(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024039920
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】超音波診断システムおよび超音波診断システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144657
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】坪田 圭司
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD01
4C601EE11
4C601JC06
4C601JC11
4C601JC15
4C601KK31
4C601LL21
(57)【要約】
【課題】明確な排泄記録を容易に作成できる超音波診断システムおよび超音波診断システムの制御方法を提供する。
【解決手段】超音波診断システムは、超音波プローブ(1)と、超音波プローブ(1)を走査することにより被検体に関する超音波信号を取得する超音波信号取得部(31)と、超音波信号を解析することにより被検体の直腸を検出する直腸検出部(24)と、超音波信号を解析することにより直腸検出部(24)により検出された直腸内に存在する便を検出する便検出部(25)と、便検出部(25)により検出された便の性状、太さ、量のうち少なくとも1つを含む便超音波データを取得する便超音波データ取得部(26)と、便超音波データ取得部(26)により取得された便超音波データを日時と併せて表形式により記憶する便データメモリ(28)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを走査することにより被検体に関する超音波信号を取得する超音波信号取得部と、
前記超音波信号を解析することにより前記被検体の直腸を検出する直腸検出部と、
前記超音波信号を解析することにより前記直腸検出部により検出された前記直腸内に存在する便を検出する便検出部と、
前記便検出部により検出された前記便の性状、太さ、量のうち少なくとも1つを含む便超音波データを取得する便超音波データ取得部と、
前記便超音波データ取得部により取得された前記便超音波データを日時と併せて表形式により記憶する便データメモリと
を備える超音波診断システム。
【請求項2】
前記超音波プローブと前記超音波信号取得部と前記直腸検出部と前記便検出部と前記便超音波データ取得部と前記便データメモリを含む診断装置を備え、
前記診断装置は、前記便データメモリに記憶された前記便超音波データおよび日時を表示する診断装置モニタを有する請求項1に記載の超音波診断システム。
【請求項3】
前記超音波プローブと前記超音波信号取得部と前記直腸検出部と前記便検出部と前記便超音波データ取得部と前記便データメモリを含む診断装置と、
ネットワークを介して前記診断装置に接続されたサーバと
を備え、
前記サーバは、前記便データメモリに記憶された前記便超音波データおよび日時を記憶するサーバ側便データメモリを有する請求項1に記載の超音波診断システム。
【請求項4】
前記便超音波データ取得部は、前記便超音波データとして、前記便の量を段階的に、または、体積値により取得する請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波診断システム。
【請求項5】
前記便検出部は、前記直腸内における前記便の先端を検出し、
前記便超音波データ取得部は、前記便検出部により検出された前記先端の位置を含む前記便超音波データを取得する請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波診断システム。
【請求項6】
排便後の前記便を光学的に撮影する光学カメラと、
前記光学カメラにより撮影された前記便の光学画像に基づいて前記便の性状、量、色のうち少なくとも1つを含む便光学データを取得する便光学データ取得部と
を備え、
前記便データメモリは、前記便超音波データ取得部により取得された前記便超音波データおよび前記便光学データ取得部により取得された前記便光学データを日時と併せて記憶する請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波診断システム。
【請求項7】
前記被検体に対して実施された便に関する処置および特記事項の少なくとも一方を含む便関連事項を入力する入力装置を備え、
前記便データメモリは、前記入力装置を介して入力された前記便関連事項を記憶する請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波診断システム。
【請求項8】
前記便データメモリは、前記被検体に対して実施された尿量計測値を日時と併せて記憶する請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波診断システム。
【請求項9】
超音波プローブを走査することにより被検体に関する超音波信号を取得し、
前記超音波信号を解析することにより前記被検体の直腸を検出し、
前記超音波信号を解析することにより前記直腸内に存在する便を検出し、
検出された前記便の性状、太さ、量のうち少なくとも1つを含む便超音波データを取得し、
取得された前記便超音波データを日時と併せて表形式により記憶する
