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特開2024-39393セメント製造設備のCO2回収システムおよびセメント製造設備のCO2回収方法
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  • 特開-セメント製造設備のCO2回収システムおよびセメント製造設備のCO2回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039393
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】セメント製造設備のCO2回収システムおよびセメント製造設備のCO2回収方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/44 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
C04B7/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143914
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】島 裕和
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112KA05
(57)【要約】
【課題】原料起源のCOと燃料起源のCOとを効率よく回収することができるセメント製造設備のCO回収システムを提供する。
【解決手段】セメント製造用キルンおよび間接加熱型仮焼炉を有し、前記間接加熱型仮焼炉から排出された燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス管と、前記燃焼排ガス管と接続するガス導入口と、酸化カルシウム導入口と、炭酸カルシウム取出口と、ガス排出口とを有し、前記ガス導入口から導入された前記燃焼排ガスと前記酸化カルシウム導入口から導入された酸化カルシウムとを接触させることにより、前記燃焼排ガス中のCOと前記酸化カルシウムを反応させて炭酸カルシウムを生成させる反応装置と、前記反応装置の前記炭酸カルシウム取出口から取り出された炭酸カルシウムを、前記間接加熱型仮焼炉の前記原料導入口に搬送する搬送装置と、を有するセメント製造設備のCO回収システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント製造用キルン、および、原料導入口と、仮焼物取出口と、CO取出口とを備え、前記原料導入口から導入されたセメント原料を、燃焼ガスを用いて間接的に仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させる間接加熱型仮焼炉を有するセメント製造設備のCO回収システムであって、
前記間接加熱型仮焼炉から排出された燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス管と、
前記燃焼排ガス管と接続するガス導入口と、酸化カルシウム導入口と、炭酸カルシウム取出口と、ガス排出口とを有し、前記ガス導入口から導入された前記燃焼排ガスと前記酸化カルシウム導入口から導入された酸化カルシウムとを接触させることにより、前記燃焼排ガス中のCOと前記酸化カルシウムを反応させて炭酸カルシウムを生成させる反応装置と、
前記反応装置の前記炭酸カルシウム取出口から取り出された炭酸カルシウムを、前記間接加熱型仮焼炉の前記原料導入口に搬送する搬送装置と、を有するセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項2】
前記セメント製造用キルンにおいて生成した排ガスを、前記反応装置の前記ガス導入口に搬送する配管を有する請求項1に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項3】
前記反応装置内に、冷却部が配置されている請求項1または2に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項4】
前記冷却部が、水の吸熱によって水蒸気を発生させるボイラである請求項3に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項5】
前記セメント原料仮焼物が酸化カルシウムを含み、前記間接加熱型仮焼炉の前記仮焼物取出口から取り出された前記セメント原料仮焼物を、前記セメント製造用キルンに搬送する第1搬送路と、前記反応装置の前記酸化カルシウム導入口に搬送する第2搬送路とを有する請求項1または2に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項6】
前記第2搬送路に冷却器が配置されている請求項5に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項7】
前記セメント製造用キルンに搬送する前記セメント原料仮焼物の量と、前記反応装置の前記酸化カルシウム導入口に搬送する前記セメント原料仮焼物の量とを制御する酸化カルシウム量制御装置を有する請求項5に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項8】
前記酸化カルシウム量制御装置は、前記反応装置の前記ガス導入口から導入されたガスのCO濃度および前記反応装置の前記ガス排出口から排気されるガスのCO濃度の一方または両方に基づいて、前記反応装置の前記酸化カルシウム導入口に搬送する酸化カルシウム量を調整する請求項7に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項9】
前記間接加熱型仮焼炉の内圧を減圧する減圧装置を有する請求項1または2に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項10】
前記反応装置の内圧を加圧する加圧装置を有する請求項1または2に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項11】
