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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039526
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】壁面構造体
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240314BHJP
   H02S 20/22 20140101ALI20240314BHJP
   H02S 20/30 20140101ALI20240314BHJP
【FI】
E04F13/08 101F
H02S20/22
H02S20/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144142
(22)【出願日】2022-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】311018079
【氏名又は名称】AGC硝子建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000135335
【氏名又は名称】株式会社ノザワ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 耕平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】森木 伸也
(72)【発明者】
【氏名】長江 遥
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA21
2E110AA23
2E110AA48
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA02
2E110BA03
2E110BA12
2E110CA04
2E110CA13
2E110DA08
2E110DB12
2E110DC02
2E110GA33W
2E110GA33Y
2E110GB01W
2E110GB13W
2E110GB23Y
2E110GB26W
2E110GB28W
2E110GB32W
2E110GB32X
2E110GB42W
2E110GB42X
(57)【要約】
【課題】パネルの破損または脱落を抑制すると共に、パネルの位置ずれを抑制する、技術を提供する。
【解決手段】壁面構造体は、鉛直に設けられるパネルと、前記パネルの上縁を支持する上枠と、前記パネルの下縁を支持する下枠と、前記上枠と前記下枠の少なくとも一方を水平方向にスライド可能に支持するレールと、前記レールを壁面材に取り付ける取付具と、を備える。前記壁面材の正面から見たときに、前記壁面材は鉛直方向と水平方向に行列状に複数配置され、個別に揺動可能に躯体に取り付けられている。前記レールは、鉛直方向に間隔をおいて複数設けられ、それぞれ前記上枠と前記下枠の少なくとも一方を水平方向にスライド可能に支持する。前記壁面構造体は、前記パネルの上縁と下縁の一方のみの、前記レールに対するスライドを制限するストッパを更に備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直に設けられるパネルと、前記パネルの上縁を支持する上枠と、前記パネルの下縁を支持する下枠と、前記上枠と前記下枠の少なくとも一方を水平方向にスライド可能に支持するレールと、前記レールを壁面材に取り付ける取付具と、を備える、壁面構造体であって、
前記壁面材の正面から見たときに、前記壁面材は鉛直方向と水平方向に行列状に複数配置され、個別に揺動可能に躯体に取り付けられており、
前記レールは、鉛直方向に間隔をおいて複数設けられ、それぞれ前記上枠と前記下枠の少なくとも一方を水平方向にスライド可能に支持し、
前記壁面構造体は、前記パネルの上縁と下縁の一方のみの、前記レールに対するスライドを制限するストッパを更に備える、壁面構造体。
【請求項2】
前記壁面材の正面から見たときに、前記パネルは鉛直方向に隣り合う複数の前記壁面材にまたがって配置される、請求項1に記載の壁面構造体。
【請求項3】
前記壁面材を前記躯体に対して揺動可能に支持する支持部材を備え、
前記壁面材の正面から見たときに、前記支持部材の真上に前記取付具が配置される、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項4】
前記壁面材の正面から見たときに、各前記壁面材に対して前記取付具が相対的に揺動可能である、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項5】
前記取付具は、鉛直方向に間隔をおいて複数設けられる、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項6】
