(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040113
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】触媒、カルボン酸の製造方法、カルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/52 20060101AFI20240315BHJP
B01J 35/45 20240101ALI20240315BHJP
B01J 23/68 20060101ALI20240315BHJP
C07C 51/235 20060101ALI20240315BHJP
C07C 57/045 20060101ALI20240315BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20240315BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20240315BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240315BHJP
【FI】
B01J23/52 Z
B01J35/02 H
B01J23/68 Z
C07C51/235
C07C57/045
C07C67/08
C07C69/54 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108466
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2022144600
(32)【優先日】2022-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・第130回触媒討論会、開催日:令和4年9月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】二宮 航
(72)【発明者】
【氏名】邱 逸飛
(72)【発明者】
【氏名】徳永 信
(72)【発明者】
【氏名】村山 美乃
(72)【発明者】
【氏名】山本 英治
(72)【発明者】
【氏名】シン シテイ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BB04B
4G169BB05B
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BC34A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC50A
4G169BC61A
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169CB07
4G169CB17
4G169CB74
4G169CB75
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EB19
4H006AA02
4H006AC46
4H006BA05
4H006BA06
4H006BA07
4H006BA16
4H006BA55
4H006BS10
4H039CA65
4H039CC30
(57)【要約】
【課題】メタクロレインの液相酸化反応において、温和な条件下で収率を向上する触媒、並びにその触媒を用いたカルボン酸の製造方法およびカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】担体と、前記担体上に担持された金粒子および元素Xと、を有し、前記担体がチタンを含む酸化物であり、前記元素Xがアルカリ土類金属および周期律表第7族元素から選択される少なくとも1種である、触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、前記担体上に担持された金粒子および元素Xと、を有し、
前記担体がチタンを含む酸化物であり、
前記元素Xが周期律表第2族元素、第7族元素および第12族元素から選択される少なくとも1種である、触媒。
【請求項2】
アルデヒドを酸化してカルボン酸を製造する際に用いられる、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
酸素の共存下、アルデヒドおよびアルコールからカルボン酸エステルを製造する際に用いられる、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記アルデヒドがメタクロレインである、請求項2または3に記載の触媒。
【請求項5】
前記元素Xがバリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛およびマンガンから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
前記元素Xがマンガンである、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
前記金粒子のモル数をMA、前記元素Xのモル数をMXとしたとき、MX/MAが1~16である、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
前記MX/MAが2~8である、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
前記金粒子の平均粒子径が1~10nmである、請求項1に記載の触媒。
【請求項10】
請求項2に記載の触媒を用いて、アルデヒドを酸化してカルボン酸を製造する、カルボン酸の製造方法。
【請求項11】
請求項3に記載の触媒を用いて、酸素の共存下、アルデヒドおよびアルコールからカルボン酸エステルを製造する、カルボン酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、並びにその触媒を用いたカルボン酸の製造方法およびカルボン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸エステルの1種であるメタクリル酸メチルを製造する方法としては、メタクロレインを酸素で酸化してメタクリル酸を製造し、次にメタクリル酸とメタノールを反応させてメタクリル酸メチルを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/022544号
