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特開2024-40258コンパウンド、成形体、及びコンパウンドの硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040258
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】コンパウンド、成形体、及びコンパウンドの硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240315BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20240315BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20240315BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240315BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20240315BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20240315BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20240315BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K9/02
C08K9/06
C08L63/00 C
C08L91/06
C08K5/3445
C08K7/18
H01F1/26
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015956
(22)【出願日】2024-02-05
(62)【分割の表示】P 2023020143の分割
【原出願日】2019-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】須田 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】石原 千生
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一雅
(57)【要約】
【課題】流動性に優れたコンパウンドを提供すること。
【解決手段】コンパウンドは、第一金属粉末を含む金属フィラーと、樹脂組成物と、を備え、第一金属粉末が、複数の第一金属粒子を含み、第一金属粒子の表面の少なくとも一部が、Siを含有するガラスで覆われており、第一金属粉末のメジアン径が、1.0μm以上5.0μm以下であり、金属フィラーが、軟磁性体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一金属粉末を含む金属フィラーと、樹脂組成物と、を備え、
前記第一金属粉末が、複数の第一金属粒子を含み、
前記第一金属粒子の表面の少なくとも一部が、Siを含有するガラスで覆われており、
前記第一金属粉末のメジアン径が、1.0μm以上5.0μm以下であり、
前記金属フィラーが、軟磁性体である、
コンパウンド。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含み、
前記エポキシ樹脂が、アラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物を含む、
請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、ワックスを含み、
前記ワックスが、モンタン酸エステルを含む、
請求項1又は2に記載のコンパウンド。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、硬化促進剤を含み、
前記硬化促進剤が、イミダゾール類を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項5】
前記第一金属粉末が、Feを含む合金である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項6】
前記第一金属粒子が、球状である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、熱硬化性樹脂を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項8】
粉末、タブレット、又はペーストである、
請求項1~7のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項9】
前記金属フィラーの含有量が、90質量%以上100質量%未満である、
請求項1~8のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項10】
前記金属フィラーが第二金属粉末を更に含み、
前記第二金属粉末のメジアン径が、前記第一金属粉末のメジアン径よりも大きい、
請求項1~9のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項11】
前記第二金属粉末のメジアン径が、20.0μm以上30.0μm以下であり、
前記第一金属粉末の質量が、M1であり、
前記第二金属粉末の質量が、M2であり、
100×M1/(M1+M2)が、5以上30以下であり、
100×M2/(M1+M2)が、70以上95以下である、
請求項10に記載のコンパウンド。
【請求項12】
前記第二金属粉末が、Feを含む合金である、
請求項10又は11に記載のコンパウンド。
【請求項13】
前記第二金属粉末に含まれる第二金属粒子が、球状である、
請求項10~12のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項14】
前記第二金属粉末のD90が、40μm以上65μm以下である、
請求項10~13のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項15】
前記第二金属粉末のメジアン径が、20.0μm以上28μm以下である、
請求項10~14のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項16】
前記第二金属粉末に含まれる第二金属粒子の表面の少なくとも一部が、Siを含有するガラスで覆われている、
請求項10~15のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項17】
前記金属フィラーを構成する各金属粒子の表面が、メタクリルシランで覆われている、
請求項1~16のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項18】
前記樹脂組成物が、硬化促進剤を含み、
前記硬化促進剤が、1‐シアノエチル‐2‐ウンデシルイミダゾールを含む、
請求項1~17のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項19】
インダクタ用の封止材、インダクタの磁心、EMIシールド、又はトランスの磁心に用いられる、
請求項1~18のいずれか一項に記載のコンパウンド。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載のコンパウンドを含む、
