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特開2024-4065発光装置、パッケージ及び発光装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004065
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】発光装置、パッケージ及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20240109BHJP
【FI】
H01L33/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103516
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 保夫
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA84
5F142BA03
5F142BA24
5F142CA02
5F142CA13
5F142CC26
5F142CE08
5F142CE13
5F142CE18
5F142CG03
5F142CG04
5F142CG05
5F142DA12
5F142FA01
5F142FA21
(57)【要約】
【課題】光取り出し効率の低下を抑制した発光装置及びパッケージ、発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】
発光素子と、前記発光素子から出射された光を反射する光反射材と、を備え、前記光反射材は、母材と、前記母材上に設けられた非晶質のPdP合金層と、前記PdP合金層上に設けられたAg含有層と、を有し、前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層の厚みが0.015μm以上0.02μm以下である発光装置。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を反射する光反射材と、を備え、
前記光反射材は、母材と、前記母材上に設けられた非晶質のPdP合金層と、前記PdP合金層上に設けられたAg含有層と、を有し、
前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層の厚みが0.015μm以上0.02μm以下である発光装置。
【請求項2】
前記Ag含有層の厚みが、0.05μm以上0.50μm以下である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記母材と前記PdP合金層との間にNi含有層を有する請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記Ni含有層は、光沢度が1.2以上である請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記Ni含有層はSを含有し、S含有量が100ppm以上200ppm以下である請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記PdP合金層と前記Ag含有層との間にAu含有層を有する請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項7】
前記Au含有層は、厚みが0.0015μm以上0.01μm以下である請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上6質量%以下である請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項9】
前記光反射材は、前記Ag含有層が前記発光素子と対向している請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項10】
前記発光装置がさらに樹脂成形体を備え、
前記光反射材は前記Ag含有層が露出されるように前記樹脂成形体に埋め込まれている請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項11】
光反射材を準備する工程と、
前記光反射材を備えるパッケージを準備する工程と、
前記パッケージに発光素子を実装する工程と、を備え、
前記光反射材を準備する工程は、母材を準備し、前記母材上に非晶質のPdP合金層をめっきで形成し、前記PdP合金層上にAg含有層をめっきで形成することを含み、
前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層を0.015μm以上0.02μm以下の厚みで形成する発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記Ag含有層を0.05μm以上0.50μm以下の厚みで形成する請求項11に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記光反射材を準備する工程は、前記母材と前記PdP合金層との間にNi含有層をめっきで形成することを含み、前記Ni含有層はS系有機添加剤を含むめっき液を用いて形成する請求項11又は12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記光反射材を準備する工程は、前記PdP合金層と前記Ag含有層との間にAu含有層をめっきで形成することを含み、前記Au含有層を0.0015μm以上0.01μm以下の厚みで形成する請求項11又は12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
母材と、前記母材上に設けられた非晶質のPdP合金層と、前記PdP合金層上に設けられたAg含有層と、を備える光反射材と、
前記光反射材を支持する基体と、を有し、