超音波診断システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の直腸の検査に使用される超音波診断システムおよび超音波診断システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆる超音波診断システムを用いて被検体の大腸の断層を表す超音波画像を撮影することにより大腸内の便に関する診断が行われている。医師等のユーザは、通常、その経験または知識等に基づいて撮影された超音波画像を観察することにより、便の性状等を判断し、被検体に必要な処置を施すことが多い。そこで、医師等のユーザが便に関する診断を円滑に行うために、例えば特許文献1に開示されるような、超音波画像を解析して便の性状を自動的に評価する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、慢性的な便秘患者は、一般的に、適切な処置が施されずに放置されてしまうと、例えば腸閉塞、直腸潰瘍または虚血性腸炎等の疾病を引き起こすことがある。そのため、看護および介護の医療現場では、被検体に対して適切な処置を行うために、被検体の排泄記録の作成が求められている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術を用いたとしても、排泄記録の作成は多忙な医療現場では負担であることが多い。また、通常、排泄記録の内容は作成者の主観に基づいており、その記載方法は作成者毎に異なることが多いため、排泄記録の作成者と検査者が異なる場合に、検査者が排泄記録の内容を把握するために労力を要してしまうことがあった。
【0006】
本発明はこのような従来の問題点を解消するためになされたものであり、明確な排泄記録を容易に作成できる超音波診断システムおよび超音波診断システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の構成によれば、上記目的を達成できる。
〔1〕 超音波プローブと、
超音波プローブを走査することにより被検体に関する超音波信号を取得する超音波信号取得部と、
超音波信号を解析することにより被検体の直腸を検出する直腸検出部と、
超音波信号を解析することにより直腸検出部により検出された直腸内に存在する便を検出する便検出部と、
便検出部により検出された便の性状、太さ、量のうち少なくとも1つを含む便超音波データを取得する便超音波データ取得部と、
便超音波データ取得部により取得された便超音波データを日時と併せて表形式により記憶する便データメモリと
を備える超音波診断システム。
〔2〕 超音波プローブと超音波信号取得部と直腸検出部と便検出部と便超音波データ取得部と便データメモリを含む診断装置を備え、
診断装置は、便データメモリに記憶された便超音波データおよび日時を表示する診断装置モニタを有する〔1〕に記載の超音波診断システム。
〔3〕 超音波プローブと超音波信号取得部と直腸検出部と便検出部と便超音波データ取得部と便データメモリを含む診断装置と、
ネットワークを介して診断装置に接続されたサーバと
を備え、
サーバは、便データメモリに記憶された便超音波データおよび日時を記憶するサーバ側便データメモリを有する〔1〕に記載の超音波診断システム。
〔4〕 便超音波データ取得部は、便超音波データとして、便の量を段階的に、または、体積値により取得する〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の超音波診断システム。
〔5〕 便検出部は、直腸内における便の先端を検出し、
便超音波データ取得部は、便検出部により検出された先端の位置を含む便超音波データを取得する〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の超音波診断システム。
〔6〕 排便後の便を光学的に撮影する光学カメラと、
光学カメラにより撮影された便の光学画像に基づいて便の性状、量、色のうち少なくとも1つを含む便光学データを取得する便光学データ取得部と
を備え、
便データメモリは、便超音波データ取得部により取得された便超音波データおよび便光学データ取得部により取得された便光学データを日時と併せて記憶する〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の超音波診断システム。
〔7〕 被検体に対して実施された便に関する処置および特記事項の少なくとも一方を含む便関連事項を入力する入力装置を備え、
便データメモリは、入力装置を介して入力された便関連事項を記憶する〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の超音波診断システム。
〔8〕 便データメモリは、被検体に対して実施された尿量計測値を日時と併せて記憶する〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の超音波診断システム。
〔9〕 超音波プローブを走査することにより被検体に関する超音波信号を取得し、
超音波信号を解析することにより被検体の直腸を検出し、
超音波信号を解析することにより直腸内に存在する便を検出し、
検出された便の性状、太さ、量のうち少なくとも1つを含む便超音波データを取得し、
取得された便超音波データを日時と併せて表形式により記憶する
超音波診断システムの制御方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超音波診断システムが、超音波プローブと、超音波プローブを走査することにより被検体に関する超音波信号を取得する超音波信号取得部と、超音波信号を解析することにより被検体の直腸を検出する直腸検出部と、超音波信号を解析することにより直腸検出部により検出された直腸内に存在する便を検出する便検出部と、便検出部により検出された便の性状、太さ、量のうち少なくとも1つを含む便超音波データを取得する便超音波データ取得部と、便超音波データ取得部により取得された便超音波データを日時と併せて表形式により記憶する便データメモリとを備えるため、明確な排泄記録を容易に作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る超音波診断システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における送受信回路の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