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特開2024-40103アルカリ金属含有ハロゲン化物、電解質、電池及びハロゲン化物固体電解質の製造方法
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  • 特開-アルカリ金属含有ハロゲン化物、電解質、電池及びハロゲン化物固体電解質の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040103
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】アルカリ金属含有ハロゲン化物、電解質、電池及びハロゲン化物固体電解質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/36 20200101AFI20240315BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240315BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240315BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240315BHJP
   C01G 25/00 20060101ALI20240315BHJP
   C01G 29/00 20060101ALI20240315BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20240315BHJP
   C01G 30/00 20060101ALI20240315BHJP
   C01G 17/00 20060101ALI20240315BHJP
   C01G 19/00 20060101ALI20240315BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20240315BHJP
   C01G 35/00 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C01F17/36
H01M10/0562
H01M4/62 Z
H01B1/06 A
C01G25/00
C01G29/00
C01G15/00 D
C01G15/00 B
C01G30/00
C01G17/00
C01G19/00 A
C01G33/00 B
C01G35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026409
(22)【出願日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2022144853
(32)【優先日】2022-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】土居 篤典
(72)【発明者】
【氏名】平井 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】陰山 洋
(72)【発明者】
【氏名】タッセル セドリック
(72)【発明者】
【氏名】丁 風華
【テーマコード(参考)】
4G048
4G076
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA06
4G048AB01
4G048AC08
4G048AD01
4G048AD06
4G048AE06
4G076AA05
4G076AA06
4G076AA19
4G076AB04
4G076AC06
4G076BA38
4G076BD04
4G076BH01
4G076CA11
4G076CA26
4G076CA27
4G076CA29
4G076CA34
4G076DA04
4G076DA30
5G301CA08
5G301CA12
5G301CA13
5G301CA15
5G301CA16
5G301CA17
5G301CA18
5G301CA22
5G301CA23
5G301CA25
5G301CA26
5G301CA28
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE02
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029HJ15
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA13
5H050EA01
5H050GA02
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】
イオン伝導度に優れるアルカリ金属含有ハロゲン化物を提供すること。
【解決手段】
