(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040521
(43)【公開日】2024-03-25
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240315BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240315BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/36
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022333
(22)【出願日】2024-02-16
(62)【分割の表示】P 2016194611の分割
【原出願日】2016-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 行雄
(57)【要約】
【課題】本発明は皮膚バリア機能を増強する作用を有する外用組成物を提供する。
【解決手段】高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級アルコールを含有する外用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級アルコールを含有する外用組成物。
【請求項2】
高級脂肪酸の含有量が5~25重量%、高級脂肪酸塩の含有量が2~10重量%、及び高級アルコールの含有量が0.5~8重量%である、請求項1記載の外用組成物。
【請求項3】
前記高級脂肪酸及び前記高級脂肪酸塩の高級脂肪酸が、それぞれ同一又は異なって、炭素数14~18の飽和又は不飽和脂肪酸である請求項1または2に記載する外用組成物。
【請求項4】
前記高級アルコールが炭素数14~18の飽和または不飽和の一価のアルコールである請求項1~3のいずれかに記載する外用組成物。
【請求項5】
鹸化率が20~40%である、請求項1~4のいずれかに記載する外用組成物。
【請求項6】
原料として少なくとも高級脂肪酸、アルカリ、及び高級アルコールを用いて、これらを混合する工程を有する、請求項1~5のいずれかに記載する外用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
表皮層は、厚みがわずか20μmの組織であり、紫外線やアレルゲンなどの外部刺激から生体を防御するバリア機能を担っている。この表皮層のバリア機能が破綻することにより、上記外部刺激が皮膚内に侵入し、肌荒れ、しみ、シワ、ハリの低下、及び肌のたるみ等の症状や、アレルゲンの進入による痒みや炎症などの不快症状を引き起こす。これにより、皮膚の機能が低下し、さらなるバリア機能の劣化をまねく悪循環に陥る。
【0003】
このバリア機能を増強することにより、皮膚機能の低下を防ぎ、また痒みや炎症などの不快症状を改善することができる。従来、このような問題に対して、特定の植物エキスによる皮膚バリア機能増強剤等が提案されているが、それ自身がアレルゲンとなるといった問題もあり、未だ十分な効果を有するとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-23167号公報
【特許文献2】特開2003-292432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、皮膚バリア機能を増強する作用を有する外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねていたところ、思いがけずも、従来から石鹸として使用されてきた鹸化物に皮膚のバリア機能を増強する作用があることを見出し、さらにこれに高級アルコールを併用することで、上記鹸化物の皮膚バリア機能増強作用がさらに高まり、より一層優れた皮膚バリア機能増強作用を有する組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
【0008】
(I)外用組成物
(I-1)高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級アルコールを含有する外用組成物。
(I-2)高級脂肪酸の含有量が5~25重量%、高級脂肪酸塩の含有量が2~10重量%、及び高級アルコールの含有量が0.5~8重量%である、(I-1)記載の外用組成物。
(I-3)前記高級脂肪酸及び前記高級脂肪酸塩の高級脂肪酸が、それぞれ同一又は異なって、炭素数14~18の飽和又は不飽和脂肪酸である(I-1)または(I-2)に記載する外用組成物。
(I-4)前記高級アルコールが炭素数14~18の飽和または不飽和の一価のアルコールである(I-1)~(I-3)のいずれかに記載する外用組成物。
(I-5)鹸化率が20~40%、好ましくは30%程度である、(I-1)~(I-4)のいずれかに記載する外用組成物。
(I-6)さらに液体飽和グリコールを含有する(I-1)~(I-5)のいずれかに記載する外用組成物。
(I-7)液体飽和グリコールの含有量が0.5~60重量%である(I-6)に記載する外用組成物。
(I-8)液体飽和グリコールがプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である、(I-6)または(I-7)のいずれかに記載する外用組成物。
