特開 2024-39871 超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024039871

(43)【公開日】2024-03-25

(54)【発明の名称】超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法

(51)【国際特許分類】

   A61B 8/14 20060101AFI20240315BHJP

【ＦＩ】

A61B8/14

【審査請求】未請求

【請求項の数】12

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022144569

(22)【出願日】2022-09-12

(71)【出願人】

【識別番号】306037311

【氏名又は名称】富士フイルム株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100152984

【弁理士】

【氏名又は名称】伊東 秀明

(74)【代理人】

【識別番号】100148080

【弁理士】

【氏名又は名称】三橋 史生

(72)【発明者】

【氏名】宮地 幸哉

(72)【発明者】

【氏名】江畑 徹郎

【テーマコード（参考）】

4C601

【Ｆターム（参考）】

4C601DD18

4C601EE09

4C601EE11

4C601JC05

4C601JC06

4C601JC09

4C601JC37

(57)【要約】

【課題】ユーザが容易に且つ正確に診断を行うことができる超音波診断装置の制御方法および超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波診断装置は、モニタ（２３）と、超音波画像に撮像された検出対象を検出する検出対象検出部（２４）と、検出対象検出部（２４）により検出された検出対象を含む関心領域を超音波画像上に設定する関心領域設定部（２５）と、関心領域設定部（２５）により設定された関心領域の輪郭線の一部のみからなる関心領域示唆線をモニタ（２３）に表示する関心領域示唆線表示部（２６）とを備える。
【選択図】 図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

モニタと、
超音波画像に撮像された検出対象を検出する検出対象検出部と、
前記検出対象検出部により検出された前記検出対象を含む関心領域を前記超音波画像上に設定する関心領域設定部と、
前記関心領域設定部により設定された前記関心領域の輪郭線の一部のみからなる関心領域示唆線を前記モニタに表示する関心領域示唆線表示部と
を備える超音波診断装置。

【請求項2】

前記関心領域示唆線は、前記関心領域の輪郭線のうち前記検出対象よりも深部に位置する部分を除いた線である請求項１に記載の超音波診断装置。

【請求項3】

前記関心領域は、四角形の形状を有し、
前記関心領域示唆線は、前記四角形の４つの頂点の位置に配置された４つの部分からなる請求項１に記載の超音波診断装置。

【請求項4】

前記四角形は、前記４つの頂点の位置においてそれぞれ丸みを帯びた角部を有する請求項３に記載の超音波診断装置。

【請求項5】

前記関心領域示唆線は、前記関心領域の輪郭線のうち前記検出対象よりも浅部に位置する部分からなる請求項１に記載の超音波診断装置。

【請求項6】

前記関心領域は、超音波画像における音線ラインに沿い且つ互いに対向する２つの辺を有する請求項１～５のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【請求項7】

前記検出対象は、便である請求項１～５のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【請求項8】

前記検出対象は、肺エコーにおけるＢラインである請求項１～５のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【請求項9】

前記検出対象は、嚢胞である請求項１～５のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【請求項10】

ユーザの入力操作を受け付ける入力装置を備え、
前記関心領域設定部は、前記入力装置を介した前記ユーザの入力操作に基づいて決定された形状およびサイズの少なくとも一方を有する前記関心領域を設定する請求項１～５のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【請求項11】

超音波プローブと、
前記超音波プローブを用いて前記超音波画像を取得する画像取得部と
を備える請求項１～５のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【請求項12】

超音波画像に撮像された検出対象を検出し、
検出された前記検出対象を含む関心領域を前記超音波画像上に設定し、
前記関心領域の輪郭線の一部のみからなる関心領域示唆線をモニタに表示する
超音波診断装置の制御方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、超音波画像内に関心領域を設定する超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法に関する。

【背景技術】

【0002】

従来から、いわゆる超音波診断装置を用いて被検体内の断層を表す超音波画像を取得し、取得された超音波画像に基づいて医師等のユーザにより被検体の検査が行われている。このような被検体の検査をユーザが円滑に行うことができるように、超音波画像に写る被検体の臓器等の対象物を自動的に検出または計測する技術が知られている。この際に、自動的な検出または計測等の処理を行う範囲を限定して処理を円滑に行うために、超音波画像内においていわゆる関心領域が設定されることがある。例えば特許文献１には、検出対象を検出する範囲を限定するために超音波画像内に矩形の関心領域を設定することが開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】国際公開第２０１９／０３９０２８号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ところで、医師等のユーザが超音波画像に写る検出対象を確認して診断を行う際に、検出対象を容易に確認できるように、超音波画像内の検出対象を含む関心領域をモニタに表示することがある。関心領域は、通常、閉じた矩形の枠線により表示されることが多い。

