(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039214
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】水性分散液
(51)【国際特許分類】
C08L 27/18 20060101AFI20240314BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20240314BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20240314BHJP
C08L 1/26 20060101ALI20240314BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240314BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240314BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C08L27/18
C08L101/14
C08L29/04 B
C08L1/26
C08L83/04
B32B27/30 D
B32B27/30 102
B32B27/30 A
B32B27/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143596
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 蔵
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文
(72)【発明者】
【氏名】結城 創太
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AJ06
4F100AJ06A
4F100AK18
4F100AK18A
4F100AK21A
4F100AK25A
4F100AK49
4F100AK52
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100BA02
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4F100DE01A
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4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100JA04
4F100JA04A
4F100JA06
4F100JA06A
4F100JB02
4F100JB09A
4F100JM01
4F100JN01
4F100YY00A
4J002AB023
4J002BD151
4J002BE003
4J002BG003
4J002BJ003
4J002CE003
4J002CM013
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4J002FD090
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4J002FD110
4J002FD130
4J002FD160
4J002FD170
4J002GF00
4J002GQ00
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れ、その表面外観に優れる成形物を形成できる、分散安定性及び取扱い性に優れる、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む水性分散液を提供する。
【解決手段】融点が260℃以上であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、水酸基又はポリオキシアルキレン基を有する、200~300℃における質量減少率が20質量%/℃以上であるオルガノポリシロキサンと、ビニルアルコール系高分子、アクリル系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンイミン及びセルロースエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の、200~300℃における質量減少率が40質量%/℃未満である極性官能基を有する水溶性高分子と、水と、を含み、前記オルガノポリシロキサンの含有量に対する前記水溶性高分子の含有量の比が0.01~0.1である、水性分散液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が260℃以上であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、水酸基又はポリオキシアルキレン基を有する、200~300℃における質量減少率が20質量%/℃以上であるオルガノポリシロキサンと、ビニルアルコール系高分子、アクリル系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンイミン及びセルロースエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の、200~300℃における質量減少率が40質量%/℃未満である極性官能基を有する水溶性高分子と、水と、を含み、前記オルガノポリシロキサンの含有量に対する前記水溶性高分子の含有量の比が0.01~0.1である、水性分散液。
【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが酸素含有極性基を含有する、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が1μm以上10μm未満である、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が25質量%以上である、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項5】
前記オルガノポリシロキサンの含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子に対して1~15質量%である、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項6】
前記水溶性高分子の含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子に対して5質量%以下である、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサンと前記水溶性高分子の合計含有量が、水性分散液全体に対して5質量%以下である、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項8】
前記水溶性高分子がビニルアルコール系高分子である、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項9】
前記水溶性高分子がセルロースエーテルである、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項10】
前記セルロースエーテルが、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースである、請求項9に記載の水性分散液。
【請求項11】
