分布する別のモードがあっても良い。
【0105】
モード5は、瞳面の中心部に、光軸を中心とする直径の小さな円形の照明形状(小σ照明とも呼ぶ)を設定し、マスクM上の開口として、直径10μmのピンホール状の開口PAcを選択する加工モードである。モード5では、光刃物の形状は、
図10(A)に示されるように、正面及び側面のいずれから見ても、直径1μmの上下(Z軸方向)に延びる直線状となる。この場合の光刃物は、断面円形の棒状であり、側面視では、いずれの方向から見ても直径1μmの上下(Z軸方向)に延びる直線状である。したがって、モード5においては、走査方向は、任意の方向に設定することができる。
【0106】
モード6は、照明形状として通常照明を設定し、マスクM上の開口として、直径10μmのピンホール状の開口PAcを選択する加工モードである。モード6では、光刃物の形状は、
図10(A)に示されるように、正面及び側面のいずれから見ても、モード1の側面図と同様の上下反転した二等辺三角形状となる。この場合の光刃物は、断面円形の円錐状であり、側面視では、いずれの方向から見ても同じ上下反転した二等辺三角形状である。したがって、モード6においては、走査方向は、任意の方向に設定することができる。
【0107】
なお、モード2と同様のマスクMの開口と照明形状を用いて、像面(XY平面)内において、X軸及びY軸と交差する方向にワークとビームを相対的に移動しても良い。同様に、モード3と同様のマスクMの開口と照明形状を用いて、像面(XY平面)内において、X軸及びY軸と交差する方向にワークとビームを相対的に移動しても良い。同様に、モード4と同様のマスクMの開口と照明形状を用いて、像面(XY平面)内において、X軸及びY軸と交差する方向にワークとビームを相対的に移動しても良い。
【0108】
なお、モード2、3、4のいずれかの照明形状と、開口PAc(ピンホール)との組み合わせを設定しても良い。
また、
図19(A)、
図19(B)に示されるように、直線状のエッジが、仮想軸線に沿っていない(仮想軸線と非平行な)照明形状を設定しても良い。
また、
図19(B)に示されるように、4つの領域(象限)のうちの3の領域(象限)にまたがる照明形状を設定しても良い。
また、
図19(C)、
図19(D)に示されるように、瞳面の中心(光軸)を含む領域をビームが通過しない照明形状を設定しても良い。このような照明形状の場合にも、
図19(A)、
図19(B)に示されるように、直線状のエッジが、仮想軸線に沿っていなくても良い。
【0109】
なお、モード1、2、3、4のうちの1つから他の1つへの変更は、照明形状の変更のみが行われる。
また、モード5、6の一方から他方への変更も、照明形状の変更のみが行われる。
また、モード1、6の一方から他方への変更は、開口形状の変更のみが行われる。
また、モード1、2、3、4のうちの1つからモード5への変更、あるいはモード5からモード1、2、3、4のうちの1つへの変更は、照明形状及び開口形状の変更が行われる。
また、モード2、3、4のうちの1つからモード6への変更、あるいはモード6からモード2、3、4のうちの1つへの変更は、照明形状及び開口形状の変更が行われる。
【0110】
図10(B)には、モード1、モード2、モード3及びモード4の光刃物をそれぞれ用いて加工するのに好適なワークの目標部位の例が示され、
図10(C)には、モード5及びモード6の光刃物をそれぞれ用いて加工するのに好適なワークの目標部位の例が示されている。
【0111】
モード1の光刃物は、例えば
図10(A)中の光刃物正面図及び光刃物側面図、並びに
図10(B)に示されるように、ワーク表面の除去加工に特に好適である。また、モード2、モード3及びモード4それぞれの光刃物は、例えば
図10(A)中の光刃物正面図及び光刃物側面図、並びに
図10(B)に示されるように、ワークの表面に所定深さの溝部を形成する際の溝部側面の除去加工に好適である。特に、モード4は、溝部のコーナー部分の除去加工に好適である。
【0112】
また、モード5の光刃物は、例えば
図10(A)中の光刃物正面図及び光刃物側面図から明らかなように、例えば板状の部材を、任意の曲線状又は直線上に切断する切断加工に好適である。
図10(C)中の「mode5」は、モード5の光刃物によって板状部材が切断された結果、瓢箪のような形状のワークが作製され、そのワークの側面がモード5の光刃物による切断面であることを示している。
【0113】
また、モード6の光刃物は、
図10(A)中の光刃物正面図及び光刃物側面図並びに
図10(C)から明らかなように、ワーク表面に任意形状の微細な溝パターン、例えばバイオチップ流路等の微細パターンを形成するのに特に適している。
【0114】
加工装置100には、この他、液体供給装置540(
図14参照)が設けられている。液体供給装置540は、例えば、集光光学系530からのビームを用いた焼入れ加工に用いることができる。液体供給装置540は、冷却液(冷却水)を供給する供給口を有し、冷却液を冷却対象物に供給するものである。液体供給装置540は、制御装置600に接続されている(
図14参照)。制御装置600は、焼入れ加工に際し、光源ユニット60を制御してワークに照射される集光光学系530からのビームの熱エネルギを焼入れ加工に適切な値に調節する。そして、制御装置600は、テーブル12に保持されたワークの表面にビームを照射して高温にした後、テーブル12にワークを保持したまま、液体供給装置540からの冷却液をその高温部に噴射して急冷することにより、焼入れ加工を行うことができる。
【0115】
本実施形態に係る加工装置100には、集光光学系530からのビームを受けて計測処理を行う計測装置110(
図11参照)が設けられている。例えば、計測装置110は、集光光学系530からのビームを受光して、ビームの光学特性などを計測可能である。本実施形態では、計測装置110は、例えば、ビームの強度分布を管理するために、用いることができる。本実施形態では、計測装置110は、集光光学系530の像面(本実施形態では、加工面MPと一致)におけるビームの強度分布と、集光光学系530の瞳面PP2におけるビームの強度分布の少なくとも一方を計測可能である。なお、集光光学系530の瞳面PP2におけるビームの強度分布は、集光光学系530の像面におけるビームの角度方向の強度分布と見なすこともできる。
【0116】
計測装置110は、
図11に示されるように、テーブル12の上面の一部を構成する計測部材92と、テーブル12の内部に収容された残りの構成部分とを有している。
【0117】
図12には、計測装置110の一部であり、テーブル12内部に配置された構成部分が、計測部材92とともに斜視図にて示されている。
図12に示されるように、計測装置110は、計測部材92と、第1光学系94と、光学系ユニット95と、受光器96とを備えている。
【0118】
計測部材92は、上面がテーブル12の残りの部分と面一(同一面)となる状態で、テーブル12の上面に形成された円形開口内に配置されている。計測部材92は、集光光学系530からのビームを透過可能な、例えば合成石英などで形成された基材を有し、その基材の表面には、クロム等の金属の蒸着により反射膜を兼ねる遮光膜が形成されており、その遮光膜の中央部に、円形の開口92aが形成されている。したがって、計測部材92の上面は、遮光膜の表面と開口92a内の基材表面とを含む。なお、遮光膜は、非常に薄く形成されており、以下の説明では、遮光膜の表面と開口92a内の基材表面とは同一面内に位置するとみなして説明する。また、遮光膜を形成しなくても良いが、遮光膜を形成することによって、計測の際に、フレアなどの影響を抑制する効果を期待できる。
【0119】
第1光学系94は、計測部材92の下方に配置されている。計測部材92の開口92aを介したビームは、第1光学系94に入射する。なお、本実施形態において、第1光学系94は、コリメータ光学系であるが、コリメータ光学系でなくても良い。
【0120】
光学系ユニット95は、中心に回転軸101aが設けられた円形の回転板101を有している。回転板101には、回転軸101aを中心として所定角度間隔で開口部97とレンズ(第2光学系)98とが配置されている。回転軸101aの回転、すなわち回転板101の回転により、開口部97とレンズ98とのいずれかを、第1光学系94を介した光の光路上(光軸AX1に対応する位置)に、選択的に配置可能となっている。回転軸101aの回転は、制御装置600の指示の下、駆動装置102(
図12では不図示、
図14参照)によって行われる。
【0121】
