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特開2024-4009ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物及びポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004009
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物及びポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240109BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20240109BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240109BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240109BHJP
   B29B 7/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/29
C08K5/09
C08J3/20 CFD
B29B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103424
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】五島 一也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 一宏
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AB09
4F070AC12
4F070AC36
4F070AC40
4F070AC45
4F070AC84
4F070AC94
4F070AE03
4F070FA01
4F070FA10
4F070FB06
4F070FC03
4F201AA25
4F201AB07
4F201AB09
4F201AB10
4F201AC01
4F201BA01
4F201BC02
4F201BC19
4F201BK01
4F201BK12
4F201BK15
4J002AE052
4J002CF071
4J002CH022
4J002DE028
4J002EC058
4J002EG027
4J002EG037
4J002EG047
4J002ER006
4J002FD036
4J002FD177
4J002FD202
4J002FD208
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】耐加水分解性の向上及び計量性の向上が可能な、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物を提供する。
【解決手段】ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと、外添剤とを含むポリブチレンテレフタレート樹脂複合物であって、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットは、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂、及び、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.1~1.0質量%のカルボジイミド化合物を含み、前記外添剤は、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.005~0.10質量%の、数平均粒子径が20μm以下の脂肪酸金属塩を含む、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと、外添剤とを含むポリブチレンテレフタレート樹脂複合物であって、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットは、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂、及び、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.1~1.0質量%のカルボジイミド化合物を含み、
前記外添剤は、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.005~0.10質量%の、数平均粒子径が20μm以下の脂肪酸金属塩を含む、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物。
【請求項2】
前記外添剤が、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、パラフィンワックス、水、及びグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物。
【請求項3】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットの直径が2.0~3.0mmであり、長さが1.0~3.5mmである、請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物。
【請求項4】
前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸カルシウムを含む、請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物。
【請求項5】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと前記外添剤とを混合することを含む、請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物及びポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT樹脂」とも記す。)等のポリエステル樹脂は、機械特性、電気特性、耐熱性、成形性に優れており、自動車用部品、電気電子機器用部品、精密機器用部品等、さまざまな分野に幅広く使用されている。ポリエステル樹脂は分子中にエステル基を有しているため、高温多湿な環境下では加水分解が起こりやすく、環境変化の大きい自動車用部品においては、常に耐加水分解性の向上が望まれている。
【0003】
ポリエスエル樹脂自体の耐加水分解性を向上させるに当たり、末端カルボキシル基量を低減するためにエポキシ樹脂やカルボジイミド化合物を添加することが一般的に知られている。特許文献1には、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂とカルボジイミド化合物、繊維状充填剤、及びエラストマーが配合された樹脂組成物について、カルボジイミド化合物が、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量を1とした場合、カルボジイミド官能基量が0.3~1.5当量となる量で配合されることで耐ヒートショック性および耐加水分解性が改善されることが示されている。
【0004】