【0005】

また、検出対象が直腸内に存在する便または嚢胞等の場合には、正確な診断を行うために、検出対象だけではなく、検出対象よりも深部の領域においていわゆる後方音響影が存在するか否か、または、いわゆる後方エコーが増強しているか否か等を確認する必要があることが知られている。そのため、閉じた矩形の枠線により関心領域を表示すると、ユーザが、超音波画像において検出対象よりも深部に位置する領域を確認しにくく、正確な診断を容易に行うことが困難な場合があった。

【0006】

本発明はこのような従来の問題点を解消するためになされたものであり、ユーザが容易に且つ正確に診断を行うことができる超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

以下の構成によれば、上記目的を達成できる。
〔１〕 モニタと、
超音波画像に撮像された検出対象を検出する検出対象検出部と、
検出対象検出部により検出された検出対象を含む関心領域を超音波画像上に設定する関心領域設定部と、
関心領域設定部により設定された関心領域の輪郭線の一部のみからなる関心領域示唆線をモニタに表示する関心領域示唆線表示部と
を備える超音波診断装置。
〔２〕 関心領域示唆線は、関心領域の輪郭線のうち検出対象よりも深部に位置する部分を除いた線である〔１〕に記載の超音波診断装置。
〔３〕 関心領域は、四角形の形状を有し、
関心領域示唆線は、四角形の４つの頂点の位置に配置された４つの部分からなる〔１〕に記載の超音波診断装置。
〔４〕 四角形は、４つの頂点の位置においてそれぞれ丸みを帯びた角部を有する〔３〕に記載の超音波診断装置。
〔５〕 関心領域示唆線は、関心領域の輪郭線のうち検出対象よりも浅部に位置する部分からなる〔１〕に記載の超音波診断装置。
〔６〕 関心領域は、超音波画像における音線ラインに沿い且つ互いに対向する２つの辺を有する〔１〕～〔５〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔７〕 検出対象は、便である請求項１～４のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
〔８〕 検出対象は、肺エコーにおけるＢラインである〔１〕～〔５〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔９〕 検出対象は、嚢胞である〔１〕～〔５〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔１０〕 ユーザの入力操作を受け付ける入力装置を備え、
関心領域設定部は、入力装置を介したユーザの入力操作に基づいて決定された形状およびサイズの少なくとも一方を有する関心領域を設定する〔１〕～〔９〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔１１〕 超音波プローブと、
超音波プローブを用いて超音波画像を取得する画像取得部と
を備える〔１〕～〔１０〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔１２〕 超音波画像に撮像された検出対象を検出し、
検出された検出対象を含む関心領域を超音波画像上に設定し、
関心領域の輪郭線の一部のみからなる関心領域示唆線をモニタに表示する
超音波診断装置の制御方法。

【発明の効果】

【0008】

本発明によれば、超音波診断装置が、モニタと、超音波画像に撮像された検出対象を検出する検出対象検出部と、検出対象検出部により検出された検出対象を含む関心領域を超音波画像上に設定する関心領域設定部と、関心領域設定部により設定された関心領域の輪郭線の一部のみからなる関心領域示唆線をモニタに表示する関心領域示唆線表示部とを備えるため、ユーザが容易に且つ正確に診断を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【0009】

【図1】本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。

【図2】本発明の実施の形態における送受信回路の構成を示すブロック図である。

【図3】本発明の実施の形態における画像生成部の構成を示すブロック図である。

【図4】検出対象の輪郭線を示す図である。

【図5】検出対象を含む画像領域を示す図である。

【図6】超音波画像に写る便に対して設定された関心領域の例を示す図である。

【図7】本発明の実施の形態における関心領域示唆線の第１の例を示す図である。

【図8】本発明の実施の形態においてＢラインに対して設定された関心領域示唆線の例を示す図である。

【図9】本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。

【図10】本発明の実施の形態における関心領域示唆線の第２の例を示す図である。

【図11】本発明の実施の形態における関心領域示唆線の第３の例を示す図である。

【図12】本発明の実施の形態における関心領域示唆線の第４の例を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0010】