開口部97は、第1光学系94から射出された平行光をそのまま通過させる。この開口部97を、集光光学系530を介したビームの光路上に配置するとともに、第1光学系94、又は第1光学系94を構成する少なくとも1つの光学素子を動かすことにより、受光器96では、集光光学系530の瞳面(入射瞳)におけるビームの強度分布を計測することが可能となる。なお、計測装置110は、集光光学系530の瞳面(入射瞳)の強度分布を計測できなくても良い。この場合、レンズ98は固定であっても良い。
【0122】
レンズ98は、第1光学系94とともにリレー光学系を構成し、開口92aが形成された計測部材92の上面と受光器96の受光素子(後述)の受光面とを光学的に共役にする。
【0123】
受光器96は、2次元CCD等から成る受光素子(以下、適宜、「CCD」と呼ぶ)96aと、例えば電荷転送制御回路等の電気回路96bと、を有している。なお、受光素子96aとしてCMOSイメージセンサを用いても良いことは言うまでもない。受光器96の受光結果(受光データ)は制御装置600に出力される(
図14参照)。CCD96aは、開口92aを介して第1光学系94に入射し、第1光学系94から射出され開口部97を通過する平行光のすべてを受光するのに十分な面積を有している。また、CCD96aの受光面は、第1光学系94とレンズ98とを含むリレー光学系によって計測部材92の上面(開口92aの形成面)と光学的に共役である。また、CCD96aの各画素は、上述のリレー光学系を介して収束されるビームの照射領域内に複数の画素が含まれるサイズを有している。CCD96aには、1つ又は複数の基準画素が定められており、その基準画素とテーブル12の基準点、例えば中心点との位置関係は既知である。したがって、制御装置600は、受光器96の出力から、CCD96aに入射するビームと基準画素との位置関係を知ることができ、テーブル座標系内におけるビームの位置情報(例えば、ビームの集光位置情報)を取得することができる。
【0124】
なお、CCD96aの受光面は、計測部材92の上面(基材表面)が集光光学系530の像面(加工面MP)に一致し、かつ開口部97が、開口92a及び第1光学系94を介したビームの光路上に配置されている状態では、集光光学系530の瞳面と共役である。
【0125】
また、開口部97の代わりに、光学系(光学部材)を回転板101に配置して、CCD96aの受光面と集光光学系530の瞳面とを共役にしても良い。また、計測の際に、計測部材92の上面を集光光学系530の像面から光軸AX方向にずらした位置に配置しても良い。
【0126】
また、光学系ユニット95は、上述のものに限られない。例えば、回転板101を使わずに、例えば可動部材でレンズ98を保持して、その可動部材を光軸に垂直方向に(例えばX軸方向に沿って)移動することによってレンズ98を挿脱しても良い。
【0127】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、計測部材92を含む計測装置110が6自由度方向に自在に移動可能なテーブル12に設けられているので、計測装置110の受光部として機能する計測部材92は、集光光学系530の射出面側の光軸AXに平行なZ軸方向、光軸AXに垂直なX軸、Y軸方向の少なくとも一方向に移動しながら、集光光学系530からのビームを受光可能である。
【0128】
ここで、説明は前後するが、計測装置110を用いる計測について説明する。集光光学系530の像面及びその近傍(Z軸方向に関する近傍の面)におけるビームの強度分布の計測は、例えば次のようにして行われる。
【0129】
制御装置600は、まず、位置計測系28及びリニアエンコーダ241~246の計測値に基づいて、平面モータ26及び伸縮機構161~166を、既知の目標値(設計情報など)に基づいて制御してテーブル12を移動し、計測部材92の開口92aを、集光光学系530の光軸AX上の位置に位置決めする。
【0130】
また、制御装置600は、駆動装置102を介して回転板101を回転し、レンズ98を、開口92a及び第1光学系94を介したビームの光路上に配置する。そして、この状態で、レンズ98によってCCD96aの受光面上に収束されるビームの受光結果である受光データ(LRD1とする、
図14参照)に基づいて、集光光学系530の像面におけるビームの強度分布を計測する。
【0131】
図13(A)には、集光光学系530の像面におけるビームの強度分布を計測する際の光学配置が、計測装置110の光軸AX1及び集光光学系530の光軸AXに沿って展開して示されている(但し、集光光学系530より上流側の部分は図示を省略)。ビームの強度分布の計測に際して、例えば前述したモード1からモード6のいずれかのモードにおけるマスクMの位置決め及び第2のミラーアレイ78の各ミラー素子81
i,jの反射面の設定が行われ、さらに、第1のミラーアレイ80の各ミラー素子81
p,qの反射面は、マスクM上において所望のビームの強度分布(ビームの照射領域の形状、大きさ、位置等)が得られるような設計上の角度に設定されているものとする。
【0132】
上記の前提条件の下、
図13(A)に示される光学配置において、制御装置600が光源ユニット60の少なくとも1つのレーザユニット70からレーザビームを発振させ、光源系510から平行ビームが射出されると、その平行ビームは、第2のミラーアレイ78、第1部分照明光学系79を介して第1のミラーアレイ80に照射され、第1のミラーアレイ80の複数のミラー素子81
p,qによってそれぞれ反射され、複数の平行ビームとなって第2部分照明光学系82を介してマスクMの選択された開口を取り囲む一回り大きい領域に照射される。マスクMの開口を介して集光光学系530に入射した複数のビームは、集光光学系530により像面に集光され、該像面又はその近傍に位置する開口92aに入射する。
【0133】
開口92aを通過した光は、第1光学系94及びレンズ98から成るリレー光学系によって、計測部材92の光学的な共役面すなわちCCD96aの受光面上で集光される。したがって、CCD96aの受光面の強度分布は、計測部材92の上面内におけるビームの強度分布となる。CCD96aにより、その強度分布を有するビームが受光され、光電変換されて得られる受光データLRD1が受光器96(電気回路96b)から制御装置600に送信される(
図14参照)。
【0134】
そこで、制御装置600は、リニアエンコーダ241~246の計測値に基づいて伸縮機構161~166を介してテーブル12をZ軸方向にステップ移動しつつ、上記受光データLRD1の取り込みを行い、その取り込んだ受光データLRD1に基づいて、例えばCCD96aの受光面に形成されるビームの照射領域の面積が最小となるZ軸方向の位置を見つける。CCD96aの受光面に形成されるビームの照射領域の面積が最小となるのは、計測部材92の上面が、集光光学系530の像面に一致して、開口92a内に最もシャープなビームの照射領域が形成されるときである。したがって、制御装置600は、受光器96からの受光データLRD1に基づき、ビームを受光した画素の数が最も少なくなるテーブル12のZ位置を、計測部材92の上面と像面とが一致しているZ位置と判断することができる。本実施形態では、像面を加工面MPとしているので、制御装置600は、そのZ位置における受光データLRD1に基づいて、加工面MPにおけるビームの強度分布(ビームの照射領域の形状、大きさ、位置等)を求めることができる。本実施形態では、制御装置600は、計測部材92の上面と像面とが一致しているテーブル12のZ位置を求める過程でZ軸方向のステップ位置毎に取り込んだ受光データLRD1に基づいて、像面(加工面MP)と、その近傍(+Z側)の面(前述の仮想面)との間におけるビームの3次元的強度分布を求めることができる。ビームの3次元的な強度分布を求めることは、光刃物の形状を求めることとも言える。そこで、制御装置600は、ビームの3次元的強度分布(例えば、像面近傍の+Z側の面における断面強度分布)が所望状態と異なる場合、例えば第2のミラーアレイ78の複数のミラー素子81i,jの少なくとも一部の角度を調整し、ビームの3次元的強度分布を所望状態に調整する。ビームの3次元的強度分布の調整は、光刃物の形状の調整とも言える。
【0135】
なお、制御装置600は、ビームの3次元的強度分布を考慮することなく、像面(加工面MP)におけるビームの強度分布の計測結果のみを考慮して加工面MPにおけるビームの強度分布(ビームの照射領域の形状、大きさ、位置等)を所望状態に調整することも可能である。なお、第1のミラーアレイ80は、集光光学系530の瞳面PP2と共役又はその近傍の位置に配置されているので、ミラー素子81i,jの少なくとも一部の角度を調整することによってビームの3次元的な強度分布を調整しても良い。
【0136】
また、集光光学系530の像面(加工面MP)におけるビームの強度分布が所望状態と異なる場合には、制御装置600は、マスクM(開口)の位置調整、第2のミラーアレイ78の複数のミラー素子81i,jの少なくとも一部の角度調整の少なくとも一方を行う。