一方、ポリエステル樹脂を用いて成形品を得る方法としては、生産性やコストの点で押出成形や射出成形が多く採用されている。ポリエステル樹脂は加水分解を起こしやすいため、成形する前に乾燥して使用することが一般的であるが、この乾燥時にいわゆるブロッキングやスティッキングと呼ばれるペレット同士が固着する現象が起こる場合がある。これは一般的に樹脂組成物の弾性率や、ガラス転移温度、結晶化度が低い場合に起こりやすく、例えば、乾燥したペレットを押出成形機や射出成形機のホッパーに投入した後、ホッパー内でペレットの自重によるブロッキングやスティッキングが発生したり、スクリュ開口部でペレットが固着して成形できない問題が生じる場合がある。また、スクリュでペレットを計量する際、固着したペレットによるスクリュの空転や、ペレットを良好に搬送でないことによる計量不良が起こる場合がある。またペレットの形状によってはシリンダーの熱量不足や食い込み不良となり、可塑化できず計量不良となる場合がある。
【0005】
特許文献2には、樹脂ペレットを冷結晶化温度以上、融点より30℃低い温度の範囲内で加熱処理し、結晶化することでスティッキングが抑制されることが記載されている。
特許文献3には、楕円柱状の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂ペレットにおいて、長手方向に垂直な断面の長径/短径比>1、嵩密度>0.8g/cm、0.4≦排除体積密度<0.5g/cmの場合、計量性のばらつきが抑制できることが記載されている。
特許文献4には、射出成形機のスクリュへのチップ食い込み等を改善するために、ポリブチレンテレフタレートチップに、外部滑剤としてステアリン酸カルシウム等を添加すること、及び、ポリブチレンテレフタレートチップに外部滑剤を添加した後、風力分級器により微粉を除去することにより、外部滑剤を200~500重量ppm対チップの量で付着させたまま、微粉を除去することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/150831号
【特許文献2】特開平5-147026号公報
【特許文献3】特開2015-044363号公報
【特許文献4】特開平6-285850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、耐加水分解性の向上、及び計量性の向上が可能な、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと、外添剤とを含むポリブチレンテレフタレート樹脂複合物であって、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットは、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂、及び、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.1~1.0質量%のカルボジイミド化合物を含み、前記外添剤は、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.005~0.10質量%の、数平均粒子径が20μm以下の脂肪酸金属塩を含む、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物に関する。
本発明の他の実施形態は、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと前記外添剤とを混合することを含む、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、耐加水分解性の向上及び計量性の向上が可能な、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明が下記の実施形態に限定されることはない。
【0011】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物>
本発明の一実施形態に係るポリブチレンテレフタレート樹脂複合物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと、外添剤とを含み、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットは、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂、及び、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.1~1.0質量%のカルボジイミド化合物を含み、外添剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.005~0.10質量%の、数平均粒子径が20μm以下の脂肪酸金属塩を含む。
【0012】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)]
実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットは、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む。
【0013】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル、酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0014】
ポリブチレンテレフタレート樹脂において、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0015】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート樹脂において、1,4-ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0017】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2-6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0018】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0019】
以上説明したコモノマー成分を共重合したポリブチレンテレフタレート共重合体は、いずれもポリブチレンテレフタレート樹脂として好適に使用できる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体とを組み合わせて使用してもよい。
【0020】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の効果を阻害しない範囲で特に限定されない。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、加工性、機械特性の観点から0.7~1.3dL/gであることが好ましく、0.75~1.2dL/gであることがより好ましく、0.85~1.15dL/gであることがさらに好ましい。
また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.85dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定した値とする。
【0021】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、耐加水分解性の観点から、30meq/kg以下が好ましく、20meq/kg以下がより好ましく、さらに、10meq/kg以下がより好ましい。
【0022】
[カルボジイミド化合物]
実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットは、カルボジイミド化合物を含む。
【0023】