前記上枠または前記下枠と前記パネルとの間に、緩衝材を備える、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項7】
前記緩衝材は、前記上枠または前記下枠に対して固定されており、前記パネルとの接触面にフッ素樹脂からなるコーティング層を有する、請求項6に記載の壁面構造体。
【請求項8】
前記レールと前記パネルとの間に、緩衝材を備える、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項9】
前記緩衝材は、前記レールに対して固定されており、前記パネルとの接触面にフッ素樹脂からなるコーティング層を有する、請求項8に記載の壁面構造体。
【請求項10】
前記上枠または前記下枠は、逆U字状またはU字状の断面形状を有し、前記パネルの外側に配置される第1垂直片と、前記パネルの内側に配置される第2垂直片と、前記第1垂直片と前記第2垂直片の上端同士または下端同士をつなぐ水平片とを有し、
前記第1垂直片の高さは、20mm以下である、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項11】
前記上枠または前記下枠の材質は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項12】
前記パネルは、ガラス板を含む、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項13】
前記パネルは、太陽光パネルを含む、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【請求項14】
前記壁面材は、セメント板を含む、請求項1又は2に記載の壁面構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、壁面構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、躯体の側面に複数の押出成形セメント板を取り付け、押出成形セメント板の表面に仕上げ材を取り付ける構造が記載されている。押出成形セメント板は、躯体の側面に対して揺動可能に取り付けられる。また、仕上げ材は、押出成形セメント板に対して滑り材を介してボルト固定されている。
【0003】
特許文献2には、長尺の垂直部材である方立と、長尺の水平部材である無目とで構成された格子状の構造が記載されている。無目には、複数のファスナーを介して面材が取り付けられる。複数のファスナーは、無目の溝に沿ってスライド可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-145092号公報
【特許文献2】特開2017-40109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
壁面構造体は、鉛直方向と水平方向に行列状に並ぶ複数の壁面材を備える。壁面材の正面から見たときに、複数の壁面材は、個別に揺動可能に躯体に取り付けられている。躯体は、建物を支える骨組みである。建物は、地震または強風などの外力によって変形することがある。このとき上階と下階の間で生ずる水平方向の変位を、層間変位という。複数の壁面材は、層間変位によって個別に揺動することで、層間変位によって壁面材に力がかかるのを抑制する。
【0006】
壁面構造体は、壁面材の表面に取り付けられるパネルを備えることがある。特許文献1には、パネルに相当する仕上げ材として、石材、陶板、大型タイル、セラミック板および金属板が例示されている。従来、壁面材が層間変位によって個別に揺動することで、パネルの上縁と下縁を平行にずらす力(せん断応力)がパネルにかかることがあった。その結果、パネルの破損または脱落が生じることがあった。また、層間変位が発生する前と後で、壁面材に対するパネルの位置がずれることがあった。
【0007】
本開示の一態様は、パネルの破損または脱落を抑制すると共に、パネルの位置ずれを抑制する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る壁面構造体は、鉛直に設けられるパネルと、前記パネルの上縁を支持する上枠と、前記パネルの下縁を支持する下枠と、前記上枠と前記下枠の少なくとも一方を水平方向にスライド可能に支持するレールと、前記レールを壁面材に取り付ける取付具と、を備える。前記壁面材の正面から見たときに、前記壁面材は鉛直方向と水平方向に行列状に複数配置され、個別に揺動可能に躯体に取り付けられている。前記レールは、鉛直方向に間隔をおいて複数設けられ、それぞれ前記上枠と前記下枠の少なくとも一方を水平方向にスライド可能に支持する。