【特許文献2】特開2011-102253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタクロレインは、メタクリル酸やメタクリル酸メチルを生成するための主要な中間体である。メタクリル酸は、メタクロレインの気相接触酸化によって工業的に製造されている。しかしながら、メタクロレインを酸化してメタクリル酸を生成する際に用いられる触媒は、寿命が短いという課題があった。また、前記触媒を用いたメタクロレインの気相接触酸化では、反応温度が300℃以上の高温であるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、メタクロレインの液相酸化反応において、温和な条件下で収率を向上する触媒、並びにその触媒を用いたカルボン酸の製造方法およびカルボン酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1]担体と、前記担体上に担持された金粒子および元素Xと、を有し、
前記担体がチタンを含む酸化物であり、
前記元素Xが周期律表第2族元素、第7族元素および第12族元素から選択される少なくとも1種である、触媒。
[2]アルデヒドを酸化してカルボン酸を製造する際に用いられる、[1]に記載の触媒。
[3]酸素の共存下、アルデヒドおよびアルコールからカルボン酸エステルを製造する際に用いられる、[1]に記載の触媒。
[4]前記アルデヒドがメタクロレインである、[2]または[3]に記載の触媒。
[5]前記元素Xがバリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛およびマンガンから選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の触媒。
[6]前記元素Xがマンガンである、[5]に記載の触媒。
[7]前記金粒子のモル数をMA、前記元素Xのモル数をMXとしたとき、MX/MAが1~16である、[1]~[6]のいずれかに記載の触媒。
[8]前記MX/MAが2~8である、[7]に記載の触媒。
[9]前記金粒子の平均粒子径が1~10nmである、[1]~[8]のいずれかに記載の触媒。
[10][2]に記載の触媒を用いて、アルデヒドを酸化してカルボン酸を製造する、カルボン酸の製造方法。
[11][3]に記載の触媒を用いて、酸素の共存下、アルデヒドおよびアルコールからカルボン酸エステルを製造する、カルボン酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メタクロレインの液相酸化反応において、温和な条件下で収率を向上する触媒、並びにその触媒を用いたカルボン酸の製造方法およびカルボン酸エステルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0009】
[触媒]
本発明の一実施形態に係る触媒は、担体と、前記担体上に担持された金粒子および元素Xと、を有し、前記担体がチタンを含む酸化物であり、前記元素Xが周期律表第2族元素、第7族元素および第12族元素から選択される少なくとも1種である。
【0010】
「担体」
担体であるチタンを含む酸化物としては、例えば、酸化チタン(IV)(TiO2)、酸化チタン(III)(Ti2O3)等のチタン酸化物が挙げられる。チタンを含む酸化物は、1種からなるものでもあってもよく、2種以上からなるものであってもよい。酸化チタン(IV)(TiO2)を用いる場合、酸化チタン(IV)(TiO2)の結晶構造は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれでもよく、また結晶構造が複数混合した状態で用いてもよい。
【0011】
担体の比表面積は、金粒子および元素Xの担持しやすさや、触媒の反応活性の観点から、BET法による測定で1m2/g以上が好ましく、4m2/g以上がより好ましく、10m2/g以上がさらに好ましい。また、担体の比表面積は、触媒の反応活性の観点や、機械的強度および耐水性の観点から、500m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、60m2/g以下がさらに好ましい。
【0012】
BET法による担体の比表面積は、ガス吸着法によるBETプロットにより測定することができる。測定分析装置としては、例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製のBelsorp-max(比表面積・細孔分布測定装置)が挙げられる。
【0013】
担体の細孔構造は、強度以外の金粒子および元素Xの担持特性、剥離等を含めた長期安定性、反応特性から重要な物性の1つである。
担体の細孔径は、0.1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましい。担体の細孔径が前記下限値以上であると、触媒を液相反応で使用する場合、反応基質の拡散過程を律速にしないよう細孔内拡散抵抗を大きくし過ぎず、反応活性を高く維持することができる。
担体の細孔径は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。担体の細孔径が前記上限値以下であると、触媒が割れにくく、担体に担持した金粒子および元素Xが剥離しにくい。
従って、担体の細孔径は、0.1nm~100nmが好ましく、2nm~50nmがより好ましい。
【0014】
担体の細孔容積は、金粒子および元素Xを担持する細孔が存在するために必要である。
担体の細孔容積は、担体の強度、並びに金粒子および元素Xの担持特性の観点から0.001mL/g~10mL/gが好ましく、0.005mL/g~5mL/gがより好ましい。
【0015】
担体の細孔容積は、ガス吸着法により窒素吸着等温線を取得することにより測定することができる。測定分析装置としては、例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製のBelsorp-max(比表面積・細孔分布測定装置)が挙げられる。
【0016】
担体の形状は、反応形式によって選択される。固定床では、担体の形状は、圧力損失の少ない構造の中空円柱状、ハニカム状形態が好ましい。液相スラリー懸濁条件となる流動床では、担体の形状は、一般的に球状が好ましい。担体が球状である場合、反応性と分離方法から最適な粒子径を選択して使用する形態が選ばれる。反応後、生成物等から触媒を分離するプロセスにおいて沈降分離を採用する場合には、反応特性とのバランスから、担体の粒子径は1μm~500μmが好ましく、10μm~100μmがより好ましく、20μm~50μmがさらに好ましい。クロスフィルター方式を採用する場合は、より高い反応性を示すことから、担体の粒子径は0.01μm~50μmが好ましい。
【0017】
