(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039700
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】虚像表示装置用光学系、虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240315BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20240315BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02C11/00
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144262
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(72)【発明者】
【氏名】筒井 猛壮
(72)【発明者】
【氏名】須藤 芳文
【テーマコード(参考)】
2H006
2H199
【Fターム(参考)】
2H006CA00
2H199CA04
2H199CA06
2H199CA12
2H199CA25
2H199CA27
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA46
2H199CA47
2H199CA53
2H199CA62
2H199CA64
2H199CA65
(57)【要約】
【課題】光利用効率を向上させること。
【解決手段】虚像表示装置用光学系は、画像を表示する画像表示素子からの画像光を導光する導光部材と、第1の側から導光部材内を導光される第1方向の画像光を透過させ、かつ第1の側とは異なる第2の側から導光部材内を導光される第2方向の画像光を反射させて外部に射出する、部分反射部と、部分反射部を挟んで第1の側とは異なる第2の側に位置し、部分反射部を透過した第1方向の画像光を第2方向の画像光として部分反射部に向けて反射する反射部と、部分反射部を透過した第1方向の画像光の偏光を回転させ、更に、反射部にて反射された第2方向の画像光の偏光を回転させることにより、部分反射部の透過時に第1の偏光方向にあった画像光を第2の偏光方向に回転させる偏光部と、含む。部分反射部は、第1の偏光方向の反射率が第2の偏光方向の反射率より低い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する画像表示素子からの画像光を導光する導光部材と、
第1の側から前記導光部材内を導光される第1方向の前記画像光を透過させ、かつ前記第1の側とは異なる第2の側から前記導光部材内を導光される第2方向の前記画像光を反射させて外部に射出する、部分反射部と、
前記部分反射部を挟んで前記第1の側とは異なる前記第2の側に位置し、前記部分反射部を透過した前記第1方向の画像光を前記第2方向の画像光として前記部分反射部に向けて反射する反射部と、
前記部分反射部を透過した前記第1方向の画像光の偏光を回転させ、更に、前記反射部にて反射された前記第2方向の画像光の偏光を回転させることにより、前記部分反射部の透過時に第1の偏光方向にあった前記画像光を第2の偏光方向に回転させる偏光部と、を含み、
前記部分反射部は、前記第1の偏光方向の反射率が前記第2の偏光方向の反射率より低い、
虚像表示装置用光学系。
【請求項2】
前記部分反射部は、前記虚像表示装置用光学系の光軸方向に間隔を空けて複数配置される、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項3】
複数の前記部分反射部は、前記虚像表示装置用光学系の光軸方向に間隔dで並んで配置され、
前記間隔dは、次式
0.5mm<d<3.0mm
を満たす、
請求項2に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項4】
複数の前記部分反射部は、第1の前記部分反射部と、第1の前記部分反射部よりも前記偏光部から光路上で遠い位置に配置された第2の部分反射部と、を含み、
前記第1の部分反射部の前記第2の偏光方向の反射率をR1とし、前記第2の部分反射部の前記第2の偏光方向の反射率をR2としたとき、次式
R1<R2
を満たす、
請求項2に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項5】
前記部分反射部は、平面に形成された部分反射面よりなる、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項6】
前記部分反射部は、前記第2の偏光方向の反射率が5%以上かつ50%以下である、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項7】
前記部分反射部は、前記第1の偏光方向の反射率が25%以下である、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項8】
前記導光部材の側面に沿う、前記部分反射部の辺の長さは、前記側面の短手方向の長さの0.3倍以上かつ1.5倍以下である、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項9】
前記反射部は、正のパワーを有する、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項10】
前記第1の側から前記部分反射部に向かう画像光を前記第1の偏光方向の画像光に変換する偏光板が、前記画像表示素子と前記部分反射部との間に配置された、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項11】
前記画像表示素子と前記部分反射部との間に配置された光学素子の面上に形成された偏光膜を含み、
前記偏光膜は、前記第1の側から前記部分反射部に向かう画像光を前記第1の偏光方向の画像光に変換する
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項12】
前記画像表示素子からの画像光を前記導光部材に伝搬する伝搬光学系を更に含み、
前記伝搬光学系は、前記画像光の中間像を前記導光部材内に形成する、
請求項1に記載の虚像表示装置用光学系。
【請求項13】
前記画像表示素子と、
請求項1から請求項12の何れか一項に記載の虚像表示装置用光学系と、を備える、
虚像表示装置。
【請求項14】
請求項13に記載の虚像表示装置を備える、
ヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像表示装置用光学系、虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