前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層の厚みが0.015μm以上0.02μm以下であるパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Ag含有層を有する光反射材を備える発光装置及びパッケージ、Ag含有層を有する光反射材を備える発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子(以下、単に「発光素子」とも称する。)を用いた発光装置において、発光素子からの光に対して高い反射率を有する銀(Ag)を表面に設けたパッケージが数多く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-222191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Agは高い光反射率を有し、発光装置の光反射部材として好適な材料である一方、高価である。しかし、このAgの量を削減してコストを低減するために、Agの層を薄く(例えば1μm以下)とすると、光取り出し効率が低下する懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態により開示される発光装置は、発光素子と、前記発光素子から出射された光を反射する光反射材と、を備え、前記光反射材は、母材と、前記母材上に設けられた非晶質のPdP合金層と、前記PdP合金層上に設けられたAg含有層と、を有し、前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層の厚みが0.015μm以上0.02μm以下である。
【0006】
実施形態により開示される発光装置の製造方法は、光反射材を準備する工程と、前記光反射材を備えるパッケージを準備する工程と、前記パッケージに発光素子を実装する工程と、を備え、前記光反射材を準備する工程は、母材を準備し、前記母材上に非晶質のPdP合金層をめっきで形成し、前記PdP合金層上にAg含有層をめっきで形成することを含み、前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層を0.015μm以上0.02μm以下の厚みで形成する。
【0007】
実施形態により開示されるパッケージは、母材と、前記母材上に設けられた非晶質のPdP合金層と、前記PdP合金層上に設けられたAg含有層と、を備える光反射材と、前記光反射材を支持する基体と、を有し、前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層の厚みが0.015μm以上0.02μm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、光取り出し効率の低下を抑制した発光装置及びパッケージ、発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】一実施形態の発光装置を説明するための概略上面図である。
図1B図1Aの1B-1B線における概略断面図である。
図2A】一実施形態の光反射材の構成を説明する概略拡大断面図である。
図2B】一実施形態の光反射材の構成を説明する概略拡大断面図である。
図3A】一実施形態の発光装置を説明するための概略斜視図である。
図3B図3Aの3B-3B線における概略断面図である。
図4A】一実施形態の発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
図4B】一実施形態の発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
図4C】一実施形態の発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
図4D】一実施形態の発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書または特許請求の範囲において、上下などの記載は、相対的な位置、向き、方向などの関係を述べるに過ぎず、使用時における関係と一致していなくてもよい。また実施形態の用語における上面視とは、光反射材に実装された発光素子(又は実装される予定の発光素子)に向かって見ることをいう。したがって、光反射材の発光素子が設けられる面が上面であり、その反対側が下面である。
【0011】
本開示の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための製造方法を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。断面図として、切断面のみを示す端面図を用いる場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
図1A図1B図2A及び図2Bを参照して、第1実施形態に係る発光装置及び発光装置に適用されるパッケージを説明する。図1Aは、一実施形態の発光装置を説明するための概略上面図である。図1Bは、図1Aの1B-1B線における概略断面図である。図2Aは、一実施形態の光反射材の構成を説明する概略拡大断面図である。図2Bは、一実施形態の光反射材の構成を説明する概略拡大断面図である。
【0013】
本実施形態に係る発光装置100は、発光素子2と、発光素子2から出射された光を反射する光反射材1としてリード10と、を備える。光反射材1は、母材1aと、母材1a上に設けられた非晶質のPdP合金層1cと、PdP合金層1c上に設けられたAg含有層1eと、を有する。
【0014】
また本実施形態の発光装置100は、少なくとも光反射材1を備えるパッケージを有していてもよい。これらのパッケージは、光反射材1の他、基体を備えることができる。
【0015】
本実施形態に係るパッケージは、母材1aと、母材1a上に設けられた非晶質のPdP合金層1cと、PdP合金層1c上に設けられたAg含有層1eと、を備える光反射材1と、光反射材1を支持する基体と、を有する。基体は、例えば後述する樹脂成形体3である。
【0016】
本実施形態の光反射材1(換言するとリード10)は、図2A及び図2Bに示すように、母材1aと、母材1a上に設けられたPdP合金層1cの下地層と、PdP合金層上に設けられたAg含有層1eとを有する。PdP合金層1c中のPの割合は3質量%以上10質量%以下であり、かつPdP合金層の厚みは0.015μm以上0.02μm以下である。PdP合金層1cはPの割合が上記範囲の非晶質の層である。Ag含有層1eの厚みは、例えば0.05μm以上0.50μm以下である。なお本明細書では、母材1aとAg含有層1eとの間に設けられたPdを含む層を下地層と称する場合がある。
【0017】