さらに、炭素数1~6のアルコールを含有する、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項12】
粘度が、500~10000mPa・sである、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項13】
チキソ比が、1.0~2.5である、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の水性分散液を基材の表面に配置し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成し、前記基材で構成される基材層と前記ポリマー層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の移動体通信機器における高速化、高周波化に対応するため、通信機器のプリント基板の絶縁層には低誘電率かつ低誘電正接である材料が求められ、テトラフルオロエチレン系ポリマーが注目されている。かかるポリマーを含む絶縁層を形成する材料として、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む分散液が知られている。中でも水性分散液は、それを使用する際に要する設備の汎用性や、塗工等の対象となる基材の選択性が高く、各種の添加剤による液物性の改良が検討されている。
特許文献1には、溶融成型可能なフッ素樹脂粒子、400℃での重量減少が特定量であるバインダー樹脂、非フッ素系界面活性剤及び水を所定量含む水性塗料組成物としての分散液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子は水中での分散性が低く、その水性分散液は泡立ちやすいため、水性分散液の流動性等の取扱い性は充分とは言い難い。また、かかる水性分散液から形成されるポリマー層等の成形物の表面に欠点が発生しやすく、その表面外観を損ないやすい。かかる課題は、特許文献1のような平均粒子径がμmオーダーのテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を用い、その水性分散液中の含有量が高くなると顕著になりやすい。
一方、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む水性分散液から塗膜等の成形物を形成する際に、水性分散液の液物性や塗膜形成時の物性を向上させる目的で配合する添加剤が残存してしまうと、得られる成形物の物性が低下しやすい。
【0005】
本発明者らは、テトラフルオロエチレン系ポリマーと特定のオルガノポリシロキサンと特定の水溶性高分子と水とを含み、両者の熱分解挙動が所定の関係にあり、かつ両者の配合量が特定範囲である分散液は、分散安定性に優れ、泡立ちが抑制され取扱いやすいことを知見した。また、かかる水性分散液から形成されるポリマー層等の成形物には前記オルガノポリシロキサンと前記水溶性高分子の残存が少なく、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れ、その表面外観に優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れ、その表面外観に優れる成形物を形成できる、分散安定性及び取扱い性に優れる、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む水性分散液の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 融点が260℃以上であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、水酸基又はポリオキシアルキレン基を有する、200~300℃における質量減少率が20質量%/℃以上であるオルガノポリシロキサンと、ビニルアルコール系高分子、アクリル系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンイミン及びセルロースエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の、200~300℃における質量減少率が40質量%/℃未満である極性官能基を有する水溶性高分子と、水と、を含み、前記オルガノポリシロキサンの含有量に対する前記水溶性高分子の含有量の比が0.01~0.1である、水性分散液。
[2] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが酸素含有極性基を含有する、[1]の水性分散液。
[3] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が1μm以上10μm未満である、[1]又は[2]の水性分散液。
[4] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が25質量%以上である、[1]~[3]のいずれかの水性分散液。
[5] 前記オルガノポリシロキサンの含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子に対して1~15質量%である、[1]~[4]のいずれかの水性分散液。
[6] 前記水溶性高分子の含有量が、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子に対して5質量%以下である、[1]~[5]のいずれかの水性分散液。
[7] 前記オルガノポリシロキサンと前記水溶性高分子の合計含有量が、水性分散液全体に対して5質量%以下である、[1]~[6]のいずれかの水性分散液。
[8] 前記水溶性高分子がビニルアルコール系高分子である、[1]~[7]のいずれかの水性分散液。
[9] 前記水溶性高分子がセルロースエーテルである、[1]~[7]のいずれかの水性分散液。
[10] 前記セルロースエーテルが、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースである、[9]の水性分散液。
[11] さらに、炭素数1~6のアルコールを含有する、[1]~[10]のいずれかの水性分散液。
[12] 粘度が、500~10000mPa・sである、[1]~[11]のいずれかの水性分散液。
[13] チキソ比が、1.0~2.5である、[1]~[12]のいずれかの水性分散液。
[14] [1]~[13]のいずれかの水性分散液を基材の表面に配置し加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成し、前記基材で構成される基材層と前記ポリマー層とをこの順で有する積層体を得る、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分散安定性及び取扱い性に優れた水性分散液が提供できる。かかる水性分散液からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れ、その表面外観に優れる、塗膜(ポリマー層)等の成形物を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子又はフィラーの体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子又はフィラーのD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「平均粒子径(D90)」は、D50と同様にして求められる、粒子の体積基準累積90%径である。