アルカリ金属元素と、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Y、Al、Ga、In、Bi、Sb、Ge、Ti、Zr、Hf、Sn、Nb、Ta、及びWからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素Mと、ハロゲン元素とを含有し、空間群P6mcに帰属される結晶構造を有する、化合物。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属元素と、
Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Y、Al、Ga、In、Bi、Sb、Ge、Ti、Zr、Hf、Sn、Nb、Ta、及びWからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素Mと、
ハロゲン元素とを含有し、
空間群P6mcに帰属される結晶構造を有する、化合物。
【請求項2】
前記ハロゲン元素がClを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記金属元素が3価の金属元素を含む、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
下記組成式(1)で表される、請求項1又は2に記載の化合物。
αβγ・・・(1)
(式中、Aはアルカリ金属元素であり、Xは、ハロゲン元素であり、1≦α≦4、0.5≦β≦2、4≦γ≦8である。)
【請求項5】
金属元素MがGa、In、Sc、La、Y、Sb及びBiからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
前記金属元素Mが2種以上の金属元素を含む、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
前記ハロゲン元素が2種以上のハロゲン元素を含む、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の化合物を含む、電解質。
【請求項9】
請求項8に記載の電解質を含む、電池。
【請求項10】
原料を1GPa以上の圧力下で加熱する工程を含む、ハロゲン化物固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属含有ハロゲン化物、電解質、電池及びハロゲン化物固体電解質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池等の電気化学デバイスに使用される電解質として、固体電解質が注目されている(特許文献1~3)。固体電解質は、従来の電解液と比較して、高温耐久性、高電圧耐性等に優れるため、安全性、高容量化、急速充放電、パックエネルギー密度などの電池の性能の向上に有用であると考えられている。
【0003】
特許文献1~3に記載されるように、リチウムイオン電池の固体電解質に使用される材料としてリチウム及びリチウム以外の金属元素を含むハロゲン化物の固体電解質が知られている。ハロゲン化物固体電解質は、柔軟性が高いため焼結を必要としないこと、HS等の有害な物質を放出しないため安全性が高いことなど、酸化物系又は硫化物系の固体電解質にはない利点を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020137026号
【特許文献2】国際公開第2022032311号
【特許文献3】国際公開第2021234416号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハロゲン化物固体電解質は、イオン伝導度に改善の余地がある。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、イオン伝導度に優れるアルカリ金属含有ハロゲン化物、及びハロゲン化物固体電解質の製造方法、並びにそれらを備える電解質、及び電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の実施形態[1]~[10]を含む。
[1]アルカリ金属元素と、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Y、Al、Ga、In、Bi、Sb、Ge、Ti、Zr、Hf、Sn、Nb、Ta、及びWからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素Mと、ハロゲン元素とを含有し、空間群P6mcに帰属される結晶構造を有する、化合物。
[2]前記ハロゲン元素がClを含む、[2]の化合物。
[3]前記金属元素が3価の金属元素を含む、[1]又は[2]の化合物。
[4]下記組成式(1)で表される、[1]~[3]のいずれか一つの化合物。
αβγ・・・(1)
(式中、Aはアルカリ金属元素であり、Xは、ハロゲン元素であり、1≦α≦4、0.5≦β≦2、4≦γ≦8である。)
[5]金属元素MがAl、Ga、In、Sc、La、及びYからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む、[1]~[4]のいずれか一つの化合物。
[6]前記金属元素Mが2種以上の金属元素を含む、[1]~[5]のいずれか一つの化合物。
[7]前記ハロゲン元素が2種以上のハロゲン元素を含む、[1]~[6]のいずれか一つの化合物。
