(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000397
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20231225BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20231225BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
A61F13/49 312Z
A61F13/496
A61F13/535 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099152
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大坪 俊文
(72)【発明者】
【氏名】金子 知央
(72)【発明者】
【氏名】長友 翔希
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA11
3B200BB09
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA06
3B200DA01
3B200DA10
3B200DB05
3B200EA24
(57)【要約】
【課題】装着時と着用中の胴回り部の伸長し易さの差を小さくし、ユーザーが吸収性物品に対して締め付けの強い製品である印象を抱いてしまうことを抑制すること。
【解決手段】腹側胴回り部(20)と背側胴回り部(30)の少なくとも一方において、左右方向に伸縮可能な弾性部材(23,33)が配された伸縮領域を有する吸収性物品であって、伸縮領域の少なくとも一部を試験片とし、試験片を、最大伸長時の84%の長さまで、50000mm/分の速度で左右方向に伸長させた時に測定される力を、試験片の上下方向の幅で除した値を第1測定値とし、試験片を、最大伸長時の84%の長さまで、500mm/分の速度で左右方向に伸長させた時に測定される力を、前記幅で除した値を第2測定値とし、第1測定値を第2測定値で除した値が1.2よりも小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、
吸収性コアと、腹側胴回り部と、背側胴回り部とを有し、
前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部の少なくとも一方において、前記左右方向に伸縮可能な弾性部材が配された伸縮領域を有する吸収性物品であって、
前記伸縮領域の少なくとも一部を試験片とし、
前記試験片を、最大伸長時の84%の長さまで、50000mm/分の速度で前記左右方向に伸長させた時に測定される力を、前記試験片の前記上下方向の幅で除した値を、第1測定値とし、
前記試験片を、最大伸長時の84%の長さまで、500mm/分の速度で前記左右方向に伸長させた時に測定される力を、前記幅で除した値を、第2測定値とし、
前記第1測定値を前記第2測定値で除した値が、1.2よりも小さいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記試験片を、50000mm/分の速度で、最大伸長時の84%の長さまで伸長させた後、伸長開始時から15秒経過後に、最大伸長時の66%の長さとなるように、収縮させる試験において、
前記試験片を最大伸長時の66%の長さまで収縮させた時に測定される力を、前記幅で除した値を、第3測定値とし、
前記試験片を最大伸長時の66%の長さまで収縮させた時から585秒経過した時に測定される力を、前記幅で除した値を、第4測定値とし、
前記第4測定値を前記第3測定値で除した値が、0.95以上であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、
前記試験片は、前記サイド接合部によって環状に接合された前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部のうち、前記サイド接合部の前記上下方向の中心よりも上側の部位であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記伸縮領域では、複数の溶着部によって接合された一対のシート間に、前記弾性部材が配置され、
前記弾性部材は、前記左右方向に収縮した状態において、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記一対のシートに対する前記上下方向の位置が規制されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項4に記載の吸収性物品であって、
前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、
前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部の少なくとも一方において、
前記弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて複数配置されており、
前記上下方向において前記サイド接合部と重複する全ての前記弾性部材が、前記左右方向に収縮した状態において、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記一対のシートに対する前記上下方向の位置が規制されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項4に記載の吸収性物品であって、
複数の前記溶着部は、前記上下方向に隣り合い、前記弾性部材を挟んで位置する溶着部対を複数有し、
複数の前記溶着部対は、第1溶着部対と、前記第1溶着部対よりも前記左右方向の中央側に位置する第2溶着部対と、を有し、
前記第1溶着部対よりも前記第2溶着部対の方が、前記弾性部材を挟む前記溶着部の間の前記上下方向の長さが大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項4に記載の吸収性物品であって、
複数の前記溶着部は、前記上下方向に隣り合い、前記弾性部材を挟んで位置する溶着部対を複数有し、
複数の前記溶着部対は、第3溶着部対と、前記第3溶着部対よりも前記左右方向の中央側に位置する第4溶着部対と、を有し、
前記第3溶着部対よりも前記第4溶着部対の方が、前記溶着部の前記左右方向の長さが小さいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項4に記載の吸収性物品であって、
前記伸縮領域は、前記上下方向に間隔を空けて隣り合う第1弾性部材、及び、第2弾性部材を有し、
複数の前記溶着部は、
前記第1弾性部材に隣接する第1溶着部と、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材の間の前記上下方向の中央部に位置する第2溶着部とを有し、
前記第1溶着部の方が、前記第2溶着部に比べて、溶着強度が強いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項4に記載の吸収性物品であって、
前記伸縮領域が前記左右方向に伸長した状態において、
前記上下方向に隣り合い、前記弾性部材を挟み込む2つの前記溶着部の間の前記上下方向の長さは、前記弾性部材の前記上下方向の長さよりも大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、
前記吸収性コアを含む吸収性本体と、外装体と、を備え、
前記吸収性物品の展開状態において、
前記伸縮領域は、前記外装体のシート積層数が、前記弾性部材を挟み込む一対のシートの2層である領域を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、
前記吸収性コアを含む吸収性本体を備え、
前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部の少なくとも一方において、
前記弾性部材を挟み込む一対のシートの少なくとも一方の上端部が、下方に向かって前記上下方向に折り返された折返し部が設けられており、
前記吸収性本体の上端と、前記折返し部の下端との間に、接着剤が配置されていない領域が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記弾性部材の表面と、前記弾性部材を挟み込む一対のシートの内側面との少なくとも一方に、滑剤が付着していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記背側胴回り部を前記試験片としたときの、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値の方が、前記腹側胴回り部を前記試験片としたときの、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値よりも小さいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記腹側胴回り部を前記試験片としたときの、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値の方が、前記背側胴回り部を前記試験片としたときの、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値よりも小さいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、
