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特開2024-40465化合物及びその製造方法、組成物、ウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂分散体並びにコーティング剤
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  • 特開-化合物及びその製造方法、組成物、ウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂分散体並びにコーティング剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040465
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】化合物及びその製造方法、組成物、ウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂分散体並びにコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/64 20060101AFI20240315BHJP
【FI】
C08G63/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021190
(22)【出願日】2024-02-15
(62)【分割の表示】P 2023555844の分割
【原出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022067900
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】本田 康平
(57)【要約】
【課題】ウレタン樹脂等の原料として有用な、新規な化合物を提供すること。
【解決手段】下記式(A1-1)で表される、化合物。


[式(A1-1)中、Rは水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、Rはアルカンジイル基を示し、Rはアルカンジイル基、又は*1-R-C(=O)-O-R-*2を示し、Rはアルカンジイル基、*1-O-R-*2、又は*1-R-C(=O)-O-R-*2を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立してアルカンジイル基を示し、*1はカルボニル基との結合部位を示し、*2は酸素原子との結合部位を示し、n及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A1-1)で表される、化合物。
【化1】

[式(A1-1)中、
は水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、
はアルカンジイル基を示し、
はアルカンジイル基、又は*1-R-C(=O)-O-R-*2を示し、
はアルカンジイル基、*1-O-R-*2、又は*1-R-C(=O)-O-R-*2を示し、
、R、及びRはそれぞれ独立してアルカンジイル基を示し、
*1はカルボニル基との結合部位を示し、*2は酸素原子との結合部位を示し、
及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。
は複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びその製造方法、組成物、ウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂分散体並びにコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等と同様に、ポリイソシアネート化合物と反応させて、ウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂とも呼ばれる)を製造する原料として有用であり、接着剤、塗料等の原料として有用である。
【0003】
ポリエステルポリオールはエステル結合を有するため、ポリエステルポリオールから得られるウレタン樹脂は耐加水分解性に劣るという欠点がある。また、ポリエーテルポリオールはエーテル結合を有するため、ポリエーテルポリオールから得られるウレタン樹脂は、耐候性及び耐熱性に劣るという欠点がある。これらに対し、ポリカーボネートポリオールから得られるウレタン樹脂は、耐久性(耐熱性、耐候性、耐加水分解性、耐薬品性等)に優れる傾向がある。
【0004】
ポリカーボネートポリオールは、通常、炭酸エステルとジオールとをエステル交換触媒の存在下で反応(エステル交換反応)させることによって製造される。
【0005】
これまで、目的に応じて様々な構造のポリカーボネートポリオールが提案されている。例えば、特許文献1及び2では、ポリカーボネートジオールとトリオール化合物及び/又はテトラオール化合物とのエステル交換反応により得られるポリカーボネートポリオールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3-220233号公報
【特許文献2】特開2012-184380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ウレタン樹脂等の原料として有用な、新規な化合物及びその製造方法、並びに、該化合物を原料とする、ウレタン樹脂を提供することにある。本発明の目的はまた、該化合物を含有する組成物、並びに、該組成物を原料とする、ウレタン樹脂を提供することにある。本発明の目的はまた、酸性基を有する上記ウレタン樹脂を含有する水性ウレタン樹脂分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の各発明を提供する。
【0009】
[1] 下記式(A1-1)で表される、化合物。
【化1】

[式(A1-1)中、Rは水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、Rはアルカンジイル基を示し、Rはアルカンジイル基、又は*1-R-C(=O)-O-R-*2を示し、Rはアルカンジイル基、*1-O-R-*2、又は*1-R-C(=O)-O-R-*2を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立してアルカンジイル基を示し、*1はカルボニル基との結合部位を示し、*2は酸素原子との結合部位を示し、n及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
[2] [1]に記載の化合物と、下記式(A1-2)で表されるポリカーボネートポリオールと、下記式(A1-3)で表されるポリエステルポリオールと、を含有する組成物であって、前記組成物に含まれる下記式(a1-1)で表される基の総モル数をCA1-1とし、前記組成物に含まれる下記式(a1-2)で表される基の総モル数をCA1-2とし、前記組成物に含まれる下記式(a1-3)で表される基の総モル数をCA1-3とすると、モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)が5.3~99である、組成物。
【化2】

[式(A1-2)中、R、R及びRは前記と同義であり、n及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化3】

[式(A1-3)中、R、R及びRは前記と同義であり、n及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化4】

[式(a1-1)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化5】

[式(a1-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化6】

[式(a1-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[3] 下記式(A2-2)で表されるポリカーボネートポリオールと、下記式(A2-3)で表されるポリエステルポリオールと、を更に含有し、前記組成物に含まれる下記式(a1-1)で表される基の総モル数をCA1-1とし、前記組成物に含まれる下記式(a1-2)で表される基の総モル数をCA1-2とし、前記組成物に含まれる下記式(a1-3)で表される基の総モル数をCA1-3とし、前記組成物に含まれる下記式(a2-2)で表される基の総モル数をCA2-2とし、前記組成物に含まれる下記式(a2-3)で表される基の総モル数をCA2-3とすると、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))が0.01~0.750である、[2]に記載の組成物。
【化7】

[式(A2-2)中、R、R及びRは前記と同義であり、nは0以上の整数を示す。Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化8】

[式(A2-3)中、R、R及びRは前記と同義であり、nは0以上の整数を示す。Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化9】

[式(a1-1)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化10】

[式(a1-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化11】

[式(a1-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化12】

[式(a2-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化13】

[式(a2-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[4] 下記式(A-3)で表わされるポリカーボネートポリオールと、下記式(A-4)で表わされるポリカーボネートジオールと、を更に含有する、[2]又は[3]に記載の組成物。
【化14】

[式(A-3)中、R及びRは前記と同義であり、n、m及びpはそれぞれ1以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化15】

[式(A-4)中、Rは前記と同義であり、nは1以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
[5] 前記組成物に含まれる下記式(a1-1)で表される基の総モル数をCA1-1とし、前記組成物に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(CA1-1/C)が0.02~0.99である、[2]~[4]のいずれかに記載の組成物。
【化16】

[式(a1-1)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化17】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[6] 前記組成物に含まれる下記式(a1-2)で表される基の総モル数をCA1-2とし、前記組成物に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(CA1-2/C)が0.001~0.99である、[2]~[5]のいずれかに記載の組成物。
【化18】

[式(a1-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化19】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[7] 前記組成物に含まれる下記式(a1-3)で表される基の総モル数をCA1-3とし、前記組成物に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(CA1-3/C)が0.005~0.34である、[2]~[6]のいずれかに記載の組成物。
【化20】

[式(a1-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化21】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[8] 前記組成物に含まれる下記式(a2-3)で表される基の総モル数をCA2-3とし、前記組成物に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(CA2-3/C)が0.001~0.234である、[2]~[7]のいずれかに記載の組成物。
【化22】

[式(a2-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化23】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[9] 前記組成物に含まれる下記式(d)で表される基の総モル数をCとし、前記組成物に含まれる下記式(a2-2)で表される基の総モル数をCA2-2とし、前記組成物に含まれる下記式(a2-3)で表される基の総モル数をCA2-3とすると、モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)が0.010~10.20である、[2]~[8]のいずれかに記載の組成物。
【化24】

[式(d)中、Rは水素原子又はアルカンジイル基であり、*は結合手を示す。Rは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化25】

[式(a2-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化26】

[式(a2-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[10] 前記組成物に含まれる下記式(d)で表される基の総モル数をCとし、前記組成物に含まれる下記式(a2-2)で表される基の総モル数をCA2-2とし、前記組成物に含まれる下記式(a2-3)で表される基の総モル数をCA2-3とすると、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)が0.100~12.00である、[2]~[9]のいずれかに記載の組成物。
【化27】

[式(d)中、Rは水素原子又はアルカンジイル基であり、*は結合手を示す。Rは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化28】

[式(a2-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化29】

[式(a2-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[11] 前記組成物に含まれる下記式(f’)で表される基の総モル数をCとし、前記組成物に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(C/C×100)が1.70~45.0である、[2]~[10]のいずれかに記載の組成物。
【化30】

[式(f’)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化31】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[12] 前記Rがアルカンジイル基であり、前記Rがアルカンジイル基、又は*1-O-R-*2である、[2]~[11]のいずれかに記載の組成物。
[13] ポリカーボネートポリオール(B)と、ポリエステルポリオール(C)との反応生成物であり、前記ポリエステルポリオール(C)が、ジオールを開始剤とする環状エステル化合物の開環付加重合物であるポリエステルポリオール(β)、及び/又は、水酸基官能基数3以上の多価アルコールを開始剤とする環状エステル化合物の開環付加重合物であるポリエステルポリオール(β’)を含む、[2]~[12]のいずれかに記載の組成物。
[14] [1]に記載の化合物を製造する方法であって、ポリカーボネートポリオールと、ポリエステルポリオールと、エステル交換触媒と、を含む混合液中で、前記ポリカーボネートポリオールと、前記ポリエステルポリオールとを反応させることによって、前記化合物を得る反応工程を含み、前記ポリカーボネートポリオール及び前記ポリエステルポリオールの少なくとも一方が下記式(I)で表される基を含む、又は、前記混合液が下記式(e)で表される多価アルコールを更に含む、方法。
【化32】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化33】

[式(e)中、Rは前記と同義である。]
[15] 前記混合液中の前記エステル交換触媒の含有量が、前記混合液中のポリオール成分の総量100質量部に対して、0.001~0.050質量部である、[14]に記載の製造方法。
[16] 前記エステル交換触媒が、リチウムアセチルアセトナートを含む、[14]又は[15]に記載の製造方法。
[17] ポリオール成分とポリイソシアネート成分との重縮合物又はその架橋体であり、前記ポリオール成分が、[1]に記載の化合物を含む、ウレタン樹脂。
[18] 前記ポリオール成分が、下記式(A1-2)で表されるポリカーボネートポリオールと、下記式(A1-3)で表されるポリエステルポリオールと、を含有し、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a1-1)で表される基の総モル数をCA1-1とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a1-2)で表される基の総モル数をCA1-2とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a1-3)で表される基の総モル数をCA1-3とすると、モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)が5.3~99である、[17]に記載のウレタン樹脂。
【化34】

[式(A1-2)中、R、R及びRは前記と同義であり、n及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化35】

[式(A1-3)中、R、R及びRは前記と同義であり、n及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化36】

[式(a1-1)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化37】

[式(a1-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化38】

[式(a1-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[19] 前記ポリオール成分が、下記式(A2-2)で表されるポリカーボネートポリオールと、下記式(A2-3)で表されるポリエステルポリオールと、を更に含有し、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a1-1)で表される基の総モル数をCA1-1とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a1-2)で表される基の総モル数をCA1-2とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a1-3)で表される基の総モル数をCA1-3とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a2-2)で表される基の総モル数をCA2-2とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a2-3)で表される基の総モル数をCA2-3とすると、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))が0.01~0.750である、[17]又は[18]に記載のウレタン樹脂。
【化39】

[式(A2-2)中、R、R及びRは前記と同義であり、nは0以上の整数を示す。Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化40】

[式(A2-3)中、R、R及びRは前記と同義であり、nは0以上の整数を示す。Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化41】

[式(a1-1)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化42】

[式(a1-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化43】

[式(a1-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化44】

[式(a2-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化45】

[式(a2-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[20] 前記ポリオール成分が、下記式(A-3)で表わされるポリカーボネートポリオールと、下記式(A-4)で表わされるポリカーボネートジオールと、を更に含有する、[17]~[19]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
【化46】

[式(A-3)中、R及びRは前記と同義であり、n、m及びpはそれぞれ1以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化47】

[式(A-4)中、Rは前記と同義であり、nは1以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
[21] 前記ポリオール成分に含まれる下記式(a1-1)で表される基の総モル数をCA1-1とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(CA1-1/C)が0.02~0.99である、[17]~[20]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
【化48】

[式(a1-1)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化49】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[22] 前記ポリオール成分に含まれる下記式(a1-2)で表される基の総モル数をCA1-2とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(CA1-2/C)が0.001~0.99である、[17]~[21]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
【化50】

