IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SUMCOの特許一覧

<>
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図1
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図2
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図3
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図4
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図5
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図6
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図7
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図8
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図9
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図10
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図11
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図12
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図13
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図14
  • 特開-インゴットのVノッチ評価装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024038819
(43)【公開日】2024-03-21
(54)【発明の名称】インゴットのVノッチ評価装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240313BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143121
(22)【出願日】2022-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 靖彦
【テーマコード(参考)】
2F065
4M106
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065CC17
2F065FF04
2F065FF09
2F065FF61
2F065GG04
2F065HH05
2F065HH13
2F065JJ03
2F065JJ08
2F065JJ26
2F065LL08
2F065SS04
2F065TT03
4M106AA20
4M106BA05
4M106CA25
4M106DH12
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】測定精度を簡単に点検できる半導体用単結晶のインゴットのVノッチ評価装置を提供すること。
【解決手段】インゴットのVノッチ評価装置は、発光部および受光部を備え、Vノッチの形状を走査するレーザー変位計11と、インゴットあるいはレーザー変位計11を、インゴットの長手方向に相対的に移動させる移動手段と、レーザー変位計11の走査によって得られたVノッチ形状データを処理するデータ処理手段と、評価用のVノッチ32、33、34が形成された標準試料30を保持し、標準試料30のVノッチ形状をレーザー変位計11で測定して点検する点検位置と、移動手段で移動されるインゴットと干渉しない保管位置とに移動可能な標準試料移動手段40と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体用単結晶のインゴットの長手方向に形成されたVノッチを評価するインゴットのVノッチ評価装置であって、
発光部および受光部を備え、前記Vノッチの形状を走査する光学的測定手段と、
前記インゴットあるいは前記光学的測定手段を、前記インゴットの長手方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記光学的測定手段の走査によって得られたVノッチ形状データを処理するデータ処理手段と、
点検用のVノッチが形成された標準試料を保持し、点検位置および保管位置に移動可能な標準試料移動手段と、を備え、
前記点検位置は、前記標準試料のVノッチ形状を前記光学的測定手段で測定可能な位置であり、
前記保管位置は、前記移動手段で移動されるインゴットと干渉しない位置である
ことを特徴とするインゴットのVノッチ評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインゴットのVノッチ評価装置において、
前記標準試料は、複数のVノッチが形成されている
ことを特徴とするインゴットのVノッチ評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインゴットのVノッチ評価装置において、
前記複数のVノッチは、正常判定用のVノッチと、異常判定用のVノッチとを含む
ことを特徴とするインゴットのVノッチ評価装置。
【請求項4】
請求項1に記載のインゴットのVノッチ評価装置において、
前記標準試料移動手段は、支柱と、前記支柱に対して回動可能に設けられて前記点検位置および前記保管位置に移動可能とされ、前記標準試料が保持された回動フレームとを備えて構成され、
