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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040468
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】装置および膜厚ムラ検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20240315BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
G01B11/06 H
G01N21/84 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021218
(22)【出願日】2024-02-15
(62)【分割の表示】P 2022540278の分割
【原出願日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2020128373
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】吉林 光司
(57)【要約】
【課題】膜厚ムラの検出精度に優れた装置を提供する。
【解決手段】支持体の表面に形成された、波長400~750nmの範囲内に透過帯域が存在する膜を検査する装置であって、支持体を保持するステージと、膜に光を照射する光照射システムと、膜からの反射光を受光する撮像装置と、を有し、撮像装置は、膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を受光する撮像装置であり、光照射システムは、光源およびバンドパスフィルタを有し、バンドパスフィルタは、透過率が50%以上で帯域幅が30nm以上である透過帯域tb1と、透過率が50%未満で帯域幅が80nm以上である遮光帯域sb1とを有し、透過帯域tb1は膜の透過帯域の波長を含み、かつ、膜の分光透過率のピーク波長が含まれ、透過帯域tb1および遮光帯域sb1とをそれぞれ波長400~750nmの範囲内に1個のみ有するフィルタである、装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の表面に形成された、波長400~750nmの範囲内に透過帯域が存在する膜を検査する装置であって、
前記支持体を保持するステージと、
前記膜に光を照射する光照射システムと、
前記膜からの反射光を受光する撮像装置と、を有し、
前記撮像装置は、前記膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を受光する撮像装置であり、
前記光照射システムは、光源およびバンドパスフィルタを有し、
前記バンドパスフィルタは、透過率が50%以上で帯域幅が30nm以上である透過帯域tb1と、透過率が50%未満で帯域幅が80nm以上である遮光帯域sb1とを有し、前記透過帯域tb1は前記膜の透過帯域の波長を含み、かつ、前記膜の分光透過率のピーク波長が含まれ、前記透過帯域tb1および前記遮光帯域sb1とをそれぞれ波長400~750nmの範囲内に1個のみ有するフィルタである、
装置。
【請求項2】
前記膜の膜厚ムラを検査する装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ステージは、支持体の搬送機構を備え、
前記光照射システムは、前記ステージに向けて光が照射されるように構成されており、
前記搬送機構は、前記支持体が前記光照射システムから照射される光の照射エリアを通過するように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記光照射システムは、白色光源と、照射ヘッドと、前記白色光源からの光を照射ヘッドへ伝送する光伝送路と、前記光伝送路上に設けられた前記バンドパスフィルタと、を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記光照射システムは、白色光源と、照射ヘッドと、前記白色光源からの光を照射ヘッドへ伝送する光伝送路と、前記光伝送路上に設けられた前記バンドパスフィルタと、バンドパスフィルタ切り替え器を有し、前記バンドパスフィルタ切り替え器は、前記膜の分光特性に応じて、所望の分光特性を満たすバンドパスフィルタを光伝送路上に配置するように制御されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
更に、前記光伝送路上に紫外線カットフィルタを有する、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
支持体の表面に形成された、波長400~750nmの範囲内に透過帯域を有する膜の、膜厚ムラ検査方法であって、
透過率が50%以上で帯域幅が30nm以上である透過帯域tb1と、透過率が50%未満で帯域幅が80nm以上である遮光帯域sb1とを有し、前記透過帯域tb1は前記膜の透過帯域の波長を含み、かつ、前記膜の分光透過率のピーク波長が含まれ、前記透過帯域tb1および前記遮光帯域sb1とをそれぞれ波長400~750nmの範囲内に1個のみ有するバンドパスフィルタを通過した光を前記膜に照射し、
前記膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を撮像装置で受光して撮像し、前記膜の膜厚ムラを検査する、膜厚ムラ検査方法。
【請求項8】
前記バンドパスフィルタと紫外線カットフィルタとをそれぞれ通過した光を前記膜に照射する、請求項7に記載の膜厚ムラ検査方法。
【請求項9】
前記膜は着色剤を含む膜である、請求項7または8に記載の膜厚ムラ検査方法。
【請求項10】
前記膜は、波長400~480nmの光の透過率が50%以上で、波長550~750nmの光の透過率が20%以下であり、
前記バンドパスフィルタは、前記透過帯域tb1の少なくとも一部が波長400~480nmの範囲内に存在し、前記遮光帯域sb1の少なくとも一部が波長600~750nmの範囲内に存在する、請求項7~9のいずれか1項に記載の膜厚ムラ検査方法。
【請求項11】
前記膜は、波長520~560nmの光の透過率が50%以上で、波長400~450nmおよび波長650~670nmの光の透過率が20%以下であり、