本実施形態の発光装置100は基体である樹脂成形体3を備え、光反射材1はAg含有層1eが露出されるように樹脂成形体3に埋め込まれている。発光装置100は、例えば光反射材1のうち樹脂成形体3に埋め込まれた部分、つまり光反射材1のAg含有層1eが樹脂成形体3に覆われている第一埋設部12及び第二埋設部13を有する。樹脂成形体3は、上面視において横長の形状であり、樹脂成形体3の底面の一部32を除いて光反射材1が露出された横長の凹部を有する。樹脂成形体3の外面には、一対の板状の光反射材1の一部が外部端子部として露出し、外部端子部は樹脂成形体3の外側面に沿って折り曲げられている。
そして、発光素子2、光反射材1を被覆するようパッケージの凹部内に充填された封止部材5を有している。封止部材5は蛍光体等の波長変換物質を含有した透光性樹脂である。
【0018】
上述のような構成を有する本実施形態の発光装置100の光反射材1は、Ag含有層1eの厚みによらず、高い光反射率を有する。そのため、光取り出し効率の高い発光装置100とすることができる。その理由は以下のとおりである。母材や下地層上に設けられるAg含有層等の金属層は、一般的に母材及び下地層の結晶構造の影響を受ける。つまり、母材や下地層が結晶構造を有している場合、その上に設けられる金属層はその結晶構造の影響を受け、いわゆるエピタキシャル成長を行うことになる。発明者は、この母材等から引き継がれる結晶構造がAg含有層、特に厚みが1μm以下のAg含有層の光反射率に悪影響を及ぼすことを見出し、本実施形態の発明に至った。本実施形態の光反射材1は、母材1aとAg含有層1eの間にこの母材等の結晶構造の影響を低減できる非晶質のPdP合金層1cを有している。非晶質は、母材や下地層の素材に影響せず、また欠陥量も非晶質の厚みに依存しない。このような非晶質のPdP合金層1cを設けることより、母材1a上にめっきで設けられるAg含有層1eが母材1aの結晶構造から受ける影響を低減または排除できるため、緻密で欠陥が少なく微細なAg本来の結晶構造を有し、光反射率が高いAg含有層1eを形成することができる。これにより、Ag含有層1eの厚みを薄くしても光反射率の高い光反射材1を得ることができ、本実施形態に係る光反射材1を有さない発光装置に対して光反射率の低下を抑制した、つまり全光束の低下を抑制した発光装置100とすることができる。
【0019】
光反射材1は、発光素子2から出射された光を反射可能であれば、どのような形で発光装置100に用いられていてもよい。光反射材1は、Ag含有層1eが発光素子2と対向していることが好ましく、例えば、本実施形態のように、発光素子2の下方に設けられてもよいし、発光素子2を取り囲むように設けられてもよい。また、光反射材1は、本実施形態のような板状のリード10であってもよく、絶縁性の基体上に形成された配線であってもよい。また、光反射材1は、発光素子2を載置する載置部材、放熱を行う放熱部材、発光素子2と電気的に接続される導電部材としての機能を兼ねていてもよい。このため、光反射材1は、その機能に応じて、放熱性、導電性に優れていること、そしてワイヤボンディングがしやすいことが好ましい。
【0020】
本実施形態の光反射材1は、図2Aに示すように、PdP合金層1cの下地層と、Ag含有層1eとが、光反射材1の母材1a上にこの順に設けられている。換言すると、母材1aを包囲するように、上面、下面、及び側面においてそれぞれの層がこの順に設けられている。
【0021】
また本実施形態の光反射材1は、PdP合金層1cの下地層の他に、さらに別の材料の下地層を備えてもよい。例えば光反射材1は、図2Bに示すように、Ni含有層1bと、PdP合金層1cと、Au含有層1dと、Ag含有層1eとが、光反射材1の母材1a上にこの順に設けられてもよい。この場合においても、母材1aを包囲するように、上面、下面、及び側面においてそれぞれの層がこの順に設けられている。
【0022】
(Ag含有層1e)
Ag含有層1eの厚みは、0.05μm以上0.50μm以下であることが好ましい。Ag含有層1eの厚みを上記範囲にすることにより、光反射率の極端な低下を抑制できる。また、材料コストの増加を抑えることができる。さらに、材料コスト及びワイヤボンディングなどの組立信頼性の観点及び硫化防止の観点では、Ag含有層1eの厚みは、0.1μm以上0.5μm以下とすることが好ましい。光反射率を高めるためには、0.2μm以上0.5μm以下とすることが好ましい。
【0023】
光反射材1の表面は、可視光領域の波長の光に対する反射率が70%以上、特に好ましくは80%以上の反射率であることが好ましい。また、高光沢であることが好ましく、光沢度は、0.5以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.6以上である。ここで示される光沢度は、日本電色工業製 微小面色差計VSR 300Aを用い、45°照射、垂直受光で得られる数字である。
【0024】
Ag含有層1eはAgを主成分とする層であり、Ag含有層1eの材料としては、Ag単体、AgとAu、Pt、Rh、Pd、Os、Ru、Sn、In、Zn、Teから選択される1種以上との合金等を用いることができる。Ag合金である場合には、Agの割合はおよそ70質量%以上99質量%以下であることが好ましい。
【0025】
Ag含有層1eは、光反射材1の全ての表面に設けられていることが好ましいが、Ag含有層1eの下にPdP合金層1cがあれば、光反射材1の表面の少なくとも一部がAg含有層1eであってもよい。例えば光反射材1のうち、少なくとも図1A及び図1Bで示したパッケージの底面に露出している領域にAg含有層1eが設けられていることが好ましい。このように光反射材1の一部にAg含有層1eを設けるためには、例えばめっきする際にレジストや保護テープなどでAg含有層1eを形成しない部分をマスクすればよい。
【0026】
Ag含有層1eは、本実施形態のように光反射材1の上面とその上面と向かい合う下面との両方に設けられていてもよく、ある面のみに設けられ他の面には設けられていなくてもよい。また、一つ面の中で一部のみに設けられてもよい。また、Ag含有層1eは、設けられている全領域にわたって同等の厚みであってもよく、発光素子2から出射された光を反射する部分において厚みが0.015μm以上0.02μm以下の範囲であれば、厚みが異なっていてもよい。厚みを異ならせることにより、より効果的にコストを低減することができる。例えば、Ag含有層1eが光反射材1の上面と下面とに設けられ、一方の面での厚みが他方よりも厚くてもよい。発光素子2が搭載される上面や発光素子2の近傍の部分に厚いAg含有層1eを設けることが光取り出し効率向上の観点から好ましい。これにより、Ag等の材料の量を減らし、コストを低減することができる。
【0027】
(母材1a)
