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特開2024-38692材料解析サーバ、材料解析サーバにおいて用いられるプログラム、および材料解析サーバにおいて用いられる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038692
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】材料解析サーバ、材料解析サーバにおいて用いられるプログラム、および材料解析サーバにおいて用いられる方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240313BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142916
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 穂高
(72)【発明者】
【氏名】外海 駿輔
(72)【発明者】
【氏名】中西 由衣
(72)【発明者】
【氏名】笠松 利恵
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 啓介
(72)【発明者】
【氏名】藤間 淳
(72)【発明者】
【氏名】春口 昂輝
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】実験結果のデータを送信する複数の送信装置と、それら複数の送信装置から送信された実験結果のデータを受信して解析を行うサーバを有するシステムにおいて、前処理の負担を軽減する。
【解決手段】複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信可能な材料解析サーバは、前記複数の送信装置が送信した前記実験データ(12a)を受信する受信部(13a)と、前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出し、前処理済データ(12b)として解析のために記録する前処理部(13b)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信可能な材料解析サーバであって、
前記複数の送信装置が送信した前記実験データ(12a)を受信する受信部(13a)と、
前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出し、前処理済データ(12b)として解析のために記録する前処理部(13b)と、を備えた、材料解析サーバ。
【請求項2】
前記前処理部は、コンテナ型仮想化された環境において実行されるコンテナである、請求項1に記載の材料解析サーバ。
【請求項3】
前記受信部は、前記実験データの受信に関連するトリガに基づいて前記前処理部の実行を開始する請求項1または2に記載の材料解析サーバ。
【請求項4】
前記前処理済データの解析を行う解析部(13c)を備え、
前記解析部は、前記前処理済データに基づく予測、前記前処理済データを用いた可視化、前記前処理済データを学習用のデータセットに含める機械学習のうち少なくとも1つを実現する、請求項1または2に記載の材料解析サーバ。
【請求項5】
前記前処理部は、前記実験データの各々について、当該実験データに基づいて作成したデータを、前記前処理済データとは別に成形済データ(12c)として記録する、請求項1または2に記載の材料解析サーバ。
【請求項6】
前記実験データの各々は、それぞれが1つの実験結果を表す1つまたは複数の信号データ(121)と、前記1つまたは複数の信号データに対応する1つまたは複数のレコードを含むリストデータ(122)と、を含み、
前記1つまたは複数の信号データの各々は、当該信号データに係る実験の対象となった材料に関する物理量の分布を表すボディ部(121b)と、当該信号データに係る実験の条件に関する情報を含むヘッダ部(121a)と、を備え、
前記前処理部は、前記1つまたは複数の信号データの各々について、当該信号データのボディ部から特徴量を算出して前記前処理済データとすると共に、当該信号データのヘッダ部の一部または全部を、前記複数のレコードのうち当該信号データに対応するレコードに含め、その結果得られたデータを成形済データ(12c)として記録する、請求項1または2に記載の材料解析サーバ。
【請求項7】
複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信する材料解析サーバにおいて用いられるプログラムであって、
前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出して前処理済データ(12b)とする算出部(S200)、および
前記前処理済データを解析のために記録する記録部(S300)として、前記材料解析サーバを機能させるプログラム。
【請求項8】
複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信可能な材料解析サーバで行われる方法であって、
前記複数の送信装置が送信した前記実験データを受信することと、