前記バンドパスフィルタは、前記透過帯域tb1の少なくとも一部が波長520~560nmの範囲内に存在し、前記遮光帯域sb1の少なくとも一部が波長400~450nmの範囲内に存在する、請求項7~9のいずれか1項に記載の膜厚ムラ検査方法。
【請求項12】
前記膜は、波長600~700nmの光の透過率が50%以上で、波長400~550nmの光の透過率が20%以下であり、
前記バンドパスフィルタは、前記透過帯域tb1の少なくとも一部が波長600~700nmの範囲内に存在し、前記遮光帯域sb1の少なくとも一部が波長400~550nmの範囲内に存在する、請求項7~9のいずれか1項に記載の膜厚ムラ検査方法。
【請求項13】
前記膜は感光性膜である、請求項7~12のいずれか1項に記載の膜厚ムラ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜の検査に用いられる装置に関する。さらに詳しくは膜厚ムラの検査装置に関する。また、本発明は膜厚ムラの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜の厚みムラの検査方法の一つとして、支持体上に形成された膜に光を照射し、膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を撮像装置で受光して撮像し、膜の膜厚ムラを検査する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、支持体に形成された青色の着色層に照明光を照射し、膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光をバンドパスフィルタを通過させ、所定のバンドパスフィルタを通過した光(検査波長の光)をラインセンサカメラなどの撮影手段にて撮影して撮影画像データを得て、その撮影画像データを用いて青色の着色層の膜厚変化を抽出して膜厚ムラを検査する方法が記載されている。特許文献1では、上記バンドパスフィルタとして、最大透過%を示す波長近傍の波長域に青色の着色層の透過スペクトルが相対的に十分大きい波長域に含まれ、かつ、半値幅が10nm以下であるものが用いられている。また、光源には、波長480~490nmに発光スペクトルのピークを有する蛍光灯などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-114125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、固体撮像素子などの機器についての小型化が進んでいる。それに伴い、これらの機器に用いられる膜についても更なる薄膜化が進んでいる。膜厚が薄くなるに伴い、膜の厚みムラによる性能のばらつきが大きくなる傾向にある。このため、近年では、膜厚ムラを精度よく検出することが求められている。
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、従来の方法では、膜厚ムラの検出精度は十分とは言えず、さらなる改善の余地があることが分かった。また、本発明者の検討によれば、特許文献1に記載された方法であっても、膜厚ムラの検出精度についてさらなる改善の余地があることが分かった。
【0007】
よって、本発明の目的は、膜厚ムラの検出精度に優れた装置、および、膜厚ムラの検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者の検討によれば、以下に示す構成とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
<1> 支持体の表面に形成された、波長400~750nmの範囲内に透過帯域が存在する膜を検査する装置であって、
上記支持体を保持するステージと、
上記膜に光を照射する光照射システムと、
上記膜からの反射光を受光する撮像装置と、を有し、
上記光照射システムは、光源およびバンドパスフィルタを有し、
上記バンドパスフィルタは、透過率が50%以上で帯域幅が30nm以上である透過帯域tb1と、透過率が50%未満で帯域幅が80nm以上である遮光帯域sb1とを有し、上記透過帯域tb1は上記膜の透過帯域の波長を含み、上記透過帯域tb1および上記遮光帯域sb1とをそれぞれ波長400~750nmの範囲内に有するフィルタである、
装置。
<2> 上記膜の膜厚ムラを検査する装置である、<1>に記載の装置。
<3> 上記撮像装置は、上記膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を受光する撮像装置である、<1>または<2>に記載の装置。
<4> 上記バンドパスフィルタの透過帯域tb1には、上記膜の分光透過率のピーク波長が含まれる、<1>~<3>のいずれか1つに記載の装置。
<5> 上記ステージは、支持体の搬送機構を備え、
上記光照射システムは、上記ステージに向けて光が照射されるように構成されており、
上記搬送機構は、上記支持体が上記光照射システムから照射される光の照射エリアを通過するように構成されている、<1>~<4>のいずれか1つに記載の装置。
<6> 上記光照射システムは、白色光源と、照射ヘッドと、上記白色光源からの光を照射ヘッドへ伝送する光伝送路と、上記光伝送路上に設けられた上記バンドパスフィルタと、を有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の装置。
<7> 更に、上記光伝送路上に紫外線カットフィルタを有する、<6>に記載の装置。
<8> 支持体の表面に形成された、波長400~750nmの範囲内に透過帯域を有する膜の、膜厚ムラ検査方法であって、
透過率が50%以上で帯域幅が30nm以上である透過帯域tb1と、透過率が50%未満で帯域幅が80nm以上である遮光帯域sb1とを有し、上記透過帯域tb1は上記膜の透過帯域の波長を含み、上記透過帯域tb1および上記遮光帯域sb1とをそれぞれ波長400~750nmの範囲内に有するバンドパスフィルタを通過した光を上記膜に照射し、
上記膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を撮像装置で受光して撮像し、上記膜の膜厚ムラを検査する、膜厚ムラ検査方法。
<9> 上記バンドパスフィルタと紫外線カットフィルタとをそれぞれ通過した光を上記膜に照射する、<8>に記載の膜厚ムラ検査方法。
<10> 上記バンドパスフィルタの透過帯域tb1には、上記膜の分光透過率のピーク波長が含まれる、<8>または<9>に記載の膜厚ムラ検査方法。