光反射材1は、Ag含有層1eがその上に設けられる母材1aを備える。本実施形態においては、母材1aは、光反射材1のおおまかな形状を決定する材料として用いられる。
【0028】
母材1aの材料としては、主成分としてCu、Fe、これらの合金、あるいはクラッド材(例えばCu/FeNi/Cuの積層)等の金属を好適に用いることができる。母材1aのうち主成分の割合は、80.0質量%以上99.8質量%以下が好ましい。Cuやその合金は、放熱性に優れているため、好ましく用いることができる。特に、板状のCu及びCu合金は、機械的特性、電気的特性、加工性等の面においても優れており、好ましい。クラッド材は、線膨張係数を低く抑えることができるため、発光装置の信頼性が高まり、好ましい。
【0029】
母材1aを構成する金属は結晶質を有する。合金を含む金属は結晶質であることが一般的である。このような金属である母材1aは、熱処理等、例えば圧延で成形される際の加熱のために、結晶構造に欠陥を有していることがある。しかし、上述のように母材1aとAg含有層1eの間に非晶質のPdP合金層1cを設けることで、このような問題を解決することができる。
【0030】
光反射材1の光反射率を高めるため、母材1aの平坦度は、なるべく高いことが好ましい。例えば、表面粗さRaが0.5μm以下とすることが好ましい。これにより、母材1aの上に設けるNi含有層1b、PdP合金層1c、Au含有層1d及びAg含有層1eの平坦度を高めることができ、光を反射するAg含有層1eの厚みを0.05μm以上0.50μm以下と非常に薄くしても、光反射材1の光反射率を良好に高めることができる。母材1aの平坦度は、圧延処理、物理研磨、化学研磨等の処理を行うことで高めることができる。
【0031】
母材1aの厚みや形状等については、発光装置の形状等に応じて種々選択することができる。例えば、板状、塊状、膜状等の形状であることができる。更には、母材1aはセラミック等に印刷等で設けられる配線パターンにCuやその合金をめっきしたものであってもよい。
【0032】
(PdP合金層1c)
本実施形態の光反射材1は、母材1aとAg含有層1eとの間に非晶質のPdP合金層1cを有する。PdP合金層1c上にAg含有層1eが設けられていれば、光反射材1の少なくとも一部がPdP合金層1cであってもよい。
【0033】
PdP合金層1cの厚みは、0.015μm以上0.02μm以下である。本実施形態のPdP合金層1cにおいては、Pが金属でないため、隣接する異種金属の層への拡散はほぼない。一般的にPdP合金層中のPは、主成分が異なる金属の層が積層された場合、隣接する金属層の境界付近にPの濃度が高いP濃縮層(またはP濃縮領域)が生じる場合があるが、本実施形態のPdP合金層1cは厚みが非常に薄いため、光反射材1の光反射性や導電性の機能に特に問題はないと考えられる。PdP合金層1cの厚みを0.015μm以上0.02μm以下とすることにより、原材料や製造のコストを低減しながら、母材1aからのAg含有層1eへの拡散を効果的に低減することができる。
【0034】
PdP合金層1cの材料は、PdとPとを含む合金であり、Pdを主成分とする。PdとP以外に、例えばNi、Coを含んでもよい。PdP合金層1c中のPdの割合は例えば85質量%以上96質量%以下である。PdP合金層1c中のPの割合は3質量%以上10質量%以下である。PdP合金層1c中のPの割合を3質量%以上10質量%以下とすることで非晶質のPdP合金とすることができる。Pの割合が増えると層が脆くなる傾向があり、光反射材1の加工のしやすさの観点からPdP合金層1c中のPの割合は3質量%以上6質量%以下であることが好ましい。
【0035】
(Ni含有層1b)
本実施形態の光反射材1は、母材1aと前記PdP合金層1cとの間にNi含有層1bを備えることができる。
【0036】
Ni含有層1bの厚みは、例えば0.3μm以上15.0μm以下が好ましく、0.5μm以上5.0μm以下がより好ましい。厚みを0.3μm以上とすることにより、母材1aからのAg含有層1eへの拡散を効果的に低減することができる。15.0μm以下、好ましくは5.0μm以下の厚みとすることにより、原材料や製造のコストが低減できる。
【0037】
Ni含有層1bは、光沢度が1.2以上であることが好ましい。Ag含有層1eの厚みが1μm以下、特に0.5μm以下になると、Ni含有層1bの光沢度とAg含有層1eの光沢度とが互いに影響する。そのため、Ni含有層1bの光沢度を1.2以上とすることにより光反射材1の光沢度が上がり、Ag含有層1eの厚みを薄くしても光反射率の高い光反射材1とすることができる。またNi含有層1bがSを含有し、S含有量が100ppm以上200ppm以下であることが好ましい。これにより、Ni含有層1bの光沢度を上げることができる。なおNi含有層1bの光沢度は、例えば1.2以上4.0以下である。
【0038】
Ni含有層1bの材料としては、例えば、Ni単体及びNiを主成分として含む合金を用いることができる。Niを含む合金は、例えばNiP、NiS、NiB、NiWP等の合金である。なかでも、容易に製造可能なNiP合金を用いることが好ましい。NiP合金中のNiの割合は例えば75質量%以上89質量%以下である。またNiP合金中のPの割合は例えば11質量%以上25質量%以下である。NiP合金中のPの割合を11質量%以上とすることで非晶質のNiP合金とすることができる。Pの割合が増えると層が脆くなる傾向があり、光反射材1の加工のしやすさの観点から、Ni含有層1b中のPの割合は、例えば11質量%以上25質量%以下とすることが好ましく、12質量%以上15質量%以下とすることがより好ましい。
【0039】
(Au含有層1d)
本実施形態の光反射材1は、PdP合金層1cとAg含有層1eとの間に、Au含有層1dを備えることができる。
【0040】
Au含有層1dは、厚みが0.0015μm以上0.01μm以下であることが好ましく、0.0015μm以上0.0045μm以下がより好ましい。Au含有層1dはPdP合金層1cの上に設けられるため、緻密で欠陥が少ない結晶質の層として非常に薄い厚みで設けることができる。Au含有層1dの厚みが薄いほど、原材料や製造のコストを低減できる。
【0041】
Au含有層1dは、Au単体またはAuを主成分とする層である。Au含有層1d中のAuの割合は、例えば99質量%以上である。Au含有層1dとAg含有層1eとをこの順に設けることにより、Ag含有層1eの密着性を高めることができ、ワイヤボンディングがしやすくなる。またAuはSと反応しにくく、拡散防止の効果も高いため、Au含有層1dをAg含有層1e中のAgの硫化を防止する層として好ましく用いることができる。