前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出し、前処理済データ(12b)として解析のために記録することと、を備えた方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料解析サーバ、材料解析サーバにおいて用いられるプログラム、および材料解析サーバにおいて用いられる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、材料に関する実験結果のデータを送信する送信装置(例えば実験装置)と、その送信装置から実験結果のデータを受信するサーバとを有するシステムが記載されている。そしてこのシステムにおいて、サーバが、実験結果から解析(例えば、最適な特性を有する試験条件の探索)を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-193623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の検討によれば、特許文献1のようなシステムにおいて、実験結果のデータをサーバが解析に直接利用することは難しく、実験結果のデータに対して解析のための前処理(例えば、ノイズ除去、半値幅の算出)を行う必要があることが多い。
【0005】
前処理の作業は材料開発者が単独で実施することは難しく、前処理の専門家による作業が必要となることが多い。特に、実験の対象となった材料に関する物理量の分布から特徴量を算出するような前処理においては、これが顕著である。したがって、複数の送信装置からサーバに異なる実験結果のデータが送信され、各送信装置で前処理を行うことになると、複数の専門家による作業が必要となってしまう可能性が高い。このようになると、実験と解析のサイクルに専門家の作業が介在することになり、それがサイクルの作業効率を低下させる恐れがある。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、実験結果のデータを送信する複数の送信装置と、それら複数の送信装置から送信された実験結果のデータを受信して解析を行うサーバを有するシステムにおいて、前処理の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信可能な材料解析サーバであって、
前記複数の送信装置が送信した実験データを受信する受信部(13a)と、
前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出し、前処理済データ(12b)として解析のために記録する前処理部(13b)と、を備えた、材料解析サーバである。
【0008】
また、請求項6に記載の発明は、複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信する材料解析サーバにおいて用いられるプログラムであって、
前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出して前処理済データ(12b)とする算出部(S200)、および
前記前処理済データを解析のために記録する記録部(S300)として、前記材料解析サーバを機能させるプログラムである。
【0009】
また、請求項7に記載の発明は、複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信可能な材料解析サーバで行われる方法であって、
前記複数の送信装置が送信した前記実験データを受信することと、
前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出し、前処理済データ(12b)として解析のために記録することと、を備えた方法である。
【0010】
これらのように、材料解析サーバが、複数の送信装置から送信された実験データの各々に対して前処理を行うことで、送信装置側で個々に前処理を行う場合に比べて、前処理の負担を軽減することができる。そして、この前処理は、材料に関する物理量の分布から特徴量を算出する前処理であるから、前処理の負担を軽減する効果がより顕著になる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】材料解析システムの構成図である。
図2】サーバのハードウェア構成例である。
図3】サーバの機能構成を示す図である。
図4】コンテナ仮想化を模式的に示す図である。
図5】実験データの構造を示す図である。
図6】前処理部の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について説明する。本実施形態に係る材料解析システムは、図1に示すように、サーバ1、複数の送信装置2、ユーザ端末3を有している。これらサーバ1、送信装置2、ユーザ端末3は、通信ネットワーク4を介して互いに通信可能となっている。通信ネットワーク4は、インターネット等の広域ネットワークを含んでいてもよい。また、通信ネットワーク4は、有線のネットワークを含んでいてもよいし、無線のネットワークを含んでいてもよい。
【0014】
複数の送信装置2の各々は、実験者の操作またはあらかじめ定められた手順に基づいて、材料に関する実験を行い、その実験結果を示す実験データを当該送信装置2の記憶媒体に記録する。すなわち、送信装置2は、実験装置である。
【0015】
実験の対象となる材料は、送信装置2毎に異なっていてもよいし、同じであってもよい。また、同じ送信装置2において、異なる材料に対する実験が行われてもよいし、単一の材料に対する実験が行われてもよい。実験の種類としては、例えば、X線分光測定、X線回折測定、赤外線分光測定、X線撮像、赤外線撮像、顕微鏡撮像等がある。