成形体。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか一項に記載のコンパウンドの硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパウンド、成形体、コンパウンドの硬化物、及びコンパウンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉末及び樹脂組成物を含むコンパウンドは、金属粉末の諸物性に応じて、多様な工業製品の原材料として利用される。例えば、コンパウンドは、インダクタ、封止材、電磁波シールド(EMIシールド)、又はボンド磁石等の原材料として利用される。(下記特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014‐13803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンパウンドから工業製品を製造する場合、コンパウンドを型内へ供給及び充填したり、コイル等の部品をコンパウンド中に埋め込んだりする。これらの工程ではコンパウンドの流動性が要求される。しかし、従来のコンパウンドは十分な流動性を有していない。金属粉末の粒径の減少に伴って、コンパウンドの流動性は低下し易い。
【0005】
本発明は、流動性に優れたコンパウンド、コンパウンドを含む成形体、コンパウンドの硬化物、及びコンパウンドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコンパウンドは、第一金属粉末を含む金属フィラーと、樹脂組成物と、を備え、第一金属粉末が、複数の第一金属粒子を含み、第一金属粒子の表面の少なくとも一部が、Siを含有するガラスで覆われており、第一金属粉末のメジアン径が、1.0μm以上5.0μm以下である。
【0007】
第一金属粉末が、Feを含む合金であってよい。
【0008】
第一金属粒子が、球状であってよい。
【0009】
樹脂組成物が、熱硬化性樹脂を含んでよい。
【0010】
本発明の一側面に係るコンパウンドは、粉末又はペーストであってよい。
【0011】
コンパウンドにおける金属フィラーの含有量が、90質量%以上100質量%未満であってよい。
【0012】
金属フィラーが、第二金属粉末を更に含んでよく、第二金属粉末のメジアン径が、第一金属粉末のメジアン径よりも大きくてよい。
【0013】
第二金属粉末のメジアン径が、20.0μm以上30.0μm以下であってよく、第一金属粉末の質量が、M1であってよく、第二金属粉末の質量が、M2であってよく、100×M1/(M1+M2)が、5以上30以下であってよく、100×M2/(M1+M2)が、70以上95以下であってよい。
【0014】
第二金属粉末が、Feを含む合金であってよい。
【0015】
第二金属粉末に含まれる第二金属粒子が、球状であってよい。
【0016】
第二金属粉末のD90が、40μm以上65μm以下であってよい。
【0017】
本発明の一側面に係る成形体は、上記のコンパウンドを含む。
【0018】
本発明の一側面に係るコンパウンドの硬化物は、上記のコンパウンドの硬化物である。
【0019】
本発明の一側面に係るコンパウンドの製造方法は、上記のコンパウンドを製造する方法であって、金属フィラー及びカップリング剤を混合することにより、第一混合物を得る工程と、カップリング剤を除く樹脂組成物と、第一混合物とを加熱しながら混錬することにより、第二混合物を得る工程と、第二混合物を冷却することより、固形物を得る工程と、固形物を粉砕する工程と、を備える。
【0020】
本発明の他の一側面に係るコンパウンドの製造方法は、上記のコンパウンドを製造する方法であって、第一金属粉末及び第二金属粉末を混合することより、金属フィラーを得る工程と、金属フィラー及びカップリング剤を混合することにより、第一混合物を得る工程と、カップリング剤を除く樹脂組成物と、第一混合物とを加熱しながら混錬することにより、第二混合物を得る工程と、第二混合物を冷却することより、固形物を得る工程と、固形物を粉砕する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明よれば、流動性に優れたコンパウンド、コンパウンドを含む成形体、コンパウンドの硬化物、及びコンパウンドの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の好適な実施形態が説明される。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態に係るコンパウンドは、第一金属粉末を含む金属フィラー(metal filler)と、樹脂組成物と、を備える。金属フィラーとは、コンパウンドに含まれる金属粉末の全体と言い換えられてよい。第一金属粉末は、複数の第一金属粒子を含む。つまり、第一金属粉末は、複数の第一金属粒子の全体を意味する。第一金属粒子の表面の少なくとも一部は、Si(ケイ素)を含有するガラスで覆われている。例えば、第一金属粒子の表面の少なくとも一部が、ガラス膜又はガラス層で覆われていてよい。ガラス膜又はガラス層は、Siを含有する多数のガラス粒子から構成されていてよい。コンパウンドは、第一金属粉末に加えて、少なくとも一種の別の金属粉末を更に含んでよい。樹脂組成物は、金属フィラーを構成する各金属粒子の表面を覆っていてよい。樹脂組成物は、金属フィラーの間に存在してよく、金属フィラーは樹脂組成物を介して互いに結着されていてよい。コンパウンドは、金属ではないフィラー(例えば、シリカ又は金属酸化物)を更に含んでよい。
【0024】
金属フィラーを構成する各金属粒子の粒径の減少に伴い、金属粒子間の隙間が減少する。金属粒子間の隙間の減少に伴い、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率(含有量)が増加する。金属フィラーの充填率の増加に伴い、コンパウンドの比透磁率が増加する。一方、金属粒子の粒径の減少に伴い、各金属粒子の比表面積が増加する。金属粒子の比表面積の増加に伴い、金属フィラーが凝集し易く、コンパウンドの流動性が損なわれる。仮に第一金属粒子がガラスで覆われていない場合、メジアン径が比較的小さい第一金属粉末は特に凝集し易く、第一金属粉末の凝集によりコンパウンドの流動性が損なわれ易い。しかし、第一金属粒子の表面をガラスで覆うことにより、第一金属粉末の凝集が抑制され、また第一金属粒子間に作用する摩擦力が低減される。その結果、第一金属粉末の小さいメジアン径に起因するコンパウンドの流動性の低下が抑制される。換言すれば、第一金属粒子の表面をガラスで覆うことにより、金属フィラーの充填率の増加に伴うコンパウンドの流動性の低下を抑制することができる。
【0025】
第一金属粒子の表面におけるガラスの被覆率が高いほど、第一金属粉末が凝集し難く、第一金属粒子間に作用する摩擦力が低減され易く、コンパウンドの流動性が向上し易い。したがって、第一金属粒子の表面全体が、Siを含有するガラスで覆われていてよい。ただし、第一金属粒子の表面の一部のみが、Siを含有するガラスで覆われていてもよい。第一金属粉末が凝集し難く、コンパウンドの流動性が向上し易いことから、第一金属粉末に含まれる全ての第一金属粒子の表面が、Siを含有するガラスで覆われていてよい。ただし、第一金属粉末に含まれる一部の第一金属粒子の表面のみが、Siを含有するガラスで覆われていてもよい。
【0026】
