(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004027
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、パターン硬化膜、及び半導体素子
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20240109BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240109BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G03F7/023 511
G03F7/004 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103457
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(72)【発明者】
【氏名】濱野 芳美
(72)【発明者】
【氏名】青木 優
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CA02
2H197CA03
2H197CA05
2H197CE10
2H197HA03
2H225AE03P
2H225AE05P
2H225AF05P
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AM79P
2H225AM94P
2H225AM95P
2H225AN57P
2H225BA22P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC03
2H225CC21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた機械強度と、微細加工が可能な高い解像性を有し、焦点位置が異なる場合のパターン断面傾斜角度の差が小さい硬化膜を形成することができる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物と、を含有する、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜、パターン硬化膜の製造方法、及び半導体素子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、
(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物と、
を含有する、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、ビスフェノールイミド骨格を有する樹脂である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、及び下記式(III)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構造を有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R
a及びR
bは、それぞれ独立にエーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、炭素数1~3のアルキレン基、又は単結合を示す。)
【請求項4】
前記(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)で表される化合物に由来する構造単位を有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
(式中、R
a及びR
bは、それぞれ独立にエーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、炭素数1~3のアルキレン基、又は単結合を示す。)
【請求項5】
前記(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はジメトキシメチルベンゼンに由来する構造単位を更に有する樹脂である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物が、o-キノンジアジド化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(C)熱により架橋反応が生じる化合物を更に含有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)熱により架橋反応が生じる化合物が、アルコキシ基又はエポキシ基を有する化合物である、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
(D)エラストマを更に含有する、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物を基板の一部又は全面に塗布及び乾燥し樹脂膜を形成する工程と、
前記樹脂膜の一部又は全面を露光する工程と、
露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱する工程と、を有する、パターン硬化膜の製造方法。
【請求項11】
パターンを有し、前記パターンが請求項9に記載する感光性樹脂組成物の硬化物を含む、パターン硬化膜。
【請求項12】
請求項11に記載のパターン硬化膜を層間絶縁層又は表面保護層として備える、半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、パターン硬化膜、及び半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高集積化、小型化に伴い、半導体素子の表面保護層及び層間絶縁層は、耐熱性、機械特性、金属銅配線との密着性等を有することが求められている。このような特性を併せ持つ絶縁層を形成するための材料としては、アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献1~5参照。)。これらの感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して樹脂膜を形成し、該樹脂膜を露光及び現像することでパターン樹脂膜(パターン形成された樹脂膜)が得られる。そして、上記パターン樹脂膜を加熱硬化することでパターン硬化膜(パターン形成された硬化膜)を形成でき、該パターン硬化膜は、表面保護層及び層間絶縁層として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-309885号公報
【特許文献2】特開2007-57595号公報
【特許文献3】特開2016-24306号公報
【特許文献4】国際公開第2010/073948号
【特許文献5】国際公開第2021/261448号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面保護層及び層間絶縁層に用いられる感光性樹脂組成物には、配線の高密度化に伴う微細加工性、多層化に伴う接続信頼性を高めるための機械強度が優れることが必要とされる。また、高多層化により基板の反りが発生したとき、例えば同一基板面内の中央部と端部では、露光時に焦点位置が変わり、基板の位置によって充分な露光が行われないことが起こり得る。これを考慮すると、焦点位置が異なった場合でも、パターン形状の差が小さいことが必要とされる。(
図1参照。)
【0005】
本発明は、優れた機械強度と、微細加工が可能な高い解像性を有し、焦点位置が異なる場合のパターン形状の差が小さい硬化膜を形成できる、感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、下記[1]~[12]の実施形態を含むものである。
