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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038612
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】電解液濃縮設備の修理方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 11/02 20060101AFI20240313BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20240313BHJP
   F28F 11/00 20060101ALI20240313BHJP
   F28F 21/02 20060101ALI20240313BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F28F11/02
F28F9/02 J
F28F11/00 A
F28F21/02
F28D7/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142741
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】青木 英和
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103BB26
3L103CC01
3L103DD08
3L103DD42
(57)【要約】
【課題】長期間の設備停止を要さずに電解液中への蒸気の混入を防止できる電解液濃縮設備の修理方法を提供する。
【解決手段】銅の電解液を加熱する加熱缶と電解液中の水分を蒸発させて濃縮させる真空蒸発缶を備え、加熱缶20が、内部に高圧蒸気が導入されるシェル22aとその内側に配置されたカーボン製ストレートチューブで構成されかつチューブ内部に電解液を導入して高圧蒸気との熱交換が可能な複数の伝熱管22bから成るシェルアンドチューブ型熱交換部22と、熱交換部の上部側に連設され伝熱管の各上側開口端から排出される加熱された電解液を合流する上部液室23と、熱交換部の下部側に連設され蒸発缶から供給される電解液を受け入れて伝熱管の各下側開口端へ分流する下部液室24を有する電解液濃縮設備の修理法であって、伝熱管が破損したときに該伝熱管の上側開口端部と下側開口端部にカーボン製プラグ30を差し込んで各開口端部を封止することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅の電解液を加熱する加熱缶と、電解液中の水分を蒸発させて電解液を濃縮させる真空蒸発缶を備え、かつ、
上記加熱缶が、
内部に高圧蒸気が導入されるシェルと、該シェルの内側に配置されたカーボン製のストレートチューブで構成されかつストレートチューブの内部に電解液を導入して上記高圧蒸気との熱交換が可能な複数の伝熱管から成るシェルアンドチューブ型熱交換部と、
上記熱交換部の上部側に連設されかつ上記伝熱管の各上側開口端から排出される加熱された電解液を合流する上部液室と、
上記熱交換部の下部側に連設されかつ上記真空蒸発缶から供給される電解液を受け入れて上記伝熱管の各下側開口端へ分流する下部液室を有する電解液濃縮設備であって、
上記熱交換部における伝熱管の一部が破損したときの修理方法において、
上記破損した伝熱管の上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグを差し込んで各開口端部を封止することを特徴とする電解液濃縮設備の修理方法。
【請求項2】
破損した伝熱管内における上記プラグの差し込み深さより深い位置に上記伝熱管の内径と略同一の外径を有する仮栓を先に嵌め込み、かつ、上記プラグの先端および挿入されるプラグの外周側面に接着剤を塗布した後、上記伝熱管の上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグを差し込んで上記仮栓とプラグを接続させることを特徴とする請求項1に記載の電解液濃縮設備の修理方法。
【請求項3】
上記仮栓が、シリコン製の仮栓またはテフロン(登録商標)加工を施した仮栓で構成されることを特徴とする請求項2に記載の電解液濃縮設備の修理方法。
【請求項4】
上記真空蒸発缶から排出される濃縮電解液の比重を計測し、計測した濃縮電解液の比重値と管理値とを比較して伝熱管における破損の有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の電解液濃縮設備の修理方法。