<11> 上記膜は着色剤を含む膜である、<8>~<10>のいずれか1つに記載の膜厚ムラ検査方法。
<12> 上記膜は、波長400~480nmの光の透過率が50%以上で、波長550~750nmの光の透過率が20%以下であり、
上記バンドパスフィルタは、上記透過帯域tb1の少なくとも一部が波長400~480nmの範囲内に存在し、上記遮光帯域sb1の少なくとも一部が波長600~750nmの範囲内に存在する、<8>~<11>のいずれか1つに記載の膜厚ムラ検査方法。
<13> 上記膜は、波長520~560nmの光の透過率が50%以上で、波長400~450nmおよび波長650~670nmの光の透過率が20%以下であり、
上記バンドパスフィルタは、上記透過帯域tb1の少なくとも一部が波長520~560nmの範囲内に存在し、上記遮光帯域sb1の少なくとも一部が波長400~450nmの範囲内に存在する、<8>~<11>のいずれか1つに記載の膜厚ムラ検査方法。
<14> 上記膜は、波長600~700nmの光の透過率が50%以上で、波長400~550nmの光の透過率が20%以下であり、
上記バンドパスフィルタは、上記透過帯域tb1の少なくとも一部が波長600~700nmの範囲内に存在し、上記遮光帯域sb1の少なくとも一部が波長400~550nmの範囲内に存在する、<8>~<11>のいずれか1つに記載の膜厚ムラ検査方法。
<15> 上記膜は感光性膜である、<8>~<14>のいずれか1つに記載の膜厚ムラ検査方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膜厚ムラの検出精度に優れた装置、および、膜厚ムラの検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の装置の概略図である。
図2】試験例1における緑色膜とバンドパスフィルタ1-1~1-3の分光特性を示す図である。
図3】試験例1における赤色膜とバンドパスフィルタ1-1~1-3の分光特性を示す図である。
図4】試験例2における青色膜とバンドパスフィルタ2-1~2-5の分光特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
【0012】
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
<装置>
本発明の装置は、支持体の表面に形成された、波長400~750nmの範囲内に透過帯域が存在する膜を検査する装置であって、
支持体を保持するステージと、
膜に光を照射する光照射システムと、
膜からの反射光を受光する撮像装置と、を有し、
光照射システムは、光源およびバンドパスフィルタを有し、
上記バンドパスフィルタは、透過率が50%以上で帯域幅が30nm以上である透過帯域tb1と、透過率が50%未満で帯域幅が80nm以上である遮光帯域sb1とを有し、上記透過帯域tb1は上記膜の透過帯域の波長を含み、上記透過帯域tb1および上記遮光帯域sb1とをそれぞれ波長400~750nmの範囲内に有するフィルタである、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の装置では、上記特定の分光特性を有するバンドパスフィルタを透過した光を膜に照射するので、検査対象の膜の透過帯域の波長を含む光を検査対象の膜に照射することができる。このため、検査対象の膜の透過帯域近傍の反射光を撮像装置で受光させることができる。検査対象の膜に膜厚にムラがある場合、膜厚の違いにより反射光の濃淡が発生して輝度ムラとして検出される。そして、本発明の装置によれば検査対象の膜の透過帯域近傍の反射光の比重の高い光を撮像装置で受光させることができので、ノイズとなる膜の遮光領域の表面反射光の影響が少なく、反射光の濃淡差のより鮮明な画像を得ることができる。このため、本発明の装置によれば、膜の厚みムラを精度よく検出することができる。よって、本発明の装置は、膜の膜厚ムラを検査する装置として好ましく用いられる。
【0015】
なお、本明細書において、バンドパスフィルタの透過帯域tb1の帯域幅とは、バンドパスフィルタの透過帯域tb1の波長の幅のことを意味する。また、バンドパスフィルタの遮光帯域sb1の帯域幅とは、バンドパスフィルタの遮光帯域sb1の波長の幅のことを意味する。例えば、波長400~490nmの光の透過率が50%以上で、波長510~750nmの光の透過率が50%未満であるバンドパスフィルタの場合は、透過帯域tb1の帯域幅は90nmであり、遮光帯域sb1の帯域幅は240nmである。
【0016】
本発明の装置における検査対象の膜としては、波長400~750nmの範囲内に透過帯域が存在する膜であれば特に限定はない。波長400~750nmの範囲全体が透過帯域である膜であってもよく、波長400~750nmの範囲内に透過帯域と遮光帯域とがそれぞれ存在する膜であってもよい。波長400~750nmの範囲全体が透過帯域である膜としては、透明膜、可視光透過し赤外領域の波長の光を遮光する膜(赤外線カットフィルタなど)、半透過膜(全域にわたり50~60%程度の透過特性を持つ膜)などが挙げられる。波長400~750nmの範囲内に透過帯域と遮光帯域とがそれぞれ存在する膜としては、着色剤を含む膜などが挙げられる。着色剤の種類としては、特に限定はない。赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤などの有彩色着色剤が挙げられる。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料と染料とを併用してもよい。着色剤を含む膜の具体例としては、例えば、赤色膜、青色膜、緑色膜、黄色膜、シアン色膜、マゼンタ色膜などが挙げられる。波長400~750nmの範囲内に透過帯域と遮光帯域とがそれぞれ存在する膜の場合、従来は膜厚ムラの検査が困難であったが、本発明の装置によれば、このような膜であっても膜厚ムラを精度よく検査できるので、このような膜の検査を行う場合において特に効果的である。
【0017】
検査対象の膜における上記透過帯域の透過率は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。検査対象の膜における上記透過帯域の帯域幅は、特に限定はないが、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