粒子又はフィラーの比表面積は、ガス吸着(定容法)BET多点法で粒子を測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で分散液を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、分散液の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度η1を、回転数が60rpmの条件で測定される粘度η2で除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
溶媒又は溶液の「表面張力」は、表面張力計を用い、25℃にてウィルヘルミー法で測定した値である。
ノニオン系界面活性剤の「HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値」は、グリフィン法により、次の算出式で定義される値である。
HLB値=20×[親水部の化学式量の総和]/分子量
セルロースエーテルの「置換度」は、エーテル化度とも言い、セルロースのグルコース環上にある3つの水酸基のうちアルコキシル基に置換された水酸基の個数(平均値)を表す。置換度は理論的に0~3の間の値を有することができ、一般的に置換基が高いほど親水性となる。置換度は、第18改正日本薬局方記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースの置換度分析方法により測定される値を換算して求められる。
オルガノポリシロキサン及び水溶性高分子の「200~300℃における質量減少率」は、昇温速度を10℃/分とし、試料量10mg、ヘリウム90体積%と酸素10体積%からなる混合ガス雰囲気下にて、熱重量測定装置(TG)、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて、200℃から300℃に昇温させた際の質量減少量を、昇温時間(10分)と試料量(10mg)とで除した値のパーセンテージ値として求められる値である。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0009】
本発明の分散液(以下、「本分散液」とも記す。)は、融点が260℃以上であるテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と、水酸基又はポリオキシアルキレン基を有する、200~300℃における質量減少率が20質量%/℃以上であるオルガノポリシロキサン(以下、「オルガノポリシロキサン」とも記す。)と、ビニルアルコール系高分子、アクリル系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンイミン及びセルロースエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の、200~300℃における質量減少率が40質量%/℃未満である極性官能基を有する水溶性高分子(以下、「水溶性高分子」とも記す。)と、水と、を含み、前記オルガノポリシロキサンの含有量に対する前記水溶性高分子の含有量の比が0.01~0.1である。前記比は、0.01~0.10であるのが好ましい。
【0010】
本分散液は分散安定性及び取扱い性に優れており、かかる分散液から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れ、その表面外観にも優れる。なお、本明細書において「表面外観に優れる」とは、「表面の荒れが少ない」等の表面平滑性に優れること、又は「表面にスジ、クラックや欠点等がない」等の、視認又は分析機器で観察される外観に優れることのいずれをも包含する。
本分散液が分散安定性に優れ、泡立ちが抑制され取扱い性に優れる理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0011】
F粒子とオルガノポリシロキサンと水溶性高分子を含む水性分散液においては、オルガノポリシロキサンがF粒子表面に吸着されてF粒子の分散性を向上させる効果と、水溶性高分子が液中溶解して液のチキソトロピー性を向上させる効果とが、分散液全体としての安定性を向上させていると考えられる。一方、加熱により、水性分散液からF粒子の充填物を形成し、F粒子の焼成物(加工物)を形成するに際し、良好なF粒子のパッキング状態を保持して平滑な加工物を得るためには、過剰量のオルガノポリシロキサン及び水溶性高分子が必要となりやすい。その結果、加工物中に両成分が残留しやすくなり、成形物の物性を低下させやすい。
本分散液は、オルガノポリシロキサンが水酸基又はポリオキシアルキレン基を有し、水溶性高分子が極性官能基を有するため、両者の高度な相互作用が、上述した効果を協奏的に高めていると考えられる。また、オルガノポリシロキサンと水溶性高分子が、それぞれ所定の耐熱性を有するため、加熱に伴う加工物の形成におけるF粒子の良好なパッキング状態が保持されやすいと考えられる。
その結果、本分散液は、F粒子の分散安定性とチキソトロピー性等の液物性に優れ、泡立ちが抑制され取扱いやすいだけでなく、両成分の配合量を低減できるため、本分散液から形成される成形物中の物性を向上できたと考えられる。
【0012】
本発明におけるFポリマーは、融点が260℃以上である、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含むポリマーである。Fポリマーの融点は、280℃以上がより好ましい。Fポリマーの融点は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。この場合、本分散液から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が耐熱性に優れやすい。
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
【0013】
Fポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー(ETFE)、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)が好ましく、PFA及びFEPがより好ましく、PFAがさらに好ましい。これらのポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PTFEとしては、低分子量PTFE、変性PTFEが挙げられる。
PAVEは、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3及びCF2=CFOCF2CF2CF3(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0014】
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましく、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するのがより好ましく、カルボニル基含有基を有するのがさらに好ましい。
この場合、本分散液は、分散安定性及び取扱い性に優れやすい。また、本分散液から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性や、その表面外観に優れやすい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CF2CH2OH及び-C(CF3)2OHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH2)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーが酸素含有極性基を有する場合、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、主鎖の炭素数1×106個あたり、10~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましい。なお、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