[8][1]~[7]のいずれか一つの化合物を含む、電解質。
[9][8]の電解質を含む、電池。
[10]原料を1GPa以上の圧力下で加熱する工程を含む、ハロゲン化物固体電解質の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イオン伝導度に優れるアルカリ金属含有ハロゲン化物、及びハロゲン化物固体電解質の製造方法、並びにそれらを備える電解質、及び電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1のサンプルについてc軸方向(001方向)に対応した単結晶X線回折測定の結果を示す図である。
図2図2は、実施例1~4のサンプルの粉末X線回折パターンである。
図3図3は、LiScClの3つの結晶多形についての粉末X線回折チャートである。
図4図4は、γ-LiScClの構造のボール-アンド-スティック及び多面体表示である。
図5図5は、実施例3のイオン伝導度のCole-Cole線図である。
図6図6は、実施例1について0.1Cで充放電試験を行った結果を示す図である。
図7図7は、実施例1について0.2Cで充放電試験を行った結果を示す図である。
図8図8は、実施例1と、α-LiScClについて、サイクル数と放電容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の化合物は、アルカリ金属元素と、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Y、Al、Ga、In、Bi、Sb、Ge、Ti、Zr、Hf、Sn、Nb、Ta、及びWからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素Mと、ハロゲン元素とを含有し、空間群P6mcに帰属される結晶構造を有する。なお、以下では、本実施形態の化合物をアルカリ金属含有ハロゲン化物とも呼ぶ。このような化合物はイオン伝導度に優れる。そのため、本実施形態のアルカリ金属含有ハロゲン化物を含むイオン伝導性物質として使用できる。
結晶構造はX線回折測定によって同定することが可能である。特に、リートベルト解析によって同定することができる。
【0011】
また、ハロゲン化物固体電解質は、電気化学的な安定性に改善の余地があり、例えば、固体電解質として使用する場合に、負極との間に硫化物の分離膜を配置するなどしなければ、電池内で短絡が発生する場合がある。本実施形態のアルカリ金属含有ハロゲン化物は電気化学的な安定性にも優れる傾向にある。
【0012】
本実施形態のアルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれるアルカリ金属元素は、Li、Na、K、Rb及びCsのいずれであってもよいが、Li、Na及びKの少なくとも一種を含んでいてよく、Li及びNaの少なくとも一方を含んでいてよく、Liを含んでいてよい。
【0013】
アルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれるアルカリ金属元素のうち、1種のアルカリ金属元素の割合が80モル%以上であってよく、90モル%以上であってよく、95モル%以上であってよい。当該1種のアルカリ金属元素はLi、Na及びKの少なくとも一種であってよく、Li及びNaの少なくとも一方であってよく、Liであってよい。
【0014】
アルカリ金属含有ハロゲン化物におけるアルカリ金属元素の含有量は、アルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれる原子の総量に対して、10~40モル%であってよく、15~35モル%であってよく、20~30モル%であってよい。
【0015】
金属元素Mは、La、Y、Ga、In、Sc、Bi、Sb、Ge、Zr、Sn、Nb、及びTaからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含んでいてよく、Ga、In、Sc、La、Y、Sb及びBiからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含んでいてよく、Ga、In、Sc、及びLaからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含んでいても良く、Scを含んでいてよい。
【0016】
アルカリ金属含有ハロゲン化物は、1種のみの金属元素Mを含んでいてもよいが、2種以上の金属元素Mを含んでいてよい。また、アルカリ金属含有ハロゲン化物は、3価の金属元素を含んでいてよい。2種以上の金属元素Mが含まれる場合、3価の金属元素Mを2種以上が含まれていてもよいが、3価の金属元素Mと3価以外の価数(例えば2価若しくは4価以上、又は4価)の金属元素Mとが含まれていてもよい。2価の金属元素Mとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnが挙げられる。3価の金属元素Mとしては、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Y、Al、Ga、In、Bi、及びSbが挙げられる。4価の金属元素MとしてはGe、Ti、Zr、Hf、及びSnが挙げられる。5価の金属元素Mとしては、Nb、Ta、Sb及びBiが挙げられる。アルカリ金属含有ハロゲン化物が金属元素Mを2種以上含む場合、金属元素Mは、Scと、La、Y、Ga、In、Bi、Sb、Ge、Zr、Sn、Nb、及びTaからなる群から選択される少なくとも一種の元素とを含んでいてよく、Scと、Ga、Bi、Sb、Ge、Zr、Sn、Nb、及びTaからなる群から選択される少なくとも一種の元素とを含んでいてよい。