における画像生成部の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態1において便データメモリに記憶される表形式のデータの例を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る超音波診断システムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態1において便データメモリに記憶される表形式のデータの他の例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る超音波診断システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の実施の形態2における診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施の形態2におけるサーバの構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の実施の形態3に係る超音波診断システムの構成を示すブロック図である。
【
図11】本発明の実施の形態3において便データメモリに記憶される表形式のデータの例である。
【
図12】本発明の実施の形態4に係る超音波診断システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0011】
実施の形態1
図1に本発明の実施の形態1に係る超音波診断システムの構成を示す。超音波診断システムは、超音波プローブ1と、超音波プローブ1に接続される装置本体2を備えている。
【0012】
超音波プローブ1は、振動子アレイ11を有している。振動子アレイ11に送受信回路12が接続されている。
【0013】
装置本体2は、超音波プローブ1の送受信回路12に接続される画像生成部21を有している。画像生成部21に、表示制御部22および診断装置モニタ23が、順次、接続されている。また、画像生成部21に直腸検出部24、便検出部25および便超音波データ取得部26が接続されている。また、直腸検出部24に便検出部25が接続され、便検出部25に便超音波データ取得部26が接続されている。また、装置本体2は、日時取得部27を備えている。便超音波データ取得部26および日時取得部27に、便データメモリ28が接続されている。便データメモリ28は表示制御部22に接続している。また、送受信回路12、画像生成部21、表示制御部22、直腸検出部24、便検出部25、便超音波データ取得部26、日時取得部27および便データメモリ28に、本体制御部29が接続されている。また、本体制御部29に入力装置30が接続されている。
【0014】
また、送受信回路12と画像生成部21により、超音波信号取得部31が構成されている。また、画像生成部21、表示制御部22、直腸検出部24、便検出部25、便超音波データ取得部26、日時取得部27および本体制御部29により装置本体2用のプロセッサ32が構成されている。
【0015】
超音波プローブ1の振動子アレイ11は、1次元または2次元に配列された複数の超音波振動子を有している。これらの超音波振動子は、それぞれ送受信回路12から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して、超音波エコーに基づく信号を出力する。各超音波振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。
【0016】
送受信回路12は、本体制御部29による制御の下で、振動子アレイ11から超音波を送信し且つ振動子アレイ11により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する。送受信回路12は、
図2に示すように、振動子アレイ11に接続されるパルサ41と、振動子アレイ11から順次直列に接続される増幅部42、AD(Analog to Digital)変換部43およびビームフォーマ44を有している。
【0017】
パルサ41は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、本体制御部29からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ11の複数の超音波振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の超音波振動子に供給する。このように、振動子アレイ11の超音波振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの超音波振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0018】
送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、超音波プローブ1の振動子アレイ11に向かって伝搬する。このように振動子アレイ11に向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子により受信される。この際に、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して、電気信号である受信信号を発生させ、これらの受信信号を増幅部42に出力する。
【0019】
増幅部42は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子から入力された信号を増幅し、増幅した信号をAD変換部43に送信する。AD変換部43は、増幅部42から送信された信号をデジタルの受信データに変換する。ビームフォーマ44は、AD変換部43から受け取った各受信データに対してそれぞれの遅延を与えて加算することにより、いわゆる受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、AD変換部43で変換された各受信データが整相加算され且つ超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が取得される。