金属フィラーは、第一金属粉末に加えて、メジアン径において第一金属粉末と異なる少なくとも一種の別の金属粉末を含んでよい。例えば、金属フィラーは、第一金属粉末に加えて、第二金属粉末を更に含んでよい。第二金属粉末は、複数の第二金属粒子を含む。つまり、第二金属粉末は、複数の第二金属粒子の全体を意味する。第二金属粉末のメジアン径は、第一金属粉末のメジアン径よりも大きい。仮にコンパウンドが金属フィラーとして第二金属粉末のみを含む場合、第二金属粒子間に隙間が形成され易く、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率が低下し易い。一方、コンパウンドが金属フィラーとして第一金属粉末及び第二金属粉末を含む場合、第二金属粒子よりも小さい第一金属粒子が、第二金属粒子間に形成される隙間に充填され易い。その結果、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率が高まり易い。第一金属粉末及び第二金属粉末の質量比に基づいてコンパウンドの比透磁率が制御され易く、コンパウンドの比透磁率が高まり易い。
【0027】
第二金属粒子の表面は、Siを含有するガラスで覆われていなくてよい。第二金属粒子の表面の少なくとも一部が、Siを含有するガラスで覆われていてもよい。第二金属粒子の表面をガラスで覆うことにより、第二金属粉末の凝集が抑制され、コンパウンドの流動性の低下が抑制される。第二金属粒子の表面全体が、Siを含有するガラスで覆われていてよい。ただし、第二金属粒子の表面の一部のみが、Siを含有するガラスで覆われていてもよい。第二金属粉末に含まれる全ての第二金属粒子の表面が、Siを含有するガラスで覆われていてよい。第二金属粉末に含まれる一部の第二金属粒子の表面のみが、Siを含有するガラスで覆われていてもよい。コンパウンドに含まれる全ての金属粉末が、Siを含有するガラスで覆われていてよい。
【0028】
第一金属粉末のメジアン径(D50)は、1.0μm以上5.0μm以下、好ましくは1.5μm以上3.0μm以下、より好ましくは2.17μm以上2.31μm以下である。上記のD50を有する微細な第一金属粉末がコンパウンドに含まれるので、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率が高まり易い。仮に、第一金属粉末のD50が上記の範囲内であり、且つ第一金属粒子の表面がカラス膜で覆われていない場合、第一金属粉末は凝集し易く、コンパウンドの流動性が低下し易い。しかし、第一金属粒子の表面をガラスで覆うことにより、第一金属粉末のD50が上記の範囲内である場合であっても、第一金属粉末の凝集が抑制され、コンパウンドの流動性の低下が抑制される。第一金属粉末のD10は、例えば1.08μm以上1.2μm以下であってよい。第一金属粉末のD90は、例えば、3.88μm以上4.43μm以下であってよい。第一金属粉末のD10又はD90が上記の範囲内である場合、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率が高まり易い。第一金属粉末のD10、D50及びD90は、第一金属粉末の体積に基づく第一金属粉末の粒度分布から計算されてよい。第一金属粉末の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱式の粒度分布測定装置を用いて測定されてよい。第一金属粉末の粒度分布は、第一金属粉末がコンパウンドの他の成分と混合される前に測定されてよい。第一金属粉末のD10、D50及びD90其々は、ガラスの厚みを含む値である。ガラスの厚みは、個々の第一金属粒子の粒径に比べて著しく小さくてよい。例えば、第一金属粒子を覆うガラスの厚みのスケールは、ナノメートル(nm)であってよい。
【0029】
第二金属粉末のメジアン径(D50)は、20.0μm以上30.0μm以下、好ましくは22μm以上28μm以下、より好ましくは24.0μm以上26.0μm以下であってよい。上記のD50を有する微細な第二金属粉末がコンパウンドに含まれる場合、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率が高まり易い。第二金属粉末のD10は、例えば6.0μm以上12.0μm以下であってよい。第二金属粉末のD90は、例えば、40μm以上65μm以下、好ましくは45μm以上65μm以下であってよい。第二金属粉末のD10又はD90が上記の範囲内である場合、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率が高まり易い。第二金属粉末のD10、D50及びD90は、第二金属粉末の体積に基づく第二金属粉末の粒度分布から計算されてよい。第二金属粉末の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱式の粒度分布測定装置を用いて測定されてよい。第二金属粉末の粒度分布は、第二金属粉末がコンパウンドの他の成分と混合される前に測定されてよい。第二金属粉末がガラスで覆われている場合、第二金属粉末のD10、D50及びD90其々は、ガラスの厚みを含む値である。ガラスの厚みは、個々の第二金属粒子の粒径に比べて著しく小さくてよい。例えば、第二金属粉末を覆うガラスの厚みのスケールは、ナノメートル(nm)であってよい。
【0030】
第一金属粉末の質量は、M1と表されてよい。第二金属粉末の質量が、M2と表されてよい。第一金属粉末のD50が1.0μm以上5.0μm以下(好ましくは2.17μm以上2.31μm以下)であり、且つ第二金属粉末のD50が20.0μm以上30.0μm以下(好ましくは24.0μm以上26.0μm以下)である場合、100×M1/(M1+M2)は、5以上30以下であってよく、100×M2/(M1+M2)が、70以上95以下であってよい。100×M1/(M1+M2)及び100×M2/(M1+M2)が上記の範囲内である場合、第一金属粒子が、第二金属粒子間に形成される隙間に充填され易く、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率が高まり易い。その結果、コンパウンドの比透磁率が増加し易い。上記の同様の理由から、100×M1/(M1+M2)は、好ましくは13以上23以下であってよく、100×M2/(M1+M2)は、好ましくは77以上87以下であってよい。
【0031】
第一金属粒子の表面を覆うガラスは、少なくともSiを含有する。Siを含有するガラスは、例えば、O(酸素)、B(ホウ素)、Na(ナトリウム)及びAl(アルミニウム)からなる群より選ばれる少なくとも一種類の元素を更に含有してよい。ガラスは、例えば、SiO(ケイ酸ガラス)又はホウケイ酸ガラスを含んでよい。Siを含有するガラスからなる多数の粒子が、第一金属粒子の表面を覆っていてよい。第一金属粒子の表面を上記のガラスで覆う手段は、例えば、スプレードライヤーであってよい。つまり、Siを含有する表面処理液が第一金属粉末へ噴霧されてよい。Siを含有する表面処理液は、ガラス自体を含む液、又はガラスの原料を含む液体であってよい。第一金属粒子の表面を上記のガラスで覆う手段は、含浸法であってもよい。例えば、第一金属粉末が、Siを含有する表面処理液中に浸漬されてもよい。表面処理液が付着した第一金属粉末は必要に応じて加熱されてもよい。
【0032】
