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特開2024-40793レジスト組成物、レジストパターン形成方法、化合物及び酸拡散制御剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040793
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】レジスト組成物、レジストパターン形成方法、化合物及び酸拡散制御剤
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240318BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20240318BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240318BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/20 501
G03F7/20 521
C07D333/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145379
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】グエン カンティン
(72)【発明者】
【氏名】轟 星児
(72)【発明者】
【氏名】小田島 凜
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒大
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197AA24
2H197BA17
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197GA01
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF15P
2H225AF18P
2H225AF23P
2H225AF24P
2H225AF28P
2H225AF29P
2H225AF56P
2H225AF68P
2H225AF73P
2H225AF99P
2H225AH08
2H225AH17
2H225AH19
2H225AJ07
2H225AJ13
2H225AJ48
2H225AM15P
2H225AM22P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB18
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】
【課題】レジストパターンを形成する際、高感度化とラフネス低減との両立が図られるとともに、矩形性が高められた良好な形状のパターンを形成できるレジスト組成物、レジストパターン形成方法、当該レジスト組成物用の塩基成分として有用な化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、一般式(d0)で表される化合物と、を含有するレジスト組成物を採用する。
式(d0)中、Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。Yは、酸素原子を含む2価の連結基である。Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。x個のRfに含まれるフッ素原子の総数は、5個以上である。Mm+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。mは1以上の整数である。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、
下記一般式(d0)で表される化合物(D0)と、
を含有する、レジスト組成物。
【化1】
[式中、Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。Yは、酸素原子を含む2価の連結基である。Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。x個のRfに含まれるフッ素原子の総数は、5個以上である。式中のベンゼン環は、(Rf-V-Y)-で表される基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Mm+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。mは1以上の整数である。]
【請求項2】
前記式(d0)中、x個のRfに含まれるフッ素原子の総数が、5個以上11個以下である、請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項3】
前記式(d0)中、yが1~3の整数である、請求項1又は2に記載のレジスト組成物。
【請求項4】
前記式(d0)中、Rfが、鎖状のフッ素化炭化水素基である、請求項3に記載のレジスト組成物。
【請求項5】
支持体上に、請求項1に記載のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を有する、レジストパターン形成方法。
【請求項6】
前記のレジスト膜を露光する工程において、前記レジスト膜に、EUV(極端紫外線)又はEB(電子線)を露光する、請求項5に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項7】
下記一般式(d0)で表される化合物。
【化2】
[式中、Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。Yは、酸素原子を含む2価の連結基である。Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。x個のRfに含まれるフッ素原子の総数は、5個以上である。式中のベンゼン環は、(Rf-V-Y)-で表される基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Mm+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。mは1以上の整数である。]
【請求項8】
請求項7に記載の化合物を含む、酸拡散制御剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物、レジストパターン形成方法、化合物及び酸拡散制御剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料として、従来、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
【0003】
レジストパターンの形成においては、露光により酸発生剤成分から発生する酸の挙動がリソグラフィー特性に大きな影響を与える一要素とされる。
化学増幅型レジスト組成物において使用される酸発生剤としては、これまで多種多様なものが提案されている。例えば、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤などが知られている。
オニウム塩系酸発生剤としては、一般的に、アルキルスルホン酸イオンやそのアルキル基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたフッ素化アルキルスルホン酸イオンがアニオン部に用いられている。オニウム塩系酸発生剤のカチオン部には、主に、トリフェニルスルホニウム等のオニウムイオンを有するものが用いられている。
【0004】
また、レジスト材料としては、従来、酸発生剤成分とともに、露光により該酸発生剤成分から発生する酸の拡散を制御する酸拡散制御剤を併用する化学増幅型レジスト組成物が提案されている。
例えば、特許文献1には、酸拡散制御剤として、特定の構造をアニオン部に有するカルボン酸塩を選択したレジスト組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-91312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リソグラフィー技術のさらなる進歩、応用分野の拡大等が進み、急速にパターンの微細化が進んでいる。そして、これに伴い、半導体素子等を製造する際には、微細なパターンを良好な形状で形成できる技術が求められる。例えば、EUV(極端紫外線)又はEB(電子線)によるリソグラフィーでは、数十nmの微細なパターン形成が目標とされる。このようにパターン寸法が小さくなるほど、感度、パターン形状、ラフネス低減等のリソグラフィー特性を各々トレードオフすることなく、よりいっそう向上させることが求められる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、レジストパターンを形成する際、高感度化とラフネス低減との両立が図られるとともに、矩形性が高められた良好な形状のパターンを形成できるレジスト組成物、当該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法、並びに、当該レジスト組成物に用いる塩基成分として有用な化合物を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)と、下記一般式(d0)で表される化合物(D0)と、を含有する、レジスト組成物である。
【0009】
【化1】
[式中、Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。Yは、酸素原子を含む2価の連結基である。Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。x個のRfに含まれるフッ素原子の総数は、5個以上である。式中のベンゼン環は、(Rf-V-Y)-で表される基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Mm+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。mは1以上の整数である。]
【0010】
本発明の第2の態様は、支持体上に、前記第1の態様に係るレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を有する、レジストパターン形成方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、下記一般式(d0)で表される化合物である。
【0012】
【化2】
[式中、Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。Yは、酸素原子を含む2価の連結基である。Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。x個のRfに含まれるフッ素原子の総数は、5個以上である。式中のベンゼン環は、(Rf-V-Y)-で表される基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Mm+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。mは1以上の整数である。]
【0013】
本発明の第4の態様は、前記第3の態様に係る化合物を含む、酸拡散制御剤である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レジストパターンを形成する際、高感度化とラフネス低減との両立が図られるとともに、矩形性が高められた良好な形状のパターンを形成できるレジスト組成物、当該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法、並びに、当該レジスト組成物に用いる塩基成分として有用な化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有してもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0016】
「酸分解性基」は、酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、例えば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、例えばカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(-SOH)等が挙げられる。
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基が酸解離性基で保護された基(例えばOH含有極性基の水素原子を、酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
【0017】
「酸解離性基」とは、(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、の双方をいう。
酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要で、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。その結果、基材成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に、現像液に対する溶解性が変化し、現像液がアルカリ現像液の場合には溶解性が増大し、現像液が有機系現像液の場合には溶解性が減少する。
【0018】
「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物である。基材成分として用いられる有機化合物は、非重合体と重合体とに大別される。非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる(以下「低分子化合物」という)。以下「樹脂」、「高分子化合物」又は「ポリマー」という場合は、分子量が1000以上の重合体を示す。重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量を用いるものとする。
【0019】
「誘導される構成単位」とは、炭素原子間の多重結合、例えば、エチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(Rαx)は、水素原子以外の原子又は基である。また、置換基(Rαx)がエステル結合を含む置換基で置換されたイタコン酸ジエステルや、置換基(Rαx)がヒドロキシアルキル基やその水酸基を修飾した基で置換されたαヒドロキシアクリルエステルも含むものとする。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルを、α置換アクリル酸エステルということがある。
【0020】
「誘導体」とは、対象化合物のα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよい対象化合物の水酸基の水素原子を有機基で置換したもの;α位の水素原子が置換基に置換されていてもよい対象化合物に、水酸基以外の置換基が結合したもの等が挙げられる。なお、α位とは、特に断りがない限り、官能基と隣接した1番目の炭素原子のことをいう。
ヒドロキシスチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、Rαxと同様のものが挙げられ、例えばアルキル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。
【0021】
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては、不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがある。その場合は一つの化学式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0022】
(レジスト組成物)
本発明の第1の態様に係るレジスト組成物は、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するものである。
かかるレジスト組成物の一実施形態は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「(A)成分」ともいう)と、露光により発生する酸をトラップ(すなわち、酸の拡散を制御)する塩基成分(以下「(D)成分」ともいう)とを含有する。本実施形態のレジスト組成物においては、この(D)成分として、一般式(d0)で表される化合物(D0)を含むものを用いる。
【0023】
本実施形態のレジスト組成物においては、(A)成分が露光により酸を発生してもよいし、(A)成分とは別に配合された配合成分が露光により酸を発生してもよい。
本実施形態のレジスト組成物は、具体的には、(1)露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」という)をさらに含有するものであってもよく;(2)(A)成分が露光により酸を発生する成分であってもよく;(3)(A)成分が露光により酸を発生する成分であり、かつ、さらに(B)成分を含有するものであってもよい。
すなわち、上記(2)及び(3)の場合、(A)成分は、「露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分」となる。(A)成分が露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分である場合、後述する(A1)成分が、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、露光により酸を発生する構成単位を有する高分子化合物を用いることができる。露光により酸を発生する構成単位としては、公知のものを用いることができる。
【0024】
本実施形態のレジスト組成物は、上記の中でも、上記(1)の場合であるものが好ましい。すなわち、本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分と、化合物(D0)と、(B)成分とを含有するものであることが好ましい。
【0025】
本実施形態のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、該レジスト膜の露光部では、例えば(B)成分から酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、該レジスト膜の未露光部では(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、該レジスト膜の露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜を現像すると、該レジスト組成物がポジ型の場合はレジスト膜露光部が溶解除去されてポジ型のレジストパターンが形成され、該レジスト組成物がネガ型の場合はレジスト膜未露光部が溶解除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
【0026】
本実施形態のレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。また、本実施形態のレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよく、該現像処理に、有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよい。
【0027】
<(A)成分:基材成分>
本実施形態のレジスト組成物において、(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分(A1)(以下「(A1)成分」ともいう)を含むものが好ましい。(A1)成分を用いることにより、露光前後で基材成分の極性が変化するため、アルカリ現像プロセスだけでなく、溶剤現像プロセスにおいても、良好な現像コントラストを得ることができる。
(A)成分としては、該(A1)成分とともに、他の高分子化合物及び低分子化合物の少なくとも一種を併用してもよい。
【0028】
本実施形態のレジスト組成物において、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
・(A1)成分について
(A1)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分である。
(A1)成分としては、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を有するものが好ましい。(A1)成分は、構成単位(a1)に加え、必要に応じてその他構成単位を有するものでもよい。
その他構成単位としては、例えば、後述の一般式(a10-1)で表される構成単位(a10);ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2);後述の一般式(a8-1)で表される化合物から誘導される構成単位(a8)等が挙げられる。
【0030】
構成単位(a1)について:
構成単位(a1)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
【0031】
酸分解性基としては、極性基が酸解離性基で保護された基(例えば、OH含有極性基の水素原子を、酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
酸解離性基としては、これまで、化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものが挙げられる。
化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものとして具体的には、以下に説明する「アセタール型酸解離性基」、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」、「第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」、「第2級アルキルエステル型酸解離性基」が挙げられる。
【0032】
アセタール型酸解離性基:
前記極性基のうちカルボキシ基または水酸基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-1)で表される酸解離性基(以下「アセタール型酸解離性基」ということがある。)が挙げられる。
【0033】
【化3】
[式中、Ra’、Ra’は水素原子またはアルキル基である。Ra’は炭化水素基であって、Ra’は、Ra’、Ra’のいずれかと結合して環を形成してもよい。]
【0034】
式(a1-r-1)中、Ra’及びRa’のうち、少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、両方が水素原子であることがより好ましい。
Ra’又はRa’がアルキル基である場合、該アルキル基としては、上記α置換アクリル酸エステルについての説明で、α位の炭素原子に結合してもよい置換基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられ、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましい。具体的には、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0035】
式(a1-r-1)中、Ra’の炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
