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特開2024-40709デポジッター用ロールインフラワーペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040709
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】デポジッター用ロールインフラワーペースト
(51)【国際特許分類】
   A23L 9/20 20160101AFI20240318BHJP
   A21D 2/14 20060101ALI20240318BHJP
   A21D 13/19 20170101ALI20240318BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A23L9/20
A21D2/14
A21D13/19
A21D10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145231
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】三木 研司
(72)【発明者】
【氏名】神田 みき
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和洋
【テーマコード(参考)】
4B025
4B032
【Fターム(参考)】
4B025LB20
4B025LG04
4B025LG14
4B025LG15
4B025LG26
4B025LG28
4B025LG29
4B025LG32
4B025LG52
4B025LG53
4B025LP01
4B025LP10
4B025LP12
4B025LP16
4B025LP20
4B032DB01
4B032DB13
4B032DB17
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK41
4B032DK47
4B032DK54
4B032DK70
4B032DL20
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP33
4B032DP37
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】付着性が低減され、良好な層状構造の複合ベーカリー生地を得ることが可能である、デポジッター用ロールインフラワーペーストを提供すること。
【解決手段】エステル交換油脂を含有する食用油脂5~30質量%、及び糖類5~45質量%を含有し、対水糖濃度が50~199質量%であることを特徴とする、デポジッター用ロールインフラワーペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル交換油脂を含有する食用油脂5~30質量%、及び糖類5~45質量%を含有し、対水糖濃度が50~199質量%であることを特徴とする、デポジッター用ロールインフラワーペースト。
【請求項2】
エステル交換油脂を含有する食用油脂5~30質量%、及び糖類5~45質量%を含有し、対水糖濃度が50~199質量%であるロールインフラワーペーストを、デポジッターを用いてシート状に押し出してベーカリー生地上に供給し、ロールインすることを特徴とする、複合ベーカリー生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デポジッターを用いてシート状に押し出してベーカリー生地上に供給し、ロールインするためのデポジッター用ロールインフラワーペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
パン生地にフラワーペーストをロールインして得られるベーカリー製品は外観が美麗であるのみならず、断面も層状構造が美麗であり、また食感もソフトで老化しにくいことから、多くの商品が市場に見られる。
【0003】
その一般的な製造方法は、パン生地などのベーカリー生地をシーターや麺棒で薄く伸展し、そこにシート状に成形されたフラワーペーストを積載し、ロールインした複合ベーカリー生地を、さらに各種の成形を行った後、焼成する、というものである。
【0004】
ここで、リバースシータ―や麺棒を用いた小規模生産であれば問題ないが、連続式製パン法であると、シート状に成型されたフラワーペーストを使用すると、包材から取り出す作業や、連続的にベーカリー生地上に並べる作業が生じ、煩雑であることに加え、フラワーペーストの継ぎ目部分が安定した焼き上がりにならない恐れもある。
【0005】
そのため、連続式製パン法ではファットポンプを使用して連続的にフラワーペーストをシート状に押し出してベーカリー生地上に連続的に載置する方法がとられる。
【0006】
しかし、ファットポンプの送り出し機構のせん断圧によってフラワーペーストの乳化が破壊されて油脂や水分が分離してしまったり、軟化して流動状になってしまって層がきれいにできないなどの問題が発生してしまう。
【0007】
そのため、トッピング用やサンド用の軟らかなフラワーペーストやジャム、クリームなどの充填に使用されるデポジッターを使用する場合がある。このデポジッターは送り出し機構の圧力がファットポンプに比べて格段に低いため、上記のような乳化破壊や軟化のおそれは少ない。
【0008】
しかし、反対に軟らかいフラワーペーストしか使用できないため、ロールイン可能な硬い物性のフラワーペーストを用いると、切れや割れ目が生じてしまい、きれいな層ができないという問題が生じてしまう。
【0009】