前記回動フレームは、前記点検位置と、前記保管位置とでそれぞれ前記支柱に固定可能に構成されている
ことを特徴とするインゴットのVノッチ評価装置。
【請求項5】
請求項1に記載のインゴットのVノッチ評価装置において、
前記標準試料移動手段は、前記標準試料が保持された保持台と、前記保持台を前記点検位置と、前記保管位置とにスライド移動する移動装置とを備えて構成される
ことを特徴とするインゴットのVノッチ評価装置。
【請求項6】
請求項1に記載のインゴットのVノッチ評価装置において、
前記データ処理手段は、
前記光学的測定手段により計測されたVノッチ形状データを取得する形状データ取得部と、
取得されたVノッチ形状データの座標変換を行い、前記Vノッチ形状を評価するための評価用データを生成する評価用データ生成部と、
生成された評価用データに基づいて、前記Vノッチ形状の良否を判定する良否判定部と、
を備える
ことを特徴とするインゴットのVノッチ評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インゴットのVノッチ評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハの端部には、結晶方位を示す目印としてVノッチが形成されている。このシリコンウェーハのVノッチは、育成されたシリコン単結晶のインゴットの外周研削を行った後、インゴットの長手方向に砥石などによりV字状の溝を形成し、インゴットをシリコンウェーハの厚さにスライスすることにより、形成される。
シリコンウェーハのVノッチは、砥石に劣化やカケ等の不具合が発生していた場合、正規の形状を維持することができず、後工程のウェーハ加工工程でVノッチを起点としたウェーハ割れが生じることがある。
【0003】
このため、特許文献1には、インゴットの長手方向に形成されたVノッチの形状を全体に亘って計測することができ、高精度に良否判定を行うことのできるインゴットのVノッチ評価装置が開示されている。
このインゴットのVノッチ評価装置は、発光部および受光部を備え、前記Vノッチの形状を走査する光学的測定手段と、前記インゴットおよび前記光学的測定手段を、前記インゴットの長手方向に相対的に移動させる移動手段と、前記光学的測定手段の走査によって得られたVノッチ形状データを処理するデータ処理手段と、を備え、前記データ処理手段は、前記光学的測定手段により計測されたVノッチ形状データを取得する形状データ取得部と、取得されたVノッチ形状データの座標変換を行い、前記Vノッチ形状を評価するための評価用データを生成する評価用データ生成部と、生成された評価用データに基づいて、前記Vノッチ形状の良否を判定する良否判定部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7035923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記Vノッチ評価装置では、例えば、受光部に塵埃が付着するなどで測定精度が低下した場合、正常なVノッチを異常であると誤判定したり、不具合が発生したVノッチを正常であると誤判定する可能性がある。このため、Vノッチ評価装置の測定精度を維持管理するために、始業前点検時などにVノッチ評価装置の測定精度を簡単に点検できることが求められている。
本発明は、測定精度を簡単に点検できる半導体用単結晶のインゴットのVノッチ評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、半導体用単結晶のインゴットの長手方向に形成されたVノッチを評価するインゴットのVノッチ評価装置であって、発光部および受光部を備え、前記Vノッチの形状を走査する光学的測定手段と、前記インゴットあるいは前記光学的測定手段を、前記インゴットの長手方向に相対的に移動させる移動手段と、前記光学的測定手段の走査によって得られたVノッチ形状データを処理するデータ処理手段と、点検用のVノッチが形成された標準試料を保持し、点検位置および保管位置に移動可能な標準試料移動手段と、を備え、前記点検位置は、前記標準試料のVノッチ形状を前記光学的測定手段で測定可能な位置であり、前記保管位置は、前記移動手段で移動されるインゴットと干渉しない位置であることを特徴とする。
【0007】
本発明のインゴットのVノッチ評価装置において、前記標準試料は、複数のVノッチが形成されていることが好ましい。
【0008】
本発明のインゴットのVノッチ評価装置において、前記複数のVノッチは、正常判定用のVノッチと、異常判定用のVノッチとを含むことが好ましい。
【0009】
本発明のインゴットのVノッチ評価装置において、前記標準試料移動手段は、支柱と、前記支柱に対して回動可能に設けられて前記点検位置および前記保管位置に移動可能とされ、前記標準試料が保持された回動フレームとを備えて構成され、前記回動フレームは、前記点検位置と、前記保管位置とでそれぞれ前記支柱に固定可能に構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明のインゴットのVノッチ評価装置において、前記標準試料移動手段は、前記標準試料が保持された保持台と、前記保持台を前記点検位置と、前記保管位置とにスライド移動する移動装置とを備えて構成されることが好ましい。
【0011】
本発明のインゴットのVノッチ評価装置において、前記データ処理手段は、前記光学的測定手段により計測されたVノッチ形状データを取得する形状データ取得部と、取得されたVノッチ形状データの座標変換を行い、前記Vノッチ形状を評価するための評価用データを生成する評価用データ生成部と、生成された評価用データに基づいて、前記Vノッチ形状の良否を判定する良否判定部と、を備えることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るVノッチ評価装置を含む半導体用単結晶のインゴットの加工装置の構造を示す模式図である。