該直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、炭素原子数が1~4がより好ましく、炭素原子数1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0036】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、炭素原子数3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0037】
Ra’が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂環式炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0038】
Ra’の環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
Ra’における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
【0039】
Ra’における環状の炭化水素基は、置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、-RP1、-RP2-O-RP1、-RP2-CO-RP1、-RP2-CO-ORP1、-RP2-O-CO-RP1、-RP2-OH、-RP2-CN又は-RP2-COOH(以下これらの置換基をまとめて「Rax5」ともいう。)等が挙げられる。
ここで、RP1は、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基、炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基又は炭素原子数6~30の1価の芳香族炭化水素基である。また、RP2は、単結合、炭素原子数1~10の2価の鎖状飽和炭化水素基、炭素原子数3~20の2価の脂肪族環状飽和炭化水素基又は炭素原子数6~30の2価の芳香族炭化水素基である。但し、RP1及びRP2の鎖状飽和炭化水素基、脂肪族環状飽和炭化水素基及び芳香族炭化水素基の有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。上記脂肪族環状炭化水素基は、上記置換基を1種単独で1つ以上有していてもよいし、上記置換基のうち複数種を各1つ以上有していてもよい。
炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環式脂肪族飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族飽和炭化水素基が挙げられる。
炭素原子数6~30の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
【0040】
Ra’が、Ra’、Ra’のいずれかと結合して環を形成する場合、該環式基としては、4~7員環が好ましく、4~6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0041】
第3級アルキルエステル型酸解離性基:
上記極性基のうち、カルボキシ基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-2)で表される酸解離性基が挙げられる。
なお、下記式(a1-r-2)で表される酸解離性基のうち、アルキル基により構成されるものを、以下、便宜上「第3級アルキルエステル型酸解離性基」ということがある。
【0042】
【化4】
[式中、Ra’~Ra’はそれぞれ炭化水素基であって、Ra’、Ra’は互いに結合して環を形成してもよい。]
【0043】
Ra’の炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、鎖状もしくは環状のアルケニル基、鎖状のアルキニル基、又は、環状の炭化水素基が挙げられる。
Ra’における直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、環状の炭化水素基(単環式基である脂環式炭化水素基、多環式基である脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基)は、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
Ra’における鎖状もしくは環状のアルケニル基は、炭素原子数2~10のアルケニル基が好ましい。
Ra’、Ra’の炭化水素基としては、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
【0044】
Ra’とRa’とが互いに結合して環を形成する場合、下記一般式(a1-r2-1)で表される基、下記一般式(a1-r2-2)で表される基、下記一般式(a1-r2-3)で表される基が好適に挙げられる。
一方、Ra’~Ra’が互いに結合せず、独立した炭化水素基である場合、下記一般式(a1-r2-4)で表される基が好適に挙げられる。
【0045】
【化5】
[式(a1-r2-1)中、Ra’10は、一部がハロゲン原子又はヘテロ原子含有基で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~12のアルキル基を示す。Ra’11はRa’10が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基を示す。式(a1-r2-2)中、Yaは炭素原子である。Xaは、Yaと共に環状の炭化水素基を形成する基である。この環状の炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra101~Ra103は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基又は炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基である。この鎖状飽和炭化水素基及び脂肪族環状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra101~Ra103の2つ以上が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。式(a1-r2-3)中、Yaaは炭素原子である。Xaaは、Yaaと共に脂肪族環式基を形成する基である。Ra104は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。式(a1-r2-4)中、Ra’12及びRa’13は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基である。この鎖状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra’14は、置換基を有してもよい炭化水素基である。*は結合手を示す(以下、同様)。]
【0046】
上記の式(a1-r2-1)中、Ra’10は、一部がハロゲン原子もしくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素原子数1~12のアルキル基である。
【0047】
Ra’10における、直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数1~12であり、炭素原子数1~10が好ましく、炭素原子数1~5が特に好ましい。
Ra’10における、分岐鎖状のアルキル基としては、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
【0048】
Ra’10におけるアルキル基は、一部がハロゲン原子もしくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基を構成する水素原子の一部が、ハロゲン原子又はヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。また、アルキル基を構成する炭素原子(メチレン基など)の一部が、ヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。
ここでいうヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。ヘテロ原子含有基としては、(-O-)、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-等が挙げられる。
【0049】
式(a1-r2-1)中、Ra’11(Ra’10が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族環式基)は、式(a1-r-1)におけるRa’の単環式基又は多環式基である脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基)として挙げた基が好ましい。その中でも、単環式の脂環式炭化水素基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0050】
式(a1-r2-2)中、XaがYaと共に形成する環状の炭化水素基としては、前記式(a1-r-1)中のRa’における環状の1価の炭化水素基(脂環式炭化水素基)から水素原子1個以上をさらに除いた基が挙げられる。
XaがYaと共に形成する環状の炭化水素基は、置換基を有してもよい。この置換基としては、上記Ra’における環状の炭化水素基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
式(a1-r2-2)中、Ra101~Ra103における、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
Ra101~Ra103における、炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環式脂肪族飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族飽和炭化水素基等が挙げられる。
Ra101~Ra103は、中でも、合成容易性の観点から、水素原子、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基が好ましく、その中でも、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0051】
上記Ra101~Ra103で表される鎖状飽和炭化水素基、又は脂肪族環状飽和炭化水素基が有する置換基としては、例えば、上述のRax5と同様の基が挙げられる。
【0052】
Ra101~Ra103の2つ以上が互いに結合して環状構造を形成することにより生じる炭素-炭素二重結合を含む基としては、例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基、シクロペンチリデンエテニル基、シクロへキシリデンエテニル基等が挙げられる。これらの中でも、合成容易性の観点から、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチリデンエテニル基が好ましい。
【0053】
式(a1-r2-3)中、XaaがYaaと共に形成する脂肪族環式基は、式(a1-r-1)におけるRa’の単環式基又は多環式基である脂環式炭化水素基として挙げた基が好ましい。
式(a1-r2-3)中、Ra104における芳香族炭化水素基としては、炭素原子数5~30の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が挙げられる。中でも、Ra104は、炭素原子数6~15の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンから水素原子1個以上を除いた基がより好ましく、ベンゼン、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基がさらに好ましく、ベンゼン又はナフタレンから水素原子1個以上を除いた基が特に好ましく、ベンゼンから水素原子1個以上を除いた基が最も好ましい。
【0054】
式(a1-r2-3)中のRa104が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0055】
式(a1-r2-4)中、Ra’12及びRa’13は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基である。Ra’12及びRa’13における、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、上記のRa101~Ra103における、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基と同様のものが挙げられる。この鎖状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
Ra’12及びRa’13は、中でも、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記Ra’12及びRa’13で表される鎖状飽和炭化水素基が置換されている場合、その置換基としては、例えば、上述のRax5と同様の基が挙げられる。
【0056】
式(a1-r2-4)中、Ra’14は、置換基を有してもよい炭化水素基である。Ra’14における炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0057】
Ra’14における直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基又はn-ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0058】
Ra’14における分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0059】
Ra’14が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂環式炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0060】
Ra’14における芳香族炭化水素基としては、Ra104における芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。中でも、Ra’14は、炭素原子数6~15の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンから水素原子1個以上を除いた基がより好ましく、ベンゼン、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基がさらに好ましく、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基が特に好ましく、ナフタレンから水素原子1個以上を除いた基が最も好ましい。
Ra’14が有していてもよい置換基としては、Ra104が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0061】
式(a1-r2-4)中のRa’14がナフチル基である場合、前記式(a1-r2-4)における第3級炭素原子と結合する位置は、ナフチル基の1位又は2位のいずれであってもよい。
式(a1-r2-4)中のRa’14がアントリル基である場合、前記式(a1-r2-4)における第3級炭素原子と結合する位置は、アントリル基の1位、2位又は9位のいずれであってもよい。
【0062】
前記式(a1-r2-1)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0063】
【化6】
【0064】
【化7】
【0065】
【化8】
【0066】
前記式(a1-r2-2)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0067】
【化9】
【0068】
【化10】
【0069】
【化11】
【0070】
前記式(a1-r2-3)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0071】
【化12】
【0072】
前記式(a1-r2-4)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0073】
【化13】
【0074】
第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基:
前記極性基のうち水酸基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-3)で表される酸解離性基(以下便宜上「第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」ということがある)が挙げられる。
【0075】
【化14】
[式中、Ra’~Ra’はそれぞれアルキル基である。]
【0076】
式(a1-r-3)中、Ra’~Ra’は、それぞれ炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましい。
また、各アルキル基の合計の炭素原子数は、3~7であることが好ましく、炭素原子数3~5であることがより好ましく、炭素原子数3~4であることが最も好ましい。
【0077】
第2級アルキルエステル型酸解離性基:
上記極性基のうち、カルボキシ基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-4)で表される酸解離性基が挙げられる。
【0078】
【化15】
[式中、Ra’10は、炭化水素基である。Ra’11a及びRa’11bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。Ra’12は、水素原子又は炭化水素基である。Ra’10とRa’11a又はRa’11bとは、互いに結合して環を形成してもよい。Ra’11a又はRa’11bと、Ra’12とは、互いに結合して環を形成してもよい。]
【0079】
式中、Ra’10及びRa’12における炭化水素基としては、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
式中、Ra’11a及びRa’11bにおけるアルキル基としては、前記Ra’におけるアルキル基と同様のものが挙げられる。
式中、Ra’10及びRa’12における炭化水素基、並びに、Ra’11a及びRa’11bにおけるアルキル基は置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、上述したRax5等が挙げられる。
【0080】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとは、互いに結合して環を形成してもよい。該環は、多環であっても、単環であってもよく、脂環であっても、芳香環であってもよい。
該脂環及び芳香環は、ヘテロ原子を含むものでもよい。
【0081】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環としては、上記の中でも、モノシクロアルケン、モノシクロアルケンの炭素原子の一部がヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子等)で置換された環、モノシクロアルカジエンが好ましく、炭素数3~6のシクロアルケンが好ましく、シクロペンテン又はシクロヘキセンが好ましい。
【0082】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環は、縮合環であってもよい。該縮合環として、具体的には、インダン等が挙げられる。
【0083】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環は、置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、上述したRax5等が挙げられる。
【0084】
Ra’11a又はRa’11bと、Ra’12とは、互いに結合して環を形成してもよく、該環としては、Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環と同様のものが挙げられる。
【0085】
前記式(a1-r-4)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0086】
【化16】
【0087】
構成単位(a1)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位、アクリルアミドから誘導される構成単位、ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位の水酸基における水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位の-C(=O)-OHにおける水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位等が挙げられる。
【0088】
構成単位(a1)としては、上記のなかでも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
かかる構成単位(a1)の好ましい具体例としては、下記一般式(a1-1)、(a1-2)又は(a1-3)で表される構成単位が挙げられる。
【0089】
【化17】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Vaは、エーテル結合を有していてもよい2価の炭化水素基である。na1は、0~2の整数である。Raは、上記の一般式(a1-r-1)、(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基である。Waはna2+1価の炭化水素基である。na2は1~3の整数である。Raは、上記の一般式(a1-r-1)又は(a1-r-3)で表される酸解離性基である。Ya001は、単結合又は2価の連結基である。Ya01は、単結合又は2価の連結基である。Rax01は、上記の一般式(a1-r-1)、(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基である。qは、0~3の整数である。nは、1以上の整数である。ただし、n≦q×2+4である。]
【0090】
前記式(a1-1)~(a1-3)中、Rの炭素原子数1~5のアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0091】
前記式(a1-1)中、Vaにおける2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0092】
Vaにおける2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0093】
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましく、炭素原子数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0094】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記直鎖状の脂肪族炭化水素基または前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0095】
Vaにおける2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