【0016】
また、送信装置2は、記憶媒体に記録した実験データを、通信ネットワーク4を介してサーバ1に送信する。1つの送信装置2から実験データとして1度に送信される実験結果の数は、1つでもよいし、複数でもよい。
【0017】
送信装置2の各々は、材料に対して実験を行うための実験用デバイス(例えば、X線照射装置、センサ、カメラ、モータ等)を有する。また送信装置2の各々は、それら実験用デバイスの作動を制御するコントロール回路と、実験データを保存する記憶媒体と、通信ネットワーク4を介して実験データをサーバ1に送信する通信回路と、を有する。
【0018】
なお、他の例として、送信装置2自体は実験用デバイスを有さず、別に設けられた実験用デバイスによって実験された結果の実験データを例えば作業者のデータ移動作業によって取得してもよい。そして取得した実験データを、通信ネットワーク4を介してサーバ1に送信してもよい。
【0019】
ユーザ端末3は、サーバ1から情報を取得するための端末である。ユーザ端末3は、例えば、ユーザの操作を受け付けて電気信号に変換する操作部、通信ネットワーク4を介してサーバ1と通信する通信回路、ユーザに映像を表示するディスプレイ、および処理回路を有する。この処理回路は、操作部から出力されたユーザ操作に対応する電気信号に基づいてリクエストデータを生成し、通信回路を用いてサーバ1に送信する。そして制御回路は、サーバ1からそのリクエストデータに応じて返信された情報を通信回路を用いて受信し、受信した情報をディスプレイに表示させる。
【0020】
サーバ1は、複数の送信装置2から送信された実験データを受信し、受信したこれら実験データを用いた解析を行う材料解析サーバである。そしてサーバ1は、ユーザ端末3から通信ネットワーク4を介して送信されたリクエスト等に応じて、解析結果をユーザ端末3に送信する。ユーザ端末3は、受信した解析結果を上述の通りユーザ端末3の操作者にディスプレイで表示する。
【0021】
サーバ1は、図2に示すように、通信インターフェース回路11、記憶媒体12、制御回路13を有する。通信インターフェース回路11は、通信ネットワーク4を介して送信装置2、ユーザ端末3と通信するためのインターフェース回路である。
【0022】
記憶媒体12は、SSD、HDD等の不揮発性の記憶媒体である。記憶媒体12には、制御回路13で実行されるプログラムが記録されている。なお、本実施形態におけるプログラムとは、ソースコード、スクリプト、バイナリ等、制御回路13の作動を規定する任意の形態で構成されていてよい。また、記憶媒体12には、制御回路13によってデータの読み込み、書き込みが可能となっている。記憶媒体12は、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0023】
制御回路13は、演算回路、RAM等の揮発性記憶媒体等を有する回路である。演算回路は、記憶媒体12に記録された各種プログラムを実行することで種々の処理を実現し、その際に揮発性記憶媒体を作業領域として使用する。揮発性記憶媒体は、非遷移的実体的記憶媒体である。
【0024】
図3に示すように、制御回路13は、受信部13a、前処理部13b、解析部13cとして機能する。具体的には、制御回路13は、記憶媒体12に記録された受信部用プログラム、前処理部用プログラム、解析部用プログラムを実行することで、それぞれ、受信部13a、前処理部13b、解析部13cとして機能する。ただし、他の例として、制御回路13は、受信部13a用の専用回路、前処理部13b用の専用回路、解析部13c用の専用回路を有していてもよい。その場合、これら専用回路は、回路構成がプログラム不可能なハードウェア回路であってもよいし、回路構成がプログラム可能なプログラマブルロジック回路であってもよい。
【0025】
受信部13aは、サーバ1の作動時には、継続的に作動している。そして、上述の複数の送信装置2のいずれかからサーバ1に対して実験データが送信される度に、受信部13aは通信インターフェース回路11を介して当該実験データを受信し、受信した実験データ12aを記憶媒体12の実験データ用記憶領域に記録する。更に受信部13aは、実験データ12aが新たに受信されて記憶媒体12に記録される度に、それをトリガとして、図3の破線矢印に示すように、前処理部13bを繰り返し起動させる。
【0026】
前処理部13bは、上述の通りのトリガに基づいて受信部13aによって起動される。そして前処理部13bは、上述のように受信部13aによって記録された実験データ12aに対して、後述する解析部13cによる解析処理の前段階の処理として必要な前処理を行う。そしてその前処理により、実験データ12aに基づいて、前処理済データ12b、成形済データ12c、概要データ12dを作成し、作成したこれらデータを記憶媒体12の所定の領域に記録する。
【0027】
ここで、前処理部13bの実行形態について、図4を用いて説明する。前処理部13bは、コンテナ型仮想化された環境で実行されるコンテナである。具体的には、制御回路13は、受信部13a、前処理部13b、解析部13cとして機能すると共に、OS部13y、コンテナランタイム部13zとしても、機能する。OSはOperating Systemの略である。制御回路13は、記憶媒体12に記録されたOS用プログラム、コンテナランタイム用プログラムを実行することで、それぞれ、OS部13y、コンテナランタイム部13zとして機能する。