【0018】
また、上記波長400~750nmの範囲内に透過帯域と遮光帯域とがそれぞれ存在する膜における遮光帯域の透過率は50%未満であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。遮光帯域の帯域幅は、特に限定はないが、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。
【0019】
検査対象の膜の膜厚は、0.01~20μmであることが好ましく、0.05~10μmであることがより好ましく、0.10~5μmであることが更に好ましい。
【0020】
検査対象の膜の一例として、波長400~480nmの光の透過率が50%以上で、波長550~750nmの光の透過率が20%以下である分光特性を有する膜が挙げられる。このような分光特性を有する膜としては、青色膜、シアン色膜などが挙げられる。
【0021】
検査対象の膜の他の一例として、波長520~560nmの光の透過率が50%以上で、波長400~450nmおよび波長650~670nmの光の透過率が20%以下である分光特性を有する膜が挙げられる。このような分光特性を有する膜としては、緑色膜などが挙げられる。
【0022】
また、検査対象の膜の他の一例として、波長600~700nmの光の透過率が50%以上で、波長400~550nmの光の透過率が20%以下である分光特性を有する膜が挙げられる。このような分光特性を有する膜としては、赤色膜などが挙げられる。
【0023】
また、検査対象の膜は、感光性膜であってもよい。
【0024】
本発明の装置において、光照射システムが備える上記バンドパスフィルタは、検査対象の膜の分光特性に応じて適宜選択して用いられる。バンドパスフィルタの透過帯域tb1は波長400~750nmの範囲に1個のみ有していてもよく、2個以上有していてもよい。透過帯域tb1の数は1個または2個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。また、バンドパスフィルタの遮光帯域sb1は波長400~750nmの範囲に1個のみ有していてもよく、2個以上有していてもよい。遮光帯域sb1の数は1個または2個であることが好ましい。
【0025】
バンドパスフィルタの透過帯域tb1の帯域幅は30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、70nm以上であることが更に好ましい。また、バンドパスフィルタの透過帯域tb1には、検査対象の膜の分光透過率のピーク波長が含まれることが好ましい。この態様によれば、検査対象の膜に膜厚にムラがある場合において、撮像装置にてノイズの影響が少なく、反射光の濃淡差のより鮮明な画像を得ることができ、厚みムラをより精度よく検出することができる。
また、バンドパスフィルタの透過帯域tb1の透過率は50%以上であり、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0026】
バンドパスフィルタの遮光帯域sb1の帯域幅は50nm以上であることが好ましく、70nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることが更に好ましい。この態様によれば、検査対象の膜に膜厚にムラがある場合において、撮像装置にてノイズの影響が少なく、反射光の濃淡差のより鮮明な画像を得ることができ、厚みムラをより精度よく検出することができる。
また、バンドパスフィルタの遮光帯域sb1の透過率は50%未満であり、30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0027】
検査対象の膜とバンドパスフィルタの好ましい組み合わせとしては、例えば以下の(1)~(3)の組み合わせが挙げられる。
(1)検査対象の膜は、波長400~480nmの光の透過率が50%以上で、波長550~750nmの光の透過率が20%以下である分光特性を有する膜であり、
バンドパスフィルタは、透過帯域tb1の少なくとも一部が波長400~480nmの範囲内に存在し、遮光帯域sb1の少なくとも一部が波長600~750nmの範囲内に存在する分光特性を有するバンドパスフィルタである組み合わせ。
このバンドパスフィルタの透過帯域tb1および遮光帯域sb1はそれぞれ波長400~750nmの範囲に1個のみ有していることが好ましい。
(2)検査対象の膜は、波長520~560nmの光の透過率が50%以上で、波長400~450nmおよび波長650~670nmの光の透過率が20%以下である分光特性を有する膜であり、
バンドパスフィルタは、透過帯域tb1の少なくとも一部が波長520~560nmの範囲内に存在し、遮光帯域sb1の少なくとも一部が波長400~450nmの範囲内に存在するバンドパスフィルタである組み合わせ。
このバンドパスフィルタの透過帯域tb1は波長400~750nmの範囲に1個のみ有していることが好ましい。また、バンドパスフィルタの遮光帯域sb1は波長400~750nmの範囲に2個有していることが好ましい。短波長側の遮光帯域sb1aの少なくとも一部は波長400~450nmの範囲内に存在し、長波長側の遮光帯域sb1bの少なくとも一部は波長650~670nmの範囲内に存在することが好ましい。
(3)検査対象の膜は、波長600~700nmの光の透過率が50%以上で、波長400~550nmの光の透過率が20%以下である分光特性を有する膜であり、
バンドパスフィルタは、透過帯域tb1の少なくとも一部が波長600~700nmの範囲内に存在し、遮光帯域sb1の少なくとも一部が波長400~550nmの範囲内に存在するバンドパスフィルタである組み合わせ。
このバンドパスフィルタの透過帯域tb1および遮光帯域sb1はそれぞれ波長400~750nmの範囲に1個のみ有していることが好ましい。
【0028】
上記(1)におけるバンドパスフィルタは、波長400~480nmのいずれかの波長の光の透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましい。また、波長600~750nmのいずれかの波長の光の透過率が30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0029】