【0042】
(発光素子2)
発光素子2は、発光素子2から出射された光が光反射材1に反射される位置に設けられる。本実施形態においては、光反射材1を底面に露出させる樹脂成形体3の凹部内に設けられている。発光素子2は任意の波長の光を発する、III-V族化合物半導体、II-VI族化合物半導体等の種々の半導体を含むことが好ましい。半導体としては、InAlGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系半導体を使用することが好ましく、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等も使用できる。発光素子2は、例えば400nm以上800nm以下にピーク波長を有する光を出射する。用いる発光素子2の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
発光装置100が波長変換物質を備える場合には、その波長変換物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物系半導体が好適に挙げられる。半導体の材料やその混晶比によって発光波長を種々選択することができる。
【0044】
発光素子2は、導電部材と電気的に接続される少なくとも一対の正負の電極を有している。これらの正負の電極は発光素子2の上面下面のどちらか一方に設けられていてもよく、発光素子2の上下両面に設けられていてもよい。発光素子2は、ワイヤまたははんだ等の接続部材によって導電部材と接続される。
【0045】
ワイヤ6は、図1A及び図1Bに示すように、発光素子2にリード10を接続するように設けることができ、複数の発光素子2の間をつなぐように接続することもできる。
【0046】
(基体)
基体はパッケージを構成する部材である。樹脂成形体3は、樹脂を基材とし一対の光反射材1を一体的に保持する基体の一例である。樹脂成形体3の上面視形状は、図1A及び図1Bに示すような四角形、多角形等の他、更にそれらを組み合わせたような形状とすることができる。発光装置100の樹脂成形体3が凹部を有する場合、側壁部31は、その内側面は図1Bに示すような底面に対して傾斜した角度で設けるほか、略垂直な角度であってもよく、段差面を有していてもよい。また、側壁部31の高さや開口部の形状等についても、目的や用途に応じて適宜選択することができる。凹部の内部には光反射材1が設けられることが好ましく、本実施形態のように底面部のほか、側壁部31に光反射材1を備えてもよい。
【0047】
基体は、発光素子からの光を約60%以上、より好ましくは約90%以上反射するのが好ましい。基体が樹脂成形体3である場合、樹脂成形体3の基材としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができ、特に、熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、封止部材5に用いられる樹脂に比してガス透過性の低い樹脂が好ましく、具体的にはエポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂組成物、エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂組成物などをあげることができる。このような樹脂成形体3の基材に、充填材(フィラー)としてTiO、SiO、Al、MgO、MgCO、CaCO、Mg(OH)、Ca(OH)などの微粒子を混入させてもよい。これにより光の透過率を調整することができる。
【0048】
なお基体は、上記のような樹脂を基材とするものに限られず、セラミック、ガラスまたは金属等の無機物で形成されてもよい。これにより、劣化等が少なく、信頼性の高い発光装置100とすることができる。
【0049】
(接合部材4)
接合部材4は、発光素子2を発光装置100に固定する部材である。導電性の接合部材4としては、Ag、Au、Pd等を含む導電性ペーストや、Au-Sn、Sn-Ag-Cuなどの共晶はんだ材料、低融点金属等のろう材等を用いることができる。またCu、Ag、Au等の粒子とAg及びAuのスパッタ膜、蒸着膜またはAuめっき膜とを用いた同材料間の接合でもよい。絶縁性の接合部材4としては、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物やその変性樹脂、ハイブリッド樹脂等を用いることができる。これらの樹脂を用いる場合は、発光素子2からの光や熱による劣化を考慮して、発光素子2を固定する接合部材4の基体側にAlやAgなどの反射率の高い金属層や誘電体反射膜を設けることができる。
【0050】
(封止部材5)
封止部材5を発光素子2、光反射材1、ワイヤ6等の部材を被覆する部材である。封止部材5を設けることで、被覆した部材を塵芥や水分、更には外力などから保護することができ、発光装置100の信頼性を高めることができる。
【0051】
封止部材5は、発光素子2からの光を透過可能な透光性を有し、かつそれらによって劣化しにくい耐光性を有するものが好ましい。具体的な材料としては、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、フッ素樹脂組成物等の絶縁樹脂組成物を挙げることができる。またジメチルシリコーン、フェニル含有量の少ないフェニルシリコーン、フッ素系シリコーン樹脂等シロキサン骨格をベースに持つ樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等も用いることができる。
【0052】
封止部材5の外表面の形状については、発光装置100に求められる配光特性などに応じて種々選択することができる。例えば、封止部材5の外表面を凸状レンズ形状、凹状レンズ形状、フレネルレンズ形状等とすることで、発光装置の指向特性や光取出し効率を調整することができる。また封止部材5の外表面の少なくとも一部は、粗面、平坦面等を有していてもよい。
【0053】
封止部材5には、着色剤、光拡散材料、光反射材料、上述のフィラー、波長変換物質などを含有させることもできる。
【0054】