2次元の画像を拡大し、拡大された虚像を観察者に観察させるように表示する虚像表示装置が知られている。例えば特許文献1に、この種の虚像表示装置の具体的構成が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の虚像表示装置は、グラスデバイスであり、画像表示素子がフレーム部に埋設されている。この虚像表示装置は、画像表示素子の各画素から発せられた光(以下「画像光」と記す。)をレンズ内で導光する。レンズ内において、画像光は、部分反射面を透過し、反射面にて反射されて部分反射面に戻り、部分反射面にて反射されて観察者に向けて射出される。観察者は、この画像光を、拡大された虚像として観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10,353,203号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の虚像表示装置では、画像光が部分反射面を透過する際の反射光の量が多い。部分反射面で反射されて外部へ漏れる画像光の量が多いため、光利用効率が低いという問題が指摘される。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光利用効率を向上させることができる虚像表示装置用光学系、このような虚像表示装置用光学系を備える虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る虚像表示装置用光学系は、画像を表示する画像表示素子からの画像光を導光する導光部材と、第1の側から導光部材内を導光される第1方向の画像光を透過させ、かつ第1の側とは異なる第2の側から導光部材内を導光される第2方向の画像光を反射させて外部に射出する、部分反射部と、部分反射部を挟んで第1の側とは異なる第2の側に位置し、部分反射部を透過した第1方向の画像光を第2方向の画像光として部分反射部に向けて反射する反射部と、部分反射部を透過した第1方向の画像光の偏光を回転させ、更に、反射部にて反射された第2方向の画像光の偏光を回転させることにより、部分反射部の透過時に第1の偏光方向にあった画像光を第2の偏光方向に回転させる偏光部と、含む。部分反射部は、第1の偏光方向の反射率が第2の偏光方向の反射率より低い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、光利用効率を向上させることができる虚像表示装置用光学系、このような虚像表示装置用光学系を備える虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る虚像表示装置を備えるヘッドマウントディスプレイの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る虚像表示装置の基本的な構成を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態において、画像表示素子の画像光の中間像を導光部材内に形成した場合に導光部材を薄型化させられる理由を説明する図である。
【
図4A】本発明の数値実施例1に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
【
図4B】本発明の数値実施例1に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
【
図5】本発明の数値実施例1における、装用者の網膜上の照度分布について説明する図である。
【
図6】本発明の数値実施例1における遮光率について説明する図である。
【
図7】本発明の数値実施例2における、装用者の網膜上の照度分布について説明する図である。
【
図8】本発明の数値実施例2における遮光率について説明する図である。
【
図9A】本発明の数値実施例3に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
【
図9B】本発明の数値実施例3に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
【
図10】本発明の数値実施例3における、装用者の網膜上の照度分布について説明する図である。
【
図11】本発明の数値実施例3における遮光率について説明する図である。
【
図12A】本発明の数値実施例4に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
【
図12B】本発明の数値実施例4に係る虚像表示装置の光学構成を示す図である。
【
図13】本発明の数値実施例4における、装用者の網膜上の照度分布について説明する図である。
【
図14】本発明の数値実施例4における遮光率について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置用光学系、虚像表示装置及びヘッドマウントディスプレイについて図面を参照しながら説明する。以下の説明において、共通の又は対応する要素については、同一又は類似の符号を付して、重複する説明を適宜簡略又は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置を備えるヘッドマウントディスプレイ1の概略図である。本実施形態において、ヘッドマウントディスプレイ1は、例えばメガネ型ウェアラブル端末であるスマートグラスである。スマートグラスは、グラスデバイスやグラスディスプレイと呼ばれてもよい。
【0012】
ヘッドマウントディスプレイ1は、VR(Virtual Reality)グラス、AR(Augmented Reality)グラス、MR(Mixed Reality)グラス、XR(eXtended Reality)グラス等と呼称されるウェアラブル端末であってもよい。
【0013】
図1の例では、ヘッドマウントディスプレイ1は、両眼タイプのヘッドマウントディスプレイである。別の実施形態では、ヘッドマウントディスプレイ1は、左右一方の眼に対応する単眼タイプのヘッドマウントディスプレイであってもよい。
【0014】
図1に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ1は、フレーム部2及びレンズ部3を備える。レンズ部3は、フレーム部2に嵌め込まれている。レンズ部3は、装用者の左右の眼に対応して一対備えられる。
【0015】
画像を表示する画像表示素子10がフレーム部2に内蔵されている。
図1の例では、フレーム部2内の、レンズ部3の上側縁を覆う部分に、画像表示素子10が埋設されている。なお、画像表示素子10の設置位置は、
図1に例示される位置に限らない。例えば、フレーム部2内の、レンズ部3の下側縁を覆う部分に、画像表示素子10が埋設されてもよい。
【0016】
画像表示素子10は、虚像として観察すべき画像を表示する素子であり、例示的には、OLED(Organic Light Emitting Diode)アレイ、LD(laser diode)アレイ、LED(Light Emitting Diode)アレイ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、DMD(Digital Micromirror Device)等である。
【0017】
以下の説明において、
図1中、レンズ部3から装用者の眼に向かう第1の水平方向をz方向とし、z方向と直交する第2の水平方向をx方向とし、x方向とz方向の双方に直交する鉛直方向をy方向とする。互いに直交するx方向、y方向及びz方向は、左手系をなす。