担体は、例えば、酸化チタン(IV)の場合、金属チタンを熱処理する方法により製造することができる。熱処理は、空気中または酸化性雰囲気中で行われる。熱処理温度は、100℃~1000℃が好ましく、200℃~500℃がより好ましい。熱処理時間は0.1時間~20時間が好ましく、0.5時間~5時間がより好ましい。なお熱処理温度および熱処理時間は、金属チタンの量に応じて適宜選択すればよい。
また、酸化チタン(IV)は、チタンテトライソプロポキシドなどのアルコキシド原料や四塩化チタンに水とアルコールを混合し、加水分解によって合成する方法により製造することもできる。そのほか、市販の酸化チタン(IV)を用いることもできる。
【0018】
「金粒子」
金粒子に含まれる金(元素)の化学状態は、金属状態の金、酸化金、水酸化金、酸化水酸化金、金と1種以上の金属元素を含む複合化合物、またはこれらの混合物のいずれでもよい。カルボン酸およびカルボン酸エステルを高選択率かつ高生産性で製造する観点から、金属状態の金であることが好ましい。金が金属状態であることは、粉末X線回折(XRD)を測定し、金属状態の金に帰属される回折ピークを観察することで確認できる。
【0019】
金粒子の平均粒子径は、1nm~10nmが好ましく、2nm~5nmがより好ましい。金粒子の平均粒子径が前記範囲内であると、金粒子の反応活性が向上する傾向にあり、より高生産性でアルデヒドからカルボン酸を製造することが可能となり、また、より高生産性でアルデヒドおよびアルコールからカルボン酸エステルを製造することが可能となる。
【0020】
ここで、本実施形態における「平均粒子径」とは、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定された数平均粒子径を意味する。具体的には、透過型電子顕微鏡で観察される画像において、黒いコントラストの部分が金粒子であり、その画像内での各粒子の直径を全て測定してその数平均として算出される。
【0021】
担体に対する金粒子の担持量は、特に限定されないが、金粒子が凝集せずに、高分散の状態で担持される観点から、担体100質量部に対して、0.1質量部~50質量部が好ましく、1質量部~8質量部がより好ましい。また、触媒の全質量(100質量%)中、0.1質量%~34質量%が好ましく、0.5質量%~10質量%がより好ましく、1質量%~7.4質量%がさらに好ましい。
【0022】
「元素X」
元素Xは、周期律表第2族元素、第7族元素および第12族元素から選択される少なくとも1種の金属元素である。
元素Xの具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、マンガン、テクネチウム、レニウム、ボーリウム、亜鉛、カドミウム、水銀、コペルニシウム等が挙げられる。これらの金属元素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの金属元素の化学状態は、金属単体、酸化物、水酸化物、2種以上の金属元素を含む複合物、またはこれらの混合物のいずれでもよいが、金属単体または金属酸化物が好ましい。
【0023】
上記の金属元素の中でも、元素Xは、バリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛およびマンガンから選択される少なくとも1種の金属元素であることが好ましく、マンガンであることがより好ましい。この理由としては下記の通り推測される。触媒において金元素が活性点として働き、反応基質であるアルデヒドのカルボニル炭素へ求核攻撃することで反応が開始され、その後、電子の授受により反応が進行する。この電子の授受において、活性点である金元素に対して上述の金属元素が相互作用することで電子状態が調整され、アルデヒドとの電子の授受が促進されるため酸化反応が加速する。
【0024】
担体に対する元素Xの担持量は、特に限定されないが、元素Xが凝集せずに、高分散の状態で担持される観点から、担体100質量部に対して、0.001質量部~50質量部が好ましく、0.04質量部~20質量部がより好ましい。
【0025】
「触媒の構造」
担体に担持された金粒子および元素Xは、反応活性を向上させて高選択率および高生産性で、アルデヒドからカルボン酸を製造する観点、およびアルデヒドおよびアルコールからカルボン酸エステルを製造する観点から、担体上に高分散の状態で担持されている形態が好ましく、ナノレベルで高分散に担持される形態が特に好ましい。具体的には、金粒子および元素Xは、粒子が担体との積層方向に互いに重ならないような状態で担持されていることが好ましく、微粒子状(すなわち、粒子同士が接していない状態)または薄膜状(すなわち、粒子同士が互いに接しているが、担体との積層方向に重なっていない状態)で分散して担持されていることがより好ましい。金粒子および元素Xが担体上に高分散の状態で担持されている形態は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察することができる。
【0026】
金粒子のモル数をMA、元素Xのモル数をMXとしたとき、MX/MAは1~16が好ましく、2~8がより好ましい。MX/MAが前記下限値以上であると、元素Xが金元素に対して適切に作用し、電子状態が好適となる。MX/MAが前記上限値以下であると、活性点である金元素に対して過剰に作用せず、元素Xが金元素を覆うことによる反応阻害が抑制される。
【0027】
本実施形態の触媒は、アルデヒドを酸化してカルボン酸を製造する際に用いられることが好ましい。
また、本実施形態の触媒は、酸素の共存下、アルデヒドおよびアルコールからカルボン酸エステルを製造する際に用いられることが好ましい。
【0028】
カルボン酸またはカルボン酸エステルの原料となるアルデヒドは、収率の観点からメタクロレインが好ましい。
【0029】
[触媒の製造方法]
「原料」
本実施形態の触媒は、金粒子および元素Xを含む溶液に担体を接触させる(例えば、浸漬させる)ことによって製造することができる。
【0030】
金粒子の原料としては、テトラクロロ金酸、テトラクロロ金酸ナトリウム、ジシアノ金酸カリウム、ジエチルアミン金三塩化物、シアン化金等を用いることができる。
【0031】
元素Xの原料としては、一般に市販されている化合物を用いることができる。好ましくは水溶性の化合物であり、より好ましくは水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩である。
【0032】
「製造方法」
触媒の製造方法は、上記のような触媒が得られる方法であれば特に限定されず、一般的に用いられる担持金属触媒の製造方法、例えば、含浸法(吸着法、ポアフィリング法、蒸発乾固法、スプレー法)、沈殿法(共沈法、沈着法、混錬法)、イオン交換法、気相蒸着法等を適用することができる。本実施形態では、含浸法、沈殿法を用いることが好ましく、沈殿法を用いることがより好ましい。