前記セメント製造用キルンおよび前記間接加熱型仮焼炉を除く他の装置で発生したCO含有ガスを、前記反応装置の前記ガス導入口に搬送する配管を有する請求項1または2に記載のセメント製造設備のCO回収システム。
【請求項12】
セメント製造用キルン、および、原料導入口と、仮焼物取出口と、CO取出口とを備える間接加熱型仮焼炉を有するセメント製造設備のCO回収方法であって、
前記間接加熱型仮焼炉の前記原料導入口から導入されたセメント原料を、燃焼ガスを用いて間接的に加熱、仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させて、前記COを回収するCO回収工程と、
前記間接加熱型仮焼炉から排出された燃焼排ガスを含む燃焼排ガス含有ガスと酸化カルシウムとを接触させることにより、前記燃焼排ガス中のCOと前記酸化カルシウムとを反応させて炭酸カルシウムを生成させる炭酸カルシウム生成工程と、
固気分離によって前記炭酸カルシウムを回収し、回収した前記炭酸カルシウムを前記間接加熱型仮焼炉のセメント原料導入口に供給する炭酸カルシウム供給工程と、を含むセメント製造設備のCO回収方法。
【請求項13】
前記燃焼排ガス中のCOと前記酸化カルシウムとを600℃以上750℃以下の温度で反応させる請求項12に記載のセメント製造設備のCO回収方法。
【請求項14】
前記燃焼排ガス含有ガスが前記セメント製造用キルンにおいて生成した排ガスを含む請求項12または13に記載のセメント製造設備のCO回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造設備のCO回収システムおよびセメント製造設備のCO回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント製造設備では、セメントの製造時にCOが多量に発生する。セメントの製造時に発生するCOには、原料起源のCOと燃料起源のCOとがある。原料起源のCOは、セメント原料の主要成分である炭酸カルシウム(石灰石)が熱分解して酸化カルシウム(生石灰)を生成することによって発生するCOである。燃料起源のCOは、セメント原料を焼成する際の熱源として利用した燃焼ガスの排ガス中のCOである。
【0003】
セメント製造設備のCOの排出量を削減するために、セメントの製造時に発生するCOを回収するシステムが検討されている。原料起源のCOを高効率で回収できるシステムとして、燃焼ガスを用いて、炭酸カルシウムの熱分解温度以上に加熱した熱媒体と、セメント原料とを混合か焼炉で混合して、セメント原料を加熱して仮焼することによって生成した原料起源のCOを回収するシステムが検討されている(特許文献1、2)。特許文献1には、熱媒体を加熱するために用いた燃焼ガスの排ガス(燃焼排ガス)とセメント原料をプレヒータに供給して、セメント原料を燃焼排ガスで予熱することが記載されている。また、特許文献2には、仮焼後のセメント原料の一部を熱交換器で降温させた後、プレヒータに戻して、セメント原料と燃焼排ガスと接触させて、セメント原料中の酸化カルシウムに燃焼排ガス中の燃料起源のCOを吸収させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-292715号公報
【特許文献2】特開2011-088760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているセメント製造設備では、セメント原料を燃焼排ガスで予熱しているため、セメント製造設備における熱源を有効活用することができる。しかしながら、燃焼排ガスは高温であるため、セメント原料を燃焼排ガスで予熱する際に、炭酸カルシウムの一部が熱分解して、プレヒータ内にて原料起源のCOが生成することがある。また、特許文献2に記載されているセメント製造設備では、酸化カルシウムと燃焼排ガス中のCOとを反応させることによって発生した反応熱により燃焼排ガスの温度がさらに上昇して、酸化カルシウムとCOとの反応が抑制され、燃料起源のCOを酸化カルシウムに吸収させることが困難となるおそれがあった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、原料起源のCOと燃料起源のCOとを効率よく回収することができるセメント製造設備のCO回収システムおよびセメント製造設備のCO回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1のセメント製造設備のCO回収システムは、セメント製造用キルン、および、原料導入口と、仮焼物取出口と、CO取出口とを備え、前記原料導入口から導入されたセメント原料を、燃焼ガスを用いて間接的に仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させる間接加熱型仮焼炉を有するセメント製造設備のCO回収システムであって、前記間接加熱型仮焼炉から排出された燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス管と、前記燃焼排ガス管と接続するガス導入口と、酸化カルシウム導入口と、炭酸カルシウム取出口と、ガス排出口とを有し、前記ガス導入口から導入された前記燃焼排ガスと前記酸化カルシウム導入口から導入された酸化カルシウムとを接触させることにより、前記燃焼排ガス中のCOと前記酸化カルシウムを反応させて炭酸カルシウムを生成させる反応装置と、前記反応装置の前記炭酸カルシウム取出口から取り出された炭酸カルシウムを、前記間接加熱型仮焼炉の前記原料導入口に搬送する搬送装置と、を有する構成とされている。
【0008】