【0020】
画像生成部21は、
図3に示すように、信号処理部45、DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)46および画像処理部47が順次直列に接続された構成を有している。
【0021】
信号処理部45は、送受信回路12から受信した音線信号に対し、本体制御部29により設定される音速値を用いて超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
【0022】
DSC46は、信号処理部45で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部47は、DSC46から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部22、直腸検出部24、便検出部25および便超音波データ取得部26に送出する。以降は、画像処理部47により画像処理が施されたBモード画像信号を、超音波画像と呼ぶ。
【0023】
表示制御部22は、本体制御部29の制御の下で、画像生成部21により生成された超音波画像等に対して所定の処理を施して、診断装置モニタ23に表示する。
診断装置モニタ23は、表示制御部22の制御の下で、種々の表示を行う。診断装置モニタ23は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)等のディスプレイ装置を含むことができる。
【0024】
本体制御部29は、予め記録されたプログラム等に従って装置本体2の各部および超音波プローブ1を制御する。
入力装置30は、検査者による入力操作を受け付け、入力された情報を本体制御部29に送出する。入力装置30は、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等の検査者が入力操作を行うための装置等により構成される。
【0025】
直腸検出部24は、画像生成部21により生成された超音波画像を解析することにより、超音波画像に撮像された被検体の直腸を検出する。ここで、本発明では、超音波プローブ1を被検体の腹部に接触させた状態で直腸の超音波画像を撮影するいわゆる経腹アプローチの方法、または、超音波プローブ1を被検体の臀裂に接触させた状態で直腸の超音波画像を撮影するいわゆる経臀裂アプローチの方法により、被検体の直腸を撮影した超音波画像を得ることができる。
【0026】
直腸検出部24は、例えば、被検体の直腸に対する複数のテンプレート画像を記憶しており、これらの複数のテンプレート画像を用いた、いわゆるテンプレートマッチングの方法により超音波画像内をサーチして、直腸を検出できる。また、直腸検出部24は、例えば、被検体の直腸が写る大量の超音波画像を学習した機械学習モデルを有し、この機械学習モデルを用いて超音波画像に写る被検体の直腸を検出することもできる。
【0027】
便検出部25は、直腸検出部24による直腸の検出結果に基づいて画像生成部21により生成された超音波画像を解析することにより、直腸内に存在する便を検出する。便検出部25は、例えば、便に対する複数のテンプレート画像を記憶しており、これらの複数のテンプレート画像を用いたテンプレートマッチングの方法により、超音波画像において直腸検出部24によって検出された直腸の領域内をサーチして、直腸に存在する便を検出できる。また、直腸検出部24は、例えば、被検体の直腸が写る大量の超音波画像を学習した機械学習モデルを有し、この機械学習モデルを用いて超音波画像において直腸検出部24によって検出された直腸の領域内をサーチすることにより、直腸に存在する便を検出することもできる。
【0028】
便超音波データ取得部26は、便検出部25による便の検出結果に基づいて画像生成部21により生成された超音波画像を解析することにより、便検出部25により検出された便の性状、太さ、量のうち少なくとも1つを含む便超音波データを取得する。
【0029】
一般的に、硬便の場合には超音波が便を通過しにくく、便の浅部でほとんどの超音波が反射するため、いわゆる三日月型の高輝度領域として超音波画像に写り、普通便では硬便よりも超音波が通過しやすいためにいわゆる半月型の高輝度領域として超音波画像に写り、軟便の場合には超音波が便を通過しやすいため、いわゆる全周性の低輝度領域として超音波画像に写ることが知られている。このように、便の性状に応じて超音波画像における便の写り方が異なる。便超音波データ取得部26は、例えば、テンプレートマッチングの方法により便の性状を取得できる。便超音波データ取得部26は、例えば、便が写る大量の超音波画像とそれらの便の性状に関する情報を学習した機械学習モデルを用いることにより、便超音波データ取得部26は、便の性状を取得することもできる。
【0030】
なお、便超音波データ取得部26は、便の性状としていわゆるブリストルスケールにおける性状の分類を取得できる。ブリストルスケールは、便の性状を、硬くてコロコロの兎糞状の便である「コロコロの便」、ソーセージ状であるが硬い便である「硬い便」、表面にひび割れのあるソーセージ状の便である「やや硬い便」、表面がなめらかで柔らかいソーセージ状あるいは蛇のようなとぐろを巻く便である「普通便」、はっきりとした皺のある柔らかい半分固形の便である「やや柔らかい便」、境界がほぐれて不定形の小片便または泥状の便である「泥状便」および水様で固形物を含まない液体状の便である「水様便」の7つの状態に分類している。本明細書では、「コロコロの便」を「硬便++」、「硬い便」を「硬便+」、「やや硬い便」を「硬便」、「やや柔らかい便」を「軟便」、「泥状便」を「軟便-」、「水様便」を「軟便--」と呼ぶことがある。