かかる芳香族炭化水素基は、炭素原子数が3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~12が最も好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基);前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0096】
前記式(a1-1)中、Raは、上記の一般式(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基が好ましく、これらの中でも、一般式(a1-r2-1)で表される基、又は一般式(a1-r-4)で表される酸解離性基がより好ましい。
【0097】
前記式(a1-2)中、Waにおけるna2+1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。該脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味し、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と構造中に環を含む脂肪族炭化水素基とを組み合わせた基が挙げられる。
前記na2+1価は、2~4価が好ましく、2又は3価がより好ましい。
前記式(a1-2)中、Raは、上記の一般式(a1-r-1)で表される酸解離性基が好ましい。
【0098】
前記式(a1-3)中、Ya001における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、及びヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
Ya001としては、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、芳香族炭化水素基又はこれらの組合せ、あるいは単結合であることが好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が特に好ましい。
これらの中でも、Ya001としては、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]と直鎖状のアルキレン基との組み合わせ、又は単結合であることがより好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0099】
前記式(a1-3)中、Ya01における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
Ya01は、上記の中でも、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、芳香族炭化水素基又はこれらの組合せ、あるいは単結合であることが好ましい。これらの中でも、Ya01としては、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]と直鎖状のアルキレン基との組み合わせ、又は単結合であることがより好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0100】
前記式(a1-3)中、Rax01は、上記の一般式(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基が好ましく、これらの中でも、一般式(a1-r-2)で表される酸解離性基がより好ましく、一般式(a1-r2-1)で表される基がさらに好ましい。
【0101】
前記式(a1-3)中、qは、0~3の整数である。qが0の場合はベンゼン構造、qが1の場合はナフタレン構造、qが2の場合はアントラセン構造、qが3の場合はテトラセン構造となる。
前記式(a1-3)中、nは、1以上の整数であり、好ましくは1~5であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1又は2である。
前記式(a1-3)中、n≦q×2+4である。例えば、qが1でナフタレン構造である場合、該ナフタレンは、6個全部の水素原子がヒドロキシ基で置換されていてもよい。また、該ナフタレンにおいて、Ya001、-Ya01-C(=O)-O-Ra01基、及びヒドロキシ基の置換位置は特に限定されない。
【0102】
以下に構成単位(a1)の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0103】
【化18】
【0104】
【化19】
【0105】
【化20】
【0106】
【化21】
【0107】
【化22】
【0108】
【化23】
【0109】
【化24】
【0110】
【化25】
【0111】
【化26】
【0112】
【化27】
【0113】
【化28】
【0114】
【化29】
【0115】
【化30】
【0116】
(A1)成分が有する構成単位(a1)は、1種でもよく2種以上でもよい。
構成単位(a1)としては、電子線やEUVによるリソグラフィーでの特性をより高められやすいことから、前記式(a1-1)で表される構成単位、又は前記式(a1-3)で表される構成単位がより好ましい。
【0117】
(A1)成分が構成単位(a1)を含有する場合、(A1)成分中の構成単位(a1)の割合は、該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、25~75モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましく、40~60モル%が特に好ましい。
構成単位(a1)の割合を、前記の好ましい範囲の下限値以上とすることによって、感度、パターン形状の矩形性、ラフネス低減等のリソグラフィー特性が向上する。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0118】
構成単位(a10)について:
構成単位(a10)は、下記一般式(a10-1)で表される構成単位(但し、構成単位(a1)に該当するものを除く)である。
【0119】
【化31】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Yax1は、単結合又は2価の連結基である。Wax1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。nax1は、1以上の整数である。]
【0120】
前記式(a10-1)中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。
Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0121】
前記式(a10-1)中、Yax1は、単結合又は2価の連結基である。
前記の化学式中、Yax1における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0122】
Yax1としては、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの組合せであることが好ましく、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]がより好ましい。
【0123】
前記式(a10-1)中、Wax1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
Wax1における芳香族炭化水素基としては、置換基を有してもよい芳香環から(nax1+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。ここでの芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されない。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。該芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
また、Wax1における芳香族炭化水素基としては、2以上の置換基を有してもよい芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から(nax1+1)個の水素原子を除いた基も挙げられる。
上記の中でも、Wax1としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンまたはビフェニルから(nax1+1)個の水素原子を除いた基が好ましく、ベンゼン又はナフタレンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がより好ましく、ベンゼンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がさらに好ましい。
【0124】
Wax1における芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよく、有していなくてもよい。前記置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。前記置換基としてのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基としては、Yax1における環状の脂環式炭化水素基の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。前記置換基は、炭素原子数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、エチル基又はメチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。Wax1における芳香族炭化水素基は、置換基を有していないことが好ましい。
【0125】
前記式(a10-1)中、nax1は、1以上の整数であり、1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1、2又は3がさらに好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0126】
以下に、前記式(a10-1)で表される構成単位(a10)の具体例を示す。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0127】
【化32】
【0128】
【化33】
【0129】
【化34】
【0130】
(A1)成分が有する構成単位(a10)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a10)を含有する場合、(A1)成分中の構成単位(a10)の割合は、該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、25~75モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましく、40~60モル%が特に好ましい。
構成単位(a10)の割合を下限値以上とすることにより、感度がより高められやすくなる。一方、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0131】
構成単位(a2)について:
(A1)成分は、さらに、ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2)(但し、構成単位(a1)に該当するものを除く)を有するものでもよい。
構成単位(a2)のラクトン含有環式基は、(A1)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高める上で有効なものである。また、構成単位(a2)を有することで、例えば酸拡散長を適切に調整する、レジスト膜の基板への密着性を高める、現像時の溶解性を適切に調整する等の効果により、リソグラフィー特性等が良好となる。
【0132】
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
構成単位(a2)におけるラクトン含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0133】
【化35】
[式中、Ra’21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、又は、ラクトン含有環式基であり;A”は酸素原子(-O-)もしくは硫黄原子(-S-)を含んでいてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0~2の整数であり、m’は0または1である。*は結合手を示す(以下、同様)。]
【0134】
前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中、Ra’21におけるアルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra’21におけるアルコキシ基としては、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基として挙げたアルキル基と酸素原子(-O-)とが連結した基が挙げられる。
Ra’21におけるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
Ra’21におけるハロゲン化アルキル基としては、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0135】
Ra’21における-COOR”、-OC(=O)R”において、R”はいずれも水素原子、アルキル基、又は、ラクトン含有環式基である。
R”におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、炭素原子数は1~15が好ましい。
R”が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素原子数1~10であることが好ましく、炭素原子数1~5であることがさらに好ましく、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素原子数3~15であることが好ましく、炭素原子数4~12であることがさらに好ましく、炭素原子数5~10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
R”におけるラクトン含有環式基としては、前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基と同様のものが挙げられる。
Ra’21におけるヒドロキシアルキル基としては、炭素原子数が1~6であるものが好ましく、具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
【0136】
Ra’21としては、上記の中でも、それぞれ独立に水素原子又はシアノ基であることが好ましい。
【0137】
前記一般式(a2-r-2)、(a2-r-3)、(a2-r-5)中、A”における炭素原子数1~5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に-O-または-S-が介在する基が挙げられ、例えば、-O-CH-、-CH-O-CH-、-S-CH-、-CH-S-CH-等が挙げられる。A”としては、炭素原子数1~5のアルキレン基または-O-が好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0138】
下記に一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。
【0139】
【化36】
【0140】
【化37】
【0141】
構成単位(a2)としては、なかでも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
かかる構成単位(a2)は、下記一般式(a2-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0142】
【化38】
[式中、Rは水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Ya21は単結合または2価の連結基である。La21は-O-、-COO-、-CON(R’)-、-OCO-、-CONHCO-又は-CONHCS-であり、R’は水素原子またはメチル基を示す。ただしLa21が-O-の場合、Ya21は-CO-にはならない。Ra21はラクトン含有環式基である。]
【0143】
前記式(a2-1)中、Rは前記と同じである。Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0144】
前記式(a2-1)中、Ya21における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適に挙げられる。
Ya21としては、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの組合せであることが好ましい。
【0145】
前記式(a2-1)中、Ya21は、単結合であり、La21は、-COO-、又は、-OCO-、であることが好ましい。
【0146】
前記式(a2-1)中、Ra21は、ラクトン含有環式基である。
Ra21におけるラクトン含有環式基としてはそれぞれ、前述した一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基が好適に挙げられる。
【0147】
(A1)成分が有する構成単位(a2)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a2)を有する場合、構成単位(a2)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20モル%以下が好ましく、1~20モル%であることがより好ましく、1~15モル%であることがさらに好ましく、1~10モル%であることが特に好ましい。
構成単位(a2)の割合を好ましい下限値以上とすると、前述した効果によって、構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0148】
構成単位(a8)について:
構成単位(a8)は、下記一般式(a8-1)で表される化合物から誘導される構成単位である。
【0149】
【化39】
[式中、Wは、重合性基含有基である。Yax2は、単結合又は(nax2+1)価の連結基である。Yax2とWとは縮合環を形成していてもよい。Rは炭素数1~12のフッ素化アルキル基である。Rはフッ素原子を有してもよい炭素数1~12の有機基又は水素原子である。R及びYax2は、相互に結合して相互に結合して環構造を形成していてもよい。nax2は、1~3の整数である。]
【0150】
の重合性基含有基における「重合性基」とは、重合性基を有する化合物がラジカル重合等により重合することを可能とする基であり、例えばエチレン性二重結合などの炭素原子間の多重結合を含む基をいう。
【0151】
重合性基含有基としては、重合性基のみから構成される基でもよいし、重合性基と該重合性基以外の他の基とから構成される基でもよい。該重合性基以外の他の基としては、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
重合性基含有基としては、例えば、化学式:C(RX11)(RX12)=C(RX13)-Yax0-で表される基が好適に挙げられる。
この化学式中、RX11、RX12及びRX13は、それぞれ、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、Yax0は、単結合または2価の連結基である。
【0152】
Yax2とWとが形成する縮合環としては、W部位の重合性基とYax2とが形成する縮合環、W部位の重合性基以外の他の基とYax2とが形成する縮合環が挙げられる。
Yax2とWとが形成する縮合環は、置換基を有してもよい。
【0153】
以下に、構成単位(a8)の具体例を示す。
下記の式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0154】
【化40】
【0155】
(A1)成分が有する構成単位(a8)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(A1)成分が構成単位(a8)を有する場合、構成単位(a8)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20モル%以下であることが好ましく、0~10モル%であることがより好ましい。
【0156】
レジスト組成物が含有する(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のレジスト組成物において、好ましい(A1)成分は、構成単位(a1)の繰り返し構造を有する高分子化合物が挙げられる。(A1)成分としては、上記の中でも、構成単位(a1)と構成単位(a10)との繰り返し構造を有する高分子化合物が特に好適に挙げられる。
好ましい(A1)成分として、より具体的には、前記式(a1-1)で表される構成単位と構成単位(a10)との繰り返し構造を有する高分子化合物、前記式(a1-3)で表される構成単位と構成単位(a10)との繰り返し構造を有する高分子化合物が挙げられる。中でも、高感度化の点からは、前記式(a1-3)で表される構成単位と構成単位(a10)との繰り返し構造を有する高分子化合物がより好ましい。
【0157】
構成単位(a1)と構成単位(a10)との繰り返し構造を有する高分子化合物において、構成単位(a1)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、25~75モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましく、40~60モル%が特に好ましい。
また、該高分子化合物中の構成単位(a10)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、25~75モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましく、40~60モル%が特に好ましい。
【0158】
かかる(A1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチル(例えばV-601など)等のラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。
あるいは、かかる(A1)成分は、構成単位(a1)を誘導するモノマーと、必要に応じて構成単位(a1)以外の構成単位(例えば、構成単位(a10))を誘導するモノマーと、を重合溶媒に溶解し、ここに、上記のようなラジカル重合開始剤を加えて重合し、その後、脱保護反応を行うことにより製造することができる。
なお、重合の際に、例えば、HS-CH-CH-CH-C(CF-OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に-C(CF-OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0159】
(A1)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、1000~40000が好ましく、2000~20000がより好ましく、3000~10000がさらに好ましい。
(A1)成分のMwがこの範囲の好ましい上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の好ましい下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