上記(2)におけるバンドパスフィルタは、波長520~560nmのいずれかの波長の光の透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましい。また、波長400~450nmのいずれかの波長の光の透過率が30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが特に好ましい。また、波長650~670nmのいずれかの波長の光の透過率が30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0030】
上記(3)におけるバンドパスフィルタは、波長600~700nmのいずれかの波長の光の透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましい。また、波長400~550nmのいずれかの波長の光の透過率が30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
【0031】
バンドパスフィルタは、着色剤を含む組成物を用いて形成したフィルタ、誘電体多層膜などが挙げられ、選択する透過波長の形成の自由度、透過波長のシャープネス性などの観から誘電体多層膜であることが好ましい。誘電体多層膜は、屈折率の異なる誘電体層(高屈折率材料層と低屈折率材料層)を、交互に2層以上積層してなる膜である。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料(好ましくは屈折率が1.7~2.5の材料)を用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウムなどを少量含有させた材料などが挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料(好ましくは屈折率が1.2~1.6の材料)を用いることができる。例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。誘電体多層膜の形成方法としては、特に制限はないが、例えば、CVD(chemical vapor deposition)法、スパッタ法、真空蒸着法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層して形成する方法が挙げられる。
【0032】
本発明の装置に用いられる光照射システムは更に紫外線カットフィルタを有していることが好ましい。この態様によれば、検査時に膜に紫外線が照射されることを防止できるので、検査対象の膜が感光性膜であっても、検査時に膜が感光することを防止できる。
【0033】
紫外線カットフィルタは、波長300~400nmの光の透過率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。また、波長450~750nmの光の透過率は50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。また、波長430nmの光の透過率は50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
【0034】
紫外線カットフィルタは、紫外線吸収剤を含む組成物を用いて形成したフィルタ、誘電体多層膜などが挙げられる。
【0035】
本発明の装置における光照射システムとしては、白色光源と、照射ヘッドと、白色光源からの光を照射ヘッドへ伝送する光伝送路と、光伝送路上に設けられた上記バンドパスフィルタと、を有するものが挙げられる。
【0036】
白色光源としては、白色LED(発光ダイオード)、ハロゲンランプ、キセノンランプ、水銀ランプ、蛍光灯、レーザー励起白色光源などが挙げられる。
【0037】
光伝送路としては、白色光源からの光を光照射器へ伝送する機能を備えたものであれは特に限定はなく、光ファイバーなどが挙げられる。
【0038】
照射ヘッドとしては、光を照射する機構を備えた部材であれば特に限定はない。また、照射ヘッドには光学レンズが配置されていてもよい。光学レンズとしては、ロッドレンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、半球レンズ、非球面レンズ、ボールレンズ、シリルドリカルレンズ、フライアイレンズなどが挙げられる。また、光学レンズの材質としては、ガラス、石英、透明樹脂などが挙げられ、耐光性の観点から石英であることが好ましい。また、光学レンズには、光量均一化処理(すりガラス化など)が施しされていることが好ましい。この態様によれば、照射ムラを抑制することができ、膜厚ムラをより精度よく検査できる。
【0039】
光照射システムの上記光伝送路上には、更に、紫外線カットフィルタが設けられていることが好ましい。この場合、紫外線カットフィルタはバンドパスフィルタよりも光源に近い側に設けられていてもよいが、バンドパスフィルタと光源のユニット化による装置の小型化を図ることができるという理由から、バンドパスフィルタよりも光源から遠い側(すなわち、照射ヘッドに近い側)に設けられていることが好ましい。
【0040】
光照射システムは、更にバンドパスフィルタ切り替え器を有することも好ましい。この態様によれば、検査対象の膜の分光特性に応じてバンドパスフィルタを容易に変更することができる。バンドパスフィルタ切り替え器としては、リボルバー方式の切り替え器、スライド機構などが挙げられる。
【0041】
また、バンドパスフィルタ切り替え器は、検査対象の膜の分光特性に応じて、所望の分光特性を満たすバンドパスフィルタを光伝送路上に配置するように制御されていることが好ましい。すなわち、バンドパスフィルタ切り替え器は、制御装置を有し、この制御装置は、データベースに記録されたバンドパスフィルタの分光特性と、検査対象の膜の分光特性とを比較して、透過率が50%以上で帯域幅が30nm以上で、かつ、検査対象の膜の透過帯域の波長を含む透過帯域tb1と、透過率が50%未満で帯域幅が80nm以上である遮光帯域sb1とをそれぞれ波長400~750nmの範囲内に有するバンドパスフィルタを光伝送路上に配置するようにバンドパスフィルタ切り替え器におけるバンドパスフィルタの切り替えを制御するように構成されていることが好ましい。
【0042】
本発明の装置において、光照射システムは、膜に対して斜め方向から光を照射するように構成されていることが好ましい。照射光の照射角度は、膜厚、膜の分光特性などに応じて適宜選択することができる。例えば、照射角度は20~60度であることが好ましく、30~50度であることがより好ましく、35~45度であることが更に好ましい。なお、本明細書において照射光の照射角度とは、膜面の法線と照射光とのなす角度(図1におけるθ1)のことである。