図2】前記Vノッチ評価装置および加工装置の配置を示す模式図である。
図3】前記Vノッチ評価装置における光学的測定手段の構造を示す模式図である。
図4】前記Vノッチ評価装置におけるデータ処理手段の構造を示す機能ブロック図である。
図5】前記光学的測定手段により走査されたVノッチの形状データを示すグラフである。
図6】前記Vノッチ評価装置における評価用データ生成部により生成した評価用データを示すグラフである。
図7】前記Vノッチ評価装置に設置される標準試料を示す図であり、(A)は上面図、(B)は側面図である。
図8】前記Vノッチ評価装置における標準試料を保持する標準試料移動手段が点検位置に移動された状態を示す正面図である。
図9】前記Vノッチ評価装置における標準試料を保持する標準試料移動手段が点検位置に移動された状態を示す側面図である。
図10】前記標準試料移動手段が保管位置に移動された状態を示す正面図である。
図11】前記標準試料移動手段が保管位置に移動された状態を示す側面図である。
図12】前記実施形態におけるVノッチの加工方法を示すフローチャートである。
図13】前記実施形態におけるVノッチ評価装置の正常点検方法を示すフローチャートである。
図14】前記実施形態におけるVノッチ評価装置の異常点検方法を示すフローチャートである。
図15】前記Vノッチ評価装置に設置される標準試料の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、本発明の実施形態に係るVノッチ評価装置1が示されている。Vノッチ評価装置1によるVノッチ評価方法は、育成された半導体用単結晶のインゴットSIの外周研削を行い、VノッチVNの加工を終えた後、次工程となるスライス工程に送る前に実施される。代表的な半導体用単結晶としてはシリコン単結晶が挙げられ、本発明のVノッチ評価装置1は、シリコン単結晶のインゴットSIに形成されるVノッチの評価に利用できる。さらに、本発明のVノッチ評価装置1は、後述する光学的測定手段で測定可能であれば、シリコン単結晶以外の半導体用単結晶のインゴットに形成されるVノッチの評価にも利用できる。
具体的には、図2に示すように、育成された半導体用単結晶のインゴットSIは、ストッカー2からグラインダ7A~7Dに送られる。グラインダ7A~7Dは、インゴットSIの外周研削およびVノッチVNの加工を行う。
VノッチVNの加工が施されたインゴットSIは、Vノッチ評価装置1によって評価される。Vノッチ評価装置1は、ストッカー2と、長尺ステーション8との間や、ストッカー2とグラインダ7C、7Dとの間に配置される。長尺ステーション8は、ストッカー2から送られたインゴットSIを一時的に保管する場所である。
【0014】
ストッカー2からグラインダ7A~7Dや長尺ステーション8へのインゴットSIの出庫制御は、図1に示すように、出庫ワークステーション3で行われ、出庫ワークステーション3にインゴットSIのナンバーを入力すると、搬出装置4にそのナンバーが出力される。
搬出装置4は、ストッカー2から入力されたナンバーに応じたインゴットSIを保持フレーム6に載置した状態で、搬出ヤードに搬出する。
操業システム5の指令に基づいて、搬出ヤードからは、インゴットSIがグラインダ7A~7Dや長尺ステーション8に搬出される。
【0015】
Vノッチ評価装置1は、搬出ヤード上に配置され、搬出ヤードに搬出されたインゴットSIに加工が施されたVノッチVNの評価を行う。Vノッチ評価装置1は、レーザー変位計11、フレーム12、エアブロー機構13、およびVノッチ解析用コンピュータ14を備える。
光学的測定手段となるレーザー変位計11は、図3に示すように、発光部11A、受光部11B、および計測値出力ケーブル11Cを備える。なお、光学的測定手段は、レーザー変位計11に限定されず、非接触で光学的にVノッチVNの測定できるものであればよい。
【0016】
発光部11Aは、図示を略したが、レーザー発振器およびシリンドリカルレンズを備え、レーザー発振器から放射されたレーザー光を、シリンドリカルレンズによって帯状かつ距離に応じて次第に幅広となるレーザー光(図3に例示)に変換し、VノッチVNに照射する。
受光部11Bは、図示を略したが、集光組レンズおよびCMOSセンサを備え、発光部11AからVノッチVNに照射されたレーザー光の反射光は、受光部11Bの集光組レンズにより集光され、CMOSセンサで結像してVノッチVNの形状が計測される。
【0017】
受光部11Bにより計測されたVノッチVNの計測データは、計測値出力ケーブル11Cを介して、Vノッチ解析用コンピュータ14に出力される。本実施形態のレーザー変位計11は、64kHzでVノッチVNの計測を行うことができる。所定の速度でインゴットSIと、レーザー変位計11とを相対移動させて走査することにより、インゴットSIの長手方向に沿って形成されたVノッチVNの形状を全長に亘り短時間で複数回計測することができる。
【0018】
保持手段としてのフレーム12は、側面視逆L字状の金属材から構成される。フレーム12は、インゴットSIの搬出方向基端側が搬出ヤードに埋設され、搬出方向先端側が宙に浮いた状態でインゴットSIと対向する。
フレーム12の先端側の下面には、レーザー変位計11が吊り下げられ、レーザー変位計11は、インゴットSIから俯瞰した状態でVノッチVNを、インゴットSIの長手方向に沿って走査できる。なお、レーザー変位計11によるVノッチVNの走査は、操業システム5からの指令により実行される。この走査は、グラインダ7C、7Dに併設されたVノッチ評価装置1では、グラインダ7C、7Dで加工されたインゴットSIをストッカー2に搬送する際に行われる。また、長尺ステーション8に並設されたVノッチ評価装置1では、グラインダ7A、7Bで加工されたインゴットSIをストッカー2に戻した後、ストッカー2から長尺ステーション8に搬送する際に行われる。