前記壁面構造体は、前記パネルの上縁と下縁の一方のみの、前記レールに対するスライドを制限するストッパを更に備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、レールによってパネルの上縁と下縁の少なくとも一方(例えば上縁)を水平方向にスライド可能に支持することで、層間変位によってパネルの上縁と下縁を平行にずらす力(せん断応力)がパネルにかかるのを抑制でき、パネルの破損または脱落を抑制できる。また、ストッパによってパネルの上縁と下縁の一方のみ(例えば下縁)のスライドを制限することで、壁面材に対するパネルの位置ずれを抑制しつつ、せん断応力がパネルにかかるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る壁面構造体を示す側面図であって、ストッパを取り付ける前の状態を示す側面図である。
図2図2は、図1の一部拡大図である。
図3図3は、一実施形態に係る壁面構造体を示す側面図であって、ストッパを取り付けた後の状態を示す側面図である。
図4図4は、複数の壁面材の配置の一例を示す正面図である。
図5図5は、複数の壁面材の揺動の一例を示す正面図である。
図6図6は、複数のレールの配置の一例を示す正面図である。
図7図7は、複数のレールの変位の一例を示す正面図である。
図8図8は、複数のパネルの配置の一例を示す正面図である。
図9図9は、複数のパネルの変位の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。各図面において、X軸方向とY軸方向とZ軸方向は互いに垂直な方向であって、X軸方向とY軸方向は水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。X軸方向がスライド方向である。
【0012】
以下、主に図1図3を参照して、一実施形態に係る壁面構造体10について説明する。壁面構造体10は、鉛直に設けられるパネル20と、パネル20の上縁21を支持する上枠30と、パネル20の下縁22を支持する下枠40と、上枠30と下枠40の少なくとも一方を水平方向にスライド可能に支持するレール50と、レール50を壁面材60に取り付ける取付具70と、を備える。
【0013】
図4に示すように、壁面材60の正面から見たときに、壁面材60は、鉛直方向と水平方向に行列状に複数配置される。図5に示すように、複数の壁面材60は、個別に揺動可能に躯体90(図1及び図3参照)に取り付けられている。躯体90は、建物を支える骨組みである。
【0014】
建物は、地震または強風などの外力によって変形することがある。このとき上階と下階の間で生ずる水平方向の変位を、層間変位という。複数の壁面材60は、層間変位によって個別に揺動することで、層間変位によって壁面材60に力がかかるのを抑制する。複数の壁面材60は、同じ位相で揺動しやすく、つまり同じ方向に同じ角度で傾斜しやすい。
【0015】
図4及び図5に示すように、壁面材60の正面から見たときに、壁面材60は矩形であってよい。各壁面材60の下面には、各壁面材60を躯体90に対して揺動可能に支持する支持部材91が設けられる。支持部材91は原則として各壁面材60の水平方向中央部に設けられる。支持部材91は、例えば硬質パッキングまたは鋼材である。壁面材60は、支持部材91を中心に揺動する。それゆえ、壁面材60の上縁61の水平方向変位は、壁面材60の下縁62の水平方向変位に比べて大きい。
【0016】
図1及び図3に示すように、支持部材91は、第1金具92の上に載置される。第1金具92は、L字状の形状を有し、支持部材91を載置する水平片92aと、壁面材60の背面63と対向する垂直片92bと、を有する。第1金具92の垂直片92bと、壁面材60の間には、硬質パッキング94が設けられる。
【0017】
第2金具93は、壁面材60の背面63にボルト95で固定される垂直片93aと、第1金具92の垂直片92bと面接触する垂直片93bと、垂直片93a、92b同士をつなぐ傾斜片93cと、躯体90に取り付けられる水平片93dと、を有する。第2金具93の垂直片93bと、壁面材60とは、第1金具92の垂直片92bを挟んで締め付ける。
【0018】
壁面材60は、例えばセメント板を含む。セメント板は、高い剛性を有し、重いパネル20を支持できる。セメント板は、例えば、押出成形セメント板、または軽量気泡コンクリート(ALC:Autoclaved Lightweight aerated Concreate)板である。壁面材60は、軽量化の観点から中空であることが好ましい。
【0019】
パネル20は、壁面材60の外側に配置される。パネル20は、例えば太陽光パネルである。太陽光パネルを建物の壁面構造体10に組み込むことで、新たな再生可能エネルギー源として建物を活用できる。太陽光パネルは、例えば2枚のガラス板の間に発電セルを有する。ガラス板の枚数は1枚であってもよい。また、太陽光パネルは、軽量化のため、ガラス板の代わりに、樹脂板を有してもよい。なお、パネル20は、石材、陶板、大型タイル、セラミック板、ガラス板または金属板であってもよい。
