(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039541
(43)【公開日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ゼリー食品
(51)【国際特許分類】
A23L 29/20 20160101AFI20240314BHJP
【FI】
A23L29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144163
(22)【出願日】2022-09-09
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆将
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅明
【テーマコード(参考)】
4B041
【Fターム(参考)】
4B041LC01
4B041LD01
4B041LH10
4B041LK05
4B041LK18
(57)【要約】
【課題】
本発明は、油脂を含有するゼリー食品において、油脂の風味をマスキングすることを課題とする。
【解決手段】
油脂を含み、δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルからなる群より選ばれた1つ以上の香気成分を含む、ゼリー食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂を含み、
δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルからなる群より選ばれた1つ以上の香気成分を含む、ゼリー食品。
【請求項2】
前記油脂の含有率が、5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のゼリー食品。
【請求項3】
前記香気成分の含有率が、0.0001質量%以上0.01質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゼリー食品。
【請求項4】
前記油脂の含有量に対する前記香気成分の含有量の比率が0.001質量%以上0.1質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゼリー食品。
【請求項5】
前記油脂は、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む、請求項1又は2に記載のゼリー食品。
【請求項6】
前記油脂は、前記油脂全体中に中鎖脂肪酸トリグリセリドを30質量%以上含む、請求項5に記載のゼリー食品。
【請求項7】
油脂を含むゼリー食品における、油脂感のマスキング方法であって、
δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルからなる群より選ばれた1以上の香気成分を含有させることを含む、油脂感のマスキング方法。
【請求項8】
δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルからなる群より選ばれた1以上の香気成分を含有する、
油脂を含むゼリー食品用の、油脂感のマスキング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂を含有するゼリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
手軽にエネルギーを摂取することができる食品として、従来から油脂を含有するゼリー食品が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、3~4の範囲のpHを有するゲル状物であって、組成物全重量に対して、糖質5~20質量%、脂質0.1~5重量%、pH3~4で凝集しない蛋白質素材2.5~6重量%、酸成分0.2~1.5重量%、乳化剤0.01~0.5重量%、寒天0.1~1重量%、および水65~90重量%を含有することを特徴とする総合栄養補給用ゲル状飲料組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
油脂を含有するゼリー食品には、舌にまとわりつくような感覚や、後味がくどくなってしまうなどの油脂特有の風味や、油脂のにおい等がある。ゼリー食品は本来さっぱりした風味が求められるものであり、このような油脂感は好ましくない。
そこで、本発明は、油脂を含有するゼリー食品において、上記のような油脂感をマスキングすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の香気成分を添加することにより、油脂を含有するゼリー食品の油脂感をマスキングすることができることを見出した。
すなわち、本発明は、油脂を含み、δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルからなる群より選ばれた1つ以上の香気成分を含む、ゼリー食品である。
このような形態とすることにより、ゼリー食品の油脂感をマスキングすることができる。
本明細書において、「油脂感」とは、舌にまとわりつくような感覚、油脂のにおい、後味のくどさを含み、これらを含む総合的な油脂に由来する風味及び舌触りを指す。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記油脂の含有率が、5質量%以上20質量%以下である。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記香気成分の含有率が、0.0001質量%以上0.01質量%以下である。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記油脂の含有量に対する前記香気成分の含有量の比率が0.001質量%以上0.1質量%以下である。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記油脂は、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記油脂は、前記油脂全体中に中鎖脂肪酸トリグリセリドを30質量%以上含む。
【0012】
また、本発明は、油脂を含むゼリー食品における、油脂感のマスキング方法であって、δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルからなる群より選ばれた1以上の香気成分を含有させることを含む、油脂感のマスキング方法でもある。
【0013】
また、本発明は、δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルからなる群より選ばれた1以上の香気成分を含有する、油脂を含むゼリー食品用の、油脂感のマスキング剤でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油脂感がマスキングされたゼリー食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、特許請求の範囲に記載された範囲内において適宜変更が可能である。
【0016】
<ゼリー食品>
本発明のゼリー食品は、ゲル化剤のネットワークに水が保持された組織を有する食品である。本発明のゼリー食品は、好ましくは、飲用する感覚で喫食することができる、ゼリー飲料である。
【0017】
