(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039424
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/33 20060101AFI20240314BHJP
C11D 1/66 20060101ALI20240314BHJP
C11D 3/10 20060101ALI20240314BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C11D3/33
C11D1/66
C11D3/10
C11D3/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143966
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(71)【出願人】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 福一
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC06
4H003AC08
4H003DA05
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA08
4H003EA09
4H003EA12
4H003EA15
4H003EA16
4H003EA21
4H003EB08
4H003EB13
4H003EB16
4H003EB30
4H003EB32
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA19
(57)【要約】
【課題】
エチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩とメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩と特定の割合で含む洗浄剤組成物が、長期間保存した場合でも貯蔵安定性に優れ、硬質表面やガラス瓶、CIP洗浄用としても好適な洗浄剤組成物を提供する
【解決手段】
本発明の洗浄剤組成物は、(A)成分としてエチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩、(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩、(C)成分としてノニオン界面活性剤、(D)成分としてアルカリ金属炭酸塩を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)の値が0.01以上、10以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてエチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩、
(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩、
(C)成分としてノニオン界面活性剤、
(D)成分としてアルカリ金属炭酸塩、
を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)の値が0.01以上、10以下であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
更に(E)成分として、高分子分散剤を含有する請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に(F)成分として、前記(A)成分、(B)成分以外のキレート剤を含有する請求項1又は2の何れかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記洗浄剤組成物が、硬質表面の洗浄用である請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記洗浄剤組成物が、CIP洗浄用である請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記洗浄剤組成物が、ガラス瓶の洗浄用である請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄剤組成物に関し、主として金属、プラスチック、ガラス、陶磁器等の硬質表面に付着した汚れの洗浄・除去に好適な洗浄剤組成物に関する。特に、食品工場や、飲料工場等における製造設備等に付着した汚れをCIP洗浄にて洗浄・除去するために適した洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料工場や食品工場等では、製造設備の大型化や、製造品種の増加による洗浄頻度の増加に伴い、製造設備の分解洗浄が困難になってきている。そのため、分解洗浄に代わって配管、殺菌機及び充填機などの製造設備内に洗浄液を満たして循環させ、あるいは製造設備内に対し洗浄液をスプレーすることで、残留汚れを洗浄・除去するCIP洗浄(Cleaning in place:定置洗浄)方式が広く採用されている。
【0003】
このCIP洗浄には、アルカリ洗浄剤、酸洗浄剤、又は殺菌剤などから選択される1以上の洗浄剤が使用されている。たとえば一般に、CIP洗浄は、1.水洗浄、2.アルカリ洗浄、3.水すすぎ、4.酸洗浄、5.水すすぎ、6.殺菌、7.水すすぎという工程で行われる。しかし、各洗浄剤の配合成分、あるいは汚れの種類や状態に応じて、上記工程の一部が省略され、上記工程の順序が変更され、あるいは同じ工程が繰り返し実施される場合もある。
また、対象となる汚れが主として食品残渣である場合、当該食品残渣には、タンパク質、油脂及び炭水化物などの有機質汚れ、並びに炭酸カルシウム、燐酸カルシウム及びケイ酸カルシウムなどの無機質汚れが含まれる。上記有機質汚れには、殺菌機などで見られる加熱変性した強固なものも存在する。
【0004】