(A1)成分の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.0が特に好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0160】
・(A2)成分について
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分として、前記(A1)成分に該当しない、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(以下「(A2)成分」という。)を併用してもよい。
(A2)成分としては、特に限定されず、化学増幅型レジスト組成物用の基材成分として従来から知られている多数のものから任意に選択して用いればよい。
(A2)成分は、高分子化合物又は低分子化合物の1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0161】
(A)成分中の(A1)成分の割合は、(A)成分の総質量に対し、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。該割合が25質量%以上であると、高感度化や解像性、ラフネス低減などの種々のリソグラフィー特性に優れたレジストパターンが形成されやすくなる。
【0162】
本実施形態のレジスト組成物中、(A)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0163】
<(D)成分:塩基成分>
本実施形態においては、(D)成分は、下記一般式(d0)で表される化合物(D0)(以下「(D0)成分」ともいう)を含む。
(D0)成分は、レジスト組成物において、露光により発生する酸をトラップするクエンチャー(酸拡散制御剤)として作用し得るものである。
【0164】
・(D0)成分について
(D0)成分は、下記一般式(d0)で表される化合物である。
【0165】
【化41】
[式中、Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。Yは、酸素原子を含む2価の連結基である。Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。x個のRfに含まれるフッ素原子の総数は、5個以上である。式中のベンゼン環は、(Rf-V-Y)-で表される基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Mm+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。mは1以上の整数である。]
【0166】
前記式(d0)中、Rfにおけるフッ素化炭化水素基は、フッ素原子を含む1価の炭化水素基が挙げられる。前記1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0167】
・Rfにおける脂肪族炭化水素基
脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、鎖状の脂肪族炭化水素基(直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基)又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0168】
・・直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基
該直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が特に好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
該分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましく、炭素原子数3が特に好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0169】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基として少なくとも1個のフッ素原子を含む。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、当該脂肪族炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることがさらに好ましい。前記好ましい上限値以上がフッ素化されていることにより、感度や、レジスト膜の疎水性が向上する。
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、フッ素原子以外の置換基を含んでもよい。前記フッ素原子以外の置換基としては、例えば、水酸基、フッ素原子以外のハロゲン原子等が挙げられる。
【0170】
・・構造中に環を含む脂肪族炭化水素基
構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子(フッ素原子を除く)を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0171】
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基として少なくとも1個のフッ素原子を含む。前記環状の脂肪族炭化水素基は、当該環状の炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることがさらに好ましい。
前記環状の脂肪族炭化水素基は、フッ素原子以外の置換基を含んでもよい。前記フッ素原子以外の置換基としては、例えば、水酸基、フッ素以外のハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-が好ましい。
【0172】
・Rfにおける芳香族炭化水素基
該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でもよいし、多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子(フッ素原子を除く)で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
【0173】
前記芳香族炭化水素基は、置換基として少なくとも1個のフッ素原子を含む。前記芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることがさらに好ましい。
前記芳香族炭化水素基は、フッ素原子以外の置換基を含んでもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子以外のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、前記環状の脂肪族炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。
【0174】
Rfとしては、(D0)成分のレジスト膜中での分布(レジスト膜表面への偏在)を制御しやすい観点から、フッ素原子を含む脂肪族炭化水素基が好ましく、鎖状のフッ素化炭化水素基がより好ましく、直鎖状のフッ素化アルキル基がさらに好ましい。この直鎖状のフッ素化アルキル基は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~5がより好ましく、炭素原子数1~3がさらに好ましい。
【0175】
前記式(d0)中、xは1~4の整数であり、1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0176】
但し、前記式(d0)中、x個のRfに含まれるフッ素原子の総数は、5個以上であり、5個以上11個以下であることが好ましく、6個以上でもよいし、10個以下でもよいし、9個以下でもよいし、特に好ましくは7個である。
フッ素原子の総数が、前記の好ましい範囲であると、レジストパターン形成において、パターン形状の矩形性、ラフネス低減等のリソグラフィー特性が高められる。
xが2以上の場合、Rfに含まれるフッ素原子の総数は、2個以上のRfに含まれるフッ素原子の全部を足し合わせた数を意味する。
【0177】
前記式(d0)中、Vにおける炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、2価の飽和炭化水素基が挙げられる。この2価の飽和炭化水素基としては、アルキレン基が挙げられ、直鎖状のアルキレン基でもよく分岐鎖状のアルキレン基でもよく、直鎖状のアルキレン基が好ましい。この2価の飽和炭化水素基は、炭素原子数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基であることがより好ましく、また、Vにおけるアルキレン基を構成する一部のメチレン基が、炭素原子数5~10の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、シクロへキシレン基、1,5-アダマンチレン基、2,6-アダマンチレン基などが挙げられる。
における炭化水素基が有してもよい置換基としては、フッ素原子以外のハロゲン原子、カルボニル基、水酸基等が挙げられる。
としては、アルキレン基、又は単結合であることが好ましい。
【0178】
前記式(d0)中、Yにおける、酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、酸素原子(エーテル結合:-O-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、オキシカルボニル基(-O-C(=O)-)、アミド結合(-C(=O)-NH-)、カルボニル基(-C(=O)-)、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基と、置換基を有してもよい2価の炭化水素基との組み合わせ等が挙げられる。この組み合わせに、さらにスルホニル基(-SO-)が連結されていてもよい。ここでの、置換基を有してもよい2価の炭化水素基は、上述のVにおける、置換基を有してもよい炭化水素基と同様のものが挙げられる。
としては、酸素原子(エーテル結合:-O-)、エステル結合(-C(=O)-O-、-O-C(=O)-)、アミド結合(-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-)が好ましい。
【0179】
前記式(d0)中、yは1~4の整数であり、高感度化の観点から、ヨウ素原子が多いほど好ましい。あるいは、yは、高感度化及び合成の観点から、1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0180】
以下に、(D0)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
以下に示した化学式(d0-an-101)~(d0-an-125)でそれぞれ表されるアニオンは、前記式(d0)におけるyが1である場合のアニオン部の具合例である。
以下に示した化学式(d0-an-201)~(d0-an-267)でそれぞれ表されるアニオンは、前記式(d0)におけるyが2である場合のアニオン部の具合例である。
以下に示した化学式(d0-an-301)~(d0-an-320)でそれぞれ表されるアニオンは、前記式(d0)におけるyが3である場合のアニオン部の具合例である。
【0181】
【化42】
【0182】
【化43】
【0183】
【化44】
【0184】
【化45】
【0185】
【化46】
【0186】
【化47】
【0187】
【化48】
【0188】
【化49】
【0189】
【化50】
【0190】
【化51】
【0191】
【化52】
【0192】
【化53】
【0193】
【化54】
【0194】
【化55】
【0195】
(D0)成分のアニオン部としては、上記の化学式(d0-an-101)~(d0-an-125)、化学式(d0-an-201)~(d0-an-267)及び化学式(d0-an-301)~(d0-an-320)でそれぞれ表されるアニオンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0196】
前記式(d0)中、Mm+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。mは1以上の整数である。
好ましいカチオン部((Mm+1/m)としては、下記の一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表されるオニウムカチオンが挙げられる。
【0197】
【化56】
[式中、R201~R207は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表す。R201~R203、R206~R207は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R208~R209は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表す。R210は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよい-SO-含有環式基である。L201は、-C(=O)-または-C(=O)-O-を表す。]
【0198】
上記の一般式(ca-1)~(ca-3)中、R201~R207におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
201~R207におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
201~R207におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
201~R207、およびR210が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記の一般式(ca-r-1)~(ca-r-7)でそれぞれ表される基等が挙げられる。
【0199】
【化57】
[式中、R’201は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0200】
置換基を有してもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0201】
R’201における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素原子数は3~30であることが好ましく、炭素原子数5~30がより好ましく、炭素原子数5~20がさらに好ましく、炭素原子数6~15が特に好ましく、炭素原子数6~10が最も好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
R’201における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、又はこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環などが挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
R’201における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えばフェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えばベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2がより好ましく、炭素原子数1が特に好ましい。
【0202】
R’201における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0203】
なかでも、R’201における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基が特に好ましく、アダマンチル基が最も好ましい。
【0204】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が特に好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0205】
また、R’201における環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでもよい。例えば、ラクトン含有環式基、-SO-含有環式基、その他下記の化学式(r-hr-1)~(r-hr-16)でそれぞれ表される複素環式基が挙げられる。
【0206】
【化58】
【0207】
R’201の環式基における置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が最も好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
置換基としてのカルボニル基は、環状の炭化水素基を構成するメチレン基(-CH-)を置換する基である。
【0208】
置換基を有してもよい鎖状のアルキル基:
R’201の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~20であることが好ましく、炭素原子数1~15であることがより好ましく、炭素原子数1~10が最も好ましい。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が3~20であることが好ましく、炭素原子数3~15であることがより好ましく、炭素原子数3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0209】
置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基:
R’201の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素原子数が2~10であることが好ましく、炭素原子数2~5がより好ましく、炭素原子数2~4がさらに好ましく、炭素原子数3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0210】
R’201の鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、たとえば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、上記R’201における環式基等が挙げられる。
【0211】
R’201の置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基は、上述したものの他、置換基を有してもよい環式基又は置換基を有してもよい鎖状のアルキル基として、上述の式(a1-r-2)で表される酸解離性基と同様のものも挙げられる。
【0212】
なかでも、R’201は、置換基を有してもよい環式基が好ましく、置換基を有してもよい環状の炭化水素基であることがより好ましい。より具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ラクトン含有環式基;-SO-含有環式基などが好ましい。
【0213】
上記の一般式(ca-1)~(ca-3)中、R201~R203、R206~R207は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、-SO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CONH-または-N(R)-(該Rは炭素原子数1~5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3~10員環であることが好ましく、5~7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、例えばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H-チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0214】
208~R209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
【0215】
210は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよい-SO-含有環式基である。
210におけるアリール基としては、炭素原子数6~20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素原子数1~30のものが好ましい。
210におけるアルケニル基としては、炭素原子数が2~10であることが好ましい。
210における、置換基を有してもよい-SO-含有環式基としては、「-SO-含有多環式基」が好ましい。
【0216】
前記式(ca-1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記の化学式でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0217】
【化59】
【0218】
【化60】
【0219】
【化61】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1~5の整数であり、g2は0~20の整数であり、g3は0~20の整数である。]
【0220】
【化62】
【0221】
【化63】
【0222】
【化64】
[式中、R”201は水素原子又は置換基であって、該置換基としては前記R201~R207、およびR210~R212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0223】
【化65】
【0224】
前記式(ca-2)で表される好適なカチオンとして具体的には、ジフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0225】
前記式(ca-3)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca-3-1)~(ca-3-6)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0226】
【化66】
【0227】
カチオン部((Mm+1/m)としては、前記一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表されるカチオンからなる群より選択さる少なくとも一種が好ましく、前記一般式(ca-1)~(ca-2)でそれぞれ表されるカチオンからなる群より選択さる少なくとも一種がより好ましく、これらの中でも、前記一般式(ca-1)で表されるカチオンがさらに好ましい。
特に高感度化の点から、前記式(ca-1)で表される好適なカチオンとしては、置換基としてフッ素原子、フッ素化アルキル基、スルホニル基等の電子求引性基を有するものが好ましく、例えば、上記の化学式(ca-1-44)、(ca-1-71)~(ca-1-84)でそれぞれ表されるカチオンからなる群より選択されるカチオンが特に好ましい。
【0228】
あるいは、カチオン部((Mm+1/m)としては、高感度化の観点から、フッ素原子を有するm価のスルホニウムカチオンが好ましい。このカチオン部((Mm+1/m)としては、下記式(ca-1-1)で表されるカチオンが好ましい。
【0229】
【化67】