(I-9)O/W型乳化組成物である、(I-1)~(I-8)のいずれかに記載する外用組成物。
(I-10)化粧料である(I-1)~(I-9)のいずれかに記載する外用組成物。
【0009】
(II)外用組成物の製造方法
(II-1)原料として少なくとも高級脂肪酸、アルカリ、及び高級アルコールを用いて、これらを混合する工程を有する、(I-1)~(I-10)のいずれかに記載する外用組成物の製造方法。
(II-2)高級脂肪酸の配合量が8~30重量%、アルカリの配合量が0.2~5重量%、及び高級アルコールの含有量が0.5~8重量%である、(II-1)記載の製造方法。
(II-3)高級脂肪酸の配合量100重量部に対するアルカリの配合量が4~8重量部である(II-1)または(II-2)に記載する製造方法。
(II-4)前記高級脂肪酸及び前記高級脂肪酸塩の高級脂肪酸が、それぞれ同一又は異なって、炭素数14~18の飽和又は不飽和の脂肪酸である(II-1)~(II-3)のいずれかに記載する製造方法。
(II-5)前記高級アルコールが炭素数14~18の飽和又は不飽和の一価のアルコールである(II-1)~(II-4)のいずれかに記載する製造方法。
(II-6)鹸化率20~40%、好ましくは30%程度の外用組成物を製造する方法である(II-1)~(II-5)のいずれかに記載する製造方法。
(II-7)さらに液体飽和グリコールを配合する工程を有する(II-1)~(II-6)のいずれかに記載する製造方法。
(II-8)液体飽和グリコールの配合量が0.5~60重量%である(II-7)に記載する製造方法。
(II-9)液体飽和グリコールがプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である、(II-7)または(II-8)のいずれかに記載する製造方法。
(II-10)外用組成物がO/W型乳化組成物であって、乳化工程を有する、(II-1)~(II-9)のいずれかに記載する製造方法。
【0010】
(III)美容方法
(III-1)上記(I-1)~(I-10)のいずれかに記載する外用組成物を、被験者の皮膚に適用する工程を有する、美容方法。
(III-2)上記美容方法が皮膚バリア機能低下に起因する皮膚症状を改善する方法である、(III-1)に記載する美容方法。
(III-3)上記美容方法が肌荒れ、しみ、シワ、ハリの低下、及び肌のたるみからなる群から選択される、皮膚バリア機能低下に起因する皮膚症状を改善する美容方法である、(III-1)または(III-2)に記載する美容方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外用組成物によれば、皮膚バリア機能が低下した皮膚に適用することで、その機能を改善し向上することができる。その結果、皮膚からの水分蒸散を抑制することができ、肌の保湿性を高め、肌荒れ等の症状を改善することができる。また本発明の皮膚バリ
ア機能増強作用により、アレルゲンや紫外線といった外部刺激の進入を抑制することができ、その結果、シワ(小じわ、大ジワ)、ハリの低下、肌のたるみを抑制し、改善することができ、またアレルゲンなどによる痒みや炎症などの不快症状を軽減させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(I)外用組成物
本発明の外用組成物は、高級脂肪酸、高級脂肪酸塩、及び高級アルコールを含有することを特徴とする。
【0013】
(A)高級脂肪酸
本発明において、高級脂肪酸は、制限されないものの、炭素数が14~18の飽和または不飽和脂肪酸であることが好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸(14:0)、ペンタデシル酸(15:0)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、マルガリン酸(17:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、バクセン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、及びエレオステアリン酸(18:3)を挙げることができる。なお、上記化学名の後ろの括弧内の数字は前者が脂肪酸の炭素数、後者が二重結合の数を示す。皮膚バリア機能増強作用に加えて、使用感の良さという観点から、より好ましくは炭素数が16~18の飽和脂肪酸であり、特に好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、マルガリン酸である。
【0014】
本発明の外用組成物におけるこれらの高級脂肪酸の含有割合は、制限されないものの、通常5~25重量%程度である。好ましくは7~20重量%、より好ましくは7~11重量%である。
【0015】
(B)高級脂肪酸塩
高級脂肪酸塩は、後述するように、製造工程において、原料として使用する高級脂肪酸にアルカリが反応することによって生成されるが、これに限らず、別途添加配合されたものであってもよく、その由来は特に制限されるものではない。
【0016】