なお、集光光学系530の像面(加工面MP)におけるビームの強度分布を変更するために、マスクM(開口)を変形させても良い。また、集光光学系530を調整して(例えば、集光光学系530の一部の光学素子を動かして)、開口の像の大きさを変更したり、開口の像を歪ませたりしても良い。
【0137】
また、計測部材92の上面と集光光学系530の像面とが一致している状態での、CCD96aの受光面におけるビームの強度分布と、1つ又は複数の基準画素との位置関係から、加工面MP(集光光学系530の像面)におけるビームの照射領域の、テーブル座標系上の位置などを求めることができる。
【0138】
本実施形態では、制御装置600は、上述の加工面MPにおけるビームの強度分布(ビームの照射領域の形状、大きさ、位置等)とその近傍の面におけるビームの強度分布の少なくとも一方の計測を行った後に、次に説明する集光光学系530の瞳面(入射瞳)PP2におけるビームの強度分布の計測を行う。なお、瞳面PP2におけるビームの強度分布の計測を、像面(加工面MP)におけるビームの強度分布の計測を行う前に実施しても良い。また、瞳面PP2におけるビームの強度分布の計測と、像面(加工面MP)におけるビームの強度分布の計測とを連続して行わなくても良い。
【0139】
集光光学系530の瞳面(入射瞳)におけるビームの強度分布の計測は、例えば次のようにして行われる。
【0140】
上述した加工面MPにおけるビームの強度分布の計測の終了後、制御装置600は、計測部材92の上面(開口92aの形成面)が集光光学系530の光軸AX上の位置であって加工面MPと同一高さとなる位置に、テーブル12の位置を、維持したまま、駆動装置102を介して回転板101を回転し、開口部97を、開口92a及び第1光学系94を介したビームの光路上に配置する。そして、この状態で、瞳面PP2におけるビームの強度分布の計測を行う。集光光学系530の瞳面PP2におけるビームの強度分布の計測は、瞳面PP2におけるビームの断面形状の計測とも言える。また、照明光学系520の瞳面PP1は、集光光学系530の瞳面PP2と共役なので、瞳面PP2における強度分布の計測は、瞳面PP1における強度分布の計測とも言える。照明光学系520の瞳面PP1における強度分布の計測は、瞳面PP1におけるビームの断面形状(照明形状)の計測とも言える。
【0141】
図13(B)には、瞳面におけるビームの強度分布計測が行われる際の光学配置が、計測装置110の光軸AX1及び集光光学系530の光軸AXに沿って展開して示されている(但し、集光光学系530より上流側の部分は図示を省略)。
図13(B)に示されるように、この状態では、ビームの光路上には、開口部97が配置されているため、第1光学系94を介した平行光は、そのまま受光器96を構成するCCD96aに入射する。この場合、CCD96aの受光面は、集光光学系530の瞳面と共役な位置に配置されているとみなすことができ、その瞳面におけるビームの強度分布に対応する光束を受光することが可能となる。そこで、制御装置600は、受光器96の受光データ(LRD2とする、
図14参照)を取り込み、その受光データLRD2に基づいて瞳面におけるビームの強度分布を求める。そして、その求めた強度分布のデータをメモリに記憶する。
【0142】
制御装置600は、瞳面におけるビームの強度分布の計測結果に基づいて、例えば第2のミラーアレイ78の複数のミラー素子81i.jの少なくとも一部の角度を調整することができる。なお、像面(加工面MP)におけるビームの強度分布と、瞳面PP2におけるビームの強度分布を、ビームの3次元的強度分布と見なしても良い。すなわち、計測装置110を使って計測された像面(加工面MP)におけるビームの強度分布と、瞳面PP2におけるビームの強度分布とから、ビームの3次元的な強度分布(光刃物の形状)を求めて良いし、その結果に基づいて、例えば第1のミラーアレイ80、第2のミラーアレイ78の少なくとも一方の、少なくとも一部の角度を調整しても良い。
【0143】
図1に戻り、制御装置600は、ホスト・コンピュータを含む上位システムに例えばローカルエリアネットワーク(LAN)などを介してオンラインにて接続された上位システム連携部620と、レシピ作成部630と、を含む。上位システム連携部620は、オペレータの指示に基づき、加工前後のワークのCADデータを上位システムからオンラインにて取得する。レシピ作成部630は、上位システム連携部620が取得した加工前後のワークのCADデータに基づいて、加工装置100による加工で用いるためのレシピデータ(加工に際しての加工装置100の各部に対する制御情報であって、一連の手順を指示する情報)を作成する。すなわち、加工装置100では、オペレータは、レシピデータ(以下、適宜、レシピと略記する)の作成を指示するだけで、加工装置100による加工で用いるためのレシピを取得することができる。
【0144】
図14には、加工装置100の制御系を中心的に構成する制御装置600の入出力関係を示すブロック図が示されている。制御装置600は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、加工装置100の構成各部を統括制御する。
【0145】
上述のようにして構成された本実施形態に係る加工装置100は、集光光学系530からのビームを使って、加工対象物(ワーク)に対し、ワークの一部を除去する除去加工、ワークを切断する切断加工等の種々の加工を行なうことが可能である。ワークは加工装置100に投入され、加工された後に加工装置100から搬出される。加工装置100で行われる一連の作業は自動化されており、ワークの供給は、パレットにまとめた一定量を1ロットとして、ロット単位で投入することが可能である。
【0146】
図15には、制御装置600の一連の処理アルゴリズムに対応するフローチャートが示されている。以下のフローチャートにおける各ステップの処理(判断を含む)は、制御装置600によって行われるが、以下では特に必要な場合を除き、制御装置600に関する説明は省略する。
【0147】
前提として、予めオペレータのレシピ作成指示に応じて、制御装置600が有する上位システム連携部620及びレシピ作成部630によって少なくとも1つのレシピが作成され、レシピデータベースとして不図示の記憶装置内に記憶されているものとする。そして、オペレータによって、所望のレシピの選択が、制御装置600に指示されると、
図15のフローチャートに従う処理が開始される。
【0148】
まず、ステップS2において、ロット内のワークの番号を示すカウンタのカウント値nを初期化する(n←1)。
【0149】
次のステップS4では加工前の1ロットのワークが搭載されたパレット(不図示)を外部から加工装置100内の所定の搬出入位置に搬入する。この搬入は、制御装置600の指示に応じて不図示の搬出入装置によって行われる。ここで、1ロットは例えばi×j個であり、パレット上にi×j個のワークがi行j列のマトリックス状の配置で搭載されている。すなわち、パレット上面には、i行j列のマトリックス状の配置でワークの搭載位置(載置位置)が定められており、それぞれの搭載位置にワークが搭載(載置)されている。例えば各搭載位置には、それぞれマークが付されており、各マークのパレット上の位置は既知である。以下では、1ロットは、一例として4×5=20個とし、パレット上面には、4行5列のマトリックス状の配置でマークが付されており、各マークの上にワークが搭載されているものとする。例えば、ロット内の第1~第5番目のワークは、それぞれ1行1列~1行5列の位置に配置され、第6~第10番目のワークは、それぞれ2行1列~2行5列の位置に配置され、第11~第15番目のワークは、それぞれ3行1列~3行5列の位置に配置され、第16~第20番目のワークは、それぞれ4行1列~4行5列の位置に配置される。
【0150】
次のステップS6ではロット内のn番目のワークをパレットから取り出してテーブル12に搭載する。このとき第1ステージシステム200Aは、加工装置100内の搬送システム300が設置された位置の近傍に設定されているローディング/アンローディングポジションにあるものとする。また、このときテーブル12は、前述した基準状態(Z、θx、θy、θz)=(Z0、0、0、0)にあり、そのXY位置は、位置計測系28によって計測されているスライダ10のX、Y位置と一致している。
【0151】
具体的には、制御装置600が、カウント値nを参照して、取り出すべきワークのパレット上の位置(i,j)を特定するとともに、搬送システム300に対し、その特定した位置(i.j)にあるワークの取り出しの指示を与える。この指示に応じ、搬送システム300によりワークがパレット上から取り出されてテーブル12上に搭載される。例えば、n=1の場合、パレット上の1行1列目の位置にあるワークが取り出されてテーブル12上に搭載される。