【0018】
なお、方向の呼称は、構成要素の相対的な位置関係を説明するために便宜上用いる呼称であり、絶対的な方向を示すものではない。ヘッドマウントディスプレイ1を装用する装用者の姿勢によっては、例えば、z方向が必ずしも水平方向とは限らず、鉛直方向になることもある。
【0019】
画像表示素子10の各画素から発せられた光(すなわち画像光)は、画像表示素子10からy方向負側に射出されてレンズ部3内に入射され、レンズ部3内を導光されて、z方向正側に向かって(言い換えると、装用者の各眼に向かって)虚像表示のために射出される。すなわち、左右一対のレンズ部3は、それぞれ、対応する眼を含む領域にアイボックスを形成する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置1Aの基本的な構成を示す概略構成図である。
図2の概略構成図は、画像表示素子10及びレンズ部3のyz断面(光軸AXを含む断面)を示す。
【0021】
本実施形態では、画像表示素子10の有効画素領域の中心から画素配列面に対して垂直方向に射出された光線が通る光路を「光軸AX」と定義する。光軸AXは、虚像表示装置1Aの光軸でもあり、また、虚像表示装置用光学系に含まれる各光学素子(例えば後述する導光部材30)の光軸でもある。
【0022】
虚像表示装置1Aは、一例として、ヘッドマウントディスプレイ1に搭載される。
【0023】
なお、本実施形態に係る虚像表示装置1Aは、ヘッドマウントディスプレイに限らず、他の形態の装置にも搭載可能である。一例として、ヘッドアップディスプレイにも搭載することができる。
【0024】
虚像表示装置1Aは、画像表示素子10と虚像表示装置用光学系を備える。
図2の概略構成図において、虚像表示装置1Aは、画像表示素子10、中間像形成部20、導光部材30、反射部40、偏光板50及び60を備える。なお、
図2A中、符号EYは装用者の左右一方の眼を示す。
【0025】
導光部材30は、画像表示素子10からの画像光を導光する光学部材である。虚像表示装置1Aをヘッドマウントディスプレイ1に搭載した場合、レンズ部3が導光部材30に相当する。
【0026】
導光部材30は、画像表示素子10からの画像光が入射される第1面310(入射面)を有する。導光部材30の内部に、第1面310より入射された画像光を反射光と透過光に分岐する部分反射部320が配置される。
【0027】
部分反射部320は、導光部材30内をy方向負側に導光される画像光(言い換えると、画像表示素子10が位置する第1の側から導光部材30内を導光される、第1方向の画像光)の一部を透過させ、かつ導光部材30内をy方向正側に導光される画像光(言い換えると、第1の側とは異なる第2の側から導光部材30内を導光される、第2方向の画像光)の一部をz方向正側に反射させて、導光部材30の第3面340(射出面)から外部に射出する。
【0028】
後述する数値実施例1~4で示されるように、複数の部分反射部320が導光部材30内に光軸AX方向に間隔dで並んで配置されてもよい。言い換えると、隣接する2つの部分反射部320の光軸AX上の間隔が間隔d(後述の
図4A参照)であってもよい。
【0029】
複数の部分反射部320により画像光が複数の光束に分岐されることにより、アイボックスが拡大し、また、画角も拡大する。これにより、例えば装用者が虚像表示装置1Aに対して眼EYを動かした場合にも装用者に虚像を視認させやすくなり、また、広い画角をもつ虚像を装用者に視認させることができる。
【0030】
上記の間隔dは、適切なアイボックスを確保するため、例えば次式(1)を満たす。
【0031】
式(1)
0.5mm<d<3.0mm
【0032】
間隔dが0.5mm以下になると、例えば、ある部分反射部320で反射された画像光が隣接する部分反射部320でも反射されることに起因する光量ムラ(虚像の輝度ムラ)が発生しやすくなる。また、多数の部分反射部320が装用者の視界に入るため、例えば装用者が外界の景色を見る際の妨げとなり得る。間隔dが3.0mm以上になると、間隔dが広すぎることに起因して、例えばアイボックス内の場所によって、虚像が欠けて見えることがある。
【0033】
複数の部分反射部320が配置される間隔dは等間隔であってもよく、また、等間隔でなくてもよい。
【0034】
部分反射部320は、画像光が光軸AX(及びz方向正側に向けて射出される第3面340)に対して所定の角度(例えば45度)をなす向きで配置される。部分反射部320は、例えばハーフミラーである。部分反射部320は、PBS(Polarizing Beam Splitter)であってもよい。
【0035】
部分反射部320は、例えば、平面に形成された部分反射面よりなる。部分反射部320を平面で形成することにより、例えば、製造容易性が向上し、また、収差補正の面で有利である。
【0036】
非平面(曲率をもつ面等)の部分反射部320を複数有する場合を考える。この場合、適切に収差が補正された高画質の虚像を表示するためには、隣接する部分反射部320同士を異なる形状に形成する必要がある。更に、収差を適切に補正するためには、画像光の光路上における、部分反射部320よりも画像表示素子10側に位置する光学系と、それぞれの部分反射部320とで、収差補正を分担する必要がある。その結果、複数の部分反射部320は、それぞれが異なる自由曲面を有する形状とすることが必要となる。そのため、製造容易性を確保することが難しく、また、収差を補正することが難しくなる。
【0037】
図2の例では、導光部材30は、複数の光学ブロックよりなる。光学ブロックの傾斜面に、部分反射部320をなす部分反射面が成膜される。部分反射面が成膜された光学ブロックの傾斜面と他方の(部分反射面が成膜されていない)光学ブロックの傾斜面とを接着剤で接着することにより、導光部材30が完成する。
【0038】
部分反射面は、例えば金属材を蒸着することによって形成された蒸着膜よりなる。光学ブロック同士の密着性を向上させるため、光学ブロックの傾斜面にプライマー層を成膜したうえで部分反射面を成膜してもよい。
【0039】
導光部材30の各光学ブロックは、例えばプラスチック等の合成樹脂製の成形品である。これにより、導光部材30を軽量化させることができる。導光部材30を軽量化させることにより装用者の鼻にかかる荷重が低減するため、例えばヘッドマウントディスプレイ1を装用者が長時間装用したときの疲労感が軽減される。
【0040】
虚像表示装置1Aは、画像表示素子10からの画像光の中間像Iを導光部材30内に形成する中間像形成部20を含む。
【0041】
図2の例では、導光部材30の第1面310が球面又は非球面で形成されており、画像表示素子10からの画像光の中間像Iを導光部材30内(例えば部分反射部320付近)に形成する中間像形成部20をなしている。第1面310が中間像形成部20を兼ねることにより、虚像表示装置1Aを小型化することができ、また、製造コストを抑えることができる。
【0042】
