(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040073
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】ガス拡散防止機構
(51)【国際特許分類】
F16J 15/14 20060101AFI20240315BHJP
B01F 27/80 20220101ALI20240315BHJP
B01F 35/213 20220101ALI20240315BHJP
B01F 35/214 20220101ALI20240315BHJP
B01F 35/22 20220101ALI20240315BHJP
B01F 35/30 20220101ALI20240315BHJP
B01F 35/45 20220101ALI20240315BHJP
B65D 90/28 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
F16J15/14 G
B01F27/80
B01F35/213
B01F35/214
B01F35/22
B01F35/30
B01F35/45
B65D90/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144918
(22)【出願日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 勝耐
【テーマコード(参考)】
3E170
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
3E170AA01
3E170AB01
3E170BA10
3E170RA20
3E170VA11
4G037DA04
4G037EA04
4G078AA18
4G078BA05
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、水溶性の有害成分を含んだガスを漏出させないガス拡散防止機構を提供する。
【解決手段】槽60に据え付けられた撹拌機70の取付フランジ部71に設置するガス拡散防止機構100であって、槽60の天蓋61上に取付フランジ部71を囲むように立設された下部側壁11から成る下部貯水槽15と、下部側壁11から延伸された側壁12と、側壁12と連続した上部蓋13とから成る上部カバー16とで構成されるカバー本体10と、上部カバー16の側壁12に開口され、配管21を通してカバー本体10内部のガスを排出する排出口20と、下部貯水槽15に水封水を供給するための水封水供給手段30と、水封水の水位を取付フランジ部71の上面以下で、かつ取付フランジ部71の接続面以上に維持するためのレベル検出手段40と、下部貯水槽15の
下部側壁
11に接続され、配管を通して
水封水を排出するための水封水排出手段50と、で構成され、取付フランジ部71の接続面を水封する機能を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽に据え付けられた撹拌機の取付フランジ部に設置するガス拡散防止機構であって、
前記槽の天蓋上に前記取付フランジ部を囲むように立設された下部側壁から成る下部貯水槽と、前記下部側壁から延伸された側壁と、前記側壁と連続した上部蓋とから成る上部カバーとで構成されるカバー本体と、
前記上部カバーの側壁に開口され、配管を通して前記カバー本体内部のガスを排出する排出口と、
下部貯水槽に水封水を供給するための水封水供給手段と、
前記水封水の水位を前記取付フランジ部の上面以下で、かつ前記取付フランジ部の接続面以上に維持するためのレベル検出手段と、
前記下部貯水槽の側壁に接続され、配管を通して前記水封水を排出するための水封水排出手段と、
で構成され、前記取付フランジ部の接続面を水封する機能を有することを特徴とするガス拡散防止機構。
【請求項2】
前記水封水排出手段が、前記取付フランジ部の上面以上で前記下部貯水槽の上端以下の高さに頂部を有し、前記槽に排出するように構成されたオーバーフロー管であり、前記下部貯水槽と前記頂部との間に逆流防止弁を有することを特徴とする、請求項1に記載のガス拡散防止機構。
【請求項3】
前記レベル検出手段がレベル計であり、前記水封水供給手段に自動弁が設置され、レベル計で検出された水位に応じて前記自動弁が開閉されることにより、前記水封水の水位を前記取付フランジ部の上面以下で、かつ前記取付フランジ部の接続面以上に維持することを特徴とする、請求項2に記載のガス拡散防止機構。
【請求項4】
前記レベル計が電極式レベル計であることを特徴とする、請求項3に記載のガス拡散防止機構。
【請求項5】
前記槽がアンモニア水溶液の貯留槽であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガス拡散防止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器、貯留槽等に据え付けられた撹拌機の取付部に設置するガス拡散防止機構に関し、より詳しくは、容器内、槽内の気相部に環集が必要なガスが含まれる密閉構造の反応容器、貯留槽等において、その取付部から漏出した微量のガスを捕集して拡散を防止するためのガス拡散防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
