(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040673
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】イミド樹脂、硬化性樹脂組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240318BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08G73/10
C08G18/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145164
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4J034
4J043
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB04
4J034FD01
4J034GA02
4J034GA06
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4J034JA01
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4J034JA42
4J034KA01
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4J034LA32
4J034QA03
4J034QA05
4J034RA14
4J043PA02
4J043PB15
4J043QB58
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4J043TA22
4J043TB01
4J043UA132
4J043UB152
4J043VA092
4J043WA05
4J043XA03
4J043XA19
4J043ZA42
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂、硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物を提供する。
【解決手段】ポリオ-ル化合物(A)と、ポリイソシアネ-ト化合物(B)と、2個以上のカルボン酸無水物基を有する酸無水物基含有化合物(C)と、フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)を必須の反応原料とするイミド樹脂であって、前記化合物(D)が、下記一般式(1)で表される化合物を含むものであることを特徴とするイミド樹脂を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオ-ル化合物(A)と、
ポリイソシアネ-ト化合物(B)と、
2個以上のカルボン酸無水物基を有する酸無水物基含有化合物(C)と、
フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)を必須の反応原料とするイミド樹脂であって、
前記化合物(D)が、下記一般式(1)で表される化合物を含むものであることを特徴とするイミド樹脂。
【化1】
[式(1)中、Yは炭素原子数1~5のアルキレン基であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基であり、mは1~30の整数であり、nは1~30の整数である。]
【請求項2】
前記ポリオール化合物(A)の数平均分子量が、300~6000の範囲である請求項1記載のイミド樹脂。
【請求項3】
前記酸無水物基含有化合物(C)が、テトラカルボン酸二無水物である請求項1記載のイミド樹脂。
【請求項4】
前記テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリテ-ト無水物)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、及び1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオンからなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載のイミド樹脂。
【請求項5】
前記フェノール性水酸基含有化合物(D)の含有率が、前記イミド樹脂の必須反応原料中に20~70質量%の範囲である請求項1記載のイミド樹脂。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項記載のイミド樹脂と、熱硬化性樹脂とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂が、ノボラック型エポキシ樹脂である請求項6記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂、硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イミド樹脂は、耐熱性、電気特性、機械強度に優れることから、エレクトロニクス分野をはじめ様々な分野で利用されている。一般的に高物性を発現する芳香族イミド樹脂は、イミド基とフェニル基間の分子間電荷移動(CT)錯体形成によって有機溶剤に溶解し難く、製品としてはフィルム状やその前駆体溶液として提供されている。しかし、フィルムでは成型・加工・塗工が困難であり、前駆体ではイミド化工程に高温が必要である等、適用用途や応用面での制限が大きい等の問題があった。
【0003】
上記問題点を解決するため、芳香族イミド樹脂に代えて、有機溶剤に対する可溶性を有
するブタジエン変性ソフトイミド樹脂の検討が進められているが(例えば、特許文献1参照)、このようなブタジエン変性ソフトイミド樹脂を用いた半導体用基板では、ブタジエン由来の柔軟な骨格が基板の応力緩和性能を発現し、半導体製造時における熱による基板の反りを緩和できるなど、適用用途や応用面での制限が従来より緩和されてはいるものの、電気電子材料の分野において、高速大容量通信実現に向け今後ますます高まる要求特性(誘電特性)を満足するものではなく、昨今の市場要求に対し十分なものではなかった。
【0004】
そこで、市場要求を満足し得る、より一層優れた誘電特性を有する材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂、硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ポリオ-ル化合物と、ポリイソシアネ-ト化合物と、2個以上のカルボン酸無水物基を有する酸無水物基含有化合物と、特定の構造を有するフェノ-ル性水酸基含有化合物を必須の反応原料とするイミド樹脂を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリオ-ル化合物(A)と、ポリイソシアネ-ト化合物(B)と、2個以上のカルボン酸無水物基を有する酸無水物基含有化合物(C)と、フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)を必須の反応原料とするイミド樹脂であって、前記化合物(D)が、下記一般式(1)で表される化合物を含むものであることを特徴とするイミド樹脂、硬化性樹脂組成物、及び前記硬化性樹脂組成物の硬化物に関するものである。
【0009】
【0010】
[式(1)中、Yは炭素原子数1~5のアルキレン基であり、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基であり、mは1~30の整数であり、nは1~30の整数である。]
【発明の効果】
【0011】