【0031】
また、便超音波データ取得部26は、例えば、超音波画像において便検出部25により検出された便のサイズを計測することによって便の太さを取得できる。
【0032】
また、便超音波データ取得部26は、連続する複数フレームの超音波画像において便検出部25により検出された便の領域の面積を算出し、複数フレームの超音波画像における便の面積を積分して便の体積を算出することにより、便の量を取得できる。また、便超音波データ取得部26は、便の体積に関する複数のしきい値を有し、複数のしきい値により、例えば「大量」、「中量」、「少量」等の段階的な区分を算出することにより、便の量を取得することもできる。
【0033】
また、便検出部25は、超音波画像を解析することにより、直腸内における便の先端を検出できる。便超音波データ取得部26は、例えば経臀裂アプローチにより超音波画像が撮影された場合に、超音波画像の上端すなわち最も浅い位置から便検出部25により検出された便の先端までの距離を計測することにより、肛門から計測した便の先端の位置を取得できる。
【0034】
また、例えば経腹アプローチにより超音波プローブ1を肛門側に傾けながら連続的に複数フレームの超音波画像が撮影される場合に、便超音波データ取得部26は、便検出部25により便の先端が検出されるフレームから肛門が検出されるフレームまでの複数フレームの超音波画像と肛門からの便の先端の位置の組み合わせを大量に学習した機械学習モデルを用いることにより、肛門からの便の先端の位置を取得することもできる。
【0035】
日時取得部27は、いわゆるシステムクロックまたはいわゆるハードウェアクロックと呼ばれる内蔵時計を有しており、本体制御部29による制御の下で、超音波画像が撮影された日時を取得する。また、超音波診断システムが後述するような有線通信または無線通信、携帯電話回線等によりネットワークに接続可能な場合に、ネットワークを介してNTP(Network Time Protocol)サーバと接続し、NTPサーバから取得した日時を用いても良い。
【0036】
便データメモリ28は、本体制御部29による制御の下で、例えば
図4に示すように、便超音波データ取得部26により取得された便超音波データと日時取得部27により取得された日時を併せて、定められたフォーマットに従う表形式により記憶する。このようにして作成された表データは、被検体の排泄に関する記録である排泄記録として使用できる。また、便データメモリ28に記憶された表データは、本体制御部29の制御の下で、表示制御部22に送出され、排泄記録として診断装置モニタ23に表示できる。
【0037】
便データメモリ28としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disk:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disk:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、または、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア等を用いることができる。
【0038】
ところで、慢性的な便秘患者は、一般的に、適切な処置が施されずに放置されてしまうと、例えば腸閉塞、直腸潰瘍または虚血性腸炎等の疾病を引き起こすことがある。そのため、看護および介護の医療現場では、被検体に対して適切な処置を行うために、被検体の排泄記録の作成が求められている。
【0039】
しかしながら、通常、排泄記録の作成は多忙な医療現場では負担であることが多い。また、通常、排泄記録の内容は作成者の主観に基づいており、その記載方法は作成者毎に異なることが多いため、排泄記録の作成者と検査者が異なる場合に、検査者が排泄記録の内容を把握するために労力を要してしまうことがあった。
【0040】
装置本体2では、便超音波データ取得部26により取得される便超音波データと、日時取得部27により取得される日時が互いに紐付けられて、被検体の排泄記録として、表形式により自動的に便データメモリ28に記憶されるため、例えばユーザが手動で排泄記録を作成する必要が無く、容易に排泄記録が得られる。また、便データメモリ28により記憶される表データは、定められたフォーマットを有しているため、ユーザが表データの内容を容易に読み取ることができる。また、ユーザは、肛門からの便の先端の位置と日時を併せて確認することにより、次回の排泄の時刻を大まかに予測して、被検体に対して適切な処置を行うことができる。
【0041】
なお、画像生成部21、表示制御部22、直腸検出部24、便検出部25、便超音波データ取得部26、日時取得部27および本体制御部29を有するプロセッサ32は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、または、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0042】
また、プロセッサ32の画像生成部21、表示制御部22、直腸検出部24、便検出部25、便超音波データ取得部26、日時取得部27および本体制御部29は、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成されることもできる。
【0043】
次に、
図5のフローチャートを用いて実施の形態1に係る超音波診断システムの動作の例を説明する。
【0044】
まず、ステップS1において、超音波信号取得部31により被検体の直腸を撮影した超音波画像が取得される。この際に、超音波プローブ1の振動子アレイ11により被検体内に超音波ビームが送信され且つ被検体内から超音波エコーが受信され、受信信号が生成される。超音波信号取得部31の送受信回路12は、受信信号に対して、本体制御部29の制御の下でいわゆる受信フォーカス処理を行って音線信号を生成する。送受信回路12により生成された音線信号は、画像生成部21に送出される。画像生成部21は、送受信回路12から送出された音線信号を用いて超音波画像を生成する。