高級脂肪酸塩を構成する高級脂肪酸は、制限されないものの、炭素数が14~18の飽和または不飽和脂肪酸であることが好ましい。かかる脂肪酸としては、上記高級脂肪酸と同様に、ミリスチン酸(14:0)、ペンタデシル酸(15:0)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、マルガリン酸(17:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、バクセン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、及びエレオステアリン酸(18:3)を挙げることができる。皮膚バリア機能増強作用に加えて、使用感の良さという観点から、より好ましくは炭素数が16~18の飽和脂肪酸であり、特に好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、マルガリン酸である。
【0017】
高級脂肪酸塩としては、上記高級脂肪酸のアルカリ金属塩(脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム等)、アルカリ土類金属塩(例えば、脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウム、脂肪酸バリウム等)、及びアンモニア塩(脂肪酸アンモニウム)の他、上記高級脂肪酸とアミン類、ヒドロキシルアミン類、イミン類、グアニジン類、アミンオキシド類、アルカノールアミン類、アルコキシル化アミン類、および、アルキルアミン類(ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノブタノール、アミノエチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、イソプロピルアミン、メチルエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、グルカミン、N-メチルグルカミン、モルフォリン、トロメタミン)、コカミン類、ソイアミン類、オレアミン類、ステアラミン類、クオテルニウム類などの有機アミンとの反応物を例示することがで
きる。好ましくは脂肪酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であり、より好ましくは脂肪酸のアルカリ金属塩である脂肪酸ナトリウム塩、または脂肪酸カリウムである。
【0018】
本発明の外用組成物におけるこれらの高級脂肪酸塩の含有割合は、制限されないものの、通常2~10重量%程度である。好ましくは2~9重量%、より好ましくは3~9重量%である。
【0019】
(C)高級アルコール
本発明において、高級アルコールは、制限されないものの、炭素数が14~18の飽和または不飽和の一価のアルコールであることが好ましい。かかる高級アルコールとしては、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、セトスアリルアルコール、パルミトレイルアルコール、1-ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リシノレイルアルコール等の脂肪アルコールまたは合成アルコールを挙げることができる。皮膚バリア機能増強作用に加えて、使用感の良さという観点から、好ましくは炭素数が16~18の飽和の一価アルコールであり、特に好ましくはセタノール、セトスアリルアルコール、パルミトレイルアルコール、1-ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールである。
【0020】
本発明の外用組成物におけるこれらの高級アルコールの含有割合は、制限されないものの、通常0.5~8重量%程度である。好ましくは1~8重量%、より好ましくは1~3重量%である。
【0021】
(D)液体飽和グリコール
本発明の外用組成物は、液体飽和グリコールを含有するものであってもよい。当該液体飽和グリコールは、皮膚に対して保湿剤または柔軟剤として作用する。かかる液体飽和グリコールとして、制限されないが、具体的には、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。好ましくはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコールであり、より好ましくはプロピレングリコール、ポリエチレングリコールである。本発明の外用組成物における液体飽和グリコールの含有割合として、制限されないものの0.5~60重量%の範囲を挙げることができる。好ましくは1~60重量%、より好ましくは5~60重量%を挙げることができる。
【0022】
(E)その他の成分
本発明の外用組成物は、皮膚バリア機能増強作用を発揮するという本発明の効果を妨げないことを限度として、上記(A)~(C)成分、または上記(A)~(D)成分に加えて、他の成分が含まれていてもよい。かかる成分としては、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、油性成分、抗酸化剤、防腐・殺菌剤、粉体成分、香料、顔料、水等を例示することができる。
【0023】