【0015】
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマーに基づく単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよく、前者が好ましい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られるFポリマーが挙げられる。
【0016】
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含み、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.99~9.97モル%、0.01~3モル%含むポリマーであるのがさらに好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましく、NAHがより好ましい。
【0017】
本発明において、F粒子のD50は1μm以上10μm未満であるのが好ましい。F粒子は、中実状の粒子であってもよく、非中空状の粒子であってもよい。F粒子は、nmオーダーの微粒子から形成された二次粒子であってもよい。F粒子のD50は、1.0μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。F粒子のD50は、6μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
また、F粒子のD90は8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。F粒子のD90が上記範囲以下であると、上述した作用機構がより発現しやすくなり、粗大粒子の数が少ない本分散液が得られやすい。
F粒子の比表面積は、1~25m2/gであるのが好ましく、6~15m2/gがより好ましい。
【0018】
F粒子は、Fポリマーを含む粒子であり、Fポリマーからなるのが好ましい。
F粒子は、融点が260℃以上である、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子であるのがより好ましい。この場合、上述した作用機構がより発現されてF粒子の凝集も抑制されやすい。
F粒子は、Fポリマー以外の樹脂や無機化合物を含んでいてもよく、FポリマーをコアとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をシェルとするコア-シェル構造を形成していてもよく、FポリマーをシェルとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をコアとするコア-シェル構造を形成していてもよい。
ここで、Fポリマー以外の樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、マレイミドが挙げられ、無機化合物としては、シリカ、窒化ホウ素が挙げられる。
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0019】
本分散液が含有するオルガノポリシロキサンは、水酸基又はポリオキシアルキレン基を有し、200~300℃における質量減少率が20質量%/℃以上である。かかる質量減少率は25質量%/℃以上であるのがより好ましい。また、かかる質量減少率は90質量%/℃以下であるのが好ましい。
本分散液が、その質量減少率が本発明で規定する範囲であるオルガノポリシロキサンを含有することで、上述した作用機構が発現する。
オルガノポリシロキサンとしては、親水部位としてポリオキシアルキレン構造を、疎水部位としてポリジメチルシロキサン構造を有する、ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンがより好ましい。
ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンは、主鎖にポリジメチルシロキサン単位(-(CH3)2SiO2/2-)を有していてもよく、側鎖にポリジメチルシロキサン単位を有していてもよく、主鎖及び側鎖の双方にポリジメチルシロキサン単位を有していてもよい。ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンは、主鎖にジメチルシロキサンの単位を含み、側鎖にオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン、又は、主鎖にジメチルシロキサンの単位を含み、主鎖末端にオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンが好ましい。
また、ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンに含まれるオキシアルキレン基は、1種のオキシアルキレン基のみからなっていてもよく、2種以上のオキシアルキレン基からなっていてもよい。後者の場合、異種のオキシアルキレン基は、ランダム状に連結していてもよく、ブロック状に連結してもよい。
【0020】
また、オルガノポリシロキサンのHLB値は10以上であるのが好ましい。
このようなオルガノポリシロキサンとしては、「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(ビックケミー・ジャパン社製)、「KF-6011」、「KF-6043」(信越化学工業社製)が挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0021】
本分散液が含有する水溶性高分子は、ビニルアルコール系高分子、アクリル系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンイミン及びセルロースエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、極性官能基を有する水溶性高分子で、200~300℃における質量減少率が40質量%/℃未満である。かかる質量減少率は35質量%/℃以下であるのが好ましく、30質量%/以下であるのがより好ましい。また、かかる質量減少率は5質量%/℃以上であるのが好ましい。
本分散液が、その質量減少率が本発明で規定する範囲である水溶性高分子を含有することで、上述した作用機構がより発現されやすく、分散安定性及び取扱い性に優れやすい。また、本分散液のレオロジー物性が向上し、造膜性等の取扱性が向上しやすく、厚いポリマー層をより形成しやすい。
なお、本明細書において「水溶性高分子」とは、水に対する溶解度が20g/L以上である高分子を意味する。
【0022】
極性官能基としては、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、イミド結合、チオエーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、カルボニル基含有基、水酸基含有基、チオール基、スルフィド基、スルホニル基、スルホキシル基、アミノ基、アミド基が好ましく、水酸基含有基がより好ましく、ノニオン性水酸基がさらに好ましい。極性官能基は、ポリマーの主鎖又は側鎖のいずれに有していてもよい。