[1](A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物と、を含有する、感光性樹脂組成物。
[2]上記、(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、ビスフェノールイミド骨格を有する樹脂である、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]上記、(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、及び下記式(III)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構造を有する、[1]又は[2]項に記載の感光性樹脂組成物。
【0007】
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R
a及びR
bは、それぞれ独立にエーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、炭素数1~3のアルキレン基、又は単結合を示す。)
[4]上記、イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)で表される化合物に由来する構造単位を有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【0008】
【化2】
(式中、R
a及びR
bは、それぞれ独立にエーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、炭素数1~3のアルキレン基、又は単結合を示す。)
[5]上記、(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はジメトキシメチルベンゼンに由来する構造単位を更に有する樹脂である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[6]上記、光により酸を生成する化合物が、o-キノンジアジド化合物である、[1]~[5]いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[7](C)熱により架橋反応が生じる化合物を更に含有する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【0009】
[8]上記、(C)熱により架橋反応が生じる化合物が、アルコキシ基又はエポキシ基を有する化合物である、[7]に記載の感光性樹脂組成物。
[9](D)エラストマを更に含有する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[10]上記、[1]~[9]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板の一部又は全面に塗布及び乾燥し樹脂膜を形成する工程と、
前記樹脂膜の一部又は全面を露光する工程と、
露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱する工程と、を有する、パターン硬化膜の製造方法。
[11]パターンを有し、上記パターンが[1]~[9]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、パターン硬化膜。
[12][11]に記載のパターン硬化膜を層間絶縁層又は表面保護層として備える、半導体素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた機械強度を有し、微細加工可能かつ焦点位置が異なる場合のパターン形状の差が小さい硬化膜を形成できる、感光性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜及びその製造方法、半導体素子、並びに電子デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】基板に従来例及び本発明の樹脂組成物を塗布し、反った状態で露光、現像した後のパターン硬化膜の模式断面図である。
【
図2】基板に樹脂組成物を塗布し、露光するときの焦点位置を示す模式断面図である。
【
図3】パターン硬化膜の傾斜角度a、bを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味し、(メタ)アクリレート等の他の類似の表現においても同様である。本明細書において、「固形分」とは、感光性樹脂組成物に含まれる水、溶剤等の揮発する物質を除いた不揮発分のことであり、該樹脂組成物を乾燥させた際に、揮発せずに残る成分を示し、また室温(25℃)付近で液状、水飴状、及びワックス状のものも含む。
【0013】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成される限り、他の工程と明確に区別できない工程も含む。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
[感光性樹脂組成物]
一実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)イミド結合及びフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(以下、「(A)成分」という場合がある。)と、(B)光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物(以下、「(B)成分」という場合がある。)と、を含有する。本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物として好適に用いることができる。以下、ポジ型感光性樹脂組成物の形態について、詳細に説明する。
【0015】
<(A)成分:アルカリ可溶性樹脂>
本明細書において、アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ水溶液(現像液)に対して可溶である樹脂を意味する。なお、アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液である。一般には、濃度が2.38質量%のTMAH水溶液が現像に用いられる。(A)成分がアルカリ現像液に可溶であることは、例えば、以下のようにして確認することができる。
【0016】
樹脂を任意の溶剤に溶解して得られたワニスを、シリコンウェハ等の基板上にスピン塗布して形成することによって膜厚5μm程度の塗膜とする。これを20~25℃に調整したTMAH水溶液、金属水酸化物水溶液、又は有機アミン水溶液のいずれかに浸漬する。この結果、塗膜が均一に溶解し得るとき、その樹脂はアルカリ現像液に可溶と見なすことができる。
【0017】
(A)成分は、アルカリ水溶液への溶解性、高解像性、低硬化収縮性の観点からフェノール性水酸基を有し、機械強度の観点からイミド結合を有する樹脂であってよい。
(A)成分が有するフェノール性水酸基は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、又はp-クレゾールに由来する構造であってもよい。(A)成分が有するイミド結合は、芳香環に結合していてよい。
(A)成分は、ビスフェノールイミド骨格を有する樹脂であってよい。ビスフェノールイミド骨格は、テトラカルボン酸二無水物とアミノフェノール化合物との反応に基づく構造であってよい。
【0018】