かかるCIP洗浄におけるアルカリ洗浄に用いられるためのアルカリ洗浄剤としては、特許文献1~4などが知られる。具体的には、特許文献1には、アルカリ金属水酸化物、炭化水素基の炭素数が6~10の脂肪酸及び/又はその塩、キレート剤、ノニオン界面活性剤、ポリアクリル酸等の高分子分散剤を含有する液体アルカリ性洗浄剤組成物が開示されており、特許文献2には、アルカリ剤及びジエチレントリアミン5酢酸又はその塩、及び、メチルグリシン2酢酸又はその塩からなる群から選択されるキレート剤を含有するアルカリ洗浄剤組成物が開示されており、また特許文献3には、水酸化ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミン二コハク酸及びこれらの塩から選択される少なくとも1種の可溶化剤を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物が開示されている。更に、特許文献4にはアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物と、メチルグリシン二酢酸又はその塩を含有するCIP用洗浄剤組成物を水で希釈した希釈洗浄液に対して、塩素系除菌剤を添加して飲食料品製造ラインのCIP洗浄及び除菌洗浄を同時に行うCIP洗浄方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-059851号公報
【特許文献2】特開2017-210522号公報
【特許文献3】特開2012-087161号公報
【特許文献4】特開2017-002250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から4に記載された高濃縮化されたアルカリ洗浄剤は、製造、容器及び輸送費用などのコスト、加えて輸送費用などに伴う二酸化炭素排出量削減などから望ましいが、高濃度のアルカリとキレート剤とを含む洗浄剤は貯蔵安定性が悪くなるという問題が生じる。このような高濃縮洗浄剤を貯蔵タンクに保存した場合には、洗浄剤の使用に伴って液面が低下するにつれて、タンク上部壁面に付着している洗浄剤の水分が蒸発し壁面上に固形物が生じる場合があり、次の洗浄剤が補充されて該固形物に洗浄剤溶液が接すると、溶解性に劣るエチレンジアミン四酢酸塩が析出し、それが核となって結晶析出や凍結を促進し、洗浄剤供給口や洗剤供給ポンプを詰まらせ、ひいては洗剤供給ポンプを故障させる原因となる。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、スケールの発生を抑えつつ、長期間保存した場合でも貯蔵安定性に優れ、硬質表面やガラス瓶、CIP洗浄用としても好適な洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明は、
(1)(A)成分としてエチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩、(B)成分としてメチルグリシン二酢酸及び/又はその塩、(C)成分としてノニオン界面活性剤、(D)成分としてアルカリ金属炭酸塩を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)の値が0.01以上、10以下であることを特徴とする洗浄剤組成物、
(2)更に(E)成分として、高分子分散剤を含有する上記(1)の洗浄剤組成物、
(3)更に(F)成分として、前記(A)成分、(B)成分以外のキレート剤を含有する上記(1)又は(2)の洗浄剤組成物、
(4)前記洗浄剤組成物が、硬質表面の洗浄用である上記(3)の洗浄剤組成物、
(5)前記洗浄剤組成物が、CIP洗浄用である上記(3)の洗浄剤組成物、
(6)前記洗浄剤組成物が、ガラス瓶の洗浄用である上記(3)の洗浄剤組成物、
を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄剤組成物は、貯蔵安定性に優れ、長期間保存しても結晶析出や凍結等が生じる虞がなく、野菜ジュース、コーラや甘酒だけでなく、牛乳、飲むヨーグルト、ミルク入り飲料、豆乳、オーツミルク、アーモンドミルクなどの有機物だけでなく無機物をも多く含む製品の生産設備のCIP洗浄に優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の洗浄剤組成物に用いられる(A)成分であるエチレンジアミン四酢酸及び/又はその塩が用いられる。エチレンジアミン四酢酸塩としては、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸カリウム塩等が用いられ、(A)成分は1種又は2種以上を併用することができるが、(A)成分としては、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩などのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩が好ましい。洗浄剤組成物中の(A)成分の割合が0.1質量%未満であると充分なスケール除去性が得られない場合があり、10質量%を超えるとガラス瓶への腐食防止性が得られない場合がある。そのため、(A)成分の洗浄剤組成物中の割合は、0.1質量%以上、10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上、5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上、1質量%以下が更に好ましい。
【0011】
(B)成分としては、メチルグリシン二酢酸及び/又はその塩が用いられる。メチルグリシン二酢酸塩としては、メチルグリシン二酢酸ナトリウム塩、メチルグリシン二酢酸カリウム塩等が用いられ、(B)成分は1種又は2種以上を併用することができるが、(B)成分としては、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩などのメチルグリシン二酢酸ナトリウム塩が好ましい。洗浄剤組成物中の(B)成分の割合が0.1質量%未満であると充分なスケール除去性が得られない場合があり、50質量%を超えるとガラス瓶への腐食防止性が得られない場合がある。そのため、(B)成分の洗浄剤組成物中の割合は、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましく、1質量%以上、45質量%以下がより好ましく、5質量%以上、40質量%以下が更に好ましい。
【0012】