【0017】
金属元素Mのうち、3価の金属元素の含有量は、30モル%以上であってよく、40モル%以上であってよく、50モル%以上であってよく、80モル%以上であってよく、90モル%以上であってよく、95モル%以上であってよい。金属元素Mのうち、Scの含有量は、30モル%以上であってよく、40モル%以上であってよく、50モル%以上であってよく、80モル%以上であってよく、90モル%以上であってよく、95モル%以上であってよい。
【0018】
金属元素Mは、3価の金属元素と、3価以外の金属元素とを含んでいてよい。3価以外の金属元素は、4価の金属元素又は5価の金属元素であってよく、Ga、Ge、Sn、Zr、Bi、Nb、及びTaからなる群から選択される少なくとも一種の元素であってよい。金属元素Mのうち、3価以外の金属元素の含有量は、50モル%以下であってよく、30モル%以下であってよく、20モル%以下であってよく、15モル%以下であってよく、10モル%以下であってよい。
【0019】
アルカリ金属含有ハロゲン化物における金属元素Mの含有量は、アルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれる原子の総量に対して、5~20モル%であってよく、8~15モル%であってよく、10~15モル%であってよい。
【0020】
本実施形態のアルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれるハロゲン元素は、F、Cl、Br、及びIのうちいずれであってもよいが、Cl、Br、及びIの少なくとも一種を含んでいてよく、F、Cl及びBrの少なくとも一方を含んでいてよく、F及びClの少なくとも一方を含んでいてよく、Clを含んでいてよい。アルカリ金属含有ハロゲン化物は、1種のみのハロゲン元素を含んでいてもよいが、2種以上のハロゲン元素を含んでいてもよい。アルカリ金属含有ハロゲン化物が2種以上のハロゲン元素を含む場合、アルカリ金属含有ハロゲン化物は、ClとCl以外のハロゲン元素のうち少なくとも一つとを含んでいてよく、ClとFとを含んでいてよい。
【0021】
アルカリ金属含有ハロゲン化物におけるハロゲン元素の含有量は、アルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれる原子の総量に対して、40~80モル%であってよく、50~70モル%であってよく、55~65モル%であってよい。アルカリ金属含有ハロゲン化物におけるClの含有量は、アルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれるハロゲン元素の総量に対して50モル%以上であってよく、60モル%以上であってよく、70モル%以上であってよく、80モル%以上であってよい。アルカリ金属含有ハロゲン化物におけるCl以外のハロゲン元素の含有量は、アルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれるハロゲン元素の総量に対して50モル%以下であってよく、40モル%以下であってよく、30モル%以下であってよく、20モル%以下であってよい。アルカリ金属含有ハロゲン化物におけるCl以外のハロゲン元素の含有量は、アルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれるハロゲン元素の総量に対して0.5モル%以上であってよく、1~30モル%であってよく、3~20%であってよい。アルカリ金属含有ハロゲン化物におけるFの含有量は、アルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれるハロゲン元素の総量に対して50モル%以下であってよく、40モル%以下であってよく、30モル%以下であってよく、20モル%以下であってよい。アルカリ金属含有ハロゲン化物におけるFの含有量は、アルカリ金属含有ハロゲン化物に含まれるハロゲン元素の総量に対して0.5モル%以上であってよく、1~30モル%であってよく、3~20%であってよい。
【0022】
アルカリ金属含有ハロゲン化物は、下記組成式(1)で表されるものであってよい。
αβγδ・・・(1)
(式中、Aはアルカリ金属元素であり、Xはハロゲン元素であり、ZはA、M及びX以外の元素であり、1≦α≦4、0.5≦β≦2、4≦γ≦8、0≦δ≦0.5である。)
【0023】
αは、1.5~3.5であってよく、2~3.2であってよい。βは、0.8~1.5であってよく、1~1.5であってよい。γは5~7であってよく、5.5~6.5であってよい。αとしては2.1~3.1であってよく、2.3~3.05であってよい。