金属フィラーを構成する金属粒子の表面は、カップリング剤で覆われてよい。第一金属粒子の表面が、カップリング剤で更に覆われてよい。ただし、金属フィラーを覆うカップリング剤は、Siを含有するガラスに相当しない。第一金属粒子が、ガラスで覆われた表面だけでなく、カップリング剤で覆われた表面を更に有してよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましい。コンパウンドは、第一金属粉末とは別の金属粉末として、カップリング剤で覆われた表面を有する金属粉末を更に含んでよい。コンパウンドは、リン酸(例えば有機リン酸)によって処理された表面を有する金属粉末を更に含んでもよい。例えば、コンパウンドは、リン酸塩で覆われた表面を有する金属粉末を更に含んでもよい。第一金属粒子が、ガラスで覆われた表面だけでなく、リン酸によって処理された表面を更に有してよい。
【0033】
第一金属粉末は、例えば、金属単体及び合金からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してよい。合金は、固溶体、共晶及び金属間化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。第一金属粉末は、一種の金属元素又は複数種の金属元素を含んでよい。第一金属粉末に含まれる金属元素は、例えば、卑金属元素、貴金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素であってよい。
【0034】
第一金属粉末に含まれる金属元素は、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、銀(Ag)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びジスプロシウム(Dy)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。第一金属粉末は、金属元素以外の元素を含んでもよい。第一金属粉末は、例えば、酸素(О)、ベリリウム(Be)、リン(P)、ホウ素(B)、又はケイ素(Si)を含んでもよい。第一金属粉末は、軟磁性体、又は強磁性体であってよい。
【0035】
第一金属粉末は、Feを含む合金であってよい。第二金属粉末も、Feを含む合金であってよい。コンパウンドに含まれる全ての金属フィラーが、Feを含む合金であってよい。コンパウンドが金属フィラーとして、Feを含む合金を有することにより、コンパウンドは高い比透磁率を有することができる。高い比透磁率を有するコンパウンドは、例えば、インダクタ又はEMIフィルターに適用されてよい。第一金属粉末は、Fe、Cr及びSiを含む合金であってよい。第一金属粉末が、Fe、Cr及びSiを含む合金である場合、第一金属粉末の錆が抑制され易い。また、第一金属粉末が、Fe、Cr及びSiを含む合金である場合、コンパウンドの硬化物(例えばインダクタのうちコイル以外の部分)におけるコアロスが抑制され易い。同様の理由から、第二金属粉末も、Fe、Cr及びSiを含む合金であってよい。同様の理由から、コンパウンドに含まれる全ての金属フィラーが、Fe、Cr及びSiを含む合金であってよい。
【0036】
Feを含む合金の組成は、上記の組成に限定されない。例えば、第一金属粉末は、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)、P(リン)、C(炭素)、元素α及び元素βを含む金属ガラスを含んでよく、元素αが、Nb(ニオブ)及びMo(モリブデン)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であってよく、元素βが、Cr(クロム)及びZr(ジルコニウム)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であってよい。第一金属粉末は、Fe‐Si系合金、Fe‐Si‐Al系合金(センダスト)、Fe‐Ni系合金(パーマロイ)、Fe‐Cu‐Ni系合金(パーマロイ)、及びFe‐Co系合金(パーメンジュール)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0037】
第一金属粉末は、Fe単体であってもよい。第一金属粉末は、例えば、アモルファス系鉄粉及びカルボニル鉄粉のうち少なくともいずれかを含んでもよい。
【0038】
第一金属粉末は、Nd‐Fe‐B系合金(希土類磁石)、Sm‐Co系合金(希土類磁石)、Sm‐Fe‐N系合金(希土類磁石)、及びAl‐Ni‐Co系合金(アルニコ磁石)からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる金属磁石を含んでよい。
【0039】
第二金属粉末は、上記の金属単体及び化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。第二金属粉末の組成は、第一金属粉末の組成と同じであってよい。第二金属粉末の組成は、第一金属粉末の組成と異なってもよい。金属フィラーは、組成において第一金属粉末及び第二金属粉末と異なる少なくとも一種の別の金属粉末を含んでよい。別の金属粉末は、上記の金属単体及び化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0040】
第一金属粉末は、ナノ結晶及び非晶質金属のうち少なくとも一方を含んでよい。つまり、第一金属粉末を構成する第一金属粒子が、ナノ結晶及び非晶質金属のうち少なくとも一方を含んでよい。非晶質金属は、金属ガラスであってよい。少なくとも一部の第一金属粒子は、単結晶であってよい。少なくとも一部の第一金属粒子は、多結晶であってよい。少なくとも一部の第一金属粒子は、非晶質金属であってよい。第一金属粒子が非晶質金属である場合、コンパウンドから作製されたデバイス(例えばインダクタ)における鉄損(cоre lоss)が低減され易い。
【0041】
第二金属粉末は、ナノ結晶及び非晶質金属のうち少なくとも一方を含んでよい。つまり、第二金属粉末を構成する第二金属粒子が、ナノ結晶及び非晶質金属のうち少なくとも一方を含んでよい。非晶質金属は、金属ガラスであってよい。少なくとも一部の第二金属粒子は、単結晶であってよい。少なくとも一部の第二金属粒子は、多結晶であってよい。少なくとも一部の第二金属粒子は、非晶質金属であってよい。第二金属粒子が非晶質金属である場合、コンパウンドから作製されたデバイス(例えばインダクタ)における鉄損(cоre lоss)が低減され易い。
【0042】
少なくとも一部の第一金属粒子が、略球状であってよい。全ての第一金属粒子が、略球状であってよい。第一金属粒子が略球状である場合、第一金属粒子の表面は平滑である。その結果、金属フィラー間に作用する摩擦力が低減され易く、コンパウンドの流動性が向上し易い。同様の理由から、少なくとも一部の第二金属粒子が、略球状であってよい。全ての第二金属粒子が、略球状であってよい。同様の理由から、コンパウンドに含まれる全ての金属フィラーが、略球状であってよい。金属フィラーの球形度に基づいて第一金属粒子が球状であるか否かを判定することができる。金属フィラーの球形度は、粒子形状画像解析装置によって測定することができる。粒子形状画像解析装置としては、例えば、株式会社セイシン企業製のPITA‐04が用いられてよい。金属フィラーの球形度は、金属フィラーが精製水中に分散した状態において測定される。水中で超音波を所定時間例えば60秒)発生させることにより、金属フィラーが精製水中に分散する。金属フィラーの球形度の計算では、ある指数を用いることにより、金属フィラーの凝集物(二次粒子)の影響が排除されてよい。なお、第一金属粒子及び第二金属粒子其々の形状は、球に限定されない。