【0045】
次に、ステップS2において、日時取得部27は、ステップS1で超音波画像が撮影された際の日時を取得する。日時取得部27は、例えば、システムクロックまたはハードウェアクロックと呼ばれる内蔵時計を有しており、その内蔵時計から日時を取得できる。また、超音波診断システムが後述するような有線通信または無線通信、携帯電話回線等によりネットワークに接続可能な場合に、ネットワークを介してNTPサーバと接続し、NTPサーバから取得した日時を用いても良い。
【0046】
ステップS3において、直腸検出部24は、ステップS1で取得された超音波画像を解析することにより、被検体の直腸を検出する。直腸検出部24は、例えばテンプレートマッチングにより直腸を検出することができ、直腸が撮影された大量の超音波画像を学習した機械学習モデルにより直腸を検出することもできる。
【0047】
ステップS4において、便検出部25は、ステップS1で取得された超音波画像を解析することにより、ステップS3で検出された直腸内に存在する便を検出する。便検出部25は、例えばテンプレートマッチングにより便を検出することができ、直腸に存在する便が撮影された大量の超音波画像を学習した機械学習モデルにより直腸内に存在する便を検出することもできる。
【0048】
ステップS5において、便超音波データ取得部26は、ステップS4における便の検出結果に基づいてステップS1で取得された超音波画像を解析することにより、ステップS4で検出された便の性状、太さ、量のうち少なくとも1つを含む便超音波データを取得する。
【0049】
最後に、ステップS6において、本体制御部29は、例えば
図4に示すように、ステップS2で取得された日時と、ステップS5で取得された便超音波データを併せて、定められたフォーマットに従う表形式により便データメモリ28に記憶させる。これにより作成された表データは、被検体の排泄記録として診断装置モニタ23に表示できる。また、表データは、図示しない外部の機器等に送信されて、例えば、被検体の排泄記録として紙等の印刷媒体上に印刷することもできる。
【0050】
このようにして、ステップS2で取得された日時とステップS5で取得された便超音波データが互いに紐付けられて、被検体の排泄記録として、表形式により自動的に便データメモリ28に記憶されるため、例えばユーザが手動で排泄記録を作成する必要が無く、容易に排泄記録が得られる。また、便データメモリ28により記憶される表データは、定められたフォーマットを有しているため、ユーザが表データの内容を容易に読み取ることができる。
【0051】
このようにしてステップS6の処理が完了すると、
図5に示すフローチャートに従う超音波診断システムの動作が完了する。
【0052】
以上から、本発明の超音波診断システムによれば、日時取得部27により取得された日時と、便超音波データ取得部26により取得された便超音波データが互いに紐付けられて、定められたフォーマットに従う表形式により、自動的に便データメモリ28に記憶されるため、明確な排泄記録を容易に作成できる。
【0053】
なお、送受信回路12が超音波プローブ1に備えられることが説明されているが、送受信回路12は装置本体2に備えられていてもよい。
また、画像生成部21が装置本体2に備えられることが説明されているが、画像生成部21は超音波プローブ1に備えられていてもよい。
【0054】
また、装置本体2は、いわゆる据え置き型でもよく、持ち運びが容易な携帯型でもよく、例えばスマートフォンまたはタブレット型のコンピュータにより構成される、いわゆるハンドヘルド型でもよい。このように、装置本体2を構成する機器の種類は特に限定されない。
【0055】
また、直腸検出部24、便検出部25および便超音波データ取得部26が、画像生成部21により生成された超音波画像を解析することが説明されているが、超音波画像の代わりに、送受信回路12により生成される音線信号が解析されてもよく、画像生成部21の信号処理部45により包絡線検波処理が行われることにより生成されるBモード画像信号が解析されてもよい。この場合でも、直腸検出部24は被検体の直腸を検出でき、便検出部25は直腸内に存在する便を検出でき、便超音波データ取得部26は便超音波データを取得できる。本発明では、音線信号、包絡線検波処理により生成されたBモード画像信号および超音波画像等の、直腸および便に関する情報を含み且つ直腸検出部24、便検出部25および便超音波データ取得部26における解析の対象となる信号をまとめて超音波信号と呼んでいる。
【0056】
また、入力装置30を介してユーザに、被検体に対して実施された便に関する処置、および、例えば潜血の有無および便の臭い等の特記事項の少なくとも一方を含む便関連事項を入力させることができる。この場合に、便データメモリ28は、例えば
図6に示すように、便超音波データおよび日時と併せて、入力装置30を介してユーザに入力された便関連事項を表形式で記憶することができる。
図6に例示される表には、被検体に対する処置として「浣腸」、「座薬」、「下剤」および「摘便」の項目が含まれている。このようにして、便関連事項が便データメモリ28に記憶されることにより、医師等のユーザは、例えば表データとして診断装置モニタ23に表示された便関連事項を確認することにより、被検体の排泄の状態をより詳細に把握して、被検体に対して適切な処置を施すことができる。
【0057】
なお、入力装置30を介した便関連事項の入力方法として、ユーザが自由に内容を入力する方法が用いられることができ、項目毎に予め用意された複数の入力内容のうちいずれかを選択する方法が用いられることもできる。
【0058】
実施の形態2
超音波診断システムは、診断装置とサーバにより構成することもできる。
【0059】