保湿剤としては、制限されないものの、例えばグリセリン;ソルビトール、キシリトール、及びトレハロースなどの糖類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸菌発酵米、ヒアルロン酸及びその誘導体(例えば分子量数千から数百万のヒアルロン酸又はその塩類、アセチル化ヒアルロン酸、ヒアルロン酸プロピレングリコール、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウムなど)、ムコ多糖類(例えばコンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体など)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、加水分解シルク蛋白質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、フィトステロール、大豆リン脂質、イソステアリン酸コレステリル、海藻抽出物、魚介類由来コラーゲン及びその誘導体、各種アミノ酸及びそれらの誘導体(例えばトリメチルグリシンなど)、ヘチマ
抽出物、ビャッキュウ抽出物、豆乳発酵液、納豆エキス、米由来抽出物及びその発酵物などが挙げられる。
【0024】
増粘剤としては、制限されないものの、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダンなどの褐藻、緑藻或いは紅藻由来成分;ビャッキュウ抽出物、ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体などの多糖類;キサンタンガム、トラガントガム、グアーガムなどのガム類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体などの合成高分子類;ポリグルタミン酸及びその誘導体;グルコシルトレハロースと加水分解水添澱粉を主体とする糖化合物などが挙げられる。
【0025】
界面活性剤としては、制限されないものの、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α-スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級~第三級脂肪族アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N-ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N-トリアルキル-N-アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N-アシルアミドプロピル-N′,N′-ジメチル-N′-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤などを挙げることができる。また、乳化剤または乳化助剤として、酵素処理ステビアなどのステビア誘導体、レシチン及びその誘導体、乳酸菌発酵米、乳酸菌発酵発芽米、乳酸菌発酵穀類(麦類、豆類、雑穀など)、ビャッキュウ抽出物などを配合することもできる。
【0026】
油性成分としては、制限されないものの、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワランなどの炭化水素類;などが挙げられる。
【0027】
抗酸化剤としては、制限されないが、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンC(アスコル
ビン酸)及びその誘導体、ユビデカキノン(ユビキノン)、ルチン、ルチングルコシド、
白芥子抽出物、イネ抽出物、ムラサキシキブ抽出物、シラカバ抽出物、ハマメリス抽出物、ウーロン茶抽出物、黒豆加水分解抽出液、シャクヤク抽出物、ビャッキュウ抽出物、ハゴロモグサ抽出液などが挙げられる。
【0028】
防腐・殺菌剤としては、制限されないが、例えば尿素、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、樹皮乾留物、プロポリスエキス、メチルイソチアゾリノンなどを挙げることができる。
【0029】
粉体成分としては、制限されないものの、例えばセリサイト、酸化チタン、タルク、カ
オリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、6-又は12-ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダー、穀類(米、麦、トウモロコシ、キビなど)のパウダー、豆類(大豆、小豆など)のパウダーなどがある。
【0030】
さらに必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で、他の生理活性成分(線維芽細胞賦活剤、美白剤、皮膚老化防止・肌荒れ改善剤など)を配合してもよい。
【0031】
線維芽細胞賦活剤としては、制限はされないが、例えばビルベリー葉エキス、ポリアミン、アロエエキス、カッコンエキス、クロレラエキス、プラセンタエキス、サトウカエデ樹液、ローヤルゼリー、酵母エキス、ムコ多糖体液、ヒオウギ抽出液、ダイズエキス、ホエイなどを挙げることができる。
【0032】
美白剤としては、制限されないが、例えばt-シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、ビタミンC(アスコルビン酸)及びその誘導体、ハイドロキノン又はその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、トラネキサム酸及びその誘導体、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、マグノリグナン(5,