つまり、本実施形態では、インゴットSIをストッカー2および長尺ステーション8間で搬送する機構や、インゴットSIをストッカー2およびグラインダ7C、7D間で搬送する機構が移動手段として機能している。なお、これに限らず、ベルトコンベア等の他の搬送機構により移動手段を構成してもよく、レーザー変位計11をインゴットSIの長手方向に移動可能な移動手段としてもよい。
【0019】
異物除去手段としてのエアブロー機構13は、レーザー変位計11の搬出方向基端側に設けられ、フレーム12の下面に取り付けられている。エアブロー機構13は、レーザー変位計11のレーザー走査幅に応じた幅でVノッチVNに対して気流を吹き付ける。レーザー変位計11の前段で気流を吹き付けることにより、前工程となる外周研削工程、ノッチ形成工程でVノッチVNに付着した塵埃や水分を吹き飛ばすことができるため、清浄な状態のVノッチVNの表面をレーザー変位計11で走査できる。
【0020】
データ処理手段としてのVノッチ解析用コンピュータ14は、図4に示すように、レーザー変位計11の計測値出力ケーブル11Cから出力されたVノッチVNの計測値を取り込んで、VノッチVNの加工形状判定を行う。
Vノッチ解析用コンピュータ14は、演算処理装置15およびSDメモリ、ハードディスク等の記憶装置16を備えた汎用のコンピュータから構成される。Vノッチ解析用コンピュータ14は、演算処理装置15上で実行される形状データ取得部17、評価用データ生成部18、良否判定部19、および記憶装置16内に設けられる評価結果記録部20を備える。
【0021】
形状データ取得部17は、レーザー変位計11から計測値出力ケーブル11Cを介して出力されたVノッチVNの計測値(Vノッチ形状データ)を取得する。具体的には、形状データ取得部17は、図5に示すように、VノッチVNの横方向長さ位置(VノッチVNの幅方向位置)、および縦方向位置(VノッチVNの深さ方向位置)を計測値として取得する。レーザー変位計11は、相対的に移動してVノッチVNの全長に亘って計測値を取得するので、形状データ取得部17は、VノッチVNの全長に亘って横方向位置および縦方向位置を計測値として取得する。取得された計測値は、評価用データ生成部18に出力される。
【0022】
評価用データ生成部18は、形状データ取得部17により取得されたVノッチVNの計測値を、良否判定部19により判定できる形に座標変換する。評価用データ生成部18は、取得された計測値を、拡大、縮小、平行移動、回転移動、スキューを行うアフィン変換行列を用いて座標変換して、評価用データを生成する。
具体的には、評価用データ生成部18は、図6に示すように、まず、VノッチVNの加工面が真上を向くように回転移動を行う。次に、評価用データ生成部18は、VノッチVNの加工面の底部が原点となるように平行移動を行って評価用データを生成する。生成された評価用データは、良否判定部19に出力される。
【0023】
なお、評価用データ生成部18による座標変換は、本実施形態では、アフィン変換行列で行っているが、本発明はこれに限られない。たとえば、レーザー変位計11による走査が、VノッチVNの斜め上方から行われている場合は、走査面が奥行きのある台形状に変形しているので、射影変換行列を用いて座標変換してもよい。
また、前述したように、本発明は、最終製品である半導体用単結晶のウェーハのVノッチ形状の良否をインゴット状態で判定することを目的としている。そのため、評価用データは、後の工程であるスライス工程でスライス面に現れるVノッチ形状と同じになるように座標変換されたものであることが好ましい。
【0024】
良否判定部19は、評価用データ生成部18により生成された評価用データに基づいて、インゴットSIに形成されたVノッチVNの良否を判定する。具体的には、良否判定部19は、VノッチVNの深さ寸法と、VノッチVNの幅寸法と、VノッチVNの傾斜面の角度と、VノッチVNの形状とを、予め設定された評価基準値と比較することで、VノッチVNの良否を判定する。なお、良否判定部19は、これらの4項目で良否を判定するものに限らず、例えば、VノッチVNの深さ寸法のみを評価して良否を判定してもよい。
【0025】
Vノッチ評価装置1には、測定精度を維持管理するための点検作業で用いられる標準試料30と、この標準試料30を点検位置および保管位置に移動する標準試料移動手段40とが設けられている。
標準試料30は、図7に示すように、インゴットSIから切り出されたブロック状のピース材であり、インゴットSIの外周面である円弧面31に3本のVノッチ32、33、34が加工されている。本実施形態では、3本のVノッチ32、33、34は、VノッチVNの深さ寸法の規格に合わせて加工されており、中央のVノッチ32はVノッチVNの深さ寸法の規格中央値に加工された規格内のVノッチである。図7の左側のVノッチ33はVノッチVNの深さ寸法の下限外れ値に加工された規格外のVノッチであり、右側のVノッチ34は深さ寸法の上限外れ値に加工された規格外のVノッチである。
各Vノッチ32、33、34の深さ寸法の設定は、製品の仕様に応じて設定されるが、例えば、VノッチVNの深さ寸法の規格値は1.3±0.1mmであり、Vノッチ32の深さ寸法は規格中央値である1.3mm、Vノッチ33の深さ寸法は規格値の下限よりも小さい1.1mm、Vノッチ34の深さ寸法は規格値の上限よりも大きい1.5mmである。
各Vノッチ32、33、34の間隔は、レーザー変位計11の測定範囲に複数のVノッチ32、33、34が入らない距離に設定されている。本実施形態の標準試料30では、各Vノッチ32、33、34は20mm間隔で形成されている。
また、標準試料30のサイズは、例えば、幅80mm、奥行き30mm、高さ15mmであり、3本のVノッチ32、33、34を一定間隔で形成可能な最小限のサイズとされている。
【0026】
