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特開2024-38668紙用耐油コーティング組成物、該紙用耐油コーティング組成物を用いた耐油紙、食品用包材または調理具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038668
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】紙用耐油コーティング組成物、該紙用耐油コーティング組成物を用いた耐油紙、食品用包材または調理具
(51)【国際特許分類】
   C09D 127/06 20060101AFI20240313BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20240313BHJP
   C09D 127/22 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C09D127/06
D21H27/00 Z
C09D127/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142869
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 真
(72)【発明者】
【氏名】藤野 浩二
【テーマコード(参考)】
4J038
4L055
【Fターム(参考)】
4J038CD021
4J038CD141
4J038MA07
4J038NA04
4J038PB04
4J038PB06
4J038PC10
4L055AG64
4L055AG68
4L055AG89
4L055AH24
4L055AH37
4L055BE08
4L055EA08
4L055EA14
4L055EA32
4L055GA30
(57)【要約】
【課題】 塗工するだけで紙に対し優れた耐油性及び耐水性を与えることができる紙用耐油コーティング組成物を提供し、また、プラスチックフィルムやプラスチックフィルムのラミネート紙の代替として使用可能な紙用耐油コーティング組成物を用いた耐油紙、食品用包材または調理具を提供する。
【解決手段】 本発明は、バインダー樹脂と、有機溶剤を含有し、バインダー樹脂が塩化ビニル酢酸ビニル共重合体である紙用耐油コーティング組成物、並びに該組成物を用いた耐油脂、包装材、調理器具に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と、有機溶剤を含有し、
前記バインダー樹脂が塩化ビニル酢酸ビニル共重合体である紙用耐油コーティング組成物。
【請求項2】
前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合体が酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体である請求項1に記載の紙用耐油コーティング組成物。
【請求項3】
前記酸基を含む塩化ビニル酢酸ビニル共重合体がマレイン酸変性塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、又はフマル酸変性塩化ビニル酢酸ビニル共重合体である請求項2に記載の紙用耐油コーティング組成物。
【請求項4】
前記バインダー樹脂に対し、前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を70質量%以上100質量%以下含有する請求項1又は2に記載の紙用耐油コーティング組成物。
【請求項5】
紙基材の少なくとも片面に請求項1又は2に記載のコーティング組成物を有する耐油紙。
【請求項6】
請求項4に記載の耐油紙を用いた食品用包材または調理具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙に対し耐油性及び耐水性を与え、更にヒートシール性を有する紙用耐油コーティング組成物、該紙用耐油コーティング組成物を用いた耐油紙、食品用包材または調理具に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナッツ、ハンバーガー等のファーストフードや惣菜のような調理済みの食品、及びバターの箱のような油分を含む材料を包む包材として紙が多用されているが、内容物の油分がしみこまないように耐油性が必要である。また、耐油性のみならず、冷蔵庫の出し入れにより生じる水分や食品から水蒸気が発生するため、耐水性も必要である。近年は、調理具においても紙が多用されている。例えばドリップバッグコーヒーは、コーヒー粉を包む包装袋を開封後、カップ(コップ)にコーヒーフィルターをホールとしてコーヒーを入れる器具として使用されるが、カップ(コップ)へのホールド部分は通常紙製であり、当該紙部は耐水性と適度な耐油性が求められる。このように、特に食品包材や調理器具は、耐油性と耐水性の両方を兼ね備えることが求められる。
【0003】
このような機能を包材である紙に付与する方法として、従来、過フッ素炭化水素のアクリルレートまたはリン酸エステルなどのフッ素系化合物を用いた組成物をコーティングする方法が行われてきた。しかしながらフッ素系の組成物は、加熱すると紙中に存在するフッ素系化合物が熱分解されて自然界において「難分解性」のフッ素系炭化水素が発生し環境汚染等の問題が指摘されている。
【0004】
これに対し、例えば、特許文献1では、紙基材上にカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーの塗工層を設けることで、耐油性、透気性に優れた耐油紙を作製している。しかし、特許文献1の作製方法で得られるセルロースナノファイバーは結晶性のセルロースナノファイバー表面のカルボキシル基が塩型になっているため、水によって容易に膨潤し崩壊してしまう。
【0005】