このような構成とされた本発明の態様1のセメント製造設備のCO回収システムによれば、間接加熱型仮焼炉にて、セメント原料を、燃焼ガスを用いて間接的に仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させるので、間接加熱型仮焼炉内に高濃度のCOを生成させることができる。また、反応装置にて、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムを反応させて炭酸カルシウムを生成させ、生成した炭酸カルシウムを搬送装置にて間接加熱型仮焼炉に供給するので、燃焼排ガス中のCOを回収することができる。したがって、本発明の態様1のセメント製造設備のCO回収システムによれば、原料起源のCOと燃料起源のCOとを効率よく回収することができる。さらに、酸化カルシウムと燃焼排ガス中のCOとの反応によって発生した熱を、セメント原料の予熱などに利用することによって、セメント原料を間接加熱するときの熱量(燃焼ガスの使用量)を少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0009】
本発明の態様2は、態様1のセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記セメント製造用キルンにおいて生成した排ガスを、前記反応装置の前記ガス導入口に搬送する配管を有する構成とされている。
本発明の態様2のセメント製造設備のCO回収システムによれば、燃焼排ガス中のCOとともに、セメント製造用キルンの排ガス中のCOを回収することができる。また、セメント製造用キルンの排ガス中のCOと酸化カルシウムとを反応させることによって発生した反応熱を、セメント原料の予熱などに利用することによって、セメント原料を間接加熱するときの熱量(燃焼ガスの使用量)、および、前記セメント製造用キルンにおける燃焼ガスの使用量を少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0010】
本発明の態様3は、態様1または態様2のセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記反応装置内に、冷却部が配置されている構成とされている。
本発明の態様3のセメント製造設備のCO回収システムによれば、冷却装置を用いて反応装置内の温度を低くすることにより、応装置内でのCOと酸化カルシウムとの反応が促進される。よって、燃焼排ガス中のCOの回収効率が向上する。
【0011】
本発明の態様4は、態様3のセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記冷却部が、水の吸熱によって水蒸気を発生させるボイラである構成とされている。
本発明の態様4のセメント製造設備のCO回収システムによれば、冷却部がボイラであるので、反応装置内の温度を効率よく低下させることができる。
【0012】
本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つのセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記セメント原料仮焼物が酸化カルシウムを含み、前記間接加熱型仮焼炉の前記仮焼物取出口から取り出された前記セメント原料仮焼物を、前記セメント製造用キルンに搬送する第1搬送路と、前記反応装置の前記酸化カルシウム導入口に搬送する第2搬送路とを有する構成とされている。
本発明の態様5のセメント製造設備のCO回収システムによれば、セメント原料仮焼物を用いて燃焼排ガス中のCOを回収することができる。また、燃焼排ガス中のCOに接触させる酸化カルシウムの量の調整が容易になる。
【0013】
本発明の態様6は、態様5のセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記第2搬送路に冷却器が配置されている構成とされている。
本発明の態様6のセメント製造設備のCO回収システムによれば、燃焼排ガスと接触させる酸化カルシウムの温度を低下させることができるので、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムとを反応させることによって反応熱が発生しても、生成する炭酸カルシウムの温度を所定の温度に保つことができる。このため、燃焼排ガスの温度が上昇しにくくなり、燃焼排ガス中のCOをより高い効率で回収することができる。
【0014】
本発明の態様7は、態様5または態様6のセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記セメント製造用キルンに搬送する前記セメント原料仮焼物の量と、前記反応装置の前記酸化カルシウム導入口に搬送する前記セメント原料仮焼物の量とを制御する酸化カルシウム量制御装置を有する構成とされている。
本発明の態様7のセメント製造設備のCO回収システムによれば、反応装置に搬送する酸化カルシウムの量を調整することが可能となるので、燃焼排ガス中のCOを回収するために必要な量の酸化カルシウムを反応装置に供給することができる。このため、燃焼排ガス中のCOをさらに高い効率で回収することができる。
【0015】
本発明の態様8は、態様7のセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記酸化カルシウム量制御装置は、前記反応装置の前記ガス導入口から導入されたガスのCO濃度および前記反応装置の前記ガス排出口から排気されるガスのCO濃度の一方または両方に基づいて、前記反応装置の前記酸化カルシウム導入口に搬送する酸化カルシウム量を調整する構成とされている。
本発明の態様8のセメント製造設備のCO回収システムによれば、燃焼排ガス中のCOを回収するために必要な量の酸化カルシウムを反応装置に確実に供給することができる。このため、燃焼排ガス中のCOをさらに高い効率で回収することができる。
【0016】
本発明の態様9は、態様1から態様8のいずれか一つのセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記間接加熱型仮焼炉の内圧を減圧する減圧装置を有する構成とされている。
本発明の態様9のセメント製造設備のCO回収システムによれば、間接加熱型仮焼炉の内圧を減圧することによって、間接加熱型仮焼炉内での炭酸カルシウムの熱分解温度を下げることができる。これにより、セメント原料を間接加熱するときの熱量、すなわち燃焼ガスの使用量を少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0017】