【0033】
「製造例」
本実施形態の金触媒の製造方法の一例を以下に示す。
まず、金が含まれる可溶性金属塩の水溶液と担体を混合して攪拌しながら、担体に含まれる塩基や添加する塩基の作用によって担体上に金の沈殿を析出させ触媒前駆体を得る。
金が含まれる可溶性金属塩の水溶液と担体を混合するとスラリー状態の混合物が得られる。スラリー中の固形成分濃度は、通常、0.1質量%~40質量%、好ましくは0.5質量%~10質量%の範囲内に収まるようにする。金が含まれる可溶性金属塩の水溶液と担体を混合してスラリーとする方法は特に限定されず、例えば、金が含まれる可溶性金属塩の水溶液に担体を投入する方法、担体を水に予め分散させスラリーとし、そこへ金が含まれる可溶性金属塩の水溶液を投入する方法を適用することができる。
担体を予め水などに分散させスラリーとする場合、スラリーの固形分濃度は、通常、0.5質量%~40質量%であり、1質量%~10質量%が好ましい。また、該スラリーのpHは、8~12が好ましく、9~10がより好ましい。pHは、塩基を添加して調整してもよい。
【0034】
担体上に元素Xを担持する方法は、特に限定されないが、例えば、元素Xを金が含まれる可溶性金属塩の水溶液に溶解させる方法、担体を分散させる水に元素Xを溶解させる方法、元素Xが含まれる水溶液と金が含まれる可溶性金属塩の水溶液と担体とを混合する方法を適用することができる。
【0035】
金粒子を析出させる際には、金粒子の担持量や粒子径に応じて、金が含まれる可溶性金属塩の水溶液の濃度、pHおよび温度等の条件を適宜選択すればよい。
金が含まれる可溶性金属塩の水溶液の金の濃度は、0.001mol/L~0.1mol/Lが好ましく、0.002mol/L~0.05mol/Lがより好ましい。
【0036】
金が含まれる可溶性金属塩の水溶液が元素Xを含む場合、前記水溶液中の元素Xの濃度は、0.001mol/~2mol/Lが好ましく、0.002mol/~0.8mol/Lがより好ましい。
【0037】
金が含まれる可溶性金属塩の水溶液と担体を混合したスラリーの温度は、10℃~100℃が好ましく、15℃~40℃がより好ましい。また、金を析出させる際の時間は特に限定されるものではなく、担体の種類、金の担持量等の条件により異なるが、30分~20時間が好ましく、1時間~10時間がより好ましい。金が析出した後のスラリーのpHは、6~11が好ましく、8~10がより好ましい。
【0038】
触媒の製造に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア等が挙げられる。
【0039】
続いて、得られた触媒前駆体(金および元素Xを含む)を必要に応じて水洗、乾燥した後、焼成するか、または還元剤と接触させることで触媒を得ることができる。触媒前駆体の焼成温度は、100℃~1000℃が好ましく、200℃~400℃がより好ましい。触媒前駆体の焼成は、空気中、酸化性雰囲気中、またはヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気中で行われる。焼成時間は、0.1時間~20時間が好ましく、0.5時間~5時間がより好ましい。
焼成温度と焼成時間は、触媒前駆体の量に応じて適宜選択すればよい。
【0040】
還元剤を用いて触媒前駆体を還元する場合、還元剤としては、ホルマリン、蟻酸、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、分子状水素等を用いることができる。
ホルマリン、蟻酸、ヒドラジン等を使用して還元を行う場合、5℃~100℃の温度で還元し、その後、上澄みをデカント、水洗後に乾燥して、金粒子および元素Xが担持された触媒を得ることができる。
【0041】
還元方法は、金粒子および元素Xを担持した後の触媒前駆体を、水もしくはメタノール中にて加温しながら、ホルマリン、蟻酸、ヒドラジン等をそのまま、もしくは、これらの物質を含む溶液として添加することによって還元できる。
ホルマリン、蟻酸、ヒドラジン等の使用量は、金粒子の担持量に対して、1倍モル~5倍モルが好ましいが、この量を超えても特に問題はない。
【0042】
分子状水素を使用して還元を行う場合は、希釈していない水素ガス、または窒素あるいはメタン等の不活性なガスで希釈されたものを用いることができる。水素濃度は、0.1体積%以上とし、気相中、もしくは触媒製造時の分散液中に吹き込む等して行われる。
還元する際の温度は、室温~600℃が好ましく、室温~400℃がより好ましい。
還元する際の圧力は、常圧~数気圧が好ましい。
還元処理時間は、触媒種、処理条件に応じて適宜調整されるが、10分~10時間が好ましく、数時間以内に処理が完了するように条件を設定することが好ましい。
【0043】
[カルボン酸の製造方法]
「反応場および原料」
上記の方法により得られた金粒子および元素Xを担体に担持した触媒を用いて、水または有機溶媒を含む液相中でアルデヒドを酸化してカルボン酸を製造することができる。
液相に含まれる水としては、特に限定されないが、例えば、軟水、精製された工業用水、イオン交換水等が挙げられる。通常の水質を持つ水であればよいが、あまり不純物(Fe、Ca、Mg等のイオン)を多く含むものは好ましくない。
【0044】
カルボン酸の製造において、原料として用いるアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサール等のC1-C10脂肪族飽和アルデヒド;アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド等のC3-C10脂肪族α,β-不飽和アルデヒド;ベンズアルデヒド、トリルアルデヒド、ベンジルアルデヒド、フタルアルデヒド等のC6-C20芳香族アルデヒドおよびこれらのアルデヒドの誘導体が挙げられる。なかでも、メタクロレインが好ましい。これらのアルデヒドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
アルデヒドと水の量比は、特に限定されないが、例えば、アルデヒド/水の容量比で1/100~1/1が好ましい。
【0046】
「溶媒」
アルデヒドと水からなる混合液相中、すなわち無溶媒の条件下でアルデヒドを酸化することも可能であるが、アルデヒドと水からなる混合液に溶媒を添加し、アルデヒド、水、溶媒からなる混合液としてもよい。
溶媒としては、例えば、ケトン類、ニトリル類、アルコール類、有機酸エステル類、炭化水素類、有機酸類、アミド類を用いることができる。
【0047】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルが挙げられる。
