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特開2024-38476演算装置、検出システム、造形装置、演算方法、検出方法、造形方法、演算プログラム、検出プログラムおよび造形プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038476
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】演算装置、検出システム、造形装置、演算方法、検出方法、造形方法、演算プログラム、検出プログラムおよび造形プログラム
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/31 20210101AFI20240312BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240312BHJP
   B22F 10/366 20210101ALI20240312BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20240312BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240312BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240312BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240312BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240312BHJP
   B22F 10/322 20210101ALN20240312BHJP
   B22F 10/37 20210101ALN20240312BHJP
【FI】
B22F10/31
B22F10/28
B22F10/366
B22F12/90
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y30/00
B29C64/153
B22F10/322
B22F10/37
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008901
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2022143104の分割
【原出願日】2018-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(71)【出願人】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】竹下 孝樹
(57)【要約】
【課題】
三次元造形物を造形する造形装置における、造形不良の発生を抑制することに寄与する技術を提供する。
【解決手段】
エネルギー線の照射により粉末材料を加熱して造形した固化層から三次元造形物を造形する造形装置に用いられる演算装置であって、エネルギー線の照射による加熱で粉末材料が溶融している溶融部を含む所定領域の少なくとも一部の状態を求める検出部と、造形装置の造形条件を変更するために、検出部により求められた状態に基づく状態情報を出力する出力部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線の照射により粉末材料を加熱して造形した固化層から三次元造形物を造形する造形装置に用いられる演算装置であって、
エネルギー線の照射による加熱で前記粉末材料が溶融している溶融部を含む所定領域の少なくとも一部の状態を求める検出部と、
前記造形装置の造形条件を設定するために、前記検出部により求められた前記状態に基づく状態情報を出力する出力部と、を備える演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置、検出システム、造形装置、演算方法、検出方法、造形方法、演算プログラム、検出プログラムおよび造形プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光作用等により、粉末状の物質を固化させた各層を積層して3次元物体を製造する3次元物体の製造装置が知られている(たとえば特許文献1)。しかしながら、製造された物体には不良が発生しているおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第540758号明細書
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、エネルギー線の照射により粉末材料を加熱して造形した固化層から三次元造形物を造形する造形装置に用いられる演算装置は、エネルギー線の照射による加熱で前記粉末材料が溶融している溶融部を含む所定領域の少なくとも一部の状態を求める検出部と、前記造形装置の造形条件を変更するために、前記検出部により求められた前記状態に基づく状態情報を出力する出力部と、を備える。
第2の態様によると、エネルギー線の照射により粉末材料を加熱して造形した固化層から三次元造形物を造形する造形装置に用いられる演算方法であって、エネルギー線の照射による加熱で前記粉末材料が溶融している溶融部を含む所定領域の少なくとも一部の状態を求め、前記造形装置の造形条件を変更するために、求められた前記状態に基づく状態情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】第1の実施の形態による造形装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】造形装置が有する造形光学部の具体的な構成と配置の一例を模式的に示す図である。
図3】変形例における造形光学部の具体的な構成と配置の一例を模式的に示す図である。
図4】レーザ光が照射されることにより生じる材料層上の溶融池とその近傍の状態を模式的に示す図である。
図5】生成される温度画像データに対応する温度画像の一例を模式的に示す図である。
図6】生成された温度画像データからスパッタを求める処理を説明する図である。
図7】生成された温度画像データからヒュームを求める処理を説明する図である。
図8】造形条件と、基本条件であるパワー密度、エネルギー密度および温度分布と、基本条件に関するパラメータとの関係を説明する図である。
図9】造形条件と、基本条件であるパワー密度、エネルギー密度および温度分布と、基本条件に関するパラメータとの関係を説明する図である。
図10】リアルタイム変更を行う場合の処理の処理を説明するフローチャートである。
図11】リアルタイム変更を行う場合の処理の処理を説明するフローチャートである。
図12】リアルタイム変更を行う場合の処理の処理を説明するフローチャートである。
図13】次層造形時変更を行う場合の処理の処理を説明するフローチャートである。
図14】次層造形時変更を行う場合の処理の処理を説明するフローチャートである。
図15】次層造形時変更を行う場合の処理の処理を説明するフローチャートである。
図16】次層造形時変更を行う場合の処理の処理を説明するフローチャートである。
図17】第1の実施の形態の変形例(2)における造形装置の要部構成を模式的に示すブロック図である。
図18】第1の実施の形態の変形例(3)における造形装置と検出システムの要部構成を模式的に示すブロック図である。
図19】第2の実施の形態による造形装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図20】第2の実施の形態の造形装置が有する造形光学部との具体的な構成と配置の一例を模式的に示す図である。
図21】第2の実施の形態における造形装置が行う処理を説明するフローチャートである。
図22】第2の実施の形態における造形装置が行う処理を説明するフローチャートである。
図23】第2の実施の形態における造形装置が行う処理を説明するフォローチャートである。
図24】プレ検出の対象となる所定量の粉末材料が形成する形状のZX平面での断面形状を模式的に示す図である。
図25】第2の実施の形態における造形装置が行う処理を説明するフローチャートである。
図26】第2の実施の形態の変形例における造形装置の要部構成を模式的に示すブロック図である。
図27】第2の実施の形態の変形例における造形装置と検出システムの要部構成を模式的に示すブロック図である。
図28】第3の実施の形態による造形装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図29】第3の実施の形態の造形装置が有する造形光学部の具体的な構成と配置の一例を模式的に示す図である。
図30】第3の実施の形態における造形装置が行う処理を説明するフローチャートである。
図31】第3の実施の形態の変形例における造形装置の要部構成を模式的に示すブロック図である。
図32】第3の実施の形態の変形例における造形装置と検出システムの要部構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
-第1の実施の形態-
図面を参照しながら、第1の実施の形態による造形装置について説明する。以下の説明では、公知の粉末床溶融結合法(PBF)を用いて三次元形状の造形物(三次元造形物)を造形する造形装置を例に挙げて説明する。なお、粉末床溶融結合法(PBF)は、粉末焼結積層造形方式(SLS)とも呼ばれる。また、造形装置は、粉末床溶融結合法(PBF)に限られず、指向性エネルギー積層法(DED)、材料噴射方式、電子線ビーム溶解法(EBM)、熱溶解積層法(FDM)など他の方法を用いて三次元造形物を造形する装置でもよい。
まず、図1および図2を参照して、造形装置1の構成を説明する。図1は造形装置1の構造を模式的に示すブロック図であり、図2は造形装置1が有する造形光学部35の具体的な構成と配置の一例を模式的に示す図である。なお、理解を容易にすることを目的として、図1図2に示すように、X軸、Y軸およびZ軸からなる直交座標系を用いて以下の説明を行う。
【0007】
造形装置1は、筐体10と、材料層形成部20と、造形部30と、演算装置50と、を備える。材料層形成部20は、材料供給槽21と、リコーター22とを備える。造形部30は、造形槽31と、造形光学部35とを備える。なお、説明の便宜上、材料層形成部20と造形部30とを別個の構成として分けて表すが、材料層形成部20と造形部30とを纏めて造形部と表すこともできる。
【0008】
材料供給槽21は、三次元造形物の造形するための材料である粉末材料Pを収容するための収容容器である。材料供給槽21の底面211は、たとえばピストン等により構成される駆動機構212により上下方向(Z方向)に沿って移動する。材料供給槽21の底面211がZ方向+側(上方)に向けて移動すると、底面211の上昇量に応じて材料供給槽21の内部の粉末材料Pが外部に押し出され、この押し出された粉末材料Pが後述するリコーター22によって後述する造形槽31に移送される。
【0009】
材料供給槽21には、内部に収容された粉末材料Pを加熱するためのヒーター213が設けられる。ヒーター213は、後述する演算装置50による制御により、粉末材料Pが所望の温度となるように加熱する。ヒーター213は、既存の加熱方式のヒーターが用いられる。なお、ヒーター213には、ペルチェ素子等の温調素子を用いてもよい。このヒーター213は、材料供給槽21内の粉末材料Pを加熱することにより、粉末材料Pが造形槽31に移送され後述するレーザ光の照射により粉末材料Pが加熱される前に、予め粉末材料Pの温度を高くする。これにより、レーザ光の照射により加熱される粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)まで上昇するために必要な熱量が少なくなる。また、ヒーター213は、吸湿度が高く流動性が低い粉末材料Pを加熱することにより、粉末材料Pの吸湿度を下げ流動性を高くする。これにより、粉末材料Pが造形槽31に移送されやすくなり、詳細を後述するようにして形成される材料層の平面度や積層厚や密度が均一になる。この結果、詳細を後述するようにして、材料層にレーザ光が照射されると、レーザ光の照射による材料層内部での温度上昇が均一となる。
なお、材料供給槽21は、Z方向下部から駆動機構212により粉末材料Pを外部に押し出すものに限定されない。材料供給槽21に収容された粉末材料Pが、材料供給槽21の下方(Z方向-側)に設けられたディスペンサに供給され、ディスペンサに供給された粉末材料Pはディスペンサの下部(Z方向-側)に設けられた排出部から造形槽31のベースプレート311上に落下し、落下した粉末材料Pは後述するリコーター22が有するブレード221の移動により均一な厚さに敷き詰めてもよい。
【0010】
粉末材料Pとして、たとえば、金属粉末や、樹脂粉末や、金属粒子に樹脂バインダをコートした粉末等が用いられる。金属粉末は、鉄系粉末を主成分とした粉末や、鉄系粉末に、ニッケル粉末、ニッケル系合成粉末、銅粉末、銅系合金粉末および黒鉛系粉末等のうちの少なくとも1種類以上を更に含む粉末でもよい。たとえば、平均粒径20μm程度の鉄系粉末の配合量が60~90重量%、ニッケル粉末およびニッケル系合金粉末の両方または一方の配合量が5~35重量%、銅粉末および銅系合金粉末の両方または一方の配合量が5~15重量%、ならびに黒鉛粉末の配合量が0.2~0.8重量%とした粉末が挙げられる。樹脂粉末としては、たとえば、平均粒径30μm~100μm程度のポリアミド、ポリプロピレン、ABS等の粉末を用いることができる。金属粒子に樹脂バインダをコートした粉末として、たとえば金属粒子の表面をフェノール樹脂やナイロン等の添加剤でコーティングしたものが用いられてもよい。また、粉末材料Pとしてセラミック粉末が用いられてもよい。セラミック粉末としては、アルミナやジルコニア等の酸化物や、窒化ケイ素等の窒化物の粉末でもよい。なお、粉末材料Pは、上述の材料以外であってもよい。粉末材料Pは、たとえば、既存の金属粉末、既存の樹脂粉末、又は既存のセラミック粉末でもよいし、既存の金属と既存の樹脂と既存のセラミックとの少なくとも2つの材料を組み合わせた粉末の材料であってもよい。
以下、粉末材料Pとして金属粉末が使用される場合を例に挙げて説明を行う。
【0011】
リコーター22は、材料層形成部材としてのブレード221と、駆動機構(不図示)と、ブレード装着部(不図示)とを有する。ブレード221は、たとえばY方向に沿って延在する板状の部材である。ブレード221は、材質や形状が異なる複数の種類の間で交換可能にブレード装着部に取り付けられる。駆動機構は、たとえばモータやX方向に沿って延伸するガイドレール等の駆動機構を有し、ブレード装着部をX方向に沿って移動させることによりブレード221をX方向に沿って図1の位置A(材料供給槽21のX方向-側端部)と位置B(造形槽31のX方向+側端部)との間を移動させる。このようにブレード221を移動させることにより、材料供給槽21に収容された粉末材料P(より詳しくは、材料供給槽21の底面211のZ方向+側(上方)への上昇量に応じて材料供給槽21の外部に押し出された粉末材料P)を、後述する造形部30の造形槽31に移送する。このとき、ブレード221は、粉末材料Pを下方(Z方向-側)に押し付けるように圧力を加えながら移動する。このブレード221の移動により、造形槽31に粉末材料Pが一定の厚さΔdにて敷き詰められて、表面(Z方向+側の面)が平らに整形された粉末床(パウダーベッド)と呼ばれる粉末材料の層(以後、材料層と呼ぶ)が形成される。すなわち、ブレード221は材料層形成部材として機能する。なお、ブレード221は、シリンダー等から構成される押圧機構(不図示)により、粉末材料Pに圧力を加えることができる。
【0012】
ブレード221が、後述するようにして造形された固化層の上部に粉末材料Pを移送させる場合には、先に形成された材料層へレーザ光が照射されることにより固化層が造形されてから所定の時間が経過した後、ブレード221は再び位置AからX方向に沿って移動して、粉末材料Pを固化層の上部に移送する。本明細書では、この所定の時間をブレード221の待機時間と呼ぶ。なお、上記の一定の厚さΔdとは、後述するベースプレート311上に粉末材料Pを移送した場合には、ベースプレート311の表面から材料層の表面(Z方向+側の面)までの厚さであり、後述するようして造形された固化層の上部(Z方向+側)に粉末材料Pが移送された場合には、固化層上部の面(Z方向+側の面)からその固化層の上部に形成された材料層の表面(Z方向+側の面)までの厚さである。
上述したブレード221の移動速度と、ブレード221により粉末材料に加える圧力と、ブレード221の待機時間とは演算装置50によって変更可能に制御される。なお、材料層の形成については、詳細を後述する。
なお、本実施の形態では、材料層形成部材として、板状のブレード221を例に挙げて説明を行うが、材料層形成部材は、ローラーやその他の材料層を形成するために使用可能な部材でよい。例えばローラーが材料層形成部材として用いられる場合には、ローラーは、回転軸がY軸方向に沿うように取り付けられ、駆動機構によってX方向に沿って移動するとき、回転しながら移動する。これにより、ローラーは、粉末材料Pに圧力を加えながら粉末材料Pを造形槽31に一定の厚さΔdで敷き詰める。
【0013】
造形部30の造形槽31は、材料層の形成と、形成された材料層を固化させた固化層の造形とを繰り返し、複数の固化層をZ方向に沿って積層することによって三次元状の造形物を造形するための造形作業用の容器である。本実施の形態における固化層は、後述するように、レーザ光の照射により材料層を形成する粉末材料Pを加熱し、加熱により粉末材料Pが溶融し、凝固して造形された層である。造形槽31の底面であるベースプレート311は、形成された材料層と、固化層とをZ方向-側から支持する支持部材である。ベースプレート311は、造形槽31に含まれるたとえばモータ等の駆動機構312により上下方向(Z方向)に沿って移動する。詳細を後述するように、ベースプレート311上に供給された粉末材料Pにより形成された材料層をレーザ光の照射により加熱して固化層が造形されると、ベースプレート311は下方向(Z方向-側)に移動し、次いで、固化層の上部表面(Z方向+側)に新たな材料層が形成される。この新たな材料層が固化されて新たな固化層が造形される。ベースプレート311は、材質やZ方向の厚みが異なる複数の種類のプレートの間で交換可能に造形槽31に取り付けられている。言い換えると、ベースプレート311は、剛性が異なる複数の種類のプレートの間で交換可能に造形槽31に取り付けられているとも言える。
【0014】
ベースプレート311には、ベースプレート311を加熱するためのヒーター313が設けられる。ヒーター313は、後述する演算装置50による制御により、ベースプレート311に支持される材料層や固化層が所望の温度となるように加熱(予熱)する。ヒーター313は、既存の加熱方式のヒーターが用いられる。なお、ヒーター313として、ペルチェ素子などの温調素子が用いられてもよい。このヒーター313は、造形槽31内の材料層や固化層を加熱(予熱)する。ヒーター313は、材料層を構成する粉末材料Pがレーザ光の照射により加熱される前に、予め粉末材料Pを予熱して温度を高くする。これにより、レーザ光の照射により加熱される粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)まで上昇するために必要な熱量が少なくなる。また、ヒーター313は、造形された固化層を加熱する。これにより、固化層の冷却時に残留応力が発生することが抑制されたり、固化層に発生してしまった残留応力が緩和される。
【0015】
造形部30の造形光学部35は、取得部310と、照射部32と、走査部33と、フォーカスレンズ323とを有する。取得部310は、詳細を後述する撮像装置41と、二分岐光学系42と、色収差補正光学系43と、ハーフミラー301と、視野絞り302とを有する。取得部310は、粉末材料Pが溶融している溶融部を含む所定領域(粉末材料Pが溶融している溶融部、まだ溶融していない未溶融の粉末材料P(材料層)、溶融後に凝固した領域等)の少なくとも一部の情報を取得する(詳細は後述する)。なお、ハーフミラー301は、詳細を後述する造形光学部35の各構成の配置に応じて、取得部310に含まれなくてもよい。
【0016】
ここで、取得部310は、照射部32や走査部33と一体的に構成されているため、説明の便宜上、造形光学部35の一部(つまり、造形部30の一部)として説明する。しかしながら、取得部310は、当該取得部310以外の造形部30の構成(つまり、造形槽31、照射部32、フォーカスレンズ323、および走査部33)とは異なる機能(後述する、粉末材料Pが溶融している溶融部を含む所定領域の少なくとも一部の情報を取得する機能)を備える構成であることから、造形部30とは別個の構成として表すこともできる。この場合、造形部30は、照射部32と走査部33とフォーカスレンズ323とを有する造形光学部35と、造形槽31と、を有する構成となる。また、この場合、ハーフミラー301は、造形光学部35の一部でもあるため、取得部310ではなく、造形光学部35の構成として表すこともできる。
【0017】
照射部32は、一例として、材料層に照射して加熱するための照射光としてレーザ光を出射するレーザ発振器321と、レーザ発振器321から出射されたレーザ光を平行光にコリメートするコリメータレンズ322とを含む(図2参照)。レーザ発振器321として、たとえば炭酸ガスレーザや、Nd:YAGレーザや、ファイバレーザ等が使用可能である。
レーザ発振器321は、たとえば共振器ミラー等からなり、レーザ媒質に満たされた増幅器と、励起光源とを有する。励起光源の光によって励起されたレーザ媒質から発せられた光は、増幅器内における反射の繰り返しを経て発振し、レーザ発振器からレーザ光として出射する。レーザ発振器321は、レーザ光の発振モード(発振形態)として、励起光源を連続的に点灯させるCW(連続派)発振や、励起光源をパルス的に点灯し、励起光源の点灯時間幅と電流値を電気的に制御することによりレーザ光の出力波形を制御する通常パルス発振や、短時間でパルス幅の狭いピーク出力の大きなレーザ光を出射するQスイッチパルス発振等が含まれる。レーザ発振器321は、たとえば波長が1070nmのレーザ光を出射する。なお、レーザ発振器321は、他の波長の光、たとえば800nmより大きな赤外光や、400nm~800nmの範囲の可視光や、400nmより短い紫外光を出射してよい。なお、照射部32の具体的な構成については、説明を後述する。また、照射部32は、演算装置50からの制御により、公知の形状可変ミラー等によって、レーザ発振器321からのレーザ光の強度分布をガウシアン分布とトップハット分布等との間で切換えて出射する。
また、照射部32は、レーザ光に代えて既存の発光ダイオード(LED)や電子線、陽子線、中性子線などの既存の粒子線を材料層に照射し、粉末材料Pを加熱してもよい。本実施の形態においては、照射部32として、既存のレーザ光や既存の発光ダイオードや既存の粒子線等を含むエネルギー線を出射可能なものが適用される。
【0018】
走査部33は、ガルバノミラーにより構成され、照射部32から出射されたレーザ光を材料層上でX方向およびY方向の少なくとも一方に沿って走査する。なお、走査部33の具体的な構成については、説明を後述する。
【0019】
撮像装置41は、照射部32からのレーザ光により照射され溶融した材料層の溶融部とその近傍の所定の領域を撮像して、材料層の溶融部とその近傍を含む所定の領域の像の画像データを生成する。生成される画像データは、材料層の溶融部とその近傍を含む所定の領域からの光を後述する撮像素子411により光電変換して得られた各画素の信号強度である。生成された画像データは、後述する演算装置50に出力される。なお、撮像装置41の具体的な構成については、説明を後述する。
なお、上述のように、造形光学部35は、材料層にレーザ光を照射する構成と、材料層の像を撮像する構成とを一部共有しているため、撮像光学系とも言うことができる。
【0020】
筐体10は、材料供給槽21と、リコーター22と、固化層が収容される造形槽31とを内部に収容する。なお、材料供給槽21の底面211を移動させる駆動機構212の一部や、造形槽31のベースプレート311を移動させる駆動機構312の一部は筐体10の内部に収容されていなくてもよい。筐体10には吸気口11と排気口12とが形成される。吸気口11には、たとえばアルゴンや窒素等の不活性ガスが充填されたタンク13がバルブ等の吸気装置131を介して接続される。排気口12には、たとえば真空ポンプ等を備える排気装置14が接続される。演算装置50に制御された排気装置14と吸気装置131とは、設定された筐体10内の圧力が得られるように、筐体10内部を排気する。また、吸気装置131は、タンク13に充填された不活性ガスを筐体10の内部に導入することにより、筐体10内の酸素濃度を下げる。筐体10内の酸素濃度が下がるので、粉末材料Pの酸化が防止される。筐体10の内部に導入される不活性ガスの流量および流速は、吸気装置131のバルブの開度および排気装置14の排気量により制御される。筐体10には、内部を加熱するヒーター15が設けられ、後述する演算装置50により制御されて筐体10の内部が所望の温度となるように加熱される。ヒーター15は、既存の加熱方式のヒーターが用いられる。なお、ヒーター15として、ペルチェ素子などの温調素子が用いられてもよい。このヒーター15は、筐体10内を加熱することにより、造形槽31内の材料層や固化層を加熱する。ヒーター15は、材料層を構成する粉末材料Pがレーザ光の照射により加熱される前に、粉末材料Pの温度を予め高くする。これにより、レーザ光に照射された粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)まで上昇するため必要な熱量が少なくなる。
【0021】
以上のようにして、筐体10内の酸素濃度、不活性ガスの流量および流速、不活性ガスの種類、筐体10内の圧力、筐体10内の温度を含む筐体10の内部の雰囲気が制御される。また、照射部32からのレーザ光を透過させるため、筐体10の上面(Z方向+側)のうちの少なくとも一部の領域はガラス等の透光性を有する部材により形成される。この一部の領域は、たとえば、走査部33から材料層上に向かうレーザ光の光路と交差する領域である。
【0022】
ここで、図2を参照しながら造形光学部35の具体的な構成と配置の一例について説明する。
図2に示すように、照射部32のレーザ発振器321からZ方向-側に向けて出射したレーザ光は、ハーフミラー301によりX方向+側へ反射され、フォーカスレンズ323を通過して走査部33に入射する。なお、照射部32からのレーザ光の出射方向はZ方向-側に限定されず、ハーフミラー301がレーザ光を反射する方向はX方向+側に限定されない。照射部32が配置される位置と、材料層の位置および/または造形光学部35の他の構成が配置される位置との関係に基づいて、レーザ光の出射方向やハーフミラー301の反射方向は適宜好ましい方向となるように決められる。
【0023】
フォーカスレンズ323は、凹レンズ323aと凸レンズ323bとを有する。後述するガルバノミラー331、332で反射したレーザ光の焦点位置(焦点距離)を調整するために、凹レンズ323aは、演算装置50に制御されて不図示の駆動機構によりX方向に沿って移動可能に構成されている。したがって、この凹レンズ323aのX方向の位置に応じて、材料層上のレーザ光の光束径(スポットサイズ)が調整できる。この場合、後述するガルバノミラー331、332の駆動(すなわち、ガルバノミラー331、332の角度の変化)により、レーザ光が材料層の表面に到達するまでに進む距離が変動するため、フォーカスレンズ323は、ガルバノミラー331、332で反射したレーザ光の集光点と、材料層の表面とが合うように、ガルバノミラー331、332の駆動に応じて、レーザ光の焦点位置を調整することができる。
【0024】
また、必ずしもガルバノミラー331、332の駆動に伴い、レーザ光の集光点と材料層の表面とが合うように、レーザ光の焦点位置が調整されなくてもよい。例えば、材料層上におけるレーザ光の照射位置毎にレーザ光の光束径(スポットサイズ)を変更するように、ガルバノミラー331、332の駆動(ガルバノミラー331、332の角度の変化)に応じて、演算装置50に制御された不図示の駆動機構により凹レンズ323aの位置を制御してもよい。なお、凹レンズ323aが移動可能に構成されていなくてもよく、凸レンズ323bが不図示の駆動機構によりX方向に移動可能に構成されていてもよいし、凹レンズ323aと凸レンズ323bの両方のレンズが不図示の駆動機構によりX方向に移動可能に構成されていてもよい。また、フォーカスレンズ323は、凹レンズ323aと凸レンズ323bを含む所謂、ガリレオ型でなくてもよく、他の既存の光学系を採用することもできる。
なお、フォーカスレンズ323の凹レンズ323aや凸レンズ323bがX方向に移動可能に構成されるものに限定されない。フォーカスレンズ323が配置される位置と、造形光学部35の他の構成が配置される位置との関係に基づいて、凹レンズ323aや凸レンズ323bの移動方向は適宜好ましい方向となるように決められる。
【0025】
走査部33は、ガルバノミラー331と332とを有する。ガルバノミラー331は、Z軸に対して所定の角度傾いた状態で配置される。ガルバノミラー331のZ軸に対する傾き角度は、演算装置50からの制御により変更される。ガルバノミラー331は、フォーカスレンズ323からX方向+側へ進むレーザ光を、ガルバノミラー331よりもZ方向+側に設けられたガルバノミラー332へ向けて反射する。
【0026】
ガルバノミラー332は、XY平面に対して所定の角度傾いた状態で配置される。ガルバノミラー332のXY平面に対する傾き角度は、演算装置50からの制御により変更される。ガルバノミラー331で反射されたレーザ光は、ガルバノミラー332で反射され、材料層の表面に導かれる。ガルバノミラー331のZ軸に対する傾き角度と、ガルバノミラー332のXY平面に対する傾き角度とが変更されることにより、レーザ光が照射される材料層上の位置がX軸およびY軸の少なくとも一方に沿って移動する。これにより、レーザ光に照射される材料層上での位置をXY平面上で移動、すなわち走査させることができる。
なお、ガルバノミラー331、332の配置や、ガルバノミラー331によるレーザ光の反射方向は上述した配置や反射方向に限定されない。走査部33が配置される位置と、造形光学部35の他の構成が配置される位置との関係に基づいて、ガルバノミラー331、332の配置や、ガルバノミラー331によるレーザ光の反射方向は適宜好ましい配置や反射方向となるように決められる。
【0027】
上記のガルバノミラー331、332で設定される走査角度量が増加すると、レーザ光の走査距離が増加する。走査距離は、レーザ光に照射される材料層上の位置(照射位置)がXY平面上で移動するときの照射位置の移動距離である。また、ガルバノミラー331、332の傾き角度を変更する速度が増加すると、レーザ光の走査速度が増加する。走査速度は、材料層上での照射位置がXY平面上で移動するときの速度のことである。すなわち、演算装置50は、ガルバノミラー331,332の走査角度量や変更速度を制御することにより、レーザ光の走査距離や走査速度を制御する。
ガルバノミラー331、332の傾き角度により材料層の表面上にてレーザ光の照射位置が決まる。後述する撮像装置41により撮像が行われた際には、生成された画像データは、照射位置情報と、時間情報とに関連付けされて記憶部58に記憶される。照射位置情報は、レーザ光の照射位置を示す情報である。上述したようにレーザ光の照射位置はガルバノミラー331、332の傾き角度により移動するので、エンコーダ等により検出されたガルバノミラー331、332の傾き角度に基づいて材料層上でのレーザ光の照射位置が算出される。また、画像データに関連付けされる照射位置情報は、ガルバノミラー331、332の傾き角度であってもよい。時間情報とは、レーザ光の照射開始時を基準として撮像装置41により撮像が行われたタイミングを示す時間情報である。
【0028】
なお、走査部33が上述したガルバノミラー331、332によって構成されるものに限定されない。たとえば、走査部33は、造形槽31のベースプレート311をX方向およびY方向の少なくとも一方に沿って移動させる駆動機構によって構成されてよい。この場合、駆動機構は、モータやX方向に延在するガイドレールやY方向に延在するガイドレール等により構成され、ベースプレート311をXY平面上で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置と材料層とのXY平面上での相対的な位置関係が変更され、レーザ光が材料層上で走査される。この場合、上記のガルバノミラー331、332によるレーザ光のXY平面における照射位置の移動と、ベースプレート311の移動による材料層のXY平面における移動とが行われることによりレーザ光が走査されてもよい。また、上記のガルバノミラー331、332の傾き角度が固定され、ベースプレート311の移動による材料層のXY平面における移動のみが行われることによりレーザ光が走査されてもよい。レーザ光とベースプレート311(すなわち、材料層)とのXY平面上での相対的な位置関係を変更する構成は、上述の構成に限られず、他の既存の構成を適用することもできる。
【0029】
材料層上のうち、粉末材料Pが溶融している溶融部を含む所定領域(粉末材料Pが溶融している溶融部、まだ溶融していない未溶融の粉末材料P(材料層)、溶融後に凝固した領域等)の少なくとも一部の領域からの光(以降、説明の便宜上、熱放射光と称する)は、レーザ光と同軸の光路を反対方向に進む。すなわち、熱放射光は、材料層表面からZ方向+側に向けて進み、ガルバノミラー332によりガルバノミラー331に向けて反射され、ガルバノミラー331にてX方向-側に反射される。X方向-側に進む所定領域からの光は、フォーカスレンズ323に入射し、凸レンズ323bと凹レンズ323aを通過して、平行光束となる。フォーカスレンズ323を通過した熱放射光は、ハーフミラー301を透過し、X方向-側へ進み、色収差補正光学系43に入射する。なお、レーザ光を反射し、熱放射光を透過する光学部材はハーフミラーでなくてもよい。たとえば、ダイクロックミラーなどの既存の光学部材でもよい。
【0030】
色収差補正光学系43は、フォーカスレンズ323の通過により、熱放射光に発生している軸上色収差、倍率色収差等を補正する。色収差補正光学系43は、第1レンズ431と、第2レンズ432と、第3レンズ433とを含み、この順序にてX方向+側から配置される。第1レンズ431と第2レンズ432とは、それぞれ凸レンズと凹レンズとを組み合わせた接合レンズである。第1レンズ431は正の屈折率を有し、第2レンズ432は負の屈折率を有し、第3レンズは正の屈折率を有する。第1レンズ431と第2レンズ432とは、ハーフミラー301を透過して入射した熱放射光を平行光束の状態でX方向-側の第3レンズ433に入射させ、第3レンズ433はこの平行光束を集光して一次像面を形成させる。この一次像面で軸上色収差や倍率色収差が生じないように第1レンズ431と第2レンズ432と第3レンズ433との分散が決定される。この場合、第1レンズ431および第2レンズ432を透過した熱放射光に含まれる色収差が、第3レンズ433の集光により生じる色収差によって打ち消されるように、各レンズの分散が決まっている。
なお、色収差補正光学系43の第1レンズ431、第2レンズ432、第3レンズ433がX方向に沿って配置されるものに限定されない。色収差補正光学系43が配置される位置と、造形光学部35の他の構成が配置される位置との関係に基づいて、第1レンズ431、第2レンズ432、第3レンズ433が配置される方向は適宜好ましい方向となるように決められる。
【0031】
一次像面には視野絞り302が配置される。熱放射光が視野絞り302に設けられた開口をX方向-側へ向けて通過することにより、後述する撮像装置41に入射する光束が結像して生成される画像(画像データ)の視野が制限される。本実施の形態では、視野絞り302の開口は、レーザ光の照射位置を含む所定領域の画像(画像データ)が生成されるようにその開口の大きさが決定されている。これにより、材料層上の所定領域外の像が画像(画像データ)上に含まれることが抑制される。視野絞り302を通過した熱放射光は、視野絞り302のX方向-側に配置された二分岐光学系42に入射する。
【0032】
二分岐光学系42は、対物レンズ421と、光束分割部422と、光束偏向部423、424と、光束合成部425と、結像レンズ426と、第1フィルタ427と、第2フィルタ428とを有する。対物レンズ421はコリメートレンズであり、視野絞り302から到達した熱放射光を平行光にコリメートする。光束分割部422は、たとえばダイクロックミラーやビームスプリッター等により構成され、熱放射光のうち特定波長の光束を透過し、特定波長以外の光束を反射する。本実施の形態では、光束分割部422は、入射した熱放射光のうち波長がλ1の光を透過して、X方向-側に設けられた第1フィルタ427へ導き、波長がλ2の光を反射して、Z方向+側に設けられた光束偏向部423へ導く。光束偏向部423は、たとえばダイクロイックミラー等により構成され、波長がλ2の光を反射して、X方向-側に設けられた第2フィルタ428へ導く。なお、本実施の形態では、波長λ1を、たとえば1250[nm]とし、波長λ2を、たとえば1600[nm]であるものとして説明を行うが、波長λ1、λ2は上記の値に限定されるものではない。
【0033】
第1フィルタ427は、波長がλ1の光を透過させるバンドパスフィルタである。光束分割部422を透過した波長がλ1の光は、第1フィルタ427を透過し、X方向-側に配置された光束偏向部424に入射する。第2フィルタ428は、波長がλ2の光を透過させるバンドパスフィルタである。光束偏向部423で反射した波長がλ2の光は、第2フィルタ428を透過し、光束合成部425に入射する。光束偏向部424は、たとえばダイクロイックミラー等により構成され、光束の反射面はXY平面に対して所定の傾き角度となるように配置される。
【0034】
光束合成部425は、たとえばダイクロイックミラー等により構成され、光束の反射面はXY平面に対して所定の傾き角度となるように配置される。光束偏向部424で反射された波長がλ1の光は、Z方向+側に向けて進み、光束合成部425を透過して結像レンズ426により集光されて撮像装置41に入射する。光束合成部425に入射した波長がλ2の光は、光束合成部425で反射された後に、Z方向+側へ向けて進み、結像レンズ426により集光されて撮像装置41に入射する。ここで、光束偏向部424の反射面の傾き角度と光束合成部425の反射面の傾き角度とは互いに異なる角度となるように配置される。このため、光束偏向部424からの波長がλ1の光と、光束合成部425からの波長がλ2の光とは、結像レンズ426に対して異なる角度で入射することとなり、後述する撮像装置41が有する撮像素子411の撮像面上で異なる位置に集光する。
【0035】
本実施の形態においては、光束偏向部424と光束合成部425の反射面がXY平面となす角度が変更可能に構成される。すなわち、光束偏向部424と光束合成部425の反射面を駆動させる駆動機構(不図示)が設けられ、駆動機構は演算装置50からの制御に従って、光束偏向部424と光束合成部425の反射面を駆動して、反射面がXY平面となす角度を変更する。これにより、波長λ1の光と波長λ2の光との撮像素子411上への入射位置がリアルタイムに変更される。
【0036】
なお、上述した光束分割部422の反射面と、光束偏向部423の反射面とがXY平面となす角度が変更可能に構成されてもよい。すなわち、光束分割部422の反射面と、光束偏向部423の反射面を駆動させる駆動機構(不図示)が設けられ、駆動機構は演算装置50からの制御に従って、光束分割部422の反射面と、光束偏向部423の反射面を駆動して、反射面がXY平面となす角度を変更してよい。また、光束分割部422の反射面と、光束偏向部423の反射面とが駆動機構により駆動される例に限定されず、光束分割部422の反射面と、光束偏向部423の反射面とがユーザにより手動で調整されてもよい。この手動による調整は、たとえば造形装置1を納入した際の装置の立ち上げ時や、造形装置1のメンテナンスの時に行われる。
また、二分岐光学系42の各構成の配置や、熱放射光の反射方向は、上述した配置や反射方向に限定されない。二分岐光学系42が配置される位置と、造形光学部35の他の構成が配置される位置との関係に基づいて、二分岐光学系42の各構成の配置や、熱放射光の反射方向は適宜好ましい配置や反射方向となるように決められる。
【0037】
撮像装置41は、たとえばCMOS、CCD等により構成される撮像素子411や、撮像素子411で光電変換された画像信号を読み出す読出し回路や、撮像素子411の駆動を制御する制御回路等を有する。撮像装置41に入射した熱放射光は、結像レンズ426により撮像素子411の撮像面上に集光する。撮像装置41は、入射した光束を光電変換し、画像データを生成して演算装置50に出力する。
上述したように、光束偏向部424の反射面の傾き角度と光束合成部425の反射面の傾き角度とは互いに異なる角度となるように配置されている。このため、材料層の所定領域からの熱放射光のうち、光束偏向部424で反射された波長λ1の光と、光束合成部425で反射された波長λ2の光とは、結像レンズ426に対して異なる角度で入射することとなり、撮像素子411の撮像面上の異なる位置に集光する。すなわち、材料層の所定領域からの熱放射光のうち波長の異なる2つの光によるそれぞれの像が、同一画像上の(同一画像データ上の)異なる位置に現れる。
【0038】
なお、上述したように、光束偏向部422、423の反射面がXY平面となす角度と、光束偏向部424、光束合成部425の反射面がXY平面となす角度とが変更可能である。このため、演算装置50が、光束偏向部424、光束合成部425の反射面がXY平面となす角度とを制御することにより、熱放射光のうち波長λ1の光が撮像素子411上で集光する位置と、波長λ2の光が撮像素子411上で集光する位置との間の相対的な位置関係の調整が可能になる。なお、上述したように、光束分割部422の反射面と、光束偏向部423の反射面との角度が変更可能な場合には、光束分割部422の反射面と、光束偏向部423の反射面との角度を変更することによっても、波長λ1の光と波長λ2の光が撮像素子411上で集光する位置の調整が可能になる。
【0039】
図2に示す上述した構成を有することにより、レーザ光を照射させるための光学系と、撮像装置41で撮像するための光学系とが同軸に配置される。これにより、光学系の構成が簡素になり装置の大型化が抑制される。
また、二分岐光学系42が設けられることにより、異なる2つの波長λ1とλ2の光が撮像素子411の異なる位置に集光される。すなわち、粉末材料Pのうち溶融している溶融部を含む所定領域(粉末材料Pが溶融している溶融部、まだ溶融していない未溶融の粉末材料P(材料層)、溶融後に凝固した領域等)からの熱放射光の波長の異なる2つの光によるそれぞれの像が、同一画像上(同一画像データ上)の異なる位置に現れる。後述する演算装置50の検出部54は、後述する公知の二色法を用いて、この同一画像(同一画像データ)上の異なる位置の像のそれぞれの輝度情報の比を、粉末材料Pのうち溶融している溶融部を含む所定領域(粉末材料Pが溶融している溶融部、まだ溶融していない未溶融の粉末材料P(材料層)、溶融後に凝固した領域等)の温度に換算する。ここで、輝度情報とは、輝度値や輝度に関する値である。レーザ光が照射された材料層では、詳細を後述するように、粉末材料Pが溶融した領域と、また溶融していない未溶融の粉末材料Pと、溶融後に凝固した領域とが存在するため相状態が異なる。このため、材料層の所定領域内では相状態ごとに光の放射率が異なる。また、粉末材料Pの種類によっても光の放射率が異なる。
【0040】
また、詳細を後述するように、レーザ光が照射されることにより粉末材料Pが溶融している領域からはヒュームが発生する。ヒュームは、レーザ光の照射による加熱で粉末材料Pが蒸気となり、その蒸気が空気中で冷却されて固体となって浮遊する多数の細かい粒子である。2つの波長を含む熱放射光はヒュームによる散乱により減衰する。しかし、二色法においては、波長λ1の光に基づいて生成された画像データの輝度情報と波長λ2の光に基づいて生成された画像データの輝度情報との比(例えば、輝度値の比)に基づいて、温度に換算するので、粉末材料Pのうち溶融している溶融部を含む所定領域(粉末材料Pが溶融している溶融部、まだ溶融していない未溶融の粉末材料P(材料層)、溶融後に凝固した領域等)の放射率や2つの波長を含む熱放射光はヒュームによる散乱の影響を受けない。このため、撮像装置41で生成された画像データに基づいて、レーザ光に照射されている粉末材料Pの状態や、ヒューム等の影響を受けることなく材料層の温度に関する情報が取得される。
【0041】
なお、造形光学部35の構成と配置は、上記の図2に示す例に限定されない。
たとえば、取得部310が2つの撮像装置41を有し、一方の撮像装置で熱放射光のうちの波長λ1の光を撮像し、他方の撮像装置で熱放射光のうちの波長λ2の光を撮像してよい。一方の撮像装置が有する撮像素子の撮像面はYZ平面に平行であり、他方の撮像装置が有する撮像素子の撮像面はXY平面に平行となるように2つの撮像装置が配置される。二分岐光学系42は、図2に示す、光束分割部422と、第1フィルタ427と、第2フィルタ428とを有する。また、図2に示す視野絞り302は設けられない。色収差補正光学系43の第3レンズ433は、2つの撮像装置41のそれぞれの前面に配置される。すなわち、色収差補正光学系43の第2レンズ432と第3レンズ433との間に、二分岐光学系42の第1フィルタ427、第2フィルタ428および光束分割部422が配置される。色収差補正光学系43の第1レンズ431および第2レンズ432を通過した光束は、光束分割部422により波長λ1の光が透過して第1フィルタ427を透過してX方向-側へ進み、一方の第3レンズ433により一方の撮像装置の撮像素子に集光する。光束分割部422により反射された波長λ2の光はZ方向+側へ進み、第2フィルタ428を透過し、他方の第3レンズ433により他方の撮像装置の撮像素子に集光する。これにより、それぞれの撮像装置は、互いに異なる波長ごとの画像データの生成が可能になる。
【0042】
また、取得部310は、例えば、図2に示す二分岐光学系42に代えて、透過する光の波長を切り替え可能なフィルタを用いてよい。このフィルタは、色収差補正光学系43の第2レンズ432と第3レンズ433との間に配置され、波長λ1の光を透過する領域(第1領域)と、波長λ2の光を透過する領域(第2領域)とを有する。フィルタの第1領域と第2領域とは、所定の時間間隔ごとに、熱放射光の光路上に交互に挿入される。たとえば、円板状の部材(ターレット)に波長透過率の異なる複数のフィルタが設けられ、ターレットの面がYZ平面と平行に配置され、不図示の駆動機構によりターレットの中心を回転中心として回転可能に構成される。例えば、ターレットに波長透過率の異なる複数のフィルタとして、第1フィルタと第2フィルタとが設けられているとすると、駆動機構によりターレットが回転すると、回転速度に応じた時間間隔で、第1フィルタと第2フィルタとが熱放射光の光路上に交互に挿入される。このため、第1フィルタが光路上に挿入されている間は、熱放射光のうち波長λ1の光が透過して第3レンズ433により撮像装置41の撮像素子411に集光し、第2フィルタが光路上に挿入されている間は、波長λ2の光が透過して第3レンズ433により撮像素子411に集光する。これにより、ターレットの回転速度に応じた時間間隔ごとに、撮像装置41は、波長λ1の光に基づく画像データの生成と、波長λ2の光に基づく画像データの生成とを行う。なお、この場合には、図2に示す視野絞り302は設けられない。これにより、撮像装置41は、異なる波長ごとの画像データをターレットの回転速度に応じた時間間隔ごとに生成することができる。
または、撮像装置41の撮像素子411上に、撮像素子411を構成する画素の配置に応じて、波長λ1と波長λ2のそれぞれの波長を選択するためのフィルタが配置されてもよい。この場合、図2に示す二分岐光学系42、視野絞り302は設けられない。これにより、波長λ1とλ2の画像データの生成が可能となる。
【0043】
または、図3(a)に示すように、材料層上におけるレーザ光の焦点位置を調整する第1フォーカスレンズ324と、材料層からの放射光の撮像素子411上での焦点位置を調整する第2フォーカスレンズ325とを有してもよい。第1フォーカスレンズ324および第2フォーカスレンズ325とは、図2に示すフォーカスレンズ323が有する凹レンズ323aと凸レンズ323bと同様の凹レンズ324a、325aと凸レンズ324b、325bとを有する。
図3(a)に示す例では、レーザ発振器321からのレーザ光はZ方向+側に進み、第1フォーカスレンズ324を透過し、ハーフミラー301を透過して走査部33に入射する。熱放射光は、走査部33を介してハーフミラー301に入射し、ハーフミラー301で反射されてZ方向+側に進む。熱放射光は第2フォーカスレンズ325を透過し、図2に示す場合と同様の構成を有する色収差補正光学系43を透過して、二分岐光学系42に入射する。二分岐光学系42も図2に示す場合と同様の構成を有するので、熱放射光は2つの波長に分割された光となり、それぞれの光は撮像装置41の撮像素子411上の異なる位置に集光する。
【0044】
なお、レーザ発振器321と第1フォーカスレンズ324とがZ方向に沿って配置され、第2フォーカスレンズ325と色収差補正光学系43と二分岐光学系42とがX方向に沿って配置されてもよい。
換言すると、図3(a)に示す例においては、取得部310は、撮像装置41と、二分岐光学系42と、色収差補正光学系43と、第2フォーカスレンズ325と、ハーフミラー301とを有する。これにより、取得部310は、粉末材料Pのうち溶融している溶融部を含む所定領域(粉末材料Pが溶融している溶融部、まだ溶融していない未溶融の粉末材料P(材料層)、溶融後に凝固した領域等)の情報を取得する。
なお、取得部310は、当該取得部310以外の造形部30の構成とは異なる機能(粉末材料Pが溶融している溶融部を含む所定領域の少なくとも一部の情報を取得する機能)を備える構成であることから、造形部30(造形光学部35)とは別個の構成として表すこともできる。また、この場合、ハーフミラー301は、造形光学部35の一部でもあるため、取得部310ではなく、造形光学部35の構成として表すこともできる。