本発明の態様10は、態様1から態様9のいずれか一つのセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記反応装置の内圧を加圧する加圧装置を有する構成とされている。
本発明の態様10のセメント製造設備のCO回収システムによれば、反応装置の内圧を加圧することによって、炭酸カルシウムの熱分解温度を高くすることができる。これにより、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムとの反応が促進され、燃焼排ガス中のCOをさらに高い効率で回収することができる。
【0018】
本発明の態様11は、態様1から態様10のいずれか一つのセメント製造設備のCO回収システムにおいて、前記セメント製造用キルンおよび前記間接加熱型仮焼炉を除く他の装置で発生したCO含有ガスを、前記反応装置の前記ガス導入口に搬送する配管を有する構成とされていてもよい。
本発明の態様11のセメント製造設備のCO回収システムによれば、セメント製造用キルンおよび間接加熱型仮焼炉を除く他の装置で発生したCOを効率よく回収することができ、大気に放出されるCOを低減することができる。
【0019】
本発明の態様12のセメント製造設備のCO回収方法は、セメント製造用キルン、および、原料導入口と、仮焼物取出口と、CO取出口とを備える間接加熱型仮焼炉を有するセメント製造設備のCO回収方法であって、前記間接加熱型仮焼炉の前記原料導入口から導入されたセメント原料を、燃焼ガスを用いて間接的に加熱、仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させて、前記COを回収するCO回収工程と、前記間接加熱型仮焼炉から排出された燃焼排ガスを含む燃焼排ガス含有ガスと酸化カルシウムとを接触させることにより、前記燃焼排ガス中のCOと前記酸化カルシウムとを反応させて炭酸カルシウムを生成させる炭酸カルシウム生成工程と、固気分離によって前記炭酸カルシウムを回収し、回収した前記炭酸カルシウムを前記間接加熱型仮焼炉のセメント原料導入口に供給する炭酸カルシウム供給工程と、を含む構成とされている。
【0020】
このような構成とされた本発明の態様12のセメント製造設備のCO回収方法によれば、CO回収工程にて、セメント原料を、燃焼ガスを用いて間接的に仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させるので、間接加熱型仮焼炉内に高濃度のCOを生成させることができる。また、炭酸カルシウム生成工程にて、燃焼排ガス含有ガス中のCOと酸化カルシウムを反応させて炭酸カルシウムを生成させ、炭酸カルシウム供給工程にて、生成した炭酸カルシウムを搬送装置にて間接加熱型仮焼炉に供給するので、燃焼排ガス中のCOを回収することができる。したがって、本発明の態様12のセメント製造設備のCO回収方法によれば、原料起源のCOと燃料起源のCOとを効率よく回収することができる。さらに、酸化カルシウムと燃焼排ガス中のCOとの反応によって発生した熱を、セメント原料の予熱などに利用することによって、セメント原料を間接加熱するときの熱量(燃焼ガスの使用量)を少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0021】
本発明の態様13は、態様12のセメント製造設備のCO回収方法において、前記COと前記酸化カルシウムとを600℃以上750℃以下の温度で反応させる構成とされている。
本発明の態様13のセメント製造設備のCO回収方法によれば、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムとの反応が起こりやすくなる。よって、燃焼排ガス中のCOをより効率よく回収することができる。
【0022】
本発明の態様14は、態様12または態様13のセメント製造設備のCO回収方法において、前記燃焼排ガス含有ガスが前記セメント製造用キルンにおいて生成した排ガスを含む構成とされている。
本発明の態様14のセメント製造設備のCO回収方法によれば、燃焼排ガス中のCOとともに、セメント製造用キルンの排ガス中のCOを回収することができる。また、セメント製造用キルンの排ガス中のCOと酸化カルシウムとを反応させることによって発生した反応熱を、セメント原料の予熱などに利用することによって、セメント原料を間接加熱するときの熱量(燃焼ガスの使用量)、および、前記セメント製造用キルンにおける燃焼ガスの使用量を少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、原料起源のCOと燃料起源のCOとを効率よく回収することができるセメント製造設備のCO回収システムおよびセメント製造設備のCO回収方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るセメント製造設備のCO回収システムを示す概略構成図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るセメント製造設備のCO回収システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るセメント製造設備のCO回収システムおよびセメント製造設備のCO回収方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るセメント製造設備のCO回収システムを示す概略構成図である。なお、図1において、実線の矢印は、物質の流れを模式的に表し、破線の矢印は、気体の流れを模式的に表している。
図1に示すように、セメント製造設備のCO回収システム101は、セメント製造用キルン10と、間接加熱型仮焼炉20とを有する。
【0027】
セメント製造用キルン10は、回転可能な円筒形の炉体11と、この炉体11の内部を加熱する主バーナ12とを備える。炉体11は一方の端部にセメント原料仮焼物導入部を有し、他方の端部にセメントクリンカ取出部を有する。セメントクリンカ取出部はクリンカクーラー13と接続されている。クリンカクーラー13は、冷却ファンなどの冷却装置を有する。セメント製造用キルン10は、セメント原料仮焼物を、主バーナ12を用いて焼成することにより、セメントクリンカとCOを生成させる。生成した原料起源のCOと主バーナ12の排ガスはキルン排ガス管14にて取り出される。クリンカクーラー13は、空気との熱交換によりセメントクリンカを冷却する。クリンカクーラー13からは、セメントクリンカを冷却したときに得られる高温空気CGが取り出される。