(A)成分は、硬化収縮率をより低減し、機械強度をより高めることから、ビスフェノールイミド骨格として、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、及び下記式(III)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構造を有してもよい。
【0019】
【化3】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R
a及びR
bは、それぞれ独立にエーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、炭素数1~3のアルキレン基、又は単結合を示す。炭素数1~3のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、プロピリデン基、及びイソプロピリデン基が挙げられる。]
【0020】
式(I)、(II)、又は(III)で表される化合物において、溶解性を高める観点から、OHで表される水酸基の少なくとも一方は、イミド基(イミド結合)のメタ位又はオルト位に結合していることが好ましい。
【0021】
(A)成分は、溶解性と機械強度のバランスに優れることから、ビスフェノールイミド骨格として、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)で表される化合物に由来する構造単位を有する樹脂を含んでよい。
【0022】
【化4】
[式(4)及び式(5)中のR
aは、式(II)中のR
aと同義であり、式(6)中のR
bは、式(III)中のR
bと同義である。溶解性を高める観点から、R
aは、エーテル結合又はカルボニル基であることが好ましく、R
bは、イソプロピリデン基であることが好ましい。]
【0023】
(A)成分は、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール化合物に由来する構造単位を更に有してよく、ホルムアルデヒド、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はジメトキシメチルベンゼンに由来する構造単位を更に有してよい。
【0024】
(A)成分は、例えば、一般的なフェノールノボラック樹脂の合成方法に準じて合成することができる。(A)成分は、ビスフェノールイミド化合物と、クレゾール化合物との反応物であってよく、ビスフェノールイミド化合物と、クレゾール化合物と、ホルムアルデヒド、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はジメトキシメチルベンゼンとの反応物であってもよい。(A)成分は、例えば、下記式で表される構造を有することができる。
【0025】
【0026】
【0027】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、アルカリ水溶液に対する溶解性、感光特性及び硬化膜の機械強度のバランスを考慮すると、1000~50000、2000~45000、3000~42000、5000~40000、10000~40000、又は15000~38000であってよい。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得られる値である。
【0028】
<(B)成分:光により酸を生成する4位にスルホン酸エステルを有する化合物>
(B)成分である光により(光を受けることにより)酸を生成する化合物は、感光性樹脂組成物において感光剤として機能する。(B)成分は、光照射を受けて酸を生成させ、光照射を受けた部分のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。(B)成分としては、一般に光酸発生剤と称される化合物を用いることができる。(B)成分としては、例えば、o-キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、及びトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。(B)成分は、これらの化合物のうちの1種のみからなるものであってもよく、また2種以上を含んで構成されるものであってもよい。これらの中で、感度が高いことから、(B)成分は、o-キノンジアジド化合物であってよい。
【0029】
o-キノンジアジド化合物としては、例えば、o-キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られるものを用いることができる。
o-キノンジアジドスルホニルクロリドとしては、例えば、ベンゾキノン-1,2-ジアジド-4-スルホニルクロリド、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリド、及びナフトキノン-1,2-ジアジド-6-スルホニルクロリドが挙げられる。
【0030】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10-テトラヒドロ-1,3,6,8-テトラヒドロキシ-5,10-ジメチルインデノ[2,1-a]インデン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、及びトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。
【0031】
アミノ化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、及びビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、o-キノンジアジド化合物を合成する際の反応性の観点と、樹脂膜を露光する際に適度な吸収波長範囲に調整可能な観点から、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとの縮合物、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリドとの縮合物、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン又はトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとの縮合物、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン又はトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホニルクロリドとの縮合物であってもよい。
【0033】
脱塩酸剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びピリジンが挙げられる。
【0034】
o-キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物との配合は、o-キノンジアジドスルホニルクロリドが1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基とのモル数の合計が0.5~1.0モルになるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo-キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい配合割合は、0.95/1.00モル~1.00/0.95モル当量の範囲である。
【0035】
上述の反応の好ましい反応温度は0~40℃、好ましい反応時間は1~10時間である。反応溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又はN-メチルピロリドンが用いられる。