【0045】
または、図3(b)に示すように、フォーカスレンズ323に代えてfθレンズ326が走査部33と材料層との間に設けられてよい。fθレンズ326は、fθレンズ326の焦点距離をfとした場合、入射角度θの光を像高f×θの位置に集光するレンズである。このため、走査部33によりレーザ光が走査された際、ガルバノミラー331、332の傾き角度によって入射角度が変化したレーザ光の焦点を同一平面上(すなわち材料層上)の異なる位置に設定する。
この場合、照射部32から出射したレーザ光はX方向+側に進み、ハーフミラー301を透過し、走査部33およびfθレンズ326を介して材料層に照射される。熱放射光は、fθレンズ326および走査部33を介してハーフミラー301に到達し、ハーフミラー301にてZ方向+側に反射され、第1レンズ431および二分岐光学系42を介して撮像装置41に入射する。これにより、図2に示す場合と同様に、異なる波長ごとの画像データの生成が可能となる。
【0046】
なお、レーザ発振器321がZ方向に沿って配置され、第1レンズ431と二分岐光学系42とがX方向に沿って配置されてもよい。
換言すると、取得部310は、図3(b)に示す撮像装置41と、二分岐光学系42と、色収差補正光学系43と、ハーフミラー301とを有する。これにより、取得部310は、粉末材料Pのうち溶融している溶融部を含む所定領域(粉末材料Pが溶融している溶融部、まだ溶融していない未溶融の粉末材料P(材料層)、溶融後に凝固した領域等)の情報を取得する。
なお、取得部310は、当該取得部310以外の造形部30の構成とは異なる機能(粉末材料Pが溶融している溶融部を含む所定領域の少なくとも一部の情報を取得する機能)を備える構成であることから、造形部30(造形光学部35)とは別個の構成として表すこともできる。また、この場合、ハーフミラー301は、造形光学部35の一部でもあるため、取得部310ではなく、造形光学部35の構成として表すこともできる。
【0047】
なお、検出部54は、二色法を用いなくてもよい。例えば、粉末材料Pが溶融している溶融部を含む所定領域の少なくとも一部からの熱放射光の任意の1種類の波長の光による画像データに基づいて、温度画像データを生成してもよい。この場合、取得部310の二分岐光学系42を対物レンズ421と、任意の1種類の波長を選択するためのフィルタと、結像レンズ426を含む構成に置き換えてもよい。また、この場合、取得部310の色収差補正光学系43が無くてもよい。なお、検出部54は、任意の1種類の波長の光だけでなく、任意の3種類以上の波長の光による画像データに基づいて、温度画像データを生成してもよい。この場合であっても、取得部310の二分岐光学系42における光路の分岐を増やすように構成すればよい。
【0048】
図1の演算装置50は、マイクロプロセッサやその周辺回路等を有しており、不揮発性の記憶媒体(たとえばフラッシュメモリ等)により構成される記憶部58に予め記憶されている制御プログラムを読み込んで実行することにより、造形装置1の各部を制御するプロセッサーである。演算装置50は、設定部59と、検出部54と、出力部55と、演算部56と、判定部57とを備える。なお、演算装置50は、CPUや、ASICや、プログラマブルMPU等により構成されてよい。
【0049】
設定部59は、後述する出力部55から出力される状態情報に基づいて、造形装置1が三次元造形物を造形するための各種の条件(造形条件)を設定する。なお、状態情報については説明を後述する。設定部59は、材料制御部51と、造形制御部52と、筐体制御部53とを備える。
材料制御部51は、材料層を形成するための条件である材料層形成条件に従って、材料層形成部20の動作を制御する。材料層形成条件には、ブレード221の移動速度と、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力と、ブレード221の待機時間と、ブレード211の材質と、が含まれる。また、材料制御部51は、粉末材料Pに関連する条件に従って、材料層形成部20の動作を制御する。粉末材料Pに関連する条件としては、詳細を後述する、粉末材料Pの粒径・粒度分布と、粉末材料Pの吸湿度と、粉末材料Pの種類とが含まれる。この場合、材料制御部51は、材料供給槽21の底面211を駆動する駆動機構212の動作や、材料供給槽21に収容された粉末材料を加熱するヒーター213による加熱温度を制御する。後述する演算部56により変更情報が生成されると、材料制御部51は、変更情報の内容に基づいた材料層形成条件や粉末材料Pに関連する条件に従って、材料層形成部20の動作を変更する。
【0050】
造形制御部52は、造形部30の動作を制御する。造形制御部52は、粉末材料Pを加熱するために粉末材料Pに出射されるレーザ光の条件に基づいて、照射部32を制御する。レーザ光の条件としては、詳細を後述する、レーザ光の出力と、レーザ光の波長と、レーザ光の強度分布と、レーザ光の光束サイズ(スポットサイズ)とが含まれる。造形制御部52は、粉末材料Pを加熱するためにレーザ光を走査するための走査条件に基づいて、走査部33を制御する。走査条件としては、詳細を後述する、レーザ光の走査速度と、レーザ光の照射位置の間隔と、レーザ光の走査経路とが含まれる。造形制御部52は、粉末材料Pおよび固化層を支持するベースプレート311に関連する支持部条件に基づいて、ベースプレート311の動作を制御する。支持部条件としては、詳細を後述するベースプレート311の温度が含まれ、造形制御部52は、この支持部条件に基づいて、ベースプレート311を加熱するヒーター313による加熱温度を制御する。また、造形制御部52は、造形槽31のベースプレート311を駆動する駆動機構312の動作を制御する。造形制御部52は、変更情報の内容に従って、固化層や三次元造形物の設計データの変更を行う。設計データとして、詳細を後述するスライスモデルデータやサポート部の形状データが含まれる。後述する演算部56により変更情報が生成されると、造形制御部52は、変更情報の内容に従って、造形部30の動作や、設計データを変更する。
【0051】
筐体制御部53は、筐体10の内部の雰囲気に関連する条件に従って、吸気装置131および排気装置14の動作や、ヒーター15の動作を制御して。筐体10の内部の雰囲気に関連する条件としては、詳細を後述する、筐体10へ導入される不活性ガスの流量と流速と、筐体10の内部の温度とが含まれる。後述する演算部56により変更情報が生成されると、筐体制御部53は、変更情報の内容に基づいた筐体10の内部の雰囲気に関連する条件に従って、吸気装置131や排気装置14やヒーター15の動作を変更する。
記憶部58は、上述した制御プログラムに加えて、後述する検出部54による溶融部を含む所定領域の少なくとも一部の状態の検出や、演算部56による変更情報の生成や、判定部57による判定処理の際に使用される各種の情報が記憶される。
【0052】
検出部54は、上述した撮像装置41により生成された画像データに基づいて、材料層における所定領域の少なくとも一部の状態を求める。ここで、所定領域は、後述するように、レーザ光の照射によって粉末材料Pが溶融している溶融部と、まだ溶融していない未溶融の粉末材料P(材料層)と、溶融後に凝固した領域と、スパッタが発生した領域と、ヒュームが発生した領域とを含む。以後の説明では、この所定領域を検出対象領域と呼ぶ。
【0053】
出力部55は、造形装置1の造形条件を設定するために、検出部54により求められた検出対象領域の少なくとも一部の状態に基づく状態情報を、上述した設定部59(すなわち、材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。求められた検出対象領域の少なくとも一部の状態に基づく状態情報とは、後述する演算部56により生成された三次元造形物を造形するための造形条件を変更するための変更情報や、検出部54により検出された検出対象領域の少なくとも一部の状態自体の情報を含む。以下、説明の便宜上、検出対象領域の少なくとも一部という表現を、単に検出対象領域と称する。
【0054】
演算部56は、検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて造形条件を変更するための変更情報を生成する。また、演算部56は、後述する判定部57により造形された固化層に対して補修が必要と判定されると、固化層に対して補修を行うための補修情報を生成する。
判定部57は、検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、造形条件の変更の要否を判定する。また、判定部57は、検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、造形された固化層に対して補修の要否を判定する。
なお、検出部54、演算部56および判定部57が行う処理の詳細については説明を後に行う。
【0055】
次に、上記の構成を有する造形装置1の動作について説明する。
まず、筐体制御部53は、筐体10の内部を設定された雰囲気となるように、吸気装置131や排気装置14やヒーター15を制御する。
筐体制御部53は、設定された筐体10内の圧力が得られるように、吸気装置131のバルブ開度および排気装置14の排気量を制御する。また、筐体制御部53は、吸気装置131のバルブ開度を制御することにより、筐体10の内部に不活性ガスを導入して、筐体10の酸素濃度を下げる。酸素濃度が低下することにより、粉末材料Pがレーザ光に照射されて溶融する際に、粉末材料Pが酸化されて、粉末材料Pの粒子表面に酸化被膜が形成されることが抑制される。粉末材料Pの粒子表面に酸化被膜が形成されると、酸化被膜の厚さに応じて比熱が変化するため、後述するようにレーザ光が照射された場合に、レーザ光の照射による粉末材料Pの熱の吸収や熱の伝導に影響を及ぼす可能性がある。この場合、粉末材料Pが未溶融となったり、造形される固化層に形状不良や強度不足が生じたり、所望の金属組織を有する固化層が得られない等の溶融不良等の原因となる。筐体10の酸素濃度が低下することにより、上記したような溶融不良等の原因となる粉末材料Pの酸化が抑制される。
筐体制御部53は、造形条件として設定された筐体10の内部の温度となるように、ヒーター15の加熱出力を制御して、筐体10の内部を加熱させる。
【0056】
筐体10の内部に不活性ガスが導入され、酸素濃度が予め定められた濃度よりも低くなり、また筐体10の内部がヒーター15により設定された温度に加熱されると、材料制御部51は、駆動機構212を制御して、材料供給槽21の底面211をZ方向+側に移動(上昇)させる。造形制御部52は、駆動機構312を制御して、造形槽31のベースプレート311を、これから形成する材料層の厚さΔdだけZ方向-側に移動(下降)させる。材料制御部51は、リコーター22の駆動機構を制御して、ブレード221をX方向に沿って位置Aから位置Bへ向けて移動させる。位置Aから移動を開始したブレード221は、底面211の上昇により材料供給槽21から押し出された粉末材料PをX方向+側の造形槽31のベースプレート311上に移送する。ベースプレート311上に移送された粉末材料Pは、X方向+側に移動するブレード221の下端(Z方向-側)により下方(Z方向-側)へ圧力を加えられることにより、ベースプレート311の表面からの高さ(Z方向の厚み)が揃えられた状態でベースプレート311上に敷き詰められる。これにより、ベースプレート311の表面からの厚み(積層厚)が一定となる材料層が形成される。このとき、ブレード221の移動速度や、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力が材料制御部51によって制御されることにより、ユーザの所望する材料層の積層厚や、材料層表面の平面度や、密度等が得られる。なお、密度とは、形成された材料層における粉末材料Pの量に対する材料層の厚さであり密度が低い程材料層内に隙間が存在する割合が多いことを示す。
【0057】
照射部32は、形成された材料層にレーザ光を照射する。走査部33は、照射部32からのレーザ光を材料層の表面上で走査する。レーザ光を走査する経路(走査経路)は、造形装置1で造形する三次元造形物の設計データ、たとえばCADデータやCADデータから変換されたSTLデータ等の三次元造形物の三次元形状に関連する形状データを、Z方向に沿って所定の間隔(例えば、材料層の積層厚さの間隔)でスライスした形状データの集合であるスライスモデルデータに基づいて設定される。このスライスモデルデータは各層における固化層の形状を決める固化層の形状データである。
【0058】
演算装置50の造形制御部52は、ベースプレート311のZ方向の位置に対応する三次元造形物のスライスモデルデータで決まる形状に応じて、材料層の表面の粉末材料Pが照射されるように走査部33によりレーザ光を走査する走査経路を決定する。
なお、造形過程にある三次元造形物や固化層の変形や破損等を防ぐために、造形中の固化層や、三次元造形物を支持するサポート部を形成しながら造形が行われる。サポート部の形状や太さ等の情報を表すサポート部の形状データは、三次元造形物の形状データ(すなわちCADデータやSTLデータにおけるサポート部の形状のデータ)や、三次元造形物の形状データに基づいて作成されるスライスモデルデータである。
【0059】
また、三次元造形物の造形姿勢データは、スライスモデルデータを設定するための三次元造形物(三次元造形物の形状データ)の造形姿勢を示すデータである。造形姿勢とは、たとえば角柱状の三次元造形物を造形する際に、角柱の軸方向に沿って固化層が積層されるか、あるいは角柱の軸方向とは交わる方向に沿って、角柱の側面から固化層の造形を開始し固化層が積層されるか等のように、三次元造形物を造形する姿勢のことである。
また、スライスモデルデータを生成する際には、設計データをそのまま用いるのではなく、熱膨張による形状変化も考慮してスライスモデルデータを生成することが好ましい。特に、固化層が生成される時点では、レーザ光の照射により常温時に比べ、固化層が高い温度を帯びている。しかしながら、三次元造形物が使用される環境下の温度と固化層が形成されるときの温度とで大きな違いがある場合には、その温度差による線膨張係数を考慮して、設計データに上記の変更を加えたデータ(三次元造形物の形状データ)からスライスモデルデータを生成することが好ましい。
【0060】
さらに、個々のスライスモデルデータに対して、CADデータを基に算出された許容公差情報も設定することが好ましい。この許容公差情報は、例えば、日本国特開2006-59014号公報に記載された要領で、各スライスモデルデータに許容公差情報を設定することができる。
三次元造形物の形状に関する設計データは、固化層の形状データ、造形姿勢データ、固化層または三次元造形物を支持するサポート部の形状データ、または三次元造形物の形状データを含む。造形制御部52は、この設計データに従って、照射部32からのレーザ光を材料層の表面上で走査させる。造形制御部52が三次元造形物の設計データを変更して、設計データに基づくスライスモデルデータを変更すると、その変更したスライスモデルデータに従って、造形制御部52は照射部32からのレーザ光を材料層の表面上で走査させる。
【0061】
粉末材料Pに照射されたレーザ光は、出射されたレーザ光の出力や波長等の条件、粉末材料Pの種類、粉末材料Pの粒子の形状、材料層の表面形状等により決まる吸収率にて粉末材料Pに吸収される。レーザ光が吸収されることにより、レーザ光に照射された粉末材料Pが急速に加熱されて温度が上昇し周囲の粉末材料Pに熱が伝導する。加熱により上昇した温度が粉末材料Pの融点に達すると、材料層の表面の粉末材料Pが溶融、気化するとともに、蒸気圧の上昇により蒸発物が噴出して、材料層の表面に溶融状態の凹部が形成される。この凹部に照射されたレーザ光はさらに溶融部に吸収され、溶融、気化、蒸発物の噴出が繰り返される。これにより凹部は材料層の下方(Z方向-側)に深さを増した穴となり、穴の壁面でレーザ光が多重反射することで、レーザ光の吸収率が大幅に増加する。これにより、下方への深さをさらに増した深穴(キーホール)が形成される。上記のようにレーザ光が穴の壁面で多重反射することにより、キーホールのXY平面での断面形状が円形に近づく。レーザ光が照射される位置にキーホールが形成されることにより、材料層の内部が直接加熱されるようになる。キーホールの形状は、レーザ光の照射により粉末材料Pに伝わるエネルギーが大きいほど深くなり、粉末材料Pの温度が高くなるほど開口が大きくなることが知られている。キーホールでは、上記のように壁面に多重反射したレーザ光の吸収率が増加することで、蒸発物が発生し、ヒュームとしてキーホール開口(上面開口)から噴出される。ヒュームの噴出に伴って、キーホールの周辺の溶融部の一部(溶融した粉末材料Pの一部)が粒子状のスパッタとして飛散する。
【0062】
キーホールが形成された状態でレーザ光が走査部33に走査されると、キーホールの内部の蒸気圧、溶融部の表面張力、溶融部の重力等の力のバランスによりキーホールが維持された状態で、走査によりレーザ光が進行する方向(X方向+側に向けて走査する場合にはX方向+側)に位置する粉末材料Pが溶融する。粉末材料Pが溶融することにより生じた融液は、キーホール周囲の粉末材料Pで生成した融液と混ざり合い、キーホール周辺に液相である溶融池(メルトプール)を形成する。
【0063】
図4は、材料層にレーザ光を照射することにより生じた溶融池とその近傍の状態を模式的に示す図であり、図4(a)はXY平面における材料層上の溶融池とその近傍の状態を模式的に示す平面図、図4(b)はそのZX平面における断面図である。図4においては、上記のようにして形成されたキーホールKHと、溶融池MPと、まだ溶融が始まっていない粉末材料Pと、ヒュームFUと、スパッタSPと、後述するように溶融池MPが凝固して形成される凝固領域BEとを示す。なお、図4では、レーザ光の走査をX方向+側から-側に向けて行った場合を示す。また、図4(a)では、溶融池MPにおける等温線を破線で示す。溶融池MPの内部では、溶融池MPの表面と内部との温度差による表面張力の差に起因して、一例として図4(b)の矢印Cに示すような対流が発生する。レーザ光の照射により発生する熱により対流Cが大きくなると、ヒュームFUの発生量が増加し、キーホールKH周辺の溶融した粉末材料Pの一部が溶融池MPから吹き飛ばされ、スパッタSPとしてキーホールKHと溶融池MPの周囲に飛散する。
【0064】
レーザ光の照射による熱が過大となる場合、溶融池MP内の対流Cが大きくなったり、対流Cが乱れたりする。対流Cが大きくなると溶融池MPがより撹拌されるため、スパッタSPの飛散量が増加したり、スパッタSPの飛散速度が増加したりする。また、対流Cが乱れ溶融池MP内で不規則になると、スパッタSPの飛散方向がキーホールKHから見て一定の方向(たとえばレーザ光の走査方向に対して後方など)に定まらず、レーザ光の走査方向の前方や側方にも飛散する。また、レーザ光の照射による熱が過大となるほど、ヒュームFUの発生量が増加するので、ヒュームFUの濃度が濃くなったり、ヒュームFUがキーホールKHから生じて拡散する範囲が広くなる。
【0065】
レーザ光の走査に伴ってキーホールKHが移動すると、キーホールKHの進行方向側(図4のX方向-側)の周囲に新たな溶融池MPが形成されるとともに、既に形成された(まだ凝固していない)溶融池MPは相対的にキーホールKHの後方(図4のX方向+側)に位置するので、溶融池MPの全体の形状は、図4(a)に示すように、XY平面上で楕円状となる。レーザ光が走査されて照射位置から離れることによりレーザ光のエネルギーの吸収が弱まったり、筐体10内の不活性ガスの流量や流速等の影響により冷やされた箇所が凝固して凝固領域BEを形成する。レーザ光の走査に伴ってキーホールKHが移動を続けることにより、レーザ光による照射を受けた材料層の領域には、粉末材料Pが凝固し固化して連続した凝固領域BEが形成される。これから形成される凝固領域BEと、既に形成された凝固領域BEと(図4(a)においてはX方向に延在する2つの凝固領域BE)の間の間隔が接するようにレーザ光の照射が行われることにより、形成された凝固領域BE同士が溶着する。なお、上記の同一方向に延在する異なる2つの凝固領域BEの間の間隔は、レーザ光を走査するときの走査間隔(走査ピッチ)によって決まる。走査間隔(走査ピッチ)とは、レーザ光の走査方向(図4(a)においてはX方向)と交差する方向(図4(a)においてはY方向)にて隣接する2つのレーザ光の照射位置の間隔である。形成された複数の凝固領域BE同士が溶着すると、Z方向に沿って所定の厚さを有する層状の固化層が造形される。
【0066】
固化層の造形中に、撮像装置41は材料層の表面を撮像して画像データを生成する。図2に示すように、撮像装置41に入射する熱放射光は、照射部32から出射されるレーザ光と同軸上を逆方向に進むので、撮像装置41の撮像視野の中心(すなわち、撮像装置41により撮像される画像の中心)は、材料層上におけるレーザ光の照射位置とほぼ一致する。材料層に対して照射部32によりレーザ光が照射されているときには、撮像装置41は、材料層の表面のレーザ光の照射位置(キーホールKHが発生している場合にはキーホールKHの位置)を中心として、XY平面において溶融池MPを含む検出対象領域を撮像して画像データを生成する。すなわち、検出対象領域には、溶融が始まる直前の材料層の粉末材料P(未溶融の粉末材料P)と、溶融池MPと、凝固領域BE(言い換えれば、固化層の一部)とが含まれる。また、キーホールKHからスパッタSPやヒュームFUが発生している場合には、スパッタSPやヒュームFUも検出対象領域に含まれる。走査部33によるレーザ光の走査に伴って、撮像装置41により撮像される検出対象領域は、材料層の表面の上を移動する。
撮像装置41による撮像は、たとえば所定の時間間隔ごとや、レーザ光が走査部33によりXY平面上で所定の距離だけ走査されるごとに行われる。
【0067】
固化層が造形されると、造形制御部52は、駆動機構312を制御して、造形槽31のベースプレート311を、これから形成する材料層の積層厚ΔdだけZ方向-側に移動(下降)させる。材料制御部51は、駆動機構212を制御して、材料供給槽21の底面211をZ方向+側に移動させ、リコーター22の駆動機構を制御して、ブレード221をX方向に沿って位置Aから位置Bへ向けて移動させる。これにより、固化層の上部(Z方向+側)には、粉末材料Pが高さ(固化層上部からのZ方向の厚み)が揃えられた状態で敷き詰められる。これにより、固化層の上部に、固化層の上部からの厚みが一定の積層厚Δdとなる新たな材料層が形成される。
【0068】
新たな材料層に対して、照射部32からのレーザ光が走査部33によってXY平面上にて走査される。レーザ光の照射により粉末材料Pが溶融した溶融池MPが形成され、上述したようにしてX方向やY方向に隣接する凝固領域BEと溶着するとともに、溶融池MPが下層(Z方向-側)に流動し、既に形成されている下部(Z方向-側)の固化層と溶着する。この結果、既に造形された固化層の上部に新たな固化層が造形される。
造形装置1は、材料層の形成と固化層の造形とを繰り返し、複数の固化層がZ方向に沿って積層された三次元造形物を造形する。
【0069】
上述したようにして三次元造形物を造形しているときに、固化層に欠陥や形状異常や表面粗さや金属組織の異常等の造形不良が発生していた場合、三次元造形物が造形された後では、三次元造形物の造形不良を補修することは難しく、特に、三次元造形物の内部の造形不良を補修することは困難である。また、三次元造形物を造形するための条件を設定するパラメータが多いため、造形不良が発生しないように三次元造形物を造形するための条件を造形に先立って設定することは困難であり、多大な時間を要する。
本実施の形態の造形装置1では、演算装置50の検出部54、演算部56および判定部57は、三次元造形物の造形開始時または造形中に求めた検出対象領域の状態に基づいて、三次元造形物を造形するための各種の条件(以下、造形条件)を変更したり、固化層を補修するための情報を生成する。この情報に基づいて材料制御部51、造形制御部52、筐体制御部53が造形装置1の各構成の動作を制御して、造形中の固化層に造形不良が発生することを予防したり、造形不良が発生した場合であっても、補修が可能なタイミングで造形不良を補修したりする。
【0070】
以下、検出部54、演算部56および判定部57の行う処理について説明する。
まず、検出部54、演算部56および判定部57が後述する処理を行うための考え方について説明する。
本実施の形態においては、材料層の粉末材料Pに照射部32からレーザ光を照射して造形される固化層に造形不良が発生することを抑制し、造形不良の発生が抑制された三次元造形物を造形するため、以下の基本条件が一定の範囲に保たれるように制御する。基本条件として、レーザ光の照射により材料層の単位面積当たりの粉末材料Pに流入する熱量であるパワー密度PD[J/mm]と、レーザ光の照射により材料層の単位体積当たりの粉末材料Pに流入する熱量であるエネルギー密度ED[J/mm]と、レーザ光の照射により溶融している溶融池MPとその近傍の領域の粉末材料Pの温度分布T(r)[℃]とを例に挙げる。パワー密度PD、エネルギー密度EDおよび温度分布T(r)は、それぞれ以下の(1)式~(3)式により表される。
PD={η×(P+P)}/(d×v) …(1)
ED=ρ×{η×(P+P)}/(v×Δy×Δz) …(2)
T(r)={η×P/(2π×k×r)}×exp{(-v)×(x+r)/2α}+T …(3)
【0071】
なお、(1)式~(3)式において、各パラメータは以下の通りである。Pはレーザ光の出力(以下、レーザ出力)[W]である。Pは外部熱源、すなわちベースプレート311等が粉末材料Pに加えたり、造形装置1の外部のヒーター等が粉末材料Pに加えるエネルギー[W]を表す。ηは粉末材料Pのエネルギーの吸収率であり、たとえば粉末材料Pの種類により異なる値を有する。vはレーザ光の走査速度[mm/s]である。dは、材料層の表面におけるレーザ光の光束サイズ(スポットサイズ)[mm]である。Δyは、走査経路の間隔(走査ピッチ)[mm]、すなわち、レーザ光が走査される方向と交差する方向におけるレーザ光の照射位置の間隔である。Δzは、積層厚すなわち形成される材料層のZ方向の厚さ[mm]である。ρは材料層の密度である。kは粉末材料Pの熱伝導率[W/mm/K]、rはレーザ光の照射位置を中心として定義した球の中心からの距離[mm]、xはレーザ光照射位置からの走査方向に沿ったXY平面上での距離[mm]、αは粉末材料Pの熱拡散率[mm/s]、Tは粉末材料Pの初期温度[℃]である。
【0072】
上記の(1)式に示すパワー密度PDの値が大きいほど、すなわち粉末材料Pに流入する熱量が大きいほど、粉末材料Pは溶融しやすい。(1)式は、パワー密度PDを増加させ、粉末材料Pを溶融しやすくするためには、パラメータの少なくとも1つが次のような方針に基づいて制御されればよいことを示している。パラメータηに関しては、例えば、レーザ光の吸収率が高い粉末材料Pが用いられるとよい。パラメータPとPに関しては、例えば、レーザ出力を上げたり、または外部から粉末材料Pに加わる熱量を増加させるとよい。パラメータdに関しては、例えば、レーザ光のスポットサイズを小さくして、レーザ光の照射による材料層上の単位面積あたりの熱量を増やすことにより、粉末材料Pに流入する熱量の入熱効率が増加するとよい。パラメータvに関しては、例えば、走査速度を下げ、材料層の単位面積当たりに含まれる粉末材料Pがレーザ光に照射される時間を増加させることにより、粉末材料Pに流入する熱量が増加するとよい。
【0073】
また、(1)式に示すパワー密度PDの値が小さいほど、粉末材料Pは溶融しにくい。粉末材料Pが過剰溶融しているような場合には、(1)式のパワー密度PDの値が減少するように、上記の各パラメータの少なくとも1つが上述の方針とは逆の方針にて制御されるとよい。逆の方針とは、以下に例示する方針のうちの少なくとも1つが行われることである。パラメータηに関しては、例えば、吸収率の低い粉末材料Pが使用されることである。パラメータPとPに関しては、例えば、レーザ出力を下げたり、または外部から粉末材料Pに加わる熱量を減少させることである。パラメータdに関しては、例えば、スポットサイズを大きくすることである。縮小、パラメータvに関しては、たとえば走査速度を上げることである。
【0074】
(2)式に示すエネルギー密度EDの値が大きいほど粉末材料Pは溶融しやすくなる。(2)式は、エネルギー密度EDの値を増加させ、粉末材料Pを溶融しやすくするためには、パラメータの少なくとも1つが以下の方針に基づいて制御されればよいことを表している。パラメータηに関しては、上記の(1)式の場合と同様に、例えば、レーザ光の吸収率が高い粉末材料Pが用いられることである。パラメータPとPに関しては、例えば、レーザ出力を増加させる、または外部の加熱装置から粉末材料Pに加わる熱量を増加させることである。パラメータρに関しては、例えば、材料層の密度を増加させ材料層中の隙間を少なくすることである。これにより、レーザ光の照射により発生した熱が粉末材料Pを伝導しやすくなる。パラメータvに関しては、例えば、走査速度を下げ、材料層の単位面積当たりに含まれる粉末材料Pにレーザ光が照射される時間を増加させることである。これにより、粉末材料Pに流入する熱量を増加する。パラメータΔyに関しては、例えば、走査ピッチを狭くすることである。これにより、隣接する凝固領域BEからの熱の影響が大きくなる。パラメータΔzに関しては、例えば、積層厚を薄くすることである。これにより、下層(Z方向-側)に既に造形された固化層の熱の影響が大きくなるので、粉末材料Pの初期温度が高くなる。このため、レーザ光に照射された粉末材料Pが所望の温度(例えば融点)まで上昇するために必要な熱量が少なくなる。
【0075】
また、(2)式に示すエネルギー密度EDの値が小さいほど、粉末材料Pは溶融しにくい。粉末材料Pが過剰溶融しているような場合には、(2)式のエネルギー密度EDの値を減少させるように、上記の各パラメータの少なくとも1つが上述の方針とは逆の方針にて制御されるとよい。逆の方針とは、以下に例示する方針のうちの少なくとも1つが行われることである。パラメータηに関しては、例えば、吸収率の低い粉末材料Pが使用される。パラメータPとPに関しては、例えば、レーザ出力を下げたり、外部から粉末材料Pに加わる熱量を減少させることである。パラメータρに関しては、例えば、密度を減少させることである。パラメータvに関しては、例えば、走査速度を下げることである。パラメータΔyに関しては、例えば、走査ピッチを広くすることである。パラメータΔzに関しては、例えば、積層厚を厚くすることである。
【0076】
パワー密度PDやエネルギー密度EDが増加すれば粉末材料Pは溶融しやすくなるが、パワー密度PDやエネルギー密度EDを増加させ過ぎると、上述した溶融域MP内の対流Cが影響を受け、スパッタSPやヒュームFUの発生が増加する。レーザ光の照射によって溶融池MPから飛散したスパッタSPが未だレーザ光が照射されていない材料層上や既に造形された凝固領域BE上に落下して凝固すると、材料層表面や固化層の上面に粒状の付着物として固化し残留してしまう。スパッタSPは球状であるため、固化層の上に新たな材料層が形成されたときに、凝固領域BE上で凝固したスパッタSPの下方と固化層の表面との間に粉末材料Pが入り込みにくくなり、空隙が生じる可能性がある。粉末材料Pが入り込まずに生じた空隙は、次層の固化層が造形される際に固化層内部に生じる空洞等の溶融不良等の原因となる可能性がある。また、他の凝固領域BEの形成時にスパッタSPが再溶融された場合には、スパッタSPが再溶融した箇所では所望する金属組織(結晶構造)が得られず、造形不良となる可能性がある。
また、レーザ光の照射によって発生したヒュームFUが材料層上のレーザ光の照射位置の近傍に滞留すると、材料層に向かうレーザ光のエネルギーがヒュームFUによって減衰するため、レーザ光の照射による粉末材料Pの加熱の効果が低減され、想定していた溶融状態が得られない可能性がある。このように、スパッタSPの付着やヒュームFUの発生による溶融不良により、三次元造形物に発生する欠陥や、形状不良や、溶融不良に伴って所望の金属組織(結晶構造)が得られないことによる強度不足等の造形不良が発生するおそれがある。スパッタSPやヒュームFUは上述したように三次元造形物の造形不良を招く原因となるので、スパッタSPやヒュームFUの発生を抑制するため、パワー密度PDやエネルギー密度EDが増加され過ぎないように制御されることが必要である。
【0077】
また、パワー密度PDやエネルギー密度EDが低下し過ぎると、粉末材料Pは照射されたレーザ光のエネルギーを十分に受け取ることができなくなり、粉末材料Pが溶融しなかったり(未溶融)、所望の広さの溶融池MPが得られない等の溶融不良等が発生し三次元造形物の造形不良を招く原因となる。このため、パワー密度PDやエネルギー密度EDが低下し過ぎないように制御されることが必要である。
このように、パワー密度PDやエネルギー密度EDは、大きくなり過ぎたり、小さくなり過ぎたりせず、一定の範囲に保たれる必要がある。この一定の範囲は、三次元造形物が良品となるように、ユーザによる各種の試験やシミュレーションの結果から算出される。なお、三次元造形物が良品となるようなパワー密度PDやエネルギー密度EDの一定の範囲を所望の範囲と称する。
【0078】
(3)式に示す温度分布T(r)は、現在設定されている造形条件にてレーザ光が照射された材料層上に照射された場合に、材料層上のレーザ光の照射位置を中心として、中心から材料層上または材料層中の任意の距離rにおける位置(x、y、z)で得られると想定される温度を示す。すなわち、(3)式は、現在設定されている造形条件にてレーザ光が照射された場合に、材料層の中におけるレーザ光の照射による熱の伝導の状態を推定した式である。このため、(3)式から、材料層の表面(X方向とY方向)および深さ方向(Z方向)における粉末材料Pの溶融の進行または溶融後の凝固の進行状態が推定される。(3)式により、レーザ光が照射された位置を中心とした距離に応じて、粉末材料Pの温度が変化する状態が推定できる。このため、所定温度よりも高温の領域である溶融池MPとして推定される範囲(たとえばXY平面上における楕円状の範囲)を把握することが可能となる。溶融池MPとして推定される範囲の温度分布を、レーザ光の照射位置からの距離に応じて三次元的に把握することが可能となる。このため、温度分布T(r)が一定の範囲に保たれるように造形条件が設定されることにより、溶融池MP内で温度が変化する状態が制御される。これにより、凝固後の固化層内の結晶構造を所望する構造に保ったり、溶融池MPの対流Cを制御したりすることができる。
【0079】
また、レーザ光の照射による溶融池MPの対流Cは、溶融池MPの形状(すなわち凝固後の凝固領域BEの形状や、Z方向-側への溶融の際の溶け込み深さ)に影響を与える。したがって、温度分布T(r)が一定の範囲に保たれることにより、溶融池MP内でのレーザ光の照射による熱の挙動である溶融池MPの対流Cの状態が制御される。これにより、溶け込み不良の発生が抑制され、固化層の強度不足や耐久性の低下等の造形不良の発生が抑制される。また、上述したように、対流Cは、スパッタSPやヒュームFUの発生に影響を与えるので、温度分布T(r)が一定の範囲に保たれることにより、スパッタSPやヒュームFUの発生が抑制され、スパッタSPやヒュームFUに起因する造形不良の発生が抑制される。この一定の範囲は、三次元造形物が良品となるように、ユーザによる各種の試験やシミュレーションの結果から算出される。なお、三次元造形物が良品となるような温度分布T(r)の一定の範囲を所望の範囲と称する。
なお、基本条件である(1)~(3)式のうち少なくとも1つが所望の範囲を満たしていればよい。
【0080】
次に、上述した(1)式~(3)式に基づいて造形条件の変更を行うために検出部54、演算部56および判定部57が行う処理について説明する。
検出部54は、撮像装置41からの画像データに基づいて、上述した検出対象領域の状態を求める。検出対象領域の状態として、レーザ光の照射により加熱される前の粉末材料Pの状態と、検出対象領域における溶融の状態と、スパッタSPの状態と、レーザ光が照射されて加熱されたことにより発生したヒュームFUの状態との少なくとも一つの状態を含む。検出部54は、検出対象領域における溶融の状態の一例として、たとえば、溶融池MPとその近傍(溶融後に溶液が固相となりかけた半凝固の領域や凝固領域BE)との少なくとも一部の温度に関する情報を求める。検出部54は、スパッタSPの状態として、たとえば、スパッタSPの飛散方向と、飛散量と、飛散速度との少なくとも一つを求める。検出部54は、ヒュームFUの状態として、たとえば、ヒュームFUの濃度と範囲との少なくとも一つを求める。なお、検出対象領域の状態を求めることは、求める対象となる検出対象領域の状態(具体的には、上述の粉末材料Pの状態、溶融の状態、スパッタSPの状態、ヒュームFUの状態など)を踏まえると、検出対象領域の状態を測定すること、検出対象領域の状態を算出すること、検出対象領域の状態を評価すること、または検出対象領域の状態を検出することと言い換えることもできる。
【0081】
本実施の形態においては、検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づく造形条件の変更として、リアルタイム変更と、次層造形時変更と、次造形物造形時変更とがある。リアルタイム変更では、検出対象領域の状態を求めるために使用された材料層に対して、レーザ光の照射により固化層を造形する際または造形の最中に造形条件が変更される。したがって、リアルタイム変更では、固化層の造形中に材料層のうち未溶融の粉末材料Pに対して造形条件が変更される。次層造形時変更では、固化層の造形後に、次層の材料層の形成または次層の材料層から固化層の造形を開始するときに造形条件の変更が行われる。したがって、次層造形時変更では、造形された固化層上に供給される新たな粉末材料Pまたは固化層上に供給された新たな粉末材料Pに対して造形条件が変更される。次造形物造形時変更では、固化層を積層して三次元造形物の造形が終了し、次の三次元造形物の造形を開始するときに造形条件の変更が行われる。
【0082】
以下、検出部54による検出対象領域の状態を求める処理、演算部56による造形条件を変更するための変更情報を生成する処理に分けて説明を行う。
【0083】
(1)検出対象領域の状態を求める処理
検出部54は、撮像装置41により生成された画像データを用いて、材料層上の検出対象領域の状態を求める。上述したように、撮像装置41から出力された画像データには、検出対象領域からの熱放射光のうち異なる波長λ1、λ2の光の情報が含まれる。検出部54は、この検出対象領域を撮像した画像データに含まれる波長λ1の輝度情報と、画像データに含まれる波長λ2の輝度情報との比に基づいて、溶融池MPとその近傍との少なくとも一部の温度に関する情報を求める。この場合、検出部54は、たとえば公知の二色法を用いて、画像データの波長λ1と波長λ2の輝度情報が温度に変換された画像データ(以下、温度画像データと呼ぶ)を生成する。温度画像データとは、温度に対応する各画素ごとの信号強度である。検出部54は、画像データに含まれる波長λ1の光の輝度情報と、波長λ2の光の輝度情報との比(例えば、輝度値の比)として算出し、灰色体や黒色体等に基づいて得られた基準となる輝度値の比と温度との関係データと比較して、画像データ上の任意の位置の波長λ1と波長λ2の輝度値の比を温度に換算する。これにより、画像データ上の検出対象領域の任意の位置での温度を表す温度画像データが生成される。検出部54は、この温度画像データから、検出対象領域の温度分布や、最高温度や、最低温度や、平均温度等を求めることができる。検出部54は、撮像装置41により生成された画像データごとに温度画像データを生成する。検出部54は、温度画像データを生成するごとに、記憶部58に記憶し保存する。
【0084】
図5は、図4(a)に示す検出対象領域を撮像した画像データに基づいて、検出部54により生成された温度画像データに対応する温度画像の一例を模式的に示す図であり、レーザ光が材料層上においてX方向+側から-側に向けて走査された場合を示す。なお、図5においては、図示の都合上、温度画像の溶融池MPにおける温度の違いを、破線で示す等温線を用いて表し、ヒュームFUの影響を受けている範囲に斜線を付して表している。
【0085】
上述したように、材料層に対してレーザ光の照射が行われているとき、撮像装置41により材料層のうち溶融池MPを含む検出対象領域が撮像される。このため、生成される温度画像データ(温度画像)には、キーホールKHを画像の中心として、溶融池MPと、凝固が終了した凝固領域BEと、粉末材料Pとが含まれる。レーザ光がX方向-側に向けて走査されているため、温度画像では、溶融池MPはキーホールKHに対してX方向-側よりもX方向+側に大きな楕円形状の領域を有する。また、レーザ光の照射により粒状のスパッタSPが飛散している場合には、スパッタSPも熱を有しているため温度画像データ(温度画像)に含まれる。また、レーザ光の照射により蒸発物であるヒュームFUが発生している場合には、ヒュームFUも熱を有しているため温度画像データ(温度画像)に含まれる。
【0086】
検出部54は、図5に例示するような温度画像から、検出対象領域の状態として、レーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの状態や、検出対象領域における溶融の状態や、スパッタSPの状態や、ヒュームFUの状態を求める。以下、検出対象領域の状態として、レーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの状態の検出と、検出対象領域における溶融の状態の検出と、スパッタSPの状態の検出と、ヒュームFUの状態の検出とに分けて説明を行う。
【0087】
<レーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの状態の検出>
検出部54は、温度画像データのうち、レーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの状態として、たとえば溶融池MPと凝固領域BE以外の領域の温度に関する情報を求める。この場合、検出部54は、第1所定温度よりも低温の領域を求める。第1所定温度は、たとえば、粉末材料Pの融点を基準として設定される。なお、第1所定温度は、融点に限られず、固相線温度または液相線温度でもよいし、固相線温度から液相線温度の範囲のいずれかの温度でもよい。
ここで、検出部54がレーザ光の照射による加熱前の材料層の粉末材料Pの温度を求める場合には、レーザ光の照射位置に対して走査方向の領域を粉末材料Pの温度を求めるべき材料層上の領域として推定できる。検出部54は、この推定した領域のうち第1所定温度よりも低い領域をレーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの温度として求める。
【0088】
なお、検出部54は、撮像装置41とは異なる撮像装置により撮像された検出対象領域の画像データから、溶融池MPと凝固領域BEとを求め、画像データで求められた溶融池MPと凝固領域BEに基づいて、温度画像データにおける溶融池MPと凝固領域BEとを除去して、温度画像データ上でのレーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pを求めてもよい。この場合、撮像装置41と、撮像装置41とは異なる撮像装置とが検出対象領域を撮像するタイミングが揃うように制御される必要がある。
【0089】
温度画像データを用いて、検出部54は、レーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの温度に関する情報として、加熱前の粉末材料Pの温度分布、最高温度、最低温度、平均温度等を求める。これにより、検出部54は、上記の(3)式のパラメータである初期温度Tを求めることができる。
また、検出部54は、撮像装置41が撮像した画像データから公知の画像処理方法を利用して、加熱前の粉末材料Pの状態として、粉末材料Pに含まれる異物やスパッタSPを求めてもよい。
【0090】
なお、検出部54は、二色法による温度画像データから、レーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの状態を求めなくてもよい。例えば、取得部310について、撮像装置41と二分岐光学系42と色収差補正光学系43と視野絞り302に代えて既存の放射温度計を用い、レーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pからの赤外線に基づく温度データを取得してもよい。この場合、検出部54は、取得部310(不図示の放射温度計)で取得された温度データに基づいて、レーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの状態を求めてもよい。
【0091】
また、取得部310として、放射温度計でなくてもよく、熱電対などの既存の接触式温度計を用いてもよい。この場合、取得部310として、造形部30の造形槽31や材料層形成部20における任意の位置に複数の熱電対が設置され、その複数の熱電対で各位置の温度データを取得する。そして、検出部54は、熱電対で取得された温度データとレーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの温度データとの相関関係に関するデータを利用して、レーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの状態を求めてもよい。なお、熱電対で取得された温度データとレーザ光の照射による加熱前の粉末材料Pの温度データとの相関関係に関するデータは、予め記憶部58に記憶されている。
【0092】
<溶融の状態の検出>
検出部54は、温度画像データから、溶融の状態として、溶融池MPとその近傍(検出対象領域内の凝固領域BE)の温度に関する情報を求める。この場合、検出部54は、温度画像データのうち、第1所定温度以上の高温の領域をキーホールKHと溶融池MPとを含む領域として求める。また、検出部54がレーザ光の照射後の凝固領域BEの温度を求める場合には、レーザ光の照射位置に対して走査方向とは逆方向の領域を凝固領域BEの温度を求めるべき領域として推定できる。検出部54は、この推定した領域のうち第1所定温度よりも低い領域をレーザ光の照射による加熱後の凝固領域BEの温度として求める。
なお、検出部54は、温度画像データの第1所定温度以上の領域のうち、液相の溶融池MPが凝固を開始して固相となった領域(半凝固領域)をキーホールKHと溶融池MPとから切り分けて推定し、この領域の温度を求めてもよい。
【0093】
検出部54が求める溶融池MPとその近傍との少なくとも一部の温度に関連する情報としては、溶融池MPの温度分布、最高温度、最低温度、平均温度、キーホールKHの位置、最上面(材料層の表面)でのキーホールKHの開口径(たとえば短軸の長さ)、溶融池MPのサイズ、熱伝導率、溶融池MPの表面における温度勾配、表面における溶融池MPの境界部の温度の変化である凝固速度、温度履歴等が含まれる。なお、同様に、検出部54は、温度に関連する情報として、凝固領域BEや半凝固領域の温度分布、最高温度、最低温度、平均温度、サイズ、熱伝導率、温度勾配、凝固速度、温度履歴等を求める。
【0094】
検出部54は、例えば、温度画像データのうちの溶融池MPとして推定した領域の複数の位置での温度を求め、所定温度ごとの等温線を設定することにより溶融池MPの温度分布を求める。検出部54は、温度画像データのうちの溶融池MPとして推定した領域のうち、最も高い温度を最高温度として求め、最も低い温度を最低温度として求める。検出部54は、温度画像データのうちの溶融池MPとして推定した領域のうちの複数の位置のそれぞれにおける温度を求め、求めた温度の平均を算出することにより溶融池MPの平均温度を求める。検出部54は、温度画像データの中心をキーホールKHの位置として求める。検出部54は、温度画像データの中心における温度とほぼ同一の温度と見なせる範囲を最上面でのキーホールKHの開口として求め、求めた開口の短軸の長さを開口径として求める。
【0095】
検出部54は、温度画像上の第1所定温度以上の領域の面積から溶融池MPのサイズを求める。この溶融池MPのサイズから、検出部54は、熱伝導率を求める。この場合、検出部54は、温度画像データにおけるキーホールKHから第1所定温度の位置までの距離を材料層上の距離rに換算し、上述した(3)式に、第1所定温度の値と、距離rと、現在設定されている造形条件で決まる各パラメータの値とを入力し、(3)式をパラメータkについて解くことにより、熱伝導率を算出する。
検出部54は、温度画像(温度画像データ)上における等温線の粗密の程度に基づいて、溶融池MPの表面における温度勾配、表面における溶融池MPの境界部の温度の変化である凝固速度を求める。
所定の間隔ごとに撮像が行われることにより生成された複数の温度画像データを用いて、検出部54は溶融池MPおよびその近傍における温度履歴を求める。温度履歴は、材料層のある箇所における温度変化を表すデータである。温度履歴の検出の一例を以下に説明する。
【0096】
上述したように、撮像装置41で生成される画像データと、レーザ光の照射位置(すなわちキーホールKHの位置)を示す照射位置情報と、時間情報とは関連付けされて記憶される。検出部54は、画像データに関連付けされた照射位置情報に基づいて、温度履歴を求める。検出部54による温度履歴の検出処理について、ある温度画像(第1温度画像)において、キーホールKH(すなわち画像中心)が位置する位置Q2からX方向+側に距離mだけ離れた位置Q1での温度履歴を求める場合を例に挙げて説明する。検出部54は、位置Q1での温度を第1温度画像データから求める。そして、所定時間後に(レーザ光の照射位置が所定距離変化した後に)、検出部54は、第1温度画像とは異なる第2温度画像上における位置Q1の位置を求める。
【0097】
具体的には、検出部54は、第1画像データが生成されたときのレーザ光の照射位置と、第2画像データが生成されたときのレーザ光の照射位置とに基づいて、第1温度画像における中心であるキーホールKH1の材料層上での位置と、第2温度画像における中心であるキーホールKH2の材料層上での位置とを求める。レーザ光がX方向-側に向かって走査されているとすると、材料層上でのキーホールKH1とKH2との位置の差分nを温度画像上の距離に換算した値だけ第2温度画像の中心からX方向+側にずらした位置が、第2温度画像上における位置Q2(第1温度画像におけるキーホールKH)の位置となる。検出部54は、第2温度画像上の位置Q2からさらにX方向+側に距離mだけ離れた位置を位置Q1の位置として求め、この位置での温度を、第2温度画像データから求める。検出部54は、以後同様に複数の温度画像データから位置Q1における温度を求めることにより、位置Q1での温度履歴を求めることができる。