【0043】
コンパウンドにおける金属フィラーの含有量は、90質量%以上100質量%未満、93質量%以上99.5質量%以下、又は94質量%以上99.5質量%以下であってよい。金属フィラーの含有量の増加に伴い、コンパウンドの比透磁率が増加する傾向がある。一方、金属フィラーの含有量の増加に伴い、コンパウンドの流動性が低下する傾向がある。しかし金属フィラーの含有量が高い場合であっても、コンパウンドが第一金属粉末を含むことにより、高い比透磁率と高い流動性を両立させることができる。コンパウンドにおける金属フィラーの含有量は、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率と言い換えられてよい。コンパウンドにおける金属フィラーの充填率は、コンパウンドにおける金属フィラーの占積率と言い換えられてよい。コンパウンドにおける樹脂組成物の含有量は、コンパウンド全体の質量に対して、0質量%より大きく10質量%以下、0.5質量%以上7質量%以下、0.5質量%以上6質量%以下であってよい。
【0044】
樹脂組成物は、樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び添加剤を包含し得る成分であってよい。樹脂組成物は、有機溶媒と金属フィラーとを除く残りの成分(不揮発性成分)であってよい。添加剤とは、樹脂組成物のうち、樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を除く残部の成分であってよい。添加剤とは、例えば、カップリング剤又は難燃剤等である。樹脂組成物が添加剤としてワックスを含んでいてもよい。上記の金属フィラーと、未硬化の樹脂組成物との混合物が、コンパウンドに相当する。コンパウンドは粉末であってよい。コンパウンドはタブレットであってもよい。コンパウンドはペーストであってもよい。コンパウンドの成型により、コンパウンドを含む成形体が形成される。成形体中の樹脂組成物を硬化させることにより、コンパウンドの硬化物が得られる。以下に記載の樹脂組成物は、コンパウンドに含まれる未硬化の樹脂組成物とみなされてよい。
【0045】
樹脂組成物は、金属フィラーの結合剤(バインダー)としての機能を有し、コンパウンドから形成される成形体及び硬化物に機械的強度を付与する。例えば、金型を用いてコンパウンドが高圧で成形される際に、樹脂組成物は金属フィラーの間に充填され、金属フィラーを互いに結着する。コンパウンドから形成された成形体中の樹脂組成物を硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物が金属フィラー同士を強固に結着する。
【0046】
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有してよい。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。樹脂組成物がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の両方を含む場合、フェノール樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤として機能してもよい。樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の両方を含んでよい。樹脂組成物は、シリコーン樹脂を含んでもよい。
【0047】
エポキシ樹脂は、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であってよい。エポキシ樹脂は、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルコール類のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、及びオレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0048】
エポキシ樹脂の中でも、結晶性のエポキシ樹脂が好ましい。結晶性のエポキシ樹脂の分子量は比較的低いにもかかわらず、結晶性のエポキシ樹脂は比較的高い融点を有し、且つ流動性に優れる。結晶性のエポキシ樹脂(結晶性の高いエポキシ樹脂)は、例えば、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、チオエーテル型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。結晶性のエポキシ樹脂の市販品は、例えば、エピクロン860、エピクロン1050、エピクロン1055、エピクロン2050、エピクロン3050、エピクロン4050、エピクロン7050、エピクロンHM‐091、エピクロンHM‐101、エピクロンN‐730A、エピクロンN‐740、エピクロンN‐770、エピクロンN‐775、エピクロンN‐865、エピクロンHP‐4032D、エピクロンHP‐7200L、エピクロンHP‐7200、エピクロンHP‐7200H、エピクロンHP‐7200HH、エピクロンHP‐7200HHH、エピクロンHP‐4700、エピクロンHP‐4710、エピクロンHP‐4770、エピクロンHP‐5000、エピクロンHP‐6000、及びN500P‐2(以上、DIC株式会社製の商品名)、NC‐3000、NC‐3000‐L、NC‐3000‐H、NC‐3100、CER‐3000‐L、NC‐2000‐L、XD‐1000、NC‐7000‐L、NC‐7300‐L、EPPN‐501H、EPPN‐501HY、EPPN‐502H、EOCN‐1020、EOCN‐102S、EOCN‐103S、EOCN‐104S、CER‐1020、EPPN‐201、BREN‐S、BREN‐10S(以上、日本化薬株式会社製の商品名)、YX‐4000、YX‐4000H、YL4121H、及びYX‐8800(以上、三菱ケミカル株式会社製の商品名)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0049】
樹脂組成物は、上記のうち一種のエポキシ樹脂を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種のエポキシ樹脂を含有してもよい。
【0050】
硬化剤は、低温から室温の範囲で樹脂を硬化させる硬化剤と、加熱に伴って樹脂を硬化させる加熱硬化型硬化剤と、に分類される。低温から室温の範囲で樹脂を硬化させる硬化剤は、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、及びポリメルカプタン等である。加熱硬化型硬化剤は、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、及びジシアンジアミド(DICY)等である。
【0051】
フェノール樹脂は、例えば、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノールとアラルキル型フェノールとの共重合型フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノール樹脂は、上記のうちの2種以上から構成される共重合体であってもよい。フェノール樹脂の市販品としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のタマノル758、又は日立化成株式会社製のHP‐850N等を用いてもよい。