なお、ポリビニルピロリドン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミンがさらに水酸基を有する場合は、ポリマーの主鎖末端に水酸基を有しているのが好ましい。
【0023】
ビニルアルコール系高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分的にアセチル化又は部分的にアセタール化されたポリビニルアルコール、ビニルアルコールとビニルブチラールと酢酸ビニルの共重合体が挙げられる。
ビニルアルコール系高分子の具体例としては、「エスレック(登録商標)B」シリーズ、「エスレック(登録商標)K(KS)」シリーズ、「エスレック(登録商標)SV」シリーズ(以上、積水化学工業社製)」、「モビタール(登録商標)」シリーズ(クラレ社製)が挙げられる。
アクリル酸系高分子としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合ナトリウム、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体ナトリウム等のポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のポリアクリレート、ポリ-α-ハロアクリレート、ポリ-α-シアノアクリレート、ポリアクリルアミドが挙げられる。
【0024】
セルロースエーテルとしては、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースが挙げられ、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースが好ましい。
【0025】
カルボキシアルキルセルロースとしては、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルメチルセルロース等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースが好ましく、ヒドロキシアルキルセルロースがより好ましく、ヒドロキシエチルセルロースがさらに好ましい。
【0026】
セルロースエーテルの置換度は1.4以上であるのが好ましく、1.9以上がより好ましく、2.1以上がさらに好ましい。また、セルロースエーテルの置換度は、2.9以下が好ましく、2.7以下がより好ましい。セルロースエーテルの置換度が上記範囲を満たすと、その増粘性作用やF粒子との相互作用が、上述したオルガノポリシロキサンとの関係でバランスされ、上述した作用機構が発現しやすい。
セルロースエーテルの重量平均分子量は、1000~10000であるのが好ましい。なお、重量平均分子量は、例えば示差屈折率検出器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
セルロースエーテルの具体例としては、「サンローズ(登録商標)」シリーズ(日本製紙社製)、「メトローズ(登録商標)」シリーズ(信越化学工業社製)、「HEC CFグレード」(住友精化社製)が挙げられる。
【0027】
上記した中でも、本分散液が含有する水溶性高分子は、ビニルアルコール系高分子又はセルロースエーテルが好ましい。
本分散液は、その粘度及びチキソ比を調整する観点から、上記した水溶性高分子以外の粘度調節剤を、本発明の効果を損なわない範囲でさらに含有していてもよい。
【0028】
本分散液は、さらに炭素数1~6のアルコールを含有していてもよい。かかる炭素数1~6のアルコールは、大気圧下、25℃にて液体である化合物であり、沸点が160℃以下であるのが好ましく、沸点120℃以下の化合物がより好ましい。
前記炭素数1~6のアルコールとしては、メタノール(23mN/m)、エタノール(23mN/m)、1-プロパノール(24mN/m)、2-プロパノール(22mN/m)、1-ブタノール(25mN/m)、2-ブタノール(24mN/m)、イソブタノール(23mN/m)、1-メトキシ-2-プロパノール(26mN/m)、2-プロポキシ-エタノール(27mN/m)、1-プロポキシ-2-プロパノール(25mN/m)、2-エトキシエタノール(26mN/m)、エチレングリコール(48mN/m)、プロピレングリコール(25mN/m)、グリセリン(63mN/m)等が挙げられる。なお、括弧内の数値は各アルコールの表面張力である。
これらは1種類を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上の前記アルコールを用いる場合、それらは互いに相溶するのが好ましい。
【0029】
本分散液が炭素数1~6のアルコールを含有する場合、その含有量は、本分散液に対して0.1質量%以上であるのが好ましく、1質量%以上がより好ましい。炭素数1~6のアルコールの含有量は、10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下が好ましい。F粒子の分散安定性の観点からオルガノポリシロキサンを比較的多く含有する場合も、かかる炭素数1~6のアルコールは、抑泡作用や破泡作用のような消泡剤の役割を担っているとも考えられる。
【0030】
本分散液は、前記したアルコール及び水のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で他の分散媒を用いてもよい。かかる他の分散媒は、前記したアルコール及び水と混和するのが好ましい。他の分散媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド;アセトン、メチルエチルケトン等のケトンが挙げられる。
【0031】
本分散液は、無機フィラーをさらに含有していてもよい。この場合、本分散液から形成される塗膜(ポリマー層)等の成形物が、電気特性と低線膨張性とに優れやすい。
無機フィラーの形状は、球状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよく、具体的には、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状であってもよい。
無機フィラーとしては、例えば石英粉、シリカ、ウォラストナイト、タルク、窒化ケイ素、炭化ケイ素、雲母等のケイ素化合物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒素化合物;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属酸化物;炭素繊維;グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素同素体;銀、銅等の金属;が挙げられる。無機フィラーは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーのD50は、0.1~50μmが好ましい。
無機フィラーの表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0032】
無機フィラーの好適な具体例としては、シリカフィラー(「アドマファイン(登録商標)」シリーズ(アドマテックス社製)、「SFP(登録商標)」シリーズ(デンカ社製)、「E-SPHERES」シリーズ(太平洋セメント社製)等)、酸化亜鉛フィラー(「FINEX(登録商標)」シリーズ(堺化学工業株式会社製)等)、酸化チタンフィラー(「タイペーク(登録商標)」シリーズ(石原産業社製)、「JMT(登録商標)」シリーズ(テイカ社製)等)、タルクフィラー(「SG」シリーズ(日本タルク社製)等)、ステアタイトフィラー(「BST」シリーズ(日本タルク社製)等)、窒化ホウ素フィラー(「HP40MF」シリーズ、「HP40J」シリーズ(いずれもJFEミネラル社製)、「UHP」シリーズ(昭和電工社製)、「デンカボロンナイトライド」シリーズの「GP」、「HGP」グレード(デンカ社製)等)が挙げられる。