【0020】
図2に示すように、上枠30は、パネル20の上縁21を支持する。上枠30は、パネル20の上縁21を、その上縁21に沿ってスライド可能に支持するが、スライド不能に支持してもよい。上枠30の材質は、例えば金属であり、軽量化の観点から好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金である。上枠30には、パネル20の上縁21が嵌め込まれる。
【0021】
上枠30は、例えば逆U字状の断面形状を有し、パネル20の外側に配置される第1垂直片31と、パネル20の内側に配置される第2垂直片32と、第1垂直片31と第2垂直片32の上端同士をつなぐ水平片33とを有する。第1垂直片31と第2垂直片32はパネル20を挟んで設けられる。これにより、パネル20に対して垂直な力(例えば風の力)に対して安定的にパネル20を保持できる。上枠30の溝幅は、パネル20の厚みよりも大きい。上枠30の溝の中でパネル20の傾きを調整することも可能である。
【0022】
第1垂直片31の高さH1は、好ましくは20mm以下である。第1垂直片31の高さH1が20mm以下であれば、第1垂直片31の影が太陽光パネルの発電セルにかからず、発電効率が良い。第1垂直片31の高さH1は、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上、さらに好ましくは14mm以上である。第1垂直片31の高さH1が大きいほど、パネル20の安定性が良い。
【0023】
上枠30の第1垂直片31とパネル20との間に、緩衝材35が設けられてもよい。緩衝材35は、ゴムまたは樹脂を含む。緩衝材35は、上枠30の第1垂直片31とパネル20との接触を防止することで、騒音の発生を抑制すると共に、パネル20を保護する。また、緩衝材35は、上枠30の第1垂直片31とパネル20との隙間を埋めてガタツキを抑制する。
【0024】
緩衝材35は、好ましくは、上枠30に対して固定されており、パネル20との接触面にフッ素樹脂からなるコーティング層35aを有する。フッ素樹脂の具体例として、テフロン(登録商標)が挙げられる。コーティング層35aは、上枠30に対するパネル20の滑りを許容する。
【0025】
下枠40は、パネル20の下縁22を支持する。下枠40は、パネル20の下縁22を、その下縁22に沿ってスライド可能に支持するが、スライド不能に支持してもよい。下枠40の材質は、例えば金属であり、軽量化の観点から好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム合金である。下枠40には、パネル20の下縁22が嵌め込まれる。
【0026】
下枠40は、例えばU字状の断面形状を有し、パネル20の外側に配置される第1垂直片41と、パネル20の内側に配置される第2垂直片42と、第1垂直片41と第2垂直片42の下端同士をつなぐ水平片43とを有する。第1垂直片41と第2垂直片42はパネル20を挟んで設けられる。これにより、パネル20に対して垂直な力(例えば風の力)に対して安定的にパネル20を保持できる。下枠40の溝幅は、パネル20の厚みよりも大きい。下枠40の溝の中でパネル20の傾きを調整することも可能である。
【0027】
第1垂直片41の高さH2は、好ましくは20mm以下である。第1垂直片41の高さH2が20mm以下であれば、第1垂直片41の影が太陽光パネルの発電セルにかからず、発電効率が良い。第1垂直片41の高さH2は、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上、さらに好ましくは14mm以上である。第1垂直片41の高さH2が大きいほど、パネル20の安定性が良い。
【0028】
下枠40の第1垂直片41とパネル20との間に、緩衝材45が設けられてもよい。緩衝材45は、ゴムまたは樹脂を含む。緩衝材45は、下枠40の第1垂直片41とパネル20との接触を防止することで、騒音の発生を抑制すると共に、パネル20を保護する。また、緩衝材45は、下枠40の第1垂直片41とパネル20との隙間を埋めてガタツキを抑制する。
【0029】
緩衝材45は、好ましくは、下枠40に対して固定されており、パネル20との接触面にフッ素樹脂からなるコーティング層45aを有する。コーティング層45aは、下枠40に対するパネル20の滑りを許容する。
【0030】
下枠40の水平片43とパネル20との間に、緩衝材46が設けられてもよい。緩衝材46は、ゴムまたは樹脂を含む。緩衝材46は、下枠40の水平片43とパネル20との接触を防止すると共に、下枠40の水平片43とパネル20との隙間を埋めてガタツキを抑制する。
【0031】
緩衝材46は、好ましくは、下枠40に対して固定されており、パネル20との接触面にフッ素樹脂からなるコーティング層46aを有する。コーティング層46aは、下枠40に対するパネル20の滑りを許容する。