実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物において、カルボジイミド化合物は、耐加水分解性の向上に寄与し得る。
【0024】
カルボジイミド化合物は、分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を有する化合物である。カルボジイミド化合物としては、主鎖が脂肪族の脂肪族カルボジイミド化合物、主鎖が脂環族の脂環族カルボジイミド化合物、主鎖が芳香族の芳香族カルボジイミド化合物を挙げることができ、これらから選択される1以上を用いることができる。中でも、カルボジイミド化合物の耐熱性や耐湿熱性の点で、芳香族カルボジイミド化合物を含有することが好ましい。
【0025】
脂肪族カルボジイミド化合物としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド等を挙げることができる。脂環族カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド等を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いことができる。
【0026】
芳香族カルボジイミド化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロルフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トリイルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物;及びポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ビフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等のポリカルボジイミド化合物:を挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
カルボジイミド化合物の数平均分子量は、3000以上であることが好ましい。数平均分子量を上記範囲にすることで、熱可塑性樹脂の溶融混練時や成形時に滞留時間が長い場合において、ガスや臭気が発生することを防ぐことができる。
【0028】
実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物において、カルボジイミド化合物の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.1~1.0質量%である。耐加水分解性の向上を図る観点から、カルボジイミド化合物の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.1質量%以上が好ましい。一方、イソシアネートの発生の抑制の観点から、カルボジイミド化合物の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物全質量の1.0質量%以下であることが好ましい。カルボジイミド化合物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.2~0.9質量%がより好ましく、0.3~0.8質量%がさらに好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量及びカルボジイミド化合物の含有量の合計は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0029】
[他の成分(ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレット)]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットは、必要に応じて、上記成分以外のその他の成分を含んでよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットのその他の成分としては、他の樹脂や、無機充填剤等の充填剤、酸化防止剤、安定剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、結晶核剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤等の添加剤が挙げられ、これらの1種以上を、必要に応じてポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットに含有させることができる。
【0030】
[脂肪酸金属塩]
実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットとともに、数平均粒子径が20μmの脂肪酸金属塩を含む外添剤を含む。脂肪酸金属塩を含む外添剤を用いることで、脂肪酸金属塩がポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットの表面に外部添加される。外部添加され、ペレット表面に付着した脂肪酸金属塩の作用により、計量時間を短縮し、計量性の向上を図ることができる。一方、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリエステル基を有しているため、アルカリ成分などにより加水分解しやすく、脂肪酸金属塩を用いた場合、耐加水分解性が低下する場合がある。しかし、脂肪酸金属塩として、数平均粒子径が20μmの脂肪酸金属塩を用いると、耐加水分解性と計量性の両立を図ることが可能となる。
【0031】
脂肪酸金属塩としては、脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。具体的には、脂肪酸金属塩としては、例えば、脂肪酸のカルシウム塩、脂肪酸のナトリウム塩、脂肪酸のマグネシウム塩、脂肪酸の亜鉛塩等が挙げられる。
脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、炭素数8~30の脂肪酸が好ましく、炭素数10~25の脂肪酸がより好ましく、炭素数13~21の脂肪酸がさらに好ましい。脂肪酸金属塩の脂肪酸は、飽和脂肪酸が好ましい。脂肪酸金属塩の脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
脂肪酸金属塩の具体例としては、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0032】
実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物において、脂肪酸金属塩の数平均粒子径は20μm以下である。脂肪酸金属塩の数平均粒子径は、18μm以下がより好ましく、16μm以下がさらに好ましい。
【0033】
脂肪酸金属塩の数平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置を用いて粒度分布を測定し、算出した数平均粒子径である。測定装置としては、株式会社堀場製作所製レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置LA-960を用いることができる。具体的には、10mLバイアル瓶に、薬さじで微量(約10~20mg)の脂肪酸金属塩を入れ、アセトン10mLを加え、超音波洗浄機にて十分に分散させ、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置で粒径分布を測定し、数平均粒子径を算出することができる。
【0034】
