(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040201
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】点眼剤容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/32 20060101AFI20240315BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
B65D1/32
A61J1/05 313C
A61J1/05 313B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005670
(22)【出願日】2024-01-17
(62)【分割の表示】P 2020560084の分割
【原出願日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2018230193
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】田中 良到
(72)【発明者】
【氏名】江藤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
(57)【要約】
【課題】点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制するとともに、防湿性を向上させて蒸散を抑制し、さらにスクイズ強度を低減することが可能な点眼剤容器を提供する。
【解決手段】点眼剤を収容する収容部を有する点眼剤容器であって、収容部は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層11と、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層11より外側に設けられたポリエチレン樹脂を含む外層12とを有する積層体10からなり、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層11は、2種以上の環状オレフィンの開環による非結晶性の共重合体またはその水素添加物からなり、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層11の厚さが50~1000μmであり、積層体10の厚さが300~2000μmであり、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層11が、収容部の最内層を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点眼剤を収容する収容部を有する点眼剤容器であって、
前記収容部は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層と、前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層より外側に設けられたポリエチレン樹脂を含む外層とを有する積層体からなり、
前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層は、2種以上の環状オレフィンの開環による非結晶性の共重合体またはその水素添加物からなり、
前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層の厚さが50~1000μmであり、前記積層体の厚さが300~2000μmであり、
前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層が、前記収容部の最内層を構成することを特徴とする点眼剤容器。
【請求項2】
前記点眼剤容器は、前記収容部に収容される点眼剤を点眼するためのノズル部を有することを特徴とする請求項1に記載の点眼剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点眼剤容器に関する。
本願は、2018年12月7日に、日本に出願された特願2018-230193号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、点眼剤を収容した点眼剤容器としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製容器が広く用いられている。一般的な点眼剤容器は、点眼剤の収容部と、収容部から突出したノズル部とを備え、ノズル部を目に向けて収容部を手指で押圧することにより、点眼剤容器から点眼剤を点眼することができるように構成されている。
【0003】
一方、包装袋等の包装容器において、内容成分の非吸着性に優れた樹脂として、環状オレフィン共重合体(コポリマー)が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/043895号
【特許文献2】国際公開第2004/080370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
収容部における点眼剤の収着(吸着又は吸収)を抑制するには、点眼剤の有効成分を収着しにくい材料を採用する必要がある。しかし、本発明者らの検討によれば、内容成分の非吸着性に優れた樹脂として環状オレフィン共重合体(コポリマー)を点眼剤容器に用いるとき、上述したPE、PP、PET等の樹脂に比べて環状オレフィン共重合体(コポリマー)が硬いため、点眼の際に収容部を押圧する操作に要するスクイズ強度が大きくなる課題を有することが判明した。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制するとともに、防湿性を向上させて蒸散を抑制し、さらにスクイズ強度を低減することが可能な点眼剤容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の一態様は、点眼剤を収容する収容部を有する点眼剤容器であって、前記収容部は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層と、前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層より外側に設けられたポリエチレン樹脂を含む層とを有する積層体からなり、前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層の厚さが50~1000μmであり、前記積層体の厚さが300~2000μmである。