そのため、デポジッターでも使用可能なロールイン用のフラワーペーストについての検討が各種行われており、とくに、高蛋白含量且つ高油分含量としたフラワーペーストは機械耐性もあり、且つロールイン用としての良好な伸展性も有することから広く利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0010】
しかし、フラワーペーストを高蛋白含量且つ高油分含量とした場合、デポジッター内や吐出口などで機械への付着性が高く、安定したシート状の吐出ができにくい問題や、ベーカリー生地への密着性が低下して層剥がれを起こしやすい問題があった。さらに、特許文献1に記載のフラワーペーストは甘味度が低いため、菓子パンの主流である甘い風味のフィリングには使用できないことに加え、伸展性の付与のために液状油を多く使用することから上記の付着性の問題に加え、べちゃついた食感になりやすいという問題があり、また、特許文献2に記載のフラワーペーストは生地物性とパンの食感改良が目的であるため呈味成分の付与は考えられておらず、風味発現性に問題が残るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平07-184528号公報
【特許文献2】特開平11-127765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は付着性が低減され、進展性が良好で、良好な層状構造の複合ベーカリー生地を得ることが可能である、デポジッター用ロールインフラワーペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、フラワーペーストに使用する油脂を特定の油脂に限定し、さらに、水相中の糖の含有比、対水糖濃度を調整することで上記課題を達成可能であることを見出した。
【0014】
本発明は、上記知見により得られたものであり、エステル交換油脂を含有する食用油脂5~30質量%、及び糖類5~45質量%を含有し、対水糖濃度が50~199質量%であることを特徴とする、デポジッター用ロールインフラワーペーストを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストを使用することにより、デポジッターへの付着性が改善され、連続的にきれいな層状のフラワーペースト層をベーカリー生地上に供給できる。そのため、外観や断面がきれいな層状構造を有する美しいベーカリー製品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストについて詳述する。
ここで、本発明でいうフラワーペーストとは、澱粉類の糊化によるボディーを有するものである。
【0017】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストに用いられる上記澱粉類としては、一般的な小麦粉、コーンスターチの他、各種澱粉から得られる化工澱粉を用いることができる。
【0018】
上記澱粉類の含有量は、本発明のデポジッター用ロールインフラワーペースト中、好ましくは2~12質量%、より好ましくは4~10質量%である。該澱粉類の含有量が2質量%未満では、液状となって十分にペースト化されず、また、10質量%超では、伸展性が悪く、また硬く口溶けの悪いものとなる。
【0019】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストはエステル交換油脂を含有する。
【0020】
エステル交換油脂を用いることにより、デポジッターを通しても硬さの変化が少なく、デポジッターへの付着性が少ないロールインフラワーペーストとすることができる。
【0021】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストの油相中におけるエステル交換油脂の含有量は30質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0022】
以下、上記エステル交換油脂について詳しく述べる。
上記エステル交換油脂は、油脂配合物をランダムエステル交換(非選択的エステル交換)して得られる油脂である。
【0023】
該油脂配合物に使用することのできる油脂としては、食用に使用可能な油脂であれば特に制限なく使用することができ、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0024】
また、上記エステル交換油脂を得るためのエステル交換反応は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよく、また、ランダムエステル反応であっても、位置選択性のエステル交換反応であってもよいが、化学的触媒又は位置選択性のない酵素を用いた、ランダムエステル反応であることがより好ましい。
【0025】
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記位置選択性のない酵素としては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土やセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
【0026】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストは、上記エステル交換油脂を1種又は2種以上用いることができる。
【0027】
なお、本発明では、デポジッター通過時の機械耐性、とくに油分分離抑制の高い効果を得られることから、デポジッターへの付着性が特に少ない点で、上記エステル交換油脂の一部または全部が、パーム分別軟部油を70質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%含有する油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂であることが好ましい。
【0028】
ここで、上記油脂配合物に使用するパーム分別軟部油とは、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であり、通常、ヨウ素価52~70のものである。本発明に用いられるパーム分別軟部油としては、ヨウ素価が52以上のパームオレインを使用することが好ましく、ヨウ素価54以上のパームオレインを使用することがより好ましく、ヨウ素価60以上のパームスーパーオレインを使用することが更に好ましい。
【0029】
上記油脂配合物に必要に応じ配合する、上記パーム分別軟部油以外の油脂は、求める油脂組成物の硬さに応じ、適宜選択することができ、その代表例としては、大豆油、キャノーラ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。
【0030】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストのエステル交換油脂中に占める、上記パーム分別軟部油を70質量%以上含む油脂配合物をエステル交換して得られたエステル交換油脂の含有量は51質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0031】
またさらに、本発明では、伸展性や生地密着性、保型性や焼き残り性の高いロールインフラワーペースが得られることから、極度硬化油を、油相中の0.01~1質量%、好ましくは0.01~0.5質量%、より好ましくは0.01~0.3質量%使用することが好ましい。
【0032】
本発明で使用する上記極度硬化油とは、1種又は2種以上の油脂からなる配合油を、ヨウ素価が5以下、好ましくは1未満となるまで水素添加した硬化油脂であって、その融点が好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上の硬化油脂である。上記配合油に用い得る油脂としては、例えば、パーム油、コーン油、綿実油、大豆油、ハイエルシンナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。
【0033】
本発明においては、上記極度硬化油の中でも、上記効果が特に高い点で、ハイエルシンナタネ油の極度硬化油、大豆油の極度硬化油及びパーム油の極度硬化油から選択される1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0034】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストは、上記エステル交換油脂及び極度硬化油脂以外のその他の油脂を用いることができる。上記その他の油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストの油相中における上記その他の油脂の含有量は70質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることが特に好ましい。
【0036】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストにおける食用油脂の含量は好ましくは5~30質量%、より好ましくは8~30質量%、さらに好ましくは8~20質量%である。食用油脂の含量が5%未満であると、伸展性が悪化するおそれがあり、乳化安定性が悪化し、べとつきやすく、油分が分離しやすくなるため、デポジッターへの付着性が増加してしまう。
【0037】
なお、この油脂分含量は直接配合する油脂以外に油脂分を含有する食品素材や食品添加物を使用した場合には、それらに含まれる油脂分を合わせて算出するものとする。
【0038】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストの糖類の含有量は、固形分として、好ましくは20~50質量%、より好ましくは25~49質量%である。糖類の含有量が20質量%未満では、伸展性が悪化し、ソフトな食感が得られないことに加え、甘味が感じられなくなってしまう。また、50質量%超では、伸展性が悪くなってしまうことに加え、甘味が強く感じやすい等の問題が生じる。
【0039】
上記糖類としては、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
【0040】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストは、対水糖濃度が50~199質量%、好ましくは65~149質量%、より好ましくは65~99質量%であることを特徴とする。上記対水糖濃度が50質量%未満または199質量%超であると、デポジッターへの付着性及び伸展性も悪くなってしまう。
【0041】
なお、ここでいう対水糖濃度とは、デポジッター用ロールインフラワーペーストに含まれる水の質量(配合する水及び配合材料に由来する水分の合計量)に対する糖(配合するすべての糖)の質量の割合を示すものである。
【0042】
また、本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストの水の含有量は、好ましくは20~70質量%、さらに好ましくは35~55質量%である。ここでいう水の含有量とは、配合する水の他、配合材料に由来する水分を含めたものである。
【0043】