前記吸収性物品の展開状態において、前記背側胴回り部とその厚さ方向に重なる前記吸収性コアの部位の方が、前記腹側胴回り部とその厚さ方向に重なる前記吸収性コアの部位に比べて、前記吸収性コアの平均坪量が低いことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、引張試験機を用いて、300mm/minの条件で、伸縮性シートを2倍まで伸長させた後に収縮させて得られる応力-伸長率の関係において、2サイクル目の伸長時の1.8倍における応力をAとし、2サイクル目の収縮時の1.8倍における応力をBとしたとき、B/Aの値が0.83以上0.90以下である伸縮性シートが開示されている。この伸縮性シートを吸収性物品の外装体に用いた場合、Aを吸収性物品の拡げ易さの目安とし、Bを吸収性物品のフィット性の目安とし、B/Aの値が1に近いほど、着用動作を行いやすく、装着した際の締め付け感が低減されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際にユーザーが吸収性物品を装着する為に吸収性物品の外装体(胴回り部)を拡げるときには、特許文献1に記載の伸長速度(300mm/min)よりも、はるかに速い速度で拡げられる。そのため、上記Aの値は、装着時の吸収性物品の拡げ易さからのずれが大きい恐れがある。
一方、吸収性物品の着用中は、着用者の呼吸等の動作によって、比較的にゆっくりと、外装体が拡げられる。よって、特許文献1のように収縮時の応力Bだけでなく、ゆっくりと外装体が伸長したときの伸長応力も、着用者が感じる締め付け感に影響しやすい。
吸収性物品において、装着時の胴回り部の拡げ易さ(伸長し易さ)と、着用中の胴回り部の拡げ易さ(伸長し易さ)の差が大きく、ユーザーが装着時に胴回り部を拡げ難いと感じてしまったとする。この場合、ユーザーは、着用中のフィット感よりも締め付けの強い製品である印象を抱いてしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、装着時と着用中の胴回り部の伸長し易さの差を小さくし、ユーザーが吸収性物品に対して締め付けの強い製品である印象を抱いてしまうことを抑制すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、吸収性コアと、腹側胴回り部と、背側胴回り部とを有し、前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部の少なくとも一方において、前記左右方向に伸縮可能な弾性部材が配された伸縮領域を有する吸収性物品であって、前記伸縮領域の少なくとも一部を試験片とし、前記試験片を、最大伸長時の84%の長さまで、50000mm/分の速度で前記左右方向に伸長させた時に測定される力を、前記試験片の前記上下方向の幅で除した値を、第1測定値とし、前記試験片を、最大伸長時の84%の長さまで、500mm/分の速度で前記左右方向に伸長させた時に測定される力を、前記幅で除した値を、第2測定値とし、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値が、1.2よりも小さいことを特徴とする吸収性物品ある。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装着時と着用中の胴回り部の伸長し易さの差を小さくし、ユーザーが吸収性物品に対して締め付けの強い製品である印象を抱いてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】パンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
【
図2】展開かつ伸長した状態のおむつ1を着用者の肌側から見た概略平面図である。
【
図4】腹側胴回り部20に設けられた溶着部列Ra,Rb,Rcの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1は、互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、吸収性コアと、腹側胴回り部と、背側胴回り部とを有し、前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部の少なくとも一方において、前記左右方向に伸縮可能な弾性部材が配された伸縮領域を有する吸収性物品であって、前記伸縮領域の少なくとも一部を試験片とし、前記試験片を、最大伸長時の84%の長さまで、50000mm/分の速度で前記左右方向に伸長させた時に測定される力を、前記試験片の前記上下方向の幅で除した値を、第1測定値とし、前記試験片を、最大伸長時の84%の長さまで、500mm/分の速度で前記左右方向に伸長させた時に測定される力を、前記幅で除した値を、第2測定値とし、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値が、1.2よりも小さいことを特徴とする吸収性物品。
【0010】
態様1によれば、第1測定値を第2測定値で除した値が1.2以上である場合に比べて、高速伸長時の第1測定値を抑えられ、低速伸長時の第2測定値との差を小さくできる。よって、装着時に胴回り部を拡げやすくなり(伸長させやすくなり)、着用中のフィット感(締め付け感)との差を小さくできる。よって、ユーザーが吸収性物品に対して締め付けの強い製品である印象を抱いてしまうことを抑制できる。
【0011】
態様2は、前記試験片を、50000mm/分の速度で、最大伸長時の84%の長さまで伸長させた後、伸長開始時から15秒経過後に、最大伸長時の66%の長さとなるように、収縮させる試験において、前記試験片を最大伸長時の66%の長さまで収縮させた時に測定される力を、前記幅で除した値を、第3測定値とし、前記試験片を最大伸長時の66%の長さまで収縮させた時から585秒経過した時に測定される力を、前記幅で除した値を、第4測定値とし、前記第4測定値を前記第3測定値で除した値が、0.95以上であることを特徴とする、態様1に記載の吸収性物品。
【0012】
態様2によれば、第4測定値を第3測定値で除した値が0.95未満である場合に比べて、胴回り部を大きく伸長させてから収縮させた時の第3測定値を抑えることができ、収縮が安定した第4測定値との差を小さくできる。よって、装着時に着用者に合わせて胴回り部が収縮したとき(すなわち装着直後)の締め付け感を抑えることができる。逆に、着用者に合わせて伸長状態が続いても、フィット感が持続される。
【0013】
態様3は、前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、
前記試験片は、前記サイド接合部によって環状に接合された前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部のうち、前記サイド接合部の前記上下方向の中心よりも上側の部位であることを特徴とする、態様1又は2に記載の吸収性物品。
【0014】
態様3によれば、胴回り部の上半分の部位は、装着時の胴回り部の拡げ易さや締め付け感に影響しやすい。よって、胴回り部の上半分において、第1測定値を第2測定値で除した値が1.2以下であったり、第4測定値を第3測定値で除した値が0.95以上であったりすると、胴回り部がより拡げ易くなり、また、装着直後の締め付け感をより軽減できる。
【0015】
態様4は、前記伸縮領域では、複数の溶着部によって接合された一対のシート間に、前記弾性部材が配置され、前記弾性部材は、前記左右方向に収縮した状態において、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記一対のシートに対する前記上下方向の位置が規制されていることを特徴とする、態様1から3の何れかの記載の吸収性物品。
【0016】
態様4によれば、胴回り部に使用される接着剤の量を軽減できる。よって、胴回り部を高速で伸長させる際に、接着剤の硬さの影響を軽減でき、第1測定値を抑えて、第2測定値との差を小さくできる。
【0017】
態様5は、前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部の少なくとも一方において、前記弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて複数配置されており、前記上下方向において前記サイド接合部と重複する全ての前記弾性部材が、前記左右方向に収縮した状態において、前記上下方向に隣り合う2つの前記溶着部の間に挟み込まれることにより、前記一対のシートに対する前記上下方向の位置が規制されていることを特徴とする、態様4に記載の吸収性物品。
【0018】
態様5によれば、胴回り部に使用される接着剤の量を軽減できる。よって、胴回り部を高速で伸長させる際に、接着剤の硬さの影響を軽減でき、第1測定値を抑えて、第2測定値との差を小さくできる。
【0019】
態様6は、複数の前記溶着部は、前記上下方向に隣り合い、前記弾性部材を挟んで位置する溶着部対を複数有し、複数の前記溶着部対は、第1溶着部対と、前記第1溶着部対よりも前記左右方向の中央側に位置する第2溶着部対と、を有し、前記第1溶着部対よりも前記第2溶着部対の方が、前記弾性部材を挟む前記溶着部の間の前記上下方向の長さが大きいことを特徴とする、態様4又は5に記載の吸収性物品。
【0020】
態様6によれば、第1溶着部対からの弾性部材の抜けを抑制でき、胴回り部の左右方向の広範囲に亘り伸縮性が確保される。第2溶着部対によって、弾性部材の上下方向の位置を規制しつつ、シートの浮きを抑制できる。よって、シートの浮きを接着剤で抑える場合に比べて、胴回り部に使用される接着剤の量を軽減でき、第1測定値を抑えて、第2測定値との差を小さくできる。
【0021】
態様7は、複数の前記溶着部は、前記上下方向に隣り合い、前記弾性部材を挟んで位置する溶着部対を複数有し、複数の前記溶着部対は、第3溶着部対と、前記第3溶着部対よりも前記左右方向の中央側に位置する第4溶着部対と、を有し、前記第3溶着部対よりも前記第4溶着部対の方が、前記溶着部の前記左右方向の長さが小さいことを特徴とする、態様4から6の何れかに記載の吸収性物品。
【0022】
態様7によれば、第3溶着部対からの弾性部材の抜けを抑制でき、胴回り部の左右方向の広範囲に亘り伸縮性が確保される。第4溶着部対では、弾性部材の位置が規制されつつ、弾性部材と溶着部の摩擦力を軽減でき、胴回り部を拡げ易くなる。よって、締め付けの強い製品である印象をユーザーが抱いてしまうことを抑制できる。
【0023】
態様8は、前記伸縮領域は、前記上下方向に間隔を空けて隣り合う第1弾性部材、及び、第2弾性部材を有し、複数の前記溶着部は、前記第1弾性部材に隣接する第1溶着部と、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材の間の前記上下方向の中央部に位置する第2溶着部とを有し、前記第1溶着部の方が、前記第2溶着部に比べて、溶着強度が強いことを特徴とする、態様4から7の何れかに記載の吸収性物品。