【請求項5】
上記シェルアンドチューブ型熱交換部におけるシェル内への高圧蒸気の導入を停止し、かつ、閉止されたシェル内を水で満たして破損した伝熱管を特定することを特徴とする請求項4に記載の電解液濃縮設備の修理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅の電解液を加熱する加熱缶と、電解液中の水分を蒸発させて電解液を濃縮させる真空蒸発缶とを備える電解液濃縮設備の修理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅の電解精製プロセスでは、カソード上に平滑な電析物を得るため、銅濃度40~55g/リットル、遊離硫酸濃度150~200g/リットルからなる硫酸銅-硫酸水溶液の電解液中で電解精製を行っている。しかし、このプロセスでは、アノードに用いられる粗銅中に含まれる微量のCuOやCu2Oなどの酸化銅や金属銅が電解液としての硫酸に溶解するため、アノードから溶出する銅量がカソードに電着する銅量よりも多くなる。余剰の銅量は、アノード中の酸素濃度などの条件にもよるが、通常、カソードに電着する銅量の1~2%程度になる。
【0003】
もし過剰な銅を除去せずに電解精製が継続されると、電解液中の銅濃度が上昇し、アノードからの銅の溶出が阻害される不働態化という現象を引き起こし電解精製の継続が不可能となる。このため、通常は鉛および鉛含有合金を不溶性アノードとして、硫酸銅-硫酸水溶液から銅を電解採取する回酸電解、造酸電解、脱銅電解または脱砒電解工程を実施し、余剰な銅を電着物として回収している。更に、この工程では銅イオンを完全に除去した電解液をさらに電解採取すれば、ビスマス、砒素、アンチモンなどの不純物が電着物として回収できる特徴を生かし、これら電解液中に含まれる上記不純物の除去も併せて実施している(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、不純物の除去において、砒素、ビスマス、アンチモンの電析電位は、銅の電析電位に比べて低い。このため、銅の電解精製で使用している電解液から上記不純物の除去を行う場合、不純物の除去を十分に行うには多量の電解液を処理する必要がある。つまり、銅の電解精製で使用している電解液中の不純物濃度が低いため、不純物の電析の効果を最大にするには多量の電解液を処理する必要があり、このような電析を行うためには、銅の電解精製と同規模の電解設備を別途設ける必要がある。しかし、このような電解設備の設置は現実的ではない。このため、銅の電解精製で使用している電解液の一部を電解槽から抜き取り、抜き取った電解液を濃縮することによって不純物濃度を高め、これを回酸電解、造酸電解、脱銅電解または脱砒電解工程に送ることによって不純物の除去効率を高めるようにしている。
【0005】
電解液の濃縮を行う設備として、例えば、図1に示すような電解液濃縮設備が用いられている。すなわち、この電解液濃縮設備は、真空蒸発缶10と加熱缶20とを備えており、真空蒸発缶10と加熱缶20は、真空蒸発缶10から加熱缶20へ電解液を供給する電解液供給管11と、加熱缶20から真空蒸発缶10へ加熱された電解液を供給する加熱電解液供給管21とに夫々接続されており、熱対流によって電解液の循環系を構成している。
【0006】
ここで、真空蒸発缶10は、内部が大気圧以下に保持され、図示外の電解槽から給液口12を介し電解液(液相)を受け入れるとともに(例えば、電気銅を精製する電解槽に給液する給液ラインから一部抜き取った電解液が真空蒸発缶10に導入される)、後述する加熱缶20の加熱電解液供給管21を介し供給される加熱された電解液を受け入れ、100℃以下の液温度で電解液中の水分が蒸発することを利用して電解液中の水分を効率的に蒸発させる電解液の蒸発設備である。尚、蒸発した水分は、真空蒸発缶10の排気口14からガス引きにより排出される。
【0007】
このような真空蒸発缶10を用いることで電解液を効率的に濃縮することできるため、濃縮状態となった電解液を、排出口13を介し次工程の回酸電解、造酸電解、脱銅電解または脱砒電解工程へ送るようにすれば、電解設備において効率的な不純物の除去を行うことが可能となる。尚、真空蒸発缶10の容量が11.1m3(通常の使用レベルは全容量の50%程度であるため5m3)である場合、真空蒸発缶10内への電解液の給液量と真空蒸発缶10からの排出量は、例えば、給液量が0~130リットル/min、排出量が0~65リットル/minとされている。
【0008】
