(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039538
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ゼリー食品
(51)【国際特許分類】
A23L 29/256 20160101AFI20240314BHJP
【FI】
A23L29/256
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144160
(22)【出願日】2022-09-09
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】中原 仁
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆将
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅明
【テーマコード(参考)】
4B041
【Fターム(参考)】
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH10
4B041LK18
(57)【要約】
【課題】
油脂を一定量含有していても、ゲル安定性に優れたゼリー食品を提供することを課題とする。
【解決手段】
寒天を含み、油脂を5質量%以上20質量%以下含み、水分を77質量%以上含む、ゼリー食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天を含み、
油脂を5質量%以上20質量%以下含み、
水分を77質量%以上含む、
ゼリー食品。
【請求項2】
前記油脂は、25℃で液体の油脂である、請求項1に記載のゼリー食品。
【請求項3】
前記油脂は、中鎖脂肪酸トリグリセリド及び/又は菜種油を含む、請求項1又は2に記載のゼリー食品。
【請求項4】
前記油脂は、前記油脂全体中に中鎖脂肪酸トリグリセリドを30質量%以上含む、
請求項3に記載のゼリー食品。
【請求項5】
タンパク質の含有率が3質量%未満である、請求項1又は2に記載のゼリー食品。
【請求項6】
糖質の含有率が15質量%以下である、請求項1又は2に記載のゼリー食品。
【請求項7】
20℃におけるゲル強度が0.1N以上0.8N以下である、請求項1に記載のゼリー食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂を含有するゼリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
手軽にエネルギーを摂取することができる食品として、従来から油脂を含有するゼリー食品が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、3~4の範囲のpHを有するゲル状物であって、組成物全重量に対して、糖質5~20質量%、脂質0.1~5重量%、pH3~4で凝集しない蛋白質素材2.5~6重量%、酸成分0.2~1.5重量%、乳化剤0.01~0.5重量%、寒天0.1~1重量%、および水65~90重量%を含有することを特徴とする総合栄養補給用ゲル状飲料組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、油脂を含有し、ゲル安定性及び食感に優れたゼリー食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の組成のゼリー食品がゲル安定性と食感に優れることを見出した。
すなわち、本発明は、寒天を含み、油脂を5質量%以上20質量%以下含み、水分を77質量%以上含む、ゼリー食品である。
このような形態のゼリー食品は、エネルギーを効率よく摂取することができ、かつ、ゲル安定性及び食感に優れる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記油脂は、25℃で液体の油脂である。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記油脂は、中鎖脂肪酸トリグリセリド及び/又は菜種油を含む。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記油脂は、前記油脂全体中に中鎖脂肪酸トリグリセリドを30質量%以上含む。
【0010】
本発明の好ましい形態では、ゼリー食品のタンパク質の含有率が3質量%未満である。
【0011】
本発明の好ましい形態では、ゼリー食品の糖質の含有率が15質量%以下である。
【0012】
本発明の好ましい形態では、ゼリー食品の20℃におけるゲル強度が0.1N以上0.8N以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エネルギーを効率的に摂取することができ、かつ、ゲル安定性と食感に優れたゼリー食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、特許請求の範囲に記載された範囲内において適宜変更が可能である。
【0015】
<ゼリー食品>
本発明のゼリー食品は、寒天を含むゲル化剤のネットワークに水が保持された組織を有する食品である。本発明のゼリー食品は、好ましくは、飲用する感覚で喫食することができる、ゼリー飲料である。
【0016】
本発明のゼリー食品の包装形態は特に限定されず、例えば、スパウト付きパウチ容器に充填されている形態を好ましく挙げることができる。
スパウト付きパウチ容器に充填されている形態であることで、容器の外側から手で掴んだり押したりして飲み口からゼリー食品を吐出させ、飲用する感覚で喫食することができる。
【0017】
スパウト付きパウチ容器としては、例えば、プラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器にストローが設けられた形態のものを挙げることができる(特許3663084号、特許3477396号、特許3659775号参照)。