【0036】
(B)成分の含有量は、露光部と未露光部の溶解速度差が大きくなり、感度がより良好となる観点から、(A)成分100質量部に対して1~50質量部、3~35質量部、又は5~20質量部であってよい。
【0037】
<(C)成分:熱架橋剤>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(C)成分として、熱架橋剤を更に含有してもよい。(C)成分は、パターン樹脂膜を加熱して硬化する際に、(A)成分と反応して橋架け構造を形成し得る化合物である。これにより、膜の脆さ及び膜の溶融を防ぐことができる。(C)成分としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物、アルコキシ基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0038】
ここでいう「フェノール性水酸基を有する化合物」には、(A)成分は包含されない。熱架橋剤としてのフェノール性水酸基を有する化合物は、熱架橋剤としてだけでなく、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度を向上させることができる。このようなフェノール性水酸基を有する化合物の重量平均分子量(Mw)は、アルカリ水溶液に対する溶解性、感光特性及び機械強度のバランスを考慮して、3000以下、2000以下、又は1500以下であってよい。
【0039】
アルコキシ基を有する化合物としては、公知のものを用いることができる。アルコキシ基を有する化合物は、高い反応性と耐熱性を付与できることから、メトキシ基を有してよく、4つ以上のメトキシ基を有してよい。アルコキシ基を有する化合物は、露光部の溶解促進効果と硬化膜の機械強度のバランスに優れているため、下記式で表される化合物から選ばれる化合物であってよい。
【0040】
【0041】
エポキシ基を有する化合物としては、公知のものを用いることができる。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、複素環式エポキシ化合物、ハロゲン化エポキシ化合物、及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0042】
(C)成分として、上述した化合物以外に、例えば、ビス[3,4-ビス(ヒドロキシメチル)フェニル]エーテル、1,3,5-トリス(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ベンゼン等のヒドロキシメチル基を有する芳香族化合物、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス[4-(4’-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のマレイミド基を有する化合物、ノルボルネン骨格を有する化合物、多官能アクリレート化合物、オキセタニル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物、又はブロック化イソシアネート化合物を用いることもできる。
【0043】
(C)成分の含有量は、硬化膜の耐熱性と塗布基板の反りの観点から、(A)成分100質量部に対して1~70質量部、2~50質量部、又は3~40質量部であってよい。
【0044】
<(D)成分:エラストマ>
本実施形態の樹脂組成物は、パターン硬化膜の柔軟性を向上する観点から、(D)成分としてエラストマを更に含有してもよい。(D)成分としては、例えば、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、及びシリコーン系エラストマが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また(A)成分中にエラストマ成分の骨格を導入してもよい。
【0045】
アクリル系エラストマは、下記式(8)で表される構造単位を有していてもよい。アクリル系エラストマは、下記式(8)で表される構造単位を有することにより、(A)成分と(D)成分との相溶性が向上するため感光性樹脂組成物の白濁を充分に抑え、パターン硬化膜のヘーズ値を低くすることができると共に、機械強度をより向上させることができる。
【0046】
【化8】
[式(8)中、R
17は水素原子又はメチル基を示し、R
18は炭素数2~20のヒドロキシアルキル基を示す。]
【0047】
R18で示される炭素数2~20のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシドデシル基(ヒドロキシラウリル基という場合もある。)、ヒドロキシトリデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシペンタデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシヘプタデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシノナデシル基、及びヒドロキシエイコシル基が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0048】
式(8)中、(A)成分との相溶性及び機械強度をより向上できる点から、R18は、炭素数2~15のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数2~10のヒドロキシアルキル基がより好ましく、炭素数2~8のヒドロキシアルキル基が更に好ましい。
【0049】
式(8)で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシウンデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシドデシル((メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリルという場合もある。)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシトリデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシテトラデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクタデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノナデシル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエイコシルが挙げられる。これらのモノマは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
これらの中でも、(A)成分との相溶性、硬化膜の破断伸びをより向上する観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシウンデシル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシドデシルを用いることが好ましい。
【0051】
(D)成分は、式(8)で表される構造単位のみからなるアクリル系エラストマであってもよく、式(8)で表される構造単位以外の構造単位を有するアクリル系エラストマであってもよい。式(8)で表される構造単位以外の構造単位を有するアクリル樹脂である場合、アクリル樹脂中の式(8)で表される構造単位の割合は、(D)成分の総量に対して、0.1~30.0モル%、0.3~20.0モル%、又は0.5~10.0モル%であってよい。
