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特開2024-39916超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039916
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144651
(22)【出願日】2022-09-12
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】宮地 幸哉
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD14
4C601DD30
4C601EE09
4C601EE11
4C601JB34
4C601JC06
4C601JC09
4C601JC37
4C601LL26
(57)【要約】
【課題】ユーザが容易に且つ正確に診断を行うことができる超音波診断装置の制御方法および超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波診断装置は、超音波画像に撮像された少なくとも1つの検出対象を検出する検出対象検出部(24)と、検出対象検出部(24)により複数の検出対象が検出された場合に、複数の検出対象のうち一部の検出対象のみに対して一部の検出対象を含む関心領域を設定する関心領域設定部(26)とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像に撮像された少なくとも1つの検出対象を検出する検出対象検出部と、
前記検出対象検出部により複数の検出対象が検出された場合に、前記複数の検出対象のうち一部の検出対象のみに対して前記一部の検出対象を含む関心領域を設定する関心領域設定部と
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記検出対象検出部により検出された前記少なくとも1つの検出対象の確度を算出する確度算出部を備え、
前記関心領域設定部は、前記複数の検出対象から、前記確度算出部により算出された前記確度に基づいて前記一部の検出対象を決定する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
ユーザの入力操作を受け付ける入力装置と、
前記入力装置を介した前記ユーザの入力操作に基づいて、前記確度算出部により算出された前記確度に重み付けを行う重み付け部と
を備える請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記複数の検出対象は、直腸と便である請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記複数の検出対象は、前立腺と子宮である請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記複数の検出対象は、血管のプラークと非プラーク部位である請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波画像に基づいて血管の内膜中膜複合体厚を計測する計測部を備え、
前記関心領域設定部は、前記プラークおよび前記非プラーク部位の一方に対して前記関心領域を設定し、
前記計測部は、前記関心領域設定部により前記関心領域が設定された前記プラークおよび前記非プラーク部位の前記一方の前記内膜中膜複合体厚を計測する請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを用いて前記超音波画像を取得する画像取得部と
を備える請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
超音波画像に撮像された少なくとも1つの検出対象を検出し、
複数の検出対象が検出された場合に、前記複数の検出対象のうち一部の検出対象のみに対して前記一部の検出対象を含む関心領域を設定する
超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像内に関心領域を設定する超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆる超音波診断装置を用いて被検体内の断層を表す超音波画像を取得し、取得された超音波画像に基づいて医師等のユーザにより被検体の診断が行われている。このような被検体の検査をユーザが円滑に行うことができるように、超音波画像に写る被検体の臓器等の対象物を自動的に検出する技術が知られている。例えば、特許文献1には、被検体内の検出対象を撮影した大量の超音波画像を予め学習した機械学習モデルにより検出対象を自動的に検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-137974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるように検出対象を自動的に検出する場合に、検出の処理がなされる超音波画像によっては、例えば便と空虚な直腸の短軸像等、超音波画像内に一緒に描出されるはずがない複数の検出対象が一緒に検出されてしまうことがあった。この場合に医師等のユーザは、超音波画像内の検出対象を正確に把握できず、検出対象に関する診断を容易に且つ正確に行うことが困難な場合があった。