以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「～」を用いて表される数値範囲は、「～」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。

【0011】

実施の形態
図１に本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ１と、超音波プローブ１に接続される装置本体２を備えている。

【0012】

超音波プローブ１は、振動子アレイ１１を有している。振動子アレイ１１に送受信回路１２が接続されている。

【0013】

装置本体２は、超音波プローブ１の送受信回路１２に接続される画像生成部２１を有している。画像生成部２１に、表示制御部２２およびモニタ２３が、順次、接続されている。また、画像生成部２１に検出対象検出部２４、関心領域設定部２５および関心領域示唆線表示部２６が、順次、接続されている。関心領域示唆線表示部２６は、表示制御部２２に接続している。また、送受信回路１２、画像生成部２１、表示制御部２２、検出対象検出部２４、関心領域設定部２５および関心領域示唆線表示部２６に、本体制御部２７が接続されている。本体制御部２７に、入力装置２８が接続されている。

【0014】

また、送受信回路１２と画像生成部２１により、画像取得部３１が構成されている。また、画像生成部２１、表示制御部２２、検出対象検出部２４、関心領域設定部２５、関心領域示唆線表示部２６および本体制御部２７により、装置本体２用のプロセッサ３２が構成されている。

【0015】

超音波プローブ１の振動子アレイ１１は、１次元または２次元に配列された複数の超音波振動子を有している。これらの超音波振動子は、それぞれ送受信回路１２から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して、超音波エコーに基づく信号を出力する。各超音波振動子は、例えば、ＰＺＴ（Lead Zirconate Titanate：チタン酸ジルコン酸鉛）に代表される圧電セラミック、ＰＶＤＦ（Poly Vinylidene Di Fluoride：ポリフッ化ビニリデン）に代表される高分子圧電素子およびＰＭＮ－ＰＴ（Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate：マグネシウムニオブ酸鉛－チタン酸鉛固溶体）に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。

【0016】

送受信回路１２は、本体制御部２７による制御の下で、振動子アレイ１１から超音波を送信し且つ振動子アレイ１１により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する。送受信回路１２は、図２に示すように、振動子アレイ１１に接続されるパルサ４１と、振動子アレイ１１から順次直列に接続される増幅部４２、ＡＤ（Analog to Digital）変換部４３およびビームフォーマ４４を有している。

【0017】

パルサ４１は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、本体制御部２７からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ１１の複数の超音波振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の超音波振動子に供給する。このように、振動子アレイ１１の超音波振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの超音波振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。

【0018】

送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、超音波プローブ１の振動子アレイ１１に向かって伝搬する。このように振動子アレイ１１に向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ１１を構成するそれぞれの超音波振動子により受信される。この際に、振動子アレイ１１を構成するそれぞれの超音波振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して、電気信号である受信信号を発生させ、これらの受信信号を増幅部４２に出力する。

【0019】

増幅部４２は、振動子アレイ１１を構成するそれぞれの超音波振動子から入力された信号を増幅し、増幅した信号をＡＤ変換部４３に送信する。ＡＤ変換部４３は、増幅部４２から送信された信号をデジタルの受信データに変換する。ビームフォーマ４４は、ＡＤ変換部４３から受け取った各受信データに対してそれぞれの遅延を与えて加算することにより、いわゆる受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、ＡＤ変換部４３で変換された各受信データが整相加算され且つ超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が取得される。

【0020】

画像生成部２１は、図３に示すように、信号処理部４５、ＤＳＣ（Digital Scan Converter：デジタルスキャンコンバータ）４６および画像処理部４７が順次直列に接続された構成を有している。

【0021】

信号処理部４５は、送受信回路１２から受信した音線信号に対し、本体制御部２７により設定される音速値を用いて超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるＢモード画像信号を生成する。