本発明のゼリー食品の包装形態は特に限定されず、例えば、スパウト付きパウチ容器に充填されている形態を好ましく挙げることができる。
スパウト付きパウチ容器に充填されている形態であることで、容器の外側から手で掴んだり押したりして飲み口からゼリー食品を吐出させ、飲用する感覚で喫食することができる。
スパウト付きパウチ容器に充填されている形態においては、油脂感は特にスパウトから吸い出す時の舌触りによって評価することができる。
【0018】
スパウト付きパウチ容器としては、例えば、プラスチックフィルムと金属箔とをラミネート加工してなる可撓性のシートからなる袋状の容器にストローが設けられた形態のものを挙げることができる(特許3663084号、特許3477396号、特許3659775号参照)。
【0019】
・油脂
本発明に係るゼリー食品は、油脂を含む。
本発明に係るゼリー食品の油脂の含有率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上含む。また、本発明に係るゼリー食品の油脂含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
油脂を上記範囲内とすることにより、エネルギーを効率よく摂取することができる。
【0020】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂は、好ましくは25℃で液体の油脂である。
ゼリー食品に含まれる全油脂の重量に対する、25℃以上で液体の油脂の重量の割合は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
25℃で液体の油脂の含有率を上記範囲内とすることにより、口当たりの良いゼリー食品が得られる。
【0021】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂として、植物油脂、これらの加工油脂が好ましく挙げられる。例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、菜種油、大豆油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、これらの硬化油、分別油、エステル交換油等が挙げられるが、好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、菜種油を用いることができる。
【0022】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂は、好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む。中鎖脂肪酸トリグリセリドはすばやく消化、吸収されるため、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含むゼリー食品によれば、効率的にエネルギーを摂取することができる。
【0023】
本発明に係るゼリー食品の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有率は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有率を上記範囲内とすることにより、エネルギーを効率よく摂取することができる。
【0024】
また、ゼリー食品に含まれる全油脂の重量に対する、中鎖脂肪酸トリグリセリドの重量の割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有率を上記範囲内とすることにより、エネルギーを効率よく摂取することができる。
【0025】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂は、好ましくは菜種油を含む。
本発明に係るゼリー食品の菜種油の含有率は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品の菜種油の含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0026】
ゼリー食品に含まれる全油脂の重量に対する、菜種油の重量の割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0027】
本発明に係るゼリー食品は、好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリド及び菜種油を含む。
ゼリー食品の重量に対する、中鎖脂肪酸トリグリセリドと菜種油の合計重量の割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、ゼリー食品の重量に対する、中鎖脂肪酸トリグリセリドと菜種油の合計重量の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0028】
また、ゼリー食品に含まれる全油脂の重量に対する、中鎖脂肪酸トリグリセリドと菜種油の合計重量の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
【0029】
・香気成分
本発明に係るゼリー食品は、δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルからなる群より選ばれた1つ以上の香気成分を含む。
本発明に係るゼリー食品は、上記香気成分のうち、2種以上を含んでもよく、3種以上を含んでもよい。
また、本発明に係るゼリー食品は、上記香気成分そのものを含む形態としてもよいし、上記香気成分を含む食品原料を含む形態としてもよい。
香気成分の含有率は、ガスクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0030】
本発明に係るゼリー食品のδ-デカラクトンの含有率は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.0010質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品のδ-デカラクトンの含有率は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0031】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対するδ-デカラクトンの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.010質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対するδ-デカラクトンの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.020質量%以下である。
【0032】
本発明に係るゼリー食品のバニリンの含有率は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.0010質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品のバニリンの含有率は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0033】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対するバニリンの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.010質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対するバニリンの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.020質量%以下である。