【0098】
検出部54は、温度画像データから、溶融池MPの近傍の状態として、凝固領域BEの温度に関する情報を求める。この場合、検出部54は、凝固領域BEの温度分布や平均温度等を求める。なお、検出部54は、加熱前の粉末材料Pの状態として求められた粉末材料Pの温度に関する情報を、溶融池MPの近傍の状態として求めてもよい。
【0099】
なお、検出部54は、二色法による温度画像データから、溶融池MPやその近傍(検出対象領域内の凝固領域BE)の温度に関する情報(つまり、溶融の状態)を求めなくてもよい。例えば、取得部310について、撮像装置41と二分岐光学系42と色収差補正光学系43と視野絞り302に代えて既存の放射温度計を用い、溶融池MPとその近傍からの赤外線に基づく温度データを取得してもよい。この場合、検出部54は、取得部310(不図示の放射温度計)で取得された温度データに基づいて溶融の状態を求めてもよい。
【0100】
また、取得部310として、放射温度計でなくてもよく、熱電対などの既存の接触式温度計を用いてもよい。この場合、取得部310として、造形部30の造形槽31や材料層形成部20における任意の位置に複数の熱電対が設置され、その複数の熱電対で各位置の温度データを取得する。そして、検出部54は、熱電対で取得された温度データと溶融池MPやその近傍(検出対象領域内の凝固領域BE)の温度データとの相関関係に関するデータを利用して、溶融の状態を求めてもよい。なお、熱電対で取得された温度データと溶融池MPやその近傍(検出対象領域内の凝固領域BE)の温度データとの相関関係に関するデータは、予め記憶部58に記憶されている。
【0101】
<スパッタSPの状態の検出>
検出部54は、スパッタSPの状態として、スパッタSPの飛散量と、飛散方向と、飛散速度との少なくとも一つを求める。上述したように、スパッタSPの状態は、溶融池MP内の対流Cと関連があるため、検出部54は、スパッタSPの状態を求めることにより、溶融池MP内部の対流Cの状態を間接的に求めることができる。
【0102】
図6は、説明の都合上、スパッタSPの状態を求めるために用いられる温度画像データに対応する温度画像として、図5からヒュームFUと凝固領域BEを除外した温度画像を示す。検出部54は、スパッタSPの状態を求めるために用いる関心領域を温度画像データ内に設定する。
【0103】
この場合、検出部54は、図6(a)に示す温度画像において、キーホールKHと溶融池MPとが占める領域を除外した領域を関心領域として設定する。検出部54は、たとえば、上述した温度分布T(r)を表す(3)式からキーホールKHと溶融池MPとを含む領域(除外対象領域)を推定することができる。温度分布T(r)を表す(3)式は、上述したように、レーザ光の照射位置(すなわちキーホールKHの位置)から任意の距離rにおける粉末材料Pの温度を表し、レーザ光の出力等の三次元造形物を造形するための造形条件をパラメータとしている。
【0104】
検出部54は、この温度分布T(r)を表す(3)式と、設定されている造形条件とに基づいて、キーホールKHの位置(すなわち温度画像の中心)を含む第1所定温度以上の高温領域を求め、求めた高温領域を除外対象領域として求める。上述したように溶融池MPはXY平面上において楕円形状となるため、キーホールKHと溶融池MPとからなる領域は楕円形状となる。検出部54は、(3)式の温度分布T(r)に、第1所定温度の値と、現在設定されている造形条件で決まる各パラメータの値を入力し、パラメータrを算出することにより、第1所定温度以上の高温となる楕円状の領域を算出する。検出部54は、温度画像データ(温度画像)上において、算出した楕円状の領域に含まれる領域を高温領域として検出し、この高温領域を、除外対象領域として求める。
なお、除外対象領域として、キーホールKHと溶融池MPとを含み楕円形状の領域が検出される場合に限定されず、上記の楕円形状の高温領域に加えて凝固領域BEが含まれた領域が除外対象領域として検出されてもよい。
【0105】
図6(b)は、検出部54が、図6(a)に示す温度画像に対して求めた除外対象領域R1(図6(b)においては斜線を付して示す)と、求めた除外対象領域R1に基づいて設定した関心領域R2とを模式的に示す図である
関心領域R2は、レーザ光の照射による粉末材料Pの溶融が生じていない領域である。このため、検出部54は、関心領域R2に高温領域が存在する場合、その高温領域をスパッタSPとして求める。検出部54は、関心領域R2に含まれる高温領域の個数をカウントすることによりスパッタSPの飛散量を求める。
【0106】
検出部54は、温度画像の中心、すなわちレーザ光の照射位置から、関心領域R2に含まれるそれぞれの高温領域までの方位を求めることにより、スパッタSPのXY平面上における飛散方向を求めることができる。
検出部54は、複数の温度画像データを用いて、スパッタSPの飛散速度を求める。検出部54は、たとえば温度履歴を求める場合と同様にして、時間情報の異なる2つの温度画像データから、材料層や凝固領域BE上に落下して固着しているスパッタSP、すなわち材料層や凝固領域BE上の同一箇所に留まっているスパッタSPを抽出し、飛散速度の検出対象から除外する。検出部54は、検出対象として残ったスパッタSP(すなわち、時間経過に伴って、変位したスパッタSP)のうち、一方の温度画像データ(温度画像)における大きさや温度と、他方の温度画像データ(温度画像)における大きさや温度とが同一と見なせるスパッタSP同士を飛散中のスパッタSP(同一のスパッタ)として求める。検出部54は、同一スパッタとして求めたスパッタSPに対して、一方の温度画像データ(温度画像)から材料層の上部空間での位置(第1位置)を求め、他方の温度画像データ(温度画像)から材料層の上部空間での位置(第2位置)を求める。検出部54は、第1位置と、第2位置と、2つの温度画像データの時間情報の差とから、スパッタSP(飛散した同一のスパッタ)の飛散速度を算出(検出)する。
【0107】
なお、検出部54は、温度画像データ(温度画像)に関心領域R2を設定することなく、スパッタSPの状態を求めてよい。この場合、検出部54は、撮像装置41により出力された画像データから生成した複数の温度画像データを加算して平均をとって平均温度画像データを生成する。なお、複数の温度画像データは、異なる時間情報と関連付けされた画像データから生成した温度画像データであってもよい。また、複数の温度画像データは、予め生成して記憶部58に記憶させておいた、異なる時刻や異なる位置での温度画像データであってもよい。検出部54は、温度画像データを生成するごとに平均温度画像データを生成してもよいし、所定枚数の温度画像データを生成するごとに平均温度画像データを生成してもよい。スパッタSPの発生状態(スパッタSPの温度画像データ上での個数や、位置や、大きさ等)は各温度画像データごとに異なる。このため、複数の温度画像上の同一の位置において、ある温度画像ではスパッタSPが検出されたとしても、他の多数の温度画像では、必ずしもスパッタSPが検出されない。これらの複数の温度画像データに基づいて生成された平均温度画像データ(平均温度画像)では、ある温度画像データ(温度画像)でのスパッタSPが検出された位置が、他の多数の温度画像データ(温度画像)でのスパッタSPが検出されていない位置と加算され平均されることにより、スパッタSPが除去される。スパッタSPが除去された平均温度画像データ(平均温度画像)には、キーホールKHおよび溶融池MPが含まれる。
【0108】
図6(c)は、上記の処理により生成される平均温度画像データに対応する平均温度画像の一例を模式的に示す。図6(c)に示すように、平均温度画像には、キーホールKHおよび溶融池MP以外には高温領域が存在しない。検出部54は、図6(a)に示すスパッタSPの検出を行うための温度画像に対応する温度画像データ(検出対象画像データ)から、図6(c)に示す平均温度画像に対応する平均温度画像データとの差を取る。これにより、図6(d)に示すように、検出対象画像から、キーホールKHおよび溶融池MPが除去された画像が生成される。この画像上の高温領域がスパッタSPであるので、検出部54は、上述したように高温領域に基づいて、図6(b)を用いて説明した場合と同様にして、スパッタSPの飛散量と、飛散方向と、飛散速度との少なくとも1つを求める。特に、検出部54は、温度画像の中心に対してX方向+側(レーザ光の走査方向に対して後方)に飛散したスパッタSPも飛散方向も求めることができる。
【0109】
なお、検出部54は、二色法による温度画像データから、スパッタの状態を求めなくてもよい。例えば、取得部310について、撮像装置41と二分岐光学系42と色収差補正光学系43と視野絞り302に代えて不図示の撮像装置を用い、検出対象領域の画像データを取得してもよい。また、不図示の撮像装置は、図1における撮像装置41と同じ構成であってもよいし、他の既存の構成であってもよい。この場合、検出部54は、取得部310(不図示の撮像装置)で取得された画像データを用いて既存の画像処理を行い、画像から所定の大きさの円形状の像をスパッタの像として検出する。そして、検出部54は、検出したスパッタの像の位置の時間変化や個数からスパッタSPの飛散量と飛散方向と飛散速度との少なくとも1つを求める。
【0110】
なお、スパッタSPの状態(スパッタSPの飛散量や飛散方向や飛散速度)と溶融池MPの対流Cとの相関関係と、溶融池MPの対流Cと溶融池MPの溶融の状態(温度に関する情報)との相関関係から、スパッタSPの状態と溶融池MPの溶融の状態との相関関係がわかる。従って、検出部54は、求めたスパッタSPの状態に基づいて、(間接的に)溶融池MPの溶融の状態を求めてもよい。この場合、スパッタSPの状態と溶融池MPの溶融の状態との相関関係に関するデータを予め記憶部58に記憶させておく。
【0111】
<ヒュームFUの状態の検出>
検出部54は、温度画像データからヒュームFUの状態として、ヒュームFUの濃度と範囲との少なくとも1つを求める。上述したように、ヒュームFUの状態は、溶融池MP内の対流Cと関連があるため、検出部54は、ヒュームFUの状態を求めることにより、溶融池MP内部の対流Cの状態を間接的に求めることができる。
【0112】
図7は、ヒュームFUの状態を求めるために用いられる温度画像データに対応する温度画像の一例を示す。なお、図7においては、図示の都合上、凝固領域BEを省略して示す。上述したように、ヒュームFUはレーザ光に照射されて生成される溶融池MPから発生しているので、材料層の検出対象領域からの光はヒュームFUの影響を受けて輝度が低下している。なお、図7においては、斜線を付与した領域は、ヒュームFUの影響により輝度値が低下している領域を表す。
図7(a)は、図5に示す温度画像と同一の温度画像である。この温度画像に対応する温度画像データの原画像データ、すなわち波長λ1の光と波長λ2の光が撮像素子411の異なる位置に入射することにより生成されたそれぞれの画像データに対応する画像を図7(b)に模式的に示す。図7(b)の原画像においては、紙面左側に波長λ1の光による像D1を示し、紙面右側に波長λ2の光による像D2を示す。
【0113】
上述したように、材料層の検出対象領域からの放射光はヒュームFUの影響を受けて輝度値が低下しているので、像D1と像D2とは共に輝度値が低下している。仮に、像D1の方が像D2よりも明るい(高輝度)像であるものとする。しかしながら、ヒュームFUの影響により光が散乱するため、明るい像D1でも暗い像D2でもヒュームFUの影響を受けた領域R3および領域R4では輝度が落ちる。このとき、明るい像D1と暗い像D2のぞれぞれの輝度の低下率は実質的に等しい。検出部54は、溶融池MP、キーホールKHおよびスパッタSPと、ヒュームFUとの切り分けを、像D1および像D2間で輝度値の比が変化するか否かに基づいて行う。ヒュームFUは、溶融池MPからの光を遮るため、波長λ1の光と波長λ2の光との双方の輝度値が低下するが、像D1および像D2間で輝度値の比は変化しない。これに対して、溶融池MP、キーホールKHおよびスパッタSPでは、輝度値の比は変化する。像D1と像D2の各画素の輝度情報は既知であるので、検出部54は、輝度値の比の変化の有無に基づいて、溶融池MP、キーホールKHおよびスパッタSPと、ヒュームFUとを切り分けることができる。検出部54は、このようにして切り分けられたヒュームFU(像D1の領域R3や像D2の領域R4)をヒュームFUの範囲として求める。
【0114】
検出部54は、像D1または像D2の何れかを用いて、輝度値の低下の程度を求めることにより、ヒュームFUの濃度を求める。検出部54は、上述したようにして求められたヒュームFUの範囲(像D1の領域R3、または像D2の領域R4)の輝度値と、他の領域、すなわちヒュームFUの影響を受けていないため輝度値が低下していない領域の輝度値との差を算出し、この差に基づいて、ヒュームFUの濃度を算出する。なお、輝度値の差とヒュームの濃度とが関連つけされたデータが、記憶部58に予め記憶され、検出部54は、このデータを参照して、算出した差からヒュームFUの濃度を算出する。なお、検出部54は、図7(b)に示す原画像に対応する画像データが取得されたときとは異なるときに取得された画像データにおける像D1または像D2の輝度値と、図7(b)の原画像の画像データにおける像D1または像D2の輝度値とを比較して差を算出してもよい。
なお、像D1と像D2とでは、ともにヒュームFUの影響により輝度値が低下しているため、波長λ1の光の輝度情報と、波長がλ2の光の輝度情報との比に基づいて生成される温度画像には、熱放射光がヒュームFUに妨げられることによる影響は生じない。
【0115】
なお、検出部54は、平均温度画像データを用いてヒュームFUの状態を求めてもよい。平均温度画像データは、スパッタSPの状態を求める処理において説明した生成方法と同様にして生成される。ヒュームFUの発生状態(ヒュームFUの温度画像データ上での濃度や範囲)は各温度画像データごとに異なる。このため、複数の温度画像上の同一位置において、ある温度画像ではヒュームFUが検出されたとしても、他の多数の温度画像では、必ずしもヒュームFUが検出されない。これらの複数の温度画像データを平均して生成された平均温度画像データでは、ある温度画像データでのヒュームFUの影響受けた位置が、他の多数の温度画像データでのヒュームFUの影響を受けていない位置と加算され平均されることにより、ヒュームFUの影響が除去される。ヒュームFUが除去された平均温度画像データには、キーホールKHおよび溶融池MPが含まれる。この場合、検出部54は、図6(c)に示す場合と同様の平均温度画像に対応する平均温度画像データを生成する。
【0116】
検出部54は、図7(a)に示すヒュームFUの検出を行うための温度画像に対応する温度画像データ(検出対象画像データ)と、平均温度画像データとの差を取る。これにより、図7(c)に示すように、検出対象画像から、キーホールKHおよび溶融池MPが除去された画像が生成される。この画像(画像データ)上の高温領域がヒュームFUとスパッタSPである。スパッタSPは画像(画像データ)上では小さな粒状に現れるので、検出部54は、画像データ上でこれらの粒状の高温領域を除外してヒュームFUの範囲を求める。これにより、検出部54は、ヒュームFUの拡散状態、すなわちヒュームFUの範囲を求める。検出部54は、ヒュームFUも熱量を有しているので、検出されたヒュームFUの範囲の温度を、図7(c)に示す画像に対応する画像データから求める。温度が高いほどヒュームFUがより多く発生している、すなわちヒュームFUの濃度が高いことが考えられる。したがって、検出部54は、求めたヒュームFUの範囲内における温度に基づいて、ヒュームFUの濃度を求める。この場合、ヒュームFUの温度と濃度とが関連付けされたデータが、予め記憶部58に記憶され、検出部54は、このデータを参照して、図7(c)に示す画像から求めた温度からヒュームFUの濃度を求めることができる。
【0117】
なお、上述したスパッタSPの状態を求める処理においては、ヒュームFUを省略した図6を用いて説明を行ったが、実際にはヒュームFUが発生し、温度画像にはヒュームFUの像が含まれている可能性がある。そのため、検出部54は、ヒュームFUの状態を求める処理において説明した方法を用いて、溶融池MP、キーホールKHおよびスパッタSPと、ヒュームFUとを切り分けて、ヒュームFUを温度画像データ(温度画像)から除去する。検出部54は、ヒュームFUが除去された温度画像データ(温度画像)から、図6を用いて説明した方法を用いて、スパッタSPの状態を求めればよい。また、検出部54は、平均温度画像データに基づいて生成した図7(c)に示す画像に対応する画像データから、面積の違いに基づいて、ヒュームFUとスパッタSPとを切り分けることにより、スパッタSPの状態を求めてもよい。この場合、予めスパッタSPの大きさとして想定できる面積が閾値として設定され、検出部54は、この閾値よりも大きい領域をヒュームFUとして求め、閾値よりも小さい領域をスパッタSPとして求める。
【0118】
なお、検出部54は、二色法による温度画像データから、ヒュームFUの状態を求めなくてもよい。例えば、取得部310について、撮像装置41と二分岐光学系42と色収差補正光学系43と視野絞り302に代えて、不図示の照明装置と撮像装置を用いてもよい。この場合、一例として、ベースプレート311と造形光学系35との間の空間において、図1のベースプレート311の中心に対してX方向+側に照明装置、X方向-側に撮像装置をそれぞれ配置する。なお、この照明装置と撮像装置は、当該照明装置からの照明光が撮像装置で受光されるように対向して配置する。一例として、不図示の照明装置は既存の面発光型のLEDであり、不図示の撮像装置は、図1の撮像装置41と同じ構成である。
【0119】
ここで、レーザ光の照射によりベースプレート311と造形光学系35との間の空間でヒュームFUが発生すると、照明装置からの照明光は、ヒュームFUによる散乱を受け、撮像装置で受光される。つまり、ヒュームFUが発生していない領域を介して受光される光の強度に比べて、ヒュームFUが発生している領域を介して受光される光の強度は低くなる。従って、検出部54は、撮像装置で生成される画像データにおける各画素の信号強度と所定の閾値とを比較することでヒュームが発生している範囲を求めることができる。
また、ヒュームFUの濃度が高くなるほど、ヒュームFUによる散乱の影響が大きくなり、照明装置からの照明光の強度は大きく減衰する。従って、検出部54は、撮像装置で生成される画像データにおける各画素の信号強度に基づいてヒュームFUの濃度(濃度の分布)を求めることができる。
【0120】
なお、取得部310として、不図示の照明装置と撮像装置の組を異なる方位に配置(一例として、ベースプレート311の中心に対して、X方向+側及びY方向+側のそれぞれに照明装置を配置し、X方向-側及びY方向-側のそれぞれに撮像装置を配置)し、検出部54は、それぞれの撮像装置で生成される画像データにおける各画素の信号強度に基づいて、ヒュームFUの発生している空間的な範囲と空間的な濃度(濃度の分布)を求めてもよい。
【0121】
なお、不図示の照明装置は面発光型のLEDでなくてもよく、ヒュームFUが発生する可能性のある空間を面発光できる構成であれば、他の既存の構成を用いてもよい。また、面発光しなくてもよく、既存の点発光型の照明装置を用いてもよい。
なお、ヒュームFUの状態(スパッタSPの範囲や濃度)と溶融池MPの対流Cとの相関関係と、溶融池MPの対流Cと溶融池MPの溶融の状態(温度に関する情報)との相関関係から、ヒュームFUの状態と溶融池MPの溶融の状態との相関関係がわかる。従って、検出部54は、求めたヒュームFUの状態に基づいて、(間接的に)溶融池MPの溶融の状態を求めてもよい。この場合、ヒュームFUの状態と溶融池MPの溶融の状態との相関関係に関するデータを予め記憶部58に記憶させておく。
【0122】
(2)造形条件を変更する処理
演算部56は、上述したようにして検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、造形条件の変更が必要な場合には、上記(1)式~(3)式で表されるパワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値の少なくとも1つが所望する範囲に保たれるように、各式に含まれる上述したパラメータの値を設定する。造形条件の変更が必要な場合とは、現在設定されている造形条件にて造形を行うと、三次元造形物に溶融不足や形状異常や所望の金属結晶が得られない等の造形不良が発生する可能性がある場合である。造形条件の変更の要否は、判定部57により判定される。判定部57は、検出部54により求められた検出対象領域の状態が、後述する基準範囲を満たす場合に、造形条件の変更が必要と判定する。
【0123】
演算部56は、設定したパラメータの値となるように造形条件を変更するための情報である変更情報を生成する。本実施の形態においては、変更する造形条件として、以下の(2-1)~(2-7)を例示する。
(2-1)材料層の粉末材料Pに向けて出射されるレーザ光の条件、すなわち照射部32に関連する条件
(2-2)レーザ光により材料層を走査するための走査条件、すなわち走査部33に関連する条件
(2-3)筐体10の内部の雰囲気に関連する条件
(2-4)材料層を形成するための材料層形成条件
(2-5)造形槽31のベースプレート311に関連する支持部条件
(2-6)固化層または三次元造形物の形状に関する設計情報(設計データ)
(2-7)粉末材料Pに関連する条件
【0124】
上記の(2-1)~(2-7)の造形条件の具体例を以下に示す。
一例として、図8図9には、主な造形条件と、基本条件であるパワー密度PD、エネルギー密度EDおよび温度分布T(r)と、(1)式~(3)式に示すパラメータとの関係を示す。図8図9は、各造形条件によって制御できる基本条件を〇で示し、制御できない又は制御しても効果が小さい基本条件を空白で示す。また、図8図9は、各造形条件に関連のある(1)式~(3)式の各パラメータを示す。備考として、図8図9は、各造形条件が、上述したリアルタイム変更、次層造形時変更および次造形物造形時変更のどのタイミングで変更可能かを示す。
【0125】
(2-1)照射部32に関連する条件
照射部32から出射されるレーザ光の条件に関連する造形条件の具体例として、図8に示すように、レーザ光の出力[W](レーザ出力)と、レーザ光の波長[nm]と、レーザ光の強度分布(プロファイル)と、レーザ光の光束のサイズ[mm](スポットサイズ)との少なくとも1つの条件がある。
【0126】
レーザ出力は、レーザ発振器321から出射されたレーザ光により照射された粉末材料Pに与える熱量に影響を与え、レーザ出力が高いほど粉末材料Pに吸収される熱量が増加する。レーザ出力は、上述したパラメータPに関連して変更情報が生成される造形条件である。上述したように、レーザ出力が増加されると、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値が上昇する。レーザ出力を変更するための変更情報は、照射部32から出射されるレーザ光の新たな出力値や、現在設定されているレーザ光の出力値への補正値である。
【0127】
レーザ光の波長は、粉末材料Pがレーザ光を吸収する吸収率と関連がある。一般的に、レーザ光の波長が短い程、粉末材料Pの吸収率が高いことが知られている。すなわち、レーザ光の波長は、パラメータηに関連して変更情報が生成される造形条件であり、レーザ光の波長が長くなるとパラメータηの値が減少する。このため、レーザ光の波長は、パワー密度PD、エネルギー密度EDの値に影響を与える。レーザ光の波長を変更するための変更情報は、例えば、レーザ光として出射可能な波長のうち、いずれの波長のレーザ光を出射させるかを示す情報である。
【0128】
レーザ光の強度分布(プロファイル)として、本実施の形態では、上述したようにガウシアン分布のレーザ光とトップハット分布のレーザ光とを切り替えることができる。ガウシアン分布のレーザ光の強度分布は、レーザ光の光束の中心軸近傍が最も強く、周辺へ向けて次第に弱くなる。トップハット分布のレーザ光の強度分布は、ガウシアン分布のレーザ光と比較して、レーザ光の光束の中心軸近傍から離れた周辺部においても均一になる。これにより、トップハット分布のレーザ光の場合は、ガウシアン分布のレーザ光と比較して、粉末材料Pの溶融に必要な強度を有するレーザ光は材料層上の広い範囲に照射される。このため、レーザ光の強度分布は、材料層上面でのレーザ光のスポットサイズに影響を与える。すなわち、レーザ光の強度分布はパラメータdに関連して変更情報が生成される造形条件である。レーザ光の強度分布をトップハット分布に切り替えるとスポットサイズが大きくなり、レーザ光の照射により材料層上の単位面積当たりの粉末材料Pに流入する熱量が減る。このため、トップハット分布の強度分布にすると、パラメータdの値が増加し、パワー密度PD、エネルギー密度EDの値が減少する。
【0129】
ガウシアン分布のレーザ光では、レーザ光の光束の中央軸近傍の強度分布が最も強くなるので、トップハット分布のレーザ光と比較して、粉末材料Pの溶融に必要な強度を有するレーザ光は材料層上の狭い範囲に照射される。これにより、スポットサイズが小さくなり、レーザ光の照射により材料層上の単位面積当たりの粉末材料Pに流入する熱量が増加する。このため、ガウシアン分布の強度分布にすると、パラメータdの値が減少し、パワー密度PD、エネルギー密度EDの値が増加する。
レーザ光の強度分布を変更するための変更情報は、例えば、ガウシアン分布とトップハット分布の何れの強度分布にてレーザ光を出射させるかを示す情報である。
なお、レーザ光の強度分布は、レーザ品質[M]の影響を受ける。Mが1の場合、レーザ光の強度分布はシングルモードのガウシアン分布となり、Mが1から変化するほど(Mは1以上の値)、レーザ光の強度分布はシングルモードのガウシアン分布から変化する。したがって、レーザ品質に応じて、パラメータdの値が変化する。
【0130】
レーザ光のスポットサイズは、レーザ光により照射される材料層のXY平面上での範囲に影響する。材料層上面を照射するレーザ光のスポットサイズが小さい程、材料層上の単位面積あたりの熱量が増え、レーザ光の照射により材料層上の単位面積当たりの粉末材料Pに流入する熱量が増す。その結果、レーザ光に照射された粉末材料Pの溶融が促進され溶融池MP内での対流Cに影響を与える。このため、レーザ光のスポットサイズは、パラメータdに関連して変更情報が生成される造形条件である。スポットサイズが大きくなると、パラメータdが大きくなり、レーザ光の照射により材料層上の単位面積当たりの粉末材料Pに流入する熱量が減少するので、パワー密度PD、エネルギー密度EDの値が減少する。スポットサイズは温度分布T(r)の値に影響を与える。レーザ光のスポットサイズを変更するための変更情報は、例えば、フォーカスレンズ323の凹レンズ323aのX方向の位置、または現在の凹レンズ323aの位置からの移動量である。
レーザ光の波長は次造形物造形時変更の際に変更することができる。他の造形条件は、リアルタイム変更、次層造形時変更および次造形物造形時変更のいずれのときであっても変更することができる。
【0131】
(2-2)走査部33に関連する条件
レーザ光により材料層を走査するための走査条件に対する造形条件の具体的な例として、レーザ光の走査速度[mm/s]と、レーザ光の走査方向と交差する方向にて隣接する2つのレーザ光の照射位置の間隔(走査ピッチ)[mm]と、レーザ光の走査経路との少なくとも1つの条件がある。
レーザ光の走査速度は、材料層の表面の単位面積当たりにレーザ光が照射される時間に関連があり、レーザ光の照射により材料層の単位面積当たりの粉末材料Pに流入する熱量や、レーザ光が照射される位置の移動に伴う溶融池MPにおける温度変化(温度勾配)に影響がある。レーザ光の走査速度が高い場合には、レーザ光の照射により材料層の表面の単位面積当たりに含まれる粉末材料Pに流入する熱量が少なくなる。レーザ光の走査速度が低い場合には、レーザ光の照射により材料層の表面の単位面積当たりに含まれる粉末材料Pに流入する熱量が多くなる。レーザ光の走査速度は、上記のパラメータvに関連して変更情報が生成される造形条件である。走査速度が上昇するとパラメータvも増加し、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値が減少する。走査速度を変更するための変更情報は、例えば、ガルバノミラー331、332の傾き角度の新たな変更速度や、現在設定されている傾き角度の変更速度の補正値である。
【0132】
走査ピッチが小さい場合には、レーザ光の照射により既に形成された隣接する凝固領域BEからの熱の影響が大きい。したがって、レーザ光が照射されていない粉末材料Pの初期温度が上昇し、所望の温度(たとえば融点)までの上昇に必要な熱量が少なくなる。すなわち、走査ピッチが小さい程、粉末材料Pの熱の吸収率が大きくなり、走査ピッチが大きい程、粉末材料Pの熱の吸収率が小さくなる。また、走査ピッチが小さいと、溶融池MPにおいて、レーザ光の走査方向とは異なる方向からの熱が対流Cに影響を与える。
【0133】
走査ピッチが大きい場合には、レーザ光の照射により既に形成された隣接する凝固領域BEからの熱の影響が小さいので、レーザ光に照射されていない粉末材料Pの初期温度が所望の温度(たとえば融点)にまで上昇するために必要な熱量が多くなる。
走査ピッチはパラメータηとΔyとに関連して変更情報が生成される造形条件である。走査ピッチが大きい場合には、パラメータηの値が小さく、パラメータΔyの値が大きくなり、エネルギー密度EDの値が小さくなる。走査ピッチは、パワー密度PDと温度分布T(r)の値に影響を与える。走査ピッチを変更するための変更情報は、例えば、ガルバノミラー331、332の現在の設定角度から変化させる新たな設定角度、または現在の設定角度から新たな設定角度に変化させるための補正値である。
【0134】
レーザ光の走査経路は、材料層の表面へのレーザ光を照射するための経路の設定方法に関する造形条件である。走査経路として、たとえば、スライスモデルデータに基づく形状(造形モデル)の輪郭に沿ってレーザ光を照射した後に輪郭内部にレーザ光を照射したり、スライスモデルデータに基づく形状(造形モデル)の輪郭内部にレーザ光を照射した後に、スライスモデルデータに基づく形状(造形モデル)の輪郭に沿ってレーザ光を照射する等がある。また、レーザ光の走査経路は、レーザ光が照射される前の材料層の初期温度Tに基づいて、たとえばレーザ光により造形される固化層に残留応力が発生しにくくなるような経路となるように決定される。
【0135】
レーザ光の走査経路として、例えば、上記に例示したように、スライスモデルデータに基づく形状(造形モデル)の輪郭に沿ってレーザ光を照射した後に輪郭内部にレーザ光を照射する場合、既にスライスモデルデータに基づく形状(造形モデル)の輪郭へ照射されたレーザ光による熱の拡散によって輪郭内部における粉末材料Pの初期温度が上昇する。したがって、レーザ光の走査経路は、変更する走査経路によってはパラメータのPに関連して変更情報が生成される造形条件であり、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値に影響を与える。走査経路を変更するための変更情報は、例えば、ガルバノミラー331、332の新たな傾き角度の値とその傾き角度の値を設定するタイミングの情報である。
上記の各造形条件は、リアルタイム変更、次層造形時変更および次造形物造形時変更のいずれのときであっても変更することができる。
【0136】
(2-3)筐体10の内部の雰囲気に関連する条件
筐体10の内部の雰囲気を造形条件とするときの具体例として、筐体10へ導入される不活性ガスの流量[mm/s]と、筐体10へ導入される不活性ガスの流速[mm/s]と、筐体10内の温度[℃]との少なくとも1つの条件がある。
本実施の形態では、不活性ガスの流量や流速は、レーザ光を照射する前の材料層の初期温度やレーザ光の照射により粉末材料Pから発生したヒュームFUに影響を与える。たとえば、不活性ガスの流量が多い場合や流速が高い場合は、不活性ガスにより材料層の表面が冷却されることにより、レーザ光に照射された粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)に上昇するために必要な熱量が多くなる。したがって、不活性ガスの流量と流速は、粉末材料Pがレーザ光の照射を受ける前の初期温度に影響を与えるので、パラメータPに関連する造形条件である。
【0137】
また、たとえば不活性ガスの流量が少ない場合や流速が低い場合は、レーザ光の照射によって発生したヒュームFUがレーザ光の照射位置の近傍に留まり、材料層に向かうレーザ光の光路を遮ってしまう。このため、レーザ光の照射により粉末材料Pに流入する熱量が減少し、想定していた溶融状態とは異なる溶融状態となる可能性がある。したがって、不活性ガスの流量と流速は、粉末材料Pがレーザ光の照射による熱を吸収するときの吸収率に影響を与えるので、パラメータηに関連する造形条件である。不活性ガスの流量と流速とは、パラメータP、ηに関連して変更情報が生成される造形条件であり、たとえば、不活性ガスの流量が増加し流速が上昇すると、パラメータPの値が小さくなり、パラメータηの値が大きくなり、温度分布T(r)の値が小さくなる。不活性ガスの流量と流速とは、パワー密度PDとエネルギー密度EDの値に影響を与える。不活性ガスの流量と流速を変更するための変更情報は、たとえば、吸気装置131であるバルブの新たなバルブ開度や、排気装置14の新たな排気量、または現在設定されているバルブ開度や排気量の補正値である。
【0138】
筐体10内の温度は、レーザ光を照射する前の材料層の初期温度に影響を与え、パラメータのPに関連して変更情報が生成される造形条件である。筐体10内の温度が高いほど粉末材料Pも温められ初期温度が高くなるので、レーザ光の照射により粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)に上昇するまでに必要な熱量が少なくなる。したがって、筐体10内の温度は、粉末材料Pがレーザ光の照射を受ける前の初期温度に影響を与えるので、パラメータPに関連する造形条件であり、たとえば、筐体10内の温度が上がると、パラメータPの値が大きくなり、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値が増加する。筐体10内の温度を変更するための変更情報は、例えば、ヒーター15の新たな加熱出力の値や、現在設定されているヒーター15の加熱出力の補正値である。
【0139】
筐体10内の温度は、次層造形時変更または次造形物造形時変更のときに変更することができる。筐体10へ導入される不活性ガスの流量および流速は、リアルタイム変更、次層造形時変更および次造形物造形時変更のいずれのときであっても変更することができる。
【0140】
(2-4)材料層を形成するための材料層形成条件
材料層を形成するための造形条件の具体例として、ブレード221の移動速度[mm/s]と、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力[Pa]と、固化層の造形後に固化層の上に新たな材料層の形成を開始するまでにブレード221が待機する時間[s]と、ブレード221の形状と、ブレード221の材質と、ベースプレート311上の材料層の積層厚[mm]との少なくとも1つの条件がある。
【0141】
ブレード221の移動速度およびブレード221が粉末材料Pに加える圧力は、形成される材料層の表面の平面度や材料層の積層厚や密度に影響を与える。たとえばブレード221の移動速度が速い場合には、ブレード221の移動速度が遅い場合と比較して、材料層の表面の平面度が低下し、積層厚が増し、密度が減る。また、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力が高い場合には、圧力が低い場合と比較して、材料層の表面の平面度が増加し、積層厚が減り、密度が増す。したがって、ブレード221の移動速度は、パラメータΔz、ρ、k、αに影響を与える造形条件であり、たとえば、ブレード221の移動速度が変更されると、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値が影響を受ける。ブレード221が粉末材料Pに加える圧力は、パラメータΔz、ρ、k、αに関連して変更情報が生成される造形条件である。たとえば、圧力が増すと、パラメータρ、k、αの値が大きくなり、パラメータΔzの値が小さくなり、エネルギー密度EDと温度分布T(r)との値が増加する。ブレード221の移動速度を変更するための変更情報は、ブレード221を移動させる駆動機構を構成するモータ出力の新たな値や、現在設定されているモータ出力の補正値である。ブレード221が粉末材料Pに加える圧力を変更するための変更情報は、たとえば、押圧機構の新たな駆動量の値や、現在設定されている押圧機構の駆動量の補正値でもよい。
【0142】
ブレード221の待機時間は、上述したように、固化層の造形のために材料層へのレーザ光の照射が終了した後から、ブレード221が粉末材料Pを材料供給槽21から造形槽31への移送を開始するまでの時間である。ブレード221の待機時間は、固化層上に新たに形成する材料層の初期温度に影響を与える。すなわち、待機時間が長いほど、レーザ光の照射によって上昇した固化層の温度が低下するので、その固化層の上部に新たに形成される材料層の初期温度が上昇しにくくなる。この場合、レーザ光に照射された粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)まで上昇するために必要な熱量が多くなる。したがって、ブレード221の待機時間は、パラメータPに関連して変更情報が生成される造形条件である。たとえば、待機時間が長くなると、パラメータPの値が小さくなり、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値が減少する。ブレード221の待機時間を変更するための変更情報は、例えば、ブレード221を移動させる駆動機構を構成するモータの駆動開始のタイミングを示す値や、現在設定されているモータの駆動開始のタイミングの補正値である。
【0143】
ブレード221に、たとえば欠損がある場合には、その欠損の形状に応じて材料層の厚みが一定とならず、平面度が低下したり、積層厚が所望した厚さと異なったり、材料層中の密度が一律にならなくなったり、平面粗さが大きくなったりする。また、ブレード221に欠損が無い場合であっても、ブレード221の形状が変わると、粉末材料Pに対するブレード221の接触面積等が変化するため、その形状に応じて材料層の密度、平面度、積層厚が変化する。ブレード221の材質と粉末材料Pの材質(種類)との特性よっては、摩擦等の要因によりブレード221の移動に支障をきたし、ベースプレート311や固化層上に均一に粉末材料Pが移送されず、形成される材料層の平面度が低下したり、積層厚が所望した厚さと異なったり、材料層中の密度の均一性が低下したり、平面粗さが大きくなったりする可能性がある。したがって、ブレード221の形状および材質は、パラメータΔz、ρ、k、αに影響を与える造形条件であり、ブレード221の形状および材質が変更されるとエネルギー密度EDと温度分布T(r)との値が影響を受ける。
【0144】
なお、ブレード221の形状および材質の変更は、ブレード221の種類を変更することにより行うことができる。この場合、ブレード221の形状および材質を変更するための変更情報は、たとえばブレード221の交換を示す情報である。この場合、造形装置1は、たとえば、ブレード221の交換を促す報知を行う。報知の方法としては、造形装置1は、不活性ガスの種類を変更する必要がある旨を伝えるメッセージをモニタ(不図示)に表示したり、音声をスピーカー(不図示)から発するとよい。また、複数の種類の間でブレード211が自動で交換可能な構成を有する場合には、材料制御部51からの制御に従って、ブレード211の種類が自動的に交換される。また、上述したブレード221の形状が可変な構造となっている場合には、材料制御部51からの制御に従って、ブレード221の形状を変更できる。この場合に生成される変更情報は、例えば、ブレード221の形状の変更を指示する情報である。
【0145】
材料層の積層厚が厚い場合には、レーザ光の照射により発生した熱量が材料層のZ方向-側の面(下面)まで十分に到達しなくなり、溶融不足等の造形不良の発生原因となる可能性がある。積層厚は、パラメータΔzに関連して変更情報が生成される造形条件であり、たとえば、積層厚が増すとパラメータΔzの値が大きくなり、エネルギー密度EDの値が低下する。積層厚を変更するための変更情報は、例えば、上述した、リコーター22のブレード221が粉末材料Pに加える新たな圧力の値や現在の圧力の補正値でもよいし、ブレード221の押圧機構の新たな駆動量の値や現在設定されている押圧機構の駆動量の補正値でもよい。
ブレード221の形状および材質は次造形物造形時変更にて変更することができる。ブレード221の移動速度、粉末材料Pに加える圧力、待機時間および材料層の積層厚は、次層造形時変更または次造形物造形時変更のときに変更することができる。
【0146】
(2-5)造形槽31のベースプレート311に関連する支持部条件
造形槽31のベースプレート311に関連する造形条件として、ベースプレート311の温度[℃]とがある。
ベースプレート311の温度は、上部に形成される材料層の初期温度に影響を与え、ベースプレート311の温度が高い程粉末材料Pも温められる。このため、ベースプレート311の温度が高いほど、粉末材料Pの初期温度も高くなる。この場合、レーザ光に照射された粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)まで上昇するために必要な熱量は少なくなる。したがって、ベースプレート311の温度は、パラメータのPに関連して変更情報が生成される造形条件である。ベースプレート311の温度が高いとパラメータPの値が大きくなり、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値が増加する。ベースプレート311の温度を変更するための変更情報は、例えば、ヒーター313の新たな加熱出力の値や、現在設定されているヒーター313の加熱出力の補正値である。
【0147】
なお、ベースプレート311の温度が高いと、レーザ光の照射によって上昇した固化層の温度が低下するときの温度の低下量が小さくなるので、溶融池MPが凝固する際に生じる残留応力の影響が小さくなる。また、上述したように、ベースプレート311の温度が高いと、レーザ光に照射された粉末材料Pの温度が所望の温度まで上昇するために必要な熱量が少なくて済むため、レーザ光の出力を変更することなく、走査速度の上昇が可能となる。
ベースプレート311の温度は、次層造形時変更または次造形物造形時変更のときに変更することができる。
【0148】
(2-6)固化層または三次元造形物の形状に関連する設計データ
固化層または三次元造形物の形状に関連する設計データを造形条件とする場合の具体例として、造形される固化層の形状データであるスライスモデルデータと、固化層や三次元造形物を支持するサポート部の形状データとの少なくとも1つのデータがある。
【0149】
スライスモデルデータは、造形される固化層のXY平面上での形状や固化層の厚み(スライスピッチ)等を決定するための形状データである。スライスモデルデータはパラメータΔzに関連して変更情報が生成される造形条件である。すなわち、固化層の厚みが大きくなると、パラメータΔzの値が大きくなる。形状データであるスライスモデルデータが変更されると、照射部32からのレーザ光の各種の造形条件や、走査部33による走査のための各種の造形条件が変更される可能性があるため、スライスモデルデータはパワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値に影響を与える。スライスモデルデータを変更するための変更情報は、例えば、XY平面における固化層の新たな形状や固化層の新たな厚み、またはXY平面における固化層の形状の補正値や固化層の厚みの補正値である。
【0150】
サポート部の形状データは、上述したように、固化層間や三次元造形物の変形や破損を防ぐために三次元造形物を支持するサポート部の太さや長さなどの形状を示す。サポート部の形状は、支持する固化層や三次元造形物の形状、大きさ等によって決定される。サポート部の体積が大きいほど、固化層のうちサポート部としてレーザ光の照射により造形された部分の熱が、その固化層の上に形成された材料層(粉末材料P)に与える影響が大きくなる。また、ベースプレート311により粉末材料Pが加熱され初期温度が高いほど、固化層のうちサポート部として造形された部分を通じて、ベースプレート311から材料層(粉末材料P)へと伝わる熱量が多くなる。このため、サポート部の形状データは、サポート部の体積やベースプレート311の温度によってはパラメータPに影響を与える造形条件であり、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値に影響を与える。サポート部の形状データを変更するための変更情報は、例えば、サポート部の新たな形状(長さや太さなど)の値や、現在のサポート部の形状(長さや太さなど)の補正値である。
スライスモデルデータ、サポート部材の形状データは、次造形物造形時変更のときに補正できる。
【0151】
(2-7)粉末材料Pに関連する条件
粉末材料Pに関連する造形条件の具体例として、粉末材料Pの粒径・粒度分布と、粉末材料Pの吸湿度と、粉末材料Pの種類との少なくとも1つの条件がある。
材料層内の粉末材料Pの粒径・粒度分布のばらつきは、レーザ光に照射された材料層の熱拡散率や熱伝導率に影響を与え、溶融不良等の原因となるおそれがある。また、粒径・粒度分布にばらつきがある粉末材料Pがブレード221により造形槽31に移送されると、材料層において厚みや密度にばらつきが生じる場合があり、その結果、造形される固化層にはボイド等の欠陥が発生する可能性がある。粒径・粒度分布は、パラメータΔz、ρ、k、αに関連して変更情報が生成される造形条件である。たとえば、粒径・粒度分布が大きくなる(ばらつきが大きくなる)と、パラメータΔzの値が大きくなり、パラメータρ、k、αの値が小さくなり、エネルギー密度EDと温度分布T(r)との値が増加する。粉末材料Pの粒径・粒度分布を変更するための変更情報は、例えば、形成された材料層を除去して新たに材料層を形成することを指示する情報である。
【0152】
吸湿度の高い粉末材料Pは、流動性が低く、ブレード221で造形槽31に滑らかに移送されにくい。このため、形成された材料層の平面度や積層厚が均一になりにくく、また表面粗さが大きくなりやすい。すなわち、粉末材料Pの吸湿性は、パラメータΔzに影響を与える造形条件である。また、粉末材料Pの吸湿度が高いと、材料層の平面度、積層厚、密度が均一になりにくいため、レーザ光の照射による温度上昇が均一とならず、溶融不良により造形される固化層のボイド等の欠陥が発生する可能性がある。さらに、吸湿度が高い粉末材料Pは、熱伝導率や熱拡散率が低いので、溶融不良により造形される固化層にボイド等の欠陥が発生する可能性がある。したがって、粉末材料Pの吸湿度は、パラメータk、αに関連して変更情報が生成される造形条件である。たとえば、粉末材料Pの吸湿度が高いと、パラメータk、αの値が下がり、温度分布T(r)の値が減少する。また、粉末材料Pの吸湿度は、パワー密度PDとエネルギー密度EDとの値に影響を与える。吸湿度を変更するための変更情報は、例えば、粉末材料Pをヒーター213にて加熱する必要があることを示す情報と、ヒーター213の加熱出力の値とが含まれる。
【0153】
粉末材料Pの種類には、粉末の材質や、添加剤がそれぞれ異なる粉末材料Pがある。粉末材料Pの種類が異なると、粉末の粒径の大きさや、熱伝導率、熱拡散率等が異なる。また、例えば、材料層を形成する際にブレード221にて異なる粒径の粉末材料Pへ同一の圧力を加えたとしても、粒径の大きな粉末材料Pを用いた場合には、粒径の小さな粉末材料Pを用いた場合よりも材料層内における粒子間の隙間が大きくなるため、材料層の積層厚が増加したり、密度が低くなる。このため、粉末材料Pの種類は、パラメータΔz、ρ、k、αに影響を与える造形条件であり、エネルギー密度EDと温度分布T(r)に影響を与える。粉末材料Pの種類を変更するための変更情報は、例えば、異なる種類の粉末材料Pを用いることを示す情報である。この場合、造形装置1は、たとえば、ユーザに粉末材料Pの交換を促す報知を行う。報知の方法としては、造形装置1は、粉末材料Pの種類を変更する必要がある旨を伝えるメッセージをモニタ(不図示)に表示したり、音声をスピーカー(不図示)から発するとよい。また、複数の材料供給槽21ごとに異なる種類の粉末材料Pが収容され、複数の材料供給槽21が自動で交換可能な構成を有する場合、材料制御部51からの制御に従って、材料供給槽21が交換されることにより粉末材料Pの種類が自動的に交換される。
【0154】
粉末材料Pの粒径・粒度分布、および種類は、次造形物造形時変更のときに変更できる。粉末材料Pの吸湿度は、次層造形時変更または次造形物造形時変更のときに補正することができる。
なお、上述した図8、9を用いて説明では、上記の(2-1)~(2-7)に含まれる各造形条件に対して特に関連が高く、造形条件の変更に対して変化の大きいパラメータを関連するパラメータとして例示した。しかし、各造形条件を変更した場合、(1)式~(3)式に含まれるパラメータのうち、上記の例示したパラメータ以外のパラメータも影響を受ける。従って、上記の例示したパラメータ以外のパラメータが変化することを加味して、パワー密度PD、エネルギー密度EDおよび温度分布T(r)の少なくとも1つが所望の範囲となるように造形条件を変更するための変更情報が生成されてもよい。
【0155】
なお、本実施の形態においては、造形条件は以上で示した(2-1)~(2-8)の造形条件の他に、造形装置1における既存の他の造形条件が含まれてもよい。他の造形条件としては、照射部32からのレーザ光の発振モードや、レーザ光の偏光状態や、不活性ガスの種類や、筐体10内の酸素濃度や、筐体10内の圧力[Pa]や、ベースプレート311の種類や、造形姿勢データや、三次元造形物の形状データや、粉末材料Pの酸素濃度が含まれる。