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストには、通常フラワーペースト類の原料として使用し得るその他の食品素材や食品添加物を使用することが可能であり、例えば、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、グリセリン脂肪酸エステル・グリセリン酢酸脂肪酸エステル・グリセリン乳酸脂肪酸エステル・グリセリンコハク酸脂肪酸エステル・グリセリン酒石酸脂肪酸エステル・グリセリンクエン酸脂肪酸エステル・グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド・レシチン・リゾレシチン等の乳化剤、全卵・卵黄・卵白・乾燥全卵・乾燥卵黄・乾燥卵白・酵素処理卵黄・酵素処理全卵などの卵類、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳・バターゼラム等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、ホエー蛋白濃縮物・乳脂肪球皮膜蛋白質・トータルミルクプロテイン等の乳蛋白や動物蛋白、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、酵素、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、野菜類、肉類、魚介類等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
次に、本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストの好ましい製造方法について述べる。
本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストは、エステル交換油脂を含有する食用油脂8~20質量%、及び糖類5~45質量%を含有し、対水糖濃度が50~199質量%となるように、食用油脂、澱粉類、糖類及び水を含有するフラワーペースト原料を混合し、加熱し、冷却することによって得ることができる。
【0045】
以下、具体的な製造方法を述べる。
まず、糖類及び水に、必要に応じ水溶性成分を添加、混合し、水相を得る。別途油脂に、必要に応じ油溶性成分を添加、混合し、油相を得る。上記水相及び油相は60℃以上に加温することが好ましい。上記水相に上記油相を乳化混合して予備乳化組成物を作成する。なお、澱粉類は、作業性の点から、油相に添加するのが好ましい。
【0046】
次いで、得られた上記予備乳化組成物を、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、好ましくは圧力0~80MPaの範囲で均質化した後、加熱する。加熱は、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT、HTST、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理、あるいは直火等を用いた加熱調理により行なうことができる。加熱温度は60~130℃が好ましく、加熱時間は0.5~30分が好ましい。また、加熱後には必要により再度均質化してもよい。
【0047】
次いで、均質化した後、加熱した上記予備乳化組成物を冷却する。冷却は急速冷却、徐冷却等のいずれでもよく、冷却の前、又は後にエージングを行ってもよい。更に、得られた本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストは、必要により、冷蔵状態もしくは冷凍状態で保存してもよい。
【0048】
このようにして得られた本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストは、連続式ベーカリー生産ラインにおいて、上記本発明のロールインフラワーペーストを、デポジッターを用いてシート状に押し出してベーカリー生地上に供給し、これをロールインして複合ベーカリー生地とするために用いることができる。
【0049】
上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地、蒸しケーキ生地、イーストドーナツ生地などのケーキ生地類や、食パン生地、菓子パン生地、フランスパン生地、デニッシュ生地、クロワッサン生地、スイートロール生地等のパン類生地が挙げられるが、とくにパン類生地であることが好ましい。
【0050】
ここで上記本発明のデポジッター用ロールインフラワーペーストのロールイン量は、ベーカリー生地により異なるものであり、特に限定されるものではない。
【0051】
複合ベーカリー生地の好ましい層数は目的とする製品により異なるものであり、特に限定されるものではないが、好ましくは3~1024層、より好ましくは4~256層である。
【0052】
ロールイン時の折り畳み方法としてはとくに限定されず、ラミネーターやパイラーによる連続式折り畳み方法などが挙げられる。
【0053】
ロールインを終えた複合ベーカリー生地は、必要に応じリタードを取ったあと、最終圧延を行い、各種成型を行ったのち、必要に応じパン類についてはホイロをとったのち、加熱することによりベーカリー製品とすることができる。
【0054】
複合ベーカリー生地をベーカリー製品とする際の加熱方法としては焼成、フライ、蒸し、蒸し焼きなどの方法があるが、適宜組み合わせて行うことも可能である。
【0055】
焼成する場合の加熱条件は、通常のベーカリー製品と同様、160~250℃、特に170~220℃で行なうのが好ましい。
【0056】
フライする場合の加熱条件は、通常のドーナツ等と同様、160~250℃、特に170~220℃で行なうのが好ましい。