また、加熱缶20は、蒸気導入口20aを介し内部に高圧蒸気が導入されるシェル22aと、シェル22aの内側に配置されたカーボン製のストレートチューブで構成されかつストレートチューブの内部に電解液を導入して上記高圧蒸気との熱交換が可能な複数の伝熱管22bから成るシェルアンドチューブ型熱交換部22と、熱交換部22の上部側に連設されかつ上記伝熱管22bの各上側開口端から排出される加熱された電解液を合流する上部液室23と、熱交換部22の下部側に連設されかつ上記真空蒸発缶10から電解液供給管11を介し供給される電解液を受け入れて上記伝熱管22bの各下側開口端へ分流する下部液室24を有すると共に、各伝熱管22bの上端側と下端側は、シェル22aの上部液室23側および下部液室24側にそれぞれ配置された管板22c(図2参照)のチューブ用孔22dに各伝熱管22bの上端と下端を嵌入して保持されるように構成されている。尚、符号20bは、熱交換後のドレンを抜くドレン排出管を示す。
【0009】
ところで、上記電解液濃縮設備において、伝熱管22b内を流れる電解液は、鉄などの金属を容易に腐食させる性質を持つため、伝熱管22bを構成する材質としては、通常、カーボンが採用されている。カーボンは、耐腐食性が高い材質ではあるが、一方で強度が金属系の材質に比べて劣るため、長期間の使用において伝熱管22bが破損することがあった。そして、伝熱管22bが破損した場合、シェル22a内の高圧蒸気が破損箇所から伝熱管22b内に侵入し、真空蒸発缶10内の電解液が蒸気によって希釈されるため電解液の濃縮が困難となる。
【0010】
このような伝熱管22b内への蒸気の侵入を防ぐには、破損した伝熱管22bを新たなものに交換するか、加熱缶20自体を新たなものと交換する必要がある。しかし、新たなものと交換する方法は、交換作業により長期間の設備停止が必要となるうえ、費用も高額となることから現実的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-229171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、長期間の設備停止を必要とせずに電解液中への蒸気の混入を防止して復旧させることを可能とする電解液濃縮設備の修理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
銅の電解液を加熱する加熱缶と、電解液中の水分を蒸発させて電解液を濃縮させる真空蒸発缶を備え、かつ、
上記加熱缶が、
内部に高圧蒸気が導入されるシェルと、該シェルの内側に配置されたカーボン製のストレートチューブで構成されかつストレートチューブの内部に電解液を導入して上記高圧蒸気との熱交換が可能な複数の伝熱管から成るシェルアンドチューブ型熱交換部と、
上記熱交換部の上部側に連設されかつ上記伝熱管の各上側開口端から排出される加熱された電解液を合流する上部液室と、
上記熱交換部の下部側に連設されかつ上記真空蒸発缶から供給される電解液を受け入れて上記伝熱管の各下側開口端へ分流する下部液室を有する電解液濃縮設備であって、
上記熱交換部における伝熱管の一部が破損したときの修理方法において、
上記破損した伝熱管の上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグを差し込んで各開口端部を封止することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る第2の発明は、
第1の発明に記載の電解液濃縮設備の修理方法において、
破損した伝熱管内における上記プラグの差し込み深さより深い位置に上記伝熱管の内径と略同一の外径を有する仮栓を先に嵌め込み、かつ、上記プラグの先端および挿入されるプラグの外周側面に接着剤を塗布した後、上記伝熱管の上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグを差し込んで上記仮栓とプラグを接続させることを特徴とし、
第3の発明は、
第2の発明に記載の電解液濃縮設備の修理方法において、
上記仮栓が、シリコン製の仮栓またはテフロン(登録商標)加工を施した仮栓で構成されることを特徴とする。
【0015】
次に、本発明に係る第4の発明は、
第1の発明に記載の電解液濃縮設備の修理方法において、
上記真空蒸発缶から排出される濃縮電解液の比重を計測し、計測した濃縮電解液の比重値と管理値とを比較して伝熱管における破損の有無を検出することを特徴とし、
第5の発明は、
第4の発明に記載の電解液濃縮設備の修理方法において、
上記シェルアンドチューブ型熱交換部におけるシェル内への高圧蒸気の導入を停止し、かつ、閉止されたシェル内を水で満たして破損した伝熱管を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電解液濃縮設備の修理方法によれば、