【0028】
OS部13yは、OSとして作動し、記憶媒体12におけるファイルシステム管理、OS上で作動するプロセスの管理、通信インターフェース回路11の制御等を行うと共に、OS上で作動するプロセスに各種インターフェースを提供する。受信部13a、解析部13c、コンテナランタイム部13zの処理は、このOS上で作動するプロセスである。
【0029】
コンテナランタイム部13zはOS上で作動し、コンテナ型仮想化された環境を提供する。これらコンテナ型仮想化された環境を利用して作動するのが、コンテナである。図4の例では、前処理部13bおよび別コンテナ13pの各々がコンテナに該当する。
【0030】
コンテナランタイム部13zとしては、例えば、dockerが採用され、コンテナとしてはdockerコンテナが採用されてもよいが、他のコンテナランタイムとコンテナの組が採用されてもよい。
【0031】
前処理部13bに対応するコンテナは、アプリケーション部131bおよびリソース部132bを有する。アプリケーション部131bは、前処理部13bの主な作動を実現する部分である。例えば、前処理部用プログラムのうち、実験データ12aのうち前処理で使うデータの選択、選択したデータに対して行う演算の種類の選択、演算結果の出力形態等を規定する部分が、アプリケーション部131bに対応する。これらの部分に対応するバイナリ実行ファイルまたは実行スクリプトファイルを実行することで、制御回路13がアプリケーション部131bとして機能する。
【0032】
リソース部132bは、アプリケーション部131bが利用するリソースとして機能する。例えば、リソース部132bは、アプリケーション部131bから呼び出されるライブラリとして機能する。更に、アプリケーション部131bがpython等のスクリプト言語で記述されている場合、リソース部132bは、当該スクリプト言語のインタープリタとしても機能する。またリソース部132bは、アプリケーション部131bのファイル入出力先となるファイルシステムを規定する。
【0033】
別コンテナ13pは、どのような処理を行ってもよい。制御回路13は、記憶媒体12に記録された別コンテナ用プログラムを実行することで、別コンテナ13pとして機能する。別コンテナ13pも、前処理部13bとは別に、アプリケーション部131pおよびリソース部132pを有する。アプリケーション部131pは、別コンテナ13pの主な作動を実現する部分である。リソース部132pは、アプリケーション部131pが利用するリソースとして機能する。
【0034】
コンテナランタイム部13zは、前処理部13b、別コンテナ13pの処理プロセスの管理および前処理部13b、別コンテナ13p内におけるメモリ管理を行う。これらの管理は、コンテナ毎に、他のコンテナとは独立した環境で、行われる。すなわち、前処理部13bの処理プロセス、メモリのためのリソースは、別コンテナ13pの処理プロセス、メモリとは独立して、別コンテナ13pの処理から保護されて孤立した状態で、管理される。
【0035】
このように、コンテナは、他のコンテナから独立して作動する。したがって、別コンテナ13pの処理が前処理部13bの処理を阻害する可能性が低減され、逆も同様である。例えば、前処理部13bのリソース部132bは、別コンテナ13pのアプリケーション部131pからは利用できない。
【0036】
解析部13cは、ユーザ端末3から受信したリクエストデータに対応して、記憶媒体12に記録されている前処理済データ12b、成形済データ12c、概要データ12dを用いた解析を行い、解析結果の情報をユーザ端末3に送信する。
【0037】
以下、上記のような構成の材料解析システムの作動について説明する。まず、送信装置2の各々は、通信ネットワーク4を介してサーバ1に実験データを送信する。送信時期は、送信装置2毎に独立していてもよいし、連動していてもよい。送信装置2の各々は、送信装置2の使用者(例えば実験者)が送信操作(例えば、送信用バッチ処理を開始させる操作)を行う度に、実験データをサーバ1に送信してもよい。また、送信装置2の各々は、所定の周期が満了する毎に、その周期において新たに送信装置2で生成または取得された1つまたは複数の実験データを、一括でサーバ1に送信してもよい。
【0038】
サーバ1では、これら実験データが1つ届く度に、受信部13aが、当該実験データ12aを受信して、記憶媒体12に記録する。記憶媒体12に記録された実験データ12aの各々は、前処理が施される前の生データである。
【0039】
図5に示すように、1つの実験データ12aは、1つまたは複数の信号データ121と1つのリストデータ122とを含む。信号データ121の各々は、1つの実験に対応する。したがって、実験データ12aに含まれる信号データ121の数が、実験データ12aに含まれる実験結果の数に相当する。
【0040】
信号データ121の各々は、ヘッダ部121aとボディ部121bとを有する。ヘッダ部121aは、当該信号データ121に係る実験の種々の条件に関する情報を含む。例えば、ヘッダ部121aは、測定機器名、測定日時名、測定に用いられるX線のエネルギー範囲の始点と終点、ボディ部121bに表される物理量の名称等の情報を含む。
【0041】