【0005】
ところで、超音波画像に基づいて、いわゆるIMT(Intima-Media Thickness:内膜中膜複合体厚)のうち最も厚いIMTである、いわゆるmaxIMTが計測されることがある。血管内にいわゆるプラークが発生している場合には、通常、プラークが発生している部位のIMTを計測することによりmaxIMTが計測される。例えば特許文献1に開示されているような技術によりmaxIMTの計測箇所を自動的に検出しようとすると、プラークと、プラークが発生していない部位である非プラーク部位の双方が検出されてしまうことがあった。このように、適切な計測箇所以外の箇所まで検出されてしまう場合に、ユーザは、適切な計測位置を把握できず、その後の診断を容易に且つ正確に行うことが困難な場合があった。
【0006】
本発明はこのような従来の問題点を解消するためになされたものであり、容易に且つ正確に診断を行うことができる超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の構成によれば、上記目的を達成できる。
〔1〕 超音波画像に撮像された少なくとも1つの検出対象を検出する検出対象検出部と、
検出対象検出部により複数の検出対象が検出された場合に、複数の検出対象のうち一部の検出対象のみに対して一部の検出対象を含む関心領域を設定する関心領域設定部と
を備える超音波診断装置。
〔2〕 検出対象検出部により検出された少なくとも1つの検出対象の確度を算出する確度算出部を備え、
関心領域設定部は、複数の検出対象から、確度算出部により算出された確度に基づいて一部の検出対象を決定する〔1〕に記載の超音波診断装置。
〔3〕 ユーザの入力操作を受け付ける入力装置と、
入力装置を介したユーザの入力操作に基づいて、確度算出部により算出された確度に重み付けを行う重み付け部と
を備える〔2〕に記載の超音波診断装置。
〔4〕 複数の検出対象は、直腸と便である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔5〕 複数の検出対象は、前立腺と子宮である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔6〕 複数の検出対象は、血管のプラークと非プラーク部位である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔7〕 超音波画像に基づいて血管の内膜中膜複合体厚を計測する計測部を備え、
関心領域設定部は、プラークおよび非プラーク部位の一方に対して関心領域を設定し、
計測部は、関心領域設定部により関心領域が設定されたプラークおよび非プラーク部位の一方の内膜中膜複合体厚を計測する〔6〕に記載の超音波診断装置。
〔8〕 超音波プローブと、
超音波プローブを用いて超音波画像を取得する画像取得部と
を備える〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の超音波診断装置。
〔9〕 超音波画像に撮像された少なくとも1つの検出対象を検出し、
複数の検出対象が検出された場合に、複数の検出対象のうち一部の検出対象のみに対して一部の検出対象を含む関心領域を設定する
超音波診断装置の制御方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超音波診断装置が、超音波画像に撮像された少なくとも1つの検出対象を検出する検出対象検出部と、検出対象検出部により複数の検出対象が検出された場合に、複数の検出対象のうち一部の検出対象のみに対して一部の検出対象を含む関心領域を設定する関心領域設定部とを備えるため、ユーザが容易に且つ正確に診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態1における送受信回路の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1における画像生成部の構成を示すブロック図である。
図4】検出対象の輪郭線を示す図である。
図5】検出対象を含む画像領域を示す図である。
図6】便と空虚な直腸の双方が検出された超音波画像の例を示す図である。
図7】超音波画像に写る便に対して設定された関心領域の例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図10】本発明の実施の形態3に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0011】
実施の形態1
図1に本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、超音波プローブ1に接続される装置本体2を備えている。
【0012】
超音波プローブ1は、振動子アレイ11を有している。振動子アレイ11に送受信回路12が接続されている。
【0013】
装置本体2は、超音波プローブ1の送受信回路12に接続される画像生成部21を有している。画像生成部21に、表示制御部22およびモニタ23が、順次、接続されている。また、画像生成部21に検出対象検出部24、確度算出部25および関心領域設定部26が、順次、接続されている。関心領域設定部26は、表示制御部22に接続している。また、送受信回路12、画像生成部21、表示制御部22、検出対象検出部24、確度算出部25および関心領域設定部26に、本体制御部27が接続されている。本体制御部27に、入力装置28が接続されている。