標準試料30は、ステンレス製のベース板35に接着固定されている。ベース板35には、Vノッチ32、33、34の位置に合わせて位置決め用のネジ穴36、37、38が形成されている。このため、各ネジ穴36、37、38の間隔もVノッチ32、33、34と同じく20mm間隔で形成されている。
【0027】
標準試料移動手段40は、図8から図11に示すように、フレーム12に固定された一対の支柱41と、支柱41に対して回動自在に取り付けられた回動フレーム45とを備えて構成されている。
支柱41は、角筒状の支柱本体411と、支柱本体411の上端に固定されたブラケット412と、支柱本体411の下端に固定された支持プレート413とを備える。支柱41は、ブラケット412を介してフレーム12の下面に固定されている。
支持プレート413は、図9に示すように、下方に延出された第1支持片4131と、水平方向に延出された第2支持片4132とを備える。第1支持片4131の下端部には第1貫通孔414(図11参照)が形成され、第2支持片4132の先端部には第2貫通孔415が形成されている。また、第1貫通孔414の上方位置であり、第2貫通孔415と同じ高さ位置には、回動軸となる段付きネジ42が挿通される貫通孔416が形成されている。この支持プレート413の内面には、係合プレート417が固定されている。
【0028】
回動フレーム45は、支持プレート413に対して回動自在に取り付けられる一対の回動アーム451と、回動アーム451間に配置された保持アーム452とを備えている。
回動アーム451の先端には、図9および図11に示すように、回動フレーム45を水平方向に回動した際に、係合プレート417の下面に係止可能な係止面4511が形成されている。また、回動アーム451の先端部には段付きネジ42が挿通される長穴4512が形成されている。これにより、回動フレーム45は、段付きネジ42を回動軸として回動可能にかつ長穴4512内を段付きネジ42が移動することでスライド可能に支柱41に取り付けられている。また、回動アーム451の中間位置には、2つの穴4513、4514が形成されている。
【0029】
保持アーム452には、図9および図10に示すように、ベース板35の端縁を保持可能な保持片4521が形成されている。保持片4521は、保持アーム452の一部を折り曲げることで形成されている。また、保持アーム452には、ベース板35に形成されたネジ穴36、37、38に対応する穴が形成されている。
これにより、ベース板35の端縁を保持片4521の溝に差し込み、さらに保持アーム452の穴からベース板35のネジ穴36、37、38のいずれかにネジをネジ込むことで、保持アーム452にベース板35を介して標準試料30を固定可能に構成されている。また、標準試料30は、保持アーム452の長手方向(図8の左右方向)に沿ってスライド移動させることができ、保持アーム452の中央に形成された穴に平面視で重なるネジ穴36、37、38を選択することで、標準試料30の左右方向の位置を3段階に切り換えることができる。このため、レーザー変位計11の走査範囲に配置されるVノッチは、図8に示すVノッチ32だけでなく、図8の状態から標準試料30を右側または左側に移動させることで、Vノッチ33またはVノッチ34をレーザー変位計11の走査範囲に配置できる。
【0030】
標準試料移動手段40は、回動フレーム45を回転することで、点検位置および保管位置に移動する。すなわち、図8および図9に示すように、段付きネジ42を回転軸として回動フレーム45を下方に回動し、長穴4512の上端側に段付きネジ42が位置するように回動フレーム45を下側にスライド移動し、第1貫通孔414および上側の穴4513に固定用の位置決めピン43を差し込むことで、標準試料30をレーザー変位計11で測定可能な点検位置に回動フレーム45を移動して固定できる。
一方、点検位置にある回動フレーム45から位置決めピン43を外し、段付きネジ42を回転軸として回動フレーム45を水平方向に90度回動し、図10および図11に示すように係止面4511が係合プレート417の下面に係合するように、回動フレーム45を係合プレート417側にスライドさせて、長穴4512の保持アーム452側の端部に段付きネジ42が位置するように回動フレーム45を移動し、第2貫通孔415および穴4514に位置決めピン43を差し込むことで、標準試料30および回動フレーム45がインゴットSIに干渉しない保管位置に回動フレーム45を移動して固定できる。
【0031】
次に、インゴットSIのVノッチ加工方法について、インゴットSIのVノッチ評価方法の手順も含めて、図12に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、半導体用単結晶の育成装置によって育成されたインゴットSIを、グラインダ7A~7Dに搬送し、グラインダ7A~7DによってインゴットSIの外周研削を行う(工程S1)。
インゴットSIの外周研削を終えたら、グラインダ7A~7DによってインゴットSIの長手方向全長に亘ってVノッチVNの加工を行う(工程S2)。
【0032】
VノッチVNの加工を終えたら、インゴットSIを保持フレーム6に載置して、ストッカー2に搬入して保管する(工程S3)。
オペレータが出庫ワークステーション3を操作して、ストッカー2からインゴットSIを保持フレーム6とともに搬出し(工程S4)、搬出ヤードに配置する。
この際、出庫ワークステーション3から出力されるインゴットSIのインゴットナンバーは、Vノッチ解析用コンピュータ14にも出力される。
【0033】
オペレータは、操業システム5を操作して、長尺ステーション8に対してインゴットSIの搬出を開始する(工程S5)。このため、インゴットSIは、長尺ステーション8に隣接するVノッチ評価装置1が配置された搬出ヤードに配置される。