【0152】
次いで、ステップS7において、ワークを搭載したテーブル12を、計測システム400(センサ部38)の下方に移動する。このテーブル12の移動は、制御装置600が位置計測系28の計測情報に基づいて、平面モータ26を制御して、第1ステージシステム200AをベースBS上でX軸方向(及びY軸方向)に動かすことで行われる。この移動中も、テーブル12は、前述した基準状態が維持されている。
【0153】
次のステップS8では、計測システム400を用いて、基準状態にあるテーブル12上に搭載されたワーク上の対象面の少なくとも一部の3次元空間内の位置情報(本実施形態では3次元形状情報)の計測が行われる。これ以後は、この計測結果に基づき、ワーク上の対象面の6自由度方向の位置は、テーブル座標系(基準座標系)上での制御により管理することが可能になる。
【0154】
次のステップS9では、
図21に示されるように、スライダ10をベースBS上で移動させることにより、対象面の少なくとも一部の位置情報(形状情報)の計測が終了したワークを搭載したテーブル12を、ビーム照射システム500の下方に移動する。なお、
図21には、計測システム400を代表してセンサ部38が、ビーム照射システム500を代表して集光光学系530が、それぞれ示されている。
【0155】
次のステップS10のサブルーチンにおいて、テーブル12上のワークに対して、レシピに従った加工が行われる。なお、ここでは説明を簡略化するため、同一のレシピには、同一の加工モードでの加工の指定は1回のみ行われるものとする。
【0156】
ステップS10のサブルーチンでは、
図16に示されるように、まず、ステップS102において、選択したレシピで次に指定された加工モード(ただし、初回は、最初に指定された加工モードとなる)に対応する所定の設定、すなわち照明形状の設定、及びマスクM上の開口の選択設定を行なう。ここでは、前述したモード1からモード6のうちの1つが指定されているものとする。例えば最初にモード1が指定されている場合、照明形状として通常照明が設定され、レシピで指定された開口が選択される。一例としてスリット状の開口PAaが選択される。
【0157】
次のステップS104では、前述した手順で、加工面MP及びその近傍におけるビームの3次元的強度分布(光刃物の形状)の計測、及びその計測結果に基づく調整が行われる。この調整は、例えば、第1のミラーアレイ80の少なくとも一部のミラー素子の角度の調整、第2のミラーアレイ78の少なくとも一部のミラー素子の角度の調整、集光光学系530の調整(一部のレンズの位置、傾斜などの調整を含む)、及びマスクM(開口)の位置調整の少なくとも1つを含む。なお、ビームの3次元的強度分布(光刃物の形状)の計測に基づく調整は、必要な場合にのみ行われることは言うまでもない。また、ステップS104での計測結果に基づいて加工面MPの位置を決めても良いし、加工面MPとテーブル12との位置関係を決定しても良い。
【0158】
次のステップS106では、集光光学系530の瞳面PP2におけるビームの強度分布の計測(照明形状の計測とも言える)、及びその計測結果に基づく調整が行われる。この調整は、例えば第1のミラーアレイ80の少なくとも一部のミラー素子の角度の調整、及び第2のミラーアレイ78の少なくとも一部のミラーアレイの角度の調整の少なくとも一方を含む。この場合も、瞳面PP2におけるビームの強度分布の計測結果に基づく調整は、必要な場合にのみ行われることは言うまでもない。このようにして、必要な準備作業が終了する。なお、ステップS104とステップS106の少なくとも一方は、省略しても良い。
【0159】
次のステップS108では、ワークWに対する加工を行うべく、第1ステージシステム200A及びビーム照射システム500を制御して、レシピに従いワークの加工(例えばモード1の場合は、モード1の光刃物による表面の除去加工)が、ビームに対してテーブル12をスキャン方向に走査しながら行われる。ワークとビームとの相対移動速度(この場合、テーブル12の移動速度)は、制御装置600によって制御される。この相対速度は、ワークWの材質、加工の種類などに基づいて、決定しても良い。なお、先に計測された加工面MPでの強度分布(強度)に応じて相対移動速度を決定しても良い。ここで、加工時におけるワーク上の対象面(及び目標部位)の位置及び姿勢の制御は、先に計測システム400を用いて計測した対象面の位置情報(本実施形態では形状情報)を考慮して行われる。例えば、計測システム400を使って取得されたワークWの対象面TAS(
図9(A)参照)の位置情報(形状情報)は、ワークWの対象面TAS上の目標部位TA(
図9(A)参照)と、加工面MPにおけるビームの照射領域とを、所望の位置関係で相対移動するために用いられる。
【0160】
次のステップS110では、レシピにより指定され、加工が終了していないモードが残っていないか否かを判断し、この判断が否定された場合、すなわち終了していないモードが残っている場合には、ステップS102に戻り、以降、ステップS110の判断が工程されるまで、ステップS102→S104→S106→S108→S110のループの処理(判断を含む)が、繰り返し行われる。これにより、レシピで指定された全ての加工モードにおけるレシピに従ったワークの加工処理が順次行われる。そして、レシピで指定された全ての加工処理が終了すると、ステップS110の判断が肯定され、メインルーチンのステップS12に戻る。なお、ステップS110の判断が否定された場合にも、ステップS102の後の、ステップS104とステップS106の少なくとも一方を省いても良い。
【0161】
ところで、ワークWとして、テーブル12上に載置された状態で、テーブル12の上面(例えばXY平面に平行な面)に対して所定角度傾斜した斜面を有するワークが用いられ、その斜面を対象面として、例えば除去加工を行う必要がある場合も想定される。しかるに、本実施形態に係る加工装置100は、ワークが搭載されるテーブル12の6自由度方向の位置を任意に設定可能な第1ステージシステム200Aを備えている。そこで、かかる場合において、制御装置600は、計測システム400を用いて計測したワークの3次元形状に基づいて、第1ステージシステム200Aを制御することで、そのワークの対象面(傾斜面)を加工面MPに位置合わせすることも容易に行なうことができる。当然ながら、テーブル12上に載置された任意形状のワークに対して、上述のような傾斜面を形成することも容易に行なうことができる。
【0162】
ステップS12では、加工済みのワークが搭載されたテーブル12を前述のローディング/アンローディングポジションに移動する。
【0163】
次のステップS14では、テーブル12上に搭載されている加工済みのロット内のn番目のワークをパレットに戻す。具体的には、制御装置600が、カウント値nを参照して、パレット上の位置を特定し、搬送システム300に対し、パレット上の特定した位置にワークを戻させるための指示を与える。この指示に応じ、搬送システム300により、加工済みのワークがテーブル12上から取り出されてパレット上の特定された位置に戻される。
【0164】
ステップS14の処理が実行されると、ステップS16に移行する。この時点では、テーブル12上には、ワークは存在しない。ステップS16では、カウンタのカウント値nを1インクリメント(n←n+1)する。
【0165】
次のステップS18では、カウント値nがN(Nは、1ロットのワークの数、本実施形態ではN=20)を超えているか否かを判断する。そして、ステップS18における判断が否定された場合、すなわちロット内に処理が終了していないワークが存在する場合には、ステップS6に戻り、ステップS18における判断が肯定されるまで、ステップS6~S18の処理(判断を含む)を繰り返す。これにより、ロット内の第2番目以降のワークに対して、上述した一連の処理(判断を含む)が行われる。そして、ロット内の全てのワークに対して処理が終了し、ステップS18における判断が肯定されると、ステップS20に進んで、不図示の搬出入装置に対し、処理済みのワークが搭載されたパレットの装置外への搬出を指示した後、本ルーチンの一連の処理を終了する。
【0166】
なお、上述したように加工装置が複数のテーブルを備えている場合には、それぞれのテーブルが、ステップS6~ステップ18で用いられる。例えば、
図20に示されるように、加工装置が2つのテーブルを備えている場合には、1番目のワークを含む奇数番目のワークは、テーブル12aに保持され、2番目のワークを含む偶数番目のワークはテーブル12bに保持され、テーブル12aとテーブル12bが、交互に、ステップS6~ステップ18で用いられる。
【0167】