【0156】
レーザ光の発振モードとしては、上述したように、本実施の形態では、CW(連続)発振とパルス発振との間で切り替え可能である。パルス発振の場合は、CW発振に比べてオンとなる時間が短いので、レーザ光が照射された位置において粉末材料Pが吸収する熱量が、CW発振の場合と比較して小さい。このため、発振モードに応じて、粉末材料Pに流入する熱量に差が生じるため粉末材料Pの溶融に影響があり、特にキーホールKHの深さや凝固領域BH幅に影響が生じることが知られている。すなわち、発振モードは、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値に影響を与える。レーザ光の発振モードを変更するための変更情報は、例えば、CW(連続)発振とパルス発振の何れのモードでレーザ光を出射させるかを示す情報である。レーザ光の発振モードは、リアルタイム変更、次層造形時変更および次造形物造形時変更のいずれのときであっても変更することができる。
【0157】
レーザ光の偏光状態として、たとえば円偏光や直線偏光等がある。粉末材料Pが金属材料の場合、レーザ光の吸収はレーザ光の偏光状態の影響を受ける。すなわち、レーザ光の偏光状態は、レーザ光に照射された粉末材料Pに流入する熱量に影響を与える。このため、レーザ光の偏光状態は、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値の少なくとも1つに影響を与える造形条件である。レーザ光の偏光状態を変更するための変更情報は、たとえば、照射部32から出射されるレーザ光に設定可能な偏光状態(たとえば円偏光や直線偏光等)のうち、いずれの偏光状態を設定するかを示す情報である。レーザ光の偏光状態は、次造形物造形時変更のときに変更することができる。
【0158】
不活性ガスの種類としては、たとえば窒素やアルゴン等の中から選択することができる。不活性ガスの種類は、粉末材料Pの種類に応じて選択される造形条件である。例えば、粉末材料Pがチタンの場合、不活性ガスとして窒素を使用すると、粉末材料Pが窒素と反応してしまうため、不活性ガスとしてアルゴンを使用するとよい。このように、粉末材料Pの種類に対して適切な不活性ガスが選択されない場合には、粉末材料Pと不活性ガスとが反応を起こすことにより、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値に影響を与える。不活性ガスの種類を変更するための変更情報は、異なる種類の不活性ガスを用いることを示す情報である。この場合、造形装置1は、たとえば、ユーザに不活性ガスの交換を促す報知を行う。報知の方法としては、造形装置1は、不活性ガスの種類を変更する必要がある旨を伝えるメッセージをモニタ(不図示)に表示したり、音声をスピーカー(不図示)から発するとよい。なお、不活性ガスの種類は、タンク13を交換することにより行うことができる。また、複数のタンク13ごとに異なる種類の不活性ガスが収容され、複数のタンク13が自動で交換可能な構成を有する場合、筐体制御部53からの制御に従って、タンク13が交換されることにより不活性ガスの種類が自動的に交換される。不活性ガスの種類は、次造形物造形時変更のときに変更することができる。
【0159】
筐体10内の酸素濃度は、溶融、凝固中の材料層を酸化させない濃度に設定するための造形条件である。上述したように、粉末材料Pが酸化するその表面に酸化被膜が形成され、酸化被膜の厚さに応じて比熱が変化することにより、粉末材料Pの熱の吸収や熱の伝導に影響が及ぶ。このため、筐体10内の酸素濃度は、エネルギー密度EDや温度分布T(r)の値に影響を与える造形条件である。筐体10内の酸素濃度を変更するための変更情報は、たとえば、吸気装置131であるバルブの新たなバルブ開度や、排気装置14の新たな排気量、または現在設定されているバルブ開度や排気量の補正値である。筐体10内の酸素濃度は、次層造形時変更または次造形物造形時変更のときに変更することができる。
【0160】
三次元造形物の造形は筐体10内が所定の圧力に保たれた状態で行われるので、筐体10内の圧力は造形条件として制御される。筐体10内の圧力は、溶融池MPの表面張力に影響を与える。上述したように、溶融池MP内の対流Cは、溶融池MPの表面と内部との表面表力の差に起因して発生するので、筐体10内の圧力は、溶融池MPの対流Cに影響を与える造形条件である。対流Cは溶融池MP内の温度分布に影響を与えるので、筐体10内の圧力は温度分布T(r)に影響を与える造形条件である。筐体10内の圧力を変更するための変更情報は、たとえば、排気装置14の新たな排気量、または現在設定されている排気量の補正値である。筐体10内の圧力は、次層造形時変更または次造形物造形時変更のときに変更することができる。
【0161】
造形姿勢データは、上述したように固化層や三次元造形物の造形姿勢を示すデータであり、スライスモデルデータを設定する際に使用される。造形姿勢が変更されると、照射部32からのレーザ光の各種の造形条件や、走査部33による走査のための各種の造形条件が変更される可能性がある。このため、造形姿勢データは、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値に影響を与える。造形姿勢データに対して生成される変更情報は、例えば、新たな造形姿勢に設定されたときのスライス方向を示す情報である。造形姿勢データは、次造形物造形時変更のときに変更できる。
【0162】
三次元造形物の形状データは、設計データ(すなわちCADデータやSTLデータ)である。このため、三次元造形物の形状データは、変更されると、照射部32からのレーザ光の各種の造形条件や、走査部33による走査のための各種の造形条件が変更される可能性がある造形条件である。このため、三次元造形物の形状データは、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)の値に影響を与える。三次元造形物の形状データを変更するための変更情報は、例えば、三次元造形物の新たな形状を示す値、現在の三次元造形物の形状の補正値である。三次元造形物の形状データは、次造形物造形時変更のときに補正できる。
【0163】
上述したように、本実施の形態においては、ベースプレート311は、厚さや材質が異なる複数種類の中から選択して取り付け可能に構成される。ベースプレート311の種類は、溶融池MPが凝固する際に生じる残留応力により固化層が変形することを防ぎ、固化層の形状を保つために必要な剛性(厚さや材質)を有するベースプレート311が選択されるための造形条件である。残留応力は溶融した粉末材料Pが凝固するまでの温度変化に応じて発生するので、残留応力の発生を抑制するためのベースプレート311の種類は温度分布T(r)に関連がある造形条件である。ベースプレート311は、次造形物造形時に変更が可能である。ベースプレート311の種類を変更するための変更情報は、例えば、異なる種類のベースプレート311を用いることを示す情報である。この場合、造形装置1は、たとえば、ユーザにベースプレート311の交換を促す報知を行う。報知の方法としては、造形装置1は、ベースプレート311の種類を変更する必要がある旨を伝えるメッセージをモニタ(不図示)に表示したり、音声をスピーカー(不図示)から発するとよい。また、複数の種類の間でベースプレート311が自動で交換可能な構成を有する場合には、造形制御部52からの制御にしたがって、ベースプレート311の種類が自動的に交換される。
【0164】
粉末材料Pが酸化すると、上述したように粉末材料Pの表面に酸化被膜が形成され、その酸化被膜の厚さに応じて比熱が変化する。粉末材料Pの酸化被膜は、粉末材料Pの熱伝導に影響を及ぼし、溶融不良等の原因となる可能性がある。このため、粉末材料Pの酸素濃度は造形条件となり、エネルギー密度EDの値に影響を与える。粉末材料Pの酸素濃度に対して生成される変更情報は、例えば、粉末材料Pをヒーター213にて加熱する必要があることを示す情報と、ヒーター213の加熱出力の値とが含まれる。粉末材料Pの酸素濃度は、次造形物造形時変更のときに変更できる。
【0165】
次に、演算部56が生成する変更情報の具体例について説明する。以下の説明では、パワー密度PD、エネルギー密度EDおよび温度分布T(r)の少なくとも1つを所望の範囲に保つために、演算部56が変更情報を生成する場合を例に挙げる。
【0166】
検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、パラメータPが変更される場合について説明する。パラメータPを増加させる場合、すなわちパワー密度PD、エネルギー密度EDまたは温度分布T(r)の値を増加させる場合、演算部56は、例えば、照射部32からのレーザ光のレーザ出力を上げるように変更情報を生成する。パラメータPを低下させる場合、すなわちパワー密度PD、エネルギー密度EDまたは温度分布T(r)の値を低下させる場合、演算部56は、照射部32からのレーザ光のレーザ出力を下げるように変更情報を生成する。この場合に生成される変更情報は、照射部32から出射されるレーザ光の出力値である。出力部55は、生成された変更情報を状態情報として設定部59の造形制御部52に出力する。造形制御部52は、例えば、設定されているレーザ光の出力値を変更情報で示された出力値に変更し、変更後の出力値にて照射部32からレーザ光を出射させる。
パラメータPの値とレーザ出力とが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶される。演算部56は、このデータからパラメータPとして所望する値に対応するレーザ出力の値を読み出して、読み出した新たなレーザ出力の値を変更情報として生成する。
【0167】
検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、パラメータPが変更される場合について説明する。パラメータPを増加させる場合、すなわちパワー密度PD、エネルギー密度EDまたは温度分布T(r)の値を増加させる場合、演算部56は、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、例えば、不活性ガスの流量の減少および流速の低下と、筐体10内の温度増加と、ブレード221の待機時間の短縮と、ベースプレート311の温度増加とが含まれる。パラメータPを低下させる場合、すなわちパワー密度PD、エネルギー密度EDまたは温度分布T(r)の値を低下させる場合、演算部56は、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、例えば、不活性ガスの流量の増加および流速の上昇と、筐体10内の温度低下と、ブレード221の待機時間の延長と、ベースプレート311の温度低下とが含まれる。
【0168】
不活性ガスの流量および流速を変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として、設定部59の筐体制御部53に出力する。筐体制御部53は、例えば、設定されている吸気装置131のバルブ開度や、排気装置14の排気量を変更情報で示されたバルブの開度や排気量に変更し、変更後のバルブ開度や排気量にて吸気装置131や排気装置14を動作させる。
筐体10内の温度を変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として、筐体制御部53に出力する。筐体制御部53は、例えば、設定されているヒーター15の加熱出力を変更情報で示された加熱出力に変更し、変更後の加熱出力にてヒーター15を動作させる。
【0169】
ブレード221の待機時間を変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、出力部55は生成された変更情報を状態情報として、設定部59の材料制御部51に出力する。材料制御部51は、例えば、設定されている待機時間を変更情報で示された待機時間に変更し、変更後の待機時間にてブレード221を移動させる。
ベースプレート311の温度を変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として、設定部59の造形制御部52に出力する。造形制御部52は、例えば、設定されているヒーター313の加熱出力を変更情報で示された加熱出力に変更し、変更後の加熱出力にてヒーター313を動作させる。
【0170】
パラメータPの値と不活性ガスの流量および流速と、筐体10内の温度と、ブレード221の待機時間と、ベースプレート311の温度とが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶される。演算部56は、このデータからパラメータの値として所望する値に対応する各造形条件の値を読み出して、読み出した新たな値を変更情報として生成する。
なお、パラメータPは、レーザ光の走査経路や、サポート部の体積とベースプレート311の温度とによってはサポート部の形状(太さや長さなど)からの影響も受けるので、演算部56は、レーザ光の走査経路、サポート部の形状データについて変更情報を生成してよい。
【0171】
検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、パラメータηが変更される場合について説明する。パラメータηを増加させる場合、すなわち温度分布T(r)の値を低下させる場合やエネルギー密度EDの値を増加させる場合、演算部56は、例えば、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、レーザ光の波長の短波長への変更、走査ピッチの減少、不活性ガスの流量の増加、および不活性ガスの流速の上昇が含まれる。
一方、パラメータηを減少させる場合、すなわち温度分布T(r)の値を増加させる場合やエネルギー密度EDの値を低下させる場合、演算部56は、例えば、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、レーザ光の波長の長波長への変更や、走査ピッチの増加や、不活性ガスの流量の減少および流速の低下が含まれる。
【0172】
レーザ光の波長の変更情報は、出力部55により造形制御部52に出力される。造形制御部52は、例えば、設定されているレーザ光の波長を変更情報で示された波長に変更し、変更後の波長にて照射部32からレーザ光を出射させる。
レーザ光の波長を変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として設定部59の造形制御部52に出力する。造形制御部52は、例えば、設定されているレーザ光の波長を変更情報で示された波長に変更し、変更後の波長にて照射部32からレーザ光を出射させる。
走査ピッチを変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として設定部59の造形制御部52に出力する。造形制御部52は、例えば、ガルバノミラー331、332の現在の設定角度を変更情報で示された新たな設定角度に変更し、変更後の設定角度にて走査部33を動作させる。
不活性ガスの流量および流速を変更するための変更情報が生成された場合については、上述した場合と同様に、出力部55が状態情報を設定部59の筐体制御部53に出力する。筐体制御部53は、例えば、変更情報に基づいて変更されたバルブ開度や排気量にて、吸気装置131や排気装置14を動作させる。
パラメータηの値と走査ピッチと、不活性ガスの流量および流速とが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶される。演算部56は、このデータからパラメータとして所望する値に対応する各造形条件の値を読み出して、読み出した新たな値を変更情報として生成する。
【0173】
検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、パラメータdが変更される場合について説明する。パラメータdを増加させる場合、すなわちパワー密度PDとエネルギー密度EDとの値を減少させる場合、演算部56は、例えば、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、レーザ光の強度分布のトップハット分布への変更と、レーザ光のスポットサイズの増加とが含まれる。パラメータdを減少させる場合、すなわちパワー密度PDとエネルギー密度EDとの値を増加させる場合、演算部56は、例えば、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、レーザ光の強度分布のガウシアン分布への変更とレーザ光のスポットサイズの減少とが含まれる。
【0174】
レーザ光の強度分布を変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として設定部59の造形制御部52に出力する。造形制御部52は、例えば、設定されているレーザ光の強度分布を変更情報で示された強度分布に変更し、変更後の強度分布にて照射部32からレーザ光を出射させる。
スポットサイズを変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として設定部59の造形制御部52に出力する。造形制御部52は、例えば、不図示の駆動機構を制御して、変更情報で示されるX方向の位置へ凹レンズ323aを移動させる。
パラメータdとレーザ光の強度分布およびスポットサイズとが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶される。演算部56は、このデータからパラメータとして所望する値に対応する各造形条件の値を読み出して、読み出した新たな値を変更情報として生成する。
なお、パラメータdの変更に際して、演算部56は、レーザ光の強度分布に影響を与えるレーザ光の広がり角について変更情報を生成してよい。
【0175】
検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、パラメータvが変更される場合について説明する。パラメータvを増加させる場合、すなわちパワー密度PDとエネルギー密度EDと温度分布T(r)の値を減少させる場合、演算部56は、例えば、レーザ光の走査速度を上げるように変更情報を生成する。パラメータvを減少させる場合、すなわちパワー密度PDとエネルギー密度EDと温度分布T(r)の値を増加させる場合、演算部56は、例えば、レーザ光の走査速度を下げるように変更情報を生成する。
【0176】
レーザ光の走査速度を変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として、設定部59の造形制御部52に出力する。造形制御部52は、例えば、設定されているガルバノミラー331、332の傾き角度の変更速度の値を変更情報で示された傾き角度の変更速度に変更し、変更後の傾き角度の変更速度にて走査部33を動作させる。
パラメータvとレーザ光の走査速度とが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶される。演算部56は、このデータからパラメータv値として所望する値に対応する走査速度の値を読み出して、新たなレーザ光の走査速度を変更情報として生成する。
【0177】
検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、パラメータΔyが変更される場合について説明する。パラメータΔyを増加させる場合、すなわちエネルギー密度EDの値を減少させる場合、演算部56は、走査ピッチが増加するように変更情報を生成する。パラメータΔyを減少させる場合、すなわちエネルギー密度EDの値を増加させる場合、演算部56は、走査ピッチが減少するように変更情報を生成する。生成された変更情報は、上述したように、出力部55により状態情報として設定部59の造形制御部52に出力される。造形制御部52は、例えば、変更情報で示された新たな設定角度に変更し、変更後の設定角度にて走査部33を動作させる。
パラメータΔyと走査ピッチとが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶される。演算部56は、このデータからパラメータΔyの値として所望する値に対応する走査ピッチの値を読み出して、新たな走査ピッチを変更情報として生成する。
【0178】
検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、パラメータΔzが変更される場合について説明する。パラメータΔzを増加させる場合、すなわちエネルギー密度EDまたは温度分布T(r)の値を減少させる場合、演算部56は、例えば、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力を減少させて積層厚を増加させることと、粒径・粒度分布を大きくさせて粒径のばらつきを大きくすることと、固化層の形状データであるスライスモデルデータの厚みを大きくすること、とが含まれる。これにより、レーザ光の照射による熱が粉末材料Pに伝わりにくくなる。パラメータΔzを減少させる場合、すなわちエネルギー密度EDまたは温度分布T(r)の値を増加させる場合、演算部56は、例えば、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力を増加させて積層厚を減少させることと、粒径・粒度分布を減少させて粒径のばらつきを小さくすることと、スライスモデルデータの厚みを小さくすること、とが含まれる。これにより、レーザ光の照射による熱が粉末材料Pに伝わりやすくなる。
【0179】
ブレード221が粉末材料Pに加える圧力を変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として、設定部59の材料制御部51に出力する。材料制御部51は、例えば、ブレード221の押圧機構を制御して、ブレード221が変更情報に基づいた圧力を粉末材料Pに加えさせる。
粒径・粒度分布を変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として、設定部59の材料制御部51と造形制御部52に出力する。材料制御部51と造形制御部52は、例えば、リコーター22と駆動機構212と駆動機構312とを制御して、形成された材料層を除去して新たに材料層を形成するための動作を行わせる。
【0180】
固化層の形状データであるスライスモデルデータを変更するための変更情報が生成された場合は、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として、設定部59の造形制御部52に出力する。造形制御部52は、変更情報に基づいた新たな厚みを有する固化層が造形可能となるように、照射部32がレーザ光を出射するための造形条件の値や、走査部33によるレーザ光の走査のための造形条件の値や、駆動機構312の移動量を変更する。この場合、造形する固化層の厚さと、照射部32がレーザ光を出射するための造形条件の値や走査部33がレーザ光を走査するための造形条件とが関連付けされたデータが記憶部58に記憶されている。造形制御部52は、このデータを参照して、新たな固化層の厚さに適した造形条件にて、照射部32や走査部33を動作させる。
【0181】
パラメータΔzと、粉末材料Pに加える圧力と、粒径・粒度分布と、スライスモデルデータの厚さとが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶される。演算部56は、このデータからパラメータΔzの値として所望する値に対応する各造形条件の値を読み出して、読み出した新たな値を変更情報として生成する。
なお、パラメータのΔzは、ブレード221の移動速度や、ブレード221の種類(形状および材質)や、粉末材料Pの吸湿度や、粉末材料Pの種類の影響も受けるので、演算部56は、上記のそれぞれについて変更情報を生成してよい。
また、ベースプレート311のZ方向の移動量を変更することによってもΔzを変更することができるので、演算部56は、ベースプレート311を移動させるための駆動機構312の駆動量に基づいて変更情報を生成してもよい。
【0182】
検出部54により求められた検出対象領域の状態に基づいて、パラメータρ、kおよびαが変更される場合について説明する。パラメータρ、kおよびαを増加させる場合、すなわちエネルギー密度EDおよび温度分布T(r)の値を増加させる場合、演算部56は、例えば、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力を増加させることと、粒径・粒度分布を減少させ粒径のばらつきを小さくさせることとが含まれる。これにより、粉末材料Pの密度が大きくなり、粉末材料Pの熱伝導率、熱拡散率が大きくなる。この結果、レーザ光の照射による熱が材料層中を伝導し易くなる。パラメータρ、kおよびαを減少させる場合、すなわちエネルギー密度EDおよび温度分布T(r)の値を減少させる場合、演算部56は、例えば、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、造形条件の変更として、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力を減少させることと、粒径・粒度分布を増加させ粒径のばらつきを大きくさせることとが含まれる。これにより、粉末材料Pの密度が小さくなり、粉末材料Pの熱伝導率、熱拡散率が小さくなる。この結果、レーザ光の照射による熱が材料層中を伝導し難くなる。
【0183】
パラメータのρ、kおよびαと、粉末材料Pに加える圧力と粒径・粒度分布とが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶される。演算部56は、このデータから各パラメータの値として所望の値に対応する各造形条件の値を読み出し、読み出した新たな値を変更情報として生成する。
なお、パラメータρ、kおよびαは、ブレード221の移動速度や、ブレード221の種類(形状および材質)や、粉末材料Pの種類の影響も受けるので、演算部56は、上記のそれぞれについて変更情報を生成してよい。
また、パラメータkおよびαについては、粉末材料Pの吸湿度の影響も受ける。パラメータkおよびαを増加する場合、すなわち温度分布T(r)の値を増加させる場合には、演算部56は吸湿度を減少させる。
【0184】
上述のようにして演算部56が変更情報を生成すると、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として、変更される造形条件の内容に応じて、設定部59の材料制御部51や、造形制御部52や、筐体制御部53に出力する。材料制御部51は、例えば、材料層形成部20の動作、すなわち材料供給槽21の底面211を駆動する駆動機構212の動作や、ブレード221の動作(ブレード221の移動速度、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力、ブレード221の待機時間)や、材料供給槽21に収容された粉末材料を加熱するヒーター213による加熱温度を制御する。また、例えば、造形制御部52は、変更情報の内容に従って、照射部32や走査部33やベースプレート311の動作やヒーター313を駆動する駆動機構312の動作を制御し、設計データの変更を行う。また、例えば、筐体制御部53は、変更情報に従って、ヒーター15や吸気装置131や排気装置14の動作を制御して、筐体10内の雰囲気を制御する。
なお、演算部56は、生成した各造形条件の新たな値と、現状の造形条件の値との差の値である補正値を変更情報としてもよい。この場合、出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として設定部59に出力する。材料制御部51、造形制御部52、筐体制御部53は、入力した状態情報を、造形条件を補正する補正値として用いて、各部の動作を制御する。
【0185】
次に、検出部54や演算部56が行う処理の具体例のうちの一例について、リアルタイム変更の場合と、次層造形時変更の場合とについて説明する。
まず、リアルタイム変更を行う場合の処理の具体例のうちの一例について説明する。以下の説明においては、検出部54が、検出対象領域の状態として、加熱前の粉末材料Pの状態を求めた場合と、溶融の状態を求めた場合とを例に挙げる。
まず、リアルタイム変更時の処理として、検出部54が、検出対象領域の状態として、レーザ光の照射により加熱される前の溶融が始まっていない粉末材料P(すなわち溶融池MPの近傍)の温度に関する情報を求め、演算部56がエネルギー密度EDの値を所望の範囲に保つように変更情報を生成する場合を例に挙げる。なお、演算部56は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に保つように変更情報を生成するものに限定されず、パワー密度PDの値、エネルギー密度EDの値および温度分布T(r)の値のうちの少なくとも1つを所望の範囲に保つように変更情報を生成してよい。
【0186】
図10に示すフローチャートの各処理は、演算装置50の記憶部58に記憶され、演算装置50により読み出されて、実行される。
ステップS31では、材料制御部51は、設定された造形条件にて材料層形成部20に材料層を形成させてステップS32へ進む。ステップS32では、造形制御部52は、設定された造形条件にて造形部30に固化層の造形を行わせる。演算装置50は、照射部32によるレーザ光の照射が開始されると、撮像装置41に材料層の表面の検出対象領域の撮像を行わせる。検出部54は、撮像装置41の撮像により生成された画像データに基づいて、温度画像データを生成し、温度画像データから溶融前の材料層における粉末材料Pの温度を求める。また、検出部54は、レーザ光を走査する経路に隣接する凝固領域BEの温度を求めてもよい。
【0187】
ステップS33では、判定部57は、検出部54により求められた材料層の粉末材料Pの温度が、予め定められた第1の基準範囲を満たすか否かを判定する。第1の基準範囲は、エネルギー密度EDが上述した所望の範囲に保たれるための材料層(粉末材料P)の温度の範囲である。この第1の基準範囲(粉末材料Pの温度の範囲)は、例えば、ユーザによる各種の試験やシミュレーションなどによって求められた粉末材料Pの温度とエネルギー密度EDとの相関関係に基づいて設定される。この第1の基準範囲は、記憶部58に予め記憶され、判定部57は、この第1の基準範囲を読み出して、ステップS33や後述のステップS34の判定処理に使用する。
【0188】
なお、第1の基準範囲となる温度の範囲は、例えば、粉末材料Pがアルミの場合、常温の場合には20℃±5℃の範囲、予熱する場合には200℃±10℃の範囲とすることができる。材料層の温度が第1の基準範囲を満たさないと判定部57により判定された場合には、処理はステップS34へ進み、材料層の温度が第1の基準範囲を満たすと判定部57により判定された場合には、処理は後述するステップS37へ進む。換言すると、判定部57は、ステップS33において、変更情報の生成の要否を判定する。
なお、上記の第1の基準範囲は、エネルギー密度EDに限られず、パワー密度PDや温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるように設定されてもよい。
【0189】
ステップS34では、判定部57は、材料層の温度が第1の基準範囲よりも高いか、第1の基準範囲よりも低いかを判定する。材料層の温度が第1の基準範囲よりも高いと判定部57により判定された場合には、処理はステップS35へ進み、材料層の温度が第1の基準範囲よりも低いと判定部57により判定された場合には、処理はステップS36へ進む。
なお、検出部54が隣接する凝固領域BEの温度を求めた場合には、判定部57は、隣接する凝固領域BEの熱の影響を受けた場合に、エネルギー密度ED、パワー密度PDおよび温度分布T(r)の少なくとも1つが所望の範囲に保たれるための材料層の温度の範囲として設定された第1の基準範囲との比較を行う。
【0190】
ステップS35では、演算部56は、エネルギー密度EDを所望の範囲に含めるために、エネルギー密度EDの値を下げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。エネルギー密度EDを下げるのは次の理由による。材料層の温度が第1の基準範囲よりも高いため、粉末材料Pにレーザ光が照射されると、少ない熱量であっても粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)まで上昇する。このため、粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが過剰になることが予測されるからである。
エネルギー密度EDの値を下げ粉末材料Pが吸収するエネルギーを低下させるためには、照射部32からのレーザ光の出力を下げることにより、粉末材料Pが吸収するエネルギーを減少させることが考えられる。また、不活性ガスの流量を増加し、不活性ガスの流速を上昇させて、材料層の表面を冷却して粉末材料Pの温度を下げることにより、レーザ光の照射による粉末材料Pの加熱の効果を低減させることも考えられる。また、走査部33によるレーザ光の走査速度を上げることにより、レーザ光が材料層上の同一位置を照射する時間を短くし、粉末材料Pが吸収するエネルギーを減少させることも考えられる。
【0191】
上記の考え方により、演算部56は、エネルギー密度EDの値を下げるため、例えば、パラメータP、Pを下げ、パラメータvを上げることのうち少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、演算部56は、以下の示す造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。パラメータPに関連する造形条件の変更は、レーザ出力を下げることである。パラメータPに関連する造形条件の変更は、不活性ガスの流量の増加および流速の上昇である。パラメータvに関連する造形条件の変更は、走査速度を上げることである。
【0192】
この場合、演算部56は、検出部54により求められた材料層の温度と第1の基準範囲内の任意の値(例えば、最大値や中央値)との差に基づいてエネルギー密度EDの値を減少させる量(減少量)を算出する。この場合、エネルギー密度EDの減少量、および、材料層の温度と第1の基準範囲内の任意の値(例えば、最大値や中央値)との差が関連付けされたデータは記憶部58に予め記憶され、演算部56は、このデータを参照してエネルギー密度EDの値の減少量を算出する。演算部56は、エネルギー密度EDの減少量に基づいて、(2)式から各パラメータP、P、vの新たな値を算出する。演算部56は、予め記憶部58に記憶された、各パラメータの値と各造形条件の値とが関連付けされたデータを参照して、算出した新たなパラメータの値に対応する各造形条件の値を算出し、その造形条件の値を変更情報として生成する。なお、上述したように、演算部56は、新たな造形条件の値と、現在の造形条件の値との差である補正値を変更情報として生成し、出力部55はこの補正値を状態情報として設定部59に出力してもよい。
【0193】
出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として、設定部59(造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32と走査部33の少なくとも1つに、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射することである。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動することである。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS32へ戻る。
【0194】
ステップS36では、演算部56は、エネルギー密度EDの値を上げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。エネルギー密度EDの値を上げるのは次の理由による。材料層の温度が第1の基準範囲よりも低いため、粉末材料Pにレーザ光が照射された場合、粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)まで上昇するために多くの熱量が必要となる。このため、粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが不足することが予測されるからである。
【0195】
この場合、上述したステップS35での考え方とは逆の考え方により、演算部56は、エネルギー密度EDの値を上げるように造形条件を変更する。この場合、演算部56は、パラメータP、Pを上げ、パラメータvを下げることの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、演算部56は、以下の示す造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。パラメータPに関連する造形条件の変更は、レーザ出力を上げることである。パラメータPに関連する造形条件の変更は、不活性ガスの流量の減少および流速の低下である。パラメータvに関連する造形条件の変更は、走査速度を下げることである。演算部56は、検出部54により求められた材料層の温度と第1の基準範囲の任意の値(例えば、最小値や中央値)との差に基づいてエネルギー密度EDの値を増加させる量(増加量)を算出する。この場合も、増加量、および材料層の温度と第1の基準範囲の任意の値(例えば、最小値や中央値)との差が関連付けされたデータは記憶部58に予め記憶され、演算部56は、このデータを参照してエネルギー密度EDの値の増加量を算出する。演算部56は、エネルギー密度EDの増加量に基づいて、各パラメータP、P、vの新たな値を算出する。演算部56は、予め記憶部58に記憶された、各パラメータの値と各造形条件の値とが関連付けされたデータを参照して、算出した新たなパラメータの値に対応する各造形条件の値を算出し、その造形条件の値を変更情報として生成する。
【0196】
出力部55は、変更情報を状態情報として設定部59(造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32と走査部33の少なくとも1つに、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射することである。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動することである。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS32へ戻る。なお、この場合も、演算部56は、新たな造形条件の値と、現在の造形条件の値との差である補正値を変更情報として生成し、出力部55はこの補正値を状態情報として設定部59に出力してもよい。
【0197】
材料層の温度が第1の基準範囲を満たす場合に進んだステップS37では、演算装置50は1層の固化層の造形が終了したか否かを判定する。1層の固化層の造形が終了していない場合は、演算装置50はステップS37を否定判定して、処理はステップS32へ戻る。1層の固化層の造形が終了した場合には、演算装置50はステップS37を肯定判定して、処理はステップS38へ進む。ステップS38では、演算装置50は全ての固化層の造形が終了したか否かを判定する。全ての固化層の処理が終了していない場合には、演算装置50はステップS38を否定判定して、処理はステップS31へ進む。全ての固化層の処理が終了した場合には、演算装置50はステップS38を肯定判定して、全ての処理を終了する。
【0198】
なお、上述した説明では、検出部54は、レーザ光の照射による加熱される前の粉末材料Pの温度を求める場合を例に挙げたがこの例に限定されない。たとえば、材料層の粉末材料Pに混在した異物やスパッタSPを求めてもよい。この場合、検出部54は、二色法を用いた温度に関する情報を求めることなく、撮像装置41で撮像した画像データから公知の画像処理方法を利用して、異物やスパッタSPを求めてもよい。この場合、検出部54は、たとえば、予め取得した教師画像を利用して、粉末材料Pの粒子、異物、スパッタSPのサイズや形状の違いに基づいて、撮像装置41で撮像した画像データから粉末材料Pと異物とスパッタSPとを切り分けて求めるようにしてもよい。また、たとえば撮像装置41とは異なる撮像装置で撮像され生成されたカラー画像上で異物やスパッタSPを求めてよい。
以上の処理を行うことにより、粉末材料Pが溶融し凝固する際の基本条件の1つであるエネルギー密度EDを所望の範囲に保ち、粉末材料Pへのエネルギー不足やエネルギー超過による固化層の造形不良の発生を抑制すことができる。
【0199】
次に、リアルタイム変更を行う場合の処理の具体例のうちの一例として、検出部54が、溶融の状態として、溶融池MPとその近傍の温度に関する情報を求め、演算部56がエネルギー密度EDの値を所望の範囲に保つように変更情報を生成する場合を例に挙げる。なお、演算部56は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に保つように変更情報を生成するものに限定されず、パワー密度PDの値、エネルギー密度EDの値および温度分布T(r)の値のうちの少なくとも1つを所望の範囲に保つように変更情報を生成してよい。
【0200】
図11に示すフローチャートの各処理は、演算装置50の記憶部58に記憶され、演算装置50により読み出されて、実行される。
ステップS41およびS42の処理は、図10のフローチャートに示すステップS31およびS32の処理と同様である。ただし、ステップS42では、検出部54は、撮像装置41の撮像により生成された画像データから生成した温度画像データを用いて、溶融池MPとその近傍の温度に関する情報として、溶融池MPの温度分布を求める。図11に示す具体例においては、検出部54は、温度画像データから、溶融池MPのうちの任意の温度の等温線の直径を求める場合を例に挙げる。
【0201】
ステップS43では、判定部57は、検出部54により求められた溶融池MPの温度分布、すなわち溶融池MPの任意の温度の等温線の直径が予め定められた第1の基準範囲を満たすか否かを判定する。第1の基準範囲は、温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるための等温線の直径の範囲である。この第1の基準範囲は、例えば、ユーザによる各種の試験やシミュレーションなどによって求められた溶融池MPの温度分布(任意の温度の等温線の直径)と温度分布T(r)との相関関係に基づいて設定される。この第1の基準範囲は、記憶部58に予め記憶され、判定部57は、この第1の基準範囲を読みだして、ステップS43や後述のステップS44の判定処理に使用する。溶融池MPの等温線の直径が第1の基準範囲を満たさないと判定部57により判定された場合は、処理はステップS44へ進み、等温線の直径が第1の基準範囲を満たすと判定部57により判定された場合は、処理は後述するステップS47へ進む。換言すると、判定部57は、ステップS43において、変更情報の生成の要否を判定する。
なお、上記の第1の基準範囲は、温度分布T(r)に限られず、パワー密度PDやエネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるように設定されてもよい。また、第1の基準範囲となる等温線の直径の範囲は、使用される粉末材料Pの融点と液相線温度との間の温度から融点と固相線温度との間の温度範囲に対応する等温線の直径の範囲であってもよい。
【0202】
ステップS44では、判定部57は、等温線の直径が第1の基準範囲より高いか、第1の基準範囲よりも低いかを判定する。等温線の直径が第1の基準範囲より高いと判定部57により判定された場合には、処理はステップS45へ進み、等温線の直径が第1基準範囲よりも低いと判定部57により判定された場合には、処理はステップS46へ進む。
【0203】
ステップS45では、演算部56は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に含めるために、エネルギー密度EDの値を下げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。エネルギー密度EDの値を下げるのは次の理由による。溶融池MPの等温線の直径が第1の基準範囲よりも大きいということは、溶融池MPが現在設定されている造形条件で得られると見込まれた溶融池MPよりも大きいことを意味する。これにより、材料層の内部の粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが過剰であることが推定できるためである。
【0204】
この場合、演算部56は、図10のステップS35の場合と同様にして、エネルギー密度EDの値を下げるため、パラメータP、Pを下げることと、パラメータvを上げることとの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。すなわち、演算部56は、レーザ出力を下げることと、不活性ガスの流量の増加および流速の上昇と、走査速度を下げること、の少なくとも1つが実行されるように変更情報を生成する。演算部56が変更情報を生成するために行う具体的な処理は、図10で説明したステップS35の場合と同様にして、記憶部58に記憶されたデータを参照しながら行われる。出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として、設定部59(造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32、走査部33の少なくとも1つの、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射することである。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動することである。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS42へ戻る。
【0205】
ステップS46では、演算部56は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に含めるために、エネルギー密度EDの値を上げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。エネルギー密度EDを上げるのは次の理由による。溶融池MP内の等温線の直径が第1の基準範囲よりも小さいということは、溶融池MPが現在設定されている造形条件で得られると見込まれた溶融池MPよりも小さいことを意味する。これにより、材料層の内部の粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが不足していることが推定できるためである。
【0206】
この場合、演算部56は、図10のステップS36の場合と同様にして、エネルギー密度EDを上げるため、パラメータP、Pを上げることと、パラメータvを下げることとの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。すなわち、演算部56は、レーザ出力を上げること、不活性ガスの流量減少および流速の低下と、走査速度を下げること、の少なくとも1つが実行されるように変更情報を生成する。演算部56が変更情報を生成するために行う具体的な処理は、図10で説明したステップS36の場合と同様にして、記憶部58に記憶されたデータを参照しながら行われる。出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として設定部59(造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32、走査部33の少なくとも1つの、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射することである。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動することである。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS42へ戻る。
なお、ステップS45とS46では、演算部56は、新たな造形条件の値と、現在の造形条件の値との差である補正値を変更情報として生成し、出力部55はこの補正値を状態情報として設定部59に出力してもよい。
【0207】
等温線の直径が第1の基準範囲を満たす場合に進んだステップS47、S48の処理は、図10のステップS37、S38の処理と同様である。
以上の処理を行うことにより粉末材料Pが溶融し凝固する際の基本条件が所望の範囲に保たれ、溶融不足または溶融過多による固化層の造形不良の発生を抑制すことができる。
なお、ステップS42において、検出部54が、溶融池MPとその近傍の温度に関する情報として、溶融池MPのXY平面上における長軸と単軸との比や、XY平面における溶融池MPの温度勾配を求めてもよい。この場合にも、エネルギー密度ED、パワー密度PDおよび温度分布T(r)の少なくとも1つが所望の範囲に保たれるための溶融池MPのXY平面上における長軸と短軸の比や、XY平面における溶融池MPの温度勾配を、第1の基準範囲として用いてよい。この場合も、第1の基準範囲は、上述と同様に、ユーザによる各種の試験やシミュレーションの結果に基づいて設定される。
【0208】
溶融池MPの長軸と短軸との比が第1の基準範囲より大きい場合は、粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが過剰となり、溶融池MPが現在設定されている造形条件から想定される溶融池MPよりも大きくなっていることが推定できる。このため、演算部56は、エネルギー密度EDの値が減少するように、ステップS45と同様にして変更情報を生成すればよい。溶融池MPの長軸と短軸との比が第1の基準範囲より小さい場合は、逆の考え方により、演算部56は、ステップS46と同様にして変更情報を生成すればよい。