[式中、Rf201~Rf203は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアルケニル基を表す。Rf201~Rf203は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。ただし、Rf201~Rf203の少なくとも1つは、少なくとも1個のフッ素原子を含む。]
【0230】
前記式(ca-1-1)中のRf201~Rf203は、前記式(ca-1)中のR201~R203とそれぞれ同様である。ただし、Rf201~Rf203の少なくとも1つは、少なくとも1個のフッ素原子を含む。式(ca-1-1)で表されるカチオンは、3つ以上のフッ素原子を含むことが好ましい。Rf201~Rf203のいずれか1つが3つ以上のフッ素原子を有してもよく、Rf201~Rf203が含むフッ素原子の合計が3つ以上であってもよい。
【0231】
以下に(D0)成分の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0232】
【化68】
【0233】
【化69】
【0234】
【化70】
【0235】
【化71】
【0236】
本実施形態のレジスト組成物において、(D0)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
(D0)成分としては、上記化学式(D0-1)~(D0-19)でそれぞれ表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
本実施形態のレジスト組成物中、(D0)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5~25質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましく、3~15質量部であることがさらに好ましく、5~10質量部であることが特に好ましい。
(D0)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、レジストパターン形成において、パターン形状の矩形性、ラフネス低減等のリソグラフィー特性が向上する。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、感度をより良好に維持できる。
【0237】
本実施形態のレジスト組成物における(D)成分としては、上述した(D0)成分以外の塩基成分を含有してもよい。
(D0)成分以外の塩基成分としては、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基(D1)(以下「(D1)成分」という。)、該(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物(D2)(以下「(D2)成分」という。)等が挙げられる。これらの中でも、高感度化、ラフネス低減、パターン形状(矩形性)の特性をいずれも高められやすいことから、光崩壊性塩基((D1)成分)が好ましい。
【0238】
・(D1)成分について
(D1)成分を含有するレジスト組成物とすることで、レジストパターンを形成する際に、レジスト膜の露光部と未露光部とのコントラストをより向上させることができる。
(D1)成分としては、露光により分解して酸拡散制御性を失うものであれば特に限定されず、下記一般式(d1-1)で表される化合物(以下「(d1-1)成分」という。)、下記一般式(d1-2)で表される化合物(以下「(d1-2)成分」という。)及び下記一般式(d1-3)で表される化合物(以下「(d1-3)成分」という。)からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(d1-1)~(d1-3)成分は、レジスト膜の露光部においては分解して酸拡散制御性(塩基性)を失うためクエンチャーとして作用せず、レジスト膜の未露光部においてクエンチャーとして作用する。
【0239】
【化72】
[式中、Rd~Rdは置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基である。但し、式(d1-2)中のRdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。Ydは単結合又は2価の連結基である。mは1以上の整数であって、Mm+はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]
【0240】
{(d1-1)成分}
・・アニオン部
式(d1-1)中、Rdは、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ前記R’201と同様のものが挙げられる。
これらのなかでも、Rdとしては、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、置換基を有してもよい脂肪族環式基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルキル基が好ましい。
【0241】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビシクロオクタン骨格を含む多環構造(ビシクロオクタン骨格とこれ以外の環構造とからなる多環構造)が好適に挙げられる。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0242】
Rdにおける、芳香族炭化水素基、脂肪族環式基又は鎖状のアルキル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、フッ素原子、フッ素化アルキル基、上記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
前記鎖状のアルキル基が、置換基としてフッ素原子又はフッ素化アルキル基を有するフッ素化アルキル基である場合、フッ素化アルキル基の炭素原子数は、1~11が好ましく、1~8がより好ましく、1~4がさらに好ましい。該フッ素化アルキル基は、フッ素原子以外の原子を含有してもよい。フッ素原子以外の原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよく、この場合の置換基としては、下記の一般式(y-al-1)~(y-al-8)でそれぞれ表される連結基が好ましい。
なお、Rdにおける芳香族炭化水素基、脂肪族環式基又は鎖状のアルキル基が、置換基として、下記一般式(y-al-1)~(y-al-8)でそれぞれ表される連結基を有する場合、下記一般式(y-al-1)~(y-al-8)において、式(d1-1)中のRdにおける芳香族炭化水素基、脂肪族環式基又は鎖状のアルキル基を構成する炭素原子に結合するのが、下記一般式(y-al-1)~(y-al-8)中のV’101である。
【0243】
【化73】
[式中、V’101は、炭素原子数1~5のアルキレン基又は単結合である。V’102は、炭素原子数1~30の2価の飽和炭化水素基である。]
【0244】
V’102における2価の飽和炭化水素基は、炭素原子数1~30のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0245】
V’101およびV’102におけるアルキレン基としては、直鎖状のアルキレン基でもよく分岐鎖状のアルキレン基でもよく、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
V’101およびV’102におけるアルキレン基として、具体的には、メチレン基[-CH-];-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;エチレン基[-CHCH-];-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n-プロピレン基)[-CHCHCH-];-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[-CHCHCHCH-];-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[-CHCHCHCHCH-]等が挙げられる。
また、V’101又はV’102における前記アルキレン基における一部のメチレン基が、炭素原子数5~10の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、シクロへキシレン基、1,5-アダマンチレン基、2,6-アダマンチレン基が好ましい。
【0246】
以下に(d1-1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0247】
【化74】
【0248】
・・カチオン部
式(d1-1)中、Mm+は、m価の有機カチオンである。
m+の有機カチオンとしては、前記一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが好適に挙げられ、前記一般式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましく、前記式(ca-1-1)~(ca-1-84)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
(d1-1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0249】
{(d1-2)成分}
・・アニオン部
式(d1-2)中、Rdは、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられる。
但し、Rdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していない(フッ素置換されていない)ものとする。これにより、(d1-2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(D)成分としてのクエンチング能が向上する。
Rdとしては、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい脂肪族環式基であることが好ましい。鎖状のアルキル基としては、炭素原子数1~10であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有してもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
Rdの炭化水素基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(d1-1)のRdにおける炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族環式基、鎖状のアルキル基)が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0250】
以下に(d1-2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0251】
【化75】
【0252】
・・カチオン部
式(d1-2)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
(d1-2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0253】
{(d1-3)成分}
・・アニオン部
式(d1-3)中、Rdは置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられ、フッ素原子を含む環式基、鎖状のアルキル基、又は鎖状のアルケニル基であることが好ましい。中でも、フッ素化アルキル基が好ましく、前記Rdのフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
【0254】
式(d1-3)中、Rdは、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、前記R’201と同様のものが挙げられる。
なかでも、置換基を有してもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、環式基であることが好ましい。
Rdにおけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Rdのアルキル基の水素原子の一部が水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
Rdにおけるアルコキシ基は、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1~5のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0255】
Rdにおけるアルケニル基は、前記R’201におけるアルケニル基と同様のものが挙げられ、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基が好ましい。これらの基はさらに置換基として、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を有していてもよい。
【0256】
Rdにおける環式基は、前記R’201における環式基と同様のものが挙げられ、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、又は、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。Rdが脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することにより、リソグラフィー特性が良好となる。また、Rdが芳香族基である場合、EUV等を露光光源とするリソグラフィーにおいて、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0257】
式(d1-3)中、Ydは、単結合または2価の連結基である。
Ydにおける2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
Ydとしては、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、アルキレン基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0258】
以下に(d1-3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0259】
【化76】
【0260】
【化77】
【0261】
・・カチオン部
式(d1-3)中、Mm+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1-1)中のMm+と同様である。
(d1-3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0262】
(D1)成分は、上記(d1-1)~(d1-3)成分のいずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D1)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~8質量部がさらに好ましい。
(D1)成分の含有量が好ましい下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られやすい。一方、上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0263】
(D1)成分の製造方法:
前記の(d1-1)成分、(d1-2)成分の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
また、(d1-3)成分の製造方法は、特に限定されず、例えば、US2012-0149916号公報に記載の方法と同様にして製造される。
【0264】
・(D2)成分について
(D)成分としては、上記の(D0)成分及び(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物成分(以下「(D2)成分」という。)を含有してもよい。
(D2)成分としては、酸拡散制御剤として作用するもので、かつ、(D0)成分及び(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミンが好ましく、この中でも特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンがより好ましい。
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素原子数が1~12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNHの水素原子の少なくとも1つを、炭素原子数12以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンもしくはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ノニルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ-n-オクタノールアミン、トリ-n-オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素原子数5~10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ-n-ペンチルアミン又はトリ-n-オクチルアミンが特に好ましい。
【0265】
環式アミンとしては、例えば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素原子数が6~10のものが好ましく、具体的には、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0266】
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2-メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2-(1-エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2-{2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0267】
また、(D2)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、4-ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、トリベンジルアミン、2,6-ジイソプロピルアニリン、N-tert-ブトキシカルボニルピロリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン等が挙げられる。
【0268】
(D2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D2)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D2)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01~5質量部の範囲で用いられる。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0269】
本実施形態のレジスト組成物が含有する(D)成分全体のうち、(D0)成分の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、(D)成分は(D0)成分のみからなるものであってもよい。
【0270】
<その他成分>
本実施形態のレジスト組成物は、上述した(A)成分及び(D)成分に加え、その他成分をさらに含有してもよい。その他成分としては、例えば以下に示す(B)成分、(E)成分、(F)成分、(S)成分などが挙げられる。
【0271】
≪(B)成分:酸発生剤成分≫
本実施形態のレジスト組成物は、さらに、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(ただし、前記化合物(D0)を除く)を含有することが好ましい。
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト組成物用の酸発生剤として提案されているものを用いることができる。
このような酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤;ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤;ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが挙げられる。
【0272】
オニウム塩系酸発生剤としては、例えば、下記の一般式(b-1)で表される化合物(以下「(b-1)成分」ともいう)、一般式(b-2)で表される化合物(以下「(b-2)成分」ともいう)又は一般式(b-3)で表される化合物(以下「(b-3)成分」ともいう)が挙げられる。
【0273】
【化78】
[式中、R101及びR104~R108は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。R104とR105とは相互に結合して環構造を形成していてもよい。R102は、炭素数1~5のフッ素化アルキル基又はフッ素原子である。Y101は、酸素原子を含む2価の連結基又は単結合である。V101~V103は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。但し、Y101及びV101は共に単結合となることはない。L101~L102は、それぞれ独立に、単結合又は酸素原子である。L103~L105は、それぞれ独立に、単結合、-CO-又は-SO-である。mは1以上の整数であって、M’m+はm価のオニウムカチオンである。]
【0274】
{アニオン部}
・(b-1)成分におけるアニオン
式(b-1)中、R101は、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基である。
【0275】
置換基を有してもよい環式基:
該環式基は、環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。また、脂肪族炭化水素基は、飽和であることが好ましい。
【0276】
101における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素原子数は3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~20がさらに好ましく、6~15が特に好ましく、6~10が最も好ましい。但し、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
101における芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、又はこれらの芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環などが挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