なお、グラインダ7C,7DでVノッチVNの加工を行ったインゴットSIは、保持フレーム6に載置した後、ストッカー2を経由せずに、直接、隣接するVノッチ評価装置1が配置された搬出ヤードに配置される。すなわち、工程S2の後、S3、S4を実行せずに、工程S5が実行される。
インゴットSIの搬出開始後、エアブロー機構13から気流が噴出し、VノッチVNに残留した塵埃、水分等の異物を除去する(工程S6)。
異物除去後、レーザー変位計11によりVノッチVNの加工面を走査し、VノッチVNの計測を実施する(工程S7)。
【0034】
VノッチVNの加工面の走査は、VノッチVNの全長に亘るまで行われ(工程S8)、VノッチVNの全長の走査が終了したら、Vノッチ解析用コンピュータ14の形状データ取得部17は、レーザー変位計11で取得された計測値を取得する(工程S9)。
評価用データ生成部18は、取得された計測値に基づいて、評価用データを生成する(工程S10)。
良否判定部19は、生成された評価用データに基づいて、インゴットSIの良否判定を行う(工程S11)。
【0035】
インゴットSIのVノッチVNの加工が、判定用の規格値内に入っているか否かを判定する(工程S12)。例えば、VノッチVNの深さ寸法の判定規格値が1.3±0.1mmであれば、測定されたVノッチVNの深さ寸法が1.2mm以上、1.4mm以下の範囲であるかを判定する。
工程S12で良品と判定されたら、操業システム5は、インゴットSIを次工程となるスライス工程に搬出する(工程S13)。
不良品と判定されたら、Vノッチ解析用コンピュータ14から操業システム5にその旨が出力され、操業システム5は、該当するインゴットSIの搬出を停止し、除外する(工程S14)。
以上により、インゴットSIの外周研削およびVノッチ加工が行われ、加工されたVノッチVNを評価して良品のみを次工程に搬出できる。
【0036】
次に、Vノッチ評価装置1を点検する点検方法について、図13および図14に示すフローチャートに基づいて説明する。Vノッチ評価装置1の点検時には、インゴットSIの代わりに標準試料30を測定するが、その測定データの処理はインゴットSIのVノッチVN測定時に用いられるVノッチ解析用コンピュータ14をそのまま利用している。
図13は、Vノッチ評価装置1が、深さ寸法が規格内のVノッチ32を正常に評価できるかを点検する正常点検時の方法であり、通常は、毎日、始業前点検で実行されるものである。
図14は、Vノッチ評価装置1が、深さ寸法が規格外のVノッチ33、34を異常であることを正しく評価できるかを点検する異常点検時の方法であり、月次検査や年次検査などの定期的な検査時に実行されるものである。なお、異常点検も正常点検と同じく、毎日の始業前点検で実行してもよい。
【0037】
図13に示す正常点検が開始されると、点検作業者は、保管位置に固定されていた回動フレーム45を下方に回動し、点検位置に移動して位置決めピン43を用いて固定する(工程S21)。回動フレーム45の保持アーム452には標準試料30が取り付けられているため、標準試料30も点検位置に移動する。
次に、深さ寸法が規格内のVノッチ32をレーザー変位計11で走査可能な測定位置に設定する(工程S22)。具体的には、保持アーム452には、ベース板35のネジ穴36~38に合わせて3つの穴が加工されており、ベース板35の中央のネジ穴36を、保持アーム452の中央の穴に合わせ、保持アーム452の下方から保持アーム452の穴を介してネジ穴36に位置決め用のネジをネジ込むことで標準試料30を位置決めする。なお、Vノッチ32が既に測定位置に設定されている場合には、工程S22ではVノッチ32の位置を確認するだけでよい。
【0038】
次に、レーザー変位計11により、Vノッチ32の計測を実施する(工程S23)。この際、標準試料30のVノッチ32の走査は、必ずしもVノッチ32の全長に亘って行う必要は無く、データ処理に必要な分だけ走査すればよい。
Vノッチ32の走査が終了したら、Vノッチ解析用コンピュータ14の形状データ取得部17は、レーザー変位計11で取得された計測値を取得する(工程S24)。
評価用データ生成部18は、取得された計測値に基づいて、評価用データを生成する(工程S25)。
良否判定部19は、生成された評価用データに基づいて、標準試料30のVノッチ32の良否判定を行う(工程S26)。Vノッチ32は、深さ寸法が規格内であるため、良否判定部19は、通常は、良と判定する。このため、点検作業者は、良否判定部19が良判定としたか否かを確認する(工程S27)。
【0039】
工程S27において良と判定した場合、点検作業者は、Vノッチ評価装置1は正常であると判定し(工程S28)、工程S27において不良と判定した場合、点検作業者は、Vノッチ評価装置1に異常があると判定する(工程S29)。
その後、点検作業者は、回動フレーム45を固定していた位置決めピン43を外し、回動フレーム45を保管位置に移動して位置決めピン43で固定し、点検を終了する(工程S30)。
なお、工程S29で異常があると判定された場合、点検作業者は、Vノッチ評価装置1の異常原因を確認し、例えば受光部11Bに塵埃が付着していることが原因であればレーザー変位計11を清掃するなど、異常原因の対策を行った後に、再度、正常点検を行い、Vノッチ評価装置1が正常であることを確認後に、インゴットSIのVノッチVNの評価作業を行えばよい。
【0040】
図14に示す異常点検が開始されると、点検作業者は、回動フレーム45を下方に回動し、点検位置に移動して位置決めピン43を用いて固定する(工程S31)。なお、正常点検に続けて異常点検を実行する場合は、定常点検終了時に回動フレーム45を保管位置に戻さずに継続して点検作業を行えばよい。
次に、深さ寸法が規格外のVノッチ33をレーザー変位計11の測定位置に設定する(工程S32)。具体的には、ベース板35の左側のネジ穴37を、保持アーム452の中央の穴に合わせ、保持アーム452の下方から保持アーム452の穴を介してネジ穴37に位置決め用のネジをネジ込むことで標準試料30を位置決めする。