【0028】
間接加熱型仮焼炉20は、下部に原料導入口を、上部に仮焼物取出口を備える。仮焼物取出口は、仮焼物取出管21に接続されている。また、間接加熱型仮焼炉20は、内部に燃焼ガスが流れる燃焼ガス管23を備える。燃焼ガス管23の燃焼ガス排気口は燃焼排ガス管30に接続され、燃焼排ガス管30の他方の端部は反応装置40に接続されている。反応装置40はキルン排ガス管14と反応生成ガス熱交換器50に接続されている。
【0029】
間接加熱型仮焼炉20は、燃焼ガス管23を流れる燃焼ガスの熱によって、セメント原料を加熱、仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させる。
セメント原料としては、例えば、主成分が石灰石(炭酸カルシウム)で、その他に粘土成分(SiO、Al、Fe)を含む混合粉末を用いることができる。このセメント原料を加熱、仮焼することによって、セメント原料中の石灰石の一部もしくは全部が熱分解して酸化カルシウムを含むセメント原料仮焼物とCOとが生成する。
【0030】
仮焼物取出管21は、間接加熱型仮焼炉20内で生成したセメント原料仮焼物とCOを外部に取り出すための配管である。仮焼物取出管21は、固気分離装置22に接続されている。固気分離装置22は、セメント原料仮焼物とCOとを分離する。固気分離装置22としては、例えば、サイクロンを用いることができる。固気分離装置22の気体取出口は、CO熱交換器60の吸気口(配管62a)と接続されている。固気分離装置22のセメント原料仮焼物取出口は搬送路Aと接続されている。
【0031】
CO熱交換器60は、上下方向に直列的に配置された3つの固気分離装置61a、61b、61cと、固気分離装置61a、61b、61cを接続する配管62a、62b、62cとを有する。最上段の固気分離装置61cは、排CO管62dが接続されている。排CO管62dは、送風機63が配置されている。最上段の固気分離装置61cと中段の固気分離装置61bとの間の配管62cは、セメント原料投入口が配置されている。セメント原料の投入量は、セメント原料量制御装置によって制御されている。最下段の固気分離装置61aの固形物取出口には搬送路Cが接続されている。搬送路Cは、間接加熱型仮焼炉20の原料導入口と接続している。固気分離装置61a、61b、61cとしては、例えば、サイクロンを用いることができる。CO熱交換器60は、セメント原料投入口から導入されたセメント原料とCOとを接触させることによって、セメント原料を予熱するプレヒータとして作用する。
【0032】
搬送路Aとしては、パイプラインなどのセメント原料の搬送装置として利用されている装置を用いることができる。搬送路Aは、酸化カルシウム量制御装置25に接続されている。酸化カルシウム量制御装置25は、第1搬送路A1と第2搬送路A2とに接続されている。第1搬送路A1は、セメント原料仮焼物をセメント製造用キルン10に搬送する搬送路である。第2搬送路A2は、セメント原料仮焼物を燃焼排ガス管30に搬送する搬送路である。酸化カルシウム量制御装置25は、セメント製造用キルン10に搬送するセメント原料仮焼物の量と、反応装置40の酸化カルシウム導入口に搬送するセメント原料仮焼物の量とを制御する。酸化カルシウム量制御装置25は、反応装置40のガス導入口から導入されたガスのCO濃度および反応装置40のガス排出口から排気されるガスのCO濃度の一方または両方に基づいて、反応装置40の酸化カルシウム導入口に搬送する酸化カルシウム量を調整してもよい。第2搬送路A2には、セメント原料仮焼物を冷却するための冷却器26が配置されている。冷却器26は、熱交換器であってもよい。
【0033】
燃焼ガス管23は、外部から供給された燃料ガスと燃焼用空気を含む混合気体の燃焼により燃焼ガスを生成させることにより、間接加熱型仮焼炉20内を加熱する。本実施形態では、燃料ガスとして天然ガスを用い、燃焼用空気として、クリンカクーラー13から取り出された高温空気CGを用いる。燃焼ガスとしては、天然ガス、石油、石炭などの燃料を別の燃焼炉で燃焼させて生成させた高温の燃焼ガスを用いることができる。
【0034】
燃焼排ガス管30は、燃焼ガス管23から送られた排ガス(燃焼排ガス)と、第2搬送路A2から搬送された酸化カルシウム(セメント原料仮焼物)とを含む混合物を反応装置40に供給する。
【0035】
反応装置40は、燃焼排ガス管30に接続する混合物導入口と、炭酸カルシウム取出口と、ガス排出口とを有する。また、反応装置40は、キルン排ガス管14に接続するキルン排ガス導入口を有する。反応装置40の内部には、冷却部41が配置されている。冷却部41は、水の吸熱によって水蒸気を発生させるボイラとされている。反応装置40は、燃焼排ガスおよびキルン排ガスを含む燃焼排ガス含有ガスと酸化カルシウム(セメント原料仮焼物)とを接触させることにより、燃焼排ガス含有ガス中のCOと酸化カルシウムを反応させて、炭酸カルシウムと反応生成ガスとを生成させ、生成した炭酸カルシウムと反応生成ガスとを固気分離する。反応装置40としては、サイクロン型反応器を用いることができる。生成した炭酸カルシウムは炭酸カルシウム取出口から取り出され、反応生成ガスはガス排出口から取り出される。反応装置40の炭酸カルシウム取出口には搬送路Bが接続されている。搬送路Bは、間接加熱型仮焼炉20の原料導入口に接続されている。反応装置40のガス排出口は、反応生成ガス熱交換器50の吸気口(配管52a)に接続されている。
【0036】