[式(a1-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化51】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[23] 前記ポリオール成分に含まれる下記式(a1-3)で表される基の総モル数をCA1-3とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(CA1-3/C)が0.005~0.340である、[17]~[22]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
【化52】

[式(a1-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化53】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[24] 前記ポリオール成分に含まれる下記式(a2-3)で表される基の総モル数をCA2-3とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(CA2-3/C)が0.001~0.234である、[17]~[23]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
【化54】

[式(a2-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化55】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[25] 前記ポリオール成分に含まれる下記式(d)で表される基の総モル数をCとし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a2-2)で表される基の総モル数をCA2-2とし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a2-3)で表される基の総モル数をCA2-3とすると、モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)が0.010~10.20である、[17]~[24]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
【化56】

[式(d)中、Rは水素原子又はアルカンジイル基であり、*は結合手を示す。Rは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化57】

[式(a2-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化58】

[式(a2-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[26] 前記ポリオール成分に含まれる下記式(d)で表される基の総モル数をCとし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a2-2)で表される基の総モル数をCA2-2とすると、前記ポリオール成分に含まれる下記式(a2-3)で表される基の総モル数をCA2-3とすると、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)が0.100~12.00である、[17]~[25]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
【化59】

[式(d)中、Rは水素原子又はアルカンジイル基であり、*は結合手を示す。Rは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化60】

[式(a2-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化61】

[式(a2-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[27] 前記ポリオール成分に含まれる下記式(f’)で表される基の総モル数をCとし、前記ポリオール成分に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとすると、モル比(C/C×100)が1.70~45.0である、[17]~[26]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
【化62】

[式(f’)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【化63】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
[28] 前記Rがアルカンジイル基であり、前記Rがアルカンジイル基、又は*1-O-R-*2である、[17]~[28]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
[29] 前記ポリオール成分が、ポリカーボネートポリオール(B)と、ポリエステルポリオール(C)との反応生成物であり、前記ポリエステルポリオール(C)がジオールを開始剤とする環状エステル化合物の開環付加重合物であるポリエステルポリオール(β)、及び/又は、水酸基官能基数3以上の多価アルコールを開始剤とする環状エステル化合物の開環付加重合物であるポリエステルポリオール(β’)を含む、[17]~[29]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
[30] 前記ポリオール成分が酸性基を有するポリオールを更に含む、[17]~[29]のいずれかに記載のウレタン樹脂。
[31] 水系媒体と、前記水系媒体中に分散した[30]に記載のウレタン樹脂又はその中和物と、を含有する、水性ウレタン樹脂分散体。
[32] [17]~[30]のいずれかに記載のウレタン樹脂を含むコーティング剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウレタン樹脂等の原料として有用な、新規な化合物及びその製造方法、並びに、該化合物を原料とする、ウレタン樹脂を提供することができる。本発明によればまた、該化合物を含有する組成物、並びに、該組成物を原料とする、ウレタン樹脂を提供することができる。本発明によればまた、酸性基を有する上記ウレタン樹脂を含有する水性ウレタン樹脂分散体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例5で得られたポリカーボネートポリオールを含む組成物のH-NMRスペクトルを示す図である。
図2図2は、実施例5で得られたポリカーボネートポリオールを含む組成物のH-NMRスペクトルで、3.300ppm以上3.800ppm以下を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「~」を用いて示された数値範囲の最小値又は最大値は、「~」を用いて示された他の数値範囲の最大値又は最小値と任意に組み合わせ可能である。また、個別に記載した上限値及び下限値も任意に組み合わせ可能である。
【0013】
<化合物(A1-1)>
本実施形態の化合物は、下記式(A1-1)で表される化合物(以下、「化合物(A1-1)」ともいう。)である。
【化64】

[式(A1-1)中、Rは水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、Rはアルカンジイル基を示し、Rはアルカンジイル基、又は*1-R-C(=O)-O-R-*2を示し、Rはアルカンジイル基、*1-O-R-*2、又は*1-R-C(=O)-O-R-*2を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立してアルカンジイル基を示し、*1はカルボニル基との結合部位を示し、*2は酸素原子との結合部位を示し、n及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0014】
で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキル基及びヒドロキシアルキル基の炭素数は、例えば、1~6であってよく、2~5又は3~4であってもよい。アルキル基及びヒドロキシアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等が挙げられる。Rは、好ましくは、アルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1~2のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。
【0015】
及びRで示されるアルカンジイル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rで示されるアルカンジイル基と、Rで示されるアルカンジイル基とは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0016】
及びRで示されるアルカンジイル基の炭素数は、例えば、2~10であってよい。アルカンジイル基の具体例としては、エタンジイル基、1,2-プロパンジイル基、1,3-プロパンジイル基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、1,4-ブタンジイル基、1,5-ペンタンジイル基、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジイル基、1,6-ヘキサンジイル基、3-メチル-1,5-ペンタンジイル基、1,8-オクタンジイル基、2-エチル-1,6-ヘキサンジイル基、1,9-ノナンジイル基、2-メチルオクタン-1,8-ジイル基、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジイル基等が挙げられる。
【0017】
で示されるアルカンジイル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rで示されるアルカンジイル基が2種以上存在する場合、その全てが直鎖状アルカンジイル基又は分岐状アルカンジイル基であってよく、一部が直鎖状アルカンジイル基であり、他部が分岐状アルカンジイル基であってもよい。
【0018】
で示されるアルカンジイル基の炭素数は、R及びRの説明で挙げたアルカンジイル基と同じものが挙げられる。その中でも、1,4-ブタンジイル基、1,5-ペンタンジイル基、1,6-ヘキサンジイル基、3-メチル-1,5-ペンタンジイル基、2-エチル-1,6-ヘキサンジイル基、1,9-ノナンジイル基、2-メチルオクタン-1,8-ジイル基等が好ましい。
【0019】
、R、及びRで示されるアルカンジイル基は、上述したアルカンジイル基と同様であってよい。R、R、及びRで示されるアルカンジイル基の炭素数は、例えば、2~10であってよい。Rで示されるアルカンジイル基が2種以上存在する場合、その全てが直鎖状アルカンジイル基又は分岐状アルカンジイル基であってよく、一部が直鎖状アルカンジイル基であり、他部が分岐状アルカンジイル基であってもよい。Rで示されるアルカンジイル基が2種以上存在する場合、その全てが直鎖状アルカンジイル基又は分岐状アルカンジイル基であってよく、一部が直鎖状アルカンジイル基であり、他部が分岐状アルカンジイル基であってもよい。Rで示されるアルカンジイル基が2種以上存在する場合、その全てが直鎖状アルカンジイル基又は分岐状アルカンジイル基であってよく、一部が直鎖状アルカンジイル基であり、他部が分岐状アルカンジイル基であってもよい。
【0020】
化合物(A1-1)が、R、R、R、R、R又はRとして2種以上のアルカンジイル基を含む場合、その全てが直鎖状アルカンジイル基又は分岐状アルカンジイル基であってよく、一部が直鎖状アルカンジイル基であり、他部が分岐状アルカンジイル基であってもよい。
【0021】
及びmは、それぞれ0~65であってよく、1~60又は2~50であってもよい。
【0022】
化合物(A1-1)の数平均分子量は、例えば、200~6000g/molであってよい。ここで、数平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて測定される、2官能のポリオキシプロピレンポリオール換算の数平均分子量である。
【0023】
化合物(A1-1)の水酸基価は、例えば、30~800mgKOH/gであってよい。ここで、水酸基価は、化合物(A1-1)1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数を意味し、JIS K1557-1に準拠して測定される。
【0024】
化合物(A1-1)の性状は、特に限定されず、25℃で固体であってよく、25℃で液体であってよい。化合物(A1-1)の性状は、化合物(A1-1)にR、R、R、R、R、又はRとして含まれるアルカンジイル基の種類(炭素数、分岐の有無等)、さらには化合物(A1-1)の水酸基価等によって変更可能である。例えば、化合物(A1-1)中にR、R、R、R、R又はRとして含まれるアルカンジイル基の総モル数に対する、化合物(A1-1)中の分岐状アルカンジイル基の総モル数が0.2~1.0の場合、及び、化合物(A1-1)の水酸基価が高い場合には、化合物(A1-1)は25℃で液体となりやすい。
【0025】
本実施形態では、ウレタン樹脂の原料として使用された場合に、耐熱性又は耐湿熱性/耐熱水性等の耐久性に優れるウレタン樹脂が形成されやすい観点から、化合物(A1-1)に含まれるRがアルカンジイル基であり、かつ、Rがアルカンジイル基、又は、*1-O-R-*2であることがより好ましい。
【0026】
また、本実施形態では、ウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性に優れるウレタン樹脂が形成されやすい観点から、化合物(A1-1)にR、R及びRとして含まれるアルカンジイル基と、*1-O-R-*2と、*1-R-C(=O)-O-R-*2との総モル数に対する、Rとして含まれるアルカンジイル基とRとして含まれる*1-O-R-*2との合計のモル数の比が、0.10以上(例えば0.10~0.90)であることが好ましく、0.20以上(例えば0.20~0.80)であることがより好ましく、0.30以上(例えば0.30~0.70)であることが更に好ましく、0.40以上(例えば0.40~0.60)であることが特に好ましい。
【0027】
以上説明した化合物(A1-1)は、例えば、ポリカーボネートポリオール(B)と、ポリエステルポリオール(C)と、の反応生成物であってよい。また、化合物(A1-1)は、ポリカーボネートポリオール(B)と、ポリエステルポリオール(C)と、ジオール(D)及び/又は下記式(e)で表される多価アルコール(E)との反応生成物であってもよい。化合物(A1-1)は、下記式(I)で表される基中のオキシ基(-O-)のうち、一つがポリカーボネートポリオール(B)由来のカーボネート結合を形成し、一つがポリエステルポリオール(C)由来のエステル結合を形成し、一つが水素原子と結合しヒドロキシ基を形成した分子である。
【化65】