【0014】
また、送受信回路12と画像生成部21により、画像取得部31が構成されている。また、画像生成部21、表示制御部22、検出対象検出部24、確度算出部25および関心領域設定部26および本体制御部27により、装置本体2用のプロセッサ32が構成されている。
【0015】
超音波プローブ1の振動子アレイ11は、1次元または2次元に配列された複数の超音波振動子を有している。これらの超音波振動子は、それぞれ送受信回路12から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して、超音波エコーに基づく信号を出力する。各超音波振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。
【0016】
送受信回路12は、本体制御部27による制御の下で、振動子アレイ11から超音波を送信し且つ振動子アレイ11により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する。送受信回路12は、図2に示すように、振動子アレイ11に接続されるパルサ41と、振動子アレイ11から順次直列に接続される増幅部42、AD(Analog to Digital)変換部43およびビームフォーマ44を有している。
【0017】
パルサ41は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、本体制御部27からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ11の複数の超音波振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の超音波振動子に供給する。このように、振動子アレイ11の超音波振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの超音波振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0018】
送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、超音波プローブ1の振動子アレイ11に向かって伝搬する。このように振動子アレイ11に向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子により受信される。この際に、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して、電気信号である受信信号を発生させ、これらの受信信号を増幅部42に出力する。
【0019】
増幅部42は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子から入力された信号を増幅し、増幅した信号をAD変換部43に送信する。AD変換部43は、増幅部42から送信された信号をデジタルの受信データに変換する。ビームフォーマ44は、AD変換部43から受け取った各受信データに対してそれぞれの遅延を与えて加算することにより、いわゆる受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、AD変換部43で変換された各受信データが整相加算され且つ超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が取得される。
【0020】
画像生成部21は、図3に示すように、信号処理部45、DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)46および画像処理部47が順次直列に接続された構成を有している。
【0021】
信号処理部45は、送受信回路12から受信した音線信号に対し、本体制御部27により設定される音速値を用いて超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
【0022】
DSC46は、信号処理部45で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部47は、DSC46から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部22および検出対象検出部24に送出する。以降は、画像処理部47により画像処理が施されたBモード画像信号を、超音波画像と呼ぶ。
【0023】
表示制御部22は、本体制御部27の制御の下で、画像生成部21により生成された超音波画像等に対して所定の処理を施して、モニタ23に表示する。
モニタ23は、表示制御部22の制御の下で、種々の表示を行う。モニタ23は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)等のディスプレイ装置を含むことができる。
【0024】
検出対象検出部24は、画像生成部21により生成された超音波画像を解析することにより、超音波画像に撮像された少なくとも1つの検出対象を検出する。検出対象検出部24は、例えば、複数の検出対象それぞれに対して複数のテンプレート画像を記憶しており、これらの複数のテンプレート画像を用いた、いわゆるテンプレートマッチングの方法により超音波画像内をサーチして、検出対象を検出できる。