ボディ部121bは、当該信号データ121に係る実験の対象となった材料に関する物理量の分布を表す数値列のデータである。ボディ部121bは、例えば、X線分光測定で得られてX線吸収係数のエネルギー領域分布を表すX線吸収スペクトルであってもよい。またボディ部121bは、X線回折測定で得られてX線強度の角度領域分布を表すX線散乱スペクトルであってもよい。またボディ部121bは、材料表面のX線撮像で得られてX線強度の二次元空間領域分布を表すX線画像であってもよい。なお分布は、上述のようなエネルギー領域分布、角度領域分布、空間領域分布の他にも、時間領域分布等の、どのような物理量領域の分布であってもよい。
【0042】
リストデータ122は、自身が属する実験データ12aに含まれるすべての信号データ121の各々について、対象とする信号データ121の属性情報を有している。各属性情報は、例えば、対象とする信号データ121のファイル名、当該信号データ121に係る実験の対象となった材料の材料名、実験者等の情報を有していてもよい。したがって、リストデータ122は、自身が属する実験データ12aに含まれる信号データ121と同数のレコードを含む。そして、1つの実験データ12aに含まれる信号データ121と、当該信号データと同数のレコードとは、1対1に対応する。そして、各レコードは、対応する信号データ121の属性情報を有している。図5に示すリストデータ122の各行が、1つのレコードに相当する。
【0043】
受信部13aは、実験データ12aを受信して記憶媒体12に記録したというトリガが発生したタイミングで、前処理部13bを起動させる。前処理部13bは、起動する度に、図6に示すような処理を実行する。
【0044】
具体的には、前処理部13bは、ステップS100で、受信した実験データ12a中の信号データ121の各々に対して、ヘッダ部121aとボディ部121bとを分離する処理を行う。
【0045】
続いて前処理部13bは、ステップS200で、分離の結果得られた各ボディ部121bに対して各種演算処理を施すことで、各ボディ部121bから前処理済データ12bを算出する。前処理済データ12bは、算出元のボディ部121bの特徴量を表すデータである。特徴量を表す前処理済データ12bは、ボディ部121bのスペクトルを正規化した正規化データであってもよい。また特徴量を表す前処理済データ12bは、ボディ部121bが表すX線吸収スペクトルに対するEXAFS振幅データであってもよい。EXAFSは、EXtended X-ray Absorption Fine Structureの略である。また特徴量を表す前処理済データ12bは、RDFであってもよい。RDFは、Radial Distribution Functionの略である。また前処理済データ12bは、これら例示した特徴量のデータのうち複数種類を含んでいてもよい。
【0046】
続いて前処理部13bは、ステップS300に進み、ステップS200で算出した前処理済データ12bを記憶媒体12に記録する。
【0047】
続いて前処理部13bは、ステップS400で、上記信号データ121と同じ実験データ12aに属するリストデータ122と、分離の結果得られた各ヘッダ部121aとから、成形済データ12cおよび概要データ12dを作成し、記憶媒体12に記録する。
【0048】
具体的には、各信号データ121のヘッダ部121aの内容の一部または全部を、リストデータ122中の当該信号データ121に対応するレコードに、含める。これにより、リストデータ122が成形済データ12cとなる。
【0049】
また、作成される概要データ12dは、リストデータ122の一部と、各ヘッダ部121aの一部とを有するデータである。例えば、概要データ12dは、実験毎のその実験の簡単な説明文のデータを有する。この説明文は、リストデータの各レコードに記録されていたものであってもよいし、あるいは、実験データ12a中の信号データ121、リストデータ122以外のデータとして含まれていたものであってもよい。
【0050】
ステップS400の後、前処理部13bの1回分の処理が終了する。このような手順で前処理部13bが繰り返し実行されることで、前処理済データ12b、成形済データ12c、概要データ12dが記憶媒体12に蓄積されていく。
【0051】
そして、記憶媒体12に複数の実験データ12aおよびそれらに基づく前処理済データ12b、成形済データ12c、概要データ12dが蓄積されている状態で、ユーザ端末3に対してユーザが所定の操作を行ったとする。すると、ユーザ端末3は、当該所定の操作に応じたリクエストデータを、通信ネットワーク4を介してサーバ1に送信する。
【0052】
解析部13cは、サーバ1の稼働中は継続的に作動している。そして解析部13cは、上記リクエストデータがサーバ1に届くと、当該リクエストデータに対応して、記憶媒体12に記録されている前処理済データ12b、成形済データ12c、概要データ12dを用いた解析を行う。そして解析部13cは、その解析結果を当該リクエストデータの送信元のユーザ端末3に返送する。
【0053】
実行する解析としては、予測、可視化、機械学習のうちどの1つでもよいし、どの2つの組み合わせでもよいし、3つすべてでもよい。あるいは、予測でも可視化でも機械学習でもない解析が行われてもよい。
【0054】