βは、0.9~1.4であってよく、0.95~1.3であってよく。
γは、5.7~6.3であってよく、5.9~6.1であってよい。
δは、0~0.1であってよく、0~0.01であってよく、0~0.001であってよく、δは0であってもよい。
Zとして導入できる元素は、特に限定はされないが、例えば、C、N、P、O及びSからなる群から選択される少なくとも一つであってよく、N、P及びSからなる群から選択される少なくとも一つであってよい。
【0024】
本実施形態のアルカリ金属含有ハロゲン化物の製造方法としては、例えば、原料を1GPa以上の圧力下で加熱する工程を含む方法が挙げられる。加熱温度としては、200℃以上であってよい。
加圧する圧力としては、2GPa以上が好ましく、4GPa以上がより好ましい。また、15GPa以下が好ましく、10GPa以下が好ましい。上限と下限は任意に組み合わせることが可能である。この圧力範囲に制御することによって、本発明の構造を安定化させることが容易になる。
加熱温度は250℃以上がより好ましい。また、加熱温度は1500℃以下であることが好ましく、1300℃以下であることが好ましい。この温度範囲に制御することによって、本実施形態のアルカリ金属含有ハロゲン化物の構造を安定化させることが容易になる。
昇温レートは、5℃/分~200℃/分であってよく、10℃/分~150℃/分であってよく、20℃/分~100℃/分であってよく、30℃/分~80℃/分であってよい。雰囲気温度(例えば25℃)から目的の加熱温度まで達するのに要する時間は、0.1~45分であってよく、1~30分であってよく、5~25分であってよく、10~20分であってよい。
降温レートは、50℃/分~500℃/分であってよく、80℃/分~400℃/分であってよく、100℃/分~300℃/分であってよく、150℃/分~250℃/分であってよい。加熱温度から雰囲気温度(例えば25℃)まで達するのに要する時間は、0.1~20分であってよく、0.5~15分であってよく、1~10分であってよく、2~8分であってよい。
加熱温度での保持時間は、0.1~10時間であってよく、0.5~7時間であってよく、1~5時間であってよい。
圧力を所定の圧力となるまで印加した後、加熱しても良い。また、降温し、所定の温度となった後、圧力を降圧しても良い。
【0025】
原料としては、アルカリ金属のハロゲン化物及び金属元素Mのハロゲン化物が挙げられる。
【0026】
本実施形態のアルカリ金属含有ハロゲン化物は、例えば、キャパシタ、電池等の電気化学デバイスの材料として使用することができる。そのような材料としては、例えば、電解質(固体電解質)の材料が挙げられる。電池としては、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池等の正極及び負極の間をアルカリ金属イオンが移動することにより充放電を行う電池が挙げられる。また、本実施形態のアルカリ金属含有ハロゲン化物は、電極材料として使用することができ、正極及び負極の少なくとも一方に含まれていてよい。
【0027】
以下、本実施形態の電池について、リチウムイオン電池を例にとって説明する。リチウムイオン電池は、正極及び負極と、当該正極及び負極の間に配置された電解質(固体電解質)とを含む。本実施形態のアルカリ金属含有ハロゲン化物(この場合、リチウム含有ハロゲン化物である)は、リチウムイオン電池の電解質に含まれていてよい。
リチウムイオン電池の正極としては、特に限定されず、正極活物質を含み、且つ必要に応じて導電助剤、結合剤等を含むものであってよい。
正極は、これらの材料を含む層が集電体上に形成されたものであってよい。正極活物質としては、例えば、リチウム(Li)と、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム含有複合金属酸化物が挙げられる。このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNiMnCo1-x-y[0<x+y<1])、LiNiCoAl1-x-y[0<x+y<1])、LiCr0.5Mn0.5、LiFePO、LiFeP、LiMnPO、LiFeBO、Li(PO、LiCuO、LiFeSiO、LiMnSiOなどが挙げられる。
【0028】
リチウムイオン電池の負極としては特に限定されず、負極活物質を含み、且つ必要に応じて導電助剤、結合剤等を含むものであってよい。例えば、Li、Si、P、Sn、Si-Mn、Si-Co、Si-Ni、In、Auなどの金属及びこれらの金属を含む合金、グラファイト等の炭素材料、当該炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質などを挙げることができる。
【0029】
集電体の材質は特に限定されず、Cu、Mg、Ti、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Ge、In、Au、Pt、Ag、Pd等の金属の単体又は合金であってよい。
【0030】