5'-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール)、4-HPB(ロドデノール、4-(4-ヒドロキシフェニル)-4-ブタノール))、ヒドロキシ安息香酸及びその誘導体
、ビタミンE及びその誘導体、α-ヒドロキシ酸、AMP(アデノシンモノホスフェイト、アデノシン1リン酸)、胎盤抽出液、ソウハクヒ抽出物、ユキノシタ抽出物、米糠抽出物又はその加水分解物、白芥子抽出物又はその加水分解物、白芥子の発酵物、シャクヤク抽出物又はその加水分解物、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀類)、ムラサキシキブ抽出物、ハス種子抽出物又はその加水分解物、ハス種子発酵物、党参抽出物、ハトムギ加水分解物、ハトムギ種子発酵物、ローヤルゼリー発酵物、酒粕発酵物、パンダヌス・アマリリフォリウス(Pandanus amaryllifolius Roxb.)抽出
物、アルカンジェリシア・フラバ(Arcangelicia flava Merrilli)抽出物、カミツレ抽
出物等を挙げることができる。
【0033】
皮膚老化防止・肌荒れ改善成分としては、制限されないが、例えばサンゴ草抽出物、イネの葉の抽出物又はその加水分解物、ナス(水ナス、長ナス、賀茂ナス、米ナス等)抽出物又はその加水分解物、カタメンキリンサイ等の海藻の抽出物、アマモ等の海産顕花植物の抽出物、クラゲ水、米抽出物又はその加水分解物、米醗酵エキス、発芽米抽出物又はその加水分解物、発芽米発酵物、黒豆抽出物又はその加水分解物、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、セラミドなどの細胞間脂質、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t-シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、t-シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体(d,l-α-トコフェリルリン酸ナトリウムなど)、アラントイン、α-ヒドロキシ酸類、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、コエンザイムQ-10、α-リポ酸、エルゴチオネイン、アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、ゲンチアナ抽出物、甘草抽出物、ニンジン抽出物、アロエ抽出物、ミツイシコンブ抽出物、アナアオサ抽出物、ジュアゼイロ(Zizyphus joazeiro)抽出物、ブナ抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、イチョウ抽出物、スギナ抽出物、ベニバナ抽出物、オタネニンジン抽出物、セイヨウニワトコ抽出物、ハゴロモグサ抽出物、レンゲ抽出物、マンゴー抽出物、チェリモヤ抽出物、マンゴスチン抽出物、タベブイア・インペティギノーサ抽出物、酵母抽出物、卵殻膜抽出蛋白質、デオキシリボ核酸カリウム塩、ハス種子発酵液、花粉荷エキスなどが挙げられる。
【0034】
本発明の外用組成物は、後述するように、原料として高級脂肪酸とアルカリを用いて製
造され、その結果、高級脂肪酸の一部が鹸化された状態で含むものである。かかる本発明の外用組成物の鹸化率としては、制限されないものの20~40%の範囲を挙げることができる。好ましくは20~35%であり、より好ましくは25~35%、特に好ましくは30%程度である。
【0035】
本発明の外用組成物は、上記(A)~(C)成分、また必要に応じて(D)成分、及び/または(E)成分を配合混合して、所望の形状(固形状、半固形状[ゲル状、クリーム状、軟膏状等]、液体[乳液状、ローション状等])に調製することができる。好ましくは乳化物、特にO/W型の乳化物であり、より好ましくはクリーム状の外用組成物として調製することができる。当該外用組成物は、医薬品、医薬部外品、及び化粧品のいずれの範疇に含まれるものであってもよい。好ましくは外用の医薬部外品、及び化粧品であり、より好ましくは化粧品である。
【0036】
外用の医薬品または医薬部外品としての形態としては、制限されないものの、例えばクリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、ローション剤、乳液剤、液剤、エアゾール剤等を挙げることができる。好ましくはクリーム剤、及び乳液剤である。化粧品としての形態としては、制限されないものの、例えばスキンケア化粧品として、化粧水、美容液、パック、マッサージクリーム、乳液、モイスチャークリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、リップクリーム等を挙げることができる。好ましくはマッサージクリーム、乳液、モイスチャークリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリームである。
【0037】
(II)外用組成物の製造方法