なお、上述したステップS10のサブルーチンでは、瞳面におけるビームの強度分布の計測を、ビームの3次元的強度分布を計測した後に行なうものとしたが、これに限らず、瞳面におけるビームの強度分布の計測を、像面(加工面MP)におけるビームの強度分布の計測を行う前に実施しても良い。また、ビームの3次元的な強度分布の計測と瞳面におけるビームの強度分布の計測とを連続して行わなくても良い。また、ビームの3次元的強度分布の計測の頻度と像面(加工面MP)におけるビームの強度分布の計測頻度が異なっていても良い。
【0168】
また、上述した瞳面におけるビームの強度分布の計測結果に基づく調整の結果、加工面MP(像面)におけるビームの強度分布、ビームの3次元的な強度分布の少なくとも一方が変化するおそれがある場合には、制御装置600は、再度、加工面MPにおけるビームの強度分布と、3次元的な強度分布を計測しても良いし、その結果に基づく調整を行っても良い。
【0169】
また、上述したステップS104、及びステップS106は、モード1からモード6のいずれが設定された場合にも、各モードが設定される度に行なうこととしているが、これに限らず、モード1からモード6の一部のモードについてのみ、ステップS104及びステップS106の処理を行うこととしても良い。
【0170】
なお、上の説明では、ワークWに対する加工の終了後、加工済みのワークWを搭載したテーブル12を、その加工済みのワークをパレットに戻すため、ローディング/アンローディングポジションに移動することとしたが、ワークに対する加工の終了後、加工済みのワークWを搭載したテーブル12を計測システム400の下方に移動して、計測システム400の3次元計測機401を用いてテーブル12上のワークの形状を検査することとしても良い。例えば、計測された形状情報(3次元位置情報の一種)に基づいて、加工部位の寸法誤差を求めることとしても良い。この場合において、寸法誤差を用いて加工の合否判定をさらに行うこととしても良い。合否判定の結果、不合格と判定されたワークのうち、寸法誤差が正の値であるワーク(除去加工などにより修正可能なワーク)については、その寸法誤差に基づいて、テーブル12上に載置した(テーブル12上にチャック機構13で保持した)まま、必要な修正加工をビーム照射システム500により行なっても良い。あるいは、ワークに対する加工の終了後、加工済みのワークWを搭載したテーブル12を計測システム400の下方に移動して、計測システム400の3次元計測機401を用いてテーブル12上のワークの形状を検査し、その検査結果にかかわらず、修正加工を施すこと無く、加工済みのワークをパレットに戻すため、ローディング/アンローディングポジションに移動することとしても良い。この場合、形状検査の結果データを、制御装置600によって外部の装置、例えば上位装置に送ることとしても良い。
【0171】
なお、テーブル12上の加工済みワークをクリーニングしても良い。例えば、クリーニングにより加工済みのワークから、加工により発生する異物を除去しても良い。例えば、クリーニング機構として、流体(液体、あるいは気体)を供給する流体供給口を少なくとも1つ配置して、その流体供給口又はテーブル12、又は流体供給口及びテーブル12の両方を動かしながら、流体供給口からの流体を加工済みワークの表面の少なくとも一部に供給しても良い。このようなクリーニング機構を備えている場合には、加工済みのワークをクリーニングした後に、上述のように、計測システム400の3次元計測機401を用いてテーブル12上のワークの形状を検査することとしても良い。
【0172】
また、上述したように加工装置が複数のテーブルを備えている場合には、1つのテーブル上のワークの加工の一部と並行して、他のテーブル上の加工済みのワークの計測を行っても良い。例えば
図20に示されるように、加工装置が2つのテーブルを備えている場合には、一方のテーブル(12b)上のワークWの加工の一部と並行して、他方のテーブル(12a)上の加工済みのワークWの計測を行っても良い。
【0173】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る加工装置100及び加工装置100で実行される加工方法によると集光光学系530の瞳面PP2におけるビームの断面強度分布(照明光学系520の瞳面における断面強度分布(照明形状))と、加工面MP(像面)におけるビームの強度分布(マスクM上の開口)との組み合わせによって、集光光学系530の射出面側の像面近傍におけるビームの3次元的な強度分布を変更可能である。すなわち前述した光刃物の形状を変更可能である。したがって、先にモード1からモード6について説明したように、種々の形状の光刃物を用いたワークの加工が可能である。なお、モード1からモード6は、一例であって、加工装置100では、多種多様の加工モードの設定が可能であり、マスクM上の開口の種類を追加し、あるいは設定する照明形状の種類を追加するなどにより、さらに多くの種類の加工モードの設定が可能である。この場合において、上述した計測の結果に基づく調整は、各モードについて、選択された1つの開口について代表的に行なっても良いし、あるいは開口毎に行なっても良い。
【0174】
図17には、加工装置100で行なうことができる各種処理の内容が、それぞれの処理を行なうのに用いられていた従来の工作機械と対応させて示されている。
【0175】
加工装置100で対応可能な処理の種類としては、大きく、除去加工、熱処理及び計測の3つの処理が挙げられる。このうち、加工装置100の主たる役割は、加工によってワークの形状が変わる除去加工であり、この除去加工は、従来、平面切削、平面研削、円筒切削、円筒研削、穴あけ切削、穴あけ研削、平面研磨、切断、文字あるいはパターンの彫刻・刻印、金属金型による自由形状の転写、微細形状の生成などに分類でき、それぞれの処理には、これまでは
図17中の従来の工作機械の欄に記載されている工作機械が用いられていた。
【0176】
このように、本実施形態に係る加工装置100は、加工対象物に対する除去加工として、表面加工(研削、切削など)、溝加工(溝形成時の切削、形成後の表面研削など)、及び任意形状の切断、微細加工パターンの形成などあらゆる加工に1台で対応可能である。また、加工装置100は、穴、円筒、溝の加工を行う場合、対応可能な深さに制約があるかもしれないが、各加工を高精度に実行可能である。特に、バイオチップ流路、マイクロリアクタなどの微細パターンのパターニングに関しては、形成可能な線幅の細さ、位置精度、形成可能なパターン形状の自由度の何れに関しても、従来の工作機械とは別次元とも言える加工が可能である。また、従来ローエンド露光装置などを用いて行われていた微細形状の生成を、現像、エッチング、レイヤ分割などが不要なワークに対する直接加工で実現することが可能である。また、立体的な形状にも対応可能である。加工装置100は、その他、焼入れ処理などの表面改質処理、及び物体の3次元的な形状検査にも対応可能である。
【0177】
なお、
図17には記載されていないが、集光光学系530からのビームで溶接などの接合加工にも対応できるようにしても良いし、集光光学系530からのビームで付加加工(3次元造形加工)を行うようにしても良い。この場合、接合加工、あるいは付加加工を行うための材料を、像面近傍に供給する装置を加工装置100が備えていても良い。付加加工が可能な場合には、除去加工後のワークの表面に付加加工を実行しても良いし、付加加工後のワークの表面に対して除去加工(付加部分の少なくとも一部を除去する加工)を行っても良い。また、接合加工あるいは付加加工を行う場合にも、瞳面におけるビームの強度分布と像面におけるビームの強度分布(マスクの開口)の最適な組み合わせを設定すれば良い。
また加工装置100によって加工されるワークの材料は、金属であっても良いし、樹脂であっても良い。
【0178】
また、本実施形態に係る加工装置100によると、加工に伴う反力は無いに等しいので、ワークの固定状態が、加工精度や仕上がりに直結するマシニングセンタのような工作機械とは異なり、ワークをテーブル12上に強固に固定する必要がない。また、加工装置100は、計測システム400を備えているので、搬送システム300によりワークがテーブル12上に多少ラフに搭載されたとしても、計測システム400により後に改めて座標系に対する位置が特定されるので問題とならない。この計測システム400による3次元形状計測(3次元アライメントの一態様)が行われるが故に、搬送システム300による、ワークのテーブル12上へのロード及びテーブル12上からの加工済みのワークのアンロードを含む、一連の動作の自動化が可能となり、効率の良い生産が可能となる。
【0179】