各種化合物の製造工程などでは、例えば、アンモニア水溶液、塩酸水溶液等、常温で蒸気圧の高い物質の水溶液を取扱う反応容器、貯留槽等において、容器内、槽内の気相部には、アンモニアガス、塩化水素ガス等の有害成分が含まれる。この反応容器、貯留槽等は、密閉構造、もしくは気相部が負圧に保たれる構造となっており、これら有害成分が外部に漏出することを防止している。
【0003】
一方で、上記反応容器、貯留槽等には、反応促進、均一混合等のため、一般的な撹拌軸と撹拌翼を有する撹拌機が据え付けられることがある。その際に、この撹拌機を上記反応容器、貯留槽等の天蓋部に取付けるためのフランジ部から、微量の有害成分を含んだガスが漏出することがあった。基本的には、ガスケットで完全に封止する部分ではあるが、撹拌機による微振動等があるため、若干の漏れはどうしても回避できなかった。適正なガスケットを選定したとしても振動による経年的な変形・損傷は避けることができない。振動を抑制するためのブラケット、それを支える天蓋の剛性を考慮したタンクの製作は経済的でない。
【0004】
例えば、特許文献1には、少なくともガス漏洩想定部位を含む機器部分を覆い、かつ気体流入口を有するフードと、気体流入口から流入する気体を漏洩ガスと共にフードと機器部分との間の領域を通って吸引する吸引装置と、吸引装置の下流に設けられたガス処理装置と、吸引装置とガス処理装置とを接続するダクトに設けられた、ガス分析計、温度計及び湿度計のうちの少なくとも一つの計器とを備えることを特徴とするガス漏洩検知・ガス拡散防止機構が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなガス漏洩検知・ガス拡散防止機構では、反応器全体をフードで囲う必要があり、設置スペースが大きくなってしまう。
【0006】
そこで、上記フランジ部のみを覆って、その取付部から漏出した微量のガスを収集してガス処理装置へと吸引するための環集カバーが設置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記環集カバーにおいても、外付けの装置であって、しかも撹拌機による微振動等があるため、環集カバーと撹拌機本体との間に隙間が生じることが避けられず、そこから微量の有害成分を含んだガスが漏出することがあった。これを防止するためには、適正な制御風速を確保すれば良いが、吸引風量を増加させる必要があり、経済的に得策とは言えなかった。
【0009】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、槽に据え付けられた撹拌機の取付フランジ部に設置するガス拡散防止機構であって、簡単な構造で、水溶性の有害成分を含んだガスを漏出させないガス拡散防止機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討を重ね、槽に据え付けられた撹拌機の取付フランジ部の接続面を水封する機能を有するガス拡散防止機構を考案し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の一態様は、槽に据え付けられた撹拌機の取付フランジ部に設置するガス拡散防止機構であって、前記槽の天蓋上に前記取付フランジ部を囲むように立設された下部側壁から成る下部貯水槽と、前記下部側壁から延伸された側壁と、前記側壁と連続した上部蓋とから成る上部カバーとで構成されるカバー本体と、前記上部カバーの側壁に開口され、配管を通して前記カバー本体内部のガスを排出する排出口と、下部貯水槽に水封水を供給するための水封水供給手段と、前記水封水の水位を前記取付フランジ部の上面以下で、かつ前記取付フランジ部の接続面以上に維持するためのレベル検出手段と、前記下部貯水槽の側壁に接続され、配管を通して前記水封水を排出するための水封水排出手段と、で構成され、前記取付フランジ部の接続面を水封する機能を有する。
【0012】
このとき、本発明の一態様では、前記水封水排出手段が、前記取付フランジ部の上面以上で前記下部貯水槽の上端以下の高さに頂部を有し、前記槽に排出するように構成されたオーバーフロー管であり、前記下部貯水槽と前記頂部との間に逆流防止弁を有するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記レベル検出手段がレベル計であり、前記水封水供給手段に自動弁が設置され、レベル計で検出された水位に応じて前記自動弁が開閉されることにより、前記水封水の水位を前記取付フランジ部の上面以下で、かつ前記取付フランジ部の接続面以上に維持するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記レベル計が電極式レベル計であるとしてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記槽がアンモニア水溶液の貯留槽であるとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、槽に据え付けられた撹拌機の取付フランジ部に設置するガス拡散防止機構であって、簡単な構造で、水溶性の有害成分を含んだガスを漏出させないガス拡散防止機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るガス拡散防止機構の概要を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るガス拡散防止機構のみの概要を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るガス拡散防止機構における取付フランジ部付近を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0019】