可視化は、前処理済データ12b、成形済データ12c、概要データ12dを用いて、情報をグラフ、散布図、ヒートマップ、コンター等の図で表す処理である。例えば、解析部13cは、前処理済データ12bとして記録されたEXAFS振幅データについて、縦軸を吸収係数、横軸をエネルギーとする2次元グラフを生成し、生成した2次元グラフの画像データを、通信ネットワーク4を介してユーザに送信してもよい。そしてユーザ端末3は、この画像を自機のディスプレイに表示させる。このときの解析部13cの処理は、可視化に該当する。
【0055】
また例えば、解析部13cは、正規化データを説明変数として、その正規化データに対応する材料の材料名(例えば化学式)を目的変数とするニューラルネットワークを用いた演算を行ってもよい。この場合、解析部13cは、複数の実験データ12aから得られた、同じ実験データ12a由来の正規化データと材料名のペアを学習用のデータセットとして、ニューラルネットの学習を行う。学習は、リクエストデータを受信する前に、例えば前処理部13bが実行される度に実行されてもよい。
【0056】
この場合、解析部13cは、リクエストデータを受信すると、学習済みのニューラルネットワークを用いて、リクエストデータに含まれる正規化データをニューラルネットワークに入力する。そして、それによりニューラルネットワークの出力として得られた材料名を、通信ネットワーク4を介してリクエストデータの送信元のユーザ端末3に送信する。このときの解析部13cの処理は、機械学習に該当し、正規化データに基づく材料名の予測に該当する。なお、機械学習では、ニューラルネット以外の関数近似器が用いられてもよい。
【0057】
また、解析部13cは、解析結果と共に、成形済データ12cおよび概要データ12dのうち、その解析結果化の算出において使用したデータと同じ実験に係るデータも、リクエストデータの送信元のユーザ端末3に送信してもよい。その場合ユーザ端末3は、それら送信されたデータを自機のディスプレイに表示してもよい。
【0058】
以上説明した通り、前処理部13bは、受信した実験データ12aの各々に含まれて当該実験データ12aに係る実験の対象となった材料に関する物理量の分布から特徴量を算出して前処理済データ12bとし、前処理済データ12bを解析のために記録する。
【0059】
このように、サーバ1が、複数の送信装置2から送信された実験データの各々に対して前処理を行うことで、送信装置2側で個々に前処理を行う場合に比べて、前処理の負担を軽減することができる。そして、この前処理は、材料に関する物理量の分布の特徴量を算出する前処理であるから、前処理の負担を軽減する効果がより顕著になる。
【0060】
(1)また、前処理部13bは、コンテナ型仮想化された環境において実行されるコンテナである。したがって、仮に前処理部13bの処理内容を変更して別のものにしたい場合でも、サーバ1においてコンテナごと今の前処理部13bを別の前処理部13bに置き換えるだけで、実現できる。すなわち、コンテナを入れ替えるだけで、多様な分析に対応できる。前処理部13bの処理内容を変更して別のものにしたい場合としては、例えば、実験データの書式または種類が変更になった場合がある。
【0061】
もし、コンテナ型仮想化された環境がなければ、前処理部13bを入れ替えることが困難になる場合がある。例えば、2つの前処理部13bのアプリケーション部131bを実現するプログラムが、python等のスクリプト言語で記載されるとする。そして、1つ目の前処理部13bのアプリケーション部131bが呼び出すライブラリと、2つ目の前処理部13bのアプリケーション部131bが呼び出す別のライブラリが、異なる場合がある。そして、これら2つのライブラリが要求するインタープリタのバージョンが、互いに背反する場合がある。
【0062】
そのような場合、コンテナ型仮想化された環境がなければ、これら2つの前処理部13bを相互に入れ替える場合に、煩雑な作業が必要となる可能性が高い。一方のライブラリとそれに適合するバージョンのインタープリタをアンインストールし、他方のライブラリとそれに適合するバージョンのインタープリタをインストールするという作業が必要だからである。コンテナ仮想化は、このような問題を解決する。材料解析の場合、対応しなければならないデータの形式が多様なのでで、このようなコンテナ仮想化の技術が特に有益である。
【0063】
また、サーバ1に処理内容が互いに異なる2つ以上の前処理部13bが設けられる場合がある。その場合も、これら2つ以上の前処理部13bは、それぞれ別のコンテナとして実現される。したがって、或る前処理部13bのリソース部132bが他の前処理部13bのリソース部132bの機能に悪影響を及ぼす可能性が低減される。
【0064】
また、前処理部用プログラムの開発は、サーバ1以外の別環境で、例えばソフトウェア開発者の所有するコンピュータで、行う場合がある。そのような場合、別環境においてもサーバ1と同様のコンテナランタイム部13zをインストールして前処理部用プログラムをコンテナとして作成することができる。そのように作成された前処理部用プログラムをサーバ1で使用することで、サーバ1において前処理部13bが正常に機能する可能性が高くなる。
【0065】
(2)また、受信部13aは、実験データの受信に関連するトリガに基づいて前処理部13bの実行を開始する。これにより、実験データの受信に関連して前処理部13bが実行されるので、前処理部13bを効率的に実行することができる。
【0066】
(3)また、前処理済データ12bの解析を行う解析部13cは、前処理済データ12bに基づく予測、前処理済データ12bを用いた可視化、前処理済データ12bを学習用のデータセットに含める機械学習のうち少なくとも1つを実現する。