また、溶融池MPの温度勾配が第1の基準範囲よりも大きい場合は、粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが過剰となり、溶融池MP内での温度変化が激しくなっていることが推定できる。このため、演算部56は、エネルギー密度EDの値が減少するように、ステップS45と同様にして変更情報を生成すればよい。溶融池MPの温度勾配が第1の基準範囲より小さい場合は、逆の考え方により、演算部56はステップS46と同様にして変更情報を生成すればよい。
【0209】
次に、リアルタイム変更を行う場合の処理の具体例のうちの一例として、検出部54がスパッタSPの状態を求め、演算部56がエネルギー密度EDの値を所望の範囲に保つように変更情報を生成する場合を例に挙げる。なお、演算部56は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に保つように変更情報を生成するものに限定されず、パワー密度PDの値、エネルギー密度EDの値および温度分布T(r)の値のうちの少なくとも1つを所望の範囲に保つように変更情報を生成してよい。
【0210】
図12に示すフローチャートの各処理は、演算装置50の記憶部58に記憶され、演算装置50により読み出されて、実行される。
ステップS51およびS52の処理は、図10のフローチャートに示すステップS31およびS32の処理と同様である。ただし、ステップS52では、検出部54は、撮像装置41の撮像により生成された画像データから生成した温度画像データを用いて、図6を用いて説明した方法により、温度画像データからスパッタSPの状態を求める。図12のフローチャートに示す具体例では、検出部54がスパッタSPの状態としてスパッタSPの飛散量を求める場合を例に挙げる。
【0211】
ステップS53では、判定部57は、検出部54により求められたスパッタSPの状態、すなわちスパッタSPの飛散量が第1の基準範囲を満たすか否かを判定する。第1の基準範囲は、エネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるためのスパッタSPの飛散量の範囲である。このスパッタSPの飛散量の範囲は、たとえば、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等によって求められたスパッタSPの飛散量とエネルギー密度EDとの相関関係に基づいて設定される。このスパッタSPの飛散量の範囲(第1の基準範囲)は、記憶部58に予め記憶され、判定部57は、この第1の基準範囲を読み出して、ステップS53や後述のステップS54の判定処理に使用する。スパッタSPの飛散量が第1の基準範囲を満たさないと判定部57により判定された場合は、処理はステップS54へ進み、スパッタSPの飛散量が第1の基準範囲を満たすと判定部57により判定された場合は、処理は後述するステップS57へ進む。換言すると、判定部57は、ステップS53において、変更情報の生成の要否を判定する。
なお、上記の第1の基準範囲は、エネルギー密度EDに限られず、パワー密度PDや温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるように設定されてもよい。
【0212】
ステップS54では、判定部57は、スパッタSPの飛散量が第1の基準範囲より多いか、第1の基準範囲よりも少ないかを判定する。スパッタSPの飛散量が第1の基準範囲より多いと判定部57により判定された場合には、処理はステップS55へ進み、スパッタSPの飛散量が第1の基準範囲よりも少ないと判定部57により判定された場合には、処理はステップS56へ進む。
【0213】
ステップS55では、演算部56は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に含めるために、エネルギー密度EDの値を下げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。エネルギー密度EDの値を下げるのは次の理由による。すなわち、スパッタSPの飛散量が第1の基準範囲よりも多いということは、粉末材料Pに加わる熱量が過大であり、溶融池MPの対流Cが大きいことを意味している。つまり、粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが過剰であることが推定できるためである。
【0214】
この場合、演算部56は、図10のステップS35、図11のステップS45の場合と同様にして、エネルギー密度EDの値を下げるため、パラメータP、Pを下げることと、パラメータvを上げることとの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。すなわち、演算部56は、レーザ出力を下げることと、不活性ガスの流量の増加および流速の上昇と、走査速度を上げること、の少なくとも1つが実行されるように変更情報を生成する。演算部56が変更情報を生成するために行う具体的な処理は、図10で説明した場合と同様にして、記憶部58に記憶されたデータを参照しながら行われる。出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として、設定部59(造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32に、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射させること、走査部33に、変更情報に基づいた新たな傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動させること、との少なくとも1つを行う。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS52へ戻る。
【0215】
ステップS56では、演算部は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に含めるために、エネルギー密度EDの値を上げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。エネルギー密度EDの値を上げるのは次の理由による。すなわち、スパッタSPの飛散量が第1の基準範囲よりも少ないということは、粉末材料Pに加わる熱量が不足し、溶融池MPの対流Cが小さいことを意味している。つまり、粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが不足していることが推定できるためである。
【0216】
この場合、演算部56は、図10のステップS36、図11のステップS46の場合と同様にして、エネルギー密度EDの値を上げるため、パラメータP、Pを上げることと、パラメータvを下げることとの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。すなわち、演算部56は、レーザ出力を上げることと、不活性ガスの流量の減少および流速の低下と、走査速度を下げること、の少なくとも1つが実行されるように変更情報を生成する。演算部56が変更情報を生成するために行う具体的な処理は、図10で説明した場合と同様にして、記憶部58に記憶されたデータを参照しながら行われる。
【0217】
出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つに出力する。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32、走査部33の少なくとも1つの、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射することである。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動することである。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS52へ戻る。
なお、ステップS55とS56では、演算部56は、新たな造形条件の値と、現在の造形条件の値との差である補正値を変更情報として生成し、、出力部55はこの補正値を状態情報として設定部59に出力してもよい。
【0218】
スパッタの飛散量が第1の基準範囲を満たす場合に進んだステップS57、S58の処理は、図10のステップS37、S38の処理と同様である。
以上の処理を行うことにより、溶融中の溶融池MP内部の状態が制御されるので、溶融池MPが凝固することにより造形される固化層の内部欠陥の発生が低減される。
【0219】
なお、ステップS52では、検出部54は、スパッタSPの状態として、図6を用いて説明した方法により、スパッタSPの飛散方向や飛散速度を求めてよい。
検出部54がスパッタSPの飛散方向を求めた場合、第1の基準範囲は、パワー密度PD、エネルギー密度EDおよび温度分布T(r)の少なくとも1つが所望の範囲に保たれるためのスパッタSPの飛散方向の範囲である。このスパッタSPの飛散方向の範囲(第1の基準範囲)は、たとえば、上述のステップS53と同様に、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。判定部57は、キーホールKHを中心としたスパッタSPの飛散方向が一定の方向(たとえばレーザ光の走査方向に対して後方など)に定まらず不規則にばらついている場合に第1の基準範囲を満たさないと判定する。上述したように、スパッタSPの飛散方向が一定の方向に定まらないということは、粉末材料Pが受け取るエネルギーが過剰な状態である。この状態は、キーホールKHが深くなり、溶融池MPの対流Cが激しいことを意味するので、演算部56はエネルギー密度EDの値を小さくするように変更情報を生成する。
【0220】
検出部54がスパッタSPの飛散速度を求めた場合、第1の基準範囲は、パワー密度PD、エネルギー密度EDおよび温度分布T(r)の少なくとも1つが所望の範囲に保たれるためのスパッタSPの飛散速度の範囲である。このスパッタSPの飛散速度の範囲(第1の基準範囲)は、たとえば、上述のステップS53と同様に、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。判定部57は、飛散速度が大きい場合に第1の基準範囲を満たさないと判定する。上述したように、スパッタSPの飛散速度が大きいということは溶融池MPの対流Cが激しいことを意味するので、演算部56はエネルギー密度EDの値を小さくするように変更情報を生成する。
【0221】
また、検出部54は、検出対象領域の状態として、ヒュームFUの状態を求めてもよい。
検出部54が、図7を用いて説明した方法により、ヒュームFUの状態としてヒュームFUの濃度を求める場合を説明する。この場合、第1の基準範囲は、パワー密度PD、エネルギー密度EDおよび温度分布T(r)の少なくとも1つが所望の範囲に保たれるためのヒュームFUの濃度の範囲である。このヒュームFUの濃度の範囲(第1の基準範囲)は、たとえば、上述のステップS33やステップS43やステップS53と同様に、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。判定部57は、濃度が濃いほど第1の基準範囲を満たさないと判定する。上述したように、ヒュームFUの濃度が濃くなるほど、ヒュームFUが過剰に発生しており、粉末材料Pが吸収するエネルギーが過剰なため溶融池MP内の温度が高過ぎることを意味する。したがって、演算部56はエネルギー密度EDの値を小さくするように変更情報を生成する。
【0222】
検出部54が、図7を用いて説明した方法により、ヒュームFUの状態としてヒュームFUの範囲を求める場合を説明する。この場合、第1の基準範囲は、パワー密度PD、エネルギー密度EDおよび温度分布T(r)の少なくとも1つが所望の範囲に保たれるためのヒュームFUの範囲である。このヒュームFUの範囲(第1の基準範囲)は、たとえば、上述のステップS53と同様に、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。判定部57は、ヒュームFUの範囲、すなわち温度画像上での面積が広い場合に第1の基準範囲を満たさないと判定する。上述したように、ヒュームFUの範囲が広いということは、ヒュームFUの発生量が多く、粉末材料Pが吸収するエネルギーが過剰であり、溶融池MP内の温度が高過ぎることを意味する。このため、演算部56はエネルギー密度EDの値を小さくするように変更情報を生成する。
【0223】
なお、上述した図10図11図12に示すフローチャートのステップS35、S36、S45、S46、S55およびS56において、演算部56が、パラメータP、P、vのうちどのパラメータを変更する、あるいは変更しないようにするかについては、三次元造形物の造形に対するユーザの要求によって異なる。たとえば、ユーザが、造形時間が延びることを避けたいと所望している場合には、レーザ光の走査速度が低下しないように、上記のステップS36、S46、S56において、演算部56は、パラメータPの値を変更させて、パラメータvの値を変更しないようにすることができる。一例として、エネルギー密度EDが所望の範囲よりも低い場合では、演算部56は、パラメータvの値を変更せず、演算部56は、パラメータPの値を増加させるように変更情報を生成する。この場合、造形時間は維持されるが、レーザ光の照射によって溶融した粉末材料Pの凝固の過程における温度変化が大きくなるため、固化層の残留応力が大きくなり、造形される三次元造形物の品質は低下する可能性がある。
【0224】
一方、ユーザが、造形される三次元造形物の品質の低下を避けたいと所望している場合には、レーザ光の出力が増加しないように、上記のステップS36、S46、S56において、演算部56は、パラメータvの値を変更させて、パラメータPの値を変更しないようにすることができる。一例として、エネルギー密度EDが所望の範囲よりも低い場合では、演算部56は、パラメータPの値は増加させずに、パラメータvの値を減少させるように変更情報を生成する。この場合、温度変化による固化層の残留応力は増加せず造形される三次元造形物の品質は維持されるが、造形時間は増加する可能性がある。
【0225】
以上のように、エネルギー密度EDを所望の範囲に維持するために変更可能なパラメータの種類は複数あるため、ユーザの指示に基づいて、演算部56で変更するパラメータが決定されてもよい。この場合、演算部56は、変更するパラメータを決定するために、ユーザの所定の指定を受け付けるための情報(以下、指定対象情報と称する)をユーザへ報知する。例えば、演算部56がエネルギー密度EDを所望の範囲に維持するために、変更可能なパラメータ(一例として、パラメータvとパラメータP)を指定対象情報として、演算部56と通信可能に構成された液晶ディスプレイなどの不図示の表示装置に表示させてもよい。そして、ユーザは、マウスなどの不図示の指定装置を用いて、表示装置に表示されたパラメータを指定(一例として、パラメータvを指定)する。演算部56は、エネルギー密度EDを所望の範囲に維持されるように、ユーザによって指定されたパラメータ(一例として、パラメータv)の値を変更する変更情報を生成する。
【0226】
なお、説明の便宜上、図10図12に示すフローチャートに基づいて、パラメータvとパラメータPの2種類のパラメータを指定対象情報として、不図示の表示装置に表示することを例示したが、指定対象情報として、表示装置に表示するパラメータは、パラメータvとパラメータPの2種類のパラメータに限られない。例えば、演算部56は、パラメータvとパラメータPとは異なる他の上述のパラメータP、η、d、Δy、Δz、ρ、k、r、x、α、Tの内、基本条件や詳細条件(後述)を所望の範囲に維持するために変更可能な複数のパラメータを指定対象情報として表示装置に表示してもよい。表示された当該複数のパラメータの内、少なくとも1つがユーザにより指定されると、演算部56は、基本条件や詳細条件(後述)が所望の範囲に維持されるように、ユーザによって指定されたパラメータの値を変更する変更情報を生成する。
【0227】
また、演算部56が不図示の表示装置に表示する指定対象情報はパラメータに限られない。例えば、演算部56は、上述の各造形条件の内、基本条件や詳細条件(後述)を所望の範囲に維持するために変更可能な複数の造形条件を指定対象情報として表示装置に表示してもよい。
また、変更するパラメータや造形条件によって、三次元造形物の造形時間や品質に影響が生じることから、上述のように変更するパラメータや造形条件をユーザが指定することに限られず、三次元造形物の造形時間を重視(維持)することと、三次元造形物の品質を重視(維持)することをユーザが選択するようにしてもよい。この場合、一例として、演算部56は、時間重視と品質重視のそれぞれに関する項目を指定対象情報として、不図示の表示装置に表示する。ユーザは、マウスなどの不図示の指定装置を用いて、表示装置に表示された時間重視と品質重視のそれぞれに関する項目の一方を指定する。演算部56は、基本条件や詳細条件(後述)が所望の範囲に維持されるように、ユーザによって指定された項目に応じたパラメータや造形条件の値を変更する変更情報を生成する。例えば、エネルギー密度EDが所望の範囲よりも低い場合、時間重視に関する項目がユーザにより指定されれば、演算部56は、パラメータvの値を変更せず、パラメータPの値を変更させるように変更情報を生成する。一方、品質重視に関する項目がユーザにより指定されれば、演算部56は、パラメータPの値は変更せず、パラメータvの値を変更させるように変更情報を生成する。
【0228】
なお、時間重視、品質重視の他、造形時間と品質のバランスを重視した、バランス重視に関する項目を時間重視と品質重視の項目の少なくとも1つの項目と共に、指定対象情報として、不図示の表示装置に表示してもよい。例えば、エネルギー密度EDが所望の範囲よりも低い場合、バランス重視に関する項目がユーザにより指定されれば、演算部56は、パラメータvとパラメータPの値を両方の値を変更させるように変更情報を生成する。
なお、時間重視や品質重視やバランス重視に関するそれぞれの項目の表示装置における表示形態は、ユーザが識別できれば文字例やアイコンなど既存のいずれの形態であってもよい。
なお、不図示の表示装置は、液晶ディスプレイでなくてもよく、有機ELディスプレイやヘッドマウントディスプレイなどの既存の表示デバイスであってもよい。また、不図示の指定装置は、マウスでなくてもよく、タッチパネルなどの既存のデバイスであってもよい。
なお、指定対象情報をユーザへ報知する方法は、表示装置の表示に限られない。例えば、不図示のスピーカとマイクを用い、演算部56は、スピーカ(音声)で指定対象情報をユーザへ報知し、ユーザからの指定をマイク(音声)で受け付けてもよいし、他の既存の方法であってもよい。
また、ステップS35、S36、S45、S46、S55およびS56において、演算部56は、上述したパラメータP、P、v以外にもエネルギー密度EDに影響があり、リアルタイム変更時に変更可能な造形条件の変更情報を生成してもよい。たとえば、演算部56は、照射部32のレーザ光の発振モードやレーザ光の強度分布やレーザ光のスポットサイズ、走査部33によるレーザ光の走査経路や走査ピッチについて変更情報を生成してよい。
【0229】
次に、次層造形時変更を行う場合の処理の具体例のうちの一例について説明する。以下の説明においては、検出部54が、検出対象領域の状態として、溶融の状態を求めた場合と、スパッタSPの状態を求めた場合とに分けて説明する。
まず、次層造形時変更のときの処理として、以下の場合を例に挙げる、検出部54は、固化層の造形中に、溶融の状態として、溶融池MPとその近傍の温度に関する情報を求める。演算部56は、固化層の造形中に検出部54により求められた温度に関する情報に基づいて、当該固化層の上部に新たに固化層を造形するときのエネルギー密度EDの値を所望の範囲に保つように変更情報を生成する。なお、演算部56は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に保つように変更情報を生成するものに限定されず、パワー密度PDの値、エネルギー密度EDの値および温度分布T(r)の値のうちの少なくとも1つを所望の範囲に保つように変更情報を生成してよい。
【0230】
図13図14に示すフローチャートの各処理は、演算装置50の記憶部58に記憶され、演算装置50により読み出されて、実行される。
ステップS61では、造形制御部52は、設定された造形条件にて造形部30に固化層の造形を行わせる。演算装置50は、固化層の造形を行っている最中に、撮像装置41に材料層の表面の検出対象領域の撮像を、たとえば所定の時間間隔ごとや、レーザ光が走査部33によりXY平面上で所定の距離だけ走査されるごとに行わせる。検出部54は、撮像装置41からの画像データが出力されるごとに温度画像データを生成し、生成された温度画像データごとに、溶融池MPとその近傍の温度に関する情報を求め、記憶部58に記憶する。図13図14のフローチャートに示す具体例では、検出部54が、溶融池MPとその近傍の温度に関する情報として、溶融池MPの平均温度を求める場合を例に挙げる。検出部54は、温度画像データのうちの第1所定温度以上の高温領域を溶融池MPに対応する画像上の領域として求め、画像上の高温領域内の任意の点の温度を求めし、求めた温度の平均を算出することにより、溶融池MPの平均温度を求める。
なお、検出部54は、固化層の造形時には温度画像データの生成および記憶部58への記憶を行い、1層の固化層の造形が終了した後、記憶部58に記憶された複数の温度画像データのそれぞれから溶融池MPの平均温度を求めてよい。
【0231】
ステップS62では、演算装置50は、1層の固化層の造形が終了したか否かを判定する。1層の固化層の造形が終了した場合は、演算装置50はステップS62を肯定判定して、処理はステップS63へ進む。1層の固化層の造形が終了していない場合には、演算装置50はステップS62を否定判定して、処理はステップS61へ戻る。
【0232】
ステップS63では、判定部57は、検出部54により求められた溶融池MPの温度分布、すなわち溶融池MPの平均温度が、予め定められた第2の基準範囲を満たすか否かを判定する。第2の基準範囲は、エネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるための溶融池MPの平均温度の範囲である。この第2の基準範囲(溶融池MPの平均温度の範囲)は、例えば、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等の結果によって求められた溶融池MPの平均温度とエネルギー密度EDとの相関関係に基づいて設定される。第2の基準範囲は、記憶部58に予め記憶され、判定部57は、この第2の基準範囲を読み出して、ステップS63や後述のステップS65の判定処理に使用する。溶融池MPの平均温度が第2の基準範囲を満たさないと判定部57により判定された場合には、処理はステップS64へ進み、溶融池MPの平均温度が第2の基準範囲を満たすと判定部57により判定された場合には、処理は後述するステップS71へ進む。換言すると、判定部57は、ステップS63において、変更情報の生成の要否を判定する。
なお、上記の第2の基準範囲は、エネルギー密度EDに限られず、パワー密度PDや温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるように設定されてもよい。また、第2の基準範囲である平均温度の範囲は、使用される粉末材料Pの融点と液相線温度との間の温度から融点と固相線温度との間の温度範囲であってもよい。
【0233】
ステップS64では、判定部57は、検出部54により求められた溶融池MPの平均温度が第3の基準範囲を満たすか否かを判定する。第3の基準範囲は、造形条件を変更した場合にエネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるための溶融池MPの平均温度の範囲である。第3の基準範囲の最大値は第2の基準範囲の最大値よりも大きく、第3の基準範囲の最小値は第2の基準範囲の最小値よりも小さい。なお、第3の基準範囲は、最大値の近傍の値と最小値の近傍の値との範囲でもよい。溶融池MPの平均温度が第3の基準範囲を満たす場合、すなわち造形条件の変更によりエネルギー密度EDが所望の範囲に保たれる(すなわち造形不良の発生を抑制可能)と判定部57によって判定された場合には、処理はステップS65へ進む。溶融池MPの平均温度が第3の基準範囲を満たさない場合、すなわち造形条件の変更によってはエネルギー密度EDが所望の範囲に保たれない(すなわち、造形不良の発生を抑制不可能)と判定部57により判定された場合には、処理は後述するステップS68へ進む。
なお、上記の第3の基準範囲は、造形条件を変更した場合に、エネルギー密度EDに限られず、パワー密度PDや温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるように設定されてもよい。また、第3の基準範囲である平均温度の範囲は、使用される粉末材料Pの融点と液相線温度との間の温度から融点と固相線温度との間の温度範囲であってもよい。なお、第3の基準範囲は、予め記憶部58に記憶されている。
【0234】
ステップS65では、判定部57は、溶融池MPの平均温度が第2の基準範囲より高いか、第2の基準範囲よりも低いかを判定する。溶融池MPの平均温度が第2の基準範囲より高い場合、すなわち粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDは過剰であるが、造形条件の変更によりエネルギー密度EDの値を所望の範囲にすることが可能と判定部57により判定された場合には、処理はステップS66へ進む。溶融池MPの平均温度が第2の基準範囲よりも低い場合、すなわち粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDは不足しているが、造形条件の変更によりエネルギー密度EDの値を所望の範囲にすることが可能と判定部57により判定された場合には、処理はステップS67へ進む。
【0235】
ステップS66では、演算部56は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に含めるために、エネルギー密度EDの値を下げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。エネルギー密度EDの値を下げるのは次の理由による。溶融池MPの平均温度が第2の基準範囲よりも大きいということは、溶融池MPへの熱量が現在設定されている造形条件で得られると見込まれた熱量よりも多く、溶融池MPの温度が高過ぎることを意味する。このため、粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが過剰であることが推定される。
【0236】
エネルギー密度EDの値を下げ粉末材料Pへの熱量を低下させるためには、照射部32からのレーザ光の出力を下げることにより粉末材料Pが受け取るエネルギーを減少させることが考えられる。また、不活性ガスの流量の増加および流速の上昇と、材料層の表面を冷やして粉末材料Pの温度を下げることにより、レーザ光の照射による粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)に上昇するまでに必要な熱量が多くなるようにすることもが考えられる。
【0237】
また、粉末材料Pにレーザ光を照射させる前の温度が想定した温度よりも高温のため、粉末材料Pの温度が所望の温度に上昇するまでに必要な熱量が少なくなっている可能性がある。この場合、ベースプレート311の温度を下げることにより、レーザ光が照射される前の粉末材料Pの温度を下げたり、固化層上に材料層を形成するまでの時間を長くして、固化層を不活性ガスにより冷却させることの少なくとも1つにより、粉末材料Pへの造形された固化層からの熱の影響が少なくなるようにすることも考えられる。さらには、固化層上に形成された材料層のZ方向の厚さが薄いため、固化層の熱が材料層の上部(Z方向+側)に伝導しやすくなっているとも考えられる。このような場合には、材料層の厚さを厚く(すなわち積層厚を大きく)して熱容量を上げることにより、既に造形された固化層の熱が材料層の上部にまで伝導されにくくすることも考えられる。
【0238】
また、レーザ光を走査させるときの走査距離が長いため、材料層がレーザ光の照射により加熱される時間が長くなることにより温度が上昇している可能性がある。このため、レーザ光を走査させるときの走査距離が短くなるように走査経路が設定されることにより、材料層がレーザ光の照射に曝され、熱の影響を受ける時間が短縮されるようにすることも考えられる。また、走査部33によるレーザ光の走査速度を上げることにより、レーザ光が材料層上の同一位置を照射する時間を短くし、単位時間当たりに粉末材料Pが吸収するエネルギーの量を小さくさせることも考えられる。また、レーザ光のスポットサイズが小さく、材料層の狭い範囲に熱量が集中し、単位面積当たりの材料層のエネルギーの量が大きい可能性があるので、スポットサイズを大きくし、レーザ光により発生する熱が材料層の狭い範囲に集中することが抑制されるようにすることも考えられる。
【0239】
また、走査ピッチが小さいため、既に凝固した凝固領域BEから溶融池MPに伝導される熱による影響が大きい可能性があるので、走査ピッチを広げ、既に凝固した凝固領域BEから伝導される熱による影響を抑制することも考えられる。また、材料層の密度が高い場合にはレーザ光の照射により発生した熱が材料層内を伝導しやすくなる可能性があるので、ブレード221により粉末材料Pに加える圧力を下げて密度を下げることにより、熱が材料層を伝導しにくくすることも考えられる。
【0240】
上記の考え方により、次層の固化層の造形時のエネルギー密度EDを現状よりも下げるために、演算部56は、パラメータP、P、ρを下げ、パラメータv、Δy、Δzを上げる、のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、演算部56は、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。パラメータPに関連する造形条件の変更は、レーザ出力を下げることである。パラメータPに関連する造形条件の変更は、不活性ガスの流量を増加および流速を上昇させ、ヒーター313の出力を下げてベースプレート311の温度を下げ、ブレード221の待機時間を延ばし、走査経路を変更することの少なくとも1つである。パラメータρに関連する造形条件の変更は、ブレード221が材料層に加える圧力を下げることである。パラメータvに関連する造形条件の変更は、走査速度を上げることである。パラメータΔyに関連する造形条件の変更は、レーザ光のスポットサイズを上げ、走査ピッチを大きくすること、の少なくとも1つである。パラメータΔzに関連する造形条件の変更は、積層厚を上げることである。
【0241】
演算部56は、上述した図10図11図12にて説明した場合と同様に、予め記憶部58に記憶された、パラメータの値と造形条件の値とが関連付けされたデータを参照して、変更情報を生成する。出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として、設定部59(材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。材料制御部51が変更情報を入力した場合には、材料制御部51は、リコーター22に、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合のリコーター22の動作は、変更情報に基づいた新たな待機時間の経過後にブレード221を移動させること、変更情報に基づいた新たな圧力にてブレード221を移動させること、を含む。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32、走査部33およびヒーター313の少なくとも1つに、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射すること、フォーカスレンズ323を変更情報に基づいた新たなX方向の位置に移動すること、を含む。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度または傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動することである。ヒーター313の動作は、変更情報に基づいた新たな加熱出力で動作することである。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS61へ戻る。
【0242】
ステップS67では、演算部56は、エネルギー密度EDの値を所望の範囲に含めるために、エネルギー密度EDの値を上げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。エネルギー密度ED値を上げるのは次の理由による。溶融池MPの平均温度が第2の基準範囲よりも小さいということは、溶融池MPへの熱量が現在設定されている造形条件で得られると見込まれた熱量のよりも少なく、溶融池MPの温度が低すぎることを意味する。このため、粉末材料Pが吸収するエネルギーのエネルギー密度EDが不足していることが推定される。
【0243】
この場合、演算部56は、上述したステップS66の考え方とは逆の考え方によりエネルギー密度EDの値を上げるように変更情報を生成する。演算部56は、パラメータP、P、ρを上げ、パラメータv、Δy、Δzを下げる、の少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、演算部56は、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。パラメータPに関連する造形条件の変更は、レーザ出力を上げることである。パラメータPに関連する造形条件の変更は、不活性ガスの流量を減少および流速を低下させ、ヒーター313の出力を上げてベースプレート311の温度を上げ、ブレード221の待機時間を短縮し、走査経路を変更すること、のうちの少なくとも1つである。パラメータρに関連する造形条件の変更は、ブレード221が材料層に加える圧力を上げることである。パラメータvに関連する造形条件の変更は、走査速度を下げることである。パラメータΔyに関連する造形条件の変更は、レーザ光のスポットサイズを下げ、走査ピッチを下げること、のうちの少なくとも1つである。パラメータΔzに関連する造形条件の変更は、積層厚を下げることである。
【0244】
演算部56は、上述した図10図11図12にて説明した場合と同様に、予め記憶部58に記憶された、パラメータの値と造形条件の値とが関連付けされたデータを参照して変更情報を生成する。出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として、設定部59(材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。材料制御部51が変更情報を入力した場合には、材料制御部51は、リコーター22に、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合のリコーター22の動作は、変更情報に基づいた新たな待機時間の経過後にブレード221を移動させること、変更情報に基づいた新たな圧力にてブレード221を移動させること、を含む。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32、走査部33およびヒーター313の少なくとも1つに、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射すること、フォーカスレンズ323を変更情報に基づいた新たなX方向の位置に移動すること、を含む。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度または傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動することである。ヒーター313の動作は、変更情報に基づいた新たな加熱出力で動作することである。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS61へ戻る。
なお、ステップS66とS67では、演算部56は、新たな造形条件の値と、現在の造形条件の値との差の値を変更情報として生成してもよい。
【0245】
図14に示すステップS68では、判定部57は、溶融池MPの平均温度が第4の基準範囲を満たすか否かを判定する。第4の基準範囲は、造形された固化層に所定の補修を行うことにより、エネルギー密度EDを所望の範囲に保つことが可能となる溶融池MPの平均温度の範囲である。換言すると、判定部57は、ステップS68にて固化層の補修の要否を判定する。第4の基準範囲の最大値は、第3の基準範囲の最大値よりも所定の割合だけ大きな値である。第4の基準範囲の最小値は、第3の基準範囲の最小値よりも所定の割合だけ小さな値である。なお、第4の基準範囲は最大値の近傍値と最小値の近傍値との間の範囲でもよい。溶融池MPの平均温度が第4の基準範囲を満たす場合、すなわち造形された固化層を補修することによりエネルギー密度EDの値を所望の範囲にすることができると判定部57が判定した場合には、処理はステップS69へ進む。この場合、溶融池MPの平均温度が第3の基準範囲を満たしている場合には、判定部57は、変更情報の生成が必要と判定し、第3の基準範囲を満たしていない場合には、判定部57は、固化層の補修が必要と判定する、と換言することができる。
【0246】
溶融池MPの平均温度が第4の基準範囲を満たさない場合、すなわち造形された固化層を補修してもエネルギー密度EDを所望の範囲にすることができないと判定部57が判定した場合には、処理はステップS70へ進む。
なお、上記の第4の基準範囲は、造形された固化層に補修を行った場合に、エネルギー密度EDに限られず、パワー密度PDや温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるように設定されてもよい。また、第4の基準範囲である平均温度の範囲は、使用される粉末材料Pの融点と液相線温度との間の温度から融点と固相線温度との間の温度範囲であってもよい。なお、第4の基準範囲は予め記憶部58に記憶されている。
【0247】
ステップS69では、演算部56は、補修処理を行うための補修情報を生成する。造形装置1は、補修処理として、たとえば、造形された固化層に再度レーザ光を照射して溶融、凝固させるリメルト処理を行う。この場合、演算部56は、温度データ画像から求められた溶融池MPの平均温度と、第2の基準範囲内の任意の値(例えば、中央値)との差に基づいて、照射部32がレーザ光を照射するための造形条件、すなわちレーザ出力や、ビーム品質や、発振モードや、レーザ光の波長や、レーザ光の偏光状態や、レーザ光の強度分布や、レーザ光のスポットサイズの値を補修情報として生成する。なお、溶融池MPの平均温度と第2の基準範囲内の任意の値(例えば、中央値)との差、および照射部32がレーザ光を照射するための造形条件の値とは、関連付けされたデータとして記憶部58に予め記憶される。演算部56は、このデータを参照して補修情報を生成する。出力部55は、演算部56が生成した補修情報を造形制御部52に出力する。造形制御部52は、照射部32に、補修情報に基づいてレーザ光を出力させて、補修処理を行わせる。その後、処理は図13のステップS61へ戻る。
【0248】
ステップS70では、演算装置50は、以降の三次元造形物の造形を停止させて処理を終了する。この場合、判定部57は、ステップS68にて溶融池MPの平均温度が第4の基準範囲を満たしている場合には、固化層の補修が必要と判定し、溶融池MPの平均温度が第4の基準範囲を満たしていない場合には、造形停止が必要と判定した、と言うこともできる。
溶融池MPの平均温度が第2の基準範囲を満たす場合に進んだステップS71の処理は、図10のステップS38の処理と同様である。
以上の処理を行うことにより、次層の固化層を造形する場合にも、粉末材料Pが溶融し凝固する際の基本条件が確保され、溶融不足または溶融過多による固化層の造形不良の発生が抑制されるとともに、造形した固化層に造形不良が発生した場合には造形不良が補修される。
【0249】
なお、上述した図13に示すフローチャートのステップS66、S67において、演算部56が、パラメータP、P、ρ、v、Δy、Δzのうちのどのパラメータを変更する、あるいは変更しないようにするかについては、三次元造形物の造形に対するユーザの要求によって異ならせる。たとえば、ユーザが、造形時間が延びることを避けたいと所望している場合には、レーザ光の走査速度が低下しないように、上記のステップS67において、演算部56は、パラメータvの値を変更しないようにすることができる。
また、ステップS66、67において、演算部56は、上述した造形条件以外にもエネルギー密度EDに影響があり、次層造形時変更のときに変更可能な造形条件の変更情報を生成してもよい。たとえば、演算部56は、照射部32のレーザ光の発振モードやレーザ光の強度分布や、ブレード221の移動速度、粉末材料Pの吸湿度について変更情報を生成してよい。
なお、上述と同様に、演算部56は、変更情報を生成するパラメータや造形条件を決定するために、指定対象情報をユーザに報知し、ユーザによる指定を受け付けてもよい。
【0250】
次に、次層造形時変更のときの処理として、以下の場合を例に挙げる。検出部54は、固化層の造形中に、溶融の状態として、溶融池MPとその近傍の温度に関する情報を求める。演算部56は、固化層の造形中に検出部54により求められた温度に関する情報に基づいて、当該固化層の上部に新たに固化層を造形するときの温度分布T(r)の値を所望の範囲に保つように変更情報を生成する。なお、演算部56は、温度分布T(r)の値を所望の範囲に保つように変更情報を生成するものに限定されず、パワー密度PDの値、エネルギー密度EDの値および温度分布T(r)の値のうちの少なくとも1つを所望の範囲に保つように変更情報を生成してよい。
【0251】
図15図16に示すフローチャートの各処理は、演算装置50の記憶部58に記憶され、演算装置50により読み出されて、実行される。
ステップS81、S82の処理は、図13に示すフローチャートのステップS61、S62の処理と同様である。ただし、検出部54は、上述した温度履歴を用いて、溶融池MPとその近傍の温度に関する情報として、材料層中の所定箇所における温度の時間変化である温度勾配を求める。この場合、検出部54は、上述したようにして温度履歴を求めることにより、材料層中の同一箇所における溶融前の温度と、溶融中の温度とを求める。そして、検出部54は、温度履歴の検出に用いた画像データの時間情報に基づいて、溶融前の温度から溶融中の温度に変化したときの温度の時間変化を算出する。検出部54は、この時間変化を温度勾配として求める。
また、検出部54は、固化層の造形時には温度画像データの生成および記憶部58への記憶を行い、1層の固化層の造形が終了した後、記憶部58に記憶された複数の温度画像データのそれぞれから溶融池MPの温度勾配を求めてよい。
【0252】
ステップS83では、判定部57は、検出部54により求められた溶融池MPの温度勾配が、予め定められた第2の基準範囲を満たすか否かを判定する。第2の基準範囲は、温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるための溶融池MPの温度勾配の範囲であり、例えば、上述のステップS63と同様に、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。温度勾配が第2の基準範囲を満たさないと判定部57により判定された場合はステップS84へ進み、温度勾配が第2の基準範囲を満たすと判定部57により判定された場合には後述するステップS91へ進む。換言すると、判定部57は、ステップS83において、変更情報の生成の要否を判定する。
なお、上記の第2の基準範囲は、温度分布T(r)に限られず、パワー密度PDやエネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるように設定されてもよい。また、第2の基準範囲である温度勾配の範囲は、使用される粉末材料Pの融点と液相線温度との間の温度勾配から融点と固相線温度との間の温度勾配の範囲であってもよい。
【0253】
ステップS84では、判定部57は、検出部54により求められた温度勾配が第3の基準範囲を満たすか否かを判定する。第3の基準範囲は、造形条件を変更した場合に温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるための溶融池MPの温度勾配の範囲である。第3の基準範囲の最大値は第2の基準範囲の最大値よりも大きく、第3の基準範囲の最小値は第2の基準範囲の最小値よりも小さい。なお、第3の基準範囲は、最大値の近傍値と最小値の近傍値との範囲でもよい。温度勾配が第3の基準範囲を満たす場合、すなわち造形条件の変更により温度分布T(r)が所望の範囲に保たれる(すなわち造形不良の発生を抑制可能)と判定部57により判定された場合には、処理はステップS85へ進む。温度勾配が第3の基準範囲を満たさない場合、すなわち造形条件の変更によっては温度分布T(r)が所望の範囲に保たれない(すなわち、造形不良の発生を抑制不可能)と判定部57に判定された場合には、処理は後述するステップS88へ進む。
なお、上記の第3の基準範囲は、造形条件を変更した場合に、温度分布T(r)に限られず、パワー密度PDやエネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるように設定されてもよい。また、第3の基準範囲である温度勾配の範囲は、使用される粉末材料Pの融点と液相線温度との間の温度勾配から融点と固相線温度との間の温度勾配の範囲であってもよい。なお、第3の基準範囲は予め記憶部58に記憶されている。
【0254】
ステップS85では、判定部57は、温度勾配が第2の基準範囲より大きい(高傾斜)か、第2の基準範囲よりも小さい(低傾斜)かを判定する。温度勾配が第2の基準範囲より大きい場合には、処理はステップS86へ進み、温度勾配が第2の基準範囲よりも小さい場合には、処理はステップS87へ進む。
【0255】
ステップS86では、演算部56は、温度分布T(r)の値を所望の範囲に含めるために、温度分布T(r)の値を下げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。温度分布T(r)の値を下げるのは以下の理由による。温度勾配が第2の基準範囲よりも大きい(高傾斜)ということは、レーザ光に照射された粉末材料Pに流入する熱量が過大であるため、粉末材料Pの温度が急激に増加していることが予測される。あるいは、レーザ光を照射する前の粉末材料Pの温度が低かったにもかかわらず、レーザ光の照射により粉末材料Pに過大な熱量が流入し、粉末材料Pの温度が短時間で所望の温度(たとえば融点)にまで上昇していることが予測される。温度勾配が大きい場合は、粉末材料Pに流入する熱量が過大であることが予測される。このような場合には、上述したように溶融池MP内の対流Cが激しくなり、スパッタSPやヒュームFUの発生等の造形不良の要因が生じていることが考えられる。また、急激に加熱されて造形された固化層が冷却されるときに、残留応力等の造形不良の要因が生じることが考えられる。
温度分布T(r)の値を下げ、粉末材料Pが吸収する熱量を低下させるためには、照射部32からのレーザ光の出力を下げて、粉末材料Pが吸収するエネルギーを減少させることが考えられる。
【0256】
また、上述したように、レーザ光の照射によるエネルギーは、レーザ光の波長と粉末材料Pの種類とに応じて、粉末材料Pへの吸収のされやすさが異なる。温度勾配が高傾斜になったということは、粉末材料Pの種類に対して吸収されやすい波長のレーザ光が照射に使用された可能性があるので、レーザ光の波長を変更することにより、粉末材料Pにエネルギーの吸収をさせ難くすることも考えられる。
【0257】
また、粉末材料Pがレーザ光に照射される前の温度が低いため、レーザ光の照射による上昇後の温度との差が大きくなり温度勾配が高傾斜になっている可能性がある。このため、粉末材料Pがレーザ光に照射される前の温度を上げることにより温度勾配の傾斜をなだらかにすることも考えられる。粉末材料Pがレーザ光に照射される前の温度を上げるため、不活性ガスの流量の減少および流速の低下、ブレード221の待機時間を短くする、の少なくとも1つを行うことにより、造形された固化層が不活性ガスで冷却されるのを抑制し、固化層から粉末材料Pに熱が伝導されやすくすることも考えられる。さらに、ベースプレート311の温度を上げたりすることも考えられる。
また、走査部33によるレーザ光の走査速度を上げることにより、レーザ光が材料層上の同一位置を照射する時間を短くし、レーザ光の照射により粉末材料Pが吸収するエネルギーを減少させることも考えられる。
【0258】
上記の考え方により、演算部56は、次層の固化層の造形時の温度分布T(r)の値を現状よりも下げるため、パラメータP、ηを下げる、パラメータT、vを上げる、のうち少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、演算部56は、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。パラメータPに関連する造形条件の変更は、レーザ出力を下げることである。パラメータηに関連する造形条件の変更は、レーザ波長を粉末材料Pの吸収率に合わせて変更することである。パラメータTに関連する造形条件の変更は、不活性ガスの流量を減少および流速を低下し、ベースプレート311の温度を上げ、ブレード221の待機時間を短縮すること、の少なくとも1つである。パラメータvに関連する造形条件の変更は、走査速度を上げることである。
【0259】