【0052】
フェノールノボラック樹脂は、例えば、フェノール類及び/又はナフトール類と、アルデヒド類と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール類は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール及びアミノフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するナフトール類は、例えば、α‐ナフトール、β‐ナフトール及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するアルデヒド類は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びサリチルアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0053】
硬化剤は、例えば、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物であってもよい。1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物は、例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及び置換又は非置換のビフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0054】
樹脂組成物は、上記のうち一種のフェノール樹脂を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種のフェノール樹脂を備えてもよい。樹脂組成物は、上記のうち一種の硬化剤を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種の硬化剤を含有してもよい。フェノール樹脂の市販品としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のタマノル758、又は日立化成株式会社製のHP-850N等を用いてもよい。
【0055】
エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する硬化剤中の活性基(フェノール性OH基)の比率は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、好ましくは0.5~1.5当量、より好ましくは0.9~1.4当量、さらに好ましくは1.0~1.2当量であってよい。硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、硬化後のエポキシ樹脂の単位重量当たりのOH量が少なくなり、樹脂組成物(エポキシ樹脂)の硬化速度が低下する。また硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、得られる硬化物のガラス転移温度が低くなったり、硬化物の充分な弾性率が得られなかったりする。一方、硬化剤中の活性基の比率が1.5当量を超える場合、コンパウンドから形成された封止材の機械的強度が低下する傾向がある。ただし、硬化剤中の活性基の比率が上記範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
【0056】
硬化促進剤は、例えば、エポキシ樹脂と反応してエポキシ樹脂の硬化を促進させる組成物であれば限定されない。硬化促進剤は、例えば、アルキル基置換イミダゾール、又はベンゾイミダゾール等のイミダゾール類であってよい。樹脂組成物は、一種の硬化促進剤を備えてよい。樹脂組成物は、複数種の硬化促進剤を備えてもよい。樹脂組成物が硬化促進剤を含有することにより、コンパウンドの成形性及び離型性が向上し易い。樹脂組成物が硬化促進剤を含有することにより、コンパウンドを用いて製造された封止材の機械的強度が向上したり、高温及び高湿な環境下におけるコンパウンドの保存安定性が向上したりする。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、2MZ‐H、C11Z、C17Z、1,2DMZ、2E4MZ、2PZ-PW、2P4MZ、1B2MZ、1B2PZ、2MZ‐CN、C11Z‐CN、2E4MZ‐CN、2PZ‐CN、C11Z‐CNS、2P4MHZ、TPZ、及びSFZ(以上、四国化成工業株式会社製の商品名)からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いてよい。これらの中でも、長鎖アルキル基を有するイミダゾール系硬化促進剤が好ましく、C11Z‐CN(1‐シアノエチル‐2‐ウンデシルイミダゾール)が好ましい。
【0057】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が得られる量であればよく、特に限定されない。ただし、樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性を改善する観点からは、硬化促進剤の配合量は、100質量部のエポキシ樹脂に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~15質量部であってよい。硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤(例えばフェノール樹脂)の質量の合計に対して0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましい。硬化促進剤の配合量が0.1質量部未満である場合、十分な硬化促進効果が得られ難い。硬化促進剤の配合量が30質量部を超える場合、コンパウンドの保存安定性が低下し易い。ただし、硬化促進剤の配合量及び含有量が上記範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
【0058】
カップリング剤は、樹脂組成物と金属フィラーとの密着性を向上させ、コンパウンドから形成される封止材の可撓性及び機械的強度を向上させる。カップリング剤は、例えば、シラン系化合物(シランカップリング剤)、チタン系化合物、アルミニウム化合物(アルミニウムキレート類)、及びアルミニウム/ジルコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、酸無水物系シラン及びビニルシランからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。特に、アミノフェニル系のシランカップリング剤が好ましい。コンパウンドは、上記のうち一種のカップリング剤を備えてよく、上記のうち複数種のカップリング剤を備えてもよい。
【0059】
コンパウンドの環境安全性、リサイクル性、成形加工性及び低コストのために、コンパウンドは難燃剤を含んでよい。難燃剤は、例えば、臭素系難燃剤、鱗茎難燃剤、水和金属化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、窒素含有化合物、ヒンダードアミン化合物、有機金属化合物及び芳香族エンプラからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。コンパウンドは、上記のうち一種の難燃剤を備えてよく、上記のうち複数種の難燃剤を備えてもよい。
【0060】