【0034】
本発明に係るゼリー食品のγ-ドデカラクトンの含有率は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.0010質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品のγ-ドデカラクトンの含有率は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0035】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対するγ-ドデカラクトンの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.010質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対するγ-ドデカラクトンの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.020質量%以下である。
【0036】
本発明に係るゼリー食品の3-メチル-3-ブテノールの含有率は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.0010質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品の3-メチル-3-ブテノールの含有率は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0037】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対する3-メチル-3-ブテノールの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.010質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対する3-メチル-3-ブテノールの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.020質量%以下である。
【0038】
本発明に係るゼリー食品のチオ酢酸メチルの含有率は、好ましくは0.00005質量%以上、より好ましくは0.00010質量%以上、さらに好ましくは0.00050質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品のチオ酢酸メチルの含有率は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0039】
本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対するチオ酢酸メチルの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品に含まれる油脂の重量に対するチオ酢酸メチルの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.010質量%以下である。
【0040】
・水分
本発明に係るゼリー食品の水分の含有率は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
また、本発明に係るゼリー食品の水分の含有率は、好ましくは95質量%以下である。
水分含有率を上記範囲内とすることにより、みずみずしく、また、好ましい食感のゼリー食品が得られる。また、水分含有率の高く、みずみずしいゼリー食品においては、さっぱりした食感が求められ、油脂特有のにおいや風味、舌触りは好ましくないものであるが、本発明によれば、そのような油脂感をマスキングすることができる。
【0041】
・ゲル化剤
本発明に係るゼリー食品は、ゲル化剤を含む。
本発明に係るゼリー食品中のゲル化剤の含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品中のゲル化剤の含有率は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
ゲル化剤の含有率を上記範囲内とすることにより、好ましい食感のゼリー食品が得られる。
【0042】
ゲル化剤としては、寒天、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、カラギナン、ネイティブジェランガム、タマリンドガム、グアガム、ジェランガム、アルギン酸、ゼラチン及びペクチンから選ばれる1又は2以上を好ましく挙げることができる。
【0043】
本発明に係るゼリー食品は、寒天を含むことが好ましい。
本発明に係るゼリー食品中の寒天の含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品中の寒天の含有率は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
また、本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対する寒天の重量の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
寒天の含有率を上記範囲内とすることにより、油脂を含んでいてもゲル安定性に優れたゼリー食品が得られる。
【0044】
本発明に係るゼリー食品は、キサンタンガムを含んでもよい。
本発明に係るゼリー食品のキサンタンガムの含有率は、好ましくは0.1質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品のキサンタンガムの含有率は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
また、本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対するキサンタンガムの重量の割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対するキサンタンガムの重量の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以上である。
【0045】
本発明に係るゼリー食品は、ローカストビーンガムを含んでもよい。
本発明に係るゼリー食品のローカストビーンガムの含有率は、好ましくは0.1質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品のローカストビーンガムの含有率は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