【0008】
前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層が、前記収容部の最内層を構成してもよい。
前記収容部は、前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層より内側に、前記ポリエチレン樹脂を含む最内層を有してもよい。
前記ポリエチレン樹脂を含む最内層の厚さが500μm以下であってもよい。
前記点眼剤容器は、前記収容部に収容される点眼剤を点眼するためのノズル部を有してもよい。
前記環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層が、COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)又はCOC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)の少なくとも1種を含んでもよい。
【発明の効果】
【0009】
前記態様の点眼剤容器によれば、非収着性に優れた環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層の外側に、ポリエチレン樹脂を含む層を積層することにより、点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制するとともに、防湿性を向上させて蒸散を抑制し、さらにスクイズ強度を低減し、スクイズ性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
本実施形態の点眼剤容器は、点眼剤を収容する収容部を有し、収容部は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有する積層体から構成されている。さらに、収容部を構成する積層体は、少なくとも環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層より外側に、ポリエチレン樹脂を含む層を有する。
【0012】
図1は、第1実施形態による収容部の積層体を示す。この積層体10は、防湿性を有する最内層11と、外層12とを有する。最内層11は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層から構成されている。外層12は、ポリエチレン樹脂を含む層から構成されている。最内層11は、点眼剤に接触し得る内面を有する。外層12は、積層体10の最外層(外気に接触する層)であってもよい。積層体10が、外層12の外側に、他の層を有してもよい。
【0013】
図2は、第2実施形態による収容部の積層体を示す。この積層体20は、最内層21と、防湿性を有する中間層22と、外層23とを有する。中間層22は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層から構成されている。外層23は、ポリエチレン樹脂を含む層から構成されている。最内層21は、点眼剤に接触し得る内面を有する。外層23は、積層体20の最外層であってもよい。積層体20が、外層23の外側に、他の層を有してもよい。
【0014】
第1または第2実施形態において、積層体10,20は、非収着性(非吸着性)及び防湿性に優れた樹脂として、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有する。環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層は、第1実施形態では最内層11であり、第2実施形態では中間層22である。最内層11または中間層22の厚さは、50~1000μmの範囲が好ましく、100~400μmの範囲がより好ましい。環状オレフィン共重合体(コポリマー)としては、いわゆる一般的にCOP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)、COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)等が挙げられる。これにより、内容物が積層体10,20に収着されること、及び積層体10,20を通しての防湿性を向上して蒸散を抑制することができる。積層体10,20を通じた蒸散を抑制することにより、有効成分の水分による劣化または濃度の変化を抑制して、点眼剤の使用期限を延ばすことができる。環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層の厚さは、例えば50μm、100μm、150μm、200μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、600μm、750μm、1000μm、あるいは、上記数値群から選択された2つの数値A,Bを下限および上限とする範囲(A以上かつB以下)であってもよい。
【0015】
COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)としては、例えば2種以上の環状オレフィンの共重合体、またはその水素添加物が挙げられる。COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)は、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、メタセシス等による環状オレフィンの開環重合体、又はその水素添加物である。COP(異なる環状オレフィン同士の共重合体)は、COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)等に比べて脂環式構造を含有する比率が高く、非収着性(非吸着性)に優れる。
【0016】
COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)としては、例えば少なくとも1種の環状オレフィンと、少なくとも1種の非環状オレフィンとの共重合体、またはその水素添加物が挙げられる。COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)は、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、環状オレフィンとエチレンとの共重合体、又はその水素添加物である。