アルコール類としては、例えば、ターシャリーブタノール、シクロヘキサノールが挙げられる。
有機酸エステル類としては、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸メチルが挙げられる。
炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンが挙げられる。
有機酸類としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、n-吉草酸、イソ吉草酸が挙げられる。
アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、ヘキサメチルホスホアミドが挙げられる。
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
水と溶媒を混合する場合、その混合比は反応原料であるアルデヒドの種類、触媒の組成や調製法、反応条件、反応形式等によって適宜、調整することができる。高選択性および高生産性でアルデヒドからカルボン酸を製造する観点から、溶媒の質量は、水の質量を100質量部とした場合、10質量部~500質量部が好ましく、30質量部~100質量部がより好ましい。
アルデヒドと水からなる混合液、もしくはアルデヒドと、水と、溶媒とからなる混合液は、均一であることが好ましいが、不均一な状態で用いてもよい。
【0049】
「触媒の濃度」
触媒の使用量は、反応原料の種類、触媒の組成や調製法、反応条件、反応形式等によって適宜、調整することができる。触媒をスラリー状態で反応させる場合、液体成分の体積(L)に対する触媒の質量(kg)としては、0.01kg/L~5kg/Lが好ましく、0.02kg/L~3kg/Lがより好ましく、0.04kg/L~1kg/Lがさらに好ましい。
【0050】
「反応形式」
液相におけるカルボン酸の製造は、連続式、バッチ式のいずれの形式で行ってもよい。生産性の観点から、工業的には連続式が好ましい。
【0051】
「酸素」
酸化のための酸素源としては、酸素ガスでもよく、酸素ガスと、窒素、炭酸ガス等の反応に不活性な希釈剤とを含む混合ガスでもよく、空気でもよい。操作性、経済性等の観点から、酸素源としては、空気が好ましい。
【0052】
好ましい酸素分圧は、アルデヒド種や溶媒種、反応条件や反応器形式等により異なるが、実用的には反応器出口の酸素分圧は、爆発範囲の下限以下の濃度となる範囲で、例えば、5kPa~2000kPaが好ましい。反応圧力は、減圧から加圧下の任意の広い圧力範囲で実施することができるが、ゲージ圧として0.1MPa~10MPaが好ましい。
【0053】
「反応温度および反応時間」
カルボン酸を製造する際の反応温度は、30℃~200℃が好ましく、35℃~150℃がより好ましく、40℃~120℃がさらに好ましい。
カルボン酸を製造する際の反応時間は、特に限定されず、1時間~48時間が好ましい。
【0054】
[カルボン酸エステルの製造方法]
「反応場および原料」
上記の方法により得られた金粒子および元素Xを担体に担持した触媒を用いて、酸素の共存下、アルデヒドおよびアルコールからカルボン酸エステルを製造する。
【0055】
カルボン酸エステルの製造において、原料として用いるアルデヒドとしては、カルボン酸の製造において、原料として用いるアルデヒドと同様である。
【0056】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール等のC1-C10脂肪族飽和アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等のC5-C10脂環族アルコール、;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のC2-C10ジオール;アリルアルコール、メタリルアルコール等のC3-C10脂肪族不飽和アルコール;ベンジルアルコール等のC6-C20芳香族アルコール;3-アルキル-3-ヒドロキシメチルオキセタン等のヒドロキシオキセタン類が挙げられる。これらのアルコールは単独もしくは任意の2種以上の混合物として用いることができる。
【0057】
アルデヒドとアルコールとの量比は、特に限定されないが、例えば、アルデヒド/アルコールのモル比で1.0~100.0が好ましく、5.0~60.0がより好ましく、10.0~40.0がさらに好ましい。
【0058】
「触媒の濃度」
触媒の使用量は、反応原料の種類、触媒の組成や調製法、反応条件、反応形式等によって適宜、調整することができる。触媒をスラリー状態で反応させる場合、液体成分の体積(L)に対する触媒の質量(kg)としては、0.01kg/L~5kg/Lが好ましく、0.02kg/L~3kg/Lがより好ましく、0.04kg/L~1kg/Lがさらに好ましい。
【0059】
「反応形式」
カルボン酸エステルの製造においては、気相反応、液相反応、潅液反応等の任意の方法で、回分式または連続式のいずれによっても実施できる。
【0060】
「溶媒」
反応原料となるアルデヒドとアルコールと水からなる混合液相中、すなわち無溶媒の条件下でアルデヒドからカルボン酸エステルを製造することも可能であるが、アルデヒドとアルコールからなる混合液に溶媒を添加し、アルデヒド、アルコール、溶媒からなる混合液としてもよい。
溶媒としては、例えば、水、ケトン類、ニトリル類、アルコール類、有機酸エステル類、炭化水素類、有機酸類、アミド類を用いることができる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルが挙げられる。
アルコール類としては、例えば、ターシャリーブタノール、シクロヘキサノールが挙げられる。
有機酸エステル類としては、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸メチルが挙げられる。
炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンが挙げられる。
有機酸類としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、n-吉草酸、イソ吉草酸が挙げられる。
アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、ヘキサメチルホスホアミドが挙げられる。
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水と溶媒を混合する場合、その混合比は反応原料であるアルデヒドやアルコールの種類、触媒の組成や調製法、反応条件、反応形式等によって適宜、調整することができる。