【0057】
蒸す場合の蒸し条件は、通常の蒸しケーキ等と同様、好ましくは80~120℃、特に90~100℃、湿度は好ましくは90~100%、さらに好ましくは95~100%で行うのが好ましい。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。
【0059】
<デポジッター用ロールインフラワーペーストの製造>
〔実施例1〕
ヨウ素価65のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂12質量部及びパーム極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.06質量部に、キサンタンガム0.2質量部及びローカストビーンガム0.2質量部を添加し油相とした。水30.44質量部、ワキシーコーン由来のリン酸架橋澱粉2.1質量部、コーン由来のリン酸架橋澱粉4.9質量部、小麦粉1質量部、ゼラチン1質量部、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)40質量部、脱脂粉乳(糖分50質量%)3質量部、乾燥全卵5質量部及び香料0.1質量部を混合し水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、カスタード風味デポジッター用ロールインフラワーペーストAを得た。このデポジッター用ロールインフラワーペーストAの、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は12.1質量%、糖類含有量は31.5質量%、水分含有量は40.4質量%、対水糖濃度は78質量%であった。
【0060】
〔実施例2〕
実施例1における砂糖混合果糖ブドウ糖液糖40質量部を50質量部に、水30.44質量部を20.44質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、カスタード風味デポジッター用ロールインフラワーペーストBを得た。このデポジッター用ロールインフラワーペーストBの、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は12.1質量%、糖類含有量は39質量%、水分含有量は32.9質量%、対水糖濃度は118質量%であった。
【0061】
〔実施例3〕
実施例1におけるヨウ素価65のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂12質量部を24質量部に、パーム極度硬化油0.06質量部を0.12質量部に変更し、さらに水30.44質量部を18.38質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、カスタード風味デポジッター用ロールインフラワーペーストCを得た。このデポジッター用ロールインフラワーペーストCの、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は24.1質量%、糖類含有量は31.5質量%、水分含有量は28.4質量%、対水糖濃度は110質量%であった。
【0062】
〔実施例4〕
実施例1におけるヨウ素価65のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂12質量部を24質量部に、パーム極度硬化油0.06質量部を0.12質量部に変更し、さらに砂糖混合果糖ブドウ糖液糖40質量部を50質量部に、水30.44質量部を8.38質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、カスタード風味デポジッター用ロールインフラワーペーストDを得た。このデポジッター用ロールインフラワーペーストDの、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は24.1質量%、糖類含有量は39質量%、水分含有量は20.9質量%、対水糖濃度は187質量%であった。
【0063】
〔比較例1〕
実施例1における砂糖混合果糖ブドウ糖液糖40質量部を25質量部に、水30.44質量部を45.44質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、カスタード風味デポジッター用ロールインフラワーペーストEを得た。このデポジッター用ロールインフラワーペーストEの、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は12.1質量%、糖類含有量は20.3質量%、水分含有量は51.7質量%、対水糖濃度は39質量%であった。
【0064】
〔比較例2〕
実施例1における砂糖混合果糖ブドウ糖液糖40質量部を70質量部に、水30.44質量部を0.44質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、カスタード風味デポジッター用ロールインフラワーペーストFを得た。このデポジッター用ロールインフラワーペーストFの、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は12.1質量%、糖類含有量は54質量%、水分含有量は17.9質量%、対水糖濃度は301質量%であった。
【0065】
〔比較例3〕