【0041】
次に、正常点検時の工程S23~工程S26と同様に、レーザー変位計11により、Vノッチ33の計測を実施し(工程S33)、Vノッチ33の走査が終了したら、Vノッチ解析用コンピュータ14の形状データ取得部17は、レーザー変位計11で取得された計測値を取得し(工程S34)、評価用データ生成部18は、取得された計測値に基づいて、評価用データを生成する(工程S35)。
なお、各Vノッチ32、33、34は、1つの円弧面31に形成されているため、中央のVノッチ32の深さ方向は、標準試料30の底面に直交する鉛直方向であるが、左右のVノッチ33、34の深さ方向は、標準試料30の底面に直交する方向に対して傾斜している。このため、Vノッチ33、34を計測した際は、評価用データ生成部18は、VノッチVNの計測時と同様に、Vノッチ33、34の加工面が真上を向くように回転移動を行い、Vノッチ33、34の加工面の底部が原点となるように平行移動を行って評価用データを生成する。
良否判定部19は、生成された評価用データに基づいて、標準試料30のVノッチ33の良否判定を行う(工程S36)。
次に、点検作業者は、良否判定部19が良判定としたか否かを確認する(工程S37)。Vノッチ33は、深さ寸法が規格よりも小さい規格外であるため、良否判定部19は、通常は、不良と判定する。
【0042】
このため、工程S37において良と判定した場合、点検作業者は、Vノッチ評価装置1に異常があると判定し(工程S38)、工程S37において不良と判定した場合、点検作業者は、Vノッチ評価装置1は正常に作動していると判定する(工程S39)。
次に、点検作業者は、点検を終了してよいか確認する(工程S40)。本実施形態の標準試料30には、2つの規格外のVノッチ33、34が形成され、Vノッチ33の点検後にVノッチ34の点検を行うため、工程S40ではNOと判定し、深さ寸法が規格外のVノッチ34をレーザー変位計11の点検位置に設定する(工程S32)。具体的には、ベース板35の右側のネジ穴38を、保持アーム452の中央の穴に合わせ、保持アーム452の下方から保持アーム452の穴を介してネジ穴38に位置決め用のネジをネジ込むことで標準試料30を位置決めする。
【0043】
その後、工程S33~S36の処理を再度実行する。
次に、点検作業者は、良否判定部19が良判定としたか否かを確認する(工程S37)。Vノッチ33は、深さ寸法が規格よりも大きい規格外であるため、良否判定部19は、通常は、不良と判定する。
このため、工程S37において良と判定した場合、点検作業者は、Vノッチ評価装置1に異常があると判定し(工程S38)、工程S37において不良と判定した場合、点検作業者は、Vノッチ評価装置1は正常に作動していると判定する(工程S39)。
次に、点検作業者は、点検を終了してよいか確認し(工程S40)、終了してよい場合は、工程S40でYesと判定され、点検作業者は、回動フレーム45を固定していた位置決めピン43を外し、回動フレーム45を保管位置に移動して位置決めピン43で固定し(工程S41)、点検を終了する。
なお、工程S39で規格外のVノッチ33、34を正常と判定した場合は、点検作業者は、Vノッチ評価装置1の異常原因を確認し、レーザー変位計11を清掃するなどの対策を行った後に、再度、異常点検を行い、Vノッチ評価装置1が正常に作動していることを確認後に、インゴットSIのVノッチVNの評価作業を行えばよい。
【0044】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
本実施形態では、インゴットSIから切り出して、点検用のVノッチ32、33、34を加工した標準試料30を用意し、この標準試料30が固定された標準試料移動手段40をVノッチ評価装置1に設置したので、Vノッチ評価装置1の点検時には標準試料移動手段40の回動フレーム45を点検位置に回動して位置決めピン43で固定するだけでよいため、短時間でかつ簡単にVノッチ評価装置1を点検できる。
すなわち、育成された半導体用単結晶のインゴットSIに点検用のVノッチを加工した試料用インゴットを準備しておき、この試料用インゴットをストッカー2からVノッチ評価装置1に搬出して点検する方法も考えられるが、この方法では、試料用インゴットの保管場所を確保しなければならず、ストッカー2からVノッチ評価装置1で測定される位置に搬出し、点検後にストッカー2に戻す必要があって作業工数が増えてしまう。これに対し、本実施形態では、標準試料30を、Vノッチ評価装置1に付設可能なサイズに最小化し、標準試料移動手段40の回動フレーム45に固定しているので、標準試料30を点検位置に移動する作業工数も最小限にでき、点検時の作業効率を向上できる。
【0045】
本実施形態では、標準試料30に、深さ寸法が規格内とされた正常判定用のVノッチ32と、深さ寸法が規格外とされた異常判定用のVノッチ33、34との複数のVノッチを形成している。このため、1つの標準試料30を用いて、正常判定用のVノッチ32を正常であると正しく判定できるかを点検する正常点検と、異常判定用のVノッチ33、34を異常であると正しく判定できるかを点検する異常点検とを実行でき、Vノッチ評価装置1の測定精度を簡単に維持管理できる。
【0046】
本実施形態では、標準試料移動手段40は、支柱41と、標準試料30が取り付けられた回動フレーム45とを備えて構成され、回動フレーム45を保管位置から90度回転して点検位置に移動して位置決めピン43で固定するだけで測定精度の点検作業を実行できるので、最小限の工数で点検作業を開始できる。また、回動フレーム45を点検位置から90度回転して保管位置に移動して位置決めピン43で固定すれば、その後のインゴットSIのVノッチVNの計測時に標準試料移動手段40や標準試料30がインゴットSIに干渉することを防止でき、点検作業から通常の評価作業への移行も最小限の工数で実現できる。