樹脂組成物は、ワックスを含有してよい。ワックスは、コンパウンドの成形(例えばトランスファー成形)におけるコンパウンドの流動性を高めると共に、離型剤として機能する。ワックスは、高級脂肪酸等の脂肪酸、及び脂肪酸エステルのうち少なくともいずれか一つであってよい。
【0061】
ワックスは、例えば、モンタン酸、ステアリン酸、12‐オキシステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸類又はこれらのエステル;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアエン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2‐エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N‐ステアリルステアリン酸アミド、N‐オレイルステアリン酸アミド、N‐ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等の脂肪酸アミド;ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル;エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの変性物からなるポリエーテル類;シリコーンオイル、シリコングリース等のポリシロキサン類;フッ素系オイル、フッ素系グリース、含フッ素樹脂粉末等のフッ素化合物;並びに、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類;からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0062】
本実施形態に係るコンパウンドは、優れた流動性を有している。したがって、本実施形態に係るコンパウンドは、押出成形又はトランスファー成形(移送成形)により、所望の形状へ加工され易い。金属フィラー又は樹脂組成物の組成に基づき、コンパウンドを含む成形体又はコンパウンドの硬化物の諸物性を自在に制御することができる。諸物性とは、例えば、電磁気的特性又は熱伝導性である。これらの理由から、コンパウンドを様々な工業製品又はそれらの原材料に利用することができる。コンパウンドを用いて製造される工業製品は、例えば、自動車、医療機器、電子機器、電気機器、情報通信機器、家電製品、音響機器、及び一般産業機器であってよい。コンパウンドが金属フィラーとして軟磁性体を含む場合、コンパウンドは、インダクタ用の封止材、インダクタ用の磁心、EMIシールド、又はトランスの磁心として利用されてよい。コンパウンドが金属フィラーとして金属磁石を含む場合、コンパウンドはボンド磁石の原材料として利用されてよい。
【0063】
(コンパウンドの製造方法)
以下では、本発明に係るコンパウンドの製造方法の一例が説明される。ただし、本発明に係るコンパウンドの製造方法は、下記の製造方法に限定されない。
【0064】
本実施形態に係るコンパウンドの製造方法は、第一混合工程、第二混合工程、冷却工程及び粉砕工程を備える。
【0065】
第一混合工程では、金属フィラー及びカップリング剤を混合することにより、第一混合物が得られる。第一混合工程により、金属フィラーを構成する各金属粒子の表面にカップリング剤が結合する。つまり、各金属粒子の表面の一部又は全体がカップリング剤で覆われる。その結果、金属フィラーの表面がカップリング剤を介して樹脂組成物で覆われ易く、金属フィラーがコンパウンド中に分散し易く、コンパウンドにおける金属フィラーの充填率が高まり易い。
【0066】
カップリング剤と混合される金属フィラーは、少なくとも第一金属粉末を含む。第一金属粉末に含まれる個々の第一金属粒子の表面は、Siを含有するガラスで予め覆われている。コンパウンドにおける金属フィラーの充填率が増加し易いことから、カップリング剤と混合される金属フィラーは、第一金属粉末及び第二金属粉末の両方を含むことが好ましい。第二金属粉末に含まれる個々の第二金属粒子の表面は、Siを含有するガラスで覆われていなくてよい。第二金属粉末に含まれる個々の第二金属粒子の表面は、Siを含有するガラスで予め覆われていてもよい。金属フィラーが第一金属粉末及び第二金属粉末の両方を含む場合、第一混合工程前に第一金属粉末及び第二金属粉末を混合することにより、金属フィラーが得られてよい。
【0067】
第一混合工程に続く第二混合工程では、カップリング剤を除く樹脂組成物と第一混合物を加熱しながら混錬することにより、第二混合物が得られる。つまり、第二混合工程では、樹脂組成物のうちカップリング剤以外の成分と、第一混合物が混錬される。樹脂組成物のうちカップリング剤以外の成分とは、例えば、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び添加剤であってよい。添加剤は、例えば、ワックス及び難燃剤のうち少なくとも一方であってよい。第二混合工程前に、熱硬化性樹樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び添加剤を予め混合することにより、樹脂混合物が得られてよい。そして、第二混合工程では、樹脂混合物及び第一混合物を加熱しながら混錬することにより、第二混合物が得られてよい。第二混合物は、ペーストであってよい。
【0068】
第二混合工程における第二混合物の温度は、樹脂組成物の組成に応じて調整されてよい。第二混合工程における第二混合物の温度は、例えば、例えば、50℃以上150℃以下、好ましくは60℃以上120℃以下、より好ましくは80℃以上、110℃以下であってよい。第二混合物の温度が上記の範囲内である場合、第二混合物中の樹脂組成物が軟化し易く、樹脂組成物が金属粒子の表面を被覆し易く、第二混合工程中の樹脂組成物の硬化が抑制され易い。第二混合物の温度が低過ぎる場合、第二混合物が十分に混錬されず、コンパウンドの成形性が損なわれ、コンパウンドの硬化度にばらつきが生じる。第二混合物の温度が高過ぎる場合、第二混合工程中に樹脂組成物の硬化が進み、コンパウンドの流動性及び成形性が損なわれ易い。第二混合工程において第二混合物を混錬する時間は、第二混合工程に用いる混錬手段(例えば、二軸加圧ニーダー)の性能、及び第二混合物の体積に応じて調整されてよい。
【0069】
第二混合工程に続く冷却工程では、第二混合物を冷却することより、固形物が得られる。第二混合物は室温で冷却されてよい。
【0070】
冷却工程に続く粉砕工程では、固形物が粉砕される。固形物に粉砕によって得られた粉末そのものが、コンパウンドとして用いられてよい。粉砕工程によって得られた粉末の分級により、粗大な粒子が粉末から除去されてもよい。粉砕工程によって得られた粉末を成型することにより、コンパウンドからなるタブレットが作製されてもよい。
【0071】
以上の製造方法により、コンパウンドが完成される。
【実施例0072】
下記の実施例及び比較例により、本発明がさらに詳細に説明される。ただし、本発明は下記の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
[コンパウンド粉の作製]
<金属フィラーの調製>
第一金属粉末及び第二金属粉末を袋に入れて、袋を閉じた。袋を両手で3分間振って第一金属粉末及び第二金属粉末を混合することにより、金属フィラーを得た。袋はPE(ポリエチレン)から作製されていた。袋の寸法は、470mm×670mmであった。
【0074】