アルデヒドとアルコールからなる混合液、もしくはアルデヒド、アルコールと溶媒とからなる混合液は、均一であることが好ましいが、不均一な状態で用いてもよい。
【0061】
反応形式も固定床式、流動床式、攪拌槽式等の従来公知の形式によることができる。例えば、液相で実施する際には気泡塔反応器、ドラフトチューブ型反応器、撹拌槽反応器等の任意の反応器形式によることができる。
【0062】
「酸素」
カルボン酸エステルの製造に使用する酸素は、分子状酸素、すなち、酸素ガス自体でもよく、酸素ガスと、窒素、炭酸ガス等の反応に不活性な希釈剤とを含む混合ガスでもよく、空気でもよい。操作性、経済性等の観点から、酸素源としては、空気が好ましい。
【0063】
好ましい酸素分圧は、アルデヒド種、アルコール種等の反応原料、反応条件や反応器形式等により異なるが、実用的には反応器出口の酸素分圧は、爆発範囲の下限以下の濃度となる範囲で、例えば、5kPa~2000kPaが好ましい。反応圧力は、減圧から加圧下の任意の広い圧力範囲で実施することができるが、ゲージ圧として0.1MPa~10MPaが好ましい。
【0064】
カルボン酸エステルの製造反応を液相等で実施する場合には、反応系にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物(例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩)を添加して、反応系のpHを6~9に保持してもよい。これらのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
「反応温度および反応時間」
カルボン酸エステルを製造する際の反応温度は、30℃~200℃が好ましく、35℃~150℃がより好ましく、40℃~120℃がさらに好ましい。
カルボン酸エステルを製造する際の反応時間は、特に限定されず、1時間~48時間が好ましい。
【実施例0066】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例および比較例において、金粒子の担持量と元素X(Mg、Ca、Ba、Zn、Mn、Ni)の担持量の測定は、以下の方法により実施した。
【0068】
[金粒子の担持量の測定]
触媒中の金濃度は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製XシリーズX7 ICP-MSを用いて定量した。試料調製は、触媒をテフロン(登録商標)製分解容器に秤取り、硝酸およびフッ化水素を加えてマイクロウェーブ分解装置(マイルストーンゼネラル社製ETHOS TC)に加熱分解後、ヒーター上で蒸発乾固し、次いで、析出した残留物に硝酸および塩酸を加えてマイクロウェーブ分解装置にて加圧分解し、得られた分解液を純水で一定容にしたものを検液とした。
ICP-MSにて内標準法で金を定量し、同時に実施した操作ブランク値を差し引いて触媒中の金含有量を求め、金粒子の担持量を算出した。
【0069】
[Mg、Ca、Ba、Zn、Mn、Niの担持量の測定]
担体を王水で溶解させた試料と、アルカリ溶融塩で溶解させた試料を調製した。ICP(セイコー電子工業社製 JY-38P2)を使用し、王水で溶解させた試料でMgの担持量を測定し、アルカリ溶融塩で溶解させた試料でCa、Ba、Zn、Mn、Niの担持量を測定した。
【0070】
[実施例1]
「触媒の調製」
テトラクロロ金酸25.5mgおよび硝酸マグネシウム10.0mgを蒸留水20mLに添加して、触媒作製用水溶液を調製した。
担体である酸化チタン(IV)1.0gおよび炭酸アンモニウム3.0gを、蒸留水80mLを入れたガラス容器に添加し、pHを9.5に調整した。次いで、25℃で攪拌しながら、所定量の触媒作製用水溶液を酸化チタン(IV)に徐々に滴下した。次いで、pHが安定するまで4時間撹拌を続けた。4時間後のpHは8であった。
その後、ガラス容器を静置してから上澄みを除去して沈殿物を回収した。該沈殿物を25℃の蒸留水500mlで洗浄後、さらに70℃の蒸留水200mlで洗浄し、これを60℃で6時間乾燥した後、さらに空気中300℃で0.5時間焼成して、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%および水酸化マグネシウムを担持した触媒(Au-Mg(OH)2/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表1に示す。
【0071】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mg、メタクロレイン0.165ml、水1.7ml、溶媒としてt-ブタノール1.2mlを、マグネチックスターラーを備えたSUS316製の高圧オートクレーブ式反応器(総容量40ml)に仕込み、オートクレーブを閉じて、系内を窒素ガスで置換した後、20体積%の酸素を含有する窒素の混合ガスを気相部に導入し、系内圧力をゲージ圧として1MPaまで昇圧した。
次いで、オイルバスに反応器を固定し、攪拌下に反応温度を100℃にして4時間反応させた。冷却後、残留圧を除いてオートクレーブを開放した後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフによって分析し、メタクリル酸の収率を算出した。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2]
「触媒の調製」
テトラクロロ金酸25.5mgおよび塩化カルシウム10.0mgを蒸留水20mlに添加して、触媒作製用水溶液を調製した。
得られた触媒作製用水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で触媒を調製し、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%および水酸化カルシウムを担持した触媒(Au-Ca(OH)2/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表1に示す。
【0073】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例3]
「触媒の調製」
テトラクロロ金酸25.5mgを蒸留水20mlに添加して、触媒作製用水溶液Aを調製した。また、酢酸亜鉛10.0mgを蒸留水20mlに添加して、触媒作製用水溶液Bを調製した。
担体である酸化チタン(IV)1.0gおよび炭酸アンモニウム3.0gを、蒸留水80mLを入れたガラス容器に添加し、pHを9.5に調整した。次いで、25℃で攪拌しながら、所定量の触媒作製用水溶液Aを酸化チタン(IV)に徐々に滴下した。次いで、pHが安定するまで4時間撹拌を続けた。4時間後のpHは8であった。