なお、後述する数値実施例1~4で示されるように、虚像表示装置1Aは、画像表示素子10と導光部材30との間の画像光の光路上に、画像表示素子10からの画像光を導光部材30に伝搬する伝搬光学系を含む構成としてもよい。この場合、例えば、この伝搬光学系が中間像形成部20をなす。伝搬光学系に収差補正を負担させることができるため、例えば各種収差を良好に補正することができる。
【0043】
虚像表示装置1Aは、反射部40を含む。反射部40は、部分反射部320を挟んで第1の側(
図2の例では、画像表示素子10が位置する側)とは異なる第2の側(
図2の例では、第1の側とは反対側)に位置する。虚像表示装置1Aをヘッドマウントディスプレイ1に搭載した場合、反射部40は、レンズ部3の上部に配置された画像表示素子10と対向するレンズ部3の下部に位置する。
【0044】
第1面310より入射されて部分反射部320を透過した画像光は、反射部40まで導光される。反射部40は、反射面を含む。この反射面により、反射部40まで導光された画像光が反射され、部分反射部320に向けてz方向正側に導光される。この反射面は、平面であってもよく、また、パワーを持つ面であってもよい。
【0045】
すなわち、反射部40は、部分反射部320を透過した第1方向の画像光(y方向負側に導光される画像光)を第2方向の画像光(y方向正側に導光される画像光)として部分反射部320に向けて反射する。
【0046】
反射部40(
図2の例では反射面)は、正のパワーを有する。反射部40は、部分反射部320を介して入射された画像光をコリメート光又は略コリメート光に変換して、部分反射部320に向けて反射する。これにより、コリメート光又は略コリメート光が、導光部材30内をy方向正側に導光されて、部分反射部320にてz方向正側に反射され、導光部材30の第3面340から外部に射出されて、装用者の眼EYに到達する。コリメート光の場合、装用者は、無限遠の虚像を良好に視認することができる。略コリメート光の場合、装用者は、適切な虚像距離(虚像が形成される面と眼EYとの距離)の虚像を良好に視認することができる。虚像距離は、虚像表示装置1Aの用途に適宜変えてもよい。
【0047】
導光部材30は、部分反射部320を挟んで第1面310と対向して位置する第2面330を有する。
図2の例では、第2面330が反射面となっており、反射部40をなしている。第2面330が反射部40を兼ねることにより、虚像表示装置1Aを小型化することができ、また、製造コストを抑えることができる。
【0048】
なお、後述する数値実施例1~3で示されるように、虚像表示装置1Aは、導光部材30の後段の光路上に、導光部材30とは別の光学部材を含む構成としてもよい。この場合、例えば、この別の光学部材が上記反射面を含む反射部40をなす。反射部40は、部分反射部320を透過して導光部材30の第2面330より射出された画像光が入射され、入射された画像光をコリメート光又は略コリメート光に変換して、部分反射部320に向けて反射する。これにより、コリメート光又は略コリメート光が、第2面330より導光部材30内に入射されてy方向正側に導光されて、部分反射部320にてz方向正側に反射され、導光部材30の第3面340から外部に射出されて、装用者の眼EYに到達する。
【0049】
上記構成では、別の光学部材よりなる反射部40に収差補正を負担させることができるため、例えば各種収差を良好に補正することができる。
【0050】
本実施形態に係る虚像表示装置1Aでは、画像表示素子10からの画像光の中間像Iが中間像形成部20により導光部材30内に形成される。これにより、導光部材30を薄型化すること(言い換えると、導光部材30のz方向のサイズを小さく抑えること)ができる。これにより、導光部材30を軽量化させることができる。導光部材30を軽量化させることにより装用者の鼻にかかる荷重が低減するため、例えばヘッドマウントディスプレイ1を装用者が長時間装用したときの疲労感が軽減される。
【0051】
また、画像表示素子10からの画像光の中間像Iを導光部材30内に形成することにより、虚像表示装置用光学系の瞳を装用者の眼EYの付近に配置することができる。そのため、広い画角を確保しつつ広いアイボックスを確保することもできる。
【0052】
画像表示素子10からの画像光の中間像Iを導光部材30内に形成した場合に導光部材30を薄型化させられる理由を、
図3を用いて説明する。
【0053】
図3のA図は、中間像Iの倍率を1倍としたときの、本実施形態に係る虚像表示装置1Aの概略構成図である。A図中、f
1は、中間像形成部20の焦点距離を示し、f
2は、反射部40の焦点距離を示す。
図3のB図は、本実施形態に係る虚像表示装置1Aに対して中間像形成部20を省いた虚像表示装置の概略構成図である。B図中、f
3は、反射部40の焦点距離を示す。
図3のC図は、本実施形態に係る虚像表示装置1Aに対し、中間像形成部20に代えて、伝搬光学系20’を備えた虚像表示装置の概略構成図である。伝搬光学系20’は、画像表示素子10からの画像光をコリメート光に変換し、このコリメート光を導光部材30に向けて射出する。C図の反射部40は、入射する画像光はコリメートされているので屈折力をもたない反射面(平面)等で構成される。C図では、画角がA図と同じである。A図~C図の各図中、実線の光束は軸上の光束を示し、破線の光束は軸外の光束を示す。A図~C図の各図中、画像表示素子10の位置にある矢印で示される、画像表示素子10による表示画像の大きさは同じである。
【0054】
外界の景色や映像を装用者に見せるためには、画像表示素子10又は中間像形成部20と反射部40(より詳細には、反射面)との間隔を十分に確保する必要がある。A図において、中間像形成部20と反射部40との間隔は、
図1のレンズ部3の縦方向(y方向)の幅に対応する。レンズ部3の縦方向の幅は、装用者が外界の景色等を見ることができるように広く設定することが必要なためである。同様にB図において、画像表示素子10と反射部40との間隔が、レンズ部3の縦方向の幅に対応するので、広く設定することが必要である。同様にC図において、伝搬光学系20’と反射部40との間隔がレンズ部3の縦方向の幅に対応するため、同様に広く設定することが必要である。B図において虚像距離を無限遠とする場合、薄型の導光部材30に軸上及び軸外の光束を導光させるため、焦点距離f
3を長くする必要がある。具体的には、B図の例における焦点距離f
3は、前述の画像表示素子10と反射部40との間隔に対応するように設定される。それにより、画像光は反射部40でコリメートされて、装用者が虚像を視認することができるようになる。前述の通り、焦点距離f
3は、レンズ部3の幅に制約される。そのため、焦点距離f
3を短くすることができない。そのため、B図の構成では、広い画角を確保することができない。B図の構成において、画角をA図と同等に確保するためには、画像表示素子10を大型化することが必要であり、虚像表示装置そのものが大型化してしまう。C図において虚像距離を無限遠とする場合、A図と同じ画角を確保する必要上(言い換えると、広い画角を形成するために必要な軸外の光束も導光部材30が導光できるように)、導光部材30の厚さを厚くする必要がある。具体的には、C図における伝搬光学系20’は、画像表示素子10からの軸外光線(破線)を導光するために、光軸AX方向に垂直な方向に大きく(図中の上下方向に広く)する必要がある。それに伴い、伝搬光学系20’から射出される画像光を導光部材30が取り込むためには、導光部材30の厚さ(図中の上下方向)を厚くすることが必要である。