また、本実施形態に係る加工装置100及び加工装置100で実行される加工方法によると、ワークの加工中、目標位置に基づいて、ビームに対するワーク(テーブル12)の位置制御が行われるが、テーブル12の制御応答特性、制御精度などに起因して目標位置に対する位置誤差が極力生じないように、テーブル12の位置情報及びマスクステージ位置計測系19の計測情報に基づき、X軸、Y軸、Z軸の少なくとも1つの方向において、マスクM(マスクステージ15)のワークWに対する追従制御を行っても良い。これにより、ワークWの目標部位とマスクMの開口を介したビームの照射領域との相対的な位置関係を正確に制御することができる。したがって、サブミクロン、あるいはそれより微細な加工を、例えばテーブル12の位置制御精度がミクロンオーダー程度以上であっても実現することができる。
【0180】
また、本実施形態に係る加工装置100によると、ビーム照射システム500が備える光源系510によって、複数のレーザユニット70のそれぞれから出力される複数のレーザビームを合成して大径の平行ビームにして、照明光学系520に向かって射出する。これにより、レンズなどの各部品にダメージを与えることなく総パワーの向上が可能になる。
【0181】
また、本実施形態に係る加工装置100によると、加工に際して、第1のミラーアレイ80を用いて、選択されたパターンを含むマスクM上の一部の領域にのみビーム(照明光)が照射される照明フィールド(照明光の照射領域)が形成(設定)され、光源系510から射出されるビームの全体を選択されたパターン部分に集中して照射することで、レーザパワーの損失を極力小さくしている。そして、マスクMの選択された開口を透過したビームが、NAの大きな縮小投影レンズからなる集光光学系530を介してワークに照射される。したがって、ワークの対象面上では、高いエネルギ密度を保ったままフィールドサイズを1mm程度まで拡大することができ、10μm程度の直径のスポットビームを用いていた従来のレーザ加工装置などと比べて、単位時間に加工できる範囲を飛躍的に拡大することができる。また、短波長のパルスレーザを採用することにより、対象面上で小スポットサイズかつ高エネルギ密度のビームを生成することが可能になり、これにより高い金属への吸収率を確保することが可能になる。
【0182】
また、本実施形態に係る加工装置100によると、反力に耐える強固なチャックをテーブル12上に設ける必要がなくなる。また、ワークをテーブル12に載置した状態で、計測システム400によりワークの形状を計測し、その計測結果に基づいてワークの位置を制御することができるので、ワークの位置を出すための治具、段取り専用の治具などが不要になる。また、加工装置100によると、ワークの加工前後のCADデータから制御装置600がレシピを自動生成するので、図面に基づいて技術者がCADでレシピを作成するためのプログラミングをする必要がない。また、加工に際しては、オペレータは、既に作成されているレシピの選択を指示するだけで良くなるので、装置の前で工具の軌跡をオペレータが手入力で指示する必要がなくなる。
【0183】
本実施形態に係る加工装置100及び加工装置100で実行される加工方法によると、加工が施されたワークをテーブル12から取り外すことなくテーブル12上に搭載したままの状態でのそのワークの対象面の3次元形状を、計測システム400により計測することが可能になり、その計測結果に基づいて、例えば、加工後の形状の合否(OK/NG)を判定することが可能になる。そして、不合格の場合には、ワークをテーブル12上に搭載したまま、ビーム照射システム500を用いてそのまま修正加工することも可能であり、極めて効率的である。
【0184】
また、大量に部品を生産していく過程において、部品を製作しその場で寸法検査を行うことは、品質をコントロールする上で極めて都合が良い。なぜなら、装置の精度には様々な要因から、ドリフトがつきものである。検査をその場で行うことによって、このドリフトの傾向を制御装置600が感知することが出来、その結果に基づき加工精度に対してフィードバックしていくことが可能になる。すなわち、制御装置600は、計測システム400を用いて取得したワークの対象面の位置情報(形状情報)に基づいて、加工における装置のドリフトの傾向を求め、その求めた結果に応じて計測システム400、ビーム照射システム500及び第1ステージシステム200Aの少なくとも1つを調整することが可能になり、これによって寸法の変動を抑え、歩留まり、品質ばらつきを向上させることが可能になる。
【0185】
なお、制御装置600は、加工における装置のドリフトの傾向を求める場合に限らず、計測システム400を用いて取得したワークの対象面の位置情報(形状情報)に基づいて、計測システム400、ビーム照射システム500及び第1ステージシステム200Aの少なくとも1つを調整することとしても良い。この場合のワークは、加工を施した後のワーク、及び修正加工を施した後のワークのいずれも含む。ビーム照射システムの調整には、加工面MPにおけるビームの強度分布の調整も含まれる。
【0186】
なお、これまでは、マスクMを介して集光光学系530に複数のビームを入射させ、その複数のビームを集光光学系530で像面(加工面MP)に集光(マスクMの開口の像を像面(加工面MP)上に形成)する場合について説明した。しかしながら、加工装置100では、マスクMを必ずしも用いる必要はない。
【0187】
その理由は、加工面MP上におけるビームの強度分布を設定する、あるいは変更する方法(例えば、上述したようなスリット状の照明領域を加工面MP上に形成する方法)としては、例えば第1のミラーアレイ80によって、集光光学系530の物体面上でのビームの集光位置又は集光領域を制御できるからである。
【0188】
また、集光光学系として、その瞳面(入射瞳)と前側焦点面とが一致する構成、若しくは瞳面(入射瞳)と前側焦点面とが近傍に位置する構成を採用しても良い。この場合も、マスク(開口)を用いずに、例えば、第1のミラーアレイ80を用いて、集光光学系に入射する複数の平行ビームの入射角度の変更により、その複数の平行ビームのそれぞれの後側焦点面における集光位置を正確に、簡便に制御することができる。この構成の集光光学系を用いる場合には、集光光学系の後側焦点面を加工面MPとすることができる。このタイプの集光光学系を用いる場合にも、上述の計測装置110を用いて、後側焦点面(加工面MP)、後側焦点面の近傍の面、瞳面、瞳面の近傍の面の少なくとも1つでのビームの強度分布を計測することができる。
【0189】
また、本実施形態では、同一の集光光学系530を通る光のみによって、例えばスリット状又はスポット状の照射領域が形成される。このため、別々の光学系を介した光を同一領域に集光してビームスポット(レーザスポット)を形成する場合に比べて、高品質なビームスポットの形成が可能である。
【0190】
また、本実施形態では、制御装置600が、前述したロータリエンコーダを用いて、各ミラー素子の状態(ここでは反射面の傾斜角度)を検出し、これにより各ミラー素子の状態を、リアルタイムでモニタしているので、ミラーアレイ78,80の各ミラー素子の反射面の傾斜角度を正確に制御できる。
【0191】
本実施形態に係る加工装置100では、制御装置600は、計測装置110を用いて、前述した手法により、適当な頻度でビームの3次元的な強度分布、加工面MP内におけるビームの強度分布などを計測し、必要なキャリブレーションを行うことができる。例えば、制御装置600は、計測装置110を用いた計測結果に基づいて、ビームの3次元的な強度分布、加工面MP内におけるビームの強度分布などを調整することができる。
【0192】
また、制御装置600は、計測装置110を用いて加工面MP内におけるビームの強度分布の計測、加工面MPと異なる面におけるビームの強度分布の計測の少なくとも一方を、例えばワークに対する加工処理に先立って行い、その計測結果に基づいて、加工処理中に、ビーム照射システム500と第1ステージシステム200Aとの少なくとも一方の調整を行うこととしても良い。加工面MP(像面)と異なる面は、加工面MP(像面)の近傍の面、もしくは瞳面(PP2)を含む。
【0193】
この場合における第1ステージシステム200Aの調整(制御)としては、テーブル12の位置制御が代表的に挙げられる。
【0194】
また、ビーム照射システム500の調整(制御)の内容としては、先に、加工面上におけるビームの強度分布、例えば加工面上に形成されるビームの照射領域の形状、大きさ、位置等を設定又は変更する方法として説明したビーム照射システムの各種制御内容の全てが含まれる。
【0195】
また、例えば加工面MPにおけるビームの強度分布の計測を、テーブル12が静止した状態で受光器96で一度に行うことができない場合、例えば、特にマスクMを用いない場合で加工面MPにおけるビームの照射領域の配置範囲が広い場合などには、テーブル12(計測部材92の開口92a)をXY平面内でX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方向に移動しながら加工面MPにおけるビームの強度分布の計測が行われる。