本分散液が無機フィラーを含む場合、本分散液における無機フィラーの含有量は、1~25質量%が好ましい。
【0033】
本分散液は、Fポリマーとは異なる他の樹脂をさらに含んでいてもよい。かかる他の樹脂は、本分散液に非中空状の粒子として含まれていてもよく、本分散液を構成する水、また必要に応じて含有する炭素数1~6のアルコールや他の分散媒等の液状分散媒(以下、水、炭素数1~6のアルコール、他の分散媒等を総称して「液状分散媒」とも記す。)に溶解又は分散して含まれていてもよい。
他の樹脂としては、液晶性の芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。
他の樹脂としては、芳香族系ポリマーが好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミック酸、芳香族ポリアミドイミド及び芳香族ポリアミドイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族イミドポリマーがより好ましい。芳香族ポリマーは本分散液中で、液状分散媒に溶解したワニスとして含まれるのが好ましい。
【0034】
芳香族イミドポリマーの具体例としては、「ユピア-AT」シリーズ(UBE社製)、「ネオプリム(登録商標)」シリーズ(三菱ガス化学社製)、「スピクセリア(登録商標)」シリーズ(ソマール社製)、「Q-PILON(登録商標)」シリーズ(ピーアイ技術研究所製)、「WINGO」シリーズ(ウィンゴーテクノロジー社製)、「トーマイド(登録商標)」シリーズ(T&K TOKA社製)、「KPI-MX」シリーズ(河村産業社製)、「HPC-1000」、「HPC-2100D」(いずれも昭和電工マテリアルズ社製)が挙げられる。
本分散液が他の樹脂をさらに含む場合、F粒子に対する他の樹脂の含有量は、1~25質量%が好ましい。
【0035】
本分散液は、さらに、チキソ性付与剤、消泡剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0036】
本分散液は、F粒子とオルガノポリシロキサンと水溶性高分子と水と、必要に応じて前記した炭素数1~6のアルコール、他の分散媒、無機フィラー、他の樹脂、添加剤等を混合することで得られる。
本分散液は、F粒子とオルガノポリシロキサンと水溶性高分子と水を一括で混合して得てもよいし、別々に順次混合してもよいし、これらのマスターバッチを予め作成し、それと残りの成分を混合してもよい。混合の順は特に制限はなく、また混合の方法も一括混合でも複数回に分割して混合してもよい。
【0037】
例えば、F粒子を水の一部に予め分散し、次いでオルガノポリシロキサン、水溶性高分子を順次添加して混合し、得られた混合物を残余の水に添加して本分散液を得るのが、分散性を向上できる観点から好ましい。
オルガノポリシロキサンは、そのまま又は水溶液として添加してもよい。水溶性高分子の添加方法は、粉末又はその水溶液として添加してもよく、液体の消泡剤等に分散または溶解させた状態で添加してもよい。
また、前記した炭素数1~6のアルコール、他の分散媒、無機フィラー、他の樹脂、添加剤等を必要に応じてさらに混合する場合、F粒子と水との混合に際して混合してもよく、前記混合物を水に添加するに際して混合してもよい。
【0038】
本分散液を得るための混合の装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー及びプラネタリーミキサー等のブレードを備えた撹拌装置、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル及びアジテーターミル等のメディアを備えた粉砕装置、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー、薄膜旋回型高速ミキサー、自転公転撹拌機及びV型ミキサー等の他の機構を備えた分散装置が挙げられる。
【0039】
本分散液におけるF粒子の含有量は、25質量%以上であるのが好ましく、30質量%以上であるのがより好ましい。F粒子の含有量は、75質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましい。
本分散液におけるオルガノポリシロキサンの含有量は、上述した作用機構がより発現しやすい観点から、本分散液中のF粒子に対して、1~15質量%の範囲であるのが好ましく、3~10質量%の範囲がより好ましい。
【0040】
本分散液における水溶性高分子の含有量は、本分散液の流動性を良好とする観点、また上述した作用機構が発現しやすい観点から、F粒子に対して5質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下がより好ましい。水溶性高分子の含有量は、本分散液中のF粒子に対して、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましい。
また、オルガノポリシロキサンと水溶性高分子の合計含有量が、本分散液全体に対して5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0041】
本分散液における水の含有量は、25質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのがより好ましい。水の含有量は、70質量%未満であるのが好ましく、65質量%以下であるのがより好ましい。また、本分散液における水の含有量は、F粒子の含有量に対して、60~180質量%であるのが好ましい。
【0042】
本分散液の粘度は、500mPa・s以上が好ましく、1000mPa・s以上がより好ましい。本分散液の粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましい。この場合、本分散液は塗工性に優れ、任意の厚さを有する塗膜(ポリマー層)等の成形物を形成しやすい。また、かかる範囲の粘度範囲にある本分散液は、それから形成される成形物において、Fポリマーの物性が高度に発現しやすい。
本分散液のチキソ比は、1.0~2.5が好ましい。この場合、本分散液は、塗工性及び均質性に優れ、より緻密な成形物を生成しやすい。
【0043】
本分散液のpHは、長期保管性を向上する観点から、8~10がより好ましい。かかる本分散液のpHは、pH調整剤(アミン、アンモニア、クエン酸等。)又はpH緩衝剤(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン四酢酸、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等。)によって調整できる。
【0044】
本分散液から形成される成形物の誘電率は2.4以下であるのが好ましく、2.0以下であるのがより好ましい。また、誘電率は1.0超であるのが好ましい。成形物の誘電正接は、0.0022以下であるのが好ましく、0.0020以下であるのがより好ましい。また、誘電正接は、0.0010超であるのが好ましい。成形物の熱伝導率は、1W/m・K以上であるのが好ましく、3W/m・K以上がより好ましい。
【0045】