【0047】
本実施形態では、インゴットSIに形成されたVノッチVNを、インゴットSIの長手方向に沿ってレーザー変位計11により走査し、VノッチVNの全長に亘ってVノッチVNの加工面の形状データを取得できる。したがって、取得されたVノッチVNの加工面の形状データを座標変換によって評価用データを生成して、VノッチVNの全体に亘って評価を行うことができ、高精度にVノッチVNの良否判定を行うことができる。
さらに、点検時に標準試料30のVノッチ32、33、34をレーザー変位計11で計測したデータは、インゴットSIのVノッチVNの測定データを処理する形状データ取得部17、評価用データ生成部18、良否判定部19を用いて処理されて判定しているので、レーザー変位計11の不具合だけでなく、形状データ取得部17、評価用データ生成部18、良否判定部19の不具合も判定できる。このため、システムの改良などでプログラムを更新した際に、標準試料30の各Vノッチ32、33、34を正しく判定できるかを確認することで、プログラムのバグなどもチェックできる。
【0048】
標準試料30はシリコン単結晶のインゴットSIから切り出したブロックで構成しているので、形状が安定するシリコン製の標準試料30とすることができ、長期間、標準試料30として利用できる。また、砥石によって加工されるVノッチの形状を再現でき、規格内の深さ寸法のVノッチ32と、規格外の深さ寸法のVノッチ33、34とを簡単に形成できる。
【0049】
本実施形態では、Vノッチ加工が施されたインゴットSIのVノッチVNを、インゴットSIのVノッチ評価方法により良否判定を行うことにより、VノッチVNに不具合のあるインゴットを除外することができる。したがって、次工程となるスライス工程において、VノッチVNの不具合に起因する不良品を除外できるため、スライス工程における無駄な加工を軽減することができる。
本実施形態では、レーザー変位計11の走査方向前方にエアブロー機構13を設けている。したがって、インゴットSIのVノッチVNの加工後、VノッチVNに付着した塵埃、切削水を除去することができるため、レーザー変位計11による走査を清浄な状態で行うことができ、Vノッチ形状の計測の精度を向上することができる。
【0050】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の種々の改良並びに設計の変更等があっても本発明に含まれる。
標準試料としては、シリコン等の半導体用単結晶のインゴットと同じ材質のものに限定されず、ステンレスなどの金属製や、合成樹脂製のものでもよく、Vノッチ32、33、34を形成でき、かつ、レーザー変位計11で測定可能な材質であればよい。
標準試料の形状は、前記実施形態に限定されず、例えば、図15に示す標準試料30Bを用いてもよい。標準試料30Bは、インゴットSIの外周面と同じ曲率の円弧面31を3つ形成し、各円弧面31の頂点にVノッチ32、33、34を形成したものである。この標準試料30Bによれば、保持アーム452上でスライド移動させて各Vノッチ32、33、34をレーザー変位計11の直下の測定位置に移動した際に、各Vノッチ32、33、34の向きを一定にできる。
【0051】
標準試料に形成されるVノッチの数は、3つに限らない。例えば、標準試料に、規格内のVノッチを1つ設けてもよいし、2つあるいは4つ以上のVノッチを設けてもよい。
また、標準試料に形成されるVノッチは、深さ寸法が規格内および規格外のものに限定されず、Vノッチを評価する指標に基づいて設定すればよい。例えば、深さ寸法以外に、VノッチVNの幅寸法、VノッチVNの傾斜面の角度、VノッチVNの形状を評価指標としている場合は、各指標の規格内のVノッチや、規格外のVノッチを形成した標準試料を用いてもよい。この場合、各指標毎に異なる標準試料を準備し、保持アーム452に交換して取り付けてもよいし、回動フレーム45を複数個設けて、各回動フレーム45にそれぞれ異なる標準試料を取り付けておき、複数の回動フレーム45を順次点検位置に移動して点検してもよい。
【0052】
標準試料30は、保持アーム452に対して水平方向に移動していたが、保持アーム452に対して円弧方向に移動し、各Vノッチ33、34を測定位置に移動した際に、Vノッチ33、34の開口方向がVノッチ32と同じく鉛直方向に向くように設定してもよい。
【0053】
標準試料移動手段は、前記実施形態の構成に限定されず、例えば、標準試料30が保持された保持台と、前記保持台を点検位置と保管位置とにスライド移動させる移動装置とで構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…Vノッチ評価装置、2…ストッカー、3…出庫ワークステーション、4…搬出装置、5…操業システム、6…保持フレーム、7A…グラインダ、7B…グラインダ、7C…グラインダ、7D…グラインダ、8…長尺ステーション、11…レーザー変位計、11A…発光部、11B…受光部、12…フレーム、13…エアブロー機構、14…Vノッチ解析用コンピュータ、15…演算処理装置、16…記憶装置、17…形状データ取得部、18…評価用データ生成部、19…良否判定部、20…評価結果記録部、30…標準試料、30B…標準試料、31…円弧面、32…Vノッチ、33…Vノッチ、34…Vノッチ、35…ベース板、40…標準試料移動手段、41…支柱、42…段付きネジ、43…位置決めピン、45…回動フレーム、411…支柱本体、412…ブラケット、413…支持プレート、417…係合プレート、451…回動アーム、452…保持アーム、4131…第1支持片、4132…第2支持片、4521…保持片、SI…インゴット、VN…Vノッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15