【0017】
環状オレフィン共重合体(コポリマー)の構成モノマーとして使用される環状オレフィンは、少なくとも1つの環構造を有する不飽和炭化水素(オレフィン)である。例えば、炭素原子数が3~20のシクロアルカンを有するビニルシクロアルカン及びその誘導体、炭素原子数が3~20のモノシクロアルケン及びその誘導体、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン(ノルボルネン系モノマー)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0018】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)及びその誘導体が挙げられる。ノルボルネン誘導体としては、アルキル基等の置換基を有する化合物、ノルボルナジエンのように不飽和結合を2以上有する化合物、3つ以上の環構造を有し、そのうち2つの環構造がノルボルネン骨格を構成する化合物が挙げられる。3つ以上の環構造を有するノルボルネン系モノマーとしては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセン(ジヒドロジシクロペンタジエン)や、ノルボルネンまたはジヒドロジシクロペンタジエンに1分子以上のシクロペンタジエンがディールス・アルダー反応により付加した化合物(例えばテトラシクロドデセン、ペンタシクロペンタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン等)、これらの水素添加物、二重結合の位置が異なる異性体、アルキル置換体等が挙げられる。
【0019】
COC(環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体)の構成モノマーとして使用される非環状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、3-デセン、3-ドデセン等のアルケン類が挙げられる。
【0020】
防湿性を有する最内層11または中間層22を構成する樹脂成分は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)の少なくとも1種のみでもよく、環状オレフィン共重合体(コポリマー)と他の樹脂等との混合物でもよい。最内層11または中間層22における環状オレフィン共重合体(コポリマー)の割合は、例えば50~100重量%が挙げられる。防湿性を有する最内層11および中間層22に配合し得る他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0021】
第1または第2実施形態において、外層12,23は、ポリエチレン樹脂を含む層から構成されている。これにより、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層を有する積層体のスクイズ強度を低減し、スクイズ性を改善することができる。外層12,23の厚さは、例えば150μm、200μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、600μm、750μm、1000μm、1200μm、1400μm、あるいは上記数値群から選択された2つの数値A,Bを下限および上限とする範囲(A以上かつB以下)であってもよい。積層体10の外層12の厚さ範囲と、積層体20の外層23の厚さ範囲とが異なってもよい。
【0022】
外層12,23を構成するポリエチレン樹脂としては、エチレンの単独重合体(エチレンホモポリマー)、エチレンと炭素数が4個のα-オレフィン(1-ブテン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C4-LLDPE)、エチレンと炭素数が6個のα-オレフィン(1-ヘキセン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C6-LLDPE)、エチレンと炭素数が8個のα-オレフィン(1-オクテン等)を共重合させた直鎖状低密度ポリエチレン(C8-LLDPE)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン―ビニルアルコール共重合体(EVOH)などが挙げられる。
【0023】
外層12,23を構成する樹脂成分は、ポリエチレン樹脂の少なくとも1種のみでもよく、ポリエチレン樹脂と他の樹脂等との混合物でもよい。外層12,23におけるポリエチレン樹脂の割合は、例えば50~100重量%が挙げられる。外層12,23に配合し得る他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0024】
第1実施形態の最内層11と外層12との間、および第2実施形態の中間層22と外層23との間には、他の層が設けられてもよい。樹脂層間の接着性に支障がない場合は、最内層11または中間層22と外層12,23とが、直接接触するように積層されてもよい。最内層11または中間層22と外層12,23との間に他の層を介在させる場合の厚さは、例えば150μm以下が好ましい。
【0025】
第2実施形態において、最内層21は、環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含まない層であってよく、例えばポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を含む層とすることができる。最内層21がポリエチレン樹脂から構成される場合、最内層21のポリエチレン樹脂は、外層23と同種のポリエチレン樹脂でもよく、外層23と異なるポリエチレン樹脂でもよい。最内層21の厚さは、特に限定されないが、例えば600μm以下であり、50~500μmが好ましい。最内層21の厚さの具体例としては、例えば50μm、100μm、150μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、あるいは上記数値群から選択された2つの数値A,Bを下限および上限とする範囲(A以上かつB以下)であってもよい。最内層21と中間層22とが直接接触して積層されてもよく、最内層21と中間層22との間に他の層が設けられてもよい。