固体電解質層としては、複数の層を有していて良い。例えば、本実施形態のリチウム含有ハロゲン化物を含む固体電解質層に加え、硫化物固体電解質層を有する構成であっても良い。本実施形態のリチウム含有ハロゲン化物を含む固体電解質と負極の間に硫化物固体電解質層を有する構成であっても良い。ただし、本実施形態のリチウム含有ハロゲン化物を含む固体電解質層は電気化学的な安定性が高いため、硫化物固体電解質層を含まず、直接負極と接していても電池内での短絡が発生しにくい。硫化物固体電解質としては特に限定はされないが、例えば、LiPSCl、LiS-PS、Li10GeP12、Li9.612、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、LiPSなどが挙げられる。
【実施例0031】
(実施例1:六方晶LiScCl(γ-LiScCl)の合成)
γ-LiScClを合成するために、まず、化学量論量のLiCl及びScClを窒素雰囲気のグローブボックス内で混合した。そして、混合物を保護材としての金箔と共にプレスしてペレットにした。典型的には、ペレットは、手製の金のるつぼ窒化ホウ素(BN)の蓋が付いたスリーブ管内に挿入された。次に、サンプルとスリーブ間は黒鉛管内に挿入され、高圧反応のためにパイロフィライトのキューブ内に封入された。サンプルセルはプレスされて1時間で5GPaに達し、その後、3時間で1000℃まで加熱された。この温度で3時間保持した後、サンプルは5分以内に室温までクエンチされ、その後圧力を開放し、2時間で大気圧とした。これにより、リチウム含有塩化物(γ-LiScCl)が得られた。
【0032】
(実施例1’)
サンプルセルを2時間で8GPaとなるようにプレスし、圧力を開放した際に12時間で大気圧としたこと以外は、実施例1と同様にリチウム含有塩化物を製造した。
【0033】
<結晶構造の評価>
無色透明な板状の結晶が構造決定のために選択された。単結晶X線構造決定(XRD)データは、a Bruker Kappa APEX 2 CCD diffractometerを用い、123Kで単色化されたMoKα放射(λ=0.7107Å)により得られた。結晶と検出器の距離は50mmに調節された。データの縮小と統合にSAINTプログラムが使用された。構造は、直接法により確立され、OLEX2を使用してFに基づくフルマトリクスの最小二乗フィッティングにより最適化された。すべての原子はフルマトリクスの最小二乗法により最適化され、最終的な最小二乗最適化はF ≧2σ(F )を有するF に基づいた。数値的な吸収補正は、面検出器のためのSADABSプログラムを使用して実行した。構造は、金属カチオンの原子座標を決定するためにSHEL-XSを使用して解析された。
代表的な単結晶のX線回折図形として、図1に、実施例1のサンプルについてc軸方向(001方向)に対応したX線回折測定を示す。
【0034】
(実施例2~4)
表2の組成となる量でLiCl及びScClを使用したこと以外は、実施例1と同様にリチウム含有塩化物を製造した。
【0035】
(実施例5)
表2の組成となる量でLiCl、ZrCl及びScClを使用したこと以外は、実施例1と同様にリチウム含有塩化物を製造した。
【0036】
(実施例20)
表2の組成となる量でLiCl、LiF及びScClを使用したこと以外は、実施例1と同様にリチウム含有塩化物を製造した。
【0037】
(比較例1)
・ボールミル
-70℃以下の露点を有するアルゴン雰囲気中(以下、乾燥アルゴン雰囲気と記載する)で、LiClを0.3201g、ZrClを0.8799g秤量し、原料を用意した。
下記の遊星ボールミル用の50mlの容積のジルコニアポットに上記原料を入れ、直径4mmのジルコニアボールを65g投入した。48時間、380rpmの条件でメカノケミカル的に反応するように処理することで比較例1の粗組成物を得た。ボールミルは、10分間回転させる毎に、インターバルとして1分間停止させ、回転方向を時計回りと反時計回り交互に切り替えるモードで実施した。当該リチウム含有塩化物の仕込み組成は、LiZrCl6である。
遊星ボールミル装置:ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製 PM 400
・アニーリング
上記で得られた比較例1の粗組成物について、アルゴン雰囲気中で230℃で5時間加熱することにより、仕込み組成がLiZrCl6の比較例1のリチウム含有塩化物を得た。
【0038】
<粉末X線回折測定>
得られたリチウム含有ハロゲン化物について、25℃での粉末X線回折測定により、結晶構造の評価を行った。結果を表2に示す。また、実施例1~4の回折パターンを、図2に示す。いずれの実施例においても、空間群P6mcの結晶構造に帰属される回折ピークを有していることを確認した。粉末X線回折測定の測定条件について、下記の条件にて実施した。また、試料が直接大気に触れないように、グローブボックス中でサンプルスペースをポリイミドテープで保護してから測定を実施した。
測定装置: SmartLab (株式会社 リガク 製)
X線発生器: CuKα線源 電圧40kV、電流50mA
X線検出器: 半導体検出器
測定範囲: 回折角2θ=5°~80°