【0024】
態様8によれば、剛性の高い第1溶着部によって弾性部材の位置をしっかり規制できる。剛性の低い第2溶着部によって、胴回り部の柔軟性を確保しつつ、シートの浮きを抑制できる。よって、シートの浮きを接着剤で抑える場合に比べて、胴回り部に使用される接着剤の量を軽減でき、第1測定値を抑えて、第2測定値との差を小さくできる。
【0025】
態様9は、前記伸縮領域が前記左右方向に伸長した状態において、前記上下方向に隣り合い、前記弾性部材を挟み込む2つの前記溶着部の間の前記上下方向の長さは、前記弾性部材の前記上下方向の長さよりも大きいことを特徴とする、態様4から8の何れかに記載の吸収性物品。
【0026】
態様9によれば、胴回り部が左右方向に収縮するにしたがって、弾性部材が細くなり、溶着部による拘束が弱まる。そのため、胴回り部を拡げ易くなり、締め付けの強い製品である印象をユーザーが抱いてしまうことを抑制できる。
【0027】
態様10は、前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、前記吸収性コアを含む吸収性本体と、外装体と、を備え、前記吸収性物品の展開状態において、前記伸縮領域は、前記外装体のシート積層数が、前記弾性部材を挟み込む一対のシートの2層である領域を有することを特徴とする、態様1から9の何れかに記載の吸収性物品。
【0028】
態様10によれば、シートが接着剤で積層され接合される領域を小さくでき、胴回り部に使用される接着剤の量を軽減できる。よって、第1測定値を抑えて、第2測定値との差を小さくできる。
【0029】
態様11は、前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、前記吸収性コアを含む吸収性本体を備え、前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部の少なくとも一方において、前記弾性部材を挟み込む一対のシートの少なくとも一方の上端部が、下方に向かって前記上下方向に折り返された折返し部が設けられており、前記吸収性本体の上端と、前記折返し部の下端との間に、接着剤が配置されていない領域が設けられていることを特徴とする、態様1から10の何れかに記載の吸収性物品。
【0030】
態様11によれば、胴回り部に使用される接着剤の量を軽減できる。よって、第1測定値を抑えて、第2測定値との差を小さくできる。
【0031】
態様12は、前記弾性部材の表面と、前記弾性部材を挟み込む一対のシートの内側面との少なくとも一方に、滑剤が付着していることを特徴とする、態様1から11の何れかに記載の吸収性物品。
【0032】
態様12によれば、弾性部材とシートの間に生じる摩擦力を軽減でき、胴回り部を拡げやすくなる。よって、締め付けの強い製品である印象をユーザーが抱いてしまうことを抑制できる。
【0033】
態様13は、前記背側胴回り部を前記試験片としたときの、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値の方が、前記腹側胴回り部を前記試験片としたときの、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値よりも小さいことを特徴とする、態様1から12の何れかに記載の吸収性物品。
【0034】
態様13によれば、高速でも背側胴回り部が伸長しやすく、吸収性物品の装着時に、臀部を被覆できるように背側胴回り部を大きく拡げ易くなる。
【0035】
態様14は、前記腹側胴回り部を前記試験片としたときの、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値の方が、前記背側胴回り部を前記試験片としたときの、前記第1測定値を前記第2測定値で除した値よりも小さいことを特徴とする、態様1から12の何れかに記載の吸収性物品。
【0036】
態様14によれば、高速でも腹側胴回り部が伸長しやすく、吸収性物品の装着時に腹側胴回り部が拡がりやすいので、着用者の足を胴回り開口から通す際に、足(特につま先)の引っ掛かりを抑制できる。
【0037】
態様15は、前記腹側胴回り部と、前記背側胴回り部とが、前記左右方向の両側部において一対のサイド接合部によって接合されたパンツ型の吸収性物品であり、前記吸収性物品の展開状態において、前記背側胴回り部とその厚さ方向に重なる前記吸収性コアの部位の方が、前記腹側胴回り部とその厚さ方向に重なる前記吸収性コアの部位に比べて、前記吸収性コアの平均坪量が低いことを特徴とする、態様1から13の何れかに記載の吸収性物品。
【0038】
態様15によれば、背側胴回り部において吸収性コアの剛性が抑えられ、背側胴回り部を拡げ易くなる。そのため、着用者の臀部を被覆できるほどに背側胴回り部を大きく拡げ易くなる。一方、排尿部に近い腹側胴回り部の吸収性コアの坪量を高めることで、漏れを抑制できる。
【0039】
===実施形態===
以下、本実施形態に係る吸収性物品として、乳幼児用のパンツ型使い捨ておむつを例示する。ただし、吸収性物品は、上記に限らず、腹側胴回り部と背側胴回り部を有するものであればよく、例えば、大人用のパンツ型おむつや、ショーツ型ナプキンや、テープ型おむつ等であってもよい。
【0040】
<<パンツ型使い捨ておむつ1の基本構成>>
図1は、パンツ型使い捨ておむつ1(以下「おむつ」とも呼ぶ)の概略斜視図である。
図2は、展開かつ伸長した状態のおむつ1を着用者の肌側から見た概略平面図である。
図3は、
図2中のA-Aにおける概略断面図である。
【0041】
おむつ1は、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向を有し、胴回り開口BH、及び、一対の脚回り開口LHを有する。上下方向において胴回り開口BH側を上側とし、着用者の股下側となる側を下側とする。前後方向において着用者の腹側となる側を前側とし、背側となる側を後側とする。また、おむつ1は、
図3に示すように資材が積層された厚さ方向を有し、厚さ方向において着用者に接触する側を肌側とし、その逆側を非肌側とする。
【0042】
おむつ1は、吸収性本体10と、一対の胴回り部20,30とを有する。一対の胴回り部20,30は、吸収性本体10の非肌側面に、接着剤等で接合されている。一対の胴回り部20のうち前側に位置するものを腹側胴回り部20とも呼び、後側に位置するものを背側胴回り部30とも呼ぶ。腹側胴回り部20と背側胴回り部30は、左右方向の両側部において、一対のサイド接合部SSによって接合されている。サイド接合部SSによる接合方法は、熱溶着や超音波溶着や接着剤による接合方法等を例示できる。
【0043】
吸収性本体10は、
図3に示すように、吸収性コア11と、吸収性コア11よりも肌側に配された液透過性のトップシート12と、吸収性コア11よりも非肌側に配された液不透過性のバックシート13と、外装シート14を有する。吸収性コア11は、排泄液を吸収して保持するものであればよく、例えばパルプ繊維や高吸収性ポリマー等の液体吸収性素材を所定形状に成形したもの等を例示できる。また、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性シートで覆われていてもよい。
【0044】
図2に示すように、吸収性本体10の左右方向の両側部には、吸収性本体10の長手方向に沿って伸縮する脚回り弾性部材15(例えば糸ゴム)が設けられていてもよい。さらに、脚回り弾性部材15よりも左右方向の内側に、肌側に起立可能な防漏壁部が設けられていてもよい。防漏壁部は、例えば、外装シート14の左右方向の両側部が、トップシート12の肌側面上に位置するように左右方向の内側に折り返されて、その折り返された部位に長手方向に伸縮する防漏壁弾性部材16(例えば糸ゴム)が設けられることにより形成される。
【0045】
本実施形態では、サイド接合部SSと上下方向に重複する部位を胴回り部20,30とし、腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は、平面視長方形状の部位である。背側胴回り部30の股下側には、略台形形状である延出部30Eが設けられている。延出部30Eによって、着用者の臀部を被覆できる。以下の説明では、背側胴回り部30と延出部30Eを合わせて背側外装部30,30Eとも称す。ただし、上記に限定されず、例えば、背側に延出部30Eを有さない構成であってもよいし、腹側胴回り部20から股下側に延出する部位を有する構成であってもよい。
【0046】
腹側胴回り部20及び背側外装部30,30Eは、それぞれ、肌側シート21,31と、非肌側シート22,32と、左右方向に伸縮可能な胴回り弾性部材23,33(例えば糸ゴム)を有する。複数の胴回り弾性部材23,33は、肌側シート21,31と非肌側シート22,32の間において、上下方向に間隔を空けて配置されている。
【0047】
肌側シート21,31及び非肌側シート22,32としては、柔軟なシート部材が好ましく、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等を例示できる。不織布の構成繊維としては、熱可塑性樹脂の代表例のポリプロピレン(PP)の単独繊維に限定されず、ポリエチレン(PE)などの他の熱可塑性樹脂の単独繊維を用いてもよいし、更に、PE及びPP等の鞘芯構造を有した複合繊維を用いてもよい。
【0048】
以上、おむつ1の基本構成を説明したが、上記のおむつ1の構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態のおむつ1では、腹側胴回り部20と背側外装部30,30Eとが別部材で構成され、股下部において吸収性本体10の非肌側面が露出している。これに限らず、例えば、腹側胴回り部20と背側外装部30,30Eとそれらを繋ぐ股下部の3部材から構成される外装部材を有するおむつであってもよいし、腹側胴回り部20から背側胴回り部30に亘り連続する1部材で構成される外装部材を有するおむつであってもよい。
【0049】
<<胴回り部20,30について>>
図4は、腹側胴回り部20に設けられた溶着部列Ra,Rb,Rcの説明図である。
図5A及び
図5Bは、胴回り弾性部材23の取り付け機能の説明図である。
図6A~