一方、紙にポリエチレン等の熱可塑性フィルムをラミネートしたものも使用されており、ドリップコーヒーのホールド部等にはポリエチレンラミネート紙が使用されている。しかし、貼り合わされたポリエチレンフィルムは、紙リサイクル時に紙リサイクル処理で使用するアルカリ溶液に溶解しないため物理的に除去する必要があり、リサイクル効率の低下につながる。また、近年はプラスチックゴミ問題が深刻化しており、プラスチックゴミの削減は世界的な重要テーマであることから、ポリエチレンフィルムを使用せずに、優れた耐油性・耐水性を有する紙包装材や紙製調理具が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-74535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、塗工するだけで紙に対し優れた耐油性及び耐水性を与えることができる紙用耐油コーティング組成物を提供し、また、プラスチックフィルムやプラスチックフィルムのラミネート紙の代替として使用可能な紙用耐油コーティング組成物を用いた耐油紙、食品用包材または調理具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バインダー樹脂と、有機溶剤を含有し、バインダー樹脂が塩化ビニル酢酸ビニル共重合体である紙用耐油コーティング組成物に関する。
また、本発明は、上記紙用耐油コーティング剤を用いた耐油紙、食品用包材または調理具を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗工するだけで紙に対し優れた耐油性、耐水性を与えることができる紙用耐油コーティング剤を得られる。また本発明の紙用コーティング剤は人体に安全な材料で構成されるため、本発明の紙用耐油コーティング剤を紙に塗布した耐油紙、食品用、日用品用、衛生用品を始めとした包材、容器ラッピング材等に安全に使用できる。本発明の紙用耐油コーティング剤を用いることによりプラスチックフィルムやプラスチックフィルムのラミネート紙の代替として使用可能な紙用コーティング剤を用いた耐油紙、耐水紙、食品用包材又は調理具を得られ、プラスチックの使用量を低減することができ、また、紙リサイクル時に分別せずにリサイクル可能であることからリサイクル効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(紙用コーティング剤)
本発明の紙用耐油コーティング組成物は、バインダー樹脂として塩化ビニル酢酸ビニル共重合体を含有する。
【0011】
<塩化ビニル酢酸ビニル共重合体>
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体は、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであれば、特段限定されない。
中でも、酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。酸基としてはマレイン酸、もしくはフマル酸を使用したものが好ましい。
【0012】
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体は、重量平均分子量が1,000~100,000のものを使用することが好ましく、10,000~90,000のものを使用することがより好ましい。また、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体のISO1628-2(プラスチック-毛細管形粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方)により測定されるK値は、10~80のものを使用することが好ましい。また、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体のガラス転移温度(Tg)は、30~100℃であることが好ましく、50~80℃であることがより好ましい。
【0013】
このような塩化ビニル酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルモノマーを5~40質量%配合することが好ましく、10~20質量%であればより好ましい。
酢酸ビニルの配合量が多すぎるとブロッキング現象が生じやすい。反対に酢酸ビニルの配合量が少なすぎると、Tgが高くなり硬い皮膜となる為、低温度でのヒートシール性が期待できない。
【0014】
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体が酸基を含む場合、その酸価は、酸価1mgKOH/g以上、20mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは酸価3mgKOH以上、10mgKOH以下である。
【0015】
尚、ここで言う酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示す。
【0016】
<他のバインダー樹脂>
本発明の紙用耐油コーティング組成物は、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体以外の他のバインダー樹脂を含有してもよい。他のバインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、スチレン アクリル酸エステル系樹脂、スチレン ブタジエン系樹脂、ブタジエン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン ビニルアルコール系樹脂、エチレン アクリル酸エステル系樹脂、エチレン アクリル酸系樹脂、エチレン 酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン イソプレン系樹脂等が挙げられる。本発明の紙用耐油コーティング組成物がこれらの樹脂を含む場合、その配合量は塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及び他のバインダー樹脂の総量において、他のバインダー樹脂の割合が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。
【0017】
<有機溶剤>
本発明で使用する有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系、溶解性の良好な有機溶剤として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤の各種有機溶剤が挙げられる。これらのうち通常は乾燥速度が速いトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルや、これらの混合物を使用するのが好ましい
【0018】
<その他の添加剤>
本発明の紙用耐油コーティング組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において前記成分の他に、その他の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、ワックス、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等があげられる。