【0032】
図1に示すように、レール50は、鉛直方向に間隔をおいて複数設けられ、それぞれ上枠30と下枠40の少なくとも一方(図1では両方)を水平方向にスライド可能に支持する。なお、最も上に配置されるレール50は上枠30のみを、中間に配置されるレール50は上枠30と下枠40の両方を、最も下に配置されるレール50は下枠40のみを、それぞれ水平方向にスライド可能に支持する。
【0033】
図2に示すように、レール50は、例えば、水平に配置される直線状のガイドベース51と、上枠30のスライド方向を規定する上ガイド52と、上枠30の水平片33をスライド可能に上から押さえるガード部材53と、下枠40のスライド方向を規定する下ガイド54と、下枠40の水平片43を下方から支持する水平な支持板55と、を有する。
【0034】
ガイドベース51は、例えば金属で形成される。ガイドベース51の材質は、鉄鋼であるが、軽量化の観点からアルミニウムまたはアルミニウム合金であってもよい。ガイドベース51と上ガイド52と下ガイド54と支持板55は、一体に成形される。ガード部材53は、ガイドベース51等とは別に成形される。
【0035】
ガイドベース51は、軽量化の観点から、中空であることが好ましい。例えば、ガイドベース51は、四角パイプである。ガイドベース51は、外向きの前面板51aと、内向きの背面板51bと、上面板51cと、下面板51dと、を有する。
【0036】
上ガイド52は、ガイドベース51の前面板51aから前方に延びる水平片52aと、水平片52aの前端から上方に延びる垂直片52bと、を有する。上ガイド52の垂直片52bと、ガイドベース51の前面板51aとの間に、上枠30の第2垂直片32がスライド可能に差し込まれる。上枠30のスライド方向から見たときに、上枠30の第2垂直片32が湾曲形状を有することが好ましい。第2垂直片32の弾性復元力を利用して、ガタツキを抑制できる。
【0037】
ガード部材53は、上枠30の第2垂直片32を上ガイド52の垂直片52bとガイドベース51の前面板51aとの間に差し込んだ後に、ボルト56とナット57でガイドベース51に対して取り付けられる。ガイドベース51の前面板51aには、ナット57を収容する凹部が形成されている。ナット57はボルト56の軸部に取り付けられており、ボルト56の頭部とナット57がガード部材53を挟んで締め付ける。
【0038】
パネル20を取り替えるときには、ボルト56を緩めてガイドベース51からガード部材53を取り外し、続いて上枠30を取り外す。これにより、パネル20の上縁21が支持されていない状態となる。この状態でパネル20を取り外す。その後、取り外し時とは逆の手順で、新しいパネル20を取り付ける。一部の部材を取り外すことにより、容易にパネル20を取り替えできる。
【0039】
上ガイド52の垂直片52bとパネル20との間に、緩衝材37が設けられてもよい。緩衝材37は、ゴムまたは樹脂を含む。緩衝材37は、上ガイド52の垂直片52bとパネル20との接触を防止すると共に、上ガイド52の垂直片52bとパネル20との隙間を埋めてガタツキを抑制する。
【0040】
緩衝材37は、好ましくは、上ガイド52に対して固定されており、パネル20との接触面にフッ素樹脂からなるコーティング層37aを有する。コーティング層37aは、上ガイド52に対するパネル20の滑りを許容する。
【0041】
下ガイド54は、ガイドベース51の前面板51aから前方に延びる水平片54aと、水平片54aの前端から上下両方向に延びる垂直片54bと、を有する。下ガイド54の垂直片54bと、ガイドベース51の前面板51aとの間に、下枠40の第2垂直片42が、スライド可能に差し込まれる。下枠40のスライド方向から見たときに、下枠40の第2垂直片42が湾曲形状を有することが好ましい。第2垂直片42の弾性復元力を利用して、ガタツキを抑制できる。
【0042】
下ガイド54の垂直片54bとパネル20との間に、緩衝材47が設けられてもよい。緩衝材47は、ゴムまたは樹脂を含む。緩衝材47は、下ガイド54の垂直片54bとパネル20との接触を防止すると共に、下ガイド54の垂直片54bとパネル20との隙間を埋めてガタツキを抑制する。
【0043】
緩衝材47は、好ましくは、下ガイド54に対して固定されており、パネル20との接触面にフッ素樹脂からなるコーティング層47aを有する。コーティング層47aは、下ガイド54に対するパネル20の滑りを許容する。
【0044】
取付具70は、例えばL字状の形状を有し、水平片71と垂直片72とを有する。水平片71は、ボルト73とナット74によってガイドベース51に対して締結される。ガイドベース51の上面板51cには、ボルト73の頭部73aを収容する凹部が形成されている。ボルト73の軸部73bは、ガイドベース51の上面板51cから上方に突出し、緩衝板75の貫通孔と水平片71の貫通孔を通り抜ける。水平片71の上方において、ナット74がボルト73の軸部73bに取り付けられる。ナット74とボルト73の頭部73aとが水平片71を挟んで締め付ける。