図6Cは、溶着部列Ra,Rb,Rcの一部を拡大した図である。
【0050】
図4等の図面では、腹側胴回り部20が左右方向に伸長したときの状態を示す。胴回り部20,30(伸縮領域)が左右方向に伸長した状態とは、胴回り部20,30に生じていた皺が実質的に視認されなくなる程に伸長させた状態であり、胴回り部20,30を構成する各部材(例えば肌側シート21等)の寸法が、その部材単体の寸法(すなわち弾性部材の伸縮性が発現しないときの寸法)と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態である。
【0051】
<胴回り弾性部材23の位置規制について>
腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は、複数の溶着部50によって接合された肌側シート21,31及び非肌側シート22,32の間(一対のシート間)に、左右方向に伸縮可能な胴回り弾性部材23,33(弾性部材)が上下方向に間隔を空けて複数配置された伸縮性シートから構成される。肌側シート21,31及び非肌側シート22,32は、上下方向及び左右方向に離散的に配された複数の溶着部50で間欠に接合されている。溶着部50の形成方法は、超音波溶着や熱溶着等の周知の溶着方法を例示できる。
【0052】
溶着部50が接合する一対のシートは、本実施形態の肌側シート21,31及び非肌側シート22,32のように2枚の別シートであってもよいし、1枚のシートが折り返されて2層となったシートであってもよい。また、溶着部50は、胴回り弾性部材23,33を挟む一対のシートのみを接合するに限らず、一対のシートに積層されたシートも合わせて3層以上のシートを接合してもよい。
【0053】
腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は概ね同じ構成であるため、以下では、両者を代表して腹側胴回り部20について説明する。
腹側胴回り部20は、複数の溶着部50が上下方向に並ぶ溶着部列Ra,Rb,Rcを複数有する。複数の溶着部列Ra,Rb,Rcは、左右方向に間隔を空けて配置されている。
図5Aに示すように、胴回り弾性部材23が通るスペース(非溶着部)の上下方向の位置が揃っており、胴回り弾性部材23を左右方向に沿って配することができる。ただし、左右方向に隣り合う非溶着部の上下方向の位置がずれていてもよく、この場合にも、腹側胴回り部20に左右方向の伸縮性を付与できる。
【0054】
図5Aに示すように、上下方向に隣り合い、胴回り弾性部材23を挟み込む2つの溶着部50を「溶着部対51」とも呼ぶ。溶着部対51を成す上側の溶着部50と下側の溶着部50は、上下方向に間隔GHを空けて並んでいる。その間隔GHの大きさは、腹側胴回り部20を左右方向に最大に伸長した状態での胴回り弾性部材23の外径d1と同寸又はそれよりも若干大きい寸法に設定されている(GH≧d1)。
【0055】
ただし、胴回り弾性部材23は左右方向に収縮するにしたがって太くなる。そこで、
図5Bに示すように、胴回り弾性部材23が左右方向に収縮した状態(つまり腹側胴回り部20の自然状態)での、胴回り弾性部材23の最大外形d2よりも、溶着部対51の間隔GHを小さくする(GH<d2)。そうすることで、左右方向に収縮した状態の胴回り弾性部材23は、溶着部対51の間に挟み込まれる(上下方向の拡大が規制される)。よって、肌側シート21及び非肌側シート22に対する胴回り弾性部材23の左右方向と上下方向の位置(動き)が規制される。
【0056】
したがって、接着剤を用いて胴回り弾性部材23を肌側シート21及び非肌側シート22に固定しなくても、胴回り弾性部材23の位置ずれを抑制でき、腹側胴回り部20の伸縮性が維持される。つまり、溶着部50を利用することで、接着剤を使用せずに、或いは接着剤の使用量を減らして、胴回り弾性部材23を肌側シート21及び非肌側シート22に取り付けることができる。ゆえに、接着剤の硬化による腹側胴回り部20(伸縮性シート40)の柔軟性の低下を抑制できる。また、接着剤の硬化による胴回り弾性部材23の弾性特性の低下を抑制できる。
【0057】
また、腹側胴回り部20では、サイド接合部SSにおいて胴回り弾性部材23が肌側シート21及び非肌側シート22に固定されている。詳しくは、おむつ1の製造時において、伸長状態の胴回り弾性部材23が肌側シート21と非肌側シート22の間に挟み込まれている状態で、サイド接合部SSが形成され、胴回り弾性部材23の端部はサイド接合部SSに固定されている。そのため、おむつ1の着用時に腹側胴回り部20が大きく伸長した場合にも、溶着部対51の間から胴回り弾性部材23が抜けてしまうことを防止でき、腹側胴回り部20の伸縮性が維持される。
【0058】
また、溶着部対51の間隔GHと胴回り弾性部材23の外径d1,d2の関係は上記に限定されない。例えば、胴回り弾性部材23が切れない程度に、胴回り弾性部材23の一部が溶着部50と重なるようにしてもよい。この場合も、胴回り弾性部材23は、左右方向に収縮した状態において、溶着部対51の間に挟み込まれ、肌側シート21及び非肌側シート22に対する左右方向と上下方向の位置が規制される。
【0059】
また、腹側胴回り部20に配される全ての胴回り弾性部材23(弾性部材)が溶着部対51に挟み込まれて位置が規制されるに限らない。一部の胴回り弾性部材23が溶着部対51によって位置が規制され、別の一部の胴回り弾性部材23が接着剤で肌側シート21及び非肌側シート22に固定されていてもよい。
【0060】
<<胴回り部20,30の伸長し易さについて>>
図7A及び
図7Bは、胴回り部20,30の引張試験の説明図である。
図8A、
図8B、
図9A、及び
図9Bは、引張試験の結果を示す図である。
【0061】
おむつ1は、腹側胴回り部20と背側胴回り部30において、左右方向に伸縮可能な胴回り弾性部材23,33(弾性部材)が配された伸縮領域を有する。パンツ型のおむつ1のユーザー(保護者や保育者等)は、着用者(子ども)におむつ1を装着させる際に、先ず、脚回り開口LH又は胴回り開口BHから両手を入れて、環状の胴回り部20,30を左右方向に素早く拡げる。その後、着用者の脚を胴回り開口BHから脚回り開口LHに向かって通し、おむつ1を引き上げて装着が完了する。
【0062】
このとき、ユーザーが胴回り部20,30を左右方向に拡げる速度は速く、1秒かからない位の速度で拡げられる。一方、おむつ1の着用中は、着用者の呼吸等の動作によって、比較的にゆっくりと、胴回り部20,30が拡げられる。
【0063】
本出願人が鋭意研究した結果、例えば、胴回り弾性部材の長手方向に連続してホットメルト接着剤等の接着剤が塗布されて、胴回り弾性部材がシートに固定されている一般的な胴回り部について、次のことが分かった。それは、高速で胴回り部を伸長させたときの方が、低速で胴回り部を伸長させたときに比べて、伸長応力(伸長時の胴回り部の抵抗力)が高く、その差が大きいことが分かった。
【0064】
これは、胴回り部の収縮状態で硬化していた接着剤が影響していると考えられる。低速で胴回り部を拡げる場合には、硬化した樹脂を徐々に変形させることができるが、高速で胴回り部を拡げる場合には、硬化した樹脂を一気に変形させる必要があり、接着剤の抵抗力が胴回り部の伸長応力(拡げ難さ)に影響すると考えられる。特に、おむつは、収縮した状態で長時間に亘りパッケージ内に梱包されて流通するので、接着剤の硬化度が高まりやすい。そのため、おむつの装着の為にパッケージから取り出したおむつの胴回り部を最初に拡げる際には、接着剤の硬化の影響をより受けやすいと考えられる。おむつ1の装着時に胴回り部の拡げ難さ(高速伸長時の高い応力)を感じたユーザーは、実際の着用中の胴回り部のフィット感(低速伸長時の低い応力)以上に、締め付けの強い製品である印象を抱いてしまう恐れがある。
【0065】
そこで、おむつ1では、高速で胴回り部20,30を伸長させたときの伸長応力と、低速で胴回り部20,30を伸長させたときの伸長応力の差を、出来る限り小さくする。具体的には、以下とする。
まず、胴回り部20,30が有する伸縮領域の一部を試験片Tとする。
そして、
図7Aや
図7Bに示すように、試験片Tを、最大伸長時の84%の長さまで、50000mm/分の速度で左右方向に伸長させた時に測定される力(N)を、試験片Tの上下方向の幅(mm)で除した値を、第1測定値A1(N/mm)とする。
また、試験片Tを、最大伸長時の84%の長さまで、500mm/分の速度で左右方向に伸長させた時に測定される力(N)を、試験片の上下方向の幅(mm)で除した値を、第2測定値A2(N/mm)とする。
この第1測定値A1を第2測定値A2で除した値が1.2よりも小さい。
A1(高速伸長時の応力)/A2(低速伸長時の応力)<1.2となっている。
【0066】
高速伸長時の応力(第1測定値A1)は、ユーザーが、おむつ1の装着時に胴回り部20,30を素早く拡げる際に、ユーザーが胴回り部20,30から感じる抵抗力に相当する。一方、低速伸長時の応力(第2測定値A2)は、着用者が、呼吸等のゆっくりな動作を行う際に、胴回り部20,30から感じる抵抗力(フィット感)に相当する。
【0067】
そのため、本実施形態のおむつ1によれば、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値が1.2以上である場合に比べて、高速伸長時の応力(第1測定値A1)が抑えられ、低速伸長時の応力(第2測定値A2)との差が小さくなる。つまり、おむつ1の装着時の胴回り部20,30の伸長し易さと、着用中の胴回り部20,30の伸長し易さの差を小さくできる。ゆえに、おむつ1の装着の為に胴回り部20,30を素早く拡げる際に、小さな力で拡げることができ、おむつ1の装着し易さが高まる。また、着用中の胴回り部20,30のフィット感(低速伸長時の低い応力)以上に締め付けの強い製品である印象を、ユーザーが抱いてしまうことを抑制できる。
【0068】
特に、本実施形態の乳幼児用おむつ1や、介護用おむつの場合、ユーザー(保護者や介護者等)は、おむつ1を実際には着用しないので、装着時の胴回り部20,30の拡げ易さで、着用中の締め付け感を判断しやすい。その場合であっても、本実施形態のおむつ1によれば、胴回り部20,30が高速でも拡げ易いので、締め付けの強い製品である印象をユーザーが抱いてしまうことを抑制できる。
【0069】