反応生成ガス熱交換器50は、上下方向に直列的に配置された3つの固気分離装置51a、51b、51cと、固気分離装置51a、51b、51cを接続する配管52a、52b、52cとを有する。最上段の固気分離装置51cは、排ガス管52dが接続されている。排ガス管52dには、送風機53が配置されている。最上段の固気分離装置51cと中段の固気分離装置51bとの間の配管52cは、セメント原料投入口を備える。セメント原料の投入量は、セメント原料量制御装置によって制御されている。最下段の固気分離装置51aの固形物取出口から取り出されたセメント原料は、搬送路Dによって仮焼炉20に搬送される。固気分離装置51a、51b、51cとしては、例えば、サイクロンを用いることができる。反応生成ガス熱交換器50は、セメント原料投入口から導入されたセメント原料と反応生成ガスとを接触させることによって、セメント原料を予熱するプレヒータとして作用する。
【0037】
次に、第1実施形態のセメント製造設備のCO回収システム101を用いたCOの回収方法とセメントの製造方法について説明する。
CO回収方法は、CO回収工程と、炭酸カルシウム生成工程と、炭酸カルシウム供給工程とを含む。
【0038】
CO回収工程では、間接加熱型仮焼炉20の原料導入口から導入されたセメント原料を、燃焼ガスを用いて間接的に加熱、仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させて、COを回収する。セメント原料は、搬送路Bによって搬送された炭酸カルシウムおよび搬送路Cによって搬送されたセメント原料、搬送路Dによって搬送されたセメント原料を含む。CO回収工程は、間接加熱型仮焼炉20で行われる。本実施形態では、間接加熱型仮焼炉20の燃焼ガス管23にて、燃料ガスと燃焼用空気を含む混合気体の燃焼により燃焼ガスを生成させて、間接加熱型仮焼炉20内の温度を上昇させることにより、セメント原料を加熱、仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させる。間接加熱型仮焼炉20を用いることによって、セメント原料を燃焼ガスと接触させずに、セメント原料を仮焼することができる。このため、間接加熱型仮焼炉20内にて生成する気体はCOのみとなり、間接加熱型仮焼炉20内のCO濃度は100%もしくはそれに近い値となる。
【0039】
間接加熱型仮焼炉20内の温度は、セメント原料に含まれる炭酸カルシウムが熱分解して酸化カルシウムを生成する温度である。炭酸カルシウムの熱分解温度は、間接加熱型仮焼炉20内の圧力によって変動する。間接加熱型仮焼炉20内の圧力が低くなるに伴って、炭酸カルシウムの熱分解温度は低くなる。間接加熱型仮焼炉20内の圧力を低くする方法としては、例えば、送風機63に減圧タイプの送風機を用いることである。間接加熱型仮焼炉20内の温度は、例えば、700℃以上1000℃以下の温度である。
【0040】
間接加熱型仮焼炉20内にて生成したCOは、仮焼物取出管21と固気分離装置22とを通ってCO熱交換器60に送られる。CO熱交換器60の配管62aに送られたCOは、上方に向かって流れる。配管62cに、セメント原料を供給すると、セメント原料は、配管62cを流れるCOに随伴して固気分離装置61cに流入する。固気分離装置61cにて、セメント原料とCOとは分離され、分離されたセメント原料は配管62bに送られる。配管62bに送られたセメント原料は、配管62bを流れるCOに随伴して固気分離装置61bに流入する。固気分離装置61bにて、セメント原料とCOとは分離され、分離されたセメント原料は配管62aに送られる。配管62aに送られたセメント原料は、配管62aを流れるCOに随伴して固気分離装置61aに流入する。固気分離装置61aにて、セメント原料とCOとは分離され、分離されたセメント原料は、搬送路Cにて間接加熱型仮焼炉20の原料導入口に送られる。セメント原料とCOとが接触することによって、COの熱がセメント原料に移動して、セメント原料が予熱されると共に、COの温度は低下する。排CO管62d外部に取り出されたCOは、例えば、地中または海底下に貯留する方法などによって固定される。
【0041】
炭酸カルシウム生成工程では、間接加熱型仮焼炉20から排出された燃焼排ガスを含む燃焼排ガスと酸化カルシウムとを接触させることにより、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムとを反応させて炭酸カルシウムを生成させる。炭酸カルシウム生成工程は、反応装置40で行なわれる。本実施形態では、燃焼排ガス管30から搬送された燃焼排ガスとセメント原料仮焼物(酸化カルシウム)との混合物、およびキルン排ガス管14から搬送されたキルン排ガスを反応装置40で混合して、燃焼排ガスおよびキルン排ガスを含む燃焼排ガス含有ガス中のCOと中の酸化カルシウムとを反応させる。反応装置40内の温度は、特に限定されないが、600℃以上750℃以下の範囲内にあることが好ましい。また、燃焼排ガス管30に供給するセメント原料仮焼物(酸化カルシウム)の温度は、特に限定されないが、450℃以下であることが好ましく、好ましくは300℃以下であることがより好ましい。
【0042】
炭酸カルシウム供給工程では、炭酸カルシウム生成工程で生成した炭酸カルシウムを固気分離によって回収し、回収した炭酸カルシウムを間接加熱型仮焼炉20のセメント原料導入口に供給する。炭酸カルシウム供給工程は反応装置40および搬送路Bで行なわれる。
反応装置40で生成した炭酸カルシウムを含むセメント原料仮焼物は、反応装置40で固気分離によって、速やかに反応生成ガスと分離される。
【0043】
炭酸カルシウム供給工程で供給された炭酸カルシウムは、間接加熱型仮焼炉20にて加熱、仮焼され、セメント原料仮焼物とCOが生成する。炭酸カルシウム生成工程で生成した炭酸カルシウムは、燃料由来のCOを多く含む。このため、炭酸カルシウム供給工程で回収された炭酸カルシウムを仮焼することによって、燃料由来のCOを効率よく回収できる。
【0044】
反応装置40の反応生成ガス取出口から取り出された反応生成ガスは、反応生成ガス熱交換器50に送られる。反応生成ガス熱交換器50にて、反応生成ガスとセメント原料とが接触することによって、反応生成ガスの熱がセメント原料に移動して、セメント原料が予熱される。予熱されたセメント原料は、間接加熱型仮焼炉20の原料導入口に送られる。
熱交換された反応生成ガスは、COを多く含まないため、例えば、排熱ボイラ、セメント原料の乾燥などの熱源として利用し、適切な除塵処理をした上で外部に排気される。
【0045】