【0025】
また、検出対象検出部24は、例えば、複数の検出対象のそれぞれが写る大量の超音波画像を学習した機械学習モデルを有し、この機械学習モデルを用いて超音波画像に写る検出対象を検出することもできる。検出対象検出部24は、この際に、機械学習の分野において一般的に特徴量と呼ばれる中間的な数値データを検出対象毎に出力できる。
【0026】
検出対象検出部24は、例えば図4に示すように超音波画像Uにおける検出対象Aの輪郭線Cを検出結果として出力できる。
【0027】
検出対象検出部24は、検出対象Aの輪郭線Cを検出結果として出力する代わりに、例えば図5に示すように検出対象Aを含む矩形の画像領域Bを検出結果として出力することもできる。この際に、検出対象Aの深さ方向の位置が精度良く特定されるために、画像領域Bの深さ方向の長さは検出対象Aの深さ方向の長さの1倍以上且つ2倍未満であることが好ましい。
【0028】
確度算出部25は、検出対象検出部24により検出された少なくとも1つの検出対象Aの確度を算出する。ここで、検出対象Aの確度とは、検出対象Aに関する検出結果の確からしさの度合いを表す指標のことを指し、例えば、数値として算出されることができる。確度算出部25は、検出対象検出部24がテンプレートマッチングにより検出対象Aを検出する場合に、例えば、超音波画像Uにおいて検出対象Aを表していると判断した部分とテンプレート画像との類似度により検出対象Aの確度を算出できる。確度算出部25は、検出対象検出部24が機械学習モデルにより検出対象Aを検出する場合に、例えば、検出対象検出部24から検出対象A毎に出力される特徴量に基づいて検出対象Aの確度を算出することもできる。
【0029】
ところで、一般的に、検出対象Aを自動的に検出する場合に、検出の処理がなされる超音波画像によっては、便と空虚な直腸の短軸像等、超音波画像内に一緒に描出されるはずがない複数の検出対象Aが一緒に検出されてしまうことがある。この場合に医師等のユーザは、超音波画像内の検出対象Aを正確に把握できず、検出対象Aに関する診断を容易に且つ正確に行うことが困難な場合があった。ここで、直腸の短軸像とは、直腸の走行方向に対しておよそ直交する方向に沿った直腸の横断面像のことを指す。
【0030】
関心領域設定部26は、検出対象検出部24により複数の検出対象Aが検出された場合に、医師等のユーザに検出対象Aを正確に把握させるために、複数の検出対象Aのうち一部の検出対象Aのみに対して一部の検出対象Aを含む関心領域を設定する。
【0031】
関心領域設定部26は、例えば検出対象検出部24により、検出対象Aとして図6に示すように便A1と空虚な直腸A2の双方が検出された場合に、確度算出部25により便A1と直腸A2のそれぞれに対して算出された確度を参照し、より高い確度を有する検出対象Aに対して図7に示すように関心領域Rを設定できる。なお、図7では、便A1と直腸A2のうち便A1のみを含む矩形の関心領域Rが設定されている。
【0032】
関心領域設定部26は、検出対象検出部24が検出対象Aの輪郭線Cを出力する場合に、例えば、輪郭線Cを含み且つ輪郭線Cに外接する矩形の領域を設定し、その矩形の領域の重心の位置を固定したまま矩形の領域を1倍以上且つ2倍未満の倍率、例えば1.2倍の倍率で拡大することにより、関心領域Rを設定できる。
【0033】
また、関心領域設定部26は、検出対象検出部24が検出対象Aの輪郭線Cを出力する代わりに検出対象Aを含む画像領域Bを出力する場合に、その画像領域Bを関心領域Rとして設定できる。
【0034】
このようにして関心領域設定部26により設定された関心領域Rは、例えば、関心領域Rの縁を表す閉じた枠線によりモニタ23に表示されることができる。医師等のユーザは、モニタ23に表示された関心領域Rを確認することにより、超音波画像Uに写る検出対象Aを確認できる。
【0035】
本体制御部27は、予め記録されたプログラム等に従って装置本体2の各部および超音波プローブ1を制御する。
入力装置28は、検査者による入力操作を受け付け、入力された情報を本体制御部27に送出する。入力装置28は、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等の検査者が入力操作を行うための装置等により構成される。
【0036】
なお、画像生成部21、表示制御部22、検出対象検出部24、確度算出部25、関心領域設定部26および本体制御部27を有するプロセッサ32は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、または、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0037】
また、プロセッサ32の画像生成部21、表示制御部22、検出対象検出部24、確度算出部25、関心領域設定部26および本体制御部27は、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成されることもできる。
【0038】
次に、図8のフローチャートを用いて実施の形態1に係る超音波診断装置の動作の例を説明する。
【0039】