【0018】
・油脂
本発明に係るゼリー食品は、油脂を5質量%以上20質量%以下含む。
本発明に係るゼリー食品は、油脂を好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上含む。また、本発明に係るゼリー食品は、油脂を好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下含む。
油脂を上記範囲内とすることにより、エネルギーを効率よく摂取することができ、かつ、安定性に優れた、特に離水が抑制されたゼリー食品が得られる。
【0019】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂は、好ましくは25℃で液体の油脂である。
ゼリー食品に含まれる全油脂の重量に対する、25℃以上で液体の油脂の重量の割合は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
25℃で液体の油脂の含有率を上記範囲内とすることにより、口当たりの良いゼリー食品が得られる。
【0020】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂として、植物油脂、これらの加工油脂が好ましく挙げられる。例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、菜種油、大豆油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、これらの硬化油、分別油、エステル交換油等が挙げられるが、好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、菜種油を用いることができる。
【0021】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂は、好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む。中鎖脂肪酸トリグリセリドはすばやく消化、吸収されるため、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含むゼリー食品によれば、効率的にエネルギーを摂取することができる。
【0022】
本発明に係るゼリー食品の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有率は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有率を上記範囲内とすることにより、エネルギーを効率よく摂取することができる。
【0023】
また、ゼリー食品に含まれる全油脂の重量に対する、中鎖脂肪酸トリグリセリドの重量の割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有率を上記範囲内とすることにより、エネルギーを効率よく摂取することができる。
【0024】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂は、好ましくは菜種油を含む。
本発明に係るゼリー食品の菜種油の含有率は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品の菜種油の含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0025】
また、ゼリー食品に含まれる全油脂の重量に対する、菜種油の重量の割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0026】
本発明に係るゼリー食品は、好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリド及び菜種油を含む。
ゼリー食品の重量に対する、中鎖脂肪酸トリグリセリドと菜種油の合計重量の割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、ゼリー食品の重量に対する、中鎖脂肪酸トリグリセリドと菜種油の合計重量の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0027】
また、ゼリー食品に含まれる全油脂の重量に対する、中鎖脂肪酸トリグリセリドと菜種油の合計重量の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0028】
・水分
本発明に係るゼリー食品の水分の含有率は、77質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
また、本発明に係るゼリー食品の、水分の含有率は、好ましくは95質量%以下である。
【0029】
・ゲル化剤
本発明に係るゼリー食品は、寒天を含む。
本発明に係るゼリー食品の寒天の含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品の寒天の含有率は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0030】
本発明に係るゼリー食品は、寒天以外のゲル化剤を含んでもよい。
本発明に係るゼリー食品のゲル化剤の含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品のゲル化剤の含有率は、好ましくは1.2質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下である。
【0031】
寒天以外のゲル化剤として、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、カラギナン、ネイティブジェランガム、タマリンドガム、グアガム、ジェランガム、アルギン酸、ゼラチン及びペクチンから選ばれる1又は2以上を好ましく挙げることができる。