スキャンスピード:2.5°/分
【0039】
(α-LiScClの合成)
α-LiScClは、LiCl及びScClの化学量論的な混合物を封じたシリカ管内で650℃で12時間加熱することにより得られた。なお、加熱の際の昇温速度は2℃/分、降温速度も2℃/分で実施した。
【0040】
(β-LiScClの合成)
化学量論量のLiCl及びScClを混合した。混合物をペレット化し、真空下で封じた石英管中に配置した。サンプルは、650℃で48時間加熱することにより得られた。なお、加熱の際の昇温速度、降温速度は5℃/分で実施した。
【0041】
図3は上述の粉末X線回折測定と同じ条件で、試料をメノウ乳鉢で粉砕したものについて、粉末X線回折測定を実施することで得られたLiScClの3つの結晶多形についてのX線回折チャートである。LiScClには、単斜晶(空間群:C2/m)の結晶構造を有するα相(α-LiScCl)と、立方晶(空間群:Fd-3m)の結晶構造を有するβ相(β-LiScCl)の2種類の結晶多形が存在することが知られている。図3に示されるように、上記のとおり合成されたLiScClは、六方晶(空間群:P6mc)の結晶構造をしており、α相及びβ相のいずれとも異なる新規な結晶構造を有している。この新規な結晶構造のLiScClをγ-LiScClとも呼ぶ。また、上述の単結晶X線構造解析で得られた結晶構造データを用いて、結晶構造解析ソフトウェアVESTA(Visualization for Electronic and Structural Analysis)によって、CuKα線の波長(1.54059Å)を入力して、シミュレーション(理論計算)を行うことによりγ相-LiScClの回折チャートが得られた。理論計算により求められたγ相-LiScClの回折チャート(最も下のグラフ)ともよく一致している。
【0042】
表1に123Kにおける単結晶X線回折から得られたγ-LiScCl結晶データと構造最適化のデータを示す。LiScCl-5GPa及びLiScCl-8GPaはそれぞれ5GPa及び8GPaの圧力下で得られたサンプル(つまり、実施例1及び実施例1’)を意味する。図4は、γ-LiScClの構造のボール-アンド-スティック及び多面体表示である。
【0043】
【表1】
【0044】
<イオン伝導度の評価>
枠型、パンチ下部及びパンチ上部を備える加圧成形ダイスを用意した。なお、枠型は、絶縁性ポリカーボネートから形成されていた。また、パンチ上部及びパンチ下部は、いずれも、電子伝導性のステンレスから形成されており、インピーダンスアナライザー(Solatron Analytical社製 Sl1260)の端子にそれぞれ電気的に接続されていた。
【0045】
上記加圧成形ダイスを用いて、下記の方法により、リチウム含有ハロゲン化物のイオン伝導度が測定された。まず、乾燥アルゴン雰囲気中で、リチウム含有ハロゲン化物の粉末を、枠型の中空部に鉛直下方から挿入されたパンチ下部上に充填した。そして、パンチ上部を枠型の中空部に上から押し込むことにより、加圧成形ダイスの内部で、リチウム含有ハロゲン化物の粉末に370MPaの圧力が印加された。圧力が印加された後、治具でパンチを上下から締め付けて固定し、一定圧力が保持されたままの状態で、上記インピーダンスアナライザーを用いて、電気化学的インピーダンス測定法により、リチウム含有ハロゲン化物のインピーダンスが測定された。
【0046】
インピーダンス測定結果から、Cole-Cole線図のグラフを作成した。Cole-Cole線図において、複素インピーダンスの位相の絶対値が最も小さい測定点でのインピーダンスの実数値を、ハロゲン化物固体電解質材料のイオン伝導に対する抵抗値と見なした。当該抵抗値を用いて、以下の数式(III)に基づいてイオン伝導度が算出された。各試料の25℃でのイオン伝導度(σ25℃)を表2に示す。
σ=(RSE×S/t)-1・・・(III)
ここで、
σはイオン伝導度であり、
Sは、リチウム含有ハロゲン化物のパンチ上部との接触面積(枠型の中空部の断面積に等しい)であり、
SEは、インピーダンス測定における固体電解質材料の抵抗値であり、
tは、圧力が印加された際のリチウム含有ハロゲン化物の厚みである。
【0047】
図5は実施例3のイオン伝導度のCole-Cole線図である。図5には、それぞれ、25℃、40℃、60℃、80℃及び100℃での測定結果が示されている。
【0048】
<二次電池の作製>
乾燥アルゴン雰囲気中で、リチウム含有ハロゲン化物、及びLiNi1/3Mn1/3Co1/3、及びアセチレンブラックをそれぞれ29質量部、67質量部、及び4質量部秤量し、乳鉢で混合することで、混合物を得た。
内径10mmの絶縁性の筒の中でリチウム含有ハロゲン化物を100mg、上記の混合物を15mgを順に積層して、積層体を得た。積層体に370MPaの圧力を印加し、第1電極(上記混合物の層)及び固体電解質層(上記リチウム含有ハロゲン化物の層)が形成された。
次に、In箔60mgを固体電解質層に接触させるようにして入れ、さらにLi箔2mgをIn箔と接触させるように入れ、積層体を得た。積層体に370MPaの圧力を印加し、第2電極が形成された。