その後、ガラス容器を静置してから上澄みを除去して沈殿物を回収した。該沈殿物を25℃の蒸留水500mLで洗浄後、さらに70℃の蒸留水200mLで洗浄し、これを60℃で6時間乾燥した後、さらに空気中300℃で0.5時間焼成して、酸化チタン(IV)上に金粒子を担持した固形物(Au/TiO2)を得た。
得られた固形物(Au/TiO2)全量を、蒸留水80mLを入れたガラス容器に添加し、次いで、25℃で攪拌しながら、所定量の触媒作製用水溶液Bを滴下した。
その後、エバポレーターを用いて溶媒を除去した後、これを60℃で6時間乾燥した後、さらに空気中300℃で0.5時間焼成して、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%および酸化亜鉛を担持した触媒(Au-ZnO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表1に示す。
【0075】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例4]
「触媒の調製」
テトラクロロ金酸25.5mgおよび硝酸バリウム10.0mgを蒸留水20mlに添加して、触媒作製用水溶液を調製した。
得られた触媒作製用水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で触媒を調製し、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%および水酸化バリウムを担持した触媒(Au-Ba(OH)2/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表1に示す。
【0077】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例5]
「触媒の調製」
酢酸マンガン10.0mgを蒸留水20mlに添加して触媒作製用水溶液Bを調製した。
得られた触媒作製用水溶液を用いた以外は、実施例3と同様の方法で触媒を調製し、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%および酸化マンガンを担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表1に示す。
【0079】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1]
「触媒の調製」
硝酸ニッケル10.0mgを蒸留水20mlに添加して触媒作製用水溶液Bを調製した。
得られた触媒作製用水溶液を用いた以外は、実施例3と同様の方法で触媒を調製し、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%および酸化ニッケルを担持した触媒(Au-NiO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表1に示す。
【0081】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例6~13]
「触媒の調製」
酢酸マンガンの添加量を調整し、触媒のMX/MAが表1に示す値となるようにした以外は、実施例5と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%および酸化マンガン(II)を担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。なお、実施例10において得られた触媒において、金粒子の平均粒子径は2.3nmであった。
【0083】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例14]
「触媒の調製」
テトラクロロ金酸および酢酸マンガンの添加量を調整し、触媒における金の担持量およびMX/MAが表1に示す値となるようにした以外は、実施例5と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に金粒子および酸化マンガン(II)を担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。
【0085】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例15~17]
「触媒の調製」
実施例1と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%および水酸化マグネシウムを担持した触媒(Au-Mg(OH)2/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表1に示す。
【0087】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、反応温度および反応時間を表1に示す通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
[実施例18]
「触媒の調製」
酢酸マンガン37.5mgを蒸留水20mlに添加して触媒作製用水溶液Bを調製した以外は、実施例3と同様の方法で固形物(Au/TiO2)を得た。
得られた固形物(Au/TiO2)全量を、蒸留水80mLを入れたガラス容器に添加し、次いで、25℃で攪拌しながら、所定量の触媒作製用水溶液Bを滴下した。
その後、エバポレーターを用いて溶媒を除去した後、これを60℃で6時間乾燥した後、さらに空気中600℃で0.5時間焼成して、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%および酸化マンガン(III)を担持した触媒(Au-Mn2O3/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表1に示す。
【0089】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
[比較例2]
「触媒の調製」
空気中300℃で0.5時間焼成した以外は、実施例18と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に酸化マンガン(II)を担持した固形物(Mn/TiO2)を得、これを触媒とした。すなわち、酸化チタン(IV)上に金粒子が担持されず、酸化マンガン(II)のみが担持された触媒(MnO/TiO2)を得た。
【0091】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒160mgを用いて、実施例1と同様の方法で反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例19]