【0043】
本発明の装置に用いられる撮像装置としては、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)などの可視光領域で十分な感度をもつ撮像素子を受光素子として備える装置が用いられる。撮像装置は、膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を受光する撮像装置であることが好ましい。撮像装置の具体例としては、ラインスキャンカメラ、エリアセンサなどが挙げられる。
【0044】
膜の反射光の反射角度は、膜厚、膜の分光特性、照射光の入射角度などにより異なるが20~60度であることが好ましく、30~50度であることがより好ましく、35~45度であることが更に好ましい。なお、本明細書において反射光の反射角度とは、膜面の法線と反射光とのなす角度(図1におけるθ2)のことである。
【0045】
本発明の装置において、撮像装置は1台のみであってもよく、2台以上有していてもよい。2台以上の撮像装置を有する場合においては、例えば、一方の撮像装置で検査対象の膜の所定の部位を拡大して検査し、他方の撮像装置で検査対象の膜の全体を検査することができる。すなわち、膜の特定の部位を拡大した画像のデータと、膜の全体の画像のデータとを取得することができる。また、膜全体の検査と、膜の所定の部位の検査との切り替えを容易に行うこともできる。また、本発明の装置は、光照射システムが所定のバンドパスフィルタを有しているので、2台以上の撮像装置を有している場合であっても、撮像装置ごとにバンドパスフィルタを用意する必要がなく、設備のコンパクト化とコスト抑制を達成することができる。
【0046】
本発明の装置が撮像装置を2台以上有している場合には、撮像装置の切り替え器を有していることが好ましい。撮像装置の切り替え器としては、撮像装置のセット位置を別置きとし、測定対象物をセットしたステージの位置により撮像を切り替えるように構成された装置などが挙げられる。撮像の切り替えはソフトにより制御することができる。
【0047】
本発明の装置において、支持体を保持するステージとしては、支持体の搬送機構を備えたステージ(リニアステージ)であることが好ましい。また、ステージが上記搬送機構を備えている場合、光照射システムは、ステージに向けて光が照射されるように構成され、上記搬送機構は支持体が光照射システムから照射される光の照射エリアを通過するように構成されていることが好ましい。この態様によれば、照射エリアを支持体が通過する際に、逐次変化する反射光強度を撮像装置で受光させることができ、連続的に膜を検査することができる。また、照射エリアの通過速度(スキャンレート)を調整することで検出感度を調整することができる。例えば、スキャンレートが低速度であると単位時間当たりのスキャン面積が少なくなるため、単位面積当たりの輝度が多くなり、検出感度を向上させることができる。
【0048】
駆動機構を備えたステージとしては、モーター駆動リニアステージ、ベルトコンベア、頃コンベア、エアステージなどが挙げられる。
【0049】
上記ステージは、支持体の固定機構を有していることが好ましい。この態様によれば、支持体の移動時などにおける振動の発生を抑制でき、膜厚ムラをより精度よく検査できる。固定機構としては、真空チャック、治具、静電吸着などが挙げられ、真空チャックであることが好ましい。
【0050】
本発明の装置は、光照射システムからの照射光以外の光が迷光として撮像装置に映りこまないよう、外光を遮断する構造とされていることが好ましい。すなわち、遮光ボックス内に、支持体を保持するステージと、光照射システムの照射ヘッドと、撮像装置の受光部とが少なくとも配置されていることが好ましい。
【0051】
以下、本発明の装置の具体例について図1を用いて説明する。図1に示す装置は、遮光ボックス400内に、膜11が形成された支持体10を保持するステージ100と、膜に光を照射する光照射システム200と、撮像装置300とがそれぞれ配置されている。図1では、ステージ100上に支持体10が保持された状態を示している。なお、図1の符号1100は膜面の法線であり、符号1200は照射光であり、符号1300は反射光であり、θ1は照射光1200の照射角度であり、θ2は反射光1300の反射角度である。
【0052】
図示しないが、図1において、ステージ100の支持体10の保持面には真空チャックが形成されており、真空チャックによって支持体10がステージ100上に吸着して保持される。
【0053】
また、図示しないが、ステージ100は支持体10の搬送機構を備えており、搬送機構によって支持体10が搬送されて、ステージ100上の光照射システム200から照射される光の照射エリアを通過するように構成されている。矢印1000は支持体10の搬送方向である。
【0054】
図1に示す装置の光照射システム200は、白色光源201と、照射ヘッド202と、白色光源201からの光を照射ヘッド202へ伝送する光伝送路210とを備えている。そして、光伝送路210上には、バンドパスフィルタ221と、紫外線カットフィルタ222とがそれぞれ配置されている。バンドパスフィルタ221は、波長400~750nmの範囲に上述した所定の透過帯域tb1と遮光帯域sb1とがそれぞれ存在する分光特性を有するフィルタである。また、図示しないが、この光照射システム200はバンドパスフィルタ切り替え器を備えている。バンドパスフィルタ切り替え器は、検査対象の膜の分光特性に応じて、所望の分光特性を満たすバンドパスフィルタを光伝送路210上に配置するように制御されている。
【0055】
なお、図1では、光照射システム200は、バンドパスフィルタ221の方が紫外線カットフィルタ222よりも光源に近い位置に配置されているが、紫外線カットフィルタ222とバンドパスフィルタ221の順序を入れ替えて配置してもよい。また、紫外線カットフィルタ222を省略してもよい。
【0056】
図1に示す装置では、光照射システム200の照射ヘッド202から、膜11に対して斜め方向から光が照射される。照射光1200の照射角度θ1は、照射ヘッド202の傾きを変えることで調整することができる。
【0057】
図1に示す装置では、撮像装置300は1台であるが、2台以上備えていてもよい。
【0058】