101における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、など)等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0277】
101における環状の脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
この構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~30のものが好ましい。中でも、該ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカン;ステロイド骨格を有する環式基等の縮合環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンがより好ましい。
【0278】
なかでも、R101における環状の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ以上除いた基が好ましく、ポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルニル基がさらに好ましく、アダマンチル基が特に好ましい。
【0279】
脂環式炭化水素基に結合してもよい、直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3が最も好ましい。直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
脂環式炭化水素基に結合してもよい、分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が2~10であることが好ましく、3~6がより好ましく、3又は4がさらに好ましく、3が最も好ましい。分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0280】
また、R101における環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでもよい。具体的には、前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、下記一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)でそれぞれ表される-SO-含有環式基、その他上記化学式(r-hr-1)~(r-hr-16)でそれぞれ表される複素環式基が挙げられる。式中*は、式(b-1)中のY101に結合する結合手を表す。
【0281】
【化79】
[式中、Rb’51はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、ラクトン含有環式基、又は、-SO-含有環式基であり;B”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0~2の整数である。*は結合手を示す。]
【0282】
前記一般式(b5-r-1)~(b5-r-2)中、B”は、酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である。
B”としては、炭素原子数1~5のアルキレン基または-O-が好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0283】
前記一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)中、Rb’51はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり、その中でも、それぞれ独立に水素原子又はシアノ基であることが好ましい。
【0284】
下記に一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)でそれぞれ表される基の具体例を挙げる。式中の「Ac」は、アセチル基を示す。
【0285】
【化80】
【0286】
【化81】
【0287】
【化82】
【0288】
101の環式基における置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
置換基としてのカルボニル基は、環状の炭化水素基を構成するメチレン基(-CH-)を置換する基である。
【0289】
101における環状の炭化水素基は、脂肪族炭化水素環と芳香環とが縮合した縮合環を含む縮合環式基であってもよい。前記縮合環としては、例えば、架橋環系の多環式骨格を有するポリシクロアルカンに、1個以上の芳香環が縮合したもの等が挙げられる。前記架橋環系ポリシクロアルカンの具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナン)、ビシクロ[2.2.2]オクタン等のビシクロアルカンが挙げられる。前記縮合環式としては、ビシクロアルカンに2個又は3個の芳香環が縮合した縮合環を含む基が好ましく、ビシクロ[2.2.2]オクタンに2個又は3個の芳香環が縮合した縮合環を含む基がより好ましい。R101における縮合環式基の具体例としては、下記式(r-br-1)~(r-br-2)で表されるが挙げられる。式中*は、式(b-1)中のY101に結合する結合手を表す。
【0290】
【化83】
【0291】
101における縮合環式基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基等が挙げられる。
前記縮合環式基の置換基としてのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基は、上記R101における環式基の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記縮合環式基の置換基としての芳香族炭化水素基としては、芳香環から水素原子を1つ除いた基(アリール基:例えば、フェニル基、ナフチル基など)、前記芳香環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)、上記式(r-hr-1)~(r-hr-6)でそれぞれ表される複素環式基等が挙げられる。
前記縮合環式基の置換基としての脂環式炭化水素基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基;前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基;前記一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)でそれぞれ表される-SO-含有環式基;前記式(r-hr-7)~(r-hr-16)でそれぞれ表される複素環式基等が挙げられる。
【0292】
置換基を有してもよい鎖状のアルキル基:
101の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。
直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10が最も好ましい。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素原子数が3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~10が最も好ましい。具体的には、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0293】
置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基:
101の鎖状のアルケニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素原子数が2~10であることが好ましく、2~5がより好ましく、2~4がさらに好ましく、3が特に好ましい。直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基などが挙げられる。
鎖状のアルケニル基としては、上記の中でも、直鎖状のアルケニル基が好ましく、ビニル基、プロペニル基がより好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0294】
101の鎖状のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、上記R101における環式基等が挙げられる。
【0295】
式(b-1)中、Y101は、単結合または酸素原子を含む2価の連結基である。
101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、該Y101は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、例えば炭素原子、水素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、例えば、上述した一般式(y-al-1)~(y-al-8)でそれぞれ表される連結基が挙げられる。
【0296】
式(b-1)中、V101は、単結合、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。V101におけるアルキレン基、フッ素化アルキレン基は、炭素原子数1~4であることが好ましい。なかでも、V101は、単結合、又は炭素原子数1~4の直鎖状のフッ素化アルキレン基であることが好ましい。
【0297】
式(b-1)中、R102は、フッ素原子又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基である。R102は、フッ素原子または炭素原子数1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0298】
前記式(b-1)で表されるアニオン部の具体例としては、例えば、Y101が単結合となる場合、トリフルオロメタンスルホネートアニオンやパーフルオロブタンスルホネートアニオン等のフッ素化アルキルスルホネートアニオンが挙げられ;Y101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、下記式(an-1)~(an-3)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
【0299】
【化84】
[式中、R”101は、置換基を有してもよい脂肪族環式基、上記の化学式(r-hr-1)~(r-hr-6)でそれぞれ表される1価の複素環式基、前記式(r-br-1)又(r-br-2)で表される縮合環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基又は置換基を有してもよい芳香族環式基である。R”102は、置換基を有してもよい脂肪族環式基、前記式(r-br-1)又(r-br-2)で表される縮合環式基、前記一般式(a2-r-1)、(a2-r-3)~(a2-r-7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、又は前記一般式(b5-r-1)~(b5-r-4)でそれぞれ表される-SO-含有環式基である。R”103は、置換基を有してもよい芳香族環式基、置換基を有してもよい脂肪族環式基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基である。V”101は、単結合、炭素原子数1~4のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のフッ素化アルキレン基である。R102は、フッ素原子又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基である。v”はそれぞれ独立に0~3の整数であり、q”はそれぞれ独立に0~20の整数であり、n”は0または1である。]
【0300】
R”101、R”102およびR”103の置換基を有してもよい脂肪族環式基は、前記式(b-1)中のR101における環状の脂肪族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、前記式(b-1)中のR101における環状の脂肪族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0301】
R”101およびR”103における置換基を有してもよい芳香族環式基は、前記式(b-1)中のR101における環状の炭化水素基における芳香族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、前記式(b-1)中のR101における該芳香族炭化水素基を置換してもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0302】
R”101における置換基を有してもよい鎖状のアルキル基は、前記式(b-1)中のR101における鎖状のアルキル基として例示した基であることが好ましい。
R”103における置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基は、前記式(b-1)中のR101における鎖状のアルケニル基として例示した基であることが好ましい。
【0303】
V”101におけるアルキレン基及びフッ素化アルキレン基は、炭素原子数1~3が好ましく、炭素原子数1又は2がより好ましい。V”101の具体例としては、例えば、-CH-、-(CH-、-CFH-、-CHCFH-、-CH(CF)-等が挙げられる。
【0304】
前記式(b-1)で表されるアニオン部としては、前記式(an-1)で表されるアニオン部が好ましい。中でも、前記(an-1)中のR”101が、置換基を有してもよい芳香族環式基であるものが好ましく、置換基を有してもよいフェニル基であるものがより好ましい。前記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルキル基、又はハロゲン原子が挙げられ、ヒドロキシ基又はハロゲン原子が好ましい。前記ハロゲン原子としては、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、ヨウ素原子がより好ましい。
【0305】
・(b-2)成分におけるアニオン
式(b-2)中、R104、R105は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。ただし、R104、R105は、相互に結合して環を形成していてもよい。
104、R105は、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のフッ素化アルキル基であることがより好ましい。
該鎖状のアルキル基の炭素原子数は、1~10であることが好ましく、より好ましくは炭素原子数1~7、さらに好ましくは炭素原子数1~3である。R104、R105の鎖状のアルキル基の炭素原子数は、上記炭素原子数の範囲内において、レジスト用溶剤への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。また、R104、R105の鎖状のアルキル基においては、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また、250nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するため好ましい。前記鎖状のアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70~100%、さらに好ましくは90~100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基である。
式(b-2)中、V102、V103は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、またはフッ素化アルキレン基であり、それぞれ、式(b-1)中のV101と同様のものが挙げられる。
式(b-2)中、L101、L102は、それぞれ独立に単結合又は酸素原子である。
【0306】
・(b-3)成分におけるアニオン
式(b-3)中、R106~R108は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基であり、それぞれ、式(b-1)中のR101と同様のものが挙げられる。
式(b-3)中、L103~L105は、それぞれ独立に、単結合、-CO-又は-SO-である。
【0307】
上記の中でも、(B)成分のアニオン部としては、(b-1)成分におけるアニオンが好ましい。
【0308】
{カチオン部}
前記の式(b-1)、式(b-2)、式(b-3)中、M’m+は、m価のオニウムカチオンを表す。この中でも、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンが好ましい。
mは、1以上の整数である。
【0309】
好ましいカチオン部((M’m+1/m)としては、上記の一般式(ca-1)~(ca-3)でそれぞれ表されるオニウムカチオンと同様のものが好適に挙げられ、前記一般式(ca-1)で表されるカチオンがより好ましく、前記式(ca-1-1)~(ca-1-84)でそれぞれ表されるカチオンがさらに好ましい。
特に高感度化の点から、前記式(ca-1)で表される好適なカチオンとしては、置換基としてフッ素原子、フッ素化アルキル基、スルホニル基等の電子求引性基を有するものが好ましく、例えば、上記の化学式(ca-1-44)、(ca-1-71)~(ca-1-84)でそれぞれ表されるカチオンからなる群より選択されるカチオンが特に好ましい。
あるいは、カチオン部((M’m+1/m)としては、高感度化の観点から、フッ素原子を有するm価のスルホニウムカチオンが好ましい。このカチオン部((M’m+1/m)としては、上記式(ca-1-1)で表されるカチオンが好ましい。
【0310】
本実施形態のレジスト組成物において、(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(B)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、50質量部未満が好ましく、5~40質量部がより好ましく、10~30質量部がさらに好ましい。
(B)成分の含有量を、前記の好ましい範囲とすることで、パターン形成が十分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性が良好となるため好ましい。
【0311】
≪(E)成分:有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物≫
本実施形態のレジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という)を含有させることができる。
有機カルボン酸として、具体的には、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられ、その中でも、サリチル酸が好ましい。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、例えば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数6~15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ-n-ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸-ジ-n-ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、ホスフィン酸エステルやフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
本実施形態のレジスト組成物において、(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。上記範囲とすることにより、感度及びリソグラフィー特性等が向上する。
【0312】
≪(F)成分:フッ素添加剤成分≫
本実施形態のレジスト組成物は、疎水性樹脂としてフッ素添加剤成分(以下「(F)成分」という)を含有してもよい。(F)成分は、レジスト膜に撥水性を付与するために使用され、(A)成分とは別の樹脂として用いられることでリソグラフィー特性を向上させることができる。
(F)成分としては、例えば、特開2010-002870号公報、特開2010-032994号公報、特開2010-277043号公報、特開2011-13569号公報、特開2011-128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。
(F)成分としてより具体的には、下記一般式(f1-1)で表される構成単位(f1)を有する重合体が挙げられる。この重合体としては、下記式(f1-1)で表される構成単位(f1)のみからなる重合体(ホモポリマー);該構成単位(f1)と前記構成単位(a1)との共重合体;該構成単位(f1)とアクリル酸又はメタクリル酸から誘導される構成単位と前記構成単位(a1)との共重合体であることが好ましく、該構成単位(f1)と前記構成単位(a1)との共重合体であることがより好ましい。ここで、該構成単位(f1)と共重合される前記構成単位(a1)としては、1-エチル-1-シクロオクチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位、1-メチル-1-アダマンチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位が好ましく、1-エチル-1-シクロオクチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位がより好ましい。
【0313】
【化85】
[式中、Rは前記と同様であり、Rf102およびRf103はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し、Rf102およびRf103は同じであっても異なっていてもよい。nfは0~5の整数であり、Rf101はフッ素原子を含む有機基である。]
【0314】
式(f1-1)中、α位の炭素原子に結合したRは、前記と同様である。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
式(f1-1)中、Rf102およびRf103のハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。Rf102およびRf103の炭素原子数1~5のアルキル基としては、上記Rの炭素原子数1~5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましい。Rf102およびRf103の炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。なかでもRf102およびRf103としては、水素原子、フッ素原子、又は炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、またはエチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。
式(f1-1)中、nfは0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0315】
式(f1-1)中、Rf101は、フッ素原子を含む有機基であり、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。
フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよく、炭素原子数は1~20であることが好ましく、炭素原子数1~15であることがより好ましく、炭素原子数1~10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、浸漬露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから特に好ましい。
なかでも、Rf101としては、炭素原子数1~6のフッ素化炭化水素基がより好ましく、トリフルオロメチル基、-CH-CF、-CH-CF-CF、-CH(CF、-CH-CH-CF、-CH-CH-CF-CF-CF-CFが特に好ましい。
【0316】
(F)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000~50000が好ましく、5000~40000がより好ましく、10000~30000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのにレジスト用溶剤への充分な溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、レジスト膜の撥水性が良好である。
(F)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.5が最も好ましい。
【0317】
本実施形態のレジスト組成物において、(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(F)成分を含有する場合、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0318】
≪(S)成分:有機溶剤成分≫
本実施形態のレジスト組成物は、レジスト材料を有機溶剤成分(以下「(S)成分」という)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
本実施形態のレジスト組成物において、(S)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。なかでも、PGMEA、PGME、γ-ブチロラクトン、EL、シクロヘキサノンが好ましい。
【0319】
また、(S)成分としては、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよい。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ-ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が、好ましくは70:30~95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が0.1~20質量%、好ましくは0.2~15質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0320】
本実施形態のレジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0321】
本実施形態のレジスト組成物は、上記レジスト材料を(S)成分に溶解させた後、ポリイミド多孔質膜、ポリアミドイミド多孔質膜等を用いて、不純物等の除去を行ってもよい。例えば、ポリイミド多孔質膜からなるフィルター、ポリアミドイミド多孔質膜からなるフィルター、ポリイミド多孔質膜及びポリアミドイミド多孔質膜からなるフィルター等を用いて、レジスト組成物の濾過を行ってもよい。前記ポリイミド多孔質膜及び前記ポリアミドイミド多孔質膜としては、例えば、特開2016-155121号公報に記載のもの等が例示される。
【0322】
以上説明した本実施形態のレジスト組成物は、一般式(d0)で表される特定の(D0)成分を含有する。(D0)成分は、露光によりカルボン酸を発生し、レジスト膜未露光部でクエンチャー(酸拡散制御剤)として作用し得る。(D0)成分においては、アニオン部のベンゼン環に、ヨウ素原子(I)と、連結基を介してフッ素化炭化水素基(Rf)とが結合している。ヨウ素原子(I)は、疎水性が高く、また、波長13.5nmのEUVの吸収が大きい。
本実施形態においては、(D0)成分のアニオン部がヨウ素原子(I)を有するため、レジスト膜未露光部の疎水性が高められて、溶解コントラストが得られやすくなる。加えて、(D0)成分のアニオン部がヨウ素原子(I)を有するため、露光に対して吸収が大きくなる。
しかしながら、その反面、レジスト膜底部(基板との界面)に届く光量が減少しやすい。すなわち、レジスト膜内で発生する酸の発生量が、相対的に、レジスト膜底部で少なく、レジスト膜上部で多くなる。
本実施形態においては、(D0)成分のアニオン部が、フッ素原子の総数5個以上であるフッ素化炭化水素基(Rf)有するため、(D0)成分はレジスト膜の上部に偏在しやすくなる。これにより、レジスト膜の底部及び上部で、露光により発生するそれぞれの酸の量の差が小さくなる。
上記の作用が相乗的に起こることによって、本実施形態のレジスト組成物によれば、高感度化とラフネス低減との両立が図られるとともに、矩形性の高い良好な形状のパターンを形成できる、と推測される。
【0323】
(レジストパターン形成方法)
本発明の第2の態様に係るレジストパターン形成方法は、支持体上に、上述した本発明の第1の態様に係るレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を有する方法である。
かかるレジストパターン形成方法の一実施形態としては、例えば以下のようにして行うレジストパターン形成方法が挙げられる。
【0324】
まず、上述した実施形態のレジスト組成物を、支持体上にスピンナー等で塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば80~150℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは60~90秒間施してレジスト膜を形成する。
次に、該レジスト膜に対し、例えば電子線描画装置、ArF露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光またはマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行った後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、例えば80~150℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは60~90秒間施す。
次に、前記レジスト膜を現像処理する。現像処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて行う。
【0325】
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理またはリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を、超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
現像処理後またはリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0326】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
【0327】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
本実施形態のレジストパターン形成方法は、前記のレジスト膜を露光する工程において、前記レジスト膜に、EUV(極端紫外線)又はEB(電子線)を露光する操作を含む場合に特に有用な方法である。
【0328】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましく、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
液浸媒体としては、水が好ましく用いられる。
【0329】
アルカリ現像プロセスで現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスで現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0330】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及び、プロピオン酸ブチルが挙げられる。
【0331】
ニトリル系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル等が挙げられる。
【0332】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0333】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0334】
溶剤現像プロセスで現像処理後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、例えば前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。
【0335】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、例えば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0336】
以上説明した本実施形態のレジストパターン形成方法によれば、上述したレジスト組成物が用いられているため、レジストパターンを形成する際に高感度化が図れ、現像時の膜減りを抑えられる。
【0337】
上述した実施形態のレジスト組成物、及び、上述した実施形態のレジストパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物など)は、金属、ハロゲンを含む金属塩、酸、アルカリ、硫黄原子又はリン原子を含む成分等の不純物を含まないことが好ましい。
ここで、金属原子を含む不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Cr、Ni、Zn、Ag、Sn、Pb、Li、またはこれらの塩などを挙げることができる。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、200ppb以下が好ましく、1ppb以下がより好ましく、100ppt(parts per trillion)以下がさらに好ましく、10ppt以下が特に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が最も好ましい。
【0338】
(化合物)
本発明の第3の態様に係る化合物は、下記一般式(d0)で表される化合物である。
【0339】
【化86】
[式中、Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。Yは、酸素原子を含む2価の連結基である。Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。x個のRfに含まれるフッ素原子の総数は、5個以上である。式中のベンゼン環は、(Rf-V-Y)-で表される基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Mm+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。mは1以上の整数である。]
【0340】
上記一般式(d0)で表される化合物は、上述した本発明の第1の態様に係るレジスト組成物中の(D0)成分と同一である。
本実施形態の化合物は、前記式(d0)における、x個のRfに含まれるフッ素原子の総数が、5個以上11個以下である化合物が好ましい。
あるいは、本実施形態の化合物は、前記式(d0)における、yが1~3の整数である化合物が好ましい。
あるいは、本実施形態の化合物は、前記式(d0)における、Rfが、鎖状のフッ素化炭化水素基である化合物が好ましい。
【0341】
[一般式(d0)で表される化合物の製造方法]
(D0)成分は、公知の製造方法を用いて製造できる。
(D0)成分の製造方法の一実施形態として、一般式(d0)中のYが-O-(エーテル結合)である場合、一般式(d0)中のYが-C(=O)-O-(エステル結合)である場合の各化合物についての製造方法を以下に示す。
【0342】
第1工程:
まず、下記一般式(ca0)で表される化合物(ca0)を出発原料とし、この化合物(ca0)と、第三級アルコールとを反応させて、下記一般式(a0)で表される第1中間体(a0)を得る。
【0343】
【化87】
[式中、Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。式中のベンゼン環は、ヒドロキシ基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Rは、第三級アルキル基を表す。]
【0344】
第1工程において、出発原料である化合物(ca0)は、目的とする化合物((D0)成分)に応じて、ヒドロキシ基の結合数及び結合位置、並びに、ヨウ素原子の結合数及び結合位置を適宜選択する。
第三級アルコール(R-OH)としては、tert-ブチルアルコール、1-メチルシクロペンタノール等を用いることができる。
化合物(ca0)と第三級アルコールとの反応では、縮合剤を適宜選択して用いる。縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、カルボニルジイミダゾール(CDI)等が挙げられる。
化合物(ca0)と第三級アルコールとを反応させる際の有機溶剤としては、化合物(ca0)が溶解可能でありかつそれと反応しないもの;第三級アルコールとの相溶性がよいものであればよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
第1工程において、反応温度は、例えば40~80℃であり、反応時間は、例えば1時間以上10時間以下である。
【0345】
第2工程:
次いで、目的の(D0)成分が、一般式(d0)中のYが-O-(エーテル結合)である場合、第1中間体(a0)と、下記原料化合物(cb0-1)とを反応させて、下記第2中間体(b0-1)を得る(第2-1工程)。
あるいは、目的の(D0)成分が、一般式(d0)中のYが-C(=O)-O-(エステル結合)である場合、第1中間体(a0)と、下記原料化合物(cb0-2)とを反応させて、下記第2中間体(b0-2)を得る(第2-2工程)。
【0346】
第2-1工程:
第2-1工程では、塩基の存在下、第1中間体(a0)と、下記一般式(cb0-1)で表されるブロモ含有試薬(cb0-1)とを反応させて、下記一般式(b0-1)で表される第2中間体(b0-1)を得る。
【0347】
【化88】
[式中、Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。式中のベンゼン環は、ヒドロキシ基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Rは、第三級アルキル基を表す。Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。Brは臭素原子である。]
【0348】
第2-1工程において、ブロモ含有試薬(cb0-1)は、目的とする化合物((D0)成分)に応じて、5個以上の範囲でフッ素原子の個数、及び炭化水素基の構造などを適宜選択する。
塩基としては、水素化ナトリウム、KCO、CsCO、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
第1中間体(a0)とブロモ含有試薬(cb0-1)とを反応させる際の有機溶剤としては、第1中間体(a0)及びブロモ含有試薬(cb0-1)が溶解可能であり、かつそれらと反応しないものであればよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
第2-1工程において、反応温度は、例えば0~50℃であり、反応時間は、例えば1時間以上24時間以下である。
【0349】
第2-2工程:
第2-2工程では、塩基の存在下、第1中間体(a0)と、下記一般式(cb0-2)で表されるカルボン酸原料(cb0-2)とを反応させて、下記一般式(b0-2)で表される第2中間体(b0-2)を得る。
【0350】
【化89】
[式中、Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。式中のベンゼン環は、ヒドロキシ基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Rは、第三級アルキル基を表す。
Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。]
【0351】
第2-2工程において、カルボン酸原料(cb0-2)は、目的とする化合物((D0)成分)に応じて、5個以上の範囲でフッ素原子の個数、及び炭化水素基の構造などを適宜選択する。
塩基としては、水素化ナトリウム、KCO、CsCO、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
化合物(ca0)と第三級アルコールとの反応では、縮合剤を適宜選択して用いる。縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、カルボニルジイミダゾール(CDI)等が挙げられる。
第1中間体(a0)とカルボン酸原料(cb0-2)とを反応させる際の有機溶剤としては、第1中間体(a0)及びカルボン酸原料(cb0-2)が溶解可能であり、かつそれらと反応しないものであればよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
第2-2工程において、反応温度は、例えば0~50℃であり、反応時間は、例えば1時間以上24時間以下である。
【0352】
第3工程:
次いで、第2中間体(b0-1)又は第2中間体(b0-2)を加水分解して、前駆体(D0pre)を得る。
以下の反応式では、第2中間体(b0-1)を加水分解する場合を例示する。
【0353】
【化90】
[式中、Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。式中のベンゼン環は、ヒドロキシ基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Rは、第三級アルキル基を表す。
Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。]
【0354】
第2中間体(b0-1)及び第2中間体(b0-2)の加水分解においては、触媒として酸を利用できる。この酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸等を用いることができる。
第2中間体(b0-1)及び第2中間体(b0-2)の加水分解を行う際の有機溶剤としては、これら第2中間体及び酸触媒が溶解可能であり、かつそれらと反応しないものであればよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
第3工程において、反応温度は、例えば10~60℃であり、反応時間は、例えば1時間以上24時間以下である。
【0355】
第4工程:
次いで、前駆体(D0pre)と、下記一般式(S-1)で表される化合物(S-1)とを塩交換反応させることにより、一般式(d0’)で表される目的の化合物を得る。
【0356】
【化91】
[式中、Iは、ヨウ素原子である。xは1~4の整数であり、yは1~4の整数であり、2≦x+y≦5である。式中のベンゼン環は、ヒドロキシ基及びヨウ素原子以外の置換基を有してもよい。Rは、第三級アルキル基を表す。Rfは、フッ素化炭化水素基である。Vは、置換基を有してもよい炭化水素基又は単結合である。Zは、対アニオンである。Mm+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。mは1以上の整数である。]
【0357】
上記式中、Zにおける対アニオンとしては、一般式(D0pre)で表される前駆体よりも酸性度が低い酸になり得るイオンが挙げられ、具体的には、臭素イオン、塩素イオン等のハロゲンイオン;BF 、AsF 、SbF 、PF 、ClO 等が挙げられる。これらの中でも、Zは、ハロゲンイオンが好ましく、臭素イオンがより好ましい。
上記式中、Mm+、mは、上記一般式(d0)中のMm+、mと同一である。
【0358】
第4工程において、前駆体(D0pre)と化合物(S-1)との塩交換反応には、塩基を用いてもよい。この塩基としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、水素化ナトリウム、KCO、CsCO、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0359】
前駆体(D0pre)と化合物(S-1)との塩交換反応を行う際の溶媒は、有機溶媒でもよいし、有機溶媒と水との混合溶媒でもよい。有機溶媒としては、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、プロピオニトリル又はこれらの混合溶剤等が挙げられる。
第4工程において、反応温度は、例えば0~50℃であり、反応時間は、例えば10分間以上5時間以下である。
【0360】
塩交換反応が終了した後、反応液中の化合物を単離、精製してもよい。単離、精製には、従来公知の方法が利用でき、例えば、濃縮、溶媒抽出、蒸留、結晶化、再結晶、クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて用いることができる。
上記のようにして得られる化合物の構造は、H-核磁気共鳴(NMR)スペクトル法、13C-NMRスペクトル法、19F-NMRスペクトル法、赤外線吸収(IR)スペクトル法、質量分析(MS)法、元素分析法、X線結晶回折法等の一般的な有機分析法により同定できる。
【0361】
各工程で用いられる原料、試薬等は、市販のものを用いてもよく、合成したものを用いてもよい。
上述した(D0)成分の製造方法においては、一般式(d0)中のYが-O-(エーテル結合)である場合、及び、一般式(d0)中のYが-C(=O)-O-(エステル結合)である場合の各化合物についての製造方法を示したが、例えば、一般式(d0)中のYが-C(=O)-NH-(アミド結合)である場合の化合物についての製造方法では、出発原料として、前記化合物(ca0)に代えて、アミノ-ヨード安息香酸を用いればよい。例えば、前記一般式(ca0)中の-OHを、-NHへ変更すればよい。
【0362】
以上説明した本発明の第3の態様に係る化合物は、上述した本発明の第1の態様に係るレジスト組成物中の塩基成分として有用な化合物である。
【0363】
(酸拡散制御剤)
本発明の第4の態様に係る酸拡散制御剤は、上述した第3の態様に係る化合物を含むものである。
かかる酸拡散制御剤は、化学増幅型レジスト組成物用の酸拡散制御剤として有用である。
上述した第3の態様に係る化合物は、アニオン部にカルボキシレートアニオンを有するものであるため、化学増幅型レジスト組成物に一般的に用いられる酸発生剤のアニオン部が有するフッ素化アルキルスルホネートアニオン等よりも、酸強度が比較的に弱い酸を、露光により発生するものである。
かかる酸拡散制御剤を化学増幅型レジスト組成物に用いることで、レジストパターン形成において、パターン形状(矩形性)及びラフネス低減等のリソグラフィー特性がより向上する。かかる酸拡散制御剤を用いることで、特に、EB又はEUV光源を用いたレジストパターン形成において、感度、パターン形状(矩形性)及びラフネス低減等のリソグラフィー特性がより向上する。