まず、ステップS1において、画像取得部31により超音波画像Uが取得される。この際に、超音波プローブ1の振動子アレイ11により被検体内に超音波ビームが送信され且つ被検体内から超音波エコーが受信され、受信信号が生成される。画像取得部31の送受信回路12は、受信信号に対して、本体制御部27の制御の下でいわゆる受信フォーカス処理を行って音線信号を生成する。送受信回路12により生成された音線信号は、画像生成部21に送出される。画像生成部21は、送受信回路12から送出された音線信号を用いて超音波画像Uを生成する。
【0040】
次に、ステップS2において、検出対象検出部24は、ステップS1で取得された超音波画像Uを解析することにより、超音波画像Uに写る検出対象Aを検出する。この際に、検出対象検出部24は、テンプレートマッチングの方法により検出対象Aを検出することができ、予め検出対象Aが写る大量の超音波画像Uを学習した機械学習モデルにより検出対象Aを検出することもできる。
【0041】
ステップS3において、本体制御部27は、ステップS2で複数の検出対象Aが検出されたか否かを判定する。図6に示すように、例えば便A1と直腸A2等の複数の検出対象Aが検出されたとステップS3で判定された場合に、ステップS4に進む。
【0042】
ステップS4において、確度算出部25は、ステップS2で検出された複数の検出対象Aの確度を算出する。確度算出部25は、ステップS2でテンプレートマッチングにより検出対象Aが検出された場合に、例えば、超音波画像Uにおいて検出対象Aを表していると判断した部分とテンプレート画像との類似度により検出対象Aの確度を算出できる。また、確度算出部25は、ステップS2で機械学習モデルにより検出対象Aが検出された場合に、例えば、検出対象検出部24から検出対象A毎に出力される特徴量に基づいて検出対象Aの確度を算出することもできる。
【0043】
ステップS5において、関心領域設定部26は、ステップS2で検出された複数の検出対象Aのうち一部の検出対象Aに対して関心領域Rを設定する。例えば検出対象Aとして図6に示すように便A1と直腸A2がステップS2で検出された場合に、関心領域設定部26は、ステップS3で便A1と直腸A2のそれぞれに対して算出された確度を参照して、便A1と直腸A2のうち、より高い確度を有する検出対象Aに対して関心領域Rを設定できる。例えば便A1の確度が直腸A2の確度よりも高い場合に、関心領域設定部26は、例えば図7に示すように便A1に対して関心領域Rを設定できる。
【0044】
ステップS5で設定された関心領域Rは、表示制御部22に送出されて、例えば、関心領域Rの縁を表す閉じた枠線によりモニタ23に表示されることができる。
【0045】
このように、関心領域設定部26は、ステップS2で検出された複数の検出対象Aのうち一部の検出対象Aのみに対して関心領域Rを設定するため、特に、ステップS2において、便A1と直腸A2の短軸像等の、本来は超音波画像Uに一緒に写るはずがない複数の検出対象Aが検出されてしまった場合でも、ユーザは、関心領域Rを確認することにより、超音波画像Uに写る検出対象Aを容易に且つ正確に把握できる。
【0046】
また、ステップS3において、1つの検出対象AのみがステップS2で検出されたと判定された場合に、ステップS6に進む。ステップS6において、関心領域設定部26は、ステップS2で検出された1つの検出対象Aに対して関心領域Rを設定する。ステップS6で設定された関心領域Rは、ステップS5で設定される関心領域Rと同様にしてモニタ23に表示されることができる。
【0047】
このようにしてステップS5またはステップS6の処理が完了すると、図8に示す超音波診断装置の動作が完了する。
【0048】
以上から、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置によれば、検出対象検出部24が超音波画像Uに撮像された少なくとも1つの検出対象Aを検出し、関心領域設定部26が、検出対象検出部24により複数の検出対象Aが検出された場合に、複数の検出対象Aのうち一部の検出対象Aのみに対して一部の検出対象Aを含む関心領域Rを設定するため、医師等のユーザは、超音波画像Uに写る検出対象Aを正確に把握して、検出対象Aに関する診断を容易に且つ正確に行うことができる。
【0049】
なお、送受信回路12が超音波プローブ1に備えられることが説明されているが、送受信回路12は装置本体2に備えられていてもよい。
また、画像生成部21が装置本体2に備えられることが説明されているが、画像生成部21は超音波プローブ1に備えられていてもよい。
【0050】
また、装置本体2は、いわゆる据え置き型でもよく、持ち運びが容易な携帯型でもよく、例えばスマートフォンまたはタブレット型のコンピュータにより構成される、いわゆるハンドヘルド型でもよい。このように、装置本体2を構成する機器の種類は特に限定されない。
【0051】
また、装置本体2は、画像生成部21により生成された超音波画像Uを検査毎に格納する図示しない画像メモリを備えることもできる。この場合に、例えば、入力装置28を介したユーザの指示に基づいて、過去の検査で取得され且つ画像メモリに格納された超音波画像Uに対して図8のフローチャートにおけるステップS2~ステップS6の処理を行うこともできる。
【0052】