ステンレス鋼で形成された集電体が第1電極及び第2電極に取り付けられ、次いで、当該集電体にリード線が取り付けられた。全ての部材はデシケータ中に配置され、密閉されており、このようにして二次電池が得られた。
【0049】
<充放電試験>
充放電試験機としては、下記の製品を用いて実施した。
充放電試験機:東洋システム株式会社 TOSCAT-3100
60℃において、0.1C、1C及び3Cの3通りのCレートで充放電試験を実施した。
定電流定電圧(CCCV充電)で、それぞれのCレートに対応した電流密度で3.7Vまで充電を行った。
放電は、それぞれのCレートに対応した電流密度で、1.9Vまで放電した。
二次電池作製後に短絡することなく、開回路電圧が得られ、上記の充放電試験において充電容量、及び放電容量が確認されたものを、充放電可能と判断した。
また、実施例1について、0.1C及び0.2のCレートで5回の充放電試験を行った。図6は、実施例1について0.1Cで充放電試験を行った結果を示す図である。図7は、実施例1について0.2Cで充放電試験を行った結果を示す図である。図8は、実施例1と、α-LiScClについて、サイクル数と放電容量を示す図である。図8において、γ-LiScClについて、0.1C、0.2C及び0.5CのCレートでそれぞれ5サイクルずつ測定した放電容量と、その後1Cで10サイクル測定した放電容量を示す。また、α-LiScClについて、0.1C及び0.2CのCレートでそれぞれ5サイクルずつ測定した放電容量を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
実施例1~5及び20のリチウム含有塩化物は、比較例と比較して、良好なイオン伝導度が得られた。
【0052】
<Liイオン拡散挙動の計算及び計算結果の評価>
Liイオン拡散挙動について分子動力学シミュレーションに基づいて、空間群P6mcに属する化合物のLi平均二乗変位を計算して求めた。
【0053】
目下、本願特許請求の範囲を制限することを望むものではないが、本願で示される全てのLiイオンの拡散挙動およびその結果として得られる平均二乗変位は、当業者に広く使用されかつ知られているオーストリア共和国・ウイーン大学が提供する計算化学ソフトウェア「Vienna ab initio simulation package (VASP)」を使用することで計算した。
具体的には、Liが36個、3価原子が12個、Clが72個のスーパーセルを用いて分子動力学計算を実施し、Liの平均二乗変位を求めた。元素置換構造についてはこの構造をもとに上記方法にて元素置換を行った。計算条件としては、密度汎関数PBEを使用して、nPTアンサンブルを使用し、時間刻み幅は1fs、シミュレーション時間は300ps、シミュレーション温度700KでMD計算をすることによって求めた。3価原子の非整数占有数サイトは熱力学的に最も安定となるように占有率に従って占有/被占有を選択した。
【0054】
Liイオンの平均二乗変位に関しては、下記の式(nn)により求めた。

Liイオン平均二乗変位=(Σ(r(n,t)-r(n,0)))/N…(nn)
ここで、r(n,t)は時刻tにおけるn番目のLi原子の座標であり、Nは計算セルに含まれるLiの総数である。
【0055】
〔実施例1〕
実施例1のγ-LiScClについて、分子動力学シミュレーションに基づいて、当該化合物のLiの平均二乗変位を計算して求めた。結果を以下の表3に記載する。
【0056】
〔実施例6~11〕
γ-LiScClと同様の結晶構造を持ち、Sc元素が、3価元素で置換された化合物について、分子動力学シミュレーションに基づいて、当該化合物のLi平均二乗変位を計算して求めた。結果を以下の表3に記載する。
【0057】
〔実施例12〕
γ-LiScClと同様の結晶構造を持ち、Sc元素のサイトが2種の3価元素で占められた化合物について、分子動力学シミュレーションに基づいて、当該化合物のLi平均二乗変位を計算して求めた。なお参考としてGaとScが50モル%ずつサイトを占有した際の例を示すが、これは他の組成を排除するものではない。結果を以下の表3に記載する。
【0058】
〔実施例13~19〕
γ-LiScClのうちスーパーセル中の1個のScが、4価あるいは5価の元素に置換された化合物について、分子動力学シミュレーションに基づいて、当該化合物のLi平均二乗変位を計算して求めた。本モデルにおいては、Sc原子を4価元素で置換した場合には電荷補償として、置換した原子数と等量のLiを最近接サイトから削除した。また、5価元素で置換した場合には電荷補償として、置換した原子数の倍量のLiを最近接サイトから削除した。なお計算モデルの制約としてScが約8モル%置換された組成を示すが、これは他の組成を排除するものではない。得られた結果を以下の表3に記載する。
【0059】
【表3】
【0060】
上記、表3に示すように、実施例1および6~19の各化合物は、数Å以上のLiイオンの平均二乗変位を示す。平均二乗変位が数Åを大きく上回るということは、固体中でLiが拡散していることを意味し、Liを伝導可能な固体電解質である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8