【0055】
これに対し、本実施形態に係る虚像表示装置1Aでは、A図に示されるように、反射部40(より詳細には、反射面)により近い導光部材30内に中間像Iを形成することにより、反射部40の焦点距離f2を短くすることができるので、広い画角を確保しつつも導光部材30を薄型化することができる。言い換えると、導光部材30を薄型化した場合でも、導光部材30は、広い画角を形成するために必要な軸外の光束も導光できる。
【0056】
本実施形態に係る虚像表示装置1Aの具体的構成について更に説明する。
【0057】
第1方向の画像光(導光部材30内をy方向負側に導光される画像光)は、部分反射部320へ入射すると、一部が透過して反射部40に向かう一方、残りの一部が反射されて、第3面340と対向する面350から外部へ放射される。外部へ漏れる画像光の量を低減させるためには、部分反射部320の透過率を高くすること(言い換えると、反射率を低くすること)が求められる。しかし、部分反射部320の透過率を高くすると、第2方向の画像光(導光部材30内をy方向正側に導光される画像光)が部分反射部320へ入射した際、その多くが部分反射部320を透過してしまう。すなわち、部分反射部320にてz方向正側に反射されて装用者の眼EYに向かう画像光の量が少なくなってしまう。
【0058】
そこで、本実施形態では、光利用効率を向上させるべく、偏光板50及び60が虚像表示装置1Aに備えられる。
【0059】
偏光板50は、画像表示素子10と部分反射部320との間に配置されており、画像表示素子10が位置する第1の側から部分反射部320に向かう画像光を第1の偏光方向の画像光に変換する。なお、部分反射部320が複数備えられる場合、偏光板50は、画像表示素子10と、複数の部分反射部320のうち画像表示素子10に最も近い部分反射部320と、の間に配置される。
【0060】
偏光板50は、例えば、画像表示素子10と導光部材30との間に配置されており、部分反射部320に向かう画像光をP偏光(第1の偏光方向の一例)に変換する。
【0061】
なお、偏光板50は、画像表示素子10が位置する第1の側から部分反射部320に向かう画像光を第1の偏光方向の画像光に変換する偏光膜に置き換えられてもよい。偏光膜50は、画像表示素子10と部分反射部320との間に配置された何れかの光学素子の面上に形成される。偏光膜50は、例えば、導光部材30の第1面310に形成され、部分反射部320に向かう画像光をP偏光に変換する。
【0062】
光学素子の面上に偏光膜50を形成する場合、偏光板50が不要となる。そのため、虚像表示装置1Aの部品点数が減る。
【0063】
部分反射部320は、P偏光(第1の偏光方向の一例)の反射率がS偏光(第2の偏光方向の一例)の反射率より低い。偏光板50によりP偏光に変換された画像光は、その多くが部分反射部320を透過しかつ部分反射部320での反射光量が少ない。すなわち、上記の如く部分反射部320の反射率を設定することにより、部分反射部320で反射されて面350から外部へ漏れる画像光の量が低減される。
【0064】
偏光板60は、部分反射部320と反射部40(より詳細には反射部40に含まれる反射面)との間に配置される。偏光板60は、部分反射部320を透過した第1方向の画像光の偏光を回転させ、更に、反射部40にて反射された第2方向の画像光の偏光を回転させることにより、部分反射部320の透過時に第1の偏光方向にあった画像光(P偏光の画像光)を第2の偏光方向(S偏光)に回転させる。
【0065】
具体的には、偏光板60は、1/4波長板である。部分反射部320を透過したP偏光の画像光は、偏光板60により偏光方向が45度回転して反射部40にて反射された後、再び偏光板60に入射される。画像光は、偏光板60により更に45度回転してS偏光となって、部分反射部320に入射される。
【0066】
部分反射部320は、S偏光(第2の偏光方向の一例)の反射率がP偏光(第1の偏光方向の一例)の反射率より高い。S偏光に変換された画像光は、その多くが部分反射部320を透過せず反射して、導光部材30の第3面340から外部に射出されて、装用者の眼EYに到達する。
【0067】
このように、本実施形態に係る虚像表示装置1Aによれば、部分反射部320で反射されて外部へ漏れる画像光の量を低減しつつも多くの画像光を眼EYへ導くことができる。そのため、高い光利用効率が達成される。
【0068】
部分反射部320は、装用者の視界内に位置する。部分反射部320の反射率が高い場合、シースルー性を確保することが難しい。しかし、外界の光が無偏光であり、また、部分反射部320がP偏光に対する透過率が高いことから、本実施形態では、シースルー性が確保される。
【0069】
上述したように、部分反射部320が装用者の視界を遮りにくいことから、広い面積を持つ部分反射部320を導光部材30内に配置しやすい。部分反射部320の面積を広くすることにより、光束幅の広い画像光を眼EYに導光しやすくなる。この点から、虚像表示装置1Aは、画質の向上に有利となっている。
【0070】
複数の部分反射部320が導光部材30内に配置される場合を考える。この場合、複数の部分反射部320のうち、任意の1つを「第1の部分反射部」と称し、第1の部分反射部よりも偏光板60(偏光部の一例)から光路上で遠い位置に配置された、任意の1つを「第2の部分反射部」と称する。虚像表示装置1Aは、第1の部分反射部の第2の偏光方向の反射率をR1とし、第2の部分反射部の第2の偏光方向の反射率をR2としたとき、次式
R1<R2
を満たす構成としてもよい。
【0071】
偏光板60から光路上で遠い位置に配置された部分反射部320ほど、入射光が前段の(つまり偏光板60に近い)部分反射部320を透過する毎に減光するため、入射光の量が少ない。そのため、例えば複数の部分反射部320の反射率を全て同じにすると、偏光板60から光路上で遠い位置に配置された部分反射部320にて反射されて眼EYに向かう画角の光の量ほど少なくなり、光量ムラが生じやすい。そこで、上記の如く、部分反射部320の反射率を設定することにより、画角間の光量差が少なくなり光量ムラが抑えられる。
【0072】
部分反射部320は、シースルー性及び光利用効率を確保するため、第2の偏光方向の反射率Rsが5%以上かつ50%以下に設定されてもよい。
【0073】
反射率Rsが5%未満になると、光利用効率が低すぎて、眼EYに到達する画像光の量を確保することが難しい。反射率Rsが50%を超えると、部分反射部320で反射される外界の光の量が多すぎて、シースルー性の低下を抑えることが難しい。
【0074】
部分反射部320は、面350から外部へ漏れる画像光の量を抑えるため、第1の偏光方向の反射率Rpが25%以下に設定されてもよい。
【0075】
反射率Rpが25%を超えると、部分反射部320における反射光量が多いため、面350から外部へ漏れる画像光の量を抑えることが難しい。