(C)成分としては、ノニオン界面活性剤が用いられる。(C)成分のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリマ-(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロック、リバースの何れでも良い)等のプルロニック型界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルジエステル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、グリセリン脂肪酸エステルやそのアルキレンオキシド付加体、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダムあるいはブロック付加体、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ジポリオキシアルキレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。これらのノニオン界面活性剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのノニオン界面活性剤のなかでも、洗浄性、抑泡性の点から、ジポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダムあるいはブロック付加体が好ましい。これらの好ましいノニオン界面活性剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。洗浄剤組成物中の(C)成分の割合が0.1質量%未満であると充分な洗浄性が得られない場合があり、6質量%を超えると抑泡性が充分とならない場合がある。そのため、(C)成分の洗浄剤組成物中の割合は、0.1質量%以上、6質量%以下が好ましく、0.2質量%以上、5.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上、5質量%以下が更に好ましい。
【0013】
(D)成分としては、アルカリ金属炭酸塩の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、又は過炭酸カリウム等が挙げられる。これらのアルカリ金属炭酸塩は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのアルカリ金属炭酸塩のなかでも、洗浄性、コストの点から、炭酸ナトリウムが好ましい。洗浄剤組成物中の(D)成分の割合が1質量%未満であると充分な洗浄性が得られない場合があり、50質量%を超えてもそれ以上の効果は期待できない。そのため、(D)成分の洗浄剤組成物中の割合は、1質量%以上、50質量%以下が好ましく、3質量%以上、45質量%以下がより好ましく、5質量%以上、40質量%以下が更に好ましい。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)の値が0.01以上、10以下である。洗浄剤組成物の(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が0.01未満であると、スケール除去性が低下する場合があり、10を超えるとガラス瓶への腐食防止性が低下する場合がある。(A)成分と(B)成分の質量比は、(A)/(B)の値が0.02以上、8以下であることが好ましく、0.1以上、1以下であることがより好ましい。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物には、スケール抑制性を高めるために、更に(E)成分として高分子分散剤を配合することができる。高分子分散剤としては、カルボン酸型ポリマーが挙げられ、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸共重合体、オレフィン/マレイン酸共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/エチレン共重合体、無水マレイン酸/酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸/アクリル酸エステル共重合体等や、これらのナトリウム塩、カリウム塩等の塩が挙げられる。(E)成分の高分子分散剤としては、スケール抑制性に優れたポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩、アクリル酸/スルホン酸共重合体又はその塩が好ましく、ポリアクリル酸又はその塩、アクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩が特に好ましい。(E)成分の高分子分散剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の洗浄剤組成物に、更に高分子分散剤を配合する場合、洗浄剤組成物中の高分子分散剤の割合は、0.01質量%以上、7.0質量%以下が好ましいが、0.05質量%以上、4.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上、2.0質量%以下が特に好ましい。洗浄剤組成物に配合する(E)成分の割合が0.01質量%未満では充分なスケール抑制性が得られず、7.0質量%を超える量を添加しても、それ以上の効果は得られ難い。
【0016】
ポリアクリル酸又はその塩は、スケール抑制性、貯蔵安定性の点から重量平均分子量が2,000以上、20,000以下のものが好ましく、3,000以上、10,000以下のものが特に好ましい。また、アクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩は、スケール抑制性、貯蔵安定性の点から重量平均分子量が20,000以上、100,000以下のものが好ましく、30,000以上、80,000以下のものが特に好ましい。高分子分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定された値である。具体的には、カラムとして、TSKgel G4000Hxl、G3000Hxl、G2000Hxl(何れも東ソー社製)を直列接続し、テトラヒドロフラン(THF)を遊離液として使用し、遊離液流量:1mL/分、検出器:示差屈折(RI)、サンプル濃度:0.1質量%(THF溶液)、サンプル量:200μL、カラム温度40℃で測定して得られる。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物には、スケール除去性を高めるために、更に(F)成分として上記(A)成分、(B)成分以外のキレート剤を配合することができる。