【0022】

ＤＳＣ４６は、信号処理部４５で生成されたＢモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換（ラスター変換）する。
画像処理部４７は、ＤＳＣ４６から入力されるＢモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Ｂモード画像信号を表示制御部２２および検出対象検出部２４に送出する。以降は、画像処理部４７により画像処理が施されたＢモード画像信号を、超音波画像と呼ぶ。

【0023】

表示制御部２２は、本体制御部２７の制御の下で、画像生成部２１により生成された超音波画像等に対して所定の処理を施して、モニタ２３に表示する。
モニタ２３は、表示制御部２２の制御の下で、種々の表示を行う。モニタ２３は、例えば、ＬＣＤ（Liquid Crystal Display：液晶ディスプレイ）、有機ＥＬディスプレイ（Organic Electroluminescence Display）等のディスプレイ装置を含むことができる。

【0024】

検出対象検出部２４は、画像生成部２１により生成された超音波画像を解析することにより、超音波画像に撮像された検出対象を検出する。検出対象検出部２４は、例えば、複数の検出対象それぞれに対して複数のテンプレート画像を記憶しており、これらの複数のテンプレート画像を用いた、いわゆるテンプレートマッチングの方法により超音波画像内をサーチして、検出対象を検出できる。また、検出対象検出部２４は、例えば、複数の検出対象のそれぞれが写る大量の超音波画像を学習した機械学習モデルを有し、この機械学習モデルを用いて超音波画像に写る検出対象を検出することもできる。

【0025】

検出対象検出部２４は、例えば図４に示すように超音波画像Ｕにおける検出対象Ａの輪郭線Ｃを検出結果として出力できる。

【0026】

検出対象検出部２４は、検出対象Ａの輪郭線Ｃを検出結果として出力する代わりに、例えば図５に示すように検出対象Ａを含む矩形の画像領域Ｂを検出結果として出力することもできる。この際に、検出対象Ａの深さ方向の位置が精度良く特定されるために、画像領域Ｂの深さ方向の長さは検出対象Ａの深さ方向の長さの１倍以上且つ２倍未満であることが好ましい。

【0027】

関心領域設定部２５は、例えば図６に示すように、検出対象検出部２４により検出された検出対象Ａを含む関心領域Ｒを超音波画像Ｕ上に設定する。

【0028】

関心領域設定部２５は、検出対象検出部２４が検出対象Ａの輪郭線Ｃを出力する場合に、例えば、輪郭線Ｃを含み且つ輪郭線Ｃに外接する矩形の領域を設定し、その矩形の領域の重心の位置を固定したまま矩形の領域を１倍以上且つ２倍未満の倍率、例えば１．２倍の倍率で拡大することにより、関心領域Ｒを設定できる。

【0029】

また、関心領域設定部２５は、検出対象検出部２４が検出対象Ａの輪郭線Ｃを出力する代わりに検出対象Ａ２を含む画像領域Ｂを出力する場合に、その画像領域Ｂを関心領域Ｒとして設定できる。

【0030】

関心領域示唆線表示部２６は、例えば図７に示すように、関心領域設定部２５により設定された関心領域Ｒの輪郭線Ｑの一部のみからなる関心領域示唆線Ｌをモニタ２３に表示する。ここで、関心領域Ｒの輪郭線Ｑとは関心領域Ｒの輪郭に沿った閉じた枠線のことを指す。図７の例において、関心領域Ｒの輪郭線Ｑは、矩形の関心領域Ｒの輪郭に沿った矩形の枠線である。

【0031】

関心領域示唆線表示部２６は、例えば、図７に示すように、関心領域示唆線Ｌとして、関心領域Ｒの輪郭線Ｑのうち検出対象Ａよりも深部に位置する部分を除いた線を表示できる。

【0032】

ところで、検出対象Ａの種類によっては、検出対象Ａに関する診断を行うために、いわゆる後方エコーを確認する必要がある場合がある。例えば、被検体の直腸内に存在する便に関する診断を行う場合に、便の後方エコーを確認して便よりも深部の領域に、いわゆる後方音響影が存在するか否かを判断する必要があることが知られている。後方音響影は、被検体の体表側から伝搬する超音波が便等の検出対象Ａを通過できないことにより、超音波画像Ｕにおいて検出対象Ａよりも深部に位置する低輝度の領域のことを指す。後方音響影は硬い便が撮影された超音波画像Ｕにおいて発生することが多く、便の性状すなわち便の硬さを判断するために確認されることが多い。