実施例1におけるヨウ素価65のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂12質量部を4質量部に、パーム極度硬化油0.06質量部を0.02質量部に変更し、さらに砂糖混合果糖ブドウ糖液糖40質量部を48質量部に、水30.44質量部を30.48質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、カスタード風味デポジッター用ロールインフラワーペーストGを得た。このデポジッター用ロールインフラワーペーストGの、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は4.0質量%、糖類含有量は37.5質量%、水分含有量は42.5質量%、対水糖濃度は88質量%であった。
【0066】
〔比較例4〕
実施例1におけるヨウ素価65のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂12質量部を36質量部に、パーム極度硬化油0.06質量部を0.18質量部に変更し、さらに砂糖混合果糖ブドウ糖液糖40質量部を30質量部に、水30.44質量部を16.32質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、カスタード風味デポジッター用ロールインフラワーペーストHを得た。このデポジッター用ロールインフラワーペーストHの、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は36.2質量%、糖類含有量は24質量%、水分含有量は23.8質量%、対水糖濃度は101質量%であった。
【0067】
〔比較例5〕
実施例1におけるヨウ素価65のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂12質量部を菜種液状油12質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法により、カスタード風味デポジッター用ロールインフラワーペーストIを得た。このデポジッター用ロールインフラワーペーストIの、澱粉類含有量は8質量%、油脂含有量は12.1質量%、糖類含有量は31.5質量%、水分含有量は40.4質量%、対水糖濃度は78質量%であった。
【0068】
<ベーカリー試験>
デポジッター(クリームプレッサー:光陽機械製作所)使用自動製パンライン(CWCライン:レオン自動機(株))において、上記実施例1~4及び比較例1~5で得られたデポジッター用ロールインフラワーペーストを用いて、下記の配合・製法でスイートロールを製造し、デポジッター吐出時の油脂の状態、得られた焼成品(スイートロール)の外観及び内相の状態について、下記評価基準に従って4段階で評価し、結果を表1に記載した。
【0069】
(生地配合及び製法)
強力粉90質量部、薄力粉10質量部、イースト4質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖15質量部、食塩1.5質量部、全卵(正味)5質量部、3倍濃縮牛乳状組成物(プライム:株式会社ADEKA製)5質量部及び水45質量部をミキサーボウルに投入し、たて型ミキサーにて低速3分、中速2分ミキシングし、ここに練込用マーガリン(エレバール:株式会社ADEKA製)8質量部を投入し、更に低速4分中速3分ミキシングし、菓子パン生地であるベーカリー生地Aを得た。この菓子パン生地Aはフロアタイムを30分とった後、冷蔵庫内でリタードした。
【0070】
(ロールイン)
上記製法にて調製した菓子パン生地Aをホッパーに投入し、ノズルから自動的に吐出、展延された生地に、デポジッターから、対粉40質量部になるように、デポジッター用ロールインフラワーペーストを供給した後、パイラーにて層数が9層となるよう折り込み作業を行ない、複合ベーカリー生地を得た。
【0071】
(成形及び焼成)
この複合生地を2℃で4時間冷却した後、厚さ10mmまで圧延し、幅30mm、長さ150mmにカットして中央に1本切り込みを入れ、端部を3回くぐらせた蒟蒻成型とし、これを天板に並べ、温度34℃、相対湿度80%のホイロで50分醗酵させた後、上火200℃、下火180℃に設定した固定窯で14分焼成した。
【0072】
(評価基準)
・デポジッター吐出時のロールインフラワーペーストの状態
◎:割れがなく連続的なフラワーペースト層となって吐出された。
○:若干の油脂の分離または水の分離が見られるが、割れがなく連続的なフラワーペースト層となって吐出された。
△:ところどころ空隙や割れ目のあるフラワーペースト層となって吐出された。
×:ときどき切断される、あるいは詰まりを起こし、不連続なフラワーペースト層となって吐出された。乳化破壊が起きている。
××:乳化破壊が起きている。
【0073】
・デポジッター吐出時のデポジッターノズルへの付着性
◎:ほとんど付着が見られず極めて良好である。
○:やや付着が見られるが許容範囲であり、良好である。
△:付着が多く見られ、不良である。
×:ときどき詰まりを生じ、極めて不良である。
【0074】
・ロールイン時のロールインフラワーペーストの伸展性
◎:適度な硬さであり、伸展性も良好であり、切れも見られない。
○+:やや硬いが、伸展性は良好である。
○-:やや軟らかいが、伸展性は良好である。
△+:硬すぎて伸展性が悪く、やや切れが見られる。
△-:べたつきがあり、やや生地の滑りが見られる。
×+:硬すぎて伸展性が極めて悪く、切れが多い。
×-:べたつきが激しく、生地からのはみ出し、生地の滑りが見られる。
【0075】
・焼成品評価
◎:薄く均質なフラワーペースト層が形成されている。
○:やや層剥がれがあるが均質なフラワーペースト層が形成されている。
△:細かい切れや層剥がれがみられ、不均質なフラワーペースト層が形成されている。
×:大きな切れが多く、また層剥がれも多く、極めて不均質なフラワーペースト層が形成されている。
【0076】
【表1】