本発明のイミド樹脂は、優れた誘電特性を有する硬化物を形成できることから、電気電子材料に好適に用いることができる。なお、本発明でいう「優れた誘電特性」とは、低誘電率及び低誘電正接のことを云う。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のイミド樹脂は、ポリオ-ル化合物(A)と、ポリイソシアネ-ト化合物(B)と、2個以上のカルボン酸無水物基を有する酸無水物基含有化合物(C)と、フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)を必須の反応原料とするものであることを特徴とする。
【0013】
前記ポリオール化合物(A)としては、例えば、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリシロキサンポリオール、これらのポリオール化合物の2種以上の共重縮合構造を有するポリ―ル化合物等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、ポリオレフィンポリオール、ポリシロキサンポリオールが好ましい。
【0014】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリオレフィン構造やポリジエン構造を有するポリオール化合物等が挙げられる。具体的には、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等が挙げられ、これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、ポリオレフィンポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオールが好ましく、水素添加ポリブタジエンポリオールがより好ましい。
【0015】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール等アルキレンエーテルポリオールやこれらポリアルキレンポリオールの共重合体などが挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0016】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、プロピレンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等から得られるポリアルキレンカーボネートポリオールやビスフェノールAやビスフェノールF,S等のアルキレンオキサイド付加ジオール等から得られるポリカーボネートポリオール、これらの共重合体などが挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0017】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アルキレンジオールと多価カルボン酸とのエステル化物、あるいは多価カルボン酸のアルキルエステルとのエステル交換反応物、εカプロラクトン系ポリラクトンポリオール等のポリラクトンポリオールなどが挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0018】
前記ポリシロキサンポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0019】
前記ポリオール化合物(A)の数平均分子量としては、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、300~6000の範囲が好ましく、1000~4000の範囲がより好ましい。
【0020】
前記ポリオール化合物(A)の使用量は、前記イミド樹脂の必須反応原料中に20~60質量%の範囲が好ましい。
【0021】
前記ポリイソシアネート化合物(B)としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;フェニレンジイソシアネート(p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート)、キシレンジイソシアネート(p-キシレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート)、トルエンジイソシアネート(トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、1,3-ビス(α,α-ジメチルイソシアナートメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニレンエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート芳香族ジイソシアネート化合物;下記一般式(2)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、脂環式イソシアネートが好ましい。
【0022】
【化2】
[式(2)中、R
1はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基の何れかである。R
2はそれぞれ独立して炭素原子数1~4のアルキル基である。lは0又は1~3の整数であり、mは1~15の整数である。]
【0023】
前記ポリイソシアネート化合物(B)の使用量は、前記イミド樹脂の必須反応原料中に3~20質量%の範囲が好ましい。
【0024】
前記酸無水物基含有化合物(C)としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0025】
前記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物)、ジフェニルエーテル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,3,3’,4-テトラカルボン酸二無水物)、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物)、デカヒドロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ジクロロナフタレンテトラカルボン酸二無水物(2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物)、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,3,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ベリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)メタン二無水物(ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物)、ビス(ジカルボキシフェニル)エタン二無水物(1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物)、ビス(ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物(2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物及び1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオンからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0026】
また、前記酸無水物基含有化合物(C)としては、必要に応じて、前記芳香族テトラカルボン酸二酸無水物に、芳香族トリカルボン酸無水物や芳香族テトラカルボン酸一無水物を併用し、混合して用いることもできる。
【0027】
前記酸無水物基含有化合物(C)の使用量は、前記イミド樹脂の必須反応原料中に10質量%以下の範囲が好ましい。
【0028】
前記フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)としては、下記一般式(1)で表される化合物を用いる。
【0029】
【0030】