【0067】
このように、予測、可視化、機械学習のうち少なくとも1つを実現するような解析部13cを有するサーバ1において前処理が行われる。したがって、前処理を行うサーバ1に実験データを送信することで、解析部13cの処理に供される実験データを解析部13cに提供することも実現する。すなわち、解析部13cの処理に供される実験データを解析部13cに提供することが容易になる。
【0068】
(4)また前処理部13bは、信号データ121の各々について、当該信号データ121のボディ部121bから特徴量を算出して前処理済データ12bとすると共に、当該信号データ121のヘッダ部121aの一部または全部を、リストデータ122のうち当該信号データ121に対応するレコードに含めて成形済データ12cとして記録する。このようにすることで、ヘッダ部121aとリストデータ122の統合も、サーバ1側で行うことができ、実験者側の利便性が高まる。
【0069】
なお、本実施形態において、制御回路13は、図6のステップS200を実行することで算出部として機能する。また、ステップS300を実行することで記録部として機能する。
【0070】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、後述する変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0071】
また、本開示に記載の制御回路13及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御回路13及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御回路13及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0072】
(変形例1)
上記実施形態では、前処理部13bの前処理として、スペクトルの正規化、EXAFS振幅データの算出、RDFの算出が例示されている。しかし、前処理部13bの前処理は、これらのようなものに限られない。例えば、前処理部13bの前処理は、スペクトルのノイズ除去、平滑化、トリミングであってもよい。ノイズ除去、平滑化、トリミングされた後のデータも、スペクトルの特徴量である。
【0073】
また例えば、実験データ12aが、赤外線分光測定で得られたものである場合、前処理部13bが行う前処理は、IRスペクトルのピークトップ、半値幅、面積等の算出であってもよい。また、実験データ12a中の各信号データ121が顕微鏡画像等の画像を含む場合、前処理部13bが行う前処理は、特定の物質の占める領域の割合、輪郭等の算出であってもよい。
【0074】
(変形例2)
上記実施形態では、実験結果を示す実験データ12aとして、現実の材料に対する実験データが合例示されている。しかし、実験結果を示す実験データ12aは、数値実験の結果を示すデータであってもよい。材料に関する数値実験としては、例えば、分子の構造からエネルギー分布を計算する第1原理計算がある。
【0075】
(変形例3)
上記実施形態では、受信部13aによる前処理部13bの起動のためのトリガとして、実験データ12aの受信が例示されている。しかし、受信部13aによる前処理部13bの起動のためのトリガは、実験データ12aの受信に関連する他のトリガであってもよい。
【0076】
例えば、受信部13aが受信して且つ前処理されていない実験データ12aの数が所定の複数件以上になったことをトリガとしてもよい。また例えば、既に前処理されている実験データ12aが最後に受信部13aで受信されてから所定期間経過したことをトリガとしてもよい。
【0077】
また例えば、受信部13aが受信して且つ前処理されていない実験データ12aに、第一種の実験データ12aと第二種の実験データ12aとが含まれるようになったことをトリガとしてもよい。この場合、第一種の実験データ12aと第二種の実験データ12aは、実験の対象となる材料が異なる種類のものであるとしてもよい。あるいは、第一種の実験データ12aと第二種の実験データ12aは、実験の形態が異なるものであるとしてもよい。
【0078】
(変形例4)
上記実施形態では、受信部13a、前処理部13b、解析部13cのいずれも、同じサーバ1で実現されている。しかし、必ずしもこのようになっていなくてもよい。例えば、受信部13aと前処理部13bがサーバ1で実現され、解析部13cがサーバ1とは別の装置で実現されていてもよい。その場合、当該別の装置は、サーバ1およびユーザ端末3と通信可能になっている。
【0079】
(変形例5)
上記実施形態は、サーバ1は一台の装置として例示されているが、サーバ1は複数の装置によって実現されていてもよい。すなわち、サーバ1は、クラウドとして実現されていてもよい。その場合、これら複数の装置の間のデータの受け渡しは、通信ネットワーク4を介した通信によって実現されてもよい。
【0080】
(変形例6)
上記実施形態では、前処理部13bは、リストデータ122とヘッダ部121aとから、成形済データ12cを作成している。しかし、前処理部13bは、リストデータ122とヘッダ部121aのうちヘッダ部121aのみから成形済データ12cを作成してもよい。例えば、リストデータ122が存在しない場合にそのようにしてもよいし、リストデータ122が存在する場合でもそのようにしてもよい。