以上のような構成とされた本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム101によれば、間接加熱型仮焼炉20にて、セメント原料を、燃焼ガスを用いて間接的に仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させるので、間接加熱型仮焼炉20内に高濃度のCOを生成させることができる。また、反応装置40にて、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムを反応させて炭酸カルシウムを生成させ、生成した炭酸カルシウムを搬送路Bにて間接加熱型仮焼炉20に供給するので、燃焼排ガス中のCOを回収することができる。したがって、セメント製造設備のCO回収システム101によれば、原料起源のCOと燃料起源のCOとを効率よく回収することができる。さらに、酸化カルシウムと燃焼排ガス中のCOとの反応によって発生した熱を、セメント原料の予熱などに利用することによって、セメント原料を間接加熱するときの熱量(燃焼ガスの使用量)を少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0046】
また、本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム101において、セメント製造用キルン10において生成した排ガスを、反応装置40のガス導入口に搬送するキルン排ガス管14を有する場合は、燃焼排ガス中のCOとともに、セメント製造用キルン10の排ガス中のCOを回収することができる。また、セメント製造用キルン10の排ガス中のCOと酸化カルシウムとを反応させることによって発生した反応熱を、セメント原料の予熱などに利用することによって、セメント製造用キルン10における燃焼ガスの使用量をより少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0047】
また、本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム101において、反応装置40内に、冷却部41が配置されている場合は、冷却部41を用いて反応装置40内の温度を低くすることにより、反応装置40内でのCOと酸化カルシウムとの反応が促進される。よって、燃焼排ガス中のCOの回収効率が向上する。さらに、冷却部41が、水の吸熱によって水蒸気を発生させるボイラである場合は、反応装置40内の温度を効率よく低下させることができる。
【0048】
また、本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム101において、セメント原料仮焼物が酸化カルシウムを含み、間接加熱型仮焼炉20の仮焼物取出口から取り出されたセメント原料仮焼物を、セメント製造用キルン10に搬送する第1搬送路A1と、反応装置40の酸化カルシウム導入口に搬送する第2搬送路A2とを有する場合は、セメント原料仮焼物を用いて燃焼排ガス中のCOを回収することができる。また、燃焼排ガス中のCOに接触させる酸化カルシウムの量の調整が容易になる。さらに、第2搬送路A2に冷却器26が配置されている場合は、燃焼排ガスと接触させる酸化カルシウムの温度を低下させることができるので、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムとを反応させることによって反応熱が発生しても、生成する炭酸カルシウムの温度を所定の温度に保つことができる。このため、燃焼排ガスの温度が上昇しにくくなり、燃焼排ガス中のCOをより高い効率で回収することができる。
【0049】
また、本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム101において、セメント製造用キルン10に搬送するセメント原料仮焼物の量と、反応装置40の酸化カルシウム導入口に搬送するセメント原料仮焼物の量とを制御する酸化カルシウム量制御装置25を有する場合は、反応装置40に搬送する酸化カルシウムの量を調整することが可能となるので、燃焼排ガス中のCOを回収するために必要な量の酸化カルシウムを反応装置40に供給することができる。このため、燃焼排ガス中のCOをさらに高い効率で回収することができる。さらに、酸化カルシウム量制御装置25が、反応装置40のガス導入口から導入されたガスのCO濃度および反応装置40のガス排出口から排気されるガスの濃度の一方または両方に基づいて、反応装置40の酸化カルシウム導入口に搬送する酸化カルシウム量を調整する場合は、燃焼排ガス中のCOを回収するために必要な量の酸化カルシウムを反応装置に確実に供給することができる。このため、燃焼排ガス中のCOをさらに高い効率で回収することができる。
【0050】
また、本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム101において、間接加熱型仮焼炉20の内圧を減圧する減圧装置を有する場合は、間接加熱型仮焼炉20の内圧を減圧することによって、間接加熱型仮焼炉内での炭酸カルシウムの熱分解温度を下げることができる。これにより、セメント原料を間接加熱するときの熱量、すなわち燃焼ガスの使用量を少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0051】
また、本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム101において、反応装置40の内圧を加圧する加圧装置を有する場合は、反応装置40の内圧を加圧することによって、炭酸カルシウムの熱分解温度を高くすることができる。これにより、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムとの反応が促進され、燃焼排ガス中のCOをさらに高い効率で回収することができる。
【0052】