【0033】

本発明の実施の形態において関心領域示唆線表示部２６によりモニタ２３に表示される関心領域示唆線Ｌは、例えば、関心領域Ｒの輪郭線Ｑのうち検出対象Ａよりも深部に位置する部分が除かれた、輪郭線Ｑの一部のみからなる線により構成されるため、医師等のユーザは、後方音響影のような検出対象Ａの後方エコーを明確に確認して、容易に且つ正確に検出対象Ａに関する診断を行うことができる。

【0034】

なお、後方エコーの確認が必要な検出対象Ａとしては、便の他に、例えば嚢胞等が挙げられる。一般的に、嚢胞が撮影された超音波画像Ｕでは、後方エコーが増強する場合があることが知られている。後方エコーの増強は、超音波画像Ｕにおいて、嚢胞等の超音波の減衰が少ない検出対象Ａよりも深部に位置する高輝度の領域のことを指す。このように、検出対象Ａの後方エコーが増強している場合にも、関心領域示唆線Ｌが関心領域Ｒの輪郭線Ｑの一部のみからなる線により構成されるため、ユーザは、後方エコーの増強を明確に確認して、容易に且つ正確に検出対象Ａに関する診断を行うことができる。

【0035】

また、肺エコーにおけるいわゆるＢラインが撮影された超音波画像Ｕにおいて、例えばＢラインの発生箇所を囲む閉じた枠線によりＢラインの関心領域Ｒを表示しようとするとユーザがＢラインの連続性を確認しにくい場合がある。また、Ｂラインの全体を囲む閉じた枠線によりＢラインの関心領域Ｒを表示しようとすると枠線の表示範囲が広くなりユーザが超音波画像Ｕを確認しにくい場合がある。図８に示すように、検出対象ＡがＢラインである場合にも、関心領域示唆線表示部２６により、関心領域示唆線Ｌが関心領域Ｒの輪郭線Ｑの一部のみからなる線により構成されるため、ユーザは、Ｂラインを明確に確認して、容易に且つ正確に肺エコーに関する診断を行うことができる。

【0036】

本体制御部２７は、予め記録されたプログラム等に従って装置本体２の各部および超音波プローブ１を制御する。
入力装置２８は、検査者による入力操作を受け付け、入力された情報を本体制御部２７に送出する。入力装置２８は、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等の検査者が入力操作を行うための装置等により構成される。

【0037】

なお、画像生成部２１、表示制御部２２、検出対象検出部２４、関心領域設定部２５、関心領域示唆線表示部２６および本体制御部２７を有するプロセッサ３２は、ＣＰＵ（Central Processing Unit：中央処理装置）、および、ＣＰＵに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、ＦＰＧＡ（Field Programmable Gate Array：フィードプログラマブルゲートアレイ）、ＤＳＰ（Digital Signal Processor：デジタルシグナルプロセッサ）、ＡＳＩＣ（Application Specific Integrated Circuit：アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット）、ＧＰＵ（Graphics Processing Unit：グラフィックスプロセッシングユニット）、または、その他のＩＣ（Integrated Circuit：集積回路）を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。

【0038】

また、プロセッサ３２の画像生成部２１、表示制御部２２、検出対象検出部２４、関心領域設定部２５、関心領域示唆線表示部２６および本体制御部２７は、部分的にあるいは全体的に１つのＣＰＵ等に統合させて構成されることもできる。

【0039】

次に、図９のフローチャートを用いて実施の形態に係る超音波診断装置の動作の例を説明する。

【0040】

まず、ステップＳ１において、画像取得部３１により超音波画像Ｕが取得される。この際に、超音波プローブ１の振動子アレイ１１により被検体内に超音波ビームが送信され且つ被検体内から超音波エコーが受信され、受信信号が生成される。画像取得部３１の送受信回路１２は、受信信号に対して、本体制御部２７の制御の下でいわゆる受信フォーカス処理を行って音線信号を生成する。送受信回路１２により生成された音線信号は、画像生成部２１に送出される。画像生成部２１は、送受信回路１２から送出された音線信号を用いて超音波画像Ｕを生成する。