【0019】
本発明の紙用コーティング剤は、上記共重合体(A)及び共重合体(B)以外の他の公知の樹脂を含有してもよい。他の公知の樹脂を含有する場合、他の樹脂の含有量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜調節可能であるが、共重合体(A)、共重合体(B)及び他の公知の樹脂の総量において、他の公知の樹脂の割合が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが好ましい。
【0020】
(耐油紙)
本発明の耐油紙は、紙基材の少なくとも片面に前述した紙用耐油コーティング組成物を塗工することによって形成された樹脂塗工層を有するものである。紙用耐油コーティング組成物の樹脂塗工層は、紙に耐油性及び耐水性を付与するコート剤として機能する。
【0021】
紙基材としては、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0022】
前記紙基材は、目的に応じ紙の種類、厚み等を逐次選択する事ができる。例えばバーガーラップであれば米坪対応20グラム/m程度、紙コップ、バターの外装箱、ドリップバッグコーヒーのホルダー部であれば米坪対応200~300グラム/m、紙皿、紙スプーン、紙マドラー等であれば米坪対応50~500グラム/mのカップ原紙等の原紙が好ましい。これらの用紙は、リサイクル効率やコスト低減の観点から、ポリエチレン フィルムやアルミ等をラミネートされていない事が好ましい。紙基材は、印刷層を有していてもよい。
【0023】
本発明の紙用コーティング剤の塗工方法としては公知の方法が使用できる。例えばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を使用できる。また、紙基材を本発明の紙用オーバーコーティング剤に含浸させることにより、紙基材上に樹脂層を設けてもよい。塗工後オーブン等で乾燥工程を設けてもよい。
【0024】
塗工する際の本発明の紙用コーティング剤の膜厚は、用途によるが、食品用紙容器に使用する場合は、例えば2~12g/mの範囲であれば、本発明の効果を十分に得ることができる。中でも3~10g/mの範囲であることがより好ましい。
【0025】
本発明の耐油紙は、紙基材と紙用耐油コーティング組成物により形成された樹脂塗工層との間に、アンカーコート層を有していてもよい。アンカーコート層は、従来公知のコート剤を好適に用いることができる。中でも、(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体を用いることが好ましい。(メタ)アクリレートの共重合体としては、(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーとを共重合させた共重合体があげられるが、例えばスチレンとαメチルスチレンと(メタ)アクリレート等のスチレンアクリル共重合体を用いることが好ましい。
【0026】
(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体の構成成分として用いられる(メタ)アクリレートとしては特に限定はないが、中でも炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートであることが好ましく、アクリレートを有するホモポリマーがより低いガラス転移温度を呈することから好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましく、炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートを主成分とすることが好ましい。このような炭素原子数1~12のアルキル基を有するアクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸アリル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸iso-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等が挙げられる。
【0027】
また、他の(メタ)アクリレートや(メタ)アクリレートと共重合しうるビニルモノマーの例としては、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-ヒドロドキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキルポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素系(メタ)アクリレート;スチレン、スチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチレン、(p-ビニルフェニル)メチルスルフィド、p-ヘキシニルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン等)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレン等の芳香族ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレート;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ナフチルビニルピリジン等のビニルピリジン化合物;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン等の共役ジエンなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
アンカーコート層は、上記のような(メタ)アクリレートの単独重合体もしくは共重合体のエマルジョンを含むアンカーコート用組成物を紙に塗工することにより形成できる。アンカーコート用組成物は、水を含有することが好ましい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、前記水としては、紫外線照射または過酸化水素添加等によって滅菌された水を用いることが、組成物を長期保存する場合に、カビまたはバクテリアの発生を防止することができるため好適である。中でも水を用いることが最も好ましい。