また、以上のような構成とされた本実施形態のセメント製造設備のCO回収方法によれば、CO回収工程にて、セメント原料を、燃焼ガスを用いて間接的に仮焼してセメント原料仮焼物とCOを生成させるので、間接加熱型仮焼炉20内に高濃度のCOを生成させることができる。また、炭酸カルシウム生成工程にて、燃焼排ガス含有ガス中のCOと酸化カルシウムを反応させて炭酸カルシウムを生成させ、炭酸カルシウム供給工程にて、生成した炭酸カルシウムを搬送路Bにて間接加熱型仮焼炉20に供給するので、燃焼排ガス中のCOを回収することができる。したがって、本実施形態のセメント製造設備のCO回収方法によれば、原料起源のCOと燃料起源のCOとを効率よく回収することができる。さらに、酸化カルシウムと燃焼排ガス中のCOとの反応によって発生した熱を、セメント原料の予熱などに利用することによって、セメント原料を間接加熱するときの熱量(燃焼ガスの使用量)を少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0053】
本実施形態のセメント製造設備のCO回収方法において、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムとを600℃以上750℃以下の温度で反応させる場合は、燃焼排ガス中のCOと酸化カルシウムとの反応が起こりやすくなる。よって、燃焼排ガス中のCOをより効率よく回収することができる。
【0054】
本実施形態のセメント製造設備のCO回収方法において、燃焼排ガス含有ガスがセメント製造用キルンにおいて生成した排ガスを含む場合は、燃焼排ガス中のCOとともに、セメント製造用キルン10の排ガス中のCOを回収することができる。また、セメント製造用キルン10の排ガス中のCOと酸化カルシウムとを反応させることによって発生した反応熱を、セメント原料の予熱などに利用することによって、セメント製造用キルン10における燃焼ガスの使用量をより少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0055】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係るセメント製造設備のCO回収システムを示す概略構成図である。なお、図2において、図1に示した第1実施形態に係るセメント製造設備のCO回収システム101と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0056】
図2に示すように、第2実施形態に係るセメント製造設備のCO回収システム102は、キルン排ガス管14に異排出源CO含有ガス搬送配管70が接続されている。異排出源CO含有ガスは、セメント製造用キルン10および間接加熱型仮焼炉20を除くその他の装置で発生したCO含有ガスである。異排出源CO含有ガスの温度は450℃以下、好ましくは300℃以下である。
【0057】
本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム102においては、キルン排ガス管14から反応装置40に送られるガスは、キルン排ガスと異排出源CO含有ガスとの混合ガスとなる。反応装置40は、燃焼排ガス管30から搬送された燃焼排ガスとセメント原料仮焼物(酸化カルシウム)との混合物、およびキルン排ガス管14から搬送されたキルン排ガスと異排出源CO含有ガスとの混合ガスを混合して、炭酸カルシウムとCOが除去された反応生成ガスとを生成させる。
【0058】
本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム102は、キルン排ガス管14に、異排出源CO含有ガス搬送配管70が接続されていること以外は、図1のセメント製造設備のCO回収システム101と同じであるので、セメント製造設備のCO回収システム101と同様の効果を有する。さらに、本実施形態のセメント製造設備のCO回収システム102は、異排出源CO含有ガス中のCOと酸化カルシウムとを反応させるので、異排出源CO含有ガス中のCOを簡易かつ効率的に回収することができ、大気に放出されるCOを低減することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、間接加熱型仮焼炉20は、内部に燃焼ガスが流れる燃焼ガス管23を備える構成とされているが、間接加熱型仮焼炉20は、セメント原料と燃焼ガスとが直接触れずに、炉内温度を調整できるように構成された仮焼炉であればその構成に特に制限はない。間接加熱型仮焼炉20は、固形の熱媒体を用いて炉内温度を調整するものであってもよい。間接加熱型仮焼炉20として、例えば、熱媒体加熱部とセメント原料仮焼部とを有し、熱媒体加熱部にて燃焼ガスを用いて加熱した熱媒体をセメント原料仮焼部に供給することによって炉内温度を調整するものを用いることができる。この間接加熱型仮焼炉では、熱媒体加熱部から排出された燃焼ガスが燃焼排ガスとなる。また、間接加熱型仮焼炉20に接続する固気分離装置22にて分離されたセメント原料仮焼物の一部を熱媒体として、熱媒体加熱部を経て間接加熱型仮焼炉20に返送してもよい。さらに、セメント製造用キルン10で得られたクリンカの一部を熱媒体として、間接加熱型仮焼炉20に供給してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、酸化カルシウム(セメント仮焼物)を燃焼排ガス管30から導入しているが、反応装置40内でCOと酸化カルシウムとを反応させることができれば、酸化カルシウムの導入場所に制限はない。例えば、酸化カルシウムを反応装置から導入させてもよいし、キルン排ガス管14から導入させてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 セメント製造用キルン
11 炉体
12 主バーナ
13 クリンカクーラー
14 キルン排ガス管
20 間接加熱型仮焼炉
21 仮焼物取出管
22 固気分離装置
23 燃焼ガス管
30 燃焼排ガス管
40 反応装置
41 冷却部
50 反応生成ガス熱交換器
51a、51b、51c、 固気分離装置
52a、52b、52c、 配管
52d 排ガス管
53 送風機
60 CO熱交換器
61a、61b、61c 固気分離装置
62a、62b、62c 配管
62d 排CO
63 送風機
70 異排出源CO含有ガス搬送配管
101、102 セメント製造設備のCO回収システム
図1
図2