【0052】
アクリル系エラストマは、下記式(9)で表される構造単位を更に有していてもよい。
【0053】
【化9】
[式(9)中、R
19は水素原子又はメチル基を示し、R
20は1級、2級又は3級アミノ基を有する1価の有機基を示す。]
(D)成分が式(9)で表される構造単位を有することで、未露光部の現像液に対する溶解阻害性及び金属基板に対する密着性をより向上させることができる。
【0054】
式(9)で表される構造単位を有するアクリル系エラストマを与えるモノマとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、及び2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
これらの中でも、パターン硬化膜の基板への密着性、(A)成分との相溶性をより向上できる観点から、式(9)中、R20が下記式(10)で表される1価の有機基であることが好ましい。
【0056】
【化10】
[式(10)中、Yは炭素数1~5のアルキレン基を示し、R
21、R
22、R
23、R
24、及びR
25は各々独立に水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示し、eは0~10の整数を示す。]
【0057】
式(9)中、R20が式(10)で表される1価の有機基で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、及び2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中で、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレートはFA-711MMとして、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルメタクリレートはFA-712HMとして(いずれも昭和電工マテリアルズ株式会社(旧:日立化成株式会社)製)、それぞれ商業的に入手可能であるため好ましい。
【0058】
(D)成分が式(10)で表される構造単位を有する場合、式(9)で表される構造単位の割合は、(A)成分との相溶性と現像液に対する溶解性の点から、(D)成分の総量に対して、0.3~10.0モル%であることが好ましく、0.4~6.0モル%であることがより好ましく、0.5~5.0モル%であることが更に好ましい。
【0059】
アクリル系エラストマは、下記式(11)で表される構造単位を更に有していてもよい。アクリル系エラストマが式(11)で表される構造単位を有することにより、硬化膜の耐熱衝撃性をより向上させることができる。
【0060】
【化11】
[式(11)中、R
26は水素原子又はメチル基を示し、R
27は炭素数4~20のアルキル基を示す。]
【0061】
R27で示される炭素数4~20のアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基という場合もある。)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びエイコシル基が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0062】
式(11)中、アルカリ溶解性、耐熱衝撃性、(A)成分との相溶性の観点から、R27が炭素数4~16のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数4のアルキル基(n-ブチル基)であることが更に好ましい。
【0063】
式(11)で表されるモノマとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルという場合もある。)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、及び(メタ)アクリル酸エイコシルが挙げられる。これらのモノマは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
これらの中でも破断伸びをより向上し、弾性率をより低くする観点から、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、又は(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリルともいう。)を用いることが好ましい。
【0065】
(D)成分が式(11)で表される構造単位を有する場合、式(11)で表される構造単位の割合は、(D)成分の総量に対して、50~93モル%であることが好ましく、55~85モル%であることがより好ましく、60~80モル%であることが更に好ましい。上記式(11)で表される構造単位の割合が50~93モル%であることにより、硬化膜の耐熱衝撃性をより向上させることができる。
【0066】
アクリル系エラストマは、下記式(12)で表される構造単位を更に有していてもよい。アクリル系エラストマが式(12)で表される構造単位を有することにより、樹脂膜の露光部のアルカリ溶解性をより向上させることができる。
【0067】
【化12】
[式(12)中、R
28は水素原子又はメチル基を示す。]
【0068】
式(12)で表される構造単位を与えるモノマとしては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
【0069】
(D)成分が式(12)で表される構造単位を有する場合、式(12)で表される構造単位の割合は、(D)成分の総量に対して、5~35モル%であることが好ましく、10~30モル%であることがより好ましく、15~25モル%であることが更に好ましい。上記式(12)で表される構造単位の組成比が5~35モル%であることにより、(A)成分との相溶性及び露光部のアルカリ溶解性をより向上させることができる。
【0070】
アクリル系エラストマは、例えば、上記式(8)で表される構造単位を与えるモノマ、及び必要に応じて添加される式(9)、(11)又は(12)で表される構造単位を与えるモノマを配合し、乳酸エチル、トルエン、イソプロパノール等の溶剤中で攪拌し、必要に応じて加熱することにより得られる。
【0071】
アクリル系エラストマの合成に用いられるモノマは、式(8)、(9)、(11)、及び(12)で表される構造単位を与えるモノマ以外のモノマを更に含んでいてもよい。
【0072】
そのようなモノマとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸4-メチルベンジル、アクリロニトリル、ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、α-ブロモ(メタ)アクリル酸、α-クロル(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、及びプロピオール酸が挙げられる。これらのモノマは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
(D)成分の重量平均分子量(Mw)は、2000~100000、3000~60000、5000~50000、又は10000~40000であってよい。重量平均分子量(Mw)が2000以上では硬化膜の熱衝撃性をより向上でき、100000以下であると(A)成分との相溶性及び現像性をより向上できる。ここで、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0074】