図7に、実施の形態2に係る超音波診断システムの構成を示す。実施の形態2の超音波診断システムは、診断装置5とサーバ6がネットワークNWを介して互いに接続されることにより構成されている。サーバ6は、例えば、診断装置5に対して離れた場所に設置できる。
【0060】
図8に、診断装置5の構成を示す。診断装置5は、
図1に示す実施の形態1の超音波診断システムにおいて、装置本体2の代わりに装置本体2Aを備えたものである。装置本体2Aは、実施の形態1における装置本体2において、通信回路51が追加され、本体制御部29の代わりに本体制御部29Aを備えている。
【0061】
診断装置5において、便データメモリ28に通信回路51が接続されている。通信回路51は、ネットワークNWに接続される。また、画像生成部21、表示制御部22、直腸検出部24、便検出部25、便超音波データ取得部26、日時取得部27および本体制御部29Aにより、装置本体2A用のプロセッサ32Aが構成されている。
【0062】
本体制御部29Aは、便データメモリ28に記憶された、日時と便超音波データを含む表データを通信回路51に送信する。
【0063】
通信回路51は、いわゆる有線通信またはいわゆる無線通信によりネットワークNWに接続されており、本体制御部29Aによる制御の下で、便データメモリ28から受信した表データをネットワークNWを介してサーバ6に送信する。通信回路51は、例えばネットワークNWに接続されたLAN(Local Area Network:ローカルエリアネットワーク)ケーブル等の通信ケーブルが接続されることにより、ネットワークNWに有線接続できる。通信回路51は、例えば、電波を送受信するアンテナを有することにより、ネットワークNWと無線接続できる。
【0064】
図9に、サーバ6の構成を示す。サーバ6は、ネットワークNWに接続される通信回路61を備えている。通信回路61に、サーバ側便データメモリ62およびサーバ制御部63が接続されている。また、サーバ制御部63により、サーバ6用の図示しないプロセッサが構成されている。
【0065】
サーバ6の通信回路61は、診断装置5の通信回路51と同様に、有線通信または無線通信によりネットワークNWに接続されている。通信回路61は、サーバ制御部63の制御の下で、ネットワークNWを介して診断装置5から日時と便超音波データを含む表データを受信して、その表データをサーバ側便データメモリ62に送信する。
【0066】
サーバ側便データメモリ62は、通信回路61から受信した表データ、すなわち、便データメモリ28に記憶された便超音波データおよび日時を含む表データを記憶する。サーバ側便データメモリ62としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD、SSD、FD、MOディスク、MT、RAM、CD、DVD、SDカード、または、USBメモリ等の記録メディア等を用いることができる。
【0067】
ここで、サーバ6は、例えば、超音波診断装置のメーカまたはサードパーティの事業者等により提供されるクラウドサーバ、または、病院内に設置されるサーバ等として使用できる。この場合に、例えば、在宅看護等の医療現場で診断装置5を用いて被検体の便の検査を行うユーザが、図示しないスマートフォンまたはパーソナルコンピュータ等の情報端末からネットワークNWを経由してサーバ6にアクセスし、サーバ側便データメモリ62に記憶されている表データを管理および閲覧できる。これにより、ユーザは、被検体の排泄記録として、便超音波データおよび日時を含む表データを容易に確認できる。
【0068】
また、サーバ側便データメモリ62に記憶されている表データを医師が閲覧する場合に、医師は、例えば、在宅看護等の医療現場で診断装置5を用いて被検体の便の検査を行うユーザに対して、被検体に対する処置に関する指示を行うことができる。ユーザは、医師の指示を受けて被検体に対して適切な処置を行うことができる。
【0069】
以上から、実施の形態2の超音波診断システムによれば、ユーザが、その所在地に関わらず、便超音波データおよび日時を含む表データを容易に確認できる。
【0070】
なお、サーバ6は、LCD、有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置を含む図示しないサーバモニタを有することもできる。これにより、サーバ6の設置場所に位置する医師等の閲覧者が、サーバ側便データメモリ62に保存されている表データを確認して、被検体の排泄の状況を容易に把握できる。
【0071】
実施の形態3
実施の形態1および2では、便超音波データと日時が表形式で便データメモリ28に記憶されることが説明されているが、便データメモリ28は、さらに、便の光学画像から得られるデータを記憶することもできる。
【0072】
図10に実施の形態3に係る超音波診断システムの構成を示す。実施の形態3の超音波診断システムは、
図1に示す実施の形態1の超音波診断システムにおいて、光学カメラ71が追加され、装置本体2の代わりに装置本体2Bを備えている。装置本体2Bは、実施の形態1における装置本体2において、便光学データ取得部72が追加され、本体制御部29の代わりに本体制御部29Bを備えている。
【0073】
装置本体2Bにおいて、便光学データ取得部72は、光学カメラ71、便データメモリ28および本体制御部29Bに接続されている。画像生成部21、表示制御部22、直腸検出部24、便検出部25、便超音波データ取得部26、日時取得部27、本体制御部29Bおよび便光学データ取得部72により、装置本体2B用のプロセッサ32Bが構成されている。
【0074】
光学カメラ71は、例えばいわゆるCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)イメージセンサまたはいわゆるCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等のイメージセンサを含み、被検体の排便後の便を光学的に撮影して光学画像を取得する。光学カメラ71は、取得された光学画像を便光学データ取得部72に送信する。