まず、本発明に係るガス拡散防止機構の概要について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガス拡散防止機構の概要を示す断面図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係るガス拡散防止機構のみの概要を示す斜視図である。
【0020】
例えば、正極活物質などの電池材料の製造工場において、金属水酸化物(ニッケル、コバルト、アルミニウムの混合水酸化物)を生成するにあたって、錯化剤としてアンモニア水が使用され、アンモニア水は貯留槽において撹拌機で撹拌しながら貯留される。
【0021】
その撹拌機(撹拌装置)70は、槽60の天蓋61から取付フランジ部71を介して槽60の内部に鉛直方向に挿入される。撹拌装置70は、一例として
図1に示すように、撹拌軸72と、撹拌軸72の軸方向の下端に設けられた撹拌羽根73とにより構成され、槽60の天蓋61上に配置された駆動電動機及び減速機74とに接続されている。そして、駆動電動機及び減速機74により撹拌軸72が所定の速度で回転し、その撹拌軸72の回転駆動により撹拌羽根73が旋回する。
【0022】
このように、槽60と撹拌機70とは、槽60の天蓋61に設けられた取付フランジ部71を介して設置されているため、槽60内の溶液や、溶液から揮発したガスは外部に漏れないようになってはいるが、撹拌機70の振動などにより、微量のガスが漏出することがあった。本発明は、簡単な構造で、水溶性の有害成分を含んだガスを漏出させないガス拡散防止機構に関するものである。
【0023】
すなわち、本発明の一態様は、槽60に据え付けられた撹拌機70の取付フランジ部71に設置するガス拡散防止機構100であって、槽60の天蓋61上に取付フランジ部71を囲むように立設された下部側壁11から成る下部貯水槽15と、下部側壁11から延伸された側壁12と、側壁12と連続した上部蓋13とから成る上部カバー16とで構成されるカバー本体10と、上部カバー16の側壁12に開口され、配管21を通してカバー本体10内部のガスを排出する排出口20と、下部貯水槽15に水封水を供給するための水封水供給手段30と、水封水の水位を取付フランジ部71の上面以下で、かつ取付フランジ部71の接続面以上に維持するためのレベル検出手段40と、下部貯水槽15の側壁に接続され、配管を通して前記水封水を排出するための水封水排出手段50と、で構成され、取付フランジ部71の接続面を水封する機能を有する。
【0024】
なお、本発明に係るガス拡散防止機構100が対象とするガスは、上述したアンモニアや塩化水素などが挙げられるが、水溶性のガスであれば特に限定はされない。また、本発明の一態様に係るガス拡散防止機構100は、槽60と撹拌機70の接続部となる取付フランジ部71に設置するものであるが、必ずしもこの態様に限定されるわけでは無く、例えば、水溶性のガスを内部に有する装置において、ガスの漏出が危惧されるような箇所に設置しておくことも可能である。以下、本発明の一態様に係るガス拡散防止機構100の各構成について説明する。
【0025】
下部貯水槽15は、槽60の天蓋61上に取付フランジ部71を囲むように立設された下部側壁11から成る。下部側壁11は、例えば、天蓋61にタップを立てネジを切ったのちボルト62で固定することができ、もしくは天蓋槽内側にナットを溶接してボルトで固定することもできる。
【0026】
下部側壁11の材質は、金属材料でも樹脂系材料でも限定はしないが、ポリカーボネートや塩ビ製の透明な板で構成されるのが良い。透明であれば水位等が視認し易く、汎用材であるポリカーボネートや塩ビであれば、入手、加工が容易である。下部側壁11は接続端の無い角筒もしくは円筒とし、槽60の天蓋61と下部側壁11のフランジ面とのボルトによる接合部には、水封水が漏れないようゴム製のガスケット等で密着させる。
【0027】
カバー本体10は、上記下部貯水槽15と、下部側壁11から延伸された側壁12と、側壁12と連続した上部蓋13とから成る上部カバー16とで構成される。上部カバー16の材質も、下部側壁11と同様に、金属材料でも樹脂系材料でも限定はしないが、ポリカーボネートや塩ビ製の透明な板で構成されるのが良い。上部カバー16は、円筒形の撹拌機70の軸受部又は減速機74を囲むように設置されるので、例えば2分割とし、対側面から挟み込む構造とすれば良い。2分割された上部カバー16どうしの固定は、フランジ構造を用いたボルトナット63による固定方式を採用すれば良い。上部カバー16と下部貯水槽15との接続も同様にフランジ構造を用いたボルトナット64により固定することができる。また、上部カバー16と撹拌機70本体との隙間は、例えばコーキング剤65でシールすれば良い。コーキング剤としては、一般的なシリコンゴム系のコーキング剤を使用することができる。