【実施例0364】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
本実施例では、化学式(X-1-1)で表される化合物を「化合物(X-1-1)」と表記し、他の化学式で表される化合物についても同様に表記する。
【0365】
<第1中間体の製造>
(製造例1-1)
容量300mLの三口フラスコに、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)(4.60g、28.4mmol)とテトラヒドロフラン(THF)(20g)とを投入した後、出発原料である6-ヨードサリチル酸(ca1)(6.7g、25.5mmol)をTHF(20g)に溶解させたものを30分間かけて滴下し、1時間反応させた。その後、tert-ブチルアルコール(2.7g、30.6mmol)を投入し、65℃で3時間反応させた。冷却後、超純水(250g)とメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)(150g)とを加え、30分間撹拌後、水層を除去した。その後、有機層を超純水(100g)で3回洗浄し、有機層を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、得られた粗体を再度THF(20g)に溶解し、メタノール(150g)に滴下し、析出した固体をろ過した。そのろ物を減圧乾燥することにより第1中間体(a1)を得た(6.1g、収率75.0%)。
【0366】
【化92】
【0367】
(製造例1-2~製造例1-7)
出発原料である6-ヨードサリチル酸(ca1)(6.7g、25.5mmol)を、等モルで、下記の出発原料(ca2)~(ca8)にそれぞれ変更し、上記(製造例1-1)と同様にして、第1中間体(a2)~(a8)を得た。
【0368】
【化93】
【0369】
以下に、得られた第1中間体(a1)~(a8)を示した。
【0370】
【化94】
【0371】
<第2中間体の製造(1)>
(製造例2-1-1)
容量300mLの三口フラスコに、第1中間体(a1)(6.1g、19.0mmol)と、炭酸カリウム(2.8g、20.3mmol)と、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(50g)とを投入した後に、ブロモ含有試薬として3-ブロモ1,1,1,2,2ペンタフルオロプロパン(cb1)を30分間かけて滴下し、6時間反応させた。反応後に、超純水(100g)とMTBE(100g)とを加え、30分間撹拌後、水層を除去した。その後、有機層を超純水(100g)で3回洗浄し、有機層を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮することにより第2中間体(b1)を得た(7.0g、収率80.0%)。
【0372】
【化95】
【0373】
(製造例2-1-2~製造例2-1-11)
上記(製造例2-1-1)と同様にして、第1中間体(a2)~(a4)及び(a6)~(a8)と、下記のブロモ含有試薬(cb1)~(cb6)とを、下記組合せで反応させることにより、第2中間体(b2)~(b5)、(b8)、(b10)、(b12)~(b15)を得た。
【0374】
第2中間体(b1):第1中間体(a1)とブロモ含有試薬(cb1)との組合せ
第2中間体(b2):第1中間体(a2)とブロモ含有試薬(cb6)との組合せ
第2中間体(b3):第1中間体(a2)とブロモ含有試薬(cb3)との組合せ
第2中間体(b4):第1中間体(a3)とブロモ含有試薬(cb1)との組合せ
第2中間体(b5):第1中間体(a4)とブロモ含有試薬(cb1)との組合せ
第2中間体(b8):第1中間体(a4)とブロモ含有試薬(cb4)との組合せ
第2中間体(b10):第1中間体(a6)とブロモ含有試薬(cb5)との組合せ
第2中間体(b12):第1中間体(a7)とブロモ含有試薬(cb1)との組合せ
第2中間体(b13):第1中間体(a8)とブロモ含有試薬(cb2)との組合せ
第2中間体(b14):第1中間体(a8)とブロモ含有試薬(cb6)との組合せ
第2中間体(b15):第1中間体(a8)とブロモ含有試薬(cb3)との組合せ
【0375】
【化96】
【0376】
以下に、得られた第2中間体(b2)~(b5)、(b8)、(b10)、(b12)~(b15)を示した。
【0377】
【化97】
【0378】
【化98】
【0379】
<第2中間体の製造(2)>
(製造例2-2-1)
容量200mLの三口フラスコに、カルボン酸原料として3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸(cb7)(5.4g、20.9mmol)と、ジクロロメタン(150g)と、ジイソプロピルカルボジイミド(2.8g、22.2mmol)と、ジメチルアミノピリジン(0.045g、0.4mmol)とを投入し、室温下で30分間撹拌した。その後、第1中間体(a4)(8.5g、19.0mmol)を投入し、室温下で6時間撹拌した。反応液をろ過し、ろ液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。濃縮物をアセトニトリル(30g)で溶解した後、MTBE(180g)に滴下し、析出した固体をろ過した。そのろ物を再度THF(20g)で溶解し、メタノール(150g)に滴下し、析出した固体をろ過した。この操作を2回繰り返した後、ろ物を減圧乾燥することにより第2中間体(b6)を得た(10.7g、収率82.1%)。
【0380】
【化99】
【0381】
(製造例2-2-2~製造例2-2-4)
上記(製造例2-2-1)と同様にして、第1中間体(a5)及び(a6)と、下記のカルボン酸原料(cb7)~(cb9)とを、下記組合せで反応させることにより、第2中間体(b7)、(b9)、(b11)を得た。
【0382】
第2中間体(b6):第1中間体(a4)とカルボン酸原料(cb7)との組合せ
第2中間体(b7):第1中間体(a5)とカルボン酸原料(cb7)との組合せ
第2中間体(b9):第1中間体(a6)とカルボン酸原料(cb8)との組合せ
第2中間体(b11):第1中間体(a6)とカルボン酸原料(cb9)との組合せ
【0383】
【化100】
【0384】
以下に、得られた第2中間体(b6)、(b7)、(b9)、(b11)を示した。
【0385】
【化101】
【0386】
<前駆体(D0pre)の製造>
(製造例3-1)
容量200mLの三口フラスコに、第2中間体(b1)(6.5g、14.3mmol)と、ジクロロメタン(100g)と、トリフルオロ酢酸(TFA)(16.3g、143mmol)とを投入し、30℃で8時間撹拌した。反応後に、超純水(100g)とMTBE(100g)とを加え、30分間撹拌後、水層を除去した。その後、有機層を超純水(100g)で3回洗浄し、有機層を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮することにより前駆体(D0pre-1)を得た(5.3g、収率93.5%)。
【0387】
【化102】
【0388】
(製造例3-2~製造例3-15)
上記(製造例3-1)と同様にして、第2中間体(b2)~(b15)と、トリフルオロ酢酸とをそれぞれ反応させることにより、前駆体(D0pre-2)~(D0pre-15)を得た。
【0389】
以下に、得られた前駆体(D0pre-1)~(D0pre-15)を示した。
【0390】
【化103】
【0391】
【化104】
【0392】
<化合物(D0)の製造>
(製造例4-1)
前駆体(D0pre-1)(5.0g、12.6mmol)と、塩交換用化合物(S-1-1)(4.7g、13.7mmol)とをジクロロメタン(100g)に溶解し、5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液(25g)を加え、室温下で30分間反応させた。反応終了後、水相を除去し、有機相を超純水(20g)で5回洗浄した。有機相を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固することにより、目的の化合物(D0-1)を得た(7.9g、収率95.2%)。
【0393】
【化105】
【0394】
(製造例4-2~製造例4-19)
上記(製造例4-1)と同様にして、前駆体(D0pre-2)~(D0pre-15)と、下記の塩交換用化合物(S-1-1)~(S-1-5)とを、下記組合せで反応させることにより、目的の化合物(D0-2)~(D0-19)を得た。
【0395】
【化106】
【0396】
化合物(D0-1):前駆体(D0pre-1)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-2):前駆体(D0pre-2)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-3):前駆体(D0pre-3)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-4):前駆体(D0pre-4)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-5):前駆体(D0pre-5)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-6):前駆体(D0pre-6)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-7):前駆体(D0pre-7)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-8):前駆体(D0pre-8)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-9):前駆体(D0pre-9)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-10):前駆体(D0pre-10)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-11):前駆体(D0pre-11)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-12):前駆体(D0pre-12)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-13):前駆体(D0pre-13)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-14):前駆体(D0pre-14)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-15):前駆体(D0pre-15)と塩交換用化合物(S-1-1)との組合せ
化合物(D0-16):前駆体(D0pre-8)と塩交換用化合物(S-1-2)との組合せ
化合物(D0-17):前駆体(D0pre-8)と塩交換用化合物(S-1-4)との組合せ
化合物(D0-18):前駆体(D0pre-8)と塩交換用化合物(S-1-3)との組合せ
化合物(D0-19):前駆体(D0pre-14)と塩交換用化合物(S-1-5)との組合せ
【0397】
以下に、得られた化合物(D0-1)~化合物(D0-19)を示した
【0398】
【化107】
【0399】
【化108】
【0400】
【化109】
【0401】
【化110】
【0402】
なお、上述した化合物(D0-1)~(D0-19)の構造は、以下に示すH-NMR測定の分析結果から同定したものである。
【0403】
化合物(D0-1)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.74-7.90(m,ArH,15H),7.56(d,I-ArH,1H),7.18(d,I-ArH,1H),6.89(d,I-ArH,1H),4.51-4.68(m,CH2,2H)
【0404】
化合物(D0-2)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.74-7.90(m,ArH,15H),7.57(d,I-ArH,1H),6.84(d,I-ArH,1H),6.73(d,I-ArH,1H),4.59(s,CH2,2H)
【0405】
化合物(D0-3)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.74-7.90(m,ArH,15H),7.57(d,I-ArH,1H),6.84(d,I-ArH,1H),6.73(d,I-ArH,1H),4.51-4.68(m,CH2,2H)
【0406】
化合物(D0-4)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.74-7.90(m,ArH,I-ArH,16H),6.94(d,I-ArH,1H),4.51-4.68(m,CH2,4H)
【0407】
化合物(D0-5)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.99(d,I-ArH,1H),7.74-7.90(m,ArH,I-ArH,16H),4.51-4.68(m,CH2,2H)
【0408】
化合物(D0-6)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=8.39(d,ArH,2H),8.01(d,ArH,1H),7.99(d,I-ArH,1H),7.74-7.90(m,ArH,I-ArH,16H)
【0409】
化合物(D0-7)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=9.48(s,NH,1H),8.39(d,ArH,2H),8.01(d,ArH,1H),7.99(d,I-ArH,1H),7.74-7.90(m,ArH,I-ArH,16H)
【0410】
化合物(D0-8)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.99(d,I-ArH,1H),7.74-7.90(m,ArH,I-ArH,16H),4.05-4.25(m,CH2,2H),2.63-2.73(m,CH2,2H)
【0411】
化合物(D0-9)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.74-7.90(m,ArH,I-ArH,17H)
【0412】
化合物(D0-10)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.74-7.90(m,ArH,I-ArH,17H),4.05-4.25(m,CH2,2H),2.63-2.73(m,CH2,2H)
【0413】
化合物(D0-11)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=8.41(d,ArH,2H),7.74-7.90(m,ArH,I-ArH,17H)
【0414】
化合物(D0-12)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.74-7.90(m,ArH,I-ArH,16H),4.51-4.68(m,CH2,4H)
【0415】
化合物(D0-13)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=8.12(d,I-ArH,1H),7.74-7.90(m,ArH,15H),4.05-4.25(m,CH2,2H),2.63-2.73(m,CH2,2H)
【0416】
化合物(D0-14)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=8.12(d,I-ArH,1H),7.74-7.90(m,ArH,15H),4.59(s,CH2,2H)
【0417】
化合物(D0-15)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=8.12(d,I-ArH,1H),7.74-7.90(m,ArH,15),4.51-4.68(m,CH2,2H)
【0418】
化合物(D0-16)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.70-8.22(m,ArH,I-ArH,16H),4.05-4.25(m,CH2,2H),3.30-3.45(m,SO2CH,1H),2.63-2.73(m,CH2,2H),1.09-1.90(m,Cyclohexyl,10H)
【0419】
化合物(D0-17)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=8.50(d,ArH,2H),8.37(d,ArH,2H),7.99(d,I-ArH,1H),7.93(t,ArH,2H),7.84(d,I-ArH,1H),7.55-7.75(m,ArH,7H),4.05-4.25(m,CH2,2H),2.63-2.73(m,CH2,2H)
【0420】
化合物(D0-18)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=7.77-7.99(m,ArH,I-ArH,13H),4.05-4.25(m,CH2,2H),2.63-2.73(m,CH2,2H)
【0421】
化合物(D0-19)の構造
H-NMR(DMSO,400MHz):δ(ppm)=8.12(d,I-ArH,1H),7.92-7.94(m,ArH,4H),7.43-7.46(m,ArH,2H),7.27-7.31(m,ArH,4H),4.59(s,CH2,2H)
【0422】
<レジスト組成物の調製>
(実施例1~26、比較例1~4)
表1~3に示す各成分を混合して溶解し、各例のレジスト組成物をそれぞれ調製した。
【0423】
【表1】
【0424】
【表2】
【0425】
【表3】
【0426】
表1~3中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)-1:下記の化学式(A1-1)で表される高分子化合物。この高分子化合物(A1-1)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は5800、分子量分散度(Mw/Mn)は1.54。13C-NMRにより求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=50/50。
(A)-2:下記の化学式(A1-2)で表される高分子化合物。この高分子化合物(A1-2)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は6000、分子量分散度(Mw/Mn)は1.55。13C-NMRにより求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=50/50。
(A)-3:下記の化学式(A1-3)で表される高分子化合物。この高分子化合物(A1-3)について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は5900、分子量分散度(Mw/Mn)は1.54。13C-NMRにより求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=50/50。
【0427】
【化111】
【0428】
(B)-1:下記の化合物(B1-1)からなる酸発生剤。
(B)-2:下記の化合物(B1-2)からなる酸発生剤。
【0429】
【化112】
【0430】
(D)-1~(D)-19:上記の化合物(D0-1)~化合物(D0-19)。
(D)-21:下記の化合物(D1-1)からなる酸拡散制御剤。
(D)-22:下記の化合物(D1-2)からなる酸拡散制御剤。
(D)-23:下記の化合物(D1-3)からなる酸拡散制御剤。
(D)-24:下記の化合物(D1-4)からなる酸拡散制御剤。
【0431】
【化113】
【0432】
(S)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル=60/40(質量比)の混合溶剤。
【0433】
<レジストパターンの形成>
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上に、各例のレジスト組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。
次に、前記レジスト膜に対し、電子線描画装置JEOL-JBX-9300FS(日本電子株式会社製)を用い、加速電圧100kVにて、ターゲットサイズをライン幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターン(以下「LSパターン」)とする描画(露光)を行った。
次いで、110℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行った。
その後、23℃にて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液「NMD-3」(商品名、東京応化工業株式会社製)を用いて、60秒間のアルカリ現像を行った。その後、純水を用いて15秒間の水リンスを行った。
その結果、ライン幅50nmの1:1のLSパターンが形成された。
【0434】
[感度の評価]
上記<レジストパターンの形成>によってターゲットサイズのLSパターンが形成される最適露光量Eop(μC/cm)を求めた。この結果を「Eop(μC/cm)」として表4~6に示した。
【0435】
[LWR(ラインワイズラフネス)の評価]
上記<レジストパターンの形成>によって形成したLSパターンについて、LWRを示す尺度である3σを求めた。
「3σ」は、走査型電子顕微鏡(加速電圧800V、商品名S-9380、日立ハイテクノロジーズ社製)により、ラインの長手方向にラインポジションを400箇所測定し、その測定結果から求めた標準偏差(σ)の3倍値(3σ)(単位:nm)を示す。この結果を「LWR(nm)」として表4~6に示した。
該3σの値が小さいほど、ライン側壁のラフネスが小さく、より均一な幅のLSパターンが得られたことを意味する。
【0436】
[パターン形状の評価]
上記<レジストパターンの形成>において、それぞれ得られたLSパターンにおけるラインの断面形状を、走査型電子顕微鏡(加速電圧300V、商品名SU8000、日立ハイテクノロジーズ社製)により観察した。ラインの断面形状の観察は、ラインパターンの任意の20点において形状を観察した。
LSパターンの高さ方向における、ライン上部の線幅(Lt)と、ライン中間の線幅(Lm)とを測定し、LtおよびLmのそれぞれ測定値20点の平均値から、これらの比(Lt/Lm)を求めた。ラインの断面形状の矩形性は、Lt/Lmの値が1に近いほど良い(すなわち、矩形性が高い)ことを示す。
パターン形状について、比(Lt/Lm)を指標とし、ラインの断面形状の矩形性を、下記の評価基準に従って評価した。
0.95≦(Lt/Lm)≦1.05である場合を「◎:特に良好」;
0.90≦(Lt/Lm)<0.95、又は1.05<(Lt/Lm)≦1.10である場合を「〇:良好」;
(Lt/Lm)<0.90、又は1.10<(Lt/Lm)である場合を「×:不良」と評価した。
パターン形状の評価として、Lt/Lmの値、及び矩形性の評価結果を表4~6に示した。
【0437】
【表4】
【0438】
【表5】
【0439】
【表6】
【0440】
表4~6に示す結果から、実施例1~26と比較例1~4との対比より、本発明を適用した実施例1~26のレジスト組成物は、高感度化とラフネス低減との両立が図られていること、加えて、矩形性の高い良好な形状のパターンが形成できていること、を確認することができる。