破損した伝熱管の上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグを差し込んで各開口端部を封止するため、シェル内の高圧蒸気が伝熱管の破損箇所から伝熱管内に侵入しても真空蒸発缶内への高圧蒸気の混入を防止することができる。
【0017】
そして、破損した伝熱管の上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグを差し込んで修理する本発明方法は、破損した伝熱管を新たな伝熱管に交換し、あるいは、加熱缶自体を更新する方法に比べて作業が著しく簡略化されるため、長期間の設備停止を要しないと共に修理コストの低減が図れる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】加熱缶と真空蒸発缶を備える電解液濃縮設備の構成説明図。
図2】熱交換部の上部液室側および下部液室側にそれぞれ配置されて各伝熱管の上端と下端を保持する管板の平面図。
図3】伝熱管の一部が破損した加熱缶とその修理方法を示す説明図。
図4】破損した伝熱管の開口端部にプラグを差し込んで固定した状態を示す説明図。
図5】破損した伝熱管内に伝熱管の内径と略同一の外径を有する仮栓を先に嵌め込んだ後、伝熱管の開口端部に接着剤が塗布されたプラグを差し込んで仮栓とプラグが接続された状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。
【0020】
(1)加熱缶
図3は、伝熱管22bの一部が破損した加熱缶20とその修理方法を示す説明図である。紙面上左側に上部液室23が配置され、紙面上右側に下部液室24が配置されており、上部液室23と下部液室24に挟まれる領域にシェルアンドチューブ型熱交換部22が設けられている。シェルアンドチューブ型熱交換部22の外殻を構成するシェル22aには、高圧蒸気を内部に導入する蒸気導入口20aと熱交換後のドレンを抜くドレン排出管20bが側面に設けられ、かつ、シェル22aの内側には、その長手方向に沿ってシェル22aの長さと略一致するカーボン製のストレートチューブ(上述した伝熱管22bを構成する)が複数本(本例では数十本)装入されている。また、伝熱管22bの両端は開放されており、紙面上左側に位置する伝熱管22bの上端は上部液室23に接続され、紙面上右側に位置する伝熱管22bの下端は下部液室24に接続されており、かつ、上部液室23側および下部液室24側にそれぞれ配置された管板(図2参照)のチューブ用孔に各伝熱管22bの上端と下端を嵌入して保持されている。
【0021】
(2)修理方法
ところで、真空蒸発缶10と加熱缶20を備える銅の電解液濃縮設備において熱交換部22の伝熱管22bが破損したときは、破損した伝熱管22bの上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグ30を差し込んで封止する(図3参照)ようにする。例えば、図4に示すように伝熱管22bへの差し込み部分が該伝熱管22bの内径よりも若干小さくなるように形成されたカーボン製のプラグ30の差し込み部分の周囲およびプラグ30の先端に接着剤31を塗布し、伝熱管22b内に嵌め込むようにすればよい。
【0022】
この場合、図5に示すように伝熱管22b内におけるプラグ30の差し込み深さより深い位置に伝熱管22bの内径と略同一の外径を有する仮栓40を先に嵌め込み、かつ、上記プラグ30の先端およびプラグの外周側面(差し込み部分の周囲)に接着剤31を塗布した後、上記伝熱管22bの上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグ30を差し込み、上記仮栓40とプラグ30との空隙を接着剤31で満たしてこれらが接続させるようにすると好ましい。このような方法を採ることで、接着剤31が硬化するまでの間、重力によって下降する接着剤31を仮栓40で堰き止めることができるうえ、上記仮栓40の存在によりプラグ30と仮栓40間の接着剤31に大気圧が作用し難くなるため、プラグ30側面において接着剤31が脱落し接着面積が減少してしまうことを防止することができる。この結果、長期間の使用に際し、プラグ抜けが発生する不具合を効果的に回避することが可能となる。
【0023】
尚、仮栓の材質は、適切に接着剤を堰き止めることが可能な限り特に限定されないが、一例として、シリコン製の仮栓、テフロン(登録商標)加工が施された仮栓を好ましく使用することができる。