波長変換物質は、発光素子2の光を波長変換させる材料である。波長変換物質としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu(Al,Ga)12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb(Al,Ga)12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(POCl:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、SrAl1425:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、CaMgSi16Cl:Eu)、シリケート系蛍光体(例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)(O,N):Eu)若しくはαサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)等の酸窒化物系蛍光体、LSN系蛍光体(例えば、(La,Y)Si11:Ce)、BSESN系蛍光体(例えば、(Ba,Sr)Si:Eu)、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN:Eu)若しくはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(例えば、KSiF:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K(Si1-xAl)F6-x:Mn ここで、xは、0<x<1を満たす。)若しくはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn)等のフッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する量子ドット(例えば、(Cs,FA,MA)(Pb,Sn)(F,Cl,Br,I) ここで、FAとMAは、それぞれホルムアミジニウムとメチルアンモニウムを表す。)、II-VI族量子ドット(例えば、CdSe)、III-V族量子ドット(例えば、InP)、又はカルコパイライト構造を有する量子ドット(例えば、(Ag,Cu)(In,Ga)(S,Se))等を用いることができる。
【0055】
(接続部材)
ワイヤ6は発光素子2と光反射材1等の導電部材とを接続する接続部材の一例である。ワイヤ6の材料は、Ag、Au、Al、Cu、Pd等及びこれらの合金が好適に用いられる。特に、光反射率の高いAgまたはAg合金であることが好ましい。この場合は特に、ワイヤ6は後述する保護膜によって被覆されることが好ましい。これにより、Agを含むワイヤの硫化や断線を防止し、発光装置100の信頼性を高めることができる。
【0056】
また、母材1aがCuであり、ワイヤ6がAgまたはAg合金である場合、その間に非晶質のPdP合金層1cを備えることによって、CuとAgでの間の局部電池の形成を抑制することができる。これにより、光反射材1またはワイヤ6の劣化のおそれを低減し、信頼性の高い発光装置100とすることができる。
【0057】
(保護膜)
発光装置100はさらに、保護膜を備えてもよい。保護膜は、光反射材1の表面に設けられたAg含有層1eを少なくとも被覆する、主として光反射材1の表面のAg含有層1eの変色または腐食を抑制する部材である。さらに、任意に、発光素子2、接合部材4、ワイヤ6、基体(樹脂成形体3)等の光反射材1以外の部材の表面、Ag含有層1eが設けられていない光反射材1の表面を被覆してもよく、異なる部材の表面に連続して設けられてもよい。
【0058】
保護膜の材料としては、Al、SiO、TiO、ZrO、ZnO、Nb、MgO、In等の酸化物や、AlN、TiN、ZrN等の窒化物、ZnF、SrF等のフッ化物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。或いは、積層させるようにしてもよい。
【0059】
なお、接合部材4と光反射材1との熱膨張率差により、発光素子2の周囲において保護膜にクラックが形成され、発光素子2の近傍のAg含有層1eが硫化するおそれがある。しかし、本実施形態のようにAg含有層1eの厚みを0.05μm以上0.50μm以下と非常に薄くすることで硫化の進行が低減され、光反射材1の光反射率の低下を抑えることができる。
【0060】
次に、本実施形態に係る光反射材1を用いた発光装置の製造方法を説明する。
【0061】
本実施形態に係る発光装置の製造方法は、光反射材1を準備する工程と、光反射材1を備えるパッケージを準備する工程と、パッケージに発光素子2を実装する工程と、を備える。
【0062】
光反射材を準備する工程は、母材1aを準備し、母材1a上に非晶質のPdP合金層1cをめっきで形成し、PdP合金層1c上にAg含有層1eをめっきで形成することを含む。
【0063】
めっきの方法としては、電解めっきまたは無電解めっきを用いることができる。なかでも電解めっきは層の形成の速度が速く、量産性を高めることができるため、好ましい。
【0064】
母材1a上にPdP合金層1c及びAg含有層1eをめっきで形成する前に、母材1aの前処理を行うのが好ましい。前処理としては、希硫酸、希硝酸、希塩酸等の酸処理や、水酸化ナトリウムなどのアルカリ処理が挙げられ、これらを1回又は数回、同じ処理又は異なる処理を組み合わせて行うことができる。前処理を数回行う場合は、各処理後に純水を用いて流水洗浄するのが好ましい。母材1aがCuやCuを含む合金からなる金属板の場合、希硫酸が好ましく、FeやFeを含む合金からなる金属板の場合、希塩酸が好ましい。
【0065】
PdP合金層1cは、PdP合金層1c中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつPdP合金層を0.015μm以上0.02μm以下の厚みとなるように形成する。例えばPdP合金層1cは、
塩化パラジウム=0.5g/L以上5.0g/L以下
エチレンジアミン=3g/L以上10g/L以下
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム=2g/L以上10g/L以下
次亜りん酸ナトリウム=1g/L以上15g/L以下
チオジグリコ-ル酸=10mg/L以上50mg/L以下
pH7.5以上9.0以下
の浴組成を用いて、液温45℃以上75℃以下にて無電解浸漬めっきで、所望のめっき厚みになるようにめっき時間を調整して形成することができる。
【0066】
例えばAg含有層1eは、
シアン化銀カリウム=30g/L以上150g/L以下
シアン化カリウム=60g/L以上200g/L以下