【0026】
積層体10,20の厚さは、300~2000μmの範囲が好ましく、500~1500μmの範囲がより好ましく、例えば、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、1000μm、1200μm、1500μm、1800μm、2000μm、あるいは上記数値群から選択された2つの数値A,Bを下限および上限とする範囲(A以上かつB以下)が挙げられる。ここで、積層体10,20の厚さとは、収容部の全面にわたり相互に密着してラミネート及び成形された各層の厚さを含む合計であり、ラベル、シール等のように収容部に部分的に貼り合わされる層の厚さや、シュリンクフィルム等のように相互に密着することなく重ね合わされる層の厚さは、含まない。
【0027】
積層体10,20は、補強層、ガスバリア層、紫外線吸収層、および印刷層等の1種または2種以上を有してもよい。積層体10,20を構成する各層の積層方法としては、ドライラミネート、押出ラミネート、共押出、塗布等が挙げられ、各層の材料、組み合わせ等に応じて適宜選択することができる。積層体10,20は、全体が無色透明でもよく、厚さ方向または面方向の一部または全部が着色されてもよい。容器の成形法としては、特に限定されないが、例えばブロー成形等が挙げられる。容器の種類としては、特に限定されないが、例えばボトル容器が挙げられる。
【0028】
ガスバリア層は、例えば無機物やガスバリア性樹脂等から構成することができる。無機物としては、金属蒸着層やアルミナ等の金属酸化物が挙げられる。ガスバリア性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン、フッ素樹脂(PCTFE,PTFE,PFA)等が挙げられる。ただし、点眼剤容器の収容部は、包装袋等と異なり、点眼時に繰り返し押圧されて負荷が大きい。このため、積層体10,20が無機物やハロゲン含有樹脂等の異種材料からなるガスバリア層を含むことなく、相互の密着性に優れる組み合わせを採用して、ポリエチレン樹脂及び環状オレフィン共重合体(コポリマー)から収容部を構成することが好ましい。
【0029】
積層体10,20は、酸素吸収剤を含有する層を有してもよい。酸素吸収剤としては、共役ジエン重合体及びこれを環化させた共役ジエン重合体環化物、遷移金属塩などが挙げられる。共役ジエン重合体としては、ポリ(α-ピネン)、ポリ(β-ピネン)、ポリ(ジペンテン)等のポリテルペン類等が挙げられる。遷移金属塩としては、オレイン酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト(II)、2-エチルヘキサン酸コバルト(II)、ステアリン酸コバルト(II)、ネオデカン酸コバルト(II)等が挙げられる。酸素吸収剤を含有する層は、上述の樹脂層、すなわち防湿性を有する最内層11、最内層21、中間層22または外層12,23でもよく、他の層でもよい。
【0030】
図3は、点眼剤容器の一例を示す模式図である。本実施形態の点眼剤容器30は、液状等の点眼剤が収容される収容部31と、収容部31に収容される点眼剤を点眼するためのノズル部33を有する。収容部31とノズル部33との間は、段階的に縮径部32を有してもよい。少なくとも収容部31は、上述の環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層と、ポリエチレン樹脂を含む層とを有する積層体10,20から構成されることが好ましい。
【0031】
収容部31と縮径部32とが、積層体10,20から一体的に構成されてもよい。収容部31と縮径部32とが一体的に構成される場合、ノズル部33は、縮径部32に嵌合する部分を有してもよい。収容部31と縮径部32とが別体から構成される場合、ノズル部33が縮径部32と一体的に構成され、縮径部32が、収容部31の上部に嵌合する部分を有してもよい。
【0032】
点眼剤容器30は、ノズル部33を保護するため、キャップ34を有してもよい。キャップ34は、収容部31、縮径部32、ノズル部33の少なくともいずれかに対して、開閉可能または着脱可能に連結されることが好ましい。収容部31の容量は、特に限定されないが、例えば50ml以下であり、1ml、2.5ml、3ml、5ml、10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、40ml等、あるいは上記数値群から選択された2つの数値A,Bを下限および上限とする範囲(A以上かつB以下)であってもよい。
点眼剤としては、水性点眼剤、油性点眼剤、用時溶解点眼剤、懸濁性点眼剤などが挙げられる。点眼剤は、有効成分以外の添加剤として、可溶化剤、安定化剤、等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、防腐剤、および粘稠化剤の1種または2種以上をなどを含有してもよい。
【0033】
点眼剤に用いられる有効成分の具体例としては、限定はされないが、プロスタグランジン関連薬として、イソプロピルウノプロストン、ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ビマトプロスト;非ステロイド性抗炎症薬として、ジクロフェナクナトリウム、プラノプロフェン、ブロムフェナクナトリウム水和物、ネパフェナク;ビタミンB製剤として、シアノコバラミン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム;抗アレルギー成分として、アシタザノラスト水和物、アンレキサノクス、イブジラスト、エピナスチン塩酸塩、オロパタジン塩酸塩、クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェンフマル酸塩、トラニラスト、ペミロラストカリウム、レボカバスチン塩酸塩;免疫抑制薬として、シクロスポリン、タクロリムス水和物;β遮断薬として、カルテオロール塩酸塩、チモロールマレイン酸塩、ニプラジロール、ベタキソロール塩酸塩、レボブノロール塩酸塩;α1遮断薬として、ブナゾシン塩酸塩;α2刺激薬として、ブリモニジン酒石酸塩;副交感神経刺激薬として、ピロカルピン塩酸塩;交感神経刺激薬として、ジピベフリン塩酸塩;コリンエステラーゼ阻害薬として、ジスチグミン臭化物;白内障治療薬として、グルタチオン、ピレノキシン;抗菌薬として、ガチフロキサシン水和物、ジベカシン硫酸塩、トスフロキサシントシル酸塩水和物、トブラマイシン、バンコマイシン塩酸塩、モキシフロキサシン塩酸塩、レボフロキサシン水和物、塩酸ロメフロキサシン、オフロキサシン、クロラムフェニコール、ノルフロキサシン;β遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬配合剤として、ドルゾラミド塩酸塩、ブリンゾラミド等が挙げられる。これらの1種または2種以上を含有していてもよい。