実施形態の複合物において、脂肪酸金属塩の量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.005~0.10質量%である。計量性を向上させる観点から、脂肪酸金属塩の量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.005質量%以上であることが好ましい。一方、良好な靭性の観点から、脂肪酸金属塩の量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.10質量%以下であることが好ましい。脂肪酸金属塩が多すぎると、多量の粉末により、却って計量不良の要因となる場合がある。
脂肪酸金属塩の量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.010~0.05質量%がより好ましく、0.02~0.03質量%がさらに好ましい。
【0035】
[その他の成分(外添剤)]
外添剤は、必要に応じて、上記成分以外に、その他の成分を含んでよい。
例えば、外添剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットの表面に、脂肪酸金属塩をより良好に付着及び保持するための固着剤を含んでもよい。固着剤を使用すると、脂肪酸金属塩のペレットへの付着をより良好なものとすることができ、また、ペレットからの脂肪酸金属塩の脱落を低減して、装置の汚染を低減することができる。
【0036】
固着剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、パラフィンワックス、水、グリセリン等が挙げられる。これらを1種、または2種以上を用いることができる。なかでも、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0037】
固着剤の量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.005~0.1質量%が好ましく、0.01~0.05質量%がより好ましく、0.01~0.03質量%がさらに好ましい。
【0038】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットの形状]
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットの直径は、2.0~3.0mmであることが好ましく、2.1~2.8mmであることがより好ましく、2.2~2.5mmであることがさらに好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットの長さは、1.0~3.5mmであることが好ましく、1.5~3.3mmであることがより好ましく、2.0~3.1mmであることがさらに好ましい。
【0039】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の製造方法>
上述したポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の製造方法は、特に限定されない。
実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の製造方法は、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと外添剤とを混合することを含む方法であってよい。
【0040】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと外添剤とを混合する方法は、特に限定されない。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと、外添剤とを、タンブラー式混合機等の混合機を用いて混合することができる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと、外添剤とは、一括して混合してもよく、複数回に分けて混合してもよい。例えば、外添剤が固着剤と脂肪酸金属塩を含む場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと固着剤とを混合し、次いで、この混合物と金属塩酸化物とを混合してもよい。
【0041】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットは、熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造方法として知られる種々の方法によって製造することができる。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットの材料を押出機に投入して溶融混練して押出し、ペレット化して、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを得ることができる。
【0042】
<成形品>
実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物を用いて樹脂成形品を作製する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物を所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
【0043】
樹脂成形品としては、自動車や電車、航空産業用用途などの高温高湿環境に長期間曝される成形品用の樹脂組成物として好適に用いることができる。この樹脂組成物からなる成形品では、十分な高温高湿環境下で長期間使用した場合でも、加水分解による劣化が生じることを防ぐことができるため、コネクタ、ハウジング、バルブ、クリップ、パイプ等などに用いることができる。
【0044】
本発明の実施形態は下記を含むが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0045】
<項1>
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと、外添剤とを含むポリブチレンテレフタレート樹脂複合物であって、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットは、末端カルボキシル基量が30meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂、及び、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.1~1.0質量%のカルボジイミド化合物を含み、
前記外添剤は、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の全質量の0.005~0.10質量%の、数平均粒子径20μm以下の脂肪酸金属塩を含む、ポリブチレンテレフタレート樹脂複合物。
<項2>
前記外添剤が、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、パラフィンワックス、水、及びグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物。
<項3>
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットの直径が2.0~3.0mmであり、長さが1.0~3.5mmである、項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物。
<項4>
前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸カルシウムを含む、項1~3のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物。