また、高速伸長時の応力が抑えられるということは、着用者が素早く動いた場合にも、胴回り部20,30が伸長しやすく(追従性が良く)、着用者は動きやすくなる。また、逆に、おむつ1では、低速伸長時の応力が低過ぎないため、着用中に適度なフィット感が得られる。
【0070】
また、胴回り部20,30の伸縮領域では、複数の溶着部50によって接合された一対のシート(21と22,31と32)の間に、胴回り弾性部材23,33が配置される。胴回り弾性部材23,33は、左右方向に収縮した状態において、
図5Bに示すように、上下方向に隣り合う2つの溶着部50の間に挟み込まれることにより、一対のシートに対する上下方向の位置が規制されている。
【0071】
そのため、シートに対する胴回り弾性部材23,33の位置を規制するために使用する接着剤の量を軽減できる。よって、胴回り部20,30を高速で伸長させる場合にも、接着剤の硬化の影響を軽減でき、高速伸長時の応力(第1測定値A1)を抑えて、低速伸長時の応力(第2測定値A2)との差を小さくすることができる。
【0072】
ただし、上記に限定されることなく、溶着部50を用いずに、接着剤を用いて、胴回り弾性部材23,33をシートに取り付けてもよい。その場合、接着剤の硬化が高速伸長時に及ぼす影響が軽減するように、接着剤の塗布パターンや塗布量等を調整し、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値が1.2よりも小さくなるようにするとよい。
【0073】
また、本実施形態では、腹側胴回り部20と背側胴回り部30の両方において、胴回り弾性部材23,33が溶着部50によってシートに取り付けられているが、一方の胴回り部において、胴回り弾性部材が接着剤によってシートに取り付けられていてもよい。また、背側胴回り部30のようにサイド接合部SSよりも下方に延出部30Eを有し、
図2とは異なるが、延出部30Eにも左右方向に沿う弾性部材が配置される場合、その弾性部材は溶着部50によってシートに取り付けられていても、接着剤によってシートに取り付けられていてもよい。
【0074】
また、
図7Aや
図7Bに示すように、試験片Tを、50000mm/分の速度で、最大伸長時の84%の長さまで伸長させた後、伸長開始時から15秒経過後に、最大伸長時の66%の長さとなるように、収縮させる試験において、以下であるとよい。
先ず、試験片Tを最大伸長時の66%の長さまで収縮させた時に測定される力(N)を、試験片Tの上下方向の幅(mm)で除した値を、第3測定値A3(N/mm)とする。
また、試験片Tを最大伸長時の66%の長さまで収縮させた時から585秒経過した時、(すなわち試験開始から600秒経過した時)に測定される力(N)を、試験片Tの上下方向の幅(mm)で除した値を、第4測定値(N/mm)とする。
この第4測定値A4を第3測定値A3で除した値が0.95以上であることが好ましい。A4(収縮安定時の応力)/A3(収縮直後の応力)≧0.95となっていることが好ましい。
【0075】
おむつ1の装着時に、ユーザーは胴回り部20,30を大きく拡げ(例えば最大伸長の84%程度)、その後、胴回り部20,30は着用者の胴回りに合わせて収縮する(例えば最大伸長の66%程度)。胴回り部20,30が収縮した直後は、比較的に大きな締め付け力(胴回り部20,30の戻り時の応力、第3測定値A3)が作用する。この締め付け力は、時間の経過と共に下がり安定する。
【0076】
本実施形態のおむつ1によれば、第4測定値A4を第3測定値A3で除した値が0.95よりも小さい場合に比べて、胴回り部20,30の収縮直後の第3測定値A3が抑えられ、第4測定値A4に近付く。よって、おむつ1の胴回り部20,30が着用者にフィットした直後の強い締め付け力が軽減され、装着直後の違和感を軽減できる。逆に、着用者に合わせて胴回り部20,30の伸長状態が継続されても、第4測定値A4が低下し過ぎず、フィット性が維持されるともいえる。ただし、上記に限定されず、第4測定値A4を第3測定値A3で除した値が0.95未満であってもよい。
【0077】
また、試験片Tは、
図7Aに示すように、サイド接合部SSによって環状に接合された腹側胴回り部20と背側胴回り部30の全域にするとよい。その場合に、上記の測定値の関係(A1/A2<1.2、A4/A3≧0.95)が成立していることで、実際のおむつ1の装着時と着用中に近い状態での応力差が小さくなっているといえ、また、装着直後の締め付け感が抑えられるといえる。
【0078】
さらに、試験片Tを、
図7Bに示すように、サイド接合部SSによって環状に接合された腹側胴回り部20と背側胴回り部30のうち、サイド接合部SSの上下方向の中心CLよりも上側の部位Au(
図2参照)とした場合にも、上記の測定値の関係(A1/A2<1.2、A4/A3≧0.95)が成立しているとよい。
【0079】
胴回り部20,30のうち上側の部位Auは、下側の部位に比べて、胴回り部20,30の拡げ易さや締め付け感に影響しやすい。そのため、胴回り部20,30の上側の部位Auにおいて、高速伸長時の応力(A1)を抑えて、低速伸長時の応力(A2)との差を小さくすることで、胴回り部20,30をより拡げ易くなり、締め付けの強い製品である印象を軽減できる。また、胴回り部20,30の装着直後の締め付け感を軽減できる。
【0080】
また、環状の胴回り部20,30を試験片Tとするに限らず、サイド接合部SSで分離した腹側胴回り部20を試験片Tとしたり、背側胴回り部30を試験片Tとしたりしてもよい。
その場合、背側胴回り部30を試験片Tとしたときの、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値の方が、腹側胴回り部20を試験片Tとしたときの、第1測定値A1を前記第2測定値で除した値よりも小さいとよい。つまり、背側胴回り部30の方が、高速伸長時の応力(A1)が抑えられ、低速伸長時の応力(A2)との差が小さいとよい。そうすることで、高速でも背側胴回り部30が伸長しやすく、おむつ1の装着時に、臀部を被覆できるように背側胴回り部30を大きく拡げることができる。
【0081】
逆に、腹側胴回り部20を試験片Tとしたときの、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値の方が、背側胴回り部30を試験片Tとしたときの、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値よりも小さくてもよい。つまり、腹側胴回り部20の方が、高速伸長時の応力(A1)が抑えられ、低速伸長時の応力(A2)との差が小さくてもよい。その場合、高速でも腹側胴回り部20が伸長しやすく、おむつ1の装着時に腹側胴回り部20が拡がりやすいので、着用者の足を胴回り開口BHから通す際に、足(特につま先)の引っ掛かりを抑制できる。
【0082】
また、吸収性物品は、パンツ型のおむつ1に限らず、テープ型のおむつであってもよい。その場合、例えば、テープ型のおむつの後側胴周り部(製品長を3分割したときの背側の領域)において、左右方向の中央部に伸縮領域(所謂背側ギャザー部)が設けられていてもよいし、左右方向の端部に(本体部から左右方向に突出して)伸縮性のファスニングテープ(伸縮領域)が設けられていてもよい。これらの伸縮領域を試験片Tとした場合にも、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値が1.2よりも小さいとする。そうすることで、テープ型のおむつを装着する際に、ファスニングテープや背側の本体部が伸長しやすく、ユーザーが締め付けの強い製品である印象を抱いてしまうことを抑制できる。
【0083】
<第1測定値A1及び第2測定値A2の測定方法>
次に、第1測定値A1及び第2測定値A2の測定方法について説明する。
引張試験機(例えば、島津製作所(株)製、オートグラフ、型式AGS-1kNG、又はそれと同等のもの)を利用して測定する。試験環境は、室温23℃±2℃、湿度50%±5%とする。
【0084】
(1)まず、パッケージから取り出した直後のおむつ1を2個準備する。つまり、同じ構成の試験片Tを備えるおむつ1を2個準備する。例えば、
図7Aでは、環状に繋がった腹側胴回り部20と背側胴回り部30の全域を試験片Tとする。よって、試験片Tの上下方向の幅は、サイド接合部SSの上下方向の長さWである。
【0085】
図7Bでは、環状に繋がった腹側胴回り部20と背側胴回り部30の上半分の領域Au)を試験片Tとする。よって、試験片Tの上下方向の幅は、サイド接合部SSの上下方向の半分の長さW/2である。この場合、胴回り部20,30の下半分の伸縮性が影響しないように、
図2に示す切り込み線C1にて胴回り部20,30の一部を切断する。切込み線C1は、胴回り部20,30の上下方向の中心CLにおいて、胴回り部20,30の左右方向の側端から吸収性本体10の側部まで、左右方向に延びる線である。
【0086】
上記のように、試験片Tとは、胴回り部20,30が有する伸縮領域の一部、又は全部を含む部位とする。試験片Tを引張試験機60の治具61,61にセットするが、試験片T以外の部位(例えば吸収性本体10や胴回り部20,30の下半分)も試験片Tに繋がっている状態で試験を行う。そのため、胴回り弾性部材23,33以外の、左右方向の伸縮性に影響する弾性部材(例えば、図示しないが、脚回り開口LHに沿って上下方向に対して斜めに配置された脚回り弾性部材等)は切断しておく。
【0087】
(2)次に、おむつ1のサイズに応じて、引張試験機60の治具61,62の間隔を調整する。上側の治具61の上端から下側の治具62の下端までの長さを治具間長さL2とする。本実施形態では、胴回り部20,30の最大伸長時の左右方向の寸法(例:L1=345mm)に対して、胴回り部20、30が41%程度(例:38%~45%)伸長した状態となるように、初期の治具間距離L2(例:140mm)を設定する。
【0088】
(3)次に、おむつ1の試験片Tの部位を、引張試験機60の治具61,62にセットする。引張試験機60の引張方向と、試験片Tの伸縮方向(おむつ1の左右方向)を合わせる。試験片Tが環状の胴回り部20,30である場合、上側の治具61の上端と、下側の治具62の下端に、サイド接合部SSが位置するようにセットする。試験片Tが環状でない場合、クリップ型の治具で試験片T(例:腹側胴回り部20と背側胴回り部30の一方や、テープ側おむつの背側胴回り部)を挟み、展開状態の吸収性物品全体を引張試験機にセットする。その場合、治具の幅方向(引張方向に直交する方向)の中心と、試験片Tの伸縮方向に直交する方向(おむつ1の上下方向)の中心が揃うようにセットする。