[式(e)中、Rは前記と同義である。]
【化66】

[式(I)中、Rは前記と同義である。]
【0028】
ポリカーボネートポリオール(B)としては、水酸基官能基数が2以上のポリカーボネートポリオールであればよく、水酸基官能基数が2のポリカーボネートポリオール(B-1)(すなわち、ポリカーボネートジオール)であってもよく、水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(B-2)であってもよく、ポリカーボネートポリオール(B-1)及びポリカーボネートポリオール(B-2)から選択される2種以上の組み合わせであってもよい。
【0029】
ポリカーボネートポリオール(B-1)としては、例えば、カーボネート類と、ジオールとの反応で得られるものが挙げられる。
【0030】
ポリカーボネートポリオール(B-1)を得る反応の際に使用し得るカーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類;ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類;等、及びこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0031】
ポリカーボネートポリオール(B-1)を得る反応の際に使用し得るジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタン-1,8-ジオール及び2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールが挙げられる。これらは単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ポリカーボネートポリオール(B-2)としては、例えば、カーボネート類と、ジオールと、水酸基官能基数3以上の多価アルコールとの反応で得られるものが挙げられる。
【0033】
ポリカーボネートポリオール(B-2)を得る反応の際に使用し得るカーボネート類としては、ポリカーボネートポリオール(B-1)の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。その中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートが好ましい。
【0034】
ポリカーボネートポリオール(B-2)を得る反応の際に使用し得るジオールとしては、ポリカーボネートポリオール(B-1)の説明で挙げたジオールと同じものが挙げられる。その中でも、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールが好ましい。
【0035】
ポリカーボネートポリオール(B-2)を得る反応の際に使用し得る水酸基官能基数3以上の多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等、及びこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオール(C)としては、水酸基官能基数が2以上のポリエステルポリオールであればよく、水酸基官能基数が2のポリエステルポリオール(C-1)(すなわち、ポリエステルジオール)であってもよく、水酸基官能基数が2を超えるポリエステルポリオール(C-2)であってもよく、ポリエステルポリオール(C-1)及びポリエステルポリオール(C-2)から選択される2種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
ポリエステルポリオール(C-1)としては、例えば、以下の(α)~(β)のポリエステルポリオール、及びこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
(α) ジオール(C-1-1)と、ジカルボン酸及び/又はその無水物(C-1-2)と、から得られるポリエステルポリオール(ポリエステルポリオール(α))
(β) ジオール(C-1-1)を開始剤として、ラクトン類等の環状エステル化合物(C-1-4)が開環付加重合して得られるポリエステルポリオール(ポリエステルポリオール(β))
ポリエステルポリオール(β)はジオールを開始剤とする環状エステル化合物の開環付加重合物ということができる。
【0038】
ジオール(C-1-1)としては、ポリカーボネートポリオール(B-1)の説明で挙げたジオールと同じものが挙げられる。その中でも、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールが好ましい。
【0039】
ジカルボン酸及び/又はその無水物(C-1-2)としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水素化ダイマー脂肪酸等、酒石酸、及びこれらの無水物、並びにこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0040】
環状エステル化合物(C-1-4)としては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、α-カプロラクトン、β-カプロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、β-メチル-ε-カプロラクトン、4-メチルカプロラクトン、γ-カプリロラクトン、ε-カプリロラクトン、ε-パルミトラクトン等、及びこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。中でもトリメチロールプロパンを開始剤としたε-カプロラクトンの開環付加重合体が重合時の安定性及び経済性の点から好ましい。
【0041】
ポリエステルポリオール(C-2)としては、例えば、以下の(α’)~(β’)のポリエステルポリオール、及びこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
(α’) ジオール(C-2-1)と、ジカルボン酸及び/又はその無水物(C-2-2)と、水酸基官能基数3以上の多価アルコール(C-2-3)と、から得られるポリエステルポリオール(ポリエステルポリオール(α’))
(β’) 水酸基官能基数3以上の多価アルコール(C-2-3)を開始剤として、ラクトン類等の環状エステル化合物(C-2-4)が開環付加重合して得られるポリエステルポリオール(ポリエステルポリオール(β’))
ポリエステルポリオール(β’)は水酸基官能基数3以上の多価アルコールを開始剤とする環状エステル化合物の開環付加重合物ということができる。
【0042】
ジオール(C-2-1)としては、ポリカーボネートポリオール(B-1)の説明で挙げたジオールと同じものが挙げられる。
【0043】
ジカルボン酸及び/又はその無水物(C-2-2)としては、ジカルボン酸及び/又はその無水物(C-1-2)の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0044】
水酸基官能基数3以上の多価アルコール(C-2-3)としては、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等、及びこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0045】
環状エステル化合物(C-2-4)としては、環状エステル化合物(C-1-4)の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0046】
本実施形態では、ウレタン樹脂の原料として使用された場合に、耐熱性又は耐湿熱性等の耐久性に優れるウレタン樹脂が形成されやすい観点から、ポリエステルポリオール(C)はポリエステルポリオール(β)及び/又はポリエステルポリオール(β’)を含むことがより好ましい。
【0047】
ジオール(D)の具体例としては、ポリカーボネートポリオール(B-1)の説明で挙げたジオールと同じものが挙げられる。その中でも、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールが好ましい。
【0048】
多価アルコール(E)の具体例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン及びペンタエリスリトールが挙げられる。これらは単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記化合物(A1-1)が有するヒドロキシ基のうち一つは、例えば、下記式(e):
【化67】

[式(e)中、Rは前記と同義である。]
で表される化合物に由来するヒドロキシ基(上記式(e)で表される化合物中のヒドロキシ基のうち未反応のもの)であってよい。該ヒドロキシ基は、立体障害の影響により、R、R及び/又はRを含む分子鎖に結合したヒドロキシ基と比較して反応性が低い傾向がある。また、上記式(e)で表される化合物に由来するヒドロキシル基から分岐(Rとの結合部)までの長さは、R、R及び/又はRを含む分子鎖に結合したヒドロキシ基から分岐までの長さと比較して短いことから、化合物(A1-1)とイソシアネート化合物との反応により得られるウレタン樹脂は、より高い剛直性を有する傾向がある。化合物(A1-1)は、ヒドロキシ基の分岐までの長さの違いによる上記ヒドロキシ基の反応性及び高い剛直性を利用して、多様なウレタン樹脂の原料に利用されることが期待される。さらに、上記化合物(A1-1)中の上記式(I)が有する結合のうち、1つがカーボネート結合であり、もう一つがエステル結合である。カーボネート結合は耐熱性向上、エステル結合は柔軟性向上に寄与する傾向がある。化合物(A1-1)は上記のカーボネート結合とエステル結合を利用して、多様なウレタン原料に利用されることが期待される。
【0050】
<組成物>
本実施形態の組成物は、化合物(A1-1)を含む。組成物は、下記式(A1-2)で表されるポリカーボネートポリオール(以下、「化合物(A1-2)」という。)、及び、下記式(A1-3)で表されるポリエステルポリオール(以下「化合物(A1-3)」という。)の少なくとも一方を更に含有してよい。
【化68】

[式(A1-2)中、R、R及びRは前記と同義であり、n及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化69】

[式(A1-3)中、R、R及びRは前記と同義であり、n及びmはそれぞれ0以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0051】
化合物(A1-2)にRとして含まれる原子又は基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる原子又は基と同じであってよい。同様に、化合物(A1-3)にRとして含まれる原子又は基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる原子又は基と同じであってよい。組成物がRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A1-1)を含む場合、当該組成物はRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A1-2)、及び/又は、Rで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A1-3)を含んでいてよい。この場合、化合物(A1-2)及び/又は化合物(A1-3)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせは、化合物(A1-1)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせと同じであってよい。
【0052】
化合物(A1-2)にRとして含まれるアルカンジイル基は、化合物(A1-1)にRとして含まれるアルカンジイル基と同じであってよい。組成物がRで表されるアルカンジイル基が異なる2種以上の化合物(A1-1)を含む場合、当該組成物はRで表されるアルカンジイル基が異なる2種以上の化合物(A1-2)を含んでいてよい。この場合、化合物(A1-2)に該当する複数の化合物にRとして含まれるアルカンジイル基の組み合わせは、化合物(A1-1)に該当する複数の化合物にRとして含まれるアルカンジイル基の組み合わせと同じであってよい。
【0053】
化合物(A1-3)にRとして含まれる基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる基と同じであってよい。組成物がRで表される基が異なる2種以上の化合物(A1-1)を含む場合、当該組成物はRで表される基が異なる2種以上の化合物(A1-3)を含んでいてよい。この場合、化合物(A1-3)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせは、化合物(A1-1)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせと同じであってよい。
【0054】
化合物(A1-2)にRとして含まれる基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる基と同じであってよい。同様に、化合物(A1-3)にRとして含まれる基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる基と同じであってよい。化合物(A1-1)がRとして2種以上の基を含む場合、化合物(A1-2)及び/又は化合物(A1-3)はRとして2種以上の基を含んでいてよい。この場合、化合物(A1-2)及び/又は化合物(A1-3)にRとして含まれる基の組み合わせは、化合物(A1-1)にRとして含まれる基の組み合わせと同じであってよい。
【0055】
、n、m及びnは、それぞれ0~65であってよく、1~60又は2~50であってもよい。
【0056】
以下の説明において、組成物に含まれる下記式(a1-1)で表される基の総モル数をCA1-1とし、組成物に含まれる下記式(a1-2)で表される基の総モル数をCA1-2とし、組成物に含まれる下記式(a1-3)で表される基の総モル数をCA1-3とする。
【化70】

[式(a1-1)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。*で表される結合手は炭素原子に直接結合している。]
【化71】

[式(a1-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。*で表される結合手は炭素原子に直接結合している。]
【化72】

[式(a1-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。*で表される結合手は炭素原子に直接結合している。]
【0057】
モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)は、好ましくは5.3以上であり、より好ましくは7.0以上であり、更に好ましくは10.0以上であり、更により好ましくは20.0以上である。モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)が5.3以上であると、特に耐熱水性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)は、好ましくは99以下であり、より好ましくは80以下であり、更に好ましくは70以下であり、特に好ましくは60以下である。モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)が99以下であると、特に100%モジュラス、及び耐熱性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)は5.3~99であってよい。モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)が上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラス、耐熱性及び耐熱水性がともに良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0058】
モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)は、例えば、重水素化クロロホルムを溶媒に用い、且つ、テトラメチルシランを基準物質に用いた、組成物のH-NMR測定及び該測定によって得られるH-NMRスペクトルのシグナルの積分値から求めることができる。具体的には、例えば、式(a1-1)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S1-1)の積分値ΔS1-1(水素原子2mol分)と、式(a1-2)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S1-2)の積分値ΔS1-2(水素原子2mol分)と、式(a1-3)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S1-3)の積分値ΔS1-3(水素原子2mol分)と、の比からモル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)を算出可能である。この場合、モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)は、シグナル(S1-1)の積分値ΔS1-1と、シグナル(S1-2)の積分値ΔS1-2と、シグナル(S1-3)の積分値ΔS1-3との総和と、シグナル(S1-1)の積分値ΔS1-1との比の(ΔS1-1/(ΔS1-1+ΔS1-2+ΔS1-3)×100)といいかえることができる。
【0059】
組成物は、下記式(A2-2)で表されるポリカーボネートポリオール(以下、「化合物(A2-2)」という。)、及び、下記式(A2-3)で表されるポリエステルポリオール(以下「化合物(A2-3)」という。)の少なくとも一方を更に含有してよい。
【化73】

[式(A2-2)中、R、R及びRは前記と同義であり、nは0以上の整数を示す。Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化74】

[式(A2-3)中、R、R及びRは前記と同義であり、nは0以上の整数を示す。Rは複数存在する場合互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0060】
化合物(A2-2)にRとして含まれる原子又は基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる原子又は基と同じであってよい。同様に、化合物(A2-3)にRとして含まれる原子又は基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる原子又は基と同じであってよい。組成物がRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A1-1)を含む場合、当該組成物はRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A2-2)、及び/又は、Rで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A2-3)を含んでいてよい。この場合、化合物(A2-2)及び/又は化合物(A2-3)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせは、化合物(A1-1)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせと同じであってよい。
【0061】
化合物(A2-2)にRとして含まれるアルカンジイル基は、化合物(A1-1)にRとして含まれるアルカンジイル基と同じであってよい。組成物がRで表されるアルカンジイル基が異なる2種以上の化合物(A1-1)を含む場合、当該組成物はRで表されるアルカンジイル基が異なる2種以上の化合物(A2-2)を含んでいてよい。この場合、化合物(A2-2)に該当する複数の化合物にRとして含まれるアルカンジイル基の組み合わせは、化合物(A1-1)に該当する複数の化合物にRとして含まれるアルカンジイル基の組み合わせと同じであってよい。
【0062】
化合物(A2-3)にRとして含まれる基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる基と同じであってよい。組成物がRで表される基が異なる2種以上の化合物(A1-1)を含む場合、当該組成物はRで表される基が異なる2種以上の化合物(A2-2)を含んでいてよい。この場合、化合物(A2-2)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせは、化合物(A1-1)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせと同じであってよい。
【0063】
化合物(A2-2)にRとして含まれる基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる基と同じであってよい。同様に、化合物(A2-3)にRとして含まれる基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる基と同じであってよい。化合物(A1-1)がRとして2種以上の基を含む場合、化合物(A2-2)及び/又は化合物(A2-3)もRとして2種以上の基を含んでいてよい。この場合、化合物(A2-2)及び/又は化合物(A2-3)にRとして含まれる基の組み合わせは、化合物(A1-1)にRとして含まれる基の組み合わせと同じであってよい。
【0064】
及びnは、それぞれ0~65であってよく、1~60又は2~50であってもよい。
【0065】
以下の説明において、組成物に含まれる下記式(a2-2)で表される基の総モル数をCA2-2とし、組成物に含まれる下記式(a2-3)で表される基の総モル数をCA2-3とする。
【化75】

[式(a2-2)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。*で表される結合手は炭素原子に直接結合している。]
【化76】