【0196】
なお、本実施形態に係る加工装置100では、テーブル12に計測装置110の全ての構成部分が設けられているが、これに限らず、CCD96aの受光面と、受光部として機能する計測部材92の開口92aの形成面との光学的な共役関係が保たれるのであれば、計測部材92以外の計測装置110の構成部分は、テーブル12の外部に設けても良い。
【0197】
また、上述の計測装置110と同様のセンサ装置が搭載され、テーブル12とは独立して移動可能な可動部材を、テーブル12とは別に設けても良い。この場合、可動部材は、X、Y、Zの3軸方向に可動であれば良く、制御装置600が、テーブル座標系上でその可動部材及びセンサの位置を制御(管理)可能な構成を採用しても良い。センサ装置を用いて、制御装置600が、前述したビームの強度分布の計測を行うことができる。また、この場合も、制御装置600は、センサ装置を用いて計測したビームの強度分布に基づいて、加工処理中に、上述したビーム照射システム500と第1ステージシステム200Aとの少なくとも一方の調整を行うこととしても良い。この他、制御装置600は、テーブル12上のワークを、計測システム400を用いて計測するのと並行して、センサ装置を用いて前述したビームの強度分布の計測などを行うことができる。
【0198】
なお、これまでの説明からわかるように、計測装置110は、ビームの強度の照射領域内部のむら(強度分布)を検出するむらセンサとしても用いることができる。
【0199】
また、計測装置110を使って集光光学系530の収差、例えば波面収差を計測するようにしても良い。例えば、
図12に示される回転板101の空き領域、例えば
図12中の仮想線(二点鎖線)の円内の領域に開口92aの形成面と、CCD96aの受光面とを光学的に共役にする複数のマイクロレンズがマトリックス状に配置されたマイクロレンズアレイを配置しても良い。この場合、回転板101を回転させて、そのマイクロレンズアレイを、第1光学系94から射出される平行光の光路上に位置させ、マスクMのピンホールパターンを選択し、そのピンホールパターンに第2部分照明光学系82を介してビームを集光することで、集光光学系530の波面収差を計測可能なシャック・ハルトマン方式の波面収差計測器を構成することも可能である。波面収差計測が可能な構成を採用した場合、集光光学系530の像面の位置が変化しても、波面収差計測結果から、変化後の集光光学系530の像面の位置を計測することができ、それに基づいて加工面MPの位置を変更したり、計測装置110による計測処理の際の計測部材92の上面の位置を調整したりすることができる。また、波面収差計測が可能な構成を採用した場合、併せて、集光光学系530の光学特性を調整可能な構成としても良い。例えば、集光光学系530を複数のレンズで構成し、そのうちの一部のレンズを、圧電素子等の駆動素子により、光軸AX方向及び光軸AXに直交する平面に対する傾斜方向(チルト方向)に移動可能な構成としても良い。かかる場合には、可動なレンズを軸AX方向及びチルト方向の少なくとも一方の方向に動かすことで、集光光学系530の光学特性を調整することができる。
【0200】
この他、上述した計測装置110に代えて、
図18に示されるように、前述の受光器96を、テーブル12の上面に、CCD96aの受光面が、テーブル12のその他の部分と面一(同一面)、或いはテーブル12のその他の部分と共役となるように配置しても良い。そして、この受光器96により、例えば加工面MPにおけるビームの強度分布等を計測することとしても良い。この場合も、テーブル12が停止した状態での計測だけではなく、テーブル12が動きながらのビームの強度分布を計測するスキャン計測を可能にすることで、CCDやミラーアレイの有限な画素数の影響を排除し、正しい計測結果を得ることができる。このように、集光光学系530からのビームを受光するセンサでビームの強度分布を計測することで、集光光学系530の熱収差などの変動要因も加味されたビームの強度分布の管理が可能となる。また、その結果に基づく調整を行うことによって、集光光学系530の加工面MP(像面など)におけるビームの強度分布を所望状態に精度良く設定することができる。
また、計測装置110として、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号公報に開示される、スリット走査型の空間像計測装置を用いても良い。
【0201】
以上のように、本実施形態に係る加工装置100は、従来の工具を用いる工作機械と比較して、多数の利便性、実際の部品等の製造現場(加工現場)の要求に沿うソリューションを備えていることが大きな特徴である。
【0202】
なお、上記実施形態では、一例として、パレットにまとめた一定量を1ロットとして、ロット単位でワークが処理される場合について説明したが、これに限らず、ワークを1つずつ処理しても良い。この場合、搬送システム300によって、外部搬送系から受けとった加工前のワークがテーブル12上にロードされるとともに、加工終了後のワークがテーブル上からアンロードされて、外部搬送系に渡される。
なお、上記実施形態では、マスクMとして複数の開口を有する透過型マスクを用いる場合について説明したが、これに代えて、反射型マスクを用いても良い。
【0203】
また、上記実施形態では、照明光学系520からのビームが、マスクM上の複数の開口のうちの少なくとも1つに照射されるように、マスクステージ15を用いてマスクMを移動させていたが、第1のミラーアレイ80を用いて、マスクM上の複数の開口のうちの少なくとも1つを照射するように制御しても良い。このとき、マスクMはその位置が固定であっても良く、移動可能であっても良い。この場合、加工に用いられる開口を変更することにより、集光光学系530の像面(加工面MP)におけるビームの照射領域の大きさ、形状を変更することができるので、第1のミラーアレイ80を、集光光学系530の像面(加工面MP)におけるビームの強度分布を変更する機構の一部と見なしても良い。
【0204】
また、マスクM上の複数の開口を用いる場合(例えば、像面(加工面MP)上に複数のビームの照射領域を形成する場合、言い換えれば、像面(加工面MP)上に複数の開口の像を形成する場合)には、その複数の開口を含む一部の領域のみにビームを照射するようにしても良い。この場合、マスクM上で互いに離れた複数の領域にビームを照射するようにしても良い。
【0205】
なお、上記実施形態では、光源ユニット60として可視領域~赤外領域の波長を持つビームを発生させるものを用いたが、これに代えて、紫外領域の波長を持つビームを発生させるエキシマレーザ等の紫外光源や、極端紫外領域の波長を持つビームを発生させるX線光源等を用いても良い。
【0206】
なお、上記実施形態では、空間光変調器として第1、第2のミラーアレイ80、78を用いる場合について説明したが、これに代えて、MEMS技術によって作製されるデジタル・マイクロミラー・デバイス(Digital Micromirror Device:DMD(登録商標))を多数マトリクス状に配置して成る大面積のデジタル・ミラーデバイスを用いても良い。かかる場合には、各ミラー素子の状態(例えばチルト角)をエンコーダなどで計測することは困難になる。かかる場合には、その大面積のデジタル・ミラーデバイスの表面に検出光を照射し、デジタル・ミラーデバイスを構成する多数のミラー素子からの反射光を受光し、その強度分布に基づき、各ミラー素子の状態を検出する検出システムを用いても良い。この場合、検出システムは、デジタル・ミラーデバイスによって形成される像を撮像手段により撮像して得られた画像情報に基づいて多数のミラー素子それぞれの状態を検出するものであっても良い。また、第1、第2のミラーアレイ80、78に代えて、反射面の面形状を能動的に変更できるアダプティブ・ミラーを用いても良く、屈折率を局所的に能動的に変更できる透過光学部材を用いても良い。
【0207】
また、上記実施形態では、第1のミラーアレイ80を照明光学系520の瞳位置又はその近傍に配置する場合について説明したが、第1のミラーアレイ80は、照明光学系の被照射面(マスクMが配置される面)と共役な位置又はその近傍に配置しても良い。また、上記実施形態では、第2のミラーアレイ78を照明光学系の被照射面(マスクMが配置される面)と共役な位置又はその近傍に配置したが、第2のミラーアレイは、照明光学系の瞳位置又はその近傍に配置しても良い。
【0208】
なお、上記実施形態では、第1、第2のミラーアレイ80、78によって光路を90度折り曲げる場合について説明したが、第1、第2のミラーアレイ80、78による光路の折り曲げ角度は、90度には限定されず、例えば110~175度(入射光と射出光とが5~80度の鋭角を成す)、あるいは5~80度(入射光と射出光とが120~175度の鈍角を成す)等の任意の角度にすることができる。