炭酸カリウム=5g/L以上100g/L以下
セレノシアン酸カリウム=0.05mg/L以上5.00mg/L以下
の浴組成を用いて、液温15℃以上35℃以下、電流密度0.5A/dm以上7.0A/dm以下にて電解めっきで形成することができる。
【0067】
Ag含有層1eを電解めっきで形成する際には、Se系光沢剤、Sb系光沢剤、S系光沢剤、有機系光沢剤等の光沢剤を併用することで、光沢度を向上させることができる。光沢剤を多く用いると、Ag含有層1eの中にこれら光沢剤の成分が取り込まれ、耐食性を悪化させる要因となることがあるが、本実施形態では、Ag含有層1eをめっき形成する前にPdP合金層1cを形成し、その膜質を制御することで光沢剤の使用を少なくしても光沢度を高い範囲とすることができる。これにより、高い光沢度を有しつつ、耐食性にも優れた光反射材1を得る事ができる。
【0068】
また光反射材1を準備する工程において、母材1aとPdP合金層1cとの間にNi含有層1bをめっきで形成することを含むのが好ましい。例えばNi含有層1bは、
スルファミン酸ニッケル=300g/L以上600g/L以下
塩化ニッケル=2g/L以上15g/L以下
ほう酸=20g/L以上40g/L以下
pH3.6以上4.4以下
の浴組成を用いて、液温45℃以上65℃以下、電流密度1A/dm以上10A/dm以下にて電解めっきで形成することができる。
【0069】
Ni含有層1bはS系有機添加剤を含むめっき液を用いて形成することが好ましい。S有機添加剤としては、例えばサッカリン、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ブチンジール等の少なくとも1つを用いることができる。これらのS有機添加剤を光沢剤として、0.1g/L以上1.0g/L以下程度で複数種類を混合して添加することが有用である。なおJX金属商事株式会社製の電気ニッケル光沢剤(商品名NKニッケル)を用いてもよい。
【0070】
また光反射材1を準備する工程において、PdP合金層1cとAg含有層1eとの間にAu含有層1dをめっきで形成することを含むのが好ましい。例えばAu含有層1dは、
シアン化金カリウム=0.5g/L以上3.0g/L以下
クエン酸カリウム=50g/L以上150g/L以下
クエン酸=5g/L以上50g/L以下
りん酸カリウム=10g/L以上100g/L以下
pH3.3以上5.5以下
の浴組成を用いて、液温20℃以上55℃以下、電流密度0.2A/dm以上5.0A/dm以下にて電解めっきで形成することができる。
【0071】
<第2実施形態>
図3A及び図3Bを参照して、第2実施形態に係る発光装置及び発光装置に適用される光反射材を説明する。図3Aは、一実施形態の発光装置を説明するための概略斜視図である。図3Bは、図3Aの3B-3B線における概略断面図である。第2実施形態に係る発光装置200は、略平板状の光反射材1を備えること以外は第1実施形態の発光装置100と同様である。なお、第1実施形態と同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0072】
本実施形態においては、図3A及び図3Bに示すように、発光装置200に光反射材1を含むリード10を適用してもよい。発光装置200において、光反射材1(換言するとリード10)は上面視において一対の平板状に形成されている。光反射材1は、発光素子2が載置される載置部材、該発光素子2が2本のワイヤ6によって電気的に接続される正負の導電部材としての役割を有している。
【0073】
PdP合金層1cを含む非晶質層は通常の金属層より脆い懸念があるため、光反射材1の形状は、図3A及び図3Bに示すように、略平板状であることが好ましい。これにより、光反射材1の硫化や母材の酸化等を抑制して、光反射材1の信頼性を高め、光反射材1を用いた発光装置200の信頼性を高めることができる。
【0074】
発光装置200を例に、第2実施形態に係る発光装置の製造方法を説明する。
まず、光反射材1(以下、リード10と称する場合がある。)を準備する。具体的には、一対のリードを複数備えるように母材1aであるCuの金属板をパンチングする。次に、ウェットエッチングにより、パンチングした母材1aの所定の位置に段差を形成する。段差を形成した後に、母材1a上に少なくともPdP合金層1c及びAg含有層1eを順にめっきで形成することにより、図4Aに示すようなリード10となるリードフレームを形成する。
【0075】
次に、光反射材1を備えるパッケージを準備する。具体的には、上記のようにして得られたリードフレームに、トランスファモールド法で基体となる樹脂成形体3を形成する。樹脂成形体3は、図4Bに示すように、一対のリードフレームがそれぞれの凹部の底面に露出するように形成される。つまり、光反射材1がパッケージの底面の一部に露出されている。
【0076】
次に、パッケージの底面に発光素子2を実装する。図4Cに示すように、リードフレームの発光素子載置領域に、接合部材4を介して発光素子2を載置する。そして、発光素子2とリードフレームとをワイヤ6によって接続する。その後、波長変換物質を含む樹脂をポッティング(滴下)法によってそれぞれの凹部内に滴下して封止部材5を設ける。
【0077】
そして、図4Dに示すようなリードフレームとパッケージとを、ダイシングソー等を用いて切断し、図3A及び図3Bに示すような個々の発光装置200に個片化する。この切断により、発光装置200の外側面に光反射材1の断面が露出する。この断面においては、少なくとも母材1a、PdP合金層1c及びAg含有層1eが露出している。
【0078】
<実施例>
実施例として、図2Bに示す光反射材1と実質的に同様の構造の光反射材を作製した。
【0079】
実施例1として、三菱マテリアル株式会社製のCu-Fe系銅合金(商品名TAMAC194。以下の実施例ではCuFe合金と称する。)の母材1aの表面に、Ni含有層1bとして厚み2μmのNi層、下地層1cとして厚み0.01μmかつPの割合が4.0質量%のPdP合金層、Au含有層1dとして厚み0.003μmのAu層、Ag含有層1eとして厚み0.5μmのAg層をこの順に下記の条件にてめっきで形成した光反射材1を準備した。
【0080】
Ni含有層1bは、
スルファミン酸ニッケル=450g/L
塩化ニッケル=10g/L
ほう酸=30g/L
pH4.0
の浴組成を用いて、液温55℃、電流密度5A/dmでめっきして形成した。
【0081】
下地層1cとしてPdP合金層1cは、
塩化パラジウム=1.8g/L
エチレンジアミン=6g/L