[式(a2-3)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。*で表される結合手は炭素原子に直接結合している。]
【0066】
モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))は、0.010以上、0.050以上、0.100以上、0.200以上、又は0.300以上であってもよい。モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))が0.010以上であると、特に100%モジュラス、破断強度、ガラス転移温度及び伸び率に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))は、0.750以下、0.700以下、0.650以下、又は0.600以下であってもよい。モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))が0.750以下であると、特に耐熱水性、及び破断強度に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))は、0.010~0.750であってよい。モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))が上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラス、耐熱性、破断強度、伸び率、ガラス転移温度及び耐熱水性がともに良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0067】
モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))は、例えば、モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)と同様に、重水素化クロロホルムを溶媒に用い、且つ、テトラメチルシランを基準物質に用いた、組成物のH-NMR測定及び該測定によって得られるH-NMRスペクトルのシグナルの積分値から求めることができる。具体的には、例えば、上記シグナル(S1-1)の積分値ΔS1-1(水素原子2mol分)と、上記シグナル(S1-2)の積分値ΔS1-2(水素原子2mol分)と、上記シグナル(S1-3)の積分値ΔS1-3(水素原子2mol分)と、式(a2-2)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S2-2)の積分値ΔS2-2(水素原子4mol分)と、式(a2-3)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3(水素原子4mol分)とからモル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))を算出可能である。この場合、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))は、シグナル(S1-1)の積分値ΔS1-1と、シグナル(S1-2)の積分値ΔS1-2と、シグナル(S1-3)の積分値ΔS1-3との総和と、シグナル(S2-2)の積分値ΔS2-2と、シグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3との総和と、の比の0.5倍値(0.5×(ΔS2-2+ΔS2-3)/(ΔS1-1+ΔS1-2+ΔS1-3))といいかえることができる。
【0068】
組成物は、下記式(e)で表わされる多価アルコール(以下、「多価アルコール(E)」ともいう。)を更に含有してもよい。以下、下記式(e)で表わされる多価アルコールの総モル数をCとする。また、式(e)で表わされる多価アルコールが有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナルをSeとする。
【化77】

[式(e)中、Rは前記と同義である。]
【0069】
多価アルコール(E)は上述したものと同義であり、多価アルコール(E)がRとして有するアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる原子又は基と同じであってよい。
【0070】
多価アルコール(E)にRとして含まれる原子又は基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる原子又は基と同じであってよい。組成物がRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A1-1)を含む場合、当該組成物はRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の多価アルコール(E)を含んでいてよい。この場合、多価アルコール(E)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせは、化合物(A1-1)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせと同じであってよい。
【0071】
組成物は、下記式(f)で表わされるオキセタン化合物(以下、「オキセタン化合物(F)」ともいう。)を更に含有してもよい。
【化78】

[式(f)中、Rは前記と同義である。]
【0072】
オキセタン化合物(F)は上述したものと同義であり、オキセタン化合物(F)がRとして有するアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる原子又は基と同じであってよい。
【0073】
オキセタン化合物(F)にRとして含まれる原子又は基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる原子又は基と同じであってよい。組成物がRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A1-1)を含む場合、当該組成物はRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上のオキセタン化合物(F)を含んでいてよい。この場合、オキセタン化合物(F)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせは、化合物(A1-1)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせと同じであってよい。
【0074】
オキセタン化合物(F)の具体例としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン及び3,3-ジヒドロキシメチルオキセタンが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
組成物は、下記式(A-3)で表されるポリカーボネートポリオール(以下、「化合物(A-3)」という。)を更に含有してよい。
【化79】

[式(A-3)中、R及びRは前記と同義であり、n、m及びpはそれぞれ1以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0076】
化合物(A-3)にRとして含まれる原子又は基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる原子又は基と同じであってよい。組成物がRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A1-1)を含む場合、当該組成物はRで表されるアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基が異なる2種以上の化合物(A-3)を含んでいてよい。この場合、化合物(A-3)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせは、化合物(A1-1)に該当する複数の化合物にRとして含まれる基の組み合わせと同じであってよい。
【0077】
化合物(A-3)にRとして含まれる基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる基と同じであってよい。化合物(A1-1)がRとして2種以上の基を含む場合、化合物(A-3)もRとして2種以上の基を含んでいてよい。この場合、化合物(A-3)にRとして含まれる2種以上の基の組み合わせは、化合物(A1-1)にRとして含まれる2種以上の基の組み合わせと同じであってよい。
【0078】
、m及びpは、それぞれ1~65であってよく、2~60又は3~50であってもよい。
【0079】
組成物は、下記式(A-4)で表されるポリカーボネートジオール(以下、「化合物(A-4)」という。)を更に含有してよい。
【化80】

[式(A-4)中、Rは前記と同義であり、nは1以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0080】
化合物(A-4)にRとして含まれる基は、化合物(A1-1)にRとして含まれる基と同じであってよい。化合物(A1-1)がRとして2種以上の基を含む場合、化合物(A-4)もRとして2種以上の基を含んでいてよい。この場合、化合物(A-4)にRとして含まれる2種以上の基の組み合わせは、化合物(A1-1)にRとして含まれる2種以上の基の組み合わせと同じであってよい。
【0081】
は、それぞれ1~65であってよく、2~60又は3~50であってもよい。
【0082】
以下の説明において、組成物に含まれる下記式(I)で表される基の総モル数をCとする。
【化81】

[式(I)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
式(I)において*で表される結合手は、炭素原子又は水素原子に直接結合している。
【0083】
モル比(CA1-1/C)は、0.02以上、0.05以上又は0.1以上であってよい。モル比(CA1-1/C)が0.02以上であると、特に耐熱水性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA1-1/C)は、0.990以下、0.800以下、又は0.700以下であってもよい。モル比(CA1-1/C)が0.990以下であると、特に100%モジュラスと耐熱性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA1-1/C)は0.02~0.99であってよい。モル比(CA1-1/C)が上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラス、耐熱性及び耐熱水性がともに良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0084】
モル比(CA1-2/C)は、0.001以上、0.010以上、又は0.050以上であってもよい。モル比(CA1-2/C)が0.001以上であると、特に破断強度及び耐熱水性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA1-2/C)は、0.990以下、0.400以下又は0.500以下であってもよい。モル比(CA1-2/C)は0.001~0.990であってよい。モル比(CA1-2/C)が上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラス、耐熱性、破断強度及び耐熱水性がともに良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0085】
モル比(CA1-3/C)は、0.005以上、0.010以上、0.050以上、0.100以上、0.150以上、0.200以上、0.250以上、又は0.300以上であってよい。モル比(CA1-3/C)は、0.340以下、0.250以下、0.200以下、0.150以下、0.100以下、0.050以下、又は0.020以下であってもよい。モル比(CA1-3/C)が0.340以下であると、特に耐熱水性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA1-3/C)は0.005~0.340であってよい。モル比(CA1-3/C)が上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラス、耐熱性及び耐熱水性がともに良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0086】
モル比(CA2-3/C)は、0.001以上、0.005以上、0.010以上、0.050以上、0.100以上、0.150以上、0.200以上、又は0.220以上であってもよい。モル比(CA2-3/C)が0.001以上であると、特に100%モジュラス、破断強度、ガラス転移温度及び伸び率に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA2-3/C)は、0.234以下、0.200以下、0.150以下、0.100以下、0.050以下、又は0.015以下であってもよい。モル比(CA2-3/C)が0.234以下であると、特に耐熱水性及び破断強度に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA2-3/C)は0.001~0.234であってよい。モル比(CA2-3/C)が上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラス、耐熱性、耐熱水性、破断強度、伸び率及びガラス転移温度がともに良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0087】
モル比(CA1-1/C)、モル比(CA1-2/C)、モル比(CA1-3/C)及びモル比(CA2-3/C)がいずれも上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性がともに更に良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0088】
モル比(CA1-1/C)、モル比(CA1-2/C)、モル比(CA1-3/C)及びモル比(CA2-3/C)は、例えば、(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)と同様に、重水素化クロロホルムを溶媒に用い、且つ、テトラメチルシランを基準物質に用いた、組成物のH-NMR測定及び該測定によって得られるH-NMRスペクトルのシグナルの積分値から求めることができる。具体的には、例えば、上記シグナル(S1-1)の積分値ΔS1-1(水素原子2mol分)と、上記シグナル(S1-2)の積分値ΔS1-2(水素原子2mol分)と、上記シグナル(S1-3)の積分値ΔS1-3(水素原子2mol分)と、上記シグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3(水素原子4mol分)と、式(I)のRが直鎖状アルキル基である場合、式(I)のR(アルキル基)の末端メチルのシグナル(SI)の積分値ΔSI(水素原子3mol分)との比からモル比(CA1-1/C)、モル比(CA1-2/C)、モル比(CA1-3/C)及びモル比(CA2-3/C)を算出可能である。この場合、モル比(CA1-1/C)は、シグナル(S1-1)の積分値ΔS1-1とシグナル(SI)の積分値ΔSIとの比の1.5倍値(1.5×ΔS1-1/ΔSI)、モル比(CA1-2/C)は、シグナル(S1-2)の積分値ΔS1-2とシグナル(SI)の積分値ΔSIとの比の1.5倍値(1.5×ΔS1-2/ΔSI)、モル比(CA1-3/C)は、シグナル(S1-3)の積分値ΔS1-3とシグナル(SI)の積分値ΔSIとの比の1.5倍値(1.5×ΔS1-3/ΔSI)、モル比(CA2-3/C)は、シグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3とシグナル(SI)の積分値ΔSIとの比の0.75倍値(0.75×ΔS2-3/ΔSI)と言い換えることができる。
【0089】
組成物は、ジオール(D)を更に含有してもよい。ジオール(D)は上述したものと同義である。
【0090】
以下の説明において、組成物に含まれる下記式(d)で表される基の総モル数をCとする。
【化82】

[式(d)中、Rは水素原子又はアルカンジイル基であり、*は結合手を示す。Rは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0091】
モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)は、0.010以上、0.050以上、0.100以上、0.500以上、1.0以上、3.0以上、5.0以上、7.0以上、8.5以上又は9.5以上であってもよい。モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)が0.010以上であると、特に耐熱性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)は、10.20以下、9.0以下、5.0以下、3.0以下、1.0以下、0.900以下、0.600以下、0.300以下、又は0.100以下であってもよい。モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)が10.20以下であると、特に耐熱水性及び破断強度に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)は0.010~10.20であってよい。モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)が上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラス、耐熱性、破断強度及び耐熱水性がともに良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0092】
モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)は、0.100以上、0.300以上、0.600以上、1.00以上、3.00以上、5.00以上、7.00以上、又は9.00以上であってもよい。モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)が0.100以上であると、特に100%モジュラス、及び耐熱性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)は、12.00以下、10.00以下、8.00以下、6.00以下、4.00以下、2.00以下、又は1.000以下であってもよい。モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)は0.100~12.00であってよい。モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)が上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラス、及び耐熱性がともに良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0093】
モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)及びモル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)がいずれも上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性がともに更に良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0094】
モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)及びモル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)は、例えば、(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)と同様に、重水素化クロロホルムを溶媒に用い、且つ、テトラメチルシランを基準物質に用いた、組成物のH-NMR測定及び該測定によって得られるH-NMRスペクトルのシグナルの積分値から求めることができる。具体的には、例えば、上記シグナル(S2-2)の積分値ΔS2-2(水素原子4mol分)と、上記シグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3(水素原子4mol分)と、式(d)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(Sd)の積分値ΔSd(水素原子2mol分)と、からモル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)及びモル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)を算出可能である。この場合、モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)は、シグナル(S2-2)の積分値ΔS2-2と、シグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3と、シグナル(Sd)の積分値ΔSdとの総和と、シグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3と、の比の((ΔS2-3)/(ΔS2-2+ΔS2-3+2×ΔSd)×100)と言い換えることができ、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)は、シグナル(S2-2)の積分値ΔS2-2と、シグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3と、シグナル(Sd)の積分値ΔSdとの総和と、シグナル(S2-2)の積分値ΔS2-2とシグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3との総和と、の比の((ΔS2-2+ΔS2-3)/(ΔS2-2+ΔS2-3+2×ΔSd)×100)と言い換えることができる。
【0095】
以下の説明において、組成物に含まれる下記式(f’)で表される基の総モル数をCとする。
【化83】