前述する少なくとも(A)~(C)成分を含有する本発明の外用組成物は、原料として少なくとも高級脂肪酸、アルカリ、及び高級アルコールを用いて、これらを混合する工程を経て調製することができる。
【0038】
ここで使用される高級脂肪酸及び高級アルコールの種類は、上記(I)に記載の通りであり、上記記載を援用することができる。
【0039】
製造に使用する高級脂肪酸の量としては、調製後の外用組成物中に含まれる高級脂肪酸の割合が前述するように、通常5~25重量%程度、好ましくは7~20重量%、より好ましくは7~11重量%となり、その場合の鹸化率が20~40%、好ましくは20~35%であり、より好ましくは25~35%となるような割合であればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。製造原料の総量を100重量%とした場合に、使用する高級脂肪酸の割合として通常8~30重量%を挙げることができる。好ましくは10~30重量%であり、より好ましくは10~15重量%である。
【0040】
製造に使用する高級アルコールの量としては、制限されないものの、製造原料の総量を100重量%とした場合に、(I)に記載されるように、通常0.5~8重量%程度を挙げることができる。好ましくは1~8重量%、より好ましくは1~3重量%である。
【0041】
また製造に使用するアルカリは、水溶液とした場合にpH7以上を示す物質であり、上記高級脂肪酸と反応して鹸化物として、前述する高級脂肪酸塩を生成する物質である。
【0042】
当該アルカリには、無機アルカリと有機アルカリのいずれもが含まれる。無機アルカリとしては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属の炭酸塩または重炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム)、アルカリ金属のリン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム)、アンモニアの無機塩(例えば水酸化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸また
は重炭酸アンモニウム)等を挙げることができる。有機アルカリとしては、例えばアミン類、ヒドロキシルアミン類、イミン類、グアニジン類、アミンオキシド類、アルカノールアミン類、アルコキシル化アミン類、および、アルキルアミン類(ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノブタノール、アミノエチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、イソプロピルアミン、メチルエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、グルカミン、N-メチルグルカミン、モルフォリン、トロメタミン)、コカミン類、ソイアミン類、オレアミン類、ステアラミン類、クオテルニウム類などを例示することができる。好ましくは無機のアルカリである。より好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物塩、アルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩、またはリン酸塩であり、アルカリ金属の水酸化物塩が特に好ましい。
【0043】
製造に使用するアルカリの量として、制限されないものの、製造原料の総量を100重量%とした場合に、通常0.5~5重量%程度を挙げることができる。好ましくは0.5~2重量%であり、より好ましくは0.6~2重量%である。
【0044】
また製造原料として使用する前記高級脂肪酸100重量部に対する上記アルカリの割合として、制限されないものの、鹸化率が20~40%、好ましくは20~35%であり、より好ましくは25~35%となるような割合を挙げることができ、この限りにおいて制限されないものの、具体的には例えば0.5~5重量部、好ましくは0.5~2重量部、より好ましくは0.6~2重量部を挙げることができる。
【0045】
さらに本発明の外用組成物が他成分として液体飽和グリコール及び/又はその他の任意成分を含有する場合、本発明の外用組成物は上記成分に加えて、液体飽和グリコール及び/又はその他の任意成分を配合することで製造される。液体飽和グリコールの種類は前述した通りであり、その量は製造原料の総量を100重量%とした場合に、通常0.5~60重量%程度を挙げることができる。好ましくは1~60重量%であり、より好ましくは5~60重量%である。
【0046】
本発明の製造方法は、基本的には前述するように上記成分を原料として用いて、これらを配合し混合する工程を有するものであるが、より具体的には、製造する外用組成物の形状(固形状、液状、半固形状)、製剤形状(クリーム、軟膏、硬膏、パップ、ローション、乳液、液剤、エアゾール)、並びにその用途(医薬品、医薬部外品、及び化粧品)に応じて、その定法に従って実施することができる。本発明の外用組成物の好ましい態様は乳化物、より好ましくはクリーム状、特にO/W型クリームの外用組成物であることから、好ましくは、乳化物、より好ましくはクリーム状、特にO/W型クリームの製造方法に従って、乳化工程を経て調製することができる。
【0047】