第一金属粉末は、多数の第一金属粒子から構成されていた。第一金属粉末のメジアン径は、2.17μm以上2.31μm以下であった。各第一金属粒子は、合金粒子と、合金粒子の表面を覆う多数のガラス粒子と、から構成されていた。各合金粒子は、Fe、Cr及びSiを含んでいた。合金粒子の表面を覆う各ガラス粒子は、Siを含有していた。各ガラス粒子の粒径は、第一金属粉末のメジアン径よりも著しく小さかった。各第一金属粒子は、略球状であった。第一金属粉末の質量M1は、770.8gであった。
【0075】
第二金属粉末としては、鉄を含むアモルファス合金の粉末が用いられた。鉄を含むアモルファス合金の粉末は、エプソンアトミックス株式会社製のKUAMET 9A4‐IIであった。第二金属粉末のメジアン径は、25.0μmであった。第二金属粉末を構成するアモルファス合金の粒子(第二金属粒子)は、略球状であった。第二金属粉末の質量M2は、3511.2gであった。
【0076】
100×M1/(M1+M2)は、18であった。100×M2/(M1+M2)は、82であった。
【0077】
<第一混合工程>
メタクリルシラン(シランカップリング剤)が、袋内の金属フィラーへ添加された。メタクリルシランの質量は、5.43gであった。メタクリルシランは、信越化学工業株式会社製のKBM‐503であった。袋を両手で3分間振って金属フィラー及びメタクリルシランを混合することにより、第一混合物を得た。第一混合工程により、金属フィラーを構成する各金属粒子の表面が、メタクリルシランで覆われた。
【0078】
<第二混合工程>
第二混合工程では、上記の袋とは別の袋が用いられた。第二混合工程で用いられた袋の寸法は、205×300mmであった。この袋はPE(ポリエチレン)から作製されていた。熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤及びワックス粉を袋に入れて、袋を閉じた。袋を両手で3分間振って袋の内容物を混合することにより、樹脂混合物を得た。熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤及びワックス粉其々の質量及び組成は、以下に示される。下記のNC3000‐H及びNC3000のいずれも、エポキシ樹脂である。
90.9gの熱硬化性樹脂(日本化薬株式会社製のNC3000‐H)
39.0gの熱硬化性樹脂(日本化薬株式会社製のNC3000)
48.2gの硬化剤(フェノールノボラック樹脂、日立化成株式会社製のHP-850N)
2.6gの硬化促進剤(イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤、四国化成株式会社製のC17Z)
15.7gのワックス粉(クラリアントケミカルズ株式会社製のLicowax E)
【0079】
上記の第一混合物及び樹脂混合物を、二軸加圧ニーダーの槽に入れた。槽内の第一混合物及び樹脂混合物をニーダーで加圧しながら混練することにより、第二混合物を得た。第二混合物はペーストであった。混錬中の槽内の温度は82℃であった。ニーダーの回転速度は40rpmであった。混練時間は1分であった。二軸加圧ニーダーとしては、日本スピンドル製造株式会社(旧株式会社森山製作所)製の加圧混練機(PS1‐5MHB‐H型ニーダー)を用いた。
【0080】
<冷却工程>
第二混合物を室温で冷却することより、固形物を得た。
【0081】
<粉砕工程>
固形物を粉砕することにより、粉末状のコンパウンドを得た。篩を用いた分級に因り、粗大な粒子をコンパウンドから除去した。篩の目開きは2mmであった。
【0082】
以上の方法により、実施例1のコンパウンドが作製された。コンパウンドにおける金属フィラーの含有量(占積率)は、95.5質量%であった。
【0083】
[流動性の評価]
実施例1のコンパウンドをトランスファー試験機に仕込んだ。金型温度175℃、注入圧力4.1MPa、成形時間420秒で、コンパウンドのスパイラルフロー量を測定した。スパイラルフロー量とは、金型に形成された溝内においてコンパウンドが流れる長さである。つまりスパイラルフロー量とは、軟化又は液化したコンパウンドの流動距離である。コンパウンドが流れる溝の形状は、渦巻き曲線(アルキメデスのスパイラル)である。コンパウンドが流動し易いほど、スパイラルフロー量は大きい。つまり、流動性に優れたコンパウンドのスパイラルフロー量は大きい。トランスファー試験機としては、株式会社小平製作所製の100KNトランスファー成型機(PZ‐10型)を用いた。金型としては、ASTM D3123に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いた。実施例1のスパイラルフロー量は、下記表1に示される。
【0084】
[比透磁率の測定]
トランスファー試験機及び金型を用いて、実施例1のコンパウンドからトロイダル状の成型体が作製された。金型温度は175℃であり、注入圧力は4.1MPaであり、成形時間は420秒であった。成型体の寸法は、外径20mm、内径12mm、厚み2mmであった。トランスファー試験機としては、株式会社小平製作所製の100KNトランスファー成型機(PZ‐10型)を用いた。金型としては、トロイダル形状を得られる金型を用いた。一次側巻線を上記成型体に5ターン巻回し、二次側巻線を上記成型体に5ターン巻回した。以上の方法によって作製されたサンプルの比透磁率μを測定した。実施例1の比透磁率μは、下記表1に示される。比透磁率μの測定には、岩崎通信機株式会社製のB‐Hアナライザ(SY-8258)を用いた。比透磁率の測定時の周波数は1MHzであった。
【0085】
(実施例2)
第一混合物及び樹脂混合物の質量比の変更により、実施例2のコンパウンドにおける金属フィラーの含有量は、95.0質量%に調整された。金属フィラーの含有量を除いて実施例1と同様の方法で、実施例2のコンパウンドが作製された。実施例1と同様の方法により、実施例2のコンパウンドのスパイラルフロー量が測定された。実施例2のスパイラルフロー量は、下記表1に示される。実施例1と同様の方法により、実施例2のコンパウンドの比透磁率が測定された。実施例2の比透磁率は、下記表1に示される。
【0086】
(比較例1)
比較例1の金属フィラーとして、第二金属粉末のみが用いられた。実施例1と同様に、比較例1のコンパウンドにおける金属フィラーの含有量は、95.5質量%に調整された。金属フィラーを除いて実施例1と同様の方法で、比較例1のコンパウンドが作製された。実施例1と同様の方法により、比較例1のコンパウンドのスパイラルフロー量が測定された。比較例1のスパイラルフロー量は、下記表1に示される。実施例1と同様の方法により、比較例1のコンパウンドの比透磁率が測定された。比較例1の比透磁率は、下記表1に示される。
【0087】
(比較例2)
比較例2の金属フィラーとして、第二金属粉末のみが用いられた。実施例2と同様に、比較例2のコンパウンドにおける金属フィラーの含有量は、95.0質量%に調整された。金属フィラー及びその含有量を除いて実施例1と同様の方法で、比較例2のコンパウンドが作製された。実施例1と同様の方法により、比較例2のコンパウンドのスパイラルフロー量が測定された。比較例2のスパイラルフロー量は、下記表1に示される。実施例1と同様の方法により、比較例2のコンパウンドの比透磁率が測定された。比較例2の比透磁率は、下記表1に示される。
【0088】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係るコンパウンドは流動性に優れているため、様々な工業製品の形状に応じて成型され易い。