[式(f’)中、Rは前記と同義であり、*は結合手を示す。]
【0096】
モル比(C/C×100)は、1.70以上、1.80以上、2.00以上、3.00以上、4.00以上、5.00以上、6.00以上、7.00以上、8.00以上、9.00以上、10.00以上又は15.00以上であってもよい。モル比(C/C×100)が1.7以上であると、オキセタン化合物の自己架橋により、特に耐熱性及び100%モジュラスに優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(C/C×100)は、45.0以下、42.0以下、40.0以下、35.0以下、30.0以下、25.0以下、20.0以下、15.0以下、又は10.0以下であってもよい。モル比(C/C×100)が45.0以下であると、特に耐熱性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。モル比(C/C×100)は1.70~45.0、1.80~42.0、2.00~40.0、3.00~30.0、4.00~20.0、5.00~15.0、又は6.00~10.0であってよい。モル比(C/C×100)が上記範囲であると、組成物がウレタン樹脂の原料として使用された場合に、100%モジュラス、耐熱性がともに良好なポリウレタン樹脂が形成されやすい傾向がある。
【0097】
モル比(C/C×100)は、例えば、(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)と同様に、重水素化クロロホルムを溶媒に用い、且つ、テトラメチルシランを基準物質に用いた、組成物のH-NMR測定及び該測定によって得られるH-NMRスペクトルのシグナルの積分値から求めることができる。具体的には、例えば、上記シグナル(SI)の積分値ΔSI(水素原子3mol分)と、式(f’)のオキセタン基の酸素原子の隣に位置するメチレンのシグナル(Sf)の積分値ΔSf(水素原子4mol分)と、の比からモル比(C/C×100)を算出可能である。この場合、モル比(C/C×100)は、シグナル(SI)の積分値ΔSIと、シグナル(Sf)の積分値ΔSfと、の比の0.75倍値(0.75×ΔSf/ΔSI×100)と言い換えることができる。
【0098】
組成物は、ポリカーボネートポリオール(B)と、ポリエステルポリオール(C)と、必要に応じて添加されるジオール(D)、多価アルコール(E)及び/又はオキセタン化合物(F)との反応混合物であってよい。上記反応は、通常、エステル交換触媒の存在下で行われることから、組成物は、エステル交換触媒を更に含有していてよい。エステル交換触媒としては、リチウムアセチルアセトナートが好ましく用いられる。エステル交換触媒の含有量は、組成物の全質量を基準として、0.0001~0.100質量%であってよい。
【0099】
組成物の性状は、特に限定されず、25℃で固体であってよく、25℃で液体であってよい。組成物の性状は、含有される成分(例えば、化合物(A1-1)~(A1-3)、化合物(A2-2)~(A2-3)、化合物(A-3)、化合物(A-4)及びオキセタン化合物(F))の種類及び含有比率等により変更可能である。
【0100】
組成物の数平均分子量は、例えば、200~6000g/molであってよい。組成物の数平均分子量の下限は、例えば、200g/mol以上、400g/mol以上、600g/mol以上、800g/mol以上、1000g/mol以上、1200g/mol以上、1400g/mol以上、1600g/mol以上又は1800g/mol以上であってよい。組成物の数平均分子量の上限は、例えば、6000g/mol以下、5000g/mol以下、4000g/mol以下、3000g/mol以下、2500g/mol以下、2000g/mol以下、1800g/mol以下、1600g/mol以下、1400g/mol以下、1200g/mol以下、1000g/mol以下、又は800g/mol以下であってよい。
【0101】
組成物の数平均分子量とは、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて組成物全体を測定対象として測定される、2官能のポリオキシプロピレンポリオール換算の数平均分子量である。
【0102】
組成物の水酸基価は、例えば、30~800mgKOH/gであってよい。組成物の水酸基価の下限は、例えば、30mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、50mgKOH/g以上、60mgKOH/g以上、70mgKOH/g以上、80mgKOH/g以上、90mgKOH/g以上、100mgKOH/g以上、120mgKOH/g以上、140mgKOH/g以上、160mgKOH/g以上、又は180mgKOH/g以上であってよい。組成物の水酸基価の上限は、例えば、800mgKOH/g以下、700mgKOH/g以下、600mgKOH/g以下、500mgKOH/g以下、400mgKOH/g以下、300mgKOH/g以下、250mgKOH/g以下、200mgKOH/g以下、180mgKOH/g以下、160mgKOH/g以下、140mgKOH/g以下、120mgKOH/g以下、100mgKOH/g以下又は80mgKOH/g以下であってよい。
【0103】
組成物の水酸基価は、組成物1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数を意味し、JIS K1557-1に準拠して測定される。
【0104】
組成物の酸価は、例えば、0.01~10.0mgKOH/gであってよい。組成物の酸価の下限は、例えば、0.01mgKOH/g以上、0.02mgKOH/g以上、0.03mgKOH/g以上、0.04mgKOH/g以上、0.05mgKOH/g以上、0.06mgKOH/g以上、又は0.07mgKOH/g以上であってよい。組成物の酸価の上限は、例えば、10.0mgKOH/g以下、5.0mgKOH/g以下、3.0mgKOH/g以下、1.0mgKOH/g以下、0.5mgKOH/g以下、0.4mgKOH/g以下、0.3mgKOH/g以下、又は0.2mgKOH/g以下であってよい。
【0105】
組成物の酸価は、組成物1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数を意味し、JIS K1557-5に準拠して測定される。
【0106】
本実施形態では、重水素化クロロホルムを溶媒に用い、且つ、テトラメチルシランを基準物質に用いて組成物のH-NMR測定を行った場合、例えば、上記シグナル(S1-1)が、H-NMRスペクトルの3.435ppm以上3.475ppm以下の範囲に観測され、上記シグナル(S1-2)が、H-NMRスペクトルの3.475ppm以上3.520ppm以下の範囲に観測され、上記シグナル(S1-3)が、H-NMRスペクトルの3.400ppm以上3.435ppm以下の範囲に観測され、上記シグナル(S2-2)が、H-NMRスペクトルの3.595ppm以上3.618ppm以下の範囲に観測され、上記シグナル(S2-3)が、H-NMRスペクトルの3.550ppm以上3.595ppm以下の範囲に観測され、上記シグナル(Sd)が、H-NMRスペクトルの3.618ppm以上3.710ppm以下の範囲に観測され、加えて、多価アルコール(E)が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(Se)の積分値ΔSeが、H-NMRスペクトルの3.710ppm以上3.760ppm以下の範囲に観測され、上記シグナル(Sf)が、H-NMRスペクトルの4.390ppm以上4.500ppm以下の範囲に観測される。また、式(I)のRがエチル基である場合、上記シグナル(SI)が0.700ppm以上1.000ppm以下の範囲に観測され、式(I)のRがメチル基である場合、上記シグナル(SI)が0.700ppm以上1.130ppm以下の範囲に観測される。したがって、本実施形態では、これらのシグナルの積分値の比から、モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))、モル比(CA1-1/C)、モル比(CA1-2/C)、モル比(CA1-3/C)、モル比(CA2-3/C)、モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)及びモル比(C/C×100)を求めることができる。
【0107】
本実施形態によれば、100%モジュラスが低く、高い軟化温度を有するウレタン樹脂の形成に資する、組成物を提供することができる。
【0108】
<ポリカーボネートポリオール及び組成物の製造方法>
上記実施形態の化合物(A1-1)は、例えば、ポリカーボネートポリオール(B)と、ポリエステルポリオール(C)と、エステル交換触媒と、を含む混合液中で、ポリカーボネートポリオールと、ポリエステルポリオールとを反応(エステル交換反応)させることによって、化合物(A1-1)を得る反応工程を含む方法によって得ることができる。当該方法において、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールの少なくとも一方が、上記式(I)で表される基を含む、又は、混合液が上記式(e)で表される多価アルコールを更に含む。
【0109】
上記方法では、化合物(A1-1)を含む反応混合物として上記実施形態の組成物を得ることもできる。したがって、上記方法は、上記実施形態の組成物の製造方法といいかえることもできる。
【0110】
混合液は、任意成分としてジオール(D)及び/又はオキセタン化合物(F)として含んでいてよい。上記方法がポリカーボネートポリオール(B)及びポリエステルポリオール(C)の少なくとも一方が、上記式(I)で表される基を含む方法である場合でも、混合液は、任意成分として多価アルコール(E)を含んでいてよい。ポリカーボネートポリオール(B)と、ポリエステルポリオール(C)、ジオール(D)、多価アルコール(E)及びオキセタン化合物(F)の詳細は上述のとおりであり、これらの好適な例(好ましいR、R、R、R及びRの例、並びに、好ましい組み合わせの例)も、化合物(A1-1)が有するR、R、R、R及びRの好ましい例及び好ましい組み合わせの例と同じである。エステル交換触媒としては、所望の化合物(A1-1)が得られやすくなる観点から、リチウムアセチルアセトナートを用いることが好ましい。
【0111】
ポリカーボネートポリオール(B)とポリエステルポリオール(C)との混合比率(混合液中のポリカーボネートポリオール(B)の含有量/混合液中のポリエステルポリオール(C)の含有量)は、重量比で、95/5~5/95であることが好ましく、90/10~10/90であることがより好ましく、80/20~20/80であることがさらに好ましく、70/30~30/70であることが特に好ましい。ポリカーボネートポリオール(B)とポリエステルポリオール(C)との混合比率を上記範囲とすることで、化合物(A-1)を効率よく得ることができる。
【0112】
ポリカーボネートポリオール(B)とポリエステルポリオール(β)及び/又はポリエステルポリオール(β’)との混合比率(混合液中のポリカーボネートポリオール(B)の含有量/混合液中のポリエステルポリオール(β)及び/又はポリエステルポリオール(β’)の含有量)は、重量比で、95/5~5/95であることが好ましく、90/10~10/90であることがより好ましく、80/20~20/80であることがさらに好ましく、70/30~30/70であることが特に好ましい。ポリカーボネートポリオール(B)とポリエステルポリオール(β)及び/又はポリエステルポリオール(β’)との混合比率を上記範囲とすることで、化合物(A-1)を効率よく得ることができる。
【0113】
混合液中のエステル交換触媒の含有量は、反応温度を適切に制御しやすく、反応生成物の色数上昇を抑えることができる観点から、混合液中のポリオール成分の総量100質量部に対して、0.0001~0.1質量部であってよく、0.001~0.050質量部であってよく、0.005~0.01質量部であってもよい。エステル交換触媒の含有量は、ウレタン化反応の反応性の制御を容易とする観点では、少ないほど好ましい。エステル交換触媒の含有量が多くなると、ウレタン化反応の反応性が高くなりやすい。混合液中のエステル交換触媒の含有量は、ウレタン化の反応制御を容易とする観点では、混合液中のポリオール成分の総量100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.002質量部以上であることがより好ましく、0.003質量部以上であることが更に好ましい。混合液中のエステル交換触媒の含有量は、反応生成物の色数上昇を抑えることができる観点では、混合液中のポリオール成分の総量100質量部に対して、0.050質量部以下であることが好ましく、0.040質量部以下であることがより好ましく、0.030質量部以下であることが更に好ましい。これらの観点から、混合液中のエステル交換触媒の含有量は、混合液中のポリオール成分の総量100質量部に対して、0.001~0.050質量部であることが好ましく、0.002~0.040質量部であることがより好ましく、0.003~0.030質量部であることが更に好ましい。ポリオール成分の総量とは、混合液に含まれるヒドロキシ基を2個以上有する化合物(例えば、ポリカーボネートポリオール(B)、ポリエステルポリオール(C)、多価アルコール(E)及び任意添加成分のジオール(D))と、任意添加成分のオキセタン化合物(F)と、の合計量である。
【0114】
反応工程では、混合液を加熱して反応を進行させてもよく、加熱を行わずに反応を進行させてもよい。混合液の反応温度は、例えば、0~250℃であり、100~220℃であってもよい。反応温度が0℃以上であると、エステル交換反応が進行し易く、所望の化合物(A1-1)が得られやすい。反応温度が250℃以下であると、得られる化合物(A1-1)及び組成物(ポリオール含有組成物)の色数が抑えられる。さらに、反応温度が250℃以下であると、カーボネート基の脱炭酸反応、又は、末端水酸基同士の脱水反応により副生する、3官能以上の多価アルコールに由来するオキセタン化合物及び/又はオキセタン構造、を抑制することができる。また、エステル交換反応は、温度を一定に保って行なってもよいし、反応進行度に応じて段階的又は連続的に昇温させながら行なってもよい。所望の化合物(A1-1)を得られやすくする観点では、下記式(α)の関係を満たす温度T1での加熱を行った後、ついで、下記式(β)の関係を満たす温度T2での加熱を行うことが好ましい。なお、温度T1及び温度T2は下記式(γ)の関係を満たすことが好ましい。また、第1の加熱の温度の平均温度T1及び第2の加熱の温度の平均温度T2は下記式(δ)の関係を満たすことが好ましい。ここで、反応進行度はGPCチャートから得られる原料の消費量から見積もることができる。
180℃≦T1≦200℃ ・・・(α)
190℃≦T2≦200℃ ・・・(β)
T1<T2 ・・・(γ)
T1<T2 ・・・(δ)
【0115】
混合液の加熱は常圧下で行うこともできるが、減圧下(例えば101~1kPaの圧力下)で行うこともできる。これにより、混合液中に残存する水分を取り除き、反応の進行を速め、組成物への着色を抑制することが可能となる。さらに、減圧下により、組成物の酸価を低減することが可能となる。なお、本明細書中、常圧とは、101.325kPa±20.000kPaの圧力を意味する。所望の化合物(A1-1)を得られやすくする観点では、混合液の加熱は、101.325kPa±20.000kPaの圧力下で加熱すること(第1の加熱)と、ついで、20.000kPa以下の減圧下で加熱すること(第2の加熱)と、を含むことが好ましく、第1の加熱の温度が上記式(α)の関係を満たす温度T1であり、第2の加熱の温度が上記式(β)の関係を満たす温度T2であることがより好ましく、第1の加熱の温度(温度T1)と第2の加熱の温度(温度T2)とが上記式(γ)の関係を満たすことがさらに好ましい。
【0116】
混合液の加熱は窒素を流入させながら行うこともできる。これにより、混合液中から水分を取り除き、反応の進行を速めることが可能となる。さらに、窒素のパージにより、組成物への着色の抑制が可能となる。所望の化合物(A1-1)を得られやすくする観点では、混合液の窒素流量は2~1000ml/min/スケール(kg)であることが好ましく、5~200ml/min/スケール(kg)であることがさらに好ましい。
【0117】
上記製造方法では、得られた反応混合物に対して、蒸留、乾燥等の後処理を行ってよい。また、上記製造方法では、化合物(A1-1)又はこれを含む組成物を得た後に、多価アルコール(E)及び/又はオキセタン化合物(F)等の成分を添加して、調製してもよい。
【0118】
<ウレタン樹脂及びその製造方法>
ウレタン樹脂は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との重縮合物又はその架橋体である。ここで、架橋体とは、鎖延長剤等により重縮合物同士が架橋したものを意味する。
【0119】
(ポリオール成分)
ポリオール成分は、上記化合物(A1-1)を含む。ポリオール成分は、化合物(A1-1)以外のポリオール(末端水酸基を2個以上有する化合物)、又はオキセタン化合物(F)(水酸基を1個有する化合物)を含んでいてもよい。ポリオール成分は、例えば、上記組成物に含まれ得るポリオール(化合物(A1-2)、化合物(A1-3)、化合物(A2-2)、化合物(A2-3)、化合物(A-3)、化合物(A-4)、多価アルコール(E)、ジオール(D)、オキセタン化合物(F)等)を更に含んでいてもよい。これらのポリオールの含有比率は、上記組成物におけるポリオールの含有比率(例えば、モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))、モル比(CA1-1/C)、モル比(CA1-2/C)、モル比(CA1-3/C)、モル比(CA2-3/C)、モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)及びモル比(C/C×100)と同じであってよい。換言すれば、ポリオール成分は、上記組成物からポリオール以外の化合物を除いたポリオール混合物を含んでいてよい。
【0120】
ポリオール成分は、酸性基を有するポリオールを更に含有していてもよい。この場合、ウレタン樹脂が酸性基を含むこととなる。酸性基を有するウレタン樹脂は、水性ウレタン樹脂分散体に好適に用いられる。水性ウレタン樹脂分散体については後述する。
【0121】
酸性基は、例えば、イソシアネートとの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーに親水性を付与することができる官能基(親水性基)である。このような酸性基を有するポリオールとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールノナン酸等のジメチロールアルカン酸を挙げることができる。
【0122】
(ポリイソシアネート成分)
ポリイソシアネート成分としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環族ポリイソシアネートを挙げることができる。また、これらの変性体である変性ポリイソシアネートを用いることもできる。変性ポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート(イソシアネートの三量体)、アロファネート変性ポリイソシアネート、ウレトジオン変性ポリイソシアネート、ウレタン変性ポリイソシアネート、ビウレット変性ポリイソシアネート、ウレトンイミン変性ポリイソシアネート、アシルウレア変性ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。
【0123】