【0076】
図2中、符号L1は、導光部材30の側面に沿う、部分反射部320の辺の長さを示す。また、符号L2は、導光部材30の厚さを示し、また、導光部材30の側面の短手方向(
図2においてz方向)の長さを示す。長さL1は、シースルー性及び良好な画像を確保するため、長さL2の0.3倍以上かつ1.5倍以下に設定されてもよい。
【0077】
長さL1が長さL2の0.3倍未満になると、画像光が眼EYに届きにくくなり、例えばアイボックス内の場所によって、虚像が欠けて見えることがある。長さL1が長さL2の1.5倍を超えると、視界に入る部分反射部320が大きすぎるため、シースルー性を確保し難くなる。
【0078】
次に、虚像表示装置1Aの具体的な数値実施例1~4を示す。なお、以下の数値実施例1~4では、便宜上、光軸AX方向をz方向とし、光軸AX方向と直交する2方向をx方向、y方向とする。例えば、虚像表示装置1Aをヘッドマウントディスプレイ1に搭載した場合、x方向は、レンズ部3の幅方向である。y方向は、光軸AX方向及びレンズ部3の幅方向と直交する。なお、部分反射部320により光路が90度折り曲げられると、光軸AX方向も90度変わるため、xyz座標系も90度回転する。
【0079】
[数値実施例1]
本発明の数値実施例1に係る虚像表示装置1Aの光学構成は
図4A及び
図4Bに示される。
図4Aは、虚像表示装置1Aのyz断面を示す。
図4Bは、虚像表示装置1Aのxy断面を示す。なお、
図4Aのyz断面及び
図4Bのxy断面は、装用者の眼EYに向かう光軸AX方向をz方向としたときの断面である。
【0080】
数値実施例1に係る虚像表示装置1Aは、中間像形成部20として伝搬光学系を備える。導光部材30の前段に偏光板50が配置される。導光部材30の厚さは、5.5mmである。導光部材30内には、平面形状で形成された7つの部分反射部320が1.6mmの間隔dで配置される。導光部材30の後段には、偏光板60の一例として1/4波長板が配置される。
図4A、
図4B中、最もy方向負側に位置する光学素子面が、反射部40の反射面である。
【0081】
数値実施例1において、虚像画像の垂直方向、水平方向、対角方向の画角は、それぞれ、20.0度、35.4度、40.0度である。虚像距離は、無限遠である。開口絞りは、垂直方向に1.5mmで水平方向に6.9mmの矩形の開口を有する。
【0082】
数値実施例1において、部分反射部320の辺の長さL1は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、3mm、3mm、3mm、3.5mm、3.5mm、3mm、3mmである。
【0083】
数値実施例1において、部分反射部320のP偏光(第1の偏光方向の一例)の反射率は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、1%、1%、2%、2%、4%、6%、20%である。
【0084】
数値実施例1において、部分反射部320のS偏光(第2の偏光方向の一例)の反射率は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、11%、12%、18%、23%、32%、46%、88%である。
【0085】
数値実施例1に係る虚像表示装置1Aの具体的数値構成は、表1に示される。表1中、Ry(単位:mm)は光学素子の各面の、y方向の軸(光軸AXと直交するy軸)での曲率半径(又は近軸曲率半径)を示し、Rx(単位:mm)は光学素子の各面の、x方向の軸(光軸AXと直交するx軸)での曲率半径(又は近軸曲率半径)を示し、D(単位:mm)は光軸AX上の光学素子の厚さ又は光学素子の間隔を示し、Ndはd線(波長587.562nm)の屈折率を示し、νdはd線のアッベ数を示す。アッベ数の右欄には、光学素子の材質の商品名及び製造者を記す。
【0086】
表1の番号は、画像表示素子10側から順に、虚像表示装置1Aの各面に付されたものである。補足すると、表1の番号0は、画像表示素子10の画像表示面(画素配列面)を示す。表1の番号1~2は、画像表示素子10に備えられるカバーガラスの各面を示す。カバーガラスは、画像表示素子10の画像表示面をカバーするガラス製部材である。
【0087】
表1の番号3~14は、伝搬光学系20から反射部40の反射面までの光路に対応し、表1の15以降は、反射部40の反射面から眼EYまでの光路に対応する。
【0088】
表1の番号17の間隔Dの欄の標記Aは、反射部40の反射面から、各部分反射部320(部分反射面)までの、光軸AX方向の間隔を示す。便宜上、この間隔を間隔Aと記す。間隔Aは、反射部40の反射面に近い部分反射部320から順に、13.2mm、14.8mm、16.4mm、18.0mm、19.6mm、21.2mm、22.8mmである。このように、7つの部分反射部320は、1.6mmの等間隔で配置される。
【0089】
【0090】
表1中、「*」印が付された番号の面は、非球面である。より詳細には、これらの非球面は、アナモフィックなパワーを有するアナモフィック非球面となっている。表2に、各非球面のデータを示す。表2中、標記Eは、10を基数、Eの右の数字を指数とする累乗を示す。非球面素子における曲率半径Rは、光軸AX上での曲率半径(近軸曲率半径)を示す。非球面形状は、サグ量をZとし、近軸曲率(1/R)をCとし、光軸AXからの高さをh(単位:mm)とし、円錐係数(コーニック係数)をKとし、4次以上の偶数次の非球面係数をA4、A6、・・・とした場合に、次式で示される。
【0091】
Z=Ch2/{1+√(1-(1+K)C2h2)}+A4・h4+A6・h6+A8・h8+A10・h10
【0092】
附言するに、アナモフィック非球面形状は、x軸での近軸曲率(1/Rx)をCxとし、y軸での近軸曲率(1/Ry)をCyとし、光軸AXからの、x軸での高さをX(単位:mm)とし、光軸AXからの、y軸での高さをY(単位:mm)とし、x軸での円錐係数をKxとし、y軸での円錐係数をKyとし、4次以上の偶数次の、回転対称の係数をAR4、AR6、・・・とし、4次以上の偶数次の、回転非対称の係数をAP4、AP6、・・・とした場合に、次式で示される。
【0093】
Z=(CxX2 + CyY2)/{1+√(1-(1+Kx)Cx2X2-(1+Ky)Cy2Y2)} +AR4・((1-AP4)X2+(1+AP4)Y2)2+AR6・((1-AP6)X2+(1+AP6)Y2)3+AR8・((1-AP8)X2+(1+AP8)Y2)4+AR10・((1-AP10)X2+(1+AP10)Y2)5
【0094】
なお、表の記載形式は、以降の数値実施例2~4においても同じである。
【0095】
【0096】
図5は、数値実施例1における、装用者の網膜上の照度分布について説明する図である。
図5のシミュレーション図は、眼EYの瞳孔径を2.5mmとし、アイレリーフを15mmとしたときの照度分布を示す。この照度分布は、焦点距離12mmの理想レンズで結像する場合で計算されている。このシミュレーション図は、35度(横)×20度(縦)の画角の光を投影したものとなっている。
【0097】