【0089】
(4)次に、試験片Tを、最大伸長時の84%の長さまで(例:L2=345×0.84=290mm)、50000mm/分の速度で伸長させ、84%まで伸長させた時に測定される力(N)を取得する。その力を、試験片Tの幅(mm)で除した値を、第1測定値A1(N/mm)とする。
【0090】
本実施形態で使用した引張試験機60は、50000mm/分の速度に対応していない為、手動で一方の治具62を引っ張った。具体的には、150mm(=290mm-140mm)の距離を0.18秒程度で引っ張った。手動で行う場合、50000mm/分の速度で厳密に伸長させるに限らず、±10000mm/分程度の速度誤差は許容する。ただし、治具62を手動で引っ張るに限らず、高速に対応する引張試験機を用いて測定してもよい。
【0091】
(5)次に、高速で伸長した試験片T(おむつ1)を治具61,62から取り外し、もう一方の試験片T(おむつ1)を治具61,62に同様にセットする。試験片Tを、最大伸長時の84%の長さまで(例:L2=290mm)、500mm/分の速度で伸長させる。手動ではなく、引張試験機60によって機械的に伸長させる。そして、84%まで伸長させた時に測定される力(N)を取得する。その力を、試験片Tの幅(mm)で除した値を、第2測定値A2(N/mm)とする。
【0092】
(6)最後に、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値を算出し(小数点第3位を四捨五入)、その値が1.2よりも小さいか否かを確認する。なお、同じ幅の試験片Tを、速度を変えて伸長させるので、単位幅当たりの力(N/mm)に換算しなくてもよい。つまり、高速伸長時に引張試験機60から取得される力(N)を、低速伸長時に引張試験機60から取得される力(N)で除した値を、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値としてもよい。
【0093】
<第3測定値A3及び第4測定値A4の測定方法>
次に、第3測定値A3及び第4測定値A4の測定方法について説明する。
(1)試験片Tを治具61,62にセットし、試験片Tを、最大伸長時の84%の長さまで、50000mm/分の速度で伸長させるところまでは、上記の測定方法と同じである。
【0094】
(2)その後、試験開始から15秒経過した時に、試験片Tが最大伸長時の66%の長さ(例:L2=228mm=345×0.66)となるように、試験片Tを収縮させる。試験片Tは伸長時と同様に高速(50000mm/分)で収縮させる。引張試験機60が高速に対応していない場合には、手動で治具62を動かす。具体的には、62mm(=290-228)を0.07秒程度で動かすことになるが、手動で行う場合、50000mm/分の速度で厳密に収縮させるに限らない。そして、試験片Tが最大伸長時の66%の長さまで収縮した時に測定される力(N)を取得する。その力を試験片Tの幅(mm)で除した値を、第3測定値A3(N/mm)とする。
【0095】
(3)その後、試験片Tが最大伸長時の66%の長さで伸長している状態を維持する。試験開始から600秒経過した時(すなわち試験片Tが84%から66%の長さに収縮してから585秒経過した時)に測定される力(N)を取得する。その力を試験片Tの幅(mm)で除した値を、第4測定値A4(N/mm)とする。
【0096】
(4)そして、第4測定値A4を第3測定値A3で除した値を算出し(小数点第3位を四捨五入)、その値が0.95以上であるか否かを確認する。なお、同じ幅の試験片Tの測定値の変化であるため、単位幅当たりの力(N/mm)に換算しなくてもよい。つまり、収縮してから585秒後に引張試験機60から取得される力(N)を、収縮直後に引張試験機60から取得される力(N)で除した値を、第4測定値A4を第3測定値A3で除した値としてもよい。
【0097】
<実施例>
実際に比較例と実施例のおむつを製造し、上記の測定を行った。比較例と実施例のおむつは、共に、
図1~
図3に示す構成のパンツ型のおむつである。胴回り部20,30の最大伸長時の左右方向の長さL1を345mm、上下方向の長さWを127mmとした。胴回り弾性部材23,33の伸長倍率を2.8倍とし、太さを470dtexとした。腹側胴回り部20が有する胴回り弾性部材23の数を9本、背側胴回り部30が有する胴回り弾性部材33の数を10本とした。
【0098】
比較例のおむつは、胴回り弾性部材23,33の全周に亘り、かつ、長手方向に連続してホットメルト接着剤を塗布し、肌側シート21,22と非肌側シート31,32の間に伸長状態で取り付けた。
【0099】
実施例のおむつでは、
図4~
図6Cに示すように、溶着部50を用いて、胴回り弾性部材23,33を肌側シート21,22と非肌側シート31,32の間に取り付けた。胴回り部20,30には、3種類の溶着部列Ra~Rcを左右方向に5mm間隔で形成した。
図6A等に示すように、溶着部列Ra~Rcにおいて、胴回り弾性部材23,33が位置する領域以外は、上下方向に連続して溶着部50を形成した。
【0100】
第1溶着部列Ra(
図6A)は、左右方向の長さWaが2.5mmである溶着部50が上下方向に沿って直線状に並んでいる。胴回り弾性部材23,33が位置する領域の上下方向の長さGHを0.28mmとした。
図4に示すように、第1溶着部列Raは、サイド接合部SSの直ぐ内側と、吸収性本体10の直ぐ外側に、2本ずつ形成した。
【0101】
第2溶着部列Rb(
図6B)は、左右方向の長さWbが0.5mmである溶着部50が左右方向に若干蛇行しながら上下方向に並んでいる。胴回り弾性部材23,33が位置する領域の上下方向の長さGHは、第1溶着部列Raと同じ0.28mmとした。第2溶着部列Rbは、吸収性本体10よりも外側に、第1溶着部列Raの間に形成した。
【0102】
第3溶着部列Rc(
図6C)は、左右方向の長さWcが0.5mmである溶着部50が上下方向に沿って直線状に並んでいる。胴回り弾性部材23,33が位置する領域の上下方向の長さGHcは広く、0.6mmとした。第3溶着部列Rcは、吸収性本体10と重複する領域に形成した。
【0103】
なお、
図6A~
図6Cに例示する溶着部列Ra~Rcでは、複数の溶着部50が上下方向に間隔を空けて並んでいる。ただし、実施例として作成したおむつでは、胴回り弾性部材23,33が位置するスペース以外において、上下方向に連続した溶着部50を形成した。
【0104】
比較例と実施例のおむつに関して、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値を取得した結果を、
図8A及び
図8Bに示す。
図8Aは、環状に繋がった胴回り部20,30の全域を試験片Tとした結果である。比較例のおむつでは、高速伸長時に測定された力(a1)が14.739(N)であり、低速伸長時に測定された力(a2)が10.761(N)であった。よって、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値(a1/a2)は1.37であり、1.2よりも大きかった。
【0105】
一方、実施例のおむつでは、高速伸長時に測定された力(a1)が10.133(N)であり、低速伸長時に測定された力(a2)が9.260(N)であった。よって、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値(a1/a2)は1.09であり、1.2よりも小さかった。
【0106】
図8Bは、環状に繋がった胴回り部20,30の上半分を試験片Tとした結果である。比較例のおむつでは、高速伸長時に測定された力(a1)が6.863(N)であり、低速伸長時に測定された力(a2)が5.281(N)であった。よって、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値(a1/a2)は1.30であり、1.2よりも大きかった。
【0107】
一方、実施例のおむつでは、高速伸長時に測定された力(a1)が5.516(N)であり、低速伸長時に測定された力(a2)が4.852(N)であった。よって、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値(a1/a2)は1.14であり、1.2よりも小さかった。
【0108】
以上の結果から、溶着部50で胴回り弾性部材23,33を取り付けた実施例では、多くの接着剤で胴回り弾性部材23,33を取り付けた比較例に比べて、高速伸長時の応力(A1,a1)が抑えられ、低速伸長時の応力(A2,a2)との差を小さくできることが分かった。よって、おむつの装着時に胴回り部20,30を素早く拡げ易く、締め付け感の強い製品である印象を軽減できる。
【0109】
さらに、比較例と実施例のおむつの装着性について、被験者(21名)に評価をしてもらった。その結果、実施例の方が比較例のおむつに比べて、非常にウェストの伸びがよい、又は、ややウェストの伸びがよいと評価した人の割合が69%であった。実施例の方が比較例のおむつに比べて、非常に履かせ易い、又は、やや履かせ易いと評価した人の割合が71%であった。また、実施例の方が比較例のおむつに比べて、非常に身体を締め付けない、又は、やや身体を締め付けないと評価した人の割合が69%であった。以上の結果から、第1測定値A1を第2測定値A2で除した値が1.2よりも小さいおむつでは、ウェストの伸びがよく、おむつを履かせやすく、身体を締め付けない印象が得られることが分かった。
【0110】
また、比較例と実施例のおむつに関して、第4測定値A4を第3測定値A3で除した値を取得した結果を、
図9A及び
図9Bに示す。
図9Aは、環状の胴回り部20,30の全域を試験片Tとした結果を示す。比較例のおむつでは、66%に収縮した直後の測定値が4.482Nであり、試験開始から600秒後の測定値が4.192Nであった。よって、第4測定値A4を第3測定値A3で除した値(a4/a3)は0.94となり、0.95よりも小さかった。一方、実施例のおむつでは、収縮直後の測定値が3.248Nであり、600秒後の測定値が3.082Nであった。よって、第4測定値A4を第3測定値A3で除した値(a4/a3)は0.95となった。