芳香族イソシアネートとしては、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエ-テルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0124】
芳香脂肪族イソシアネートとしては、例えば1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、及びそれらの混合物;1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、及びそれらの混合物;ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0125】
脂肪族イソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシアナトメチル)オクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-(イソシアナトメチル)オクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート、2-イソシアナトプロピル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0126】
脂環族イソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナト-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、水素化テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0127】
(ポリオール成分/ポリイソシアネート成分配合比)
ポリオール成分とポリイソシアネート成分との配合比は、ポリオール成分中の活性水素とポリイソシアネート成分中のイソシアネート基とのモル比が、9:1~1:9であることが好ましく、6:4~4:6であることが更に好ましい。配合比がこの範囲内であると、ウレタン樹脂がより優れた性能を有する傾向がある。
【0128】
(鎖延長剤)
鎖延長剤は、目的、用途等に応じて適宜選択することができる。鎖延長剤としては、例えば、水;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン等の低分子ポリオ-ル;ポリエステルポリオ-ル、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等の高分子ポリオール;エチレンジアミン、イソホロンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンなどを使用することができる。鎖延長剤の配合量(ウレタン樹脂に含まれる鎖延長剤由来の構造の割合)は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分の合計量100質量部に対して、0.1~50質量部であってよい。なお、鎖延長剤がポリオールである場合、該ポリオールは、鎖延長剤及びポリオール成分の両方に包含されるものとして含有量を算出する。
【0129】
上記ウレタン樹脂は、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、場合により鎖延長剤と、を反応(ウレタン化反応)させることにより得ることができる。ウレタン化反応は、室温(例えば25℃)で行われてよく、加熱下(例えば、40~200℃)で行われてもよい。
【0130】
ウレタン化反応の際には、反応時間の短縮、反応率の向上等を目的として、触媒(ウレタン化触媒)を追加することができる。触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の第3級アミン触媒、及び、スタナスオクトエート、スタナスオレート、ジブチル錫ジラウレート等の錫系触媒などに代表される金属触媒が挙げられる。これらは単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、ジブチル錫ジラウレートが好ましく用いられる。触媒の使用量は、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分の合計量100質量部に対して、0.001~100質量部であってよい。
【0131】
ウレタン化反応の際に触媒を使用する場合には、触媒の処理のためにリン化合物を用いることが好ましい。リン化合物としては特に限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジル・ジフェニルホスフェート等のリン酸トリエステル;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2-エチルへキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、アチレングルコールアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の酸性リン酸エステル;トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニル(モノデシル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコ-ルジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスルト-ルジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリト-ルジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等の亜リン酸エステル類;リン酸、亜リン酸、次亜リン酸などが挙げられる。これらは単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。これらの中でも、酸性リン酸エステルが好ましく、2-エチルへキシルアシッドホスフェートがより好ましい。リン化合物の使用量は、触媒100質量部に対して、10~2000質量部であってよい。
【0132】
ウレタン化反応は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、2-エトキシエタノ-ル等のエ-テル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類などを使用することができる。
【0133】
以上説明したウレタン樹脂は、伸び率及び風合いが良好であり、耐久性に優れ、さらに、場合によっては破断強度が良好である。したがって、上記ウレタン樹脂は、合成皮革、人工皮革、コーティング剤等に好適に使用できる。
【0134】
<コーティング剤>
本実施形態のコーティング剤は、上述したウレタン樹脂を含む。ウレタン樹脂の具体的態様は上述したとおりであってよい。
【0135】
コーティング剤として使用する場合の一例としては、RIM(Reaction Injection Moldind、反応射出成形)を応用した型内塗装方法が挙げられる。具体的には、射出成形金型内でプラスチック基材を成形し、さらに金型内で成形品表面にウレタン塗膜を形成する方法である。本手法では型内容積が一定であり、ウレタン塗膜の密度、厚み、硬さが安定するだけでなく、金型表面の凹凸を忠実に再現でき意匠性の高い外観を得る事も可能である。
【0136】
<水性ウレタン樹脂分散体>
水性ウレタン樹脂分散体は、水系媒体と、該水系媒体中に分散したウレタン樹脂又はその中和物と、を含有する。ウレタン樹脂は、上述したウレタン樹脂のうち、酸性基を有するもの(ポリオール成分が酸性基を有するポリオールを含むもの)である。
【0137】
水系媒体としては、水の他、乳化剤、分散剤等を含む溶液等を用いることができる。水系媒体は、水を含むことが好ましく、水のみからなることがより好ましい。
【0138】
水性ウレタン樹脂分散体がウレタン樹脂の中和物を含有する場合、ウレタン樹脂が有する酸性基は、中和剤によって中和されていてよい。中和剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-アミノ-2-エチル-1-プロパノール、高級アルキル変性モルホリン等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類などが挙げられる。塗膜の耐久性、平滑性等の向上の観点では、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の加熱によって容易に解離する揮発性の高い中和剤が好ましく用いられる。これらの中和剤は、単独で使用することができ、二種以上を併用することもできる。
【0139】
水性ウレタン樹脂分散体を製造するにあたり、アニオン性極性基含有化合物を用いることもできる。アニオン性極性基含有化合物としては、例えば、活性水素を1個以上有する有機酸と中和剤とからなるものを挙げることができる。有機酸としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、チオスルホン酸塩等が挙げられる。有機酸に含まれるこれらのアニオン性極性基は、単独で導入されていてよく、キレートのように金属イオンに関連付けられてもよい。
【0140】
水性ウレタン樹脂分散体を製造するにあたり、カチオン性極性基含有化合物を用いることもできる。カチオン性極性基含有化合物としては、例えば、活性水素を1個以上有する3級アミンと、無機酸の中和剤、有機酸の中和剤及び4級化剤からなる群より選択される1種とからなる。また、カチオン性極性基含有化合物としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン性化合物を用いることもできる。
【0141】
活性水素を1個以上有する3級アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジプロピルエタノールアミン、N,N-ジフェニルエタノールアミン、N-メチル-N-エチルエタノールアミン、N-メチル-N-フェニルエタノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N-メチル-N-エチルプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジプロパノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-フェニルジプロパノールアミン、N-ヒドロキシエチル-N-ヒドロキシプロピル-メチルアミン、N,N’-ジヒドロキシエチルピペラジン、トリエタノールアミン、トリスイソプロパノールアミン、N-メチル-ビス-(3-アミノプロピル)-アミン、N-メチル-ビス-(2-アミノプロピル)-アミン等が挙げられる。また、アンモニア、メチルアミン等の第1級アミン、又は、ジメチルアミン等の第2級アミンにアルキレンオキサイドを付加させたものも使用できる。
【0142】
無機酸及び有機酸としては、例えば、塩酸、酢酸、乳酸、シアノ酢酸、燐酸及び硫酸が挙げられる。
【0143】
4級化剤としては、例えば、硫酸ジメチル、塩化ベンジル、ブロモアセトアミド、クロロアセトアミド等が挙げられる。また、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル等のハロゲン化アルキルも使用可能である。
【0144】
水性ウレタン樹脂分散体は、例えば、酸性基を有するポリオールを含有するポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、を、溶媒の存在下、又は溶媒の非存在下で反応させてウレタンプレポリマーとする工程と、該プレポリマー中の酸性基を中和剤により中和する工程と、中和されたプレポリマーを水系媒体に分散させる工程と、水系媒体に分散されたプレポリマーを鎖延長剤と反応させる工程と、を順次行うことによって製造することができる。なお、各工程では、必要に応じて触媒を使用することで、反応を促進させ、副生成物の量を制御することができる。
【0145】
以上説明した水性ウレタン樹脂分散体により形成される膜(例えば、水性ウレタン樹脂分散体を基材上にコーティングすることにより形成される膜)は、密着性、柔軟性、触感等に優れる。したがって、上記水性ウレタン樹脂分散体は、人工皮革、合成皮革及びコーティング剤に好適に使用することができる。
【0146】
<2液組成物セット>
上記ウレタン樹脂を形成するためのポリオール成分及びポリイソシアネート成分は、2液組成物セットとして、別々の容器中で保管、運搬等されてよい。2液組成物セットは、少なくとも上記ポリオール成分を含有する第1液と、少なくとも上記ポリイソシアネート成分を含有する第2液と、を含む。鎖延長剤、触媒、溶媒等を用いる場合、これらは、第1液及び/又は第2液に含有させてよく、第1液及び第2液とは別に配合してもよい。上記2液組成物セットは、例えば、コーティング剤として好適に使用することができ、人工皮革、合成皮革等の製造においても好適に使用することができる。上記2液組成物セットをコーティング剤として使用する場合、例えば、第1液と第2液とを混合した後、得られた混合液を基材上に塗布し、場合により加熱することにより、塗膜(例えばウレタン樹脂を含む硬化膜)を形成することができる。
【0147】
2液組成物セットをコーティング剤として使用する場合の一例としては、有機溶剤を使用しない樹脂組成物として人工皮革、合成皮革等の製造においても好適に使用することができ、密着性、柔軟性、触感等に優れるポリウレタン樹脂を形成する。
【0148】
上述したポリオール成分及び上述したポリイソシアネート成分を含むウレタン樹脂形成性組成物、並びに、上述したウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂組成物は、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン、無溶剤下で合成されるポリウレタン樹脂又はこれらの前駆体として好ましく用いられる。そして、この水性ポリウレタン樹脂エマルジョン、又は、無溶剤下で合成されるポリウレタン樹脂を硬化することにより、強靭で、100%モジュラスが低減され(風合いが良好であり)、高い軟化温度を有する塗膜やフィルム等の成形体を得ることができ、人工皮革、合成皮革等の皮革用途や、皮革用表面処理剤として好適に使用することができる。100%モジュラスは合成皮革に触れたときのしっとりとした、弾力性のある高級な感覚を定量する指標の一つであり、数値が一定の数値範囲内であると、上記特性が良好なウレタン樹脂となる。
【0149】
<用途>
上述した本実施形態の組成物、ウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂分散体及びコーティング剤は、自動車外装用クリア塗料、自動車内装用塗料として好適に使用される塗料組成物に用いることができる。また、本実施形態の組成物、ウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂分散体及びコーティング剤は、家電製品、OA(オフィスオートメーション)製品、皮革の表面処理、合成皮革の表面処理等に好ましく用いることができる。
【実施例0150】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0151】
[合成例1:ポリカーボネートポリオール(B)の合成1]
攪拌機、温度計、加熱装置及び冷却器を組んだ2L二口ガラス製反応器に、1,6-ヘキサンジオール826g、炭酸ジエチル787g、及びテトラブチルチタネート0.05gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~190℃で8時間反応させた。さらに反応温度を190℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PC-1)。
【0152】
[合成例2:ポリカーボネートポリオール(B)の合成2]
攪拌機、温度計、加熱装置及び冷却器を組んだ1L二口ガラス製反応器に、トリメチロールプロパン272.7g、1,6-ヘキサンジオール266.2g、炭酸ジエチル461.2g、及び炭酸水素カリウム0.05gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PC-2)。
【0153】
[合成例3:ポリカーボネートポリオール(B)の合成3]
攪拌機、温度計、加熱装置及び冷却器を組んだ2L二口ガラス製反応器に、1,4-ブタンジオール174.1g、炭酸ジエチル225.9g、及びテトラブチルチタネート0.02gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~190℃で8時間反応させた。さらに反応温度を190℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PC-3)。
【0154】
[合成例4:ポリカーボネートポリオール(B)の合成4]
攪拌機、温度計、加熱装置及び冷却器を組んだ2L二口ガラス製反応器に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール202.6g、炭酸ジエチル197.5g、及びテトラブチルチタネート0.02gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~190℃で8時間反応させた。さらに反応温度を190℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PC-4)。
【0155】
<実施例>
(実施例1)
攪拌機、温度計、加熱装置及び冷却器を組んだ0.5L四つ口ガラス製反応器(反応器A)にN-980Nを322g、プラクセル220を140g、プラクセル305を13g、1,6-ヘキサンジオール(HG)を24.6g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合した。常圧下で、180~200℃(初期180℃、終盤200℃)で加熱し、窒素雰囲気下で流量50ml/minで5時間反応させた。さらに、反応温度200℃でフラスコ内の圧力を26.7kPaまで減圧し、さらに5時間反応を行うことで、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-1)を得た。
【0156】
(実施例2)
反応器Aに、N-980Nを319g、プラクセル220を111g、プラクセル305を51g、1,6-ヘキサンジオールを18.3g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-2)を得た。
【0157】
(実施例3)
反応器Aに、合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を153g、N-980Nを259g、プラクセル305を66g、トリメチロールプロパン(TMP)を21.8g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-3)を得た。
【0158】
(実施例4)
反応器Aに、合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を3.0g、N-980Nを359g、プラクセル305を132g、トリメチロールプロパンを5.6g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-4)を得た。
【0159】
(実施例5)
反応器Aに、合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を300g、プラクセル305を200g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-5)を得た。
【0160】
(実施例6)