また、本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対するローカストビーンガムの重量の割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、本発明に係るゼリー食品に含まれる全ゲル化剤の重量に対するローカストビーンガムの重量の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以上である。
【0046】
・その他の原料
本発明に係るゼリー食品はタンパク質を含んでもよい。
本発明に係るゼリー食品のタンパク質の含有率は、好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは、タンパク質を実質的に含まない。
【0047】
本発明に係るゼリー食品の糖質の含有率は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。糖質を上記範囲内とすることで、血糖値の上昇を抑えることができる。
また、本発明に係るゼリー食品の糖質の含有率は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。
【0048】
本発明のゼリー食品は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常ゼリー食品に用いられる他の成分を任意に配合することができる。かかる任意成分としては、例えば、ゼリー食品添加物、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、各種ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤等のほか、食物繊維、安定剤などが挙げられる。
【0049】
本発明に係るゼリー食品のpHは、好ましくは3.0以上である。また、本発明に係るゼリー食品のpHは、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である。
【0050】
・カロリー
本発明に係るゼリー食品のカロリーは、好ましくは200kcal/100g以下、より好ましくは150kcal/100g以下、さらに好ましくは100kcal/100g以下である。また、本発明に係るゼリー食品のカロリーは、好ましくは50kcal/100g以上である。
カロリーを上記下限以上とすることで、効率よくエネルギーを摂取することができる。
【0051】
<ゼリー食品の物性>
・離水率
本発明のゼリー食品の離水率は、好ましくは14質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。また、本発明のゼリー食品の離水率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0052】
離水率は、ゼリー食品(重量Ag)を18メッシュ(目開き:0.85mm)の篩上に静かに置き、1分後の篩下に落ちた離水量B(単位:g)を測定し、次式により算出することができる。
離水率(質量%)=(B/A)×100
なお、パウチ容器入りのゼリー食品の離水率を測定する場合には、パウチ容器を解袋し、ゼリー食品をゲルが崩れないように取り出して、上記と同様に離水量を測定し、離水率を算出することができる。
【0053】
・ゲル強度
本発明に係るゼリー食品のゲル強度は、好ましくは0.1N以上、より好ましくは0.2N以上、より好ましくは0.3N以上である。本発明に係るゼリー食品のゲル強度は、好ましくは0.8N以下、より好ましくは0.6N以下、さらに好ましくは0.4N以下である。
ゲル強度を上記範囲とすることで、良好な食感とすることができる。また、ゲル強度を上限以下とすることで、特にスパウト付きパウチ容器に充填する形態において、容器からの吐出性を良好にすることができる。
【0054】
ゲル強度は、レオメーター(サン科学製:CR-500DX)を用い、直径10mmの円柱型プランジャー、進入速度60mm/分、進入距離20mmの測定条件(圧縮試験)で、ゲルが破断したときの破断強度(N)もしくは、破断しない場合には測定中の最大応力(N)をゲル強度とすることができる。測定は20℃で行うことが好ましい。
【0055】
<ゼリー食品の製造方法>
本発明に係るゼリー食品は、常法によって製造することができるが、ゲル化剤を水に分散させたゲル化剤分散液と、ゲル化剤以外の原料を水に分散させた原料分散液をそれぞれ調製する工程と、前記ゲル化剤分散液と、前記原料分散液とを混合する工程とを含む製造方法によって製造することが好ましい。この製造方法によれば、ゲル化剤を膨潤させることができ、離水率を低減させることができる。
【0056】
また、調製したゼリー原料をスパウト付きパウチ容器に充填する工程を含むことが好ましい。スパウト付きパウチ容器へのゼリー原料の充填操作は、例えば本出願人による特許第3527019号公報や、特開平11-157502号公報などに記載された方法によっておこなうことができる。
【0057】
なお、本発明のゼリー食品の製造方法においては、充填工程後に加熱後冷却するといった方法、調製工程後のゼリー原料を一旦加熱して後、スパウト付きパウチ容器に充填し冷却する方法、加熱を経ない方法の何れの方法を含む。ここで、加熱する場合には、加熱温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
【0058】
本発明は、δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルからなる群より選ばれた1つ以上の香気成分を添加することを含む、ゼリー食品の製造方法でもある。
【0059】
ゼリー食品の原料全体の重量に対する前記香気成分の添加量は、好ましくは0.0001質量%以上0.01質量%以下である。
また、ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対する香気成分の重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上0.1質量%以下である。
【0060】
ゼリー食品の原料全体の重量に対するδ-デカラクトンの添加量は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.0010質量%以上である。また、ゼリー食品の原料全体の重量に対するδ-デカラクトンの添加量は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0061】
ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対するδ-デカラクトンの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.010質量%以上である。また、ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対するδ-デカラクトンの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.020質量%以下である。
【0062】
ゼリー食品の原料全体の重量に対するバニリンの添加量は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.0010質量%以上である。また、ゼリー食品の原料全体の重量に対するバニリンの添加量は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0063】
ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対するバニリンの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.010質量%以上である。また、ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対するバニリンの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.020質量%以下である。
【0064】
ゼリー食品の原料全体の重量に対するγ-ドデカラクトンの添加量は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.0010質量%以上である。また、ゼリー食品の原料全体の重量に対するγ-ドデカラクトンの添加量は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0065】
ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対するγ-ドデカラクトンの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.010質量%以上である。また、ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対するγ-ドデカラクトンの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.020質量%以下である。
【0066】
ゼリー食品の原料全体の重量に対する3-メチル-3-ブテノールの添加量は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.0010質量%以上である。また、ゼリー食品の原料全体の重量に対する3-メチル-3-ブテノールの添加量は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0067】
ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対する3-メチル-3-ブテノールの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.010質量%以上である。また、ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対する3-メチル-3-ブテノールの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.020質量%以下である。
【0068】
ゼリー食品の原料全体の重量に対するチオ酢酸メチルの添加量は、好ましくは0.00005質量%以上、より好ましくは0.00010質量%以上、さらに好ましくは0.00050質量%以上である。また、ゼリー食品の原料全体の重量に対するチオ酢酸メチルの添加量は、好ましくは0.0100質量%以下、より好ましくは0.0050質量%以下、さらに好ましくは0.0010質量%以下である。
【0069】
ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対するチオ酢酸メチルの重量の割合は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上である。また、ゼリー食品の原料に含まれる油脂の重量に対するチオ酢酸メチルの重量の割合は、好ましくは0.100質量%以下、より好ましくは0.050質量%以下、さらに好ましくは0.010質量%以下である。
【0070】
<油脂感のマスキング方法>
本発明は、油脂を含むゼリー食品における、油脂感のマスキング方法でもある。
δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酪酸メチルからなる群より選ばれた1以上の香気成分を含有させることによって、油脂感をマスキングすることができる。
香気成分の種類や量、及び好ましく適用することができるゼリー食品は、前述の通りである。
【0071】
<油脂感のマスキング剤>
本発明は、油脂を含むゼリー食品用の、油脂感のマスキング剤でもある。
香気成分の種類や量、及び好ましく適用することができるゼリー食品は、前述の通りである。
マスキング剤は、実質的に前記香気成分からなっていてもよく、賦形剤等によって製剤化されていてもよい。
【実施例0072】
[試験例1]
表1に記載の原料と、表2に記載の各香気成分とを混合し、ベース液とした。得られたベース液について、油脂感の評価を行った。すなわち、油脂のにおい、後味、及び舌触りを評価した。評価は3名の専門パネルが行い、評価は3名とも同じであった。
評価基準は以下の通りである。
【0073】
・油脂のにおい
◎・・・油脂のにおいが全くしない
○・・・油脂のにおいがしない
△・・・油脂のにおいがややする
×・・・油脂のにおいがする
【0074】
・後味
◎・・・後味が全くくどくない
○・・・後味がくどくない
△・・・後味がややくどい
×・・・後味がくどい
【0075】
・舌触り
◎・・・油脂特有の舌にまとわりつく感覚が全くない
○・・・油脂特有の舌にまとわりつく感覚がない
△・・・油脂特有の舌にまとわりつく感覚がややある
×・・・油脂特有の舌にまとわりつく感覚がある
【0076】
【0077】
【0078】
ジアセチル、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノンを添加したサンプルにおいては、油脂感がマスキングされなかったのに対し、δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルを添加したサンプルにおいてはマスキング効果が確認された。
特に、δ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノール、チオ酢酸メチルにおいて、強いマスキング効果が確認された。
特に、チオ酢酸メチルは、少ない添加量でも強いマスキング効果が確認された。
【0079】
[試験例2]
表3に記載の原料と、表4に記載の各香気成分とを混合し、ベース液とした。得られたベース液を95℃に加熱し、スパウト付きパウチ容器に充填した。充填後、水相で冷却し、24時間室温で放置してゼリー食品を得た。得られたゼリー食品について、油脂感の評価を行った。すなわち、油脂のにおい、後味、及び舌触りを評価した。評価は3名の専門パネルが行い、評価は3名とも同じであった。評価基準は試験例1と同様であるが、舌触りについては特にスパウトから吸い出す時の舌触りについて評価した。
【0080】
【0081】
【0082】
香気成分を含まない比較例3、及び4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノンを添加した比較例4においては、油脂感がマスキングされなかったのに対し、δ-デカラクトン、バニリン、γ-ドデカラクトン、3-メチル-3-ブテノールを添加したサンプルにおいてはマスキング効果が確認された。
特に、δ-デカラクトンにおいては、油脂のにおい、後味、舌触りの全ての評価において、油脂感のマスキング効果が強く確認された。
バニリン、γ-ドデカラクトンにおいては、油脂のにおい、舌触りにおいて、油脂感のマスキング効果が特に強く確認された。
3-メチル3-ブテノールでは、油脂のにおい、後味において、油脂感のマスキング効果が特に強く確認された。