【0024】
(3)破損の検出と破損した伝熱管の特定
(3-1)破損の検出
この種の電解液濃縮設備においては、通常、真空蒸発缶10内における濃縮電解液の比重が所定値(管理値)となるように、真空蒸発缶10の排出口13から次工程へ送り出される濃縮電解液の送液量を調節し、真空蒸発缶10から排出される水分量(すなわち、真空蒸発缶10内の蒸発した水分量+次工程へ送り出される濃縮電解液中の水分量)と、真空蒸発缶10内に供給される水分量(すなわち、真空蒸発缶10内に供給される電解液中の水分量)が略同等となるように調整している。
【0025】
しかし、加熱缶20の伝熱管22bが破損した場合、シェル22a内の高圧蒸気が破損箇所から伝熱管22b内に侵入し、真空蒸発缶10内の電解液が蒸気によって希釈されるため濃縮電解液の比重が所定値(管理値)より減少してしまう。
【0026】
このため、真空蒸発缶10から排出される濃縮電解液の比重を計測し、計測した濃縮電解液の比重値と上記所定値(管理値)とを比較し、計測した濃縮電解液の比重値が所定値(管理値)より減少している場合、伝熱管22bの一部が破損していることを検出することが可能となる。
【0027】
(3-2)破損した伝熱管の特定
シェルアンドチューブ型熱交換部22におけるシェル22a内への高圧蒸気の導入を停止し、かつ、上記熱交換部22の蒸気導入口20a、ドレン排出管20bを閉鎖した状態でシェル22a内を水で満たしていけば、破損した箇所において伝熱管22b内に水が流入するため、それを視認することによって破損した伝熱管22bを特定することが可能となる。
【実施例0028】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0029】
[実施例1]
電解液濃縮設備における加熱缶の伝熱管が破損したため、破損した伝熱管の上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグを差し込んで封止した。
【0030】
具体的には、図4に示すように伝熱管22bへの差し込み部分が伝熱管22bの内径よりも若干小さくなるように形成されたカーボン製のプラグ30を使用し、このプラグ30の差し込み部分の周囲および先端に接着剤(SGLカーボンテクニックジャパン株式会社製:トーカベイト接着剤)31を塗布し、伝熱管22b内に嵌め込んで封止した。
【0031】
[実施例2]
電解液濃縮設備における加熱缶の伝熱管が破損したため、実施例1で使用したカーボン製のプラグとシリコン製の仮栓を用いて破損した伝熱管を封止した。
【0032】
具体的には、図5に示すように伝熱管22b内におけるプラグ30の差し込み深さより深い位置に伝熱管22bの内径と略同一の外径を有する仮栓40を先に嵌め込み、かつ、上記プラグ30の先端およびプラグの外周側面(差し込み部分の周囲)に接着剤(SGLカーボンテクニックジャパン株式会社製:トーカベイト接着剤)31を塗布した後、上記伝熱管22bの上側開口端部および下側開口端部にカーボン製のプラグ30を差し込み、上記仮栓40とプラグ30との空隙を接着剤31で満たすようにして仮栓40とカーボン製のプラグ30を接続させた。
【0033】
[評 価]
(1)実施例1では、プラグによる封止作業に3日(処理前乾燥1日、プラグ設置工事1日、乾燥1日)を要したが、破損した伝熱管を新たなものと交換する場合、あるいは、加熱缶自体を新たなものと交換する場合に比べ、低コスト、かつ、短期間の設備停止で復旧できることが確認された。
【0034】
(2)一方、実施例2では、実施例1に係る利点に加え、長期に亘りプラグ抜けを防止できることが確認された。
【0035】
すなわち、実施例1では、約3か月後にプラグ抜けが生じ、伝熱管内に蒸気が混入してしまったが、実施例2では、約8か月を経た後においてもプラグ抜けは発生していない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る電解液濃縮設備の修理方法によれば、長期間の設備停止を要さずに修理コストの低減が図れるため、銅の電解精製に使用される産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0037】
10 真空蒸発缶
11 電解液供給管
12 給液口
13 排出口
14 排気口
20 加熱缶
20a 蒸気導入口
20b ドレン排出管
21 加熱電解液供給管
22 シェルアンドチューブ型熱交換部
22a シェル
22b 伝熱管
22c 管板
22d チューブ用孔
23 上部液室
24 下部液室
30 プラグ
31 接着剤
40 仮栓
図1
図2
図3
図4
図5