次に、眼EYの位置を導光部材30の面350から500mm離れた位置に設定して、同様のシミュレーションを行った。言い換えると、装用者の近くにいる第三者の網膜上の照度分布を計算した。これらのシミュレーション結果から、第三者の網膜上の照度が装用者の網膜上の照度に対して僅か0.078%の強さであることが分かった。このように、数値実施例1によれば、部分反射部320で反射されて面350から外部へ漏れる画像光の量が少なく抑えられることが分かった。
【0098】
図6は、数値実施例1における遮光率について説明する図である。
図6中、縦軸は遮光率(単位:%)を示し、横軸は画角(単位:度)を示す。この遮光率は、次式により求まる。
【0099】
遮光率=(|照度LD1-照度LD2|/照度LD1)×100
[照度LD1]
虚像表示装置1Aから十分離れた距離に置かれた光源を、部分反射部320を備えない虚像表示装置1Aを通して装用者の眼EYで見たときの、ある画角に対応する、網膜上の照度
[照度LD2]
上記距離に置かれた光源を、部分反射部320を備える虚像表示装置1Aを通して装用者の眼EYで見たときの、上記画角に対応する、網膜上の照度
【0100】
図6に示されるように、数値実施例1では、部分反射部320を視界内に配置することによるシースルー性の低下が低い水準で抑えられていることが分かる。
【0101】
[数値実施例2]
数値実施例2に係る虚像表示装置1Aは、部分反射部320の反射率が数値実施例1に係る虚像表示装置1Aと異なる点を除き、数値実施例1に係る虚像表示装置1Aと同じ構成を有する。
【0102】
数値実施例2において、部分反射部320のP偏光(第1の偏光方向の一例)の反射率は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、1%、1%、1%、2%、2%、3%、5%である。
【0103】
数値実施例2において、部分反射部320のS偏光(第2の偏光方向の一例)の反射率は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、10%、11%、12%、18%、23%、29%、42%である。
【0104】
図7は、
図5と同様の図であり、数値実施例2における、装用者の網膜上の照度分布について説明する図である。
図7のシミュレーション図は、眼EYの瞳孔径を2.5mmとし、アイレリーフを15mmとしたときの照度分布を示す。この照度分布は、焦点距離12mmの理想レンズで結像する場合で計算されている。このシミュレーション図は、35度(横)×20度(縦)の画角の光を投影したものとなっている。
【0105】
次に、眼EYの位置を導光部材30の面350から500mm離れた位置に設定して、同様のシミュレーションを行った。これらのシミュレーション結果から、第三者の網膜上の照度が装用者の網膜上の照度に対して僅か0.04%の強さであることが分かった。このように、数値実施例2によれば、部分反射部320で反射されて面350から外部へ漏れる画像光の量が少なく抑えられることが分かった。
【0106】
図8は、
図6と同様の図であり、数値実施例2における遮光率について説明する図である。
図8に示されるように、数値実施例2においても、部分反射部320を視界内に配置することによるシースルー性の低下が低い水準で抑えられていることが分かる。
【0107】
[数値実施例3]
本発明の数値実施例3に係る虚像表示装置1Aの光学構成は
図9A及び
図9Bに示される。数値実施例3に係る虚像表示装置1Aは、次の4つの要素が数値実施例1に係る虚像表示装置1Aと異なる点を除き、数値実施例1に係る虚像表示装置1Aと同じ構成を有する。
(1)部分反射部320の辺の長さL1
(2)部分反射部320の反射率
(3)各部分反射部320の間隔A
(4)偏光板50に代えて、導光部材30の第1面310に偏光膜50が形成
【0108】
数値実施例3において、部分反射部320の辺の長さL1は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、7mm、6mm、5.5mm、5mm、5.5mm、6mm、7mmである。
【0109】
数値実施例3において、部分反射部320のP偏光(第1の偏光方向の一例)の反射率は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、1%、1%、1%、2%、2%、3%、5%である。
【0110】
数値実施例3において、部分反射部320のS偏光(第2の偏光方向の一例)の反射率は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、10%、11%、12%、18%、23%、29%、42%である。
【0111】
数値実施例3において、間隔Aは、反射部40の反射面に近い部分反射部320から順に、15.3mm、16.2mm、17.1mm、18.0mm、18.9mm、19.8mm、20.7mmである。このように、7つの部分反射部320は、0.9mmの等間隔で配置される。
【0112】
図10は、
図5と同様の図であり、数値実施例3における、装用者の網膜上の照度分布について説明する図である。
図10のシミュレーション図は、眼EYの瞳孔径を2.5mmとし、アイレリーフを15mmとしたときの照度分布を示す。この照度分布は、焦点距離12mmの理想レンズで結像する場合で計算されている。このシミュレーション図は、35度(横)×20度(縦)の画角の光を投影したものとなっている。
【0113】
次に、眼EYの位置を導光部材30の面350から500mm離れた位置に設定して、同様のシミュレーションを行った。これらのシミュレーション結果から、第三者の網膜上の照度が装用者の網膜上の照度に対して僅か0.3%の強さであることが分かった。このように、数値実施例3によれば、部分反射部320で反射されて面350から外部へ漏れる画像光の量が少なく抑えられることが分かった。
【0114】
図11は、
図6と同様の図であり、数値実施例3における遮光率について説明する図である。
図11に示されるように、数値実施例3においても、部分反射部320を視界内に配置することによるシースルー性の低下が低い水準で抑えられていることが分かる。
【0115】
[数値実施例4]
本発明の数値実施例4に係る虚像表示装置1Aの光学構成は
図12A及び
図12Bに示される。
【0116】
数値実施例4に係る虚像表示装置1Aは、中間像形成部20として伝搬光学系を備える。導光部材30の前段に偏光板50が配置される。導光部材30の厚さは、6mmである。導光部材30内には、平面形状で形成された3つの部分反射部320が2.5mmの間隔dで配置され、また、偏光板60の一例として1/4波長板が配置される。
図12A、
図12B中、最もy方向負側に位置する光学素子面が、反射部40の反射面である。
【0117】
数値実施例4において、虚像画像の垂直方向、水平方向、対角方向の画角は、それぞれ、17.5度、28.9度、31.4度である。虚像距離は、無限遠である。開口絞りは、垂直方向に2.0mmで水平方向に5.6mmの矩形の開口を有する。
【0118】