乳化工程は、原料を所定の温度になるように加熱した後に、ホモジナイザー、ホモミキサー、攪拌機等の混合機を用いて所定条件で乳化する等、定法に従って実施することができる。
【0048】
(III)美容方法
本発明は、皮膚バリア機能が低下した被験者に対して、前述する本発明の外用組成物を適用し、当該被験者の皮膚バリア機能を増強し改善する美容方法に関する。なお、本発明が対象とする方法は、美容方法であり、ヒトに対する治療方法ではない。
【0049】
皮膚バリア機能低下の原因は特に制限されないが、例えば加齢または紫外線照射を挙げることができる。加齢または紫外線照射によって皮膚バリア機能が低下することで、肌水
分蒸散量(TEWL)が増え、肌乾燥、シワ(乾燥シワ、真皮シワ)、肌のたるみ及びハリ低下等の肌劣化症状を引導する。
【0050】
対象とする被験者は、皮膚バリア機能が低下しているか低下が疑われる者であればよく、特に制限されないものの、好適には加齢または紫外線照射による肌劣化症状を有する者、好ましくは加齢による肌劣化症状(肌老化症状)を有する者である。通常、男女ともに30歳を超えると当該該当の被験者になる可能性がある。好ましくは40歳以上、より好ましくは45歳以上、さらに好ましくは50歳以上である。
【0051】
本発明の外用組成物は、その形態によっても異なるが、硬膏、軟膏、クリーム、リニメント、ローション、乳液、液、エアゾール等の形態を有する場合、当該外用の医薬品、医薬部外品及び化粧品を被験者の所望の部位の皮膚に塗布または噴霧することによって使用することができる。また外用の医薬品、医薬部外品及び化粧品がパップ剤の形態を有する場合、当該外用の医薬品、医薬部外品及び化粧品を被験者の所望の部位の皮膚に貼付することによって使用することができる。皮膚への適用は、1日1回または複数回行ってよく、例えば朝と晩(寝る前)に適用する方法を挙げることができる。斯くして加齢または紫外線照射等によって皮膚のバリア機能の低下に伴う肌劣化症状(特に肌老化症状)の発生を抑制し(予防)、また改善することが可能になる。
【実施例0052】
以下、本発明を実験例及び実施例に基づいて説明する。但し、当該実験例及び実施例は、本発明の一例であり、本発明はこれらの実験例や実施例に制限されるものではない。
【0053】
実験例1 経上皮水分蒸散量(TEWL)の評価
表2に示す組成からなる皮膚外用組成物(クリーム剤)(実施例1~4、比較例1)をヒトの皮膚に適用して経上皮水分蒸散量を測定し、皮膚バリア機能増強作用を評価した。
【0054】
(1)被験試料(皮膚外用剤)の調製
表2に記載する組成について、実施例1~4については、まず表1記載のA相の成分を表1記載の割合でとり80℃に加熱する。次いでB相の成分を表1記載の割合でとり80℃に加熱する。次いでA相成分の混合物にB相成分の混合物を加えて攪拌する。次いでこれを30℃まで冷却(自然放冷)しながら攪拌して表2に記載の組成からなる乳化物(クリーム状)(被験試料(皮膚外用組成物))を調製した。
【0055】
一方、比較例1は表1に記載する割合で、水を攪拌しながらカルボキシビニルポリマーを加えて更に攪拌し、そこにグリセリンを加えてクリーム状の被験試料(皮膚外用組成物)を調整した。比較例1の調製工程はすべて室温でおこなった。
【0056】
【0057】
(2)実験方法
下記の手順に従って、被験試料(実施例1~4、比較例1)の塗布前後で、皮膚被験部位の経上皮水分蒸散量(TEWL)を測定し、上記被験試料の皮膚バリア機能増強作用を評価した。
(i)ヒト(n=17)の上腕内側部(被験部位)のTEWLを、携帯型閉鎖チャンバー方式水
分蒸散量測定装置(VAPO SCAN AS-VT100RS:株式会社アサヒテクノラボ製)で測定する。(ii)SDSの4%水溶液を不織布(15mm×15mm)に含浸させて、これを上記被験部位に30
分間貼付し、その後に剥がす。これを4日間繰り返し、被験部位の肌を荒らす。
(iii)4日後、被験部位のTEWLを再度測定する。
(iv)1週間、被験試料(実施例1~4、比較例1)の適量(約0.1g/回)を1日2回(
朝の起床後と夜の入浴後)、被験部位に塗布する。
(v)塗布開始から1週間後、被験部位のTEWLを再度測定する。
【0058】
なお、比較対照のため、上記(ii)の処置後、被験部位に被験試料を塗布せずそのまま1週間放置しておいた非処理部の実験終了後のTEWLも測定した(未処理群)。
【0059】
(3)判定方法
各被験試料による処理群の修了後のTEWL値と未処置群の修了後のTEWL値を統計処理して、有意水準5%で有意差の有無を判断する(Wilcoxonの符号付順位和検定(対応のあるt検定)。
【0060】
(4)実験結果
結果を表2に合わせて示す。
【0061】
有意差ありを○、有意差なしを×とした。
【0062】
【0063】
表2に示すように、本発明の組成からなる皮膚外用組成物(実施例1~4)は、皮膚のバリア機能を改善し増強する作用が強いことが判明した。
【0064】
処方例
表4に記載する組成からなる皮膚外用組成物(クリーム剤)を調製した。具体的には、まず表3に記載するA相の成分を表3記載の割合でとり80℃に加熱する。次いでB相の成分を表3記載の割合でとり80℃に加熱する。次いでA相成分の混合物にB相成分の混合物を加えて攪拌する。次いでこれを30℃まで冷却(自然放冷)しながら攪拌して表4に記載の組成からなる乳化物(クリーム剤)を調製した。
【0065】
【0066】