本分散液を例えばシート状に押出す等の成形方法に供すれば、Fポリマーを含む、シート等の成形物を形成できる。押出して得たシートは、さらにプレス成形、カレンダー成形等をして流延してもよい。シートは、さらに加熱して、液状分散媒を除去し、Fポリマーを焼成するのが好ましい。
【0046】
本分散液から形成されるシートの厚さは、1~1000μmが好ましい。
シートの誘電率、誘電正接及び熱伝導率の好適な範囲は、それぞれ、上述した成形物の誘電率、誘電正接及び熱伝導率の範囲と同様である。なお、シートにおける熱伝導率とは、シートの面内方向における熱伝導率を意味する。
シートの線膨張係数は、100ppm/℃以下が好ましく、80ppm/℃以下がより好ましい。シートの線膨張係数の下限は、30ppm/℃である。なお、線膨張係数は、JIS C 6471:1995に規定される測定方法に従って、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数を測定した値を意味する。
【0047】
かかるシートを基材に積層すれば積層体を形成できる。積層体の製造方法としては、前記基材上に本分散液を押出成形する方法、シートと前記基材とを熱圧着する方法等が挙げられる。
基材としては、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等の金属基板;ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、テトラフルオロエチレン系ポリマー等の耐熱性樹脂のフィルム;プリプレグ基板(繊維強化樹脂基板の前駆体)、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックス基板;ガラス基板が挙げられる。
【0048】
基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられる。また、基材の形状は、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.01~0.05μmが好ましい。
基材の表面は、シランカップリング剤により表面処理されていてもよく、プラズマ処理されていてもよい。かかるシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
シートと基材との剥離強度は、10~100N/cmが好ましい。
【0049】
また、本分散液を基材の表面に配置し加熱して、Fポリマーを含むポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を形成すれば、基材で構成される基材層とF層とをこの順で有する積層体が得られる。
F層は、本分散液を基材の表面に配置し、加熱して液状分散媒を除去し、さらに加熱してFポリマーを焼成して形成するのが好ましい。かかる積層体から基材を分離すれば、Fポリマーを含むシートを得られる。
基材としては、上述のシートと積層できる基材と同様のものが挙げられ、その好適態様も同様である。
【0050】
本分散液の配置の方法としては、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、ダイコート法又はスプレー法が好ましい。
液状分散媒の除去に際する加熱は、100~200℃にて、0.1~30分間で行うのが好ましい。この際の加熱において液状分散媒は、完全に除去する必要はなく、F粒子のパッキングにより形成される層が自立膜を維持できる程度まで除去すればよい。また、加熱に際しては、空気を吹き付け、風乾によって液状分散媒の除去を促してもよい。
【0051】
Fポリマーの焼成に際する加熱は、Fポリマーの融点以上の温度にて行うのが好ましく、360~400℃にて、0.1~30分間行うのがより好ましい。
それぞれの加熱における加熱装置としては、オーブン、通風乾燥炉が挙げられる。装置における熱源は、接触式の熱源(熱風、熱板等)であってもよく、非接触式の熱源(赤外線等)であってもよい。
また、それぞれの加熱は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
また、それぞれの加熱における雰囲気は、空気雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気のいずれであってもよい。
【0052】
F層は、本分散液の配置、加熱の工程を経て形成される。これら工程は1回ずつ行ってもよく、2回以上繰り返してもよい。例えば、基材の表面に本分散液を配置し加熱してF層を形成し、さらに前記F層の表面に本分散液を配置し加熱して2層目のF層を形成してもよい。また、基材の表面に本分散液を配置し加熱して液状分散媒を除去した段階で、さらにその表面に本分散液を配置し加熱してF層を形成してもよい。
本分散液は、基材の一方の表面にのみ配置してもよく、基材の両面に配置してもよい。前者の場合、基材層と、かかる基材層の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者の場合、基材層と、かかる基材層の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。
F層の厚さは、積層体の用途によっても異なるが、1~1000μmの範囲が好ましい。
【0053】
積層体の好適な具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。
F層の厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数、F層と基材層との剥離強度の好適範囲は、上述の本分散液から形成されるシートにおける、厚さ、誘電率、誘電正接、熱伝導率、線膨張係数、シートと基材との剥離強度の好適範囲と同様である。
【0054】
本分散液は、絶縁性、耐熱性、対腐食性、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、熱伝導性を付与するための材料として有用である。
本分散液は、具体的には、プリント配線板、熱インターフェース材、パワーモジュール用基板、モーター等の動力装置で使用されるコイル、車載エンジン、熱交換器、バイアル瓶、注射筒(シリンジ)、アンプル、医療用ワイヤー、リチウムイオン電池等の二次電池、リチウム電池等の一次電池、ラジカル電池、太陽電池、燃料電池、リチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、キャパシタ、コンデンサ(アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ等)、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、電極のバインダー、電極のセパレーター、電極(正極、負極)に使用できる。
また、本分散液は部品を接着する接着剤としても有用である。具体的には、本分散液は、セラミックス部品の接着、金属部品の接着、半導体素子やモジュール部品の基板におけるICチップや抵抗、コンデンサ等の電子部品の接着、回路基板と放熱板の接着、LEDチップの基板への接着に使用できる。
【0055】
本分散液から形成されるシート等の成形物、及び積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品等として有用である。