(D)成分の含有量は、露光部のアルカリ溶解性、未露光部のアルカリ溶解阻害性、金属基板との密着性、耐熱衝撃性のバランスの観点から、(A)成分100質量部に対して1~50質量部、2~30質量部、又は3~20質量部であってよい。
【0075】
<その他の成分>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記(A)~(D)成分以外に、基板との密着性を向上させる接着助剤を含有してもよい。
溶剤、加熱により酸を生成する化合物、溶解促進剤、溶解阻害剤、カップリング剤、及び、界面活性剤又はレベリング剤等の成分を含有してもよい。
【0076】
(溶剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することにより、基板上への塗布を容易にし、均一な厚さの塗膜を形成できるという効果を奏する。溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオナート、3-メチルメトキシプロピオナート、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶解性と塗布膜の均一性の点から、乳酸エチル又はγ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。
【0077】
【化13】
[式(7)中、R
51は水素原子又は炭化水素基を示し、R
52は水素原子、アミノ基、又はフェニル基を示す。A及びBはそれぞれ独立に窒素原子、又は、炭素原子及びこれに結合した水素原子(C-H)を示す。]
【0078】
式(7)で表される含窒素芳香族化合物は、基板への密着性をより向上させる観点から、下記式(7a)で表される含窒素芳香族化合物であってもよい。式(7a)中のR52は式(7)のR52と同義である。
【0079】
【0080】
例えば、1H-テトラゾール、5-アミノテトラゾール、5-フェニルテトラゾール、及び5-メチルテトラゾールが挙げられる。これらの中でも、より良好な基板への密着性を与える観点から、1H-テトラゾール又は5-アミノテトラゾールを含んでよい。
【0081】
配合量は、良好な基板への密着性と感度を与える観点から、(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部、0.015~10質量部、又は0.02~7質量部であってよい。
【0082】
(加熱により酸を生成する化合物)
加熱により酸を生成する化合物を用いることにより、パターン樹脂膜を加熱する際に酸を発生させることが可能となり、(A)成分と(C)成分との反応、すなわち熱架橋反応が促進され、パターン硬化膜の耐熱性が向上する。また、加熱により酸を生成する化合物は光照射によっても酸を発生するため、露光部のアルカリ水溶液への溶解性が増大する。よって、未露光部と露光部とのアルカリ水溶液に対する溶解性の差が更に大きくなり解像度がより向上する。
【0083】
加熱により酸を生成する化合物は、例えば、50~250℃の温度に加熱することにより酸を生成するものであることが好ましい。加熱により酸を生成する化合物のとしては、例えば、オニウム塩等の強酸と塩基とから形成される塩、及びイミドスルホナートが挙げられる。加熱により酸を生成する化合物を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~30.0質量部、0.2~20.0質量部、又は0.5~10.0質量部であってよい。
【0084】
(溶解促進剤)
溶解促進剤を上述のポジ型感光性樹脂組成物に配合することによって、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度及び解像性を向上させることができる。溶解促進剤としては公知のものを用いることができる。溶解促進剤としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、又はスルホンアミド基を有する化合物が挙げられる。溶解促進剤を用いる場合の含有量は、アルカリ水溶液に対する溶解速度によって決めることができ、例えば、(A)成分100質量部に対して、0.01~30質量部とすることができる。
【0085】
(溶解阻害剤)
溶解阻害剤は(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解性を阻害する化合物であり、残膜厚、現像時間及びコントラストをコントロールするために用いられる。溶解阻害剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムクロリド、及びジフェニルヨードニウムヨージドが挙げられる。溶解阻害剤を用いる場合の含有量は、感度と現像時間の許容幅の点から、(A)成分100質量部に対して0.01~20質量部、0.01~15質量部、又は0.05~10質量部であってよい。
【0086】
(カップリング剤)
カップリング剤を感光性樹脂組成物に配合することによって、形成されるパターン硬化膜の基板との接着性をより高めることができる。カップリング剤としては、例えば、有機シラン化合物、アルミキレート化合物が挙げられる。また、有機シラン化合物としては、例えば、KBM-403、KBM-803、及びKBM-903(信越化学工業株式会社製、商品名)が挙げられる。カップリング剤を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20.0質量部又は0.5~10.0質量部であってよい。
【0087】
(界面活性剤又はレベリング剤)
界面活性剤又はレベリング剤を感光性樹脂組成物に配合することによって、塗布性をより向上させることができる。具体的には、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有することで、ストリエーション(膜厚のムラ)をより防いだり、現像性をより向上させることができる。このような界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテルが挙げられる。市販品としては、例えば、メガファックF-171、F-565、及びRS-78(DIC株式会社製、商品名)、が挙げられる。
【0088】
界面活性剤又はレベリング剤を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.001~5質量部又は0.01~3質量部であってよい。
【0089】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液を用いて現像することが可能である。
【0090】
[パターン硬化膜及びパターン硬化膜の製造方法]
一実施形態に係るパターン硬化膜は、パターンを有し、パターンが上述の感光性樹脂組成物の硬化物を含む。パターン硬化膜は、上述の感光性樹脂組成物を加熱することにより得られる。以下、パターン硬化膜の製造方法について説明する。
【0091】
本実施形態に係るパターン硬化膜の製造方法は、上述の感光性樹脂組成物を基板の一部又は全面に塗布、乾燥し樹脂膜を形成する工程(塗布・乾燥(成膜)工程)と、樹脂膜の一部又は全面を露光する工程(露光工程)と、露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程(現像工程)と、パターン樹脂膜を加熱する工程(加熱処理工程)とを有する。以下、各工程について説明する。
【0092】
(塗布・乾燥(成膜)工程)