[式(1)中、Yは炭素原子数1~5のアルキレン基であり、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基であり、mは1~30の整数であり、nは1~30の整数である。]
【0031】
前記フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)としては、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、上記一般式(1)におけるR1がメチル基であり、R2がメチル基であり、mが4~10の整数であり、nが4~10の整数であり、Yが炭素原子数1~3のアルキレン基であるのものが好ましい。
【0032】
前記フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)の市販品としては、例えば、Sabic社製「SA90-100」等が挙げられる。
【0033】
前記フェノール性水酸基含有化合物(D)の含有率は、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、前記イミド樹脂の必須反応原料中に20~70質量%の範囲が好ましく、30~65質量%の範囲がより好ましい。
【0034】
本発明のイミド樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。例えば、前記ポリオ-ル化合物(A)、前記ポリイソシアネ-ト化合物(B)、前記酸無水物基含有化合物(C)、前記フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)を含む必反応原料を一括で反応させる方法(1)、前記反応原料を順次反応させる方法(2)等が挙げられる。
【0035】
前記方法(1)における反応温度としては、100~160℃の範囲が好ましい。
【0036】
前記方法(1)における反応時間としては、4~10時間の範囲が好ましい。
【0037】
前記順次反応させる方法(2)としては、前記ポリオ-ル化合物(A)と、前記ポリイソシアネ-ト化合物(B)を50~100℃で0.5~4時間で反応させて、次いで、前記酸無水物基含有化合物(C)、前記フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)を120~160℃で3~6時間反応させる方法等が挙げられる。
【0038】
前記方法(2)における前記ポリオール化合物(A)と、前記ポリイソシアネート化合物(B)の反応は、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、前記ポリオール化合物(A)が有する水酸基と、前記ポリイソシアネート化合物(B)が有するイソシアネート基とのモル比[NCO/OH]が、1.1~3の範囲となることが好ましく、2~2.5となる範囲がより好ましい。
【0039】
前記方法(2)における前記ポリオール化合物(A)と、前記ポリイソシアネート化合物(B)の反応物と、前記フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)の反応は、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、前記フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)が有するフェノール性水酸基と前記反応物が有するイソシアネート基とのモル比[NCO/フェノール性OH]が、2以上が好ましい。
【0040】
前記方法(1)及び(2)の各反応においては、合成触媒を用いることもできる。
【0041】
前記合成触媒としては、例えば、テトラメチルブタンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N’-ジメチルピペリジン、α-メチルベンジルジメチルアミン、N-メチルモルホリン、トリエチレンジアミン等の三級アミン、ジブチル錫ラウレート、ジメチル錫ジクロライド、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の有機金属触媒などが挙げられる。これらの合成触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記イミド樹脂と熱硬化性樹脂とを含有するものである。
【0043】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0044】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0045】
前記エポキシ樹脂の軟化点は、優れた誘電特性を有する硬化物を形成可能なイミド樹脂が得られることから、50~120℃の範囲が好ましい。
【0046】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、有機溶剤、無機質充填材やポリマー微粒子、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、難燃剤、保存安定化剤等の各種添加剤を含有することもできる。
【0047】
前記硬化促進剤としては、硬化反応を促進するものであり、例えば、リン系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記硬化促進剤の添加量は、例えば、前記硬化性樹脂組成物の固形分中に0.01~10質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0048】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0049】
前記酸化防止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、p-メトキシクレゾール、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のフェノール化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物、メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N.N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソーN-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物、リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物、ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0050】
また、前記酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80が」等が挙げられる。
【0051】
前記重合禁止剤としては、上述の酸化防止剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0052】
また、前記重合禁止剤の市販品としては、上述の酸化防止剤の市販品として例示したものと同様のものことができ、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80が」等が挙げられる。
【0053】
前記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0054】
前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。
【0055】
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0056】