具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気自動車等のモーター等に使用されるエナメル線被覆材、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、石油輸送ホース、水素タンク、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、ヨー軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、ブッシュ、シール、スラストワッシャ、ウェアリング、ピストン、スライドスイッチ、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、テンションロープ、ウェアパッド、ウェアストリップ、チューブランプ、試験ソケット、ウェハーガイド、遠心ポンプの摩耗部品、薬品及び水供給ポンプ、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ラケットのガット、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス用実装放熱基板、無線通信デバイスの放熱部材、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィン、金属放熱板、風車や風力発電設備や航空機等のブレード、パソコンやディスプレイの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、低酸素下で加熱処理する加工機や真空オーブン、プラズマ処理装置などのシール材、スパッタや各種ドライエッチング装置等の処理ユニット内の放熱部品、電磁波シールドとして有用である。
【0056】
本分散液から形成されるシート等の成形物、及び積層体は、フレキシブルプリント配線基板、リジッドプリント配線基板等の電子基板材料、保護フィルムや放熱基板、特に自動車向けの放熱基板として有用である。
【0057】
また、本分散液は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、炭化ケイ素、それらの合金等の軽金属からなるバッテリー又はキャパシタのハウジングを貫通するフィードスルーをFポリマーで被覆するためのコーティング剤としても使用できる。
かかるフィードスルーとしては、ハウジングが開口部を備え、前記開口部を封止するガラス材料で貫通する導体を備えたフィードスルーが挙げられる。
ガラス材料は、ガラスセラミックス材料であってもよく、具体的には、特開表2018-502417号公報に記載される材料が挙げられる。
導体としては、バッテリー又はキャパシタの電極材料に適した材料が挙げられ、例えば、バッテリーのカソードであれば、銅、銅合金が挙げられる。導体は、ハウジングの内側と外側とで異種の材質からなっていてもよい。
【0058】
本分散液におけるFポリマー、特に熱溶融性であり酸素含有極性基を含有するFポリマーは、接着性に優れるため、かかるフィードスルーを被覆するために用いるとガラス材料とハウジングを高度に接合できる。また、Fポリマーは、耐薬品性に優れるため、ガラス材料の腐食を高度に抑制できる。例えば、本分散液によりFポリマーで被覆されたフィードスルーを備えた、フッ化リチウム塩を含む電解液を使用したバッテリーは、気密性に優れるだけでなく、フッ酸発生に伴うフィードスルーにおけるガラス材料の浸食が抑制されるため耐久性にも優れる。
【実施例0059】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[Fポリマー]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×106個あたり1000個有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(融点:300℃)の粒子(D50:2.0μm、比表面積:7m2/g)
[オルガノポリシロキサン]
オルガノポリシロキサン1:主鎖にポリシロキサン鎖を有し、側鎖にポリエチレンオキシド基を有する、ノニオン性のシリコーン系界面活性剤(HLB値=13、質量減少率=25%)
オルガノポリシロキサン2:主鎖にポリシロキサン鎖を有し、側鎖にポリエチレンオキシド基を有する、ノニオン性のシリコーン系界面活性剤(HLB値=16、質量減少率=15%)
[水溶性高分子]
水溶性高分子1:ヒドロキシエチルセルロース(質量減少率=20%)
水溶性高分子2:カルボキシメチルセルロース(質量減少率=36%)
水溶性高分子3:ポリアクリル酸(質量減少率=40%)
【0060】
2.水性分散液の製造例
[例1]
ポットに、F粒子1とオルガノポリシロキサン1と水溶性高分子1と水とを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がして、F粒子1(35質量部)、オルガノポリシロキサン1(5質量部)、水溶性高分子1(0.1質量部)及び水(59.9質量部)を含む分散液1(粘度:80mPa・s)を得た。分散液1における、オルガノポリシロキサン1の含有量に対する水溶性高分子1の含有量の比は0.02であった。
[例2]
水溶性高分子1の配合量を変化させたこと以外は例1と同様にして、F粒子1(35質量部)、オルガノポリシロキサン1(5質量部)、水溶性高分子1(0.6質量部)及び水(59.4質量部)を含む分散液2を得た。分散液2における、オルガノポリシロキサン1の含有量に対する水溶性高分子1の含有量の比は0.15であった。
[例3]
水溶性高分子1の代わりに水溶性高分子2を用いた以外は例1と同様にして、F粒子1(35質量部)、オルガノポリシロキサン1(5質量部)、水溶性高分子2(0.1質量部)及び水(59.9質量部)を含む分散液3を得た。分散液3における、オルガノポリシロキサン1の含有量に対する水溶性高分子2の含有量の比は0.02であった。
【0061】
[例4]
オルガノポリシロキサン1の代わりにオルガノポリシロキサン2を用いた以外は例1と同様にして、F粒子1(35質量部)、オルガノポリシロキサン2(5質量部)、水溶性高分子1(0.1質量部)及び水(59.9質量部)を含む分散液4を得た。分散液4における、オルガノポリシロキサン2の含有量に対する水溶性高分子1の含有量の比は0.02であった。
[例5]
水溶性高分子1の代わりに水溶性高分子3を用いた以外は例1と同様にして、F粒子1(35質量部)、オルガノポリシロキサン1(5質量部)、水溶性高分子3(0.1質量部)及び水(59.9質量部)を含む分散液5を得た。分散液5における、オルガノポリシロキサン1の含有量に対する水溶性高分子3の含有量の比は0.02であった。
【0062】
3.評価
分散液1~5をそれぞれ用いて積層体を製造し、その際の取扱い性と、形成されたポリマー層を評価した。具体的には、ロール・ツー・ロールプロセスにより、基材(ポリイミドフィルム(PI Advanced Materials社製「FG-100」:厚さ25μm)の一方の表面に、各分散液を小径グラビアリバース法で塗工して塗工層を形成し、通風乾燥炉(炉温150℃)に3分間で通過させて、水を除去してドライ膜を形成した。また、基材の他方の表面にも同様に各分散液を塗工して塗工層を形成し、乾燥してドライ膜を形成した。次いで、両面にドライ膜が形成された基材を、遠赤外線炉(炉内入口、出口付近の炉温度300℃、中心付近の炉温度360℃)に5分間で通過させてF粒子を溶融焼成し、基材の両面にポリマー層(厚さ25μm)を有する積層体を得た。
分散液1では、塗工層の表面における泡立ちがなく、透明で、表面に欠点や筋目がなく平滑なポリマー層が得られた。
分散液2及び3では、分散液1のそれに比較して、塗工層の表面にやや泡立ちが見られ、ポリマー層がやや着色して透明性に劣り、電気特性(線膨張係数、誘電率及び誘電正接)も劣っていた。
分散液4及び5では、ポリマー層の表面にランダムな筋目やひび割れが生じており、良好な表面形状のポリマー層自体が得られなかった。