<膜厚ムラ検査方法>
次に、本発明の膜厚ムラ検査方法について説明する。
本発明の膜厚ムラ検査方法は、支持体の表面に形成された、波長400~750nmの範囲内に透過帯域を有する膜の、膜厚ムラ検査方法であって、
透過率が50%以上で帯域幅が30nm以上である透過帯域tb1と、透過率が50%未満で帯域幅が80nm以上である遮光帯域sb1とを有し、上記透過帯域tb1は上記膜の透過帯域の波長を含み、上記透過帯域tb1および上記遮光帯域sb1とをそれぞれ波長400~750nmの範囲内に有するバンドパスフィルタを通過した光を上記膜に照射し、
膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を撮像装置で受光して撮像し、膜の膜厚ムラを検査する。
【0059】
本発明の膜厚ムラ検査方法の検査対象の膜、および、膜厚ムラ検査方法に用いるバンドパスフィルタについては、上述した装置で説明したものが挙げられる。バンドパスフィルタは、検査対象の膜の分光特性に応じて適宜選択して用いる。検査対象の膜とバンドパスフィルタの好ましい組み合わせとしては、上述した(1)~(3)の組み合わせが挙げられる。
【0060】
膜が形成されている支持体の種類としては、特に限定は無く、適宜選択することができる。例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板などの各種基板が挙げられる。また、これらの基板の表面には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、有機膜、無機膜などが形成されていてもよい。
【0061】
本発明の膜厚ムラ検査方法では、上記膜への光照射側に更に紫外線カットフィルタを配置して、バンドパスフィルタと紫外線カットフィルタとをそれぞれ通過した光を上記膜に照射することが好ましい。この態様によれば、検査時に膜に紫外線が照射されることを防止できるので、検査対象の膜が感光性膜であっても、検査時に膜が感光することを防止できる。紫外線カットフィルタとしては、上述した装置で説明したものが挙げられる。
【0062】
膜への光(照射光)の照射角度は、膜厚、膜の分光特性などに応じて適宜選択することができる。例えば、照射角度は20~60度であることが好ましく、30~50度であることがより好ましく、35~45度であることが更に好ましい。
【0063】
照射光のスキャンレートは、0.2~30.0mm/秒であることが好ましく、0.5~20.0mm/秒であることがより好ましく、1.0~10.0mm/秒であることが更に好ましい。
【0064】
本発明の膜厚ムラ検査方法では、撮像装置で撮像して得られた撮影画像を画像処理して用いることが好ましい。画像処理としては、周知の画像処理が挙げられる。例えば、撮影して得られた撮影画像データに対して、シェーディング補正処理、ノイズ除去のための平滑化処理を施し、処理用の画像データを得た後、得られた処理用の画像データについて、画素毎にその光強度値を所定の閾値で2値化し、2値化画像データを得る処理が挙げられる。
【0065】
本発明の膜厚ムラ検査方法では、撮像装置での反射光の受光は、外光を遮光した状態で行うことが好ましい。この態様によれば、照射光以外の光が迷光として撮像装置での撮影画像に映り込むことを抑制でき、膜厚ムラをより精度よく検出することができる。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
<試験例1>
直径200mmのシリコン基板に段差の0.8μmを形成した。段差を形成したシリコン基板上に緑色着色組成物または赤色着色組成物をそれぞれスピンコートし、100℃で120秒のプリベークを行い厚さ0.5μmの各色の膜(緑色膜、赤色膜)を形成した。形成した緑色膜および赤色膜の分光特性を図2、3に示す。形成した緑色膜の波長520~560nmの光の透過率は50%以上であり、波長400~450nmおよび波長650~670nmの光の透過率が20%以下であった。また、形成した赤色膜の波長600~700nmの光の透過率は50%以上であり、波長400~550nmの光の透過率が20%以下であった。
次に、各膜を形成したシリコンウエハを外光が遮光された遮光ボックス内に配置されたリニアステージ上に配置し、各膜に対して、以下の光照射システム1-1~1-4から膜に光を照射(照射角度:40±5度、スキャンレート:1mm/秒)し、膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を4098画素のモノクロラインスキャンカメラ(倍率20倍)を用いて撮像した。得られた画像を用いて厚みムラを検査した。
なお、スキャンレートはシリコン基板の搬送速度である。以下の基準でAまたはBであれば実用上使用できるレベルである。
A:厚みムラをきわめて鮮明に観察できる
B:厚みムラを十分に観察できる
C:厚みムラを観察できるが微量である
D:厚みムラをほとんど観察できない
【0068】
(光照射システム1-1)
光源である白色LED(発光ダイオード)と、照射ヘッドであるロッドレンズ(材質:石英)とが光ファイバーで接続され、光源と照射ヘッドとを接続する光ファイバー間にバンドパスフィルタ1-1と紫外線カットフィルタ1-1とがそれぞれ配置された光照射システム。バンドパスフィルタ1-1は、波長520~560nmの光の透過率が50%以上で、波長400~510nmおよび波長570~750nmの光の透過率が50%未満であった。バンドパスフィルタ1-1の分光特性を図2、3に示す。紫外線カットフィルタ1-1の分光特性は、波長300~400nmの光の透過率が0.1%以下で、波長430~750nmの光の透過率が90%以上であった。
【0069】
(光照射システム1-2)
光照射システム1-1においてバンドパスフィルタ1-1のかわりにバンドパスフィルタ1-2を用いた光照射システム。バンドパスフィルタ1-2は、波長615~750nmの光の透過率が50%以上で、波長400~600nmの光の透過率が50%未満であった。バンドパスフィルタ1-2の分光特性を図2、3に示す。
【0070】
(光照射システム1-3)
光照射システム1-1においてバンドパスフィルタ1-1のかわりにバンドパスフィルタ1-3を用いた光照射システム。バンドパスフィルタ1-3は、波長520~750nmの光の透過率が50%以上で、波長400~500nmの光の透過率が50%未満であった。バンドパスフィルタ1-3の分光特性を図2、3に示す。