反応器Aに、N-980Nを212g、プラクセル220を149g、プラクセル305を134g、トリメチロールプロパンを5.3g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-6)を得た。
【0161】
(実施例7)
反応器Aに、N-980Nを112g、プラクセル220を249g、プラクセル305を134g、トリメチロールプロパンを5.3g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-7)を得た。
【0162】
(実施例8)
反応器Aに、N-980Nを12g、プラクセル220を349g、プラクセル305を134g、トリメチロールプロパンを5.3g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-8)を得た。
【0163】
(実施例9)
反応器Aに、合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を348g、N-980Nを47g、プラクセル210を98g、プラクセル305を6.9g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-9)を得た。
【0164】
(実施例10)
反応器Aに、N-980Nを450g、プラクセル320を50g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-10)を得た。
【0165】
(実施例11)
反応器Aに、N-980Nを400g、プラクセル320を100g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-11)を得た。
【0166】
(実施例12)
反応器Aに、攪拌機、温度計、加熱装置及び冷却器を組んだ2L四つ口ガラス製反応器に合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を1356g、プラクセル210を472g、プラクセル305を171g、リチウムアセチルアセトナートを0.20g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-12)を得た。
【0167】
(実施例13)
反応器Aに、合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を250g、プラクセル320を250g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-13)を得た。
【0168】
(実施例14)
反応器Aに、N-980Nを150g、プラクセル220を100g、プラクセル320を250g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-14)を得た。
【0169】
(実施例15)
反応器Aに、N-980Nを50g、プラクセル220を200g、プラクセル320を250g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-15)を得た。
【0170】
(実施例16)
反応器Aに、N-980Nを250g、プラクセル320を250g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-16)を得た。
【0171】
(実施例17)
反応器Aに、実施例13で得られた組成物(PCP-13)を90gと、トリメチロールプロパンを10gと、を80℃で混合し、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-17)を得た。
【0172】
(実施例18)
反応器Aに、合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を305g、合成例2で得られたポリカーボネートポリオール(PC-2)を45g、プラクセル220を103g、プラクセル210を47g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-18)を得た。
【0173】
(実施例19)
反応器Aに、合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を289g、合成例2で得られたポリカーボネートポリオール(PC-2)を126g、プラクセル220を85g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-19)を得た。
【0174】
(実施例20)
反応器Aに、N-980Nを318g、N-135を150g、トリメチロールプロパンを32g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-20)を得た。
【0175】
(実施例21)
反応器Aに、合成例3で得られたポリカーボネートポリオール(PC-3)を250g、プラクセル320を250g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-21)を得た。
【0176】
(実施例22)
反応器Aに、合成例4で得られたポリカーボネートポリオール(PC-4)を250g、プラクセル320を250g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-22)を得た。
【0177】
(実施例23)
反応器Aに、N-980Nを250g、プラクセル320を250g、3-エチル-3ヒドロキシメチルオキセタンを14.5g、リチウムアセチルアセトナートを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、上記式(A1-1)で表されるポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-23)を得た。
【0178】
(比較例1)
N-982Rを50gと、トリメチロールプロパンを50gと、を80℃で混合し、ポリカーボネートジオールを含む組成物(PCD-1)を得た。
【0179】
(比較例2)
N-982Rを80℃に加温し、ポリカーボネートジオールを含む組成物(PCD-2)を得た。
【0180】
(比較例3)
N-980Rを80℃に加温し、ポリカーボネートジオールを含む組成物(PCD-3)を得た。
【0181】
(比較例4)
反応器Aに、合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を300g、プラクセル305を200g、テトラブチルチタネートを0.05g混合した。常圧下で、190℃で加熱し、5時間反応を行うことで、ポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-24)を得た。
【0182】
(比較例5)
反応器Aに、合成例1で得られたポリカーボネートポリオール(PC-1)を300g、プラクセル305を200g、酢酸バリウムを0.05g混合して得た混合液を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、ポリカーボネートポリオールを含む組成物(PCP-25)を得た。
【0183】
(分析評価)
[数平均分子量の測定]
以下の条件で、上記で得られたポリカーボネートポリオール及び上記で得られた組成物のGPC分析を行い、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量及び組成物の数平均分子量を測定した。結果を表1、表3、表5及び表7に示す。
-条件-
(1)測定器:HLC-8420(東ソー社製)
(2)カラム:TSKgel(東ソー社製)
・G3000H-XL
・G3000H-XL
・G2000H-XL
・G2000H-XL
(3)移動相:THF(テトラヒドロフラン)
(4)検出器:RI(屈折率)検出器(HLC-8420付属品)
(5)温度:40℃
(6)流速:1.000ml/min
(7)検量線:以下の商品(いずれも三洋化成工業社製の2官能のポリオキシプロピレンポリオール)を用いて、検量線を得た。
・「サンニックスPP-200」(数平均分子量=200、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-400」(数平均分子量=400、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-1000」(数平均分子量=1000、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-2000」(数平均分子量=2000、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-3000」(数平均分子量=3200、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-4000」(数平均分子量=4160、平均官能基数:2)
(8)検量線の近似式:3次式
(9)サンプル溶液濃度:0.5質量%THF溶液
【0184】
[水酸基価の測定]
JIS K1557-1に準拠し、アセチル化試薬を用いた方法にて、上記で得られたポリカーボネートポリオールの水酸基価、及び、上記で得られた組成物の水酸基価を測定した。結果を表1、表3、表5及び表7に示す。
【0185】
[酸価の測定]
JIS K1557-5に準拠し、アセチル化試薬を用いた方法にて、上記で得られた組成物の酸価を測定した。結果を表3、表5及び表7に示す。
【0186】
[性状評価]
上記で得られた組成物をサンプルとし、該サンプルを80℃で1時間加熱した後、25℃で3日間放置した。放置後のサンプルの状態を目視により確認し、上記温度で僅かでも流動性があれば液状とし、流動性がない場合には固体とした。結果を表3、表5及び表7に示す。
【0187】
[組成分析]
以下の手順で組成物の組成分析を行った。
【0188】
まず、上記で得られた組成物(サンプル)を重水素化クロロホルム(富士フイルム和光純薬社製)に溶解し溶液を得た。該溶液に化学シフト基準としてテトラメチルシラン(TMS)を加えて試験液を得た。得られた試験液について、日本電子社製のJNM-ECX400を用いてH-NMRを測定し、TMSシグナルを0ppmとしてH-NMRスペクトルを得た。参考までに、実施例5で得られた組成物のH-NMRスペクトルを図1及び図2に示す。なお、測定は以下の条件で行った。
-条件-
・共鳴周波数:400MHz
・パルス幅:45degree
・待ち時間:5秒
・積算回数:64
・サンプル溶液濃度(TMS含有重クロロホルム):3質量vol%
【0189】
次いで、上記で得られたH-NMRスペクトルから、上記式(a1-1)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S1-1)の積分値ΔS1-1と、上記式(a1-2)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S1-2)の積分値ΔS1-2と、上記式(a1-3)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S1-3)の積分値ΔS1-3と、上記式(a2-2)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S2-2)の積分値ΔS2-2と、上記式(a2-3)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(S2-3)の積分値ΔS2-3と、上記式(d)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(Sd)の積分値ΔSdと、上記式(e)で表される基が有するヒドロキシ基の隣に位置するメチレンのシグナル(Se)の積分値ΔSeと、上記式(f’)で表される基が有するオキセタン基の酸素原子の隣に位置するメチレンのシグナル(Sf)の積分値ΔSfと、を求めた。また、式(I)で表される基のRがメチル基又はエチル基である場合、これらの末端メチルのシグナルの積分値を求め、これらをシグナル(SI)の積分値ΔSIとした。
【0190】
具体的には、3.435ppm以上3.475ppm以下のシグナルをシグナル(S1-1)とし、3.475ppm以上3.520ppm以下のシグナルをシグナル(S1-2)とし、3.400ppm以上3.435ppm以下のシグナルをシグナル(S1-3)とし、3.595ppm以上3.618ppm以下のシグナルをシグナル(S2-2)とし、3.550ppm以上3.595ppm以下のシグナルをシグナル(S2-3)とし、3.618ppm以上3.710ppm以下のシグナルをシグナル(Sd)とし、3.710ppm以上3.760ppm以下のシグナルをシグナル(Se)とし、4.390ppm以上4.500ppm以下のシグナルをシグナル(Sf)とし、0.700ppm以上1.130ppm以下のシグナルを、式(I)で表される基のRがメチル基である場合(多価アルコール(E)がトリメチロールエタンである場合)のシグナル(SI)とし、0.700ppm以上1.000ppm以下のシグナルを、式(I)で表される基のRがエチル基である場合(多価アルコール(E)がトリメチロールプロパンである場合)のシグナル(SI)とした。
【0191】
なお、積分値測定に係るベースラインは、規定のスペクトル範囲におけるスペクトル強度を比較し、最も低いスペクトル強度を基準として水平に描いた直線とした。シグナル(S1-1)、シグナル(S1-2)、シグナル(S2-2)及びシグナル(Se)は通常シングルのピークを示すが、極微量の水分に影響を受け、ピークが分裂する場合がある。分裂したピークとして検出されると、上記積分範囲から逸脱し、正確なCA1-1、CA1-2、A2-2及びCが得られない。従って、各シグナルから求められる積分値はシングルのピークを示す場合を採用する。
【0192】
得られた積分値から、モル比(CA1-1/(CA1-1+CA1-2+CA1-3)×100)、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA1-1+CA1-2+CA1-3))、モル比(CA1-1/C)、モル比(CA1-2/C)、モル比(CA1-3/C)、モル比(CA2-3/C)、モル比(CA2-3/(CA2-2+CA2-3+C)×100)、モル比((CA2-2+CA2-3)/(CA2-2+CA2-3+C)×100)及びモル比(C/C×100)を算出した。結果を表3、表5及び表7に示す。
【0193】
なお、PCP-1~23では、シグナル(S1-1)の存在より、化合物(A1-1)の存在が示唆された。一方、PCD-1~3及びPCP-24~25では、シグナル(S1-1)が確認されなかった。
【0194】
また、式(I)中の3つの結合手の全てがカルボニル基への結合手である基の総モル数をCA3とすると、CはCA1-1、CA1-2、CA1-3、A2-2、CA2-3、CA3、C及びCの総和に一致する。PCP-1~19では、上記シグナル(SI)、(S1-1)~(S1-3)、(S2-2)~(S2-3)、(Se)、(Sf)の積分値より、CからCA1-1、CA1-2、CA1-3、A2-2、CA2-3、C及びCを減じた値が正となることが確認されたことから、化合物(A-3)の存在が示唆された。
【0195】
【表1】
【0196】
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】
【0197】
表2、表4及び表6中、実施例1~16、実施例18~23、並びに比較例4~5の「組成」(単位:g)は、反応原料を示し、実施例17、及び比較例1~3の「組成」(単位:g)は、配合成分を示す。
【0198】
(物性評価)
以下の方法でウレタン硬化膜被膜(フィルム)を作製し、得られたフィルムをサンプルとして、物性(引張特性、耐熱性、耐熱水性)の評価を行った。
【0199】
[ウレタン硬化被膜の作製]
まず、上記で得られた組成物と、ポリイソシアネート成分(C-2612)と、ウレタン化触媒と、リン化合物(JP508)と、希釈溶剤とを、表8、表9及び表10に記載の配合(単位:g)で、200mLのガラス瓶で混合した。混合直後に、混合液を離型紙上に流し、バーコーターにて厚さ200μmのフィルムになるようにキャストした。次いで、キャストされた膜を25℃で30分、50℃で30分、80℃で30分、120℃で1時間、及び、50℃で18時間の条件で加熱することにより硬化させ、ウレタン硬化被膜(フィルム)を得た。
【0200】
[引張特性100%モジュラス評価]
得られたフィルムの引張特性及び100%モジュラス特性をJIS K6251に準拠して、以下の条件で測定した。(100%モジュラス、破断時強度、破断時伸び)
-条件-
・試験装置:テンシロンUTA-500(エー・アンド・デー社製)
・測定条件:25℃×50%RH
・ヘッドスピード:200mm/分
・ダンベル4号
【0201】
[軟化温度]
得られたフィルムからダンベルを用いて試験片を得た後、試験片に2cmの標線を記し、標線中央部の厚みを測定した。試験片の一方のつかみ部に所定重量のおもりを取り付け、もう一方のつかみ部をダブルクリップで挟み込み、クリップが上側となるように乾燥機内に吊り下げた後、乾燥機内を昇温し標線間距離を観測、標線間距離が4cmとなったときの温度を軟化温度として読み取った。
・処理装置:送風定温乾燥機DRK633DA(アドバンテック社製)
・おもり重量:標線中央部厚み(μm)×0.05g
・ダンベル2号(JIS K6251準拠)
・昇温速度:5℃/分
【0202】
[ガラス転移温度]
得られたフィルムからダンベルを用いて試験片(幅0.4cm、長さ2.5cm)を得た後、標線中央部の厚み(約100~200μm)を測定した。ガラス転移温度は得られる損失弾性率(E”)/貯蔵弾性率(E’)=tanδのピークトップの温度とした。
-条件-
・処理装置:RHEOVIBRON DDV-01GP Dynamic Viscoelastomeret (オリエンテック社製)
・範囲:-50~40℃
・昇温速度:3℃/分
・周波数:35Hz
・振幅:16μm
・静的張力:5.00gf
【0203】
[耐熱水性評価]
得られたフィルムを水に浸した状態で90℃の恒温器に28日間放置し、試験体とした。その後、各試験体について外観を目視にて評した。試験装置としては、ESPEC CORP(エスペック社製)を用いた。試験前のフィルム外観に対する、試験後のフィルム外観の変化を、A、B、C及びD(A:変化なし、B:変形あり、C:白色、D:溶解)で評価した。
良好なポリウレタンフィルムである場合は、耐水試験後もフィルム形状が維持される。耐水試験ではポリウレタンの再配向及び分解が同時に促進される。耐水試験後のフィルム外観に変形がある場合はポリウレタンの再配向の進行が示唆され、著しく再配向が進行するとフィルムは白化を起こす。また、ポリウレタン中のカーボネート結合の分解によりフィルムが溶解する場合もある。
【0204】
[評価基準]
100%モジュラス、破断強度、破断伸び、軟化温度、ガラス転移温度及び耐熱水性(90℃耐水性)の各物性値を、A、B、C、D及びE(A:非常に良好、B:特に良好、C:良好、D:普通、E:不良)で評価した。加えて、総合評価はA、B、C、D及びE(A:非常に良好、B:特に良好、C:良好、D:普通、E:不良)とした。
<100%モジュラス>
A:1.2MPa以上3.2MPa以下
D:1.2MPa未満
E:3.2MPa超
<破断強度>
A:11MPa超
D:11MPa以下
<破断伸び>
A:300MPa以上
B:300MPa未満
<軟化温度>
A:210℃超
D:190℃以上210℃以下
E:190℃未満
<総合評価>
A:各物性値の評価がAのみ
B:各物性値の評価がC、D及びEを含まず、少なくともBを含む
C:各物性値の評価がD及びEを含まず、少なくともCを含む
D:各物性値の評価がEを含まず、少なくともDを含む
E:各物性値の評価がEを含む
【0205】
【表8】