「触媒の調製」
テトラクロロ金酸25.5mgを蒸留水20mLに添加して、触媒作製用水溶液Aを調製した。担体である酸化チタン(IV)1.0gおよび炭酸アンモニウム3.0gを、蒸留水80mLを入れたガラス容器に添加し、pHを9.5に調整した。次いで、25℃で攪拌しながら、所定量の触媒作製用水溶液Aを酸化チタン(IV)に徐々に滴下した。次いで、pHが安定するまで4時間撹拌を続けた。4時間後のpHは8であった。
その後、ガラス容器を静置してから上澄みを除去して沈殿物を回収した。該沈殿物を25℃の蒸留水500mLで洗浄後、さらに70℃の蒸留水200mLで洗浄し、これを60℃で6時間乾燥して、固形物Bを得た。
酢酸マンガン四水和物36mg、蒸留水1mLを乳鉢に添加し、水溶液を調製した。次いで、固形物Bを乳鉢に添加し、25℃で30分攪拌した後、これを60℃で6時間乾燥した。乾燥された粉末を空気中300℃で0.5時間焼成して、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%を担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表2に示す。
【0093】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒87.5mg、メタクロレイン0.165mLとメタノール0.4mLを、マグネチックスターラーを備えたSUS316製の高圧オートクレーブ式反応器(総容量6mL)に仕込み、オートクレーブを閉じて、系内を窒素ガスで置換した後、酸素ガスを気相部に導入し、系内全圧を0.3MPaまで昇圧した。
次いで、オイルバスに反応器を固定し、攪拌下に反応温度を80℃にして1時間反応させた。冷却後、残留圧を除いてオートクレーブを開放した後、触媒を濾別し、濾液をガスクロマトグラフによって分析し、メタクリル酸メチルの収率を算出した。結果を表2に示す。
【0094】
[実施例20~23]
「触媒調製」
実施例19と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%を担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表2に示す。
【0095】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒を用いて、触媒量、メタノール添加量、反応時間を表2に示す通り変更した以外は、実施例19と同様の方法で反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0096】
[実施例24~27]
「触媒調製」
実施例19と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%を担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表3に示す。
【0097】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒を用いて、メタノール添加量を1.6mL、反応時間を2時間とし、触媒量と反応温度を表3に示す通り変更した以外は、実施例19と同様の方法で反応評価を行った。結果を表3に示す。
【0098】
[実施例28,29]
「触媒調製」
実施例19と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%を担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表4に示す。
【0099】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒を用いて、メタノール添加量を1.6mL、反応温度を80℃、反応時間を2時間とし、触媒量と系内圧力を表4に示す通り変更した以外は、実施例19と同様の方法で反応評価を行った。結果を表4に示す。
【0100】
[実施例30~32]
「触媒調製」
実施例19と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%を担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表5に示す。
【0101】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒を用いて、メタノール添加量を1.2mL、反応温度を80℃とし、触媒量と反応時間を表5に示す通り変更した以外は、実施例19と同様の方法で反応評価を行った。結果を表5に示す。
【0102】
[実施例33~35]
「触媒調製」
実施例19と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%を担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表6に示す。
【0103】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒を用いて、メタノール添加量を1.6mL、反応温度を80℃、反応時間を2時間とし、触媒量を表6に示す通り変更した以外は、実施例19と同様の方法で反応評価を行った。結果を表6に示す。
【0104】
[実施例36~46]
「触媒調製」
実施例19と同様の方法で、酸化チタン(IV)上に金粒子1質量%を担持した触媒(Au-MnO/TiO2)を得た。該触媒のMX/MAを表7に示す。
【0105】
「反応評価」
上記の方法で得た触媒を用いて、触媒量、アルコールの種類と量、反応時間を表7に示す通り変更した以外は、実施例19と同様の方法で反応評価を行った。結果を表7に示す。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
表1に示すように、金粒子および特定の元素Xが担持された触媒を用いた実施例1~18は、元素X以外の元素を用いた比較例1、および金粒子が担持されていない比較例2と比較して、高いメタクリル酸収率を示した。
また、触媒がAu-MnO/TiO2である場合において、MX/MAの値が規定範囲内である実施例5および8~12が特に高いメタクリル酸収率を示した。
【0114】
表2に示すように、アルデヒド/アルコールのモル比が5~40である実施例19~22は、高いメタクリル酸メチル収率を示した。そのなかでもアルデヒド/アルコールのモル比が15および20である実施例21と実施例22が特に高いメタクリル酸メチル収率を示した。