前記無機顔料としては、例えば、白色顔料、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。これらの無機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0057】
前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン,酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛等が挙げられる。
【0058】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの有機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0059】
前記難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独でも用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら難燃剤を用いる場合は、全樹脂組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明の硬化物は、前記イミド樹脂と、前記熱硬化性樹脂とを含む硬化性樹脂組成物を
熱硬化させて得ることができる。
【0061】
前記硬化物の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。例えば、前記イミド樹脂と前記熱硬化性樹脂を混合し、硬化性樹脂組成物を得、前記硬化性樹脂組成物を加熱硬化させる方法(a)等が挙げられる。
【0062】
前記方法(a)における加熱条件は、通常150℃~220℃で20分~180分の範囲で選択されることが好ましく、160℃~200℃で30~120分の範囲で選択されることがより好ましい。
【実施例0063】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に挙げた実施例に限定されるものではない。
【0064】
(合成例1:イミド樹脂(1)の合成)
(1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えたフラスコに、271.7質量部のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMAc)と、14.1質量部(0.064mol)のイソホロンジイソシアネート(IPDI)と、112.2質量部(0.03mol)の両末端OH基ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「G-3000」、水酸基価:30mgKOH/g)とを供給し、この混合溶液を50℃まで昇温した後、この温度にて1時間保持した。次いで、イソシアネート基の量が所定値以下であることを確認し、上記混合溶液に、145.2質量部(0.09mol)の両末端フェノール性水酸基含有オリゴフェニレンエーテル樹脂(Sabic社製「SA90-100」、水酸基当量:807g/mol)と、1質量部(0.003mol)のベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とを添加した。その後、混合溶液を140℃まで昇温した後、4時間反応を継続した。
【0065】
(2)赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1の吸収ピークが完全に消滅したことを確認し、粘度の上昇が収まったところで反応を終了した。以上のようにして、分子末端がフェノール樹脂(両末端フェノール性水酸基含有オリゴフェニレンエーテル樹脂)で封止された構造を有するイミド樹脂(1)を合成した。かかるイミド樹脂(1)を含有する混合溶液は、イソシアネート解離時のフェノール性水酸基の含有量が0.66mmol/gであり、不揮発分の含有量が50質量%であり、粘度(25℃)が6.0Pa・sであった。この混合溶液をイミド樹脂溶液(1)とした。
【0066】
(合成例2:イミド樹脂(2)の合成)
(1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えたフラスコに、285.2質量部のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMAc)と、19.3質量部(0.087mol)のイソホロンジイソシアネート(IPDI)と、153.9質量部(0.043mol)の両末端OH基ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「G-3000」、水酸基価:30mgKOH/g)とを供給し、この混合溶液を50℃まで昇温した後、この温度にて1時間保持した。次いで、イソシアネート基の量が所定値以下であることを確認し、上記混合溶液に、105.1質量部(0.065mol)の両末端フェノール性水酸基含有オリゴフェニレンエーテル樹脂(Sabic社製「SA90-100」、水酸基当量:807g/mol)と、7.1質量部(0.022mol)のベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とを添加した。その後、混合溶液を140℃まで昇温した後、4時間反応を継続した。
【0067】
(2)赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1の吸収ピークが完全に消滅したことを確認し、粘度の上昇が収まったところで反応を終了した。以上のようにして、分子末端がフェノール樹脂(両末端フェノール性水酸基含有オリゴフェニレンエーテル樹脂)で封止された構造を有するイミド樹脂(2)を合成した。かかるイミド樹脂(2)を含有する混合溶液は、イソシアネート解離時のフェノール性水酸基の含有量が0.45mmol/gであり、不揮発分の含有量が50質量%であり、粘度(25℃)が9.9Pa・sであった。この混合溶液をイミド樹脂溶液(2)とした。
【0068】
(合成例3:イミド樹脂(3)の合成)
(1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えたフラスコに、168.8質量部のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMAc)と、14.1質量部(0.06mol)のイソホロンジイソシアネート(IPDI)と、112.2質量部(0.03mol)のOH基末端ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「G-3000」、水酸基価:30mgKOH/g)とを供給し、この混合溶液を50℃まで昇温した後、この温度にて1時間保持した。次いで、イソシアネート基の量が所定値以下であることを確認し、混合溶液に、42.5質量部(0.06mol)のオルソクレゾールノボラック型フェノール樹脂と、1質量部(0.003mol)のベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とを添加した。その後、混合溶液を140℃まで昇温した後、4時間反応を継続した。
【0069】
(2)赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1の吸収ピークが完全に消滅したことを確認し、粘度の上昇が収まったところで反応を終了した。以上のようにして、分子末端がフェノール樹脂(オルソクレゾールノボラック型フェノール樹脂)で封止された構造を有するイミド樹脂(3)を合成した。かかるイミド樹脂(3)を含有する混合溶液は、イソシアネート解離時のフェノール性水酸基の含有量が2.09mmol/gであり、不揮発分の含有量が50質量%であり、粘度(25℃)が2.5Pa・sであった。この混合溶液をイミド樹脂溶液(3)とした。
【0070】
(合成例4:イミド樹脂(4)の合成)