【0111】
図9Bは、胴回り部20,30の上半分を試験片Tとした結果を示す。比較例のおむつ1では、収縮直後の測定値が2.228Nであり、600秒後の測定値が2.068Nであり、第4測定値A4を第3測定値A3(a4/a3)で除した値は0.93となり、0.95よりも小さかった。一方、実施例のおむつでは、収縮直後の測定値が1.845Nであり、600秒後の測定値が1.747Nであり、第4測定値A4を第3測定値A3で除した値(a4/a3)は0.95となった。
【0112】
以上の結果から、溶着部50で胴回り弾性部材23,33を取り付けた実施例では、66%に収縮した直後の応力(A3,a3)も低く、収縮が安定した時の応力(A4,a4)との差も小さいことが分かった。そのため、実施例のおむつでは、装着の為に胴回り部20、30が大きく拡げられた後、着用者に合わせて胴回り部20,30が収縮した直後に、強い締め付け感を着用者に付与してしまうことを抑制できる。また、着用中の締め付け感(フィット感)の変化が小さく、着用中の違和感を軽減できる。
【0113】
<その他の特徴部>
腹側胴回り部20と背側胴回り部30の少なくとも一方において、以下であるとよい。
図4に示すように、胴回り部20,30において、胴回り弾性部材23,33が上下方向に間隔を空けて複数配置されている場合、上下方向においてサイド接合部SSと重複する全ての胴回り弾性部材23,33が、溶着部50によって位置規制されているとよい。つまり、胴回り部20,30に設けられる全ての胴回り弾性部材23,33が、左右方向に収縮した状態において、上下方向に隣り合う2つの溶着部50の間に挟み込まれることにより、一対のシート(21と22、31と32)に対する上下方向の位置が規制されていることが好ましい。
【0114】
そうすることで、胴回り部20,30に配置される接着剤の量をより軽減でき、胴回り部20,30を高速で伸長させる場合にも、接着剤の硬化の影響を受け難くなる。そのため、高速伸長時の応力が抑えられ、低速伸長時の応力との差を小さくできる。よって、胴回り部20,30を素早く拡げやすく、装着性が良く、締め付けの強い製品であるという印象をユーザーが抱いてしまうことを抑制できる。
【0115】
ただし、上記に限らず、胴回り部20,30が有する一部の胴回り弾性部材23,33(好ましくは4本以下の胴回り弾性部材23,33)が、溶着部50ではなく、接着剤でシートに取り付けられていてもよい。
【0116】
また、
図4に示すように、一対のサイド接合部SS間において、胴回り弾性部材23,33は、左右方向の全域に亘り、溶着部50によって位置規制されているとよい。この場合も、胴回り部20,30に配置される接着剤の量を軽減でき、高速伸長時の応力が抑えられ、低速伸長時の応力との差を小さくできる。ただし、上記に限らず、胴回り弾性部材23の左右方向の一部は溶着部50によって位置規制され、別の一部は接着剤でシートに取り付けられていてもよい。
【0117】
おむつ1では、装着時に、胴回り部20,30の左右方向の端部が伸長されて引き上げられる等する。そのため、おむつ1の左右方向の端部の方が中央部に比べて、胴回り弾性部材23,33が切れて抜けやすい。また、パンツ型のおむつ1の場合、サイド接合部SSの形成時に、胴回り弾性部材23,33が切断されることがある。
【0118】
また、胴回り部20,30には、
図6A~
図6Cに示すように、上下方向に隣り合い、胴回り弾性部材23,33を挟んで位置する2つの溶着部50である溶着部対51を複数有する。複数の溶着部対51は、溶着部50の間の上下方向の長さGHの小さい溶着部対(第1溶着部対)、具体的には、第1溶着部列Raの溶着部対51aや第2溶着部列Rbの溶着部対51bと、それよりも左右方向の中央側に、溶着部50の上下方向の長さGHcの大きい溶着部対(第2溶着部対)、具体的には、第3溶着部列Rcの溶着部対51cを有するとよい。なお、胴回り部20,30は、第1溶着部対と第2溶着部対を少なくとも1組有していればよい。また、第2溶着部対(第3溶着部列Rcの溶着部対51c)は胴回り弾性部材23,33と接触していなくてもよい。
【0119】
そうすることで、胴回り部20,30の左右方向の端部では、第1溶着部列Raの溶着部対51aや第2溶着部列Rbの溶着部対51bによって、胴回り弾性部材23,33をしっかりと挟み込むことができる。そのため、サイド接合部SSで胴回り弾性部材23,33が切れてしまっても、その近くの溶着部対51a,51bによって、胴回り弾性部材23,33の切れ端部が把持されやすい。よって、胴回り部20,30の左右方向の広範囲に亘り伸縮性が確保される。
【0120】
一方、胴回り部20,30の左右方向の中央部では、溶着部50の上下方向の間隔GHcが広いため、溶着部50の形成時に、胴回り弾性部材23,33を切断してしまうことを抑制できる。溶着部50の上下方向の間隔GHcが広くても、胴回り弾性部材23,33の上下方向の大きな位置ずれを規制できる。また、溶着部50によって、肌側シート21,31や非肌側シート22,32の浮きを抑制できる。そのため、接着剤を用いてシートの浮きを抑える場合に比べて、胴回り部20,30に使用される接着剤の量を軽減できる。よって、胴回り部20,30の高速伸長時の応力が抑えられ、低速伸長時の応力との差を小さくでき、胴回り部20,30を素早く拡げ易くなる。また、胴回り部20,30の左右方向の中央部(第3溶着部列Rc)では、溶着部50と胴回り弾性部材23,33との摩擦力が小さくなるため、この点からも、胴回り部20,30を拡げ易くなるといえる。
【0121】
また、複数の溶着部対51は、溶着部50の左右方向の長さWaの長い溶着部対(第3溶着部対)、具体的には、第1溶着部列Raの溶着部対51aと、それよりも左右方向の中央側に、溶着部50の左右方向の長さWb,Wcの短い溶着部対(第4溶着部対)、具体的には、第2溶着部列Rbの溶着部対51bと第3溶着部列Rcの溶着部対51cを有するとよい。なお、胴回り部20,30は、第3溶着部対と第4溶着部対を少なくとも1組有していればよい。
【0122】
溶着部50の左右方向の長さを長くすることで、溶着部50と胴回り弾性部材23の間に生じる摩擦力が高まり、溶着部対51からの胴回り弾性部材23,33の抜けを抑制できる。そのため、サイド接合部SSにて胴回り弾性部材23,33が切れてしまっても、その近くの溶着部対51aによって、胴回り弾性部材23,33の切れ端部が把持されやすい。よって、胴回り部20,30の左右方向の広い範囲に亘り伸縮性が確保される。
【0123】
一方、サイド接合部SSよりも左右方向の中央部側に離れた領域では、溶着部対51によって胴回り弾性部材23,33を必要以上に拘束する必要がない。そのため、溶着部50の長さWb,Wcを短くすることで、溶着部50と胴回り弾性部材23,33の摩擦力が小さくなる。よって、胴回り部20,30を拡げ易くなり、締め付けの強い製品である印象を軽減できる。また、剛性の高い溶着部50の左右方向の長さを短くすることで、胴回り部20,30の柔軟性も確保される。
【0124】
また、
図4に示すように、吸収性本体10と重なる胴回り弾性部材23,33は、おむつ1の左右方向の中央部において、その胴回り弾性部材23,33が切断されて非連続となっていてもよい。胴回り弾性部材23,33が非連続部となっている領域SBでは、伸縮性は殆ど発現せず、胴回り弾性部材23,33が連続している領域SAに比べて、上下方向の単位幅あたりの胴回り弾性部材23,33の伸縮力が低下している。そのため、おむつ1の装着時等において、胴回り部20,30を拡げ易くなる。その他、吸収性本体10が胴回り弾性部材23,33によって収縮してしまうことを抑制でき、吸収性本体10(特に吸収性コア11)の平坦性が確保され、着用者への密着性が高まる。
【0125】
また、おむつ1の製造工程において胴回り弾性部材23が切断されると、胴回り弾性部材23は収縮しながら、その径が太くなり、途中の溶着部対51に挟み込まれる。そのため、胴回り部20,30が伸長した状態において、伸長状態である胴回り弾性部材23,33の切れ端部が溶着部対51によって把持され、連続部SAでの伸縮性が確保される。
【0126】
そこで、
図4に示すように、伸縮性を発現したい領域(SA)の左右方向中央側の端部に、左右方向の溶着部50の長さの長い第1溶着部列Raを設けるとよい。そうすることで、胴回り弾性部材23,33の非連続部を形成するために切断された胴回り弾性部材23の切れ端部が、第1溶着部列Raによって、しっかりと把持される。よって、胴回り部20,30(連続部SA)の伸縮性が確保される。
【0127】
また、
図6A~
図6Cに示すように、胴回り部20,30に設けられた複数の溶着部50は、或る胴回り弾性部材231(第1弾性部材)に隣接する第1溶着部50ah、50bh、50chを有する。また、その胴回り弾性部材231と上下方向に隣り合う胴回り弾性部材232(第2弾性部材)との間の上下方向の中央部に位置する第2溶着部50al、50bl、50clとを有する。この場合、胴回り弾性部材23,33に隣接する第1溶着部50ah、50bh、50chの方が、第2溶着部50al、50bl、50clに比べて、溶着強度が強くてもよい。
【0128】
そうすることで、剛性の高い第1溶着部50ah、50bhによって、胴回り弾性部材23,33をしっかりと挟み込むことができ、溶着部対51からの胴回り弾性部材23,33の抜けを抑制できる。また、剛性の高い第1溶着部50chによって、胴回り弾性部材23,33の上下方向の位置ずれをしっかりと規制できる。
【0129】
一方、胴回り弾性部材23,33から離れて位置する第2溶着部50al、50bl、50clの溶着強度を弱くすることで、胴回り部20,30の柔軟性を確保しつつ、肌側シート21,22や非肌側シート22,32の浮きを抑制できる。そのため、接着剤を用いてシートの浮きを抑える場合に比べて、胴回り部20,30で使用される接着剤の量を軽減できる。よって、胴回り部20,30の高速伸長時の応力が抑えられ、低速伸長時の応力との差を小さくでき、胴回り部20,30を素早く拡げ易くなる。なお、第1溶着部50ah、50bh、50chと第2溶着部50al、50bl、50clの溶着強度の違いは、シートの溶け具合に基づいて、目視にて判断できる。具体的には、溶着強度が強い場合、溶着部50において、シートが完全にフィルム化されている。溶着強度が弱い場合、溶着部において、不織布の繊維状態が残されている。