上記(A)成分、(B)成分以外のキレート剤としては、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸又はその塩、ジエチレントリアミノ五酢酸又はその塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸又はその塩、グルタミン酸二酢酸又はその塩、イミノジコハク酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、トリポリリン酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、クエン酸又はその塩等が挙げられ、これらの塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(F)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物には、更に(G)成分として上記(D)成分以外のアルカリ剤を配合することができる。上記(D)成分以外のアルカリ剤としては、水酸化アルカリ金属塩やアルカリ金属珪酸塩、リン酸塩等を配合することができる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水酸化アルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ金属珪酸塩としては、例えばオルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、JIS K1408に規定されている1号珪酸ナトリウム、2号珪酸ナトリウム、及び3号珪酸ナトリウム、日本化学工業株式会社製の商品名;A珪酸カリ、B珪酸カリウム、及びC珪酸カリウム等、メタ珪酸ナトリウム5水塩、並びにメタ珪酸ナトリウム9水塩等が例示される。リン酸塩としては、リン酸三ソーダ無水物、リン酸三ソーダ12水和物等が挙げられる。(G)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物には、更に(H)成分として有機ホスホン酸又はその塩、有機ホスフィン酸又はその塩を配合することができる。有機ホスホン酸又はその塩としては、メチルジホスホン酸又はその塩、エチリデンジホスホン酸又はその塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸又はその塩、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ジホスホン酸又はその塩、1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ジホスホン酸又はその塩、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)又はその塩、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)又はその塩、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)又はその塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)又はその塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はその塩、1,2-プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はその塩、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はその塩、シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はその塩、グリコールエーテルジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)又はその塩、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)又はその塩、トリ(2-アミノエチル)アミンヘキサ(メチレンホスホン酸)又はその塩、テトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)又はその塩、ペンタエチレンヘキサミンオクタ(メチレンホスホン酸)又はその塩、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はその塩、アミノトリメチレンホスホン酸又はその塩等が挙げられる。有機ホスフィン酸又はその塩としては、ビス(ポリ-2-カルボキシエチル)ホスフィン酸又はその塩、ビス-ポリ(1,2-ジカルボキシエチル)ホスフィン酸又はその塩、ホスフィノカルボン酸共重合物等が挙げられる。有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(H)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、スケール除去性の点から、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はその塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)又はその塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はその塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸又はその塩が好ましく、アミノトリ(メチレンホスホン酸)又はその塩が特に好ましい。(H)成分を配合する場合、(H)成分の洗浄剤組成物中の割合は、0.01質量%以上、5.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上、4.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上、3.0質量%以下が特に好ましい。(H)成分の割合が0.01質量%未満であるとスケール除去性の向上効果は不十分であり、5.0質量%を超えてもそれ以上の効果は得られない。洗浄剤組成物中の上記(H)成分の割合は、(H)成分中に有機ホスホン酸塩が含まれる場合は、有機ホスホン酸塩を有機ホスホン酸として換算した量より求めた割合である。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物は、ガラス、プラスチック、金属等の硬質表面の洗浄用として適しており、浴室、台所、業務用厨房、工場等の壁面や床、調理器具等の硬質表面の洗浄用として好適であり、工場施設等へのCIP洗浄用として好適である。