【0209】
なお、上記実施形態において、光源ユニット60からのビームの強度を検出する検出器を設けても良い。例えば、集光光学系530の上流でビームの一部を分岐して、集光光学系530に入射しない分岐されたビームを検出器で受光しても良い。例えば、この検出器の出力から集光光学系530に入射するビームの強度(エネルギ)を求めることができるので、この検出器からの出力を用いて、加工面MPに向かうビームのZ軸方向の集光位置(像面のZ軸方向の位置)を推測しても良い。そして、その推測結果を用いて、上記集光位置(像面のZ軸方向の位置)が所望の位置となるように集光光学系530を制御しても良い。
【0210】
なお、上記実施形態に係る加工装置100において、例えばロータリエンコーダ83
p,qとともに、
図14に仮想線で示される検出システム89を、用いても良い。この検出システム89としては、第1のミラーアレイ80の表面に検出光を照射し、第1のミラーアレイ80を構成する多数のミラー素子81
p,qからの反射光を受光し、その強度分布に基づき、各ミラー素子81
p,qの状態を検出する検出システムを用いることができる。検出システムとしては、例えば米国特許第8,456,624号明細書に開示されるものと同様の構成のシステムを用いることができる。ロータリエンコーダ83
i,jとともに、検出システム89を用いても良い。
【0211】
また、上記実施形態では、各ミラー素子81i,j又は81p,qの反射面の基準面に対する傾斜角度を変更可能なタイプのミラーアレイ78、80を用いる場合について例示したが、これに限らず、各ミラー素子が、基準面に対して傾斜可能かつ基準面に直交する方向に変位可能な構造のミラーアレイを採用しても良い。また、各ミラー素子は、必ずしも基準面に対して傾斜可能でなくても良い。このように、基準面に直交する方向に変位可能なミラーアレイは、例えば米国特許第8,456,624号明細書に開示されている。この他、各ミラー素子が、基準面に平行な互いに直交する2軸の回りに回転可能(すなわち直交する2方向の傾斜角度を変更可能)なタイプのミラーアレイを採用しても良い。このように直交する2方向の傾斜角度を変更可能なミラーアレイは、例えば米国特許第6,737,662号明細書に開示されている。これらの場合においても、上記米国特許第8,456,624号明細書に開示される検出システムを用いて各ミラー素子の状態を検出することができる。
【0212】
なお、ミラーアレイ78又は80の表面に検出光を照射し、ミラーアレイ78、80をそれぞれ構成する多数のミラー素子81i,j又は81p,qからの反射光を受光する検出システムを用いても良い。あるいは、検出システムとして、各ミラー素子の基準面(ベース)に対する傾斜角及び間隔を個別に検出するセンサを、ミラーアレイ(光学デバイス)に設けても良い。
【0213】
なお、集光光学系530に入射する複数のビームの全ての入射角度などが制御(変更)可能でなくても良い。したがって、上記実施形態と同様にミラーアレイを用いる場合などに、全てのミラー素子が反射面の状態(反射面の位置及び傾斜角度の少なくとも一方)を変更可能でなくても良い。あるいは、ミラーアレイは、複数のミラー素子の反射面の状態を個別に変更可能であっても良いし、グループ毎に変更可能であっても良い。前者には、制御装置600が、グループ毎にミラーアレイの反射面の状態を変更する場合も含まれる。
【0214】
また、上記実施形態のミラーアレイに代えて、以下に説明する空間光変調器(非発光型画像表示素子)を用いても良い。透過型空間光変調器としては、透過型液晶表示素子(LCD:Liquid Crystal Display)以外に、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等が例として挙げられる。また、反射型空間光変調器としては、上述のマイクロミラー・アレイの他に、反射型液晶表示素子、電気泳動ディスプレイ(EPD:Electro Phonetic Display)、電子ペーパー(又は電子インク)、光回折型ライトバルブ(Grating Light Valve)、回折光学素子(Diffractive Optical Element)等が例として挙げられる。
【0215】
なお、上記実施形態において、ビームの断面強度分布は、2値の強度分布であっても良いし、3値以上の多値の強度分布をであっても良いことは言うまでもない。また、ビームの強度分布、ビームの断面形状(例えば照明形状)などは、その断面において、ワークの加工に有効な強度を有する範囲で規定しても良い。
また、上記実施形態では、マスクM上の開口に照射されるビームの照度分布を均一な分布にする場合について説明したが、マスクM上の開口に照射されるビームの照度分布は不均一なものであっても良い。
【0216】
また、上述したように、集光光学系530は大口径であることが望ましいが、開口数N.A.が0.5より小さい集光光学系を用いても良い。また、集光光学系530と被加工物としてのワークとの間を液体で満たす液浸加工を行っても良い。この場合、集光光学系の開口数N.A.が1.0よりも高くても良い。また、集光光学系530とワークとの間の雰囲気が真空であっても良い。
また、上述の実施形態において、集光光学系530の収差を完全に0にするのではなく、所定の収差量が残存する状態としても良い。
【0217】
なお、上記実施形態では、一例として、制御装置600が、第1ステージシステム200A、第2ステージシステム200B、搬送システム300、計測システム400及びビーム照射システム500の構成各部を制御する場合について説明したが、これに限らず、加工システムの制御装置を、マイクロプロセッサ等の処理装置をそれぞれ含む複数のハードウェアにより構成しても良い。この場合において、第1ステージシステム200A、第2ステージシステム200B、搬送システム300、計測システム400及びビーム照射システム500のそれぞれが処理装置を備えていても良いし、第1ステージシステム200A、第2ステージシステム200B、搬送システム300、計測システム400及びビーム照射システム500のうちの少なくとも2つを制御する第1処理装置と、残りのシステムを制御する第2処理装置との組み合わせであっても良いし、あるいは上記5つのシステムのうちの3つを制御する第1処理装置と、残り2つのシステムを個別に制御する第2及び第3処理装置との組み合わせであっても良い。いずれの場合もそれぞれの処理装置が、上述した制御装置600の機能の一部を受け持つことになる。あるいは、複数のマイクロプロセッサ等の処理装置と、これらの処理装置を統括的に管理するホスト・コンピュータとによって、加工システムの制御装置を構成しても良い。
なお、加工装置100が計測システム400を備えていなくても良い。
また、上述の各実施形態において、加工の際に、ワーク上のレーザビームの照射部分にガスを供給しても良い。このガスは空気であっても良いし、酸素であっても良いし、窒素であっても良い。
【0218】
上述の実施形態の複数の構成要件は適宜組み合わせることができる。したがって、上述の複数の構成要件のうちの一部が用いられなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0219】
以上説明したように、本発明に係る加工装置及び加工方法は、ワークの加工に適している。
【符号の説明】
【0220】
10…スライダ、12…テーブル、13…チャック機構、15…マスクステージ、161~166…伸縮機構、17…マスクステージ駆動系、19…マスクステージ位置計測系、241~246…リニアエンコーダ、26…平面モータ、28…位置計測系、62…ライトガイドファイバ、64…ダブルフライアイ光学系、70…レーザユニット、78…第2のミラーアレイ、80…第1のミラーアレイ、80p,q…ミラー素子、83p,q…ロータリエンコーダ、89…検出システム、92…計測部材、92a…開口、100…加工装置、96…受光器、110…計測装置、200A…第1ステージシステム、200B…第2ステージシステム、300…搬送システム、400…計測システム、401…3次元計測機、500…ビーム照射システム、520…照明光学系、530…集光光学系、600…制御装置、BS…ベース、LB…ビーム、M…マスク、MP…加工面、PAa~PAc…開口パターン、TA…目標部位、W…ワーク。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークとビームとを相対移動させつつ前記ビームを照射して前記ワークを加工することと、
前記加工が行われた加工済みワークをクリーニングすることと、
前記クリーニングの後に、前記加工済みワークの3次元形状を計測することと、
を含む、加工方法。