【0032】
本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対する寒天の重量の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0033】
本発明に係るゼリー食品は、キサンタンガムを含んでもよい。
本発明に係るゼリー食品のキサンタンガムの含有率は、好ましくは0.1質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品のキサンタンガムの含有率は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
また、本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対するキサンタンガムの重量の割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対するキサンタンガムの重量の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以上である。
【0034】
本発明に係るゼリー食品は、ローカストビーンガムを含んでもよい。
本発明に係るゼリー食品のローカストビーンガムの含有率は、好ましくは0.1質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品のローカストビーンガムの含有率は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
また、本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対するローカストビーンガムの重量の割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対するローカストビーンガムの重量の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以上である。
【0035】
・その他の原料
本発明に係るゼリー食品はタンパク質を含んでもよい。
ただし、本発明に係るゼリー食品のタンパク質の含有率は、好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは、タンパク質を実質的に含まない。
一般的に、タンパク質を含むことによって、ゼリー食品のゲル安定性が高まることが知られているが、本発明においては、タンパク質の含有率が低くてもゲル安定性に優れる。また、タンパク質の含有率が一定以下であることにより、エネルギー源として油脂を主に使用することができ、処方の自由度を高めることができる。
【0036】
本発明に係るゼリー食品の糖質の含有率は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。糖質を上記範囲内とすることで、血糖値の上昇を抑えることができる。
また、本発明に係るゼリー食品の糖質の含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。
【0037】
本発明のゼリー食品は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常ゼリー食品に用いられる他の成分を任意に配合することができる。かかる任意成分としては、例えば、ゼリー食品添加物、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、各種ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤等のほか、食物繊維、安定剤などが挙げられる。
【0038】
本発明に係るゼリー食品のpHは、好ましくは3.0以上である。また、本発明に係るゼリー食品のpHは、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である。
【0039】
・カロリー
本発明に係るゼリー食品のカロリーは、好ましくは200kcal/100g以下、より好ましくは150kcal/100g以下、さらに好ましくは100kcal以下/100gである。また、本発明に係るゼリー食品のカロリーは、好ましくは50kcal/100g以上である。
【0040】
<ゼリー食品の物性>
・離水率
本発明に係るゼリー食品は、ゲル安定性に優れる。ゼリー食品のゲル安定性は、例えば、離水率によって評価することができる。
本発明のゼリー食品の離水率は、好ましくは14質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。また、本発明のゼリー食品の離水率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0041】
離水率は、ゼリー食品(重量Ag)を18メッシュ(目開き:0.85mm)の篩上に静かに置き、1分後の篩下に落ちた離水量B(単位:g)を測定し、次式により算出することができる。
離水率(質量%)=(B/A)×100
なお、パウチ容器入りのゼリー食品の離水率を測定する場合には、パウチ容器を解袋し、ゼリー食品をゲルが崩れないように取り出して、上記と同様に離水量を測定し、離水率を算出することができる。
【0042】
・ゲル強度
本発明に係るゼリー食品のゲル強度は、好ましくは0.1N以上、より好ましくは0.2N以上、より好ましくは0.3N以上である。本発明に係るゼリー食品のゲル強度は、好ましくは0.8N以下、より好ましくは0.6N以下、さらに好ましくは0.4N以下である。