【0028】
排出口20は、上部カバー16の側壁12に開口され、配管21を通してカバー本体10内部のガスを排出する。本発明では、漏出した槽60内のガスは、水封水80に溶解するため、必ずしもカバー本体10内のガスを吸引して排出する必要はないが、ヘッド圧で水封水80を水封水排出手段50から排出できず、ガスが水封水に飽和してしまって、ガスがカバー本体10に滞留した場合の対応として利用することができる。一例として、排出口20から吸引することでカバー本体10内のガスを排出し、ガス処理設備へと送ることができる。例えば、ガス検知計や濃度計を設置するとともに、排出口20の配管21に自動弁22を設置し、カバー本体10内のガス濃度が規定の値以上になった場合に、自動弁22を開放してガスを排出するような構成としてもよい。
【0029】
水封水供給手段30は、カバー本体10の下部貯水槽15に水封水80を供給する。
図3は、本発明の一実施形態に係るガス拡散防止機構における取付フランジ部付近を示す拡大断面図である。下部貯水槽15の水封水の水位dは、
図3に示すように、取付フランジ部の上面71t以下で、かつ取付フランジ部の接続面75以上に維持する。槽60内のガスは主にこの取付フランジ部の接続面75から漏出すると考えらえるため、この部分を水封水80で満たしておくことにより、漏出したガスを水封水80中に溶解させてガスの拡散を防止することができる。
【0030】
レベル検出手段40は、水封水80の水位を検出するためのものであり、水封水80の水位を一定に維持するために、例えば、水位検出用のレベル計40と、水封水補加用の給水配管31が設置される。給水配管31には自動弁32を備え、レベル計40による水封水の水位dの情報を取得して、水位が下がれば自動で水が補加され、規定のレベルを維持するようにすることもできる。レベル計40は、好ましくは電極式のレベル計が良い。電極式のレベル計だと、簡単に設置でき、信頼性が高い。
【0031】
水封水排出手段50は、下部貯水槽15の下部側壁11に接続され、配管51を通して水封水80を排出する。水封水排出手段50は、取付フランジ部の上面71t以上で下部貯水槽15の上端以下の水封水排出手段の配管の高さhに頂部を有し、槽60に排出するように構成されたオーバーフロー管であるのが好ましい。このようにすれば、取付フランジ部の上面71t以上に水位が上がったとしても、ヘッド圧で水封水80が排出される。ただし、カバー本体10内部が排出口20からの負圧で吸引されている場合には、水封が切れて槽内の水溶性の有害成分を含んだガスが吸い込まれないように、念のため、逆流防止弁52を設置しておくことが好ましい。
【0032】
このように、本発明に係るガス拡散防止機構100では、微量の有害成分を含んだガスが漏出することがある撹拌機70の取付フランジ部71を水封することによって、漏出したガスのうちの水溶性の有害成分は水封水に吸収され、無害化される。吸収された水溶性の有害成分は槽内に挿入された配管51によって槽内に戻すことができ、微量ながら再利用することもできる。
【0033】
また、除害設備の圧力バランスによりヘッド圧で漏洩ガスが吸収された水溶性の有害物質を槽内に戻せない場合は、槽60の側近に設置された、槽オーバーフロー配管が水封状態で接続されている吸収ポットに送液してもよい。その切換は手動もしくは、例えば、環集カバー内のアンモニア濃度が一定値以上になれば開になるように制御された自動弁にて行うことができる。
【0034】
排出口20から排出されたカバー本体10内部のガスは、他の工程内環集ガスと併せてガス処理設備に送られ、無害化された後、大気放出される。無害化には、例えば除害塔と呼ばれる吸収塔や、活性炭吸着塔等が用いられる。
【0035】
本発明の一態様に係るガス拡散防止機構100は、一例として、23重量%程度のアンモニア水溶液の貯留槽に適用できる。アンモニアは水封水80に吸収され易いので、アンモニアガスをカバー本体10の外部に漏出させることは無い。そのため、従来のようにカバー本体10内部のガスを連続的に吸引する必要も無くなる。上述したように、排出口20から出たガスの排出配管(配管21)の排出口近傍に閉止弁(自動弁22)を設け、カバー本体10内部にアンモニアガス濃度計を設けて、アンモニアガスが検知されれば閉止弁を開くようにしても良い。アンモニアガス濃度は、水封水80のアンモニア濃度の代用値として使えるので、同時に、水封水の入替えを実施するようにしても良い。
【0036】
なお、撹拌機70は、メカシール等の軸封装置によって軸封されているが、ごくまれに軸封装置の軸封部から微量のガスが漏出することがある。本発明によれば、軸封部もカバー本体10で覆われるので、ガスを外部に漏出させることは無い。
【0037】