【0081】
また、前処理部13bは、リストデータ122とヘッダ部121a以外にも、ボディ部121bから作成したデータを、成形済みデータ12cに含めてもよい。例えば、ボディ部121bの数値列の平均値、分散、最大値、最小値等の代表値を算出し、算出結果を成形済みデータ12cに含めてもよい。また、前処理部13bは、リストデータ122とヘッダ部121aからは成形済みデータ12cを作成せず、ボディ部121bから作成したデータのみを、成形済みデータ12cに含めてもよい。
【0082】
前処理部13bは、信号データ121のうちヘッダ部121aでもボディ部121bでもない部分から作成したデータを成形済みデータ12cに含めてもよい。例えば、信号データ121のファイル名の情報を成形済みデータ12cに含めてもよい。また、前処理部13bは、リストデータ122、ヘッダ部121a、ボディ部121bからは成形済みデータ12cを作成せず、信号データ121のうちヘッダ部121aでもボディ部121bでもない部分から作成したデータのみを、成形済みデータ12cに含めてもよい。
【0083】
このように、前処理部13bは、実験データ12aの各々について、当該実験データ12aに基づいて作成したデータを、前処理済データ12bとは別に成形済データ12cとして記録する。このように、前処理済データ12bの利用形態とは異なる利用形態で用いるデータを成形済データ12cとして別途管理することができる。なお、更に別の例として、前処理部13bは、信号データ121を用いずリストデータ122のみから成形済データ12cを作成してもよい。
【0084】
(発明の特徴)
[請求項1]
複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信可能な材料解析サーバであって、
前記複数の送信装置が送信した前記実験データ(12a)を受信する受信部(13a)と、
前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出し、前処理済データ(12b)として解析のために記録する前処理部(13b)と、を備えた、材料解析サーバ。
[請求項2]
前記前処理部は、コンテナ型仮想化された環境において実行されるコンテナである、請求項1に記載の材料解析サーバ。
[請求項3]
前記受信部は、前記実験データの受信に関連するトリガに基づいて前記前処理部の実行を開始する請求項1または2に記載の材料解析サーバ。
[請求項4]
前記前処理済データの解析を行う解析部(13c)を備え、
前記解析部は、前記前処理済データに基づく予測、前記前処理済データを用いた可視化、前記前処理済データを学習用のデータセットに含める機械学習のうち少なくとも1つを実現する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の材料解析サーバ。
[請求項5]
前記前処理部は、前記実験データの各々について、当該実験データに基づいて作成したデータを、前記前処理済データとは別に成形済データ(12c)として記録する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の材料解析サーバ。
[請求項6]
前記実験データの各々は、それぞれが1つの実験結果を表す1つまたは複数の信号データ(121)と、前記1つまたは複数の信号データに対応する1つまたは複数のレコードを含むリストデータ(122)と、を含み、
前記1つまたは複数の信号データの各々は、当該信号データに係る実験の対象となった材料に関する物理量の分布を表すボディ部(121b)と、当該信号データに係る実験の条件に関する情報を含むヘッダ部(121a)と、を備え、
前記前処理部は、前記1つまたは複数の信号データの各々について、当該信号データのボディ部から特徴量を算出して前記前処理済データとすると共に、当該信号データのヘッダ部の一部または全部を、前記複数のレコードのうち当該信号データに対応するレコードに含め、その結果得られたデータを成形済データ(12c)として記録する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の材料解析サーバ。
[請求項7]
複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信する材料解析サーバにおいて用いられるプログラムであって、
前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出して前処理済データ(12b)とする算出部(S200)、および
前記前処理済データを解析のために記録する記録部(S300)として、前記材料解析サーバを機能させるプログラム。
[請求項8]
複数の送信装置(2)から送信される材料に関する実験結果を示す実験データ(12a)を受信可能な材料解析サーバで行われる方法であって、
前記複数の送信装置が送信した前記実験データを受信することと、
前記実験データの各々に含まれる材料に関する物理量の分布から特徴量を算出し、前処理済データ(12b)として解析のために記録することと、を備えた方法。
【符号の説明】
【0085】
1 サーバ
2 送信装置
12a 実験データ
12b 前処理済データ
13a 受信部
13b 前処理部
13c 解析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6