【実施例0021】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。実施例、比較例において用いた各成分を以下に示す。表中において各成分の割合は質量%で示す。尚、表中、各成分の割合は、純分としての割合を示す。また、アルキル基の表記について、例えば、アルキル(C8~10)と表記されている場合、炭素数8以上、10以下のアルキル基を有する混合物を表す。
【0022】
(A)成分
A-1:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩
【0023】
(B)成分
B-1:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩
【0024】
(C)成分
C-1:プルロニック型ノニオン界面活性剤1(ADEKA社製アデカプルロニックTR-913R)
C-2:プルロニック型ノニオン界面活性剤2(ADEKA社製アデカプルロニック25R-2)
C-3:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル1(ADEKA社製アデカノールB-2030)
C-4:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル2(ADEKA社製アデカノールLG-126)
【0025】
(D)成分
D-1:炭酸ナトリウム
【0026】
(E)成分
E-1:ポリアクリル酸ナトリウム1(重量平均分子量4,000)
E-2:アクリル酸/マレイン酸共重合体ナトリウム(重量平均分子量70,000)
【0027】
(F)成分
F-1:グルコン酸ナトリウム
F-2:トリポリ燐酸ナトリウム
【0028】
(G)成分
G-1:水酸化ナトリウム
G-2:無水メタ珪酸ナトリウム
G-3:リン酸三ソーダ12水和物
【0029】
その他成分
その他:芒硝
【0030】
実施例1~70、比較例1~4
表1~8に示す洗浄剤組成物を調製し、各洗浄剤組成物の洗浄性、消泡性、スケール除去性、スケール抑制性、貯蔵安定性、ガラス腐食防止性を試験した。尚、表中の各成分の割合は、無水物換算値である。結果を表1~8に示す。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
※1:洗浄性試験
試験方法:
ステンレス片(6cm×7cmの長方形、厚さ1mmのSUS316片)の質量を測定し、これに各種汚れを0.5mL噴霧(汚れ付着量0.5g)し、130℃で30分間加熱して汚れを付着させたものを洗浄前試験片として質量を測定した。この洗浄前試験片を各洗浄剤組成物の1質量%水溶液300mLに浸漬し、80℃で20分間放置した後、イオン交換水ですすぎ、105℃で30分間乾燥して洗浄後試験片を得た後、この洗浄後試験片の質量を測定した。
洗浄前試験片と、汚れ付着前のステンレス片との質量差を汚れ付着量とし、洗浄前後の試験片の質量変化から洗浄率を下記式(1)より算出し、以下の基準で洗浄性を評価した。
【0040】
[式1]
洗浄率(%)={(洗浄前試験片質量-洗浄後試験片質量)/(汚れ付着量)}×100・・・(1)
【0041】
評価基準:
○:洗浄率80%以上(洗浄性に優れる)。
△:洗浄率60%以上、80%未満(洗浄性あり)。
×:洗浄率60%未満(洗浄性が悪い)。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0042】
※2:消泡性試験
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水で、各洗浄剤組成物を1質量%に希釈して希釈洗浄液100mLを調製し、80℃に加温後、スキムミルク0.5gを添加した。次にスキムミルクが完全に溶解するまで攪拌し、20gを100mLガラス栓つきエプトン管に入れ、湯浴中で80℃となるように昇温した。その後、1秒間に1回の割合で60回上下に振とうし、80℃に保持したまま1分間静置後の、希釈洗浄液面からの泡の高さを測定し、以下の基準で消泡性を評価した。
【0043】
評価基準:
○:泡の高さが5mm未満。
△:泡の高さが5mm以上、12mm未満。
×:泡の高さが12mm以上。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0044】
※3:スケール除去性試験
ステンレス片(2cm×7cm、厚さ1mmのSUS316片)の質量を測定し、これに汚れとして25%リン酸カルシウム懸濁液を0.2g塗布して、100℃で60分間乾燥させたものを試験片として質量を測定した。この試験片を希釈水で1質量%に希釈した各洗浄剤組成物の水溶液100mLに浸漬し、80℃で20分間放置した後、イオン交換水ですすぎ、105℃で30分間乾燥し、外観を目視で観察して以下の基準でスケール洗浄性を評価した。
【0045】
評価基準:
○:汚れなし。
△:わずかに汚れあり。
×:汚れあり。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0046】
※4:スケール抑制性試験
試験液濃度が、炭酸カルシウム換算で100mg/L(ドイツ硬度5.6°DH)となるように希釈水で各洗浄剤組成物を希釈し、アルカリ金属水酸化物濃度が0.01質量%の試験液を調製した。30mLガラスビンに入れた各試験液を80℃で15時間静置後、ガラスビン底の付着物及び析出物を目視で確認し、以下の基準でスケール抑制性を評価した。
【0047】
評価基準:
○:ほとんど付着物、析出物は見られない。
△:少量の付着物、析出物が見られる。
×:多量の付着物や析出物が見られる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0048】
※5:貯蔵安定性試験
試験方法:
各洗浄剤組成物100gをポリプロピレン製容器に入れ、-5℃、25℃、40℃に設定された各インキュベーター内で1ヶ月間静置した後、外観を目視により観察し、以下の基準で評価した。
【0049】
評価基準:
○:何れの温度帯でも、吸湿やかたまりが認められず安定である。
△:何れかの温度帯で、吸湿若しくはかたまりが一部で生じている。
×:何れかの温度帯で、全体的な吸湿若しくはかたまりが認められる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0050】
※6:ガラス腐食防止性試験
イオン交換水で1質量%に希釈した各洗浄剤組成物にスライドガラスを60℃で1時間浸漬した後、白化の度合いを以下の基準で目視判定した。
評価基準:
○:白化しなかった。
△:白化が観察されるが実用上注意すれば使用可能。
×:白化した。