【0130】
また、本実施形態では、溶着部列Ra~Rcにおいて、溶着部50が上下方向に間隔を空けて並んでいる。そのため、第1溶着部50ah、50bh、50chと、第2溶着部50al、50bl、50clとが、上下方向に非連続で並んでいる。しかし、これに限らず、胴回り弾性部材23,33が位置する領域以外において、溶着部50が上下方向に連続しており、第1溶着部50ah、50bh、50chと、第2溶着部50al、50bl、50clとが連続していてもよい。また、第2溶着部50al、50bl、50clの方が、第1溶着部50ah、50bh、50chに比べて、
図6A等で示すように数が多かったり、図示しないが上下方向に長かったりするとよい。そうすることで、胴回り部20,30の柔軟性をより確保できる。例えば、複数の溶着部50が上下方向に間隔を空けて並んで配置されてもよい。ただし、上記に限定されることなく、第1溶着部50ah、50bh、50chと、第2溶着部50al、50bl、50clとで、同じ溶着強度であってもよい。
【0131】
また、
図5Aに示すように、胴回り部20、30(伸縮領域)が左右方向に伸長した状態において、上下方向に隣り合い、胴回り弾性部材23,33を挟み込む2つの溶着部50の間の上下方向の長さGHは、胴回り弾性部材23,33の上下方向の長さd1よりも大きいことが好ましい(GH>d1)。
【0132】
胴回り部20,30が左右方向に伸長するにしたがって、胴回り弾性部材23,33が細くなり、上下方向の長さが短くなる(d2からd1)になる。そのときに、溶着部50の間隔GHよりも胴回り弾性部材23,33の方が細くなることで、両者の間に生じる摩擦力を軽減できる。よって、胴回り部20,30を拡げ易くなり、ユーザーが締め付けの強い製品である印象を抱いてしまうことを抑制できる。
【0133】
以上、溶着部50について説明したが、溶着部50の形状、数、配置等は、上記に限定されるものではない。例えば、
図4では、溶着部列Ra~Rcが左右方向に一定の間隔で並んでいるが、これに限らない。例えば、胴回り弾性部材23,33が切れやすいサイド接合部SSの近くや、製造時に胴回り弾性部材23,33が切断される吸収性本体10の側部やその近傍では、溶着部列Ra~Rcの左右方向の間隔を、他の領域よりも狭くしてもよい。そうすることで、溶着部列Ra~Rcによって胴回り弾性部材23,33の切れ端部がしっかりと把持される。
【0134】
また、パンツ型のおむつ1では、
図3に示すように、吸収性本体10と、その非肌側に外装体(腹側胴回り部20、背側胴回り部30、延出部30E)が設けられている。おむつ1のサイド接合部SSが分離されて、おむつ1が展開した状態において、胴回り部20,30(伸縮領域)は、外装体のシートの積層数が、胴回り弾性部材23,33を挟み込む一対のシート(肌側シート21,22と非肌側シート22,32)の2層である領域25,35を有することが好ましい。
図3では、吸収性本体10の上端と、非肌側シート22,32の折返し部24,34の下端との間において、2層の領域25,35が形成されている。
【0135】
このように、積層されるシート数の少ない領域25、35が存在するということは、胴回り部20,30において、シートが接着剤で積層され接合されてしまう領域を小さくでき、胴回り部20,30で使用される接着剤の量を軽減できる。よって、胴回り部20,30の高速伸長時の応力が抑えられ、低速伸長時の応力との差を小さくでき、胴回り部20,30を素早く拡げ易くなる。
【0136】
また、
図3では、胴回り弾性部材23,33を挟み込む一対のシートの少なくとも一方(ここでは非肌側シート22,32)の上端部が、下方に向かって上下方向に折り返された折返し部24,35が設けられている。この場合、吸収性本体10の上端と、折返し部25,35の下端との間に、接着剤が配置されていない領域が設けられていることが好ましい。本実施形態では、折返し部24,34(非肌側シート22,32)が肌側シート21,31の肌側面に接着剤で接合され、吸収性本体10の非肌側面が胴回り部20,30に接着剤で接合されている。その間の領域25,35は接着剤が配置されていない領域となっている。
【0137】
このように、胴回り部20,30において接着剤が配置されていない領域が設けられていることで、胴回り部20,30で使用される接着剤の量を軽減できる。よって、胴回り部20,30の高速伸長時の応力が抑えられ、低速伸長時の応力との差を小さくでき、胴回り部20,30を素早く拡げ易くなる。
【0138】
なお、接着剤が配置されていない領域とは、接着剤が周知のパターン(例えばスパイラルパターンやΩパターン等)で塗布されている領域のうち、接着剤が配置されていない領域も含む。つまり、接着剤が隙間なく塗布された領域(所謂べた塗りされた領域)以外では、接着剤が配置されていない領域が含まれる。
【0139】
また、
図2に示すように、おむつ1の展開状態において、背側胴回り部30とその厚さ方向に重なる吸収性コア11の部位11bの方が、腹側胴回り部20とその厚さ方向に重なる吸収性コア11の部位11fに比べて、吸収性コア11の平均坪量(g/m
2)が低いことが好ましい。
【0140】
この場合、背側胴回り部30に位置する吸収性コア11の剛性が低くなるので、背側胴回り部30が伸長し易くなる。よって、おむつ1の装着時に、臀部を被覆できる程に背側胴回り部30を大きく拡げることができる。一方、排尿部に近い腹側胴回り部20の吸収性コア11の坪量を高くすることで、排泄液の漏れを抑制できる。
【0141】
図10A及び
図10Bは、胴回り弾性部材23,33の説明図である。胴回り弾性部材23,33の表面と、胴回り弾性部材23,33を挟み込む一対のシート21,22,31,32の内側面と、の少なくとも一方に、滑剤が付着していることが好ましい。
図10Aでは、胴回り弾性部材23,33に滑剤70が塗布されている。図示しないが、肌側シート21,31の非肌側面や、非肌側シート22,32の肌側面に、滑剤が塗布されていてもよい。
【0142】
そうすることで、胴回り弾性部材23,33と、肌側シート21,22や非肌側シート31,32との間の摩擦力を軽減できる。よって、胴回り部20,30を拡げ易くなり、ユーザーが締め付けの強い製品である印象を抱いてしまうことを抑制できる。
【0143】
その他、おむつ1の製造工程において、溶着部50やサイド接合部SSを形成する際に、それらを形成する凸パターンが胴回り弾性部材23,33を踏んでしまっても、滑剤70によって胴回り弾性部材23,33が滑りやすい。そのため、胴回り弾性部材23,33が凸パターンから押し出されやすくなり、胴回り弾性部材23,33の切断を抑制できる。
【0144】
なお、滑剤として、油剤を例示できる。油剤の種類は、特に限定されず、例えば、胴回り弾性部材23,33を構成する弾性繊維23Aに対して、粘着防止、加工性の向上等を目的として付与されるものであってもよい。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチル基の一部を他のアルキル基、フェニル基、アミノ基等で置換した変性ポリシロキサン、鉱物油等を主成分とした油剤を適用できる。
【0145】
また、
図10Aに示すように、胴回り弾性部材23,33は、複数の弾性繊維23Aが集合した糸状の弾性部材であることが好ましい。そうすることで、サイド接合部SSを形成する工程等において、一部の弾性繊維23Aが切れてしまっても、残りの弾性繊維23Aが繋がるため、胴回り弾性部材23,33の切断を防止できる。よって、溶着部対51からの胴回り弾性部材23,33の抜けを抑制でき、胴回り部20,30の伸縮性を確保できる。
【0146】
また、複数の弾性繊維23Aから構成されることで、弾性繊維23Aの間に空隙Sが形成されやすい。よって、サイド接合部SSや溶着部50を形成する凸パターンに、胴回り弾性部材23,33が圧縮されても、空隙Sが圧縮されて逃げ代ができるため(凸パターンに踏み切られないため)、胴回り弾性部材23,33の切断を抑制できる。
【0147】
また、複数の弾性繊維23Aから構成されることで、弾性繊維23Aの集合の仕方によって胴回り弾性部材23,33の太さが部分的に異なりやすい。例えば、
図10Aに示すように、胴回り弾性部材23,33は、外径が第1外径d23Bである太径部23Bと、外径d23Cが第1外径d23Bよりも小さい細径部23C(溝部)とを有する。そうすることで、溶着部対51の間に弾性部材23,33の太径部(23B)が位置した際に、太径部は溶着部対51の間に強く挟み込まれ、溶着部対51からの胴回り弾性部材23,33の抜けを抑制できる。
【0148】
また、胴回り弾性部材23,33は、ねじれた状態で、一対のシート21,22,31,31の間に配置されていることが好ましい。そうすることで、胴回り弾性部材23,33の表面積が増え、シートとの摩擦力が高まり(シートの繊維と絡まりやすく)、溶着部対50からの胴回り弾性部材23の抜けを抑制できる。よって、胴回り部20,30の伸縮性が確保される。
【0149】
また、胴回り弾性部材23,33は、顔料(例えば白色の酸化チタン等)を含まず、透明であることが好ましい。そうすることで、胴回り弾性部材23の表面が滑らかとなり、肌側シート21,31及び非肌側シート22,32と、胴回り弾性部材23,33の間の摩擦力を軽減できる。よって、胴回り部20,30を拡げ易くなる。
【0150】
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0151】
1 おむつ(吸収性物品)、
10 吸収性本体、11 吸収性コア、12 トップシート、
13 バックシート、14 外装シート、15 脚回り弾性部材、
16 防漏壁弾性部材、
20 腹側胴回り部、
21 肌側シート(シート)、22 非肌側シート(シート)、
23 胴回り弾性部材(弾性部材、第1弾性部材)、
23A 弾性繊維、24 折返し部、
30 背側胴回り部、30E 延出部、
31 肌側シート(シート)、32 非肌側シート(シート)、
33 胴回り弾性部材(弾性部材)、34 折返し部、
SS サイド接合部、
50 溶着部、
60 引張試験機、61 治具、62 治具、
70 滑剤、
T 試験片、