【0034】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本実施形態の積層体から構成される包装容器は、点眼剤容器の収容部に限らず、他の内容物を収容する容器に適用することも可能である。例えば点鼻剤、点耳剤、その他、投与に際して薬液を患部に滴下する方式の薬剤が挙げられる。
環状オレフィン共重合体(コポリマー)を含む層において、環状オレフィン共重合体(コポリマー)に代えて、または環状オレフィン共重合体(コポリマー)と共に、環状オレフィンの単独重合体、またはその水素添加物を配合することも可能である。
【実施例0035】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0036】
(点眼剤容器のスクイズ強度及び水蒸気透過率の測定)
表1に示す層構成により、点眼剤容器の収容部をブロー成形によりボトル状に成形した。収容部の形状は、直径20mm、高さが約27mmの円筒状(丸形)で、下部に底部を有し、上部にノズルが装着される口部を有する。
表1の「厚さ[μm]」欄において、1つの層の材料及び厚さが、「外層」及び「中間層」欄にまたがっているのは、その層が、中間層を省略した第1実施形態の外層であることを表す。また、1つの層の材料及び厚さが、「外層」、「中間層」及び「最内層」欄にまたがっているのは、材料が単層であることを表す。
「PE1」はポリエチレン樹脂(密度931[Kg/m3]、MFR1.1[g/10min])、「PE3」はポリエチレン樹脂(密度922[Kg/m3]、MFR0.6[g/10min])、「PE4」はポリエチレン樹脂(密度931[Kg/m3]、MFR1.1[g/10min])である。また、「C1」は環状オレフィン共重合体(コポリマー)(密度1010[Kg/m3]、MFR9.0(230℃)[g/10min])、「C2」は環状オレフィン共重合体(コポリマー)(密度1010[Kg/m3]、MFR20.0(280℃)[g/10min])である。また、「CE」は「C1」とスチレン系エラストマー(密度1000[Kg/m3]、MFR8.3(230℃)[g/10min])との混合物である。表1に示す厚さの合計は積層体の厚さを意味するが、それぞれが平均値のため、各層の厚さの合計が積層体の厚さと一致しない(±1μm以内の誤差を有する)場合がある。
【0037】
スクイズ強度(N)は、ボトルの中央部に金属製で直径が10mmの球を100mm/minの速さ(2mmの圧縮に1.2秒かかる割合)で当て、ボトルの壁面を3mm圧縮させた時点での最大荷重を測定した。ボトルに球を当てる方向を上、右、下、左の4方向とし、それぞれ評価数n=5で測定を実施し、平均値を求めた。
【0038】
水蒸気透過率の測定方法は、(1)ボトルの空の重量を測定し、(2)ボトルに蒸留水5.0mlを充填した後にアルミ構成フィルムで蓋をし、(3)充填後のボトルの重量を測定した後に温度40℃、湿度25%RHの環境下で保管し、(4)所定日数経過後にボトル重量を測定し、(5)水蒸気透過率[%]を算出する方法とした。評価数n=5で測定を実施し、平均値を求めた。本試験の水蒸気透過率は、日本薬局方による水蒸気透過性試験の第1法と同様、減量(重量の減少)の割合を算出した値であるが、測定条件は温度がより高く、湿度がより低くした。なお、アルミ構成フィルムは、ボトルよりも十分に水蒸気透過性が低いため、蓋を通じた水蒸気の透過は無視できると考えられる。
【0039】
【0040】
表1に示すように、実施例1~15の点眼剤容器によれば、従来品(比較例1)と遜色のないスクイズ強度を示し、かつ、長期間にわたり、従来品(比較例1)より優れた水蒸気透過率を示すことが確認された。
【0041】
(点眼剤容器の吸着試験)
実施例16の点眼剤容器は、最内層シーラントが環状オレフィンからなり、その外側にポリエチレン(PE)層を用いた。吸着試験に用いる点眼剤容器の形状、寸法、製造方法等は、上記のスクイズ強度及び水蒸気透過率の測定に用いた点眼剤容器と同様にした。表2の「厚さ[μm]」欄は、表1と同様にして、層構成を記載した。
【0042】
吸着試験は、点眼剤を収容した点眼剤容器を所定の条件で保存した後における有効成分の残存濃度の測定により実施した。
点眼剤は、有効成分のラタノプロスト(試薬)50mgを混合溶媒(アセトニトリル5%、蒸留水、ポリソルベート20)に対して、約500ppmになるように溶解して調整した後、ラタノプロストの濃度を容量に対し約0.005%に調整して、製造した。この点眼剤を、ホールピペッターを用いて袋状の点眼剤容器に約5ml入れ、40℃、Dryの環境下に保存し、封入からの保存期間が28日又は60日となった時点で、容器内の点眼剤における残存濃度を測定した。なお、28日間は672時間、60日間は1440時間である。
残存濃度は、液体クロマトグラフィーにおいて、移動相を0.2%酢酸水溶液:アセトニトリル=48:52の混合溶液、流量を1.0ml/分、吸光度の測定波長を210nm、カラム温度を40℃として、カラム(ODSカラム、C18カラム、4.6mm×250mm、5μm)を用いて、18分前後の保持時間において、吸光度の値から有効成分の濃度を測定した。
【0043】
点眼剤容器に封入する前の点眼剤を保存期間0週とし、その時点における残存濃度を初期濃度とした。初期濃度の測定値は68.9ppmであった。残存率(%)は、初期濃度に対する残存濃度の割合として、次の式で算出した。
残存率(%)=[残存濃度(ppm)]/[初期濃度(ppm)]×100(%)
【0044】
【0045】
表2に示すように、実施例16の点眼剤容器によれば、有効成分に対して高い非吸着性を示した。
以上説明したように、本発明の点眼剤容器は、点眼剤の収着(吸着、吸収)を抑制するとともに、防湿性を向上させて蒸散を抑制し、さらにスクイズ強度を低減し、スクイズ性を改善することができるから、本発明は産業上の利用が可能である。