【0045】
図示しないが、取付具70の水平片71は、ガイドベース51の下面板51dに取り付けられてもよい。ガイドベース51の下面板51dには、ガイドベース51の上面板51cと同様に、ボルト73の頭部73aを収容可能な凹部が形成されている。ボルト73の軸部73bは、ガイドベース51の下面板51dから下方に突出し、緩衝板75の貫通孔と水平片71の貫通孔を通り抜ける。水平片71の下方において、ナット74がボルト73の軸部73bに取り付けられる。ナット74とボルト73の頭部73aとが水平片71を挟んで締め付ける。
【0046】
取付具70の垂直片72は、ボルト76とナット77によって壁面材60に対して締結される。取付具70の垂直片72と壁面材60との間には、滑り板65が設けられることが好ましい。滑り板65は、例えば金属または硬質樹脂で形成され、壁面材60に比べて滑らかな表面を有する。よって、取付具70が壁面材60に対して相対的に揺動可能である。
【0047】
壁面材60の正面から見たときに、支持部材91の真上に取付具70が配置される。本実施形態では、取付具70は各壁面材60の水平方向中央部に配置される(図6参照)。これにより、各壁面材60の水平方向両端部に取付具70を配置する場合に比べて、各壁面材60が個別に揺動する際に、取付具70の上下動を抑制できる。その結果、レール50を水平に真っ直ぐ維持でき、レール50の歪みを抑制できる。
【0048】
図7に示すように、壁面材60の正面から見たときに、各壁面材60に対して相対的に取付具70が揺動可能である。各壁面材60に対して取付具70が固定される場合とは異なり、各壁面材60が取付具70およびレール50によって拘束されることなく揺動可能である。よって、壁面材60の破損を抑制できる。
【0049】
取付具70は、レール50と同様に、鉛直方向に間隔をおいて複数設けられる。また、取付具70は、レール50と同様に、鉛直方向に並ぶ複数の壁面材60のそれぞれに設けられる。複数の壁面材60のそれぞれに、複数の取付具70と複数のレール50が鉛直方向に間隔をおいて設けられる。
【0050】
図7に示すように、層間変位によって各壁面材60が揺動する際に、各壁面材60の上縁61に近いほどレール50の水平方向変位が大きく、各壁面材60の下縁62に近いほどレール50の水平方向変位が小さい。従って、鉛直方向に隣り合う2つのレール50の水平方向の変位が異なる。
【0051】
本実施形態によれば、レール50によってパネル20の上縁21と下縁22の少なくとも一方(例えば上縁21)を水平方向にスライド可能に支持することで、層間変位によってパネル20の上縁21と下縁22を平行にずらす力(せん断応力)がパネル20にかかるのを抑制できる。よって、パネル20の破損または脱落を抑制できる。
【0052】
壁面構造体10は、パネル20の上縁21と下縁22の一方のみ(例えば下縁22)の、レール50に対するスライドを制限するストッパ80(図3参照)を更に備える。ストッパ80によって壁面材60に対するパネル20の位置ずれを抑制しつつ、せん断応力がパネル20にかかるのを抑制することができる。
【0053】
例えば、層間変位が発生する前と後で、壁面材60に対するパネル20の位置がずれること、例えば複数のパネル20が左または右に寄せ集まることを抑制できる。また、層間変位の発生中に、パネル20同士の接触を抑制でき、パネル20の破損または脱落を抑制できる。
【0054】
図3に示すように、ストッパ80は、例えばネジ81でレール50の長手方向端面に取り付けられる。レール50は、その長手方向端面に、ネジ81を受けるネジ受け82(図1参照)を有する。ネジ受け82は、例えばC字状の形状を有し、中空のガイドベース51の内壁面に設けられる。複数のネジ81に対応して複数のネジ受け82が設けられる。
【0055】
ストッパ80は、例えばL字状の形状を有し、パネル20の上縁21と下縁22のいずれか一方のみに当接することで、一方のスライドを制限し、他方のスライドを許容する。ストッパ80は、好ましくは、摩擦抵抗低減の観点から、上縁21のスライドを許容し、下縁22のスライドを制限する。
【0056】
パネル20の下縁22は、パネル20の上縁21とは異なり、パネル20の重量でレール50に押し付けられる。それゆえ、下縁22の摩擦抵抗は、上縁21の摩擦抵抗よりも大きい。摩擦抵抗の大きい下縁22のスライドを制限し、摩擦抵抗の小さい上縁21のスライドを許容することで、パネル20のスライドを円滑に実施できる。
【0057】
ストッパ80は、例えば、パネル20の下縁22と下枠40の両方に当接し、両方のスライドを制限する。なお、ストッパ80は、パネル20の上縁21に当接しなければよく、上枠30には当接しても当接しなくてもよい。ストッパ80が上枠30に当接して上枠30のスライドを制限したとしても、上枠30がパネル20の上縁21をスライド可能に支持していればよい。