また、装置本体2は、図示しない外部の機器から超音波画像Uを入力するための図示しない画像入力部を備えることもできる。この場合に、例えば、入力装置28を介したユーザの指示に基づいて、画像入力部を介して外部の機器から入力された超音波画像Uに対して図8のフローチャートにおけるステップS2~ステップS6の処理を行うこともできる。
【0053】
また、関心領域設定部26により設定される関心領域Rが矩形であることが説明されているが、矩形に限定されず、円形、多角形等の任意の形状を有することができる。
【0054】
また、関心領域Rが、関心領域Rの縁を表す閉じた枠線によりモニタ23に表示されることが説明されているが、関心領域Rの表示態様は特に限定されない。例えば、関心領域Rの縁を表す線の一部のみが表示されてもよい。例えば、関心領域Rが矩形の形状を有している場合に、矩形の縁を表す線のうち四隅の部分のみを表示することもできる。
【0055】
また、検出対象検出部24は、いわゆるテンソルフロー(TensorFlow)またはいわゆるケラス(Keras)と呼ばれる機械学習のライブラリを用いて構築された機械学習モデルにより検出対象Aを検出することもできる。検出対象検出部24は、このような機械学習モデルにより検出対象Aを検出する際に、検出対象A毎に確度を一緒に出力することもできる。この場合に、確度算出部25は、改めて確度を計算することなく、検出対象検出部24により出力された確度をそのまま関心領域設定部26に送出できる。
【0056】
また、検出対象検出部24により検出された複数の検出対象Aの例として、便A1と直腸A2が挙げられているが、検出対象Aの種類は特にこれに限定されない。
【0057】
例えば、検出対象検出部24により検出される複数の検出対象Aの例として前立腺と子宮も挙げられる。通常、前立腺は男性の体内に存在する臓器であり、子宮は女性の体内に存在する臓器であるため、前立腺と子宮は超音波画像Uにおいて一緒には写らない。関心領域設定部26は、検出対象検出部24により前立腺と子宮の双方が検出されてしまった場合でも、例えば確度算出部25により算出された確度に基づいて前立腺と子宮のいずれか一方に対して関心領域Rを設定できる。医師等のユーザは、設定された関心領域Rを確認することにより、検出対象Aの種類と位置を正確に把握して、被検体の診断を容易に且つ正確に行うことができる。
【0058】
ここで、関心領域設定部26が、検出対象検出部24により検出された2つの検出対象Aのうち1つの検出対象Aに対してのみ関心領域Rを設定する例が説明されているが、検出対象検出部24により検出された3つ以上の検出対象Aのうち一部の検出対象Aに対してのみ関心領域Rを設定することもできる。
【0059】
例えば、この場合に検出対象検出部24により検出される複数の検出対象Aの例として血管内に発生するいわゆるプラークと、プラークが発生していない血管内の部位である非プラーク部位が挙げられる。一般的に、超音波画像に基づいて、いわゆるIMT(Intima-Media Thickness:内膜中膜複合体厚)のうち最も厚いIMTである、いわゆるmaxIMTが計測されることがある。血管のプラークが発生している場合には、通常、プラークが発生している部位のIMTを計測することによりmaxIMTが計測される。超音波画像U内には、複数のプラークおよび複数の非プラーク部位が一緒に写ることがある。この場合に、複数のプラークおよび複数の非プラーク部位が検出されると、ユーザは、適切な計測位置の判断が困難になる場合がある。
【0060】
関心領域設定部26は、複数のプラークおよび複数の非プラーク部位からなる複数の検出対象Aが検出対象検出部24により検出された場合に、例えばこれらの複数の検出対象Aのうち複数のプラークに対してのみ関心領域Rを設定できる。これにより、ユーザは、例えばmaxIMTの適切な計測位置を容易に把握して、その後の計測および診断を容易に且つ正確に行うことができる。
【0061】
実施の形態2
入力装置28を介したユーザによる入力操作に基づいて確度算出部25により算出された確度に重み付けを行うこともできる。
【0062】
図9に、実施の形態2に係る超音波診断装置の構成を示す。実施の形態2の超音波診断装置は、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置において、装置本体2の代わりに装置本体2Aを備えている。装置本体2Aは、実施の形態2における装置本体2において、重み付け部51が追加され、本体制御部27の代わりに本体制御部27Aを備えている。
【0063】
装置本体2Aにおいて、確度算出部25に重み付け部51が接続されている。重み付け部51に関心領域設定部26および本体制御部27Aが接続されている。また、画像生成部21、表示制御部22、検出対象検出部24、確度算出部25、関心領域設定部26、本体制御部27Aおよび重み付け部51により、装置本体2A用のプロセッサ32Aが構成されている。
【0064】
重み付け部51は、入力装置28を介したユーザの入力操作に基づいて、確度算出部25により算出された確度に重み付けを行う。例えば、特定の検出対象Aを優先して検出する旨の情報が入力装置28を介してユーザにより入力された場合に、重み付け部51は、ユーザにより入力された特定の検出対象Aの確度が元の確度よりも大きくなるように重み付けを行う。より具体的には、確度が数値により算出される場合に、重み付け部51は、ユーザにより入力された特定の検出対象Aの確度に対して定められた正の数の加算または1よりも大きい定められた数の乗算等により重み付けを行うことができる。