(1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えたフラスコに、168.8質量部のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMAc)と、14.1質量部(0.06mol)のイソホロンジイソシアネート(IPDI)と、118.8質量部(0.03mol)のOH基末端ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「G-3000」、水酸基価:30mgKOH/g)とを供給し、この混合溶液を50℃まで昇温した後、この温度にて1時間保持した。次いで、イソシアネート基の量が所定値以下であることを確認し、混合溶液に、21.2質量部(0.03mol)のオルソクレゾールノボラック型フェノール樹脂と、5.1質量部(0.015mol)のベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とを添加した。その後、混合溶液を140℃まで昇温した後、4時間反応を継続した。
【0071】
(2)赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1の吸収ピークが完全に消滅したことを確認し、粘度の上昇が収まったところで反応を終了した。以上のようにして、分子末端がフェノール樹脂(オルソクレゾールノボラック型フェノール樹脂)で封止された構造を有するイミド樹脂(4)を合成した。かかるイミド樹脂(4)を含有する混合溶液は、イソシアネート解離時のフェノール性水酸基の含有量が1.05mmol/gであり、不揮発分の含有量が50質量%であり、粘度(25℃)が36.5Pa・sであった。この混合溶液をイミド樹脂溶液(4)とした。
【0072】
(実施例1:硬化性樹脂組成物(1)の調製)
合成例1で得た不揮発分50質量%のイミド樹脂溶液(1)200質量部(固形分として100質量部)と、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON HP-4710」、エポキシ当量:172g/eq)11.5質量部と、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成株式会社製「1,2-DMZ」)を0.56質量部とを混合して、硬化性樹脂組成物(1)を得た。なお、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂が有するエポキシ基(E)に対する、イミド樹脂溶液(1)に含まれるイミド樹脂が有するフェノール性水酸基(P)のモル比(P/E)は、1.0であった。
【0073】
(実施例2:硬化性樹脂組成物(2)の調製)
合成例2で得た不揮発分50質量%イミド樹脂溶液(2)200質量部(固形分として100質量部)と、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON HP-4710」、エポキシ当量:172g/eq)7.8質量部と、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成株式会社製「1,2-DMZ」)0.54質量部とを混合して、硬化性樹脂組成物(2)を得た。なお、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂が有するエポキシ基(E)に対する、イミド樹脂溶液(2)に含まれるイミド樹脂が有するフェノール性水酸基(P)のモル比(P/E)は、1.0であった。
【0074】
(比較例1:硬化性樹脂組成物(R1)の調製)
合成例3で得た不揮発分50質量%イミド樹脂溶液(3)200質量部(固形分として100質量部)と、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON HP-4710」、エポキシ当量:172g/eq)36.1質量部と、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成株式会社製「1,2-DMZ」)0.68質量部とを混合して、硬化性樹脂組成物(R1)を得た。なお、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂が有するエポキシ基(E)に対する、イミド樹脂溶液(3)に含まれるイミド樹脂が有するフェノール性水酸基(P)のモル比(P/E)は、1.0であった。
【0075】
(比較例2:硬化性樹脂組成物(R2)の調製)
合成例4で得た不揮発分50質量%イミド樹脂溶液(4)200質量部(固形分として100質量部)と、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON HP-4710」、エポキシ当量:172g/eq)18.1質量部と、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成株式会社製「1,2-DMZ」)0.59質量部とを混合して、硬化性樹脂組成物(R2)を得た。なお、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂が有するエポキシ基(E)に対する、イミド樹脂溶液(4)に含まれるイミド樹脂が有するフェノール性水酸基(P)のモル比(P/E)は、1.0であった。
【0076】
上記の実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物(1)、(2)、(R1)及び(R2)を用いて、下記の評価を行った。
【0077】
[誘電率の測定方法]
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて鏡面アルミ基板上に乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、170℃×1時間で硬化させてアルミ基板上に硬化フィルムを作成し試験片とサンプル片とした。次いで、サンプル片について、アルミ基板から樹脂膜を剥離した後、約1mm幅の短冊状サンプルを作成し、これを試験片として、アジレント・テクノロジー株式会社製「ネットワークアナライザE8362C」を用いて、空洞共振法により試験片の1GHzでの誘電率を測定した。
【0078】
[誘電正接の測定方法]
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて鏡面アルミ基板上に乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、170℃×1時間で硬化させてアルミ基板上に硬化フィルムを作成し試験片とサンプル片とした。次いで、サンプル片について、アルミ基板から樹脂膜を剥離した後、約1mm幅の短冊状サンプルを作成し、これを試験片として、アジレント・テクノロジー株式会社製「ネットワークアナライザE8362C」を用いて、空洞共振法により試験片の1GHzでの誘電正接を測定した。
【0079】
実施例1及び2で作製した硬化性樹脂組成物(1)及び(2)、並びに比較例1及び2で作製した硬化性樹脂組成物(R1)及び(R2)の組成及び評価結果を表1に示す。
【0080】
【0081】
表1におけるイミド樹脂及びナフトールノボラック型エポキシ樹脂の質量部の記載は、固形分値である。
【0082】
表1中の「ナフトールノボラック型エポキシ樹脂」は、DIC株式会社製「EPICLON HP-4710」を示す。
【0083】
表1中の「イミダゾール系硬化促進剤」は、四国化成株式会社製「1,2-DMZ」を示す。
【0084】
表1に示した実施例1及び2は、本発明のイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物の例である。これらの硬化性樹脂組成物の硬化物は、優れた誘電特性を有することが確認できた。
【0085】
一方、表1に示した比較例1及び2は、フェノ-ル性水酸基含有化合物(D)を用いないイミド樹脂を含有する硬化性樹脂組成物の例である。これらの硬化性樹脂組成物の硬化物は、誘電率、誘電正接がともに高く、誘電特性が著しく不十分であることが確認できた。