まず、本実施形態の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する。この工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えば、TiO2、SiO2)、窒化ケイ素等の基板上に、本実施形態の感光性樹脂組成物を、スピナー等を用いて回転塗布し、塗膜を形成する。塗膜の厚さは特に制限されないが、0.1~40μmであってよい。この塗膜が形成された基板をホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。乾燥温度及び乾燥時間に特に制限はないが、80~140℃で1~7分間であってよい。これにより、基板上に樹脂膜が形成される。樹脂膜の厚さに特に制限はないが、0.1~40μmであってよい。
【0093】
(露光工程)
次に、露光工程では、基板上に形成した樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射する。本実施形態の感光性樹脂組成物において、(A)成分はg、h、及びi線に対する透明性が高いので、g、h、i線のいずれか、又は全てを露光に用いることができる。
【0094】
(現像工程)
現像工程では、露光工程後の樹脂膜の露光部を現像液で除去することによって、樹脂膜がパターン化され、パターン樹脂膜が得られる。現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液が好適に用いられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1~10.0質量%であってよい。上記現像液にアルコール類又は界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、0.01~10質量部又は0.1~5.0質量部の範囲で配合してよい。現像液を用いて現像を行う場合は、例えば、シャワー現像、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像等の方法によって、樹脂膜上を現像液で満たし、18~40℃の液温条件下、30~360秒間放置する。放置後、水洗しスピン乾燥を行うことによってパターン樹脂膜を洗浄、乾燥する。
【0095】
(加熱処理工程)
次いで、パターン樹脂膜を加熱処理することによって、パターン硬化膜を形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、半導体装置に対する熱ダメージを充分に防止できる点から、300℃以下、270℃以下、又は250℃以下であってよい。
【0096】
加熱処理は、例えば、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線加熱炉、電子線加熱炉、マイクロ波加熱炉等のオーブンを用いて行うことができる。また、大気中又は窒素等の不活性ガス雰囲気中のいずれを選択することもできるが、パターンの酸化を防ぐことができるので窒素雰囲気中が望ましい。上述の加熱温度の範囲は従来の加熱温度よりも低いため、基板及び半導体装置への熱ダメージを小さく抑えることができる。したがって、本実施形態に係るパターン硬化膜の製造方法を用いることによって、電子デバイスを歩留まり良く製造することができる。また、プロセスの省エネルギー化にもつながる。さらに、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物によれば、感光性ポリイミド等に見られる加熱処理工程における体積収縮(硬化収縮)が小さいため、加工精度の低下を防ぐことができる。
【0097】
加熱処理工程における加熱処理時間は、ポジ型感光性樹脂組成物が硬化するのに充分な時間であればよいが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下が好ましい。
【0098】
加熱処理は、上述のオーブンの他、マイクロ波加熱装置又は周波数可変マイクロ波加熱装置を用いて行うこともできる。これらの装置を用いることによって、基板及び半導体装置の温度を所望の温度(例えば、200℃以下)に保ちつつ、樹脂膜のみを効果的に加熱することが可能である(J.Photopolym.Sci.Technol.,18,327-332(2005)参照)。
【0099】
本実施形態に係るパターン硬化膜は、半導体素子の層間絶縁層又は表面保護層として用いることができる。上述の感光性樹脂組成物のパターン硬化膜から、層間絶縁層又は表面保護層を備える半導体素子、該半導体素子を含む電子デバイスを作製することができる。半導体素子は、例えば、多層配線構造、再配線構造等を有する、メモリ、パッケージ等であってよい。電子デバイスとしては、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、パソコン、及びハードディスクサスペンションが挙げられる。本実施形態の感光性樹脂組成物により形成されるパターン硬化膜を備えることで、信頼性に優れた半導体素子及び電子デバイスを提供することができる。
【実施例0100】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた材料について以下に示す。
【0101】
((A)成分)
(A)成分を合成するために、(a1)~(a5)の構造を有するビスイミドフェノール化合物、(b1)~(b2)の構造を有するクレゾール化合物、(c1)1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、(c2)4,4-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、及び(c3)37質量%ホルムアルデヒドを準備した。
【0102】
A1:ディーン・スターク装置を備えた1Lの三つ口フラスコに、N,N’-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-ピロメリットイミド、o-クレゾール、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、37質量%ホルムアルデヒド、γ-ブチロラクトン、及びp-トルエンスルホン酸を加え、攪拌下、180℃にて反応副生物であるメタノールを脱液除去しながら6時間反応を行った後、40℃に冷却した。冷却後の反応液をイオン交換水1Lに滴下し、析出した樹脂を濾別した。濾別した樹脂を80℃で12時間真空乾燥して、(A1)のアルカリ可溶性樹脂を得た。
A2~A8:表1に示す構造単位となるように化合物の種類及び配合量を変更した以外は、(A1)と同様に操作して、(A2)~(A8)のアルカリ可溶性樹脂を得た。
【0103】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(PStQuick MP-H、PStQuick B[東ソー株式会社製、商品名])を用い、JIS K 7252-2(2016)に従いユニバーサルキャリブレーション曲線の3次式で近似した。GPCの条件を以下に示す。
【0104】
(GPC条件)
検出器:L-2490 RI(株式会社日立ハイテク製、商品名)
カラム:Gelpack GL-R440+R450+R400M(株式会社日立ハイテク製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃
流速:2.05mL/分
濃度:5mg/mL
【0105】
【0106】
((B)成分)
B1:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステル(エステル化率約90%、ダイトーケミックス株式会社製、商品名「PA28」)
B2:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンの1-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸エステル(ダイトーケミックス株式会社製、商品名「4C-PA-28」)