【0041】

次に、ステップＳ２において、検出対象検出部２４は、ステップＳ１で取得された超音波画像Ｕを解析することにより、超音波画像Ｕに写る検出対象Ａを検出する。この際に、検出対象検出部２４は、テンプレートマッチングの方法により検出対象Ａを検出することができ、予め検出対象が写る大量の超音波画像Ｕを学習した機械学習モデルにより検出対象を検出することもできる。

【0042】

ステップＳ３において、関心領域設定部２５は、例えば図６に示すように、ステップＳ２で検出された検出対象Ａを含む関心領域Ｒを超音波画像Ｕ上に設定する。この際に、関心領域設定部２５は、ユーザが検出対象Ａの深さ方向の位置を明確に把握できるように、関心領域Ｒの深さ方向の長さを、検出対象Ａの深さ方向の長さの１倍以上且つ２倍未満に設定できる。

【0043】

最後に、ステップＳ４において、関心領域示唆線表示部２６は、例えば図７に示すように、ステップＳ３で設定された関心領域Ｒの輪郭線Ｑの一部のみからなる関心領域示唆線Ｋをモニタ２３に表示する。これにより、後方音響影、後方エコーの増強およびＢライン等の、被検体の診断において有用な、超音波画像Ｕの深部に向かって延びる像が発生した場合でも、医師等のユーザは、関心領域示唆線Ｌに邪魔されることなく、これらの像を明確に確認して、容易に且つ正確に被検体の診断を行うことができる。

【0044】

このようにしてステップＳ４の処理が完了すると、図９のフローチャートに従う超音波診断装置の動作が完了する。

【0045】

以上から、本発明の実施の形態に係る超音波診断装置によれば、検出対象検出部２４が超音波画像Ｕに撮像された検出対象Ａを検出し、関心領域設定部２５が検出対象Ａを含む関心領域Ｒを超音波画像Ｕ上に設定し、関心領域示唆線表示部２６が関心領域Ｒの輪郭線Ｑの一部のみからなる関心領域示唆線Ｌをモニタ２３に表示するため、ユーザは、後方音響影、後方エコーの増強およびＢライン等の被検体の診断において有用な像が発生した場合でも、これらの像を明確に確認して、容易に且つ正確に被検体の診断を行うことができる。

【0046】

なお、送受信回路１２が超音波プローブ１に備えられることが説明されているが、送受信回路１２は装置本体２に備えられていてもよい。
また、画像生成部２１が装置本体２に備えられることが説明されているが、画像生成部２１は超音波プローブ１に備えられていてもよい。

【0047】

また、装置本体２は、いわゆる据え置き型でもよく、持ち運びが容易な携帯型でもよく、例えばスマートフォンまたはタブレット型のコンピュータにより構成される、いわゆるハンドヘルド型でもよい。このように、装置本体２を構成する機器の種類は特に限定されない。

【0048】

また、装置本体２は、画像生成部２１により生成された超音波画像Ｕを検査毎に格納する図示しない画像メモリを備えることもできる。この場合に、例えば、入力装置２８を介したユーザの指示に基づいて、過去の検査で取得され且つ画像メモリに格納された超音波画像Ｕに対して図９のフローチャートにおけるステップＳ２～ステップＳ４の処理を行うこともできる。

【0049】

また、装置本体２は、図示しない外部の機器から超音波画像Ｕを入力するための図示しない画像入力部を備えることもできる。この場合に、例えば、入力装置２８を介したユーザの指示に基づいて、画像入力部を介して外部の機器から入力された超音波画像Ｕに対して図９のフローチャートにおけるステップＳ２～ステップＳ４の処理を行うこともできる。

【0050】

また、関心領域示唆線表示部２６が、関心領域示唆線Ｌとして、関心領域Ｒの輪郭線Ｑのうち検出対象Ａよりも深部に位置する部分を除いた線をモニタ２３に表示できることが説明されているが、関心領域示唆線Ｌの態様は、特にこれに限定されない。