演算部56は、上述した図10図11図12図13にて説明した場合と同様に、予め記憶部58に記憶された、パラメータの値と造形条件の値とが関連付けされたデータを参照して変更情報を生成する。出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として、設定部59(材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。材料制御部51が変更情報を入力した場合には、材料制御部51は、リコーター22に、変更情報に基づいた新たな待機時間の経過後にブレード221を移動させる。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32、走査部33およびヒーター313の少なくとも1つに、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射すること、変更情報に基づいた新たな波長のレーザ光を出射すること、を含む。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動することである。ヒーター313の動作は、変更情報に基づいた新たな加熱出力で動作することである。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS81へ戻る。
【0260】
なお、ステップS86においては、演算部56は、温度分布T(r)の値を下げるように変更条件を生成するものに代えて、ベースプレート311の温度を増加させるように変更情報を生成して、温度勾配を小さくしてもよい。この場合、演算部56は、求められた温度勾配と第2基準範囲内の任意の値(例えば、中央値)との差に基づいて、ベースプレート311のヒーター313の加熱出力の値を算出し、算出した加熱出力の値を変更情報としてよい。
【0261】
ステップS87では、演算部56は、温度分布T(r)の値を所望の範囲に含めるために、温度分布T(r)の値を上げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。温度分布T(r)の値を上げるのは、次の理由による。すなわち、温度勾配が第2基準範囲よりも小さい(低傾斜)ということは、レーザ光に照射された粉末材料Pに流入する熱量が少ないため、粉末材料Pの温度が上昇し難くなっていることが予測される。あるいは、レーザ光を照射する前の粉末材料Pの温度が高かったにもかかわらず、レーザ光の照射により粉末材料Pに流入する熱量が少ないため、粉末材料Pの温度が所望の温度(たとえば融点)にまで長い時間を要したとことが予測される。温度勾配が小さい場合には、粉末材料Pに流入する熱量が過少であるため材料層が溶融不足となり、造形不良が発生するおそれがある。また、温度勾配が小さい場合には、凝固後の固化層の金属組織として所望する金属組織が得られなくなるおそれがある。
【0262】
この場合、上述したステップS86での考え方と逆の考え方により、演算部56は、次層の固化層の造形時の温度分布T(r)の値を現状よりも上げるため、パラメータP、ηを上げ、パラメータT、vを下げ、の少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、演算部56は、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。パラメータPに関連する造形条件の変更は、レーザ出力を上げることである。パラメータηに関連する造形条件の変更は、レーザ波長を粉末材料Pの吸収率に合わせて変更することである。パラメータTに関連する造形条件の変更は、不活性ガスの流量を増加および流速を上昇し、ベースプレート311の温度を下げ、ブレード221の待機時間を延ばすこと、のうちの少なくとも1つである。パラメータvに関連する造形条件の変更は、走査速度を下げることである。
【0263】
演算部56は、予め記憶部58に記憶された、パラメータの値と造形条件の値とが関連付けされたデータを参照して変更情報を生成する。出力部55は、演算部56が生成した変更情報を状態情報として、設定部59(材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53の少なくとも1つ)に出力する。材料制御部51が変更情報を入力した場合には、材料制御部51は、リコーター22に、変更情報に基づいた新たな待機時間の経過後にブレード221を移動させる。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32、走査部33およびヒーター313の少なくとも1つに、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力でレーザ光を出射すること、変更情報に基づいた新たな波長のレーザ光を出射すること、を含む。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度の変更速度でガルバノミラー331、332を駆動することである。ヒーター313の動作は、変更情報に基づいた新たな加熱出力で動作することである。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131や排気装置14を、変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量で動作させる。その後、処理はステップS81へ戻る。
【0264】
なお、ステップS87においては、演算部56は、温度分布T(r)の値を上げるように変更条件を生成するものに代えて、ベースプレート311の温度を低下せるように変更情報を生成して、温度勾配を大きくしてもよい。この場合、演算部56は、求められた温度勾配と第2の基準範囲内の任意の値(例えば、中央値)との差に基づいて、ベースプレート311のヒーター313の加熱出力の値を算出し、算出した加熱出力の値を変更情報としてよい。
なお、ステップS86とS87では、演算部56は、新たな造形条件の値と、現在の造形条件の値との差の値を変更情報として生成してもよい。
【0265】
図16のステップS88では、判定部57は、温度勾配が第4の基準範囲を満たすか否かを判定する。第4の基準範囲は、造形された固化層に所定の補修を行うことにより、温度分布T(r)を所望の範囲に保つことが可能となる溶融池MPの温度勾配の範囲である。換言すると、判定部57は、ステップS88にて固化層の補修の要否を判定する。第4の基準範囲の最大値は、第3の基準範囲の最大値よりも所定の割合だけ大きな値とし、第4の基準範囲の最小値は、第3の基準範囲の最小値よりも所定の割合だけ小さな値として設定される。第4の基準範囲は、第4の基準範囲の最大値の近傍値と最小値の近傍値との間の範囲でもよい。温度勾配が第4の基準範囲を満たす場合、すなわち造形された固化層を補修することにより温度分布T(r)の値を所望の範囲にすることができると判定部57が判定した場合には、処理はステップS89へ進む。この場合、溶融池MPの温度勾配が第3の基準範囲を満たしている場合には、判定部57は、変更情報の生成が必要と判定し、溶融池MPの温度勾配が第3の基準範囲を満たしていない場合には、判定部57は、固化層の補修が必要と判定する、と換言することができる。
【0266】
温度勾配が第4の基準範囲を満たさない場合、すなわち造形された固化層を補修しても温度分布T(r)の値を所望の範囲にすることができないと判定部57が判定した場合には、処理はステップS90へ進む。
なお、上記の第4の基準範囲は、造形された固化層に補修を行った場合に、温度分布T(r)に限られず、パワー密度PDやエネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるように設定されてもよい。また、第4の基準範囲である温度勾配の範囲は、使用される粉末材料Pの融点と液相線温度との間の温度勾配から融点と固相線温度との間の温度勾配の範囲であってもよい。なお、第4の基準範囲は予め記憶部58に記憶されている。
【0267】
ステップS89では、演算部56は、造形された固化層を補修するための補修情報を生成する。固化層の補修として、本実施の形態の造形装置1では、固化層に熱処理を行うことにより、固化層の残留応力を緩和あるいは除去する。熱処理としては、たとえばレーザ光の照射により固化層を加熱して、固化層の残留応力を緩和あるいは除去させるための公知のレーザアニール処理や、固化層に高温と等方的な圧力とを加えて残留応力を緩和あるいは除去させる公知のHIP(熱間等方加圧)処理や、ベースプレート311の温度を上げて固化層を加熱する処理や、ヒーター等の外部熱源により固化層を加熱する処理がある。熱処理としてレーザアニール処理を行う場合は、演算部56は、検出部54により求められた温度勾配と第2の基準範囲内の任意の値(例えば、中央値)との差に基づいて、照射部32がレーザ光を照射するための造形条件、すなわちレーザ出力や、ビーム品質や、発振モードや、レーザ光の波長や、レーザ光の偏光状態や、レーザ光の強度分布や、レーザ光のスポットサイズの値を補修情報として生成する。なお、温度勾配と第2の基準範囲内の任意の値(例えば、中央値)との差と、熱処理をする際の照射部32に関する造形条件の値とは関連付けされて記憶部58に予め記憶され、演算部56は、このメモリを参照して補修情報を生成する。出力部55は、演算部56が生成した補修情報を造形制御部52に出力する。造形制御部52は、照射部32に、補修情報に基づいてレーザ光を出力させて、補修処理を行わせる。その後、処理はステップS81へ戻る。
【0268】
ステップS90では、演算装置50は、以降の三次元造形物の造形を停止させて処理を終了する。この場合、判定部57は、ステップS88にて溶融池MPの平均温度が第4の基準範囲を満たしている場合には固化層への補修が必要と判定し、溶融池MPの平均温度が第4の基準範囲を満たしていない場合には、造形停止が必要と判定した、と言うこともできる。
溶融池MPの平均温度が第2の基準範囲を満たす場合に進んだステップS91の処理は、図10のステップS38の処理と同様である。
以上の処理を行うことにより、造形される固化層に造形不良が発生することが抑制されるとともに、造形された固化層の内部に残留応力等が発生した場合には残留応力を緩和させることができるので、造形される三次元造形物にひずみが発生し形状異常等の造形不良の発生が抑制される。
【0269】
なお、上述した図15に示すフローチャートのステップS86、87において、演算部56が、パラメータP、η、T、vのうちのどのパラメータを変更する、あるいは変更しないようにするかについては、三次元造形物の造形に対するユーザの要求によって異ならせることができる。たとえば、ユーザが、造形時間が延びることを避けたいと所望している場合には、レーザ光の走査速度が低下しないように、上記のステップS87において演算部56は、パラメータvの値を変更しないようにすることができる。
また、ステップS86、87において、演算部56は、上述した造形条件以外にも温度分布T(r)の値に影響があり、次層造形時変更のときに変更可能な造形条件の変更情報を生成してもよい。たとえば、演算部56は、照射部32のレーザ光の発振モードやレーザ光の強度分布やレーザ光のスポットサイズ、走査部33による走査ピッチや走査経路、筐体10内の温度、ブレード221の移動速度や粉末材料Pに加える圧力、粉末材料Pの吸湿度について変更情報を生成してよい。
なお、上述と同様に、演算部56は、変更情報を生成するパラメータや造形条件を決定するために、指定対象情報をユーザに報知し、ユーザによる指定を受け付けてもよい。
【0270】
また、図13図15のフローチャートのステップS61、S81にて、検出部54は、温度画像データから、溶融池MPとその近傍の温度に関する情報として、溶融池MPの最高温度や、溶融池MPの最低温度や、溶融池MPの最高温度と最低温度との差や、溶融池MPの任意の温度の等温線の直径や、キーホールKHの径を溶融池MPの温度分布として求めてもよい。
この場合、第2、第3および第4の基準範囲として、パワー密度PD、エネルギー密度EDおよび温度分布T(r)の少なくとも1つを所望の範囲に保つための溶融池MPの最高温度や、溶融池MPの最低温度や、溶融池MPの最高温度と最低温度との差や、溶融池MPの任意の温度の等温線の直径や、キーホールKHの径(短軸の長さ)の範囲が設定されてもよい。また、溶融池MPの最高温度と最低温度との差は、算出した溶融池MPの最高温度と最低温度との差を算出することにより得られる。
【0271】
なお、上述した図13図16に示す次層造形時変更の処理において、演算装置50は三次元造形物の造形を停止させなくてもよい。すなわち、演算装置50は、図14のステップS68とS70および図16のステップS88とS90の処理を行わなくてもよい。この場合、図13のステップS64にて溶融池MPの平均温度が第3の基準範囲を満たさないときには、判定部57は補修情報の生成が必要と判定して、処理は図14のステップ69へ進む。図15のステップS84にて温度勾配が第3の基準範囲を満たさない場合には、判定部57は補修情報の生成が必要と判定して、処理は図16のステップ89へ進む。換言すると、判定部57は、検出部54により求められた検出対象領域の状態が第3の基準範囲を満たす場合には変更情報の生成が必要と判定し、検出対象領域の状態が第3の基準範囲を満たさない場合には固化層の補修が必要と判定する。
【0272】
以上の説明では、リアルタイム変更、次層造形時変更の場合を例に挙げて説明を行ったが、本実施の形態の造形装置1は、上述したようには、固化層を積層して三次元造形物の造形が終了し、次の三次元造形物の造形を開始するときに造形条件を変更する次造形物造形時変更も行う。この場合、三次元造形物を造形開始から造形終了までに検出部54により求められ検出対象領域の状態に基づいて、判定部57は次の三次元造形物を造形するための造形条件の変更の要否を判定する。この場合、判定部57は、図10のステップS34や、図11のステップS44や、図12のステップS54や、図13のステップS65や、図15のステップS85と同様にして、検出対象領域の状態が、予め定められた第1または第2の基準範囲を満たしているか否かを判定部57が判定する。判定部57が、検出対象領域の状態が第1または第2の基準範囲を満たしていないと判定した場合には、求められた検出対象領域の状態と第1または第2の基準範囲内の任意の値(例えば、中央値)との差に基づいて、演算部56が造形条件を変更するための変更情報を生成する。
【0273】
検出対象領域の状態が第1または第2の基準範囲を満たしている場合には、演算部56による変更情報の生成更は行われず、必要に応じて後処理が行われる。ここで、後処理とは、たとえば造形された三次元造形物とともに造形された三次元造形物を支持するサポート部を除去する処理等が含まれる。サポート部を除去するために、造形装置1は、たとえばミーリングヘッド等により構成される切削部(不図示)を備えることができる。
【0274】
次造形物造形時変更により、新たに造形する三次元造形物に造形不良等が発生する可能性がある場合には、予め造形不良等の発生が抑制されるような造形条件が設定される。
なお、造形された固化層への補修は、リアルタイム変更や、次造形物造形時変更のときに行われてもよい。例えば、リアルタイム変更の場合には、判定部57は、検出対象領域の状態が第1の基準範囲を満たさない場合において、造形停止を判定するための基準範囲(図14図16における第4の基準範囲)を設ける程ではないものの、第1の基準範囲からの差が大きいと判定した場合には、補修情報の生成が必要と判定してもよい。すなわち、図10のステップS33や、図11のステップS43や、図12のステップS53において、検出部54により求められた検出対象領域の状態が第1の基準範囲を満たさないと判定された場合には、判定部57は、以下の判定処理を行う。判定部57は、検出部54により求められた検出対象領域の状態が第1の基準範囲の最大値と最小値の範囲よりも広い基準範囲(例えば、図13図15における第3の基準範囲)を満たす場合に変更情報の生成が必要と判定し、処理は、図10のステップS34や図11のステップS44や図12のステップS54へ進む。判定部57は、検出対象領域の状態が上記の基準範囲を満たさない場合に固化層への補修が必要と判定し、たとえば、図14のステップS69や図16のステップS89と同様の処理が行われる。この場合、固化層への補修は、造形中の固化層や、造形中の固化層の造形が終了した後にその固化層に対して行われればよい。
【0275】
勿論、リアルタイム変更の場合においても、次層造形時変更の場合と同様に、第4の基準範囲を設けて、判定部57が造形停止を判定してもよい。判定部57は、図10のステップS33や図11のステップS43や図12のステップS53において、検出対象領域の状態が第1の基準範囲を満たさないと判定すると、検出対象領域の状態が第3の基準範囲を満たすか否かを判定する。検出対象領域の状態が第3の基準範囲を満たすと判定部57が判定した場合には、処理は図10のステップS34や図11のステップS44や図12のステップS54へ進む。検出対象領域の状態が第3の基準範囲を満たさないと判定部57が判定した場合には、判定部57は、第4の基準範囲に基づいて造形停止の要否を判定する。以後の処理は、図14のステップS68~S70や図16のステップS88~ステップS90と同様の処理が行われる。換言すると、判定部57は、検出対象領域の状態が第4の基準範囲を満たしている場合には固化層への補修が必要と判定し、検出対象領域の状態が第4の基準範囲を満たしていない場合には、造形停止が必要と判定する。
【0276】
また、次造形物造形時変更の場合には、補修を行う箇所が三次元造形物の輪郭に存在する場合には、補修が可能である。判定部57が検出対象領域の状態が第1または第2の基準範囲を満たしていないと判定すると、判定部57は、第1または第2の基準範囲よりも広い基準範囲(例えば、図13図15における第3の基準範囲)を満たす場合に変更情報の生成が必要と判定する。この場合は、上述した場合と同様に、演算部56は、造形条件を変更するための変更情報を生成する。判定部57は、検出対象領域の状態が上記の基準範囲を満たさない場合には補修が必要と判定し、求められた検出対象領域の状態と第1または第2の基準範囲内の任意の値(例えば、中央値)との差に基づいて、演算部56が補修情報を生成してよい。
【0277】
勿論、次造形物造形時変更の際にも、次層造形時変更の場合と同様に、第4の基準範囲を設けて、判定部57が造形停止を判定してもよい。判定部57が検出対象領域の状態が第1または第2の基準範囲を満たしていないと判定すると、検出対象領域の状態が第3の基準範囲を満たすか否かを判定する。検出対象領域の状態が第3の基準範囲を満たす場合には、判定部57は変更情報の生成が必要と判定する。検出対象領域の状態が第3の基準範囲を満たさない場合に、判定部57は上述した第4の基準範囲を用いて、補修の要否または造形停止を判定する。すなわち、検出対象領域の状態が第4の基準範囲を満たすときには、判定部57は、上述した補修が必要と判定し、検出対象領域の状態が第4の基準範囲を満たさないときには、次の三次元造形物の造形の停止を判定すればよい。
【0278】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)レーザ光の照射により粉末材料Pを加熱して造形した固化層から三次元造形物を造形する造形装置1に用いられる演算装置50は、検出部54と出力部55とを備える。検出部54は、レーザ光の照射による加熱で粉末材料Pが溶融している溶融池MPを含む所定領域の少なくとも一部である検出対象領域の状態を求め、出力部55は、検出部54により求められた状態に基づく状態情報を出力する。これにより、固化層を造形しているときの粉末材料Pの状態から、造形中の三次元造形物に造形不良等が発生する可能性の有無などが推定可能となる。求められた状態を三次元造形物の造形に反映させた場合には、三次元造形物での造形不良等の発生が抑制可能となる。
【0279】
(2)検出対象領域の状態は、レーザ光の照射により加熱する前の粉末材料Pの状態を含む。これにより、レーザ光の照射前後における粉末材料Pの状態が求められ、レーザ光の照射による材料層の温度変化の状態が検出可能となるので、造形中の三次元造形物に造形不良等が発生する可能性の有無などが詳しく推定できるようになる。
【0280】
(3)検出対象領域の状態は、検出対象領域における溶融の状態と、加熱により発生したスパッタPSの状態と、加熱により発生したヒュームFUの状態との少なくとも1つの状態を含む。これにより、レーザ光の照射による粉末材料Pの溶融の進行状態が検出可能となるので、造形中の三次元造形物に造形不良等が発生する可能性の有無などが詳しく推定できるようになる。
【0281】
(4)検出対象領域における溶融の状態は、溶融池MPと溶融池MPの近傍との少なくとも一部の温度に関する情報を含み、スパッタSPの状態はスパッタSPの飛散方向と飛散量と飛散速度との少なくとも1つの情報を含み、ヒュームFUの状態はヒュームの濃度と範囲との少なくとも1つの情報を含む。これにより、レーザ光の照射により粉末材料Pに流入した熱量等が検出可能となるので、造形中の三次元造形物に造形不良等が発生する可能性の有無や、造形不良等が発生する場合にはその要因等が推定できるようになる。
【0282】
(5)検出部54は、検出対象領域を撮像した画像データに含まれる異なる波長ごとの輝度情報に基づいて、溶融池MPと溶融池MPの近傍との少なくとも一部の温度に関する情報と、スパッタSPの飛散方向と飛散量と飛散速度との少なくとも1つの情報と、ヒュームの濃度と範囲との少なくとも1つの情報と、の少なくとも1つの情報を求める。これにより、材料層に発生した溶融池MPの近傍の状況に依らず、検出対象領域の状態が撮像されるので、粉末材料Pの状態が正確に求められ、レーザ光の照射により粉末材料Pに流入し熱量等の検出精度が向上する。
【0283】
(6)演算部56は、検出部54により求められた検出対象領域における状態に基づいて、三次元造形物の造形に用いる造形条件を変更するための変更情報を生成し、出力部55は、生成された変更情報を状態情報として出力する。これにより、粉末材料Pの溶融の状態に基づいて、三次元造形物での造形不良等の発生が抑制できるように、造形条件の変更が可能となる。
【0284】
(7)演算部56は、粉末材料Pを加熱して固化層を造形しているときに、未溶融の粉末材料Pに対する造形条件を変更するための変更情報を生成する。これにより、造形中の固化層に対して造形条件を変更することにより、造形中の固化層に造形不良等が発生することが抑制される。
【0285】
(8)演算部56は、固化層の上部に供給される新たな粉末材料Pまたは固化層の上部に供給された新たな粉末材料Pに対する造形条件を変更するための変更情報を生成する。これにより、新たに造形する固化層に造形不良等が発生する可能性がある場合に、予め造形不良等の発生が抑制されるような造形条件の設定が可能となる。
【0286】
(9)演算部56は、三次元造形物の造形が終了した後、新たに造形する三次元造形物に対する造形条件を変更するための変更情報を生成する。これにより、新たに造形する三次元造形物に造形不良等が発生する可能性がある場合に、予め造形不良等の発生が抑制されるような造形条件の設定が可能となる。
【0287】
(10)演算部56は、粉末材料Pを加熱するために粉末材料Pに照射されるレーザ光の条件を造形条件として変更情報を生成する。これにより、粉末材料Pに流入する熱量が制御され、造形不良等の発生が抑制された状態での固化層の造形が可能となる。
【0288】
(11)演算部56は、粉末材料Pを加熱するためにレーザ光を走査するための走査条件を造形条件として変更情報を生成する。これにより、粉末材料Pに流入する熱量が制御され、造形不良等の発生が抑制された状態での固化層の造形が可能となる。
【0289】
(12)演算部56は、固化層を収容する筐体10の内部の雰囲気に関連する条件を造形条件として変更情報を生成する。これにより、造形が行われる環境を制御することにより粉末材料Pに流入する熱量が制御され、造形不良等の発生が抑制された状態での固化像の造形が可能となる。
【0290】
(13)演算部56は、ブレード221が粉末材料Pから材料層を形成する材料層形成条件を造形条件として変更情報を生成する。これにより、粉末材料Pに流入する熱量が制御可能となるように材料層が形成されるため、造形不良等の発生が抑制された状態での固化層の造形が可能となる。
【0291】
(14)演算部56は、粉末材料Pおよび固化層を支持する支持部であるベースプレート311に関連する支持部条件を造形条件として変更情報を生成する。これにより、粉末材料Pに流入する熱量が制御され、造形不良等の発生が抑制された状態での固化層の造形が可能となる。
【0292】
(15)演算部56は、固化層または三次元造形物の形状に関連する設計データを造形条件として変更情報を生成する。これにより、設計データを用いて、粉末材料Pに流入する熱量が制御されるようにスライスモデルデータ等が作成されるので、造形不良等の発生が抑制された状態での固化層の造形が可能となる。
【0293】
(16)演算部56は、粉末材料Pに関連する条件を造形条件として変更情報を生成する。これにより、粉末材料Pに流入する熱量が制御可能となる粉末材料Pを用いて材料層の形成が可能となるので、造形不良等の発生が抑制された状態での固化層の造形が可能となる。
【0294】
(17)判定部57は、検出部54により求められた検出対象領域における状態に基づいて、固化層への補修の要否を判定する。これにより、造形不良と見なせる箇所が三次元造形物の造形中に補修されるので、造形不良等の発生が抑制された高品質の三次元造形物の造形が可能となる。
【0295】
(18)判定部57は、検出部54により求められた検出対象領域における状態に基づいて、三次元造形物を造形するための変更情報の生成の要否を判定する。これにより、三次元造形物の造形中に造形不良等が発生する可能性がある場合に、造形条件の変更が可能となる。この結果、造形不良等の発生が抑制された高品質の三次元造形物の造形が可能となる。
【0296】
(19)判定部57は、検出部54により求められた検出対象領域における状態が第3の基準範囲を満たす場合には三次元造形物を造形するための変更情報の生成が必要と判定し、検出部54により求められた検出対象領域における状態が第3の基準範囲を満たさない場合には固化層への補修が必要と判定する。これにより、レーザ光の照射により発生した溶融の状態に応じて、造形不良等の発生の抑制に適した処理が選択可能となる。
【0297】
(20)判定部57は、検出部54により求められた検出対象領域における状態が第4の基準範囲を満たす場合には固化層への補修が必要と判定し、検出対象領域における第4の基準範囲を満たさない場合には、三次元造形物の造形停止が必要と判定する。これにより、このまま造形を続けても造形不良を有する三次元造形物の造形を停止できるので、粉末材料Pや作業時間が浪費されることが抑制される。
【0298】
(21)判定部57により固化層の補修が必要と判定されると、演算部56は、固化層を再び溶融させる補修処理(たとえば、リメルト処理)により補修を行わせるための補修情報を生成する。これにより、造形された固化層を再度造形し直すことにより、造形不良等の発生が抑制された高品質の三次元造形物の造形が可能となる。
【0299】
(22)判定部57により固化層の補修が必要と判定されると、演算部56は、固化層に熱処理を加えて補修を行わせるための補修情報を生成する。これにより、造形された固化層に対して残留応力等を緩和させるための処理を行うことができるので、造形不良等の発生が抑制された高品質の三次元造形物の造形が可能となる。
【0300】
上述した第1の実施の形態を以下のように変形できる。
(1)上述した第1の実施の形態では、検出部54、演算部56、判定部57は、パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r)からなる基本条件の少なくとも1つを所望の範囲に保つための処理を行ったが、上記の基本条件に加えて、または基本条件に代えてユーザが要求する生産性や品質に適合した詳細な条件を満たすように処理も行ってよい。ここでは、詳細な条件として、造形率BR、欠陥率DR、残留応力RS、温度勾配G、凝固速度Rを例に挙げる。以下、造形率BR、欠陥率DR、残留応力RS、温度勾配G、凝固速度Rを詳細条件と称する。
造形率BRは、単位時間当たりにレーザ光が照射される粉末材料Pの量であり、以下の(4)式により表される。造形率BRが大きいほど、単位時間当たりにレーザ光が照射される粉末材料Pの量が多くなるので、固化層を造形するために要する時間が短縮され、作業効率の向上が可能となる。
BR=v×Δy×Δz …(4)
【0301】
欠陥率DRは、固化層の内部に発生する欠陥の発生状態を表す。上述したように、溶融池MPの内部では、溶融池MPの表面と内部の温度差による表面張力の差に起因した対流Cが起こり、この対流Cが大きくなると揺らぎが発生し、ガスの巻き込み等が発生しその状態で凝固すると内部欠陥となる。また、溶融池MPから飛散し凝固したスパッタSPは、ブレード221による材料層の形成を妨げ、材料層内部に粉末材料Pが充填されない空隙等が発生する可能性がある。このような空隙も固化層を造形する際の内部欠陥の原因となる。したがって、溶融池MPの流体挙動、すなわち対流Cや、溶融池MPの凝固過程を所望の範囲に保つことにより、溶融池MPの対流Cや凝固過程に起因する欠陥率DRを許容できる範囲に抑えることが可能となる。
【0302】
残留応力RSは、材料層にレーザ光が照射されることにより溶融した粉末材料Pが凝固するまでの温度変化の履歴を表す。この温度変化の履歴を参照することにより、溶融して粉末材料Pが凝固することにより固化層に残留する残留応力の状態を把握することができる。温度の履歴は、検出部54により生成された複数の温度画像データを用いることにより取得される。
【0303】
温度勾配Gと凝固速度Rとは、凝固した固化層内部における金属組織の状態を決定する要素である。温度勾配Gは、上述した(3)式の温度分布T(r)を以下の(5)式で表すように、距離rで偏微分して得られる値であり、材料層中のある断面における温度変化の状態を表す。凝固速度Rは、上述した(3)式の温度分布T(r)を以下の(6)式で表すように、時間tで偏微分して得られる値であり、溶融池MPがどのようにして冷却するかを表す。
G=∂T/∂r …(5)
R=∂T/∂t …(6)
【0304】
一般に、温度勾配Gと凝固速度Rとの積G×Rの値が大きいほど金属組織が微細となり、G×Rの値が小さいほど金属組織が粗大になることが知られている。また、温度勾配Gを凝固速度Rで割ったG/Rの値が大きいほど金属組織は柱状晶と呼ばれる結晶構造となり、強度に異方性を有する。また、G/Rの値が小さいほど金属組織は等軸晶と呼ばれる結晶構造となり、均一な強度を有することが知られている。上記の関係を表す凝固マップが知られており、この凝固マップを参照することにより、温度勾配Gと凝固速度Rとから造形される固化層内部の金属組織の予測が可能となる。
【0305】
検出部54、演算部56、判定部57は、第1の実施の形態において説明したリアルタイム変更、次層造形時変更、次造形物造形時変更の際に、造形率BR、欠陥率DR、残留応力RS、温度勾配G、凝固速度Rの少なくとも1つがユーザの所望する範囲となるように、上述した各種の造形条件を変更するための処理を行ってよい。たとえば、図10のステップS33~S36、図11のステップS43~46、図12のステップS53~S56、図13図14のステップS62~S69、または図15図16のステップS81~S89の処理の際に、上記の詳細条件の少なくとも1つが適用されてよい。
【0306】
(2)上述した第1の実施の形態および変形例(1)では、演算装置50において、検出部54により求められ検出対象領域の状態に基づいて、演算部56が変更情報を生成し、出力部55が変更情報を状態情報として設定部59へ出力する場合を例に挙げた。しかし、造形装置1は、図17に示す演算装置50を有してもよい。この場合の演算装置50は、検出部54と、出力部55と、設定部69とを有する。設定部69は、第1の実施の形態における、材料制御部51と、造形制御部52と、筐体制御部53と、演算部56と、判定部57と、記憶部58と、を有する。この場合、検出部54は、第1の実施の形態の場合と同様にして撮像装置41から出力された画像データを用いて、検出対象領域の状態を求める。出力部55は、検出部54により求められた検出対象領域の状態自体の情報を状態情報として、設定部69へ出力する。設定部69の演算部56と、判定部57とは、第1の実施の形態および変形例(1)と同様にして造形条件を変更するための変更情報を生成する。設定部69が有する材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53のうち少なくとも1つは、生成された変更情報に従って、第1の実施の形態および変形例(1)と同様にして、造形装置1の各構成の動作を制御する。
なお、図1に示す第1の実施の形態の演算装置50のうちの設定部59以外の構成や、図17に示す変形例における演算装置50のうちの設定部69以外の構成が、造形装置1とは異なる外部の演算装置にて含まれてもよい。
【0307】
(3)第1の実施の形態や変形例にて説明した造形装置1の構成の一部に基づいて、検出対象領域の情報を取得して、検出対象領域の状態を求める検出システムを構成してもよい。
図18(a)に、この場合の造形装置1および検出システム500の要部構成の概略を模式的に示す。造形装置1は、図1図3を用いて説明した、第1の実施の形態の造形光学部35のうちの取得部310と、第1の実施の形態における図1の演算装置50の検出部54と出力部55と演算部56と判定部57と記憶部58を有する検出システム500と、筐体10と、材料層形成部20と、造形部30のうちの取得部310以外の構成と、図1の演算装置50の設定部59と、を有する。
【0308】
取得部310は、材料層の検出対象領域の情報を取得する。検出対象領域の情報とは、取得部310が有する撮像装置41が、材料層の検出対象領域からの熱放射光に基づいて、第1の実施の形態にて説明した場合と同様にして生成した画像データである。すなわち、この画像データは、検出対象領域からの熱放射光のうちの異なる波長(波長λ1とλ2)の光のそれぞれに基づいて生成される画像データを含む。なお、取得部310は温度計や高速カメラでもよい。取得部310が温度計の場合には、検出対象領域の情報は、温度計により求められた検出対象領域の温度である。取得部310が高速カメラの場合には、検出対象領域の情報は、高速カメラにより取得された検出対象領域のカラー画像のデータである。演算装置50の検出部54は、取得部310で取得された検出対象領域の情報を用いて、第1の実施の形態や変形例と同様にして、検出対象領域の状態を求める。演算部56と判定部57は、第1の実施の形態および変形例(1)と同様にして造形条件を変更するための変更情報を生成する。生成された変更情報は、出力部55により状態情報として検出システム500から設定部59へ出力される。設定部59が有する材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53のうち少なくとも1つは、変更情報に従って、第1の実施の形態および変形例(1)と同様にして、造形装置1の各構成の動作を制御する。なお、図18(a)に示すように、説明の便宜上、検出システム500の検出部54と出力部55と演算部56と判定部57と記憶部58と、設定部59とが纏めて1つの演算装置に備えられる構成として表した。しかしながら、検出システム500の検出部54と出力部55と演算部56と判定部57と記憶部58と、設定部59とは異なる演算装置に備えられてよい。
【0309】
なお、図18(b)に示すように、検出システム501は、図1図3を用いて説明した、第1の実施の形態の造形光学部35のうちの取得部310と、図17に示す第1の実施の形態の変形例(2)の演算装置50の検出部54および出力部55とを有してもよい。この場合、造形装置1は、検出システム501と、図17に示す演算装置50が有する設定部69と、筐体10と、材料層形成部20と、造形部30のうちの取得部310以外の構成と、を有する。
【0310】
取得部310は、図18(a)の場合と同様にして、検出対象領域の情報を取得する。検出部54は、この検出対象領域の情報を用いて、第1の実施の形態や変形例と同様にして検出対象領域の状態を求める。出力部55は、検出部54により求められた検出対象領域の状態自体の情報を状態情報として、検出システム501から設定部69へ出力する。設定部69の演算部56と、判定部57と、第1の実施の形態および変形例と同様にして造形条件を変更するための変更情報を生成する。設定部69が有する材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53のうち少なくとも1つは、生成された変更情報に従って、第1の実施の形態および変形例と同様にして、造形装置1の各構成の動作を制御する。なお、図18(b)に示すように、説明の便宜上、検出システム501の検出部54及び出力部55と、設定部69とが纏めて1つの演算装置に備えられる構成として表した。しかしながら、検出システム501の検出部54及び出力部55と、設定部69とは異なる演算装置に備えられてもよい。
【0311】
(4)第1の実施の形態および変形例(1)~(3)の造形装置1は、造形条件の変更として、リアルタイム変更、次層造形時変更および次造形物造形時変更のうちの少なくとも1つを行ってよい。
また、演算部56は、変更情報の生成と修正情報の生成とを行うものに代えて、変更情報の生成のみを行ってよい。また、演算部56は、レーザ光の条件と、走査条件と、筐体10の内部の雰囲気に関連する条件と、材料層形成条件と、支持部条件と、設計データと、粉末材料Pに関連する条件との少なくとも1つの造形条件に対して変更情報を生成してよい。
(5)実施の形態および変形例においては、造形装置1は、粉末材料Pとして金属粉末を使用する場合を例に挙げて説明を行ったが、粉末材料Pとして樹脂粉末やセラミック粉末等の金属粉末以外の粉末を使用することができる。また、造形装置1は、粉末材料Pを使用して三次元造形物を造形する場合に限らず、液体の材料や粉末以外の固体の材料を使用して三次元造形物を造形してよい。
【0312】
-第2の実施の形態-
図面を参照して、第2の実施の形態による造形装置について説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、材料層の状態が求められ、求めた材料層の状態に関する情報に基づいて、造形条件を変更するための変更情報が生成される点で第1の実施の形態とは異なる。
【0313】
図19は第2の実施の形態の造形装置101の要部構成の一例を示すブロック図である。第2の実施の形態の造形装置101の造形部30は、第1の実施の形態およびその変形例の造形光学部35に代えて造形光学部36を有し、他の構成については、第1の実施の形態とその変形例の造形部30が有する構成と同様の構成を備える。第2の実施の形態の演算装置50Aは、第1の実施の形態における検出部54、出力部55、演算部56、判定部57に代えて、検出部54A、出力部55A、演算部56A、判定部57Aを備える。
図19に示すように、材料供給槽21と造形槽31との間にはステージSTが設けられる。ステージSTは、XY平面に平行な面を有する。後述する粉末材料Pの流動性を求めるための処理を行う際に、粉末材料Pがリコーター22によってステージST上に移送される。なお、図19に示す例では、材料供給槽21と造形槽31との間にステージSTが設けられる場合を示したが、ステージSTの配置は図示の位置に限定されない。なお、図19では、説明の便宜上、材料層形成部20と造形部30とを別個の構成として分けて表すが、粉末材料Pを材料層形成部20と造形部30を纏めて造形部と表すこともできる。
【0314】
造形光学部36は、照射部32と、走査部33と、フォーカスレンズ323と、形状測定部314とを有する。形状測定部314は、詳細を後述するように、形成された材料層の状態を求めるために、材料層の形状を測定する。形状測定部314は、投影部60と、受光部70とを有する。投影部60と受光部70とは、材料層の形状を測定するために、たとえば公知のパターン投影法の位相シフト法を用いる。なお、形状測定部314は、当該形状測定部314以外の造形部30の構成とは異なる機能(後述する、材料層の形状を求める機能)を備える構成であるため、造形部30とは別個の構成として表すこともできる。
【0315】
パターン投影法は、形状を測定する対象(本実施の形態においては材料層や粉末材料P)に投影された光の強度分布を変化させて複数枚の画像を撮像し、撮像した複数枚の画像を処理することで測定する対象の三次元形状を測定するものである。既存のパターン投影法としては、たとえば位相シフト法や、空間コード化法や、モアレポトグラフィ法や、マルチスリット法等がある。位相シフト法では、正弦波状の強度分布を有する縞模様の光(縞パターン光)を利用し、その縞の位相を変化させて撮像された複数枚(最低3枚以上)の画像から画素ごとに正弦波の位相が算出され、算出された位相を利用して測定する対象の三次元座標が算出される。
なお、本実施の形態では、材料層の状態を測定するためにパターン投影法以外にも、光切断法、TOF(Time of Flight)法、ステレオカメラ法等の既存の形状測定方法を用いることができる。また、本実施の形態では、測定する対象に光を投影する形状測定方法に限らず、例えば、ステレオカメラ法等の測定する対象に光を投影せずに形状測定を行う既存の方法を用いることができる。ステレオカメラ法は、測定する対象を異なる方向から撮像して取得した画像を処理することで測定する対象の三次元形状を測定する方法である。この場合、形状測定部314は、投影部60を備えていなくてよい。
【0316】
投影部60は、詳細を後述するように、形成された材料層の表面に正弦波状の強度分布を有する投影光を、その強度分布の位相を変化させながら投影する光投影部として機能する。受光部70は、投影部60からの投影光が有する正弦波状の強度分布の位相が変化されるごとに、材料層の表面からの光を受光して、材料層の表面の画像データを生成して演算装置50へ出力する。生成される画像データは、材料層の表面からの光を後述する撮像素子72により光電変換して得られた各画素の信号強度である。換言すると、受光部60は、材料層の画像データを取得する画像取得部として機能する。なお、以下の説明においては、受光部70は、造形槽31に形成された材料層の表面の全領域を撮像可能であるものとして説明を行うが、材料層の表面の全領域のうちの一部の領域(すなわち投影部60により投影光が投影された領域)を撮像可能であってもよい。
【0317】
以下、造形光学部36の構成と、その配置の一例について説明する。
図20は、造形光学部36が有する、照射部32と、走査部33と、フォーカスレンズ323と、形状測定部314(すなわち、投影部60と、受光部70)との配置の一例を模式的に示す図である。
照射部32は、第1の実施の形態と同様に、材料層を照射して加熱するための照射光としてレーザ光を出射するレーザ発振器321と、レーザ発振器321から出射されたレーザ光をコリメートするコリメータレンズ322とを有する。第2の実施の形態においても、照射部32は、レーザ光に代えて既存の発光ダイオード(LED)や電子線、陽子線、中性子線などの既存の粒子線等を含むエネルギー線を出射可能なものを用いてもよい。
【0318】
照射部32のレーザ発振器321からX方向+側に向けて出射したレーザ光は、フォーカスレンズ323を透過して走査部33に入射する。フォーカスレンズ323は、第1の実施の形態と同様の凹レンズ323aと凸レンズ323bとを有する。走査部33は、第1の実施の形態と同様のガルバノミラー331と332とを有し、入射したレーザ光を材料層の表面に導く。
なお、照射部32からのレーザ光の出射方向や、レーザ光の進行方向や、走査部33ガルバノミラー331、332の配置や、ガルバノミラー331によるレーザ光の反射方向は図示の配置や出射方向や進行方向や反射方向に限定されず、造形光学部36を構成する各要素の配置との関係に基づいて、適宜好ましい配置や出射方向や進行方向や反射方向となるように決められる。
【0319】
投影部60は、投影光を出射する投影光源61と、コリメータレンズ62と、パターン生成部63と、投影レンズ64とを有する。投影光源61は、たとえばレーザ発信器により構成され、演算装置50により制御され、X方向+側へレーザ光(投影光)を出射する。なお、投影光源61として、LED光源やハロゲンランプ等の光源が用いられてもよい。投影光源61からの投影光は、コリメータレンズ62により平行光にコリメートされ、パターン生成部63に入射する。
なお、投影部60からの投影光の出射方向はX方向+側であるものに限定されず、造形光学部36の他の構成との関係に基づいて、適宜好ましい配置や出射方向となるように決められる。
【0320】
パターン生成部63は、たとえばDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)により構成される。DMDの表面には多数の微小鏡面が、Y方向(行方向)とY方向と直交する方向(列方向)とにより形成される平面上において二次元状に配列され、演算装置50により制御され、各微小鏡面ごとにオン状態とオフ状態とが切り替えられる。オン状態では、形状を測定する対象(材料層など)に光が投影されるように微小鏡面の角度が設定され、オフ状態では、形状を測定する対象(材料層など)に光が投影されないように微小鏡面の角度が設定される。パターン生成部63に入射した投影光は、微小鏡面を後述するように制御することにより、予め設定された正弦波状の強度分布を有する光に変換されて出射される。パターン生成部63により生成される正弦波状の強度分布を有する投影光により、材料層の表面には、正弦波状に明るさが変化する縞模様が投影される。なお、パターン生成部63は、DMDにより構成される例に限られず、LCD(液晶ディスプレイ)や、LCOS(Liquid Crystal on Silicon:反射型液晶素子)であってもよい。
【0321】
正弦波状の強度分布を有する投影光を生成するために、パターン生成部63(DMD)は、例えば、次のように制御される。1つの行の微小鏡面が連続的にオン状態となり、隣接する行の微小鏡面のオン時間の割合が、例えば、98.5%、オフ時間の割合を1.5%となるように、微小鏡面を駆動させる駆動電力がオンとオフとの間で制御される。さらに隣接する行の微小鏡面のオン時間の割合が、例えば、94%、オフ時間の割合が6%となるように、微小鏡面を駆動させる駆動電力がオンとオフとの間で制御される。このように、DMDの微小鏡面の行ごとにオン時間とオフ時間の割合の組み合わせを列方向に沿って段階的に変化させることで、正弦波状の強度分布を有する投影光が生成され、正弦波状に明るさが変化する縞状の模様が材料層の表面に投影される。また、行ごとのオン時間とオフ時間の割合の組み合わせが列方向にシフトするように、微小鏡面の行ごとの駆動電力が制御されると、投影光が有する正弦波状の強度分布の位相が変化する。
【0322】
なお、パターン生成部63では、一行ごとにオンとオフとの間の駆動電力が制御されてもよいし、所定数の行ごとにオンとオフとの間の駆動電力が制御されてもよい。
また、パターン生成部63は、正弦波状に徐々に強度が変化する強度分布を有する投影光を生成する例に限定されない。たとえば、微小鏡面をオンとする所定行と微小鏡面をオフとする所定行とが繰り返すように微小鏡面が制御され、明暗が繰り返される矩形波状の強度分布を有する投影光としてもよい。または、パターン生成部63は、暗点(または明点)を規則的に有するドット状の模様の投影光を生成してもよい。
パターン生成部63で反射された投影光は、Z方向-側に形成された材料層へ向けて、Z軸に対して所定の角度を有して進み、投影レンズ64により集光されて、材料層の表面に投影される。これにより、パターン生成部63で生成された正弦波状の強度分布を有する投影光が材料層の表面に投影される。
【0323】
受光部70は、複数のレンズを含む撮像光学系71と、撮像素子72とを有する撮像装置である。撮像素子72は、たとえばたとえばCMOSやCCD等により構成される画素や、画素で光電変換された画像信号を読み出す読出し回路や、画素の駆動を制御する制御回路等を有する。受光部70は、撮像光学系71の光軸がZ軸に対して所定の角度を有するように配置される。材料層の表面からの光は、撮像光学系71により撮像素子72の撮像面上に集光する。撮像素子72は、入射した光を光電変換し、投影部60により投影光が投影された材料層の表面の画像データを生成して演算装置50Aに出力する。撮像素子72から出力された画像データは、後述する演算装置50Aの検出部54Aにより、材料層の形状に基づく材料層の状態を求めるために使用される。
なお、上述のように、造形光学部36は、材料層にレーザ光を照射する構成と、材料層の状態を撮像する構成とを一部共有しているため、撮像光学系とも言うことができる。
【0324】
なお、造形光学部36の配置は、図20に示す例に限定されない。
造形光学部36は、たとえば、図20に示す配置例と同様に配置された受光部70と、図2に示す第1の実施の形態の造形光学部35のうち、撮像装置41および二分岐光学系42に代えて投影部60が設けられた構成と、を有してよい。すなわち、照射部32からのレーザ光と、投影部60からの投影光とが、フォーカスレンズ323と走査部33とを共用して進行するように、照射部32と投影部60とが配置(同軸配置)されてよい。
または、造形光学部36は、たとえば、図20に示す配置例と同様に配置された投影部60と、図2に示す第1の実施の形態の造形光学部35のうち、撮像装置41および二分岐光学系42に代えて受光部70とが設けられた構成と、を有してよい。すなわち、照射部32からのレーザ光と、材料層の表面で反射した投影光とが走査部3とフォーカスレンズ323とを共用して進行するように、照射部32と投影部60とが配置(同軸配置)されてよい。
【0325】
また、造形光学部36において、照射部32と投影部60とが共用されてもよい。照射部32が、たとえば材料層を溶融するためのレーザ光の照射位置を示すためのガイド光を照射可能な構成を有している場合には、このガイド光が投影光として使用可能である。この場合、造形光学部36は、図20に示す投影部60を備えていなくてよい。これにより、照射部32からのレーザ光と投影光とが、フォーカスレンズ323と走査部33とを共用して進行するような配置(同軸配置)が得られる。
以上のような同軸配置を適用することにより、材料層の表面で反射した投影光のうちの正反射成分が受光部70に入射することが抑制され、散乱光が受光部70に入射される。
受光部70は、材料層の表面で正反射した光の影響が抑制された状態で撮像を行い、画像データを生成する。このため、後述する検出部54は、パターン投影法を用いて、材料層の表面形状を求める際に、ノイズ成分が低減された画像データを使用することができるので、材料層の状態の検出精度が向上する。