数値実施例4において、部分反射部320の辺の長さL1は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、5mm、5mm、4mmである。
【0119】
数値実施例4において、部分反射部320のP偏光(第1の偏光方向の一例)の反射率は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、5%、4%、4%である。
【0120】
数値実施例4において、部分反射部320のS偏光(第2の偏光方向の一例)の反射率は、偏光板60に近い部分反射部320から順に、21%、29%、29%である。
【0121】
数値実施例4に係る虚像表示装置1Aの具体的数値構成、各非球面のデータは、それぞれ、表3、表4に示される。
【0122】
表3の番号0は、画像表示素子10の画像表示面を示す。表3の番号1~2は、画像表示素子10に備えられるカバーガラスの各面を示す。表3の番号3~15は、伝搬光学系20から反射部40の反射面までの光路に対応し、表の16以降は、反射部40の反射面から眼EYまでの光路に対応する。
【0123】
間隔Aは、反射部40の反射面に近い部分反射部320から順に、11.5mm、14.0mm、16.5mmである。このように、3つの部分反射部320は、2.5mmの等間隔で配置される。
【0124】
【0125】
【0126】
図13は、
図5と同様の図であり、数値実施例4における、装用者の網膜上の照度分布について説明する図である。
図13のシミュレーション図は、眼EYの瞳孔径を2.5mmとし、アイレリーフを15mmとしたときの照度分布を示す。この照度分布は、焦点距離12mmの理想レンズで結像する場合で計算されている。このシミュレーション図は、29度(横)×17度(縦)の画角の光を投影したものとなっている。
【0127】
次に、眼EYの位置を導光部材30の面350から500mm離れた位置に設定して、同様のシミュレーションを行った。これらのシミュレーション結果から、第三者の網膜上の照度が装用者の網膜上の照度に対して僅か1.3%の強さであることが分かった。このように、数値実施例4によれば、部分反射部320で反射されて面350から外部へ漏れる画像光の量が少なく抑えられることが分かった。
【0128】
図14は、
図6と同様の図であり、数値実施例4における遮光率について説明する図である。
図14に示されるように、数値実施例4においても、部分反射部320を視界内に配置することによるシースルー性の低下が低い水準で抑えられていることが分かる。
【0129】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0130】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
画像を表示する画像表示素子からの画像光を導光する導光部材と、
第1の側から前記導光部材内を導光される第1方向の前記画像光を透過させ、かつ前記第1の側とは異なる第2の側から前記導光部材内を導光される第2方向の前記画像光を反射させて外部に射出する、部分反射部と、
前記部分反射部を挟んで前記第1の側とは異なる前記第2の側に位置し、前記部分反射部を透過した前記第1方向の画像光を前記第2方向の画像光として前記部分反射部に向けて反射する反射部と、
前記部分反射部を透過した前記第1方向の画像光の偏光を回転させ、更に、前記反射部にて反射された前記第2方向の画像光の偏光を回転させることにより、前記部分反射部の透過時に第1の偏光方向にあった前記画像光を第2の偏光方向に回転させる偏光部と、を含み、
前記部分反射部は、前記第1の偏光方向の反射率が前記第2の偏光方向の反射率より低い、
虚像表示装置用光学系。
[付記2]
前記部分反射部は、前記虚像表示装置用光学系の光軸方向に間隔を空けて複数配置される、
付記1に記載の虚像表示装置用光学系。
[付記3]
複数の前記部分反射部は、前記虚像表示装置用光学系の光軸方向に間隔dで並んで配置され、
前記間隔dは、次式
0.5mm<d<3.0mm
を満たす、
付記2に記載の虚像表示装置用光学系。
[付記4]
複数の前記部分反射部は、第1の前記部分反射部と、第1の前記部分反射部よりも前記偏光部から光路上で遠い位置に配置された第2の部分反射部と、を含み、
前記第1の部分反射部の前記第2の偏光方向の反射率をR1とし、前記第2の部分反射部の前記第2の偏光方向の反射率をR2としたとき、次式
R1<R2
を満たす、
付記2又は付記3に記載の虚像表示装置用光学系。
[付記5]
前記部分反射部は、平面に形成された部分反射面よりなる、
付記1から付記4の何れか一つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記6]
前記部分反射部は、前記第2の偏光方向の反射率が5%以上かつ50%以下である、
付記1から付記5の何れか一つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記7]
前記部分反射部は、前記第1の偏光方向の反射率が25%以下である、
付記1から付記6の何れか一つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記8]
前記導光部材の側面に沿う、前記部分反射部の辺の長さは、前記側面の短手方向の長さの0.3倍以上かつ1.5倍以下である、
付記1から付記7の何れか一つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記9]
前記反射部は、正のパワーを有する、
付記1から付記8の何れか一つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記10]
前記第1の側から前記部分反射部に向かう画像光を前記第1の偏光方向の画像光に変換する偏光板が、前記画像表示素子と前記部分反射部との間に配置された、
付記1から付記9の何れか一つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記11]
前記画像表示素子と前記部分反射部との間に配置された光学素子の面上に形成された偏光膜を含み、
前記偏光膜は、前記第1の側から前記部分反射部に向かう画像光を前記第1の偏光方向の画像光に変換する
付記1から付記9の何れか一つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記12]
前記画像表示素子からの画像光を前記導光部材に伝搬する伝搬光学系を更に含み、
前記伝搬光学系は、前記画像光の中間像を前記導光部材内に形成する、
付記1から付記11の何れか一つに記載の虚像表示装置用光学系。
[付記13]
前記画像表示素子と、
付記1から付記12の何れか一つに記載の虚像表示装置用光学系と、を備える、
虚像表示装置。
[付記14]
付記13に記載の虚像表示装置を備える、
ヘッドマウントディスプレイ。
【符号の説明】
【0131】
1 :ヘッドマウントディスプレイ
1A :虚像表示装置
2 :フレーム部
3 :レンズ部
10 :画像表示素子
20 :中間像形成部
30 :導光部材
40 :反射部
50 :偏光板
60 :偏光板
320 :部分反射部