【0058】
図8及び図9に示すように、ストッパ80は、例えばパネル20の下縁22の両端にそれぞれ設けられ、パネル20の下縁22のX軸正方向とX軸負方向の両方向のスライドを制限する。ストッパ80を挟んで複数本のレール50が一直線上に設けられる。
【0059】
図8及び図9に示すように、壁面材60の正面から見たときに、パネル20は鉛直方向に隣り合う複数の壁面材60にまたがって配置されてもよい。この場合も、パネル20の破損または脱落を抑制でき、且つパネル20の位置ずれを抑制できる。
【0060】
また、図8及び図9に示すように、壁面材60の正面から見たときに、パネル20は水平方向に隣り合う複数の壁面材60にまたがって配置されてもよい。この場合も、パネル20の破損または脱落を抑制でき、且つパネル20の位置ずれを抑制できる。
【0061】
本実施形態によれば、隣り合うパネル20同士の目地と、隣り合う壁面材60同士の目地とを合わせなくても、パネル20の破損または脱落を抑制でき、且つパネル20の位置ずれを抑制できる。よって、壁面材60の寸法とパネル20の寸法とを合わせなくてよく、壁面材60とパネル20の調達が容易である。
【0062】
上記実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
鉛直に設けられるパネルと、前記パネルの上縁を支持する上枠と、前記パネルの下縁を支持する下枠と、前記上枠と前記下枠の少なくとも一方を水平方向にスライド可能に支持するレールと、前記レールを壁面材に取り付ける取付具と、を備える、壁面構造体であって、
前記壁面材の正面から見たときに、前記壁面材は鉛直方向と水平方向に行列状に複数配置され、個別に揺動可能に躯体に取り付けられており、
前記レールは、鉛直方向に間隔をおいて複数設けられ、それぞれ前記上枠と前記下枠の少なくとも一方を水平方向にスライド可能に支持し、
前記壁面構造体は、前記パネルの上縁と下縁の一方のみの、前記レールに対するスライドを制限するストッパを更に備える、壁面構造体。
[付記2]
前記壁面材の正面から見たときに、前記パネルは鉛直方向に隣り合う複数の前記壁面材にまたがって配置される、付記1に記載の壁面構造体。
[付記3]
前記壁面材を前記躯体に対して揺動可能に支持する支持部材を備え、
前記壁面材の正面から見たときに、前記支持部材の真上に前記取付具が配置される、付記1又は2に記載の壁面構造体。
[付記4]
前記壁面材の正面から見たときに、各前記壁面材に対して前記取付具が相対的に揺動可能である、付記1~3のいずれか1項に記載の壁面構造体。
[付記5]
前記取付具は、鉛直方向に間隔をおいて複数設けられる、付記1~4のいずれか1項に記載の壁面構造体。
[付記6]
前記上枠または前記下枠と前記パネルとの間に、緩衝材を備える、付記1~5のいずれか1項に記載の壁面構造体。
[付記7]
前記緩衝材は、前記上枠または前記下枠に対して固定されており、前記パネルとの接触面にフッ素樹脂からなるコーティング層を有する、付記6に記載の壁面構造体。
[付記8]
前記レールと前記パネルとの間に、緩衝材を備える、付記1~5のいずれか1項に記載の壁面構造体。
[付記9]
前記緩衝材は、前記レールに対して固定されており、前記パネルとの接触面にフッ素樹脂からなるコーティング層を有する、付記8に記載の壁面構造体。
[付記10]
前記上枠または前記下枠は、逆U字状またはU字状の断面形状を有し、前記パネルの外側に配置される第1垂直片と、前記パネルの内側に配置される第2垂直片と、前記第1垂直片と前記第2垂直片の上端同士または下端同士をつなぐ水平片とを有し、
前記第1垂直片の高さは、20mm以下である、付記1~9のいずれか1項に記載の壁面構造体。
[付記11]
前記上枠または前記下枠の材質は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である、付記1~10のいずれか1項に記載の壁面構造体。
[付記12]
前記パネルは、ガラス板を含む、付記1~11のいずれか1項に記載の壁面構造体。
[付記13]
前記パネルは、太陽光パネルを含む、付記1~11のいずれか1項に記載の壁面構造体。
[付記14]
前記壁面材は、セメント板を含む、付記1~11のいずれか1項に記載の壁面構造体。
【0063】
以上、本開示に係る壁面構造体について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0064】
10 壁面構造体
20 パネル
21 上縁
22 下縁
30 上枠
40 下枠
50 レール
60 壁面材
70 取付具
90 躯体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9