【0326】
または、造形光学部36は、図20に示す配置例と同様に配置された投影部60と、第1の実施の形態において例示した図3(a)、(b)に示す造形光学部35における撮像装置41と二分岐光学系42とに代えて受光部70が設けられた構成と、を有してもよい。さらに、この場合に、照射部32がガイド光を照射可能な構成を有している場合には、投影部60が配置されずに、照射部32からのガイド光が、フォーカスレンズ324(図3(a)参照)と走査部33とを介して、または走査部33とfθレンズ326(図3(b)参照)とを介して、材料層に投影光として投影されてもよい。
【0327】
図19に示す演算装置50Aは、設定部59と記憶部58とに加えて、検出部54A、出力部55A、演算部56A、判定部57Aを備える。検出部54Aは、上述した受光部70から出力された複数の画像データを用いて、パターン投影法により、材料層の形状に基づいて、材料層の状態を求める。ここで、説明の便宜上、検出部54Aは、粉末材料Pによって形成された材料層の少なくとも一部の領域における状態を求めることを含め、以下、材料層の状態を求めると表現する。判定部55Aは、検出部54Aにより求められた材料層の形状に基づいて、変更情報の生成の要否や、補修情報の生成の要否や、三次元造形物の造形停止の要否を判定する。演算部56Aは、判定部55Aにより変更情報の生成が必要と判定された場合、検出部54Aにより求められた材料層の状態に基づいて、第1の実施の形態にて例示した造形条件を変更するための変更情報を生成する。
【0328】
出力部55Aは、演算部56Aにより生成された変更情報を、求められた材料層の状態に関する情報として設定部59へ出力する。求められた材料層の状態に関する状態情報とは、演算部56Aにより生成された三次元造形物を造形するための造形条件を変更するための変更情報や、検出部54Aにより求められた材料層の状態自体の情報を含む。以下、第2の実施の形態における検出部54A、出力部55A、演算部56Aおよび判定部57Aが行う処理について説明する。
なお、本実施の形態においては、材料層の状態として、形成された材料層の平面度と、密度と、積層厚と、表面の形状(材料層表面の各位置におけるZ方向の高さ(Z座標))と、材料層を形成する粉末材料Pの流動性との少なくとも1つが含まれる。
以下、検出部54Aが材料層の状態を求めるための処理について説明を行う。
【0329】
第2の実施の形態においては、演算装置50Aは、投影部60に対して、材料層形成時に投影光を投影させる。このとき、演算装置50Aは、投影部60のパターン生成部63を制御して、投影光が所定の正弦波状の強度分布を有するようにする。
ここで、材料層形成時とは、リコーター22によりベースプレート311上または造形された固化層上へ粉末材料Pを移送する前の状態や、ベースプレート311上または造形された固化層上に粉末材料Pが移送され新たに材料層が形成された後の状態であって照射部32によるレーザ光の照射を開始する前の状態のことである。
【0330】
まず、材料層の状態として材料層の積層厚を求める場合について説明する。
投影部60は、材料層が形成される前の状態(固化層が造形された状態)や材料層が形成された状態において、投影光の正弦波状の強度分布の位相を変化させながら投影する。受光部70は、投影光の正弦波状の強度分布の位相が変化するごとに材料層や固化層の表面を撮像し、材料層や固化層の表面の複数の画像データを出力する。
各画像データ間においては、材料層の表面や固化層の表面の形状に応じて、正弦波状の強度分布を有する縞模様の形状が変化するために、輝度値に差が生じることとなる。各画像データにおいて、同一画素の明るさ(輝度値)は、正弦波状の強度分布を有する投影光と同一の周期で変化することを前提として、検出部54Aは、各画素の輝度値と、画像データが撮像されたときに投影されていた投影光の正弦波状の強度分布とを比較して、各画素の位相を求める。検出部54Aは、所定の基準位置(例えば、造形槽31の上端)の位相に対する位相差を算出することにより、基準位置からの距離(Z方向の位置)を求める。
【0331】
検出部54Aは、材料層が形成される前に投影された投影光を撮像して得られた複数の画像データを用いて、造形が終了した固化層の表面のXY平面上の任意の位置における形状(Z方向の位置)を求める。造形が終了した固化層の表面の形状(Z方向の位置)は、これから形成される材料層の底面の形状(Z方向-側の位置)である。なお、以下の説明では、造形が終了した固化層の表面の形状(Z方向の位置)を第1平面形状と呼ぶ。
固化層の上部に材料層が形成されると、検出部54Aは、材料層が形成された後に投影された投影光を撮像して得られた複数の画像データを用いて、形成された材料層の表面のXY平面上の任意の位置における形状(Z方向の位置)を求める。なお、以下の説明では、形成された材料層の表面の形状(Z方向の位置)を第2平面形状と呼ぶ。
検出部54Aは、XY平面上の任意の位置ごとに、求めた第1平面形状と第2平面形状との差(すなわちZ方向の位置の差)を算出し、形成された材料層の厚さ(すなわち積層厚)を算出する。
【0332】
次に、材料層の状態として、材料層の平面度を求める場合について説明する。
検出部54Aは、材料層が形成された後に投影された投影光を撮像して得られた複数の画像データを用いて、形成された材料層の表面の形状である第2平面形状(Z方向の位置)を求める。検出部54Aは、求めた第2平面形状から、最大ふれ式や最大傾斜式等に基づいて、材料層の平面度を求める。最大振れ式にて材料層の平面度を求める場合には、検出部54Aは、第2平面形状(Z方向の位置)のうち、XY平面での位置が離れた異なる3点におけるZ方向の位置を抽出する。検出部54Aは、抽出した3点を通過する平面を設定し、この設定した平面と、求めた第2平面形状(Z方向の位置)との偏差の最大値を平面度として求める。また、最大傾斜式にて材料層の平面度を求める場合には、検出部54Aは、求めた第2平面形状(Z方向の位置)のうち最小のZ方向の位置においてXY平面に平行な平面と、求めた第2平面形状(Z方向の位置)のうち最大のZ方向の位置におけるXY平面に平行な平面とを設定する。すなわち、検出部54Aは、求めた第2平面形状(Z方向の位置)を挟むような2つの平面をXY平面に平行となるように設定する。検出部54Aは、この2つの平面と第2平面形状との間のZ方向に沿った隙間の値を平面度として求める。
【0333】
また、材料層の状態として、材料層の密度を求める場合には、検出部54Aは、以下の処理を行う。材料層を形成するために用いられた粉末材料Pの重さを予め求めることができる場合には、検出部54Aは、粉末材料Pの重さを、上記のようにして算出した積層厚と粉末材料Pが敷き詰められた面積(材料層の表面積)との積で割って、密度を算出(検出)する。なお、検出部54Aが求める密度は、嵩密度、粒子密度、親密度、みかけ密度であってもよい。なお、材料層の状態として粉末材料Pの流動性を求める場合については、詳細を後述する。
【0334】
演算部56Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態(すなわち、材料層の平面度や、積層厚や、密度)に基づいて、造形条件の変更が必要な場合には、第1の実施の形態において説明した、(1)~(3)式で示す溶融および凝固のための基本条件や、第1の実施の形態の変形例(1)にて説明した詳細条件の少なくとも1つが所望の範囲に保たれるように、造形条件を変更するための変更情報を生成する。造形条件の変更が必要な場合とは、第1の実施の形態にて説明したように、現在設定されている造形条件にて造形を行うと、三次元造形物に造形不良が発生する可能性がある場合である。造形条件の変更の要否は、判定部57Aにより判定される。判定部57Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態が、後述する基準範囲を満たす場合に、造形条件の変更が必要と判定する。
【0335】
以下、演算部56Aによる変更情報を生成する処理の詳細について説明する。なお、造形条件の変更は、検出部54Aが材料層の状態を求めるために使用された材料層から固化層を造形する際(リアルタイム変更)に適用される場合と、材料層の状態を求めるために使用された材料層から固化層が造形された後、新たな材料層を形成し新たな材料層から固化層を造形する際(次層造形時変更)に適用される場合の2つの場合がある。リアルタイム変更の場合には、形成された材料層に対して造形条件が変更される。次層造形時変更の場合には、第1の実施の形態の場合と同様に、造形された固化層上に供給される新たな粉末材料Pまたは固化層上に供給された新たな粉末材料Pに対して造形条件が変更される。以下の説明では、リアルタイム変更の場合と、次層造形時変更の場合とに分けて説明を行う。
【0336】
<リアルタイム変更>
判定部57Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態に基づいて、変更情報の生成の要否を判定する。
材料層の積層厚が大きい場合、材料層のZ方向の厚みが大きく、照射部32から照射されたレーザ光により発生した熱が材料層の下方(Z方向-側)へ伝導されにくくなる。その結果、材料層の全体に渡って、粉末材料Pの十分な溶融が得られなくなることが考えられる。
また、材料層の平面度が大きい場合、形成された材料層のZ方向の高い点と低い点との差が大きいため、レーザ光が照射された材料層の内部を均一に熱が伝導しにくくなる。その結果、粉末材料Pの十分な溶融が得られない箇所が発生する可能性がある。
また、密度が低い場合、材料層の粉末材料Pの粒子間に空隙(空気)が多く含まれる。このため、金属粉末等からなる粉末材料Pの粒子間の熱の伝導が空隙により妨げされ、材料層の全体にわたって十分な溶融が得られなくなることが考えられる。
【0337】
以上の理由により、検出部54Aが材料層の平面度が大きいことや、大きな積層厚や、低い密度を求めた場合には、判定部57Aは、造形条件を変更するための変更情報の生成が必要であると判定する。この場合、演算部56Aは、以下のようにして変更情報を生成する。
なお、以下の説明では、演算部56Aが、(2)式に示すエネルギー密度EDの値が所望の範囲に保たれるように造形条件を変更するための変更情報を生成する場合を例に挙げる。
【0338】
粉末材料Pを十分に溶融させるために、演算部56Aは、(2)式に示すエネルギー密度EDの値が増加するように、(2)式のパラメータを変更する。演算部56Aは、パラメータP、Pの値を上げ、パラメータv、Δyの値を下げる、のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。
エネルギー密度EDの値を増加させるために、パラメータP、Pの値を上げ、パラメータv、Δyの値を下げる理由は、第1の実施の形態において説明した理由と同様である。
【0339】
パラメータPの値を上げる場合には、演算部56Aは、照射部32から出射されるレーザ光のレーザ出力を上げるように変更情報を生成する。パラメータPの値を大きくする場合には、演算部56Aは、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合の造形条件の変更には、不活性ガスの流量の減少および流速の低下と、ベースプレート311の温度の上昇と、不連続にレーザ光を走査させるときのレーザ光の照射位置の間隔が短くなるような走査経路の設定と、が含まれる。パラメータvの値を下げる場合には、演算部56Aは、造形条件である走査速度を下げるための変更情報を生成する。パラメータΔyの値を下げる場合には、演算部56Aは、照射部32からのレーザ光のスポットサイズを小さくすることと、走査部33による走査ピッチを小さくすることと、の少なくとも1つが行われるための変更情報を生成する。
【0340】
上述したように演算部56Aが変更情報を生成する場合には、まず、検出部54Aにより求められた材料層の状態と、エネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるための材料層の状態とに基づいて、エネルギー密度EDの値の変更量、すなわちエネルギー密度EDの値の増加量を算出する。この場合、エネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるための材料層の状態(たとえば材料層の平面度、材料層の厚さ、材料層の密度)を示す値と求められた材料層の状態を示す値との差と、エネルギー密度EDの値の増加量とが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶されている。演算部56Aは、このデータを参照して、材料層の状態の差からエネルギー密度EDの値の増加量を算出する。
【0341】
演算部56Aは、この算出したエネルギー密度EDの値の増加量に基づいて、(2)式から各パラメータP、P、v、Δyのうちの少なくとも1つについて、新たな値を算出する。演算部56Aは、算出したパラメータP、P、v、Δyのうちの少なくとも1つの新たな値に基づいて、上述した各造形条件を変更するための変更情報を生成する。パラメータP、P、v、Δyの値と造形条件の値とが関連付けされたデータは、記憶部58に予め記憶される。演算部56Aは、このデータを参照して、算出した新たなパラメータの値に関連付けされた造形条件の値を、新たな造形条件の値、すなわち変更情報として生成する。
なお、演算部56Aは、新たな造形条件の値と、現在の造形条件の値との差の値を変更情報として生成してもよい。
【0342】
材料層の平面度が小さい場合、積層厚が小さい場合、または密度が高い場合には、演算部56Aは、上述した平面度が大きい場合、積層厚が大きい場合、または密度が小さい場合とは逆の考え方に従って、造形条件を変更するための変更情報を生成する。すなわち、検出部54Aが、材料層の状態として、材料層の平面度が小さいことや、小さな積層厚や、高い密度を求めた場合には、演算部56Aは、(2)式に示すエネルギー密度EDの値が減少するように造形条件を変更するための変更情報を生成する。この場合、演算部56Aは、エネルギー密度EDの値が減少するように、(2)式のパラメータのうち、P、Pの値を下げ、v、Δyの値を上げる、のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。
【0343】
この場合も、演算部56Aは、設定されている造形条件により材料層を形成した場合に想定される材料層の状態と求められた材料層の状態との差と、エネルギー密度EDの値の減少量とが関連付けされたデータを参照して、求められた材料層の状態に基づいて、エネルギー密度EDの値の減少量を算出する。演算部56Aは、この算出したエネルギー密度EDの値の減少量に基づいて、(2)式からパラメータP、P、v、Δyのうちの少なくとも1つの新たな値を算出する。演算部56Aは、各パラメータの値と造形条件との値とが関連付けされたデータを参照して、算出した新たなパラメータの値に関連付けされた造形条件の値を変更情報として生成する。
なお、演算部56Aは、新たな造形条件の値と、現在の造形条件の値との差である補正値を変更情報として生成してもよい。
【0344】
パラメータPに関連して生成される変更情報は、照射部32から出射されるレーザ光の出力値または現在のレーザ光の出力値への補正値である。出力部55Aは、生成された変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59の造形制御部52に出力する。
パラメータPに関連して生成される変更情報は、以下に例示するうちの少なくとも1つである。不活性ガスの流量および流速を変更する場合の変更情報は、吸気装置131のバルブ開度や、排気装置14の排気量の値や、現在のバルブ開度や排気量の値の補正値である。この場合、出力部55Aは、生成された変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59の筐体制御部53に出力する。ベースプレート311を変更する場合の変更情報は、ヒーター313の加熱出力の値または現在の加熱出力の値の補正値である。この場合、出力部55Aは、生成された変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59の造形制御部52に出力する。走査経路を変更する場合の変更情報は、ガルバノミラー331、332の新たな傾き角度の値とその傾き角度の値を設定するタイミングまたは、現在の値からの補正値である。この場合、出力部55Aは、生成された変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59の造形制御部52に出力する。
パラメータvに対して生成される変更情報は、ガルバノミラー331、332の傾き角度の変更速度または変更速度の補正値である。出力部55Aは、生成された変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59の造形制御部52に出力する。
パラメータΔyに対して生成される変更情報は、ガルバノミラー331、332の現在の設定角度から変更される新たな設定角度または設定角度の補正値である。出力部55Aは、生成された変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59の造形制御部52に出力する。
【0345】
出力部55Aは、演算部56Aが生成した変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59に出力する。
設定部59の造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32、走査部33およびヒーター313の少なくとも1つに、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部32の動作は、変更情報に基づいた新たなレーザ出力または補正値により補正されたレーザ出力でレーザ光を出射することである。走査部33の動作は、変更情報に基づいた新たな傾き角度の変更速度や補正値により補正された変更速度、または新たな設定角度や補正値により補正された設定角度でガルバノミラー331、332を駆動すること、変更情報に基づいた新たな傾き角度とタイミングまたは補正値により補正された傾き角度とタイミングにてガルバノミラー331、332を駆動することである。ヒーター313の動作は、変更情報に基づいた新たな加熱出力または補正値により補正された加熱出力で動作することである。
筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131と排気装置14とを変更情報に基づいた新たなバルブ開度や排気量または補正値により補正されたバルブ開度や排気量にて動作させる。
これにより、形成された材料層に対して、エネルギー密度EDが所望の範囲に制御された状態で固化層の造形が行われる。
【0346】
本実施の形態の造形装置1は、形成された材料層の補修を行うことができる。以下、補修処理について説明する。
判定部57Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態に基づいて、材料層の補修の要否を判定する。判定部57Aは、仮に上述したようにして造形条件が変更されたとしてもエネルギー密度EDを所望の範囲に保つことができない場合には、材料層の補修が必要と判定する。
この場合、演算部56Aは、形成された材料層を補修するための補修情報を生成し、出力部55Aは補修情報を材料制御部51と造形制御部52とに出力する。本実施の形態では、補修として、既に形成された材料層を除去して、改めて材料層を形成し直す処理が行われる。この場合、造形制御部52は、駆動機構312を制御して、形成された材料層の厚さに応じた距離だけベースプレート311をZ方向+側に移動させる。材料制御部51は、この状態でリコーター22を制御して、ブレード221をX方向に沿って、造形槽31のX方向-側の端部から位置Bまで移動させる。これにより、ベースプレート311上または固化層上に形成されていた材料層の粉末材料Pは、ブレード221によりX方向+側に移送され、ブレード221が位置Bまで移動することにより、造形槽31上から除去される。なお、除去された粉末材料Pは、位置BよりもX方向+側に設けられる回収槽(不図示)内に回収される。
【0347】
材料層が除去されると、造形制御部52は、再び駆動機構312を制御して、これから形成する材料層の厚さに応じて、ベースプレート311をZ方向-側へ移動させる。材料制御部51は、駆動機構212を制御して、底面211をZ方向+側に移動させて、材料供給槽21から粉末材料Pを押し出させる。材料制御部51は、リコーター22を制御して、リコーター22を位置Aから位置Bまで移動させて、材料供給槽21から押し出された粉末材料Pを造形槽31に移送して、ベースプレート311または固化層上に敷き詰める。
【0348】
図21図22に示すフローチャートを参照して、リアルタイム変更の場合に、上述した第2の実施の形態の演算装置50Aが行う処理について説明する。図21図22に示す各処理は、記憶部58に記憶され、演算装置50Aにより読み出されて、実行される。
なお、図21図22のフローチャートは、演算部56Aが(2)式のエネルギー密度EDの値が所望の範囲に保たれるように造形条件を変更するための変更情報を生成する場合を例に挙げるが、(1)式~(3)式と、詳細条件とのうちの少なくとも1つが所望の範囲に保たれるための変更情報を生成してもよい。また、以下の説明では、検出部54Aが、材料層の状態として、材料層の積層厚を求める場合を例に挙げる。
【0349】
ステップS201では、演算装置50Aは、投影部60を制御して、正弦波状の強度分布を有する投影光を、強度分布の位相を変化させながら造形された固化層に投影させる。演算装置50Aは、受光部70を制御して、正弦波状の強度分布を有する投影光の位相が変化されるごとに、投影光が投影された固化層の表面を撮像させ、複数の画像データを出力させる。材料制御部51は、設定された造形条件にて材料層形成部20に材料層を形成させて、処理はステップS202へ進む。
ステップS202では、演算装置50Aは、投影部60を制御して、正弦波状の強度分布の投影光を、強度分布の位相を変化させながら形成された材料層に投影させる。演算装置50Aは、受光部70を制御して、正弦波状の強度分布を有する投影光の位相が変化されるごとに、投影光が投影された材料層の表面を撮像させ、画像データを出力させる。検出部54Aは、受光部70からの画像データを用いて、材料層の状態として、積層厚を求める。この場合、検出部54Aは、ステップS201の開始時に固化層の表面に投影光を投影したときに生成された複数の画像データから求めた第1平面形状と、固化層上に形成された材料層の表面に投影光を投影したときに生成された複数の画像データから求めた第2平面形状とを用いて、形成された材料層の積層厚を求める。
【0350】
ステップS203では、判定部57Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態(すなわち材料層の積層厚)が、第5の基準範囲を満たすか否かを判定する。なお、第5の基準範囲は、エネルギー密度EDが所望の範囲に保たれるための材料層の積層厚の範囲である。この第5の基準範囲(積層厚の範囲)は、例えば、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等によって求められた材料層の積層厚の範囲とエネルギー密度EDの相関関係に基づいて設定される。この第5の基準範囲は、記憶部58に予め記憶され、判定部57Aは、この第5の基準範囲を読み出して、ステップS203や後述のステップS205の判定処理に使用する。求められた材料層の積層厚が第5の基準範囲を満たさないと判定部57Aにより判定された場合は、処理はステップS204へ進み、求められた材料層の積層厚が第5の基準範囲を満たすと判定部57Aにより判定された場合は、処理は後述するステップS211へ進む。
なお、第5の基準範囲は、エネルギー密度EDが所望の範囲に保たれる材料層の積層厚の範囲である場合に限られず、パワー密度PDや温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるための材料層の積層厚の範囲であってもよい。
【0351】
ステップS204では、判定部57Aは、材料層の積層厚が第6の基準範囲内であるか否かを判定する。なお、第6の基準範囲は、造形条件を変更することにより(2)式に示すエネルギー密度EDを所望する範囲に保つことが可能となる材料層の積層厚の値である。第6の基準範囲は、第5の基準範囲における積層厚の範囲よりも広い積層厚の範囲である。なお、第6の基準範囲は、最大値の近傍値と最小値の近傍値との範囲でもよい。材料層の積層厚が第6の基準範囲内であると判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS205へ進み、第6の基準範囲に含まれないと判定部57Aにより判定された場合には、処理は図22のステップS208へ進む。換言すると、判定部57Aは、ステップS204において、第6の基準範囲に基づいて変更情報の生成の要否を判定し、積層厚が第6の基準範囲を満たす場合に変更情報の生成が必要と判定する。
なお、第6の基準範囲は、造形条件を変更することによりエネルギー密度EDが所望の範囲に保たれる材料層の積層厚の範囲である場合に限られず、造形条件を変更することにより、パワー密度PDや温度分布T(r)が所望の範囲に保たれるための材料層の積層厚の範囲であってもよい。なお、第6の基準範囲は、予め記憶部58に記憶されている。
【0352】
ステップS205では、求められた材料層の積層厚が第5の基準範囲よりも大きいか否かを判定する。積層厚が第5の基準範囲よりも大きいと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS206へ進み、第5の基準範囲よりも小さいと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS207へ進む。ステップS206では、演算部56Aは、エネルギー密度EDの値を上げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。この場合、上述したようにして、演算部56Aは、(2)式に示すエネルギー密度EDの値が増加するように、(2)式のパラメータのうち、P、Pの値の増加と、v、Δyの値の減少との少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、演算部56Aは、以下の造形条件の変更のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合における造形条件の変更は、照射部32から出射されるレーザ光のレーザ出力を上げること不活性ガスの流量の減少および流速の低下と、ベースプレート311の温度の上昇と、走査位置の間隔が短い走査経路へ変更することである。出力部55Aは、演算部56Aが生成した変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59に出力する。
【0353】
造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、照射部32、走査部33およびヒーター313の少なくとも1つの、次の動作のうちの少なくとも1つを行わせる。この場合の照射部33の動作は、変更情報に基づいてレーザ出力を上げることである。走査部33の動作は、変更情報に基づいてガルバノミラー331、332の駆動を変更することである。ヒーター313の動作は、加熱出力を変更情報に基づいた加熱出力に動作することである。
筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、吸気装置131と排気装置14とバルブ開度や排気量を変更情報に基づいて設定する。
その後、処理は後述するステップS211へ進む。
【0354】
材料層の積層厚が第5の基準範囲よりも小さい場合に進んだステップS207では、演算部56Aは、エネルギー密度EDの値を下げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。この場合、上述したようにして、演算部56Aは、(2)式に示すエネルギー密度EDの値が減少するように、(2)式のパラメータのうち、P、Pの値の減少と、v、Δyの値の増加との少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合、演算部56Aは、以下の造形条件の変更のうち少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合における造形条件の変更は、照射部32から出射されるレーザ光のレーザ出力を下げること、不活性ガスの流量の増加および流速の上昇、ベースプレート311の温度を下げること、走査位置の間隔が長い走査経路へ変更すること、である。出力部55Aは、演算部56Aが生成した変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59に出力する。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、造形制御部52は、変更情報に基づいて、照射部32、走査部33およびヒーター313の少なくとも1つの設定を変更して動作させる。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、変更情報に基づいて、吸気装置131および排気装置14の設定を変更して動作させる。以後、処理は後述するステップS211へ進む。
【0355】
一方、ステップS204にて材料層の積層厚が第6の基準範囲を満たさないと判定されて進んだ図22ステップS208では、求められた材料層の積層厚が第7の基準範囲を満たすか否かを判定する。なお、第7の基準範囲は、形成された材料層に補修を行うことにより(2)式に示すエネルギー密度EDを所望の範囲に保つことが可能となる材料層の積層厚の範囲である。第7の基準範囲の最大値は、第6の基準範囲の最大値よりも所定の割合だけ大きな値であり、第7の基準範囲の最小値は、第6の基準範囲の最小値よりも所定の割合だけ小さな値である。なお、第7の基準範囲は、最大値の近傍値と最小値の近傍値との範囲でもよい。なお、第7の基準範囲は、予め記憶部58に記憶されている。
求められた材料層の積層厚が第7の基準範囲を満たす場合、すなわち材料層の補修が必要と判定部57Aにより判定された場合は、処理はステップS209へ進む。この場合、材料層の積層厚が第6の基準範囲を満たしている場合には、判定部57Aは、変更情報の生成が必要と判定し、材料層の積層厚が第6の基準範囲を満たしていない場合には、判定部57Aは、材料層の補修が必要と判定する、と換言することができる。
材料層の積層厚が第7の基準範囲を満たさない場合、すなわち材料層を補修してもエネルギー密度EDを所望の範囲に保つことができないと判定部57Aにより判定された場合は、処理はステップS210へ進む。
【0356】
ステップS209では、演算部56Aは補修情報を生成し、出力部55は生成された補修情報を材料制御部51と造形制御部52とに出力する。補修情報を入力した材料制御部51と造形制御部52とは、ベースプレート311の駆動機構312やリコーター22の動作を制御して、形成された材料層を除去し、新たな材料層を形成させる。その後、処理は図21のステップS202へ戻る。これにより、積層厚が異常であった材料層が除去され、新たな材料層が形成される。
ステップS210では、演算装置50Aは三次元造形物の造形を停止させて処理を終了する。この場合、判定部57Aは、ステップ208にて材料層の積層厚が第7の基準範囲を満たしている場合には材料層の補修が必要と判定し、材料層の積層厚が第7の基準範囲を満たしていない場合には、造形停止が必要と判定した、と言うことができる。
【0357】
また、ステップS203にて求められた材料層の積層厚が第5の基準範囲を満たす場合、または、ステップS206またはステップS207にて造形条件を変更するための変更情報が生成されて進んだステップS211では、固化層の造形が行われる。ステップS203からステップS211に進んだ場合には、設定されている造形条件に基づいて形成された材料層から固化層が造形される。
ステップS206またはステップS207からステップS211へ進んだ場合には、照射部32と、走査部33と、ヒーター313と、吸気装置131および排気装置14と、のうちの少なくとも1つは、変更情報に基づいて設定された動作を行って、形成された材料層から固化層を造形する。
【0358】
ステップS212では、演算装置50Aは、三次元造形物を構成する全ての固化層の造形が終了したか否かを判定する。全ての固化層の造形が終了した場合には、演算装置50AはステップS212を肯定判定して、処理を終了する。造形されていない固化層がある場合には、演算装置50AはステップS212を否定判定して、処理はステップS201へ戻る。
なお、上述した説明においては、ステップS208の判定結果に応じて、造形が停止される場合を例に挙げたが、この例に限定されない。たとえば、図21のステップS204にて、材料層の状態が第6の基準範囲が満たされていないと判定された場合には、図22のステップS209にて演算部56Aが補修情報を生成してもよい。すなわち、判定部57Bは、検出部54Bにより求められた材料層の状態が第6の基準範囲を満たす場合には変更情報の生成が必要と判定し、材料層の状態が第6の基準範囲を満たす場合には材料層の補修が必要と判定してよい。
【0359】
<次層造形時変更>
次層造形時変更の場合、検出部54Aが材料層の状態の検出のために使用した材料層から固化層が造形された後、その固化層上に供給される粉末材料Pに対して変更情報が生成される。
以下の説明では、検出部54Aが、リアルタイム変更にて説明した場合と同様に、材料層の平面度が大きいことや、積層厚が大きいことや、密度が低いことが求められ、判定部57Aにより変更情報の生成が必要と判定された場合を例に挙げる。
演算部56Aは、リアルタイム変更にて説明した場合と同様に、(1)式~(3)式で示される基本条件のうち少なくとも1つが所望の範囲に保たれるように造形条件を変更する。以下の説明では、演算部56Aが、(2)式に示すエネルギー密度EDの値が所望の範囲に保たれるように造形条件を変更するための変更情報を生成する場合を例に挙げる。
【0360】
粉末材料Pを十分に溶融させるために、演算部56Aは、(2)式に示すエネルギー密度EDの値が増加するように、(2)式のパラメータを変更する。この場合、演算部56Aは、パラメータP、P、ρの値を上げ、v、Δy、Δzの値を下げる、の中の少なくとも1つについて変更情報を生成する。エネルギー密度EDの値を増加させるために、パラメータP、P、ρの値を上げ、パラメータv、Δy、Δzの値を下げる理由は、第1の実施の形態において説明した理由と同様である。
【0361】
パラメータPの値を大きくする場合に演算部56Aが生成する変更情報は、リアルタイム変更の場合と同様である。
パラメータρの値を大きくする場合には、演算部56Aは、ブレード221により粉末材料Pに加える圧力が増加するように変更情報を生成する。
パラメータΔzの値を小さくする場合には、演算部56Aは、積層厚を下げるために、すなわちブレード221により粉末材料Pに加える圧力が増加するように変更情報を生成する。
なお、パラメータPの値を大きくするために変更可能な造形条件として、リアルタイム変更の場合に変更される造形条件である、不活性ガスの流量の減少および流速の低下と、ベースプレート311の温度上昇と、走査経路の変更とに加えて、ブレード221の待機時間の短縮が含まれる。ブレード221の待機時間を短縮するのは、次の理由による。すなわち、造形された固化層が冷却される時間を短くして、固化層の熱が材料層に伝導され易くすることにより、粉末材料Pの温度低下が抑制できるためである。この場合、演算部56は、ブレード221の待機時間が短くなるように変更情報を生成する。
【0362】
演算部56Aは、リアルタイム変更時の場合と同様に、記憶部58に記憶されたデータを参照して、(2)式に示すエネルギー密度EDの値の増加量を算出し、算出した増加量に基づいて、パラメータP、P、ρ、v、Δy、Δzのうちの少なくとも1つの新たな値を算出する。演算部56Aは、リアルタイム変更時の場合と同様に、記憶部58に記憶されたデータを参照して、算出した新たなパラメータの値に基づいて、新たな造形条件の値を算出し、変更情報として生成する。
【0363】
材料層の平面度が小さい場合、積層厚が小さい場合、または密度が高い場合には、演算部56Aは、(2)式に示すエネルギー密度EDの値が減少するように造形条件を変更するための変更情報を生成する。この場合、演算部56Aは、エネルギー密度EDの値が減少するように、(2)式のパラメータのうち、P、P、ρの値を下げ、v、Δy、Δzの値を上げる、のうちの少なくとも1つが行われるように変更情報を生成する。この場合も、演算部56Aは、記憶部58に記憶されたデータを参照して、エネルギー密度EDの値の減少量を算出し、算出した減少量に基づいて、パラメータP、P、ρ、v、Δy、Δzのうちの少なくとも1つの新たな値を算出する。演算部56Aは、記憶部58に記憶されたデータを参照して、算出した新たなパラメータの値に基づいて、新たな造形条件の値を算出し、変更情報として生成する。
なお、演算部56Aは、新たな造形条件の値と、現在の造形条件の値との差である補正値を変更情報として生成してもよい。
【0364】
出力部55Aは、生成された変更情報を材料層の状態に関する状態として、設定部59に出力する。パラメータP、v、Δyに対して生成された変更情報は、リアルタイム変更にて生成された変更情報と同様であり、出力部55Aにより材料層の状態に関する情報として、設定部59の造形制御部52に出力される。パラメータPに対して生成された変更情報は、リアルタイム変更にて生成された変更情報と同様のものについては、出力部55Aにより設定部59の造形制御部52に出力される。パラメータPに対して生成された変更情報のうち、ブレード221の待機時間を示す変更情報は、出力部55Aにより設定部59の材料制御部51に出力される。パラメータρおよびΔzに対して生成された変更情報は、ブレード221が加える圧力または押圧機構の駆動値であり、出力部55Aにより設定部59の材料制御部51に出力される。
変更情報を入力した材料制御部51や、造形制御部52や、筐体制御部53は、現在形成されている材料層からの固化層の造形が終了すると、変更情報に基づいて、各部の動作を制御する。
【0365】
次に、図23に示すフローチャートを参照して、次層造形時変更の場合に演算装置50Aが行う処理について説明する。図23に示す各処理は、記憶部58に記憶され、演算装置50Aにより読み出されて、実行される。この場合も、検出部54Aが材料層の状態として積層厚を求めた場合を例に挙げて説明する。
なお、図23のフローチャートは、演算部56Aが(2)式のエネルギー密度EDの値が所望の範囲に保たれるように造形条件を変更するための変更情報を生成する場合を例に挙げるが、(1)式~(3)式と、詳細条件とのうちの少なくとも1つが所望の範囲に保たれるための変更情報を生成してもよい。
【0366】
ステップS221、S222およびS223の各処理は、図21のステップS201、S202およびS221の各処理と同様である。ステップS224では、図21のステップS203と同様に、判定部57Aは、材料層の積層厚が上述した第5の基準範囲を満たすか否かを判定する。第5の基準範囲を満たすと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS225へ進む。ステップS225では、図21のステップS212と同様の処理が行われる。ステップS224において、材料層の積層厚が第5の基準範囲を満たさないと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS226へ進む。ステップS226では、判定部57Aは、材料層の積層厚が上述した第6の基準範囲を満たすか否かを判定する。第6の基準範囲を満たさないと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS227へ進む。ステップS227では、図22のステップS210の処理と同様の処理が行われ、処理を終了する。
【0367】
材料層の積層厚が第6の基準範囲を満たすと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS228へ進む。ステップS228では、図21のステップS205と同様に、判定部57Aは、材料層の積層厚が第5の基準範囲よりも大きいか否かを判定する。第5の基準範囲よりも大きいと判定部57Aにより判定された場合にはステップS229へ進み、第5の基準範囲よりも小さいと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS230へ進む。ステップS229では、演算部56Aは、エネルギー密度EDの値を上げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。次材料層変更においては、図21のステップS206の場合に値を変更するパラメータに加えて、パラメータρの値の増加、またはΔzの値の減少を行うことができる。すなわち、演算部56Aは、図21のステップS206の場合に加えて、ブレード221の待機時間の短縮、積層厚を下げる、ブレード221から粉末材料Pに加える圧力を上げる、のうちの少なくとも1つを実行するように変更情報を生成する。以後、処理はステップS221に戻る。
【0368】
ステップS230では、演算部56Aは、エネルギー密度EDの値を下げるように造形条件を変更するための変更情報を生成する。次材料層変更においては、図21のステップS207の場合に値を変更するパラメータに加えて、パラメータρの値の減少、またはΔzの値の増加を行うことができる。すなわち、演算部56Aは、図21のステップS207の場合に加えて、ブレード221の待機時間の延長、積層厚を上げる、またはブレード221から粉末材料Pに加える圧力を下げる、の中から少なくとも1つを実行するように変更情報を生成する。出力部55Aは、生成された変更情報を材料層の状態に関する情報として設定部59に出力する。以後、処理はステップS221に戻る。
換言すると、判定部57Aは、ステップS226において、材料層の積層厚が第6の基準範囲を満たしている場合に、変更情報の生成が必要と判定し、材料層の積層厚が第6の基準範囲を満たしていない場合に、三次元造形物の造形の停止を判定する。
【0369】
上述したステップS229、S230で生成された変更情報は、ステップS229またはS230からステップS221に戻った後に進んだステップS223での処理を行う際の造形条件の変更に用いられる。すなわち、材料制御部51が変更情報を入力した場合には、材料制御部51は、変更情報に基づいて、リコーター22の設定を変更する。造形制御部52が変更情報を入力した場合には、変更情報に基づいて、造形制御部52は、照射部32、走査部33およびヒーター313の少なくとも1つの設定を変更して動作させる。筐体制御部53が変更情報を入力した場合には、筐体制御部53は、変更情報に基づいて、吸気装置131および排気装置14の設定を変更して動作させる。
【0370】
なお、上述したリアルタイム変更および次層造形時変更の際に、演算部56Aは、パラメータP、P、ρ、v、Δy、Δzのうちの、どのパラメータを変更する、あるいは変更しないようにするかについては、三次元造形物の造形に対するユーザの要求によって異なる。たとえば、ユーザが、造形時間が延びることを避けたいと所望している場合には、レーザ光の走査速度が低下しないように、演算部56Aは、パラメータvの値を変更しないようにすることができる。
【0371】
また、演算部56Aは、(1)式~(3)式に示される基本条件を所望の範囲に保つため、上述した造形条件以外についても変更情報を生成できる。エネルギー密度EDに影響を与える造形条件に対して変更情報が生成される場合を例に挙げると、たとえば、演算部56は、図8図9に示す造形条件のうち、照射部32から出射されるレーザ光の波長や、レーザ光の強度分布や、筐体10内の温度や、ブレード221の移動速度や、ブレード221が粉末材料Pに加える圧力や、ブレード221の形状(形状や材質)や、造形される固化層の形状データであるスライスモデルデータや、固化層や三次元造形物を支持するサポート部の形状データや、粉末材料の粒径・粒度分布や、粉末材料Pの吸湿度や、粉末材料Pの種類の中の1つ以上に対して変更情報を生成してよい。
なお、上述の第1の実施の形態と同様に、演算部56Aは、変更情報を生成するパラメータや造形条件を決定するために、指定対象情報をユーザに報知し、ユーザによる指定を受け付けてもよい。
【0372】
また、上述した図21図23のフローチャートの説明では、検出部54Aが粉末材料Pの形状として積層厚を求めた場合を例に挙げ、第5、第6および第7の基準範囲はエネルギー密度EDを所望の範囲に保つことができる積層厚の範囲として説明した。しかし、上記の各基準範囲は、たとえば、材料層の全領域における積層厚の平均値や、材料層の積層厚のばらつきの程度に基づいて設定してよい。また、検出部54Aは、材料層の表面の平面度を求めてもよいし、密度を求めてもよい。この場合、判定部57Aが判定時に使用する第5、第6および第7の基準範囲は、基本条件(パワー密度PD、エネルギー密度ED、温度分布T(r))や第1の実施の形態の変形例(1)にて説明した詳細条件の少なくとも1つが所望の範囲に保つことができる、材料層の表面の平面度の範囲や密度の範囲として設定される。
【0373】
また、検出部54Aは、材料層の状態として、材料層に含まれる異物や、材料層の表面のベースプレート311(すなわちXY平面)に対する傾斜や、材料層の表面粗さ等を求めてもよい。表面粗さは、たとえば材料層の表面のZ方向の最高点とZ方向の最低点の差であり、投影光の画像をFFT処理した空間周波数から得られる。検出部54Aは、表面粗さを求めることにより、たとえば、ブレード221の形状異常等により、材料層の表面にX方向に沿って表面の隆起や陥没が縞状に延在しているような状態を求めることができる。この場合には、各基準範囲は、基本条件や詳細条件が所望の範囲に保たれるための空間周波数の値の範囲や、最高点とZ方向の最低点の差の値の範囲が設定される。検出部54Aが異物を求めた場合には、各基準範囲は、基本条件や詳細条件が所望の範囲に保たれるための異物のサイズの値の範囲が設定される。検出部54Aが材料層の表面のベースプレート311に対する傾斜を求めた場合には、各基準範囲は、基本条件や詳細条件が所望の範囲に保たれるためのベースプレート311に対する傾斜角の値の範囲が設定される。
【0374】
また、ステップS206、S207において、演算部56Aは、上述した造形条件以外にもエネルギー密度EDに影響がある造形条件の変更情報を生成してもよい。たとえば、演算部56Aは、照射部32のレーザ光の強度分布や、筐体10内の温度や、粉末材料Pの吸湿度について変更情報を生成してよい。
【0375】
上述した処理を行うことにより、形成された材料層の状態を求め、求められた材料層の状態に基づいて、造形条件を変更するための変更情報を生成することができる。これにより、レーザ光が照射されたときに、粉末材料Pが吸収するエネルギー密度EDを所望の範囲に保つことができ、溶融不良や過剰溶融等を抑制し造形不良の発生が抑制された三次元造形物の造形が可能となる。
【0376】
次に、検出部54Aが材料層の状態として粉末材料Pの流動性を求める場合の例について説明する。
造形装置101は、まず、粉末材料Pの流動性を求めるための処理を行う。粉末材料Pの流動性の検出は、造形槽31に材料層が形成される前に行われる。材料制御部51は、粉末材料Pの流動性の検出のために、リコーター22を制御して、所定量の粉末材料Pを、図19に示すステージST上に移送させる。検出部54Aは、このステージST上に移送された所定量の粉末材料Pが形成する形状に基づいて、粉末材料Pの流動性を求める。以下の説明では、この粉末材料Pの流動性の検出をプレ検出と呼ぶ。
【0377】
図24は、プレ検出の対象となる所定量の粉末材料Pが形成する形状のZX平面での断面形状を模式的に示す図であり、断面形状が山状となるようにステージST上に粉末材料Pが移送された場合を示す。図24(a)は、粉末材料PがステージST上に移送された直後の状態を表す。粉末材料Pの流動性が高い場合には、粉末材料Pは重力の影響により断面形状の斜面を下方(Z方向-側)に向けて滑り落ち、図24(b)に示すような断面形状となる。粉末材料Pが斜面に沿って落下することにより、頂部TPのZ方向の高さは図24(a)と比較すると低く、安息角θが大きくなり、下部BTがXY平面上で広がった形状となる。安息角θは、ステージSTの上面(すなわちXY平面)と、斜面とがなす角度である。
【0378】
これに対して、流動性が低い粉末材料Pでは、図24(a)のような断面形状が形成されても、粉末材料Pが斜面上を滑り落ちにくくなる。このため、図24(c)の示す断面形状のように、図24(b)の断面形状と比較して、頂部TPのZ方向の高さは高く、安息角θが大きくなり、下部BTのXY平面上での広がりが小さくなる。
【0379】
演算装置50Aは、投影部60に対して、上記のようにステージST上に移送されたた材料粉末Pに正弦波状の強度分布を有する投影光を投影させる。受光部70は、投影光により投影されたステージST上の粉末材料Pの撮像を行い、ステージST上に山状に形成された粉末材料Pの表面形状の画像データを出力する。検出部54Aは、この画像データを用いて、ステージST上に移送された粉末材料Pが形成する形状を測定し、上述した安息角θや頂部TP(最高点)のZ方向の高さやXY平面上における下部BTの広がり幅を求める。
【0380】
判定部57Aは、検出部54Aにより、上記のようにして求められた粉末材料Pの流動性に基づいて、粉末材料Pの補修の要否を判定する。
判定部57Aは、求められた安息角θや最高点TPや下部BTの広がり幅が予め設定された第8の基準範囲を満たす場合、すなわち図24(b)に示すような断面形状の場合には、粉末材料Pの流動性が所望の流動性を満たしていると判定する。求められた安息角θや最高点TPや下部BTの広がり幅が、予め設定された第8の基準範囲を満たしていない場合、すなわち図24(c)に示すような断面形状の場合には、判定部57Aは、粉末材料Pの流動性が所望の流動性を満たしていないと判定する。