【0075】
便光学データ取得部72は、光学カメラ71により撮影された便の光学画像を解析することにより光学画像に写る便を検出し、便の性状、量、色のうち少なくとも1つを含む便光学データを取得する。
【0076】
便光学データ取得部72は、例えば、様々な性状の便が撮影された大量の光学画像を学習した機械学習モデルを有し、その機械学習モデルを用いて便の性状を算出することができる。便光学データ取得部72は、この際に、便の性状として例えばブリストルスケールにおける性状の分類を取得できる。
【0077】
便光学データ取得部72は、例えば、寸法の基準となるスケールと一緒に複数の方向から便を撮影した光学画像に基づいて便の体積を算出することにより、便の量を取得できる。便光学データ取得部72は、例えば、様々な便を撮影した大量の光学画像とそれらの便の体積を学習した機械学習モデルを用いて便の体積を算出することもできる。また、便光学データ取得部72は、便の体積に関する複数のしきい値を有し、複数のしきい値により、例えば「大量」、「中量」、「少量」等の段階的な区分を算出することにより、便の量を取得することもできる。
【0078】
ところで、一般的に、黄褐色の便は正常な便であり、黄色の便は高度の下痢便であることが多く、濃褐色の便は便秘または肉類の多い食事が原因である等、被検体の健康状態等に応じた便の色が知られている。便光学データ取得部72は、光学画像に写る便の色を、例えば、一般的に知られている便の色である、黄褐色、黄色、茶褐色、濃褐色、黒色および緑色等の複数の定められた色のうちのいずれかに分類することにより、便の色を取得できる。
【0079】
便データメモリ28は、本体制御部29Bの制御の下で、例えば
図11に示すように、便超音波データ取得部26により取得された便超音波データおよび便光学データ取得部72により取得された便光学データを、日時取得部27により取得された日時と併せて表形式により記憶する。
図11の例では、日時、便超音波データおよび便光学データの他に便関連事項を含む表データが示されている。
【0080】
このようにして便データメモリ28に記憶された表データは、本体制御部29Bの制御の下で表示制御部22に送出され、被検体の排泄記録として診断装置モニタ23に表示できる。
【0081】
以上から、実施の形態3の超音波診断システムによれば、便データメモリ28が、便超音波データ取得部26により取得された便超音波データおよび便光学データ取得部72により取得された便光学データが、日時取得部27により取得された日時と併せて表形式により記憶するため、ユーザは、この際に作成された表データを確認することにより、被検体の排泄の状態をより詳細に把握して、被検体に対する適切な処置を行うことができる。
【0082】
実施の形態4
実施の形態1~3では、便データメモリ28が便に関するデータを記憶することが説明されているが、例えば、被検体の膀胱内の尿量を記憶することもできる。
【0083】
図12に、実施の形態4に係る超音波診断システムの構成を示す。実施の形態4の超音波診断システムは、
図1に示す実施の形態1の超音波診断システムにおいて、装置本体2の代わりに装置本体2Cを備えている。装置本体2Cは、実施の形態1における装置本体2において、尿量計測部73が追加され、本体制御部29の代わりに本体制御部29Cを備えている。
【0084】
装置本体2Cにおいて、画像生成部21、便データメモリ28および本体制御部29Cに尿量計測部73が接続されている。画像生成部21、表示制御部22、直腸検出部24、便検出部25、便超音波データ取得部26、日時取得部27、本体制御部29Cおよび尿量計測部73により、装置本体2C用のプロセッサ32Cが構成されている。
【0085】
尿量計測部73は、画像生成部21により生成された、被検体の膀胱が撮影された超音波画像に基づいて、被検体の膀胱内の尿量を計測する。尿量計測部73は、例えば、互いに直交する2つの方向から被検体の膀胱が撮影された2フレームの超音波画像から互いに直交する3つの方向に沿った膀胱の寸法を算出できる。尿量計測部73は、さらに、膀胱を楕円に近似して、算出された3つの寸法を用いて膀胱の体積を近似的に算出することにより、膀胱内の尿量を計測できる。
【0086】
便データメモリ28は、このようにして尿量計測部73により被検体に対して実施された尿量計測値を、便超音波データ取得部26により取得された便超音波データおよび日時取得部27により取得された日時と併せて表形式により記憶することができる。これにより作成された表データは、本体制御部29Cの制御の下で表示制御部22に送信され、診断装置モニタ23に表示される。
【0087】
以上から、実施の形態4の超音波診断システムによれば、尿量計測部73が、被検体の膀胱を撮影した超音波画像に基づいて被検体の膀胱内の尿量を計測し、便データメモリ28が、便超音波データ取得部26により取得された便超音波データおよび日時取得部27により取得された日時と併せて表形式で記憶するため、ユーザは、このようにして作成された表データを確認することにより、被検体の排泄の状態をより詳細に把握して、被検体に対して適切な処置を行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1 超音波プローブ、2,2A,2B,2C 装置本体、5 診断装置、6 サーバ、11 振動子アレイ、12 送受信回路、21 画像生成部、22 表示制御部、23 診断装置モニタ、24 直腸検出部、25 便検出部、26 便超音波データ取得部、27 日時取得部、28 便データメモリ、29,29A,29B,29C 本体制御部、30 入力装置、31 超音波信号取得部、32,32A,32B,32C プロセッサ、51,61 通信回路、62 サーバ側便データメモリ、63 サーバ制御部、71 光学カメラ、72 便光学データ取得部、73 尿量計測部、NW ネットワーク。