水に溶解するアルコール類等の水溶性有機溶剤等を混合して用いてもよい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどを挙げることができる。これらのアルコール類は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
アンカーコート用組成物は、シリカ、アルミナ、消泡剤、レベリング剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤等も配合することができる。
【0030】
アンカーコート用組成物は、ワックスを含有してもよい。ワックスとしては、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドワックス、カルナバワックス、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレン-ワックス、アマイドワックスなどのワックスを挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。
【0031】
本発明の積層体は、また、紙基材と紙用耐油コーティング組成物により形成された樹脂塗工層との間にバリア層や印刷層が設けられていてもよい。印刷層は、グラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等各種印刷インキにより、従来、フィルム基材への印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で形成される。バリア層としては、ポリビニルアルコール等のガスバリア性樹脂を含む公知のガスバリアコート剤を塗布して形成される。
【0032】
(包装体、容器又は調理具)
本発明の耐油紙は、紙用耐油コーティング組成物により形成された樹脂塗工層を有し、該樹脂塗工層が耐油性及び耐水性を有する。
更に、本発明の耐油紙はヒートシール性を有することから、該樹脂塗工層を利用してヒートシールすることにより、箱、袋、容器等に加工することができる。例えば、本発明のコーティング組成物を紙に塗工し、該塗工部位を加熱軟化させた後、該塗工部位と、もう1つの部位とを重ね合わせた状態で圧着させることにより、紙同士または紙と他素材とを接着させることができ、ヒートシール剤として使用できる。
【0033】
包装体は、例えば、パッケージ用の袋、紙袋、紙箱、段ボール、ラップ紙、封筒、カップスリーブ、蓋等が挙げられる。容器としては、紙容器、紙皿、トレイ、カップホルダー、紙コップ等が挙げられる。本発明の紙用コーティング剤により形成された樹脂塗工層は耐水性、耐油性に優れていることから、耐水性・耐油性を必要とする食品、肥料等の包装材に利用することが好ましい。例えば、カップ麺、アイスクリーム、プリン、ゼリー等のデザート用のカップ又は蓋、菓子、穀類、豆類、粉体、ペット用のフード、肥料等を収容する袋又は箱、ハンバーガーやホットドックのラップ紙、ピザ等の持ち帰り用容器、から揚げやポテト等のホットスナック用容器、納豆等の総菜を対象とするカップ類等の食品用紙容器又包装材や、洗剤、サニタリー用品をはじめとする衛生品用の袋又は箱等が挙げられる。また、本発明の紙用耐油コーティング組成物は、特に耐牛酪性に優れていることから、バターの外箱用に好適である。また、本発明の紙用コーティング剤は人体安全性の高いと認められた成分で構成されていることから、例えばバーガー等を包むラップ紙のように食品に直接接触する包材に好適に使用できる。また、本発明の紙用耐油コーティング組成物は、ポリエチレンラミネート紙の代替として使用可能である。
【実施例0034】
以下、本発明を具体的な合成例、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0035】
(実施例1)
マレイン酸変性塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(マレイン酸1部/塩化ビニル84部/酢酸ビニル15部、ガラス転移点(Tg)=74℃、K値=48)を25部に対し、メチルエチルケトン/酢酸エチルの混合比率が1:1の溶剤75部を用いて、分散攪拌機を用いて25℃の温度下、3000rmpの回転数で撹拌しながら溶剤中に固形分を少しずつ投入し、10分間撹拌して塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系樹脂のコーティング組成物(固形分25%)を作製した。
得られたコーティング組成物を用い、紙基材(坪量230g/mの白板紙:OKフレースPRO(王子製紙(株)社製)に対しバーコーターにより塗布量5g/mにて塗工を行い、実施例1の塗工紙を得た。
【0036】
(比較例1)
水性アクリルエマルジョンを、固形分37%になるように水と混合して攪拌し、比較例1のアクリル系コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にして比較例1の塗工紙を得た。
【0037】
(実施例2~4)
紙と塗布量を表1に記載のように変えた以外は実施例1と同様にして、実施例2~4の塗工紙を得た。
【0038】
(比較例2)
紙と塗布量を表1に記載のように変えた以外は比較例1と同様にして、比較例2の塗工紙を得た。
【0039】
<評価方法>
以下のようにして、実施例および比較例の塗工紙を評価した。結果を表1に示す。
(耐油性試験)
得られた塗工紙を用いてJAPAN TAPPI 紙パルプ試験法No.41キット法を用いて、キット液を塗工済基材へ滴下した後15秒後にふき取り、浸透がみられなかった液の値をキット値として耐油性の評価を行った。数値が大きいほど耐油性が高いことを示す。
【0040】
(耐水性試験)
スポイトで採取した水道水1滴を塗工紙の塗工面に数十か所滴下し、数時間ごとに拭き取りを行い、膨潤・浸み込み状態を評価した。
(評価)
水滴下後30分:塗工面膨潤 有/無、水浸透 有/無
水滴下後1時間:塗工面膨潤 有/無、水浸透 有/無
水滴下後2時間:塗工面膨潤 有/無、水浸透 有/無
水滴下後4時間:塗工面膨潤 有/無、水浸透 有/無
水滴下後8時間:塗工面膨潤 有/無、水浸透 有/無
【0041】
(耐牛酪試験)
市販のバターを塗工面に載せ井、24時間後の浸み込み状態を評価した。
【0042】
【表1】
【0043】
表中、パールカードは、三菱製紙(株)社製の坪量260g/mの片面コートカード紙である。
【0044】
実施例及び比較例より、本発明の組成物は優れた耐油性と耐水性の両方を実現でき、また、耐牛酪性を備えることがわかった。