【0381】
なお、第8の基準範囲は、基本条件や詳細条件を所望の範囲に保つことができる流動性を有する粉末材料Pを山状に形成したときの安息角θの範囲や最高点TPのZ方向高さの範囲や下部BTの広がり幅の範囲である。第8の基準範囲は、例えば、ユーザによる各種の試験やシミュレーションなどによって求められた、粉末材料Pを山状に形成して測定した上述の安息角θや最高点TPのZ方向の高さや下部BTの広がり幅と、基本条件や詳細条件との相関関係に基づいて設定される。この第8の基準範囲は、記憶部58に予め記憶され、判定部57Aは、この第8の基準範囲を読み出して、後述のステップS242の判定処理に使用する。第8の基準範囲として安息角θの範囲を用いる場合には、安息角θの値が大きい程、粉末材料Pの流動性が高い。第8の基準範囲として最高点TPのZ方向の高さの範囲を用いる場合には、最高点TPのZ方向の高さが小さい程、粉末材料Pの流動性が高い。第8の基準範囲として下部BTの広がり幅の範囲を用いる場合には、下部BTの広がり幅が大きい程、粉末材料Pの流動性が高い。
【0382】
判定部57Aにより粉末材料Pの流動性が第8の基準範囲を満たす(すなわち粉末材料Pが所望する流動性以上の流動性を有している)と判定された場合には、材料制御部51は、リコーター22を制御して、材料供給槽21に収容された粉末材料Pを用いて、造形槽31に材料層を形成させる。判定部57により粉末材料Pの流動性が第8の基準範囲を満たさない(すなわち粉末材料Pが所望する流動性を有していない)と判定された場合には、演算部56Aは、材料供給槽21に収容された粉末材料Pを補修するための補修情報を生成する。流動性が低い粉末材料Pは、周辺環境の湿度を吸収していることが考えられるので、演算部56Aは、材料供給槽21内の粉末材料Pを加熱して除湿することにより粉末材料Pを補修するための補修情報を生成する。この場合、補修処理として、材料供給槽21を加熱するヒーター213により加熱する処理や、外部のヒーター等による加熱処理がある。すなわち、演算部56Aは、補修情報として、ヒーター213の加熱出力の値を生成する。生成された補修情報は、出力部55により材料制御部51に出力される。
なお、後に粉末材料Pが移送される造形槽31のベースプレート311の温度が高くなるようにヒーター313が制御されてもよい。
なお、粉末材料Pが所望する流動性を有していないと判定された場合には、ステージST上に移送されていた粉末材料Pは、ブレード221の移動により回収槽(不図示)に収容させてもよいし、材料供給槽21に戻し補修処理されてもよい。
【0383】
次に、所望する流動性を有している粉末材料Pに対して、検出部54Aは材料層の状態を求めるための処理を行う。以下の説明では、検出部54Aが、材料層の状態として、粉末材料Pの粒径・粒度分布を求める場合を例に挙げて説明する。
上述したプレ検出処理が行われ、粉末材料Pが所望する流動性を有している場合には、材料制御部51は、上述した場合と同様にして、リコーター22を制御して、材料供給槽21内の粉末材料Pを造形槽31に移送し、材料層を形成させる。この場合、プレ検出処理で使用された粉末材料Pも材料層の形成に使用することができる。すなわち、リコーター22の移動に伴って、ステージST上の粉末材料Pの造形槽31に移送される。材料層が形成されると、上述した材料層の形状を求めた場合と同様に、演算装置50Aは投影部60を制御して、材料層の表面に正弦波状の強度分布を有する投影光を投影させ、受光部70は投影光が投影された材料層の表面を撮像し、画像データを出力する。検出部54Aは、画像データを用いて、材料層を形成する粉末材料Pの粒径・粒度分布を求める。
【0384】
検出部54Aは、画像データ上にて、ある粒径の粉末材料Pと、その粒径とほぼ等しい粒径と見なせる粉末材料Pとその位置を求める。さらに、検出部54Aは、上記の粒径とは異なる粉末材料Pと、その粒径とほぼ等しい粒径と見なせる粉末材料Pとその位置を求める。検出部54Aは、上記の処理を繰り返し、粒径ごとに複数の粉末材料Pを求めて、粒径・粒度分布、すなわち異なる粒径の粉末材料Pが材料層内でどの程度均一に分布しているかを求める。これにより、材料層のある一部の領域に大きな粒径の粉末材料Pが密に存在している状態や、小さな粒径の粉末材料Pが密に存在している状態等の、熱の伝導に影響が生じることが懸念される領域が求められる。
判定部57Aは、検出部54Aにより求められた粒径・粒度分布が第5の基準範囲を満たしているか否かを判定する。なお、第5の基準範囲は、材料層にレーザ光を照射させたときに、(1)~(3)式の基本条件や第1の実施の形態の変形例(1)で説明した詳細条件の少なくとも1つが所望の範囲に保たれた状態で、粉末材料Pを溶融、凝固されるために必要な熱が伝導するための粒径・粒度分布の範囲として設定される。この粒径・粒度分布の範囲は、例えば、上述のステップS203と同様に、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。
【0385】
なお、検出部54Aは、粉末材料Pの粒径・粒度分布を求める例に代えて、粉末材料Pの真球度を求めてもよい。真球度は、粉末材料Pの個々の粉末の形状が真球からどの程度ずれているかを示す値である。検出部54Aは、たとえば画像データ上で求められた個々の粉末の面積と周囲長とに基づいて真球度を算出(検出)する。真球度が高い程、粉末材料Pの個々の粉末の形状が真球に近づき、個々の粉末材料Pの内部を一様に熱が伝導することになる。検出部54Aが真球度を求める場合には、第5の基準範囲は、材料層にレーザ光を照射させたときに、(1)~(3)式の基本条件や第1の実施の形態の変形例(1)で説明した詳細条件の少なくとも1つが所望の範囲に保たれた状態で、粉末材料Pを溶融、凝固されるために必要な熱が伝導するための真球度の範囲として設定される。この真球度の範囲は、例えば、上述のステップS203と同様に、ユーザによる各種の試験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。
【0386】
判定部57Aにより、求められた粒径・粒度分布が第5の基準範囲を満たすと判定された場合には、造形制御部52は、照射部32と走査部33とを設定された造形条件にて制御して、材料層にレーザ光を照射される。判定部57Aにより、求められた粒径・粒度分布が第5の基準範囲を満たさないと判定された場合には、判定部57Aは、変更情報の生成の要否を判定する。判定部57Aは、求められた粒径・粒度分布が第6の基準範囲を満たすと判定した場合には、変更情報の生成が必要と判定する。第6の基準範囲として、例えば、第5の基準範囲の最小値よりも所定倍小さい値と第5の基準範囲の最大値よりも所定倍大きな値との間の範囲としてもよい。または、第6の基準範囲として、たとえば、材料供給槽21内の粉末材料Pの残量が、材料層を形成するために必要な量としてもよい。材料供給槽21内の粉末材料Pの残量が、材料層を形成するために必要な量よりも多い場合には、判定部57Aは、第6の基準範囲が満たされると判定する。
第6の基準範囲が満たされると判定された場合には、演算部56Aは、変更情報として、形成された材料層を除去して新たに材料層を形成することを指示する情報を生成する。出力部55Aは、変更情報を材料層の状態に関する情報として、材料制御部51と造形制御部52とに出力する。
【0387】
材料制御部51と造形制御部52とは、入力した変更情報に基づいて、以下のように各部を制御することにより、既に形成された材料層を除去して、改めて材料層を形成し直す処理を行う。この場合、造形制御部52は、駆動機構312を制御して、形成された材料層の厚さに応じた距離だけベースプレート311をZ方向+側に移動させる。材料制御部51は、この状態でリコーター22を制御して、ブレード221をX方向に沿って移動させて、ベースプレート311上または固化層上に形成されていた材料層の粉末材料Pを造形槽31上から除去する。
材料層が除去されると、造形制御部52は、再び駆動機構312を制御して、これから形成する材料層の厚さに応じて、ベースプレート311をZ方向-側へ移動させる。材料制御部51は、リコーター22を制御して、リコーター211を位置Aから位置Bまで移動させて、材料供給槽21の粉末材料を造形槽31に移送してベースプレート311または固化層上に敷き詰める。
【0388】
図25に示すフローチャートを参照して、上述した第2の実施の形態の演算装置50Aが行う処理について説明する。図25に示す各処理は、記憶部58に記憶され、演算装置50Aにより読み出されて、実行される。
ステップS241では、プレ検出のために、材料制御部51は、リコーター22を制御して、ブレード221を移動させ、粉末材料PをステージST上に移送させる。演算装置50Aは、投影部60に正弦波状の強度分布を有する投影光を、強度分布の位相を変化させながら、ステージST上の粉末材料Pに投影させる。演算装置50Aは、受光部70に正弦波状の強度分布を有する投影光を、強度分布の位相を変化させながら投影されるごとに、ステージST上の粉末材料Pを撮像させ、複数の画像データを出力させる。検出部54Aは、受光部70からの複数の画像データを用いて、粉末材料Pの流動性を求めてステップS242へ進む。
【0389】
ステップS242では、判定部57Aは、求められた粉末材料Pの流動性が第8の基準範囲を満たすか否かを判定する。粉末材料Pの流動性が第8の基準範囲を満たさないと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS243へ進む。粉末材料Pの流動性が第8の基準範囲を満たすと判定された場合には、処理はステップS244へ進む。
【0390】
ステップS243では、判定部57Aは、求められた粉末材料Pの流動性が第9の基準範囲を満たすか否かを判定する。第9の基準範囲の範囲は、粉末材料Pに対して補修を行うことにより、(1)~(3)式の基本条件や第1の実施の形態の変形例(1)で説明した詳細条件の少なくとも1つが所望の範囲に保つことができる粉末材料Pの流動性の範囲である。第9の基準範囲は、第8の基準範囲よりも広い範囲であり、第9の基準範囲の最大値は第8の基準範囲の最大値よりも大きく、第9の基準範囲の最小値は第8の基準範囲の最小値よりも小さい。なお、第9の基準範囲は、最大値の近傍の値と最小値の近傍の値との範囲でもよい。粉末材料Pの流動性が第9の基準範囲を満たすと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS245へ進む。粉末材料Pの流動性が第9の基準範囲を満たさないと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS246へ進む。なお、第9の基準範囲は、予め記憶部58に記憶されている。
【0391】
ステップS245では、演算部56Aは、粉末材料Pを補修するための補修情報を生成し、出力部55Aは生成された補修情報を材料制御部51に出力する。補修は、上述したように、材料供給槽21内の粉末材料Pを加熱する処理であり、演算部56Aは、求められた粉末材料Pの流動性と第8の基準範囲内の任意の値(例えば中央値)との差に基づいて材料供給槽21のヒーター213による加熱量を補修情報として生成する。この場合、求められた粉末材料Pの流動性と第8の基準範囲内の任意の値(例えば中央値)との差と、ヒーター213の加熱量とは、関連付けされたデータとして記憶部58に予め記憶され、演算部56Aは、このデータを参照して加熱量を算出(検出)する。ステップS245の処理が終了すると、処理はステップS241へ戻る。粉末材料の流動性が第9の基準範囲を満たさない場合に進んだステップS246では、演算装置50Aは三次元造形物の造形を停止させ、処理を終了する。換言すると、判定部57Aは、ステップS243において、粉末材料Pの流動性が第9の基準範囲を満たす場合に、粉末材料Pの補修が必要と判定し、粉末材料Pの流動性が第9の基準範囲を満たさない場合に、三次元造形物の造形を停止すると判定する。
【0392】
一方、粉末材料Pの流動性が第8の基準範囲を満たしている場合に進んだステップS244では、材料制御部51は、設定された造形条件にて材料層形成部20に材料層を形成させる。演算装置50Aは、投影部60に正弦波状の強度分布を有する投影光を、強度分布の位相を変化させながら、形成された材料層に投影させる。演算装置50Aは、受光部70に、投影光の強度分布の位相が変化されるごとに、投影光が投影された材料層の表面を撮像させる。検出部54Aは、受光部70から出力された複数の画像データを用いて、材料層の状態を求める。材料層の状態として、検出部54Aは、上述したように、粉末材料Pの粒径・粒度分布を求める。
ステップS244の処理が終了すると、処理はステップS247へ進む。
【0393】
ステップS247においては、判定部57Aは、求められた粉末材料Pの粒径・粒度分布が第5の基準範囲を満たすか否かを判定する。粉末材料Pの粒径・粒度分布が第5の基準範囲を満たしていないと判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS248へ進む。粉末材料Pの粒径・粒度分布が第5の基準範囲を満たしていると判定部57Aにより判定された場合には、処理はステップS250へ進む。ステップS248では、判定部57Aは、第6の基準範囲を満たしているか否かを判定する。求められた粒径・粒度分布が第6の基準範囲を満たす場合には、判定部57AはステップS248を肯定判定して、処理はステップS249へ進む。求められた粒径・粒度分布が第6の基準範囲を満たさない場合には、判定部57AはステップS248を否定判定して、処理はステップS246へ進み、演算装置50により三次元造形物の造形が停止されて処理を終了する。
【0394】
ステップS249では、演算部56Aは変更情報を生成し、出力部55Aは生成された変更情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59(材料制御部51と造形制御部52)に出力する。材料制御部51は、変更情報に基づいて駆動機構212とリコーター22とを動作させ、造形制御部52は、変更情報に基づいて駆動機構312を動作させる。これにより、既に形成された材料層を除去して、改めて材料層を形成し直す。換言すると、判定部57Aは、ステップS248において、粒径・粒度分布が第6の基準範囲を満たしている場合に、変更情報の生成が必要と判定し、第6の基準範囲を満たしていない場合に、三次元造形物の造形の停止を判定する。
以後、処理はステップS244へ戻る。これにより、粒径・粒度分布が第5の基準範囲を満たしていない粉末材料Pが除去され、造形槽31に新たな材料層が形成される。
【0395】
ステップS250およびS251の各処理は、図21のステップS211およびS212の各処理と同様である。
なお、検出部54Aは、材料層の状態として、材料層の表面粗さや、粉末材料Pの移送が十分ではない材料層上での位置(すなわち粉末材料Pが不足している不足位置)や、粉末材料Pの粒子の径が異常(径が大き過ぎる、または径が小さ過ぎる)を求めてもよい。この場合、第5の基準範囲は、試験やシミュレーション等の結果に基づいて、(1)~(3)式により示される基本条件や第1の実施の形態の変形例(1)で説明した詳細条件の少なくとも1つを所望の範囲に保つことができる空間周波数の範囲や、粉末材料Pの不足位置の個数や面積や、粉末材料Pの粒子の径の値の範囲に基づいて設定されてもよい。
【0396】
なお、図25に示すフローチャートにおいて、ステップS243およびステップS246の処理は行われなくてもよい。この場合、ステップS242にて求められた粉末材料Pの流動性が第8の基準範囲を満たさない場合には、処理はステップS245へ進み、補修情報が生成されてよい。すなわち、材料層の状態(粉末材料Pの流動性)に基づいて、判定部57Aは、粉末材料Pの補修の要否を判定すればよい。
また、上述した粉末材料Pの流動性を求めるためのプレ検出は、図21図23に示すフローチャートの処理を行う際に行われてよい。すなわち、図25に示すステップS241~S243、ステップS245およびS246の処理が、図21のステップS201の開始前や、図23のステップS221の開始前に行われてよい。この場合、ステップS243とステップS246とが行われずに、材料層の状態(粉末材料Pの流動性)が第8の基準範囲を満たさない場合には、補修が行われてもよい。
【0397】
なお、上述した第2の実施の形態では、造形装置101が有する演算装置50Aにおいて、検出部54Aにより求められた材料層の状態に基づいて、演算部56Aが変更情報を生成し、出力部55Aが変更情報を状態情報として設定部59へ出力する場合を例に挙げた。しかし、演算装置50Aは、このような例に限定されず、図26に示す構成を有してもよい。すなわち、演算装置50Aは、検出部54Aと、出力部55Aと、設定部69Aとを有する。設定部69Aは、第2の実施の形態における、材料制御部51と、造形制御部52と、筐体制御部53と、演算部56Aと、判定部57Aと、記憶部58と、を有する。この場合、検出部54Aは、第2の実施の形態の場合と同様にして受光部70から出力された画像データを用いて、材料層の状態を求める。出力部55Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態自体の情報を材料層の状態に関する情報として、設定部59へ出力する。設定部69Aの演算部56Aと、判定部57Aとは、第2の実施の形態と同様にして造形条件を変更するための変更情報を生成する。設定部69Aが有する材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53のうち少なくとも1つは、生成された変更情報に従って、第2の実施の形態と同様にして、造形装置101の各構成の動作を制御する。
なお、図19に示す第2の実施の形態の演算装置50Aのうちの設定部59以外の構成や、図26に示す変形例における演算装置50Aのうちの設定部69A以外の構成が、造形装置101とは異なる外部の演算装置に含まれてもよい。
【0398】
また、第2の実施の形態にて説明した造形装置101の構成の一部に基づいて、材料層の状態に関する情報を取得して、材料層の状態に関する情報に基づいて材料層の状態を求める検出システムを構成してもよい。
図27(a)に、この場合の造形装置101および検出システム500Aの要部構成の概略を模式的に示す。造形装置101は、図19を用いて説明した、第2の実施の形態の造形光学部36のうちの形状測定部314と、第2の実施の形態における演算装置50Aの検出部54Aと出力部55Aと演算部56Aと判定部57Aと記憶部58を有する検出システム500Aと、筐体10と、材料層形成部20と、造形部30のうちの形状計測部314以外の構成と、図19の演算装置50Aの設定部59と、を有する。
【0399】
形状測定部314は、材料層へ正弦波状の強度分布を有する投影光を投影し、投影光が投影された材料層のうちの少なくとも一部の領域の画像データを取得する。なお、材料層の状態を、例えば、ステレオカメラ法等を用いて求める場合には、形状測定部314は、投影部60を有さなくてもよい。演算装置50Aの検出部54Aは、形状測定部314で取得された画像データを用いて、第2の実施の形態と同様にして、材料層の状態を求める。演算部56Aと、判定部57Aとは、第2の実施の形態と同様にして造形条件を変更するための変更情報を生成する。生成された変更情報は、出力部55Aにより材料層の状態に関する情報として検出システム500Aから設定部59へ出力される。設定部59が有する材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53のうち少なくとも1つは、生成された変更情報に従って、第2の実施の形態と同様にして、造形装置101の各構成の動作を制御する。なお、図27(a)に示すように、説明の便宜上、検出システム500Aの検出部54Aと出力部55Aと演算部56Aと判定部57Aと記憶部58Aと、設定部59とが纏めて1つの演算装置に備えられる構成として表した。しかしながら、検出システム500Aの検出部54Aと出力部55Aと演算部56Aと判定部57Aと記憶部58と、設定部59とは異なる演算装置に備えられていてもよい。
【0400】
なお、図27(b)に示すように、検出システム501Aは、図27(a)の場合の形状測定部314と、図26を用いて説明した、演算装置50Aのうちの検出部54Aおよび出力部55Aとを有してもよい。この場合、造形装置101は、検出システム501Aと、図26に示す演算装置50Aが有する設定部69Aと、筐体10と、材料層形成部20と、造形部30のうちの形状測定部314以外の構成と、を有する。
形状測定部314は、図27(a)の場合と同様にして、画像データを取得する。検出部54Aは、この画像データを用いて、第2の実施の形態と同様にして材料層の状態を求める。出力部55Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態自体の情報を材料層の状態に関する情報として、設定部69Aへ出力する。設定部69Aと、演算部56Aと、判定部57Aとは、第2の実施の形態と同様にして造形条件を変更するための変更情報を生成する。設定部69Aが有する材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53のうち少なくとも1つは、生成された変更情報に従って、第2の実施の形態と同様にして、造形装置101の各構成の動作を制御する。なお、図27(b)に示すように、説明の便宜上、検出システム501Aの検出部54A及び出力部55Aと、設定部69Aとが纏めて1つの演算装置に備えられる構成として表した。しかしながら、検出システム501Aの検出部54A及び出力部55Aと、設定部69Aとは異なる演算装置に備えられていてもよい。
【0401】
また、演算部56Aは、変更情報の生成と修正情報の生成とを行うものに代えて、変更情報の生成のみを行ってよい。また、演算部56Aは、レーザ光の条件と、走査条件と、筐体10の内部の雰囲気に関連する条件と、材料層形成条件と、支持部条件と、設計データと、粉末材料Pに関連する条件との少なくとも1つの造形条件に対して変更情報を生成してよい。
また、上述した第2の実施の形態においては、次層造形時変更の場合を例に挙げて説明を行ったが、第1の実施の形態において説明した次造形物造形時変更の際にも、粉末材料Pの形状に基づいて生成された変更情報によって造形条件が変更されてもよい。すなわち、演算部56は、三次元造形物の造形が終了した後、新たに三次元造形物を造形するときに、変更情報を生成することができる。
【0402】
次造形物造形時変更の場合には、判定部57Aは、第5の基準範囲を満たさないが第6の基準範囲を満たす場合に変更情報の生成が必要と判定する。この場合は、上述した場合と同様に、演算部56Aは、造形条件を変更するための変更情報を生成する。判定部57Aは、材料層の状態が第6の基準範囲を満たさない場合には造形された三次元造形物に補修が必要と判定し、求められた材料層の状態と第5の基準範囲内の任意の値(例えば、中央値)との差に基づいて、演算部56Aが補修情報を生成してよい。なお、次造形物造形時変更の場合には、補修を行う箇所が三次元造形物の輪郭に存在する場合には、補修が可能である。
勿論、次造形物造形時変更の際にも、第7の基準範囲を設けて、判定部57Aが造形停止を判定してもよい。判定部57Aが材料層の状態が第6の基準範囲を満たしていないと判定すると、材料層の状態が第7の基準範囲を満たすか否かを判定する。材料層の状態が第7の基準範囲を満たす場合には、判定部57Aは造形された三次元造形物に補修が必要と判定し、材料層の状態が第7の基準範囲を満たさないときには、次の三次元造形物の造形の停止を判定すればよい。
【0403】
以上で説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態により得られた(8)~(16)の作用効果に加えて、以下の作用効果を得ることができる。
(1)レーザ光の照射により粉末材料Pから形成した層状の材料層を加熱して造形した固化層から三次元造形物を造形する造形装置1に用いられる演算装置50は、検出部54Aと出力部55Aとを備える。検出部54Aは、形成された材料層の形状に基づく材料層の状態を求め、出力部55Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態に関する情報を造形装置1に出力する。これにより、固化層の造形に用いられる材料層の状態から、造形中の三次元造形物に造形不良等が発生する可能性の有無などが推定可能となる。求められた材料層の状態に関する情報を三次元造形物の造形に反映させた場合には、三次元造形物での造形不良等の発生が抑制可能となる。
【0404】
(2)材料層の状態は、材料層を形成する粉末材料Pの流動性を含む。これにより、粉末材料Pが材料層の形成に適した状態であるか否かが検出可能となり、三次元造形物での造形不良等の発生が抑制される。
【0405】
(3)材料層の状態は、材料層の平面度と、密度と、積層厚との少なくとも1つを含む。これにより、形成された材料層が固化層の造形に適しているか否かの検出が可能となり、三次元造形物での造形不良等の発生が抑制される。
【0406】
(4)演算部56Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態に基づいて、三次元造形物の造形に用いる造形条件を変更するための変更情報を生成し、出力部55Aは、生成された変更情報を材料層の状態に関する情報として出力する。これにより、材料層の状態に基づいて、三次元造形物での造形不良等の発生が抑制できるように、造形条件の変更が可能となる。
【0407】
(5)判定部57Aは、検出部54Aにより求められた粉末材料Pの流動性に基づいて、粉末材料Pの補修の要否を判定する。これにより、流動性が低く、材料層の形成に適していない粉末材料Pを補修した後に材料層の形成に使用することができるので、造形不良等の発生が抑制された高品質の三次元造形物の造形が可能となる。
【0408】
(6)判定部57Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態に基づいて、三次元造形物を造形するための変更情報の生成の要否を判定する。これにより、三次元造形物の造形中に造形不良等が発生する可能性がある場合に、造形条件の変更が可能となるので、三次元造形物の内部において造形不良等の発生が抑制された、高品質の三次元造形物の造形が可能となる。
【0409】
(7)判定部57Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態が第6の基準範囲を満たす場合には変更情報の生成が必要と判定し、検出部54Aにより求められた材料層の状態が第6の基準範囲を満たさない場合は、粉末材料Pの補修が必要と判定する。これにより、材料層の状態に応じて、造形不良等の発生の抑制に適した処理が選択可能となる。
【0410】
(8)判定部57Aは、検出部54Aにより求められた材料層の状態が第7の基準範囲(または第9の基準範囲)を満たす場合には補修情報の生成が必要と判定し、第7の基準範囲(または第9の基準範囲)を満たさない場合には、三次元造形物の造形停止が必要と判定する。これにより、三次元造形物の造形に適していない粉末材料Pを用いることにより造形不良等を有する三次元造形物が造形されることを停止できるので、粉末材料Pや作業時間が浪費されることを抑制できる。
【0411】
(9)判定部57Aにより材料層の補修が必要と判定されると、演算部56Aは、形成された材料層を除去し、新たに材料層を形成するための補修情報を生成する。これにより、固化層の造形に適していない材料層を除去して、固化層の造形時に造形不良等の発生が抑制できるように材料層を形成し直すことが可能となるので、高品質の三次元造形物を造形可能となる。
【0412】
(10)検出部54Aにより求められた粉末材料Pの流動性に基づいて、判定部57Aが粉末材料Pの補修が必要と判定すると、演算部56Aは、粉末材料Pに熱処理を加えて補修を行わせるための補修情報を生成する。これにより、湿度を吸収して流動性が低下した粉末材料Pを加熱することにより、再び吸湿度の低い、固化層の造形に適した状態に戻すことができるので、造形不良等の発生が抑制された高品質の三次元造形物の造形が可能となる。
【0413】
-第3の実施の形態-
図面を参照して、第3の実施の形態による造形装置について説明する。以下の説明では、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同じである。本実施の形態では、第1の実施の形態の造形装置が有する撮像装置と、第2の実施の形態の造形装置が有する投影部および受光部とを備える。撮像装置により取得された画像データに基づいて検出対象領域の状態が求められ、検出対象領域の状態に基づいて変更情報が生成されるとともに、受光部により取得された画像データに基づいて材料層の状態が求められ、材料層の状態に基づいて変更情報が生成される。
【0414】
図28は、第3の実施の形態の造形装置102の要部構成を模式的に示すブロック図である。第3の実施の形態の造形装置101は、図1に示す第1の実施の形態の造形光学部35とは異なる造形光学部37を有する。造形光学部37は、第1の実施の形態の造形光学部35と、図19に示す第2の実施の形態の形状測定部314(投影部60および受光部70)とを有する。第3の実施の形態の演算装置50Bは、第1の実施の形態における検出部54、出力部55、演算部56、判定部57に代えて、検出部54B、出力部55B、演算部56B、判定部57Bを備える。
【0415】
図29は、第3の実施の形態の造形光学部37の配置の一例を模式的に示す図である。
照射部32と、走査部33と、フォーカスレンズ323と、取得部310(すなわち色収差補正光学系43と、二分岐光学系42と、撮像装置41と、ハーフミラー301と、視野絞り302)とは、図2に示す第1の実施の形態の場合と同様に配置される。第2の実施の形態の形状測定部314(すなわち投影部60と受光部70)が、図20に示す例と同様に、材料層への投影光の投影、および投影光が投影された材料層の撮像が可能となるように配置される。
なお、図29に示す配置例においても、レーザ光の出射方向や進行方向や反射方向は一例であり、造形光学部37の各構成の配置に応じて、適宜好ましいレーザ光の出射方向や進行方向や反射方向が設定される。また、取得部310は、造形光学部37の各構成の配置に応じて、ハーフミラー301と、視野絞り302とを備えていなくてもよい。
【0416】
なお、造形光学部37は、第1の実施の形態およびその変形例にて説明した配置例と、第2の実施の形態およびその変形例にて説明した配置例とを組み合わせた配置を有することができる。たとえば、造形光学部37は、二分岐光学系42に代えて2台の撮像装置を有してよい。または、造形光学部37は、二分岐光学系42に代えて透過する光の波長を切り替え可能なフィルタを有してよい。または、造形光学部37は、二分岐光学系42に代えて波長λ1と波長λ2のそれぞれの波長を選択するフィルタを備える撮像装置41を有してよい。または、造形光学部37は、図3に示すように配置された造形光学部35と、図20の配置例に示す投影部60と受光部70と、を有してよい。
【0417】
また、造形光学部37は、図20の配置例に示す投影部60と、二分岐光学系とを有してもよい。この場合の二分岐光学系は、図2図3の配置例に示す二分岐光学系42が検出対象領域からの熱放射光を2つの異なる波長の光に分岐させる構成に加えて、材料層の表面で反射された投影光を撮像素子411に導く構成を有する。この場合の二分岐光学系には、光束合成部425を透過した光のうち、投影光の波長を透過するバンドパスフィルタを介して撮像素子411に導く構成が設けられるとよい。これにより、投影部60からの投影光を撮像装置41の撮像素子411で受光可能とさせることができるので、撮像装置41が受光部70と同様の機能を有することができる。すなわち、造形光学部37は受光部70を有さなくてよい。
【0418】
また、造形光学部37は、図2図3の配置例に示す照射部32を、投影光を投影させるための光投影部として機能させ、図20の配置例に示す受光部70が投影光を受光してもよい。この場合、照射部32から低出力で出射されたレーザ光が投影光として利用される。または、照射部32が、たとえば材料層を溶融するためのレーザ光が照射する位置を示すためのガイド光を照射可能な構成を有している場合には、このガイド光が投影光として利用される。照射部32のガイド光が投影光として利用される場合には、上述したように、検出対象領域からの熱放射光を2つの異なる波長の光に分岐させる構成に加えて、材料層の表面で反射された投影光を撮像素子411に導く構成を有する二分岐光学系により、撮像装置41に照射部32からのガイド光を受光させてもよい。
【0419】
第3の実施の形態の造形装置102では、検出部54Bは、撮像装置41から出力された画像データを用いて、第1の実施の形態にて説明した場合と同様に、粉末材料Pの検出対象領域の状態を求める。演算部56Bは、検出部54Bにより求められた粉末材料Pの検出対象領域の状態に基づいて、第1の実施の形態および変形例(1)にて説明した場合と同様にして、造形条件を変更するための変更情報や、補修を行うための補修情報を生成する。造形装置102は、造形条件の変更として、リアルタイム変更、次層造形時変更および次造形物造形時変更の少なくとも1つを行うことができる。
【0420】
第3の実施の形態の造形装置102では、検出部54Bは、受光部70からの画像データを用いて、第2の実施の形態の場合と同様にして、材料層の状態を求める。演算部56Bは、検出部54Bにより求められた材料層の状態に基づいて、第2の実施の形態にて説明した場合と同様にして、造形条件を変更するための変更情報や補修を行うための補修情報を生成する。
【0421】
図30に示すフローチャートを参照して、上述した第2の実施の形態の演算装置50Bが行う処理について説明する。図30に示す各処理は、メモリ(不図示)に記憶され、演算装置50Bにより読み出されて、実行される。
ステップS301では、演算装置50Bは、プレ検出処理を行う。すなわち、図25のステップS241~S243、S245、S246の処理を行う。プレ検出処理が終了すると、処理はステップS302へ進む。ステップS302では、演算装置50Bは、投影部60を制御して、材料層の表面に正弦波状の強度分布を有する投影光を、強度分布の位相を変化させながら投影させる。演算装置50Bは、受光部70に、投影光の強度分布の位相が変化するごとに、投影光が投影された材料層の表面を撮像させ、複数の画像データを生成させる。材料制御部51は、リコーター22を制御して、造形槽31に材料層を形成させてステップS303へ進む。ステップS303では、演算装置50Bは、投影部60を制御して、材料層の表面に正弦波状の強度分布を有する投影光を、強度分布の位相を変化させながら投影させる。演算装置50Bは、受光部70に、投影光の強度分布の位相が変化するごとに、投影光が投影された材料層の表面を撮像させ、複数の画像データを生成させる。検出部54Bは、ステップS302で取得された複数の画像データと、ステップS303で取得された複数の画像データとに基づいて、材料層の状態(材料層の平面度、積層厚、密度、粉末材料Pの流動性等)を求めて、処理はステップS304へ進む。
【0422】
ステップS304では、判定部57Bは、検出部54Bにより求められた材料層の状態に基づいて変更情報の生成の要否の判定や、補修情報の生成の要否を判定する。判定部57Bにより変更情報や補修情報の生成が必要と判定された場合には、演算部56Bは、造形条件を変更するための変更情報や、補修を行うための補修情報を生成する。すなわち、判定部57Bおよび演算部56Bは、図21図22のステップS203~S209の処理や、図25のステップS248、S249の処理を行って、処理はステップS305へ進む。ステップS305では、造形制御部52は照射部32や走査部33を制御して、レーザ光を材料層に照射させて固化層を造形させる。撮像装置41は、たとえば所定の時間間隔ごとや、レーザ光が走査部33によりXY平面上で所定の距離だけ走査されるごとに、レーザ光により照射された溶融池を含む検出対象領域の撮像を行い、画像データを出力する。検出部54Bは、撮像装置41からの画像データが出力されるごとに、材料層上のレーザ光が照射される位置を中心とした検出対象領域の状態を求めてステップS306へ進む。
【0423】
ステップS306では、判定部57は、検出部54Bにより求められた検出対象領域の状態に基づいて変更情報の生成の要否の判定を行う。演算部56Bは、判定部57Bにより変更情報の生成が必要と判定された場合には、リアルタイム変更のための変更情報を生成する。すなわち、判定部57Bおよび演算部56Bは、図10に示すステップS33~S36や、図11に示すステップS43~S46や、図12に示すステップS53~S56の処理を行って、処理はステップS307へ進む。
【0424】
ステップS307では、演算装置50Bは、1層の固化層の造形が終了したか否かを判定する。1層の固化層の造形が終了した場合には、演算装置50BはステップS307を肯定判定し、処理はステップS308へ進む。1層の固化層の造形が終了していない場合には、演算装置50BはステップS307を否定判定し、処理はステップS305へ戻る。ステップS308では、判定部57Bは、検出部54Bにより求められた材料層の状態に基づいて変更情報の生成の要否の判定や、補修情報の生成の要否を判定する。判定部57Bにより変更情報や補修情報の生成が必要と判定された場合には、演算部56Bは、次層造形時変更のための変更情報や補修情報を生成する。すなわち、判定部57Bおよび演算部56Bは、図13図14のステップS63~S70や、図15図16のステップS83~S90の処理を行って、処理はステップS309へ進む。
【0425】
ステップS309では、演算装置50Bは、三次元造形物を構成する複数の固化層のうちの全ての固化層の造形が終了したか否かを判定する。全ての固化層の造形が終了した場合には、演算装置50BはステップS309を肯定判定し、処理を終了する。全ての固化層の造形が終了していない場合には、演算装置50BはステップS309を否定判定し、処理はステップS301へ戻る。
【0426】
なお、ステップS309の処理の後、演算装置50Bは、次造形物造形時変更のための処理を行ってもよい。この場合、三次元造形物を造形開始から造形終了までに検出部54Bにより求められた検出対象領域の状態と材料層の状態とに基づいて、判定部57Bは次の三次元造形物を造形するための造形条件の変更の要否を判定する。この場合、判定部57Bは、図10のステップS34や、図11のステップS44や、図12のステップS54や、図13のステップS65や、図15のステップS85や、図21のステップS205や、図23のステップS228や、図25のステップS248と同様にして、検出対象領域の状態または材料層の状態が、予め定められた各基準範囲を満たしているか否かを判定する。演算部56Bは、判定部57Bにより造形条件の変更が必要と判定された場合には、求められた検出対象領域の状態または材料層の状態と基準範囲内の任意の値(たとえば中央値)との差に基づいて、造形条件を変更するための変更情報を生成する。判定部57Bにより造形条件の変更が必要ないと判定された場合には、造形された三次元造形物に対して、上述した後処理が行われる。
【0427】
判定部57Bは、図13のステップS64や、図14のステップS68~S70や、図15のステップS84や、図16のステップS88~S90、図21のステップS204や、図22のステップS208~210等と同様にして、各基準範囲を満たしているか否かを判定してもよい。判定部57Bにより造形された三次元造形物の修正が必要と判定された場合には、演算部56Bは、造形された三次元造形物を修正するための修正情報を生成する。判定部57Bにより造形された三次元造形物の修正が不要と判定された場合には、演算装置50Bは、以後の三次元造形物の造形を停止させる。
【0428】
以上の処理により、第1の実施の形態および第2の実施の形態の場合と同様に、(1)~(3)式で示す溶融、凝固のための基本条件を確保した状態で固化層の造形を行うことができるので、三次元造形物に造形不良等が発生することが抑制可能となる。
【0429】
なお、上述した第3の実施の形態では、造形装置102が有する演算装置50Bにおいて、検出部54Bが検出対象領域の状態および材料層の状態を求め、演算部56Bが変更情報を生成し、出力部55Bが変更情報を状態情報や材料層の状態に関する情報として設定部59へ出力する場合を例に挙げた。しかし、演算装置50Bは、このような例に限定されず、図31に示す構成を有してもよい。すなわち、演算装置50Bは、検出部54Bと、出力部55Bと、設定部69Bとを有する。設定部69Bは、第3の実施の形態における、材料制御部51と、造形制御部52と、筐体制御部53と、演算部56Bと、判定部57Bと、記憶部58と、を有する。この場合、検出部54Bは、第1の実施の形態の場合と同様にして撮像装置41から出力された画像データを用いて、検出対象領域の状態を求め、第2の実施の形態の場合と同様にして受光部70から出力された画像データを用いて、材料層の状態を求める。出力部55Bは、検出部54Bにより求められた検出対象領域の状態自体の情報を状態情報として、設定部69Bへ出力する。出力部55Bは、検出部54Bにより求められた材料層の状態自体の情報を材料層に関する情報として、設定部69Bへ出力する。設定部69Bの演算部56Bと、判定部57Bとは、第1の実施の形態および変形例(1)や第2の実施の形態と同様にして造形条件を変更するための変更情報を生成する。設定部69Bが有する材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53のうち少なくとも1つは、生成された変更情報に従って、第1の実施の形態および変形例(1)や第2の実施の形態と同様にして、造形装置102の各構成の動作を制御する。
なお、図28に示す第3の実施の形態の演算装置50Bのうちの設定部59以外の構成や、図31に示す変形例における演算装置50Bのうちの設定部69B以外の構成が、造形装置102とは異なる外部の演算装置にて含まれてもよい。
【0430】
第3の実施の形態にて説明した造形装置102の構成の一部に基づいて、検出対象領域の情報や、投影光が投影された材料層の少なくとも一部の領域の画像データを取得して、検出対象領域の状態と材料層の状態を求める検出システムを構成してもよい。
図32(a)に、この場合の造形装置1および検出システム500Bの要部構成の概略を模式的に示す。造形装置1は、図28を用いて説明した、第3の実施の形態の造形光学部37のうちの取得部310および形状測定部314と、第3の実施の形態における図28の演算装置50Bの検出部54Bと出力部55Bと演算部56Bと判定部57Bと記憶部58とを有する検出システム500Bと、筐体10と、材料層形成部20と、造形部30のうちの取得部310および形状測定部314以外の構成と、図28の演算装置50Bの設定部59と、を有する。
【0431】
取得部310は、図18(a)を参照して説明した場合と同様にして、材料層の検出対象領域の情報を取得する。検出対象領域の情報とは、取得部310が有する撮像装置41が、材料層の検出対象領域からの熱放射光に基づいて、第1の実施の形態にて説明した場合と同様にして生成した画像データである。すなわち、この画像データは、検出対象領域からの熱放射光のうちの異なる波長(波長λ1とλ2)の光のそれぞれに基づいて生成される画像データを含む。なお、この場合も、取得部310として温度計や高速カメラ等が用いられてもよい。取得部310が温度計の場合には、検出対象領域の情報は、温度計により求められた検出対象領域の温度である。取得部310が高速カメラの場合には、検出対象領域の情報は、高速カメラにより取得された検出対象領域のカラー画像のデータである。演算装置50Bの検出部54Bは、取得部310で取得された検出対象領域の情報を用いて、第1の実施の形態や変形例と同様にして、検出対象領域の状態を求める。
【0432】
形状測定部314は、図27(a)を参照して説明した場合と同様にして、材料層へ正弦波状の強度分布を有する投影光を投影し、投影光が投影された材料層のうちの少なくとも一部の領域の画像データを取得する。なお、材料層の状態を、例えば、ステレオカメラ法等を用いて求める場合には、形状測定部314は、投影部60を有さなくてもよい。
【0433】
演算部56Bと、判定部57Bとは、第1の実施の形態および変形例(1)や、第2の実施の形態と同様にして造形条件を変更するための変更情報を生成する。生成された変更情報は、出力部55Bにより状態情報または/および材料層の状態に関する情報として検出システム500Bから設定部59へ出力される。設定部59が有する材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53のうち少なくとも1つは、生成された変更情報に従って、第1の実施の形態および変形例(1)や第2の実施の形態と同様にして、造形装置102の各構成の動作を制御する。なお、図32(a)に示すように、説明の便宜上、検出システム500Bの検出部54Bと出力部55Bと演算部56Bと判定部57Bと記憶部58と、設定部59とが纏めて1つの演算装置に備えられる構成として表した。しかしながら、検出システム500Bの検出部54Bと出力部55Bと演算部56Bと判定部57Bと記憶部58と、設定部59とは異なる演算装置に備えられていてもよい。
【0434】
なお、図32(b)に示すように、検出システム501Bは、図31に示す造形光学部37のうちの取得部310および形状測定部314と、第3の実施の形態の演算装置50Bのうちの検出部54Bおよび出力部55Bとを有してもよい。この場合、造形装置102は、検出システム501Bと、図31に示す演算装置50Bが有する設定部69Bと、筐体10と、材料層形成部20と、造形部30のうちの取得部310および形状測定部314以外の構成と、を有する。
【0435】
取得部310は、図32(a)の場合と同様にして、検出対象領域の情報を取得する。形状測定部314は、図32(a)の場合と同様にして、材料層のうちの少なくとも一部の領域の画像データを取得する。検出部54Bは、この検出対象領域の情報を用いて、第1の実施の形態や変形例と同様にして、取得部310からの画像データを用いて検出対象領域の状態を求める。検出部54Bは、第2の実施の形態と同様にして、形状測定部314からの画像データを用いて材料層の状態を求める。出力部55Bは、検出部54Bにより求められた検出対象領域の状態自体の情報を状態情報として、設定部69Bへ出力する。また、出力部55Bは、検出部54Bにより求められた材料層の状態自体に関する情報を材料層の状態に関する情報として設定部69Bへ出力する。設定部69Bの演算部56Bと、判定部57Bとは、第1の実施の形態および変形例や第2の実施の形態と同様にして造形条件を変更するための変更情報を生成する。設定部69Bが有する材料制御部51、造形制御部52および筐体制御部53のうち少なくとも1つは、生成された変更情報に従って、第1の実施の形態および変形例や第2の実施の形態と同様にして、造形装置102の各構成の動作を制御する。なお、図32(b)に示すように、説明の便宜上、検出システム501Bの検出部54B及び出力部55Bと、設定部69Bとが纏めて1つの演算装置に備えられる構成として表した。しかしながら、検出システム501Bの検出部54B及び出力部55Bと、設定部69Bとは異なる演算装置に備えられていてもよい。
【0436】
また、演算部56Bは、変更情報の生成と修正情報の生成とを行うものに代えて、変更情報の生成のみを行ってよい。また、演算部56Bは、レーザ光の条件と、走査条件と、筐体10の内部の雰囲気に関連する条件と、材料層形成条件と、支持部条件と、設計データと、粉末材料Pに関連する条件との少なくとも1つの造形条件に対して変更情報を生成してよい。
また、造形装置102は、造形条件の変更として、リアルタイム変更、次層造形時変更および次造形物造形時変更のうちの少なくとも1つを行ってよい。
上述した第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態および第2の実施の形態で得られた作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0437】
上述した第1の実施の形態とその変形例や、第2の実施の形態とその変形例や、第3の実施の形態とその変形例にて説明した演算装置50、50A、50Bが実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録しておき、このプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて、上述した処理を実行してもよい。なお、ここでいうコンピュータシステムとは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
【0438】
なお、上記コンピュータシステムは、WWWシステムを利用したホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含む。また、上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含む。
【0439】
上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する伝送媒体は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0440】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0441】
1、101、102…造形装置、10…筐体、
14…排気装置、20…材料層形成部、
22…リコーター、30…造形部、
32…照射部、33…走査部、
35、36、37…造形光学部
41…撮像装置、50、50A、50B…演算装置、
54、54A、54B…検出部、55、55A、55B…出力部、
56、56A、56B…演算部、57、57A、57B…判定部、
59、69、69A、69B…設定部
60…投影部、70…受光部、
221…ブレード、310…取得部、
314…形状測定部、331…ベースプレート
500、500A、500B、501、501A、501B…検出システム
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