<項5>
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットと前記外添剤とを混合することを含む、項1~4のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物の製造方法。
【実施例0046】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
<実施例1~4及び比較例1~6>
各実施例及び比較例において、下記表1及び2に示す成分(A)(ポリブチレンテレフタレート樹脂)及び成分(B)(カルボジイミド化合物)を、下記表1及び2に示す比率(質量%)で、30mmφのスクリュを有する2軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX30)にて、シリンダー温度260℃及びスクリュ回転数130rpmで溶融混練して押し出し、ストランドカッターによりペレタイズして、直径2.3mm、長さ3.0mmのポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを得た。
【0048】
実施例1~4及び比較例3~5について、上記のようにして得られたペレットを、タンブラー式混合機に投入後、下記表1及び2に示す成分(D)(固着剤)を、下記表1及び2に示す比率(質量%)でタンブラー式混合機に投入し、10分間混合し、さらに、下記表1~2に示す成分(C)(脂肪酸金属塩)を下記表に示す比率(質量%)でタンブラー式混合機に投入し、10分間混合した。
このようにして、実施例1~4及び比較例3~5のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物を得た。
比較例1では、成分(C)及び成分(D)の添加は行われず、上記で得られた比較例1のペレットをそのまま、その後の評価に用いた。
比較例2では、上記のようにして得られた比較例2のペレットを、タンブラー式混合機に投入後、下記表2に示す成分(D)(固着剤)を、下記表2に示す比率(質量部)で投入し、10分間混合し、比較例2のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物を得た。
【0049】
表1及び2に示す各成分の詳細は以下の通りである。表1及び2中の各成分の含有量の単位は質量%である。
【0050】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
A1:ポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度(IV)=1.14dL/g、末端カルボキシル基量=7meq/kg、ポリプラスチックス株式会社製)
A2:ポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度(IV)=0.83dL/g、末端カルボキシル基量=15meq/kg、ポリプラスチックス株式会社製)
【0051】
(B)カルボジイミド化合物
B1:芳香族ポリカルボジイミド(Stabaxol P-100、ランクセス社製)
【0052】
(C):脂肪酸金属塩
C1:ステアリン酸カルシウム(数平均粒子径15μm、日油株式会社製)
C2:ステアリン酸カルシウム(数平均粒子径24μm、日油株式会社製)
C3:ステアリン酸カルシウム(数平均粒子径:180μm、日東化成工業株式会社製)
【0053】
(D):固着剤
D1:ポリエチレングリコール(株式会社ADEKA製CLE-400)
【0054】
成分(C)の脂肪酸金属塩の数平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置を用いて粒度分布を測定し、算出した数平均粒子径であり、下記のようにして求めた。10mLバイアル瓶に、薬さじで微量(約10~20mg)の脂肪酸金属塩を入れ、アセトン10mLを加え、超音波洗浄機にて十分に分散させ、株式会社堀場製作所製レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置LA-960で粒径分布を測定し、数平均粒子径を算出した。
【0055】
<評価>
実施例1~4及び比較例2~5のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物、及び、比較例1のペレットを用いて以下の評価を行った。結果を表1及び2中に示す。
【0056】
(1)計量性
上記で得られた実施例1~4及び比較例2~5のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物、及び、比較例1のペレットのそれぞれを、140℃で3時間乾燥した後、射出成形機として、ファナック株式会社製射出成型機S2000i 100B、及び、金型として、ISO多目的試験片(2本取り)形状の金型を用い、下記の成形条件にて連続成形し、計量時間、及びクッション量をモニタリングし、下記の基準にて判定した。
【0057】
(成形条件)
シリンダー温度:(ノズル)260-260-260-240℃(ホッパー)
射出速度:23mm/秒
金型温度:80℃
保圧力:50MPa
保圧時間:25秒
計量値:65mm
サックバック:3mm
V-P位置:17mm
冷却時間:25秒
背圧:5MPa
回転数:50rpm
ショット数:20ショット
【0058】
(計量性の判定基準)
A:20ショットのすべてにおいて、設定した冷却時間(25秒)内で計量が完了し、連続成形が可能
B:20ショット中、設定した冷却時間(25秒)内で計量が完了しないものもあるが、20ショットのすべてにおいて、設定した冷却時間(25秒)内で計量が完了するか、または、設定した冷却時間(25秒)内で計量が完了しないものの、設定した冷却時間(25秒)+10秒内では計量が完了し、連続成形が可能
C:設定した冷却時間(25秒)+10秒内で計量が完了しない場合があり、連続成形は不可能
【0059】
(2)粉落ち性
上記射出成型時に、ホッパー内に、ステアリン酸カルシウムの粉が観察されなかったものをA、ステアリン酸カルシウムの粉が観察されたものをBとした。
【0060】
(3)耐加水分解性
上記で得られた実施例1~4及び比較例2~5のポリブチレンテレフタレート樹脂複合物、及び、比較例1のペレットのそれぞれを、140℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度260℃、金型温度80℃での射出成形により、ISO3167に準拠した1Aタイプの引張試験片を作製した。得られた試験片について、ISO527-1,2に準拠し、引張特性として引張破壊呼び歪を測定した。次にPCT処理装置(高加速寿命試験装置)を用い、試験片を121℃、100%RHの湿熱条件下に50時間曝露し、湿熱条件下に50時間曝露後の引張り破壊呼び歪を測定した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1に示されるように、実施例1~4では、計量時間が短く、計量性に優れていることが示された。また、実施例1~4は、湿熱条件50時間曝露後の引張破壊呼び歪の初期値(湿熱条件曝露前の引張破壊呼び歪)からの低下が小さく、耐加水分解性も良好であった。
【0064】
一方、脂肪酸金属塩が用いられなかった比較例1及び2は、計量安定性に劣っていた。平均粒子径が過大である脂肪酸金属塩が用いられた比較例3~5は、湿熱条件50時間曝露後の引張破壊呼び歪の、初期値(湿熱条件曝露前の引張破壊呼び歪)からの低下が大きく、耐加水分解性に劣っていた。脂肪酸金属塩の量が過大である比較例6は、引張破壊呼び歪の初期値が小さく、靭性に劣ることが示された。