【表9】

【表10】
【0206】
実施例において使用した材料の詳細は以下のとおりである。
・1,6-ヘキサンジオール:BASF-JAPAN社製
・1,4-ブタンジオール:東京化成工業社製
・3-メチル1,5-ペンタンジオール:富士フイルム和光純薬社製
・トリメチロールプロパン:Sigma-Aldrich社製
・炭酸ジエチル:Sigma-Aldrich社製
・炭酸水素カリウム:富士フイルム和光純薬社製
・テトラブチルチタネート:東京化成工業社製
・N-980N、N-980R:ポリカーボネートジオール(数平均分子量=2000、水酸基価=56.1、官能基数=2、1,6-ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール) 東ソー社製
・プラクセル220:ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量=2000、水酸基価=56.1、官能基数=2) ダイセル社製
・プラクセル210:ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量=1000、水酸基価=112、官能基数=2) ダイセル社製
・N-135:ポリエステルポリオール(数平均分子量=2600、水酸基価=43.1、官能基数=2、アジピン酸/1,4-ブタンジオール系ポリエステルジオール) 東ソー社製
・プラクセル320:ポリカプロラクトントリオール(数平均分子量=2000、水酸基価=84.2、官能基数=3) ダイセル社製
・プラクセル305:ポリカプロラクトントリオール(数平均分子量=550、水酸基価=305、官能基数=3) ダイセル社製
・3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン:東京化成工業社製
・N-982R:ポリカーボネートジオール(数平均分子量=2000、水酸基価=56.1、官能基数=2、1,6-ヘキサンジオール/エステル共重合系ポリカーボネートジオール) 東ソー社製
・リチウムアセチルアセトナート:Sigma-Aldrich社製
・酢酸バリウム:富士フイルム和光純薬社製
・JP-508:商品名、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、城北化学工業社製
・C-2612:コロネート2612(商品名)、ヘキサメチレンジイソシアネートアダクト変性ポリイソシアネート、イソシアネート含量=17.2%、東ソー社製
・DOTDL:ジオクチル+スズジラウレート、キシダ化学工業社製
・BYK-331:シリコン系表面調整剤、BYK社製
・メチルエチルケトン:丸善石油化学社製
・トルエン:富士フイルム和光純薬社製

図1
図2