以上説明したように、本発明による装置を、槽に据え付けられた撹拌機の取付フランジ部に設置して水封水を一定の水位で満たされるように設計することで、簡単な構造で、水溶性の有害成分を含んだガスを漏出させないガス拡散防止機構とすることができる。
【0038】
なお、上記のように本発明の一実施形態および各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0039】
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、ガス拡散防止機構の構成も本発明の一実施形態および各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 カバー本体、11 下部側壁、12 (上部カバーの)側壁、13 上部蓋、15 下部貯水槽、16 上部カバー、20 排出口、21 (排出口の)配管、22 自動弁、30 水封水供給手段、31 給水配管、32 自動弁、40 レベル検出手段(レベル計)、50 水封水排出手段、51 配管、52 逆流防止弁、60 槽、61 天蓋、62 ボルト、63,64 ボルトナット、65 コーキング剤、70 撹拌機(撹拌装置)、71 取付フランジ部、71t 取付フランジ部の上面、72 撹拌軸、73 撹拌羽根、74 減速機、75 取付フランジ部の接続面、80 水封水、100 ガス拡散防止機構、d 水封水の水位、h 水封水排出手段の配管の高さ
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽に据え付けられた撹拌機の取付フランジ部に設置するガス拡散防止機構であって、
前記槽の天蓋上に前記取付フランジ部を囲むように立設された下部側壁から成る下部貯水槽と、前記下部側壁から延伸された側壁と、前記側壁と連続した上部蓋とから成る上部カバーとで構成されるカバー本体と、
前記上部カバーの側壁に開口され、配管を通して前記カバー本体内部のガスを排出する排出口と、
下部貯水槽に水封水を供給するための水封水供給手段と、
前記水封水の水位を前記取付フランジ部の上面以下で、かつ前記取付フランジ部の接続面以上に維持するためのレベル検出手段と、
前記下部貯水槽の前記下部側壁に接続され、配管を通して前記水封水を排出するための水封水排出手段と、
で構成され、前記取付フランジ部の接続面を水封する機能を有することを特徴とするガス拡散防止機構。
【請求項2】
前記水封水排出手段が、前記取付フランジ部の上面以上で前記下部貯水槽の上端以下の高さに頂部を有し、前記槽に排出するように構成されたオーバーフロー管であり、前記下部貯水槽と前記頂部との間に逆流防止弁を有することを特徴とする、請求項1に記載のガス拡散防止機構。
【請求項3】
前記レベル検出手段がレベル計であり、前記水封水供給手段に自動弁が設置され、前記レベル計で検出された水位に応じて前記自動弁が開閉されることにより、前記水封水の水位を前記取付フランジ部の上面以下で、かつ前記取付フランジ部の接続面以上に維持することを特徴とする、請求項2に記載のガス拡散防止機構。
【請求項4】
前記レベル計が電極式レベル計であることを特徴とする、請求項3に記載のガス拡散防止機構。
【請求項5】
前記槽がアンモニア水溶液の貯留槽であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガス拡散防止機構。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
すなわち、本発明の一態様は、槽に据え付けられた撹拌機の取付フランジ部に設置するガス拡散防止機構であって、前記槽の天蓋上に前記取付フランジ部を囲むように立設された下部側壁から成る下部貯水槽と、前記下部側壁から延伸された側壁と、前記側壁と連続した上部蓋とから成る上部カバーとで構成されるカバー本体と、前記上部カバーの側壁に開口され、配管を通して前記カバー本体内部のガスを排出する排出口と、下部貯水槽に水封水を供給するための水封水供給手段と、前記水封水の水位を前記取付フランジ部の上面以下で、かつ前記取付フランジ部の接続面以上に維持するためのレベル検出手段と、前記下部貯水槽の前記下部側壁に接続され、配管を通して前記水封水を排出するための水封水排出手段と、で構成され、前記取付フランジ部の接続面を水封する機能を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
すなわち、本発明の一態様は、槽60に据え付けられた撹拌機70の取付フランジ部71に設置するガス拡散防止機構100であって、槽60の天蓋61上に取付フランジ部71を囲むように立設された下部側壁11から成る下部貯水槽15と、下部側壁11から延伸された側壁12と、側壁12と連続した上部蓋13とから成る上部カバー16とで構成されるカバー本体10と、上部カバー16の側壁12に開口され、配管21を通してカバー本体10内部のガスを排出する排出口20と、下部貯水槽15に水封水を供給するための水封水供給手段30と、水封水の水位を取付フランジ部71の上面以下で、かつ取付フランジ部71の接続面以上に維持するためのレベル検出手段40と、下部貯水槽15の下部側壁11に接続され、配管を通して水封水を排出するための水封水排出手段50と、で構成され、取付フランジ部71の接続面を水封する機能を有する。