【0051】

例えば図１０に示すように、関心領域示唆線Ｌは、関心領域Ｒの輪郭線Ｑのうち検出対象Ａよりも浅部に位置する部分からなることもできる。

【0052】

また、関心領域Ｒが四角形の形状を有する場合に、例えば図１１に示すように、関心領域示唆線Ｌは、四角形の４つの頂点の位置に配置された４つの部分からなることもできる。図１１には関心領域Ｒが矩形であることが示されているが、関心領域Ｒの形状が例えば台形等の矩形以外の四角形であっても、関心領域示唆線Ｌは、四角形の４つの頂点の位置に配置された４つの部分からなることができる。

【0053】

ここで、四角形は、４つの頂点の位置において直角の角部を有する四角形の他、一定の曲率を有することにより丸みを帯びた角部を有するいわゆる角丸四角形であってもよい。例えば空虚な直腸と便等、複数の検出対象Ａが設定される場合に、空虚な直腸に対して直角の角部を有する四角形を関心領域Ｒとして設定し、便に対して角丸四角形を関心領域Ｒとして設定することもできる。この場合に、例えば空虚な直腸に対しては直角の４つの角部からなる関心領域示唆線Ｌを設定でき、便に対しては丸みを帯びた４つの角部からなる関心領域示唆線Ｌを設定できる。これにより、ユーザは、関心領域示唆線Ｌの形状を確認して、関心領域Ｒが設定された検出対象Ａの種類を把握できる。

【0054】

また、関心領域設定部２５により設定される関心領域Ｒが矩形であることが説明されているが、矩形に限定されず、円形、多角形等の任意の形状を有することができる。

【0055】

例えば図１２に示すように、関心領域Ｒは、超音波画像Ｕの音線ラインに沿い且つ互いに対向する２つの辺Ｅ１およびＥ２を有することができる。後方音響影、増強された後方エコーおよびＢライン等の像は、通常、音線ラインに沿って形成されるため、関心領域Ｒが音線ラインに沿って延びる２つの辺Ｅ１およびＥ２を有することにより、関心領域示唆線Ｌが後方音響影、増強された後方エコーおよびＢライン等の像に重ならず、ユーザがこれらの像をより明確に確認できる。

【0056】

また、関心領域Ｒの形状およびサイズは、例えば、入力装置２８を介したユーザの入力操作に基づいて決定されることもできる。この際に関心領域設定部２５は、入力装置２８を介したユーザの入力操作に基づいて決定された形状およびサイズの少なくとも一方を有する関心領域Ｒを超音波画像Ｕ上に設定できる。

【0057】

また、検出対象検出部２４が画像生成部２１により生成された超音波画像Ｕを解析することにより検出対象Ａを検出することが説明されているが、検出対象検出部２４は、例えば、信号処理部４５により生成されたＢモード画像信号を解析することで検出対象Ａを検出することもできる。この場合に、関心領域設定部２５は、信号処理部４５により生成されたＢモード画像信号に対して関心領域Ｒを設定することができる。

【0058】

このようにして関心領域Ｒが設定されたＢモード画像信号がＤＳＣ４６および画像処理部４７による処理を経ると、Ｂモード画像信号に設定された関心領域Ｒは、図１２に示されるような音線ラインに沿った形状に変換される。このようにして関心領域Ｒが設定される場合でも、関心領域示唆線表示部２６により、関心領域Ｒの輪郭線Ｑの一部のみからなる関心領域示唆線Ｌがモニタ２３に表示されるため、ユーザは、後方音響影、後方エコーの増強およびＢライン等の被検体の診断において有用な像が発生した場合でも、これらの像を明確に確認して、容易に且つ正確に被検体の診断を行うことができる。

【符号の説明】

【0059】

１ 超音波プローブ、２ 装置本体、１１ 振動子アレイ、１２ 送受信回路、２１ 画像生成部、２２ 表示制御部、２３ モニタ、２４ 検出対象検出部、２５ 関心領域設定部、２６ 関心領域示唆線表示部、２７ 本体制御部、２８ 入力装置、３１ 画像取得部、３２ プロセッサ、４１ パルサ、４２ 増幅部、４３ ＡＤ変換部、４４ ビームフォーマ、４５ 信号処理部、４６ ＤＳＣ、４７ 画像処理部、Ａ 検出対象、Ｂ 画像領域、Ｃ，Ｑ 輪郭線、Ｅ１，Ｅ２ 辺、Ｌ 関心領域示唆線、Ｒ 関心領域、Ｕ 超音波画像。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】