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム=5g/L
次亜りん酸ナトリウム=4g/L
チオジグリコ-ル酸=30mg/L
pH8.2
の浴組成を用いて、液温60℃にて無電解浸漬めっきして形成した。
【0082】
Au含有層1dは、
シアン化金カリウム=1.5g/L
クエン酸カリウム=80g/L
クエン酸=10g/L
りん酸カリウム=50g/L
pH4.0
の浴組成を用いて、液温50℃、電流密度2A/dmでめっきして形成した。
【0083】
Ag含有層1eは、
シアン化銀カリウム=70g/L
シアン化カリウム=120g/L
炭酸カリウム=15g/L
セレノシアン酸カリウム=2mg/L
の浴組成を用いて、液温25℃、電流密度3A/dmでめっきして形成した。
【0084】
また実施例1と同様に、実施例2~12の光反射材1についても表1に示す条件で作製した。なお実施例9は、母材1aとしてDOWAメタルテック株式会社製のNiFe合金(商品名42%Ni-Fe。以下の実施例ではNiFe合金と称する。)を用いた。さらに比較例1~3として、下地層1cがPを含有しないPd層であること以外は実施例1と同様の構造である光反射材を表1に示す条件で作製した。
【0085】
実施例1~12の光反射材1及び比較例1~3の光反射材を用いて発光装置200を製作した。それぞれの発光装置について、積分式全光束測定装置を用いて全光束を測定し、比較例1の全光束測定値を100として相対全光束比を算出した。その結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、実施例1~12の光反射材1は、Ag含有層1eの厚みの範囲が0.05μm以上0.50μm以下と非常に薄いが、いずれも高い相対全光束比を示した。これは下地層1cのPdP合金層が、その上にめっきで形成されるAg含有層1eが母材1aの結晶構造から受ける影響を低減または排除して、緻密で欠陥が少なく光反射率が高いAg含有層1eを形成することができたためと考えられる。一方、比較例1~3の光反射材では、下地層1cが実施例と同様の厚みであったが、比較例2、3のようにAg含有層1eの厚みが0.5μm以下の場合は相対全光束比が低い値となった。比較例1のようにAg含有層1eの厚みを厚くした場合には、高い全光束を得た。
【0088】
これにより、いずれの実施例によっても、厚みの範囲が0.05μm以上0.50μm以下と非常に薄いAg含有層1eの反射率が、Ag含有層1eの厚みが2.0μmと厚い場合の反射率と同様に維持され、このような光反射材1を含む発光装置の光取り出し効率を維持できることが期待される。
【0089】
[項1]
発光素子と、
前記発光素子から出射された光を反射する光反射材と、を備え、
前記光反射材は、母材と、前記母材上に設けられた非晶質のPdP合金層と、前記PdP合金層上に設けられたAg含有層と、を有し、
前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層の厚みが0.015μm以上0.02μm以下である発光装置。
[項2]
前記Ag含有層の厚みが、0.05μm以上0.50μm以下である項1に記載の発光装置。
[項3]
前記母材と前記PdP合金層との間にNi含有層を有する項1又は2に記載の発光装置。
[項4]
前記Ni含有層は、光沢度が1.2以上である項3に記載の発光装置。
[項5]
前記Ni含有層はSを含有し、S含有量が100ppm以上200ppm以下である項3又は4に記載の発光装置。
[項6]
前記PdP合金層と前記Ag含有層との間にAu含有層を有する項1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
[項7]
前記Au含有層は、厚みが0.0015μm以上0.01μm以下である項6に記載の発光装置。
[項8]
前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上6質量%以下である項1から7のいずれか1項に記載の発光装置。
[項9]
前記光反射材は、前記Ag含有層が前記発光素子と対向している項1から8のいずれか1項に記載の発光装置。
[項10]
前記発光装置がさらに樹脂成形体を備え、
前記光反射材は前記Ag含有層が露出されるように前記樹脂成形体に埋め込まれている項1から9のいずれか1項に記載の発光装置。
[項11]
光反射材を準備する工程と、
前記光反射材を備えるパッケージを準備する工程と、
前記パッケージに発光素子を実装する工程と、を備え、
前記光反射材を準備する工程は、母材を準備し、前記母材上に非晶質のPdP合金層をめっきで形成し、前記PdP合金層上にAg含有層をめっきで形成することを含み、
前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層を0.015μm以上0.02μm以下の厚みで形成する発光装置の製造方法。
[項12]
前記Ag含有層を0.05μm以上0.50μm以下の厚みで形成する項11に記載の発光装置の製造方法。
[項13]
前記光反射材を準備する工程は、前記母材と前記PdP合金層との間にNi含有層をめっきで形成することを含み、前記Ni含有層はS系有機添加剤を含むめっき液を用いて形成する項11又は12に記載の発光装置の製造方法。
[項14]
前記光反射材を準備する工程は、前記PdP合金層と前記Ag含有層との間にAu含有層をめっきで形成することを含み、前記Au含有層を0.0015μm以上0.01μm以下の厚みで形成する項11から13のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
[項15]
母材と、前記母材上に設けられた非晶質のPdP合金層と、前記PdP合金層上に設けられたAg含有層と、を備える光反射材と、
前記光反射材を支持する基体と、を有し、
前記PdP合金層中のPの割合が3質量%以上10質量%以下、かつ前記PdP合金層の厚みが0.015μm以上0.02μm以下であるパッケージ。
【符号の説明】
【0090】
1 光反射材
1a 母材
1b Ni含有層
1c PdP合金層
1d Au含有層
1e Ag含有層
12 第一埋設部
13 第二埋設部
2 発光素子
3 樹脂成形体
31 側壁部
32 底面の一部
4 接合部材
5 封止部材
6 ワイヤ
10 リード
100、200 発光装置
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D