【0071】
(光照射システム1-4)
光源である白色LED(発光ダイオード)と、光照射器であるロッドレンズ(材質:石英)とが光ファイバーで接続され、光源と光照射器とを接続する光ファイバー間に紫外線カットフィルタ1-1のみが配置された光照射システム。
【0072】
各膜の検査結果を下記表に記す。
【表1】
【0073】
上記表に示すように、緑色膜(波長520~560nmの光の透過率が50%以上で、波長400~450nmおよび波長650~670nmの光の透過率が20%以下である分光特性の膜)に対しては、透過帯域(透過率50%以上の波長帯域)の少なくとも一部が波長520~560nmの範囲内に存在し、遮光帯域(透過率50%未満の波長帯域)の少なくとも一部が波長400~450nmの範囲内に存在するバンドパスフィルタ1-1またはバンドパスフィルタ1-3を用いることで厚みムラを精度よく検出できた。
また、赤色膜(波長600~700nmの光の透過率が50%以上で、波長400~550nmの光の透過率が20%以下である分光特性の膜)に対しては、透過帯域の少なくとも一部が波長600~700nmの範囲内に存在し、遮光帯域の少なくとも一部が波長400~550nmの範囲内に存在するバンドパスフィルタ1-2またはバンドパスフィルタ1-3を用いることで厚みムラを精度よく検出できた。
【0074】
なお、図2、3に示す赤色膜の分光特性、緑色膜の分光特性、および各光照射システムに使用したバンドパスフィルタの分光特性は、大塚電子製分光測定機MCPD9800で測定した値である。
【0075】
<試験例2>
直径200mmのシリコン基板に段差の0.8μmを形成した。段差を形成したシリコン基板上に青色着色組成物を塗布し、100℃で120秒のプリベークを行い、厚さ0.6μmの青色膜を形成した。形成した青色膜の分光特性を図4に示す。形成した青色膜の波長400~480nmの光の透過率は50%以上であり、波長550~750nmの光の透過率は20%以下であった。
次に、青色膜を形成したシリコンウエハを外光が遮光された遮光ボックス内に配置されたリニアステージ上に配置し、青色膜に対して、以下の光照射システム2-1~2-5から膜に光を照射(照射角度:40±5度、スキャンレート:2mm/秒)し、膜の空気との界面および支持体との界面からの反射光の偏光成分を4098画素のモノクロラインスキャンカメラ(倍率20倍)を用いてシリコン基板上の膜の全体像を撮像し、得られた画像を用いて厚みムラを検査した。なお、スキャンレートはシリコン基板の搬送速度である。以下の基準でAまたはBであれば実用上使用できるレベルである。
A:厚みムラをきわめて鮮明に観察できる
B:厚みムラを十分に観察できる
C:厚みムラを観察できるが微量である
D:厚みムラをほとんど観察できない
【0076】
(光照射システム2-1)
光源である白色LED(発光ダイオード)と、照射ヘッドであるロッドレンズ(材質:石英)とが光ファイバーで接続され、光源と照射ヘッドとを接続する光ファイバー間にバンドパスフィルタ2-1と紫外線カットフィルタ1-1とがそれぞれ配置された光照射システム。バンドパスフィルタ2-1は、波長520~750nmの光の透過率が50%以上で、波長400~510nmの光の透過率が50%未満であった。バンドパスフィルタ2-1の分光特性を図4に示す。紫外線カットフィルタ1-1は、上述した光照射システム1-1で使用した紫外線カットフィルタ1-1と同じものである。
【0077】
(光照射システム2-2)
光照射システム2-1において、バンドパスフィルタ2-1のかわりにバンドパスフィルタ2-2を用いた光照射システム。バンドパスフィルタ2-2は、波長400~495nmの光の透過率が50%以上で、波長510~750nmの光の透過率が50%未満であった。バンドパスフィルタ2-2の分光特性を図4に示す。
【0078】
(光照射システム2-3)
光照射システム2-1において、バンドパスフィルタ2-1のかわりにバンドパスフィルタ2-3を用いた光照射システム。バンドパスフィルタ2-3は、波長400~470nmの光の透過率が50%以上で、波長480~750nmの光の透過率が50%未満であった。バンドパスフィルタ2-3の分光特性を図4に示す。
【0079】
(光照射システム2-4)
光照射システム2-1において、バンドパスフィルタ2-1のかわりにバンドパスフィルタ2-4を用いた光照射システム。バンドパスフィルタ2-4は、波長410~550nmの光の透過率が50%以上で、波長560~750nmの光の透過率が50%未満であった。バンドパスフィルタ2-4の分光特性を図4に示す。
【0080】
(光照射システム2-5)
光照射システム2-1において、バンドパスフィルタ2-1のかわりにバンドパスフィルタ2-5を用いた光照射システム。バンドパスフィルタ2-4は、波長400~550nmの光の透過率が50%以上で、波長560~750nmの光の透過率が50%未満であった。バンドパスフィルタ2-5の分光特性を図4に示す。
【0081】
なお、図4に示す青色膜の分光特性、緑色膜の分光特性、および各光照射システムに使用したバンドパスフィルタの分光特性は、大塚電子製分光測定機MCPD9800で測定した値である。
【0082】
検査結果を下記表に記す。
【表2】
【0083】
青色膜(波長400~480nmの光の透過率が50%以上で、波長550~750nmの光の透過率が20%以下の分光特性の膜)に対して、透過帯域(透過率50%以上の波長帯域)の少なくとも一部が波長400~480nmの範囲内に存在し、遮光帯域(透過率50%未満の波長帯域)の少なくとも一部が波長600~750nmの範囲内に存在するバンドパスフィルタ2-2~バンドパスフィルタ2-5を用いることで、厚みムラを精度よく検出できた。特に、バンドパスフィルタ2-2~バンドパスフィルタ2-4を用いた場合は、厚みムラの検出精度が良好であった。
これに対し、波長520~750nmの光の透過率が50%以上で、波長400~500nmの光の透過率が50%未満のバンドパスフィルタ2-1を用いた場合は厚みムラの検出が困難であった。
【符号の説明】
【0084】
10:支持体
11:膜
100:ステージ
200:光照射システム
201:白色光源
202:照射ヘッド
210:光伝送路
221:バンドパスフィルタ
222:紫外線カットフィルタ
300:撮像装置
400:遮光ボックス
1000:搬送方向
1100:法線
1200:照射光
1300:反射光
図1
図2
図3
図4