ゲル強度を上記範囲とすることで、良好な食感とすることができる。また、ゲル強度を上限以下とすることで、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において、容器からの吐出性を良好にすることができる。
【0043】
ゲル強度は、レオメーター(サン科学製:CR-500DX)を用い、直径10mmの円柱型プランジャー、進入速度60mm/分、進入距離20mmの測定条件(圧縮試験)で、ゲルが破断したときの破断強度(N)もしくは、破断しない場合には測定中の最大応力(N)をゲル強度とすることができる。測定は20℃で行うことが好ましい。
【0044】
<ゼリー食品の製造方法>
本発明に係るゼリー食品は、常法によって製造することができるが、ゲル化剤を水に分散させたゲル化剤分散液と、ゲル化剤以外の原料を水に分散させた原料分散液をそれぞれ調製する工程と、前記ゲル化剤分散液と、前記原料分散液とを混合する工程とを含む製造方法によって製造することが好ましい。この製造方法によれば、ゲル化剤を膨潤させることができ、離水率を低減させることができる。
【0045】
また、調製したゼリー原料をスパウト付きパウチ容器に充填する工程を含むことが好ましい。スパウト付きパウチ容器へのゼリー原料の充填操作は、例えば本出願人による特許第3527019号公報や、特開平11-157502号公報などに記載された方法によっておこなうことができる。
【0046】
なお、本発明のゼリー食品の製造方法においては、充填工程後に加熱後冷却するといった方法、調製工程後のゼリー原料を一旦加熱した後、スパウト付きパウチ容器に充填し冷却する方法、加熱を経ない方法の何れの方法を含む。ここで、加熱する場合には、加熱温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
【実施例0047】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
<試験例1>
表1に示す各原料を混合し、ゼリー食品原液を調製した。油脂の含有率は表2に記載の通りである。調製したゼリー食品原液を95℃に加熱し、スパウト付きパウチ容器に充填した。充填後、水槽で冷却し、24時間室温で放置し、比較例1、実施例1~6のゼリー食品を製造した。
【0049】
なお、本実施例では、スパウト付きパウチ容器として、プラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器にストローが設けられた形態のものを用いた(特許3659775号参照)。なお、本実施例で用いたスパウト付きパウチ容器は、ストローがパウチ容器内部に侵入している形態である(特許3659775号の
図1参照)。
より具体的には、本実施例で用いたスパウト付きパウチ容器の品名、規格は以下の通りである。
・品名:CP07ストロー
・規格:80.0(幅)×54.0(折込)×120.00mm(高さ)
・メーカー:(株)細川洋行
【0050】
得られたゼリー食品の離水率を測定した。
離水率は、パウチ容器を解袋し、ゼリー食品(180g)をゲルが崩れないように取り出して、18メッシュ(目開き:0.85mm)の篩上に静かに置き、1分後の篩下に落ちた離水量A(単位:g)を測定することにより、次式により算出した。
離水率(質量%)=(A/180)×100
測定結果を表2に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
油脂を含有しない比較例1は、離水率が高い結果となった。一方、油脂を5~20質量%含有する実施例1~6は、離水率が低い結果となった。
油脂としてMCTを含む実施例1~4を比較すると、MCTの含有率が高くなるにつれて、離水率が低く、ゲル安定性に優れる傾向にある。
また、油脂含有率10質量%で、MCTと菜種油の比率が異なる実施例2、5、6を比較すると、MCTと菜種油を両方含む実施例5が最も離水率が低く、菜種油を含む実施例6がその次に離水率が低い。
【0054】
<試験例2>
表3に示す各原料を用いて、試験例1と同様の製造方法で、ゼリー食品を製造した。油脂の含有率は表4に記載の通りである。
製造から5ケ月経過後のゼリー食品の離水率を測定した。保存は常温で行った。離水率の測定方法は試験例1と同様である。測定結果を表4に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
製造から5ケ月後の測定において、油脂を含有しない比較例3と比較して、油脂を含有する実施例7、8は、離水率が低い結果となった。また、油脂の含有率が高くなるにつれて、離水率が低くなる傾向にある。
つまり、油脂を含有するゼリー食品は、製造から長期間経過しても離水率が低く、ゲル安定性に優れる。
【0058】
<試験例3>
表5に記載の原材料を用いて、試験例1と同様の製造方法で、ゼリー食品を製造した。油脂の含有率は表6に記載の通りである。
製造直後のゼリー食品と、常温における4ケ月経過相当のゼリー食品のゲル強度を測定した。
【0059】
レオメーター(サン科学製:CR-500DX)を用い、直径10mmの円柱型プランジャー、進入速度60mm/分、進入距離20mmの測定条件(圧縮試験)で、ゲルが破断したときの破断強度(N)もしくは、破断しない場合には測定中の最大応力(N)をゲル強度とした。測定は20℃で行った。
結果を表6に示す。
【0060】
【0061】
【0062】
製造直後の測定において、油脂を含有しない比較例4はゲル強度が低い結果となった。一方、油脂を含有する実施例9は、ゲル強度が高く、食感に優れていた。
また、常温における4ケ月経過相当の測定においても、油脂を含有しない比較例4と比較して、油脂を含有する実施例9は、ゲル強度が高い結果となった。
また、実施例9は、比較例4と比較して、ゲル強度の経時変化が小さい。すなわち、油脂を含有するゼリー食品は、長期保管をしても、ゲル安定性が低下しにくいことが確認された。また、ゼリー食品、特にゼリー飲料としての好ましい物性を有しており、食感も良好であった。