【0107】
((C)成分)
C1:4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシ-3,5-ビス(メトキシメチル)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール](本州化学工業株式会社製、商品名「HMOM-TPPA」)
C2:ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン(株式会社三和ケミカル製、商品名「ニカラックMW-30HM」)
【0108】
((D)成分)
D1:攪拌機、窒素導入管及び温度計を備えた100mLの三つ口フラスコに、乳酸エチル55gを秤取し、別途に秤取した重合性単量体(アクリル酸n-ブチル(BA)34.7g、アクリル酸ラウリル(LA)2.2g、アクリル酸(AA)3.9g、アクリル酸ヒドロキシブチル(HBA)2.6g、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレート(商品名:FA-711MM、昭和電工マテリアルズ株式会社製)1.7g、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.29gを加えた。室温(25℃)にて約160min-1の攪拌回転数で攪拌しながら、窒素ガスを400mL/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去した。その後、窒素ガスの流入を止め、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温した。同温度を10時間保持して重合反応を行い、アクリル樹脂であるD1を得た。この際の重合率は99%であった。D1の重量平均分子量(Mw)は、約22000であった。なお、D1における重合性単量体のモル比は下記のとおりである。
BA/LA/AA/HBA/FA711MM=69/2/20/5/4(mol%)
【0109】
(実施例1~11)
表2に示した配合量の(A)、(B)及び(C)成分、溶剤として乳酸エチルを配合し、これを0.2μm孔のポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いて加圧ろ過して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0110】
(比較例1~11)
表3に示した配合量の(A)、(B)及び(C)成分を用いた以外は、実施例と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。
【0111】
[感光性樹脂組成物の評価]
(外観)
感光性樹脂組成物の外観を目視で観察し、透明であれば「A」、若干白濁していれば「B」、酷く白濁していれば「C」と判定した。感光性樹脂組成物の白濁が「A」又は「B」であれば、感光性樹脂組成物を用いて形成したパターン硬化膜を有する半導体装置を製造する際の、基板上に記された位置合わせのための目印が認識できる。
【0112】
(解像度)
感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚7~9μmの塗膜を形成した。次いで、i線ステッパー(キヤノン株式会社製、商品名「FPA-3000iW」)を用いて、1μm×1μmから100μm×100μmまでの正方形ホールパターンを有するマスクを介してi線(365nm)で縮小投影露光した。露光量は、800mJ/cm2で行った。露光後、2.38質量%のTMAH水溶液を用いて現像し、水でリンスしてパターン樹脂膜を得た。
上記パターン樹脂膜をイナートガスオーブン(光洋サーモシステム株式会社製、商品名「INH-9CD-S」)を用い、窒素雰囲気中、温度230℃(昇温1時間)で2時間加熱処理し、パターン硬化膜の解像度を評価した。1μm×1μmから100μm×100μmまでの正方形ホールパターンで開口している最小サイズを解像度とした。パターンサイズが小さい程、解像性に優れ微細加工が可能となる。
【0113】
(焦点位置に対するパターン硬化膜の断面形状(傾斜角度a、b))
感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚7~9μmの塗膜を形成した。次いで、i線ステッパー(キヤノン株式会社製、商品名「FPA-3000iW」)を用いて、1μmから100μmまでのホールパターンを有するマスクを介してi線(365nm)を用い、縮小投影露光した。露光量は、100~1500mJ/cm
2で行った。塗布表面を焦点位置0μmとして、焦点位置を塗膜表面から上側にプラス、下側にマイナスに設定した。(
図2参照)
露光後、2.38質量%のTMAH水溶液を用いて現像し、水でリンスしてパターン樹脂膜を得た。
【0114】
上記パターン樹脂膜をイナートガスオーブン(光洋サーモシステム株式会社製、商品名「INH-9CD-S」)を用い、窒素雰囲気中、室温(25℃)から1時間掛けて温度230℃まで昇温後、温度を保持して2時間加熱処理を行い、パターン硬化膜を作製した。5μmのホールパターンに対し、焦点位置0μm、プラス6μmの断面形状を観察した。焦点位置に対するパターン形状を比較するために、焦点位置0μmのパターン硬化膜断面の傾斜角度aと、焦点位置プラス6μmのパターン硬化膜断面の傾斜角度bを測定した。(
図3参照)
傾斜角度の差(a-b)が小さいほど、露光時の焦点位置に対するパターン形状の差が小さくなるため、良好な結果となる。
【0115】
(破断伸び、破断強度)
感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で4分間加熱し、膜厚約8~9μmの塗膜を形成した。その後、この塗膜をプロキシミティ露光機(キヤノン株式会社製、商品名「PLA-600FA」)を用いて、マスクを介して全波長、1000mJ/cm2の条件で露光を行った。露光後、TMAHの2.38質量%水溶液を用いて現像を行い、10mm幅のレジストパターンを得た。その後、レジストパターンを、イナートガスオーブン(INH-9CD-S)を用い、窒素雰囲気中、室温(25℃)から1時間掛けて温度230℃まで昇温後、温度を保持して2時間加熱処理を行い、膜厚約7μmのパターン硬化膜を得た。
【0116】
硬化膜をシリコン基板から剥離し、剥離した硬化膜の破断伸びを株式会社島津製作所製、オートグラフAGS-H100Nを用いて測定した。試料の幅は10mm、膜厚は約7μmであり、チャック間は20mmとした。引っ張り速度は5mm/分で、測定温度は室温(25℃)とした。5本の試験片を測定し、上位3点の平均値を、破断伸び及び破断強度とした。
【0117】
【0118】
【0119】
(B2)成分を含有する実施例の樹脂組成物は、解像度が良好で、焦点位置が0μmとプラス6μmのときの パターン断面の傾斜角度の差が小さく、焦点位置に対してパターン硬化膜の断面形状の変化を小さくすることができた。
また、高い破断強度を有する硬化膜を形成することができた。一方、(B1)成分のみを含有する比較例1~11の樹脂組成物は、焦点位置0μmの傾斜角度aとプラス6μmの傾斜角度bの差(a-b)が大きく、焦点位置に対して形状の変化が大きい結果であった。
【0120】
(実施例12~13)
表4に示した配合量の(A)~(D)成分を用いた以外は、実施例1~11と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。
【0121】
【0122】
実施例12~13の感光性樹脂組成物は、(D)成分を更に含有することにより、焦点位置に対する形状の変化を更に小さくすることができた。また、硬化膜の強度及び破断伸びが更に向上した。