【0065】
以上により、実施の形態2の超音波診断装置によれば、重み付け部51が入力装置28を介したユーザの入力操作に基づいて確度算出部25により算出された確度に重み付けを行うため、ユーザが優先して検出したい検出対象Aに関心領域Rが設定されやすくなる。これにより、超音波画像Uの鮮明度が低い場合等、何らかの理由により検出対象Aに対する検出精度が低下してしまう場合でも、ユーザは、目的の検出対象Aを容易に把握できる。
【0066】
なお、重み付け部51は、入力装置28を介してユーザにより入力された被検体の情報に基づいて特定の検出対象Aの確度に重み付けを行うこともできる。重み付け部51は、例えば、ユーザにより被検体の性別が入力された場合に、入力された性別が男性であれば前立腺の確度に対して重み付けを行い、入力された性別が女性であれば子宮の確度に対して重み付けを行うことができる。これにより、超音波画像Uに写る検出対象Aに対してより正確に関心領域Rを設定できる。
【0067】
実施の形態3
検出対象検出部24によって検出される検出対象Aが血管のプラークと非プラーク部位である場合に、検出されたプラークまたは非プラーク部位に対してIMTを自動的に計測することもできる。
【0068】
図10に、実施の形態3に係る超音波診断装置の構成を示す。実施の形態3の超音波診断装置は、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置において、装置本体2の代わりに装置本体2Bを備えている。装置本体2Bは、実施の形態1における装置本体2において、確度算出部25が取り除かれ、計測部52が追加され、本体制御部27の代わりに本体制御部27Bを備えている。
【0069】
装置本体2Bにおいて、画像生成部21および関心領域設定部26に計測部52が接続されている。また、計測部52に、表示制御部22および本体制御部27Bが接続されている。また、画像生成部21、表示制御部22、検出対象検出部24、関心領域設定部26、本体制御部27Bおよび計測部52により、装置本体2B用のプロセッサ32Bが構成されている。
【0070】
検出対象検出部24は、検出対象Aとして血管のプラークと非プラーク部位を検出する処理を行う。
【0071】
関心領域設定部26は、検出対象検出部24の検出結果に応じて血管のプラークと非プラーク部位の一方に対して関心領域Rを設定する。この際に、関心領域設定部26は、例えば、検出対象検出部24により血管のプラークが検出された場合に、検出されたプラークに対して関心領域Rを設定し、検出対象検出部24により血管のプラークが検出される代わりに非プラーク部位のみが検出された場合に、検出された非プラーク部位に対して関心領域Rを設定できる。これにより、例えば血管のmaxIMTの計測に適した箇所に関心領域Rを自動的に設定できる。
【0072】
計測部52は、超音波画像Uに基づいて、関心領域設定部26により関心領域Rが設定されたプラークが位置する血管の箇所および非プラーク部位の一方のIMTを自動的に計測する。計測部52によるIMTの計測結果は、表示制御部22に送出されて、モニタ23に例えば数値として表示される。これにより、ユーザは、血管のmaxIMTを容易に確認できる。
【0073】
以上から、実施の形態3の超音波診断装置によれば、関心領域設定部26が検出対象検出部24における検出結果に応じて血管のプラークおよび非プラーク部位の一方に対して関心領域Rを設定し、計測部52が、超音波画像Uに基づいて、関心領域設定部26により関心領域Rが設定されたプラークが位置している血管の箇所および非プラーク部位の一方のIMTを自動的に計測するため、ユーザは、例えば血管のmaxIMTを容易に確認して、被検体の診断を容易に行うことができる。
【0074】
なお、図1に示す実施の形態1の超音波診断装置および図9に示す実施の形態2の超音波診断装置に対して、実施の形態3の超音波診断装置のように、装置本体2および2Aに計測部52を設けることもできる。超音波診断装置がこのような装置構成を有する場合でも、実施の形態3の超音波診断装置を同様に、計測部52が、超音波画像Uに基づいて、関心領域設定部26により関心領域Rが設定されたプラークが位置している血管の箇所および非プラーク部位の一方のIMTを自動的に計測するため、ユーザは、例えば血管のmaxIMTを容易に確認して、被検体の診断を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
1 超音波プローブ、2,2A,2B 装置本体、11 振動子アレイ、12 送受信回路、21 画像生成部、22 表示制御部、23 モニタ、24 検出対象検出部、25 確度算出部、26 関心領域設定部、27,27A,27B 本体制御部、28 入力装置、31 画像取得部、32,32A,32B プロセッサ、41 パルサ、42 増幅部、43 AD変換部、44 ビームフォーマ、45 信号処理部、46 DSC、47 画像処理部、51 重み付け部、52 計測部、A 検出対象、A1 便、A2 直腸、B 画像領域、C 輪郭線、R 関心領域、U 超音波画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10